当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループ「会社は社会の公器であり、利益は奉仕の尺度である」の企業理念のもと、「人」「もの」「地球」に優しい食品流通のエキスパートとして、冷蔵倉庫事業と食品販売事業を行い、顧客・株主・従業員・地域社会等すべてのステークホルダーの信頼と期待に応えられる経営を目指します。
(2) 経営環境
経営環境については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1) 業績」の項目をご参照ください。
(3) 中長期的な会社の経営戦略等
当社グループを取り巻く事業環境は、働き方改革に伴う物流の2024年問題、人口減少による労働力不足、エネルギー価格高騰による電力費の増加、国際情勢不安の長期化等、依然として不透明な状況にあります。
世界的には、円安基調や気候変動、環境問題が年々深刻化しており、世界人口増加による食資源の枯渇化に伴う食資源獲得競争等、地球環境への配慮と、持続的な企業成長を両立したサステナビリティへの積極的な取り組みが求められています。
このような状況のなか、当社グループは2030年に向けた長期的方向性「ヨコレイ事業ビジョン2030」および「ヨコレイサステナビリティビジョン2030」を掲げました。
実現に向けた第2ステージとして、2026年を最終年度とする新・中期経営計画(第Ⅱ期:2023年10月~2026年9月)「繋ぐ力」を策定しました。本中期経営計画を達成するために、冷蔵倉庫事業は「積み重ねてきた高品質な物流で国内外の課題を解消し、お客様へスマートコールドサービスを提供」、食品販売事業は「国内外(グローバル)の生産者とのネットワークを活かし、目利き力により旬や美味しさをお客様へ」、それを支える経営基盤として「生産性を向上させ事業の成長スピードを加速化させる」を方針とします。
上記施策を推進することにより、次期の業績見通しは、売上高139,000百万円、営業利益4,550百万円、経常利益4,750百万円、親会社株主に帰属する当期純利益3,050百万円を見込んでおります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
《当社グループのサステナビリティに関する考え方》
当社グループは、「会社は社会の公器であり、利益は奉仕の尺度である」という経営理念に基づき、国内外への安全・安心な食の安定供給に貢献することを目指し、冷蔵倉庫事業と食品販売事業を主要事業として事業活動を行っています。当社グループにとってのサステナビリティとは、当社が国内外への安全・安心な食の安定供給に貢献するための前提条件となるものと考えています。
さらに、短期・中期・長期にわたって当社グループの事業活動を取り巻く環境における人的資本(*1)、自然資本(*2)等との関係性を持続的に維持し、当社グループがそれらに与えるネガティブインパクトを最小限にし、ポジティブインパクトを最大化するように管理することが重要であると考えています。
(*1)冷蔵倉庫事業における物流施設のオペレーションをはじめとした人的資本
(*2)食品販売事業における水産資源等の自然資本
具体的には、冷蔵倉庫事業では、伝統と革新を融合したスマートコールドサービス、食品販売事業では、生産者に寄り添い世界の食卓の豊かさを提供します。こうした考えの下、当社グループは、5つのマテリアリティを当社グループの企業価値に影響を与えるリスクと機会の観点から特定し、サステナビリティに関する以下の取組を進めています。
(1)ガバナンス
当社グループでは、持続的な成長と企業価値向上の実現に向けて、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するために下記のガバナンス体制を構築しております。
当社グループのサステナビリティに関するリスクと機会は、取締役会が監督しています。具体的には、取締役会は、サステナビリティに関するリスクと機会のうち、重要事項についてサステナビリティ委員会より定期的に(原則年 2 回)報告を受け、監督しています。取締役会は、戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等の見直し・指示にあたり、サステナビリティ委員会から報告のあったサステナビリティに関するリスクと機会を考慮しています。
サステナビリティ委員会は、サステナビリティ全般に対する取組の方向性や課題抽出を行う取締役会に対する審議機関として、サステナビリティに関するリスクと機会への対応に関する方針・戦略の案を審議するとともに5つのマテリアリティに関する目標の達成状況及び進捗状況等を取締役会へ報告しています。また、当社グループでは、代表取締役社長がサステナビリティ関連のリスクと機会に関する経営レベルでの責任者であり、取締役会にて審議された自社の戦略・事業計画について各部門へ指示を下すことによってサステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンス体制を構築しています。
