当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、2021年度に社会共通の課題の解決によって持続的な成長を実現するために、長期経営構想の抜本的な見直しとともに中期経営計画「Accelerate Growth(アクセラレート グロウス)2023(AG2023)」を発表し、2030年のYOKOGAWAのありたい姿の実現に向けて、2023年度までの3年間、社会共通課題を軸とした事業構造を確立するための取り組みを進めてきました。
現在の長期経営構想は、AG2023策定時に抜本的に見直したものであり、2030年を見据えた「YOKOGAWAのありたい姿」を端的に示したVision statement「YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、社会課題の解決をリードしていきます。」とその実現に向けての方向性を示しています。今回は大きな見直しなくそのまま引き継ぐこととし、2024年度からの中期経営計画「Growth for Sustainability(グロウス フォー サステナビリティ)2028(GS2028)」を新たに策定しました。GS2028では、AG2023で確立した業種軸の事業構造を基盤に、環境・社会・ガバナンスの視点で事業活動に取り組み、社会価値と企業価値の向上を実現させるための変革を加速させます。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、YOKOGAWAのIdentityを以下のとおり整理しました。創業の精神と、それを受け継いだ企業理念は、社会におけるYOKOGAWAの在り方を示すものです。Vision statementは、2030年を見据えてYOKOGAWAが何をしていくかを示し、共有する価値観は行動をするうえでの指針を示しています。Yokogawa’s Purposeは、それら全てを踏まえ、YOKOGAWAが存在する意義を、意思を込めたコミットメント(公約)として示しています。
[創業の精神]
創業にあたり、横河民輔は、日本の計測業界の先駆者として歩み始めた横河一郎(後の初代社長)と青木晋(後の初代技師長)に、「君たちは、この仕事でもうけようなどと考える必要はない。それよりもまず、技術を覚え、技術をみがくことだ。横河電機の製品はさすがに良い、といわれるようにしてもらいたい」と語りました。この言葉は創業の精神として今日まで受け継がれています。
[企業理念]
創業の精神を受け継ぎ1988年に制定された企業理念は、社会に向けてのYOKOGAWAの使命とYOKOGAWA人の価値基準や行動指針を表した、YOKOGAWAの決意表明です。
[Yokogawa’s Purpose]
お客様、市場、社会からの要望や期待に応えるYOKOGAWAのコミットメントであり、社会に存在することの意義を表したものです。同時に組織としての求心力を高め、グループ全社員の変革への志を喚起します。
[共有する価値観]
企業文化や風土を醸成し継承していくうえで、YOKOGAWA社員一人ひとりが「大切にすべき」行動の指針と意志をより具体的に示したものです。共有する価値観に根差した行動は新たな価値の創造を実現し、他社との差別化力、競争力をもって社会に貢献し続けるための原動力となります。
[Vision statement]
2030年を見据えた長期経営構想で描くYOKOGAWAのありたい姿、企業としての理想を端的に示したものです。
(2) 中長期的な経営戦略
長期経営構想と中期経営計画の全体像
[長期経営構想]
<Vision statement>
YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、
社会課題の解決をリードしていきます。
<お客様への提供価値>
世界は今、あらゆるものが複雑につながり合う時代となっています。運用や管理に独立性のあるシステムが連携し、相乗効果と新しい価値をもたらしていく「System of Systems(SoS)」の流れが進む世界において、当社は、効果的な「つながり」を進め、統合化・自律化・デジタル化による「全体最適」の価値を生み出していきます。当社は「IA2IA※1」と「Smart Manufacturing※2」によるアプローチでこれを実現し、社会全体が「SoS」となる世界をリードしていきます。
(※1) IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)
AI、デジタルツイン、ロボティックスなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)技術を取り込み、Industrial Automation(自動)からIndustrial Autonomy(自律)へと進化させる活動です。
(※2) Smart Manufacturing
DX(デジタルトランスフォーメーション)やIA2IAによって生産現場、エンタープライズ、及びサプライチェーンにおける自律を実現し、革新的な生産性向上を達成することです。
[中期経営計画 「Growth for Sustainability 2028(GS2028)」]
GS2028は、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というYokogawa’s Purposeを起点としており、Yokogawa’s Purposeのもと、中期経営計画の目標達成に向けた「価値創造プロセス」を以下のように定義しました。
「永年培ってきた、OT(運用技術、Operational Technology)領域におけるお客様起点の課題解決をやり遂げる力と信頼を裏付けとし、人的資本やDXを実現する技術などの基盤を活性化することで、SoS型ビジネスなどにて、より多様かつ高い顧客価値を共創する。その過程を通じて強化したお客様との信頼関係・ノウハウ・人的資本等の経営資本を活用して、事業施策を達成する。」
YOKOGAWAの価値創造プロセス
長期経営構想で定めた2030年を見据えた「YOKOGAWAのありたい姿」の実現と、上記価値創造プロセスを実現するために、2028年度までの5年間で取り組むべきこととして、4つの基本戦略を策定しました。それぞれの基本戦略の概要は以下のとおりです。
「Growth for Sustainability 2028」の4つの基本戦略
1.System of Systemsの信頼されるパートナーとしての価値提供
SoSを通じた価値提供を行うため、YOKOGAWAはIA2IAとSmart Manufacturingという2つの側面からアプローチを行います。数多くの製造現場で培ったノウハウ、経験、高度な技術力を活用し、戦略的なコンサルティングとシームレスなインテグレーションという価値を提供することで実現していきます。
2.業種対応力の強化と特定業種へ依存しないビジネスの拡大
さらなる生産の効率化と生産の安定化を追求しているお客様に対応するため、YOKOGAWAはIT/OTの融合を通して業種対応力の強化を図るとともに、品質管理や設備管理といった、業種に関わらない共通の課題を解決するビジネスの拡大にGS2028においても取り組んでいきます。YOKOGAWAが強みをもつフィールド機器や制御システムのレベルから、MESやERPといった上位レイヤーのシステムまでをターゲットに、ソリューションの幅を広げ、お客様のDXをサポートしていきます。
また、事業環境や市場ニーズの変化に対応するため事業内容を変更するお客様のサポートができるように、ソリューションを充実させていきます。
3.無形資本の活用・育成による価値創造
YOKOGAWAは、人的資本、知的資本、社会・関係資本の3つの活用に注力していきます。これら無形資本には、「価値創造力」、「共感力」、「課題発見力」、「ステークホルダーをつなぐ力」というYOKOGAWAが長年培ってきた見えない強みがあり、これらを成長に生かします。
4.経営・事業基盤の強化
価値創造プロセスを支える経営・事業基盤の強化に取り組みます。
・全社収益性の向上:戦略的リソースの捻出と配分、オペレーションの最適化と、経営基盤の最適化を図ります。
・DX戦略:Internal DXではグローバルなIT基盤のもとで、お客様、パートナー、社員の視点に立って、それぞれの体験価値を向上させるDX施策を進めていきます。External DXではOT分野で培ってきたノウハウを、Yokogawa Cloudのもとで、積極的にアプリケーション化、サービス化し、整備を進め、リカーリングのビジネスモデルへの変革を目指します。
・ガバナンスの強化:監査役会設置会社から、指名委員会等設置会社に移行します。監督と執行の役割分担を明確化し、意思決定プロセスの効率化、経営判断と事業計画の達成に対する責任の明確化、監査機能の強化、効率化を図ります。
<資本政策・財務戦略>
「Growth for Sustainability 2028」では、長期経営構想を念頭においた成長戦略の実現のために成長投資を強化していきながら、持続的な企業価値及び株主価値の向上を実現していきます。
[初年度からの3年間 2024年度~2026年度]
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成長投資枠 |
M&A・アライアンス:1,000億円以上 ・成長戦略の実現に向けた投資を加速・拡大 ・エネルギー/資源の課題対応、DX/OT(Operational technology)データ活用への貢献、業種拡大の加速等を目的 |
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株主還元 |
