第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測にはリスクや不確定要素などが包含されており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

(1) 経営方針

 当社グループは、「美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献」することを企業理念とし、化粧品・医薬品・医薬部外品の開発や製造を通して社会の信頼に応えていくとともに、株主の皆様への利益還元を図るため、収益力の向上、企業価値の増大に努めてまいります。

 また、当社グループは、自社ブランドを持たない化粧品、医薬品等の製造受託(OEM)/研究開発受託(ODM)メーカーとして、高度な専門技術と豊富な情報力に裏打ちされた高品質で信頼性の高い製品の供給を目指しており、お客様の良きパートナーとして、企画提案をはじめ研究開発から完成品製造まで一貫して受託できる体制を構築しております。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しております。

 それに加え、足元は新型コロナウイルス感染症まん延による業績悪化の影響で収益性と財務安定性が低下している状況の中で、収益力の向上と財務安定性の回復を当面の重要課題としております。競争力のある研究開発力と技術力をベースとした収益性の高い効率経営を目指し、売上高営業利益率および自己資本比率を重点指標として高めてまいりたいと考えております。

 

(3) 経営環境、経営戦略および優先的に対処すべき事業上ならびに財務上の課題

 次期の経営環境におきましては、引き続き社会・経済がアフター・コロナで正常化していく中で、地域間の跛行性はあっても景気は緩やかな回復・改善傾向が続くものと思われます。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や中東情勢の長期化もあって地政学的リスクは高止まり、資源・エネルギー価格、諸物価や人件費の上昇や、金利や為替相場の変動が経済活動に影響を及ぼすと共に、先行き不透明な状況が続くものと思われます。

 化粧品市場におきましても、国内ではマスク着用が習慣として一部常態化しており、個人消費はメイクアップ製品において新型コロナウイルスの感染拡大前を依然下回っておりますが、足元ではマスク着用も徐々に減り、消費マインドも大きく改善しており、新型コロナウイルス感染症の影響は一層軽減、化粧品需要は回復・改善していくものと思われます。海外においても、既にアフター・コロナに移行しており、化粧品需要は改善していくものと思われます。ただし、新型コロナウイルスの感染拡大は、わが国におけるマスク着用慣習化や新しい生活様式としての在宅勤務の定着など、化粧品の需要水準に影響を与えたのに加え、マスクに影響されない目周り化粧品やマスクに付きにくい口紅の人気など化粧品需要の内容にも影響を及ぼしました。化粧品ODMメーカーとして事業の成長を実現していくためには、こういった消費者や化粧品メーカーのニーズの変化に対応した新処方の提供や、新たな高付加価値処方の開発といった取組みを、着実に実施していくことが極めて重要と考えております。

 このような状況の中、当社グループは、新型コロナウイルス感染症まん延の影響を受けて悪化した業績からの復活を目指して策定した「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」に基づき、後半の成長ステージとして「コロナからの復活・回復のモメンタムを持続し、更なる成長へ」を掲げ、「競争優位にある「強み」製品の強化と拡大」、「クリーン・ビューティーへの積極取組」、ならびに「高収益体質への転換」を重点戦略として、積極的に取り組んでまいります。

 

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「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の「重点戦略」の取組み状況

 長く続いた新型コロナウイルス感染症まん延の影響が漸く収まり、「コロナからの復活と将来の成長に向けた事業基盤の再構築」から「コロナからの復活・回復のモメンタムを持続し、更なる成長へ」のステージに移行する中で、以下のとおり「重点戦略」に取り組んでまいります。

 

① 競争優位にある「強み」製品の強化と拡大

(回復する需要への対応)

・社会がアフター・コロナに移行する中で化粧品の需要が回復しており、お客様からの受注の回復・増加にお応えしております。特に、マスク着用機会が減ったことで口紅・リップクリーム等の受注が急激に増加しており、当社強み分野の一つとして一部設備増強も含めて対応しております。

(コロナ明けの新製品取組みへの対応)

・新型コロナウイルス感染症がまん延する中で化粧品の新製品発売は暫く抑制傾向にありましたが、足元の需要の回復でお客様も新製品発売への取組みを強化されており、当社が強みを持つ分野を中心に当社処方のご提案を積極的に行い、受注の増加に結び付けております。

・お客様への提案では、メールマガジン、サンプルキット、動画情報などを活用し、当社処方・製品の特徴を積極的にご説明することで、受注の増加に結びつけております。

(容器対応力の強化)

・容器対応能力を強化することで、処方と容器セットでのご提案に取組み、トラブルの原因究明などにも対応し、お客様へのサービス向上を進めております。

 

② クリーン・ビューティーへの積極取組

(顧客ニーズに合った幅広い処方を提案)