サステナビリティに関するガバナンス体制
(2)リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、管理するために下記のリスク管理体制を構築しております。
①サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別
サステナビリティ委員会(SDGs推進グループ*)では、「社会からの要請の重要度」と「自社の事業にとっての重要度」の視点に基づき、各事業部門及びグループ会社に係るサステナビリティ関連のリスク及び機会を識別しています。具体的には、アンケートやワークショップを実施し、18の重要項目に絞った上で、5つのカテゴリーに纏めています。その上で、当社グループのリスク管理規程及び時間軸(短期・中期・長期)を考慮し、重要度の優先順位付け及び評価を行っています。
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する事項は、サステナビリティ委員会が所管し、各事業部門及びグループ会社と協働でサステナビリティ関連のリスク及び機会の状況を把握します。サステナビリティ関連のリスクは、サステナビリティ委員会にて審議され、その審議結果がサステナビリティ委員会から取締役会へ報告され、取締役会での審議・承認を以て、最終的に当社のサステナビリティ関連のリスクとして特定されます。サステナビリティ関連の機会は、サステナビリティ委員会にて審議され、経営会議及び中期経営計画審議会の意見を考慮した上で、最終的には代表取締役社長から取締役会へ報告され、取締役会での審議・承認を以て、最終的に当社グループの機会として特定されます。
*SDGs推進グループとは、当社グループのマテリアリティを検討するために組成された組織であり、その機能は現在はサステナビリティ委員会に移行されています。
②サステナビリティ関連のリスクの評価
当社グループのリスクの評価方法としては、社内要因で発生するリスクと社外要因で発生するリスクに分類し、さらに重要度(影響、頻度)に応じて「重点管理リスク」と「通常管理リスク」に区分してリスクの性質を評価します。リスク管理委員会において、発生頻度が高く、かつ発生すると当社の経営目標や営業戦略を実行する上で大きな影響が出るリスクを「重点管理リスク」として特定しています。
すでに5つのマテリアリティが重要であることの評価は完了しており、今年度は、マテリアリティの内「地球環境との共生」におけるリスク及び機会について審議を行いました。その他のマテリアリティに関する審議は次年度以降に実施する予定です。
③サステナビリティ関連のリスクの管理
サステナビリティ委員会がサステナビリティに関する事項を所管し、各事業部門及びグループ会社と協働でサステナビリティ関連のリスクの状況を把握します。サステナビリティ委員会からリスク管理委員会へサステナビリティ関連のリスクが報告されます。その後、サステナビリティ関連のリスクに関しては、他のリスクと同様に、リスク管理委員会で審議・評価されます。
リスク管理委員会は、定期的(年2回以上)に開催され、各事業部門及びグループ会社から報告のあった当社グループのリスクを評価し、当社グループ全体のリスクの把握と適切な対応を審議し、取締役会に報告しています。最終的には、取締役会にてサステナビリティ関連のリスクを含む、当社グループ全体のリスクに関するリスクマネジメント方針が決定され、当社グループのリスク管理規程に基づき管理されます。
サステナビリティ関連のリスク管理に関する体制
《気候変動への取組》
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識しています。気候変動の取組を積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上に繋がるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取組を通して、当社はSDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。当社は気候関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言に即した情報開示を行っていきます。
(1)ガバナンス
気候変動対応に関する当社のガバナンスは、《当社グループのサステナビリティに関する考え方》に記載のとおりです。
(2)戦略
