第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、多様化するお客様の心の奥底にある期待感に応える商品とサービスの提供で、ご来店していただくお客様にご満足頂き、また地域社会に愛されることにより、ブランド価値を向上させ企業価値の最大化を目指しております。そのために、「業態開発」、「商品開発」、「店舗開発」等により「飲」と「食」において新たな食文化を創造し、激しく変化する経営環境を迅速に察知するとともに柔軟に対応することで、日本の外食業界をリードし「外食産業における日本一のエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループとしては、安定的に売上及び利益の成長を達成しながら、グループ全体での企業価値の最大化を目指しております。また、経営指標目標としては、「売上高経常利益率」の成長を掲げております。

 

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 日本経済を取り巻く環境は、高齢化社会における生産年齢人口の減少、海外経済の不確実性や金融市場の変動の影響に留意が必要とされるなど、今後の動向は依然として多くの不透明要因があります。

 また、外食産業界においては、昨今の経済政策の効果もあり雇用環境の改善が続く中で穏やかに回復していくことが期待されている一方で、原材料価格や労働単価の上昇に加え、業界の垣根を越えた競争も継続すると想定され、引き続き厳しい経営環境が続くと思われます。

 このような環境下、当社グループではリ・ブランディングや新商品の開発を含めた商品力のアップ、新規出店、新業態開発のほか、フランチャイズ・ビジネスなどグループのノウハウの共有化による収益シナジーの創出により高収益の体質を目指すとともに、高成長が期待できるアジアを中心とした海外事業の展開を推し進める所存です。

 今後は高収益と高成長を兼ね備えた企業として、「外食産業における日本一のエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指すとともに、グローバル展開による企業価値の増大を目指してまいります。

 

 上記の中長期的な経営戦略を遂行するため、次の施策を優先的に行ってまいります。

 ① 既存事業の再強化(既存店の強化、ブランド価値向上)

 ② 効率化の徹底(不採算店舗の閉鎖、業態転換の促進、イニシャルコストの低減)

 ③ 新規出店(出店候補地の厳選、新規出店の拡大促進による競争優位性の維持)

 ④ シナジー効果の拡大(資材・食材の効率的な調達によるコスト削減、複合店・併設店・新業態の開発)

 ⑤ 成長戦略の一環としてM&Aによる事業拡大

 ⑥ 成長機会が最も高いアジア市場を中心とするグローバル展開

 ⑦ 内部統制強化によるガバナンス体制の確立とコンプライアンス推進

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社グループは、お客様、取引先、株主、従業員、それぞれのステークホルダーに満足頂き、食文化の創造と紹介を通じて環境・社会課題の解決と持続可能な社会の構築に貢献することを基本理念として、2022年3月、サステナビリティ委員会を設置いたしました。

 サステナビリティ委員会は、当社取締役会で決定された6名で構成されており、委員長は当社取締役の中から選任されております。また事務局は、当社、株式会社ドトールコーヒー及び日本レストランシステム株式会社から選任され、取締役会で決定しております。

 サステナビリティ委員会は、グループのサステナビリティ活動に関する全体計画の立案、マテリアリティを特定し、進捗状況のモニタリングなどを通して、定期的に取締役会へ報告・提言をしており、また、必要に応じてリスク・コンプライアンス委員会への報告を行うことで取締役会と連携しております。取締役会においては、進捗状況の妥当性等を議論・監督し、その内容を各種施策に反映しております。

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(2)戦略

① マテリアリティ

 当社グループは、お客様、取引先、株主、従業員、それぞれのステークホルダーに満足頂き、食文化の創造と紹介を通じて環境・社会課題の解決と持続可能な社会の構築に貢献することを基本理念としています。サステナビリティに関する施策を推進するにあたり、既存取り組みの整理とこれから行うべき取り組みをまとめ、当社グループにとってのマテリアリティを抽出しました。その上で、ステークホルダーにとっての重要度を取り入れるべく、お客様、取引先、株主、従業員をはじめとする様々なステークホルダーへのヒアリングを実施し、その結果を元にステークホルダーにとっての重要度と、当社グループにとっての重要度の2軸の観点でマテリアリティを特定し、取締役会にて決議しました。

