文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社は、㈱テレビ東京による地上波放送事業を中核として、BS放送(㈱BSテレビ東京)、CS放送(㈱エー・ティー・エックス)、そしてインターネットによる配信事業を総合的に運用してコンテンツの制作とメディアビジネス展開の戦略機能を担う認定放送持株会社です。
2024年4月のテレビ東京開局60周年を契機に、グループは新しい企業理念「心を温かく、時に熱く。一人ひとりに深く届け、 ちょっといい明日へ。」(パーパス=存在理由)、「『あたりまえ』に挑み、 まだ見ぬ『おもしろい』を共に創る。」(ミッション=果たすべき使命)などを制定しました。この企業理念を体現するため、報道、アニメ、バラエティ、ドラマ、音楽、スポーツ、イベントなど各分野で競争力のあるコンテンツを制作し、「ちょっといい明日」を実現させることで、テレビ東京グループの存在感を一段と高めていきます。
グループの成長戦略といたしましては、アニメ・経済報道・独自IP(知的財産)事業を一段と強化してさらに成長することを中心に据えました。コンテンツ力を新技術の活用などにより高めるとともに、IP事業を国際的に展開する「グローバルIP企業」へと進化します。同時に、新規事業の開発などでフロンティアを開拓し、収益源をさらに多様化させてまいります。
2023年の日本の広告費(電通調べ)は3.0%増の7兆3,167億円と過去最高となりました。テレビ広告(地上波・衛星メディア関連の合計)は、1兆7,347億円と前年より3.7%減少しました。一方、ネット広告は2019年にテレビ広告を抜き、2023年も前年比7.8%増の3兆3,330億円となりました。
当社は各ステークホルダー(視聴者、社会全般、株主、取引先、社員)への責任をバランスよく果たし、企業価値の向上を通じて満足の総和を高めていくことを基本方針としております。2020年代後半にROE(自己資本利益率)8%の達成を目指すとともに、中長期的には配当性向35%を目途とすることにします。当社は資本コストを含む様々な経営指標を適切に認識しつつ、コーポレートガバナンス・コードを着実に実行してまいります。
地上波放送事業を中核として、BS放送、CS放送、配信事業を一体的に運用し、放送・配信に加え、アニメ・経済報道・独自IP(知的財産)事業を一段と強化してさらなる成長を目指します。様々なデバイスでコンテンツを提供し、下記の経営戦略を着実に実施することで、放送と配信との相乗効果によりコンテンツの価値を高めていきます。
① アニメ事業の国際ビジネス機能を強め、「グローバルIP企業」に進化
アニメ事業はテレビ東京グループの強みであり、グローバルなコンテンツとして主に海外で大きな収益をあげてきました。アニメ事業を巡る競争が激化するなか、先行優位を維持しつつ、世界における「アニメのテレ東」の評価をいっそう高めるためにも、グループを挙げて同事業の拡大に全力を注ぎます。有力アニメ作品の権利獲得、コンテンツ制作+放送・配信、商品化、ゲーム化の好循環で事業を拡大して参ります。
アニメ事業の拡大に向け、㈱テレビ東京ホールディングスに2024年4月、アニメビジネス機能の強化を具現化する組織として「アニメ・IP戦略室」を設置しました。コンテンツやキャラクターなどの豊富な知的財産(IP)をリアルとデジタルの両面で活用し、海外商品化やゲーム化事業をさらに推進します。中国市場の維持に努めると同時に、重点開拓先を北米・アジア・中東などに定めます。
これまでの海外展開のノウハウを活かし、アニメ作品の海外展開を受託するビジネスを進め、アニメ業界の発展にも寄与したいと考えております。
② 配信事業は「テレ東BIZ」事業の拡大とAVODの営業体制の再構築へ
当社は、配信分野での収益を最大化するために、SVOD(定額制動画配信)とAVOD(広告付動画配信)の事業について、一体的に戦略を立案しています。配信のために必要な権利処理や収益管理などの実務を一括して効率化しているほか、放送とAVOD、SVODなど配信からのデータを最大限活用して、番組・コンテンツ制作に生かし、放送と配信双方の営業強化につなげています。
配信事業においては、「テレ東BIZ」を成長戦略の柱に据えて、報道局・配信ビジネス局一体で抜本リニューアルいたします。報道局は企業報道(ミクロ経済)やマーケット報道に注力し、報道の「デジタルファースト」を徹底して「経済映像報道ナンバーワン」にまい進します。
報道コンテンツに関してもリニューアルを実施しました。看板番組「WBS」「Newsモーニングサテライト」などは2024年4月から大幅改編し、バーチャルプロダクション(VP)技術を全面活用します。キャスターの刷新や現場取材の豊富な経済記者の積極的な活用などで、躍動感&臨場感のある経済ニュースへとさらに発展させる所存です。金曜日夜は「WBS週末版」として、その週の大きな経済ニュースを深掘りしています。
また、2024年度から「FAST(Free Ad-supported Streaming TV)」の実証事業を本格的に始めました。2024年度は年間3000本の動画を公開して国内外で収益力の高いコンテンツを開発し、2025年度以降の事業化を目指します。
さらに、2023年6月には、当社などが手掛けた動画配信サービス「Paravi(パラビ)」と動画配信大手「U-NEXT(ユーネクスト)」の統合により、国内勢首位の有料動画配信サービスが誕生しました。「U-NEXT」を運営する㈱U-NEXTとは包括的な戦略的業務提携を結んでおり、マーケティングからクリエイティブまで幅広い分野で協力を進めることで、売上・利益の最大化を目指しています。
引き続きTVerなどのAVOD事業も拡大します。
③ IPビジネスを拡大展開、AI新分野にも進出
㈱テレビ東京が権利を持つ「独自IP」を開発し、事業を拡大することにも力を注ぎます。2024年4月に㈱テレビ東京ホールディングスに「グループIP・新事業統括会議」を設置し、IP・新規事業の司令塔としました。㈱テレビ東京にも「IP・新事業推進会議」を設け、グループ横断で情報を集約し、具体的な施策を定めてスピーディーに事業を実行します
イベント局はIP事業局に改称し、イベント運営事業だけではなく、IPの開発や自社コンテンツと連携したイベント・ビジネスイベントなどを多角的に展開し、利益を拡大します。
テレビ東京グループを代表する独自IPである「シナぷしゅ」は、番組、商品化、映画、コンサートなど、中期計画を立てて利益を拡大する方針です。
ドラマ・バラエティなど番組と連動したIPビジネスについては、番組を活用したIP開発の専従チームを配信ビジネス局に設置し、ドラマIPのマルチ活用を強化します。Z世代に人気のイラストレーターと共同でIPを開発するほか、住友商事㈱と取り組む「エシカルメディアコマース」も事業化いたします。
2023年度から新規事業として始めたAIデジタルヒューマン事業「いしとほしプロジェクト」はキャラクターを量産し、アジアを中心にグローバル展開を進めます。
④ 放送事業の収益力強化について
放送広告収入はテレビ東京グループの最大の収益の柱です。放送を取り巻く環境は厳しくなると予想されますが、収益バランス重視の編成方針と新番組の開発などによる新規スポンサーの獲得、営業力強化により、地上波、BSともに放送収入を伸ばしていきます。
広告主やユーザーのニーズを汲み取るとともに、テレビ東京グループの優良な視聴者層を示す新しい指標を運用することで、放送事業の再成長を目指します。またVP技術による映像の魅力アップなどをテコに広告価値の引き上げを目指します。
⑤ 成長のための投資戦略と新規事業の開拓
テレビ東京グループが新たな分野の収益を強固なものとしていくため、2022年度下期から3年間で200億円の「成長投資枠」を設定していましたが、2024中期経営計画の策定に合わせて200億円の「成長投資枠」を新たに設定しました。アニメ事業などを軸にM&A等を検討するほか、デジタル投資も不可欠と考えており、基幹システムの刷新などDXを積極的に進めます。
