当第1四半期連結累計期間において、当四半期報告書に記載した「事業の状況」、「経理の状況」等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生または有価証券報告書(2024年3月26日提出)に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当四半期報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(単位:百万円)
(注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。
2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)および償却費を加算しています。
3 売上高における実質増減率は、為替影響、当第1四半期連結累計期間・前第1四半期連結累計期間におけるすべての事業譲渡影響と譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下「事業譲渡影響」という。)、および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除いて計算しています。
当第1四半期連結累計期間(2024年1月1日~2024年3月31日)は、地政学リスクの高まり、物価上昇、円安の進行等に伴う先行き不透明感が継続し、中国や欧州では経済成長の減速感が見られたものの、米国では良好な雇用・所得環境を背景に景気は堅調に推移し、日本においても緩やかな景気の回復が続きました。
国内化粧品市場は、堅調に推移しました。物価上昇が家計の重石になる状況が続く一方で、賃上げ等により消費マインドが改善したほか、訪日外国人旅行者数がコロナ禍前を上回る水準まで回復したことなどが貢献しました。海外化粧品市場の動向は地域ごとにばらつきが見られました。中国海南島などの免税市場では、規制強化に伴う流通在庫調整等により厳しい環境が継続した一方、中国では、消費行動の変化を背景に緩やかな成長が続きました。欧米化粧品市場は全カテゴリーで堅調に成長しました。
当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを中心とした社会課題の解決に向けてイノベーションに積極的に取り組みながら、「Personal Beauty Wellness Company」として、スキンビューティーとウェルネスを融合し、一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業を目指します。そして2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」に取り組みます。
当期は、2023年から2025年までの3カ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」の2年目であり、2025年のコア営業利益率9%の達成に向け、グローバルコスト削減のための構造改革主要アクションの完遂と、グロスプロフィット最大化を追求する体制の構築に取り組んでいます。日本事業においては、「持続的な成長」、「稼げる基盤構築」、「人財変革」の3つを柱とする経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」の実行を通じて、収益性改善を進めています。中国・トラベルリテール事業においては、組織構造の最適化を図るとともに、多様化する市場の変化を捉えた持続的な成長の実現を目指します。米州・欧州・アジアパシフィック事業においては、積極的な経営資源投下により成長加速を図ります。これらを通じ、適正な地域ポートフォリオへの転換を進め、不透明で変化の激しい市場環境にも柔軟に対応できる経営基盤の構築を進めていきます。
当第1四半期連結累計期間の売上高は前年比3.9%増の2,495億円、現地通貨ベースでは前年比2.7%減、為替影響、事業譲渡影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除く実質ベースでは前年比3.2%増となりました。実質ベースの売上高は、規制強化や旅行者を中心としたビジネスモデルへの回帰の流れを受けた流通在庫調整が継続したトラベルリテール事業や、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響が残った中国事業は前年を下回りました。但し、前年同期比での減収幅は縮小傾向にあり、状況は着実に改善しています。一方、日本事業は、成長性・収益性の高いブランドへの活動の集中や新カテゴリー創造に向けた戦略的マーケティングが功を奏したほか、インバウンド需要の増加もあり、成長を大幅に加速しました。また、米州・欧州事業も好調に推移し、アジアパシフィック事業においても堅調に成長しました。
コア営業利益は、113億円となりました。前年に対しては12億円の減益となりましたが、社内計画を上回る好調なスタートとなりました。トラベルリテール事業における流通在庫調整等による減益の影響、また、「その他」におけるトラベルリテール・中国事業向けの内部売上高減少に伴う差益減等の影響を大きく受けましたが、日本・中国・アジアパシフィック・米州・欧州いずれの事業でも増益を実現しました。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は、前年に対し120億円悪化し、33億円の損失となりました。コア営業利益の減益に加え、非経常項目において主に日本事業の早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したことが影響しました。
なお、EBITDAマージンは9.8%となりました。
当第1四半期連結累計期間における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=148.5円、1ユーロ=161.2円、1中国元=20.7円です。
各報告セグメントの経営成績は次のとおりです。なお、報告セグメントの区分方法の変更については「第4 経理の状況 1 要約四半期連結財務諸表 要約四半期連結財務諸表注記」の「5. 事業セグメント」をご参照ください。
(単位:百万円)
(注) 1 当第1四半期連結会計期間より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「日本事業」に計上していた一部業績を「その他」に計上しています。なお、前第1四半期連結累計期間のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。
2 売上高における実質増減率は、為替影響、事業譲渡影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除いて計算しています。
3 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業、飲食業およびヘルスケア事業(美容食品、一般用医薬品の販売)等を含んでいます。
4 コア営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。
5 コア営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。
日本事業では、経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」の実行を通じた収益性改善を進めています。成長性・収益性の高いブランド・商品・お客さま接点へ活動を集中させることで成長の加速に取り組み、愛用者数の増加が続いている「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」を中心としたコアブランドで力強い成長を実現したほか、戦略的マーケティングによりファンデ美容液という新カテゴリー創出に取り組み、「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」などが好調に推移しました。また、訪日外国人旅行者数がコロナ禍前の水準を上回って推移したことを受けて、インバウンド消費も着実に回復しました。
以上のことから、売上高は736億円となりました。前年比は19.3%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比19.6%増となりました。コア営業利益は67億円、売上増による差益増や費用効率化などにより、前年に対し83億円改善しました。
② 中国事業