 特定した8つのマテリアリティは、基本理念に基づいた3つの重要課題領域(豊かな社会の実現、地域や地球の持続性、平和で公正な環境)に関連付けられており、当社グループはそれらを推進することで、基本理念の実現を目指しています。

重要課題領域

マテリアリティ

主な取り組み

豊かな社会の実現

製品の安全安心

安心・安全な製品・サービスの提供

原材料に関する適切な情報開示

コーヒー産地の保全

コーヒー生産者の労働環境保護

コーヒー生産国の生産環境保護

地域や地球の持続性

持続可能な調達

環境保全に配慮した原材料の調達

国内農業等への貢献

気候変動への対応

CO2排出削減の推進

店舗、工場の省エネ推進

資源循環型社会実現への貢献

環境対応型資材(脱プラスチック)の推進

資源の3Rの推進

フードロス削減

製造・販売過程におけるフードロス削減

フードバンクへの支援

平和で公正な環境

多様な人材の活躍

従業員の働きがい、人材育成の推進

ダイバーシティの推進

ワークライフバランスの推進

ガバナンスの強化

コンプライアンスの徹底

透明性の高い経営の推進

 

② マテリアリティ「気候変動への対応」に関する事項

 当社グループの事業は、コーヒー生豆をはじめ気候変動により様々な影響を受ける可能性があります。世界的な課題である気候変動は、当社グループ事業・戦略に多大な影響を及ぼすため、重要課題の一つであることから、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言を踏まえてシナリオ分析を実施しました。今後、対応策の検討と取組の強化を推進してまいります。

(ア)シナリオ分析の前提

 気候変動にともなう様々なリスクと機会について、その重要性に応じて短期・中期・長期にわたっての特定を行い、社会環境の変化も踏まえ、定期的に分析・評価の見直しを行ってまいります。

 リスクと機会の特定においては国際エネルギー機関(IEA)などが発表しているシナリオを用いて、事業におけるインパクトを算出しました。

 

(イ)特定したリスク及び機会

リスク・機会

事業への影響

影響度

移行リスク

法規制・政策

炭素税導入による素材コストの増加

炭素税導入により包装・原材料等がコストアップし、売上原価が増加。

エネルギーコスト増加

脱炭素化に向けてエネルギー需給の変化、石油・電気価格等が上昇し、店舗・工場のエネルギーコストが上昇する可能性がある。

市場

環境に配慮した商品に対する消費者の嗜好の変化

環境配慮型商品の需要が増加するなか、消費者、取引先等への対応が不十分となり、市場の支持を獲得できない。顧客離れとなり収益減少。

気候変動の対応に対する顧客・株主の関心の変化

気候変動への対応が不十分なことによりブランドイメージが低下。企業評判および株価が低下するリスクがある。

物理リスク

サプライチェーン

気温・降水量等の気候の変化

工場、店舗の浸水リスクが高まり、撤退、資産への影響が発生する。

自然災害によるサプライチェーンの分断による店舗操業停止、及び販売先への供給不全が発生する。

気候の変化により、小麦・パーム油等の生産量が減少し、原価高騰する可能性がある。

気候の変化により、コーヒー豆の生産量が減少し、調達困難となり原価高騰、収益減少。

機会

商品

環境に配慮した商品に対する消費者の嗜好の変化

気候影響度が少ないコーヒー生産地で収穫された原料・気候変動に強い品種を用いた商品開発により差別化を図り、収益増加。

気温上昇による、熱中症対策の商品開発(コーヒー、飲料等)し、収益増加。

サプライチェーン

サプライチェーン全体での輸送効率化の推進

AI・loT等を活用したサプライチェーン全体の大規模な効率化、電池等の電動車関連技術の採用

 

③ マテリアリティ「多様な人材の活躍」に関する事項

 人的資本経営に関しては「多様な人材の活躍」をマテリアリティに位置付け、以下の方針のもと、「従業員の働きがい、人材育成の推進」「ダイバーシティの推進」「ワークライフバランスの推進」に取り組んでいます。