2022年度から着手している、テレビ東京グループの基幹システムの全面刷新については、2024年度から一部の運用を開始します。新システムへの移行により、編成、営業、コンテンツ制作を支援する新たなソフトの導入や開発も柔軟で迅速な対応が可能になり、配信の収支、配信を含むコンテンツ別の総合収支など経営指標を機動的に算出できることになります。
さらに、AI、メタバースなどのXR(クロスリアリティ=新技術を活用した映像やイベント)、コンピュータグラフィックスを生かしてコンテンツDXを推進していきます。
新規事業については、社内公募でアイデアを集約しすみやかに実証実験につなげることで、事業化を模索します。
(5) 会社が対処すべき課題
① コーポレート・ガバナンス強化
コーポレート・ガバナンス(企業統治)の強化は社会の要請であり、テレビ東京グループにとっても重要な課題です。
当社は取締役の3分の1を独立社外取締役にしており、取締役会の諮問機関として独立社外取締役と代表取締役社長により構成する「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」を設置しております。両委員会とも独立社外取締役が委員の過半数を占め、独立社外取締役を委員長に選任しています。委員会は㈱テレビ東京ホールディングスの取締役の人事案や報酬の方針などについて議論し、取締役会に答申しています。
また、代表取締役社長の助言機関として、社外取締役と代表取締役が出席する「経営懇談会」を設けております。「人事諮問委員会」「報酬諮問委員会」「経営懇談会」があわせて機能することでコーポレート・ガバナンスを強化し、経営の透明度を高めてまいります。
② 気候変動リスクへの対応
当社グループは、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置して、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に対してグループ全体で取り組んでいます。気候変動への対応については、消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO2排出を相殺できる「J-クレジット」等の活用を組み合わせて2023年度にグループ全体のCO2排出量の実質ゼロを達成しました(対象はScope1とScope2)。当初は「2024年度末までのCO2排出ゼロ」を目標に掲げていましたが、1年前倒しで実現しました。
また、当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同し、TCFDが提言するフレームワークを活用して定期的に情報開示をしています。複数の将来シナリオを用いて気候変動が事業に与えるリスクと機会を評価し、気温上昇に伴う事業活動への恒常的な悪化と、緊急的かつ頻発の恐れのある自然災害の影響を分析してBCP(事業継続計画)体制をグループ全体で構築しています。
世界的な課題となっている気候変動リスクへの対応はメディアグループとしても、企業としても重要な課題の1つと認識しています。当社グループではSDGs(持続可能な開発目標)に本格的に取り組むため、国連が報道機関に協力を呼び掛ける「SDGメディア・コンパクト」に署名・加盟しております。報道機関だからこそ出来る取り組みとして、放送や配信、イベントなどを通じてSDGsを伝えてサステナビリティの浸透に取り組んでいます。
③ 人材の多様性に向けた取り組み
テレビ東京グループは女性採用に積極的に取り組んでおり、中核会社である㈱テレビ東京における最近の新卒採用の男女数はおおむね同数で、2024年4月時点の女性社員比率(専門社員を含める)は30.0%となっております。また、女性管理職比率は21.1%となっていて2017年度末の11.2%から増加基調にあり、2025年度末には20%台半ばに引き上げることを目指します。㈱テレビ東京の外国籍の社員は11人が在籍し、今後も事業展開に合わせて採用増に取り組みます。年間採用数のうちキャリア採用(中途採用)の比率は53.8%(2023年度)であり、クリエイティブな人材などの即戦力を随時採用し、組織の活性化と社員全体のスキル向上を進めております。
組織の潜在能力を引き上げるには人材の多様性が不可欠であると考え、多様な社員が働きやすい環境の構築に努めています。在宅勤務制度、フレックスタイム制度、育児時短勤務制度、パートナーシップ制度などを通じてすべての社員が働きやすく、能力を発揮できる制度の充実を目指します。
なお、当社の女性役員比率は10.7%、㈱テレビ東京の女性役員比率は22.6%となっております。(2024年6月20日時点)
※女性役員比率は社内における指導的な役割を担う者として、取締役、監査役、執行役員、フェロー等を対象として算出しております。
④ 人的資本への投資
当社は人材を成長力の源泉と位置づけ、人的資本への投資を強化してまいります。2024年度は基本給を引き上げるベースアップを9社で実施し、㈱テレビ東京では定期昇給分と合わせて平均5.2%の賃上げを行いました。2024年度~26年度の中期経営計画では、業績向上分の社員への還元やリスキリングの強化などを一層進め、人的投資の総額をテレビ東京グループ全体で35億円拡充する方針です。
⑤ 人権方針の策定など人権尊重の取り組み
テレビ東京グループは人権尊重の重要性を改めて認識するとともに、社会から信頼される企業集団として認められるよう、「国際人権章典」や「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」といった国際規範に加え、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」「OECD多国籍企業行動指針」および政府による「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」に基づき、2023年11月に「人権方針」を定めました。テレビ東京グループはメディア企業としての責任を果たすための「テレビ東京グループ行動規範」における「行動基準」や「報道倫理ガイドライン」で、既に人権尊重の考え方を盛り込んでおりましたが、新たに人権方針を設けることで人権に対する考え方をより明確にしました。同時に人権方針の推進のため「人権委員会」を設置し、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行していきます。
⑥ 激動する国際情勢への対応
国際通貨基金(IMF)によると世界景気の成長は続く見通しですが、金利上昇や原材料高による減速懸念もあります。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化し、イスラエルのガザ地区侵攻に伴う中東情勢の緊迫化は、世界経済に暗い影を落としています。米中間の緊張が高まり、中国や台湾のビジネス環境の変化を注視する必要もあります。テレビ東京グループは基本的人権を尊重しつつ、公平・公正な報道姿勢を貫くことにより、自由で豊かな社会の実現に貢献することを目指します。
⑦ 景気の下振れリスク
インフレ長期化、金利上昇、中国経済の減速、サプライチェーン(供給網)混乱などにより、世界経済の下押し懸念があります。国内では、物価高による消費マインドの低迷、急激な為替の変動、資源高による企業業績への圧迫などにより、景気の下振れリスクが指摘されています。経済の不透明感が増すなかでも、テレビ東京グループは着実な利益の計上に努めます。
私たちは、放送の公共的使命を自覚し、責任あるメディアとして文化の創造に貢献することを目指します。企業価値の最大化に向けて、すべてのステークホルダーと良好な関係を築いた上で、気候変動への対応にも努めながら長期安定的に発展していくことをめざします。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティにおける当社の重要課題>
