第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは「私たちは、“コミュニティ発想”をもとに、あらゆるステークホルダーの価値創造パートナーとなる」という経営理念の下で、既存の媒体に頼らない、ユニークな事業、サービス、マーケティングを通じて顧客の新市場を共に開拓することで、社会・地域の幸福や活性化に寄与するべく、課題に取り組んでまいります。引き続き、マスメディア等の既存の媒体に頼らない顧客満足度の高いサービスを継続的に提供するとともに、新規事業を含む新たな領域への挑戦を進め、社会に貢献する企業であり続けられるよう努めてまいります。

 

(2)経営環境

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に引き下げられた前後から経済活動の正常化が進み、サービス需要やインバウンド需要が高まるなど、緩やかな景気回復がみられました。一方、地政学的リスクの長期化に伴う物価上昇、供給面での制約や金融市場の変動など、先行き不透明な状況が続いております。

 また、当社グループが属する広告業界におきましては、2023年の総広告費が7兆3,167億円(前年比103.0%)と

前年を上回る結果となり(電通「日本の広告費」2024年2月発表)、景気回復の兆候が見受けられました。

 このような環境下で、ソーシャルメディアの普及が急速に拡大するとともに消費者の意識や行動が変化し、データ活用などテクノロジーの進化と相俟って、企業と消費者の関係が大きく変化しています。これに対し、当社は顧客のニーズに対応し、様々なマーケティング活動におけるソリューションの提供に注力してまいる所存です。

 

(3)経営戦略等

 放送・通信業界、住まい・暮らし業界、医療・健康業界の既存戦略マーケットにおいては、強固な顧客基盤をベースとした専門性の高い広告戦略やマーケティングメソッド、ソリューションの開発・提供を行ってまいります。地方に暮らす世帯を「ローカルコミュニティ」と捉え、そこを起点にしながら、さまざまなプレイヤーとの連携・連帯によって、生活者向けサービスや企業向けマーケティングソリューションを生み出していく、エリアビジネス分野においては、全国のケーブルテレビ局向けに加入者向けテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」について、他社からの営業権取得により、売上を大きく伸ばしました。加えて、時代の変化にあわせた新たなデジタルサービスの提供を開始してまいります。

 また、企業とつながる生活者を「ブランドコミュニティ」と捉え企業のマーケティングコミュニケーションや市場開発を支援していくコミュニケーションビジネス分野においては、SNSを活用した独自のマーケティング手法について、これまでに大手住宅メーカーや大手外食チェーンなどの顧客へのサービス提供を通じて蓄積したノウハウを駆使し、新規顧客を獲得し、事業を拡大しております。

 このように、当社が長年にわたり注力してきた事業領域において収益力を維持・強化していくとともに、デジタル領域など新たに取り組みを進めている領域においても収益性の向上を実現してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、「連結売上高」及び「連結営業利益」を重要な経営指標と捉えております。

 デジタルマーケティングやブランディング、映像制作等、サービス提供領域の拡大を図るとともに、次の10年に向けたビジョンを策定しております。業容の拡大とともにグループの生産性の向上を図り、連結営業利益率の改善も目指してまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、「(2)経営環境」で記載した環境の変化を踏まえ、以下の項目を対処すべき課題と認識し、解決するため次のとおり対処いたします。

 

①経営資源の最適化

 当社グループは、顧客の課題をワンストップで解決する支援を強みとし、顧客の多種多様なニーズに柔軟に応えてきました。変化の激しい時代において、今後も顧客のニーズに合ったサービスを提供し続けていくためには、市場の変化に機動的に対応するとともに、需要が見込まれる事業領域へ戦略的に経営資源を投入していく必要があります。

 当社グループでは、戦略に基づいたサービス提供体制を構築するとともに、管理会計を通じた各部門の稼働状況と創出する付加価値の計測・分析に取り組んでおり、PDCAサイクルを循環させることで、経営資源の最適化を目指してまいります。