(ア)人材育成方針

 当社グループは、「飲」と「食」の融合による新しい食文化の創造と紹介を通じて社会に貢献し、全てのステークホルダーに対して「やすらぎ」と「活力」を提供することを経営理念とし、外食産業のエクセレント・リーディングカンパニーの地位確立を目指しております。その実現のためには、経営理念を体現できる社員一人一人の育成が必要不可欠であると考えております。

 この様な環境において、当社グループ売上の約7割がコーヒーに関わる店舗および卸売事業であることから、社員にはコーヒーに関する知識とスキルの向上が求められております。そのため、人材育成の一環として、グループ全社員に向けた「ドトール・日レスコーヒーアカデミー」を開設し、コーヒーの専門知識の向上に取り組み、役職・役割に応じた仕事へのスキルや知識を深めるための研修機会としております。加えて、コーヒーに関わる多種多様な業態を展開していることから、社員に限らず、パート・アルバイト(以下、パートナーとする)を含めた業態ごとの接客コンテストなども合わせて行うことで、経営理念の体現に努めております。

 また、社員一人一人が多種多様な個性を最大限発揮できるよう、定期的なジョブローテーションを実施するとともに、管理職研修など、役職・役割に合わせた研修を適宜行うことで人材の育成に当たっております。

 

(イ)社内環境整備方針

 当社グループは、社員の誰もが働きがい・やりがいを持って働くことができる職場環境を実現することが、企業成長の原動力であり、ひいては一層の企業価値の向上に資するものと考えております。多様な価値観を持つ人材がそれぞれのライフステージに合わせた柔軟な働き方を選択できるよう、地域限定社員や時短勤務、在宅勤務など、勤務体系の幅を広げるとともに、ケガや病気で長期間働けなくなるリスクに備えるLTD保険制度や、パートナー退職金制度など、多様な人材が安心して働ける制度を積極的に導入することで、働きやすい環境の整備を推進しております。

 更には、勤務年数に応じた永年表彰制度や、経営理念や経営方針に基づいた、優れた行動や成果を上げた社員に対する優秀社員表彰制度などを通じ、エンゲージメントを高める取り組みも推進しております。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)を踏まえた環境問題や人的資本への対応など、中長期的なリスク管理、目標管理等、グループ全体のサステナビリティに関するリスク及び機会を、サステナビリティ委員会で一元管理しております。また、サステナビリティ委員会で把握したリスク及び機会は、適宜ワーキンググループを開催し、検討する仕組みとなっております。

 その内容は、取締役会及びリスク・コンプライアンス委員会に報告し、連携しながらリスク及び機会を認識・評価、適切な対応を図るなど、サステナビリティ経営の徹底と社会的信用の向上を図っております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは下記マテリアリティについて、2030年度を目標年度とする「指標」と「目標」を設定しております。なお、下記を除くマテリアリティの「指標」と「目標」については、現在策定中であります。

 

① マテリアリティ「気候変動への対応」に関する事項

 温室効果ガス排出量削減目標として、スコープ1及び2の排出量を2030年度までに46%削減(2013年度比)することを目指していきます。2050年度にはカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指します。なお、当該指標及び目標の算定範囲は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」及び「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」における温室効果ガス排出量の報告義務事業者である3社(株式会社ドトールコーヒー、日本レストランシステム株式会社及び株式会社サンメリー)としております。

 

② マテリアリティ「多様な人材の活躍」に関する事項

 主要な事業会社2社については、人材育成方針の指標としてコーヒー研修受講率を、社内環境整備方針の指標として女性管理職比率・男性の育児休業取得率を下記の通り設定いたしました。

指標

目標

実績(当連結会計年度)

コーヒー研修受講率(注1、2)