・お客様のブラックリスト/グレーリスト(使用できない/使用を抑える原料等のリスト)に対応しつつ高い機能を備えた処方をお客様にご提案することで受注を獲得し、お客様のクリーン・ビューティー/SDGsへの取組みをサポートすると共に、最終消費者のお客様の健康・安全への要求にお応えしております。

(サステナビリティ分野の取組みを推進)

・取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を組成、環境/パートナーシップ/高品質な製品提供/働き方・人財の各分科会を立ち上げて重要課題(マテリアリティ)や指標(KPI)を検討するなど、組織横断でSDGs関連の取組みを推進しております。

 

③ 高収益体質への転換

(座間・つくば2工場の稼働向上)

・新型コロナウイルス感染症の拡大前に投資したつくば工場第3期等で拡張した生産能力は、新型コロナウイルス感染症まん延による受注落ち込みで活用しきれない状況が続いておりましたが、足元の受注回復・増加に対応して稼働は急速に向上しつつあります。

・経済の回復・正常化に伴う採用難によって工数の確保が困難で、外注加工費が増加しておりますが、請負業者の活用等も含めた対応で工場の稼働は向上しつつあり、収益性の改善に貢献しております。

(インフレへの対応継続)

・原材料費・人件費・光熱費・各種経費の上昇が続く中で、お客様とのコミュニケーションを密に行い、新規受注に際して物価上昇を反映した見積りをお示しすると共に、リピート受注に関しても人件費や諸物価の上昇を反映させていただくことで収益性の維持に努め、価格やコストに見合った製品価値をご提供することで、お客様にご満足をいただくよう努めてまいります。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは「私たちは、美しさと健康とを創りだすことで生活・文化の向上に貢献します。」という企業理念のもと、企業活動を通して「豊かな心、知識、生活」を社会に生み出し、その結果「生活・文化の向上=ここちよい、快適な社会づくり」に貢献することを使命としております。

 化粧品ODMメーカーとしてグローバルに展開し、高度な技術と品質を背景に、世界の化粧品メーカーからパートナーとして信頼を得てまいりました。2015年に採択されたSDGsを皮切りに、サステナブルな社会への意識が高まるなか、化粧品メーカー各社においても環境、人権などの様々なサステナビリティ課題への取組みがスタートしております。当社もサプライヤーとして顧客の取組みに足並みをそろえるのみならず、サステナビリティを当社が掲げる「快適な社会」に欠かせない重要な経営課題と位置づけ、長期的な視点で持続的に社会価値と経済価値とを創出できるよう、独自の様々なサステナビリティ戦略に取組んでおります。

 

(1)サステナビリティに関する事項

① マテリアリティ(重要課題)

 当社は、特に欧米の化粧品メーカーのサプライヤーたる立場から、顧客より各社のサステナビリティに対する考え方を共有するよう依頼を受けることが増えてまいりました。このような状況を踏まえて、当社では各社のサステナビリティの考え方に沿った様々な取組みを開始いたしました。

 その後、サステナビリティを経営課題として捉え事業活動を通じて深化していくことがステークホルダーの期待に応えることであるとの認識のもと、2021年にこれまで当然のことと実施してきた事項や顧客要請のキャッチアップにとどまっていた事項について体系的に整理し、事業を通じて長期的に価値を創造していくため、製品のライフサイクルを俯瞰し、環境、人権、倫理、持続可能な調達等について分析を開始いたしました。

 2023年3月にはサステナビリティ委員会を設置し、これらの分析・検討や指標(KPI)の検討をさらに進め、マテリアリティを設定いたしました。「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」に重点戦略として掲げている「クリーン・ビューティーへの積極取組」等の推進のため、当該マテリアリティにもとづき、組織横断でサステナビリティ分野の取組みを実施しております。

 

カテゴリ

マテリアリティ項目

環境

環境に配慮した製品作り

エネルギー消費量・温室効果ガスの削減

資源の循環・ロスの削減

パートナーシップ

持続可能なサプライチェーンの構築

責任ある原料調達

容器・パッケージ

持続可能なものづくり

安心・安全な製品の提供

原料の消費抑制

継続的な従業員の教育

働き方・人財

女性活躍

人財の確保と育成・定着

人権の尊重

 

 

② 推進体制

 サステナビリティの取組みを推進する社内体制として、代表取締役社長を委員長とし、業務執行取締役と執行役員で構成するサステナビリティ委員会を、取締役会の諮問機関として設置しております。当該委員会は、サステナビリティ分野の活動方針等の枠組みを取締役会に答申し、取締役会にて決定しております。決定した各種方針等は具体的な活動に落とし込み、各担当部門にて活動を行います。

 また、当社は企業の社会的責任(CSR)、環境・社会・ガバナンス(ESG)、気候関連の開示等についての外部評価を行う機関である、EcoVadis、Sedex、およびCDPの会員となり、これらの外部評価により客観的に取組みの現在地を確認し、活動方針等の策定の参考としております。また、顧客の要請に基づき当社のサステナビリティ情報を共有し、顧客との関係強化やエンゲージメントに活用しております。