当社は、当社主要事業(冷蔵倉庫事業と食品販売事業)に対する気候関連のリスクと機会を特定し、選択したシナリオにおける事業への影響を検討しました。
TCFDの枠組みに沿って、移行リスク・物理的リスク及び機会という観点から検討し、下記の通りそれぞれ特定しました。リスクと機会を特定した後に、政府の脱炭素政策の進展と平均気温・海水温の上昇という2つの軸から複数のシナリオを想定し、対応策を策定しました。
(3)リスク管理
気候変動対応に関する当社のリスク管理は、《当社グループのサステナビリティに関する考え方》に記載のとおりです。
(4)指標と目標
①指標
サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する当社の実績を長期的に評価、管理し、監視するために用いられる指標は以下の通りです。
―GHG 排出量(スコープ1・スコープ2・スコープ3)
―再生可能エネルギーの割合(※当社のスコープ1・2が対象)
―規制リスク:炭素価格・フロンガス規制
―機会 :低炭素経済への移行を支援する製品またはサービスからの収益の増加率
②目標と目標に対する指標
当社は、気候関連のリスクを軽減し、気候変動への適応するため、また気候関連の機会を最大化するため以下の目標を設定しました。
|
目標 |
指標 |
|
|
目標1 |
2030年、GHG排出量削減40%(2015年比) |
冷蔵倉庫事業部門の収容能力あたりのGHG排出量 |
|
目標2 |
2030年、自然冷媒導入率85%(2023年現在69%) |
冷蔵倉庫事業部門の自然冷媒導入倉庫 収容能力 |
|
目標3 |
2030年、太陽光発電設備発電能力20メガワット(2023年現在約10メガワット) |
冷蔵倉庫事業部門の太陽光発電設備 発電能力 |
目標1~3いずれも、環境負荷割合の高い冷蔵倉庫事業(冷蔵倉庫事業におけるGHG排出量は当社全体のGHG排出量の99%を占める)をベースに目標値を設定しています。
③GHG排出量
当社のGHG排出量は以下の通りです。 (単位:t-CO2)
|
対象スコープ |
73期(2020年度) |
74期(2021年度) |
75期(2022年度) |
|
スコープ1 |
510 |
479 |
533 |
|
スコープ2 |
57,834 |
58,696 |
57,104 |
|
スコープ3 |
- |
- |
485,881 |
※排出量は、海外子会社のデータが不十分であったため、当社(横浜冷凍)のみを対象としています。
《人的資本に対する考え方》
(1)人的資本に関する方針
①人材の育成に関する方針
当社グループは、重要な経営資源である従業員の成長が当社発展の原動力であり、食の安定供給と持続可能なサプライチェーンの構築を目指す上で、従業員の能力が向上し、その能力を発揮できることが不可欠なものと考えます。そのために、一人ひとりの職務に応じたキャリアアップにつながる能力開発を推進し、その能力を発揮できる環境を整備します。加えて、コンプライアンス、品質・安全等を始めとする実務に則した研修の実施や、従業員の自己啓発を促すため、外部機関と提携し、幅広い教育プログラムが利用できる環境を整備し、人材育成に努めます。
②人材の多様性の確保に関する方針
当社グループは、イノベーティブな事業を展開し、企業としての活力を生み出すためには、多様な社員一人ひとりが、個性と能力を十全に発揮できる環境を作ることが必須であると考えています。そのために、年齢・性別・性的指向・障がい・人種・国籍・その他の属性に関係なく、多様な人材を尊重し、広く人材を求め、個人が自身の特性を活かして活躍できる多様性の確保に努めます。
③社内環境整備に関する方針
(a)ワーク・ライフ・バランスに関する考え方
当社グループは、従業員等と その家族の豊かさを実現できるよう、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の確保に向けた働き方を支援し、皆が安心して働ける、やりがいを持てる職場づくりに努めます。
(b)労働安全衛生方針
当社グループは、「ひと、もの、地球にやさしい食品流通のエキスパート」として、従業員の安全確
保と健康の推進を最優先事項と考え、以下の行動指針に基づき、事業活動を行ってまいります。
[行動指針]
1.従業員およびヨコレイグループに関わる全ての人々の安全確保を最優先に考え、
快適な職場環境を形成します
2.従業員の健康管理を充実し、心と体の健康の保持増進に努めます
3.安全の基本とルールを守り、労働災害の撲滅に努めます
4.安全教育や研修を通じて、従業員の安全衛生意識の向上に努めます
(c)健康経営
ヨコレイは社員が最も重要な財産であると考え、生き生きと働ける職場環境を整備するとともに、社員と
その家族を含めた心身の健康づくりをサポートします。 社員が安全に、安心して働けるよう、以下の項目
