第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針、経営環境

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 当社グループは、先進・独自の技術をもって、最高品質の商品やサービスを提供することにより、「事業を通じた社会課題の解決」に取り組み、持続的な社会に貢献する企業であり続けることを目指しています。

 2017年8月に長期CSR計画「サステナブル バリュー プラン(Sustainable Value Plan)2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定し、2021年4月15日に発表した中期経営計画「VISION2023」を「SVP2030」の目標を実現するための具体的なアクションプランとして位置づけ、事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んでいます。

 「VISION2023」では、「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化等により、成長投資原資の確保と、重点・新規/将来性事業への経営資源の集中投下の循環の加速・強化を図ることで、事業を通じて「環境」「健康」「生活」「働き方」の課題に取り組み、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤の構築」を進めていきます。

 中期経営計画初年度の2021年度は、「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」いずれも過去最高を記録し、「VISION2023」で掲げた2023年度売上高2兆7,000億円、営業利益2,600億円達成に向けて順調なスタートを切ることができました。

 2022年度は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」と記載します。)のワクチン普及等もあり、各国で「コロナ」との共生に取り組む試みが進むことが予想されます。一方で、世界経済は半導体不足や国際物流の混乱に加え、ロシア・ウクライナ情勢による原油・天然ガス等のエネルギーや、アルミを始めとした素材価格の高騰とサプライチェーンの混乱等で、世界的なスタグフレーション(景気後退局面におけるインフレーション)が懸念されています。このような状況下で、当社グループは全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする強靭な事業基盤の構築」を実現することで、事業ポートフォリオをより強固なものとし、この難局を乗り越えていきます。

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。

 

 

 

 

 

 

(単位:億円)

 

2021年度

2022年度

(次期の見通し)

対前年度

 

 

2023年度

(中期経営計画)

売上高

25,258

26,500

1,242

 

27,000

営業利益

2,297

2,450

153

 

2,600

当社株主帰属当期純利益

2,112

1,920

△192

 

2,000

ROE

9.0%

7.6%

1.4ポイント減

 

8.4%

ROIC

5.6%

5.7%

0.1ポイント増

 

6.1%

 

(2)対処すべき課題

「ヘルスケア部門の成長戦略」

 ヘルスケア部門では、メディカルシステム事業が売上成長を牽引し、増収・増益を確保します。ライフサイエンス分野では、中長期的に高い成長が見込めるバイオCDMO事業とライフサイエンス事業を重点事業化するとともに、最先端の治療薬創出を支援する企業としてワンストップで価値を提供し、事業拡大を目指します。また、COVID-19の拡大抑止に貢献していくために、回診用デジタルX線撮影装置や超音波診断装置等の各種医療機器の提供や、各製薬会社のワクチン等のプロセス開発・製造受託を引き続き進めていきます。

 メディカルシステム事業では、富士フイルムヘルスケア㈱とのグループ内再編、クロスセル等の各種シナジー効果の発出を進めていきます。2022年4月には、富士フイルムヘルスケア㈱との初のシナジー製品となる3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT Core(CT/MRI用)」を今夏に発売することを発表しました。また、当社は医療IT領域で「REiLI(レイリ)」ブランドのもと、医療現場のワークフローを支援するAI技術の開発と実用化を進めています。2022年6月には、3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」のアプリケーションをクラウドで利用できるサービス「SYNAPSE VINCENT Cloud」を発売しました。さらに、国立がん研究センターと共同で開発したAI技術開発の研究基盤システムを用いて、プログラミング等の専門知識がなくても医師や研究者が自身で画像診断支援AI技術を開発できるクラウドサービス「SYNAPSE Creative Space」を2022年度中に開始予定です。これら最新のAI技術を搭載したITシステムとCT、MRI、X線診断装置、マンモグラフィー、超音波、内視鏡といった幅広いモダリティーを組み合わせた「AI・ITソリューションビジネス」のさらなる事業拡大を図っていきます。

 バイオCDMO事業では、バイオ医薬品市場で大きなシェアを占める米国・欧州の既存拠点で、抗体医薬品やホルモン製剤、遺伝子治療薬、ワクチン等様々なバイオ医薬品の生産プロセス開発から製剤化・包装までを、少量から大量生産まで一貫して受託できる「ワンサイト・ワンストップ」体制の整備を進め、成長するバイオ医薬品市場を上回る成長率で事業を拡大していきます。2022年4月には、米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics, Inc.の細胞治療薬製造拠点を買収し、バイオCDMO事業の中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologiesのカリフォルニア拠点として始動させました。これにより、遺伝子改変細胞治療薬をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスも本格展開していきます。

 ライフサイエンス事業では、創薬支援材料分野において、FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc.、FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.、富士フイルム和光純薬㈱、さらに2022年3月に買収したShenandoah Biotechnology, Inc.等のグループ会社が連携し、創薬支援用ヒトiPSを始めとする細胞・培地・試薬をセットでグローバルに供給・販売することで、顧客に対してソリューションをワンストップで提供していきます。また、iPS細胞技術・ノウハウを生かした細胞治療薬分野においては、提携パートナーと治療製品の開発を加速させるとともに、開発・製造受託ビジネスを推進していきます。

 また、2022年2月より、ライフサイエンス領域のコーポレートベンチャーキャピタル(LS-CVC)を始動させました。最先端技術等を有する世界のバイオベンチャーを対象に、2026年までの5年間で70億円の出資枠を設けています。事業横断的な全体戦略を立案・推進する「ライフサイエンス戦略本部」が中心となり、アカデミアや企業との協業等を主導するビジネス戦略拠点「FUJIFILM Life Science Strategic Business Office」(米国)及び「FUJIFILM Life Science Strategic Business Office Europe」(欧州)と協働して、最先端の技術・ノウハウや革新的なビジネスモデルを有するバイオベンチャーにアプローチ、既存事業のさらなる強化や新規事業の創出を図っていきます。

 医薬品事業では、ナノ分散技術や解析技術、プロセス技術等の当社独自技術に加え、脂質ナノ粒子製剤の製造設備を活用し、次世代医薬品の核酸医薬品やmRNAワクチンのプロセス開発・製造受託ビネスを展開していきます。

 

「マテリアルズ部門の成長戦略」

 マテリアルズ部門では、高機能材料の中長期視点での新規事業開発に加え、同領域の顧客アプリケーション軸での事業ポートフォリオの構築・戦略マネジメントを組織横断的に行い、事業拡大を図っていくために「高機能材料戦略本部」を2021年10月に新設しました。

 電子材料事業では、AI、IoT、5Gの普及やDXの加速等により半導体需要は拡大し、さらに半導体の高性能化に必要とされる処理能力アップ・微細化・高集積化が進むとみられています。当社はこうした市場ニーズに応えるために、高性能化を支える材料開発や安定供給を目的とした設備投資をタイムリーかつ継続的に実施していきます。また、先端領域向けレジストを始め、多様なプロセス材料の新製品開発を進めラインアップを拡充し、顧客に一気通貫で提供することで、事業成長を加速させます。

 ディスプレイ材料事業では、液晶パネル向けのタック製品における強いマーケットポジションの維持に加え、薄膜・積層塗布技術を活用した差別化製品の開発と導入を進め、有機EL向け材料の高シェア維持や車載ディスプレイ向け等新規用途材料のビジネス拡大を推進していきます。

 産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」等、当社独自技術を活用した高機能製品の拡販を継続するとともに、光センサー、通信関連材料等積極的に新規ビジネスへの展開を行い、事業を拡大します。

 ファインケミカル事業では、特に成長性の高いライフサイエンス、エレクトロニクス、環境・エネルギーの3分野において、当社が有する「フロー合成」等の革新的製造プロセス技術により高品質な製品を生み出し、事業を拡大していきます。