安定的・継続的な増配 ・配当性向30%以上の確保に努める ・一時的要因での業績悪化時も株主資本配当率を考慮し、安定的な配当を維持 ・自己株取得についても、財務状況等を踏まえ柔軟に検討 |
前提条件:格付けA格維持可能な株主資本水準を確保
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中期経営計画「Growth for Sustainability 2028」についての詳細は、当社ウェブサイト https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/corporate-strategy/ をご参照ください。
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(3) 経営環境
当社グループは、1915年の創立以来、計測、制御、情報の技術を軸に、最先端の製品やソリューションを産業界に提供し、社会の発展に貢献し続けています。また、社会課題・お客様のニーズを捉え、その主要製品・サービスの内容を変化させてきており、2023年度のセグメント別売上高比率は制御事業約93%、測定器事業約6%、新事業他約1%となっています。
主力事業の制御事業では、石油、ガス、化学、電力、鉄鋼、紙パルプ、医薬品、食品などの多様な業種展開により日本国内で高いシェアを有しています。さらに、日本での多様な業種展開により得られた知見やノウハウのもと、アップストリーム、ダウンストリームを中心に、中東、中国、アセアン諸国などの資源国や新興国で高いシェアを有しています。なお、2023年度の海外売上高比率は約74%となっています。現地に根付いたグローバルな事業展開を始めてからの約60年で、競合他社に比べ偏りがない地域構成を実現してきており、世界中で4万件以上のプロジェクトを手掛けてきた豊富な納入実績があることも特徴です。豊富な納入実績を活用することで、お客様の既設のプラント設備の生産性向上につながる運用や、保守の効率化に向けたソリューションの比重を高め、あらゆる外部環境の変化にも耐えられるレジリエンス(変化に柔軟に対応できる適応力・回復力)を高めてきています。
2030年を見据えた事業環境のメガトレンドは、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の観点で、大きく変化していくと想定しています。Politicsでは、自国主義や法規制の強まり、Economyでは、資源の枯渇や食料・水の不足、Societyでは、高齢化、都市化や気候変動、Technologyでは、AI、IoT、5G、バイオテクノロジーの進歩など、さまざまな変化が予想されます。このような中で、当社グループのお客様は、プロセスの変革、持続可能な未来を意識したビジネスモデルへのシフトを進めており、かつ、安全安心、セキュリティなどの観点から人の介在を減らすことの重要性も認識されています。主力事業の制御事業におけるProcess Automation業界では、既存製品の市場が成熟し、ハードウエアのコモディティ化が進んでいると同時に、MES(Manufacturing execution system)やセキュリティ関連のソフトウエア、センサの市場は成長し、サブスクリプションなど新しいビジネスモデルの普及が進んでいます。また、当社グループの成長の糧であるオイル&ガスなどのハイドロカーボン系エネルギーの需要はその社会的役割・位置づけからも急激には失われないと考えられますが、エネルギー活用の多様化、環境規制対応などへの世界的な再生可能エネルギー活用、デジタルトランスフォーメーション(DX)への世界的な要求も高まってきています。
このように大きく変化する事業環境において、当社グループは、未来世代のために目指す持続可能な低炭素・循環型社会の姿として定めたサステナビリティ目標「Three Goals」の「脱炭素社会(Net-zero emission)」「循環社会(Circular economy)」「人の命と健康に対する要求の高まり(Well-being)」が事業機会になると捉えています。長期経営構想でも示した通り、「System of Systems(SoS)」の流れが進む世界の中で、統合化・自律化・デジタル化により複雑につながり合う社会システム全体を効果的に結びつけ、当社グループが先駆者として「全体最適」の価値を生み出すことで、3つの事業機会をしっかりと捉え、私たち自身が変革しながら、社会共通の課題の解決と持続的な成長を実現していきます。グローバルの競合のみならずIT企業との競合が激化するなど、事業環境は厳しさが増している中で、これまで蓄積・獲得してきた戦略的なコンサルティングとシームレスなシステムインテグレーション(SI)能力を、お客様への提供価値としてさらに昇華させ、社会全体がSoSとなる世界における信頼されるパートナーとなることを目指します。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
[中期経営計画「Accelerate Growth 2023」で目指した経営目標]
当社グループは、2021年度に社会共通の課題の解決によって持続的な成長を実現するために、長期経営構想の抜本的な見直しとともに中期経営計画「Accelerate Growth(アクセラレート グロウス)2023(AG2023)」を発表し、2030年のYOKOGAWAのありたい姿の実現に向けて、2023年度までの3年間、社会共通課題を軸とした事業構造を確立するための取り組みを進めてきました。この間、COVID-19感染拡大やロシア・ウクライナ情勢などの影響を受け、また、これらを背景とした生産部品やプロジェクト調達品の調達難に見舞われるなど当社グループを取り巻く事業環境は激しく変化しましたが、AG2023の最終年度となる2023年度までには、堅調なエネルギー需要を受けたお客様投資の増加や調達環境の改善、値上げ施策の効果などにより、AG2023で達成を目指した経営指標の数値目標は、為替変動による業績の押上効果を考慮しても、概ね達成することができました。
■AG2023で達成を目指した経営指標・目標値
ROS:売上高営業利益率/EPS:1株当たり当期純利益/ROE:自己資本利益率
[資本政策・財務戦略]
「Accelerate Growth 2023」では、持続的な企業価値及びTotal Shareholders Return(TSR:株主総利回り)の向上を実現するために、成長を支える財務基盤の維持、成長投資、株主還元への最適なキャッシュフロー配分を行いながら、将来的かつ累積的なキャッシュフロー創出力を強化すべく、以下の資本政策・財務戦略を掲げました。
● 資本性成長投資(戦略投資)枠を3年間累計で700億円とします。リスク総量、自己資本増減、及びリスク投資実行に伴うリスク量の増加想定を織り込んだ上で最適資本構成を維持します。
● 株主還元方針(利益処分に関する基本方針)は、中長期的な企業価値向上の最大化に向けた投資に優先的に配分していくものの、一定の財務基盤の確保を前提に、積極的な配当による株主還元の向上を図るものです。配当性向による期間利益の一定比率を還元する考え方に加え、株主資本配当率を踏まえた安定的な配当の維持の考え方を維持します。
上記の目標に対して、営業キャッシュフローの創出は、目標を上回る結果となりましたが、M&A・アライアンス等の成長投資枠700億円については、中長期的な企業価値の向上に向けて、着実に成長投資を実施してきたものの、その額は約250億円となりました。製品ポートフォリオ拡充やSmart Manufacturingの提案力強化のための買収、新事業領域でのパートナーとの新会社の設立などを進めることができたことに加え、複数の企業との協業をスタートさせました。しかしながら、早期にM&Aの効果を創出すること、シナジーを最大化していくこと、そして全社の事業ポートフォリオを見直し効率的なM&Aを実行していくことは、今後も取り組むべき課題です。
AG2023期間中に行った、主なM&A・アライアンスの実績は以下のとおりです。
[買収]
・Insilico Biotechnology AG(2021年、ドイツ)
・PXiSE Energy Solutions LLC (2021年、アメリカ)
・Dublix Technology ApS(2022年、デンマーク)
・Votiva Singapore Pte. Ltd.(2022年、シンガポール)
・Fluence Analytics, Inc. (2023年、アメリカ)
・Adept Fluidyne Pvt. Ltd.(2024年、インド)
[その他]
・合弁会社として、シンクレスト株式会社設立(2023年、日本)
・9件の資本参加を実施
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、2021年度に社会共通の課題の解決によって持続的な成長を実現するために、長期経営構想の抜本的な見直しとともに中期経営計画「Accelerate Growth(アクセラレート グロウス)2023(AG2023)」を発表し、2030年のYOKOGAWAのありたい姿の実現に向けて、2023年度までの3年間、社会共通課題を軸とした事業構造を確立するための取り組みを進めてきました。この間、COVID-19感染拡大やロシア・ウクライナ情勢などの影響を受け、また、これらを背景とした生産部品やプロジェクト調達品の調達難に見舞われるなど当社グループを取り巻く事業環境は激しく変化しましたが、AG2023の最終年度となる2023年度までには、堅調なエネルギー需要を受けたお客様投資の増加や調達環境の改善、値上げ施策の効果などにより、AG2023で達成を目指した経営指標の数値目標は、為替変動による業績の押上効果を考慮しても、概ね達成することができました。