 

②優秀な人材の確保と育成

 当社グループは、今後の更なる成長のためには、優秀な人材の確保及び当社グループの成長フェーズに沿った組織体制の強化が不可欠であり、かつ課題であると認識しております。特に、デジタル領域を含めたプランニング及びクリエイティブ、テクノロジーを活用したソリューション開発、複雑化する広告プロモーションのプロデュース等を担う人材の重要性が増しております。

 このため当社グループでは、即戦力の中途人材採用活動強化とともに、新卒採用も行っております。また人材の定着化を図るべく、企業ビジョンの明確化や社員の能力が最大限発揮できる環境づくり等、働きがいのある制度づくりを行い、組織体制を強化してまいります。

 

③デジタル化への対応

 当社グループは、従来の紙媒体を用いた印刷物は長期的に減少傾向が見込まれ、持続的な成長を実現するためには、新たに需要が見込まれるデジタル領域での事業拡大が必要であると認識しております。

 当社グループでは、新たにデジタル戦略本部を設立し、デジタル技術の活用を推進するとともに、M&Aや投資等の手法も必要に応じて活用するなど、更なる経営資源の投入を通じ、デジタル領域での事業拡大に取り組んでまいります。

 

④内部統制及びリスク管理体制の強化

 当社グループは、今後一層の成長を見込んでおり、企業規模拡大に応じた内部管理体制の構築を図るために、コーポレート・ガバナンスを重視し、リスクマネジメントの強化、並びに内部統制の継続的な改善及び強化を推進してまいります。

 また、顧客企業の新商品等の各種機密情報や消費者の個人情報等を扱うに際しては、一般財団法人日本情報経済社会推進協会運営のプライバシーマーク制度の認証の取得、社内規程及び業務フローの厳格な運用、定期的な社内教育の実施、機密データへのアクセス制限やアクセスログ取得などのシステム整備を行ってまいりました。今後も更にセキュリティに関するシステムの整備や教育の徹底を行い、情報管理体制の強化を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティ戦略

 当社グループでは、企業活動を通じて持続可能な社会実現へ貢献することと、当社グループ自体も持続的に成長することの両方を追求し、経営理念を持続的に実現していくことを「日宣サステナビリティ方針」と定め、その実現のため、事業、人材、環境の3つを重要なサステナビリティ項目と位置付けております。

 

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①ガバナンス

 当社グループにおいては、まず、代表取締役社長の諮問機関であり、全般的な業務執行について、経営上の重要な事項に関して協議することを目的とする経営会議が、日宣サステナビリティ方針に沿った取組を推進する役割を担っております。

 また、リスク管理を適正に行うことにより当社グループの持続的成長を図ることを目的として設置されたリスク管理委員会が、サステナビリティに関連するリスクについても、適正に管理する役割を担っております。

 そして、経営理念の持続的な実現に資する重要事項につきましては、取締役会で審議し、決定しております。

 上記を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 a.企業統治の体制の概要」をご参照ください。

 

②戦略

 当社グループでは、事業・人材・環境の3点を重要なサステナビリティ項目と位置付け、以下の戦略を掲げております。

 

ⅰ事業 事業を通じて社会課題解決に貢献する

 当社グループでは、生活者を「コミュニティ」=人と人の“小さなつながり”として捉え、コミュニティのパートナーとなり、そのニーズを共に叶えていく発想を起点に、企業、地域にとっての価値を生み出していくこと、コミュニティの力を市場や社会に対して解放していくことをミッションとしております。事業を通じて社会課題解決に貢献するという考え方のもと、ローカルコミュニティ、ブランドコミュニティ、ライフスタイルコミュニティの3つのコミュニティにフォーカスし、既存の媒体に頼らない顧客満足度の高いサービスを継続的に提供してまいります。

 