 グラフィックコミュニケーション事業では、当社グループ内でのシナジー創出を加速し、顧客に対してさらなる価値をグローバルに提供していくため、2021年7月に、富士フイルム㈱の「グラフィックシステム事業部」と富士フイルムビジネスイノベーション㈱の「グラフィックコミュニケーションサービス事業本部」を統合して「グラフィックコミュニケーション事業部」を発足しました。2022年度は、商業印刷・パッケージ印刷を中心に富士フイルム㈱が有するグローバルな顧客基盤と、富士フイルムビジネスイノベーション㈱の販売力、技術・製品力を組合せ、デジタル印刷機(Print On Demand)の全世界での拡販、ブランドオーナー・印刷業向け各種DXソリューションの提供を加速していきます。

 

「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」

 ビジネスイノベーション部門では、富士フイルムビジネスイノベーション㈱による、「FUJIFILM」ブランド新製品の拡充とグローバルでの拡販を進めていきます。加えて、DXソリューション・サービス拡販、複合機管理や基幹業務プロセスの役務代行サービス(BPOビジネス)でのDX戦略展開等によって、継続的な成長と事業ポートフォリオの変革を加速します。具体的には、オフィスでの顧客基盤を活かした在宅勤務需要の取り込みと文書管理に役立つソリューション・サービスの提供、中小企業向けのIT/セキュリティサービス強化を軸とした提供価値の拡大、富士フイルムRIPCORD合同会社による紙文書の電子化・処理を基盤としたデジタル業務プロセスサービスの拡大、及び富士フイルムデジタルソリューションズ㈱によるMicrosoft Dynamics 365を主力とした基幹システムの販売・導入支援等を通じて、顧客企業のDXに貢献していきます。

 

「イメージング部門の成長戦略」

 イメージング部門では、魅力的なインスタントフォトシステムやミラーレスデジタルカメラの新製品の発売、写真プリントの価値を伝えていくキャンペーン「プリントデイズ」による写真プリント需要の活性化、富士フイルムビジネスイノベーション㈱製プリンター機の展開拡大、プロジェクター・監視カメラといったB to B新規分野への展開等イメージングビジネスの拡大を進めます。また、デジタルカメラとプリントの連動商品や映像・写真コンテンツビジネス、撮像/画像処理ソリューションビジネス等の新しい商材も展開していきます。

 

「SVP2030の下での重点分野と取組み」

 当社は、「SVP2030」の下、「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」と「事業を通じた社会課題の解決」の2つの側面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における各分野で設定した目標達成に向けた取組みを進めています。「環境」においては、国際社会共通の重要課題である気候変動への対応として、CO2排出削減に積極的に取り組んでいます。2021年12月には、新たなCO2排出削減目標を設定しました。新たな目標では、2040 年度までに自社が使用するエネルギー起因のCO2排出を実質的にゼロとすることを目指します。また、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの自社製品のライフサイクル全体において、2030 年度までにCO2排出量を50%削減(2019年度比)します。本目標は、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合したものであり、この達成に向け、当社は新たな環境戦略“Green Value Climate Strategy”を策定しました。この戦略の骨子は、環境負荷の少ない生産活動“Green Value Manufacturing”と、優れた環境性能を持つ製品・サービス“Green Value Products”の創出・普及です。この戦略に基づき、2022年3月29日には、富士フイルム㈱は、東京ガス㈱、神奈川県南足柄市と「脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定」を締結しました。これによりものづくりにおけるカーボンニュートラルモデルの確立を目指します。

 「健康」においては、2021年度に約70ヶ国まで拡大した医療AI技術を活用した製品・サービスの導入国を、2030年度には世界196の全ての国と地域に導入することを目標にしています。さらに、アンメットメディカルニーズへの対応や医療アクセス向上に資するバイオCDMO事業に係る資金調達手段として、2022年4月に国内社債市場では最大規模となる1,200億円のソーシャルボンド(社会貢献債)を発行しました。これにより高品質なバイオ医薬品の安定供給を通じて顧客である製薬企業をサポートし、アンメットメディカルニーズへの対応や医療アクセス向上等の社会課題の解決に貢献していきます。また、従業員の健康維持増進を、企業理念・目指す姿(ビジョン)を実践するための基盤となる経営課題ととらえて、健康経営を力強く推進しています。当社は、その取組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2年連続で選ばれました。今後もヘルスケア事業を通じた社会課題の解決に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

※2022年3月時点。当社調べ。

 「働き方」においては、ビジネスに革新をもたらすソリューション・サービスの提供により、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を5,000万人に提供します。

 「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでいます。当社は誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。

 

「2022年度グループ基本方針」

 当社グループの2022年度の経営方針は「“All-Fujifilm”でたゆまぬ挑戦を! 社会課題を解決するイノベーティブな「モノ」と「コト」を提供し、「稼げる力」を磨こう」です。新規市場創出・拡大に向け、マーケットニーズを的確に捉えることで新たな価値を持つ製品・サービスの開発・提供を推進します。社会課題の解決を事業成長の機会と捉え、持続可能な社会の発展に貢献するために、NEVER STOPの精神の下、当社傘下の全ての会社・組織・従業員の力を結集した“All-Fujifilm”で挑戦していきます。

2 【事業等のリスク】

 当社グループは、グループ全体のリスクマネジメントの基本方針及びリスクマネジメント体制を「リスクマネジメント規程」において定め、その基本方針及び体制に基づき、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行っております。また、当社及びその子会社は、個別の業務遂行において発生するリスク案件についてリスクマネジメント規程に基づいて適切に判断・対処するとともに、重要なリスク案件については、定められた手続きに従い、ESG委員会に報告され、リスク重点課題の設定及びリスク事案発生時の対応を議論し、リスク発生の回避及びリスク発生時の影響の極小化に努めております。さらに、当社グループとしての企業行動憲章・行動規範を定め、法令及び社会倫理に則った活動、行動の徹底を図っております。

 当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識している主なリスクには以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)経済情勢・為替変動による業績への影響に係るリスク

 当社グループは、世界の様々なマーケットにおいて製品及びサービスを提供しており、連結ベースでの海外売上高比率は当連結会計年度において約61%です。当社の連結財務諸表は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成していることから、世界各地の経済情勢、とりわけ為替レートの変動は業績に大きく影響を及ぼすリスクがあります。

 為替レートの変動が連結営業利益に与える影響は、米ドルに対して円が1円変動した場合は年間約3億円、ユーロに対して円が1円変動した場合は年間約8億円と試算しております。

 当社グループでは、為替変動による業績への影響を軽減するため、米ドル、ユーロにおいて先物予約を中心としたヘッジを行う等で対策を行っておりますが、為替の変動の程度によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)ヘルスケア領域における環境変化・競合に係るリスク

 ヘルスケア領域においては、高齢化の進展や医療従事者の不足等による、診療支援や業務効率化に貢献するソリューションニーズや、がんや希少疾患、遺伝子治療等を中心としたアンメットメディカルニーズが高まっており、事業機会が拡大している一方で、医療制度改革による予測できない大規模な医療行政の方針変更や医療機器における法規制の強化、技術革新によるバイオ医薬品のプロセス開発・製造受託市場の競争激化等を主なリスクと考えております。その環境変化に対応できない場合や、事業活動に必要な各国の許認可を適時に取得することができない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、高度な画像処理技術・AI技術、化合物合成・設計力やナノテクノロジー、一定条件製造技術や品質管理技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付された新たな製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)マテリアルズ領域における環境変化・競合に係るリスク

 マテリアルズ領域においては、有機EL市場の成長によるディスプレイ関連材料の需要拡大や、5Gや自動運転の普及等による半導体市場の拡大している一方で、ディスプレイ材料・半導体プロセス材料等の高機能材料市場での競合会社との競争激化による製品販売単価の下落や代替製品の出現等を主なリスクとして考えております。

 当社グループでは、機能性分子技術や高度な製膜・塗布技術、等の先進・独自の技術を保有しているという競争優位性を活かして、今後も技術に裏付された新たな製品・サービスの研究開発とこれをサポートするマーケティング活動を継続的に実施してまいりますが、その成否によっては売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4)ビジネスイノベーション領域における環境変化・競合に係るリスク

 ビジネスイノベーション領域においては、中国・東南アジア等の新興国市場におけるオフィス機器・サービス関連需要や、セキュリティ/ネットワーク等のITインフラ環境の構築・運用サービスの需要、DX・生産性向上を実現する業務ソリューション・サービス市場の拡大により事業機会が拡大している一方で、リモートワークの定着や業務プロセスのデジタル化の進展に伴うプリント需要の減少や、オフィス機器市場の競争激化等による市場環境の大きな変化がリスクと考えます。

