当社は「常に新しいファッションライフの提案を通じて社会に貢献する」ことを社是としており、その実現に向け、商品、サービス、販売技術、財務体質や社員の質などすべてにおいて、お客様はもとより、株主の皆様、お得意先様、また、社会から認められる企業として成長し、信頼を確立することを基本方針としております。
当企業集団は、企業基盤を強化し、高収益体質の構築を目指しております。その結果として、ROE(自己資本利益率)12%を安定的に達成することを目標として企業経営に取り組んでおります。
当連結会計年度(2023年3月1日から2024年2月29日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が2023年5月8日に「5類感染症」に位置付けられたことにより、感染による隔離措置や濃厚接触者を含めて外出の自粛要請及び就業制限などの行動制限がなくなるなど、経済活動に対する各種の制約がなくなったことなどを受け、経済環境の回復が見られました。一方、ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過するも終結には至らず、エネルギー資源、原材料価格の高騰や急激な円安の進行など、先行きは未だ不透明な状況となっております。
①EC強化とWEBプロモ―ションの強化
このような事業環境のもと、当社は新型コロナウイルス感染症拡大当初より進めてきたECでの販売強化と、WEBプロモーションの強化に取り組んでまいりました。インスタグラムなどのSNSを媒体として、フォロワー総数約1,500万人のスタッフ個人アカウントから積極的な発信を継続的に行い、反応の良い商品をさらに集中的に発信することで、プロモーションを効果的なものにし、これらの施策がECのみならず実店舗での売上にもつながる大きな役割を果たすようになっています。
②店舗の大型化
当社グループでは、全社横断的に情報を共有し、他ブランドとのコラボや、ブランド内ブランドの開発などにより、生産ロットをまとめることによる原価率低減、他ブランドでの展開による知名度のアップなどにより、店舗を大型化することによる経営効率の向上を図っています。
③4週間MDの徹底
4週間MDの構築によって、販売予測の精緻化、最終消化率の向上を図っています。この4週間MDの定着に伴い、売上総利益率の向上とともに、余剰在庫の削減、最終廃棄商品の削減を図っており、今後もさらなる精度向上に取り組んでまいります。
④シフトの適正化
必要な時間帯に必要な人員配置を行うため、店舗作業のスケジュール化、SNS業務の効率化、時間帯別適正人員の配置、パート・アルバイトの勤務時間や勤務日数など採用基準の弾力化などによって無駄のない勤務シフト体制を構築し、効率的に売上を向上するよう取り組むと同時に、残業時間の削減によって従業員のQOLを向上させることを目指しています。
⑤サステナビリティ経営
2019年にサステナビリティ委員会を設置し、全社横断組織としてサステナビリティ体制を推進する組織を作り、「環境」と「人権」の2つのテーマから課題を抽出し、取り組むべき優先順位を決め取り組んでまいりました。
環境負荷の軽減では、これまでに、店舗照明のLED化、「サプライヤー行動規範」を定めて責任ある調達体制の確立、環境負荷に配慮した商品開発、PBP Cotton Foundationとの取り組み、従業員向けサステナビリティ講座の実施、などを行っています。
また、2021年に気候変動リスク管理委員会を設置し、サステナビリティ委員会と並行して、気候変動への対応戦略を立案、実行、結果のモニタリング、経営へのリスクアセスメントを行っています。
人権尊重の取り組みでは、「サプライヤー行動規範」のほか、「パルグループ人権方針」を制定し、人権啓発に取り組んでいます。
また、女性管理職の登用を積極的に行い、女性管理職比率は67%、女性店長比率は84%に上り、女性のライフステージを考慮して、出産や育児などがキャリア形成に不利にならない体制を整えています。
さらに、障がい者雇用も積極的に行っており、2012年に従業員の大半が障がい者のホテルを和歌山県白浜町に開業したほか、店舗等において就労機会の拡大と就労の質の向上に努めてまいりました。この結果、2024年1月末現在障がい者雇用率は2.94%と、2024年3月までの法定雇用率2.3%、2024年4月以降の法定雇用率2.5%ともに上回っております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る問題が、社会にとって重要な課題であるとともに、当社グループ事業の継続的・持続的成長の観点から重要な課題であることを認識し、グループ全体のサステナビリティ活動をリードしていくためサステナビリティ委員会(原則年4回開催)が2019年11月にアドバイザリー委員会として設置されました。翌2020年には取締役会の下に組織として設置され、取締役会への諮問機関として機能しています。具体的には、グループ内のESGに関する方針策定や施策について審議、実行する役割などを担っています。サステナビリティの取り組みはグループの未来を左右する重要事項として位置付けられており、サステナビリティ委員会の委員は当社グループ各社から横断的に選出することで全社員がサステナビリティ経営の重要性を認識し、積極的な意見交換を行いながら、サステナビリティ活動をグループ内で広く普及させる役割を担っております。2020年2月以降、毎年2月にサステナビリティレポートを発行しております。また2021年には気候変動リスク管理委員会を並列で設置し、温室効果ガスの削減取り組みの加速やレジリエンスの向上、透明性の高い情報開示を行ってきましたが、2023年にサステナビリティ委員会と統合しました。
