当連結会計年度の経済及び情報サービス産業における経営環境は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
国内及び海外の経済は、世界的な金融引締めや物価上昇等の影響があるものの、全体としては緩やかな回復基調にあります。
景気の先行きについては、引き続き改善方向とは思われますが、地政学的問題等による海外景気の下振れ、金融資本市場の変動等のリスクには十分に注意する必要があります。
国内の情報サービス産業においては、お客様企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが引き続き本格化しており、物価上昇等IT投資抑制の要因となり得る要素はあるものの、需要環境はより堅調に推移していくものと見られています。
海外の情報サービス産業においても、世界的な金融引締めの影響によるIT投資抑制は懸念され、一部の地域において弱さが見られるものの、お客様企業におけるDXの加速、デジタル領域シフトの需要は継続しており、需要環境は堅調に推移していくものと見られています。
[経営施策の取り組み状況]
当社グループは、2025年のGlobal 3rd Stage達成に向けて、「Realizing a Sustainable Future」をスローガンに掲げ、未来に向けた価値をつくり、さまざまな人々をテクノロジーでつなぐことでお客様とともにサステナブルな社会を実現することを目指します。その実現に向け、中期経営計画で策定した5つの戦略とサステナビリティ経営を推進しました。2023年7月に、当社グループは持株会社体制に移行し、当社は「株式会社NTTデータグループ」に商号変更しました。
戦略1. ITとConnectivityの融合による新たなサービスの創出
ITとConnectivityを融合したEdgeからCloudまでを含む総合的なマネージドサービスの提供や、企業・業界の枠を超えた業際連携を実現し、新たな社会プラットフォームや革新的なサービスの創出に取り組んでいます。
当社グループの従来からの強みであるシステム構築力と、2022年から新たにグループに加わったNTT Ltd.のEdge to Cloud におけるサービスオペレーション力を連携させた成果が、2023年度においても引き続き上がっています。例えば北米では、グローバルに事業展開する製造業のお客様から、倉庫内でのフォークリフトの自動制御を目的としたプラットフォーム構築案件を獲得しました。
また、社会課題への取り組みにおいては、防災情報処理伝達システム「DPIS」をインドネシアに提供することが決定しました。政府から災害情報を迅速に発信して国民の安全・安心を守るためのシステムであり、将来的にインドネシアにおいて複数の防災関係機関情報の統合化・標準化を目指します。さらに、世界各国へ日本の防災DXソリューション・防災ノウハウの展開を目指します。
戦略2.Foresight起点のコンサルティング力強化
お客様・業界の未来を構想するインダストリコンサルティング力と、テクノロジー起点で未来を構想するテクノロジーコンサルティング力を強化し、共創パートナーとしてお客様の成長を支え、ビジネス変革を実現していきます。
Foresight起点でのお客様への価値提供力を生かし、2023年度においては、運輸業界のお客様に対して、経営課題にアプローチし、変革の提言から成果創出まで遂行するなど、既存の事業領域を超えた案件を獲得しました。
戦略3.アセットベースのビジネスモデルへの進化
グローバルレベルで当社グループ内の技術・知見・経験等をアセット化し、それらを有効活用することで、お客様への提供価値を最大化していきます。
2023年度においては、地方銀行様向け共同システム「MEJAR」(注1)に、勘定系システムをオープン化するフレームワーク「PITON」(注2)を適用し、銀行業界初となるマルチバンクオープン勘定系システムの稼働を開始しました。今後も「PITON」を活用し金融勘定系システムのオープン化を進めるとともに、将来的なバンキングシステム専用クラウドの実現に向け取り組みます。
戦略4.先進技術活用力とシステム開発技術力の強化
未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化と生産性向上に向けたシステム開発技術力の強化を両輪で進めています。
2023年度においては、Generative AI 推進室を設立し、グローバルレベルでの生成AI展開戦略を通じてお客様のバリューチェーンの変革に注力するとともに、生成AIを活用した抜本的な業務効率の向上、イノベーションの促進、企業文化の醸成等社内の大きな変革を推進しています。当社の保有する10以上の生成AI関連アセットを活用し、お客様との共創プロジェクトを200件程度グローバル横断で展開しているほか、社内でも生成AIの活用を推進しソフトウェア開発等における生産性向上に取り組んでいます。
これらの取り組みが評価され、HFS Research社発行の「HFS Horizons:Generative Enterprise Services, 2023」レポートにおいて最高位の評価である「Horizon 3 Market Leader」の1社に選出されました。
戦略5.人財・組織力の最大化
「Best Place to Work」をキーワードに、多様な人財が成長し活躍する魅力的な企業へと変革していくことを目指し、先進技術が学べる育成プログラムの導入、自律的キャリア支援、多様な人財が活躍できる制度・先進的な職場環境の整備に取り組んでいます。
約2カ月の集中プログラムでデジタルスキルの習得を図るDigital Boot Camp、先端領域での業務経験を獲得するためのDigital Acceleration Programや、AWS、Microsoft、Google Cloud等のパートナー企業とのアライアンスを通じたデジタル人財育成、若手から経営トップに至るまでの多くの女性社員が活躍できる環境づくり、LGBTQ等性的マイノリティに関する取り組み、障がい者雇用の促進施策を通じたDiversity Equity & Inclusion(注3)を推進しています。
これらの結果として、トップ・エンプロイヤー・インスティチュートより、世界29カ国と4地域においてTop Employer認定を受けるとともに、「Global Top Employer 2024」として認定を受けた企業17社の一つに名を連ねることとなりました。
また、Diversity Equity & Inclusionの領域で、包括的な評価を行う「Global Equality Standard」の認証を2023年5月に取得しました。
サステナビリティ経営
サステナブルな社会の実現に向けて、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、事業活動と企業活動により、社会課題の解決や地球環境への貢献に取り組むことで、お客様とともに成長していきます。2022年7月には、「Regenerating Ecosystems(環境)」、「Clients' Growth(経済)」、「Inclusive Society(社会)」の3つの軸に加え、サステナビリティ経営を推進するために取り組むべき重要な課題として、9つのマテリアリティを策定しました。
2023年度における地球環境への貢献(Regenerating Ecosystems)については、グローバルで加速するNet-Zeroへの取り組み要請を踏まえ、2021年策定の気候変動対応ビジョンを改定し、2050年を改めて2040年までに自社並びにサプライチェーンの温室効果ガス排出量(Scope1~3)の実質ゼロ実現を目指す「NTT DATA NET-ZERO Vision 2040」を新たに策定しました。この計画に基づき、再生可能エネルギーの導入やデータセンターの低PUE化を推進し、自社のオペレーションにおけるデータセンターの直接・間接排出量(Scope1・2)について2030年までに、オフィス・その他を含めた自社全体のScope1・2について2035年までに、実質ゼロを目指します。Science Based Targets initiativeよりNet-Zero目標の認定も取得しました。
また、お客様のサステナビリティ経営に貢献するC-Turtle等のサステナビリティオファリングの創出を推進しており、C-Turtleはこれまでに累計1,000社への導入を達成しています。
これら当社の取り組みが評価され、CDP(注4)が実施するサプライヤーエンゲージメント評価において、最高評価の「サプライヤーエンゲージメント・リーダー」に2年連続で選定されたほか、米国のS&P Global社が発行した「The S&P Sustainability Yearbook 2024」において「情報技術サービスおよびインターネットソフトウェア・サービス」分野の上位1%に選定されました。
また、2024年4月から、国内外をまたぐサステナビリティ経営推進のためのガバナンス体制として、取締役副社長執行役員(提出日現在においては、代表取締役副社長執行役員)であるコーポレート総括担当役員を委員長とするサステナビリティ経営推進委員会を設置しています。
詳細については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
持株会社体制への移行と新たな海外事業運営体制
これまで当社の日本国内の事業は継続的に拡大し、海外においても2022年10月のNTT Ltd.との事業統合により急速に事業が拡大しています。
これらの状況を踏まえて、当社グループは今後のさらなる事業拡大に向けたグローバル経営体制にシフトし、グローバルを前提とした戦略の下で国内・海外のニーズ、商習慣、法規制を踏まえてイノベーション、マーケティング、ガバナンス、デリバリーの仕組みを構築し、事業環境の変化に迅速に対応するため、2023年7月に持株会社体制へ移行しました。
当社がグループ経営における指揮管理を、国内事業会社である株式会社NTTデータ及び海外事業会社である株式会社NTT DATA, Inc.が自律的な事業運営を担う体制とすることで、機動的な事業運営と適切なガバナンスを推進しています。
また、2024年4月から株式会社NTT DATA, Inc.は新たなグローバル事業運営体制に移行しています。地域単位で一元的にオファリングを提供するリージョナルユニット、グローバルで共通的なサービスを提供するグローバルユニット、コーポレート機能を担うグローバル本社からなる体制とし、お客様エンゲージメントを強化するとともに、スケールメリットを生かしたグローバルでのサービスの提供能力を強化していきます。
[経営環境の見通し]
社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、地球環境への貢献を含む社会課題の解決と、新しい価値創造をはじめとする経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しています。また、テクノロジーの進化を背景にさまざまなモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しています。これらにより、お客様のニーズも多様化・高度化し、ITサービスの重要性は引き続き高まっており、需要環境については堅調に推移していくものと見られています。
一方で、世界的な金融引締めと物価上昇等の影響による投資抑制や地政学的問題等による景気の下振れが懸念されているほか、IT市場においては、コンサルティング企業との競合や新規プレイヤーの参入等により競争環境は依然として激化しています。
このような環境において当社グループがお客様へ貢献し続けるために、グローバルレベルでのさらなる競争力強化及び財務健全性の確保が必要と考えています。
[対処すべき課題]
海外事業の質を伴った成長
国内事業に比べ収益性が低い海外事業の収益性改善に引き続き取り組む必要があると認識しています。
競争力の強化
DXに代表されるITサービスの重要性の高まり、また、競争環境の激化に対応するため、さらなるデジタル関連ケイパビリティの獲得等を進める必要があると認識しています。
事業成長に向けた投資
さらなる事業成長に向けた投資と、投資収益性や財務健全性への影響を考慮した適切な投資管理の必要性を認識しています。
人財の拡充
世界的に人財獲得競争が激化していることを踏まえ、多様な人財が長期に活躍できる環境・文化への変革に取り組む必要があると認識しています。
[課題への対処]
海外事業の質を伴った成長
海外事業全体の収益性・競争力を高めるため事業構造改革を進めており、海外EBITA率※は2022年度の8.0%から2023年度に8.6%まで改善しています。2024年4月から3つのリージョナルユニットと2つのグローバルユニットに再編し、シナジー創出を含む事業成長、海外事業構造改革の効果の発現により2025年度の海外EBITA率10%※の達成を目指します。
※M&A・構造改革等の一時的なコストを除く
競争力の強化
中期経営計画の5つの戦略の徹底を継続し、競争優位性強化を進め、高度化したニーズ・技術等に対応していきます。
事業成長に向けた投資
投資と成長の好循環の確立と、Global 3rd Stageに向けた事業成長のため、Strategic Investments、M&A投資、データセンター投資の枠組みで積極的な投資を継続します。
注力技術・Industry領域の強化や次世代ビジネスの創出を目的とするStrategic Investmentsは、投資枠を今中期経営計画から大幅に拡大しており、2023年度は300億円規模の支出を伴った施策を実施しました。2024年度も継続して同規模の投資を行います。 M&A投資については、デジタル関連ケイパビリティ獲得や北米等主要マーケットにおけるシェア拡大に向け、進めていきます。また、国内においても、コンサルティング力やデジタルテクノロジー及びシステム開発力の強化、アセット拡充を進め、さらに事業を拡大させていくため、積極的にM&A投資を行います。データセンター投資については、当社グループはグローバルでプレゼンスの高いデータセンター事業者であり、また本事業は将来的にも成長の継続が予測されていることから、中長期的な事業基盤の重要領域と位置付け積極的に投資を行います。
一方で、データセンター事業において設備投資額は有利子負債で調達しているため、金融費用も増加傾向にあります。引き続きNet Debt EBITDA 倍率を財務健全性の指標として、EBITDA創出力増加に合わせて有利子負債の増加をコントロールしていきます。
人財の拡充
国内では、新卒採用の拡充に加え、経験者採用の強化に向けジョブ型雇用制度が適用されるFlexible Grade、スペシャリストのキャリアパスを実現するTechnical Grade等の新人事制度活用や対外ブランディング強化を行い、デジタル人財の獲得を増加・拡充させていきます。
海外においては、グローバル成長戦略に必要な人財の確保をM&A等の手段も含めて進めています。
また、獲得した人財の多様な力を新たな競争力につなげ、高度化したニーズ・技術等への対応力を高めていくことが必要であると考えており、人財の活躍に向けた制度の充実と、グローバル共通のトレーニングメニューの確立や人財交流等を中長期視点で進めていきます。
(注1) MEJAR(Most Efficient Joint Advanced Regional banking-system)
当社グループが構築・銀行が主体で運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターです。次期MEJARは2030年頃開始予定です。
参加行は ㈱横浜銀行、㈱北海道銀行、㈱北陸銀行、㈱七十七銀行、㈱東日本銀行であり、㈱広島銀行が2030年度に参加予定です。
(注2) PITON
当社グループが提供する、メインフレーム上に構築されたシステムをオープン化するためのフレームワークです。
(注3) Diversity Equity & Inclusion
持続可能な社会の実現のために取り組むべき多様性、公平性、包摂性のことです。
(注4) CDP
投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するための、グローバルな情報開示システムを運営する、英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)のことです。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、特に記載のない限り、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
人口問題や気候変動、災害リスクの高まり等、社会を取り巻く環境の変化に加えて、IT・デジタルの普及によって企業活動から消費・生活スタイルまで社会トレンドも変化しています。生成AIの活用が機会を生む一方で、AI倫理やAIガバナンス、人権へのよりいっそうの配慮が求められます。
このように企業が対応しなければならない社会課題やニーズは複雑化・多様化する中で、当社グループは、この大きな変化の局面をさらなる成長の機会と捉え、長期的な視点を持ったサステナビリティ経営を推進していきます。
当社グループにおいて、サステナビリティの重要な課題は、取締役会で議論、戦略を示し、方針を決定したうえでモニタリングを実施しています。当社グループが持続的に成長できるよう、代表取締役社長のリーダーシップのもと経営戦略の主管組織である事業戦略室及び関係主管組織とサステナビリティ経営推進部を中心に議論を行い、方針や目標、施策等を企画策定・実行するとともに、中期経営計画(2022~2025年度)で定めた各種計画の進捗についてモニタリングしています。
これまで、グリーンイノベーション推進委員会を通じて、お客様と社会の脱炭素にむけた解決策の提供と自社の温室効果ガス排出量削減を推進してきましたが、2024年4月からは、より広い視点でサステナビリティ経営を推進するために、グリーンイノベーション推進委員会をサステナビリティ経営推進委員会へと進化させました。サステナビリティ経営推進委員会は、代表取締役副社長執行役員(提出日時点)であるコーポレート総括担当役員を委員長とし、株式会社NTTデータグループ、株式会社NTTデータ、株式会社NTT DATA, Inc.の代表者を構成員としています。取締役会の監督ならびに代表取締役社長のリーダーシップのもと、サステナビリティ経営推進にかかる提言、戦略の策定及びモニタリング等を実施しています。また、サステナビリティ経営に関する各種課題について実務的な議論を行うために、テーマ別に6つの小委員会(テーマ別ワーキンググループ)を設置しています。協議した内容は原則年2回、取締役会にて審議または報告していきます。
※ガバナンスの詳細は、
・「統合レポート2023」 : https://www.nttdata.com/global/ja/investors/library/ar/
・「NTTデータグループ サステナビリティレポート2023 Data book」
: https://www.nttdata.com/global/ja/about-us/sustainability/report/
・「コーポレートガバナンス報告書」 : https://www.nttdata.com/global/ja/investors/library/ga/
■サステナビリティ経営推進体制