 

③ リスク管理

 サステナビリティ関連のリスクおよび機会については、サステナビリティに関する取組みを行う各部門において識別・評価・監視しております。

サステナビリティの取組み遅滞や上記の外部評価のスコア悪化により、顧客から監査や改善指導を受ける可能性があります。一方で、取組みの推進や外部評価のスコア上昇により、新たな取引の機会や既存取引の拡大につながる可能性もあります。

その他のリスクにつきましては分析・検討の最中ではありますが、現段階では個別具体的な数値の達成如何よりも、顧客とのエンゲージメントにより、当社のサステナビリティに対する推進体制や考え方を顧客に共有することで様々なリスクを極小化できるものと認識しております。

 

④ 重要な取組みと指標

 前述のマテリアリティに関して、様々な活動を行いながら、各種データの算定に取り組んでいる最中であります。特に気候変動問題と関連して重要である温室効果ガス(GHG排出量)については、定量的な目標の設定を行ってまいります。また、これらの活動を通じ、前述の外部評価のスコアの向上を目指しております。

 なお、マテリアリティのうち特に優先的に定量化に取組んでいる事項は以下のとおりであります。

カテゴリ

マテリアリティ

指標

環境

環境に配慮した製品作り

「クリーン・ビューティー」の推進

エネルギー消費量・温室効果ガスの削減

GHG排出量(Scope1,2)の削減

パートナーシップ

持続可能なサプライチェーンの構築

製品のライフサイクル全般におけるサステナビリティ取組みの推進

持続可能なものづくり

安心・安全な製品の提供

リコールの件数0件

働き方・人財

女性活躍

後述(2)②に記載

人財の確保と育成・定着

 

 

 

(2)人的資本に関する事項

 当社の成長戦略の推進には、豊かな発想と旺盛なチャレンジ精神で夢のある商品を生み出す「人財」の活躍が不可欠であります。また、長年培ってきた高度な専門技術力と豊富な情報力を活かし、付加価値の高い製品とサービスを生み出し続ける「体制」の整備が急務となっております。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により緊縮した人財と体制への取組みを攻勢に転じて、従業員一人ひとりが好奇心と探求心を最大限に発揮して働きがいを得られるような「人財育成」と「環境整備」を推進してまいります。

 

① 方針

a.人財育成方針

・従業員一人ひとりが能力を発揮するための教育研修や育成機会の再構築

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、従業員一人ひとりが能力を発揮するに値する場の創出が十分でなく、従業員の働きがいを実現していくための機会の提供に課題があることが顕在化しております。

 階層別研修をはじめとした従来の教育研修・育成機会を見直して再構築するとともに、教育研修・育成に対する取組み時間や費用などの投資を拡充することで、従業員一人ひとりのキャリア自律を促し、成長戦略に資する人財育成の推進へとつなげてまいります。

・マネジメント人財、若手人財、専門人財に対する取組みの強化

 成長戦略の担い手であるマネジメント人財の管理職研修等を通じた育成、事業成長の原動力である若手人財の業務研修やメンタルヘルス研修等を通じた育成と現場への定着、ならびに事業拡大の起点となる専門人財の確保に注力しております。

 新卒採用・キャリア採用と連動した育成体制を構築することで、専門性の向上と多様な交流の中から意識改革と育成効果の最大化を図ってまいります。

 

b.社内環境整備方針

・当社事業推進の基盤である女性活躍の推進と機会拡大

 労働者に占める女性労働者の割合は53.4%と女性の基盤が広範な一方で、管理職に占める女性労働者の割合が18.8%、男女間の賃金の差異が78.2%と、女性の活躍推進に課題があります。持続可能な勤務を維持するための職務体系や勤務地の限定、時短勤務などにより当該差異が生じる結果となっていると分析しております。管理職を含めた時短勤務の拡大や時差勤務などの働き方の充実を図り、働きやすい職場づくりに取組んでおります。

 今後は、女性リーダーミーティングを定期的に開催し、その場で聴取した意見やアイデアを反映して女性管理職候補者向けの研修を実施するなど、引き続き人財の育成と抜擢に注力するとともに、管理職向けにダイバーシティの意識付けを図る機会を設け、働きやすさにやりがいを加えて、女性の「活躍」と「働きがい」を推進してまいります。

・風土改革を通じた従業員のWell-being(ウェルビーイング)の推進

 従業員一人ひとりが好奇心と探求心を最大限に発揮し働きがいを得るためには、個人と組織が相互の成長に貢献し合うエンゲージメントの向上が不可欠と考え、従業員のワークライフの充実と連動させたウェルビーイングの実現を目指しております。

 そのための風土改革として、従業員幸福度調査を導入し、従業員のウェルビーイングを可視化するとともに、その改善に向けたコミュニケーションの機会として、経営陣と従業員の対話の場であるタウンホールミーティングや、有志による職場・自己変革のための意見交換会の開催などの施策を展開しております。