「気候変動対応」や「人的資本・多様性」を含むサステナビリティに関わる重要な議案は取締役会に上程、報告を行い、承認、助言、監督を受けます。
・サステナビリティ委員会の構成員
取締役副社長 児島宏文(委員長)、取締役副会長 渡辺隆代(委員長補佐)、
常務執行役員営業管理部長 山之内基文(事務局長)、㈱パル 古川真也(事務局)
専務執行役員広報室長 為田招志、常務執行役員総務部長 嶋尾博光、執行役員人事部長 小椋秀隆、
執行役員財務経理部長 小西康之、執行役員フリーゲート白浜担当 井上真央、
広報室 田上洋、総務部 清水領、㈱パル専務執行役員プロモーション推進部長 堀田覚、
㈱パル常務執行役員第7事業部長 山崎修、㈱パル常務執行役員第2事業部長 谷田真美、
㈱パル執行役員第3事業部長 松本由美、㈱パル常務執行役員第4事業部長 澤井克之、
㈱パル執行役員第5事業部長 山田和史、㈱パル第1事業部 山田浩司、
㈱パル第4事業部 角屋悠太、㈱パル営業本部 大久保学、
㈱パル生産プラットフォーム室 池田修、㈱パル スマイルプロモーション室 大谷光代、
㈱パル クリエイティブデザイン室 國宗篤史、㈱マグスタイル 石川由花
㈱ナイスクラップ常務取締役 松村迅、
㈱ナイスクラップ執行役員ナイスクラップアウトレット部長 牧雄一、
㈱ノーリーズ取締役 山本陽子、㈱ノーリーズ事業支援本部 山田慎介
㈱P.M.フロンティア 田﨑祐助

当社グループでは、長きにわたりファッションのチカラでお客様や働く仲間に笑顔を届けることを目的としてきました。お客様が求める商品を企画し、効率を考えた最適な生産方式で、効率よく店舗に届け販売し、収益を上げることを目指してきました。近年、企業の社会的責任(CSR)が盛んに論じられるようになり、ファッション産業が直面する環境問題、人権問題など様々な社会問題が数多く指摘されています。当社は業務プロセスを見直すなど積極的に問題解決に尽力してまいりました。さらにここ数年で、世界各国のSDGsの取り組みが活発化しています。私たちは企業の在り方を見つめ直し、サステナビリティは経営の根幹であると再定義しました。
環境、人権など様々な社会問題が表面化するなか、企業には経済的なアウトカムだけではなく、それらの社会問題を解決する役割があります。まずは企業の外部不経済を排除し、企業活動のなかで社会との共有価値を創造する(CSV)ことが重要です。これにより企業としても永続的な成長につながり、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティとが同期されます。
持続可能な未来を創るグループであるために、企業理念の根底にサステナビリティを据えて、社員皆で共有し企業風土を確立して参りたいと思います。
また、人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、当社グループは設立以来、人材を企業経営の最も重要な資本のひとつとして捉え、人材価値を最大限に引き出すための経営を行ってきました。アパレルファッション業界において、人材こそが企業文化の独自性を育み、持続的な成長を担保する重要な要因であると考えています。長中期的なビジョンを策定するにあたり、人材を資本としてその価値を最大限に引き出すための人事戦略は以下のとおりです。
<人材育成方針>
パルグループの経営理念は、「社員と株主みんなの幸せのための経営」であり、社員が幸せな状態とは、社員一人ひとりが「自主性・自発性」を発揮できる状態だと考えております。当社は現在40以上の多ブランドを展開していますが、その大半は社員からの提案によるものであり、自主性・自発性を持った社員たちが存分に力を発揮してくれたことが当社の成長の原動力となっております。
そして、社員一人一人が成し遂げたい自分の夢の実現のために、会社はその仕組みと知恵を提供し、社員の成長をサポートする役割を企業は担っていると考えております。
<社内環境整備方針>
「自発性を発揮して成果を出した社員が、きっちりと評価され、自発性を発揮して提案をすることが歓迎される」そのような風土が、自発性を促し、社員一人一人のパフォーマンスが上がり、結果的に会社の成長につながると考えております。そうした環境をより強化していくために、さまざまな制度や仕組みを整備し、パルグループのパワーの源である「社員の自主性・自発性」を引き出しています。なお、キャリアプラン、インセンティブ制度、ワークライフバランスなど詳細はサステナビリティレポートに記載しております。
①「働きに応じて平等」な人事評価制度
大事にしているのが、「働きに応じて平等」の考えです。オープンでクリアな評価制度があり、たとえキャリアの浅い社員であっても自主提案を繰り返し、想いを行動に移せる人には要職を任せたり、自らの手でブランドをプロデュースしたり、年功・社歴には全くとらわれない成長曲線を描くことができます。一方で、事業部ブランドにより評価軸が偏らない様に、評価を行う際には経営トップから各ブランド幹部までが一堂に会して、評価目線を平準化する会議を十分な時間をかけて実施しています。
