文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 当社を取り巻く事業環境と対処すべき課題
国内のITサービス市場は、生成AIやブロックチェーン、クラウドコンピューティング、モバイルテクノロジーをはじめとする急速なテクノロジーの進化、データ分析技術の進化に伴うデータ活用の重要性の増加、データ流出やサイバー攻撃などのセキュリティリスクの増加など、企業のIT戦略、IT投資に質的変化が生じ、ビジネスとITの関係は一層密接になっております。
ITサービス企業は、これらの環境を踏まえ、常に新しい技術を取り込み、自社製品・サービスの継続的な提供価値の向上、革新的な製品・サービスの創出が求められております。また、事業環境の変化が加速し、先を見通すことが難しい「不確実な時代」に持続的に成長していくためには、事業分野、事業モデルの再構築による自己変革が重要となります。
このような事業環境の変化の中、当社は経営理念「夢ある未来を、共に創る」に立ち返り、「サステナビリティ経営」を実践していく上で、優先的に取り組む領域を決めて共有するために「マテリアリティ(重要課題)」を策定し、当該方向性を踏まえた2030年の目指す姿としてグランドデザイン2030を策定しました。このグランドデザイン2030の実現に向け2023年4月に第二期の計画となる「中期経営計画(FY2023-FY2025)」を発表いたしました。
<マテリアリティ>
当社グループの事業と当社グループならではの強み、社会へ対して果たすべき役割から、以下7つのマテリアリティを策定しております。
<グランドデザイン2030>
グランドデザイン2030では、お客様やパートナーと共に社会課題の解決に貢献するビジネスを創り出すことによって、「2030年共創ITカンパニー」の実現を目指しています。
目指す姿の実現に向けて、当社グループの本質的な企業力を向上するべく、経済価値と社会価値、人的資本価値等の非財務要素を包含した企業価値である“総合的企業価値”の飛躍的な向上を図るとともに、従来とは非連続な価値創出を前提に社会課題の解決をリードする一流の会社を目指すことを意図する「売上高1兆円への挑戦」を掲げ、具体的な実現へのステップである中期経営計画に取り組んでいます。

<中期経営計画>
中期経営計画(FY2023-FY2025)は、グランドデザイン2030の実現に向けた第二期の中期経営計画として位置付けており、事業分野・事業モデルの再構築を進め、当社グループ発で新たな価値を提供する領域に積極的に取り組むことに加えて、収益性・生産性の高い事業モデルへのシフトを進めます。また、社員の能力を最大限に発揮できる業務環境の整備や事業分野・事業モデルの選択・構築を行うことで、社員一人ひとりの市場価値の最大化に取り組んでいきます。それらの推進に向けた具体的な取り組みをグループ基本戦略として取りまとめています。
<グループ基本戦略>
“総合的企業価値”の飛躍的な向上に向け、
・お客様や社会に対して、新たな価値を提供し続けるため、事業分野、事業モデルを再構築する
・社員の成長が会社の成長ドライバーと認識し、社員一人ひとりの市場価値を常に最大化する

(基本戦略1)事業シフトを断行~3つのシフト~
① 顧客市場 - 成長力ある事業領域へのシフト
② 提供価値 - 高付加価値分野へのシフト
③ 事業モデル- 高生産性モデルへのシフト
(基本戦略2)成長市場において、市場をリードする事業を推進
(基本戦略3)社会との共創による「次世代デジタル事業」を創出
(経営基盤強化)
① 技術ドリブン推進
② 人材価値最大化
③ 共感経営の推進
(成長投資)
3年間で1,000億円規模の積極的な投資を実行
(経営指標)
・財務目標
持続的な成長に向けた事業分野・モデルの再構築により高収益成長を実現
<2026年3月期>
- 営業利益:650億円
- 営業利益率:12.5%以上
- ROE:14%
・株主還元
<2026年3月期>
- 配当性向:50%
(2)中期経営計画の進捗
本中期経営計画を、「2030年 共創ITカンパニー」に向けた第二期として位置付け、第一期(FY2020-FY2022)の基本戦略の施策を収益化・業績貢献に繋げるべく、本中期経営計画における3つの基本戦略、経営基盤強化により推進いたします。
●基本戦略1:事業シフトを断行~3つのシフト~
•事業環境の変化に対応し持続的な成長に向け、事業分野・事業モデルを再構築いたします。
•収益率の向上とともに、持続的成長への投資余力・成長余力を創出いたします。
(取り組み例)
① 成長力ある事業領域へのシフト
組織ごとに対象領域を決め、事業の選択と集中を実施し、全社レベルで成長力ある事業領域(製造領域、モビリティ、セキュリティなど)へ要員をシフトし、個別リスキリング施策を実施しております。また全社でも、成長力ある事業領域への対応力を高めるべく、デジタルスキル標準教育を行っております。
② 高付加価値分野へのシフト
システム開発における上流工程へのシフト、及び、上流工程を担う高度人材の育成・獲得に取り組んでおります。また、提供価値に見合った取引価格へと、単価の適正化の取り組みが順調に進展しております。
③ 高生産性モデルへのシフト
生成AI活用による開発生産性向上に向けて、要件定義から運用、営業支援、企画・分析まで、各工程における適用検証を、全社の推進事項として実施しております。
●基本戦略2:成長市場において、市場をリードする事業を推進
•クラウド・デジタル活用にて成長を期する市場・技術領域において、当社グループの保有する強みをもとに、市場成長への貢献と共に、当社グループの高成長を実現いたします。
•現有リソースにとらわれないリソース集中、先進技術を組織的に活用、継続的に対象事業を見出します。
●基本戦略3:社会との共創による「次世代デジタル事業」を創出
•コア事業の知見を活かし、従来とは非連続な「次世代デジタル事業」、社会へ新たな価値創出をリードいたします。
•当社グループ「マテリアリティ」を起点とした領域における継続的な事業の開拓・挑戦を行います。
(基本戦略2及び基本戦略3の取り組み例)
・金融領域において、AML(Anti-Money Laundering)専業子会社「SCSK RegTech Edge㈱」が、2022年6月に成立した「安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図る為の資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」における為替取引分析業の許可を第1号業者として取得しました。SCSK RegTech Edge㈱は、当社事業を承継し、金融犯罪対策ソリューション「BankSavior®シリーズ」製品のサービス提供を主軸に、長年にわたり培ってきた金融犯罪対策業務の知見と経験をもとに、ますます巧妙化が進む犯罪組織の手口に対応し、専門特化した組織においてさらなる知見の蓄積と高度なサービスを提供してまいります。
・セキュリティ領域において、サイバーセキュリティ対策に特化した専業子会社「SCSKセキュリティ㈱」を設立し、事業を開始いたしました。セキュリティの専門家として、プロダクト事業とサービス事業の両輪で、お客様のサイバーセキュリティにおける課題解決を支援してまいります。
●経営基盤強化
「技術ドリブン推進」
先進技術獲得による新たな価値創出・事業開拓、社会実装に向けた高度先進技術者の拡充を行うとともに、長年蓄積された業務ノウハウ・著作物等の知財化、全ての顧客フロントでの顧客課題解決に向けた活用促進による知財価値の向上、ファンド出資等を通じたベンチャー企業との協業等のオープンイノベーションの推進を一層強化いたします。
「人材価値最大化」
本中期経営計画の方針である「社員の成長が会社の成長ドライバーと認識し、社員一人ひとりの市場価値を常に最大化する」の実現のため、多様な人材が活躍できるよう、ダイバーシティ&インクルージョンの実践、Well-Being・健康経営の推進、事業戦略と人材ポートフォリオの最適化、処遇・報酬制度等による基盤整備を行います。
「共感経営の推進」
会社・トップマネジメント・リーダーと社員の双方が“共感”することで、一人ひとり、あるいは一企業では成し得ない、大きく・新たな価値を生む原動力となることを踏まえ、共感経営を推進してまいります。
(経営基盤強化取り組み例)