に取り組むことを宣言します。
(健康経営推進 基本方針)
・健康診断受診率の100%を達成し、診断結果に基づくフォローアップの実施に取り組みます。
・ストレスチェックの受検率向上と高ストレス者のフォローアップに取り組みます。
・病気と治療、仕事の両立支援へ取り組みます。
・運動機会の増進に向けて取り組みます。
以上のように社員の心と体の健康づくりに取り組むことで、社員の働き甲斐や充実した職場環境を創出し、労働生産性を高めて企業価値向上を目指します。
(2)人的資本に関する指標及び目標
①人材の育成に関する指標・目標・実績
当社グループの持続的成長に繋がる、事業戦略を遂行するために必要な知識・技能の習得の場を提供していきます。職場において不可欠となる安全、品質をベースとしたプロフェッショナルな知識・技術の習得においてOJTが人材育成の基本と位置づけ社内に明示すると共に高度・専門スキル獲得の為の研修、学びを自律的に展開するためのプログラムを構築し、人材の育成を促進いたします。
②人材の多様性の確保に関する指標・目標・実績
当社グループは、人材の多様性の確保のため、女性管理職人数の増加を目標としております。
また、外国人や障がい者の雇用のための環境づくりを推進するとともに、必要な教育訓練を実施して参ります。
・管理職に占める女性労働者の割合 : 2026年9月末までに2020年比で2倍以上
③社内環境整備に関する指標・目標・実績
(a)ワーク・ライフ・バランス
・男性労働者の育児休業取得率 : 2026年9月末までに50%達成
・エンゲージメント : 働きがいを実感している従業員の割合80%以上
(b)労働安全衛生
・冷蔵倉庫事業に共通する安全衛生目標 : 労災事故件数前期比50%減
(c)健康経営
・健康診断受診率 : 2026年9月末までに100%
なお、管理職に占める女性労働者の割合及び男性労働者の育児休業取得率の実績については、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)気候変動(地球温暖化)のリスクについて
温暖化をはじめとする気候変動により、冷蔵倉庫事業では、気温上昇による庫内を冷却するための動力費(電気料金)の増加や、温暖化規制に伴う電気料金の値上げが業績に影響を及ぼす可能性があります。食品販売事業では、自然環境の変化やウイルス・病害虫の発生などによる、漁獲量、生産量の減少や飼料コスト上昇に伴う養殖水産物、畜産物の調達コスト上昇により商品の調達及び供給に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題であると認識し、2020年10月に策定した「ヨコレイサステナビリティビジョン2030」において「明るい食の未来へ ~ヨコレイは食の安定供給により、持続可能な社会に貢献します~」を掲げ、地球環境に配慮した事業の推進に注力しています。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言へ賛同を行い、気候変動による影響をリスクと機会から評価し、会社の持続的な成長実現の鍵となるテーマ「マテリアリティ」の1つに「地球環境との共生」を位置づけ、将来の事業成長に向けて活動を一層拡大しています。現在の具体的な取り組みとしては、冷蔵倉庫事業では、エネルギー消費量の削減と再生可能エネルギーの使用量や自然冷媒冷凍機へのさらなる移行促進を図ることで、2030年までに温室効果ガス排出量を40%削減(2015年比)し、自然冷媒導入率をさらに85%以上とする定量目標を策定しました。
(2)自然災害のリスクについて
台風、豪雨、洪水、地震などの大規模自然災害により、冷蔵倉庫事業では、施設・設備等への被害と修繕コストの増加や、物流機能の停止により業績に影響を及ぼす可能性があります。食品販売事業では、水産物の漁獲量・養殖生産量、農畜産物の収穫の減少により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、社員の安全確保と業務の継続のために、災害BCPを策定し、危機管理体制を整えています。また、災害に強い冷蔵倉庫の建設など、対策を講じています。
(3)経済状況及び事業環境に関するリスクについて
経済状況及び事業環境に変化が発生することで、食品販売事業では、商品調達価格の高騰や消費の低迷により、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、業界の再編等が業績に影響を及ぼす可能性があります。冷蔵倉庫事業では、荷主の在庫管理の強化による保管量減少が、業績に影響を及ぼす可能性があります。一方で、冷凍食品の需要増加等による保管需要が増加し、保管場所の供給が不足する可能性があります。