現在の長期経営構想は、AG2023策定時に抜本的に見直したものであり、2030年を見据えた「YOKOGAWAのありたい姿」を端的に示したVision statement「YOKOGAWAは、自律と共生によって持続的な価値を創造し、社会課題の解決をリードしていきます。」とその実現に向けての方向性を示しています。今回は大きな見直しなくそのまま引き継ぐこととし、2024年度からの中期経営計画「Growth for Sustainability(グロウス フォー サステナビリティ)2028(GS2028)」を新たに策定しました。GS2028では、AG2023で確立した業種軸の事業構造を基盤に、環境・社会・ガバナンスの視点で事業活動に取り組み、社会価値と企業価値の向上を実現させるための変革を加速させます。
長期経営構想及びGS2028で達成を目指す経営目標
1.長期経営構想で目指すサステナビリティ目標(2030年度)
2.GS2028で目指す事業成長・財務目標(2024年度~2028年度)
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長期経営構想及び中期経営計画についての詳細は、当社ウェブサイト https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/company-overview/corporate-strategy/ をご参照ください。
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文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
1.サステナビリティ全般
当社グループがもつ測る力とつなぐ力を社会課題の解決に生かしたい、という意思を込めて「Yokogawa’s Purpose」を「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす」と定めています。
気候変動、プラスチックや廃棄物、生物多様性など、今世界で顕在化している深刻な課題は、単独の組織やシステムで解決できるものではないことから、状況を測り、さまざまな情報を共有し、組織やシステムを有機的につなぎながら解決への道を探っていく必要があると捉えています。私たちの活動の大前提として、すべての人の人権を尊重し、差別のない世界をつくっていくことも重要です。当社グループは世界中のステークホルダーとともに変革を続け、より豊かで持続可能な社会の実現に挑戦しています。
また、当社グループは、下記のとおり「サステナビリティ貢献宣言」を制定しており、長期的な視点で社会課題の解決への取り組みを実行していきます。
・YOKOGAWAは、未来世代のより豊かな人間社会のために、2050年に向けて、Net-zero emissions、Well-being、Circular economyの実現を目指します
・目標実現に向け、変化に柔軟に対応できる適応力・回復力を強化し、循環型社会に適した価値を創造し、ステークホルダーとのCo-innovation を推進することにより、自らを変革します
[ガバナンス]
当社グループはサステナビリティを重要な経営課題の一つと捉え、ガバナンスの充実に継続的に取り組んでいます。中期経営計画やリスク管理、内部統制システムなどの全社マネジメントサイクルの一環として、サステナビリティマネジメントを行っています。社会・環境への貢献と企業価値向上の観点からサステナビリティの重点課題を特定し、それらに対応するための サステナビリティ指標を設定して下図に示すマネジメントサイクルを定義し、取締役会が監視・監督を行っています。取締役会に対しては、重要案件や各マネジメントの実施報告の際に非財務項目も含めて報告しているほか、定期的にサステナビリティ活動の状況も報告しています。取締役会は、社会情勢の変化、サステナビリティ指標の進捗状況、ESG評価機関などステークホルダーからのフィードバック、ESGリスク評価結果などに基づき、社外からの独立した視点も交えながら、サステナビリティの取り組みの監視・監督を行っています。監査役会設置会社から指名委員会等設置会社への移行に伴い、監督と執行の役割分担を明確化し、意思決定プロセスの効率化、経営判断と事業計画の達成に対する責任の明確化、監査機能の強化、効率化を図る中で、サステナビリティ・マネジメントも強化してまいります。
・2023年度の取締役会でのサステナビリティに関する主な議題
-サステナビリティ中長期目標の進捗
-中計経営計画策定に向けたマテリアリティ分析と貢献と成長の拡大戦略
-サステナビリティ委員会報告
-サステナビリティマネジメントの社内規程制定
-非財務情報開示への対応
-YOKOGAWAグループ重点管理リスク
・サステナビリティマネジメントサイクル
・サステナビリティ委員会
企業価値および社会価値の両面から重点課題を特定し、経営の中長期的な方向性およびサステナビリティ課題の解決に向けた戦略を策定することを目的として、2022年度からサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、代表執行役社長の諮問機関であり、社長が委員長、執行役員を委員として、経営視点からサステナビリティに関するテーマについて集中的に議論する場と位置付けています。2022年度のサステナビリティ委員会(2回開催)では、新中計経営計画の前提としてマテリアリティ分析を実施し、重要性が高く、かつ自社が解決すべき課題(重点課題)とそれにより貢献する6つの分野はAG2023策定時から変更が無いことを確認しました。また、サステナビリティ委員会の傘下には、テーマ別の分科会(事業分科会、製品分科会、マネジメント分科会、開示分科会)を設置しており、事業における「貢献と成長のストーリー」、製品事業におけるサステナビリティの取り組み、Scope1,2,3削減戦略、非財務情報開示など、さまざまなテーマについて活発な議論を行いました。サステナビリティ委員会で議論した内容は取締役会に報告し、議論に基づく施策は経営会議に提案し、意思決定しています。
なお、当社グループのコーポレートガバナンスの詳細については、
[戦略]
2050年に向けて目指す社会の姿をサステナビリティ目標「Three Goals」として定めています。また、「Three Goals」の達成と事業の成長のための重点課題を明確にするためマテリアリティ分析を行い、分析結果に基づき2030年に向けて6つの貢献分野を設定し、それぞれに意欲的な目標を設定しています。
・マテリアリティ分析に基づく貢献分野の設定
当社グループは、エネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフなどの事業分野において、お客様の課題を解決することで、社会・環境へ大きくプラスのインパクトを与えています。社会・環境への貢献を拡大することは、YOKOGAWAの企業価値向上と密接に関連しており、「社会・環境への影響」および「自社の価値創造や事業モデルへの影響」の両面における重要性をマテリアリティと定義しています。2021年に策定したAG2023においては、各事業の関係者に対するサーベイに基づき、重要性が高くかつ自社が解決すべき課題(重点課題)と貢献のテーマ(貢献分野)を選定しました。GS2028の策定を前にマテリアリティ分析を実施し、改めてYOKOGAWAの貢献分野が変わらないことを再確認しました。また、6つの貢献分野に紐づく事業の注力領域について、向き合う社会課題、課題解決のアプローチ、および創出される価値を「貢献と成長のストーリー」としてまとめています。
・サステナビリティ・トランジション売上の考え方
サステナビリティへの貢献拡大と同時に事業の成長を促進するため、今後、6つの貢献分野における事業活動の売上を、サステナビリティ・トランジション売上として算出していきます。算出にあたっては、国際社会におけるサステナビリティの基準を参照した独自の基準を設定し、その基準をクリアしたものをサステナビリティ・トランジション売上とします。2030年に向けて、売上全体におけるサステナビリティ・トランジション売上の割合を拡大していきます。
[リスク管理]
当社グループは、各組織において企業価値に影響を与える不確実性をコントロールするためのリスク管理体制、業務の適正を確保するための内部統制システム、および経営に重大な影響を及ぼす事象が発生した場合、速やかに対応するための危機管理体制を整えています。
サステナビリティ全般に関するリスク管理のうち、特に重要な「気候変動への取り組み」、「TCFDへの賛同」、「人権尊重」については、
・リスク管理体制
当社グループにおける効果的なリスク管理を実現するため、リスク管理の統括責任をもつ代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しています。リスク管理委員会は、リスク評価に基づき、グループとして重点的に管理すべきである重点管理リスクを選定しています。また、重点管理リスクに対する対策内容や対策の進捗、リスクの状況については四半期ごとにリスク管理委員会で確認し、取締役会に報告しています。
なお、当社グループのリスク管理体制等の詳細については、
[指標と目標]
当社グループは、6つの貢献分野に対して、社会への貢献の度合いを測る長期的な指標(社会インパクト指標)を定めています。
これらの指標のPDCAを通じて貢献と成長を加速させていきます。