■サステナビリティに関連する事業のリスク~社会の「個人化」の進行

 これらのコミュニティは、いずれも、いま、社会動態やマーケティングのメガトレンドの前で、大きな社会課題に直面しています。

 例えば、ローカルコミュニティは、社会動態変化によってヒトモノカネの首都圏集中、都市集中が進み、地域弱体化の課題に向き合っています。また、少子高齢化によって従来的な核家族がマイノリティ化し、世帯そのものが個人化するという未来に向き合っています。

 こうしたなかで、コミュニティのパートナーとなり、そのニーズを共に叶えていく発想を事業の起点としている当社グループには、他とは違う、独自の戦略が必要です。

 

■サステナビリティに関連する事業の機会~「デジタル化への対応」×「ユニークネス」=当社独自の成長基盤

 当社グループは、「ユニークなインディペンデント」として、デジタル化や個人化のもたらす潮流の変化を正しく認識・理解し、対応しつつも、他社とは異なる「独自の視座」「逆張りの視点」をもつ広告会社でありたいと考えます。

 例えば、当社グループが有する全国のケーブルテレビ局とのネットワークを基盤に、マーケティングやプロモーションの支援を行っていることや、電力事業をはじめとするエリアビジネスをケーブルテレビ局との共創/連携によって開発運営していることは、当社グループの大きなユニークネスのーつです。

 コミュニティが変化と課題にさらされているということは、そこには新たな需要が生まれているということです。当社グループは、変化と課題のなかに、自分たちのチャンスと需要を見出し、そこを独自の成長の機会にしてまいります。

 

ⅱ人材 高度で多様な人材が集まり創発することで価値を創造、提供する

 ⅰで述べたとおり、当社グループは、ローカルコミュニティ、ブランドコミュニティ、ライフスタイルコミュニティ、それぞれのマーケットの変化と課題のなかに、自分たちのチャンスと需要を見出し、独自の成長基盤を築いていきたいと考えています。

 そのためには、高度なだけではなく多様な人材が集まり、創発することが、必要です。

詳細につきましては、後述の「(2)人的資本に関する戦略、指標及び目標」をご参照ください。

 

ⅲ環境 企業として環境への責任を負い、環境負荷軽減に貢献する

 気候変動リスクへの関心が高まる中、環境負荷の低減に貢献することは企業としての当然の責務であり、地域のコミュニティに根差した当社グループとしても、環境負荷低減に向けた企業活動として、社内業務のペーパーレス化や光熱費等のエネルギー使用量削減に取り組んでおります。

 

 

③リスク管理

 当社では、リスク管理を適正に行うことにより、当社グループの持続的成長を図ることを目的としてリスク管理委員会を設置し、毎四半期定例委員会を開催しております。リスク管理委員会は、代表取締役社長が議長となり、当社取締役により構成され、サステナビリティに関連するリスク管理も含め、当社グループに係る経営リスクのモニタリング、防止策及び発生時の対策等につき検討を行っております。

 リスク管理委員会については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 a.企業統治の体制の概要」をご参照ください。

 

(2)人的資本に関する戦略、指標及び目標

①戦略

 サステナビリティに関連する事業のリスクと機会に鑑みれば、高度なだけでなく、多様な人材が集まり創発することで価値を創造、提供することが必要です。

 当社では、多様な視点、価値観を歓迎するため、ⅰすべての人材が自分らしく活躍できる環境を整備するとともに、ⅱ他社からの中途採用、シニア社員等の登用についても積極的に行い、ⅲ若年であっても優秀な人材については積極的に管理職へ登用するという考え方のもと、すべての社員に公平な評価及び登用の機会を設けております。

 ⅰすべての人材が自分らしく活躍できる環境の整備、すなわち、多様性(女性、LGBTQ、外国人、障がいを持つ人材および育児・介護というケア責任を負う人材等)の包摂(DE&Iの推進)のため、まずは、経営層との1on1実施等により、働きにくさをヒアリングし、人材のリテンションに努めるところから、始めています。既に実施したフレックス制度の導入を含め、今後も、すべての人材が自分らしく活躍できる環境の整備を推進し、多様な人材のリテンションに努めます。

