文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下「SHIONOGI」という)が判断したものであります。
■経営の基本方針
SHIONOGIは、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬(ヘルスケアソリューション)を提供する」ことを基本方針(SHIONOGI Group Heritage)としております。そのためには、益々よい薬を創り、かつ製造するとともに、益々多くの人々に知らせ使っていただかなければなりません。このことを成し遂げるために、SHIONOGIのあらゆる人々が日々技術を向上させることが、すべてのステークホルダー(顧客、株主・投資家、社会、従業員など)の利益の拡大につながるものと考えております。
■2030年に成し遂げたいビジョン
SHIONOGIは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことをSHIONOGI Group Visionとして掲げ、事業の変革を進めております。社会保障費の増加に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることがSHIONOGIの社会的使命であると認識しております。一方で医療用医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。SHIONOGIは従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。
SHIONOGIは、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することで、SHIONOGI Group Visionの実現に取り組んでまいります。

■経営環境及び経営戦略
グローバルにおけるビジネス環境は複雑さを増し、将来の予測が困難な状態にあります。世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、地球規模で起こる気候変動等の環境変化とそれらに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、人工知能の飛躍的な進化、人々の価値観の多様化、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックを契機とした創薬の研究開発の進め方やグローバル展開の考え方の変革等、ヘルスケア産業を取り巻く外部環境は急速に変化しております。また、医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、我が国においては医療用医薬品について2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。さらには、大国同士による技術・経済・安全保障などの分野における主導権争いや、ロシアによるウクライナへの侵略長期化・中東対立の拡大など、諸外国におけるビジネス展開や医薬品の原材料の調達・供給が停滞するリスクなども日々顕在化してきております。
このような中でSHIONOGIは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の開発に取り組み、これまでにないスピードで創薬から臨床研究、承認申請へと進み、緊急承認を取得するなど、一定の成果を示すことができました。さらにHIVフランチャイズについては、長時間作用型のカボテグラビルを軸とした製品群へとシフトさせていくViiV Healthcare Ltd.(以下「ヴィーブ社」)の取り組みが順調に推移していることで、抗HIV薬ドルテグラビルの特許切れによるパテントクリフは、当初想定より大きく縮小し、速やかな再成長が期待できるまでにいたりました。
当社グループは、2030年Visionを実現するために、2020年に中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)を発表し、取り組みを進めてまいりましたが、前述した外部環境の変化や、STS2030を策定してから2023年までの3年間の取り組みによる成果や学びから、STS2030達成に向けた道筋をより明確にするため2023年6月にSTS2030をアップデートし、STS2030 Revisionとして再策定しました。
■STS2030 Revisionの概要
STS2030 Revisionでは、2023年度から2025年度の3カ年を新たにSTS Phase2と位置付け、変革による成長を加速することとしました。また、2026年度から2030年度までをSTS Phase3として新たな計画を策定、実行していく予定です。

STS Phase1では、自社創製品の拡大と医療用医薬品以外の製品・サービスの進展、さらにガバナンスの強化を通じて主要KPIを概ね達成することができました。STS Phase2では「感染症領域を中心としたグローバルでのトップラインの成長」と「積極投資による成長ドライバーの育成を実現すること」を基本方針とし、3つの柱である「HIVビジネスの更なる成長」、「COVID-19治療薬の成長」、「新製品・新規事業拡大」を通じて、成長を加速させてまいります。
2030年Vision実現に向けた成長

① HIVビジネスの更なる伸長
HIVビジネスは、ヴィーブ社による経口2剤合剤や長時間作用型製剤の販売が好調なことにより、売上及び市場シェアが順調に伸長しております。今後は長時間作用型の治療薬「Cabenuva」及び予防薬「Apretude」の市場浸透を推進するとともに、4ヵ月に1回の投与で治療または予防が完結する超長時間作用型製剤などの開発により、HIVビジネスの継続的な成長を実現してまいります。
② COVID-19治療薬の成長
COVID-19は、今なお世界中の多くの人々の健康や生活に影響を与え続けております。今後も新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら免疫を回避し、流行が継続することが予想されることから、治療薬へのニーズは引き続き存在すると考えられます。SHIONOGIは感染症のリーディングカンパニーとして、「エンシトレルビル」の新たなエビデンスを集積しグローバルでの提供を目指すとともに、より多くの方にご使用いただけるよう、さらに優れた新規治療薬の創出にも注力することでCOVID-19に対する取り組みを継続し、持続的な成長を実現してまいります。
③ 新製品・新規事業の拡大
新製品については、現在の開発パイプラインの中から2030年度までに10製品以上の上市を目指しており、既存アセットの成長や積極投資による製品導入などを合わせて、グローバルでの成長を実現します。ワクチン事業については、着実に実績を積み上げ、競争力を獲得しながら2030年には売上収益1,000億円への成長を目指してまいります。
■SHIONOGIの重要課題(マテリアリティ)とSTS2030 Revisionとの関係
SHIONOGIは事業活動を通じて社会課題や医療ニーズに応え、社会に必要とされる企業として成長し、その成果をステークホルダーと共有することを目指しております。その実現のため、SHIONOGIを取り巻く環境を捉え、環境変化に対する機会と脅威の評価及びSHIONOGIの現状や課題などの分析を通じて重要課題(マテリアリティ)を特定しております。これらマテリアリティのうち、2030年までのSHIONOGIの成長や社会からの要請を考慮し、特に欠かせない要素をSTS2030 Revisionの戦略に組み入れております。
■マテリアリティ特定のプロセス
STEP1:機会と脅威の評価
・ 社内外の環境変化に対する認識をもとに機会と脅威を整理
・ 整理した機会と脅威を社会、事業、社内の3つの観点から評価
STEP2:抽出された事項の優先順位づけ
・ 機会と脅威の意味合いから、新たな価値の創出、持続可能な社会への貢献、経営基盤の3要素に分類
・ 経営企画部、サステイナビリティ推進部が中心となり3つの要素ごとに影響度と発生・実現可能性の2軸で評価
STEP3:ステークホルダーへのヒアリング
・ 作成したマテリアリティマップについて、投資家や有識者などの社外ステークホルダーおよび社内関連部署にヒアリングを行い、妥当性を確認