・AIの戦略的専門組織として「AI CoE」ならびに「SCSK AI Integration Lab.」を設立し、自社事業における AI 適用、及びお客様向けの AI 導入支援を加速いたします。お客様への価値提供を通じて蓄積された技術、及びAI をはじめとした、当社グループが将来を見据え、先行して習得・蓄積する先進技術を起点に、主体的にお客様や社会のデジタル化に貢献してまいります。
・持続的な人的資本の向上や確保の推進に取り組んでおり、事業戦略に連動した人材ポートフォリオを策定し、デジタル先進技術者や高度デジタルスキル人材等の育成とその能力を発揮する場を整備しております。また、当社独自の「SCSK Well-Being Score」を定義、社員のWell-Beingの実感度を測る重要な指標として、可視化の推進・改善サイクルを実行し、働きやすい、働きがいのある会社へのステージアップを目指しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、代表取締役 執行役員 社長の諮問機関であるサステナビリティ推進委員会にて、サステナビリティに関する全社的な課題、取り組み施策の検討や確認を行っております。
検討内容は、サステナビリティ推進委員会から、経営会議に報告し、経営会議で全社的な経営に係る観点からさらなる議論を行った後に、サステナビリティ推進委員会から定期的に取締役会に報告が行われ、取締役会で適切に監督される体制を整えております。
また、当社では中期経営計画の基本戦略・経営基盤強化策の実効性を高めるため、環境・社会・ガバナンスへの取り組みを含む個人評価が反映される役員報酬制度を採用しております。
なお、役員報酬制度の詳細は、「
サステナビリティに関するガバナンス体制及び各会議体の構成

サステナビリティに関する各会議体の役割と実施状況
当社グループでは、グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを適切にマネジメントするため、リスクマネジメントに関する規程を定めております。
サステナビリティに関するリスクについては、所管リスク担当部署とリスクマネジメント統括部署が共同し、外部レポートや外部有識者の助言をもとにリスク項目を分析しております。
分析したリスク項目は所管リスク担当部署からサステナビリティ推進委員会に報告を行い、同委員会にてリスクの確認、特定を行っております。特定したリスク項目は所管リスク担当部署からリスクマネジメント統括部署に報告を行い、リスクマネジメントに関する規定に則り、適切に管理されております。
当社のリスクマネジメントの詳細は、「
①サステナビリティリスクの抽出・特定・評価の状況
(a)気候変動に関するリスク
当社グループは、気候変動が事業活動に与える当社への影響を評価するために、TCFDの枠組みに基づいて気候変動に関連する物理リスク、移行リスクの把握及び事業機会を整理しております。
気候変動リスク及び機会については、各種政府レポートや各種開示基準(SASB、IFRS S2等)を参考に抽出を行っております。当社グループの事業観点を踏まえ影響が大きいと評価されたリスク・機会については、施策の方向性や対応策を検討しております。
2021年度に当社グループの温室効果ガス排出量の8割を占め、気候変動による影響が大きいと考えられる「データセンター事業」を対象にリスク・機会の特定・評価を実施しております。また、2023年度には当社グループ全体への気候変動による影響を把握するため、対象範囲を全事業領域に広げ、リスク・機会の特定・評価を実施しております。なお、特定・評価結果の公表時期は2024年7月を予定しております。
(b)人権に関するリスク
当社グループは、「SCSKグループ人権方針」に基づいて、事業活動が与える人権へのリスクを特定・防止・是正するために、人権デュー・ディリジェンスを実施しております。
当社グループの人権デュー・ディリジェンスは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」、「国連指導原則報告フレームワーク」、「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」など、国際的なガイドラインに沿ったプロセスで実施しております。
2022年度に、当社グループ全体の人権への影響・リスクを評価するために、業種、地域、企業固有のリスクを踏まえ、優先的に対応すべき人権リスクを特定しております。
当社グループでは、既に実施している取り組みの継続・強化に加え、特定された人権課題に対する新たな防止・軽減策の実践を進めることで、人権に配慮した事業活動に努めております。
サステナビリティリスクの詳細は、「
①「気候変動」に関する事項
(戦略)
気候変動への対応は企業の長期的価値を左右する重要な経営課題と認識しており、不確実な状況変化に対応し得る戦略と柔軟性を持つことが重要であると考えております。このような考えのもと、気候変動が事業に与える影響を評価するために、「データセンター事業」をシナリオ分析の対象として選定しております。「データセンター事業」は、当社グループの温室効果ガス排出量の約8割を占めており、気候変動による影響(炭素税や環境規制など)が大きいと考えられます。気候変動に関連する物理リスク、移行リスクの把握及び事業機会を整理し、選択シナリオは4℃シナリオと1.5℃シナリオとしております。
<選択シナリオの概要>
■4℃シナリオ:経済活動を優先し、炭素規制や再生可能エネルギーの利用は進まず、なりゆきで推移し、自然災害の激甚化が進むシナリオ
■1.5℃シナリオ:炭素税の高税率化、炭素排出規制の強化などの政策が世界的に広まり、脱炭素化に向けた積極的な移行が進むシナリオ
<主なリスクと機会の概要>
■リスク:炭素税導入や省エネ規制強化に伴う再エネ・省エネ設備への切り替えやグリーン電力購入などの対応コストの増加などが移行リスクとして考えられます。また、自然災害によるデータセンターの操業・復旧コストの増加や、気温上昇に伴う冷却に必要な空調コストと電力消費量の増加によるデータセンターの運用コストの増加などが物理リスクとして考えられます。
■機会:脱炭素型データセンターやレジリエントデータセンターに対する需要が増加することや、今後のデジタル化社会の到来により、通信量の拡大や大量データの保存ニーズの増加に加え、データセンターに蓄積したビッグデータ利活用のための周辺サービス需要が発生することなどが考えられます。
これらのリスク・機会に対し、事業への影響を「+/-」を用いて3段階で評価しております。
<主要なインパクト項目に対する評価結果>

<対応策定義>
今後、リスクに対しては回避・軽減する施策、機会に対しては機会を獲得するための施策の検討を継続的に実施し、策定された対応策を実行することによって、事業活動のレジリエンス向上を目指します。

(指標と目標)
当社グループは、温室効果ガス排出量の削減に向けて、SBT イニシアチブの認定を取得した中長期的な削減目標を設定しております。
温室効果ガス排出量の削減に向けて、環境に配慮した事業活動に意欲的に取り組むとともに、脱炭素社会への変革を事業機会ととらえ、幅広い業界にわたるお客様やパートナー企業との共創を通じて脱炭素社会の実現、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

(ご参考)
・TCFDシナリオ分析の詳細については、当社WEBサイトをご参照ください。
対象事業:データセンター(2021年実施)
公開場所:当社WEBサイト(
対象事業:全事業領域(2023年実施)
公開時期:2024年7月
公開場所:当社WEBサイト(
・気候変動への対応など、その他の環境に関する取り組みにつきましては、
当社WEBサイト(
・2023年度の温室効果ガス排出量については、第三者保証報告書と共に当社WEBサイトでの公開を予定しています。
公開時期:2024年9月
公開場所:当社WEBサイト
(
公開内容:Scope1,2,3排出量、Scope3 カテゴリ別排出量
②「人的資本・多様性」に関する事項
当社グループは、「サステナビリティ経営」を成長戦略として取り組むことを掲げており、コアコンピタンスを活用して、お客様や社会と共にさまざまな社会課題の解決に貢献し、社会が必要とする新しい価値を創出しながら、社会と共に持続的に発展することを目指しております。