 

② 指標および目標

 当社では、上記人財の育成および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は次のとおりであります。

指 標

2022年

(実績)

2023年

(進捗)

2027年

(目標)

管理職・主任以上に占める女性労働者の割合(正社員)

35.8%

37.8%

50.0%

従業員の幸せ指数 (注)2

47.8

50.3

60.0

3年後の従業員定着率(正社員)

66.2%

62.5%

70.0%

女性労働者の平均勤続年数比率(正社員) (注)3

64.0%

58.1%

80.0%

従業員の年次有給休暇取得率(正社員)

44.8%

49.5%

60.0%

(注)1.「従業員の年次有給休暇取得率」は各年9月末時点、その他の指標は各年2月末日時点

2.「従業員の幸せ指数」は従業員幸福度調査により算出されたエンゲージメントスコア

3.「女性労働者の平均勤続年数比率」は、男性労働者の平均勤続年数に対する女性労働者の平均勤続年数の割合

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあり、投資家の投資判断上重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年5月30日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げている項目に限定されるものではありません。

① 化粧品市場環境

 国内化粧品市場は既に成熟期に入っており、M&Aによる企業グループの再編、異業種からの新規参入等、競争環境は厳しさを増しております。また、企業グループの再編や同業者同士による合従連衡、海外の化粧品受託製造事業者の国内市場への新規参入等、当社グループの位置する化粧品受託製造市場も、同様に競争環境は厳しさを増しております。

 従って、当社グループが予期せぬ競争環境の変化に的確に対処できない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② OEM(Original Equipment Manufacturing)/ODM(Original Design Manufacturing)企業としてのリスク

 当社グループの事業は、顧客化粧品メーカーのブランドで製造し販売するOEM/ODM生産の形態のため、当社グループの業績は顧客化粧品メーカーの営業施策、販売戦略ならびに外注施策による影響を受け易く、結果、当社グループの業績が著しく変化する可能性があります。

 また、特定顧客化粧品メーカーからの受注依存度が高くなると、その顧客化粧品メーカーの販売施策の影響を強く受ける可能性があります。

③ 製造および品質保証について

 当社グループでは、大規模な地震の発生等災害・事故発生時の生産・研究開発の中断による損失を最小化するため、生産拠点、情報システムおよび本社を事業継続の重要拠点と位置づけ、事業継続計画(BCP)の構築を行っております。しかしながら、想定を超える災害・事故の発生により、製造・研究開発の中断が生じた場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループが提供する製品には、想定外の欠陥等が生じるリスクがあり、またリコールが発生する可能性もあります。当社グループは、最適な品質を確保できるよう、全力を挙げて取り組んでおりますが、大規模な製造物責任賠償やリコールにつながるようなケースで、このコストが保険によってカバーできない場合、多額の支払いが生じるとともに、当社グループの製品の信頼性や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。その結果、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 海外での事業活動

 当社グループの主たる生産・販売・研究開発拠点はいずれも国内でありますが、欧州や北米、ならびにマーケットの急速な拡大が期待されるアジアにおける事業展開を強化しており、今後一層の拡大を目指しております。これらの海外での事業活動におきましては、予期し得ない経済的・政治的な政情不安、労働問題、テロ・戦争の勃発、感染症の流行による社会的混乱等のリスクが潜在するため、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 有能な人材の確保

 当社グループは製造受託(OEM)でありかつ研究開発受託(ODM)メーカーでありますが、将来に向けた持続的成長のためには、(ⅰ)研究開発部門の有能な人材の確保と育成(ⅱ)生産部門における労働力の確保と熟練に向けた育成が欠かせないものと考えております。そのため、貢献度を反映した評価制度や有能な人材の積極的な採用と育成を心がけております。しかしながら、人材の確保と育成の状況や重要な人材の流出が当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 戦略的投資活動

 当社グループは、国内においてはつくば工場の拡張による生産能力の増強、海外においてはフランスのテプニエ社ならびに日本色材フランス社を中心とした海外展開に対し、戦略的投資を行っております。

 戦略的投資活動の意思決定に際しては、必要な情報収集および検討を実施しておりますが、予期し得ない環境変化等により、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 研究開発活動

 研究開発は、当社グループの競争力の源泉のひとつであり継続的に研究開発投資を行っております。年度計画に則り効率的・効果的な研究開発活動を行っておりますが、特定の製品の開発が長期にわたる場合等、成果が翌期以降に及ぶことがあります。また、予定通りの成果が得られない場合、期間の延長や中断、投資額の増加を余儀なくされる場合や、結果として製品化できない場合もあります。さらに、製品化できた場合でも、様々な不確定要因が重なり、必ずしもお客様にご採用頂けるとは限りません。