 当社グループでは、日本及びアジア・オセアニア地域における強固な直販体制を強みに構築した優良な顧客基盤、お客様の複雑化・多様化する経営課題の解決を支援できる強力な営業力、オフィスの課題解決のためのソリューションを提供する製品ラインアップの充実と、それを支えるドキュメント分野の独自技術という競争優位性を活かしてまいりますが、こうした市場動向に対応した製品やサービスを提供できない場合、売上の減少等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(5)イメージング領域における環境変化・競合に係るリスク

 イメージング領域においては、スマートフォンの普及による画像ショット数の増加とプリントニーズの拡大やインスタントフォトシステムの需要拡大、IoT化や映像の4K、8K化によるレンズ需要の増加により事業機会が拡大している一方で、ハイエンドミラーレスデジタルカメラ市場の競争環境の激化、競合他社の技術向上による高性能産業用レンズ市場の競争環境の激化、スマートフォンのカメラ性能の向上等をリスクとして考えております。

 当社グループでは、入力(撮影)から出力(プリント)までのサービスを提供できる総合力や、高度な光学技術・精密加工・組み立て技術等を保有しているという競争優位性を活かして、ユーザーのニーズをとらえたイノベーティブな新たな製品・サービス等を提供してまいりますが、その成否によっては、製品販売単価の下落、代替製品の出現等による売上の減少、製品ライフサイクルの短縮化による研究開発コストの増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(6)生産活動に係るリスク

 当社グループでの生産に必要な原材料・部品等について、急激な価格高騰や、自然災害又は人災、サプライヤーの不測な事態による製造中止等がリスクと考えます。

 当社グループでは、急激な原材料価格高騰時には適切な売価への反映を検討するとともに、製品開発及び量産化検討時において、代替材料の探索や可能な限り複数調達先の検討を行うことでリスク分散化の対策を行っておりますが、想定を上回る市況の変化や不測の事態が発生した場合には、収益性の低下や販売機会の消失等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)製品品質・製造物責任に係るリスク

 当社グループは、厳しい品質管理基準に従い各種製品を生産しておりますが、将来にわたり製品に欠陥が発生する可能性がないとは言えず、重大な製品事故や製品に対する安全性や環境問題において懸念が発生するリスクがあります。

 当社グループでは、新製品開発にあたっては、品質の到達度だけでなく、法規制を遵守し、環境・安全に配慮した製品開発を行うとともに、製品安全情報のお客様への周知や製品安全に関する従業員への教育を徹底する等の対策を図り、万一、製品事故等が発生した場合の体制構築等を整えておりますが、実際にこうした事態が発生した場合には、その対応費用が発生するだけでなく、企業ブランドや製品ブランドが毀損され当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8)医薬品事業・再生医療事業に係るリスク

 当社グループにおける一部のグループ会社では、医薬品及び再生医療等製品の研究開発及び製造販売を行っております。新規の医薬品及び再生医療等製品の開発・薬効追加等には多額の研究開発投資を行う必要があり、承認・販売までには長期間を要するとともに、研究開発が計画通りに進行せず、開発の遅延や中止等のリスクがあります。また、販売後に予期せぬ重大な副作用その他の安全性に関する問題が発生する可能性もあります。

 当社グループでは、開発の不確実性のリスクに対しては、複数のパイプラインを保有することによりリスクの分散化を図っております。また、医薬品は開発段階において必要な安全性の試験を実施し、監督官庁の審査を経て承認されておりますが、万一、販売後に予期せぬ重大な副作用等が見つかった場合には、損害賠償の負担や社会的信頼の失墜等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(9)物流に係るリスク

 当社グループの事業活動において、原油価格の高騰等を原因とする運賃の高騰は、当社グループの物流コストの増加をもたらす可能性があります。また、地震・津波・洪水等の大規模災害の発生、ロシア・ウクライナ情勢緊迫化や国際的な政治・経済の状況等により、人的・物的被害や物流機能の麻痺、インフラ機能断絶等が生じ、当社グループの生産・販売活動に支障が生じるリスクがあります。

 当社グループでは、生産拠点を複数の地域に分散化する等の対策を図り、不測の事態により一部の地域で生産・販売活動が停止した場合でも影響を軽減できるような体制をとっておりますが、完全に影響をゼロにすることはできず、こうした事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(10)特許及びその他の知的財産権に係るリスク

 当社グループは、様々な特許、ノウハウ等の知的財産権を保有し、競争上の優位性を確保していますが、将来、特許の権利存続期間の満了や代替技術等の出現に伴って、優位性の確保が困難となることが起こり得ます。

 当社グループが関連する幅広い事業分野においては、多数の企業が高度かつ複雑な技術を保有しており、また、かかる技術は著しい勢いで進歩しています。事業を展開する上で、他社の保有する特許やノウハウ等の知的財産権の使用が必要となるケースがありますが、このような知的財産権の使用に関する交渉が成立しないことのリスクがあります。

 当社グループでは、他社の知的財産権の調査を行い、他社の権利を侵害することがないよう常に注意を払って事業展開をしておりますが、訴訟に巻き込まれるリスクを完全に回避することは難しいのが実情です。このような場合、係争費用や敗訴した場合の賠償金等の負担により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(11)企業買収・業務提携等に係るリスク

 当社グループは、持続的な成長のため、これまでに複数の企業買収を実施しており、今後も実施する可能性があります。また、業務提携、合弁事業、戦略的投資といった様々な形態で、他社との関係を構築しております。これらの活動は、当社グループの成長のための施策として重要なものであります。

 当社グループでは、企業買収にあたって慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ企業買収を実行するとともに、重要な投資案件に対しては業績が当初計画から大きく乖離していないかを確認し、必要に応じて業績改善のための対策を講じておりますが、景気動向の悪化や政情不安、法令や規則の変更、対象会社もしくはパートナーの業績不振、業務統合に想定以上の時間を要する等により、期待していた買収効果や利益を実現することができなくなる可能性があります。また、当社グループは、企業買収に伴う営業権及びその他の無形固定資産を貸借対照表に計上しておりますが、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、投資に対する回収可能性が低下した場合には減損損失を認識することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(12)人材の確保に係るリスク

 当社グループの将来の経営成績は、有能な人材の継続的な会社への貢献に拠るところが大きく、それらの人材を採用・育成し、良好な関係を維持していくことが重要になります。一方、当社グループの事業領域での労働市場における人材獲得競争は、近年ますます激しさを増してきており、研究開発、製造、マーケティング及び販売、ICT、マネジメント分野等に関する高度な専門性を持った人材を確保していく必要がありますが、そのような人材には高い需要があり、必要な人材を確保できない可能性があります。

 当社グループでは、人材を企業価値の源泉の一つと位置付け、社会の変化に対応し、自らイノベーションを起こすことのできるグローバル人材や基幹人材の育成に長期的な視点で注力するとともに、多様な人材が能力を発揮できる環境作りに努めておりますが、そうした人材が育成できなかった場合や社外に流出してしまった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(13)内部統制に係るリスク

 当社グループは、財務報告の適正性と信頼性並びに業務の有効性と効率性を確保するため、内部統制体制を構築・整備し、運用するとともに、継続的な改善を図っています。また、「人権の尊重」を企業が果たすべき概念と認識し、自社及びビジネス・パートナーに対して、人権への悪影響の防止、軽減に努めております。しかしながら、想定外の問題が発生して内部統制が有効に機能しなかった場合、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動等、様々な要因により内部統制システムが適切に機能しない可能性があります。

 当社グループでは、富士フイルムグループ企業行動憲章・行動規範を定め、法令及び社会倫理に則った活動、行動の徹底を図るとともに、当社グループ内外にコンプライアンスに関連した相談・連絡・通報を受ける窓口を設置して、違反行為の早期発見に努めております。また、内部監査体制を整え、自ら問題の早期発見を行っておりますが、このような対策が適切に機能しなかった場合、法令違反や当社グループの財務報告に関する投資家の信頼低下による当社株価の下落、当社グループの社会的信用の失墜により事業に悪影響が生じる等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(14)情報システムに係るリスク