(4)商品の価格変動に関するリスクについて
当社グループは海外の人口爆発や食生活の変化に伴う資源の争奪戦等によって調達・販売価格が大きく変動した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、商品の調達先・生産拠点の新規開拓や養殖事業の強化を行って調達先を分散化するだけでなく、在庫の適正化を行いリスクの分散を図っています。
(5)固定資産に関するリスクについて
事業環境の変化や自然災害等の発生により、収益の低下や固定資産の減損・処分が生じた場合、当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。
(6)IT(システム)に関するリスクについて
当社グループの冷蔵倉庫事業及び食品販売事業は、全国オンラインシステムを通じて業務を実施しています。災害による機器障害や、不正アクセス・コンピュータウイルスによる攻撃等による業務システムの停止やネットワークの寸断・情報の流出により、お取引先へのサービスの提供や業務運営が困難となり、当社グループの経営に重要な影響を与える可能性があります。そのため当社グループでは管理本部傘下のシステム管理部が、定期的なサーバーのリニューアルや適切なセキュリティ対策等の実施を行っています。
(7)海外展開に関するリスクについて
当社グループは海外戦略について、集中リスクを回避するために調達・販売ルートを拡張し、コスト競争力の
観点から委託加工の拡大を図り、需給ギャップに留意した取引を目指して積極的な展開を行っています。また、海外取引相手との関係強化や資源の安定的な調達のため、顧客企業や協力会社等に対し、貸付金を含めた投融資を行っています。投融資実行後は、販売推進事業部を通じて経営計画、予実分析、決算等の重要な報告事項は当社取締役会で定期的に報告を受けております。また、保有投資有価証券に関しては、定期的に取締役会等でモニタリングおよび投資有価証券の保有可否の検討を実施しております。しかし、事業を行う各国においてテロの発生及びその国の政情の悪化、経済状況の変動、予期せぬ法律・規制の変更又は日本との法律・規制の違いによるトラブル等があった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8)為替変動に関するリスクについて
当社グループにおいて商品や原材料の輸出入取引は主要事業の一部であり、外貨建取引については為替変動リスクにさらされることになります。これらのリスクを軽減するために、為替予約取引を利用していますが、当該取引ではカバーできないほどの急激な為替変動があった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9)人材の確保・育成に関するリスクについて
当社グループの冷蔵倉庫事業では、社員が庫内作業を行う「社員オペレーション」が大きな特徴であり、強みでもあります。そのため優秀な人材の確保・育成が重要となりますが、国内の少子高齢化と人口減少による人材採用・確保の競争激化により、人材の確保・育成ができなければ冷蔵倉庫事業継続が困難となり業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため人材の確保・育成については通年で計画的に行いながら、長期的な冷蔵倉庫建設計画の策定や社内教育制度の強化を行っています。また、女性を含め、多様な人材が働きやすい職場づくりの推進や省人化・自動化システムの積極的な導入等により、リスクへの対策を進めています。
(10)商品の品質・安全性に関するリスクについて
当社グループは、製品の品質クレーム・トラブルによって、顧客からの信頼が低下した場合、事業に大きな影響を及ぼす可能性があります。一方で顧客満足度が向上した場合、当社のブランドへの信頼を獲得することができます。
当社グループは品質基本方針を設け、経営者およびすべての社員が方針に基づいて行動しています。また、食品品質管理室による管理や、品質管理教育体制の強化を行い、安全で高品質な商品・サービスを継続して提供できるよう心掛けています。
業績等の概要
(1) 業績
当連結会計年度(2022年10月1日~2023年9月30日)におけるわが国の経済は、内需及びインバウンド需要のゆるやかな回復等、社会経済活動の正常化への動きが見られました。一方で、国際情勢不安、円安の進行、物価の上昇等が続いており、景気の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループが関わる食品関連業界においては、エネルギー価格や物流コストの高騰、相次ぐ値上げによる消費者の節約志向の高まり等、厳しい経営環境が続いております。