STEP4:マテリアリティの特定とモニタリング
・ 経営会議、取締役会においてマテリアリティの妥当性を検討の上、マテリアリティの特定ならびにマテリアリティに基づき実施するサステイナビリティ活動の年度計画は経営会議での審議を経て承認
・ 環境変化及び社内での進捗状況に基づき、定期的に経営会議にてマテリアリティ見直し要否を検討、見直しが必要な場合は取締役会に上程
・ 取締役会は定期的に活動の報告を受け、活動の推進に向けた助言及び提案に基づく審議を実施

(2) STS2030 Revision で優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
マテリアリティの中で特に重視している課題は「感染症の脅威からの解放」であり、その実現こそが感染症のリーディングカンパニーとしてのSHIONOGIの使命であると考え、STS2030 Revisionでは感染症領域における種々のヘルスケア課題の解決と持続可能なビジネスモデル構築を目指しております。また、「健やかで豊かな人生への貢献」についても特に重視するマテリアリティの1つに据え、従来注力領域に掲げていた「精神・神経疾患」と「疼痛」にこだわらず「認知症」や「肥満症」といったアンメットニーズの高い領域にニーズ/疾患単位でフォーカスし、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現に貢献いたします。
■社会課題の解決を通じた価値創造
①感染症の脅威からの解放
SHIONOGIは、60年以上にわたって感染症の研究・開発を続けており、これまで多くの感染症治療薬を社会に提供してまいりました。長い活動で培われた感染症領域への深い理解、化合物や病原体のライブラリなどの強みをベースに、今後もアンメットニーズの充足に貢献するソリューションを提供することが出来ると考えております。
世界を新型コロナウイルス感染症パンデミックから一日でも早く解放することを最優先に、COVID-19治療薬の開発に加え、今後出現する可能性のある変異株、さらにはコロナウイルスによる次のパンデミックに対しても有効なユニバーサルワクチンの創製にも取り組んでおります。さらに、島津製作所との合弁会社である株式会社AdvanSentinelによる下水疫学調査サービスの提供、診療体制支援を目的とした株式会社アルムとの業務提携、COVID-19診断薬の開発や供給など、感染症のトータルケア(治療のみではなく未病、予防、診断、予後なども含めた疾患全体のケア)の実現に向けた製品・サービスの整備を行いました。引き続き、エンシトレルビルのエビデンス構築、小児や予防などの適応拡大により、満たされていないニーズの充足に貢献するとともに、感染症のトータルケアをグローバルに展開することで、トップラインの成長、持続可能なビジネスモデルの構築の実現を目指してまいります。
また、世界三大感染症についても、HIVのみならず、結核やマラリアなどの治療に長期間を要する感染症にコミットすることで、感染症のリーディングカンパニーとしての使命を果たしてまいります。
さらに、SHIONOGI単独では対応が難しい感染症の課題に対しても、社会とともに解決するための仕組みの構築に取り組んでまいります。薬剤耐性(AMR)はサイレント・パンデミックと称され、喫緊かつグローバルな脅威として徐々に認知が高まっておりますが、将来的な脅威の拡大が危惧されているにもかかわらず、創薬の難易度や投資が回収できないといったビジネスリスクの為に世界的に新規治療薬の開発が停滞している現状があります。SHIONOGIは、AMRに対する有望な治療選択肢として、世界で初めてのシデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるセフィデロコルを創出するとともに、Qpex Biopharma, Inc.(以下「Qpex社」)を完全子会社化することで広域阻害スペクトラムを有するβ-ラクタマーゼ阻害剤を獲得し、抗菌薬研究開発のケイパビリティと米国でのネットワーク強化に取り組んでおります。加えて、低中所得国を含めた世界中の国々の感染症治療薬へのアクセスの改善を目的に、SHIONOGIはMPP(Medicines Patent Pool)とパートナーシップを形成し、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)、CHAI(Clinton Health Access Initiative)との間でも提携契約を締結しております。
②健やかで豊かな人生への貢献
SHIONOGIは、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現を目指し、STS2030 Revisionでは注力する領域として社会的影響度の高いQOL疾患を掲げ、すでに研究開発を進めていた精神・神経疾患、疼痛だけでなく、肥満症や睡眠障害などの特にアンメットニーズの高い領域のパイプラインの開発を進めております。
また、HaaS企業としての更なる成長を実現するため、医療用医薬品を軸としたSolutionプラットフォームを提供し、より多くの患者さまのより多くのニーズに深く応えるための取り組みを進めております。これまでに、サスメドの不眠障害用アプリやAkiliのADHD治療用デジタルアプリSDT-001(米国では承認済み)の開発などにも取り組み、患者さまのニーズに寄り添うHaaS構想の具現化を進めております。また、一人ひとりの児童生徒に合致した適切な教育プランを教員に提案する教育支援サービスを提供するYui Connection株式会社の設立、ピクシーダストテクノロジーズとの連携による音刺激を活用した認知症機能改善に向けた取り組みの推進など、HaaS実現に向けた環境整備を進展することができました。今後も、治療薬の提供にとどまらず、革新的な治療選択肢やサービスの開発・提供を通じて患者さまとそのご家族、さらには周囲で支援する皆さまの困りごとを解決し、QOLや社会の生産性の向上に貢献してまいります。
STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しております。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。
エンシトレルビルなどの感染症薬を中心にグローバルでのトップラインの成長を実現することで、各年度の売上収益及び海外売上高 CAGR目標を達成するとともに、さらなる収益ドライバーを確立するためのM&Aや導入、アライアンスなどの事業開発機会の探索を継続し、価値に見合った投資を強固な財務基盤を活かして積極的に実行していくことで、経営指標の達成を目指してまいります。
SHIONOGIのサステイナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在においてSHIONOGIが判断したものであります。
(1)サステイナビリティに関する考え方
SHIONOGIは、事業の成長と社会の持続可能性の両立に向けて、SHIONOGIと社会の双方にとってのマテリアリティ(重要課題)を特定するとともに、SHIONOGI Group Visionの中でSDGs達成への貢献を謳い、取り組みを推進しております。また、経済、社会、環境等に対し企業責任を果たすために、多様なステークホルダーとの連携強化にも注力しております。
(2)サステイナビリティに関する取組
事業の成長と社会の持続可能性の両立のためには、前項「STS2030 Revisionで優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」にて記述した価値創造に関する取り組みに加え、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの推進が重要であると認識しております。SHIONOGIでは、自社にとっての重要性及び社会・地球環境にとっての重要性の観点から、事業の成長と持続可能な社会の実現に向けて特に対処すべき課題として、気候変動対応を含めた「環境への配慮」並びに、「成長を支える人材の確保」を認識し、解決に向けた取り組みを推進しております。
