第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は、「Webマーケティングとセールステックを活用し、顧客、社会にとって有益なサービスを創る。」という企業理念のもと、Web領域における有益なサービスの提供を通して世の中に貢献する企業を目指しております。

 

(2)経営環境

 当社が主たる事業領域とする国内インターネット広告市場は成長を続け、2022年にはテレビ・新聞・雑誌・ラジオのマスコミ四媒体合計を上回る3兆912億円(前年比14.3%増)規模に拡大しており(出所:「2022年 日本の広告費」株式会社電通)、社会のデジタル化が進むなかで今後も継続して拡大することが見込まれます。

 同様に、当社がクラウド業務支援ツールをサービス提供している国内SaaS市場においても、2021年度の9,269億円から5年後の2026年度には1兆6,681億円規模に達するとの予測がみられ拡大傾向にあります(出所:「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」株式会社富士キメラ総研、「SaaS業界レポート2022」スマートキャンプ株式会社)。コロナ禍を契機として、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の機運が高まり(出所:「DXレポート2(中間取りまとめ)」経済産業省)、今後も働き方改革や生産性向上を実現するためのIT投資需要の増加は継続するものとみられ、市場規模の更なる拡大が見込まれます。

 

(3)経営戦略等

 当社は、安定的かつ継続的な事業拡大を目指し、主力事業であるWebマーケティング事業とクラウドセールステック事業を中心に、東京、大阪を主な拠点とした営業活動やWebマーケティング活動による受注強化に加え、金融機関、代理店との関係強化や大手企業との協業等で多様な販路を確立し、業績の向上に継続して取り組んでまいります。また、2020年11月の東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)への上場を契機に、多様な販路確立の一環で進めている金融機関との関係強化にも進展がみられ、東京・大阪以外の地域へも積極的に営業展開してまいります。

 SEO対策とWebサイト制作を融合・発展させた「オーガニックマーケティング」やWeb広告運用サービス等を提供するWebマーケティング事業では、サービス品質の向上、新たなサービスの拡充や業務効率の改善に継続して取り組み、既存顧客への提案力を高めてアップセルやクロスセルをより一層推進するとともに、新たな顧客層の開拓にも取り組んでまいります。

 クラウド業務支援ツールを提供するクラウドセールステック事業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進機運が継続するなかで、顧客のツール導入・定着支援、マーケティング機能やAI(人工知能)を活用した新機能開発や「Google 広告」、「Yahoo!広告」等の周辺サービスを提供する他社ツールとの接続強化等を進めて、提供ツールの機能と利便性の向上に努めるとともに、大手企業との協業等による販売促進にも取り組んでまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社の優先的に対処すべき課題は、以下のとおりであります。

 

①Webマーケティング提供サービスの持続的な品質向上

 当社の主力サービスである「オーガニックマーケティング」は、従来のSEO対策とWebサイト制作を統合し、検索エンジン経由でのWebサイトのアクセス数の増加から、案件成約率の改善まで、一連のマーケティングプロセス全てを一社完結で支援するサービスでありますが、検索エンジンにおいて頻繁に実施される順位決定の仕組み(アルゴリズム)の更新に対応していくことが提供サービスの持続的な品質向上を図っていくうえで必須の事項であると考えております。また、Web広告運用においては、広告媒体の多様化や広告媒体社側から提供される広告出稿のための最新機能を積極的に取り入れていくことが重要であると考えております。そのため当社では、SEOやWeb広告運用に関する対策手法や運用体制の改善に日常的に取り組み、今後もサービス品質の維持・向上に継続して努めてまいります。

 

②クラウド業務支援ツールの市場競争力の向上

 DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の機運が継続するなかで、当社が提供するクラウド業務支援ツールの市場競争力を高めていくためには、顧客ニーズに迅速かつ柔軟に対応し提供ツールの機能及び利便性の向上を図ったうえで、販売力を強化していく必要があると考えております。そのため当社では、ツール導入から定着まで顧客を支援するカスタマーサクセス要員の配置や開発体制の充実・強化を図るとともに、周辺サービスを提供する他社ツールとの機能連携を積極的に進め、大手企業との協業等による販売促進にも取り組んでまいります。