 2023年には、中期経営計画達成のために、新たな人材育成プログラムとして、日宣Next Leaders Project(NLP)を導入しました。このNLPは、社員の成長を引き上げるためのサポート制度と成長に貢献した社員へのインセンティブ・プランを両軸としており、経営層との1on1実施等を通じ、社員の成長と経営マインドの醸成をサポートするとともに、現在の中期経営計画の最終年度である2026年2月期の業績に基づき、成長に貢献した社員に対し、自己株式を用いて総額最大120,000千円のインセンティブの付与を想定しています。

 以上の人的資本に関する戦略により、高度で多様な人材が集まり創発することで価値を創造、提供することを目指しています。

 

②指標及び目標

 当社では、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき、部長職のうち女性が占める割合について、2027年3月末までに30%以上にする数値目標を掲げております。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループの予測に基づいて判断したものです。

 

(1)事業環境に関するリスク

 広告会社の業績は、景気、特に個人消費動向をもとにした企業の広告支出動向の影響を受ける傾向があります。また当社グループの業績は、経済環境のみならず特定業界や企業の景況に影響されやすい傾向にあります。当社グループはこのリスクに対して、新規取引先の開拓を行い、特定の業界に依存している状況からの転換を図っていく考えではありますが、日本国内の景気変動による顧客企業の広告費の減少に基づく受注量の減少や受注単価の低下などの景気変動要因が当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)広告業界における取引慣行

 広告業界において、広告計画や内容の突然の変更に柔軟に対応できるよう、契約書の作成が徹底されないことがあります。当社グループでは、主要取引先と基本契約を締結するなど、取引上のトラブルを未然に回避する努力を行っておりますが、不測の事態が発生し、紛争が生じる可能性があります。

 

(3)技術革新及びメディアの構造変化への対応

 スマートフォン等の多機能デバイスの進化・普及により、メディアが多様化するとともにソーシャルネットワーク等が広く浸透し、消費者のメディア接触行動や時間量が大きく変化しております。当社グループは従来の印刷物を用いた広告手法での収益を確保しながら、インターネットを起点としたリアルでの消費活動を構築するコミュニケーションサービスの提供など、インターネット技術を活用したマーケティング手法の変化に対応しながら業容の拡大に取り組んでおります。しかし、こうした技術革新及びメディアの構造変化に当社グループが適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)特定の取引先への依存

  当社グループは、旭化成ホームズ株式会社及びそのグループ会社(以下、同社グループ)に対して、キャンペーン全体の企画設計及びCM・新聞広告・チラシ・DM・展示場ツール等の企画・制作、基幹カタログの企画・制作、営業ツールの企画・制作、カタログ等の在庫管理、イベントの企画・運営、ディスプレイ、空間デザイン、映像制作、WEBマーケティング、オンラインイベント支援等の幅広い広告宣伝サービスを提供しております。その結果、同社グループに対する前連結会計年度の売上高は1,155,811千円、売上高に占める割合は22.8%であり、当連結会計年度の売上高は930,136千円、売上高に占める割合は17.8%となっております。現状において、当社グループは同社グループと安定的な取引関係にありますが、受注状況によっては当社グループの業績に影響を受ける可能性があります。また、何らかの要因により取引関係に問題が生じた場合、あるいは広告宣伝政策の変更等があった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)競合について

 当社グループが事業を展開する広告業界は、売上高で上位の広告会社への集中傾向が高く、当社グループは常に既存の大手の広告会社と競争を強いられております。また、近年、インターネット、スマートフォン広告市場等における新規参入企業との競合が生じる機会も増加してきております。
 当社グループは、注力する業界を定め顧客企業と直接取引し、その業界の構造や特性を踏まえ顧客企業の経営課題に対してユニークな広告ソリューションを開発することで競争上の優位性を確保していく考えではありますが、今後も優位性を確保できる保証はなく、優位性を逸した場合あるいは競争の激化に伴い報酬が低下した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)原材料の調達