SHIONOGIでは、サステイナビリティに関する経営上の重要事項について、経営会議及び取締役会にて審議・決議しております。また、担当役員である上席執行役員の責任のもと、サステイナビリティ推進部が事務局となり各組織と連携することで、ESGに関する取り組みの推進と体制強化に向けた全社の活動を推進しております。具体的には、年に一度、サステイナビリティ推進部がサステイナビリティに関する経営上の重要リスク・方針をサステイナビリティアクションプランとしてとりまとめ、経営会議及び取締役会にて審議を行います。また、半期に一度、サステイナビリティアクションプランの進捗状況を経営会議及び取締役会に報告し、取締役及び監査役からの意見や助言を受け、改善への取り組みに反映します。さらに、個別のサステイナビリティに関する事項について、重要な意思決定を伴う場合には、経営会議や取締役会に諮り、審議を行います。
SHIONOGIの全社のコーポレート・ガバナンス体制の詳細については、「
サステイナビリティに関連するリスク管理は全社的なリスクマネジメント体制に組み込まれております。具体的には、影響度・発生可能性などの評価により、サステイナビリティを含む事業等へのリスク及び機会を特定し、それぞれのリスクごとにリスクオーナーを任命し、不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応計画を推進しております。リスク管理の詳細については、「
(3)環境への配慮(気候変動)
①環境への配慮に対する考え方
SHIONOGIは自然資本を投入し事業を営む企業グループとして、地球環境の保全を通じた持続可能な社会の実現を私たちが果たすべき重要な責務と認識しております。SHIONOGIは「SHIONOGIグループEHS※1ポリシー」及び「SHIONOGIグループEHS行動規範」に基づき、統括EHS管理機能を整備するとともに、「AMR」「気候変動」「省資源・資源循環」「水」の4つの環境課題を優先的に取り組む重要課題である「環境マテリアリティ」に特定しております。2023年度において、SHIONOGIは環境戦略の再評価を行い、上述の4つの課題に対して中長期の視点でグループ全体としての戦略的な取り組みを強化していくために、新たに「環境マネジメント・ガバナンス」を環境マテリアリティとして追加しました。また、従来2025年度を最終年度としていた「SHIONOGIグループEHS行動目標」についても、2035年度を最終年度に再設定し、中長期かつ戦略的な取り組みを行うための指標として刷新しました。
特に、環境マテリアリティの一つである「気候変動」については、目標刷新の際にも2035年度目標を新たに策定しており、経営戦略の一環として、カーボンニュートラルに向けた取り組みを今後も強化してまいります。また、SHIONOGIは2022年3月にTCFD※2提言への賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに加盟しております。TCFD提言に基づく対応として、事業活動に影響を与える気候変動のリスク・機会の特定、財務影響評価などに着手し、以下の通り情報を開示しております。
※1 EHS:Environment, Health and Safety(環境及び安全衛生)
※2 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures): G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するため設立された組織
■TCFD提言に基づく情報開示
a.ガバナンス
気候変動リスクへの具体的な対応策は統括EHS管理機能においてその進捗を管理しております。全社的なリスクマネジメント体制における当該テーマのリスクオーナーでもある上席執行役員経営支援本部長を統括EHS責任者に任命しており、統括EHS責任者が「SHIONOGIグループ中央EHS委員会」及び「省エネ委員会」の委員長を務めております。これら合計して年4回以上の頻度で開催される各委員会の決定事項は代表取締役社長に報告すると共に、上位の審議体に諮る必要がある事項については事前に経営会議に上程し、取締役会決議等の機関決定を得るなど、より深い議論が尽くされる体制を整備しております。

b.戦略
2022年度に、1.5℃と4℃の二つの温度帯を用いたシナリオ分析を行い、気候変動のリスク・機会の評価・特定、財務影響の評価、リスク対応方針の立案などの気候変動戦略を検討しました。
1.5℃及び4℃シナリオを用いたSHIONOGIの気候変動に関するリスク・機会の評価結果は下表のとおりです。財務影響が相対的に大きい気候変動に起因するリスク・機会として、1) カーボンプライシング導入、2)局所的な異常気象・気温上昇による原材料調達への影響、3)海面上昇、の3つを特定しております。評価時の試算では仮に特定したすべてのリスク・機会が顕在化することを想定した場合において、中期経営計画STS2030の最終年度である2030年に目標としていたコア営業利益に与える財務的な負の影響は約10%程度に留まることを確認しております。2023年6月に改訂したSTS2030 RevisionではSTS2030と比較してさらなる収益の拡大を目標としていることから、今後想定され得る気候変動シナリオに対する事業のレジリエンスは十分担保されていると判断しております。
・SHIONOGIの気候変動に関するリスク・機会の評価概要
(注) 1.財務影響: 大:100億円以上、中:10億円以上~100億円未満、小:10億円未満
2.SHIONOGIのScope1-3を対象としたワーストケースとして、約55億円と想定しております。IPCC1.5℃特別報告書を参考に、炭素税を18,162円/tCO2と社内設定して試算しております。
3.品質試験で用いるライセート試薬が調達できず、主力医薬品の一部が出荷停止する場合を想定しております。
4.ワーストケースとして、工場等の拠点移転が発生する場合を想定しております。
※詳細については、ウェブサイトをご覧ください。
気候変動のシナリオ分析では、気候変動が事業活動に影響を与える「移行リスク」「物理リスク」「機会」を網羅的に抽出し、抽出した各項目の財務影響と事業のレジリエンスを1.5℃、4℃のシナリオに分けて評価したのちに、対応優先度の評価と対応方針及び対応策の立案を行っております。また、気候変動を含む将来の事業環境に重大な影響を与える可能性のあるリスク・機会については全社的リスクマネジメント体制の中で影響度・発生可能性などを評価し、その対応策の着実な実行を管理しております。これらリスクの特定から対応策の立案・推進に至る過程及び重要な事項は、経営会議及び取締役会に報告し、承認を得ております。
中長期的な目標であるSHIONOGIグループEHS行動目標の一部に、気候変動に関するリスク低減を目的とした指標として「温室効果ガス(CO2)の排出の削減」を掲げております。また、2050年のカーボンニュートラルを目指して2030年度温室効果ガス排出削減目標としてSBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づいた排出削減目標)を設定しております。この目標は2021年6月にSBTイニシアチブからの承認を取得しております。
また、 SHIONOGIではSBTの達成に向けて、2030年度までにSHIONOGIの主要サイトへの再生可能エネルギー由来の電力の導入を進めております。2023年度末時点で塩野義製薬の主要サイト(本社、油日研究センター、CMCイノベーションセンター、医薬研究センター)への導入を完了しました。今後はさらにシオノギファーマの主要工場への導入を進めていきます。
・温室効果ガス(CO2)排出量削減に向けた中長期目標
・再生可能エネルギー由来の電力の導入実績・計画
・温室効果ガス実排出実績の推移
目標設定している各項目については、括弧内に2019年度実績に対する比率を併記しております。
(注) 1.「塩野義製薬株式会社 統合報告書 2023」に記載した2022年度のScope1、Scope2及びScope3のカテゴリー1の温室効果ガス排出量データに対して第三者保証を受けております。
2.第三者保証を受けていない速報値です。今後、Scope1、Scope2、及びScope3のカテゴリー1の温室効果ガス排出量データについては、第三者保証を取得する予定にしています。2023年度の第三者保証を取得した確定値につきましては、2024年9月発行予定の当社統合報告書をご参照ください。