 当社グループは、様々な情報システムを使用して業務を遂行しており、適切なシステム管理体制の構築やICT人材の確保、セキュリティ対策等を行っておりますが、サイバー攻撃等による不正アクセス、従業員等の悪意あるいは重大な過失に基づく行動や、停電、災害等の要因により、データの改ざん、破壊、個人情報の漏洩、情報システムの障害、事業活動に支障をきたす等の事態が起こる可能性があります。

 当社グループでは、ソフトウェアや機器によるセキュリティ対策の実施や、定期的に従業員への教育及び訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないよう努めておりますが、万一、こうした事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(15)公的規制に係るリスク

 当社グループが事業を展開している地域においては、事業・投資等の許認可、輸出入、通商、公正取引、知的財産、消費者保護、租税、為替管理、環境、薬事等の法規制の適用も受けており、万一、規制に抵触した場合、制裁金等が課される可能性があります。

 当社グループでは、国内外の法的規制に関する情報収集を行うとともに、事業活動に係る法規制の遵守を徹底すべく各種ガイドライン・マニュアル等を制定し、定期的な従業員への教育等を通じてコンプライアンス徹底を図っておりますが、今後規制が強化・大幅な変更等なされた場合、当社グループの活動の制限や、規制遵守のため、あるいは規制内容の改廃に対応するためのコストが発生する等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(16)環境規制に係るリスク

 当社グループは、気候変動対策、製品リサイクルを含む資源保全、有害物質の使用制限、土壌・地下水・大気汚染防止及び廃棄物処理等に関する様々な環境関連法令の適用を受けており、これらの規制により法的又は社会的責任の観点から、環境に関する費用負担や賠償責任が発生するリスクがあります。

 当社グループでは、製品の企画・開発の段階から環境負荷の低減を考慮し、生産、物流、使用、リサイクル又は廃棄に至るライフサイクル全体を対象とし、CO2の排出削減、資源循環の促進、製品・化学物質の安全確保等に取り組んでおります。さらには、各事業場において環境マネジメントシステムを活用し、所在国・地域の法規制順守、環境汚染の防止、化学物質の適正使用、生物多様性の保持を徹底しております。しかし、将来、環境に関する規制の厳格化や義務の拡大等の変化が生じた場合、あるいは社会的な環境意識の高まりに伴い当社グループが環境問題への取組みをより一層推進する場合には、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(17)気候変動に係るリスク

 気候変動に伴う移行リスクとして、今後各国・地域における脱炭素社会に向けた政策の強化、炭素排出に関連する法令等の改訂・新規制定が想定外の急速なスピードで実施された場合に、かかる取組みへの支出の増加や、当社グループの事業活動への制限等を受ける可能性があります。

 当社グループは、パリ協定に代表される脱炭素社会への動き等、気候変動への対応に対して世界的に関心が高まるなか、いち早くその重要性を受け止め、1990年代から生産プロセスでエネルギー利用効率を高める活動を開始しました。現在も、「2040年度までに当社が使用するエネルギーによるCO2排出実質ゼロ」を目標に掲げ、エネルギー利用効率の最大化及び再生可能エネルギーの導入・活用によるCO2排出削減を進めております。

 さらに、当社グループは、2018年12月に「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明し同提言に則った情報開示を進めており、2019年4月には事業活動での100%再生可能なエネルギー利用を目指す国際的なイニシアチブ「RE100」に加盟しております。

 また、当社グループでは、気候変動が顕在化した場合の物理リスクへの対応として、調達・生産拠点の分散、BCP(事業継続計画)の策定等の対策を行っているものの、異常気象による原材料・部品の供給停止・価格高騰や、工場操業停止、サプライチェーンの寸断による製品サービスの中止等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(18)大規模災害・感染症等に係るリスク

 当社グループは、世界各地で生産・販売等の事業活動を行っております。このため、地震、津波、洪水等の大規模な自然災害に見舞われた場合や、火災、テロ、戦争、感染症の蔓延といった要因により、事業活動に支障をきたすリスクがあります。

 当社グループでは、自然災害が発生した際にいち早く従業員の安否を確認できるよう安否確認システムを導入するとともに、定期的に地震・火災に備えた訓練を実施しております。また、実際に災害が発生した際には早急に被災地の被害状況を把握した上で対策を講じられるように事業継続への影響を軽減できる体制を整えておりますが、事業活動の復旧までに長期の時間を要した場合や施設等の改修に多額の費用が発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、COVID-19はワクチン普及等もあり、各国で「コロナ」との共生に取り組む試みが進むことが予想されますが、今後、事態が長期化又はさらなる感染拡大が進行した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、COVID-19において、新型コロナウイルス対策室を設置し、顧客、取引先及び従業員の安全第一を考え、またさらなる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をしております。
 当社グループは、ヘルスケアにおける「予防」「診断」「治療」のそれぞれの領域で、独自の技術を駆使して、総力を上げて新型コロナウイルス感染症対策に取り組み、COVID-19の拡大の抑止や、一刻も早い流行の終息に貢献していきます。

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 ① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における連結売上高は、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、ライフサイエンス事業、電子材料事業等で売上を伸ばしたことにより2,525,773百万円(前年度比15.2%増)となりました。営業利益は、229,702百万円(前年度比38.8%増)となりました。税金等調整前当期純利益は260,446百万円(前年度比10.4%増)、当社株主帰属当期純利益は211,180百万円(前年度比16.5%増)となりました。

 事業セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

(事業セグメント別の連結売上高)

セグメント

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

ヘルスケア

579,351

801,743

222,392

38.4

マテリアルズ

566,226

627,118

60,892

10.8

ビジネスイノベーション

761,706

763,549

1,843

0.2

イメージング

285,236

333,363

48,127

16.9

連結合計

2,192,519

2,525,773

333,254

15.2

 

 ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の579,351百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより222,392百万円増加し、801,743百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の566,226百万円に対し、電子材料事業、グラフィックコミュニケーション事業等で売上を伸ばしたことにより60,892百万円増加し、627,118百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の761,706百万円に対し、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより1,843百万円増加し、763,549百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の285,236百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより48,127百万円増加し、333,363百万円となりました。

 

(事業セグメント別の営業利益)

セグメント

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

ヘルスケア

56,361

100,536

44,175

78.4

マテリアルズ

51,344

68,386

17,042

33.2

ビジネスイノベーション

73,086

57,914

△15,172

△20.8

イメージング

15,591

36,977

21,386

137.2

全社費用及び

セグメント間取引消去

△30,909

△34,111

△3,202

連結合計

165,473

229,702

64,229

38.8

 

 ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の56,361百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより44,175百万円増加し、100,536百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の51,344百万円に対し、電子材料事業等で売上を伸ばしたことにより17,042百万円増加し、68,386百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の73,086百万円に対し、海外生産拠点でのロックダウンによる稼働停止や、部材費高騰等の影響により15,172百万円減少し、57,914百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の15,591百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより21,386百万円増加し、36,977百万円となりました。

 

 当連結会計年度末では、総資産は現金及び現金同等物の増加等により、406,077百万円増加し3,955,280百万円(前年度末比11.4%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の増加等により103,294百万円増加し、1,430,340百万円(前年度末比7.8%増)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益等により302,783百万円増加し、2,524,940百万円(前年度末比13.6%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より91,533百万円増加し、当連結会計年度末において486,328百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動により得られた資金は323,934百万円となり、前連結会計年度と比較して96,927百万円減少(△23.0%)しておりますが、これは前払費用及びその他の流動資産が増加したこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動に使用した資金は153,542百万円となり、前連結会計年度と比較して125,839百万円減少(△45.0%)しておりますが、これは事業の買収による支出の減少等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動に使用した資金は105,184百万円となり、前連結会計年度と比較して57,909百万円減少(△35.5%)しておりますが、これは短期債務の返済額の減少等によるものです。

③ 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態は基本的にとっておらず、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。