②提案制度(拝啓社長殿、PAL CHALLENGE PROJECT)
これはアルバイトスタッフを含む全社員が年に2回、社長に向けてアイディアを提案できる制度で、社員が今の仕事や上司に対して感じていることや、新しいブランドの提案など自由に発言できます。優れた提案であれば、立場や入社年数に関係なく、一気に事業を任せられるチャンスとなります。
PAL CHALLENGE PROJECT(パル・チャレンジプロジェクト)
日々の仕事の中や、何気ない時にひらめく社員の直感的なアイデアを、新鮮なうちに形にする社内公募制度です。企画が通れば必ず実現されます。過去に実施された商品企画のクラウドファンディングも、このプロジェクトから生まれた施策です。
③社員のがんばりを評価する各種インセンティブ制度
ⅰ.販売士制度
販売貢献度の高さを手当てで評価するインセンティブ制度です。個人の売上目標額を上回る販売員には、貢献度に応じて、給与とは別に手当を支給します。
生活雑貨ブランドの場合は、店舗の売上に応じて、スタッフに利益を配分する仕組みをとっています。
ⅱ.インフルエンサー制度
ショップスタッフの個人のSNS(WEAR、Instagram、アプリ)を使ったブランドプロモーションを評価する制度です。
SNSのフォロワー数に応じて、給与とは別に手当てを支給します。
ⅲ.様々な表彰制度(2023年表彰項目)
・個人予算達成賞:年間個人予算達成率上位者。
・個人年間売上優秀賞:年間個人売上金額上位者。
・新人賞:個人予算達成率において優秀な成績を収めた新入社員。
・PALSIP賞:(接客ロールプレイング)本選大会で高い評価を受けた優秀者。
・EC売上貢献スタッフ賞:
コーディネートとブログ、SNSから集客し、EC売上に貢献した従業員。
・インフルエンサーオブザイヤー:
INSTAGRAM、WEAR、TikTokアプリのフォロワーの増加率が高い従業員。
ⅳ.働き方に応じたキャリアプラン
・社内公募制度
パルでのキャリアステップは、働きに応じて多様なプランがあります。
まず、営業部門においては販売職からスタートしていただくのは全員必須です。
その後、店長やSV、ブランド長や事業部長、バイヤーやMDといった商品企画職へ進んでいただくことも可能ですが、すべての職種の基礎となるのは、お店であり、接客であると考えます。
・セールスエキスパート制度
パルでは、営業部門においては全てのキャリアのスタートは販売職から始まります。
もし、販売のお仕事にやりがいを感じて、ずっと販売職でキャリアアップしたいという方があれば、セールススペシャリストやセールスエキスパートといった職で、販売職のエキスパートとして歩んでいただくことも可能になりました。
ⅴ.次世代人材の発掘と育成
30億円超のブランドについては、ブランド内ブランドを新設しそこには新しい人材を登用するように、半期のブランドヒアリングでチェックしております。
人的資本関連セミナーの実施~各パルグループでは中長期的な企業価値の向上のためには、働く社員ひとり一人が積極的な学びを通して、自ら考えて行動することが不可欠であると考えています。サステナビリティ委員会では、その一環として社内セミナーを開催することと致しました。いままで事業部やブランド単位で培ってきたナレッジ(知識、経験、ノウハウ)を、グループ内で広く共有することで、それぞれの立場で現業に生かすヒントとして考え、更なるシナジーを期待したいと思います。
当社グループでは、直接操業のみならず上流•下流を含むバリューチェーンにおける気候関連リスク及び機会は、大きな影響を与えるリスクの一つと認識し、全社的なリスクマネジメントプロセスに統合し管理しています。
①リスクの種別に沿って項目を抽出。それぞれの項目で定性的 / 定量的に分析
②リスク別での時間軸とインパクトの大小を評価。
③優先順位をつけて施策を実行。
COP26(気候変動枠組条約締約国会議)では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える努力を追求すると各国が合意文章を採択しました。当社グループはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)で推奨されるシナリオ分析に基づき、2030年と2050年を目標とし、1.5℃シナリオと4℃シナリオで当社グループにおける気候変動のリスクと機会を精査•評価しました。
気候変動に伴う自然災害の増加•激甚化の傾向は世界全体の喫緊の課題であり、アパレル産業においても速やかな対応が求められています。私たちが選択する個々の商品の企画内容や、生産体制が温室効果ガスの排出量を左右しているとも言えます。我が国が掲げる2050年のカーボンニュートラルの実現を踏まえ、企業が事業活動を通じて貢献できる温室効果ガス排出削減の促進策を積極的に推し進めています。当社グループでは以下の3つの基本的な考え方を根底として、気候変動対策に取り組んでまいります。
①カーボンニュートラル
我が国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、「2050年カーボンニュートラル」を掲げております。この方針に賛同し、企業の責任として対応すべき温室効果ガスの削減を、商品、サプライチェーン、販売など企業活動のあらゆる方向から探り、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて全力でチャレンジします。
