文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、コーエーテクモの精神「創造と貢献」、コーポレートスローガン「Level up your happiness」のもと、新しい価値を創造して、社会に貢献し、世界中のみなさまの心の豊かさや幸せに寄与貢献することを存在意義とし、「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」となることを目指します。その実現のために以下の経営方針をもってあたります。
経営基本方針
素晴らしいコンテンツを通じて、お客様に最高の感動を提供する
経営基盤を安定化させ、更なる発展を目指す
業績と福祉の向上により、活力に満ちた魅力ある企業となる
社会にとって役に立つ新しさの実現にチャレンジし続ける
2025年3月期経営方針
「グローバルIPの創造と展開」
当社グループは、成長性と収益性の実現により企業価値を高めてまいりますが、重要な経営指標としては、売上高営業利益率30%以上を目標としています。
なお、売上高営業利益率の推移は下表のとおりです。
様々な分野に独創性溢れるエンタテインメント・コンテンツを提供し、幅広い年齢層にコーエーテクモファンを広げる
IPを多方面に展開して、総合的なIPの商品力を高め、新しいファンを獲得する
開発・販売のグローバル化を推進し、コストダウンによる収益力を強化するとともに、海外で新たなファンを開拓する
当社グループは、更なる成長性と収益性の実現を、当社の対処すべき重要な課題であると認識しています。
培った有力IPと高度な開発力をベースにナンバリングタイトルの伸長を図るとともに、コラボレーションビジネスや新規IPの創出などを通じて「グローバルIPの創造と展開」を推進し、ブランド価値の最大化を目指してまいります。また、スマートフォンゲームやダウンロード販売等のデジタル分野も大きなビジネスチャンスととらえ、一層の強化を図ります。
海外開発会社の有効活用やプロジェクト損益のきめ細やかな管理を通じて目標とする売上高営業利益率の達成を目指します。また、開発プロセスの改善に取り組み、品質向上、納期遵守、予算の徹底に努め、高い収益性を実現してまいります。
今後の景気見通しについては、持ち直しが続くことが期待されるものの、中国における景気の下振れリスク、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響が懸念されます。
当期のグローバルのゲーム市場はコロナ禍の収束による外出機会の増加等により弱含みとなった前年と同水準の規模となりましたが、市場全体としてはユーザー人口の増加等により、今後拡大していくことが予想されます。
このような経営環境下において、当社グループはグループビジョン「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」のもと、成長性と収益性の実現に向け挑戦を続けてまいります。
第3次中期経営計画の最終年度である2025年3月期は、重点目標で掲げる新作の発売や前期までに発売したタイトルのリピート販売、運営中タイトルの収益性向上に取り組みます。
中期経営計画の重点目標としてSDGs実現とESGの取り組みを掲げています。2023年10月にサステナビリティ委員会、CSuO及びサステナビリティ推進室を設置しました。コーエーテクモの精神「創造と貢献」に基づき、継続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティへの取り組みを強化してまいります。
2025年3月期は引き続き「グローバルIPの創造と展開」をグループ経営方針として掲げ、新規グローバルIPの「創出」、「シリーズ展開」、「コラボレーション」、「IP許諾」の重層的な収益構造を循環させることで、更なる成長を実現します。
エンタテインメント事業では、パッケージゲームにおいて複数の新作の発売を予定しています。スマートフォンゲームでは、既存タイトルの収益性向上を図ります。また、大型タイトルの開発体制を拡充するため、既存のブランドとは独立したプロジェクトとして、AAAスタジオを新設しました。
アミューズメント事業では、アミューズメント施設において既存店の収益力の強化に取り組むとともに、新規出店を計画しています。スロット・パチンコでは、グループIPの展開を推進し、新規の版権許諾、開発受託に取り組みます。
不動産事業では、ライブハウス型ホールKT Zepp Yokohamaにおいては、引き続き高い稼働率を維持してまいります。その他の運用不動産についても物件管理の向上を進めます。
営業外収支では、金融環境の変化に対応しながら安定した運用収益の実現を図ってまいります。
これらにより、2025年3月期の業績は売上高900億円(前年同期比6.4%増)、営業利益300億円(同5.3%増)、経常利益400億円(同12.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益300億円(同11.2%減)を見込んでおります。