 当社グループの原材料の大部分は印刷用紙が占めており、安定的な量の確保と最適な価格の維持に努めております。しかしながら、急激な市況の変動等により仕入価格が上昇し、製造コストの削減で補えない場合や、販売価格に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(7)外部委託

 当社グループではコンテンツ制作、印刷、運送等の業務において外部委託を利用し、外部の良質なリソースの利用及び固定費の圧縮を行っております。必要に応じた外注先の確保ができず業務が遂行できない場合、或いは外部委託先の事故・経営不振・不祥事等による納期遅延・品質問題等が発生した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、急激な市況の変動等により仕入価格が上昇し、製造コストの削減で補えない場合や、販売価格に転嫁できない場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)不良品の発生

 当社グループの提供する商品、サービスにおいて、不良品が発生することがあります。不良品が発生した場合、値引きや商品の再発注、回収等の負担がかかる可能性があります。

 当社グループでは、不良品の発生防止のため、品質管理、生産管理等には十分注意しておりますが、受注金額の大きな案件で不良品が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)優秀な人材の確保、育成

 当社グループでは今後事業拡大や企業運営を円滑に遂行していく上で優秀な人材を確保することが極めて重要と考えており、随時採用活動を行っております。しかしながら、必要な人材を適切な時期に確保できない場合、または社内の有能な人材が流出した場合には、経常的な業務運営や事業展開に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)法的規制について

 当社グループが広告宣伝サービスを提供する際の各種制作物において、その表現は「不当景品類及び不当表示防止法」、「不正競争防止法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」、「著作権法」及び「商標法」等の規制を受けております。当社グループが提供するのは広告宣伝サービスであり、法令の遵守義務は実際に商品等を提供する広告主になりますが、当該広告が景表法等の法令に抵触した場合、当該広告主との間で法的責任の発生や社会的信用の低下により、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)知的財産権の侵害

 当社グループが事業活動を行う過程で、提案する企画内容によっては第三者の知的財産権を侵害する可能性があるため、企画を提案する際には知的財産権の侵害の有無を確認しております。しかし、サービスの提供後、想定外の係争が発生した場合には、これらの係争が当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報の流出

 当社グループでは個人情報及び顧客情報、情報システムを取り扱う際の運用管理については、情報セキュリティ関連規程を整備運用して厳重に取り扱うこととしております。プライバシーマークの認証を取得し、機密情報の厳格な管理と個人情報の漏洩防止に努めておりますが、不測の事態により個人情報等の流出事故が発生した場合、損害賠償や社会的信用の失墜等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)災害等に関するリスク

 当社グループが事業展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、疫病やウイルスによる感染拡大等が起こった場合には、当社グループまたは当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)訴訟等について

 当社グループは法令及び契約等の遵守に努めておりますが、取引先、消費者、各種団体または知的財産権の保有者等による訴訟を提起された場合に、当社グループの事業や財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)ストック・オプションと株式の希薄化について

 当社グループは、取締役及び従業員に対するインセンティブ付与を目的としたストック・オプション制度を採用しております。そのため、現在、取締役に付与されている新株予約権の行使が行われた場合、保有株式の株式価値が希薄化する可能性があります。

 なお、当該新株予約権は当社退職者については実質的に行使できない制度となっており、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は108,000株であり、発行済株式総数及びストック・オプションによる潜在株式数の合計4,178,080株の2.58%に相当します。

 

(16)電力小売事業に関するリスク

 当社の持分法適用関連会社である株式会社SCN電力は電力小売事業を展開するケーブルテレビ局との合弁会社であります。

 電力小売事業のビジネスモデルは、顧客を継続的に増やしていく成長過程においては、損益計算書上費用先行となり、損益分岐点となる顧客数に達するまでは当事業においては費用が先行する見通しです。