・社会インパクト指標
※2030年度の目標は、購入した商品とサービス(カテゴリー1)、および販売した製品の使用(カテゴリー11)を対象にしています。
2.気候変動
当社グループは、2050年に向けて目指す社会の姿としてNet-zero emissionsを掲げ、GS2028で推進する6つの貢献分野の一つに「カーボンニュートラルの達成」をあげています。GHG排出の抑制と、安価で信頼できる持続可能なエネルギーへの転換を重点課題と認識し、自社の操業により排出するGHGを削減するだけでなく、事業を通じて、再生可能エネルギーの普及やエネルギー利用の効率化に貢献しています。
なお、当社グループは、2019年2月に気候変動の課題に積極的に向き合い将来に備えていくという意思のもと、金融安定理事会(FSB)が気候変動に関する財務情報の開示を推進するために設立した「気候関連財務情報開示タスクフォースTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」による提言の支持を表明し、YOKOGAWAレポート、YOKOGAWAサステナビリティレポートで開示しています。
[ガバナンス]
気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。詳細については「
[戦略]
当社グループは、エネルギーや化学など、温室効果ガス(GHG)の排出量に大きな影響を与える製造業をお客様として事業を行っています。気候変動に伴う将来の環境変化を見据え、お客様は、再生可能エネルギーを含む低炭素事業やバイオ等の低環境負荷素材を生み出す事業への転換を進めています。当社グループは、GS2028において、再生可能エネルギー市場での価値提供拡大やクリーンエネルギー(水素/アンモニア)の活用支援を機会と捉え、事業の拡大に向け取り組んでいます。
・気候変動シナリオおよび気候変動シナリオに対する戦略のレジリエンス
不確実性の高い気候変動については、地球全体に深刻で、広範、不可逆的な影響が生じる4℃シナリオ、2℃シナリオより厳しく温室効果ガスの排出削減などが必要となる1.5℃シナリオへの対応を含めて、2030年の社会を考察しています。
長期経営構想およびAG2023の策定に際しては、1.5℃シナリオと4℃シナリオにおいて、リスクと機会の評価や対応策の立案を行いました。GS2028でも状況のアップデートを行いましたが、基本戦略には変更はありません。1.5℃シナリオにおいては、各国の脱炭素政策の強化等によるエネルギートランジションの加速に伴い、化石燃料ビジネスの縮小を見込むものの、再生可能エネルギーや省エネルギービジネス等のニーズの高まりを想定しています。また、4℃シナリオにおいては、洪水などの自然災害増加に伴う事業所およびサプライチェーンへの被害、異常気象に伴う農作物の収穫量低下や疾病の増加といった物理リスクの増大に起因する、防災ソリューションや医薬品・食品生産関連ビジネスの拡大を想定しています。これらの気候変動に関するリスク・機会を、事業セグメントとリスクの種類ごとに深掘りし、対応の方向性を策定・事業戦略に組み込んでいます。
-気候変動に関する主な機会
-気候変動に関する主なリスク
・インターナル・カーボン・プライシング(ICP)
経済的合理性の高いGHG削減施策を推進するため、2022年度よりICPの運用を開始しました。設備投資の検討時やクリーンエネルギー採用計画時に想定されるGHG排出量の増減を金額換算し、財務的な判断に加味することで、GHG排出量の影響を踏まえた意思決定をしていきます。グループ全体を対象に、Scope2の削減に大きく寄与する再生可能エネルギー電力の調達や生産機械設備への投資をターゲットに炭素価格を設定しています。ICPの方針や炭素価格はサステナビリティ委員会で審議し、経営会議で決定します。今後は、Scope1やScope3、また、事業計画の立案などにも順次ICPを適用し、炭素価格を設定していきます。
[リスク管理]
気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ全般のリスク管理に組み込まれています。詳細については「
[指標と目標]
AG2023では、2030年度に向けたYOKOGAWAの貢献分野として、GHG排出の抑制と、安価で信頼できる持続可能なエネルギーへの転換による「カーボンニュートラルの達成」を設定しました。
お客様とともに取り組んでいくビジネスの目標として、お客様事業のCO2排出抑制量10億トン(2018年度〜2030年度)を設定しています。お客様の再生可能エネルギー発電や低炭素発電の量を、平均的な化石燃料の使用によるCO2排出量と比較し、その差分を実績として計上しています。さらに、再生可能エネルギー技術開発の支援や、蓄電池の製造に使用されるシステムの提供について指標と目標(2023年度)を設定して取り組みました。
また、事業所における指標として、GHGプロトコルの方法論に基づいてScope1、Scope2、Scope3の排出量を算出し、目標を設定しています。Scope1,2では、2030年度に2019年度比50%削減、2040年に事業所のカーボンニュートラルを目指します。Scope3(カテゴリー1,11)については、2030年度に2019年度比30%削減を設定していました。これらの目標は、パリ協定が目指す気温上昇を産業革命前より1.5℃に抑えるGHG排出水準を踏まえたものであり、当社は2022年度に、SBT(Science Based Targets)の認定を取得しました。
2023年度のお客様事業のCO2排出抑制量は主に風力発電への貢献が伸長し、2018年度からの累計で4.1億トンとなりました。GHG排出量(Scope1,2)は、エネルギー使用削減施策の実施や生産工場での大規模太陽光発電システムのPPA契約締結、再生可能エネルギー由来電力への転換の促進等により、2019年度比で27.1%削減しました。また、サプライチェーンGHG排出量(Scope3)は、購入金額を活動量として算出している「購入した商品とサービス(カテゴリー1)」において、為替変動や調達価格の上昇に伴う購入金額の増加により排出量が増加した結果、カテゴリー1とカテゴリー11の合計で2019年度比7.8%の増加となりました。2030年度の目標達成に向けて、サプライヤーとの協働、既存製品の低消費電力化、GHG排出量の少ない製品やソリューションの開発を加速していきます。
※購入した商品とサービス(カテゴリー1)、および販売した製品の使用(カテゴリー11)を対象にしています。
GS2028では、Scope1,2のカーボンニュートラル目標を2030年へ10年前倒しするともに、Scope3のカーボンニュートラル目標を2050年に設定しました。さらに、GHG削減の加速に加え、エネルギー-効率改善への世界的な要請の高まりや自社の経営効率改善への貢献の観点からエネルギー効率改善目標を設定しました。
※2030年度の目標は、購入した商品とサービス(カテゴリー1)、および販売した製品の使用(カテゴリー11)を対象にしています。
3.人的資本および多様性
当社グループは、最上位に位置するGMS(Group Management Standards)における人財マネジメント規程において、多様性の確保についての考え方、人財の育成方針、社内環境整備方針を掲げています。
<人財マネジメントシステムの基本方針>
以下の3項目からなる理念を通じ、多様な人財資源を育成・活用しながら、新たな価値創造を促し、豊かな企業風土および組織文化の醸成を行い、YOKOGAWAグループ全体の企業競争力を強化する。
(1)ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
YOKOGAWAグループは多様性を重視した、インクルーシブで公平性のある企業文化を創出する。
個々の人財が持つさまざまな違いをお互いに認め合い、それを「個性」として受け入れ、誰もが安心して安全に自分らしく働ける環境のもと、その能力を最大限に発揮し、ビジネスに貢献できるサステナブルな組織の構築を目指す。多様な経験、知識、感性、視点、文化、背景、価値観などを持つ人財を積極的に採用、育成、登用していく。グループに関わるすべての人々に対し、人種、皮膚の色、年齢、性別、性自認および表現、性的指向、宗教、信条、政治的見解、国籍、民族、出身地、障がいの有無、家族関係、その他の状況に基づくあらゆる差別を禁止する。
相互尊重に基づくコミュニケーションと建設的なコラボレーションが、お客様、パートナー、サプライヤーとのイノベーションと新たな価値の共創を促進し、未来世代の豊かな人間社会の実現に貢献していく。
(2)チャレンジ
社員が持つ挑戦を志すマインドを最大限引き出すとともに、挑戦を後押しし、前向きな失敗を許容し、次に生かす風土を大切にする。
(3)エンゲージメント
社員が自らの意思で成長し、働きがいを高めることで、組織の成長を促し、組織の成長が社員の成長と働きがいをさらに高めるという好循環を作ることで、エンゲージメントの高い組織を築く。
[ガバナンス]
取締役会は人的資本に対する課題へ適切な対応がなされていることを監視・監督しています。また、事業戦略や計画を議論する際に人的資本に関する戦略や計画についても考慮しています。
なお、当社グループのコーポレート・ガバナンスの詳細については、
[人財戦略]