(注) 上記の業績予想数値は、いずれも業界の動向、国内及び海外の経済状況、為替相場の影響などの要因について、現時点で入手可能な情報をもとに行った見通しであります。そのため、上記数値はこれらの要因の変動により異なる可能性があります。
当社グループは、中期経営計画の重点目標として「SDGs実現とESGの取り組み」を掲げ、継続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティへの取組を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループの精神「創造と貢献」、コーポレートスローガン「Level up your happiness」、ビジョン「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」のもと、「心の豊かさ」と「幸せ」に寄与貢献することを目指しています。そのためには、「人材」が持続的に成長し、人をワクワクさせるゲームを作り出すことが重要であると考え、「人」を中心としたサステナビリティを推進することで企業価値の向上を図り、持続可能な社会を目指してまいります。
① 推進体制(ガバナンス)
当社グループは、サステナビリティへの取組を強化するため、令和5年10月に当社代表取締役社長のもとにサステナビリティ委員会を、経営企画部内にサステナビリティ推進室を設置しました。
・サステナビリティ委員会
当社の代表取締役社長が委員長を務め、CSuO(Chief Sustainability Officer)、当社ならびに国内グループ会社の各事業部・本部の責任者が委員となり、サステナビリティに関する基本方針及び戦略の議論・決定を行います。経営方針の重点目標に基づき、サステナビリティ課題の解決に向けた企業活動に取り組むとともに、コーエーテクモグループの持続的な成長及び中長期的な企業価値向上を実現することを目的としています。なお、サステナビリティ委員会で決められた取組や進捗内容については取締役会に報告を行っています。
・サステナビリティ推進室
サステナビリティ委員会にて策定された方針や戦略に基づく施策立案及び実行を担います。サステナビリティ推進室を中心に、当社グループの関係部門と連携しながら、グループ全体のサステナビリティに関する取組を推進しています。
② リスク管理
当社グループのサステナビリティ関連のリスク及び機会は、他のリスクと併せて、リスク管理委員会にて全社一元的に管理されております。当社代表取締役社長をリスク管理の統括責任者として、関係部門間での情報共有、相互協力、的確な判断及び迅速な対応に努めております。
③ 主な取組
令和5年度は、サステナビリティ委員会を3回開催し、サステナビリティに関する課題の検討と目標策定、マテリアリティ特定に向けての体制検討等を行いました。特に、人的資本に関する戦略、指標及び目標の設定を行いました。
今後、「サステナビリティに関する基本方針」の策定及びマテリアリティの見直しを行う予定です。
① 人材育成方針
当社グループは、「良きクリエイターは良きビジネスパーソンであれ」の考えの下に、新しい面白さを実現するクリエイティビティと、成長性と収益性を実現するビジネススキルの両立を人材育成方針としています。育成すべき人材像は以下のとおりです。
・ 自立(自律)したプロフェッショナルなクリエイター
担当する業務に関する知識・技術が卓越しており、また、周辺業務についての知識も有している。更に、ブランド力を向上するクオリティの高い商品を、妥協せず徹底的にチェックを行いながら期限内に仕上げられる人材。
・ クリエイティビティを発揮しビジネスを推進する人材
新分野の開拓や新たなグローバルIPの創造と展開に向けて、自ら新しい企画を立ち上げ、商品化できる。更に、適正な時間、コスト、利益目標を設定して、プロジェクト計画を立案し、求められる品質、納期、コストを達成しながらプロジェクトを運営できる人材。
・ グローバル人材
異文化や多様性を理解・尊重し、海外のパートナー企業やグループの海外拠点、多様な文化背景を持つ社員と協働して主体的にビジネスを推進することのできるコミュニケーション能力を有する人材。
② 社内環境整備方針
当社グループは、方針に基づく人材育成を行うために、新卒入社者を中心とした多様な人材の確保、クリエイティビティを発揮してビジネスを推進する人材の育成、安心して働くことができる社内環境の構築という3つの軸を人材戦略としています。多様なバックグラウンド、スキル、価値観を持った人材を採用し、かかる人材が能力を最大限に発揮し、継続して成長できる社内環境を整備することにより、当社グループの成長性と収益性を実現し、経営方針である「グローバルIPの創造と展開」の達成を目指しています。
③ 人材育成方針・社内環境整備方針に基づく戦略及び取組
a. 新卒入社者を中心とした多様な人材の確保
・ 新卒採用への取組
