当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、2002年の創立以来、お客様企業にとって最適なシステム運用を実現するため、パッケージソフトウエア・ベンダーとして数々のシステム管理製品を提供してまいりました。
当社のモットーは、社名に採用している「勇気づける(エンカレッジ)」です。お客様の悩みやニーズのもとになる真の実現すべき目的を共有するため、お客様との活発なディスカッションとヒアリングを徹底して行っております。その結果を具現化するものとして、新しい価値として創造したパッケージソフトウエアを開発しております。絶えず自ら技術を磨きながら、過信することなく、自らを客体化して、最も良い解決方法を導くことに努めております。
このテーマを達成するため、経営理念として、
1.お客様の視点で新たな価値を創造し、満足いただける製品とサービスを提供します。
2.社員と会社の目的を一致させ、物心一体の幸福を追求します。
3.国内外の法令と企業倫理を遵守し、誠実かつ公平に業務を遂行します。
を定めております。
こうした経営理念のもと、当社は、単なる製品・サービスの提供ではなく、お客様の声を反映したパッケージソフトウエアの開発・販売、製品のサポートサービス、コンサルティングを通じた真のソリューションサービスを提供し、社会に貢献することを目指しております。
これらを実現するため、
1. 価値創造の源はお客様にある
2. お客様の喜びは我々の幸せである
3. 勇気を持ってチャレンジすることが会社成長の源である
4. 敬意を払い、感謝し、期待に応える行動をする
5. 小さな成長も大きな感動を育む企業風土を創造する
を経営方針として掲げ、事業に取り組んでおります。
また、当社創立当時と比較をすると、近年は誰もがスマートフォンを利用して情報の収集や発信をするだけでなく、現金に代わる電子決済を行うなど、日常生活においてITの利用は不可欠なものとなっております。当社は、拡大するICT社会において、ソフトウエアと関連サービスの提供を通じてシステム運用の安全と安定稼働の実現に貢献することを目指し、2024年4月に『すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る』をパーパス(当社の存在意義)として定めました。これからもデジタル技術は加速度的に進歩し、人々の生活の隅々までITの活用が行きわたる中で、当社はシステム運用を支える役割を確実に果たしてまいります。
(2)経営環境及び対処すべき課題
2024年3月期におきましては、生成AIの急激な技術的進歩により利用場面もあらゆる分野へ広がり、一部の先進的な利用者のツールから一般社会に普遍的な技術として浸透しはじめております。新型コロナ感染症の拡大を契機に働き方を変えてきたテレワークも、出社勤務と組み合わせた働き方が日常的に行われるようになりました。こうしたICT社会においては、高度なサイバー攻撃が多発するだけでなく、在籍社員や退職者、協力会社社員による社内の機密情報の持ち出しも発生しております。全ての企業にとって、事業の継続、拡大に向けたIT投資は底堅く推移いたしました。
このような外部環境において、当社は2022年3月期に掲げた以下3点を重点項目と位置付け、2024年3月期も継続して取り組んでおります。当該施策の結果につきましては、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②経営成績の分析」に記載しております。
①顧客ターゲット別の営業推進
:2024年3月期も顧客深耕営業(第1営業部)、純新規開拓営業(第2営業部)、ビジネス協業営業(パート
ナー営業部)と戦略的パートナー向け営業(戦略営業部)の4部門による営業活動を継続
:マーケティングプロモーションならびに代理店販売強化により「ESS AdminONE」「ESS REC 6」の純新規顧
客の開拓、獲得
:既存顧客への営業・技術部門一体化により「ESS AdminONE」「ESS REC 6」の新規商談を獲得
②ソリューション強化
:「ESS REC 6」の新機能であるシステム操作者の常時本人確認機能とシステム操作環境の監視・記録機能を
訴求することによるリモート運用市場の開拓
:「ESS AdminONE」のIDaaS、SaaS対応と大規模ユーザー対応の強化
:「ESS REC 6」のUNIX、Linuxへの対応とリモート運用市場創出のための機能強化
③新人事制度定着による生産性向上
:運用とシステムの見直しなど改善を加え、定着した新人事制度の下で、賃上げによる優秀な人材の安定確
保と採用の強化を図り、生産性とモチベーションの向上を目指す。