3.対象範囲は、SHIONOGIグループ(海外グループ会社(オフィス系)を除く):国内SHIONOGIグループ及び南京工場(南京長澳製薬有限公司)です。2019年度よりSBT目標のバウンダリーであるUMNファーマ株式会社、ナガセ医薬品株式会社(現シオノギファーマ株式会社 伊丹工場)の排出量を含めております。
4.対象範囲は、塩野義製薬株式会社及びシオノギファーマ株式会社です。2022年度より消費税等を考慮した原単位を用いて算出しています。これに伴って、2021年度以前の排出量も消費税を考慮した原単位を用いて再計算しています。
5.「カテゴリー2・3・4・5・6・7・12」の合計です。自社の企業活動に含まれない、もしくは、他カテゴリーで計上した「カテゴリー8・9・10・11・13・14・15」を除外しています。対象範囲は、国内SHIONOGIグループ(カテゴリー4及び12についてはUMNファーマ株式会社を除く)です。
・エネルギー消費量、電力使用量、再生可能エネルギー由来電力導入量の推移
目標設定している再生可能エネルギー由来導入率については、括弧内に導入比率を併記しております。
(注) 1.対象範囲は、SHIONOGIグループ(海外グループ会社(オフィス系)を除く):国内SHIONOGIグループ及び南京工場(南京長澳製薬有限公司)です。2019年度よりSBT目標のバウンダリーであるUMNファーマ株式会社、ナガセ医薬品株式会社(現シオノギファーマ株式会社 伊丹工場)の排出量を含めております。
2.「塩野義製薬株式会社 統合報告書 2023」に記載した2022年度の総エネルギー消費量データに対して第三者保証を受けております。
3.第三者保証を受けていない速報値です。今後、総エネルギー消費量データ及び再生可能エネルギー由来電力使用量データについては、第三者保証を取得する予定にしています。2023年度の第三者保証を取得した確定値につきましては、2024年9月発行予定の当社統合報告書をご参照ください。

※活動進捗については、ウェブサイトをご覧ください。
(4)成長を支える人材の確保(人的資本の拡大)
a.戦略
SHIONOGIの中長期的な企業価値向上のためには、人材への投資を継続し、人的資本の拡大を推進することが欠かせません。SHIONOGIでは「人が競争力の源泉」という人材育成理念のもと、目指すべき人材像として「SHIONOGI Way:他者を惹きつける強みを持ち、貪欲に知識とスキルを高めつつ、積極的に挑戦しやり遂げる人」を定め、自律的な学びによる成長を後押しし、グローバルな競争に勝ち抜ける強い個人の育成と組織の構築を推進しております。
また、ライフスタイルやキャリア形成に対する意識、ニーズが多様化する中、従業員のSHIONOGIに対するエンゲージメントを高め、SHIONOGIの成長に貢献する最高のパフォーマンスの発揮を引き出すには、働きやすい環境を整備し、一人ひとりのやりがいを高めるとともに健康増進に向けた取り組みを推進することが重要です。SHIONOGIではこれまで所定労働時間の短縮やスーパーフレックスタイム制、在宅勤務、選択週休制度(週休3日)、兼業や副業も実施できるようにする、自己啓発を推進するために様々な制度や仕組みを導入する等、種々の働き方に関する施策により多様な人材の活躍を後押してきました。従業員の健康の保持・増進の観点では、「SHIONOGIグループ健康基本方針」のもと、健康経営の推進に取り組んでおり、上席執行役員を健康経営執行責任者とし、産業医、看護職、塩野義健康保険組合、労働組合等と協働した体制を構築し、健康課題の設定とその改善に向けた各種施策の実行を推進しております。
さらに、2023年10月には「チャレンジ」と「やりがい」をコンセプトに設計した新たな人事制度を導入しました。この人事制度によって、SHIONOGIが求める人材像に沿って自らを成長させ、STS2030 Revision達成に必要かつ難易度の高い目標に果敢に「チャレンジ」する人材を評価します。従業員が「意欲」と「やりがい」を感じるメリハリのある処遇を行うことで組織と人材の成長のベクトルを一致させるとともに、人材育成プログラムの充実を図り個人の成長を後押しすることで、STS2030 Revisionの達成の原動力となる人的資本の拡大を進めております。

b.指標及び目標
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績
(注) 1.当社グループでは人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については関連する指標データ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上の指標に関する目標及び実績は国内グループ連結におけるものを記載しております。
2.提出会社での実績は、「
3.従業員数は翌年度4月1日時点により算出しております。部下を持つ職務の者を管理職としております。
4.当該年度に誕生した子供を有する社員のうち、育児休業を取得した社員の割合を記載しております。
5.組合員を対象とした自発的な学びを支援する制度(年間25万円を上限とする)。
6.メンタルヘルス研修(セルフケア、ラインケア)及び毎年テーマを設定して実施する健康関連研修の受講率のうち最小値を記載しております。
7.2023年度実績より算出条件が変更になっております。
SHIONOGIは、事業機会の創出及びリスクの回避や低減など適切なマネジメントを行うとともに、パンデミック、自然災害、テロやサイバー攻撃などのクライシスマネジメントも含めたグループ全体のビジネスリスクを統括する全社的リスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)体制を経営戦略・経営基盤の重要な仕組みとしております。
全社的リスクマネジメントの運用・管理は、当社及びグループ会社が経営会議及び取締役会にて審議・承認されたリスクマネジメント計画に基づき、ビジネスリスクをグループ経営への影響度並びに発生可能性を勘案して抽出・評価し、その対応策を主体的に講じることを基本としております。全社リスク管理機能はグループ全体のリスク情報を取りまとめ、対応状況等を経営会議及び取締役会に報告しフィードバックを受けることで、期中においても迅速かつ柔軟に課題の抽出、対応策の立案を行っております。
クライシスマネジメントについては、新たに策定した危機管理規則等に基づき、事業継続計画を含む総合的な管理体制のもと、人命を尊重し、地域社会への配慮、貢献及び企業価値毀損の抑制を主眼とした管理を推進し、クライシスが発生した場合には速やかに対処し、当該クライシスを克服するよう努めております。
また、リスクマネジメントの実効性を高めるため、「内部統制システムの整備・運用に関する基本方針」に基づき業務の適正を確保する体制の整備・運用にも注力しております。

SHIONOGIでは業績及び経営に重大な影響を及ぼす可能性があると評価した重要なリスクを、戦略の意思決定に内在及び戦略の遂行を阻害する「事業戦略上のリスク」と経営目標を支える業務遂行に影響を与える「事業遂行上のリスク」に分類し、それぞれのリスクごとにリスクオーナーを任命し、不確実性を機会として活かす、あるいは低減するための対応計画を推進しております。各リスクの対応状況は、経営会議にてモニタリングし、是正・改善を図っております。
なお、文中の将来に関する事項及びリスクは、当連結会計年度末現在において判断したものです。
1.事業戦略上のリスク
<概要>
感染症領域は収益が流行に左右されやすく、他の疾患領域と比較して市場の予見性が低く、薬剤の開発に成功しても投資回収に至らないケースがあります。また、耐性菌の発現率を減少させることを目的とし、治療選択肢が限られている場合にのみ新規抗菌薬を使用することに主眼が置かれており、抗菌薬の将来的な市場予測が非常に難しくなっております。一方、昨今の感染症に対する社会的関心の高まりから、SHIONOGIではこれらを機会として捉えており、マテリアリティにも「感染症の脅威からの解放」を定めております。
SHIONOGIは、「治療に長期間を要する感染症」、「ワクチン」、「急性感染症」の取り組みを組み合わせ、最適な収益モデルを構築することで、疾患トータルとしてサステイナブルなビジネスとすることに取り組んでおります。