②パリ協定と温室効果ガスの削減
気候変動の進行を緩和することを目的に2016年にパリ協定が発効し、世界共通の長期目標として地球の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑えることと、さらに1.5℃に抑えるよう努力が掲げられています。当社グループでは、気候変動への対応をサステナビリティにおける重要課題の一つとして位置付けており、商品の生産から廃棄までを含む、事業活動全般における温室効果ガス排出量を把握し、削減することに取り組みます。
③グループを横断した取り組み
当社グループの温室効果ガス削減の取り組みにおいては、環境負荷の多寡を左右する商品企画や、生産に対する施策を優先して行うことが重要です。そのためには商品に関わるグループの社員すべてが問題意識を高め、それぞれの立場での対応策を速やかに講じる必要があります。私たちは、グループを横断して社員一人ひとりの単位から対策を推進することにより、温室効果ガス削減を実行し、グループ全体として脱炭素社会の実現に貢献してまいります。
また、当社グループでは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
提出会社
(注)1.上記表は正規雇用労働者の比率を表しております。
2.男性の育児休業取得率=「育児休業をした男性労働者数」/「配偶者が出産した男性労働者数」。
㈱パル
(注)1.上記表は正規雇用労働者の比率を表しております。
2.男性の育児休業取得率=「育児休業をした男性労働者数」/「配偶者が出産した男性労働者数」。
㈱ナイスクラップ
(注)1.上記表は正規雇用労働者の比率を表しております。
2.男性の育児休業取得率=「育児休業をした男性労働者数」/「配偶者が出産した男性労働者数」。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1)ファッション動向の変化について
一般に、ファッション動向は常に変化する流行に左右されることから、当社グループが属するファッション衣料業界におきましては、業績に対する流行の影響を排除することは困難であります。また、主要顧客である若年層向のマーケットにおける同業他社との競争は熾烈であります。
当社グループでは、複数のブランドを持つことにより広範囲のファッションをカバーし、また、1週間単位で事業部毎に各店責任者が集まり、販売動向、在庫動向等の検証を行う等、流行に即した商品企画および仕入に努めております。
(2)出店政策について
①テナント出店について
当社グループは、主として駅ビルや商業施設等にテナントとして出店しております。これは集客力を有する駅ビル等に出店することで販売力を確保すること、周辺環境や人の流れの変化に迅速に対応し出退店によるスクラップアンドビルドを行う際に過剰な固定資産や設備の保有を極力避けることを目的とするものであります。
当社グループは、今後もストアブランドを保ちながら、駅ビルや商業施設等へのテナント店舗を中心に積極的な出店を進めていく方針であります。
また、出店先の選定にあたり、賃借料、商圏人口、特に衣料品に関しては主要顧客である若者に魅力ある出店先であるかどうか等を総合的に勘案することで、効率的な店舗展開を図っております。当社グループにとって魅力的な出店先が充分に確保できない場合には出店数を縮小する可能性があるほか、店舗の出店数、出店場所、出店時期等により、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
さらに、テナント店舗の出店にあたり店舗賃借のための保証金の差し入れを行っているため、2024年2月末時点において保証金が総資産の9.7%を占めております。当社グループは大手デベロッパーへの出店がほとんどでありますが、倒産その他賃貸人の事情により保証金の全部または一部が回収できない可能性があります。
②スクラップアンドビルドに伴う費用について
当社グループは、ファッショントレンドの変化を迅速かつ正確に読み取り新しい業態を開発する一方、時流に合わなくなった古い業態は積極的に見直しております。一般に小売業界におきましては開店後の経過等により既存店舗の売上は減少する傾向にあることから、当社グループでは新規出店に加えて、既存店舗におきましても商品構成の見直し、業態変更、必要な場合は退店を行う等、スクラップアンドビルドを積極的に行うことで店舗全体の活性化を図っております。当社グループでは、このような事業再構築のための費用が、いわば必要経費的に発生するものと認識しております。
(3) 大規模感染症等による影響について
新型コロナウイルス感染症のような世界的な大規模感染症の拡大により、生産工場の閉鎖、店舗の休業等、仕入・売上双方に大きな影響が出る可能性があり、仕入においては、調達先の多様化を進めております。また、ECに注力するなど販売チャネルを多角化して売上を確保できるよう努めております。
(4) 気候変動について
アパレル業界では季節による消費者の購買動向に合わせ販売商品を生産・調達しておりますが、気候変動により、生産・調達した商品が販売不振となるリスクがあります。当社グループではいち早く販売商品を切り替えることができるよう4週間で調達販売のサイクルを終了する4週間MDの徹底と推進に努めております。
(5)顧客情報の管理について