このような状況のなか、当社グループは最終年度となりました中期経営計画(第Ⅰ期:2020年10月~2023年9月)「創る力」に基づき、冷蔵倉庫事業は「事業モデルの創造」、食品販売事業は「新たな食の価値の創出」を方針とし、各重点施策に取り組んでまいりました。
その結果、当社グループの当連結会計年度の連結経営成績は、売上高133,862百万円(前期比16.1%増)、営業利益3,785百万円(前期比11.0%減)、経常利益4,203百万円(前期比15.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,831百万円(前期比14.6%減)となりました。
セグメントごとの業績は次のとおりです。
①冷蔵倉庫事業
当連結会計年度は増収増益となりました。
前期より続いている高い在庫水準で保管料収入は大きく伸びました。なかでも、中期経営計画の重点施策である環境配慮型経営を支援する「複合型マルチ物流サービス」において、引き続き冷凍食品の取扱量が増加しました。また、電気料金高騰に起因するコスト増加に対しても、既存設備の入れ替え等による省エネ化や料金改定交渉が進み、増収増益に寄与しました。
タイの連結子会社THAI YOKOREI CO.,LTD.においては、荷動きが速く、入庫量、出庫量、ともに前期を上回り、荷役料収入は増加したものの、主要品目である畜産品等の在庫率が低下したため、保管料収入が減少し減収減益となりました。
以上の結果、冷蔵倉庫事業の業績は、売上高は31,827百万円(前期比5.9%増)、営業利益は6,689百万円(前期比3.8%増)となりました。
②食品販売事業
当連結会計年度は増収減益となりました。
水産品は、事業品のペルーイカ、ノルウェーサーモン、前浜の餌料用イワシやサバ、気仙沼でのビンチョウマグロ豊漁による取扱いが増加し、第3四半期連結会計期間で利益を挽回しましたが、7月以降はALPS処理水放出の影響で、輸出用ホタテの取扱量が減少しました。また、北海道商材が値崩れし利益を圧縮しました。代わりに三国間貿易が伸長するも、これらのマイナス要因をカバーするまでには至らず、通期では水産品全体で増収減益となりました。
畜産品は、ポークがインバウンドや外食向け需要回復により、増収増益となりました。一方、チキンは量販店への販売が伸びて増収となったものの、需給バランスの崩れから利益率が低下し、畜産品全体では増収減益となりました。
農産品は異常気象による不作ながらも、イモ類、キャベツを筆頭に販路を広げてセグメントを牽引し、増収増益となりました。
以上の結果、食品販売事業の業績は、売上高101,976百万円(前期比19.8%増)、営業利益1,158百万円(前期比12.5%減)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
|
主要項目 |
前連結会計年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
増減額 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
5,982 |
△1,309 |
△7,291 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△2,910 |
△13,798 |
△10,888 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△3,839 |
16,611 |
20,451 |
|
現金及び現金同等物の増減額(百万円) |
△747 |
1,514 |
2,261 |
|
現金及び現金同等物の期末残高(百万円) |
2,413 |
3,927 |
1,514 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,514百万円増加の3,927百万円となりました。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な内容は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,309百万円の資金の減少(前年同期は、5,982百万円の資金の増加)となり、その主な内容は税金等調整前当期純利益4,464百万円、減価償却費6,581百万円等の資金の増加と、売上債権の増加額6,051百万円、棚卸資産の増加額2,247百万円、前渡金の増加額1,988百万円、法人税等の支払額1,724百万円等の資金の減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、13,798百万円の資金の減少(前年同期は、2,910百万円の資金の減少)となり、その主な内容は貸付金の回収による収入4,542百万円等の資金の増加と、有形固定資産の取得による支出14,427百万円、投資有価証券の取得による支出2,611百万円等の資金の減少によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、16,611百万円の資金の増加(前年同期は、3,839百万円の資金の減少)となり、その主な内容は金融機関からの借入の純増額18,268百万円の資金の増加と、配当金の支払額1,358百万円等の資金の減少によるものです。