① 責任あるメディアとして文化の創造・地域の発展に貢献する
② 中立・公正なコンテンツを作り、豊かな生活と民主主義を守り育てる
③ 多様性に富んだ持続可能な社会を創造する
① ガバナンス
当社は、地球環境問題をはじめ、人権の尊重、従業員の健康、労働環境への配慮や公正・適切な処遇を実現するための啓蒙活動などサステナビリティを巡るあらゆる課題に対してグループ全体で取り組むために、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。「サステナビリティ委員会」はグループ全体のサステナビリティ全般の方針や目標・計画などを立案、実行します。取締役会は「サステナビリティ委員会」から活動状況や重要事項について報告を受け、気候関連課題への対応方針および実行計画等についても審議・監督を行います。
② リスク管理
当社グループのリスク管理体制は、「リスク管理・コンプライアンス委員会」が中心となり、「リスク管理規程」に基づき、気候変動リスクを含めたグループ内のリスク情報を一元的に集約し、対応が必要と認められたリスクについては適切な予防対策を講じています。特定したリスク・機会はサステナビリティ委員会を中心に議論し、重要度の高いものについては「リスク管理・コンプライアンス委員会」へ報告されるほか、リスク管理の状況や重大なリスクの判断に関しては、取締役会へ報告されます。
当社グループは、気候変動に関するリスクを全社的な重要リスクの一つと位置付けており、気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、複数のシナリオに基づく分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しています。
当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」へ賛同しており、シナリオ分析の結果については、TCFDが提言するフレームワーク(①ガバナンス ②リスク管理 ③戦略 ④指標と目標)を活用した情報開示を行っています。
当社グループは2021年度からCO2を排出しない再生可能エネルギーの導入を推進しています。消費電力の削減や再生可能エネルギーの導入、自社のCO2排出を相殺できる「J-クレジット」等の活用を組み合わせて、2023年度にグループ全体のCO2排出量の実質ゼロを達成しました(対象はScope1とScope2)。当初は「2024年度末までのCO2排出ゼロ」目標に掲げていましたが、1年前倒しで実現しました。
① 人材の多様性確保、人材育成の方針
テレビ東京グループは「まだ見ぬおもしろい」を常に追求し新たなコンテンツを生み出してきました。失敗を恐れず挑戦できる社風を大切にして、これまでのヒット企画の多くは失敗の中から生まれたものです。驚きや感動に溢れたコンテンツを視聴者の皆様にお届けし、放送だけでなく配信やEC・イベント展開、そして次の成長の柱と捉えているIPビジネスの開発・拡大など国内外へとビジネスを広げていくその創造力、開発力は、人材の力によるものです。2023年秋に横浜・赤レンガ倉庫で開催した開局60周年イベントには14万人ものテレ東ファンにお越しいただき大盛況でした。今後も世界中の人たちに喜んで頂けるモノづくりを目指し、社員一人一人のスキル向上や潜在能力を引き上げるため、テレビ東京グループ全体で2026年度までの3年間に35億円の人的投資を拡充します。「社員のリスキリング」「業績向上分の社員への還元」「キャリア採用の推進」「健康の増進」などを強化する方針です。その結果、社員がスキルアップし、高いモチベーションをもって活躍することで、魅力あるコンテンツの創造、ビジネスの拡大、そして会社の成長につながると考えています。
また㈱テレビ東京を中心に2024年4月から事業・業務を徹底的に見直す「棚卸しプロジェクト」を開始、システムのDX化や独自の生成AIの利活用と併せて、業務の改廃で生産効率の向上を目指し、成長領域への人員集中につなげます。人材の多様性を確保することも成長の重要なカギと考えています。従業員、管理職、役員などにおける女性比率を高め、海外展開等をより進めるため外国籍社員の積極的に採用、これまでにない斬新な発想を生み出し、各種事業の成長・発展につなげてまいります。㈱テレビ東京では2025年度新卒採用から高等専門学校からの応募可能とし、技術系の新卒学生へ門戸を拡げました。
また高度な専門性を持ち特定分野において貢献する職位として「フェロー」を2024年度から新設、プロフェッショナル職にも役員と同等の待遇を用意し優秀なクリエイターなどが長期的に活躍可能となる環境を整備しました。
なお、当社の女性役員比率は10.7%、㈱テレビ東京の女性役員比率は22.6%となっております。(2024年6月20日時点)
※女性役員比率は社内における指導的な役割を担う者として、取締役、監査役、執行役員、フェロー等を対象として算出しております。
② 社内環境整備の方針
人材育成、多様性の推進に向けて社内の環境整備に取り組みます。
㈱テレビ東京では、2024年4月に人事部の「研修チーム」を「人財開発チーム」に改称し、更なる研修制度の充実を図っています。昨年度に教育体系を見直し、研修メニューの拡充を図り社員に対して学びを積極的に推進しており、テレビ東京グループ全体では従来の各層別研修に加えて、マネージメント力を養う研修、各事業分野に必要なスキルを身に着ける研修などメニューの充実を図り、社員のキャリア形成を支援しています。人権の尊重やダイバーシティ・インクルージョンなどの多様性や生成AIなどのテーマで開催、社員の意識向上を促しています。また、㈱テレビ東京では2024年からは高度な専門知識や技能の習得を目標とした研修・学習費用の全額補助を開始、全社で研修以外の自己研鑽を目的とした学習にも取り組める環境を整えています。さらに、会社や職務に対する社員の意識を把握するため「エンゲージメント調査」を継続的に実施しています。調査結果をもとに職場環境等を改善し、社員が安心して活躍できる職場づくりにつなげます
社員がやりがいを感じ活躍できる環境を整えるために、在宅勤務やサテライトオフィスを恒常的に利用できる環境を整えています。フレックスタイム制も導入し、自身のライフスタイルに合わせた勤務時間の設定が可能なほか、2022年度には週休3日制度をトライアルで導入するなど、社員に対してワーク・ライフバランスを重視した新しい働き方を提案しています。
育児と仕事の両立支援としては、2歳半まで取得できる育児休業制度、小学校3年生まで利用できる時短制度を導入しているほか、看護休暇、不妊治療休暇なども整えています。
2023年度には「パートナーシップ制度」を導入しました。「同性パートナー」について法律上婚姻関係にある配偶者と同等の社内制度や福利厚生制度を利用できるようになりました。
③ 指標及び目標
テレビ東京グループの中核企業である㈱テレビ東京の女性社員比率は、2024年4月時点で30.0%、最近の新卒採用における男女比はおおむね同数となっています。女性管理職比率も年々上昇しており、2024年4月時点では21.1%で、2025年度には20%台半ばに引き上げることを目指しています。㈱テレビ東京には2024年4月現在、外国籍の社員が11名在籍しています。アニメなどの海外展開では英語圏だけでなく中国、韓国など事業展開に沿った外国籍社員の採用が重要となってきており、業務の拡大方針に沿って外国籍社員の採用に積極的に取り組んで参ります。キャリア人材の採用にも力を入れており、2023年度は過去最高の28名(テレビ東京グループ全体では57名)のキャリア採用を行いました。これにより採用者のうちキャリア採用の比率は53.8%と新卒を上回りました。従来の制作現場で活躍するクリエイティブ人材だけでなく、マーケティング、デジタル、投資などのスキルを持つ不足人材を即戦力として採用し、活躍してもらうことで、組織の活性化と社員全体のスキル向上を目指しています。また2023年秋にはこれまで企業認知が低かった理系学生に向けた採用イベント「FU×TECHコンテスト」を初開催し、テックカンパニーとしての認知と高度人材を獲得、採用の新たな試みをしました。