 

③継続取引の強化による収益安定化

 当社は、安定した収益基盤を確立し持続的な企業成長を実現するためには、継続取引を中心に事業展開を図ることが重要であると考えております。そのため当社では、Webマーケティングサービス及びクラウド業務支援ツールの提供を通してストック型の取引を基本とし、今後も顧客との継続的な関係構築に努めてまいります。

 

④営業力の強化

 当社は、持続的な企業成長を実現するためには、新規顧客の獲得と既存顧客との取引継続及び拡大がそれぞれ重要であると考えております。そのため当社では、オウンドメディア(注1)の充実やSEO対策のノウハウを駆使してWebサイト経由での受注率向上に継続的に取り組むとともに、既存顧客への提案力を高め、アップセル(注2)やクロスセル(注3)をより一層推進してまいります。また、金融機関や地方公共団体、代理店、大手企業等との関係強化を図り、新たな販路の開拓にも努めてまいります。

 

⑤認知度の向上

 当社は、中長期的な企業価値向上を実現するためには、当社及び当社が提供するサービスの認知度向上が重要であると考えております。そのため当社では、自社Webサイト(コーポレートサイト、各サービスサイト)やオウンドメディアをより一層充実させること等も含め自社マーケティング活動を強化し、また、積極的な広報IR活動を通して、当社及び当社提供サービスに関する情報発信力を高め、認知度向上に努めてまいります。

 

⑥人材の確保と育成の強化

 当社は、持続的な企業成長を実現するためには、高付加価値のサービスを提供できる人材を数多く確保するとともに、外部人材を適切に活用しつつ、従業員個々の生産性を継続的に向上させていくことが必要であると考えております。そのため当社では、積極的な採用活動を継続し、社員紹介制度の活用や面接担当者のスキルの標準化等により採用効率を高めるとともに、従業員への教育・研修体制のより一層の充実を図り、経験の浅い人材の早期戦力化も含め全社的な生産性の向上に今後も継続して取り組んでまいります。

 

⑦経営管理体制の強化とコーポレート・ガバナンスの強化

 当社は、中長期的な企業価値向上を実現するためには、コーポレート・ガバナンスや財務報告の適正性確保を含めた経営管理体制を強化し、コンプライアンスの徹底に努めていくことが重要であると考えております。そのため当社では、役職員のコンプライアンス意識の向上、各種リスクの管理や定期的な内部監査の実施による経営管理体制の強化、社外役員の選任とこれによるモニタリングの実効性確保や監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンス体制の強化に今後も継続して取り組んでまいります。

 なお、当社は、2023年4月10日に公表しました「調査委員会の設置及び2023年2月期決算発表の延期に関するお知らせ」に記載のとおり、当事業年度の決算業務を進めるなかで、売上債権の延滞管理対象であったWebサイト制作取引の一部について、取引が未完了であるにもかかわらず、売上を不適切に前倒し計上している可能性を認識したため、調査委員会を設置して調査を実施いたしました。調査の結果、売上計上に必要な証憑等を当社元従業員が偽造又は改ざんしていた事実等が確認され、その原因は売上目標達成に対するプレッシャーと慢性的な人材不足を背景に、該当事業部門における業務管理・マネジメント不足及び業務手順の教育不足、並びに該当事業部門及び管理部門における内部統制機能の脆弱性等にあるとの報告及び再発防止策の提言を受けました。

 当社は、このような不正事案が発生したことを重く受け止めるとともに、当該提言に基づき、再発防止策を講じて適正な内部統制の整備及び運用のさらなる強化に取り組んでまいります。

 

⑧情報セキュリティ体制の強化

 当社は、顧客との取引を行うにあたり、顧客情報、個人情報及び営業機密等の機密情報を取り扱うことから、継続して情報セキュリティ体制を強化していくことが重要であると考えております。そのため当社では、サーバー設備をはじめ社内ネットワークや情報機器等に適切なセキュリティ手段を採用することによってサイバー攻撃等による不正アクセスや情報漏洩、システム障害等の回避に努めるとともに、機密情報管理に関する社内規程の整備や社内教育の徹底にも努め、情報セキュリティ体制の充実・強化に今後も継続して取り組んでまいります。