当社グループは、「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」というYokogawa’s Purposeをもとに、新中期経営計画 Growth for Sustainability 2028を掲げ、社会共通価値の提供による成長(2030年度売上高1兆円規模のグループ企業像)を目指しています。その目指す未来を創るには、すべての社員一人ひとりが変革に挑むマインドで「お客様起点の価値共創プロモーター」になることです。社内・社外を問わず、利害の異なるあらゆるステークホルダーの中において、専門性に根差した行動とコラボレーションを通して、アライメントを促進し、合意形成をリードできる人財です。
2021年度から「グローバルHRトランスフォーメーションプロジェクト」をスタートし、人事制度・プロセスのグローバル統一化と、それらを効率的に運用するための人事ITシステムの導入を進めています。基盤が整いつつある現在、活用に重点を置き、以下の人財戦略を実行していきます。
・事業戦略を起点にしたあるべき人財ポートフォリオを定義し、現在とのギャップを分析する。そのギャップを埋めるべく、各事業戦略に必要な人財を育成・機敏に獲得し、人財リソースのグローバル最適化を行うことで、事業戦略の実現に貢献する。
・価値共創のためにDE&Iな組織風土の醸成と、グローバルの組織間アライメントで組織連携を強化し、Yokogawaグローバルワンチームで企業価値の向上へとつなげていく。
・社員が自律的なキャリア形成のマインドを持ち、自ら学び、主体的に挑戦し、価値を共創していくための変革を推進する。
ビジネスオーナー主導の施策だけでなく、会社が求める職務に挑戦する自律的な社員の充足が不可欠です。そのため、会社の方向性と社員個人のキャリアをつなぐピープルマネージャーの育成を進め、スキル習得のための学習環境を整えます。社員へのキャリア機会の提供と成長の支援を通じて、会社の成長と社員のウェルビーイングの向上を図ります。
また、当社グループが持続的な価値を提供し社会課題の解決をリードしていくためには、社員の健康を経営的視点で捉え、戦略的に実践する「健康経営※」の推進が必要不可欠です。社員の自律的な健康づくりを支援し、心身の健康増進、やりがい、幸福感を向上させることで、グループ全体でのエンゲージメントや生産性の向上につなげることを目的としています。2016年9月に、社員の健康に関する各種の取り組みを健康経営の観点からさらに加速していくため、健康経営の基本方針として、以下の「健康宣言」を制定しました。
健康宣言
「YOKOGAWAは、心身の健康の維持・増進に自ら努める社員を支援し、いきいきと活力のある職場を作り、より豊かな人間社会の実現に貢献できる会社を目指します。」
健康経営推進体制
代表執行役社長が最高責任者となり、総括安全衛生管理者である労働安全衛生担当役員を中心とした経営陣の牽引の下、安全衛生委員会を核に人財総務本部の診療センター、国内人財統括部、総務部が担当部署として産業医や横河電機健康保険組合、労働組合と連携するなかで健康経営を推進しています。
健康施策
これまでに、社員の健康維持・増進に関する施策として、場所や時間にとらわれない働き方や働きやすいオフィス環境の整備、労働時間管理、健康増進プログラムなどに取り組んできています。運動・食事・睡眠・物事のとらえ方・コミュニケーションなどを含めた良い生活習慣が心身の疾病予防・改善のみならず、ストレスの軽減や仕事のパフォーマンス向上に最も重要との考え方から、「生活習慣の改善」に重点を置いた健康増進プログラムを設定し、全社員対象に実施しています。このプログラムは個人の健康行動だけでなく、職場の行動の促進も意図しており、会社や職場の健康上の課題や、生産性への影響などを示す社員の健康関連データを公開し、職場が健康へ取組む意義を説明し健康行動を促しています。
これらの取り組みにより横河電機は2017年度から経済産業省の「健康経営優良法人」を継続して取得しており、また2017~2019、2021、2023~2024年度には「健康経営優良法人(ホワイト500)」にも認定されています。
※「健康経営」はNPO法人健康経営研究会の登録商標です。
[リスク管理]
当社グループがグローバルに展開する事業活動において、多様な人財が集い、一人ひとりが持てる能力と個性を最大限発揮できるようすることが非常に重要です。人財の流動性が高まるなか、採用競争力が低下することで新卒採用や中間採用における人財獲得が計画・目標どおりに進まなくなること、社員の離職により組織の総合力が低下することが最大のリスクです。社員に成長の機会を提供し、活躍しやすい環境を整備することでリスク低減に努めています。なお、これらのリスク管理体制についてはグループ全体のリスク管理体制に組み込まれています。詳細については、
[指標と目標]
新中期経営計画 Growth for Sustainability 2028において、人的資本および多様性に関連する指標として「変革に向けた人財育成と能力開発」「社員のWell-beingとエンゲージメント」「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進」とし、指標と目標は以下のとおり設定して取り組んでいます。
※1 現状とあるべき人財とのギャップに対して、充足した割合
※2 前年度(FY22)実績
<リスク管理体制>
当社ではグループにおける効果的なリスク管理を実現するため、リスク管理の統括責任をもつ代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しています。気候変動を含めた外部環境、戦略、品質、環境、安全衛生、危機管理、企業倫理などのグループの企業価値に影響をあたえる不確実性をリスクと定義し、「外部環境」「戦略」「オペレーション」の観点で分類・管理しています。毎年、グループ各社においてそれぞれのリスクや対策等を洗い出すとともに、経営戦略や経営課題、外部のリスク環境なども踏まえ、リスク管理委員会が重点的に管理すべきリスク(重点管理リスク)を選定しています。その選定にあたっては、リスクの重大度を、影響度及び発生可能性の面から評価しています。影響度の評価では、財務的・人的側面のほか、社会・環境面での影響も(外部機関を通じて得られた外部環境分析結果を含め)考慮しています。重点管理リスクは経営会議で決定し、取締役会に報告しています。
また、内部監査担当部署は、グループのリスク管理プロセスの有効性を評価し、重要な事項は取締役会及び監査役に年に2回報告しています。
なお、リスクの状況により、必要に応じて代表取締役社長を委員長とする危機管理委員会を開催し対応する体制を採っています。
重点管理リスクについては、対策内容や対策の進捗について四半期ごとに確認するとともに、リスク管理委員会でリスクの状況を評価し、その内容を取締役会に報告しています。また、対策の見直しや改善点の洗い出しを実施し、残余リスクを考慮し、翌年の重点管理リスクの選定に反映させています。
また、個社においては、洗い出したリスクに対して自律的にPDCAサイクルを回し、リスク管理を行っています。
なお、2024年6月18日開催の第148回定時株主総会における定款一部変更の承認をもって、指名委員会等設置会社に移行したことに伴い、リスク管理委員会は代表執行役社長の諮問機関へ変更する予定です。変更以降は、重点管理リスクの決定はリスク管理員会で審議のうえ決定し、取締役会へ報告します。また、リスク管理委員会で評価した重点管理リスクの状況等も引き続き、取締役会へ報告していく予定です。
<事業等のリスク>
当社グループ事業の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及び投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を以下に記載しています。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社の有価証券に関する投資判断は本項以外の記載内容とあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。
なお、以下の事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在時点において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
(1) 外部環境に関するリスク
(社会情勢等に係るもの)
当社グループの活動範囲は日本国内のみならず世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等の外部環境変化は、当社グループの事業活動全般に影響を及ぼす可能性があるとともに、業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。
・各国の政治的または経済的要因
・租税や通商制限の影響
・各国の商慣習の違い
・自然災害(地震、火災、洪水・津波等)、感染症、ストライキ、その他の要因による 社会的混乱
・当社製品・サービス及び社内インフラへのサイバー攻撃
・環境保護を含め、各国規制・制裁・特許などの把握不全ならびに新たな法・規制改正
・地政学(戦争、暴動、テロ、主要国間の対立等)による各国の経済制裁措置
これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部機関との契約等を通じ、その予防・回避・影響の低減に努めています。
(為替・金利・株価変動に係るもの)