当社グループは、創立以来、「情報技術で新しい『しくみ』や『価値』を創造し、より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」という企業理念のもと、お客様や社会へのサービス提供に邁進することで事業を拡大してきました。中期経営計画では、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、未来に向けた価値をつくり、さまざまな人々をテクノロジーでつなぐことで、お客様とともにサステナブルな社会の実現を目指しています。社会環境及び事業環境が大きく変化し続ける現在の局面をさらなる成長の機会と捉え、より長期的な視点を持ったサステナビリティ経営を推進するために、環境、経済、社会の3つの軸を定め、9つのマテリアリティ(重要課題)を設定し、取り組みを進めています。
環境「Regenerating Ecosystems 未来に向けた地球環境の保全」
経済「Clients' Growth サステナブルな社会を支える企業の成長」
社会「Inclusive Society 誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現」
■中期経営計画で目指す姿

■サステナビリティ経営

■9つのマテリアリティと決定プロセス
「Regenerating Ecosystems」「Clients' Growth」「Inclusive Society」の3つの軸のもと、それぞれ3つのマテリアリティを決定し、SDGsへの貢献にも取り組んでいます。
・環境:Regenerating Ecosystems(未来に向けた地球環境の保全)
- Carbon Neutrality:社会やお客様の脱炭素に向けたイノベーションを創出し、気候変動問題の解決に貢献する
- Circular Economy:ごみを減らし、製品やサービスの価値が循環し続ける社会を実現する
- Nature Conservation:自然資本の保全・回復によって、健全な地球環境を創出し、人々の豊かな生活に貢献する
・経済:Clients' Growth(サステナブルな社会を支える企業の成長)
- Smart X Co-innovation:スマートでイノベーティブな社会の実現に向けて、さまざまな企業との共創により新しい価値を創出する
- Trusted Value Chain:セキュリティやデータプライバシーを守り、安心安全でレジリエントな企業活動を実現する
- Future of Work:パフォーマンスとEXを高める新しい働き方を提供し、社会全体の働き方改革を推進する
・社会:Inclusive Society(誰もが健康で幸福に暮らせる社会の実現)
- Human Rights & DEI:多様な人々が互いの人権を尊重し、活き活きと活躍する公平な社会の実現に取り組む
- Digital Accessibility:基本的ニーズへ誰もが等しくアクセスできるサービスを実現し、人々のQOL向上を実現する
- Community Engagement:地域社会の発展に向けた課題やニーズを理解し、暮らしを豊かにするサービスを提供する

<マテリアリティ決定プロセス>
当社グループでは、国際社会の動向やステークホルダーからの期待等、サステナビリティを取り巻く外部環境の変化を踏まえ、グローバルなガイドラインであるGRI(注)で提示されたマテリアリティ決定プロセスに則り、マテリアリティの定期的な見直しを行っています。現在のマテリアリティは、2022年に公表した現中期経営計画において、「Realizing a Sustainable Future」というスローガンのもと、3つの軸を定め、各軸3つずつ、サステナビリティ経営を推進するために取り組むべき重要な課題として策定しました。
これらのマテリアリティはグローバルな基準機関等の課題を抽出して評価・検証を行うとともに、当社グループにおける重要性評価においても、事業部門や海外グループ会社等を含めた全社で社会(ステークホルダー)からの期待とリスク、その影響の大きさについて幅広く検討し、グローバルNGOや外部有識者の意見等も踏まえ、取締役会において9つのマテリアリティを決定しました。
(注)GRI(Global Reporting Initiative):企業や非営利団体に対し、非財務情報開示のためのガイドラインを提供するグローバルな非営利団体のことです。