 

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、有益なサービスを提供し続け売上高の拡大に努めると同時に適正な利益を生みだすことが重要であると考えており、売上高及び営業利益を重要な経営指標と位置付けております。

 

<用語解説>

番号

用語

意味・内容

(注1)

オウンドメディア

自社の商品・サービスの情報発信やブランディング、集客のために企業やブランドが自ら運営するメディア(オンライン媒体)のことであります。

(注2)

アップセル

既存顧客に対して、現在利用しているサービスにおいて、より単価の高い上位モデルに乗り換えること、又は、より利用量を増やすことを促し、顧客単価を上げる販売施策のことであります。

(注3)

クロスセル

既存顧客に対して、現在利用しているサービスと併せて別のサービスの利用を促し、顧客単価を上げる販売施策のことであります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスクについて

①インターネット広告市場の動向について

 当社が事業を展開するインターネット広告市場は、インターネットの普及と技術革新により成長を続けており、インターネット広告市場がマスコミ四媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)合計の広告費を上回る広告メディアへと成長しております。しかしながら、インターネット広告市場やインターネット広告市場で展開するWebマーケティング事業は、一般的に景気変動や広告主の広告戦略の変化等による影響を受けやすい傾向にあるため、急激に景気が悪化した場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②クラウド市場の動向について

 当社は、クラウド業務支援ツールである「ネクストSFA」及び「ネクストICカード」をSaaS形態によりサービス提供しております。クラウド市場は、急速な成長を続けており、当社は、今後もこの傾向が継続するものと見込んでいるため、同市場でのさらなる事業展開を図っていく方針であります。しかしながら、国内外の経済情勢や景気動向等により、クラウド市場の成長鈍化が起きた場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③技術革新について

 当社の事業領域であるインターネット広告市場及びクラウド市場を取り巻く技術革新のスピードや顧客ニーズの変化は速く、新たなサービスの開発が活発に行われております。こうした状況に対応するため当社では、最新技術や業界動向等の情報収集に日常的に努めておりますが、これらの変化に適切な対応ができない場合には、当社の競争力が低下し、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④法的規制について

 当事業年度末現在で、当社の主力事業であるWebマーケティング事業において直接的な法的規制又は業界の自主規制はありませんが、Web広告の広告主等は、広告内容により、「不当景品類及び不当表示防止法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」等の規制を受ける可能性があります。当社では、運用する顧客の広告が各種法的規制に抵触することを避けるため、品質管理規程を定め、具体的な注意点を記したチェックリストを整備し担当者やその上長が慎重に確認を行うとともに、同分野に専門性を有する弁護士法人と契約し必要に応じて広告審査を依頼する体制を採用しております。また、インターネット関連分野においては、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「個人情報の保護に関する法律」等が存在しております。今後、法令等の改正や新たな法令等の制定が行われ既存の法令等の解釈に変更が生じる場合や、法令等に準ずる位置づけで業界の自主規制が制定され、その遵守を要請される場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤競合について

 当社が事業を展開するインターネット広告市場及びクラウド市場では、競合他社との間で競争状態にあり、競合他社によるサービス改善や新規参入、市場環境の変化等により競争が激化する可能性があります。当社では、引き続き各種サービスの品質や競争優位性の維持・向上に努めてまいりますが、当社が競合他社との差別化、優位性の確保に十分な対応ができない場合には、その対策のためのコスト負担の増加、新規契約数の鈍化や既存契約先の解約数の増加等が発生し、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容に関するリスクについて

①特定の広告媒体社への依存について

 当社のWebマーケティング事業は、グーグル合同会社及びヤフー株式会社が提供する広告媒体に大きく依存しております。当社では、当該広告媒体社との良好な関係の維持には十分留意しておりますが、何らかの事情により当該広告媒体社からの広告枠の提供が滞るような状況となった場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