当社グループでは、顧客情報の管理には細心の注意を払っておりますが、顧客情報の外部漏洩事件が発生した場合には、当社グループの信用力が低下する等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)為替変動の影響について
当社グループの商品のほとんどを輸入に依存していることから、為替相場の急激な変動による仕入れ価格の高騰によって売上総利益率の悪化をもたらす可能性があります。特に、当社グループの売上に占める比率が37.6%を占める雑貨事業においては、販売価格の上限を設定している商品もあることなどから、悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度(2023年3月1日から2024年2月29日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が2023年5月8日に「5類感染症」に位置付けられたことにより、感染による隔離措置や濃厚接触者を含めて外出の自粛要請及び就業制限などの行動制限がなくなるなど、経済活動に対する各種の制約がなくなったことなどを受け、経済環境の回復が見られました。一方、ロシアのウクライナ侵攻から2年が経過するも終結には至らず、エネルギー資源、原材料価格の高騰や急激な円安の進行など、先行きは未だ不透明な状況となっております。
このような事業環境のもと、当社は新型コロナウイルス感染症拡大当初より進めてきたECでの販売強化と、WEBプロモーションの強化に取り組んでまいりました。フォロワー総数約1,500万人に上るインスタグラムなどのスタッフ個人のSNSアカウントから積極的な発信を継続的に行い、反応の良い商品をさらに集中的に発信することで、プロモーションを効果的なものにし、これらの施策がECのみならず実店舗での売上にもつながる大きな役割を果たすようになっています。
またテレビの情報番組やバラエティー番組で特集を組まれる機会が増え、知名度が飛躍的に向上した「3COINS」を中心に新規出店の加速とともに既存店の増床による大型化を進めてまいりました。行動制限の緩和により人の流れが増え、商業施設の集客も好転したことなどから、衣料事業の売上高は、前年比13,986百万円増加の119,767百万円、雑貨事業の売上高は、前年比14,018百万円増加の72,577百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前年比28,062百万円増加の192,544百万円となりました。利益面につきましては、営業利益は前年比2,782百万円増加の18,605百万円、経常利益は前年比2,778百万円増加の18,839百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年比2,889百万円増加の12,845百万円となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
(衣料事業)
売上高は前年比13,986百万円増加の119,767百万円となり、セグメント利益(営業利益)は、32.7%増加の16,609百万円となりました。
(雑貨事業)
売上高は前年比14,018百万円増加の72,577百万円となり、セグメント利益(営業利益)は39.8%減少の1,978百万円となりました。
②財政状態の状況
(資産)
流動資産は、現金及び預金が3,383百万円、受取手形及び売掛金が1,819百万円、商品及び製品が3,986百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて11,195百万円増加しました。固定資産は、建物及び構築物が1,446百万円、リース資産が97百万円、差入保証金が540百万円、繰延税金資産が443百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて3,215百万円増加しました。
(負債)
流動負債は、1年内返済予定の長期借入金が3,064百万円、未払法人税等が1,347百万円それぞれ減少しましたが、支払手形及び買掛金が4,509百万円、未払費用が453百万円、賞与引当金が712百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて1,786百万円増加しました。固定負債は、長期借入金が2,844百万円、役員退職慰労引当金が1,073百万円、資産除去債務が474百万円それぞれ増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べて4,371百万円増加しました。
(純資産)