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、事業上の取引や事業活動におけるコストとして多数の通貨を使用しています。為替レートの変動に対応するため、為替予約契約の締結等を行っていますが、急激または大幅に変動するリスクがあり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが保有する資産及び負債にかかる金利の変動は利息の増減や資産等の価値に影響を与えるリスクがあり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが保有している株式等は価格が変動するリスクがあり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 戦略に関するリスク
(市場・競合環境に係るもの)
① コスト競争力
積極的な事業展開を進める中で、新設や近代化などプロジェクト案件での競争は激化しており、コスト低減要求が益々強まると同時に、資源国・新興国において自国優先的な姿勢が強まり、製品生産や雇用および役務を含む調達の現地化要求が高まっています。コスト競争力強化に取り組んでいますが、これら市場の要求する製品やサービス及び販管費を含めたコスト低減要求に効果的に対応できない場合は、ビジネス機会損失につながるリスクがあります。このような場合は、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
② デジタル技術の利活用による競争力優位性の確立
デジタル技術を活用したバリューチェーンおよびライフサイクル全般にわたるビジネスプロセスでの飛躍的な生産性向上の実現に対する要求が高まっており、これにビジネスとして応え、競争力優位性を確立していく必要があります。当社グループはこれを事業成長の機会と捉え、自社はもちろんのことお客様を中心に幅広い領域でのデジタルトランスフォーメーションによる新たな価値創造の実現に取り組んでいます。新技術に追随できない場合や、これら市場の要求に十分に対応できない場合は、ビジネス機会損失につながるリスクがあります。このような場合、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
③ 市場ニーズに合わせたビジネスモデル変革の実現
社会の変化、技術革新などにより、新たなビジネスモデルが数多く創造されている中で、当社グループのお客様においても、サブスクリプション型ビジネスなど、初期導入コストの低減や導入後の運用・保守の柔軟性に対する要求が大きくなっています。当社グループとしても成果報酬型ビジネスやサービス提供型のリカーリングビジネスの実現に取組むなどビジネスモデル変革を進めています。今後も多様な変化を見せる新たな市場ニーズに十分に応えられない場合や、当社グループの取組みに遅れが出た場合は、ビジネス機会損失につながるリスクがあります。このような場合は、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
④ 気候変動への取り組みによる市場環境の変化
気候変動への取組みに対する社会の要求が増大しており、当社グループのお客様の戦略にも影響を与える可能性があります。主要なお客様であるエネルギー関連における長期的視点でのエネルギーシフト等、お客様は環境変化に対する取り組みの検討を進めていると認識しています。当社グループは、このような変化を事業機会と捉え、市場環境の変化への対応を進めていますが、そのようなお客様の変化に対応できない場合や、当社グループの取組みに遅れが出た場合は、ビジネス機会損失や企業価値低下につながるリスクがあります。このような場合は、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(戦略投資に係るもの)
当社グループは、主に新事業・新分野への進出に対する戦略的成長投資を重点的に強化し、必要に応じてM&Aやアライアンスの可能性を検討しながら、技術、販路、製品・サービス、お客様、人財・ノウハウなどを獲得するための投資を行っています。案件の発掘から投資に至るプロセスの確実な実行と評価・検証精度の向上、投資後の迅速なビジネス立上げに万全の体制で臨んでいます。また、それを支える人財の育成・活用にも取り組んでいます。しかしながら、予期せぬ環境変化等によって想定した成果があがらないリスクがあります。また、取得した資産や機会を十分に活用できない場合も含め投資後のビジネスが迅速に立ち上がらず、想定した成果をあげられないリスクがあります。このような場合は、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(研究開発に係るもの)
当社グループは、計測・制御・情報の基礎研究、先端技術及びIIoTやAI等のデジタル技術開発をもっとも重要な経営課題として位置づけ、将来を見据えた新技術開発を継続的に推進しています。また国際規格や国際標準の変化に適応し、SDGsに代表される持続可能な社会の実現に向けた取組みを強化しています。しかし、研究・開発投資が将来市場のニーズや目標に予定通り適合しないリスクがあります。このような場合は、ビジネス機会損失により当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、競争力を維持するための製品技術やサービス革新の研究開発投資も継続的に行っていますが、成長可能性を持った製品やサービス分野の市場動向の把握ができなかった場合、研究開発投資が成功しないリスクがあります。加えて、市場に合致しても研究開発投資が革新的な技術を生み出さない、または想定した成果をあげられないリスク、及び競合他社に技術開発を先行されてしまうリスクがあります。このような場合は、ビジネス機会損失により当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(人財の確保・育成に係るもの)
当社グループの成長の源泉は、最先端の技術を支える人財や、高い品質を支える技能者等の有能な人財によって支えられています。特に、ソリューション提案能力を持つ人財、プロジェクトマネジメント能力とエンジニアリング能力を持つ人財、また、AI、デジタル技術、当社が進めている新規事業に関する技術と知見を有する人財の重要性が高まっています。当社グループではグローバルに人財採用、採用した人財の教育と訓練による育成を継続していますが、将来において必要人財の確保や育成が計画通り達成できないリスクがあります。このような場合は、当社グループの効果的な事業運営に影響を及ぼすとともに業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(人権に係るもの)
当社グループは、人権尊重についてその方針を定めるとともに国連グローバル・コンパクトへの支持を表明しており、ここで謳われている人権の方針と国際的な人権規範を尊重しながらその取組みを進めています。サプライチェーンにおける人権への取組みについても、強制労働・非人道的な扱い・児童労働・差別の禁止、適切な賃金、労働時間の法令順守や従業員の団結権についての指針を示し、国際的に求められている人権を支持して人権尊重に取り組んでいますが、予期せぬ事態により当社グループで人権問題が発生した場合、賠償責任を課されるリスクや企業価値を低下させるリスク等があり、事業活動全般に影響を及ぼすとともに業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(保有資産の価値低下に係るもの)
当社グループが保有している事業資産について、時価下落及び収益性低下等に伴い資産価値が低下するリスクがあります。このような場合は、減損損失が発生するなど、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) オペレーションに関するリスク
(製品の品質・供給に係るもの)
当社グループは、長年にわたる技術及びノウハウの蓄積と厳格な品質管理体制の展開により、お客様に対して高い信頼性を備えた製品及びサービスを提供していますが、当社グループの製品あるいはサービスに欠陥が内在する、また、その欠陥に起因して損害が発生するリスクがあります。このような場合には、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があるとともに、当社グループの事業活動全般に影響を及ぼす可能性があります。
また、主要な電子部品等の市況動向については日頃から情報収集して安定調達に努めるとともに、調達先の品質・納期等の管理を徹底し、特定の調達先への過度の集中・依存をさけるべく調達先の分散化等を進めるなど、リスクの低減に取り組んでいますが、外部環境変化に起因するサプライチェーンの混乱により電子部品等の調達や重要製品の製造が困難な状況となった場合、製品の供給に遅延や停止が発生するリスクがあります。このような場合、当社グループの生産活動をはじめとする事業活動全般に影響を及ぼすとともに業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(プロジェクトマネジメントに係るもの)
当社グループの事業において、特に製品・エンジニアリング・ソリューション・サービス・他社製品を一括してお客様に提供する形態であるプロジェクト型のビジネスでは、プロジェクトマネジメントの確実な実行が求められます。受注に至る過程での採算見積りや納期までの採算管理の精度の向上、生産・品質管理の徹底など、不採算案件の発生を防止する取組みを行っていますが、想定した見積りからの乖離や、採算・生産・品質等の管理において問題が発生した場合、サプライチェーンの混乱により製品の調達や供給が困難となった場合、予期せぬ原価の発生や納期遅延等に伴う賠償責任を課されるリスクがあります。このような場合は、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(知的財産権に係るもの)