当社グループは長年にわたり新卒採用を最重要課題として取り組んでいます。変化の激しいゲーム業界において、当社グループが継続して成長していくためには、フレッシュな感性や新しい能力・価値観を持った新入社員の存在が必要です。好きな気持ちこそが原動力であるという考えのもと、創業当初から「ゲームファンの採用」を一貫して続けており、また多様な人材を採用することにも力を入れています。
・ 女性活躍推進の取組
当社グループは、社員への公平な評価・処遇を掲げ、実力本位で平等な昇進、登用の機会を確保しています。働きやすい職場環境に加え、キャリア促進をさせることで、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでいます。令和6年度からは、管理職層の意識改革と女性部下育成スキルの向上を目的とした研修を実施します。
・ 障がい者雇用の取組
積極的な障がい者向け就職説明会への参加や、人材紹介を活用するとともに、職場環境の整備や障がい者向け職種の導入など、特別な雇用管理についても適宜導入を検討し、障がいの有無に関わらず多様な人材が活躍できる職場環境整備を進めております。経営理念である「創造と貢献」のもと、社会的責任を果たせるよう障がい者雇用率の維持・向上にも積極的に取り組んでまいります。
・ 外国籍社員の活躍できるオープンな環境
多様性を推進し、グローバルで活躍できる優秀な人材を確保すべく、日本国内では、新卒を中心に外国籍社員を積極的に採用しており、社員寮等の福利厚生制度を通して入社当初から安心して働ける環境を整備しています。最近では管理職やリーダー職として活躍する外国籍社員も増加するなど、多様な人材が活躍する組織となっており、当社グループの競争力の強化につながっていると考えております。
b. クリエイティビティを発揮しビジネスを推進する人材の育成
当社グループには、ゲームファンとして入社した新入社員を育成し、ディレクターやプロデューサーへと成長させるための仕組みが整備されており、これが卓越したヒューマンパワーを生み出しています。社員の成長を後押しするために、既存・新任リーダー向けの階層別研修及び将来的にディレクター・プロデューサーとして必要な基礎知識を補強し、社内のノウハウを共有するためのプロデューサー研修を毎年実施しています。社員の適性に応じた複線的なキャリアパスを用意し、外部研修や社内講演会、通信教育等の学びをサポートすることで、社員個々人が自分のキャリアを具体的に描けるようにしています。
多様な人材の確保・人材の育成に向けて、令和5年度よりエンゲージメントサーベイを実施し、従業員エンゲージメントを測定しています。今後も計測を続け、エンゲージメントの向上に資する施策を実施、評価、改善を行い、より強い組織になるように取り組んでまいります。
c. 安心して働ける環境の構築
当社グループは、次のとおりワークライフバランスや女性活躍を推進する取組を積極的に進め、誰もが働きやすい環境を整備しています。また、業界でも屈指の福利厚生を完備することで、社員の離職防止及びモチベーション向上を図っています。
・ 働きやすい勤務制度の整備
フレックスタイム制の導入、子どもが小学3年生まで利用できる時短勤務制度や時差出勤(スライド出勤)を導入し、育児と仕事を両立しながら活躍できる職場環境を整備しています。令和6年度からは育児介護のための在宅勤務の制度化、フレックスタイム制におけるコアタイムの縮小により、様々なワークスタイルや柔軟な働き方の拡充を実現します。
・ キャリア支援施策の実施
令和6年度を含め9年連続のベースアップと給与水準の引き上げ、社宅・独身寮の提供といった生活の安定を支える施策に加え、報奨金制度、業績表彰制度、自己申告制度、社内公募制度、キャリア面談、キャリアステージ研修などにより社員のキャリアを支援することで、社員のモチベーション向上を図ります。
・ 健康増進施策の実施
社員が安心して長く働けるよう健康増進にむけ、メンタルヘルスケアに関する研修、24時間利用可能なメール相談、オンライン産業医面談、ストレスチェック等のサービスを提供し、社員が自身の状況を把握し、カウンセリングを受けられる環境整備をしています。
・ ハラスメントを防止する職場環境の整備
ハラスメント防止の会社方針の周知徹底、ハラスメント防止グローバル規則の制定、社員の意識向上を図る教育研修を実施するなど、ハラスメント対策に積極的に取り組んでおります。一方で、社員からハラスメントの相談又は通報があった場合の受け皿として、複数の相談窓口及びハラスメント対策委員会を設置しており、プライバシーに配慮しながら、迅速に問題解決を図るための仕組みを整え、強化しております。
・ 研修による啓発とパートナーシップ制度の導入
多様な人材が活躍できる組織を目指し、ダイバーシティとLGBTQ+に関する意識向上を図る研修を国内グループ会社の管理職向けに実施しております。また、令和6年4月からは、国内グループ会社で、同性パートナーを社内規程上の配偶者と同じ扱いとし、慶弔見舞金や慶弔休暇等の対象とするパートナーシップ制度を導入しております。
④ 指標及び目標
3つの人材戦略に基づき、さらなる強化に資する指標と実績及び目標を策定しました。