当社グループの経営理念である「夢ある未来を、共に創る」を実現するために掲げている“3つの約束”では、最初に「人を大切にします。」ということを宣言し、社員一人ひとりの個性や価値観を尊重し、互いの力を最大限に活かすことを約束しております。当社グループの最大の財産、かつ成長の原動力は“人”であり、社員一人ひとりの健康こそが、社員やその家族の幸せと事業発展の礎であることから「社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客様の喜びと感動につながる最高のサービスが提供できる。」という理念のもと、働き方改革や健康経営の先進企業として取り組みを進め、社員の高い定着率や安定的な人材の確保を実現しております。
2023年度よりスタートした中期経営計画では、経済価値と社会価値、人的資本価値等の非財務要素を包含した企業価値である「総合的企業価値」の飛躍的な向上に取り組むことを方針として掲げています。
人的資本価値の向上については、社員一人ひとりの「人材価値最大化」を基本方針としており、社員の能力開発(専門性、スキル、経験等)への投資とともに、社員の能力を高められる事業・案件を常に選択し、成長できる場・環境を用意すること、また、社員が持つ能力を最大限に発揮できる事業分野・事業モデルを常に選択・構築することに取り組んでおります。また、これまでの働き方改革や健康経営を中心に培ってきた働きやすい環境に加え、社会価値や経済価値創出への貢献を通じた働きがいやエンゲージメントを高める「Well-Being経営」を推進してまいります。
これらの方針や取り組みを、経営・マネジメントと社員の双方が共感し進められるよう、役員評価に「共感経営」を導入し、理念・ビジョンを共有し共感を生むリーダーシップを発揮することを評価し、その実践度を社員意識調査で計測しております。共感経営を強く推進することで、グランドデザイン2030に掲げる「共創ITカンパニー」の実現を確実にすべく取り組んでまいります。
(戦略)
人材価値最大化の基本方針に則った4つの重点施策を設定し、取り組みを進めております。
1.事業戦略と人材ポートフォリオ
人的資本価値を高めるためには、経営戦略と人材戦略の連動、そして社員一人ひとりの能力発揮と成長意欲が不可欠であることから、自律的・戦略的・統合的なキャリア開発基盤として「iCDP(Integrated Career Development Plan)」を策定し、以下の複数の制度・施策のつながりを重視した人材価値最大化の基本サイクルとして運営しております。また、将来のビジネスや技術ニーズの変化に備えるため、若手社員のマルチスキル化や変化への対応力の養成を目的とした、iCDPの施策(採用・教育・配置・評価)を総合的に展開するキャリア開発プログラムを2020年度から導入しており、「共創ITカンパニー」の実現に向けた長期的な取り組みをはじめております。
■専門性認定制度
プロフェッショナル人材育成の根幹となる制度で、スキル標準をベースに当社が独自に定義した専門分野ごとのキャリアフレーム・人材像(「SCSKキャリアフレームワーク」)における到達レベルを厳格に評価・認定し、人材を育成・可視化する仕組みです。「SCSKキャリアフレームワーク」は事業モデルの変化に応じて継続的に見直しを行っており、この専門性認定を活用して、事業ポートフォリオの変化に対応した人材ポートフォリオのAs is-To beギャップを明確化する取り組みを推進しております。
■i-University
継続的な学びと成長の機会を提供する統合的人材育成体系であり、リーダーシップ・キャリア・グローバル・専門能力・Re-Skillingの研修カテゴリーによる200コース以上の研修を提供しております。人材ポートフォリオのAs is-To beギャップ解消を動的に進めるため、都度、経営ニーズに対応してコンテンツを見直しております。また、「学び手当」「資格取得報奨金」「学びインセンティブ」等の制度により自己研鑽を奨励し、多様な技術・知識・スキルの習得を促進しております。
■CDP制度
人材価値最大化の基本サイクルの中心にある仕組みで、多様な社員一人ひとりが能力や専門性を活かしながら活躍・成長し続けられるよう、キャリアプランを上司と共有し育成や配置につなげております。経営戦略の中長期的な変化と個々人の成長の方向感を共有し擦り合わせながら、新たな価値創出にチャレンジできるプロフェッショナル人材の育成を計画的に推進しております。

2.処遇・報酬制度
競争の激しいIT人材市場において優秀な人材の確保・定着を実現するとともに、社員一人ひとりが高い目標を掲げて意欲的に挑戦できる風土を醸成し、持てる能力を最大限に発揮し成長し続けるために、人材価値を適切に評価し報いる処遇・報酬制度を整備しております。
人材価値最大化の基盤となる人事制度では、組織運営を通じて事業成長を担う経営・マネジメント人材の「GM職掌」、実力をダイナミックに評価するプロフェッショナル人材の「基幹職掌」など、キャリアパスごとの期待・役割に応じて、最適な人材育成と処遇を実現する複線型の人事制度を採用しており、多様な人材が能力開発に取り組み、チャレンジ志向と成長志向を持つ自律的な人材が集う会社を目指しております。また、高い市場価値を有し事業成長に寄与する優秀な人材の確保においては、年収3,000万円超での処遇を可能とする「ADV職掌」を設け、高度な人材の拡充にも取り組んでおります。
社員の専門領域での能力は「SCSKキャリアフレームワーク」に基づき7段階のレベルで評価・認定する専門性認定制度により、プロフェッショナル人材の専門性とそのキャリアステップを可視化し、社員の成長を促しております。専門性認定審査のプロセスを通じて目指すレベルとのギャップを把握し、社員と上司が具体的な人材育成計画を策定することで、効果的な専門能力向上のための育成を行っております。専門性認定上位レベルの認定者には、専門性認定手当・一時金を支給し、高度専門人材への適切な処遇を実施するとともに、上位レベル認定に向けたより高レベルの業務への挑戦や学習の促進を図るなど、社員一人ひとりの市場価値の最大化に取り組んでおります。
3.Well-Being経営
当社グループにとって、事業の根幹を支える最も重要な経営資本は“人”であることから、社員が安心・安全に業務にあたれる職場環境を整備するとともに、社員一人ひとりが心身ともに健康であることが事業発展の礎である旨を2015年に「健康経営の理念」として明文化し、健康経営を経営上の重点課題として取り組んでまいりました。さらに、新たな価値を社会に提供し続けるために、社員が心身共に良いコンディションを維持することに加え、価値創出を通じた社会への貢献と働きがいを実感できるWell-Being経営の取り組みを進めております。
社員のWell-Beingを実現するためには、一人ひとりが働きがいを抱くとともに、会社・トップマネジメント・リーダーが、一人ひとりが求める多様な幸福感を支援しつつ、経営理念や社会課題に貢献する事業ビジョンや目指す姿をしっかりと示し、双方が共感することが重要であることから、「共感経営」の取り組みを進めております。経営層と社員の双方向コミュニケーションを深めるためのタウンホールミーティングなどを開催するほか、当社グループ内の多様な活動を共有する情報サイト「hiroba」の運営により共感と一体感の醸成を図っております。
働く環境においては次世代ワークプレイス戦略を策定し、「新しい共創の出発点」をコンセプトに、社員が集い知的生産活動やコミュニケーションを深め、それを新しい価値創出につなげていくワークプレイスの実現に向け取り組みを進めております。また、当社グループのさらなるブランド力の強化に向けた発信拠点、お客様との共創拠点として、「SCSK LINK SQUARE(エスシーエスケイ リンク スクエア)」を 2024年6月に東京ミッドタウン八重洲に開設いたしました。お客様に当社グループの存在意義・提供価値を認知していただくとともに、お客様はもちろん社内外の様々な人々とのコミュニケーションを深める場としても活用し、新たな共創を通して人材価値を高める取り組みを更に進めてまいります。
Well-Being経営の実践を通して、社員一人ひとりの主体的な貢献意欲を価値創出の原動力とし、「働きやすさ」と「働きがい」を実感できる環境を整備することで、当社グループのエンゲージメント向上を目指してまいります。
4.ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)