当社グループは、自社製品及びサービスの開発の中で知的財産権の保護と他社の権利の侵害防止に万全な管理体制を展開していますが、当社グループの知的財産権が第三者から侵害を受け、期待した収益が得られない場合及び見解の相違等により他社の知的財産権を侵害しているとされた場合は、重要な技術が使用できない不利益に加え、賠償責任を課されるリスクや企業価値を低下させるリスク等があり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(情報セキュリティに係るもの)
当社グループは、事業活動を通して、お客様や取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあります。当社グループでは、これらの情報管理に関する管理体制と教育、システムのセキュリティ対策を展開していますが、予期せぬ事態(サイバー攻撃を含む)により情報が流出した場合、また、それを悪用された場合には、賠償責任を課されるリスクや企業価値を低下させるリスク等があり、当社グループの業績、財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
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事業等のリスクやサステナビリティ全般に関するリスク管理に関連するもののうち、特に重要な「気候変動への取り組み」、「TCFDへの賛同」、「人権尊重」についての考え方や取り組みは、サステナビリティレポート及びYOKOGAWAレポートにその詳細を掲載しています。 サステナビリティレポート: https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/sustainability/report/ YOKOGAWAレポート : https://www.yokogawa.co.jp/about/ir/shiryo/annual-ja/
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[1]業績等の概要
(1) 業績
世界は脱炭素社会の実現に向けたエネルギートランジション等、社会課題解決に向けたニーズの高まりや、デジタル技術の革新などにより劇的に変化しており、当社を取り巻く事業環境も大きく変わっています。
このような事業環境の中で、当社グループは、当連結会計年度(2024年3月期)が最終年度となる中期経営計画「Accelerate Growth 2023」に基づき、「IA2IA/Smart manufacturing の実行と存在価値の変革」、「業種対応力の強化と非業種依存のビジネス拡大」、「収益性の確保と健全な成長」、「社内オペレーション最適化とマインドセットの変革」の4つの基本戦略を中心に、成長に向けて社会共通課題解決を軸とした事業構造の確立に向け取り組みました。
この結果、当連結会計年度における当社グループの業績及びセグメント別の業績は以下のとおりとなりました。
なお、業績に関する分析については、『[3] 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 (1) 当連結会計年度の財務状況及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容』に記載のとおりです。
<連結>
売上高 5,401億52百万円 (前期比 18.3% 836億72百万円増)
営業利益 788億00百万円 (前期比 77.4% 343億91百万円増)
経常利益 840億98百万円 (前期比 73.0% 354億90百万円増)
親会社株主に帰属する当期純利益 616億85百万円 (前期比 58.5% 227億64百万円増)
<制御事業>
売上高 5,038億49百万円 (前期比 17.8% 762億79百万円増)
営業利益 716億66百万円 (前期比 74.5% 305億85百万円増)
<測定器事業>
売上高 318億17百万円 (前期比 26.9% 67億51百万円増)
営業利益 81億38百万円 (前期比 75.7% 35億06百万円増)
<新事業他>
売上高 44億85百万円 (前期比 16.7% 6億40百万円増)
営業利益 △10億04百万円 (前期比 - 2億99百万円増)
(2) キャッシュ・フロー
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ180億50百万円増加し、1,344億28百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費の計上等により、638億33百万円の収入(前期比234億10百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得及び無形固定資産の取得等があったものの、投資有価証券の売却収入等により、26億53百万円の収入(前期は329億39百万円の支出)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還や自己株式の取得、配当金の支払等により、574億96百万円の支出(前期比465億63百万円の支出増)となりました。
[2]生産、受注及び販売の状況
(1) 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額 (百万円) |
前期比(%) |
|
|
制御事業 |
503,817 |
117.8 |
|
|
測定器事業 |
31,817 |
126.9 |
|
|
新事業他 |
3,476 |
110.3 |
|
|
合計 |
539,110 |
118.3 |
|
(注)金額は販売価格によっています。
(2) 受注状況
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
||
|
制御事業 |
512,436 |
105.6 |
|
393,750 |
111.3 |
|
|
測定器事業 |
25,925 |
90.6 |
|
4,161 |
45.1 |
|
|
新事業他 |
3,599 |
82.8 |
|
219 |
23.5 |
|
|
合計 |
541,961 |
104.5 |
|
398,131 |
109.4 |
|
(3) 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額 (百万円) |
前期比(%) |
|
|
制御事業 |
503,849 |
117.8 |
|
|
測定器事業 |
31,817 |
126.9 |
|
|
新事業他 |
4,485 |
116.7 |
|
|
合計 |
540,152 |
118.3 |
|
(注)総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。
[3]経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、本項の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 当連結会計年度の財務状況及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
なお、当項目内において「FY21」「FY22」「FY23」は、それぞれ「2021年度(2022年3月期)」「2022年度(2023年3月期)」「2023年度(2024年3月期)」の略称です。
<連結>
当連結会計年度における当社グループの業績は、受注高、売上高、営業利益ともに前期比で増加しました。
売上のベースとなる受注高については、原油・ガス価格安定を背景としたお客様の投資意欲が堅調であったことや為替の変動影響があったことなどから、前期比で235億72百万円増(+4.5%)の5,419億61百万円となり、為替の変動影響を除くと前期比で約48億円増(+0.9%)となりました。売上高は、前期比で836億72百万円増(+18.3%)の5,401億52百万円となり、為替の変動影響を除くと前期比で約651億円増(+14.3%)となりました。営業利益は、販管費増加の影響を受けながらも主に売上高の増加に伴う粗利増加や為替の変動影響により、前期比で343億91百万円増(+77.4%)の788億0百万円となり、為替の変動影響を除くと前期比で約297億円増(+66.8%)となりました。また、経常利益は前期比で354億90百万円増(+73.0%)の840億98百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比で227億64百万円増(+58.5%)の616億85百万円となりました。
また、セグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、次のとおりです。
<制御事業>
制御事業の受注高は、原油・ガス価格安定を背景としたお客様の投資意欲が堅調であったことや為替の変動影響等により、前期比で269億95百万円増の5,124億36百万円(為替の変動影響を除いて約94億円増)となり、売上高は、主に生産部品及びプロジェクト調達品の調達環境の改善や値上げ施策の効果、COVID-19後に受注した大型案件の売上高への計上、為替の変動影響により前期比で762億79百万円増の5,038億49百万円(為替の変動影響を除いて約592億円増)となりました。営業利益は、前期比で305億85百万円増の716億66百万円(為替の変動影響を除いて約268億円増)となりました。