 販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 ① 資本の財源及び資金の流動性

ⅰ)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

(連結キャッシュ・フロー指標)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

株主資本比率(%)

62.1

63.3

時価ベースの株主資本比率(%)

74.0

76.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

1.2

1.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

163.3

139.9

 

(注)株主資本比率

:株主資本/総資産

時価ベースの株主資本比率

:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産

*自己株式を除く

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ

:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息)

 

ⅱ)財務政策

 当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。

 運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。

 

(株主還元方針)

 配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%以上を目標としております。

 

 これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。

 なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は200,095百万円、長期の社債及び借入金の残高は247,101百万円であります。

 

 ② 経営成績

 ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益

 当連結会計年度の売上高は、前年度の2,192,519百万円に対し、333,254百万円増加し、2,525,773百万円(前年度比15.2%増)となりました。国内売上高は991,885百万円(前年度比6.9%増)、海外売上高は1,533,888百万円(前年度比21.3%増)となりました。実績為替レートは113円/米ドル(前年度比7円安)、131円/ユーロ(前年度比7円安)となりました。

 販売費及び一般管理費は、前年度の552,068百万円に対し、100,927百万円増加し、652,995百万円(前年度比18.3%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.8%となりました。

 研究開発費は、前年度の152,150百万円に対し、1,623百万円減少し、150,527百万円(前年度比1.1%減)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は6.0%となりました。

 事業セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

「ヘルスケア部門」

 本部門の連結売上高は、801,743百万円(前年度比38.4%増)となりました。営業利益は、100,536百万円(前年度比78.4%増)となりました。

 メディカルシステム事業では、COVID-19関連の検査に有用な製品の需要拡大や、医療IT、内視鏡、体外診断(IVD)等の分野で販売が伸長したことにより、売上が大幅に増加しました。また、2021年3月31日に㈱日立製作所の画像診断関連事業を承継し、新しいグループ会社としてスタートした「富士フイルムヘルスケア㈱」とのグループシナジーも順調に進捗しており、当事業の好調な業績に寄与しています。X線画像診断分野では、日本でCOVID-19関連の需要増を取り込んだことに加え、検診需要の回復を見せるマンモDRの販売が好調に推移しました。また、新興国を中心にX線画像診断システム「FCR(Fuji Computed Radiography)」の販売が伸長し、売上が増加しました。超音波診断分野では、POC(Point of Care)向け超音波診断装置「Sonosite PX」や据置型超音波診断装置「ARIETTA 750」の販売が米国、欧州を中心に増加しました。2022年2月には、米国と豪州において、POC向けの最上位機種「Sonosite LX」を発売しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売が日本や中国、欧州を中心に好調に推移しました。また、AI技術を活用した診断支援機能の拡充を進め、2021年8月には、胸部単純X線画像の肺がん・肺炎・気胸診断を支援する胸部X線画像病変検出ソフトウェア「CXR-AID」を発売しました。内視鏡分野では、特殊光観察が可能な「7000システム」等の販売が米国、欧州を中心に大幅に伸長しました。体外診断(IVD)分野では、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドや、富士フイルム和光純薬㈱の生化学試薬及びC​OVID-19関連の検査機器・試薬の販売が好調に推移し、売上が大幅に増加しました。CT・MRI分野では、新たに製品ラインアップに加わった富士フイルムヘルスケア㈱の製品を、富士フイルム㈱の販路を活用して拡販したことや、COVID-19関連の需要増等により、売上が増加しました。

 バイオCDMO事業では、バイオ医薬品のプロセス開発受託及び製造受託が欧米各拠点で好調に推移し、売上が大幅に増加しました。事業成長を一段と加速させるため、総額約900億円を投じ、米国拠点における遺伝子治療薬及びワクチンの原薬製造設備や、英国拠点の抗体医薬品及び遺伝子治療薬の原薬製造設備について増強を行うことを2021年6月に決定しました。当増強設備の稼働は、2023年後半を予定しています。

 ライフサイエンス事業では、FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(米国)が展開するバイオ医薬品製造向けの培地等の販売が好調に推移し、売上が大幅に増加しました。2021年12月に、培地の生産能力を増強するため、オランダで新工場を稼働させ、日米欧3拠点で顧客の創薬・医薬品製造をより強力にサポートするグローバル生産体制が整いました。2022年3月には、細胞の増殖・分化・機能発現を促進するサイトカインの開発・製造・販売を行う米国バイオテック企業Shenandoah Biotechnology, Inc.を買収しました。この買収により、当社は、培地とサイトカイン等を組み合わせた細胞培養関連製品の研究開発と顧客提案力をさらに強化し、市場が急伸する細胞治療薬の研究開発・製造支援ビジネスを拡大していきます。

 医薬品事業では、抗菌剤市場の需要減等により、売上が減少しました。2022年3月28日に、ライフサイエンス領域の事業ポートフォリオ最適化の一環として、富士フイルム富山化学㈱の放射性医薬品事業をペプチドリーム㈱へ譲渡しました。今後は、現行パイプラインの開発を進めるとともに、ペニシリン等の抗菌剤の製造・販売、製造受託に加え、核酸医薬品や次世代の新型コロナワクチン候補も含むmRNAワクチンのプロセス開発・製造受託等の受託ビジネスに注力していきます。

 コンシューマーヘルスケア事業では、「メタバリアEX」等サプリメントの販売が伸長したことに加え、化粧品でもシンプルなステップで効果的なスキンケアを実現する新製品「アスタリフト オプミー」の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2022年2月には、機能性表示食品「メタバリア葛の花イソフラボンEX」を、同年3月には「アスタリフト」ブランドのインナーケアシリーズの機能性表示食品「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」をリニューアル発売しました。また、乾燥肌や敏感肌をケアする若年層向けのスキンケアブランド「cresc. by ASTALIFT(クレスク バイ アスタリフト)」を新たに展開し、同年3月に新製品を発売しました。今後も顧客のニーズを捉えた独自性の高い製品を提供し、人々の美容と健康に貢献していきます。

 

「マテリアルズ部門」

 本部門の連結売上高は、627,118百万円(前年度比10.8%増)となりました。営業利益は、68,386百万円(前年度比33.2%増)となりました。

 電子材料事業では、旺盛な半導体需要を背景に、フォトレジストやCMPスラリー、ポストCMPクリーナー、ポリイミド等幅広い製品群で販売を伸ばし、売上が大幅に増加しました。今後も5Gや自動運転等に使用される最先端半導体向けをはじめとして、半導体の微細化・高集積化に対応した幅広い製品を提供することで、成長を加速させていきます。

 ディスプレイ材料事業では、「WVフィルム」は需要減の影響を受け減収となりましたが、前年度から続く在宅需要を背景としたTV、IT関連向けの製品販売が好調に推移し、売上は前年同期並みを維持しました。

 産業機材事業では、非破壊検査用機器・材料で、COVID-19流行拡大の影響を受けていた欧米の航空業界向けの販売が回復したことにより、売上が増加しました。

 ファインケミカル事業では、大学や企業等での研究活動の再開により試薬の販売が回復してきたことや、重合材料等の化成品の販売が伸長したことで、売上が増加しました。

 記録メディア事業では、COVID-19流行拡大の影響を受けていたデータアーカイブ用のテープ需要が回復傾向にあり、売上が増加しました。2021年9月には、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な磁気テープストレージメディア規格「LTO Ultrium」の第9世代に対応した「FUJIFILM LTO Ultrium9 データカートリッジ」を発売しました。磁気テープは、大容量データを低コストで安全に長期保管できることに加え、ハードディスクドライブに比べてデータ保管における消費電力により発生するCO2の排出量を95%削減でき※1、環境負荷を大幅に低減する製品として注目されています。今後も顧客ニーズに対応する高性能・高品質のメディアやサービスの開発・提供を通じて、さらなる事業成長を図るとともに、社会課題の解決に取り組んでいきます。

※1:100PB(ペタバイト)のデータを10年間HDDに保管した場合と磁気テープに保管した場合を比較し、保管で発生するCO2の排出量を95%(約2,400トン)削減できます。(出典:Brad Johns Consulting, LLC “Improving Information Technology Sustainability with Modern Tape Storage”)