②検索エンジンの寡占状態について

 当社のWebマーケティング事業においてオーガニックマーケティングとして提供する検索エンジンを活用した顧客のマーケティング活動を支援するサービス(SEO対策)は、国内で寡占状態にあるGoogleやYahoo!JAPANの検索エンジンに大きく依存しております。これらの検索エンジンの順位決定の仕組み(アルゴリズム)の更新に当社が適切に対応できない場合、又は今後これらに代わる新たな検索エンジンが相当数のユーザーを獲得し当社が適切に対応できない場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③システムトラブルについて

 当社は、サーバーを中心とするコンピュータシステムからインターネット環境を介して、顧客に全てのサービスを提供しております。安定的なサービス提供のため当社では、システム強化策の一環として、コンピュータウイルスや外部からの不正な侵入等を抑止するために必要と考えられるセキュリティ対策及びシステムの脆弱性の防御策を講じており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できる体制の整備に努めております。しかしながら、ソフトウエアの不具合、自然災害、停電、新たなコンピュータウイルスへの感染、継続的に高度化、巧妙化しているサイバー攻撃等の事態により、当社の設備又はネットワークに障害が発生した場合には、一定期間サービスの停止を余儀なくされ、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④債権回収について

 当社の主な顧客層は中堅・中小企業であり、顧客数は多数に及びますが、顧客との取引開始の前に与信調査を行うとともに、取引継続期間中にも定期的に与信調査を行っております。しかしながら、経済情勢の変化等により、経営基盤の脆弱な顧客において急速に経営状況が悪化する場合も考えられます。このような場合には、売上債権の回収が遅延するほか、回収不能になる可能性があり、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤解約について

 当社は、安定した収益基盤を確立するため、継続取引を中心に事業を展開しており、解約額が新規契約額を上回らない限り、収益が増加し続けるという安定性があります。当社の利益計画は、実績を基に一定の解約を見込んで策定しておりますが、競合他社に対する競争力の低下やトラブル等の何らかの要因により、当社の想定を超える解約が発生した場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)事業運営体制に関するリスクについて

①特定人物への依存について

 当社の代表取締役社長である原口大輔は、当社の創業者であり、創業以来の最高経営責任者であります。原口大輔は、当社サービスの営業戦略及び開発に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定、遂行に極めて重要な役割を果たしております。当社では、幹部職員の拡充、育成及び権限委譲による分業体制の構築等により、経営組織の強化を図り、特定人物に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により原口大輔の業務遂行が困難となった場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②人材の確保及び育成について

 当社は、事業の持続的な成長を実現するためには、高付加価値のサービスを提供できる人材をより多く確保するとともに、業務効率を継続的に改善していくことが必要であると考えており、積極的な採用活動を継続するとともに、従業員への教育・研修体制の充実・強化を図り、経験の浅い人材の早期戦力化や全社的な生産性の向上、人材の定着に努めております。しかしながら、必要な人材の確保及び育成が計画どおり進まない場合には、競争力の低下や事業拡大の制約要因となり得る可能性があり、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③内部管理体制について

 当社は、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると考えておりますが、事業規模に適した効率的な内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④情報管理体制について

 当社では、事業遂行上、顧客の機密情報や個人情報を入手し取り扱う機会があり、これらの情報資産を保護するため、情報管理規程を定め、サーバー設備のセキュリティを強化し、また、社内ネットワークや情報機器に適切なセキュリティ手段を構築することによって不正アクセス防止等の措置を講じる等、情報管理については万全を期しております。しかしながら、不測の事態により情報漏洩等の事故が発生した場合には、損害賠償等による予期せぬ費用やレピュテーショナルリスクが発生し、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他

①大規模災害による影響について

 当社では、地震や台風等の自然災害、事故等の事象が発生した場合に備え、速やかに危機管理対策や復旧対応を行えるよう、防災マニュアルを整備し緊急時に備えた運用体制を整備しております。しかしながら、当社設備の損壊や電力供給の制限等の事態が発生した場合には、当社のサービス提供に支障をきたし、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客が被災した場合には、その影響を受け、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②訴訟について