当社グループは、変化し続ける事業環境を捉え、当社グループにとっての機会とリスクを把握し、サステナブルな社会の実現に向けて柔軟に変化・適応することで、持続的な成長を目指しています。
全社的な視点での当社グループのリスクマネジメントについては、リスクマネジメントを統括・推進する役員及びリスクマネジメント部門を設置し、グループで連携したリスクマネジメント体制を整備しています。
当社グループにおけるリスク管理の詳細については、「
<人権リスクへの対応>
当社グループは人権対応に関するリスクを「特に重要なリスク」の1つとして設定しており、NTTグループの一員として、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の考え方を取り入れた「NTTグループ人権方針」(2021年11月制定)に沿って、グループ一体で組織的な運営をしています。
人権の尊重を全社で推進する体制として、サステナビリティ経営推進委員会の小委員会にて国内外の実務担当レベルで議論するとともに、議論内容は代表取締役副社長執行役員(提出日時点)が委員長をつとめる人権啓発推進委員会、内部統制委員会及び取締役会に報告しています。
「NTTグループ人権方針」に従い、人権デューデリジェンスプロセスを経て、人権課題の特定、防止、軽減、是正をグローバル規模で進め、人権意識の向上につとめており、具体的な人権デューデリジェンスのプロセスは以下の通りです。
1. [調査対象スクリーニング]国内外の主要グループ会社及び海外の高リスク拠点を有するグループ会社を選定
2. [セルフチェックリストの実施・分析]Self-Assessment Questionnaire(以下、SAQ)による調査結果と通報件数を分析
3. [人権リスクマップの作成]影響深刻度と発生可能性を軸とした人権課題をマッピング
4. [高リスク項目の低減策の検討・具体化]高リスクと判定されたリスクに関する具体的な低減策を策定
5. [直接対話]策定した具体的なリスク低減策をもとに各グループ会社と議論
6. [開示]人権デューデリジェンスの取り組み結果を自社のサステナビリティレポート等で公表
2023年度は、国内外の主要グループ会社及び高リスク国拠点の海外グループ会社のリスク評価と脆弱性評価で構成されたSAQの回答をもとに人権リスクマップを作成し、注意すべきリスクとして「労働安全衛生・適切な労働環境」「ハラスメント」「アクセシビリティ」が抽出されました。2024年度は、人権課題が発生した組織との対話を通じて詳細な状況を把握するとともに、グループ会社内の優良事例の展開や体制整備等を通じてリスク低減策を継続的に進めていきます。
また、BSR(注)、国連グローバル・コンパクト等の外部団体への加入を通じて積極的にダイアログを実施するなど、人権デューデリジェンスの改善や人権ビジネスに関する議論の充実を図っています。
当社グループにおける人権デューデリジェンスに関する詳細については、「
https://www.nttdata.com/global/ja/about-us/sustainability/report/
当社グループの事業等における人権リスクの詳細については、「
(注)BSR(Business for Social Responsibility)とは、気候変動、エクイティ、インクルージョン、人権問題、生態系、持続可能なサプライチェーン等の分野に関する専門知識を持つグローバルなネットワークを有するサステナビリティの専門コンサルタントのことです。
当社グループは、マテリアリティに紐づく指標及び目標を設定し、目標達成に向けた取り組みを進めてきました。2024年度は、16指標(目標達成年度が2025年度の2指標を含む)と4つのモニタリング指標※1を設定しています。
<範囲項目の凡例>
① (株)NTTデータグループ、(株)NTTデータ、(株)NTT DATA, Inc.(国内)
② ①に加え、国内グループ会社
③ ②に加え、海外グループ会社
※1 目標設定は行わないが、水準を注視するために実績をモニタリングする指標
※2 第三者検証後に確定した実績値を統合レポート及びサステナビリティレポートにて公開する
※3 本指標は2024年度に定義を見直すとともに、正式な指標名は「※サイバー攻撃起因、内部不正、過失問わず対外的に広く認知された事案数」を含む
※4 目標値は0件と設定し、許容限界を近年の実績値より2件とする
※5 社員エンゲージメント率 「当社で働くことを誇りに思う」で肯定的評価をつけた社員の割合((株)NTTデータグループ、(株)NTTデータ、(株)NTT DATA, Inc.の合算)
※6 役員・組織長等
文中の将来年度及び過年度の財務影響、対策費・投資額に関する事項は、当社グループが中期経営計画に基づく想定のもと、提出日時点で判断、推計したものです。
[当社グループにおける取り組み・体制等]
・当社グループにおける気候変動への取り組み
当社グループは、Net-Zeroに向けたグローバル社会からの要請のさらなる高まりに対応し、2020年度に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)やBusiness Ambition for 1.5℃に賛同しています。また、当社グループの移行計画であるNTT DATA NET-ZERO Vision 2040にて、2035年には温室効果ガスに関する自社オペレーションでの直接排出量と間接排出量(Scope1・2)を実質ゼロ、2040年にサプライチェーンを含めた排出量(Scope1~3)の実質ゼロを目指しています。2023年度にはSBTイニシアティブよりNet-Zero目標の認定を取得しました。
これまで、自社のサプライチェーンを通じた脱炭素の推進に加え、グリーンコンサルティングサービスや温室効果ガス排出量可視化プラットフォームの提供を通して、お客様の脱炭素実現の支援を本格化させてきました。
グローバルでお客様や社会のNet-Zeroに向けてグリーンイノベーションで貢献すべく、2022年3月に国際環境NGOであるCDPよりゴールドパートナー認定(気候変動コンサルティング&ソフトウェアパートナー)を受けており、2022年4月にはCDP Supply Chainプログラム Premiumメンバーとなりました。また、2023年9月にはサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量削減に向け、CDPとの戦略的パートナーシップを強化し、CDPとともに社会全体のNet-Zeroに向けた活動を推進しています。2023年度のCDP気候変動調査においては、気候変動に対するガバナンス、戦略や先進的な取り組みへの透明性の高い情報開示が評価され、最高評価のAリスト企業に2年連続で認定されました。
さらに、ソフトウェアの温室効果ガス排出量の削減を目指すGreen Software Foundationに、Steering Member(運営メンバー)として加盟し、ソフトウェア開発におけるグリーン化のグローバルスタンダードの策定や啓発活動に取り組んでいます。2024年3月に、Green Software FoundationとLinux Foundationが提供している“環境に配慮したシステム開発についての学習教材(Green Software for Practitioners)”を日本語に翻訳し、国内IT業界のグリーン化に貢献しました。上記に加え、経済産業省の支援事業に参画し、国内初のソフトウェア製品に関する温室効果ガス排出量算定のルールを策定しました。これにより、サプライチェーン全体の排出削減に向け、ソフトウェア業界の脱炭素を推進しています。企業活動や事業が環境負荷に与える影響に対して責任を持つのはもちろんのこと、環境問題が当社グループの企業経営及び当社の提供する社会インフラを支える各種システムに与える影響を把握し、対策を講じることが重要だと認識しています。2040年Net-Zeroの実現に向けて、グリーンイノベーションを通じ、当社グループのサプライチェーンの温室効果ガス排出量削減のみならず、お客様や社会のグリーン化へ貢献します。
当社グループの気候変動に関する取り組みを推進するため、2021年10月にグリーンイノベーション推進室を専任組織として新設し、グリーンイノベーション推進委員会を立ち上げました。2024年4月からは、より広い視点でサステナビリティ経営を推進するためサステナビリティ経営推進委員会へと進化させて運営しています。
サステナビリティ経営推進委員会では、委員長である代表取締役副社長執行役員(提出日時点)が、気候変動に関する取り組みの最高責任を負っています。また気候変動アクションの活発な海外グループ会社からも委員を選定し、グローバル規模の推進体制を構築しています。サステナビリティ経営推進部がその事務局を務め、気候変動に関する取り組みについてはグリーンイノベーション推進室が推進しています。2024年4月時点では、サステナビリティ経営推進委員会の下に6つの小委員会を設置し、温室効果ガス削減、サステナビリティビジネス推進、サプライチェーンマネジメント、サステナビリティ情報開示の小委員会において、気候変動に関する当社グループの取り組みを行っています。小委員会では、執行役員等がリーダーとして全社横断で関係者を含めた取り組みを推進しています。
取締役会はサステナビリティ経営推進委員会で協議した内容の報告を受け、重要な経営・事業戦略として議論、方針の決定に加え、気候変動問題への実行計画等について監督を行っています。当社はサステナビリティに関して高い専門性を有した社外取締役を選任しており、気候変動対応に対しても、客観的かつ専門性を持って監督を実施しています。また、2022年度からは役員や社員の報酬と連動した気候変動関連のKPIを設定し、目標達成に対する経営層や社員の関与の深化を図っています。
2021年度から、内部統制委員会での全社リスクマネジメントにおいても、「気候変動」を重要リスクとして位置づけています。さらに、気候関連リスク・機会については、TCFDのフレームワークに沿った分析・評価を実施し、より長期の気候関連リスク・機会においての対策検討を進めています。
気候変動ガバナンス体制図は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(1)サステナビリティ経営 ①ガバナンス ■サステナビリティ経営推進体制」をご参照ください。
② 戦略(気候関連リスク及び機会に関する戦略)
当社グループは、以下<気候変動シナリオ分析の概要>記載のとおり気候変動シナリオの分析を行い、気候変動に関するリスクと機会による影響を把握しています。その結果を中期経営計画(2022年度~2025年度)に取り込むことにより、サステナブルな社会の実現に向け、企業・業界の枠を超えた革新的なサービスの提供をいっそう推し進める戦略を遂行しています。
また、当社グループでは、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握して対応するため、全社的な視点でリスクマネジメントを統括・推進する役員を置くとともに、各部門とグループ会社にCRO・リスクマネジメント推進責任者を配置しています。内部統制委員会において、リスク低減に関する施策を討議するとともに、有効性に関する評価等を行い、その結果を取締役会に報告しています。
最高責任者の代表取締役副社長執行役員(提出日時点)がサステナビリティ経営推進委員長として四半期に一度、また、環境保全推進委員長として、半期に一度、各々の会議体を通じ、全社リスクマネジメントの中で気候変動及び環境全般に関するリスク管理を行っています。リスクの内容と顕在化した際の影響、及びリスクへの対応策に関しては「③リスク管理 表1(気候関連のリスク)」をご参照ください。
<気候変動シナリオ分析の概要>
当社グループでは、気候変動に関する事業影響を把握し、気候関連リスク・機会に対する当社戦略のレジリエンスを評価することを目的として、シナリオ分析を実施しています。具体的には、国際エネルギー機関(IEA)による世界エネルギー展望(WEO)に示されるシナリオや、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるシナリオ等を参照し、当社グループ全体を対象として、1.5℃シナリオと4℃シナリオを中心に分析を行っています。
1.5℃シナリオでは、カーボンプライシングが導入されるなどの気候変動対策が強化される一方、気候変動の物理的な影響は2022年3月末レベルにとどまり、それ以上の深刻な影響は発生しないと仮定しています。4℃シナリオでは、気候対策は2022年3月末レベルである一方、異常気象の激甚化等の気候変動の物理的な影響が生じると仮定しています。
分析の結果、当社グループでは、1.5℃シナリオによる持続可能な社会において、社会の移行に伴うリスクと機会の両方が影響すると考えています。それ以外のシナリオによる社会では、リスクの影響が大きくなる可能性が高いことが明らかとなりました。また、各シナリオによるリスク・機会は、それぞれの影響度・発生可能性等を考慮し、事業戦略へ反映しています。1.5℃シナリオの分析の結果、グローバルでデータセンターやオフィスに再生可能エネルギー導入を推進することが、ESG投資家や金融機関からの評判低下リスクや長期的なカーボンプライシングによるコスト増加リスクの両方を低減することにつながると評価し、2035年度までに温室効果ガスに関する直接排出量と間接排出量(Scope1・2)を実質ゼロにすることを計画しています。また、2023年度には、シナリオ分析の結果も考慮し、Net-Zeroの目標年度を2050年度から2040年度に10年前倒し、NTT DATA NET-ZERO Vision 2040を策定しました。
2022年度及び2023年度には、上記に加えて、気候変動シナリオ分析のスコープ・時間軸の具体化によるグループ連結でのレジリエンス強化を図ることを目的とした当社グループ横断のシナリオ分析検討会を実施しました。事業部門、コーポレート部門、海外グループ会社等から選抜メンバーが参画し、外部動向調査・知見に基づく各種基礎データ等をインプットとした検討結果を得ることができました。
※気候変動シナリオの詳細は、サステナビリティレポートをご参照ください。
: https://www.nttdata.com/global/ja/about-us/sustainability/report/
[リスクの内容と顕在化した際の影響] 及び [リスクへの対応策]
・リスクと機会
当社グループは、シナリオ分析に基づき、気候関連リスク・機会による事業への影響を評価し、その結果を気候変動戦略として事業戦略に反映することで、気候関連リスクへの対応を進め、また気候関連の機会実現を図っています。
気候関連リスク・機会に関しては短期・中期・長期の時間軸を考慮し、財務的影響への影響度を高・中高・中・低の4段階、発生可能性をほぼ確実・非常に高い・高い・低いの4段階で評価しています。気候関連リスク・機会の評価は「表1(気候関連のリスク)」及び「表2(気候関連機会)」のとおりです。
※各評価項目の詳細は「表1(気候関連のリスク)」及び「表2(気候関連機会)」の注記をご参照ください
※2022年10月のNTT Ltd.事業統合を受けて、2023年度より対象範囲を拡大しました。そのため、「表1(気候関連のリスク)」及び「表2(気候関連機会)」の内容にNTT Ltd.連結拡大の影響を含みます
表1(気候関連のリスク)
表2 (気候関連機会)
※1 期間の定義は以下のとおりです。
※2 影響度の定義は以下のとおりです。
※3 記載金額は10億円未満を四捨五入
※4 中期経営計画期間(2022年度~2025年度)の累計額
※5 記載金額は100億円未満を四捨五入
※6 2025年度時点での対2021年度からの売上増分
・資本配備
中期経営計画期間(2022年度~2025年度)における気候関連の対策費・投資額累計の予定は、「表1(気候関連のリスク)」及び「表2(気候関連機会)」の「対策費・投資額」のとおりです。(以下再掲)
④ 指標及び目標(気候関連リスク・機会の管理指標と目標)
気候関連のリスク管理及び機会実現の戦略のために、海外グループ会社を含む当社グループで定めている指標と目標はそれぞれ以下のとおりです。
(3)人的資本
当社グループにおいては、人財は当社グループの競争力の源泉であり、最も重要な経営資源と捉え、社員一人ひとりにやりがいを与える人事制度を整備することを基本方針としています。当社グループは2023年7月の持株会社体制への移行に際し、当社グループの事業戦略に則した機動的な人事を実現する組織体制を整備し、事業成長を支える人的資本の確保に努めています。
具体的には、持株会社である株式会社NTTデータグループにおいて、人事制度の整備、経営幹部の選任や育成、事業を支える人的資本の状況把握を通し、各事業会社のサポートを行っています。また、組織文化の醸成として、Values Week(注)による価値観の浸透等を実施しています。各事業会社においては、各事業会社の事業ポートフォリオに応じた人事機能(採用・育成・配置・評価)の提供を行い、事業戦略に則した機動的な人事を実現しています。
(注)毎年、創立記念日(5月23日)の週をValues Weekとし、当社グループ社員が職場の同僚たちとValuesについて語り合うワークショップを全世界で開催しています。
[人財戦略―全ての戦略を支える「人財・組織力の最大化」]
技術の進化が著しいITサービス業界において、顧客ニーズや技術のトレンドを掴み、イノベーションを生み出し続けるためには、多様かつ優秀な人財が不可欠です。また、お客様のニーズに応えるには長期にわたる強固な顧客基盤から得たお客様業務ノウハウやアプリケーションノウハウを保持する人財の確保が重要となります。
Group Vision「Trusted Global Innovator(お客様から長期的に信頼されるパートナー)」にも示すとおり、当社グループは長期的な視点で、働く一人ひとりの多様性を尊重することによって、グローバルに通用する創造力を培い、刺激し、さらに成長させていきます。
そのような考えから、2022年度~2025年度の中期経営計画においても、「人財・組織力の最大化」をサステナブルな社会を実現するための土台と位置付け、最優先で取り組むべきテーマとしています。
Foresight起点のビジネス構想力(コンサル人財)、先進技術活用力(テクノロジー人財)の向上により、顧客提供価値を高めるとともに、グループシナジーの発揮を目指します。
■中期経営計画(2022~2025年度)戦略の全体像

[人財育成方針・DEI推進方針・社内環境整備方針(Best Place to Workの実現)]
当社グループは、高度な専門性と変化への対応力を有するプロフェッショナル人財やグローバルで活躍できる人財の育成に注力しており、社員の多様な専門性・志向に応じた育成体系及び幅広いコンテンツの整備に加え、コミュニティ学習を通じた共創や学びあうカルチャーの醸成を推進しています(Advanced Training)。
また、性別・国籍・性的指向・障がい・スキル・職歴等によらず多様な人財が活躍できるカルチャーを実現します。高い専門性に応じた多様なキャリアパスを実現する制度を整備しています(Promote Diversity Equity & Inclusion)。
業務プロセスと目的に応じて働く場所や時間を柔軟に設定できる環境を整備することで、一人ひとりが活躍しやすい企業へと変革していきます(Future Workplace)。
これらを通じて、各戦略の実行を支える人財・組織力を最大化し、Best Place to Workを実現することで将来にわたっての企業価値を高めていきます。
■中期経営計画(2022~2025年度)戦略5「人財・組織力の最大化」の全体像

1.「Advanced Training」
当社グループは、高度な専門性と変化への対応力を有するプロフェッショナル人財やグローバルで活躍できる人財の育成に注力しています。
(高度な専門性と変化への対応力を有するプロフェッショナル人財の育成)
・社員が高度な専門性と変化対応力を有するプロフェッショナル人財となることを目的に、当社における目指すべき人財像や成長の道筋を示し、その専門性とレベルを認定する制度として日本国内を中心に「プロフェッショナルCDP(Career Development Program)」を2003年以降、約20年にわたり運用しています。「プロフェッショナルCDP」は、若手社員から役員までの一人ひとりの自律的な成長を支援するもので、「プロがプロを育てる」という思想にもとづき、所属組織のタテの関係性のみでなく、組織を越えた専門性のカテゴリーによるヨコ、ナナメで指導しあう仕組みとして機能しています。また、海外でも米国子会社が行っている「NLCI(NTT DATA Learning Certification Institute)」等の取り組みにより、専門性の認定を行っています。2023年度にはこれらの取り組みを通じて国内外で22,600人が新規認定され、延べ128,900人超が当社グループで認定されています。
・プロフェッショナルCDPは、事業環境、テクノロジーの変化に応じて進化を続けています。2019年度には「ビジネスディベロッパ」、「データサイエンティスト」、2020年度にはITスペシャリストの専門分野に「クラウド」を追加、2021年度にはデジタルビジネスを牽引する人財として「デジタルビジネスマネージャ」、エンドユーザー視点で新たな価値を提案する「サービスデザイナ」、プロジェクトマネージャの新たな区分として「アジャイル」を追加、2022年度には「ITサービスマネージャ」に顧客価値向上の観点を追加しています。
■プロフェッショナルCDPの人財タイプ

(グローバルマーケットで活躍できる人財の育成)
・海外事業の急速な拡大に伴い、市場や競争環境の変化に応じて柔軟に活躍することのできるグローバル人財を育成するために、主として「グローバルに活躍できる人財の育成」と「日本国内で採用した人財のグローバル化」を軸とした取り組みを実施しています。
グローバルに活躍できる人財の育成として、全世界のグループ会社合同で、次世代を担う経営層を育成するためのGlobal Leadership Program(GLP)を2009年から実施しています。GLPでは、グローバル/ローカル両面の戦略に対する課題を検討し、その両面からOne NTT DATAを実現するためには何が必要か、何をすべきかを自分ごととして考えることを目的としており、このようなグローバルのプログラムから輩出された卒業生は930人となりました(2023年度のGLP新規修了者は33名)。
・日本国内で採用した人財に向けては、グローバルビジネスで活躍できる人財の育成を目的としたプログラムを各階層に展開しています。今年度からグローバルな実務経験を有する社員の育成によりフォーカスし、海外案件への若手社員の派遣を支援するBAA(Business Acceleration Assignments)プログラムや、経営幹部育成のプログラムに参加することで多様なチャンスを得られるNTT Universityへの参加を通じて、社員がグローバル対応力を強化できる多様な「場」を提供しています。世界50カ国・地域超に広がる社員の多様性と個性とを尊重し合える育成の場を実現することは、当社グループのダイナミズムそのものであり、より高みのあるビジネスに挑戦する原動力となっています。
・また、2022年8月に世界6か国に立ち上げたイノベーションセンターでは、先進技術に対する感度が高いイノベータ顧客と共創R&Dを行い、世界トップクラスの先進技術の活用ノウハウを有したグローバルチームを組成しており、世界各地域でのプロジェクトへの参加・ネットワーク形成を通じて日本国内で採用した人財の育成にもつながっています。2024年3月には世界10か国に拠点を拡大し、人数も当初100名から218名に増加し、グローバルマーケットへの対応力を強化しました。
■イノベーションセンターのコンセプト