また社員がいきいきと活躍するために心身の健康管理にも注力しています。㈱テレビ東京では年2回、健康診断を実施しています。労働安全衛生法では、企業に対して常時雇用する全従業員に年1回の健康診断を義務化していますが、2023年度の受診率は2年連続で100%でした。また、人間ドック、脳ドックの一部費用について会社の補助制度を設けています。ストレスチェックの受検率は、2023年度は83.1%で、心の健康を保つために、心療医など専門家によるカウンセリングを受けられる体制も整えています。2023年にはがん対策推進企業アクションに参加、2024年度からマンモグラフィー検査を定期健康診断に導入し社員のがん予防を支援しています。
今後も健康診断受診率100%を維持するとともに、社員の心と体の健康を保つ努力をすることで、社員のエンゲージメント、モチベーションアップにつなげていく方針です。
当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。なお、以下の事項のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクをすべて網羅したものではありませんのでご留意ください。
(1) テレビ放送事業に関するリスクについて
① テレビ広告収入について
当社グループの地上波放送事業およびBS放送事業における広告収入は、総売上高の約6割を占めています。
しかし、国内における少子高齢化に伴う低成長という要因に加えて、メディアの多様化やインターネット広告の拡大など外部環境の変化により、広告収入は漸減傾向となっています。
当社グループは、こうした広告市場の動向を注視しながら、マーケティング機能の強化に加えて広告主ニーズへの対応や新たな営業手法の開発等により、テレビ放送による広告収入の向上を目指してまいりますが、今後の日本経済のマクロ動向や広告市況の動向によりテレビ広告収入が大幅に縮小した場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② 視聴環境の変化について
通信環境の進化、スマートフォンやタブレットそしてコネクテッドテレビの普及により、定額制及び無料広告付き動画配信サービスが身近なものとなり、視聴スタイルの多様化が進むとともに、放送番組のインターネット視聴やタイムシフト視聴も加速しています。ユーザーの可処分時間の奪い合いが激化する中で、放送事業においては、リアルタイム視聴率の獲得は引き続き重要な課題です。
当社グループは、テレビ放送を軸とし、視聴者に受け入れられ、当社グループのブランドイメージ向上につながるコンテンツの創出に努めてまいりますが、今後の視聴動向に想定外の変化が生じた場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) テレビ放送事業以外に関するリスクについて
① アニメビジネスにおける海外展開について
当社グループはアニメビジネスを重要な収益の柱と位置付けており、海外への配信・商品化等でのライセンス展開も積極的に行っています。進出先の法制度やコンテンツ産業政策の変更等によるリスクがあり、計画通りにコンテンツの制作や販売等ができない場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
海外展開に当たっては、現地取引先との連絡を密にし、コンテンツ産業政策に関する現地の最新情報を収集して、可能な限り万全な契約締結等によるリスクの最小化をすすめるとともに、ビジネス展開をはかる地域が偏らないように努めてまいります。
② インターネット動画配信事業について
スマートフォン、タブレットといった携帯型高機能端末の普及に伴い、通信を利用した映像コンテンツへの接触頻度はますます拡大しています。
当社グループは広告付き動画配信として、2015年から「ネットもテレ東」を開始し、同年10月には民放公式のテレビポータルサービス「TVer」によるサービスにも着手しております。他の放送事業者等との共同事業として、2018年4月にサービスを開始した「Paravi(パラビ)」については、動画配信大手「U-NEXT(ユーネクスト)」との統合により、国内勢首位の有料動画配信サービスに発展しました。また、2021年4月に経済動画配信サービス「テレ東BIZ」をスタートさせました。そして2022年4月からは在京他局と並んで「テレ東系リアルタイム配信」を開始し、日本全国でプライムタイムのほとんどの番組をインターネットで視聴できるようになりました。
当社グループは今後も、映像メディアの多様化に対応したコンテンツの開発やビジネスモデルの構築に取り組んでまいりますが、これら事業は成長分野であると同時に競争環境も厳しく、事業が想定通りに進捗しない場合や動画配信事業の市場環境が大きく変動する場合には投下資本の回収が困難になり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
③ イベント事業について
当社グループは、展覧会、スポーツ・演劇・音楽のライブのほか、オンラインとリアルを組み合わせたイベント事業などに積極的に取り組んでいます。これらイベント事業については、過去の実績や他社事例を踏まえた慎重な収支計画のもと出資判断を行っていますが、不測の事態によりイベント自体が開催できなくなる場合や大幅な計画変更を余儀なくされる場合、イベントのチケット収入や関連グッズの販売収入等が、当初計画した収益を確保できないような場合には、当社グループの経営成績および財政状況に影響を与える可能性があります。
また、イベントの実施にあたっては、準備段階から事故等のないよう細心の注意を払うとともにイベント保険を付保するなどの危機管理を行っていますが、万が一、事故等が発生した場合には損害賠償責任を負う場合があり、また、社会的な信用の低下を招く可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 通信販売事業について
当社グループは、放送およびインターネットを通じ様々な通信販売事業に積極的に取り組んでおります。販売する商品の選定および品質管理については細心の注意を払っており、商品に関する表示についても適正な表示に努めております。
しかしながら、当社グループが販売した商品に何らかの不具合や欠陥があった場合、返品や商品の交換、損害賠償等の責任を負う可能性があります。また、販売において不適切な表示があった場合には法令上の処分を受ける可能性があります。このような場合には、当社グループの社会的信用が低下するとともに、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤ 著作権等の知的財産権について
当社グループが制作するテレビ番組等の映像コンテンツは、原作者、脚本家、音楽の作詞家・作曲家、実演家、レコード製作者など(以下「著作権者等」といいます)多くの人々の知的創造の結果としてそれらの人々に生じた著作権や著作隣接権などが組み合わされた創造物になります。
当社グループは、こうした映像コンテンツを、地上波やBS、CSでの放送だけでなく、インターネットによる配信、DVDやBlu-ray Discでのパッケージ化、コンテンツから派生するキャラクターの商品化、出版化、またはイベント事業の実施などにより、国内および海外において多岐に展開しています。