 このように当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 金利水準および為替相場の変動について

 当連結会計年度末における当社グループの借入金等有利子負債残高は9,514百万円であり、金利情勢、その他金融市場の変動が財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。また、当社グループの外貨建の売上、費用、資産、負債等の項目は、連結財務諸表および財務諸表作成のために邦貨換算しており、換算時の為替相場により現地通貨ベースの価値に変動がなくても邦貨換算後の価値に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑨ 物価等の上昇について

 世界的な物価上昇や円安等の経済要因や、需給逼迫、自然災害、地政学上の問題、何らかの理由によるサプライヤーの供給減少、等に起因する、原材料や光熱費、各種経費等の価格高騰・物価上昇が、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。足元では、ロシアのウクライナ侵攻の長期化、緊迫する中東情勢の影響による、エネルギー価格や世界的な物価上昇が、当社の業績に影響を及ぼしております。

⑩ 繰延税金資産について

 当社グループは会計基準に従い、回収可能性の認められる繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計算は、将来の課税所得に関する様々な予測・仮定に基づいており、実際の結果はかかる予測・仮定とは異なる可能性があります。

 当社グループが、繰延税金資産の全部または一部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑪ 法的規制について

 当社グループの属する医薬品および化粧品業界は、医薬品医療機器等法等ならびに最終販売先が海外である場合には現地の規制等により法的規制を受けています。そのため、それらの改正や適用基準の変更によっては、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑫ 知的財産権保護の限界

 当社グループでは蓄積した技術を特許等の知的財産権として権利化を進めておりますが、特許出願は出願から少なくとも1年半は公開されないため、既に他社が出願を行った技術に対して開発投資をしている可能性があります。また、第三者による予測を超えた手段等により当社の知的財産権が侵害され、結果として技術の不正流用や模倣品の開発により、当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性や、当社グループの認識の範囲外で、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。

⑬ 大規模災害および感染症の流行等

 当社グループの主たる生産拠点は、神奈川座間市に所在する座間工場ならびに茨城県つくば市所在のつくば工場であります。そのため、特に関東地方および関東以北において大規模な震災、水害等が生じた場合、長期にわたり製品供給が困難になる可能性があります。また、社会的に影響の大きな感染症の拡大が発生し、顧客化粧品メーカーの施策に変化が生じた場合や、外出制限、工場操業を含む事業活動の制限/自粛等、事業活動に何等かの制限が生じた場合、当社グループの財政状態および経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。近年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような新たな感染症の流行が発生した場合には、感染拡大防止ガイドライン等に則った衛生管理や感染予防対策の実施等により、当社事業活動が制約を受けたり受注水準に大きな影響を及ぼしたりする恐れがあります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年3月1日~2024年2月29日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染状況が鎮静化したこともあり、正常化が大きく進みました。海外各国でも、既にアフター・コロナの生活様式が定着し、新型コロナウイルス感染症の生活・経済への影響は大きく軽減しておりますが、景気動向については中国経済が停滞するなど地域間の跛行性が見られます。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻は長期化、中東情勢の緊迫化・長期化もあって地政学的リスクは高まり、資源・エネルギー価格の上昇や物流の遅延等が日本を含めた世界的なインフレや金利上昇に波及、為替相場の変動を引き起こし、経済活動に影響を及ぼすと共に先行き不透明感を高めております。

化粧品業界におきましても、メイクアップ製品を中心に新型コロナウイルス感染症の影響が軽減、需要は改善の傾向が続いております。国内では、マスク着用が習慣として一部常態化しており、個人消費はメイクアップ製品を中心に新型コロナウイルスの感染拡大前を依然下回っておりますが、足元ではマスク着用も徐々に減り、消費マインドも大きく改善してきているものと思われます。海外においても、新型コロナウイルス感染症の影響は既に軽減、化粧品需要は回復の傾向にあるものと思われます。

当社グループにおきましては、国内・海外化粧品メーカーからの受注は回復・増加しつつあり、つくば工場第3期拡張等の設備投資によって実現した生産設備の稼働が着実に向上しつつあります。しかしながら、特に国内での採用難による工数不足をまかなうための外注加工費の上昇や、原材料費や各種経費等もインフレで上昇していることもあって、各種コストの圧縮努力を継続して収益性の維持・回復に取組み、当連結会計年度は2期連続の営業黒字計上を果たしております。

今後一層、社会がアフター・コロナに移行、正常化していく中で、化粧品需要は更に回復していくと思われますが、諸物価やエネルギー価格の上昇、経済の回復・正常化に伴う採用難や人件費等の上昇は継続しており、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢のような地政学的リスクも高いことから、引き続き経済全般の先行き不透明感は残ります。そのような経営環境下、黒字の継続、新型コロナウイルスの感染拡大以前の成長トレンドへの回帰と成長の実現に向けて「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の諸施策を着実に実行してまいります。当面は、新型コロナウイルス感染症の影響軽減に伴う需要増への対応でお客様の要請に応え、中長期的には化粧品へのクリーン・ビューティー、SDGs等の要請に対応するなど、変化し続ける環境で強みを活かして業績の回復・改善を図るべく更なる努力を重ねてまいります。