2030年までに30%以上

13.1%

女性管理職比率

2030年までに30%以上

9.2%

男性の育児休業取得率

2030年までに50%以上

15.8%

 (注)1.コーヒー研修は、年間60名程度を選出し一定期間に渡り座学及び実技研修を行っております。

    2.コーヒー研修受講率=コーヒー研修受講者数累計÷年度末在籍社員数×100

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、及び当該リスクが健在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響を合理的に見積もることが困難な場合には記載しておりません。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、以下の記載は当社株式への投資に関するリスク全てを網羅するものではありません。

① コーヒー生豆価格相場及び為替相場の変動

 当社グループの主要商品であるコーヒー生豆の価格は、国際的なコモディティ価格の高騰による相場の上昇や、昨今の新興国における需給の状況、生産地における天候等の影響を受けることがあります。このような影響をヘッジする目的で、ニューヨーク生豆相場に基づく商社からの見積り提示価格をベースに、生豆の先物買契約を締結し原料確保を行っており、また、その際為替相場の影響を回避する目的で実需の範囲内において為替の先物予約を実施しております。しかし、相場の変動状況によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。

 これに対し、主要原材料の取引市場における相場変動等について仕入先から情報収集を行うほか、新たな原料産地の開拓や分散調達等のリスクヘッジを継続的に実施しております。

② 法的規制等について

 当社グループは、お客様に飲食を提供するために「食品衛生法」の規制を受けております。従来より、定期的に第三者機関による細菌、及び衛生検査を各店舗で実施しておりますが、万一、食中毒事故等が発生し営業停止等の処分を受けたり、法的規制が強化された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社グループの関連部署においてこれらの法規制の改正について情報収集に努めております。

③ 大規模自然災害・感染症等による影響について

 当社グループは、特に出店が集中している地域である首都圏や大都市において、地震や大規模な台風、異常気象等の自然災害により、店舗・工場の設備や電気・ガス・水道などのインフラへの損傷、配送やサプライチェーンが分断した場合や、新型インフルエンザや新型コロナウィルス感染症等が感染拡大した場合、従業員が出勤できない等の事情が発生し正常な運営を継続できなくなる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社グループでは、自然災害や感染症拡大などの緊急時において、人命優先、安全第一とした判断を迅速に行うため、店舗の営業中止、継続等に関する基準を設定し関係部署が共通認識のもとで対応することができるよう「緊急対応時マニュアル」を策定し周知、徹底するとともに、有事の際に損害を最小限に抑えるためのリスク対応体制の整備・強化を進めております。

④ 店舗の賃借物件への差入保証金等について

 当社グループの事務所及び直営店舗は、そのほとんどが建物を賃借しております。賃借に際して差し入れる保証金等については、2024年2月末時点で、当社グループで199億円あります。万一、賃借先である家主の倒産等により一部回収不能となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクに対して、当社グループでは、新規に出店する際の与信管理を徹底させるとともに、特定の家主に対し出店が集中しないように取り組んでおります。また、社内の専門部署が土地又は建物の賃貸人との連携を密に行うと同時に不動産関連取引先からも情報を入手することでリスクの低減を図っています。

⑤ 出店政策について

 当社グループが出店する際の出店先の選定につきましては、店舗の収益性を重視しており、差入保証金や家賃などの出店条件、商圏人口、競合店舗の有無等を勘案した上で一定条件を満たしたものを対象物件としております。このため、当社グループの出店条件に合致する物件がなければ、出店予定数を変更することもあるため当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性は現時点では認識しておりません。

 これらリスクに対して、当社グループでは、事業計画の作成にあたり、個々の既存店の営業成績を精査・分析して、地域ごとの消費者のニーズの変化をいち早くとらえてその変化に対応できる店舗の出店を図っています。

⑥ 減損会計の適用について

 当社グループは、店舗環境の変化や経済的要因により店舗毎の収益性が損なわれた場合、減損損失を認識する必要があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクに対して、当社グループでは、減損の兆候である営業活動から生ずる損益が継続してマイナスである当社グループの店舗及び子会社の運営を迅速に立て直し、投資額の回収を図っております。

⑦ 情報管理について

 当社グループは、お客様の個人情報等を有しております。当情報の管理については個人情報保護法の趣旨に沿った社内体制に基づき運用しておりますが、万一漏洩があった場合には、顧客に重大な損失を与えるばかりでなく、当社グループの社会的信用の失墜につながる可能性があります。