2.「Promote Diversity Equity & Inclusion」
当社グループでは、多様な人財が活躍できるカルチャーを実現しています。また、高い専門性に応じた多様なキャリアパスを実現する制度の整備、自律的なキャリア構築の支援を進めています。
(多様な人財が活躍できるカルチャーの醸成)
・当社グループでは、グループビジョンである「Trusted Global Innovator」の3本柱のひとつとして、“働く一人ひとりの多様性を尊重することにより創造力を高めていくこと”を掲げ、全世界共通の「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン・ステートメント – “Bloom the Power of Diversity”」のもと、Diversity Equity & Inclusionを推進しています。性別・国籍・性的指向・障がい・スキル・職歴等を問わず多様な価値観を持つ社員がともに働き、時代の変化に対応した、当社ならではの価値を生み出すことを目指しています。
■Bloom the Power of Diversityのコンセプト

・女性活躍について、2025年度末までに女性管理職比率15%とすることをNTTグループ全体の目標として2022年度に掲げています。株式会社NTTデータグループ、株式会社NTTデータ、株式会社NTT DATA, Inc.では、「一般事業主行動計画(2021年4月から2026年3月の5年間)」において、女性管理職比率10%(注1)を目指すものとして策定しており、継続的かつ積極的に取り組みを進めています。女性リーダー候補層を対象とした研修、育児休職中等の社員を対象としたキャリア形成支援セミナー、仕事と育児の両立事例セミナー等の取り組みを進めており、女性採用比率は2016年から継続して30%超、女性の育児休職からの復職率はほぼ100%等、各種女性比率の向上や、管理職を担う女性社員の増加等の成果をあげています。一般事業主行動計画の目標に定めた、女性経営幹部数(役員、組織長等)は2023年度には14名(注2)となりました。また、女性活躍及び社員の働き方変革の一環から、男性の育児休職取得の推進にも積極的に取り組んでいます。男性の育休取得率(育児休職及び育児目的休暇の取得率)(注3)は毎年増加し、2023年度末には105.7%となり、男性育児休職平均取得日数は86.9日となりました。
(注1)2023年度末実績は10.8%。2025年度末までに女性管理職比率15%を目指すものとして2024年度に見直し予定です。
(注2)2025年度末までに女性経営幹部(役員、組織長等)20人を目指すものとして2024年度に見直し予定です。
(注3)「一般事業主行動計画(2021年4月から2026年3月の5年間)」においては、2025年度末までに育児目的休暇を除く男性育児休職取得率30%を目指すものとして策定しており、2023年度実績は60.3%。育児休職だけでなく育児休暇も含めた柔軟な育児参画を推進していくため、2025年度末までに男性育休(育児休職及び育児目的休暇)取得率100%を目指すものとして2024年度に見直し予定です。
■女性管理職数の推移

・また、採用にあたっては国内外で多くの経験者採用を実施しており、入社後の早期定着、社員のリテンションに積極的に取り組んでいます。特に流動性の高い海外市場においては、経験者採用者には都度各地におけるオンボーディングセッションの実施、Values(私たちが大切にする価値観) について社員同士が語り合うグローバル全体でのValues Weekワークショップや表彰等の取り組みを通じて、世界中の社員が等しく多様に交流できる機会を提供しています。
(多様なキャリアパスの提供)
・社員の有する多様なスキルのさらなる発揮にあたって職務に応じて社員をマッチングさせる仕組みを取り入れることが必要と考えています。このことから、Advanced Professional(ADP)制度を2018年12月に創設し、卓越した知見を持った旬のビジネスを牽引する即戦力人財を外部からも獲得できるようにしました。本制度は、内部登用も可能としており、現在までに4名が認定を受けています。加えて、2019年10月にはスペシャリストのキャリアパスを実現するTechnical Grade(TG)制度を創設しました。また、2020年7月には社員の多様な強みの発揮による価値創出を最大限に引き出すために、その職務が生み出す価値をベースとしたジョブ型雇用制度であるFlexible Grade制度(FG制度)を創設し、2022年7月より管理職全てに適用しました。
■キャリアパス体系

(自律的なキャリア構築の支援)
・自律的なキャリア構築については、社員自らがキャリアビジョンを描き、実現に向けて「自律的に学び、成長したい」と考えることを原点として、社員の成長が会社の成長につながり、会社の成長が社員のさらなる成長機会提供へとつながる「成長の好循環」を通じて、お客様や社会への高い価値提供を実現することを掲げています。
従来、直属上司とのコミュニケーションの中で社員自身のキャリア像のすり合わせをおこなっていましたが、さらなる自律的キャリア構築を促す取り組みとして、2023年度から従来の取り組みに加え、より上位の上長と社員とのキャリア面談を導入し、社員が描く中長期的なキャリアビジョンを把握し、ありたい姿の実現に向けた行動の支援を実施しています。
また、2024年度から、社内のキャリア有識者に気軽な相談ができるキャリアメンタリングや、「今持つ専門性の進化」及び「新たな専門性の獲得」を通じて、成長した各自の総合力の発揮による多様な価値創出を目指すことを目的としたデュアルキャリアプログラム(社内兼業)等のキャリア形成支援を強化しています。
社員に挑戦機会を提供し、多様な働き方で多様な人財が活躍できる会社、会社の成長とともに社員一人ひとりが自分の目指す目標に向かって成長を感じられる会社、この会社で働きたい・働き続けたいと思ってもらえる魅力ある会社を実現していきます。
■自律的キャリア形成のプラットフォーム

3.「Future Workplace」
当社グループでは、業務プロセスと目的に応じて働く場所や時間を柔軟に設定できる環境を整備しています。会社が多様な人財が活躍できる環境を提供することで、社員は時間や付加価値を意識した働き方が可能となり、新たな発想や変化対応力が強化され、持続的な成長が実現できると考えています。
(リモートワーク)
2018年4月には、働く空間・時間のフレキシビリティを高めることを目指した従来のテレワーク制度の見直し(実施日数上限の撤廃や自宅以外の場所でのワーク実現)、2020年10月には、在宅勤務率の上昇に伴い増えてきた社員の諸経費負担への対応としてリモートワーク手当を創設しました。2022年11月からは、多様な働き方を支援するため新たなリアルとリモートのベストミックスによるハイブリッドワークに対応する制度を実施しています。ハイブリッドワークに対応する制度では、組織・プロジェクトの状況等に応じて各組織で働き方改革方針を議論し、業務目的に応じたリアルとリモートの服務制度、働き方の選択が可能となっています。(2023年度のリモートワーク率63.2%)
(勤務時間及び休暇取得)
勤務時間に関しても柔軟な働き方を推進することを目的に導入したフレックスタイム制度及び裁量労働制により、よりいっそうの柔軟な働き方を実現しています。2020年10月にはコアタイムを撤廃したスーパーフレックス制度を導入し、利用者数は全社員の半数を超えています。
また、社員のワーク・ライフ・バランス推進のため、リフレ休暇、アニバーサリー休暇等を設けて、有給休暇の積極活用を奨励しています。(2023年度の有給休暇取得率は83.2%)

(従業員の行動を中心としたプラットフォーム)
・Employee Centric(従業員を中心に考える)をコンセプトに、利用者である従業員の行動を中心にとらえた設計で、業務・意思決定プロセスの高度化、組織間連携強化、ナレッジ共有の加速等を実現する仕組みであるEmployee Experience Platformを提供します。

[リスクの内容と顕在化した際の影響]
・当社グループの成長と利益は、デジタル技術等の専門性に基づいて顧客に価値を提供する優秀な人財の確保・育成に大きく影響されます。こうした優秀な人財の確保・育成が想定どおりに進まない場合、事業計画の達成が困難になることや、システムやサービスの提供が困難になることがあります。これによって、お客様業務や一般利用者の生活に多大なる影響を及ぼすこととなり、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループはお客様へ最適なサービスを安定的に提供するために多くの外部パートナーの力を活用しており、協力会社の人財確保状況からも大きな影響を受ける可能性があります。
[リスクへの対応策]
・当社グループにおける人財確保・人財育成
国内外問わず人財獲得競争が激化する中、各種取り組みを通じて、量及び質の確保に努めています。
国内の採用市場においては、新卒・経験者ともにさまざまなメディアを活用した母集団形成や、専門性の高さ等に応じた処遇を実現する制度(Advanced Professional制度、Technical Grade制度)での人財獲得、海外の採用市場においては、大学との連携強化やM&A等の手段も含めた即戦力人財の獲得を進めています。
当社の事業成長を支える人財の育成については、高度な専門性と変化への対応力を有するプロフェッショナル人財をP-CDPの枠組みを使い育成しています。また、グローバルマーケットで活躍できる人財の育成も進め、質を伴った量の拡大を進めていきます。詳細は「② 戦略 1.Advanced Training」をご参照ください。
また、社員の自己成長感、働き甲斐が重要と考えており、会社として報酬制度見直し、キャリア成長支援、柔軟な働き方の実現に取り組み、社員エンゲージメントの向上にも多角的に取り組むことで人財の定着、社員のリテンションにつなげています。
・協力会社における人財確保
国内においては、従来より協力会社とのパートナー制度を導入し、当社と協力会社との深いパートナーシップを構築することにより、当社のニーズにマッチした、安定的な人財確保に貢献いただいています。具体的には、協力会社をコアビジネスパートナー、ビジネスパートナー、アソシエイトパートナーとして認定し信頼関係を築くとともに、①社長を含む当社の経営幹部と協力会社の経営幹部が対話を行う会の開催による一体感醸成、②当社の方針や成長戦略の共有等を通じたコミュニケーションの深化、③当社のシステム開発標準の研修や新規技術分野のセミナーの開催等による技術情報提供、④生産性向上支援等、さまざまな共同施策を実施しています。
また、技術の専門性や当社のビジネス領域の変化に対応し、新たなパートナー会社の追加や見直しをしています。
さらに、DX領域の人財については主管する推進組織を中心に協力会社と強く連携し、スタートアップ企業の開拓、DX人財へのリスキルを含めた育成プログラム等の取り組みをするなどさらなる人財の安定的確保に努めています。
当社では、中期経営計画(2022~2025年度)戦略5「人財・組織力の最大化」の3つの方針である「Advanced Training」、「Promote Diversity Equity & Inclusion」、「Future Workplace」に基づき人的資本に関する指標及び目標を設定しています。なお、人的資本に関する指標の一部(女性管理職比率、男性育休取得率、経験者採用率、社員エンゲージメント率)は(1)サステナビリティ経営④指標及び目標の9つのマテリアリティに関する指標と連動しています。各々の取り組みの結果、社員エンゲージメント率等を向上させることを目指しています。なお、社員エンゲージメントサーベイ結果については経営層及び各職場のマネージャーが、自組織の結果を職場で共有し、組織の状況・課題の把握、対策の立案・実行によるPDCAを回しながら、社員エンゲージメントの維持・向上とよりよい職場づくりに取り組んでいます。
■人的資本に関する指標及び目標
(注) 特に記載がない限り、(株)NTTデータグループ、(株)NTTデータ、(株)NTT DATA, Inc.の集計値
*1 2023年度に目標値を達成した指標もありますが、Best Place to workに向け維持していくことが重要な指標であるため、現中期経営計画においては2023年度と同様の目標値を設定しています。
*2 (株)NTTデータグループ、(株)NTTデータ、(株)NTT DATA, Inc.、国内グループ会社及び一部海外グループ会社の集計値当社グループ連結(国内、海外グループ会社含む)の集計値
*3 当社グループ連結(国内、海外グループ会社含む)の集計値
*4 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、
*5 社員エンゲージメント率について国内は毎年調査、海外は隔年調査(海外を含めた当社グループ連結の2023年度実績は82.8%)
*6 社員エンゲージメントサーベイの人財戦略3項目(成長の機会、多様性の受容、カルチャー・風土)に関する向上率の合計が2022年度実績から10%以上となることを目指しています。2022年度に現中期経営計画最終年度である2025年度までの3か年計画として目標設定しています。
*7 2024年4月の障がい者法定雇用率の引き上げに伴い、2023年度目標値2.3%から見直しています。
[方針]
当社グループは、事業の健全な成長を推進することを目的に、事業活動に関わるあらゆるリスクを的確に把握し、経営への影響を抑制・低減していくため、全社的な視点でグループのリスクマネジメントを統括・推進する役員及びリスクマネジメント部門を置くとともに、主要なグループ会社にリスクマネジメントを統括する役員を選任し、グループで連携してリスクマネジメント体制を整備しています。
また、当社グループの事業計画の達成、存立基盤に重大な影響を与える可能性のあるリスクを「重要リスク」として取締役会において選定し、さらに「重要リスク」のうち、平時の統制に加え迅速な有事対応を必要とするリスクについては「特に重要なリスク」と定義しています。重要リスクは、当社にとって統制すべきリスク項目を記載したグループリスクカタログに、直近の内部環境・外部環境、各リスクの発生可能性と影響度を反映させ、前連結会計年度の重要リスク項目の評価・見直しを実施したうえで、各リスクと経営方針・経営戦略等との関連性の程度を考慮して選定しています。