生産、受注及び販売の実績
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
前年同期比(%) |
|
冷蔵倉庫事業(百万円) 保 管 ・ 荷 役 他
|
25,093 |
106.5 |
|
食品販売事業(百万円) 水 産 品 畜 産 品 農 産 品 ・ 他 小 計 |
73,227 14,074 1,518 88,820 |
123.7 102.6 121.9 119.7 |
|
そ の 他(百万円) |
24 |
384.8 |
|
合 計(百万円) |
113,939 |
116.6 |
(注)1.冷蔵倉庫事業生産実績は冷凍事業原価、食品販売事業生産実績は商品仕入高及び商品加工費用の合計額を示
しております。
2. セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 受注実績
当社は受注生産を行っておりません。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
前年同期比(%) |
|
冷蔵倉庫事業(百万円) 保 管 荷 役 運 送 取 扱 ・ 他 小 計
|
16,209 6,513 9,103 31,827 |
109.1 100.1 104.9 105.9 |
|
食品販売事業(百万円) 水 産 品 畜 産 品 農 産 品 ・ 他 小 計 |
83,961 16,107 1,907 101,976 |
123.0 104.2 132.2 119.8 |
|
そ の 他(百万円) |
58 |
107.9 |
|
合 計(百万円) |
133,862 |
116.1 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(2) 財政状態の分析
①総資産
総資産は、前連結会計年度末に比べ18,674百万円増加し、197,695百万円となりました。これは主に、有形固定資産が6,331百万円、受取手形及び売掛金が6,069百万円、投資有価証券が2,907百万円、商品が2,274百万円増加したこと、貸付金が4,021百万円減少したこと等によるものです。
②負債総額
負債総額は、前連結会計年度末に比べ16,509百万円増加し、110,360百万円となりました。これは主に、借入金が18,354百万円増加したこと等によるものです。
③純資産
純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,164百万円増加し、87,334百万円となりました。
(3) キャッシュ・フローについての分析
キャッシュ・フローの分析については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(2)キャッシュ・フロー」の項目をご参照ください。
(4) 経営成績の分析
経営成績の分析及びセグメント別の分析については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1)業績」の項目をご参照ください。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3.事業等のリスク」の項目をご参照ください。
(6) 資本の財源及び資金の流動性
①資金需要
当社グループの事業活動における運転資金需要は、主として商品仕入の他、販売費及び一般管理費等にかかるものです。
また、設備資金需要は、主として冷蔵倉庫の建設及び改修等にかかるものです。
投資資金需要は、主として海外事業への投資にかかるものです。
②財務政策
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は3,927百万円となっております。
運転資金につきましては、主として営業収入及び短期借入でまかなうこととしておりますが、流動性及び機動性の補完を図るため、主要取引銀行との間で総額12,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。
設備資金・投資資金は、主として内部資金及び長期借入金、社債等により調達しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。