 当社では、法令違反となるような行為を防止するため、役員及び従業員を対象にコンプライアンス研修を定期的に実施する等して、取引先、従業員、その他第三者との関係において訴訟リスクを低減するよう努めております。しかしながら、システム障害や重大な人為的ミス等の予期せぬトラブルが発生した場合や取引先との間で何らかのトラブルが発生した場合には、これらに起因する損害賠償を請求され、あるいは訴訟を提起される可能性があります。かかる損害賠償の金額、訴訟の内容及びその結果によっては、当社の社会的信用及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、役員及び従業員に対して新株予約権を付与しております。当事業年度末現在における新株予約権による潜在株式は87,600株であり、発行済株式総数2,726,300株の3.2%に相当しております。今後、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化することになります。

 

④新型コロナウイルス感染症及び未知の感染症の影響について

 当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年4月1日より全拠点、全従業員を対象として必要に応じて在宅勤務(テレワーク)を実施する等、コロナ禍に対応した事業運営体制としておりましたが、本有価証券報告書提出日現在、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ社会経済活動の正常化が進んでおります。しかしながら、今後、新型コロナウイルス感染症の変異株や未知の感染症が拡大・まん延し、社会経済活動に大きな影響を及ぼす場合には、当社のサービス提供に支障をきたし、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 なお、当社は、当事業年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下、「収益認識会計基準」という。)等を適用しております。これに伴い、当事業年度における売上高は前事業年度と比較して大きく減少しております。そのため、売上高については前事業年度と比較しての増減額及び前年同期増減率(%)を記載せずに説明しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ社会経済活動の正常化が進むなかで、ウクライナ情勢による世界的なエネルギー・原材料価格の高騰や急激な為替変動等が起こりつつも、景気が緩やかに持ち直していくことが期待される状況にありました。しかしながら、世界的な金融引締め等を背景とした海外経済の減速、金融資本市場の変動の影響や物価上昇、国内金融政策の動向等による国内景気への影響を注視する必要があり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 

 このような外部環境のもと、当事業年度の売上高は1,519,075千円(収益認識会計基準適用前の前事業年度は3,453,520千円)となりました。利益面では、Web業界の人材流動性が高止まりするなか、人材採用と並行して業務委託を積極的に活用したこと等が影響し、営業利益は97,653千円(前年同期比49.8%減)、経常利益は119,665千円(同39.1%減)、当期純利益は79,663千円(同40.0%減)となりました。

 なお、当社の報告セグメントは、開示上の重要性の観点からWebマーケティング事業のみとしており、その他の事業セグメントについてはセグメント情報の記載を省略しております。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における資産合計は2,014,853千円となり、前事業年度末に比べて47,868千円増加いたしました。

 流動資産は1,670,694千円となり、前事業年度末に比べ32,624千円増加いたしました。これは主に売上高の変動を要因として、前事業年度末時点と比較して当事業年度末の売掛金が33,142千円減少した一方で、現金及び預金が50,135千円増加したことによるものであります。

 固定資産は344,159千円となり、前事業年度末に比べ15,244千円増加いたしました。これは主に固定資産の償却により12,051千円減少した一方で、有形固定資産及び無形固定資産の取得により26,150千円、長期前払費用が5,534千円増加したことによるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末における負債合計は774,906千円となり、前事業年度末に比べて45,908千円減少いたしました。

 流動負債は657,012千円となり、前事業年度末に比べ8,138千円減少いたしました。これは主に1年内返済予定の長期借入金が22,807千円、広告仕入等の増加により買掛金が20,958千円増加した一方で、納税により未払法人税等が32,783千円、その他に含まれる未払消費税等が11,782千円減少したことによるものであります。

 固定負債は117,894千円となり、前事業年度末に比べ37,770千円減少いたしました。これはリース債務が3,885千円増加した一方で、長期借入金が41,656千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は1,239,947千円となり、前事業年度末に比べ93,777千円増加いたしました。これは主に当期純利益の計上に伴い利益剰余金が79,663千円増加したことによるものであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比較して50,135千円増加し、1,308,798千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は74,932千円(前年同期比76.7%増)となりました。これは主に減少要因として法人税等の支払額68,924千円があった一方で、増加要因として税引前当期純利益119,665千円、売上債権の減少額33,142千円があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は19,306千円(前年同期は114,203千円の使用)となりました。これは主に減少要因として無形固定資産の取得による支出17,252千円、有形固定資産の取得による支出3,304千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は5,491千円(前年同期は138,393千円の獲得)となりました。これは主に増加要因として長期借入れによる収入150,000千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入14,114千円があった一方で、減少要因として長期借入金の返済による支出168,849千円があったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