しかしながら、これにはテレビ番組の制作とは別途に多くの著作権者等の許諾を得ることが必要な場合があり、その権利処理のために多くの時間と費用が必要となる可能性があります。また、結果として権利者等の理解を得られず、円滑に映像コンテンツの利用ができない場合や、意図せず著作権者等に対して不適切な対応をとった場合、収益の減少や訴訟等に伴う費用の増加などが想定され、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
このほか生成AIの普及に伴い、当社グループは「AI委員会」を設置し、AIの利活用を進めるための ガイドラインの整備や研修を実施しています。しかしながら、AIによる生成物が著作権など第三者の権利を侵害するおそれがあり、その場合は当社グループの社会的信用が低下するとともに、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) 設備・保有財産に関するリスクについて
① 設備について
当社グループは、放送事業の基幹システムの更新、コンテンツ制作力向上のための放送設備の更新に加え、動画配信事業に伴う新たなシステム開発を行うなど、メディアの多様化に対応するための設備投資や投融資を計画的に実施してまいります。
これらのシステムの導入にあたっては初期費用、運用費用、改修費用等を慎重に精査し、事業における優先順位を勘案して「グループ設備投資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会の決議により設備投資判断を行います。しかしながら、システム開発の遅延のほか、技術革新などにより投資したシステムが陳腐化することにより追加的な投資が必要となる場合や、投資計画に見合うだけの十分な利益が確保できない場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
また、近年サイバー攻撃の手口が高度化・巧妙化しており、各種システムのセキュリティリスクは高まっています。当社グループではサイバーセキュリティ推進会議を設置して様々な対策を講じておりますが、これを超える新たな脅威が発覚し、対策のための費用が高額になった場合、あるいは個人情報、機密情報の漏洩リスクが顕在化した場合には、当社グループの経営成績及び財務状態に影響を与える可能性があります。
② 投資有価証券の時価評価について
当社グループは、取引先との関係促進を主な目的として、投資有価証券を保有しております。
新規の投資案件はリスクとリターンを勘案し投資判断を行うとともに、既に保有している投資有価証券についても、投資先との取引や協業の状況および企業業績を精査し、継続保有の是非を定期的に判断することとし、「出資委員会」においてこれらを審議のうえ、最終的に取締役会で決議しています。
しかしながら、これらの投資先の業績や市場評価を正確に予測することは困難であり、投資有価証券の時価評価額の増減に大きな変動があった場合には減損処理等の措置が必要となる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 資本提携・M&Aについて
当社グループは、将来の成長力強化に資するような企業との資本・業務提携やM&Aを積極的に進めてまいります。新規の資本出資やM&Aに関しては、当社グループの事業との親和性、シナジー効果等を十分に考慮し、投資リスクと効果を慎重に見極めたうえで「出資委員会」による審議を踏まえて最終的に取締役会の決議により投資判断を行います。
M&Aを行うに当たっては、対象企業の財務状況や事業の成長性についてデューデリジェンスを行い、十分なリスク対策を行うよう努めていますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査では把握できない問題が生じる可能性もあります。また、事業環境の変化その他の理由により、対象者の事業展開が計画通りに進捗しない場合には、減損リスクが発生するなど、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(4) 災害に関するリスクについて
当社グループは、災害発生時において報道メディアに求められる役割を踏まえ、携わる社員・スタッフの安全を確保しつつ放送の継続が重要であると考えています。また、放送事業者は放送法により、災害が発生した場合またはそのおそれがある場合に、その予防または被害軽減のための放送を義務付けられており、大規模な災害が発生した場合は、予定されていた番組の放送を取り止め、緊急に報道特別番組を放送することがあります。
このような場合、CM放送やテレビ通販番組の休止に伴い、放送事業や通信販売事業の収入が減少する場合があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(5) 法的規制等に関するリスクについて
① コンプライアンスについて
コンプライアンスの観点から当社グループが対処すべき分野は、当社グループの役職員および派遣社員・スタッフによる放送事故や不祥事、不適切な内容の放送、コンテンツの制作過程における他者の権利侵害を含むトラブルや事故、また、個人情報に関する事故や下請代金支払遅延等防止法への抵触、さらにインサイダー取引の禁止など、多岐に及んでいます。このほか2023年には取引先における人権侵害の問題も浮上しました。
当社グループでは、「テレビ東京グループ行動規範」をはじめとし「個人情報保護基本規程」「下請法対応マニュアル」「インサイダー取引防止に関する規程」等のルールを定め、定期的な研修等でその周知・徹底を行っています。また、当社の「リスク管理・コンプライアンス委員会」において当社グループ内のさまざまなコンプライアンスリスク低減のための検討をしています。
さらに人権侵害のリスクに対処するため、2023年11月には「人権方針」を定め、人権に対するグループとしての考え方をより明確にしました。同時に人権方針の推進のため、テレビ東京ホールディングスに「人権委員会」を設置し、取引先を含めた人権侵害の予防や改善に取り組む「人権デューデリジェンス」を実行していきます。
当社グループは、このように不祥事やトラブル、法令違反等への対策を講じていますが、万が一、コンプライアンスに抵触する事態が生じた場合には、当社グループの社会的信用が低下し、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
② テレビ放送事業に関する法的規制について
当社グループの主たる事業であるテレビ放送事業は、放送法、電波法等の法令に規制されています。
このうち放送法は、放送の健全な発展を図ることを目的とし、番組編集の自由や放送番組審議機関の設置などを定めています。また電波法は、無線局に対する免許制度をはじめ、電波を利用するための基本が定められています。
当連結会計年度末において、免許の取消し等の処分を受けることを予測すべき事実はありません。しかしながら、仮に法令で定める免許要件に適合しなくなった場合には、再免許が取り消される可能性があります。このような場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
③ 認定放送持株会社に対する法的規制について
認定放送持株会社は、放送法による認定を受けることにより、複数の地上放送局とBS・CS放送局を子会社として保有することが認められており、当社は、㈱テレビ東京、㈱BSテレビ東京を子会社とする認定放送持株会社として認定を受けています。
これにより、当社は、グループとしての経営の効率化や財務基盤の強化を進めてまいりますが、今後、当社が放送法で定める認定放送持株会社の基準を満たさなくなった場合には、認定を取り消される可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
④ 外国人が取得した株式の取扱いについて