これまでSHIONOGIは海外展開品の多くをパートナー企業との提携を軸に取り組み、製品売上高の一部からロイヤリティーを取得してきました。HIV事業を中心に今後もこうしたパートナーとの関係を良好に保ちつつ、SHIONOGI創製品の欧・米・亜における開発、薬事申請並びに承認取得、マーケティング・販売などの事業活動や、低中所得国への展開など医療アクセスの向上に向けた活動をSHIONOGIが主体となって取り組んで行けるよう、海外展開を強化する必要があります。
しかしながら、当初想定していた開発計画や販売戦略が遅延・失敗した場合、将来に期待されていた治療薬やワクチンの創出や売上収益が実現できない場合など、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応・取り組み>
・COVID-19、インフルエンザ治療薬の販売と適正使用の推進
・薬剤耐性(AMR)治療薬セフィデロコルの販売拡大
・COVID-19、インフルエンザ予防ワクチンの開発
・HIVとともに生きる人々のQOLを高める長時間作用型の治療・予防薬の研究開発
・アンメットニーズの高い感染症(結核・マラリア・非結核性抗酸菌症等)における新たな治療の研究開発
・治療に加え、未病、予防、検査、診断、予後なども含めた疾患のトータルケアを実現する製品・サービスの創出
・海外展開品目のグローバル開発・承認申請の実施と海外生産・流通・販売体制のさらなる整備
・備蓄やサブスクリプション償還モデルの拡大など、各国政府や規制当局との交渉
<概要>
SHIONOGIは、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現を目指し、薬剤をはじめとした人々の困りごとを解決するヘルスケアソリューションの研究開発に取り組んでおります。
医薬品の研究開発においては長い期間と多額の投資を必要とするうえに、臨床試験で期待した効果を得られず、承認が得られない可能性があります。
このように不確実性の高い中、創薬の成功確率を高めて医療ニーズを満たす魅力あるパイプラインを形成していくためには、SHIONOGIが培ってきた感染症や低分子医薬品の研究開発技術に加えて、新規モダリティの獲得や外部ネットワークの活用、積極的な投資による外部からの成長ドライバーの獲得、それらに対応する人材の育成が不可欠です。また、医薬品のみでは解決しきれない患者さまや社会が抱える多様な困りごとを解決する機会と捉え、従来の医薬品のパテントに基づく収益に偏重したビジネスモデルを転換し、ワクチン及び新しいヘルスケアサービスの提供にも挑戦しております。医療用医薬品ビジネスとそれ以外のビジネスとのバランスを図ることでパテント切れによる収益の変動を緩和することが必要と考えております。
<主な対応・取り組み>
・新たなモダリティ・技術への挑戦
・外部との協創によるものづくりの推進
・インライセンスなど成長ドライバーへの積極投資
・最先端の研究開発能力を確保するための人材育成
・高い自社創薬比率の維持
・デジタルアプリなど、従来の治療薬にとどまらない革新的な治療選択肢の開発
・すべての人々が活躍できる環境整備に必要なサービスの開発
<概要>
SHIONOGIが事業モデルの転換を図り、STS2030 Revisionで目標とする成長を実現していくためには、従業員一人ひとりが変革を牽引する「競争力の源泉」となり、SHIONOGIがそうした強みを持つ多様な人材の集団として構成されている必要があります。そのために2030年のVision達成に向けた人的資本マネジメントを事業機会と捉え、戦略上の主要テーマとして設定しております。外部人材の登用や能力重視の人材登用を進めることで人材ポートフォリオの変革を行い、多様な価値観を持った人材の融合を実現し、2030年Visionの実現を目指してまいります。従業員が目指すべき人材像を「Shionogi Way:他者を惹きつける強みを持ち、貪欲に知識とスキルを高めつつ、積極的に挑戦しやり遂げる人」と定め、様々な施策を通じて、全員が備えるべき能力や個々の役割ごとに求められる能力の獲得を促しております。また、キャリア採用を強化し、不足している専門性を獲得していきます。加えて、各種制度や仕組みを整備することで、多様な人材がエンゲージメントを高め、活躍できる環境の整備も進めております。
しかしながら、施策や人材獲得の失敗など、実現するうえでの阻害要因が生じた場合には、SHIONOGIの変革が停滞し、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応・取り組み>
・キャリア採用強化
・人事制度の改定
・様々な属性が活躍できる働き方改革
・チャレンジを歓迎し賞賛するイベントの実施
<概要>
SHIONOGIは昨今の技術革新やそれを取り巻くダイナミックな環境変化を機会と捉えており、STS2030 Revisionにおいて、意思決定のスピードを加速させ、データに基づく新たな価値創造を実現するため、あらゆる活動でデジタルトランスフォーメーションに取り組むことを大きなテーマとして掲げております。従来のビジネスモデルの変革が求められる中、AIやITを活用した生産性の向上は必須であり、その実現に向けた取り組みの停滞が生じた場合には、SHIONOGIの業績のみならず企業価値向上に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<主な対応・取り組み>
・グローバルIT基盤の構築
・AI創薬の実践、AI活用による市中在庫予測などのビジネスモデル/オペレーション変革
・疾病の診断・治療を目的とした医療機器プログラム(SaMD)、疾患検知アルゴリズムの開発
・業務効率化と新たな価値創造を実現するデータ利活用基盤の整備
・デジタルコア人材を輩出する育成施策の実施
2.事業遂行上のリスク
<概要>
SHIONOGIは医薬品等の製造管理及び品質管理の基準(GMP)や医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドライン等の薬事関連法規に準拠した厳格な品質管理体制のもと製品の製造及び委託製造を行っております。また、厚生労働省、米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)等の所管当局の査察を受け、製造販売の認可を取得しておりますが、何らかの原因により、品質不良やロット不適が発生するなどの品質問題が発生した場合、以下のリスクが想定されます。
・製品由来のレピュテーションの低下
・承認書と製造実態の不整合による品質不良、出荷停止、回収、行政処分による業務停止等
・データ完全性の不備による回収や当局査察での重大な指摘
・企業の信頼低下
<主な対応・取り組み>
・SHIONOGIグループ品質ポリシーの制定・推進
・社内における教育イベント等の開催による品質の重要性の理解浸透
・Quality Cultureの醸成活動等の推進
・製造所監査等を通じた管理監督活動
・社内関連部署との連携会議等によるBad News Fast/Firstの体制強化
<概要>
大地震や暴風雨、洪水などの自然災害やパンデミックの発生、または米中経済対立や台湾有事などの地政学的影響や人権・環境などのサステイナビリティの観点による影響などでサプライチェーンに問題が生じた場合、以下のリスクが想定されます。
・工場の操業停止
・原材料や製商品の調達困難
・卸物流網の寸断並びに情報の停滞
・医薬品の安定供給に対する重大な影響
<主な対応・取り組み>
・保有在庫量の独自基準に基づく在庫管理
・一部製品に含有される原薬の国内製造体制の構築
・製品の安定供給のための原材料調達先分散(地政学的リスクの高い原材料のセカンドベンダーの選定)
・優先して供給すべきBCP品目の設定及び定期的な見直し
・サプライヤーに対するデューディリジェンス並びに監査の実施と改善要求
・「マルチステークホルダー方針」に則った取引先への配慮
・取引卸との円滑な連携と災害時対策の協議・立案
・卸並びに市中在庫の透明化
・危機管理体制及び危機管理規程類の見直し
<概要>