各重要リスクについては、グループ全体として重点的な統制活動を推進し、内部統制委員会において、その統制状況について定期的なモニタリングやその有効性の確認、改善事項の提言等を実施しています。
また、グループ全体としての重要リスクの統制に加え、海外事業会社である株式会社NTT DATA, Inc.及び国内事業会社である株式会社NTTデータにおいても、それぞれの事業特性に応じた重要リスクを選定し、その統制やモニタリングを行っています。グループ全体としてのリスク統制活動と、各事業会社でのリスク統制活動は、各社のリスクマネジメント統括役員間の連携体制の下で相互連携しながら実施しており、これらの活動全体を内部統制委員会でモニタリングすることで、グループ一体的なリスクマネジメント活動の推進を図っています。
[重要リスク]
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業計画の達成、存立基盤に重大な影響を与える可能性のあるリスクには以下の(1)から(16)のリスクがあります。このうち、(1)から(8)を平時の統制に加え、迅速な有事対応を必要とするリスクである「特に重要なリスク」として定め、 有事発生時の対応を含め、特に重点的に統制活動を行っています。
前連結会計年度の有価証券報告書に記載していた重要リスクからの主な変更点は、以下の二点です。
・お客様や市場からの当社グループへのニーズ・期待の変化を背景に、当社グループのビジネスモデルや事業ポートフォリオを常に最適化し、市場ニーズ等の変化に適応していく必要性が高まっていることから、「競争激化に関するリスク」に、競争環境の変化のみならず市場ニーズ等の変化にも適応する観点を加え、「(9)市場・競争環境の変化への適応に関するリスク」に変更しています。
・生成AIの社会的影響の高まりを背景に、先進技術の積極的な利活用は当社グループの事業成長に向けた大きな機会である一方、その利活用における適切な管理統制は不可避であることから、「技術革新に関するリスク」の内容を拡張し、AIをはじめとした技術の利活用に関わるリスクを含めて、「(10)AIの利活用・先進技術への対応に関するリスク」に変更しています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断によるものです。
(1)システム開発リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの主力事業であるシステムインテグレーション事業では、一般に請負契約の形態で受注を受けてから納期までにシステムを完成し、お客様に提供するという完成責任を負っています。
そのため、契約内容の曖昧性等による当初想定していた見積りからの乖離や、開発段階に当初想定し得ない技術的な問題、プロジェクト管理等の問題が発生し、原価増となることがあります。
不採算案件が発生した場合、想定を超える原価の発生や納期遅延に伴う損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
システムの完成責任を全うするため、お客様・業務・技術のいずれかに新規性のある大規模案件を対象に当社内の第三者組織による提案準備段階における提案内容の実現性確認・契約内容の明確化等のリスクへの早期対応、受注時計画や原価見積の妥当性審査と納品までのプロジェクト実査を行っています。さらに、お客様・業務のいずれかに新規性のある一定以上の規模の案件はグループ会社の案件も含めて「高リスク案件」として選定し、進捗や課題の状況、リスクとその軽減策を定期的に把握・管理するなど、不採算案件の抑制に努めています。
(2)システム・サービス運用リスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものが多くあります。また、海外事業統合によって、データセンターやネットワークサービスの割合も増えています。これらにおいて運用中に障害が発生し、システムやサービスが停止すると、お客様業務や一般利用者の生活に多大な影響を及ぼすことがあります。また、顧客データの喪失等の問題が発生した場合にはさらに影響は大きくなり、場合によっては発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。加えて、システムやサービスの運用が滞ることは、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下にもつながります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、システムを安定運用し、継続してサービスを提供できるように、障害発生の未然防止と障害発生時の影響極小化の両面から、市販製品や他社提供クラウドの不具合情報や対処策情報の積極的な収集と周知、過去発生した障害の原因分析結果及び再発防止策の社内共有、チェックリストを用いた定期点検、故障発生時の連絡体制の構築や障害発生対応訓練等のさまざまな活動を実施しています。
当連結会計年度においては全国銀行データ通信システムにおいて社会的に大きな影響を及ぼす障害が発生したことを踏まえ、システム総点検タスクフォースを立ち上げ、会社として障害の再発防止に向けて取り組みました。具体的な活動としては、障害の原因分析結果に基づき、未然防止・迅速復旧の観点からシステム開発・運用プロセスを俯瞰的に捉えたうえで点検項目を作成し、グループ会社を含めた200以上のシステムで各々チェックを行いました。その結果の社内の第三者組織による確認まで含めて、予定通り2024年3月に全ての点検作業を完了しました。
点検結果としては、総じて点検項目が充足されており、同様の障害を発生させないよう対処されていることを確認しました。特に、2024年年初にリリース予定であったシステムには優先的に点検を実施し、無事にサービスを開始しました。さらに、今回の総点検を踏まえて、今後の大規模サービス開始案件に対しても同様に社内の第三者組織によるチェックを継続して実施します。当社グループが提供するシステム・サービスを安心してご利用いただけるよう、引き続き取り組んでまいります。
(3)情報セキュリティに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは業務遂行の一環として、個人情報や機密情報を取り扱うことがあります。これらの情報について、サイバー攻撃や内部不正等による情報セキュリティ事故のリスクがあります。
サイバー攻撃に関しては、国内外問わず、ランサムウェアをはじめとする標的型メール、フィッシングによる攻撃や、テレワークやオンライン会議の脆弱性を狙った攻撃の発生に加え、国家紛争やテロと連動した武力とサイバー攻撃を組み合わせたハイブリッド型攻撃や、海外政府等のスパイや転職等に伴う人的な機密情報の持出しリスク、生成AIを活用したサイバー攻撃リスクが顕在化しています。当社グループは自ら社会インフラを提供する企業であるとともに、取引先でもあり、当社グループにとってサイバー攻撃のリスク顕在化の可能性は日常的にあると認識しています。また、社員等の内部不正による個人情報や機密情報の漏えいは潜在的なリスクと認識しています。
当該リスクが顕在化した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い、法的罰則等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当該リスクを低減するため、当社グループでは、「情報セキュリティ委員会」のもと、情報セキュリティポリシーや個人情報保護方針を制定し、情報技術の進歩や社会情勢の変化外部の脅威動向等を把握し、技術、管理の両面から関連施策の見直しや改善を実施しています。
特に、サイバー攻撃への備えとしては、防止・検知・対応・復旧のための各種ソリューションの導入、24時間体制の監視運用を行うとともに、インシデント発生時の緊急対応のためのCSIRT組織として「NTTDATA-CERT」を設置し、万一に備えての初動対応訓練等を実施しています。
(4)コンプライアンスに関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループはグローバルに企業活動を展開しており、海外事業の拡大に伴い、国内だけでなく、海外の法令を遵守する必要が生じています。各国の法令の中には、当該国内における企業活動について適用されるだけではなく、EUのGDPR(注1)や米国のFCPA(注2)等、当該国の域外においても適用される法令があり、当社グループはこれら域外適用法令も遵守する必要があります。これらの法令に違反した場合は多額の制裁金や当局対応に要する費用の支払いが必要となる可能性があります。この他にも、会計基準や税法、取引関連等のさまざまな法令の適用を受けています。不正な会計処理やサプライチェーン上における不正や横領等といった法令違反が発生した場合は、当該不正等による損害はもとより、課徴金の支払い等が必要となる可能性があります。
さらに、このような法令違反が発生した場合は、費用の支出といった経済的損失のみならず、社会的信用やブランドイメージが大きく低下し、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、法令違反等のコンプライアンスリスクの低減・未然防止のため、リスクを抑止し、探知し、対応するためのコンプライアンスプログラムをグローバルで構築し、同プログラムを継続的に評価・改善することにより、コンプライアンス強化に努めています。具体的には、リスク抑止の仕組みとしてグループの役員及び社員が遵守すべき「NTTデータグループ行動規範」を制定して日々の活動における規範を明確化し、行動規範に沿って、必要な規程類を整備し、研修等の教育啓発を行っています。また、リスク探知の仕組みとして内部通報制度を導入して社員からの通報を促す仕組み等をグローバルで整備しています。リスクが顕在化した際には、影響最小化に向けた対応、再発防止に向けたプログラムの改善等の対応を行っています。
(5)出資・M&A・設備投資に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、新技術やソリューション、開発リソースの獲得及び戦略的パートナーシップの構築等を目的とし、国内外の企業・組織への出資を実施しています。また、Global 3rd Stageの達成に向けてはM&Aを重要な手段の一つと捉え、デジタル関連ケイパビリティの獲得及び海外売上・シェア拡大によるプレゼンス向上を目的とした海外M&Aを推進・実行しています。M&Aの実施にあたっては、当社グループと共通の価値観・親和性を持っていることを最重要視し、注力技術・Industryの観点を中心に、当社グループとのシナジー効果の実現性の見極めを実施しています。
M&Aにおいては、特に海外の出資先において法的規制、税制、商習慣の相違、労使関係、各国の政治・経済動向等の要因により、当社グループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となった場合や出資先に対し当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られなかった場合、のれん等の減損処理を行うなど、当社グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは生成AIによる需要の急増を好機ととらえ、データセンター事業へ積極的な設備投資を実施しています。データセンター事業への設備投資においては、投資回収期間が長いため、需要が予期しない事態により想定よりも大きく減少し、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
M&Aやデータセンター事業投資の意思決定時には、資本効率性を意識した正味現在価値(NPV)等の指標を用いた投資対効果の評価や、第三者評価による財務健全性の評価等を判断要素としています。
M&Aにおける重要なリスクと認識している、当社グループの適切なコントロールが及ばず事業運営を円滑に行うことが困難となるリスクについては、出資時の意思決定において、事業部門及びファイナンシャルアドバイザ・会計士・弁護士等外部有識者によるビジネス面に着目したデューデリジェンスと、出資先のカントリーリスクを踏まえたコンプライアンスに着目したデューデリジェンスの実施を必須とし、発見された各リスクの検証、対応策を踏まえた意思決定を実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
また、当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、当社グループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。加えて、意思決定時にM&A実施後の統合プロセス(PMI)計画の作成を必須とし、M&A効果の最大化に向けた統合プロセスを早期から実施することにより、当該リスクの低減に努めています。
当社は連結会計年度末における予期せぬリスクの顕在化を抑制するために、四半期ごとに買収先会社の経営状況、PMIの取り組み状況等のモニタリング及び必要な是正を行っています。
データセンター事業への設備投資におけるリスクとして認識している需要の減少に対しては、支出済の設備投資による経営影響を最小限にとどめるため、保有資産を別用途へ転用可能としておくなど、リスクの低減に努めています。
上記のような対応策により、当該リスクが当社グループの経営成績及び財務状況に大きな影響を与えることのないよう、入念な検証及び適切なガバナンス体制の構築を行うことで、リスクの顕在化防止に努めています。
(6)大規模災害や重大な感染症等に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが提供するシステムやサービスには、社会的なインフラとなっているものもあることから、行政のガイドラインに準拠した事業継続のための体制整備や防災訓練のほか、従業員の安否状況確認等を適宜実施しています。
しかしながら、巨大地震や気候変動、その他の大規模な自然災害等が発生した場合、システムや従業員等の多くが被害を受けることでサービスの提供が困難になり、お客様業務や一般利用者の生活に多大なる影響を及ぼすことがあります。その結果、当社グループの社会的信用やブランドイメージが低下するおそれがあるほか、多額の復旧費用等により、当社グループの経営成績及び財務状況等に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症等の発生によって、従業員等の感染や、感染拡大防止のために従業員が出社できなくなること等によってシステムやサービスの提供が困難になる可能性があります。
これらリスクの発生により当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
被災時における事業継続については、従業員等の安全の確保と事業の継続を目的として、一定の基準を超える災害発生時には事業継続計画を発動し、代表取締役社長を執行責任者とする体制により、臨機応変な対応を行います。また、事業継続性を確保するために、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、オンライン環境の増強を進め、オンラインで可能な業務はオンラインで実施することで、社員や協業者の安全確保を行いながら、確実に事業を遂行します。
また、一方では従来以上に、お客様の働き方改革やそれに伴うIT投資、デジタル化のニーズが顕在化する可能性もあり、社会的なインフラを担うシステムやサービスを提供する当社グループは取り組みを通じて得た、デジタル等先進技術に関するノウハウやインダストリーの知見を最大限活用し、お客様・社会全体のデジタル化への貢献を通じて事業拡大に取り組んでいます。
(7)人権対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
お客様にとって最適なサービス・ソリューションの提供をグローバルに展開する当社グループは、各国・各地域における法令遵守はもとより、国際基準に適合した適切な企業行動が必要とされています。とりわけ、国連「ビジネスと人権に関する指導原則(注3)」に対しては、サプライチェーンを含めて、企業が適切な責任を果たすことが社会から求められています。