 

 以上の結果、当連結会計年度における財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。

 

a.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、売上高15,050百万円(前連結会計年度比28.0%増)、営業利益441百万円(前連結会計年度比173.0%増)、経常利益407百万円(前連結会計年度比174.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益398百万円(前連結会計年度比61.6%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

(日本)

 日本は、売上高10,261百万円(前連結会計年度比18.1%増)、営業利益220百万円(前連結会計年度比60.5%増)となりました。

(仏国)

 仏国は、売上高4,955百万円(前連結会計年度比57.1%増)、営業利益222百万円(前連結会計年度比785.7%増)となりました。

 

 

b.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,038百万円増加し、17,087百万円となりました。

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ522百万円増加し、13,560百万円となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ515百万円増加し、3,526百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は1,375百万円となり、前連結会計年度末に比べ147百万円増加いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、1,251百万円(前連結会計年度は615百万円の増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は、438百万円(前連結会計年度は252百万円の減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は、697百万円(前連結会計年度は413百万円の減少)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

日本(千円)

10,247,357

118.9

仏国(千円)

5,011,289

152.1

合計(千円)

15,258,646

128.1

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、仏国の生産実績に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減したことにより受注が回復したこと等によるものであります。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

日本

12,237,106

133.7

6,226,301

152.4

仏国

4,906,088

113.0

2,181,681

97.8

合計

17,143,194

127.0

8,407,983

133.1

 (注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、日本の受注実績に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減したことにより受注が回復したこと等によるものであります。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

前年同期比(%)

日本(千円)

10,095,657

117.3

仏国(千円)

4,954,405

157.1

合計(千円)

15,050,063

128.0

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.当連結会計年度において、仏国の販売実績に著しい変動がありました。これは、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減したことにより受注が回復したこと等によるものであります。

3.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年3月1日

至  2023年2月28日)

当連結会計年度

(自  2023年3月1日

至  2024年2月29日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱セザンヌ化粧品

1,229,302

10.5

1,730,918

11.5

㈱井田ラボラトリーズ

1,531,334

13.0

1,690,365

11.2

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析等

1)経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響軽減による化粧品需要の回復の動きを受けた国内・海外向け受注の回復と、円安が進んだこともあって、前連結会計年度より3,289百万円(28.0%)増加して15,050百万円となりました。

(売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は、引き続きつくば工場第3期拡張等により諸費用が増加、加えて原材料費や人件費、各種経費がインフレで上昇している中ではありますが、受注増による生産設備の稼働向上と各種コスト圧縮努力により、前連結会計年度より628百万円(45.3%)増加して2,015百万円となりました。売上高に対する比率は、前連結会計年度より1.6ポイント上回って13.4%となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より348百万円(28.5%)増加して1,574百万円となりました。売上高に対する比率は、前連結会計年度とほぼ横ばいの10.5%となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度より279百万円(173.0%)改善して441百万円となりました。

(営業外損益、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は、為替差益33百万円や補助金収入30百万円等の計上はあったものの前連結会計年度より15百万円(13.8%)減少して94百万円、営業外費用は支払利息128百万円の計上により前連結会計年度より5百万円(4.4%)増加して128百万円となりました。

 以上の結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度より259百万円(174.9%)改善して407百万円となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、日本色材フランス社に係るのれん及び固定資産の減損損失125百万円の計上や、繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額△210百万円(△は益)の計上等により、前連結会計年度より151百万円(61.6%)増加して398百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度より72円44銭増加して189円96銭となりました。

2)財政状態

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、7,134百万円(前連結会計年度末は6,160百万円)となり、前連結会計年度末に比べ973百万円増加いたしました。これは主に、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減する中での売上高の回復に伴う売上債権や棚卸資産の増加等によるものですが、科目別では原材料及び貯蔵品が405百万円、受取手形及び売掛金が278百万円、商品及び製品が242百万円増加したことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、9,952百万円(前連結会計年度末は9,888百万円)となり、前連結会計年度末に比べ64百万円増加いたしました。これは主に、設備投資により建設仮勘定が231百万円、繰延税金資産の積上げ等で投資その他の資産が158百万円増加し、土地が本社別館の一部売却等により113百万円、既存固定資産の減価償却等により建物及び構築物が106百万円、のれんの減損等により無形固定資産が99百万円減少したことによるものであります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、6,810百万円(前連結会計年度末は5,342百万円)となり、前連結会計年度末に比べ1,467百万円増加いたしました。これは主に、仕入の増加に伴う買入債務の増加等によるものですが、科目別では電子記録債務が350百万円、支払手形及び買掛金が113百万円、短期借入金が418百万円、未払金が393百万円増加したことによるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は、6,749百万円(前連結会計年度末は7,694百万円)となり、前連結会計年度末に比べ945百万円減少いたしました。これは主に、既存の長期借入金の約定弁済によるもので、長期借入金が893百万円減少したこと等によるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、3,526百万円(前連結会計年度末は3,011百万円)となり、前連結会計年度末に比べ515百万円増加いたしました。これは主に、黒字の計上により利益剰余金が398百万円、その他の包括利益累計額が、為替換算調整勘定の増加もあって117百万円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は20.6%(前連結会計年度末は18.8%)となりました。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営に重要な影響を与える可能性のある要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。これらのリスクの回避に努めるとともに発生した場合の対応に万全を期してまいります。