中国事業では、大型プロモーションを中心とした成長から、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めています。「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」が全体をけん引し堅調な成長を実現した一方で、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響を受けた「SHISEIDO」は前年比マイナス成長が継続しました。また「婦人節」のEコマースイベントでは、多様化するEコマースプラットフォームへの展開拡大が奏功して好調に推移し、当社のプレステージカテゴリーでは市場を上回る成長を実現しました。
以上のことから、売上高は555億円となりました。前年比は4.2%増、現地通貨ベースでは前年比3.2%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比2.6%減となりました。実質ベースでは前年比減収となったものの、日本製品買い控えによる影響は収束に向かい、着実に改善しています。コア営業利益は1億円、機動的なコストマネジメントなどにより、前年に対し23億円改善しました。
アジアパシフィック事業では、一部の国・地域で成長に鈍化が見られましたが、タイや韓国を中心として堅調に成長しました。「アネッサ」や「SHISEIDO」が好調を維持し、全体の成長をけん引しました。
以上のことから、売上高は171億円となりました。前年比は11.2%増、現地通貨ベースでは前年比2.4%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比5.2%増となりました。コア営業利益は10億円、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し6億円の増益となりました。
④ 米州事業
米州事業では、新商品が成長をけん引した「SHISEIDO」や、積極的なマーケティングを継続している「Drunk Elephant」が好調に推移しました。また今年2月に皮膚科学をベースとしたプレステージスキンケアブランド「Dr. Dennis Gross Skincare」を買収しました。今後は米州を注力市場とし、成長性・収益性を拡大させていきます。
以上のことから、売上高は318億円となりました。前年比は22.4%増、現地通貨ベースでは前年比8.9%増、為替影響、事業譲渡および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除く実質ベースでは前年比9.4%増となりました。コア営業利益は36億円、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し21億円の増益となりました。
欧州事業では、「SHISEIDO」が着実に伸長したほか、「narciso rodriguez」を中心としてフレグランスが力強い成長を継続しました。また店舗拡大とともに積極的なマーケティング活動を進めている「Drunk Elephant」は昨年に引き続き力強い成長を実現しました。
以上のことから、売上高は348億円となりました。前年比は25.2%増、現地通貨ベースでは前年比10.4%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比16.7%増となりました。コア営業利益は42億円、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し16億円の増益となりました。
トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、訪日外国人旅行者数がコロナ禍前を上回る水準まで回復したことを受け、日本において力強い回復を実現しました。一方、中国海南島・韓国では、流通在庫調整や、旅行者回復の遅れ等の影響を受け、売上高は前年を下回りました。なお、中国海南島・韓国における流通在庫調整は予定通り進捗し、在庫水準は適正化しました。
以上のことから、売上高は298億円となりました。前年比は22.7%減、現地通貨ベースでは前年比30.4%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比30.5%減となりました。コア営業利益は30億円、売上減に伴う差益減などにより、前年に対し45億円の減益となりました。
(2) キャッシュ・フローの状況
当第1四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は、当連結会計年度期首残高1,047億円に比べ143億円減少し、904億円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費及び償却費(188億円)、構造改革引当金の増減額(179億円)などの増加項目があった一方、税引前四半期損失(38億円)、営業債権の増減額(192億円)、営業債務の増減額(76億円)などの減少項目があったことにより、前年同期に比べて6億円増加の36億円の収入となりました。在庫回転日数(DSI)は、213日となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社の取得による支出(492億円)や、工場設備への投資等である有形固定資産の取得による支出(71億円)、ITシステムへの投資等の無形資産の取得による支出(63億円)などにより、前年同期に比べて645億円支出は増加し、634億円の支出となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当第1四半期連結累計期間の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加(900億円)があった一方、長期借入金の返済による支出(300億円)、配当金の支払額(116億円)、リース負債の返済による支出(66億円)などにより、前年同期に比べて577億円収入は増加し、418億円の収入となりました。
有価証券報告書(2024年3月26日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
有価証券報告書(2024年3月26日提出)の記載から重要な変更または新たな発生はありません。
当第1四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、67億円(売上高比2.7%)です。なお、当第1四半期連結累計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当第1四半期連結累計期間において、従業員数に著しい増減はありません。
当第1四半期連結累計期間において、生産、受注および販売の実績について著しい変動はありません。
当第1四半期連結累計期間において、主要な設備の重要な異動または前連結会計年度末において計画中であったものに著しい変更はありません。
当社は2024年2月にDDG Skincare Holdings LLCを連結子会社化しましたが、これに伴う業績影響は売上高で約140億円、コア営業利益に与える影響は軽微であると想定しています。
今後の事業環境については、日本・米州・欧州・アジアパシフィック事業の成長加速、円安に伴うポジティブ影響などへの期待がある一方、中国人の消費回復遅れ・購買行動変化などの不透明感も依然残ります。以上のことから、通期の連結業績予想に変更はありません。構造改革の完遂とグロスプロフィットの最大化に引き続き取り組み、2024年12月期のコア営業利益見通し550億円の達成に向けて取り組んでまいります。
(10) 資本の財源および資金の流動性についての分析
資金調達と流動性マネジメントの基本方針は、有価証券報告書(2024年3月26日提出)の記載から変更ありません。当第1四半期連結会計期間末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は引き続き高いと考えています。
ムーディーズ・ジャパン株式会社より取得している2024年4月30日現在の発行体格付けはA3(見通し:安定的)となっています。
総資産は、円安により資産の換算額が増加、DDG Skincare Holdings LLCの取得によりのれんおよび無形資産が増加、また、営業債権及びその他の債権が増加した一方、子会社株式の取得などによる現金及び現金同等物の減少、有形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ908億円増の1兆3,463億円となりました。負債は、社債及び借入金の増加などにより、799億円増の6,950億円となりました。資本は、配当金支払いにより利益剰余金が減少した一方、円安により在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、109億円増の6,513億円となりました。
また、自己資本に対する現預金を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.17倍となりました。
当第1四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。