 グラフィックコミュニケーション事業では、COVID-19流行拡大の影響を受けていた印刷需要が経済活動の再開により回復に向かう中、刷版材料分野、デジタル印刷分野で販売を伸ばし、売上が増加しました。刷版材料分野では、有処理CTPプレート同等の性能を実現した現像薬品が不要な無処理CTPプレート「ZX」を2021年9月より海外で発売しました。デジタル印刷分野では、B2枚葉型インクジェット印刷機で世界最速※2の毎時5,400枚の印刷スピードを実現した「Jet Press 750S High Speed Model」を2021年11月に発売しました。プロダクション関連分野では、新たなブランド「Revoria(レヴォリア)」のハイエンドプロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」を2021年7月より販売を開始しました。今後もこのような独自の先進技術を用いた画期的な製品を開発・提供することで、事業成長を図っていきます。

※2:2022年3月時点。当社調べ。

 インクジェット事業では、産業用インクジェットヘッドの販売が、欧州、中国の建材印刷市場での需要増により好調に推移しました。インクの販売は、ホーム&オフィス市場向け染料インクを中心に販売を伸ばし、全体で売上が増加しました。また、2022年3月には、インクジェット印刷需要の拡大を見据え、水性顔料インクジェットインク用色材の生産工場を米国で増設することを発表しました。今後もインクジェット市場のニーズにあわせたグローバルな生産体制を構築し、事業成長を一段と加速させていきます。

 

「ビジネスイノベーション部門」

 本部門の連結売上高は、763,549百万円(前年度比0.2%増)となりました。営業利益は、57,914百万円(前年度比20.8%減)となりました。

 オフィスソリューション事業では、中国工場でのロックダウンによる一部稼働停止や、半導体等の部品供給の逼迫及び物流混乱を背景とした機器の供給・設置遅延等の影響を受けましたが、前年のCOVID-19流行拡大影響からの機器本体以外の「ノンハード」の回復や為替影響等により、売上は前年同期並みを維持しました。2021年4月には、「FUJIFILM」ブランドとしてデザインを一新し、セキュリティ機能を強化したデジタルカラー複合機及びプリンター「Apeos」の新製品を発売しました。2022年2月には、その製品ラインアップを拡充させています。グローバル展開においては、富士フイルム㈱の海外拠点や有望な代理店の活用も進めており、第3四半期には、新たな市場でオフィス向け製品の販売を開始しました。今後も新規のOEM供給を含め、グローバル展開を拡大させていきます。

 ビジネスソリューション事業では、国内で自治体向けのビジネスが増加したことや、海外を中心にBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業が堅調に推移したこと等により、売上が増加しました。2022年1月には、買収が完了したHOYAデジタルソリューションズ㈱が「富士フイルムデジタルソリューションズ㈱」として新たに事業活動を開始しました。同社が提供する基幹システムの販売及び導入支援を含め、今後も、お客様のDXに資するソリューション・サービスメニューを順次提供し、ビジネスソリューション事業のさらなる成長を加速させていきます。

 

「イメージング部門」

 本部門の連結売上高は、333,363百万円(前年度比16.9%増)となりました。営業利益は、36,977百万円(前年度比137.2%増)となりました。

 コンシューマーイメージング分野では、インスタントフォトシステム、カラーペーパー、ドライプリント機器及び材料の販売が好調に推移し、売上が増加しました。インスタントフォトシステムでは、デバイス・フィルムともに販売が好調に推移しました。2021年10月には、スマートフォンで撮影した画像を、通常のカードサイズであるミニフォーマットフィルムの2倍の大きさとなるワイドフォーマットフィルムにプリントができるスマートフォン用プリンター“チェキ”「instax Link WIDE(インスタックス リンク ワイド)」を発売しました。音声・テキストメッセージ、位置情報、WEBページのURLをその場でQRコード化し撮影画像に組み込んでプリントできる機能を加えたことで、個人用途だけではなく、ビジネス用途でも活用できると高い評価を受けています。また、2021年12月にはinstaxシリーズの最上位機種として、ミニフォーマットフィルム対応のハイブリッドインスタントカメラ“チェキ”「instax mini Evo(インスタックス ミニ エヴォ)」を発売し、クラシックなカメラデザインと100通りの撮影エフェクトが好評で、好調に販売台数を伸ばしました。今後も多様化する顧客のニーズに応え、便利で付加価値の高い製品・サービスを提供するとともに、「撮る、残す、飾る、そして贈る」という写真本来の価値を世界中で伝え続けていきます。

 プロフェッショナルイメージング分野では、デジタルカメラ及び放送・シネマ用レンズの販売が好調に推移し、売上が増加しました。デジタルカメラでは、約1億2百万画素の高画質を実現したラージフォーマットミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX100S」の販売が伸長しました。加えて、2021年9月に「GFXシリーズ」の最新モデルとして約5,140万画素のラージフォーマットミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX50S Ⅱ」を発売し、「GFX」ユーザー層を拡大しました。2021年11月には、高画質と小型軽量を両立させた「Xシリーズ」最新モデル、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T30 Ⅱ」を発売しました。今後も「GFXシリーズ」では高画質を、「Xシリーズ」では画質とサイズのベストバランスを実現し、魅力的な製品を提供していきます。また、放送・シネマ用レンズでは、COVID-19流行拡大による需要減から回復基調にあり、前年を上回る売上となりました。

 

 ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益

 営業外収益及び費用は、前年度70,397百万円の営業外収益に対し39,653百万円減少し、30,744百万円の営業外収益となりました。

 税金等調整前当期純利益は、前年度の235,870百万円に対し24,576百万円増加し、260,446百万円となりました。

 

 ⅲ)法人税等

 法人税等は、前年度の55,611百万円に対し1,518百万円増加し、57,129百万円となりました。

 

 ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益

 持分法による投資損益は、前年度3,198百万円の利益に対し9,930百万円増加し、13,128百万円の利益となりました。

 非支配持分帰属損益は、前年度の2,252百万円に対し3,013百万円増加し、5,265百万円となりました。

 

 ⅴ)当社株主帰属当期純利益

 当社株主帰属当期純利益は、前年度の181,205百万円に対し29,975百万円増加し、211,180百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の453.28円に対し、527.33円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の451.75円に対し、526.11円となりました。

 

③ 次期の見通し

 

 

 

(単位:億円)

 

2022年度

(次期の見通し)

2021年度

(実績)

増減率・増減額

売上高

26,500

25,258

4.9%

営業利益

2,450

2,297

6.7%

税金等調整前当期純利益

2,550

2,604

△2.1%

当社株主帰属当期純利益

1,920

2,112

△9.1%

ROE(%)

7.6

9.0

△1.4%

ROIC(%)

5.7

5.6

0.1%

為替レート(円/米ドル)

120円

113円

7円

為替レート(円/ユーロ)

132円

131円

1円

 

 2022年度業績は、連結売上高は2兆6,500億円(前年度比4.9%増)、営業利益は2,450億円(前年度比6.7%増)、税金等調整前当期純利益は2,550億円(前年度比2.1%減)、当社株主帰属当期純利益は1,920億円(前年度比9.1%減)を予想しております。

 通期での対米ドル円為替レートを120円、対ユーロ円為替レートを132円で想定しております。

 

④ 重要な会計上の見積り

 当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。

 COVID-19の影響については、依然として収束の時期は見通せず、今後の当社への影響を予測することは極めて困難であります。最善な見積りを行う上での一定の仮定として、一部事業においては一定期間にわたり当該影響が継続する可能性があるとの前提で、会計上の見積りを行っております。

 なお、COVID-19による経済活動への影響は不確実性が高いため、上記仮定に変化が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に少なからず影響を及ぼす可能性があります。

ⅰ)企業結合

 企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。

 企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。

 なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「22 事業買収及び事業売却」に記載しております。

 

ⅱ)営業権の減損

 営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。

 見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。

 営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。

 なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。

 

ⅲ)長期性資産の減損

 営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。

 これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。

 長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。

 

ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用

 当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。

 数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。

 なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。

 