 

c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しております。

 それに加え、新型コロナウイルスまん延による業績悪化の影響で収益性と財務安定性が低下している状況におきまして、売上高営業利益率及び自己資本比率の向上を当面の重要な経営課題・指標としております。

 当連結会計年度の自己資本利益率は、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減したことで増益となっていることから、前連結会計年度より3.9ポイント改善して12.2%となりました。

 また、当連結会計年度の売上高営業利益率は、新型コロナウイルス感染症の影響が軽減したことで受注が増加して工場の稼働が向上、各種コスト圧縮努力を行ったこともあり、前連結会計年度より1.6ポイント改善して2.9%となりました。自己資本比率は、受注の回復で利益を計上したこともあり、前連結会計年度より1.9ポイント改善して20.6%となりました。

 連結売上高は、「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の最終年度である2026年度の目標連結売上高として130~150億円を掲げておりましたが、当連結会計年度の売上高が新型コロナウイルス感染症の影響軽減で前連結会計年度より32億円増加して150億円となりましたので、2026年度の新たな目標連結売上高として200億円レベルを掲げております。

 

 

d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度における所在地別セグメントの業績の概況は、次のとおりです。

(日本)

新型コロナウイルス感染症の社会・経済への影響は大きく軽減、影響は依然として残るものの化粧品需要も回復しつつあり、国内・海外化粧品メーカー各社からの受注が回復・増加していることから、売上高は前期比18.1%増の10,261百万円となりました。利益面では、引き続きつくば工場第3期拡張等による諸費用が増加、加えて原材料費や人件費、各種経費等もインフレで上昇している中ではありますが、受注の回復で生産設備の稼働は着実に向上、各種コスト圧縮努力もあって、営業利益は前期比60.5%増の220百万円となりました。セグメント資産は、増収に伴い売上債権や棚卸資産が増加しましたが、減価償却等で有形固定資産が、日本色材フランス社の子会社株式評価損の計上等で投資その他の資産が、それぞれ減少したこともあり、前期比1.2%減の13,550百万円となりました。

(仏国)

 子会社テプニエ社と日本色材フランス社の所在する欧州は、当連結会計年度(1~12月)において、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化の影響を受けましたが、新型コロナウイルス感染症の影響は既に大きく軽減して医薬品および化粧品の受注が増加、円安の影響もあって売上高は前期比57.1%増の4,955百万円となりました。利益面では、大幅な増収、特に医薬品の受注増が近年投資した設備の稼働向上を通じて利益に貢献し、設備投資に伴う諸費用の増加、ウクライナ侵攻や中東情勢によるエネルギー価格や諸物価の高騰の影響を打ち返し、営業利益は前期比785.7%増の222百万円となりました。セグメント資産は、増収に伴う売上債権や棚卸資産の増加や設備投資による有形固定資産の増加もあって、前期比24.0%増の4,727百万円となりました。なお、仏国セグメントにおきまして、日本色材フランス社に係るのれんや固定資産の減損に伴う特別損失125百万円を計上しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果増加した資金は、1,251百万円(前連結会計年度は615百万円の増加)となりました。これは主に、減価償却費855百万円、仕入債務の増加額429百万円、税金等調整前当期純利益286百万円、未払金の増加額278百万円、減損損失125百万円等による増加と、棚卸資産の増加額598百万円、売上債権の増加額126百万円等による減少によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果減少した資金は、438百万円(前連結会計年度は252百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出659百万円等による減少と、有形固定資産の売却による収入142百万円等による増加によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果減少した資金は、697百万円(前連結会計年度は413百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の純増加額417百万円、長期借入れによる収入1,257百万円と長期借入金の返済による支出2,274百万円、リース債務の返済による支出97百万円等によるものであります。

(現金及び現金同等物の期末残高)

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、上記の要因により、1,375百万円となり、前連結会計年度末に比べ147百万円増加いたしました。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

1)資金需要

 当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要の2つがあります。

 運転資金需要の主なものは、当社グループ製品の製造のための原材料の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等によるものであります。また、設備資金需要としては経常的な機械設備等の買い換え取得や、増産に向けた機械設備の購入等によるものであります。