※1 国内に含まれるのは㈱コーエーテクモホールディングス、㈱コーエーテクモゲームス、㈱コーエーテクモ
クオリティアシュアランス、㈱コーエーテクモウェーブ、㈱コーエーテクモネットです。
※2 指標内に個別に目標年度の記載がないものは令和6年度の目標です。
※3 執行役員を除いた数です。令和4年度の有価証券報告書は、国内グループ会社を対象とし、当連結会計年度
からは全社(提出会社及び連結子会社)を対象に変更します。
※4 執行役員・正社員で、開発関連部署に所属している者です。
※5 日本からの海外出向者は海外子会社社員としてカウントします。
※6 令和5年度実績は復職予定者を含みます。
(4)気候変動
① 戦略及びリスク管理
当社グループは、将来の気候変動が事業活動に与えるリスク及び機会を把握するため、令和4年度分より、各拠点及びグループ会社ごとに環境負荷をScope1、2の算出をしております。また、当連結会計年度からは、Scope3の算出を行いました。把握された内容はサステナビリティ推進室にて集約され、当社グループに重要と認識されたリスクと機会がある場合に、サステナビリティ委員会にて審議・決定し、必要に応じ取締役会で審議されます。
② 指標
当社グループは、気候関連リスク・機会を管理するために、令和4年度分より温室効果ガス排出量のScope1、2の算出を行い、Scope3については、当連結会計年度分より算出いたしました。Scope1、2及びScope3のカテゴリ別の排出量は以下の通りです。
コーエーテクモグループのCO2排出量(令和5年度)
・ Scope1: 127 t-CO2
・ Scope2: 5,225 t-CO2
・ Scope3: 51,635 t-CO2
※算出範囲:国内外の連結子会社
※集計期間:令和5年4月~令和6年3月
※算定基準:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン
(ver.2.5 環境省/経済産業省)
※排出係数:燃料と国内電力は環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」によって公表されている排出係数を使用。海外の電力については各国政府が公表する排出係数もしくはGES((公財)地球環境戦略研究機関)のCDMデータベースにおける排出係数を使用。
※カテゴリ8、9、10、14、15は対象外
(5)知的財産
当社グループは、グローバルIPの創造と展開によって重層的な収益構造を構築し、高い成長性と収益性を実現しております。そのためには、知的財産権の保護・強化が不可欠であることから、以下の2点の取組を継続して行っております。
①知的財産権の保護・権利化の取組
新規グローバルIPを保護するため、特許権・商標権等の権利取得を奨励し取り組んでおります。新規開発ゲーム全てにおいて、発明発掘のヒアリングを行い、漏れのない権利化を実施しております。権利化できた場合は発明者に対し、報奨金制度に基づいたインセンティブを付与し、更なる新規発明への意欲向上に努めております。また、社員に対し、特許・商標権の社内研修会を定期的に開催しIPに関連する法令知識の普及に努めております。
②知的財産権の活用・価値向上のための取組
知的財産権の価値向上のため、第三者の侵害事案については知的財産権を行使し、毅然とした対応を行っております。特にインターネット上での侵害に対しては、発見後速やかにプラットフォームに通報し削除を求め、当連結会計年度は1,470件の侵害コンテンツの削除を行いました。今後も引き続き侵害コンテンツの削除に注力していきます。加えて、当社グループのIPへの人気の高いアジアにおける侵害事案の対応に力を入れております。悪質な侵害に対しては毅然とした対応により、当社IPの価値向上につなげてまいります。
(6)情報セキュリティ
①情報セキュリティに関する考え方
当社グループは、デジタルエンタテインメントにおいて様々な新しい価値を創造し、社会の発展に貢献するため、お客様や協業先等の関係者から信頼頂ける企業であることが必要不可欠だと考えております。そのために、情報セキュリティを経営上の重要な課題のひとつと位置づけ、不正アクセス・情報漏えいや内部不正等の情報セキュリティ事故の未然防止、早期発見のための取組を行っています。
②戦略
当社グループは、情報セキュリティにおいて組織的に対応するために、個人情報等の情報資産の取扱いや保護に関する社内規程を定め、適切に管理しています。サイバーセキュリティの脅威に対応するため、EDR(Endpoint Detection and Response)やSIEM(Security Information and Event Management)などの先進的な技術の導入、活用により、統合的かつ効果的なセキュリティ対策を実施しています。さらに、Eラーニングによる情報セキュリティ教育や標的型攻撃メール訓練などを実施することで、社員の情報セキュリティの意識とスキルの向上に組織全体で取り組んでおります。