D&Iの推進においては、「多様な人材がお互いに仲間として認め理解し合うことで組織力を上げること」を目的に、「属性」「思考内容・能力」「表明される意見・見解」の3つの観点から組織として多様性をお互いに理解し活かす施策を展開しております。すべての人材の能力を最大限に引き出し、その力を事業成長に活かすことで、持続的成長と新たな価値を創造し続ける企業を目指しております。
2024年度からは、D&IにEquity(公平性・公正性)とBelonging(帰属意識)の要素を加え、一人ひとりの状況に応じた公平・公正な対応ができる職場、社員一人ひとりが自らの居場所として安心して力を発揮できる組織風土醸成に取り組むべくDEIB(Diversity, Equity, Inclusion, Belonging)へとその概念を進化させています。

これまで、さまざまなバックグラウンドを持つ多様な社員が同じステージで活躍できるよう、長時間労働を前提とした働き方や勤務場所の制約など、能力を発揮する上での障害を取り除くことに取り組んでまいりました。長時間労働を是正し生産性の高い働き方を目指すスマートワーク・チャレンジや勤務場所や勤務時間に柔軟性を持たせるリモートワークやフレックスタイム制度、各世代のライフイベントをサポートする各種休暇制度を整備することで、育児や介護との両立の実現をはじめ、障がいのある社員の活躍推進、LGBTQに関する施策など全ての社員が活躍できる環境づくりを進めております。
育児との両立支援においては、育児休業や育児休暇を取得する期間に限らず、恒常的に男女ともに育児に参画しながら仕事との両立ができることを目標としております。育児初期においては、育児休業の分割取得や育児に関する特別休暇の拡大に取り組んだ結果、男性社員の育児休業取得率は5年前に比べると10倍に増え、育児休暇も含めると育児に関する休業・休暇の取得率は80%を超えております。男性社員の育児へ参画意識が高まっていることから、両立がしやすい環境の整備に更に取り組んでまいります。
女性が真に活躍できる組織風土の実現は、より広義なD&Iを実現していく上で礎になるととらえ、2012年にD&I推進の専任組織を設置して以来、女性社員の活躍推進に積極的に取り組んでまいりました。女性ライン管理職の積極的登用を着実に進捗させることを目的に、役職別に登用目標を設定し、各役職別の育成プログラムを実施するとともにメンターによるサポート制度を導入し、女性ライン管理職の育成とキャリア開発支援に取り組んでおります。また、事業の中核を担うITに関する高度な専門性を保有する(専門性認定制度レベル5以上)女性についても計画的に育成を進めております。
提出会社の女性登用・育成目標
(ご参考)
(指標と目標)
中期経営計画においては、先進技術者の育成に加え、コンサルティング機能の拡充や新規事業開発強化を担うコンサル・ビジネスデザイン人材、質の高いプロジェクト遂行とマネジメントができる高度プロジェクト・マネージャ人材の採用や育成強化について具体的な目標を設定して取り組みを進めております。また、各人材の育成施策および人材獲得、競争力を確保するための報酬水準の引き上げに100億円~200億円規模の人財投資を実行いたします。
「働きやすさ」と「働きがい」を実感できる会社であること、「心身の健康」が整い高いパフォーマンスを発揮できることは、技術の変遷や事業環境の変化に関わらず求められる基礎的な事項であることから経営指標として設定し、目標水準を達成・維持するための取り組みを行っております。また、D&Iを推進する代表指標として女性社員の活躍の拡大を目標として設定し、育成や組織風土作りに取り組んでおります。
人事関連データ
※1 連結での数値(「デジタルスキル標準教育修了者」以外は単体での数値)。
※2 正社員・専門型正社員のキャリア採用者数。
※3 各年度の4月1日時点の従業員数が母数。
※4 正社員・専門型正社員・シニア正社員の平均年間給与。
※5 詳細は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育 児休業取得率及び男女の賃金の差異 <男女の賃金の差異>」をご参照ください。
※6 社員意識調査で、「働きやすい会社」および「やりがいのある会社」の両項目にポジティブ回答を行っ た社員の割合。
※7 社員意識調査で、「自分の能力が十分活かされている」項目にポジティブ回答し、さらに健康アンケー トで「健康な状態で発揮できるパフォーマンスを100%としたときに80%以上発揮出来ている」と回答し た社員の割合。
※8 取締役は除く、受け入れ出向者は含む。目標「部長級の女性数3倍以上」については2023年3月期実績 に対する比率を算出。
※9 家族の看護、中学校卒業までの子の育児に必要な疾病予防および学校行事への参加、不妊治療による通 院の際に半日単位で取得可能な休暇(年間5日間)。
※10 裁量労働制適用者、管理監督者を含む全社員の平均。
・「人的資本・多様性」に関する詳細な情報については、当社WEBサイトに公表されている「統合報告書」をご参照ください。https://www.scsk.jp/ir/library/report/index.html
(1)リスクマネジメントの基本方針と体制
当社では、リスクを「損失を被る可能性、又は事業活動から得られるリターンが想定から外れる可能性」と定義し、当社グループの事業活動の安定化と企業価値の向上を図るため、事業活動遂行時のさまざまなリスクを可能な限り想定し、以下の目的を持って継続的なリスクマネジメントを実施しております。
当社では、グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを適切にマネジメントするため、リスクマネジメントに関する規程を定め、併せてリスクマネジメントの統括部署としてリスクマネジメント部を設置しております。本規程に基づき、毎年定期的に国内外のグループ会社も含めリスクアセスメント(リスクの特定・分析・評価)を実施しております。その実施にあたっては、リスク所管部署並びに事業グループ等の各組織が、リスクマネジメント部と協力してリスクシナリオを作成の上、リスクを洗い出し、影響度と発生可能性の2軸で定量的にリスク評価をしております。その後、リスクマネジメント部において各リスクを全社リスクマップとして可視化させ、重点的対応が必要と考えられるリスクについては、当該リスクの性質や状況に着目しつつ、適切な対策が講じられるよう取組んでおります。
リスクマネジメント部は、これら一連のリスクマネジメント活動が適正に機能するよう、全社視点で一元的にリスク管理状況の把握・評価を行い、定期的に執行役員 社長に対して報告するとともに、適宜リスク対応方針の指示を受けております。また、これらの状況全般について、経営会議へ報告の上、取締役会に報告しております。

上述のリスクマネジメント活動を通じて、事業環境の変化に適応するためにリスクマネジメントの高度化に努めております。
(2)事業等のリスク
当社グループの事業(経営成績と財政状態)に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業環境リスク
当社グループが属するITサービス業界において、クラウド化やDX化の進行や昨今の急速なAI技術の成長による市場の質的変化に加え、慢性的なIT人材不足や顧客企業の内製化が加速している状況にあり、ITサービスの開発・利用環境が大きく変わりつつあります。また、サステナビリティ意識の高まりを受け、政府や企業等においても「脱炭素」、「循環経済」等、社会課題解決への取り組みが進む一方で、世界的な紛争が拡大・長期化傾向にあり、地政学リスクの顕在化も懸念されています。更に国内においては、為替相場や国内労働市場の変化等を背景にした物価や人件費の高騰が起きております。このような環境の下、事業環境・経営環境の変化等により顧客企業のIT投資への意欲が急速かつ大きく変化した場合や、業界内部での価格競争が今より激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、顧客企業におけるIT投資実行の時期と規模は、経済環境、金利・為替動向等に影響を受けるため、間接的に当社グループの業績も影響を受ける可能性があります。