放送法により、外国人等が直接間接に占める議決権の合計が、当社の議決権の5分の1以上を占めることとなる場合は、認定放送持株会社としての認定が取り消されることになります。このため放送法では、このような状態に至る場合、当社は、外国人等が取得した当社株式について、株主名簿に記載・記録することを拒むことができ、その議決権は制限されます。ただし、株主名簿に記載・記録されない株式に対しても配当を支払います。
なお、外国人等の有する議決権の割合が100分の15に達した場合は、放送法に基づきその割合を公告しますが、当連結会計年度末において、当社は公告をすべき状況にはありません。
⑤ 個人情報の取り扱いについて
当社グループは、番組出演者、番組観覧者、視聴者の他、インターネット事業の会員や通信販売事業の顧客、イベント参加者などに関する個人情報を保有しています。これらの個人情報の取扱いについては、関係法令を遵守するとともに社内ルールに基づいた安全管理を徹底し、十分な注意を払っています。
しかしながら、昨今のサイバー攻撃の手口は高度化・巧妙化しており、不正アクセスや不正利用などにより情報の外部流出が発生した場合には、社会的信用が低下し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(単位:百万円)
当連結会計年度(2023年4月~2024年3月)の日本経済は、多くの業種で価格転嫁が進み、企業の収益が改善したほか、インバウンドの増加などにより企業の景況感は回復基調が維持されました。一方、物価の上昇で家計の景況感が低下していることに加え、人手不足の深刻化、ウクライナや中東情勢の悪化、米中対立など不安定な国際情勢も相まって、先行きの不透明感が払しょくされない状況が続いています。
こうした状況のなかで、当期においては、放送収入の伸び悩み等が影響し、売上高は前年同期比1.6%減の148,587百万円、営業費用は、1.4%減の139,750百万円となりました。この結果、営業利益は4.3%減の8,836百万円となりました。経常利益は、持分法投資損益の改善などで2.4%増の9,599百万円、また親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式売却の効果で0.2%増の6,736百万円となりました。経常利益、当期純利益につきましては過去最高を更新いたしました。
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
(資産)
流動資産は88,758百万円、前連結会計年度末に比べて3,054百万円増加しております。受取手形及び売掛金、その他がそれぞれ3,528百万円、864百万円増加した一方、現金及び預金が1,587百万円減少したことが主な要因です。
固定資産は58,335百万円、前連結会計年度末に比べて4,106百万円増加しております。無形固定資産、投資その他の資産の投資有価証券がそれぞれ1,985百万円、3,274百万円増加した一方で、有形固定資産が964百万円減少したことによるものです。
(負債)
流動負債は43,606百万円、前連結会計年度末に比べて1,764百万円増加しております。未払法人税等、その他がそれぞれ1,241百万円、1,889百万円増加した一方、支払手形及び買掛金、未払費用がそれぞれ374百万円、804百万円減少したことによるものです。
固定負債は4,219百万円、前連結会計年度末に比べて520百万円減少しております。リース債務が187百万円増加した一方、長期未払金、退職給付に係る負債がそれぞれ443百万円、210百万円減少したことが主な要因です。
(純資産)
純資産は99,268百万円、前連結会計年度末に比べて5,917百万円増加しております。利益剰余金、その他有価証券評価差額金がそれぞれ4,556百万円、2,013百万円増加した一方、自己株式の取得等により731百万円減少したことが主な要因です。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、1,634百万円減少となりました。その結果、当連結会計年度末の資金残高は36,153百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(単位:百万円)
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は6,471百万円、前年同期比41.9%減少となりました。
これは主に、法人税等の支払額が3,046百万円の減少、契約負債の増減額が844百万円の収入増加となったものの、売上債権の増減額、未払費用の増減額がそれぞれ5,830百万円、3,779百万円の支出増加となったこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は4,706百万円、前年同期比43.5%減少となりました。
これは主に、無形固定資産の取得による支出、有形固定資産の取得による支出がそれぞれ706百万円、583百万円の増加、定期預金の預入による支出が3,977百万円の減少、投資有価証券の売却による収入が1,479百万円の増加となったこと等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は3,414百万円、前年同期比8.7%増加となりました。
これは主に、配当金の支払額が518百万円の増加となったこと等によるものです。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注1)自己資本比率 : 自己資本 ÷ 総資産
時価ベースの自己資本比率 : 株式時価総額 ÷ 総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 : 有利子負債 ÷ キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー ÷ 利払い
(注2)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
(注3)株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出して
おります。
(注4)キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フ
ローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち
利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結
キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(a) 生産実績及び受注実績
当社グループの取引形態は一般的な製造業等における「生産」や「受注」といった概念が存在しないため記載しておりません。
(b) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等
当社グループは、放送を軸に配信とアニメの3事業の相乗効果を発揮させてコンテンツの価値を最大化する「トライブリッド」を戦略の中心に据え、「全コンテンツ・全配信」を掲げてきました。当連結会計年度においては、テレビ広告市況の低迷が影響し、放送事業から得られる収益は前年に及ばなかったものの、動画配信やアニメ関連事業は好調に推移し、前年を上回りました。
この結果、売上高は前年同期比1.6%減の148,587百万円、営業費用は、1.4%減の139,750百万円、営業利益は4.3%減の8,836百万円となりました。経常利益は、持分法投資損益の改善などで2.4%増の9,599百万円、また親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式売却の効果で0.2%増の6,736百万円となりました。経常利益、当期純利益につきましては過去最高を更新いたしました。