③情報セキュリティに関する事業上のリスク
当社グループは、情報セキュリティに関する事業上のリスクとして、以下のようなものがあると認識しています。
・ 不正アクセスやサイバー攻撃によるシステム停止、データ流出・損失・改ざん
・ 関連法令や規制の遵守に伴うコストや手間の増加
・ 情報セキュリティ事故の発生に伴う訴訟や罰金・損害賠償の負担
・ 情報セキュリティ事故の発生に伴う社会的な信用の低下
これらのリスクに対応するため、前項の戦略を実行し情報セキュリティの強化を推進しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のあると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があります。また、以下の記載は当社への投資に関連するリスクを全て網羅するものではないことをご留意ください。
ゲーム業界においては、コンテンツを提供するプラットフォームの多様化、高性能化が進むとともに、技術革新やユーザー層の嗜好変化が早く、これらに応じた新商品・新サービスの導入が相次いでおります。また近年では、インターネットを始めとした他のエンタテインメント業種との競争が激化しております。当社グループは、急速な技術革新へ柔軟に対応する体制をとり、独創性の高い、高品質なコンテンツをタイムリーに開発・販売することにより、他社との差別化及び安定収益化を確保する方針です。しかしながら、市場環境の変化への対応が十分ではない場合には、当社グループの経営成績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループは、新規タイトルの創出による特定タイトルへの依存度低下、最適な製品発売時期を見据えた開発スケジュールの管理の徹底により、年間ベースでの業績目標を達成すべく努力しております。しかしながら、自然災害、市場動向、又はやむをえない開発スケジュールの変更等による製品発売時期変動のため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、海外での事業展開を積極的に進めておりますが、各国の法規制、政治・社会情勢、為替変動等によるリスクが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、ユーザーに関する個人情報を取得しており、その管理には充分に留意しております。しかしながら、個人情報の流出等の問題が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、保有する知的財産権が他者から侵害されないよう保護に努め、また、当社グループの製品・サービスが、他者の知的財産権を侵害しないよう充分に留意しております。しかしながら、侵害の可能性について第三者との間で疑義や係争等が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
アミューズメント事業におきましては、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、関連する政令及び条例により規制を受けております。今後、これらの法令に重大な改廃があった場合、又は新たな法令が制定・施行された場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、エンタテインメント事業等の開発投資、事業投資に対処するために、現預金や換金性の高い有価証券を保有しております。これらの資産は国内外の株式や債券等に投資し、安全かつ効率的な資金運用を行っております。運用の意思決定やポートフォリオの設定は内部統制に基づく社内規程に従って行いリスクの管理に努めておりますが、株式及び債券市場、為替相場、経済情勢等が急激に変動した場合には、保有する有価証券の減損や評価損が発生し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、業務運営に必要な情報システムについて適正に管理し効率的な運用を図っておりますが、予期せぬコンピュータウィルス、サイバー攻撃、ソフトウエア又はハードウェアの障害、災害などにより情報システムが機能しなくなった場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、世界的な金融引き締めや物価の上昇があったものの、緩やかに回復しました。
第3次中期経営計画の2年目となる当期はグループ経営方針として「グローバルIPの創造と展開」を掲げ、各種施策に取り組みました。
当期は、中期経営計画で重点目標として掲げるパッケージタイトルの発売、スマートフォンゲームの配信を開始しました。パッケージゲームでは『Rise of the Ronin』を3月に発売し、ユーザーの皆様から高い評価をいただいております。スマートフォンゲームでは、『信長の野望 出陣』『レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~』の配信を開始し、既存タイトルが前期に引き続き安定して収益に貢献しました。