 

2)資金調達

 当社グループは、メイン銀行をはじめ取引金融機関と円滑な取引関係を維持しつつ、健全な財務体質の維持に注力しております。経常的な設備等の買い換え取得や運転資金については、内部資金を活用すると共に金融機関からの短期借入金及び長期借入金により資金調達を実施しております。特に、大口の設備資金需要に関しては長期の安定資金を金融機関から調達しております。

 

3)財務政策

 当社グループは資本政策として、資本効率(自己資本利益率:ROE)の維持・改善(当面の目標:8%以上を維持、10%以上を目指す)と資本コストの抑制を通じて、持続的成長と企業価値向上を目指しておりますが、自己資本利益率(ROE)の構成要素である財務レバレッジ(総資産/自己資本:自己資本比率の逆数)を財務政策の中で重視しております。

 財務レバレッジの上昇はROE向上に貢献しますが、一方で過度に高いレバレッジ(低い自己資本比率)は財務安定性を下げ、安定的な資金調達と事業の継続に悪影響を及ぼすため、ROEの維持・向上と財務安定性の維持の双方を勘案して、財務レバレッジ/自己資本比率の水準を調整していくことを目指しております。

 足元では、新型コロナウイルス感染症のまん延による業績悪化によって自己資本比率が低下しているため、業績の回復による内部留保の蓄積等によって、自己資本を回復させることを重点課題としており、自己資本比率を当面の重要な経営指標の一つとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成には、決算日における資産・負債の報告金額および偶発的資産・負債の開示、ならびに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与える見積りおよび仮定が必要となりますが、この判断および見積りには決算日までに入手可能なすべての情報と過去の実績を勘案して、合理的な根拠に基づいて継続的に評価しております。

 従って、連結財務諸表作成時点で実施した見積りおよび将来の予測が、予測不可能な事象の発生によって実際の結果が著しく異なることも考えられます。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 当社グループにおける研究開発につきましては、化粧品や医薬部外品・米国OTCの分野における多様化、高度化した広範な市場ニーズに応える製品をいち早く提供すると共に、基礎・応用研究に基づいた新規開発製剤の積極的な提案を基本方針としております。

 当社の研究開発活動は、研究開発部を中心として、技術開発部及び営業部、国際営業部で連携して行っており、次のとおり大別されます。

・ 新規企画、新規剤型の製品開発研究

・ 量産化及び充填技術開発研究

・ 原料素材開発、皮膚生理活性物質などの基礎・応用研究

・ 大学、原料・容器・資材メーカーとの共同研究

・ 製剤の有効成分等の分析、保存効力試験、有用性試験及び顧客ユーザーへの情報提供

・ 原料、製品の安全性情報の調査及び管理

・ 開発技術の知的財産権の確保及び技術情報管理

・ 海外各国規制情報の調査及び管理

・ 基礎・応用研究及び共同研究成果の発表

・ 国内外の市場ニーズ分析及び企画提案戦略の立案

 当連結会計年度の研究開発活動としましては、当社の強みである分散技術、加熱成型技術を柱とするファンデーション類、アイシャドウ・チーク類、口紅類などのメイクアップ製品ならびにUV関連製品、当社独自技術によるデザインフィラー製品を含むスキンケア製品などの一層の付加価値開発・競争力の強化を進め、国内のみならず広く海外のお客様からも受注を獲得いたしました。当連結会計年度は特に、「中期事業戦略ビジョン(2022-2026)」の中核であるサステナビリティを意識した「クリーン・ビューティーへの積極取組」を継続推進してまいりました。また、新規な付加価値開発の一例としては、世界中の様々な肌色のお客様(消費者)を、さらに美しく仕上げる光技術に着目した研究開発なども成果を上げつつあります。

 さらに、海外各国当局の成分規制動向が一層厳しくなる状況を踏まえ、前連結会計年度に引き続き、各国規制及び取り扱い原料に関する情報収集・管理を組織的に進めてまいりました。当連結会計年度は特に、中国の化粧品に関する前年度にスタートした新規制において、当局の急な変更が何度もありましたが適宜対応してまいりました。また、米国の化粧品規制近代化法(Modernization of Cosmetics Regulation Act of 2022:通称MoCRA)も、2023年12月より施行が開始され、こちらについても粛々と対応を進めております。

 また、日本、フランス両国での研究開発・技術開発の連携を推進し、フランス子会社での新製品生産にも力を入れてまいりました。

 以上の継続的な取り組みが、当連結会計年度においても、グローバルに展開する化粧品メーカーからの大型受注の獲得につながりました。今後も“メイド・イン・ジャパン”、“メイド・イン・フランス”が提供可能な当社独自のグループシナジーを活かして市場優位性を発揮してまいります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は737百万円となっております。