サプライチェーン上の人権課題に対し、適切な対応が取られていない場合、経済的損失、社会的信用の低下による当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、「NTTデータグループ行動規範」を制定し、社会課題への取り組み姿勢や、社員が事業活動において参照すべき行動を明確に示すとともに、サステナブルな社会を目指し、各国・各地域に存在するさまざまな人権テーマ、サプライチェーンにおける人権課題への姿勢を示した「NTTグループ人権方針」に沿ってDiversity & Inclusionの推進、高い倫理観に基づくテクノロジーの推進、Work in Life(健康経営)の推進、適切な表現・言論・表示の推進をし、企業活動を展開しています。
また、NTTグループとして、「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、人権デューデリジェンスプロセスを用いて、人権課題の特定、防止、軽減、是正をグローバル規模で進め、人権意識の向上、人権マネジメントの向上に努めています。
(8)地政学に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループの事業は、日本国内だけではなく、さまざまな国・地域において広く事業展開を行っています。そのため、世界各国の政治・経済・社会情勢等の変化や、テロや戦争といった国際紛争の発生等により、お客様に対するシステムやサービスの提供停止、事業継続困難等の事象が生じることにより、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループは、特定のリージョンに依存しない事業ポートフォリオとすることで、各国における政治・経済動向等の変化がもたらすリスクを分散し、事業全体が大きな影響を受けない構造にしています。
また、当社グループは、関連する組織によるグループ横断的な体制において、本リスクについて継続的に必要な情報収集、影響分析を行いつつ、対応方針を整備し、本リスクが発現した場合は派生的に発生する各種リスクへの対応も含め、迅速かつ的確に対処することを可能とする体制を構築しています。
(9)市場・競争環境の変化への適応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
社会を取り巻く環境は日々大きく変化しており、社会課題解決と経済価値向上の両立等、企業経営に求められる要素は多様化しています。また、テクノロジーの進化を背景にさまざまなモノ・ヒトがつながることで、企業活動から人々の消費・生活スタイルまであらゆる社会トレンドが変化しています。そのため、ITサービスの重要性はますます高まり、お客様のニーズも多様化・高度化しています。
また、今後もITサービスの需要環境は堅調に推移していくものとみられていますが、コンサルティング企業との競合や新規プレイヤーの参入等により競争環境は依然として激化しており、この状況は継続していくものとみられます。
そのため、市場ニーズ等の変化に迅速・柔軟に対応するとともに、さらなるグローバルレベルでの事業競争力強化に努めない限り、中長期的には当社グループの持続的成長は損なわれ、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
グローバルを前提とした戦略の下で事業環境の変化に迅速に対応するため、2023年7月から持株会社体制に移行し、機動的な事業運営を行っています。また、2022年10月にITとConnectivityを融合したサービスをトータルで提供する企業へ進化するべく、NTT Ltd.と海外事業を統合しました。コンサルティングやアプリケーション開発からConnectivity領域までを含む、デジタルトランスフォーメーションに必要なサービス・ラインナップを一元的に整備し、複雑化・多様化するお客様のニーズにグローバルレベルで対応していきます。 また、2024年4月から、新たなグローバル事業運営体制に移行し、お客様エンゲージメントを強化するとともに、スケールメリットを生かしたサービス提供能力を強化します。
競争力強化に向けては、業界・技術のForesightを起点としたコンサルティング力強化と、高いアジリティを実現するアセットベースの価値提供により、経営変革・事業変革の構想策定から実現まで、一気通貫の対応力を強化し、お客様への提供価値を最大化していきます。また、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力強化と、生産性向上に向けたシステム開発技術力強化を両輪で進めています。生成AIの活用に関しては、Generative AI推進室を設立しグローバル横断でソフトウェア開発生産性向上に取り組んでいます。人財育成については、AWS、Microsoft、Google Cloud等のパートナー企業とのアライアンスを通じた育成によるデジタル対応力強化等を実施しています。さらに、戦略投資として、Strategic Investments、M&A投資、データセンター投資の枠組みで積極的な投資を継続し、将来に渡っての事業競争力を強化していきます。
(10)AIの利活用・先進技術への対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが属する情報サービス産業では先進技術の進展が目覚ましく、先進技術の積極的な利活用は当社グループの事業成長に向けた大きな機会である一方、それらへの対応が遅れた場合、ビジネス機会の逸失により市場での競争力やブランド価値が低下し、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、先進技術の中でも特にAI(機械学習・人工知能)は、その性能の進展に伴い、社会実装の範囲も予測・分類といった用途から、対話や生成といった人的業務の代行まで拡大を続けている一方、その利活用にあたっては、安全性・正確性の確保や、倫理的配慮等の対応が求められており、適切な対応ができない場合には、社会的信用やブランドイメージが低下する可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは、技術の成熟度に応じた3つの領域(Emerging、Growth、Mainstream)における取り組みにより、未来の競争力獲得に向けた先進技術活用力の強化を推進しています。具体的には、Growth/Emerging領域では、Foresightで将来活用される先進技術の目利きを行い、グローバルレベルで先進的な取り組みを行うお客様とのPoC(注4)等を実現してまいります。Mainstream領域では、当社グループが強みとしている技術の活用力をさらに磨いてまいります。また、先進技術への感度が高い海外に専門拠点を設置し、新興技術の情報を早期に収集し、グローバルなメンバーで構成されたステアリングコミッティにて経営トレンドや技術トレンド等も考慮しながら革新技術を見極める取り組みを推進しています。そして、特に力を入れて投資すべき注力技術を、グローバルで技術戦略を議論するCTO級会議にて決定し、取り組みを推進しています。また、NTT研究所の研究開発成果を取り入れています。
AIに関しては、AIの適正活用を推進するための組織として、AIガバナンス室を2023年4月に設置しました。AIガバナンス室では、人間とAIが共生する「より豊かで調和のとれた社会」の実現に向けて、グローバル共通の「AI指針」や「AIリスクマネジメントポリシー」を整備しています。また、これらの指針やポリシーにもとづいたマネジメントを実現するために,AIリスクに関するマネジメントルールやAI利用のためのガイドラインを整備し、AIシステムの開発・運用・利活用を中心としたAIガバナンスの取り組みを拡大・継続しています。さらに、政府が主導するAIガバナンス関連の取り組みにも参画し、AIを扱う企業として、AI活用の恩恵を最大限に享受できるサステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
(11)知的財産に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループが事業を遂行する上で必要となる知的財産にかかる権利につき、当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品またはサービスを提供できなくなる可能性があります。また、当社グループは、従来からの個別受注型システムインテグレーションビジネスに加え、最近では「アセットベースビジネスへの進化」として、業務を通じて生み出された業界・業務のフォーサイト、ベストプラクティス、ソフトウェア、自社ツール等を活用したコンサルティングからデリバリー・マネージドサービスをグローバル全体で推進しています。これにより、他者の知的財産を侵害したとして損害賠償請求を受ける可能性や、知的財産への戦略的な投資・活用等が不十分なこと等により競争優位性が低下する可能性があります。いずれの場合も当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
当社グループでは知的財産活動を推進する担当組織を設置し、知的財産の活用、適正な権利化や侵害予防調査(クリアランス)、事業部門からの知的財産に関する各種相談対応や当社グループ内での教育・啓発活動を実施し、当社グループの知的財産の保護・活用、第三者の知的財産権侵害防止に努めています。
(12)人財確保に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]及び[リスクへの対応策]
当社グループの成長と利益は、デジタル技術等の専門性に基づいて顧客に価値を提供する優秀な人財の確保・育成に大きく影響されます。こうした優秀な人財の確保・育成が想定どおりに進まない場合、事業計画の達成が困難になることや、システムやサービスの提供が困難になることがあります。この対策として、人財獲得や人財育成、人財の定着の取り組みを行っています。
詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本 ③リスク管理」をご参照ください。
(13)気候変動に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響] 及び [リスクへの対応策]
気候変動が世界的に深刻化し、当社グループの気候変動取り組みが遅れることによる評判低下、異常気象による災害リスクの増加、及びカーボンプライシングによるコスト増加等のリスクがあります。この対策として、全社横断のサステナビリティ経営推進委員会による活動推進、レジリエンスの高いデータセンターやオフィス環境の実現、省エネ施策や再生可能エネルギー導入による温室効果ガス排出量の削減を進めています。
詳細は、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動 ③リスク管理 表1(気候関連のリスク)」をご参照ください。
(14)為替・金利の変動やインフレーションの進行に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、グローバルに企業活動を行っており、当社グループが拠点とする機能通貨以外での売買取引、ファイナンス、M&Aや設備投資等に伴う為替変動リスク、有利子負債による資金調達に伴う金利変動リスク、及び、当社グループが事業を行う国・地域でのインフレーションの進行に伴う調達コスト、人件費等の高騰リスクに晒されています。
外部・内部環境変化による予測の範囲を超える急激な為替変動、金利変動及びインフレーションの進行がある場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、現中期経営においては、中長期的な成長に向けたデータセンター事業等への戦略的な先行投資を実行しており、投資に必要な資金を外部から調達することにより有利子負債が増加し、金利変動リスクが高まる可能性があります。
[リスクへの対応策]
為替変動リスクに対しては、当社グループは非機能通貨のキャッシュ・フローの経済価値を保全するべく為替予約等の契約を利用することにより、為替変動リスクを管理しています。これらの取引が為替変動による影響を有効に相殺していると判断しています。
金利変動リスクに対しては、当社グループは長期固定的な条件での調達を実施することを基本としつつ、資金使途や金融市場の状況に応じて複数の調達手段及び調達条件を組み合わせることで、安定的かつ低利な資金の確保を行い、当該リスクが当社経営成績へ与える影響の抑制に努めています。
調達コストの高騰リスクについて、NTTグループ内の調達専門会社(NTT Global Sourcing, Inc.)の活用や、広く国内外の調達先から提案を頂く等により、より良い製品をより安く調達する努力を行うことで影響の抑制に努めています。
また、当社グループは単純な価格転嫁ではなく、より高い付加価値を生み出し、お客様にサービス提供することで、価格上昇についてご理解いただくよう努めています。
(15)規制対応に関するリスク
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社グループは、グローバルに企業活動を行っており、活動を行っている地域・国の規制、法令適用や政府の政策等、さまざまな要因の影響下にあります。また、これらの要因は当社グループが関与し得ない理由によって大きく変化する場合があり、このような変化が生じた際には、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、国際情勢の変化等により、本邦及び各国で定める経済安全保障関連の法令及びガイドラインが厳格化される傾向があります。当社グループがその対応に遅れた場合、当局による処分だけでなく、重要な社会基盤を支える当社グループの事業に対する社会的信用が低下することで、事業戦略やビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性があります。
[リスクへの対応策]
各種法令や政策動向によるリスク要素の重要性が高まっていることを踏まえ、各国の規制環境に関する情報把握・分析や政府検討状況を注視しつつ、安定的なサービス提供の確保に向け適切な対応を行っていきます。
(16)親会社の影響力
[リスクの内容と顕在化した際の影響]
当社の親会社である日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、当連結会計年度末現在、当社の議決権の57.7%を保有している大株主であります。当社はNTTから独立して業務を営んでいますが、重要な問題については、NTTとの協議、もしくはNTTに対する報告を行っています。このような影響力を背景に、NTTは、自らの利益にとって最善であるが、他の株主の利益とはならないかもしれない行動をとり、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
[リスクへの対応策]
グローバルを展望した事業環境の変化を踏まえ、引き続きお客様事業の成長に貢献し、長きにわたり社会インフラを支えていくためには、NTTグループとの連携を強化し、NTTグループトータルで新たな価値を創造していく必要があると考えています。また、NTTグループ全体の調達集約等によるコスト削減等のスケールメリットを生かした連携も進めています。
このような連携を進めつつ、NTTから独立した意思決定を確保するため、当社は、NTTとの間で締結する重要な契約については、法務部門による法務審査や必要に応じた社外弁護士の見解取得を実施した上で、意思決定を行っています。また、特に重要な契約については独立社外取締役が過半数を占める取締役会での承認を必須としています。
今後も引き続き、NTTとの間で、相互の自主性・自律性を十分尊重し、NTTとの取引等について法令に従い適切に行うことで、リスクの顕在化防止に努めます。
(注1)GDPR
EU域内の個人情報を取り扱う際に適用されるEU一般データ保護規則のことです。
(注2)FCPA
贈収賄にかかる米国の海外腐敗行為防止法のことです。
(注3)ビジネスと人権に関する指導原則
2011年6月に国連の人権理事会において全会一致で支持された文書であり、「人権を保護する国家の義務」、「人権を尊重する企業の責任」、「救済へのアクセス」の3つの柱で構成されています。
(注4)PoC(Proof of Concept)
「概念実証」のことで、新たな概念やアイディアの実現可能性を示すための簡易な試行のことです。
(業績等の概要)
[事業活動の取り組み状況及び業績]
グローバルでのDX等の加速や、ニーズの多様化・高度化に対応するため、当社グループの強みであるつくる力とつなぐ力を生かしたオファリングの拡充やクロスセルの拡大を進めました。