ⅴ)貸倒引当金

 営業債権、リース債権及びその他の債権に対する貸倒引当金は、過去の貸倒実績、延滞状況及び問題が生じている取引先の財政状態に基づき決定しております。裁判所による決定等によって、回収不能であることが明らかになった場合は、その時点で帳簿価額を直接減額しております。

 貸倒引当金は、過去の実績や評価時点で利用可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で見積りを行っていますが、相手先の財政状態が悪化した場合等見積りの根拠となる仮定又は条件等が変化した場合には、貸倒引当金を積み増すことになる可能性があります。

 なお、貸倒引当金の残高については、連結財務諸表注記「20 金融債権の状況」に記載しております。

 

ⅵ)繰延税金資産

 資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。

 回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。

 なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。

 

ⅶ)棚卸資産

 棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。

 評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。

 

4 【経営上の重要な契約等】

事業譲渡に関する契約

 当社の完全子会社である富士フイルム㈱は、連結子会社である富士フイルム富山化学㈱の放射性医薬品事業を当社が新たに設立した当社完全子会社(以下、「放射性医薬品新会社」と記載します。)に承継させた上で、放射性医薬品新会社の全株式をペプチドリーム㈱に売却する株式譲渡契約を2021年9月2日に締結し、当該株式譲渡を2022年3月28日に完了しました。なお、株式譲渡契約の一部を2022年3月22日に変更し、富士フイルム富山化学㈱が放射性医薬品「ルタテラ®静注」の国内販売権等については製薬大手ノバルティスのグループ会社であるAdvanced Accelerator Applications International S.A.(以下、「AAA社」と記載します。)に返還することに伴い、ペプチドリーム㈱から受領する一時金は当初の305億円から221億円となりました。本返還にあたって、AAA社から対価を受領する予定です。

※「ルタテラ®静注」と併用するアミノ酸輸液「ライザケア®輸液」も含む。

5 【研究開発活動】

 当社グループは、写真感光材料やドキュメント等の事業で培った材料化学、光学、解析、画像等の幅広い基盤技術のもと、機能性材料、ファインケミカル、エレクトロニクス、メカトロニクス、生産プロセス等の技術領域で多様なコア技術を有しています。現在、様々な分野でビジネスを展開している当社グループでは、これらの基盤技術とコア技術を融合した商品設計によって、重点事業分野への研究開発を進める一方、将来を担う新規事業の創出も進めています。富士フイルム㈱では、半導体材料やディスプレイ材料等の高機能材料の領域で事業成長をさらに加速させるため、2021年10月1日に「高機能材料戦略本部」を新設しました。同本部は、高機能材料領域における事業横断的な戦略機能を担う組織で、事業間のさらなる連携強化や、技術開発の共通テーマの策定、経営資源の最適化、M&A・提携等を推進し、中長期を見据えた、新規事業の開発と強固な事業ポートフォリオの構築を目指します。

 需要が増加するCOVID-19のワクチンや最先端医療分野である遺伝子治療薬等のバイオ医薬品の原薬生産能力を大幅に向上させるため、バイオCDMO事業の中核会社であるFUJIFILM Diosynth Biotechnologies(以下、「FDB」と記載します。)の欧米拠点に総額約900億円の大型設備投資を行います。遺伝子治療薬にも対応した設備とすることで、需要が増加しているCOVID-19ワクチンのみならず、最先端医療分野である遺伝子治療薬等の受託ニーズに応えていきます。

 また、富士フイルム㈱は米国バイオベンチャーAtara Biotherapeutics, Inc.(以下、「Atara社」と記載します。)の細胞治療薬製造拠点を約100百万米ドルで買収しました。今回の買収完了に伴い、本製造拠点を、バイオCDMO事業の中核会社であるFDBのカリフォルニア拠点として始動させました。今後、遺伝子改変細胞治療薬をはじめとする細胞治療薬の受託ビジネスを本格的に展開し、バイオ医薬品の開発・製造受託事業のさらなる拡大を図っていきます。このほか、細胞の増殖・分化・機能発現を促進するサイトカインの開発・製造・販売を行う米国バイオテック企業Shenandoah Biotechnology, Inc.(以下、「シェナンドーア社」と記載します。)を買収しました。今回の買収完了に伴い、富士フイルム㈱の米国子会社で培地のリーディングカンパニーであるFUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(以下、「FISI」と記載します。)の子会社としてシェナンドーア社を始動させました。今後、FISIの培地技術とシェナンドーア社が有する、サイトカインの開発ノウハウを組み合わせて、目的の機能を発現する細胞を効率的に培養できる細胞治療用培地を開発していきます。培地・iPS細胞・研究用試薬にサイトカインを加えた製品ポートフォリオで顧客への総合提案力を高め、幅広いニーズに応えることで、市場が急伸する細胞治療薬の研究開発・製造支援ビジネスを拡大していきます。

※体外に取り出した細胞に治療用遺伝子を導入し作製した細胞を用いる細胞治療薬。

 このように当社グループでは、富士フイルム㈱、富士フイルムビジネスイノベーション㈱及びその他の子会社とのグループシナジーを強化するとともに、他社とのアライアンス、M&A及び産官学との連携を強力に推進し、新たな成長軌道を確立していきます。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は150,527百万円(前年度比1.1%減)、売上高比6.0%となりました。各セグメントに配賦していない汎用性の高い上記基盤技術の強化、新規事業創出のための基礎研究費は23,638百万円です。

 当連結会計年度の研究開発の主な成果は次のとおりであります。

(1)ヘルスケア セグメント
 メディカルシステム事業では、心臓の拍動によって生じる画像のブレを低減する技術Cardio StillShotと画像処理速度を向上させるFOCUS Engineを新たに搭載し、さらなる高画質画像の提供、心臓検査の効率化に貢献するマルチスライスCTシステム「SCENARIA View Plus」を発売しました。富士フイルム㈱と名古屋大学医学部附属病院は共同で、院内の様々な部門システムで管理している診療データを基に、AI技術を用いて、肺炎入院患者の経過を高精度に予測する技術を開発しました。今後、本技術を実用化することで、個別化医療の推進と病院経営の効率化を支援していきます。また、当社は、外科手術用内視鏡システム等に応用して組織の酸素飽和度を画像化できる、酸素飽和度イメージング技術を開発しました。加えて、胸部CT画像に新型コロナウイルス肺炎(以下、「COVID-19肺炎」と記載します。)の特徴的な画像初見が含まれている可能性(以下、「確信度」と記載します。)の表示及び確信度の判定に寄与した領域のマーキング表示により、医師の診断を支援するソフトウェア「COVID-19肺炎画像解析プログラム」(以下、「本ソフトウェア」と記載します。)をAI技術を活用して開発し、薬機法における製造販売承認を取得しました。本ソフトウェアを、当社の3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT(シナプス ヴィンセント)」向けのアプリケーションとして発売しました。また、新型コロナウイルスに対する抗体の有無を調べる抗体測定用試薬「アキュラシード COVID-19 抗体」(研究用試薬)、及び、新型コロナウイルス抗原を定量的に測定する「アキュラシード SARS-CoV-2 抗原」(体外診断用医薬品)を発売しました。

 バイオCDMO事業では、FDBの新拠点である米国ボストン拠点にて、遺伝子治療薬のプロセス開発の受託サービスを開始しました。FDBの米国テキサス・英国拠点に続き、米国ボストン拠点でも遺伝子治療薬の受託ビジネスを展開することで、最先端治療分野の顧客ニーズに応え、バイオCDMO事業の成長を加速させるとともに、高品質なバイオ医薬品の安定供給を通じて顧客をサポートすることで、アンメットメディカルニーズへの対応等の社会課題の解決、ヘルスケア産業のさらなる発展に貢献していきます。

 ライフサイエンス事業では、バイオ医薬品の需要増等に対応するため、細胞培養に必要な培地の新工場を2021年12月8日より稼働させました。新工場は、当社欧州拠点のFUJIFILM Manufacturing Europe B.V.に投資して建設したもので、cGMPに準拠した最新鋭工場です。新工場稼働を通じて、培地の生産能力を増強するとともに、日米欧3拠点のグローバル生産体制を確立し、顧客の創薬・医薬品製造をより強力にサポートしていきます。また、バイオ医薬品等の研究開発・製造を行う製薬企業が集積する中国・蘇州高新区に、培地のカスタマイズサービス拠点「Innovation & Collaboration Center」を新設し、日本・米国に続き、中国における営業・技術サポート体制を一層強化することで、顧客満足度のさらなる向上を図ります。