 電力小売事業は、電気事業法に基づく申請を行い、経済産業大臣による登録により事業を開始することが可能となっております。新規参入者の急増は、電力購入価格の上昇と、電力販売価格の下落を招く可能性があり、競争激化と共に当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。また営業収益は、顧客の電気使用量の季節的変動(気温や気象等)による影響を受けるため、業績が季節変動するリスクがあります。

 電力小売事業への参入は、既存事業で培った顧客基盤を活用した新しい価値と収益機会の開拓を図る方針に基づいたものでありますが、顧客を継続的に増やしていく過程における損益計算書上の費用先行については、営業努力によってできる限り早期の収益化を図ります。また、SPOT価格が高騰した場合は、当社の売買損益に影響を及ぼす可能性があり、その影響額は顧客数の増加につれて一層大きなものとなります。そのため、他電力会社とのアライアンスや相対電源の確保、固定価格での調達方法の模索等を含め電力価格の変動等によるリスクを的確にコントロールして事業運営を行ってまいります。

 

(17)新規事業のリスク

 当社は、将来的な事業拡大に向け、既存事業に留まらず新規事業開発に積極的に取り組んでおりますが、新規事業の展開には不確定要素が多く、既存事業よりもリスクが高いことを認識しております。入念な市場分析や事業計画構築にも関わらず、予測とは異なる状況が発生し、計画どおりに進まない場合は、投資資金を回収できず当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、情報セキュリティについての厳格な管理体制を構築し、関連規程の整備や従業員への周知と教育を行っております。しかしながら、サイバー攻撃、システムへの不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入等により、データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信頼性が損なわれ、当社グループの財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び当社の連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に引き下げられた前後から経済活動の正常化が進み、サービス需要やインバウンド需要が高まるなど、緩やかな景気回復がみられました。一方、地政学的リスクの長期化に伴う物価上昇、供給面での制約や金融市場の変動など、先行き不透明な状況が続いております。

 また、当社グループが属する広告業界におきましては、2023年の総広告費が7兆3,167億円(前年比103.0%)と前年を上回る結果となり(電通「日本の広告費」2024年2月発表)、引き続き景気回復の兆候が見受けられました。

 こうした市場環境の中、当社グループでは昨年度策定した中期経営計画に基づき、既存事業の強化と新規事業領域への事業拡大に向け、積極的な事業活動を行ってまいりました。用紙価格の高騰や印刷費用の上昇といったコスト増により、上期は低調であったものの、売価への適正な転嫁を行うとともに、顧客の課題に対するソリューションの提供に努めることで、下期以降、大きく業績が回復いたしました。

 企業とつながる生活者を「ブランドコミュニティ」と捉え企業のマーケティングコミュニケーションや市場開発を支援していくコミュニケーションビジネス分野においては、SNSを活用した独自のマーケティング手法について、これまでに大手住宅メーカーや大手外食チェーンなどの顧客へのサービス提供を通じて蓄積したノウハウを駆使し、新規顧客を獲得し、事業を拡大しております。

 他方、地方に暮らす世帯を「ローカルコミュニティ」と捉え、そこを起点にしながら、さまざまなプレイヤーとの連携・連帯によって、生活者向けサービスや企業向けマーケティングソリューションを生み出していく、エリアビジネス分野においては、全国のケーブルテレビ局向けに編集・制作している加入者向けテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」について、他社からの営業権取得により、売上を大きく伸ばしました。当分野におきましても、時代の変化にあわせた新たなデジタルサービスの提供を開始しております。

 一方で、前年度以前より実行している投資事業組合への投資については、前年度の運用益計上から今年度は運用損の計上へと転じました。

 以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高5,224,656千円(前期比3.3%増)、営業利益300,238千円(同6.2%減)、経常利益285,287千円(同17.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益197,467千円(同19.1%減)となりました。