制御事業の地域別の受注高は、大半の地域が前期比で増加しました。特に、中東・アフリカ、インドが好調に推移しました。
制御事業の業種別の受注高・売上高は、エネルギー&サステナビリティ、マテリアル、ライフのサブセグメントで示しています。
エネルギー&サステナビリティ事業については、受注高は前期比で236億94百万円増(+10.6%)、為替の変動影響を除いて約6.3%増となりました。主にUpstream、Downstreamが伸長しました。売上高は、前期比で466億33百万円増(+24.0%)、為替の変動影響を除いて約19.5%増となりました。
マテリアル事業については、受注高は前期比で21億18百万円減(△1.0%)、為替の変動影響を除いて約4.3%減となりました。売上高は前期比で260億23百万円増(+14.6%)、為替の変動影響を除いて約10.7%増となりました。
ライフ事業については、受注高は前期比で54億18百万円増(+9.2%)、為替の変動影響を除いて約6.4%増となりました。売上高は前期比で36億23百万円増(+6.6%)、為替の変動影響を除いて約3.9%増となりました。
<測定器事業>
測定器事業は、主に生産部品の調達環境の改善などにより受注残の消化が進み、売上高は前期比で67億51百万円増加の318億17百万円となり、営業利益は前期比で35億6百万円増加の81億38百万円となりました。
<新事業他>
新事業他は、売上高は前期比で6億40百万円増加の44億85百万円となり、営業損失は前期比で2億99百万円損失が減少し10億4百万円の損失となりました。
セグメント別(制御事業・測定器事業・新事業他)の受注高・売上高・営業利益(前期比)は以下のとおりです。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
<当社グループの資本の財源及び資金の流動性>
a. 資金調達、流動性管理
当社グループは、成長性戦略投資の実行と安定的な事業運営を行うため、資本効率を高めつつ、事業運営に必要な流動性と多様な調達手段を確保することとしています。事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための戦略投資資金を、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく、金融機関からの借入などの外部資金を有効に活用しています。資金調達にあたっては、安全性、資金効率化及び調達コストの抑制を図ることを基本方針としながら複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、十分な流動性を確保していると考えています。
b. 資産、負債、純資産
当連結会計年度末の総資産は、売掛金及び契約資産や現金及び預金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ542億29百万円増加し6,728億66百万円となりました。また、負債合計は、契約負債や未払法人税等が増加した一方で、コマーシャル・ペーパーが減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ37億7百万円減少し2,281億3百万円となりました。純資産は、自己株式の取得により減少した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末に比べ579億37百万円増加し4,447億63百万円となりました。この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ3.5ポイント増加し、64.9%となりました。
※本資料では企業連結に係る暫定的な会計処理の確定に伴う過年度遡及修正を反映していません。
<キャッシュ・フロー>
現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ180億50百万円増加し、1,344億28百万円となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益、減価償却費の計上等により、638億33百万円の収入(前期比234億10百万円の収入増)となりました。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得及び無形固定資産の取得等があったものの、投資有価証券の売却収入等により、26億53百万円の収入(前年同期は329億39百万円の支出)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還や自己株式の取得、配当金の支払等により、574億96百万円の支出(前期比465億63百万円の支出増)となりました。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は会計方針の選択・適用、また、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、『第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)』に記載のとおりです。
当連結会計年度において、経営上の重要な契約等はありません。
(1) 研究開発の目的
当社グループは、「YOKOGAWAは計測と制御と情報により持続可能な社会の実現に貢献する YOKOGAWA人は良き市民であり勇気を持った開拓者であれ」という企業理念に基づき、絶え間なく研究開発活動を行い、最先端技術を創出してまいります。
(2) 研究開発の体制
当社グループの研究開発には、お客様の動向と現状認識を踏まえて、業種別セグメントで迅速に解決する製品開発・先行開発活動と、お客様やパートナーとの共創を通じて、未来を見据えた新しい価値をいち早く提供することに挑戦するイノベーション活動があり、前者を主に事業部が、後者を主にイノベーションセンターが担当しています。
イノベーションセンターは以下の2つのミッションに基づき活動しています。
1. お客様を含めた社内外と複数の組織をお互いに絡めあい(共創して)お客様の価値創造に貢献します。
2. イノベーションシナリオを策定し、それらを研究開発活動へ反映することで将来のビジネスを育成するとともに事業インキュベーションを行います。
当連結会計年度における研究開発費の総額(基礎研究である先端技術開発向け研究開発費を含んでいます)は324億35百万円となっています。なお、当連結会計年度におけるセグメント別の研究開発の状況及び研究開発費の金額は次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (百万円) |
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制御事業 |
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測定器事業 |
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新事業他 |
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合計 |
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(3) 制御事業
プラント、工場などの生産設備の制御・運転監視を行う分散形生産制御システム、生産現場に配置される流量計、差圧・圧力伝送器、プロセス分析計などのフィールド機器、共焦点スキャナ、創薬支援装置、各種ソフトウエアなど、総合的なソリューションに関する研究開発を行っています。
制御事業における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりです。
・実験データと研究リソースのクラウド上での統合管理を実現する「OpreX Informatics Manager」を開発・発売
・OpreX Control and Safety Systemのラインアップである「Collaborative Information Server(統合情報サーバ)」を機能強化
・アクショナブル意思決定支援システムを開発し「OpreX Digital Plant Operation Intelligence(モノづくり変革ソリューション)」を機能強化
・プラントデータ変換プラットフォームOpreX Data Model Brokerを機能強化
・耐環境性と広域使用に優れた産業用IoT向け無線ソリューションSushi Sensorの新ラインアップとして無線スチームトラップ監視デバイスを発売
・横河電機とNTTコミュニケーションズ、製造業界のDXを支援する「共同利用型OTクラウドサービス」の第一弾として、「CIMVisionPharms」のクラウド版を販売開始
・CellVoyager High-Content Analysis System CQ3000を開発
・プロセス製造業の脱炭素経営を支援するOpreX Carbon Footprint Tracerサービスを発売
(4) 測定器事業
波形測定器、光通信関連測定器、信号発生器、電力・温度・圧力測定器等、先端産業に不可欠なマザーツール
として、お客様の新製品の開発・生産をサポートする電子計測器を研究開発しています。
測定器事業における当連結会計年度の主な成果は以下のとおりです。
・高性能光スペクトラムアナライザ「AQ6370E」発売
・可視・近赤外用高性能光スペクトラムアナライザ「AQ6373E」および「AQ6374E」発売
・高分解能オシロスコープ「DLM5000HD」シリーズを開発・発売