 医薬品事業では、進行性固形がんを対象とし、リポソーム製剤「FF-10832」とMerck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A.(米国とカナダ以外ではMSD)の抗PD-1抗体「キイトルーダ®」(一般名:ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の併用療法を評価する臨床第Ⅱa相試験を開始しました。引き続き、独自技術を活用して、リポソームや脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle)等のドラッグ・デリバリー・システム(以下、「DDS」と記載します。)技術の研究開発、DDS技術を用いた新薬開発に取り組んでいきます。

 コンシューマーヘルスケア事業では、湿度の低下による刺激で角層水分量とバリア機能が低下することを実証し、肌荒れが生じる一因を解明しました。また、本研究では、肌チャ葉エキスに角層中の重要なバリア関連因子であるアシルセラミド産生酵素の発現促進効果と肌のバリア機能に重要なアシルセラミドの産生を補うことで「刺激にゆるがない肌」へ導く新しいスキンケアの可能性を見出しました。当社は、今回の研究成果を化粧品の開発に応用し、乾燥肌や敏感肌をケアする若年層向けのスキンケアブランド「cresc. by ASTALIFT」を新たに展開し、独自のナノ分散技術で微粒子化した「Wヒト型ナノセラミド」と「チャ葉エキス」を配合したジェリー状化粧液「ジェリーコンディショナー」とクリーム状乳液「モイスチュア リッチミルク」を発売しました。

 本部門の研究開発費は、45,289百万円となりました。

 

 当社グループにおける新薬開発状況は次のとおりであります。(2022年6月現在)

開発番号

薬効・適応症

剤形

地域

開発段階

T-705

抗新型コロナウイルス(COVID-19)薬

経口

日本

承認申請中

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)治療薬

経口

日本

PhⅢ

T-817MA

アルツハイマー型認知症治療薬

経口

米国

日本

欧州

PhⅡ

PhⅡ

PhⅡ

脳卒中後のリハビリテーション効果促進薬

経口

日本

PhⅡ

T-4288

新規フルオロケトライド系抗菌薬(耳鼻咽喉科感染症)

経口

日本

承認申請中

新規フルオロケトライド系抗菌薬(呼吸器感染症)

経口

日本

PhⅢ

FF-10501

骨髄異形成症候群治療薬

経口

日本

米国

PhⅠ

PhⅡ

FF-10502

進行・再発固形がん治療薬

注射

米国

PhⅡ

FF-10832

進行性固形がん治療薬(ゲムシタビンリポソーム)

注射

米国

PhⅠ

FF-10850

進行性固形がん治療薬(トポテカンリポソーム)

注射

米国

PhⅠ

 

(2)マテリアルズ セグメント

 記録メディア事業では、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な「FUJIFILM LTO Ultrium9 データカートリッジ」(以下、「LTO9」と記載します。)を発売しました。当社独自の「NANOCUBIC技術」によって微粒子化したバリウムフェライト磁性体を均一に分散し、テープ表面のうねりや厚みムラのない平滑な薄層磁性層を塗布し、従来のLTO8の1.5倍となる最大記録容量45TB(非圧縮時18TB)を実現するとともに、最大1,000MB/秒(非圧縮時400MB/秒)の高速データ転送も可能で、高い利便性を発揮します。また、LTO9で実現した高容量は、IoT・DXの進展に伴い急増するデータストレージ需要に応えるとともに、世界的に対応が急務となっているCO2排出削減に貢献します。

 グラフィックシステム事業では、軟包装印刷の最終段階で必要なクライアント立ち会いによる印刷品質確認をモニター上で高精度に行える「遠隔色校正システム」を発売しました。当システムはモニター上での高精度の色調確認が可能であり、軟包装印刷における品質合意のための新たな手段を提供するソリューションとして、立ち合いに関わる業務負荷の軽減、時間・コストの削減に貢献します。当社は、今後も軟包装をはじめとするパッケージ分野の課題解決に貢献するため、さらなるソリューションの拡充に取り組んでいきます。

 インクジェット事業では、色素を用いず、光の反射によって生じる発色現象である構造色を発現させ、意匠性の高い加飾印刷を可能にする「構造色インクジェット技術」を新たに開発しました。本技術は当社の分子制御技術を応用し、フィルム基材上に吐出したインク内に微細な構造を形成して発色させるものです。色味の異なる構造色を発現するインクを複数種用意し、その組み合わせやインクの濃度を調整しながら、構造色のパターンやグラデーション等を自在に描画することで、高い意匠性を実現します。当社は、産業用インクジェット市場における多様な用途やお客さまのニーズに応じて、今後も画期的な製品を開発・提供し、様々な産業の発展に貢献していきます。

 本部門の研究開発費は、39,912百万円となりました。

 

(3)ビジネスイノベーション セグメント

 オフィスソリューション事業では、デザインを一新、セキュリティ機能を強化した「FUJIFILM」ブランドのデジタルカラー複合機及びプリンター「ApeosPro/Apeos C/ApeosPrint」シリーズの新製品を発売しました。グラフィックコミュニケーション事業領域では、プロダクションプリンターの新ブランド「Revoria」シリーズ2機種をワールドワイドで販売開始しました。富士フイルム㈱の海外拠点や有望な代理店を活用した販路の拡大により、新規のOEM供給を含め、グローバル展開をさらに加速していきます。

 ビジネスソリューション事業では、2022年1月に買収が完了したHOYAデジタルソリューションズ㈱が「富士フイルムデジタルソリューションズ㈱」として、新たに事業活動を開始しました。今後、Microsoft Dynamics 365を主力とした基幹システムの販売及び導入支援サービスを進めます。また、請求書支払業務デジタル化ソリューション「Esker on Demand AP」がJIIMA「電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証、電子取引ソフト法的要件認証」を取得しました。さらに、Withコロナ時代の働き方改革に向け、場所の制約なくリアルタイムに文書の「作成」「閲覧」「共有」が行える新クラウドサービス「DocuWorks Cloud」を提供開始しました。個室型ワークスペース「CocoDesk」は、ショッピングモールや関西圏にも設置場所を拡大し、総設置台数100台となりました。

 今後も、富士フイルムグループのシナジーを加速し、革新的な商品やサービスをさらに多くのお客様にお届けします。

 本部門の研究開発費は、33,226百万円となりました。

 

(4)イメージング セグメント

 フォトイメージング事業では、スマホで撮影した画像を、通常のカードサイズのチェキプリントの2倍の大きさとなるワイドフォーマットフィルムにプリントできるスマートフォン用プリンター“チェキ”「instax Link WIDE」やインスタントカメラinstax(インスタックス)シリーズの最上位機種として、カードサイズのミニフォーマットフィルムに対応したハイブリッドインスタントカメラ“チェキ”「instax mini Evo」を発売しました。

 光学・電子映像事業の電子映像分野では、35mm判の約1.7倍となるラージフォーマットセンサーを採用したミラーレスデジタルカメラ「GFXシリーズ」の最新モデルとして、質量約900gの小型軽量ボディに、約5,140万画素センサーや強力な手ブレ補正機構を搭載し高速画像処理エンジン等による高性能AFも備えた「FUJIFILM GFX50S II」を発売しました。また、独自の色再現技術による卓越した画質と小型軽量を実現する「Xシリーズ」の最新モデルとして、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T30 II」を発売しました。光学デバイス分野では、新開発デジタル・ドライブユニット「S10」を搭載したポータブルタイプの「FUJINON」放送用ズームレンズ(18機種)を販売しました。また、新たな防振機構と超高倍率107倍ズームを備え、撮影機能の高いカスタマイズ性も実現した4K対応放送用レンズ「FUJINON UA107x8.4BESM」を発売しました。

 本部門の研究開発費は、8,462百万円となりました。