 

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

イ.広告宣伝事業

 当事業においては、全国のケーブルテレビ局の加入者に対してケーブルテレビ番組情報誌「月刊チャンネルガイド」の編集・制作を行う他、様々な顧客企業に対し広告戦略のプランニング、各種販促サービス、デジタルマーケティング等のソリューションを提供しております。

 当連結会計年度では、放送・通信業界において、ケーブルテレビ番組情報誌の事業の営業権取得による新規顧客の獲得に加え、既存の紙媒体に代わるデジタル番組ガイドやSNSを活用した顧客とのコミュニケーションツールの提供を開始し、積極的な営業を行うなど、更なる顧客基盤拡大に努めました。住まい暮らし業界では、前期に大型案件を受注した反動で減収となりましたが、新規案件の受注やリフォーム領域での受注増に注力しました。また、その他業界につきましても、新たに顧客を獲得しました。

 業界別の売上高は、放送・通信業界が2,478,011千円(前期比20.0%増)、住まい・暮らし業界が1,157,470千円(同15.6%減)、医療・健康業界が318,023千円(同13.2%減)、その他業界が1,120,039千円(同1.5%増)となりました。

 以上の結果、当事業の売上高は5,073,545千円(前期比3.4%増)、セグメント利益は301,126千円(同3.0%減)となりました。

ロ.その他

 その他においては、当社の子会社の株式会社日宣印刷において当社グループの広告宣伝事業の印刷物の他、関西地域の企業に対して商業印刷を行っております。

 当事業の売上高は151,111千円(前期比0.2%減)、セグメント損益は5,457千円の損失となりました。

 

 また、当連結会計年度末における財政状態は以下のとおりであります。

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末より37,174千円増加し、4,574,125千円となりました。これは主に、営業権が272,688千円増加した一方で、現金及び預金が190,592千円、投資有価証券が37,359千円、それぞれ減少したこと等によるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末より97,222千円減少し、1,294,716千円となりました。これは主に、退職給付に係る負債が13,351千円、買掛金が5,110千円それぞれ増加した一方で、長期借入金が59,400千円、繰延税金負債が18,449千円、長期未払金が18,075千円、それぞれ減少したこと等によるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末より134,396千円増加し、3,279,409千円となりました。これは主に、自己株式が17,586千円減少し、利益剰余金の配当を78,977千円行った一方で、親会社株主に帰属する当期純利益を197,467千円計上したこと等によるものです。

 この結果、自己資本比率は71.7%(前連結会計年度末は69.3%)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べて190,593千円減少し、1,466,217千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは285,661千円の収入(前連結会計年度は239,506千円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を285,287千円、減価償却費を119,937千円、投資事業組合運用損を30,709千円計上した一方で、法人税等の支払額が108,888千円、長期未払金の減少が18,075千円それぞれあったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは340,322千円の支出(前連結会計年度は55,326千円の支出)となりました。これは主に、保険積立金の解約による収入が26,770千円、補助金による収入が17,765千円あった一方で、無形固定資産の取得による支出が348,362千円、有形固定資産の取得による支出が37,297千円、それぞれあったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは135,931千円の支出(前連結会計年度は128,945千円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額が76,531千円、長期借入金の返済による支出が59,400千円あったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績及び受注実績

 当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績及び受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

金額(千円)

前年同期比(%)

広告宣伝事業

5,073,545

103.4

報告セグメント計

5,073,545

103.4

その他

151,111

99.8

合計

5,224,656

103.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年3月1日

至 2023年2月28日)

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

旭化成ホームズ株式会社

1,061,431

20.98

758,741

14.52

3.広告宣伝事業における、当社分類による顧客所属業界別の販売実績を示すと、次のとおりであります。

業界

当連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

金額(千円)

前年同期比(%)