 これらリスクに対して、当社グループでは、個人情報の管理について法的義務に則った運用をしており、社内規程、管理マニュアル及び運用ガイドラインに基づくルールの厳格な運用と従業員教育の徹底を図っております。

⑧ 海外における事業展開について

 当社グループは、海外における事業展開を中期的な成長戦略のひとつとしております。しかしながら、海外の事業展開には、各国の法令・制度、政治・経済・社会情勢、文化・宗教・商慣習の違いや為替レートの変動等をはじめとした様々なリスクが存在し、事前に想定できなかった問題の発生により投資回収が困難となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これらリスクに対して、当社グループでは、情報収集、現地経営環境を踏まえた事業運営の適切な管理・サポート及び必要に応じて長期的な視点による経営戦略の見直し等を実施するとともに、関係部署が適宜連携して対応に当たることで海外展開におけるリスクを低減しております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルスによる営業規制の撤廃や5類への移行もあり、人流が活発化することで経済の正常化が進み、インバウンドの恩恵を受ける中、消費動向は改善してまいりました。また、ウクライナ情勢をはじめとした国際的なさまざま要因から生じたエネルギーや穀物をはじめとしたコモディティの価格高騰や、円安の進行も落ち着きが見られるようになりました。しかしながら、生活に直結する食品などを中心に、消費者物価の上昇は継続しており、大手企業をはじめとした賃上げの活発化はあるものの、物価の上昇には追いついておらず、先行きの不透明感に変化はありません。

 外食業界におきましても、新型コロナウイルスの影響は収まったものの、在宅勤務の継続など、コロナ前の生活習慣がもとに戻ることはなく、完全な回復と言えるまでの状況には至っておりません。また、原材料をはじめ人件費や物流費など、さまざまなコストの上昇は継続しており、今後もコストの上昇が見込まれるなど、厳しい経営環境は継続し、予断を許さない状況となっております。

 このような状況のもとで、当社グループは、「外食業界におけるエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指し、立地を厳選してグループ全体で72店舗(直営店45店舗、加盟店24店舗、海外3店舗)を新規出店しました。

 既存事業においては、各業態別での新商品の導入やリニューアルをはじめ、テイクアウトメニューや売店商品の拡充、卸売事業の拡大など、コロナ禍に取組んだ活動を継続するとともに、キャッシュレス・キャンペーンをはじめ、さまざまなキャンペーンを実施し、販促活動を強化いたしました。また、季節ごとの商品を中心に、付加価値の高いメニューを随時導入することで顧客単価を上げ、売上の回復に努めました。その結果、経常利益においては、コロナ前の経営数値への改善には至っていないものの、売上高は、顧客単価の上昇に伴い改善傾向が明確化し、コロナ前を超える水準にまで回復しております。

 以上の結果、当連結会計年度における業績は、売上高1,406億25百万円(前期比10.8%増)、営業利益73億22百万円(前期比146.6%増)、経常利益77億1百万円(前期比122.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益54億91百万円(前期比60.1%増)となりました。

 

各セグメントの概況は次のとおりであります。

(日本レストランシステムグループ)

 日本レストランシステムグループでは、新型コロナウイルスの5類移行に伴い着実に売上高が伸長し、回復傾向が顕著に見られるようになりました。

 新規出店につきましては、「星乃珈琲店」や「洋麺屋五右衛門」等の主力ブランドを中心に26店舗を新規出店するなど店舗網の拡大に努め、一部のロードサイドの「星乃珈琲店」においては、既存建物の一部分を「コッペ田島」ブランドとして新たにオープンした結果、より多くのお客様をお迎えすることが出来ております。また、既存ブランドの更なるブラッシュアップを目的として新たに「牛たん焼き仙台辺見」「蕎麦いまゐ」等のブランドを主軸として25店舗の業態変更を実施しております。なお、「星乃珈琲店」の店舗数は、2024年2月末時点で国内においては277店舗となり、うち加盟店は36店舗となりました。