このため、当社グループは経営の基本スタンスとして「成長戦略としてのサステナビリティ経営」を掲げ、AI技術も含めたコアコンピタンスを活用して、様々な業種・業態の顧客企業と社会と共に、各種の社会課題にビジネス機会を見出し、社会が必要とする経済価値と社会価値の創出を実現することに取り組んでおります。従来の事業分野や事業モデルにとらわれることなく、成長可能性のある市場・事業領域を選択し、より収益性・生産性の高い事業モデルへとシフトすることを目指します。
② システム開発リスク
当社グループは、顧客企業の各種情報システムの受託開発業務を行っておりますが、大型かつ複雑化・短納期化するシステムの開発においては、計画どおりの品質を確保できない場合や、開発期間内に完了しないことによるコスト増大の可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、生産能力の確保、コストの効率化、技術力・ノウハウ活用のためにニアショアを含む多数の業務委託会社と取引しておりますが、期待した生産性や品質が維持できない可能性があります。
このため、当社グループでは、専門部署による引合い・見積り段階でのチェックや案件の進捗管理、品質チェックの実施等で全社標準を整備・運用し、さらには業務委託会社の総合的審査の実施や委託業務の進捗及び品質管理の徹底により、納入するシステム全体に、予定しない不具合が生じないよう組織的に努力し、リスクの低減に努めております。
③ 技術革新への対応に伴うリスク
ITの技術革新は激しく、既存技術の進化や新たな技術へのキャッチアップの遅れ、またITサービス市場における技術標準の急速な変化によって、当社グループが保有する技能・ノウハウ等が陳腐化し、競争優位性を喪失する可能性があります。このような環境下、当社グループが技術変化の方向性を予測・認識できない場合や、予測し得ても適切に対応できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、技術革新に適時・的確に対応する以下のような戦略的取り組みを行っております。
・研究開発組織を設置し、先端・先進技術の開発や市場の技術動向分析、政府のIT戦略と重点分野の把握、保有技術把握の実施。
・スタートアップ・アクセラレーターやコーポレート・ベンチャーキャピタルファンドを通じた新しい技術の組織的発掘の推進(技術提携を含む)。
・従業員の技術スキル向上を目的とした取り組みの実施。
また、システム構築やサービス提供にかかる技術並びに製品の調達の分散化を図ると同時に、特定の技術・ノウハウ・製品に過度の収益を依存することなく、ビジネスを推進しております。
④ 情報セキュリティリスク
当社グループでは、顧客向けに各種のITサービスを提供しており、システム開発から運用に至るまで、業務を通じて、顧客企業が保有する個人情報やシステム技術情報等の各種機密情報を知り得る場合があります。このような状況において、コンピュータウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃、もしくは人為的過失等により、機密情報の漏えい・改ざん等が発生する可能性があります。あるいは顧客システムの運用障害やその他の理由により、顧客向けITサービスが停止を余儀なくされる可能性があります。この結果、顧客企業等からの損害賠償請求や当社グループへの信頼喪失を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、セキュリティシステムを導入し、サイバー攻撃の検知時に的確に対応する体制を整備しております。また、役職員のコンプライアンス意識の徹底を図るとともに、当社グループのみならず各種機密情報を取り扱う業務委託会社も含めて啓発と教育を徹底する、全社開発標準に情報セキュリティ観点を組み込み、情報セキュリティ監査を実施する等の情報セキュリティ強化策を講じております。業務委託会社には当社の規定する「情報セキュリティガイドライン」の遵守を求め、確認書による定期的なモニタリング、必要に応じたオンサイトレビュー(立入調査)及び是正指導等により、当社グループと同レベルの情報セキュリティの確保と情報管理の徹底を要請しております。また、予期せぬ情報流出・漏えいの発生に備え、専用保険に加入しております。
⑤ 投資リスク
当社グループでは、ソリューション提供力強化、生産能力確保、最先端分野における技術力獲得・向上、最新のソフトウェア・ハードウェア等の製品調達力確保等を目的に国内外の事業会社やベンチャー企業への投融資、これら企業からの試作製品の購入を行っております。また、重点分野や新規分野におけるソフトウェア開発やサービス開発のための投資を行っております。こうした投資は事業投資先の業績悪化や計画未達成等のため、当初見込んだリターンが得られない、もしくは損失を被り、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、投資に際しては、事業投資先や投資に伴う事業計画、リスク・リターン等について十分に検討し、また、投資後であっても、計画進捗のチェックやモニタリングを行う等リスク管理体制を整え、強化に努めております。
⑥ 知的財産権に関するリスク
当社グループは、外部ベンダーの開発・製造によるソフトウェア・ハードウェア等の製品を多数の顧客企業に対し販売・納入しており、このような事業活動において、第三者が知的財産権の侵害を含む訴訟等を当社グループに対して提起する可能性があります。これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは第三者の知的財産権に関する調査等を行うとともに、知的財産権に関する社内での教育・啓発を図り、第三者の知的財産権を侵害しないよう努めております。
⑦ 製品調達リスク
当社グループでは、国内外のベンダー各社から、幅広く選りすぐりのソフトウェア・ハードウェア等の製品を調達して顧客企業に提供しておりますが、これらベンダー各社の事業戦略の突然の変更による製品仕様の変更やグローバル化が進むサプライチェーンが様々な世界情勢によって停滞すること等による製品供給の停止が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、独自の海外拠点・ネットワークを活用して海外製品・技術の発掘、情報収集に努めている他、国内外のベンダー各社と良好な取引関係を維持して製品販売戦略を共有しつつ、必要な場合は当社が適量の在庫を保持することにより安定的な製品の調達を図っております。
⑧ 大規模な自然災害等によるリスク
本社を含めた大都市圏の拠点と資産が首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模震災により被災した場合や気候変動に起因した大規模自然災害及び世界的な流行が懸念される新型ウイルス等の感染症が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、不測の事態の発生に備え、事業継続計画の策定や災害対策本部の整備、経営機能を代行可能なバックアップ拠点の整備等の他、当社グループ社員や当社グループで働くパートナーの在宅勤務等を通じ、従業員の安全の確保に努めつつ、事業継続のための体制強化を図っております。
⑨ 人材の確保・育成に関するリスク
当社グループの事業活動においては人材が最大の経営資産であり、人材の確保・育成が想定どおりに進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、事業規模拡大にあわせた新卒採用に加え、即戦力となるキャリア採用を強化することで、事業革新および新たな事業創出のために必要な人材の安定的確保に努めております。事業戦略の実現に向けては、事業領域ごとの戦略に応じた人材ポートフォリオ計画の策定により計画的な採用・育成を推進し、IT人材の市場価値の高まりへ対応するための評価・報酬制度を整備するとともに、多様な働き方を実現することで、優秀な人材の確保と定着を図っております。また、社員が安心・安全に仕事をできる働きやすい職場環境づくりと、社員の健康の維持・増進を目指す健康経営の推進により、社員の能力を最大限に引き出し、仕事に対する充実感や働きがいの実感による組織への高いエンゲージメントの維持を目指しております。事業戦略と連動した人材戦略を実行することで、事業成長とエンゲージメント向上の好循環を実現し、優秀な人材の確保・育成を図っております。
⑩ サステナビリティに関するリスク
(a)気候変動に関するリスク