2023年7月に機動性を高める持株会社体制に移行し、コンサルティングからアプリケーション開発、インフラサービスまでを含めた多様なITサービスの提供に取り組みました。
当期における業績につきましては、NTT Ltd.連結拡大及び為替影響等に加え、日本・欧州における規模拡大等により売上高・営業利益は増収増益となりました。一方、当社株主に帰属する当期利益は、有利子負債の増等に伴う金融費用の増加及び税金費用の増加により減益となりました。
セグメント別の取り組み及び業績については、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
また、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分に基づいて記載しています。
(日本)
主に日本国内において、中期経営計画で策定した5つの戦略を軸に、世界最先端のベストプラクティスやテクノロジーを活用し、日本の競争力強化に資するサービスを提供しました。サービスの提供価値を高めていく一方、提供価格については、近年の労務費・原材料費・エネルギー費等のコスト上昇を踏まえ、適切に取引価格に反映できるよう取り組みました。
当期の日本セグメントの業績は以下のとおりです。
・売上高は、中央府省向け案件の規模拡大等により、1,756,962百万円(前期比6.2%増)となりました。
・営業利益は、規模拡大による増益等により、186,735百万円(前期比9.9%増)となりました。
日本セグメントにおける各分野の取り組みは次のとおりです。
[公共・社会基盤]
「デジタル社会の実現に向けた重点計画」における行政や準公共分野(医療・教育・防災・モビリティ等)のデジタルサービス拡充等により、デジタル社会実現に向けた取り組みが加速しています。当社グループは、その実現に向け、Foresight起点で社会の未来を描き、先進技術適用・付加価値提案による『顧客ビジネス深化』、利用者目線での『社会システム創出』に取り組むことにより、事業拡大を目指しました。
<国内外におけるハイレジリエント社会の実現に貢献>
・D-Resilio連携基盤の提供開始
行政や企業が持つ防災情報の収集・連携を支援する「D-Resilio連携基盤」の提供を開始しました。本基盤は防災情報の集約と連携を重視し、災害時に迅速かつ正確な情報収集を行政や企業に提供することを通じてプロアクティブな防災対応を実現します。
・インドネシア「防災情報処理伝達システム(DPIS)」の構築開始
政府から災害情報を迅速に発信し、国民の安全・安心を守るためのシステムである「防災情報処理伝達システム(DPIS)」の構築プロジェクトをインドネシアで開始しました。当社グループは本プロジェクトにより、日本の防災情報共有システムであるLアラートの海外展開を初めて実現します。LアラートのアーキテクチャーをベースにD-Resilio連携基盤で培った情報配信のノウハウを活用し、インドネシア国民に津波・地震情報を迅速に伝達することでインドネシア国民の避難促進等の災害対策に貢献します。また、今後は噴火・洪水等他の災害情報にも範囲を拡張する予定です。
当社グループは、防災DXソリューション・ノウハウについて国内外の展開を進め、ハイレジリエント社会の実現に貢献します。
<環境行動や電力データを活用した脱炭素化支援アプリ等の開発>
当社グループが電力データの活用による社会課題解決を目的に出資する㈱GDBL(注1)は、環境行動(注2)のスコア化や家庭の電力データの活用により脱炭素化を支援する「ZeroCa(ゼロカ)」(以下、本サービス)の提供を開始しました。
昨今、脱炭素化の考え方や取り組みは徐々に浸透していますが、依然として個人や世帯においては環境行動に取り組むことに対するハードルの高さや得られる効果の実感が湧きづらいこと、企業や自治体においてはCO2排出量の多いエリアの把握や施策の優先順位付けが難解であること及び個人の行動変容を定着化させる手段が少ないこと等の課題がありました。
本サービスは“環境行動をもっと心地よく”をコンセプトに、環境行動の習慣化により、二酸化炭素排出由来の多くを占める“電力”を軸とした行動変容を促し、脱炭素(ゼロカーボン)社会の実現を後押しするサービスです。ユーザーの環境行動や電力データをわかりやすくスコアとして可視化することで、個人や世帯が脱炭素に取り組む上での確かな実感と新たな気づきを提供し、環境行動を無理なく続ける支援をします。また、電力データを用いて実数値に基づく電気由来の二酸化炭素排出量や電力需給状況を可視化することにより、脱炭素関連事業・街づくりに取り組む企業や自治体による脱炭素化に向けた計画策定・施策実行・振り返りの推進を支援します。当社グループは本サービスの提供に係るシステムの構築等を実施しました。
当社グループは㈱GDBLと協力し、個人や世帯の環境行動を心地よいものへと変化させるとともに、企業や自治体の脱炭素化推進を支援し、持続可能な社会の実現に向けた道標となることを目指します。
[金融]
社会のデジタル化の進展により、生活に密着した金融サービスが次々と登場している中、金融システムには、信頼性と先進性の両立がいっそう求められています。当社はサステナブルな社会の実現に向けて、安心・安全な金融インフラを永続的に支え続けるとともに、業界をつなぐ新たな金融サービスの創出・拡大を目指しました。
<共同利用型勘定系システムのクラウドシフト化に向けた取り組み>
当社グループは、地域金融機関5行が共同利用しているシステム「MEJAR」に当社グループが提供するフレームワークである「PITON」を適用し、オープン系システムへの移行を完了し、国内銀行業界で初めて、マルチバンクオープン勘定系システムの稼働を開始しました。
当社グループは、本実績により、共同利用型勘定系スキームをクラウド化するための実現性を確認できたことから、本取り組みをさらに一歩進め、安心・安全・安価に永続的なバンキングサービスを提供するための「統合バンキングクラウド」を地銀共同センター(注3)へ2028年1月目途に適用することを決定し、開発に着手しました。「統合バンキングクラウド」は、バンキングシステム専用の国産かつ金融機関に求められる高い信頼性を備えたクラウドで、データセンター・ハードウェア・ミドルウェア等を集約し、当社グループがワンストップで提供することにより、効率的な運用や金融機関の管理負担の軽減へ寄与するだけでなく、永続的なサービスの実現を可能とします。
当社グループは、今後も先進的なデジタル技術を生かし、銀行システムのクラウドシフト等を進め、「OSA(注4)」のコンセプトに基づき、金融機関のビジネスパートナーとして、顧客体験価値の向上に向けたDXの加速に貢献していきます。
<デジタルアセット市場における金融機関のオープンな共創をサポート>
・デジタル社債向け「標準化インフラ」構築に向けた提携
当社グループと三菱UFJ信託銀行㈱(以下、三菱UFJ信託銀行)は、当社グループが持つ国内で圧倒的なシェアを誇る社債管理基盤と、三菱UFJ信託銀行が持つデジタルアセットの発行・管理基盤である「Progmat(プログマ)サービス(注5)」とを連携させ、デジタル社債向け標準化インフラ(以下、本基盤)の構築を進めることについて合意しました。さらに、㈱三菱UFJ銀行は、本基盤を用いたデジタル社債の発行支援を開始します。
日本ではデジタル社債の発行はいまだ試験的な段階にあり、ブロックチェーン技術を活用したデジタル社債の拡大には、固有の付加価値の提供や利便性の向上に加え、市場参加者である金融機関や事業会社が導入・移行に要する負荷の軽減が求められています。本基盤の構築でProgmatサービスでのデジタル社債の取り扱いを容易にすることにより、市場参加者のデジタル社債市場参入を容易にし、デジタル社債市場の活性化を図ります。
・デジタルアセット市場のナショナルインフラ構築に向けた法人設立への参画
当社グループを含む8社(注6)は、本基盤の一部を担うProgmatサービス、及び「デジタルアセット共創コンソーシアム(注7)」の運営を担う㈱Progmat(以下、Progmat社)を設立しました。
同8社は、デジタルアセット市場のナショナルインフラを目指す本基盤を構築するためには、金融市場に関する深いドメイン知識と圧倒的なインフラ構築力が必要であり、金融機関と経験豊富なソフトウェア企業である当社グループが手を携えて「共同企業体」を創ることで、より早く、より広く、インパクトを出せる開発集団を目指しました。当社グループは金融インフラや先端技術、ブロックチェーンに関するノウハウを生かし、関係者の皆さまとともに同社の発展に寄与します。同8社はProgmat社設立を通じ、業界を挙げて「共創領域」を「標準規格」で円滑に実装し、市場参加者の圧倒的な利便性向上を実現することで、日本のデジタルアセット市場の発展と競争力を高めていきます。
[法人]
2023年4月に法人分野の組織再編を行いました。コンサルティング、ペイメント、テクノロジーそれぞれの専門性を発揮し提供価値向上を担う組織と、インダストリー軸でそれらを束ね、Foresight起点でEnd to Endでお客様に価値提供するインダストリー組織のマトリクス運営を進めました。さまざまなインダストリーのお客様の、ビジネス変革を加速するビジネスパートナーとして、業界・お客様のあるべきビジネスの姿をお客様と描き、それを実現するための企画策定から、先進技術とシステム開発技術を活用した変革の実現まで、一貫して高い価値を提供しました。
<JR東海のDXプロジェクトに一気通貫で参画>
当社グループは、東海旅客鉄道株式会社(以下、JR東海)のデジタル変革施策プロジェクトに参画し、デジタルマーケティング基盤と駅ビル共通営業システムを連携することで、お客様の会員基盤強化を実現しました。
鉄道業界ではコロナ禍以降事業環境の変化に対応する新たな取り組みを加速させる必要がありました。JR東海においても、鉄道事業以外のグループ事業を含めた事業全体の収益拡大を推進するため、沿線都市と移動の価値向上を目指した世界観をもとにグループ共通ポイント(注8)の構想を持っていました。
このような課題を背景として当社グループは、構想を実現するための具体的なポイント制度や業務設計のコンサルティング、システムの実装方式の提案や構築、その後のサービス拡大に向けた企画の具体化や効果検証等まで、プロジェクトを通して一気通貫でJR東海に伴走しています。
本取り組みによりデジタルマーケティング基盤と駅ビル共通営業システムが連携することで、JR東海はグループ事業の顧客情報やポイント残高を一元的に管理することが可能となり、さらに、EXサービス(注9)と連携することで、鉄道事業とその他のグループ事業双方の価値向上に寄与しています。
当社グループは、今後もお客様の事業パートナーとして現行サービスの改善活動だけでなく、会員基盤強化に向けたさらなる提案を実施し、お客様のビジネス発展に貢献していきます。
(海外)
グローバル全体でのシナジーを生み出すために事業構造の転換を目指し、コンサルティング及びデジタル領域を中心としたオファリングの拡充、既存ビジネス領域での自動化促進等を含めた収益性向上、デジタル人財の拡充及び育成をグローバル一体となって行ってきました。さらに、DXが加速する中で求められるサービスにNTT Ltd.が持つデータセンターやネットワークサービス等のインフラ・Connectivityの強みを加えトータルに提供し、複雑化・多様化するニーズにグローバルレベルで対応してきました。
当期の海外セグメントの業績は以下のとおりです。
・売上高は、NTT Ltd.の連結拡大影響、為替影響、及び欧州での規模拡大等により、2,654,548百万円(前期比41.2%増)となりました。
・営業利益は、NTT Ltd.の連結拡大影響や増収等により、115,779百万円(前期比41.9%増)となりました。
<Hyster-Yale Group向けフォークリフトの自動制御を目的としたプラットフォーム構築案件獲得>
NTT DATA ServicesとNTT Ltd.は、グローバルに事業展開するフォークリフト製造企業であるHyster-Yale Groupから、自動フォークリフトの移動サポートを実現するトラフィックマネジメントプラットフォーム(以下、本プラットフォーム)構築案件及び大規模ITアウトソーシング案件を受注しました。
NTT DATA Servicesのサブブランドである「Launch by NTT DATA(注10)」が中心となり、MVP開発手法(注11)によるお客様提案を通じた専門性が評価されたこと、及びNTT Ltd.のインフラ領域のケイパビリティを高く評価されたことにより 本プラットフォーム構築案件の受注につながりました。NTT DATA Servicesは、本プラットフォームをお客様及びその顧客へSaaSライセンス製品として提供し、NTT Ltd.は、本プラットフォームに関するネットワークのマネージドサービスを提供することで、One NTT DATAとしてEnd to Endのデリバリーを実現します。
お客様のITアウトソーシングに関わるDX推進について、NTT DATA Servicesは、Azureクラウドへの移行、サービスデスク業務へのAI導入、デバイス更改支援機能の導入を通じて、NTT Ltd.は、ネットワークの改善・更改によりインフラモダナイゼーションをそれぞれ支援します。
<大手多国籍企業向けにインフラからアプリケーション領域にわたるフルスタックサービスを提供>
NTT Ltd.とNTT DATA Servicesは、大手多国籍企業向けに親会社からのスピンアウトに伴うIT環境構築案件を受注しました。NTT Ltd.が要件ヒアリングを丁寧に実施し、NTT DATA Servicesのアプリケーション領域のケイパビリティを加えることにより、インフラ領域だけでなくアプリケーション領域の顧客要件を充足できたことが本案件の受注につながりました。
同社は親会社からのスピンアウトに伴い親会社からアプリケーション及びインフラを切り離し、スタンドアロンとして稼働させる必要がありました。
NTT Ltd.はインフラ領域(ワークプレイス、ネットワーク、セキュリティ、ホスティングプラットフォーム環境等)を、NTT DATA Servicesはアプリケーション領域(Oracle Fusion Cloud ERP、Workday HCM、ServiceNow、MuleSoft等)を担当し、One NTT DATAとしてお客様をサポートし、2024年3月に予定されていたIT環境の移行作業を全て完了しました。
<データセンター事業への積極投資>
データセンター事業は、旺盛な需要を背景に成長が見込めることから、当社グループは積極的に投資を進めています。2023年度においては、インド、ドイツ、アメリカ、マレーシアに13のデータセンター(電力容量で226MW)の提供を開始し、全世界で約30都市、約120棟、約1,120MWの規模でサービスを提供しています。
他社との提携も進めており、2023年度は、東京電力パワーグリッド株式会社と千葉県印西白井エリアにおける、データセンターの共同開発及び運用を目的とした新会社の設立に向けて合意し、また、東京センチュリ―株式会社のグループ会社とは米国シカゴのデータセンター事業の共同運営を決定しました。
(注1)㈱GDBL
当社グループ、東京電力パワーグリッド㈱、中部電力㈱、関西電力送配電㈱が出資し、2022年4月に設立された企業です。電力データを活用した各種サービスを提供するとともに、電力データと異業種データの掛け合わせによる価値向上・新たな価値創造の実証やコンサルティング等、あらたなサービスを創出するための活動を展開しています。
(注2)環境行動
地球温暖化をはじめとした環境問題に対し、日々の生活や経済活動を委縮させることなく、持続可能な発展をさせるために、個人や事業者等が自主的かつ積極的に環境保全に配慮した取り組みを行うことをいいます。
(注3)地銀共同センター
当社グループが構築・運営する、地方銀行・第二地方銀行向け基幹系共同センターのことです。参加行は以下のとおりです。
(利用開始及び銀行コード順)
㈱京都銀行、㈱千葉興業銀行、㈱岩手銀行、㈱池田泉州銀行、㈱愛知銀行、㈱福井銀行、㈱青森銀行、㈱秋田銀行、㈱四国銀行、㈱鳥取銀行、㈱西日本シティ銀行、㈱大分銀行、㈱山陰合同銀行
(注4)OSA(Open Service Architecture)
当社グループにて推し進めている、ポストコロナに求められる新しい金融ITの姿を具体化した標準アーキテクチャーです。
(注5)Progmat(プログマ)サービス
現時点では、㈱Progmatに帰属しています。
(注6)当社グループを含む8社
㈱NTTデータ、三菱UFJ信託銀行㈱、みずほ信託銀行㈱、三井住友信託銀行㈱、㈱三井住友銀行、SBIホールディングス㈱、㈱日本取引所グループ、㈱Datachainの8社を指します。
(注7)デジタルアセット共創コンソーシアム