複数の新作スマートフォンゲームを配信したことにより、経営統合以来最高の売上高となりました。自社パブリッシングの新作が中心となり販売手数料が増加したこと、及び外注加工費が増加したこと等により営業利益は前年比で減少しました。金融市場を注視しながら運用を行い、受取利息、有価証券売却益等を計上したことで、営業外収支は過去最高を更新しました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ349億13百万円増加し、2,458億2百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ20億46百万円増加し、702億50百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ328億67百万円増加し、1,755億52百万円となりました。
当社グループの当期業績は、売上高845億84百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益284億94百万円(同27.2%減)、経常利益457億41百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益337億92百万円(同9.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
エンタテインメント事業
「シブサワ・コウ」ブランドでは、『Winning Post 10 2024』(Nintendo Switch、PS5、PS4、Windows(Steam)用)を3月に発売しました。配信中の『信長の野望 覇道』は配信1周年、『三國志 覇道』は配信3周年を記念したキャンペーン等を行い、収益に貢献しました。
「ω-Force」ブランドでは、『Fate/Samurai Remnant』のダウンロードコンテンツ第1弾「断章・慶安神前試合」を2月に配信しました。
「Team NINJA」ブランドでは、当社が開発する初のオープンワールドアクションRPGとなる『Rise of the Ronin』(※1)を全世界で発売し、メタクリティック(※2)のユーザースコアで8.7を獲得するなど、高い評価をいただきました。また、本編とダウンロードコンテンツ三部作を収録した『Wo Long: Fallen Dynasty Complete Edition』を発売し、プレイヤー数は全世界で累計500万人を突破しました。
「ガスト」ブランドでは、『レスレリアーナのアトリエ ~忘れられた錬金術と極夜の解放者~』のWindows(Steam)版及びグローバル版を1月に配信開始し、3月には国内においてサービス開始半周年記念イベントを実施しました。
「ルビーパーティー」ブランドでは、新規タイトルの開発に注力しています。
「midas」ブランドでは、位置情報を活用したスマートフォンゲーム『信長の野望 出陣』において、配信開始半周年を記念したゲーム内イベントを実施しました。
IP事業においては、『三国志・戦略版』(国内では『三國志 真戦』)が引き続き収益に寄与しました。また、当社が許諾した中国初のオフィシャルショップ「KOEI TECMO CENTER」を上海にオープンしました。
以上の結果により、エンタテインメント事業の売上高は794億86百万円(前年同期比7.5%増)、セグメント利益は283億4百万円(同26.4%減)となりました。
※1 発売元はソニー・インタラクティブエンタテインメント社
※2 北米のゲームレビュー集積サイト
アミューズメント事業
アミューズメント施設は、既存店売上高が好調に推移しました。新たに1店を出店し、当期末における店舗数は11店となりました。スロット・パチンコでは、当社が開発を担当した5タイトルが稼働を開始しました。
以上の結果により、アミューズメント事業の売上高は39億18百万円(前年同期比15.6%増)、セグメント利益は6億73百万円(同13.2%増)となりました。
不動産事業
ライブハウス型ホールKT Zepp Yokohamaは、高い稼働率を維持しました。
以上の結果により、不動産事業の売上高は12億5百万円(前年同期比6.4%減)、セグメント利益は1億51百万円(同36.0%減)となりました。
その他事業
ベンチャーキャピタル事業において、ファンドの管理費用が発生しました。