また、当社は2023年5月11日開催の取締役会において、当連結会計年度よりセグメント区分を変更することを決議いたしました。
前連結会計年度において「地上波放送事業」「放送周辺事業」「BS放送事業」「コミュニケーション事業」と区分しておりましたが、当連結会計年度より「地上波・BS放送事業」「アニメ・配信事業」「ショッピング・その他事業」の3つを報告セグメントとしております。
当連結会計年度におけるセグメント別の業績は以下の通りです。なお、前連結会計年度の数値については変更後の区分により作成したものを記載しております。
(地上波・BS放送事業)
(単位:百万円)
地上波・BS放送事業はテレビ東京グループ各社が行う放送事業となっております。
①地上波放送事業(㈱テレビ東京)
放送事業収入(売上高)の合計は4.0%減の76,096百万円となりました。
このうち番組提供のスポンサーから得られるタイム収入は、系列局を通じた全国放送(ネット部門)において前年割れとなりました。10月以降の番組編成の改編に伴い営業企画番組が終了したことや、ゴールデン帯に放送される番組のスポンサー減などが主な要因です。一方、首都圏放送(ローカル部門)は、新しいセールス施策である時報CM企画や180秒CM企画が決まるなど、前年同期を上回る売上高となりましたが、ネットとローカルを合わせたレギュラー部門全体では前年に届かない結果となりました。特別番組部門は、「世界卓球」などのスポーツ中継や「テレ東60祭」関連のセールス、今年初めて実施した「テレ東系旅の日」のセールスなどが好調となり前年を上回りましたが、タイム収入全体では1.9%減の43,215百万円となりました。
スポット収入は、インバウンド消費の増加などにより『交通・レジャー』や『飲料』などの業種・企業からの出稿が増加しましたが、『官公庁・団体』『流通・小売』『外食・各種サービス』などにおいて出稿減となりました。また、個人視聴率の低下傾向が影響し東京地区の広告市場規模は前年同期比5.8%減となり、㈱テレビ東京も厳しい状況が続いております。特に前年シェアの高かった『官公庁・団体』や『流通・小売』などの広告主からの出稿が減少したことで、東京地区における㈱テレビ東京のシェアが相対的に低下しました。この結果、スポット収入は9.1%減の26,290百万円となりました。
地方放送局などへの番組販売では、他系列の地方放送局において、スポーツ中継などの特別番組の編成が大幅に増加し、全体として番組購入が減少する傾向となりました。番組別では、「YOUは何しに日本へ?」や「ありえへん∞世界」など販売が好調に推移した番組はあるものの、番組販売収入は1.1%減の4,348百万円となりました。
コストの面では、放送収入の減少に伴う代理店手数料の減少などにより、放送事業の費用は6.1%減の59,653百万円となりました。
前年同期比では、費用が収入以上に減少したため、㈱テレビ東京単体の放送事業利益は4.5%増の16,443百万円となりました。
②BS放送事業(㈱BSテレビ東京)
BS放送事業収入(売上高)の合計は6.6%減の15,744百万円となりました。
このうちタイム収入は、世界卓球を中心としたスポーツや年末年始、猫の日などの特番セールスで売上を伸ばしましたが、4月以降の一社提供レギュラー番組の終了やレギュラー番組のオープンセールスの不調、通販番組の出稿減などが響き、前年を下回る結果となりました。一方、スポット収入は、商品量を確保して通販スポンサーを中心に効率よくセールスすることで売上を伸ばし、歴代最高の売上高となりましたが、タイム収入の落ち込みをカバーしきれず、放送収入全体としては前年を下回りました。
営業費用は、放送収入の減少に伴う代理店手数料の減少や、番組制作費等の減少により、前年同期比7.3%減の13,494百万円となりました。
以上の結果、BS放送事業(㈱BSテレビ東京)の営業利益は2.7%減の2,250百万円となりました。
これらに加えて㈱テレビ東京メディアネットなど放送関連会社の売上を合計し、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は4.9%減の94,773百万円、営業利益は20.8%減の3,675百万円となりました。
(アニメ・配信事業)
(単位:百万円)
アニメ・配信事業は、㈱テレビ東京が持つコンテンツを活用し放送による広告以外に収入を上げている「ライツ事業」や、㈱テレビ東京コミュニケーションズ・㈱エー・ティー・エックスなどのグループ会社によるアニメのCS放送、音楽関連ビジネス事業を指します。海外向けの番組販売、ゲーム化による権利、インターネットを通じた課金型配信プラットフォーム、広告付き動画配信プラットフォーム向けのコンテンツ供給、イベントなどから得られる収入なども含まれます。
①ライツ事業(㈱テレビ東京)
当連結会計年度におけるライツ事業の収入(売上高)は、0.1%増の34,241百万円となりました。
この主軸であるアニメ部門は、「SPY×FAMILY」のテレビシリーズの配信や「ポケットモンスター」の商品化が、国内・海外ともに売上を伸ばしました。また、欧州において「NARUTO」の配信が順調に推移したことに加え、「ブラッククローバー」のゲーム化権や配信も世界的に好調となりましたが、前年に中国配信プラットフォームとの大型案件があった反動で、アニメ部門全体の収入は5.5%減の20,971百万円となりました。
ドラマやドキュメンタリーなどの放送番組や放送以外の独自コンテンツを課金プラットフォームなどに販売する配信ビジネス部門は、「きのう何食べた?season2」「みなと商事コインランドリー2」「孤独のグルメ」シリーズなどのドラマを中心に国内配信権販売が好調となりました。海外においても、アジア地域を中心にバラエティ番組の販売収入が好調に推移しました。映画は「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」の配信収入や「劇場版きのう何食べた?」等の配信権販売及び放映権販売が売上を伸ばしました。テレ東BIZの会員数も順調に伸び、配信ビジネス部門全体の収入は10.5%増の11,518百万円となりました。
イベント部門については、「STAGE:0」や「ぷしゅソングフェス」「田村淳のTaMaRiBa」など放送や配信と連動したイベントを積極的に実施しました。また、開局60周年記念として実施した「テレ東60祭@なぜか横浜赤レンガ」は集客が好調となり、イベント収入は10.1%増の1,752百万円となっております。
ライツ事業の全体の費用は、事業の拡大に伴い増加傾向にあるものの、前年にあった大型案件の反動などにより、7.6%減の18,855百万円となりました。
以上の結果、ライツ事業の利益は11.5%増の15,386百万円となりました。
②その他アニメ・配信事業
音楽出版関連の㈱テレビ東京ミュージックは、国内において「SPY×FAMILY」や「新世紀エヴァンゲリオン」などのアニメ関連の楽曲が好調でした。アニメ以外でもTHE SUPER FRUITが歌う「チグハグ」がCMに起用されたり、MAN WITH A MISSIONやcinnamonsなどの楽曲が、主に動画配信サービスや音楽サブスクリプションで売上を伸ばしました。海外においても「NARUTO-ナルト-疾風伝BGM」や「ブラッククローバーBGM」などのアニメ関連の楽曲が好調に推移し、㈱テレビ東京ミュージックの売上高は前年同期比15.5%増の4,377百万円となりました。
CS放送アニメ専門チャンネル「AT-X」を手掛ける㈱エー・ティー・エックスは、放送売上に関しては、「AT-X」の加入者数が依然として緩やかに減少しているため減収となりました。ライツ売上に関しては、「東京リベンジャーズ」「Re:ゼロから始める異世界生活」などを中心に引き続き好調でしたが、前年には届かず、㈱エー・ティー・エックスの売上高は前年同期比3.8%減の3,322百万円となりました。