異常気象や風水害が社会生活や事業活動に及ぼす影響が甚大であることから、企業に対して社会全体から温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みや、再生可能エネルギーの導入など「脱炭素社会」へ向けた積極的な対応が求められております。このような中、顧客企業をはじめとする様々なステークホルダーから当社グループの脱炭素社会実現に向けた取り組みが不十分だとみなされた場合、事業機会の逸失や社会的評価の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、SBTイニシアチブの認定を取得した中長期的な温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、削減に向けて、環境に配慮した事業活動に意欲的に取り組むとともに、幅広い業界にわたる顧客企業やパートナー企業との共創を通じて脱炭素社会の実現に貢献しております。また、当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みについてはホームページで開示しております。
(https://www.scsk.jp/corp/csr/environment/carbonneutral.html)
(b)人権に関するリスク
国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が採択されるなど、社会的責任の観点から企業に対して人権に配慮した適切な対応が要請されております。人権にかかわる対応が不十分な場合、当社グループの社会的な信用が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループでは、事業活動に関わる一人ひとりの個性や価値観を尊重し、互いの力を最大限に活かせるよう、経営理念とともに約束の一つとして「人を大切にします。」を掲げております。これらに基づき、当社グループの事業活動の影響を受けるすべての人々の人権を尊重するという考え方や責任について示すものとして「SCSKグループ人権方針」を策定しております。また、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築することで、事業とサプライチェーン全体で起こりうる人権への負の影響を特定し、その防止、又は軽減を図るように継続的に努め、企業として社会的責任を果たしております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、エネルギー・原材料価格の高騰に伴う物価上昇や、金利の変動による為替動向等の影響はありましたが、国内での経済活動の活発化によって、緩やかながらも景気は回復の動きが続きました。
日本経済の先行きにつきましては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかな回復が続くことが期待されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行きの懸念など、海外景気の下振れが日本経済を下押しするリスクに加えて、物価上昇や中東地域を巡る情勢、金融資本市場の変動による影響には十分に注意する必要があります。
このような経済環境の下、ITサービス市場におきましては、顧客企業におけるIT投資は幅広い業種にわたり拡大基調が続いており、事業の拡大や競争力強化を目的としたIT投資への意欲は力強いものがあります。世界的な海外景気の下振れの懸念はあるものの、社会のデジタル化に対応するための既存システムのクラウド対応需要等、IT投資需要の持続的な拡大が期待されます。
当社グループにおける顧客企業の動向につきましては、製造業企業においては、基幹システムの再構築や事業基盤強化のための戦略的投資等、デジタル化に向けたIT投資需要は増加を続けております。金融業企業においては、海外オペレーション強化に向けた対応や不正取引・資金洗浄の検知・防止を目的とした投資需要が堅調に推移し、流通業企業においては、基幹システム構築や事業強化のためのIT投資需要が増加いたしました。
また、顧客企業の業務効率と生産性向上への強い意欲等を背景に、各種クラウド型ITサービスへの需要や、ソフトウェアのエンドオブサービスに対応する基幹システム再構築等の投資需要は継続しており、こうした動きのなかで、システムの再構築や戦略的IT投資需要は、今後も継続するものと考えております。
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し35,930百万円増加し、471,400百万円となりました。
(a) 流動資産
当連結会計年度末の流動資産は、現金及び現金同等物の増加等により、前連結会計年度末に対し28,735百万円増加し、272,834百万円となりました。
(b) 非流動資産
当連結会計年度末の非流動資産は、のれん及び無形資産の取得による増加等により、前連結会計年度末に対し7,195百万円増加し、198,565百万円となりました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に対し5,423百万円増加し、168,489百万円となりました。
(a) 流動負債
当連結会計年度末の流動負債は、有利子負債の減少等により、前連結会計年度末に対し2,831百万円減少し、105,535百万円となりました。
(b) 非流動負債
当連結会計年度末の非流動負債は、社債及び借入金の増加等により、前連結会計年度末に対し8,254百万円増加し、62,954百万円となりました。
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末に対し30,507百万円増加し、302,910百万円となりました。
主な増加要因は、親会社の所有者に帰属する当期利益40,461百万円によるものであります。
主な減少要因は、2023年3月期期末配当金(1株当たり26.00円)8,119百万円並びに2024年3月期中間配当金(1株当たり28.00円)8,747百万円によるものであります。
セグメント別資産の状況
(産業IT)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、3,419百万円増加し、62,154百万円となりました。
(金融IT)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、185百万円増加し、19,255百万円となりました。
(ITソリューション)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、7,383百万円増加し、33,164百万円となりました。
(ITプラットフォーム)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、1,539百万円増加し、44,039百万円となりました。
(ITマネジメント)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、4,338百万円減少し、74,801百万円となりました。
(その他)
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に対し、57百万円増加し、28,245百万円となりました。
当連結会計年度の業績につきましては、売上高は、IT投資需要の持続的な拡大を背景としたシステム開発と保守運用・サービスの堅調な推移によって前期比7.7%増の480,307百万円となりました。
営業利益は、ベースアップ等に伴う人件費や採用関連費用の増加に加え、営業活動費用が増加しましたが、増収に伴う増益と収益性の向上等により、前期比11.0%増の57,004百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては、前期比8.5%増の40,461百万円となりました。
当社グループはさらなる成長に向け、成長戦略として「サステナビリティ経営」を推進します。経営理念とマテリアリティを当社グループの存在意義としたうえで、社会と共に持続的発展を目指し、「2030年 共創ITカンパニー」の実現のため、「顧客や社会に対して、新たな価値を提供し続けるため、事業分野、事業モデルを再構築すること」、「社員の成長が会社の成長ドライバーと認識し、社員一人ひとりの市場価値を常に最大化すること」を、策定した中期経営計画の方針とし、総合的企業価値の飛躍的な向上に向け取り組んでまいります。