以上の結果により、その他事業の売上高は3億89百万円(前年同期比6.3%増)、セグメント損失は6億35百万円(前期はセグメント損失1億73百万円)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末と比較して12億81百万円減少し、104億52百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は366億3百万円(前連結会計年度は296億92百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益453億30百万円の計上の一方で、法人税等の支払額133億27百万円の減少要因によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、支出した資金は248億59百万円(前連結会計年度は213億94百万円の支出)となりました。これは主に有価証券及び投資有価証券の売却及び償還による収入982億41百万円の増加要因の一方で、有価証券及び投資有価証券の取得による支出1,215億64百万円の減少要因によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は154億75百万円(前連結会計年度は165億88百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額157億49百万円の減少要因によるものであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
当社グループでは一部個別の受託開発を行っておりますが、金額的重要性が低く、また受注状況の記載が営業の状況に関する実態を表さないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度のエンタテインメントセグメントの売上の内訳は次のとおりであります。
※1 パッケージ製品売上のほか、ロイヤリティ売上、開発対価売上、契約金等を含む
※2 PSN/XboxLive/Switch DL/Steam等ゲーム本体のダウンロードを通じた売上高
※3 ゲーム本体販売後のダウンロードを通じたアイテム、シナリオ等の売上高
※4 MMORPGと一部タイトルの売上高
※5 スマートフォンゲーム、ソーシャルゲーム、ブラウザゲームの売上高及びIP許諾によるロイヤリティ売上含む
3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
(注)1.Apple Inc.及びGoogle LLCはプラットフォーム提供会社であり、同社に対する販売実績は、当社グループが提供するゲームサービスの利用者(一般ユーザー)に対する利用料等であります。
2.前連結会計年度のGoogle LLCに対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成にあたっては、連結会計年度末日における財政状態並びに連結会計年度の経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としております。当社グループは、過年度の実績や現状を踏まえ、合理的と判断される前提・仮定に基づき、かかる見積り・予測を行なっておりますが、実際の結果はこれと異なる場合があります。
当社グループは、主として以下の会計方針において、連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある見積り・予測が内包されていると認識しております。
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。
当社グループの保有する有価証券については、市場価格のある有価証券、市場価格のない有価証券ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式及び債券の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。なお、減損処理に関する基準については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」をご参照ください。
当社グループは、固定資産につき、固定資産の減損に係る会計基準(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 2002年8月9日)及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 2003年10月31日))に基づき、その資産性について営業損益、事業計画や時価等を元に検討しております。
当社及び一部の子会社は、従業員の退職給付制度として、確定給付制度を採用しております。確定給付制度については、退職給付債務の現在価値と制度資産の公正価値との純額を負債又は資産として認識しております。退職給付債務は、割引率、退職率及び死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき見積もられています。また、退職給付債務の現在価値を算定するために使用する割引率は、原則として、退職給付債務の見積期間と整合する期末日時点の優良社債の市場利回りを参照して決定しております。年金資産の長期期待運用収益率は、現在及び将来期待される長期の収益率を考慮しております。 経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実績との差異や仮定の変動は将来の退職給付費用や退職給付債務に影響します。なお、退職給付債務の残高、使用している割引率等については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(退職給付関係)」をご参照ください。