個人情報を含む多くの機密情報を保有し、アウトソーシング先を含めて各種ITシステムを利活用している中、従業員及びアウトソーシング企業などの不注意または故意による行為、あるいは悪意を持った第三者によるサイバー攻撃などにより、ITセキュリティが脅かされた場合、以下のリスクが想定されます。
・重要システム停止による事業の継続困難
・個人情報を含む機密情報の流出
・損害賠償請求などの法的な損害や事後対応に係る費用などの発生
・業績やレピュテーションの低下
<主な対応・取り組み>
・情報管理を統括する責任者として情報の保全及び情報セキュリティの確保に関する方針を定めるCIO、データ及び文書類の利用並びに管理を統制する責任者としてCDO、IT運営の責任者としてGlobal Head of ITをそれぞれ任命し、法規制やガイドラインを踏まえた情報管理に関する規程などを整備
・個人情報に関する、SHIONOGIグループグローバルプライバシーポリシーの策定・推進
・グループ従業員に対する情報管理や個人情報の重要性に対する認識や個人情報保護に関する法令遵守の必要性についての教育の徹底
・サイバー攻撃や大規模災害などの危機事象発生に備えたIT-BCP体制構築プロジェクトの推進
・ITインフラの整備、情報セキュリティ基盤の強化・運用の改善
・台湾拠点におけるサイバー攻撃の実例から、再発防止及びグローバル各拠点での未然防止に向けた対策としてグローバルセキュリティアセスメントの結果に基づくグループ全体でのネットワーク体制の抜本的見直しなどの実施
<概要>
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て承認を受け販売しております。市販後は、安全性情報を収集し、医薬品の安全性確保及び適正使用のために必要な対策を実施しておりますが、予期せぬ副作用の発生及び副作用報告の漏れや遅延等が発生した場合、以下のリスクが想定されます。
・製品の販売中止や回収
・健康被害に関する損害賠償訴訟の提起
・業績やレピュテーションへの影響
<主な対応・取り組み>
・副作用の情報を適切に収集・分析・評価・報告する体制の強化及びシステムの構築
・副作用の拡大や被害の抑制につながる全従業員教育の実施
・副作用に基づく医療被害補償の保険加入
<概要>
SHIONOGIではコンプライアンスを法律、規則、規制等の遵守に留まらず、社会規範の遵守、更には企業・社会人としての倫理的行動を含むという認識のもと、事業活動遂行における法令違反、社会規範の逸脱、倫理に反する行為・行動を重要なリスクと捉えており、当該リスクが顕在化した場合、以下の影響が想定されます。
・レピュテーションの低下
・ステークホルダーから信頼の失墜
・経営成績及び財政状態の悪化
<主な対応・取り組み>
・SHIONOGIグループ行動憲章にコンプライアンスの項目を設けるとともに、SHIONOGIグループコンプライアンスポリシーを制定・推進
・Global Compliance & Quality Weekを通じ、グループ全従業員のコンプライアンス意識を強化
・組織の構成に応じたコンプライアンス推進体制の運用
・代表取締役会長兼社長CEOを委員長としたコンプライアンス委員会の開催(年4回)
・コンプライアンス委員会活動状況の取締役会への報告(年2回)
・事業活動におけるコンプライアンスの遵守を最優先事項とし、社長メッセージでコンプライアンスについて発信(2023年度:6回)
・全従業員対象のコンプライアンス意識調査の実施と各組織への分析結果のフィードバック
・行動に迷った際に、立ち止まって自らの行動の是非を見つめ直すための5つのチェック項目の作成とグローバル全社員への周知
<概要>
医薬品の研究、開発、製造等の事業活動を行う過程において、環境や生態系、作業者の安全などに影響を及ぼす事象が発生する可能性があります。それらによる被害が顕在化した場合、以下のリスクが想定されます。
・施設や設備の稼働停止や対策・復旧費用の発生
・損害賠償訴訟の提起、補償費用の支払い
・業績やレピュテーションの低下
<主な対応・取り組み>
・EHSポリシー・EHS行動規範の制定によるガバナンスの強化
・環境及び安全衛生(EHS)統括管理体制の整備
・環境マテリアリティ並びにEHSに関する中期行動計画の見直し
・各事業所において、ISO14001、ISO45001並びにそれらに準じたEHSマネジメントシステムの運用を強化
・関連法令を遵守するとともに、より厳しい自主管理基準・目標を策定して対応を実施
・原薬の作業者曝露に関する曝露基準(OEL)設定に関するGlobal SOPの制定
・作業者曝露に関する取扱い基準を設定
<概要>
事業パートナーとの協業は、経営資源や内部情報を互いに提供し、相互の強みを活かして事業強化を図ることが目的ですが、以下のリスクが想定されます。
・パートナーによる自社技術やノウハウの業務提携目的外の利用
・自社による意図しない他社技術の無断利用や知的財産の侵害による訴訟
・自社による機密情報の漏洩
・他社による機密情報の漏洩によるブランドイメージやレピュテーション、投資家からの信頼の低下
<主な対応・取り組み>
・パートナーとコミュニケーションを充実させることによる認識の齟齬の解消、信頼関係の維持・向上
・想定されるリスクを織り込んだ秘密保持契約の締結
・知的財産権の取り扱いや損害賠償に関する事項などを明確化した契約の締結
・問題点や侵害リスクの調査を目的とした知的財産の定期的な点検による訴訟リスクの回避
・データの適切な暗号化やアクセス制御の強化、ファイヤーウォールによる外部からの不正アクセスの防止、セキュリティ監視体制の整備などによる情報管理体制の構築
・パートナーへ共有する情報の最小化と情報共有ルールの整備
・共有する情報の使用状況やアクセスログを監視する体制の整備
・パートナー企業の情報管理体制の定期的な監査と評価
・パートナー企業の信頼性や財務状況、法的な問題などについて多角的な観点からのデューディリジェンスの実施
・問題点や改善点の早期発見を目的としたパートナーシップの定期的な監査と評価の実施
・アライアンスマネジメントを専門で扱うグループの新設とノウハウの蓄積
<概要>
SHIONOGIの製品は、知的財産権(特許権等)により保護されて利益を生み出しますが、グループ会社の増加や事業領域の変化・拡大等の要因により種々の知的財産が充分に保護できない恐れや、第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。
SHIONOGIが保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合あるいはSHIONOGIの製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、以下のリスクが想定されます。
・期待される収益が失われることによる経営成績及び財政状態の悪化
・知的財産権保護のための係争や訴訟
・損害賠償金の支払い
・当該製品の製造販売の差止め
・企業ブランドやレピュテーションの低下
<主な対応・取り組み>
・知的財産権の適切な権利化と管理体制の整備、第三者による権利侵害に対する継続的な監視
・事業活動にあたっては、侵害予防調査の実施
・導出入活動における知財デューディリジェンスの実施など、侵害予防のための体制の整備
・e-Learning等による従業員教育の定期的な実施
<概要>
医薬品事業は、各国・地域の政策により様々な規制を受けております。医療保険財政のひっ迫に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックで生じた歳出増や米国インフレ抑制法(IRA)等により、特に先進諸国で薬剤費抑制の圧力がさらに強まる可能性があります。また、2024年度は米国を始め世界各国で重要な選挙が予定されており、それらの結果の政策への影響を注視する必要があります。我が国においては、高齢化進展に伴う医療費増加を見越した医療保険制度改革が進められていることに加え、2021年度からは薬価改定が毎年実施されるなど、行政施策の動向がSHIONOGIの業績に影響を与える可能性があります。また、医薬品の開発、製造などに関連する国内外の規制の変更により、追加的な費用や新たな対応が必要となる事態等が発生する可能性があります。さらに、我が国においては2023年度末をもってCOVID-19対策として導入された様々な規制・支援等が解消されたことによる影響も懸念され、それらが顕在化した場合、以下のリスクが想定されます。