:小規模多チーム編制により次期中核人材となる新任チームリーダーの実践機会を作り、マネジメント能力
開発と組織の生産性向上を図る。
(3)中長期経営計画
当社においては2030年に向けた長期ビジョン「VISION2030」を設定し、直近の3ヶ年にあたる第1次中期経営計画(投資フェーズ:2025年3月期から2027年3月期)およびゴールとなる2030年に繋がる第2次中期経営計画(成長フェーズ:2028年3月期から2030年3月期)について中長期経営計画を立案いたしました。
①VISION2030
特権ID/証跡管理などシステム運用(管理)分野において、プロダクトならびにシステムエンジニアリングサービスの新たな価値を創造し、製品と保守売上主体のビジネスモデルに加え、クラウドサービスへの本格参入やコンサルティングサービス、技術サービスなど新たなソリューションを展開します。また、リーダー育成に取組み、円滑な世代交代を行いながら顧客志向で一体化した機動力ある新体制を築きます。
②戦略的サービス
当社は、システム運用の統制を極めるオンリーワンベンダーとなるべく、次に掲げるサービス展開を進めてまいります。
・コンサルティングサービス
・プロダクトサービス(パッケージソフトウエア製品/クラウドサービス)
・システムインテグレーションサービス(製品導入に伴う技術支援)
・システムマネージメントサービス(SIO常駐サービス)
③中長期事業戦略
当社は、2021年3月に特権ID管理製品「ESS AdminONE」の販売を開始し、その後2023年4月に主力製品「ESS REC」の機能を大幅に強化した「ESS REC 6」の販売を開始しております。2024年3月期の両製品の販売、受注状況、ならびにIT社会の環境やシステム運用に関する証跡管理やセキュリティ対策に対する市場ニーズを鑑みた場合に、今後の業績が合理的に見通せる状況と判断いたしました。従来も当社では中長期の計画に沿った事業活動を行ってまいりましたが、今般、計画や戦略、取組み方針をお伝えすることで投資家のみなさまへ資する情報となるよう、中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を開示することといたしました。
第1次中期経営計画(投資フェーズ;2025年3月期~2027年3月期)
当期間は投資フェーズと位置付け、現行製品・サービスを着実に販売し、収益を獲得することで原資を確保して第2次中期経営計画(2028年3月期~2030年3月期)の成長フェーズに向けた新製品の開発に積極的に投資してまいります。当該3ヶ年の売上、損益を達成させる重要なポイントは以下の3点です。
・ライセンス売上の達成
・保守更新率の達成
・ESS AdminONEならびにESS REC 6移行推進
投資フェーズにおける製品・サービス開発のロードマップは以下の通りです。
・既存製品:バージョンアップによる機能拡張
・新製品:第1次中期経営計画期間3ヶ年を通じて企画、開発を行い第2次中期経営計画(成長フェーズ)の売上拡大を目指す
・既存主要製品の統合:ESS AdminONE、ESS REC 6と同じアーキテクチャに統一。新たな運用統制ソリューション製品として提供
・新クラウドサービス:新製品、統合製品をクラウド化(SaaS化)
④中期損益計画 2025年3月期(FY24)~2027年3月期(FY26)
(4)持続的成長に向けた取組み
当社が重点項目の実現による成長を持続していくためには、優秀な技術者を安定的に確保して、スピード感をもった新製品・新サービスの開発が重要であると認識しております。さらに、当社の事業は製品の販売から保守までを一貫して提供する形態であるため、多様な職種の人材が必要となります。社員の働きがいと生産性の向上を両立させつつ、さらに技術の優位性を維持しながら事業を継続的に拡大するためには、優れた人材の獲得や育成が不可欠となります。
①ダイバーシティの推進
当社では、性別、年齢、国籍に制約を設けず、多様な視点や経験を持つ人材を採用し、その能力や特性を事業に活かす取組みを行っております。特に他社を経験した幹部社員の登用により、幅広く知識・経験の蓄積と融合を進めております。
②女性活躍の推進