当連結会計年度の売上高は、前期比7.7%増の480,307百万円となりました。
また、サービス特性別の「システム開発」「保守運用・サービス」「システム販売」の各売上区分別売上高は次のとおりであります。
システム開発は、流通業向け基幹システム構築や製造業、金融業向け開発案件等の増加によって、売上高は前期比12.4%増の202,799百万円となりました。
保守運用・サービスは、マネジメントサービスや検証サービスが拡大したことにより、売上高は前期比7.2%増の188,340百万円となりました。
システム販売は、通信業の特定顧客向けネットワーク機器販売の減少による影響があり、売上高は前期比0.7%減の89,168百万円となりました。
当連結会計年度の売上総利益は、増収に伴う増益や生産性向上等により、前期比8.7%増の127,971百万円となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費については、前期比6.7%増の70,940百万円となりました。
当連結会計年度のその他収益(費用)は、前連結会計年度の173百万円の収益[純額]から199百万円減少し、26百万円の費用[純額]となりました。
以上により、当連結会計年度の営業利益は、前期比11.0%増の57,004百万円となりました。
当連結会計年度の金融収益(費用)は、前連結会計年度の1,062百万円の収益[純額]から2,000百万円減少し、938百万円の費用[純額]となりました。また、当連結会計年度の持分法による投資利益(損失)は、前連結会計年度の913百万円の利益[純額]から481百万円増加し、1,394百万円の利益[純額]となりました。
当連結会計年度の税引前当期利益は、前期比7.7%増の57,459百万円となりました。
当連結会計年度の法人所得税費用は、前期比5.5%増の16,874百万円となりました。
当連結会計年度の非支配持分に帰属する当期利益は、123百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比8.5%増の40,461百万円となりました。また、1株当たり当期利益は、前連結会計年度の119.44円から10.07円増加し129.51円となりました。
セグメント別業績の概要は次のとおりとなっております。なお、売上高につきましては外部顧客への売上高を表示しております。
(単位:百万円)
(産業IT)
流通業向け基幹システム再構築案件が増加したこと、通信業や、自動車・電機をはじめとする各種製造業向けの開発案件など、幅広い業種からの投資需要は拡大し、売上高は前期比13.5%増の162,424百万円、営業利益につきましては、前期比16.8%増の21,989百万円となりました。
(金融IT)
AML案件が銀行業や信販・リース業向けに拡大したことに加え、証券業向け開発案件の増加などにより、売上高は前期比7.0%増の64,170百万円となりました。営業利益につきましては、増収による増益に加えて、前期に発生した不採算案件の反動もあり、前期比8.9%増の7,517百万円となりました。
(ITソリューション)
基幹システム構築需要が主に製造業・流通業顧客から取り込めたこと、また、ProActive事業も堅調に案件が積みあがったこと、加えて、M&Aに伴うBPOビジネスでの新規連結の影響もあり、売上高は前期比11.0%増の73,832百万円となりました。営業利益につきましては、中期経営計画戦略のもと要員のリスキリングの施策強化を継続していることによる影響とBPOビジネスの公共向け案件の縮小により、前期比16.4%減の5,842百万円となりました。
(ITプラットフォーム)
通信業の特定顧客向けネットワーク機器の減収がありましたが、ネットワーク・セキュリティ製品の販売が堅調であったことや、製造業や学術研究機関向けのハードウェア販売の積み上がりがあり、売上高は前期比0.8%減の87,742百万円、営業利益につきましては、前期比2.6%減の12,571百万円と、凡そ前期並みとなりました。
(ITマネジメント)
クラウドシフト・リフト需要が継続していることから、マネジメントサービスにて金融業の顧客を中心に増収し、売上高は前期比6.1%増の65,190百万円となりました。営業利益につきましては、前年上半期において顧客に転嫁しきれなかった電気代高騰の影響が解消されたことに加え、産業IT、金融IT顧客からの基盤系案件の増加によるセグメント間取引が増えたことで、前期比35.2%増の9,942百万円となりました。
(その他)
売上高は前期比1.3%増の26,652百万円、営業利益につきましては、前期比32.9%増の1,815百万円となりました。
(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成に用いた重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.見積り及び判断の利用」に記載しております。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
なお、当社グループは受注実績を下記の基準にて従来より開示しております。
・役務サービス等に関する複数年契約について、基準日以降1年間の売上高を算出し、受注残高とする。
・保守サービス等の自動更新条項が付与された契約について、契約が継続されることを前提とし、基準日以降1年間の売上を算出し、受注残高とする。
上記の基準で作成した受注実績は以下のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績(直接販売)及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
※外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載はありません。
3 各報告セグメントの概要につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.セグメント情報」の「(1)報告セグメントの概要」をご参照ください。
4 その他には、収益認識におけるIFRSとの調整額294百万円が含まれております。
また、生産実績・受注実績・販売実績について、サービス特性により分類したシステム開発、保守運用・サービス、システム販売等に分類すると次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
上記各区分の概要は以下のとおりであります。
システム開発
広範な業種の顧客に対する、最新の情報通信技術と長年蓄積された豊富な業務ノウハウによる、一貫した信頼性の高いトータルソリューションサービスの提供
保守運用・サービス
専用データセンターの構築・運営管理並びに、長年の経験と培われたノウハウ、「ISO9001」をベースにした運用管理技術による、安全で、信頼性の高いコンピュータ、通信ネットワークシステムの保守・運用サービスなどの提供
システム販売
各メーカーの各種サーバ、クライアント機器、ストレージ機器、通信ネットワーク関連機器及びパッケージ・ソフトウェア商品等を組み合わせたソリューションの提供
なお、当社グループは受注実績を下記の基準にて従来より開示しております。
・役務サービス等に関する複数年契約について、基準日以降1年間の売上高を算出し、受注残高とする。
・保守サービス等の自動更新条項が付与された契約について、契約が継続されることを前提とし、基準日以降1年間の売上を算出し、受注残高とする。
上記の基準で作成した受注実績は以下のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ22,934百万円増加し、144,360百万円となりました。各キャッシュ・フローの増減状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果、増加した資金は67,900百万円(前期比24,307百万円増加)となりました。
主な増加要因は、税引前当期利益57,459百万円、減価償却費及び償却費21,433百万円、棚卸資産の減少による資金の増加1,809百万円によるものであります。主な減少要因は、営業債権及びその他の債権の増加による資金の減少1,622百万円、持分法による投資損益1,394百万円、法人所得税の支払による資金の減少16,155百万円によるものであります。