・医療用医薬品事業の予見性の低下
・創出したイノベーションの価値と乖離した薬価の算定
・医薬品、ワクチン等の研究開発の遅れや供給不安
<主な対応・取り組み>
・革新的な医薬品やヘルスケアサービスの創出と社会が許容できる価格での提供
・創出したイノベーションの価値を示すエビデンスの構築
・業界団体活動を通じ、イノベーションの価値を訴求する取り組みの推進
・薬価制度や医薬品等の研究開発・製造・販売の各種規制などに関する最新情報の入手と迅速な対処
上記の重要なリスクに加え、訴訟、自然災害・パンデミック、金融市場・為替動向など、SHIONOGIの経営成績及び財務状態に影響を及ぼす可能性のある様々なリスクが存在します。ここに掲載されたものが、SHIONOGIのすべてのリスクではありません。
経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
また、当社グループの事業は、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容とする単一セグメントであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度末の資産合計は1兆4,169億18百万円で、前連結会計年度末に比べて1,051億17百万円増加しました。
非流動資産は、6,327億12百万円で、為替の影響によるその他の金融資産の増加、仕掛研究開発資産等の無形資産の増加やその他の非流動資産の増加等により前連結会計年度末に比べて1,051億4百万円増加となりました。流動資産は7,842億5百万円で、現金及び現金同等物や営業債権の増加の一方で、3ヶ月超の定期預金および債券(流動資産のその他の金融資産に含みます)の増減、その他の流動資産の減少等の結果、前連結会計年度末に比べて13百万円増加にとどまりました。
資本については1兆2,525億62百万円となりました。自己株式の取得や配当金の支払があった一方で、当期利益の計上と在外営業活動体の外貨換算差額(その他の資本の構成要素に含みます)の増加により、前連結会計年度末に比べて1,306億84百万円増加しました。
負債については1,643億55百万円で、前連結会計年度末に比べて255億66百万円減少しました。
非流動負債は304億48百万円で、前連結会計年度末に比べて9億21百万円減少しました。流動負債は1,339億7百万円で、未払法人所得税の減少等により、前連結会計年度末に比べて246億45百万円減少しました。
当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の経営成績は、以下のとおりであります。
(単位:百万円)
※1 コア営業利益:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益など)を調整した利益
※2 Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:コア営業利益に減価償却費を加えた利益
売上収益につきましては、4,351億円(ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金を含む、前期比2.0%増)となりました。前連結会計年度はCOVID-19治療薬ゾコーバの日本政府による購入で1,000億円が計上されていましたが、国内外での感染症薬の売上拡大、ロイヤリティー収入の増加など、各事業が順調に伸長した結果、当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度を上回り、2年連続で過去最高の売上収益を更新しました。
利益面につきまして、営業利益は、COVID-19関連プロジェクトや注力プロジェクトへの積極投資、特別早期退職プログラムの実施、zatolmilastのアルツハイマー型認知症での開発計画の見直しに伴う減損損失の計上等で費用が大きく増加しましたが、各事業の順調な伸展により、1,533億円(前期比2.9%増)となりました。また、税引前利益につきましては1,983億円(前期比10.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては1,620億円(前期比12.4%減)となりました。2022年度において、2021年度に受領予定であったヴィーブ社からの配当金を受領したことおよびヴィーブ社がギリアド社との訴訟の和解に伴う一時金を受領したことにより、当連結会計年度は配当金が大きく減少したため減益となりましたが、特別早期退職プログラムや減損損失の費用計上を含む一過的な要因を除けば、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益もそれぞれ対前年比で増益となりました。
当連結会計年度は、グローバル展開や中長期の成長に向けた新規事業・成長ドライバーの確立に向けて積極投資を行いつつ、売上収益と営業利益について2年連続で過去最高業績を更新する結果となりました。
・国内医療用医薬品
国内医療用医薬品の売上収益は、1,511億円(ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金を含む、前期比15.9%減)となりました。前連結会計年度に日本政府のCOVID-19治療薬ゾコーバ購入による1,000億円が計上されておりましたため減収となりましたが、上記要因と当連結会計年度に発生したインチュニブおよびビバンセの共同開発・商業化に関する武田薬品工業株式会社とのライセンス契約終了に伴う製品移管による一時金の受領という一過的な要因を除くと、国内医療用医薬品の売上は前年同期比で58.1%の増収となりました。この主な要因はゾコーバとインフルエンザ治療薬ゾフルーザの売上拡大によるものです。各製品の売上につきまして、COVID-19関連製品とインフルエンザ関連製品の売上収益の合計は734億円となりました。さらに、当連結会計年度には多剤耐性グラム陰性菌に効果を示すセフィデロコル(日本の製品名:フェトロージャ)の販売を開始し、日本のPull型インセンティブ制度である抗菌薬確保支援事業※にも初めて採用されました。
※ 上市後の当該抗微生物薬による収入額が一定額に満たない場合、その差額を国が支援する日本のPull型インセンティブ制度
・海外子会社および輸出
海外事業における売上収益は499億円(前期比17.4%増)となりました。欧米ではセフィデロコル(米国の製品名:Fetroja、欧州の製品名:Fetcroja)の販売が好調に推移し、米国における売上収益は179億円(前期比15.9%増)、欧州における売上収益は136億円(前期比49.9%増)となりました。引き続き、セフィデロコルの販売国の拡大や既上市国でのさらなる処方浸透、サブスクリプション型償還モデル※の採用国の拡大を通じ、欧米事業の成長を促進してまいります。中国における売上収益は、中国政府による医療費抑制政策の影響を受け、106億円(前期比11.3%減)となりました。
※ 抗菌薬の処方量と切り離し、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができるモデル
・ロイヤリティー収入およびヴィーブ社からの配当金収入
ヴィーブ社からのロイヤリティー収入は、HIVフランチャイズの売上が経口2剤合剤や長時間作用型製剤(Long Acting製剤:LA製剤)の急成長により伸長したことで、1,958億円(前期比16.2%増)となりました。また、ヴィーブ社からの配当金は、339億円(前期比44.5%減)となりました。ヴィーブ社のビジネスが順調に進捗したことで、当初予想を上回る配当金を受領しましたが、2022年度において、2021年度に受領予定であったヴィーブ社からの配当金を受領したことおよびヴィーブ社がギリアド社との訴訟の和解に伴う一時金を受領したことにより大きく減少しました。一方で、配当金自体は順調に推移しており、今後もロイヤリティー収入とともに継続的な成長が見込まれます。
スイス ロシュ社からのロイヤリティー収入は、導出したゾフルーザの売上が伸長したことで、当連結会計年度は12億円となりました。英国アストラゼネカ社からのロイヤリティー収入は、クレストールの売上によるロイヤリティー収入を受領したことで14億円となりました。