放送・通信

2,478,011

119.95

住まい・暮らし

1,157,470

84.43

医療・健康

318,023

86.78

その他

1,120,039

101.48

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針は、「第5 経理の状況 1. (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりです。また、会計上の見積りにつきましては、入手可能な情報に基づき合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社は、経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「連結売上高」及び「連結営業利益」を重要な経営指標と捉えております。デジタルマーケティングやブランディング、映像制作等、サービス提供領域の拡大を図るとともに、次の10年に向けたビジョンを策定しており、業容の拡大とともにグループの生産性の向上を図り、連結営業利益率の改善も目指してまいります。連結営業利益率の改善に向け、当社が長年にわたり注力してきた事業領域において収益力を維持・強化していくとともに、新たな領域においても収益基盤の確立を図ってまいります。

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載の通り、連結売上高では増収を達成することができました。新型コロナウイルス感染症が感染症法上の「5類」に引き下げられた前後から経済活動の正常化が進む中、既存事業の強化と新規事業領域への事業拡大に向け、積極的な事業活動を行ってまいりました。

 放送・通信業界においては、ケーブルテレビ番組情報誌「チャンネルガイド」の編集・制作事業について、同業他社からの営業権取得により売上を大きく伸ばすとともに、顧客基盤を一層強固なものにすることができました。住まい・暮らし業界と医療・健康業界においては、顧客からの受注減少の影響を受けましたが、その他業界においては、SNSを活用した独自のマーケティング手法について、これまでに大手住宅メーカーや大手外食チェーンなどの顧客へのサービス提供を通じて蓄積したノウハウを駆使し、新規顧客を獲得し、事業を拡大しました。このように売上高についてはクライアントの課題解決という観点から、複数業界にまたがる事業のポートフォリオが機能したものと認識しております。

 一方で利益面については、用紙価格の高騰や印刷費用の上昇といったコスト増に対し、売価への転嫁が遅れたこともあり、減益となりました。また、当連結会計年度においては、投資事業組合への投資について、運用損を計上しております。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、「第2 事業の状況」に記載の「経営資源の最適化」、「優秀な人材の確保と育成」、「デジタル化への対応」は喫緊の課題と認識しております。それらへの対応策として、以下の取り組みを実施しました。

 まず「経営資源の最適化」については、変化の激しい時代において、今後も顧客のニーズに合ったサービスを提供し続けていくためには、市場の変化に機動的に対応するとともに、需要が見込まれる事業領域へ戦略的に経営資源を投入していく必要があります。これに対し、当社は管理会計を通じた各部門の稼働状況と創出する付加価値の計測・分析に取り組んでおり、PDCAサイクルを循環させることで、経営資源の最適化を目指してまいります。

 次に「優秀な人材の確保と育成」に関しましては、社員も含め、あらゆるステークホルダーの価値創造パートナーとなることを掲げた経営方針のもと、その経営理念の浸透や社員のエンゲージメント向上のための施策を実施し、組織力の強化を図りました。社員を対象にしたエンゲージメント・サーベイも定期的に実施し、現状の把握とそれに基づく分析と施策の立案という循環による改善を図っています。

 また「デジタル化への対応」については、今後の事業成長のカギとなるデジタル戦略の推進に向け、組織改正を通じた体制構築とあわせて、優秀なデジタル人材を確保するための人的資本への投資も積極的に行っています。当社では、デジタル技術を活用した新規サービスの創出を社内横断的に検討し、新たなビジネスを生み出すことを目的に、デジタル戦略本部を開設しました。また、その主導的な役割を担うCDO(Chief Digital Officer)のポストを新設しました。
 

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業活動のための適切な資金確保、流動性並びに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出を優先事項として考えております。当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益を285,287千円、減価償却費を119,937千円それぞれ計上したこと等により、285,661千円となりました。また当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,466,217千円と十分な流動性を確保している状況であることから、健全な財務状況であると認識しております。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。