これらに加えて㈱テレビ東京コミュニケーションズの売上高を合計し、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は1.0%増の44,534百万円、営業利益は12.1%増の5,962百万円となりました。
(ショッピング・その他事業)
(単位:百万円)
ショッピング・その他事業は㈱テレビ東京ダイレクトほか3社が手掛けるテレビ通販やEコマース、グループ全体のサポート事業を指しております。
㈱テレビ東京ダイレクトは、「虎ノ門市場」が定期購入の頒布会不振や海鮮商品の伸び悩みで減収となりましたが、「テレビ東京ショッピング」では夏物商品が好調に推移、㈱テレビ東京と番組連動企画を実施して増収となりました。「テレ東本舗。」も「テレ東60祭」イベントや羽田空港、東京駅の実店舗オープンにより増収となりました。これにより㈱テレビ東京ダイレクトの売上高は前年同期比2.2%増の11,367百万円となりました。
㈱リアルマックスは、前連結会計年度の第3四半期末に新たに連結子会社となったため、当連結会計年度の連結売上高の前年比較においては、第1~3四半期の売上高が純増要因となっております。㈱リアルマックスは、主力商品であるクラブセットとキャディバッグの需要が大きく落ち込み、売上高は前年同期比22.7%減の2,388百万円となりました。
これらに加えて㈱テレビ東京システム、㈱テレビ東京ビジネスサービスの売上高を合計して、同一セグメント内取引を調整したセグメント売上高は14.3%増の15,905百万円、営業利益は16.1%増の299百万円となりました。


②資本の財源及び資金の流動性
資本の財源
当社グループの自己資本比率は67.4%であり、安定した財務体質となっております。借入金など有利子負債は総資産に対し4.5%と低い比率になっております。今後も企業価値向上のための成長投資を継続的に行うために財務体質の健全化に努めてまいります。
資金の源泉と配分
当社グループの短期的な資金調達の源泉は、主に営業活動によるキャッシュ・フローです。設備投資など事業への資源配分や株主還元は、営業活動によるキャッシュ・フローや営業利益との適正なバランスを考慮しつつ判断しております。多額の設備投資・出資については、効果の及ぶ期間を見積もり、当該期間の利益計画などとの検討の上、設備投資委員会・出資委員会で決定しております。
設備投資に関しては、引き続きDX関連設備への投資を継続した他、本社スタジオのバーチャルプロダクション設備等先端技術への積極的な投資を実施しております。一方、CGセンター設備や天王洲スタジオの照明設備等老朽化設備を改修し、放送クオリティの維持に努めてまいりました。
戦略的な出資についても、動画配信を手掛ける㈱U―NEXT HOLDINGSへの追加出資、フランスのアプリ開発会社YONKO.SAS、3D(3次元)CG制作及びゲーム開発を手掛ける(株)D・A・Gなど当社の最大の経営資源である番組・コンテンツの有効活用を図るべく行ってきました。今後も採算性を吟味し、財務規律を守ったうえで成長のための投資を積極的に推進してまいります。
資金需要の主な内容と資金の流動性
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、放送・配信等のためのコンテンツ制作費、コンテンツ購入費用、放送・配信のための業務委託費用、広告代理店手数料、賃借料、人件費などがあります。売上債権と棚卸資産から営業前受金と仕入債務を引いた運転資金は、今年度末で141億円です。
また、投資活動に係る資金支出は、番組コンテンツ制作のための設備、放送・配信のための設備、放送やマーケティングのためのIT投資などがあります。
当社グループの現金及び現金同等物の残高は、前年度末に比べ16億3千万円減の361億円となりました。売上高の2.9か月分の手元流動性となっており、短期的な資金の安全性は十分であると認識しております。
③重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える会計上の見積りを合理的に行わなければなりません。経営陣は見積りに影響を与える要因を把握し、把握した要因に関して適切な仮定設定、情報収集を行い、見積り金額を計算しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
重要な会計方針及び見積りに関しましては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 重要な会計上の見積り」に記載しております。
当社は、2010年10月1日付で、㈱テレビ東京、㈱BSジャパン(現㈱BSテレビ東京)及びテレビ東京ブロードバンド㈱(現㈱テレビ東京コミュニケーションズ)との間において、それぞれの経営状況を管理・指導するための経営管理契約を締結しております。
当社グループでは、多様化する放送サービスへの対応と、配信による新たなサービスの提供、さらには新規事業の開拓に向けて、より幅広い分野における最新技術の調査と研究開発に取り組んでおります。特にコンテンツの価値向上と収益力の強化には、デジタル技術の導入活用が不可欠であり、番組コンテンツ制作や基幹システムのDX(デジタル・トランスフォーメーション)等に効果的なクラウドやIP技術の導入、さらにはAI(人工知能)など新技術の検討と活用を積極的に進めております。
グループ先端技術の窓口として設置したテック戦略局テックラボ(注:2024年4月の組織改編により㈱テレビ東京テック開発局テックラボに変更)を中心に、関連部署やグループ会社と密に連携して、放送サービスに関わる最新技術の導入を検討・推進するとともに、動画配信サービスやインターネットメディアなどの新規サービスにも利用可能な技術開発を進めるなど、より効果的に運用して、視聴者に良質で魅力的なコンテンツをお届けする体制作りに注力しております。
引き続き基幹放送事業者として、地上・BSデジタル放送の安全信頼性の確保と価値向上、さらには動画配信を含めて視聴者のニーズに柔軟かつ速やかに対応するために研究開発の成果を反映して放送・配信事業等に役立ててまいります。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(地上波・BS放送事業)
①デジタル放送関連
・放送設備(マスター設備等)へのIP技術やクラウド技術の導入検証やその効率的な運用手法の検討
・大規模災害に対応した放送の安定送出を目指した設備と運用の検討
・BS2K放送の全局SI集配信システムの継続と、効率的な運用に関する検討
・BS放送用周波数の効率的な利用方法に関する検討と、周波数有効利用のための帯域再編に関する検討
②番組制作関連
・3次元CGバーチャル技術を活用したコンテンツ制作の実証
・AI(顔認証、音声認識、音声合成等)を使ったコンテンツ制作の効率化の検討
・モバイル通信やクラウド技術を活用した番組制作の効率化、海外からの映像伝送の実証
・放送設備のIP化・クラウド化として、IPリモートによる番組中継システムの実証
・ボリュメトリック撮影やAR技術を活用した番組PRやイベント向けコンテンツの制作
③基幹システム、データマーケティング関連
・様々なデータを利活用し収益力強化を目的とした基幹システム及び業務フローの最適化に関するDXの調査研究
・プライバシーの保護に配慮した視聴データの利活用手法やシステム基盤の調査研究
・番組宣伝スポット枠におけるAIを活用した最適配置の調査研究
・オウンドメディアの機能強化に向けた研究
・コンテンツ評価指標の研究
・生成AIを活用した業務効率化の調査研究
(アニメ・配信事業)
・インターネット通信を活用したマルチ映像配信やイベント会場内での音声サービスの実証
・身近なモバイル端末を活用したAR技術の開発
(ショッピング・その他事業)
・テレビ東京グループが展開するインターネットメディアに関する最適化の検討