純資産は、利益剰余金が9,551百万円増加しましたが、自己株式を1,497百万円取得したことなどにより、前連結会計年度末に比べて8,253百万円増加しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により取得した資金が13,460百万円となりましたが、財務活動により使用した資金が5,672百万円となったことなどにより、前連結会計年度末に比べて3,383百万円増加し、67,228百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度におきましては、営業活動の結果取得した資金は17,029百万円でありましたが、当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益が18,239百万円あり、棚卸資産の増加が3,981百万円、法人税等の支払額が8,623百万円あったことなどにより、営業活動の結果取得した資金は13,460百万円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度におきましては、投資活動の結果使用した資金は2,599百万円でありましたが、当連結会計年度は、有形固定資産の取得による支出が2,969百万円、差入保証金の回収による収入が614百万円、差入保証金の差入による支出が1,155百万円、資産除去債務の履行による支出が338百万円あったことなどにより、投資活動により使用した資金は4,404百万円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度におきましては、財務活動の結果使用した資金は2,835百万円でありましたが、当連結会計年度は、配当金の支払額が3,295百万円、自己株式の取得による支出が1,528百万円あったことなどにより、財務活動により使用した資金は5,672百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
(注) セグメント間取引については,相殺消去しております。
(販売実績)
(注) 1.セグメント間取引については,相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容は次の通りであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社では、経営指標であるROE(自己資本利益率)12%の安定的達成のため、売上総利益率及び経常利益率の向上を重点施策としております。このため、新型コロナウイルス感染症拡大当初より進めてきたECの販売強化とWEBプロモーションの強化に取り組んでまいりました。生活雑貨ブランド「3COINS」を中心に新規出店の再加速と既存店の増床による大型化も進めてまいりました。
また、各ブランドでは、商品に関して4週間を1シーズンとする4週間MDを徹底することで、販売予測の精緻化、最終消化率の向上を図り、無駄な在庫を作らない・持たないように努めてまいりました。
前年と比較して、行動制限の解除により店舗の売上が好調に推移し、コロナ前の水準を上回る過去最高の売上高を達成することが出来ました。売上総利益率は原材料価格の高騰や急激な円安の影響を受けたものの0.3ポイント増加の55.2%、経常利益率は前年同様の9.8%となりました。ROEは前年比2.3ポイント増加の21.7%となりました。
主要損益項目の状況は以下の通りであります。
(売上高及び売上総利益)
売上高は前年比17.1%増加の192,544百万円となりました。売上高の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況及び④生産、受注及び販売の実績」をご参照ください。
差引売上総利益は前年比17.8%増加の106,283百万円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益、経常利益)
販売費及び一般管理費については、売上高販売費及び一般管理費率が前年比0.3%増加し、87,677百万円となりました。
営業利益は前年比17.6%増加の18,605百万円となり、経常利益は前年比17.3%増加の18,839百万円となりました。
(特別損益)
特別損失は、店舗の撤退、業態変更などによる固定資産除却損120百万円及び減損損失480百万円、合計600百万円を計上しました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前年比29.0%増加の12,845百万円となりました。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載の通りであります。
④資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの状況)
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。また、キャッシュ・フロー指標のトレンドは、以下のとおりであります。
(注) 1.自己資本比率 : 自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率: 有利子負債/営業キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー/利払い
5.各指標はいずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
6.株式時価総額は発行済株式数をベースに計算しております。
(運転資金)
運転資金は、主に営業活動による現金収入によっておりますが、状況に応じて銀行借入により資金調達することとしております。
(出店に伴う資金等)
一般にテナント店舗の出店にあたり店舗賃借のための保証金の差入が必要ですが、当社グループは、原則として借入金により調達する方針をとっております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。