デジタルアセット全般を対象とした、業界横断での新たなエコシステムの共創を目指す枠組みです。同コンソーシアムにおいては、会員企業(2024年3月時点で228社)の協力の下、「Progmatサービス」を軸に、複数の関係者間を跨ったワーキンググループや個別プロジェクトについての検討を行っています。
(注8)グループ共通ポイント
JR東海グループの駅商業施設・店舗の共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」のことです。
(注9)EXサービス
東海道・山陽・九州新幹線のインターネット予約&チケットレス乗車サービス「エクスプレス予約」「スマートEX」のことです。
(注10)Launch by NTT DATA
コンサルティングやデジタルを通じたケイパビリティの拡充を目的としたM&Aにより加わった5社、及びNTT DATA Servicesの既存組織であるModern Applications 及びUser/Customer Experienceチームが一体となって、2023年4月に立ち上げた北米リージョンのサブブランドのことです。デジタル(Digital)、IoT、体験型(Experience)、没入型(Immersive)といったオファリングを提供することにより、お客様組織が「デジタル体験」を作り出すことを支援し、カスタマーエンゲージメントの実現とお客様の成長を牽引します。
(注11)MVP(Minimum Viable Product)開発手法
必要最小限のプロダクト開発、リリース、ユーザーからの有効なフィードバックを繰り返し、改善していく開発手法のことです。
(2) 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産は、為替影響含む有形固定資産及びのれんの増加等により、前連結会計年度末に比べ1,061,234百万円増加して、7,219,429百万円となりました。負債も、為替影響含む有利子負債の増加等により前連結会計年度末に比べ677,185百万円増加して、4,439,015百万円となりました。
また、資本は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ384,049百万円増加して、2,780,414百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は431,774百万円と前連結会計年度末に比べ16,414百万円増加となりました。
当期における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税等の支払はあるものの、当期利益145,541百万円、減価償却費及び償却費341,541百万円等により498,789百万円の収入(前年同期比148,222百万円の収入増加)となりました。
一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出654,473百万円等により624,508百万円の支出(前年同期比302,226百万円の支出増加)となったことから、当期のフリー・キャッシュ・フローは125,718百万円の赤字(前年同期は28,286百万円の黒字)となりました。
また、財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金等の支出があるものの、有利子負債の調達等により、109,166百万円の収入(前年同期比26,494百万円の収入減少)となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次のとおりです。
(注)D/Eレシオ:有利子負債/自己資本(資本合計-非支配持分)
なお有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、社債及び借入金を対象としています。
(生産、受注及び販売の状況)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 金額は、製造原価(販売価格)によっています。
当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 ANSER、CAFIS等利用量に見合う料金をいただくサービスについては、受注高に含めていま
せん。
3 前連結会計年度の受注高には、NTT Ltd.連結拡大影響を含めていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
各販売先における販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であるため、主な相手先
別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合の記載を省略しています。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1) 当連結会計年度の経営成績の分析
以下は、前年度実績対比及び2022年5月12日に公表の業績予想対比の分析を記載しています。
① 売上高の状況
前年度実績対比においては、NTT Ltd.連結拡大及び為替影響等に加え、日本・欧州における規模拡大等により、前連結会計年度を上回りました。
また、業績予想対比においては、為替影響及び日本における規模拡大等により、業績予想を上回りました。
② 営業利益の状況
前年度実績対比においては、NTT Ltd.連結拡大や増収等により、前連結会計年度を上回りました。
また、業績予想対比においても、為替影響及び日本における増収に伴う増益により、業績予想を上回りました。
③ 当社株主に帰属する当期利益の状況
前年度実績対比においては、有利子負債の増等に伴う金融費用の増加及び税金費用の増加により、前連結会計年度を下回りました。
また、業績予想対比においても、税金費用の増加により、業績予想を下回りました。
(2) 当連結会計年度末の財政状態の分析
当連結会計年度末における財政状態の概況については、「業績等の概要 (2) 財政状態の状況」をご参照ください。
(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① 財務方針
社会や金融・経済を支える大規模システムの開発・構築を担う企業として、ビジネスを安定的に継続し、中長期的な企業価値の向上を実現していくためには、強固な財務基盤を維持することが重要と考えています。現中期経営計画においては、財務レバレッジを高め将来の利益源獲得に向けたさらなる積極投資を実施することで、中長期的な競争優位性の維持・強化していく方針ですが、一定の財務健全性と積極投資とのバランスをコントロールするために、Net Debt EBITDA倍率(注)を重要指標と位置付け、2026年3月期に2倍程度を目安としてキャッシュ・フロー創出力と有利子負債のバランスをコントロールしていきます。
(注)Net Debt EBITDA倍率=(有利子負債-現預金)/EBITDA
② 経営資源の配分(資金需要)・株主還元
社会を支える情報インフラの開発・運用のための先行投資に加え、グローバルで質の伴った成長をするために、デジタル対応力強化やM&A等の成長に必要な事業投資に優先的にキャッシュを振り向けていきます。
株主還元については、成長に必要な事業投資と健全な財務基盤の維持のバランスを総合的に勘案した上で、中長期的に充実していく方針です。
資本効率の向上については、EBITDAの拡大とREITを活用したデータセンター資産の流動化を通じた投下資本の圧縮等により対応を図っていきます。
③ 資金調達
資金調達は、金融機関等からの借入、各種社債の発行等にて対応する方針です。
長期的な資金については、当社はNTTグループの強固な財務基盤を背景としたNTTグループファイナンスによる資金調達に加え、多様な資金調達手段を確保するために、国内の2つの格付機関から長期債の格付けを取得しています。
短期的な資金についても、国内の2つの格付機関からコマーシャル・ペーパーの格付けを取得し、150,000百万円の発行枠を保有するとともに、NTTグループのキャッシュマネジメントシステムにも加入しており、現金及び現金同等物の代替となる資金流動性も十分確保しています。また、当社グループの国内外の子会社にグループキャッシュマネジメントシステムを導入し、当社グループ内の資金集中・配分を実施しています。
これら複数の安定的な資金調達手段を確保しつつ、金利条件や為替リスク等を勘案して、さまざまな資金調達・配分方法を組み合わせることで、当社グループ全体の有利子負債と支払利息の低減を図っています。
④ キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「業績等の概要 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(4) 重要な会計方針及び見積り
当社グループにおける重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記3.重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
(1)日本電信電話株式会社(以下、NTT)と当社を含むNTTグループ企業の間で、NTTが行う基盤的研究開発の成果の使用権を得るための契約及び相互の自主・自律性を尊重しつつ、NTTグループ全体の利益の最大化を通じて、グループ各社の利益を最大化することを目的としたグループ経営に関わる契約を引き続き締結しています。
(2)持株会社体制への移行に伴う国内事業吸収分割契約の締結
当社は、2022年5月9日開催の取締役会において、当社グループの国内事業について、当社の完全子会社となる分割準備会社として株式会社NTTデータ国内事業準備会社(現在の商号:株式会社NTTデータ。以下、国内事業分割準備会社)を設立した上で、国内事業分割準備会社への吸収分割(以下「本国内事業分割」という。)によって承継することにより、当社が、NTT株式会社(現在の商号:株式会社NTT DATA, Inc.)及び国内事業分割準備会社の2社を子会社とする持株会社へ移行すること(以下「本持株会社化」という。)を決議しました。そして、当社は、2023年5月12日開催の取締役会において、2023年7月1日を効力発生日として、本国内事業分割に係る吸収分割契約(以下「本国内事業分割契約」という。)を国内事業分割準備会社との間で締結することを決議し、同日付で本国内事業分割契約を締結しました。
①本国内事業分割の目的
グローバルレベルでのデジタルトランスフォーメーションへの取り組み加速とお客様のニーズの複雑化・多様化等を背景にした海外事業統合を踏まえ、グループ経営体制の再構築を図り、外部環境の変化及び地域マーケットに応じた迅速な意思決定、機動性の向上、柔軟な制度設計等を通じてよりいっそうのガバナンス強化を進めることが不可欠と判断し、本持株会社化を行います。
本持株会社化実施後において、当社は、持株会社としてグループ全体最適の視点からの成長戦略の策定・遂行、経営管理等に特化し、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
②本国内事業分割の日程
③本国内事業分割の方式
本国内事業分割は、当社を吸収分割会社とし、2022年11月1日に設立された当社の完全子会社である国内事業分割準備会社を吸収分割承継会社とする吸収分割です。
④本国内事業分割に係る割当ての内容
国内事業分割準備会社は、本国内事業分割の対価として、国内事業分割準備会社の普通株式999株を当社に交付しました。
⑤本国内事業分割に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い
当社は新株予約権及び新株予約権付社債を発行していないため、該当事項はありません。
⑥本国内事業分割により増減する資本金
本国内事業分割に際し、当社の資本金の増減はありません。
⑦承継会社が承継する権利義務
本国内事業分割準備会社は、当社が国内事業に関して有する権利義務のうち、本国内事業分割契約において規定するものを当社から承継しました。
⑧債務の履行の見込み
本国内事業分割の効力発生日以降において、国内事業分割準備会社が履行すべき債務について、その履行の見込みに問題がないものと判断しています。
⑨承継会社が承継する資産・負債の状況(2023年3月31日現在)
(注)上記資産・負債の各項目の金額は、一定の仮定に基づき算出した社内管理数値であり、非監査の参考値です。上記資産・負債の各項目と金額は、2023年3月31日現在の当社の貸借対照表を基礎としているため、実際に承継会社が承継する金額(上記金額に本国内事業分割の効力発生日までの増減を加除した金額)とは異なります。
⑩本国内事業分割の承継会社の概要(2023年3月31日現在)
(注)2024年3月31日現在の当該承継会社の概要は以下のとおりです。
名称 :株式会社NTTデータ
所在地 :東京都江東区豊洲三丁目3番3号
代表者の役職・氏名:代表取締役社長 佐々木 裕
事業内容 :コンサルティング、統合ITソリューション、システム・ソフトウェア開発、
メンテナンス・サポート等
資本金 :1,000百万円
当社グループは、グローバルでの厳しい競争に勝ち残っていくため、新しい技術トレンドを積極的にビジネスに取り入れる「最先端技術・イノベーション推進」に取り組むとともに、システム開発の高速化、高品質化やクラウド化・デジタル化を見据えたクラウド基盤の構築等、「生産技術革新」に関する研究開発に取り組んでいます。最先端技術に関する知見やノウハウをグローバルで集約・活用しイノベーションを推進していくとともに、次世代の生産技術を磨いていきます。
さらに、日本電信電話株式会社との研究開発連携により、基盤的研究開発テーマについてはその成果を活用し、当社のリソースを応用的研究開発テーマに重点配分しています。
当連結会計年度の研究開発費は
<生成AI活用をグローバルで推進>
当社グループは、グローバルレベルでの生成AI展開戦略を通じてお客様のバリューチェーンの変革に注力するとともに、生成AIを活用した抜本的な業務効率の向上、イノベーションの促進、企業文化の醸成等社内のバリューチェーンの変革を推進するため、Generative AI推進室を設立しました。
当社グループでは、かねてより生成AIに関して、さまざまなユースケースでのお客様とのPoCや実案件適用等を実施してきましたが、Generative AI推進室の設立により、生成AIのソフトウェア開発分野への適用や顧客との共創の推進、生成AI関連のアセット開発への投資とグローバルでの適用拡大、ハイパースケーラーとのアライアンスや生成AI活用のためのガイドラインの策定やグローバルガバナンス体制の整備等を加速しています。
取り組みの一例として、当社グループの文書読解AI(自然言語処理AI)ソリューションである「LITRON」に日本電信電話株式会社が開発した大規模言語モデルである「tsuzumi」を連携させることで、より業務に特化した日本語の回答文章を生成できる文章検索・回答生成システムの提供を開始しました。また、当社グループ内の各拠点が持つさまざまな生成AIアセットを活用することで、お客様へのグローバル規模での展開も図っていきます。
当社グループは、生成AI関連のアセット開発、商用展開をさらに進め、生成AIの適用範囲を広げる取り組みをグローバル規模で加速させていきます。
<生成AI活用によるデジタルプラットフォームの強化>
当社グループは会話型AIプラットフォーム「eva」に生成AIの機能を追加し、顧客のデジタルプラットフォームの競争力を強化しました。これにより、「eva」を利用するL'Oréal社(以下、ロレアル)は、リアルタイムでの顧客別商品提案、及び顧客の購入ライフサイクルを通じたサポートによる効果的な販売促進が可能となりました。
当社グループの提供する「eva」は、顧客との過去のやり取り、閲覧履歴、購買行動、その他の統計情報を含む包括的なユーザデータに基づいてトレーニングされており、さらに生成AIを搭載することで、よりパーソナライズされた商品提案をすることが可能になりました。当社グループは本案件を通じて、ロレアルにおけるコンタクトセンター運用コストの削減及び顧客満足度の向上を実現しており、今後は生成AIを搭載した「eva」についてロレアルのSNSやチャットボット等、さまざまなチャネルへの展開を予定しています。
当社グループは生成AIを利用したサービスを幅広く提供することで、お客様のバリューチェーンの変革に貢献していきます。
この有価証券報告書に掲載されているサービス及び商品等は、当社グループあるいは他社等の登録商標または商標です。