投資活動の結果、減少した資金は19,898百万円(前期比4,948百万円減少)となりました。
主な増加要因は、その他金融資産の売却及び償還による資金の増加32,177百万円によるものであります。
主な減少要因は、その他金融資産の取得による資金の減少36,273百万円、有形固定資産の取得による資金の減少4,602百万円、無形資産の取得による資金の減少4,991百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による資金の減少5,042百万円によるものであります。
財務活動の結果、減少した資金は25,881百万円(前期比3,193百万円増加)となりました。
主な増加要因は、借入による収入11,500百万円、社債の発行による収入9,950百万円によるものであります。主な減少要因は、社債の償還及び借入金の返済による支出21,950百万円、リース負債の返済による支出8,453百万円、2023年3月期期末配当金(1株当たり26.0円)8,119百万円及び2024年3月期中間配当金(1株当たり28.0円)8,747百万円の支払によるものであります。
・基本方針・資金需要の主な内容
中期経営計画における基本戦略を着実に推進するため、投資活動として自社知財の開発・拡充に向けた研究及び開発投資、経営基盤強化に向けた設備投資、先端技術研究を目的とした国内外ベンチャー企業との業務資本提携、先進技術者やコンサル人材等の育成・採用にかかる人財投資等を実行してまいります。また、成長領域における競争力強化に資する技術・知見・リソースの獲得を目的とした国内外のM&Aに関する検討も継続的に行っております。
・資金調達
これら投資活動に係る資金需要につきましては、基本的には営業活動によるキャッシュ・フローを源泉とする自己資金にて対応する考えでおりますが、必要に応じて、後述の強固な財務基盤を背景にした多様な資金調達(金融機関からの借入・シンジケートローン、各種社債の発行等)にて対応してまいります。
なお、当社グループの2024年3月末時点における銀行借入、社債発行等を通じた有利子負債が73,970百万円であるのに対し、資金は144,360百万円と有利子負債を上回る水準となっており、強固な財務基盤を実現しております。
また、外部資金調達能力につきましても、当社グループは、本報告書提出時点において、㈱日本格付研究所より長期発行体格付A+(安定的)を取得していることに加え、主要な取引金融機関と良好な取引関係を維持しており、当社グループの事業の拡大、運営に必要な運転資金、投資資金の調達に関しては十分な能力を有しているものと認識しております。
引き続き、財務基盤の強化、外部資金調達能力の維持・向上に向けた財務運営を行ってまいります。
・経営資源の配分・株主還元に関する考え方
手許の運転資金につきましては、当社及び国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、十分な流動性を確保するとともに、資金効率の最適化を図っております。
また、株主還元については、財務状況、収益動向、また将来の事業投資に備えての内部留保などを総合的に勘案した上で、成長を続ける当社グループのキャッシュ・フローを、将来の成長領域等への事業投資資金として最大限活用しながらも、同時に業績拡大に応じて配当性向を高めることで株主還元を拡充する方針です。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
自己資本比率 : 自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 : 有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済普通株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
該当事項はありません。
当社グループでは、国内はもとより欧米・アジアの各拠点と一体となりグローバルな視点から最新のIT動向を鋭敏に捉え、市場創造に向けて当社グループ全体で最新技術の導入と技術レベルの高度化・充実を図るべく、研究開発活動を推進しております。中期的な技術戦略に基づいた研究開発に取り組んでおり、社会環境やお客様の事業環境の変化・変容にも迅速・弾力的に対応する、より最適なソリューションやサービスを早期に実現いたします。また、中長期的視点での研究開発を推進するために専門組織を設置し、大学・研究機関等とも連携した活動を行っております。
なお、当連結会計年度の研究開発費は、
このような変化に対応し持続可能な成長を実現するためには、生産管理システムの柔軟性と拡張性が不可欠であり、当社はこの現状を踏まえ、業種別の独自ニーズに応える業務機能と開発基盤を備えた製造業向けソリューションatWillの機能拡充を行っております。これにより製造業が直面する課題の解決を助け、顧客の成功を支援しております。
近年、スマートフォンを中心とした顧客接点領域は大きな変化を続けております。一日のスマートフォンの利用時間は年々長くなり、日々の生活に欠かせないものとして位置づけられております。そのため、新しいシステムやサービスを提供する際には、モバイルアプリの提供は必須の検討要件となっております。
モバイルアプリは従来のシステム以上に、UI/UXによる顧客満足を求められ、また自社サービスにはコーポレートブランドを反映したデザインを検討する必要があります。拡大するモバイルアプリ開発需要に迅速に対応するため、以下の取り組みを進めております。
・SCSKデザインシステムを継承し、ブランドイメージを容易にアプリケーションに組み込むことができるよう、モ
バイルアプリ用デザイン標準とUIコンポーネントを開発
・変化に迅速に対応できるよう、モバイルアプリを再設計し、様々なOSで運用可能なクロスプラットフォームフレ
ームワークを開発
・アジャイル開発による継続的な品質向上や生産性の向上を可能にするため、静的解析ツールやテストフレームワ
ーク、生成AI技術を開発環境に組み込み、開発基盤として構築
当社グループでは、自動車のソフトウェア化に伴う開発の他にも空のモビリティ領域においては、SkyDrive社への出資と共に「空飛ぶクルマ」開発の一躍を担う活動をしております。
自動車の自動運転技術を応用し「空飛ぶクルマ」が安心・安全に空を飛び交えるよう、以下の取り組みを進めております。
・センシング技術(カメラセンサー、ライダー)による「画像処理活用の周辺認識機能」
・障害物認識後の「自動回避飛行制御機能」
・衛星測位システム(GNSS機能)とReal-time kinematicによる「安定飛行機能」
これらの取り組みは、「空飛ぶクルマ」の安定自律飛行で求められる機能に直結するものであり、空のモビリテ
ィ領域でも情報技術を活用し高度化、精度向上、機能追加を進めてまいります。
今後、空以外のモビリティ領域でも自動運転、電動化などを軸としたソフトウェア製品化やマルチモビリティ技術開発に継続して取り組む予定です。
④ 生成AIの利活用拡大を目指した研究開発の取組み
近年の生成AI技術の進歩に伴い、顧客からの生成AIに関する相談や引き合いが増えることを予想し、2023年5月に当社グループの全役職員が業務において、安全・安心に生成AIを体験・利用できる環境「SCSK Generative AI(SCSK-GAI)」を提供することで、顧客の生成AIに対する質問や要望に対応できる取り組みをしております。また同時に、役職員が正しく生成AIを利活用できるようガイドラインを整備することで、業務の効率化・生産性向上・製品/サービスへの適用・新規事業の創出に生成AIを活用しております。
とりわけ当社では、事前に社内文書などのドキュメントを専用のデータストアに格納し、そのデータストアと連携して生成AIが回答文を生成するチャットボットを導入しており、問い合わせ対応の工数削減や質問者の待ち時間を削減する効果を確認しております。業務の中で生成AIを利活用することでノウハウの蓄積ができており、お客様の価値向上に貢献できる生成AIサービス創出につなげることができております。
今後も、営業活動や開発業務での生成AIの利活用拡大、生成AI技術での社会課題の解決を目指し、生成AIの性能や処理速度の向上といった直近の課題を克服しながら、生成AIの研究開発を進めてまいります。