Webマーケティング事業

 (Webサイト制作)

266,617

102.7

89,588

110.1

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

金額(千円)

前年同期比(%)

Webマーケティング事業

オーガニックマーケティング

1,025,148

94.0

Web広告

351,559

 報告セグメント計

1,376,707

クラウドセールステック事業

142,367

104.8

合計

1,519,075

 (注)1.セグメント間の内部振替はありません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績の100分の10未満であるため記載を省略しております。

3.当社の報告セグメントは、Webマーケティング事業のみでありますが、販売実績においてはクラウドセールステック事業を併記しております。

4.「収益認識会計基準」等を当事業年度の期首から適用しており、当該会計基準等の適用により大きな影響の生じる販売実績については、対前年同期比を記載しておりません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。なお、「収益認識会計基準」等を当事業年度の期首から適用しており、当該会計基準等の適用により大きな影響の生じる売上高及び売上原価については、対前年同期比を記載しておりません。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度の売上高は、1,519,075千円(前事業年度は3,453,520千円)となりました。これは主に、本社及び関西支社を拠点とした営業活動やインターネットメディア経由の受注強化に加え、金融機関や代理店等との関係強化を図り、多様な販路の確立に継続して取り組んだことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、656,581千円(前事業年度は2,535,857千円)となりました。これは主に、業務委託を積極的に活用したこと等により外注加工費の増加45,139千円によるものであります。

 この結果、当事業年度の売上総利益は、862,493千円(前年同期比6.0%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、764,839千円(同5.8%増)となりました。これは主に、Web業界の人材流動性が高止まりするなか、積極的な人材採用による人件費の増加15,081千円によるものであります。

 この結果、当事業年度の営業利益は、97,653千円(同49.8%減)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当事業年度の営業外収益は、24,002千円(前事業年度は3,318千円)となりました。これは主に、受取手数料の増加20,818千円によるものであります。営業外費用は、1,991千円(同35.6%増)となりました。これは主に、金融機関との関係強化による支払利息の増加450千円によるものであります。

 この結果、当事業年度の経常利益は、119,665千円(同39.1%減)となりました。

 

(特別利益、特別損失及び当期純利益)

 当事業年度の特別損益は発生しておりません。

 この結果、当事業年度の税引前当期純利益は、119,665千円(同39.1%減)となり、法人税等を40,002千円計上したことにより、当期純利益は、79,663千円(同40.0%減)となりました。

 

b.財政状態の分析

 当事業年度の財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社の運転資金需要のうち主なものは、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本とし、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 なお、資金の流動性については、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,308,798千円となっており、また、取引銀行1行と当座貸越契約を締結しているため、十分な流動性を確保しているものと考えております。

 

③重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、会計基準の範囲内で、一定の見積りが行われている部分があり、資産・負債、収益・費用の金額に反映されております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析

 当社は、売上高及び営業利益を重要な経営指標と位置付けております。

 第19期事業年度においては、安定的かつ継続的な事業拡大を目指し、主力事業であるWebマーケティング事業とクラウドセールステック事業を中心に、東京、大阪を主な拠点とした営業活動やWebマーケティング活動による受注強化に加え、金融機関、代理店との関係強化や大手企業との協業等で多様な販路を確立し、業績の向上に継続して取り組んでまいりました。

 その結果、売上高は「収益認識会計基準」等を当事業年度の期首から適用しているため比較を行っておりませんが、営業利益は前年同期比50.2%となっております。

 第20期事業年度においても、引き続き安定的かつ継続的な事業拡大を目指し、主力事業であるWebマーケティング事業とクラウドセールステック事業に注力するとともに、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。

 

 最近2事業年度の経営指標は次のとおりであります。

 

 

前事業年度

(自 2021年3月1日

至 2022年2月28日)

当事業年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

金額(千円)

金額(千円)

前年同期比(%)

売上高

営業利益

3,453,520

194,644

1,519,075

97,653

50.2

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。