 商品戦略につきましては、引き続き、季節に合わせたメニュー開発のマーケティング力強化に努め、商品力を高めることでお客様にご満足頂ける商品を提供しております。また、多ブランド展開における効率化を考慮した商品開発を実施することで、徹底した原価管理を行っております。

 以上の結果、日本レストランシステムグループにおける売上高は501億72百万円(前期比12.1%増)、セグメント利益は28億70百万円(前期比195.4%増)となりました。

 

 

(ドトールコーヒーグループ)

 ドトールコーヒーグループの小売事業及びフランチャイズ事業は、新型コロナウイルスの5類移行により、人流が  回復したことで、ビジネス街や駅前立地を中心に売上高は上昇傾向が鮮明となりました。回復が遅れがちであったモーニングの時間帯も客数が回復しつつあり、ランチやティータイムの改善も継続していることが、業績の回復に繋がっております。

 小売事業においては、コロナ禍に対応したテイクアウト施策や売店商品の拡大を継続しながら、季節ごとの商品など付加価値の高いメニューを随時導入し、顧客単価を上げることで売上の回復に努めました。また、4種類のポイントプログラムを導入し、客数の回復を目指したキャッシュレス・キャンペーン施策を継続して打つことにより、新規顧客の獲得やリピーターの確保に努めております。また、原材料や人件費、物流費などをはじめとしたコストアップに対し、昨年来取り組んでいる維持管理コストの削減を継続実施することで、コスト全体の上昇は最小限に抑えております。

 卸売事業においては、コンビニやスーパー向けチルド飲料において、プライベートブランド・ナショナルブランドともに、商品展開の幅を広げることで、売上高の拡大に努めました。また、ドリップコーヒーやインスタントコーヒーなど、通信販売や量販店での販売を拡大、新たな商品の開発・販売を展開することで販売強化に努め、引き続き業容拡大に邁進しました。

 以上の結果、ドトールコーヒーグループにおける売上高は834億71百万円(前期比10.6%増)、セグメント利益は35億3百万円(前期比223.2%増)となりました。

 

(その他)

 その他セグメントにおいては、主に国内及び海外における外食事業に係る小売及び卸売に関する事業となります。売上高は69億80百万円(前期比5.5%増)、セグメント利益は10億56百万円(前期比12.4%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ35億73百万円増加し、357億96百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益74億49百万円、減価償却費42億57百万円、法人税等の支払額12億46百万円等により、117億95百万円の収入となりました(前期は51億71百万円の収入)。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは、新規出店等の有形固定資産の取得による支出44億68百万円、敷金及び保証金の差入による支出7億45百万円等により、49億4百万円の支出となりました(前期は55億88百万円の支出)。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額15億79百万円、自己株式の取得による支出8億93百万円等により、33億73百万円の支出となりました(前期は19億82百万円の支出)。


 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

ドトールコーヒーグループ(百万円)

7,721

108.0

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

b.受注実績

当社グループは、見込み生産を行なっておりますので、受注実績については記載すべき事項はありません。

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

日本レストランシステムグループ(百万円)

50,172

112.1

ドトールコーヒーグループ(百万円)

83,471

110.6

その他(百万円)

6,980

105.5

合計(百万円)

140,625

110.8

 (注)1.金額は外部顧客に対する売上高を示しております。

2.主な相手先別の販売実績及びその割合については、いずれも売上高の100分の10未満のため、記載を省略

  しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容、資本の財源及び資金の流動性に関する状況は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績の分析

 「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

③ 当連結会計年度末の財政状態の分析

 当連結会計年度末における総資産は、現金及び預金の増加や受取手形及び売掛金の増加等により1,277億88百万円と前連結会計年度末と比べ67億51百万円の増加となりました。負債は、支払手形及び買掛金の増加等により283億14百万円と前連結会計年度末と比べ35億70百万円の増加となりました。純資産は、利益剰余金の増加等により994億74百万円となり前連結会計年度末と比べ31億81百万円の増加となりました。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 当社グループの資金状況は、営業活動によるキャッシュ・フローが117億95百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローが49億4百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローが33億73百万円の支出となりました。
 当連結会計年度の詳細につきましては、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
 なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりであります。