当社グループは、受注制作のソフトウエアに係る収益につき、係る契約の履行義務が一定の期間にわたり充足されるものについては、ゲームソフト・コンテンツ開発の進捗によって履行義務が充足されていくものと判断しており、履行義務の完全な充足に向けた進捗度の測定に基づいて、収益を認識しております。なお、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い受託開発については、「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日。以下「収益認識会計基準適用指針」という。)第95項に定める代替的な取り扱いを適用し、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しております。収益総額、見積総原価及び決算日における進捗率について、当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度における経営成績は売上高845億84百万円(前年同期比7.9%増)、営業利益284億94百万円(同27.2%減)、経常利益457億41百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益337億92百万円(同9.2%増)となりました。
これらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
資産、負債及び純資産の状況
(資産の部)
当連結会計年度末における資産合計は、2,458億2百万円(前期末比16.6%増)となりました。うち流動資産は929億51百万円(同89.3%増)、固定資産は1,528億51百万円(同5.5%減)であります。
流動資産の主な内訳は有価証券583億93百万円、売掛金及び契約資産150億41百万円、現金及び預金117億2百万円であります。
固定資産の主な内訳は投資有価証券1,065億90百万円であります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は、702億50百万円(前期末比3.0%増)となりました。うち流動負債は689億28百万円(同244.3%増)、固定負債は13億22百万円(同97.3%減)であります。
流動負債の主な内訳は1年内償還予定の転換社債型新株予約権付社債465億36百万円、未払金74億59百万円、未払法人税等65億38百万円であります。
固定負債の主な内訳は繰延税金負債3億91百万円であります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産合計は、1,755億52百万円(前期末比23.0%増)となりました。
当社グループでは、新規タイトルの創出による特定タイトルへの依存度低下、最適な製品発売時期を見据えた開発スケジュール管理の徹底により、年間ベースでの業績目標を達成すべく努力しております。しかしながら、市場動向や、やむをえない開発スケジュールの変更による製品発売時期変動のため、業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、エンタテインメント事業におけるゲームソフトの開発費、各事業における販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。
当社グループは自己資金による財務調達を基本方針としておりますが、不足が生じた場合は、外部借入や社債の発行による資金調達を実施しております。また、当社グループの収益性向上に資するべく、余剰資金による投資有価証券等の運用を継続的に実施しております。
当社グループは更なる成長性と収益性の実現に向けて売上高営業利益率30%以上を重要な経営指標として位置付けております。当連結会計年度における売上高営業利益率は前期より16.2ポイント低下し、33.7%となりました。引き続きこの指標を達成するよう取り組んでまいります。
当社グループの経営上の重要な契約は、次のとおりであります。
(1) ゲーム開発・販売等に関する契約
当社グループは研究開発を行う専任部署において先端技術を研究し、独自のゲームエンジンを開発しております。また、開発部署において、多岐にわたるゲーム開発を行い、独創的なコンテンツを創出しております。家庭用ゲーム機、PC、スマートフォン等に係るコンテンツの多様化・高度化が進んでいる状況等に鑑み、当連結会計年度より一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の範囲を見直しております。
当連結会計年度は、エンタテインメント事業において