以上の結果から、当連結会計年度のロイヤリティー及びヴィーブ社からの配当金収入の合計は、2,343億円(前期比0.7%減)となりました。
・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたとおり、当社グループは、2023年6月にSTS2030を改定し、STS2030 Revisionとして再策定しました。
STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しました。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。
エンシトレルビルなどの感染症薬を中心にグローバルでのトップラインの成長を実現することで、各年度の売上収益および海外売上高 CAGR目標を達成するとともに、さらなる収益ドライバーを確立するためのM&Aや導入、アライアンスなどの事業開発機会の探索を継続し、価値に見合った投資を強固な財務基盤を活かして積極的に実行していくことで、経営指標の達成を目指してまいります。
※ 売上収益には、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金が含まれております。
c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の減少、営業債権の増加、法人所得税の支払額の増加により、前連結会計年度に比べて235億83百万円少ない1,542億84百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、新規の子会社や持分法適用会社株式等の取得があった一方で、無形資産の取得による支出の減少や、定期預金の増減により、59億22百万円の収入(前連結会計年度は482億92百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いの増加により、前連結会計年度に比べて427億29百万円多い1,268億53百万円の支出となりました。
これらを合わせた当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は488億66百万円の増加となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、3,580億90百万円となりました。
〔キャッシュ・フロー指標のトレンド〕
(注) 親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
1.指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
3.キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
4.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としております。
当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。
(注) 金額は、正味販売見込価格により算出したものであります。
当連結会計年度における商品仕入実績は次のとおりであります。
(注) 金額は、実際仕入額によっております。
当社グループは、主として販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。
当社及び一部の連結子会社で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 1.販売金額は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
※1 前連結会計年度の株式会社スズケンに対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
※2 当連結会計年度の厚生労働省に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要性がある会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。
当社は当連結会計年度において、以下の契約を終了いたしました。
* 2011年11月に当社とShire(2019年に武田薬品工業株式会社(以下「武田薬品」という)と統合)が締結した日本におけるインチュニブ・ビバンセの共同開発・商業化に関するライセンス契約に基づき、武田薬品が両製品に関して当社が保有する持分の一切を取得するオプション権を行使したことにより、当社と武田薬品は、オプション権の行使に基づく資産の移管などに関する基本合意書を2022年10月31日に締結しました。今回の武田薬品のオプション権の行使により、インチュニブ及びビバンセの共同開発・商業化に関するライセンス契約は終了しました。
なお、本契約に伴って2023年10月31日付で合弁会社 Shionogi-Apnimed Sleep Science, LLCを設立し、持分法適用会社としております。
(6)重要な資産(製品)の譲渡
なお、2023年7月5日付で連結子会社としております。詳細は、「35.企業結合」に記載しております。
2023年度は、COVID-19関連プロジェクトや注力プロジェクトを中心に積極的に研究開発活動を行い、取り組みを着実に進展させることで、それぞれのプロジェクトについてほぼ予定どおり進捗させることができました。
ユニバーサルワクチンであるS-567123は、単剤で幅広い変異に対して予防効果を発揮することができる次世代型ワクチンです。まずは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むサルベコウイルス亜族に対するユニバーサルワクチンの開発を目指しており、2023年度は2024年中の臨床入りに向けて、各種の研究を進展させました。
Xeruborbactam は、新規のβ-ラクタマーゼ阻害剤であり、β-ラクタム系抗菌薬と併用することで、薬剤耐性細菌に対しても広く抗菌活性を示すことが可能となります。2023年度は、セフィデロコルを含むβ-ラクタム系抗菌薬との併用による治療薬を目指して、研究・開発を進展させました。
COVID-19の経口治療薬エンシトレルビル(日本での製品名:ゾコーバ)については、2022年度に日本国内にて緊急承認制度に基づく製造販売承認を取得し販売を開始していましたが、2023年度には日本国内における通常承認を取得しました。また、グローバル展開に向け、複数のグローバル第Ⅲ相臨床試験を進展させ、シンガポールにおいてはSAR承認に基づき医療機関での処方が開始されました。また、エンシトレルビルの後続品として、より有効性が高く、安全で、相互作用の少ない治療薬を目指して開発を進めている、S-892216についても第Ⅰ相臨床試験を進展させました。
肥満症を適応とした新規メカニズムの経口治療薬候補であるS-309309については、今までに第Ⅰ相臨床試験において高い安全性および忍容性と、良好なPKプロファイルが確認できており、2023年度は第Ⅱ相臨床試験を進展させました。
COVID-19に対する組み換えタンパクワクチンであるS-268019については、国内における製造販売承認申請をすでに実施しております。2023年度は、青年・小児を対象とした第Ⅲ相臨床試験を進展させました。
高い安全性、複数の種類の痛みに対して鎮痛効果が期待できる、新規メカニズムの疼痛治療薬であるS-151128について、2023年度は第Ⅰ相臨床試験を進展させました。
RSウイルスのA型およびB型への広域かつ強力な抗ウイルス効果を有する新規の治療薬であるS-337395について、2023年度は第Ⅰ相臨床試験が完了し、第Ⅱ相臨床試験を開始しました。
Akili社から日本および台湾における独占的開発権・販売権を取得している、小児のADHD患者を対象としたデジタル治療用アプリであるSDT-001について、2023年度は第Ⅲ相臨床試験での良好な結果に基づき、国内における製造販売承認申請を実施しました。
こうした活動の結果、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
開発品(2024年5月13日現在)
<導出品>