 

2022年2月期

2023年2月期

2024年2月期

自己資本比率(%)

79.4

79.3

77.6

時価ベースの自己資本比率

(%)

60.6

68.2

70.6

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.1

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

1,055.3

337.3

679.2

 

 (注)1.自己資本比率:自己資本/総資産
    2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
    3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
    4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
    5.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
    6.いずれも連結ベースの財務諸表により計算しております。
    7.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
    8.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としており
         ます。
    9.利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 当連結会計年度の運転資金及び資本的支出は、基本的に自己資金により賄いました。当社グループの重要な資本的支出は、主に店舗事業における出店コスト及び改装コストに係る設備投資であります。資金の調達源につきましては、主に自己資金により賄えるものと判断しておりますが、必要に応じ金融機関からの借入金等により対応してまいります。

 

⑤ 経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況

 当社グループは、企業価値を持続的に高めていくことが経営上の重要課題であると認識しています。

 当連結会計年度における、目標の達成状況は以下のとおりになります。

 

目標

2024年2月期

2023年2月期

2024年2月期

(実績)

(計画)

(実績)

売上高(百万円)

126,864

138,718

140,625

経常利益(百万円)

3,466

7,445

7,701

経常利益率(%)

2.7

5.4

5.5

 

⑥ 経営陣の問題意識と今後の方針

 当社は、日本レストランシステム㈱と㈱ドトールコーヒーの両社の共同株式移転により設立された共同持株会社であります。
 当社グループの経営陣は、近年の外食産業を取り巻く環境は一段と厳しくなっており、企業間の格差も鮮明になることが予想されると認識しております。
 このような状況下、統合により、両社の持つ経営資源とノウハウの有効活用により、㈱ドトールコーヒーの強みである「飲」と、日本レストランシステム㈱の強みである「食」を更に強化・発展させていくとともに、㈱ドトールコーヒーの店舗展開力及び日本レストランシステム㈱の業態開発力の融合による新たな価値創造を最大限発揮できる体制を確立することで、グループ価値の最大化を推進していきます。
 また、多様化したお客様の心の奥底にある期待感に応えることのできる「外食産業における日本一のエクセレント・リーディングカンパニー」の地位確立を目指してまいります。

5【経営上の重要な契約等】

国内フランチャイズ契約

     ① 「ドトールコーヒーショップ」チェーン加盟契約
     (a)契約の本旨
        ㈱ドトールコーヒーと「ドトールコーヒーショップ」チェーンに加盟し事業を行なおうとする事業者
       (加盟者)との間の相互の利益に基づく共存共栄と永続的な提携関係を保持することを目的とする。
     (b)契約内容
       (イ)加盟店は本部より許可された商標、サービスマーク等を使用することができる。
       (ロ)加盟店は本部が提供するノウハウ、システム等を利用することができる。
       (ハ)加盟店は営業を開始するに当たり、本部よりインストラクターの派遣を受けられるものとする。
       (ニ)加盟に際し、㈱ドトールコーヒーが徴収する加盟契約料、ロイヤリティ等に関する事項
           加盟金:チェーン加盟金 150万円(新規加盟時のみ) 出店準備金 150万円(店舗出店時)
           保証金:チェーン保証金 150万円(新規加盟時のみ) 出店保証金 150万円(店舗出店時)
           ロイヤリティ   売上高の2%
           設計管理料    店舗設計等1件につき基本料110万円+(契約坪数-10坪)×4万円
           研修費      20万円(1名分)
     (c)契約期間
        契約日以降最初に到来する3月1日から5年間。期間満了後は協議の上更新できる。
     ② 「エクセルシオール・カフェ」チェーン加盟契約
      契約の本旨、契約内容については、ロイヤリティが売上高の3%であるほかは、上記①「ドトールコーヒ
      ーショップ」チェーン加盟契約と基本的に同一内容であります。

 

6【研究開発活動】

特記事項はありません。