当社は従業員122名(2024年3月末現在)のうち女性が50名(41.0%)となっており、技術部門においても女性の理科系学卒者の採用が進んでおります。女性幹部社員も部長クラス、課長クラスでそれぞれ1名が従事しております。現在、女性の取締役はおりませんが、将来は現幹部社員が十分なスキル、経験を発揮することにより取締役に就任する可能性があります。また、他の女性社員もマネジメント職に就くことで能力を最大限に発揮できるよう、管理職候補者の育成に向けた取組みを行っております。これらの取組みは、女性の職業生活における活躍の推進に関する行動計画として、2025年3月31日までの期間に課長以上の管理職の女性労働者を1名以上増やすことを目標としております。なお、本有価証券報告書提出時点においては、課長クラスの女性幹部社員は1名増加して2名が従事しており、当該目標を達成しております。
③新人事制度定着による生産性向上
以下に掲げる施策を取り入れることにより、社員が自律的に働くことで生産性とモチベーション向上を目指しております。
:職務記述書にもとづいた自律的な業務計画を立案し、業務進捗(KGI、KPI)を正当・公正に評価するなど、社員一人ひとりの進捗に合わせたマネジメントを図る
:週休3日や週6日勤務を可能とする労働時間制の定着により、社会や社員のニーズに対応し満足度の向上を図る
当社は経営理念として以下の3点を掲げております。
1.お客様の視点で新たな価値を創造し、満足いただける製品とサービスを提供します。
2.社員と会社の目的を一致させ、物心一体の幸福を追求します。
3.国内外の法令と企業倫理を遵守し、誠実かつ公平に業務を遂行します。
2024年4月に新たに当社のパーパスとして『すべての人々が安心してITを利用できる社会を創る』を制定し、ソフトウエアと関連サービスの提供を通じてシステム運用の安全と安定稼働の実現に貢献することを目指しております。
当該経営理念およびパーパスの下、当社の事業であるソフトウエア製品の開発から販売、導入支援、保守・サポートの全てを、当社の人的リソースによって実行しております。
事業活動は、当社社員と協力会社社員の計196名(2024年5月16日時点 以下「社員」)が本社と本社に近接するサテライトオフィスを拠点に行い、経営理念に謳う全ての付加価値を社員が自社内で生み出しております。こうした事業特性から当社は「人材」をマテリアリティ(重要課題)と位置付けております。また、本有価証券報告書の「
一方、気候変動に関する事業影響に目を向けると、当社の事業活動を行うにあたっては、各オフィスとデータセンターにおける電力の消費と、通勤や出張時の交通機関の利用によるエネルギーの消費が主な管理対象であると認識しております。サステナビリティに関する取組みとして気候変動対策となるCO2排出量削減を注視しておりますが、2024年3月期のCO2排出量は225t/年と推計しており、社員数に相当する一般家庭の排出量503t/年(196世帯とした場合;2.57t-CO2/世帯・年 令和5年10月 環境省)よりも少なく、僅少であると認識しております。なお、入居するオフィスビルが推進する再生可能エネルギーへの代替には、積極的に賛同、支援しております。
人材に関する取組
ITの世界は国境を越えて日々めまぐるしく進歩しており、当社は、継続的に事業を成長させるため常に新技術を伴う付加価値を高めた新製品の提供を目指しております。しかし、国内のIT人材は圧倒的に不足している状況が続いており、限られた人材の才能が十分に発揮されることがソフトウエア産業の持続可能性には不可欠となります。少子高齢化が加速して労働者人口が減少する中、当社は社員が高いエンゲージメントをもって自律的に働ける職場環境を整えるとともに、仕事も生活も充実した日々を過ごせるように努めております。
(1)ガバナンス
当社は中期経営計画および年度予算計画立案にあたり、採用計画(人数、職種、採用時期、採用方法など)と育成計画を取締役会で報告し、承認を得ております。月々の取締役会においては、採用の実績、離職状況、組織、異動等について報告を行い、適切な運用、実施が行われていることを確認するとともに、課題の認識やその対策を協議しております。
また、社員が安全で健康的に働けるよう代表取締役社長を健康経営責任者とする衛生委員会を設置して、毎月の時間外労働の状況把握や職場環境の維持の状況を労使がともに確認しております。衛生委員会は社員の健康促進に向けた取組みも協議しております。こうしたガバナンス体制による取組みの結果、当社は前期に引き続き2024年3月期も「健康経営優良法人2024」に認定されました。
(2)戦略~人材に関する機会~
① 人事制度
当社では2022年3月期より、「働き方改革」の推進と評価制度の改訂を目的とした新しい人事制度「Encourage Smart life Style(ESS)」を導入しております。当該人事制度によって、社員は月単位で勤務形態を決めることで柔軟に「いつ働くか」を決めることが可能となり、勤務形態が変わったことによって処遇や評価に影響を受けることがなくなりました。同時に、ジョブディスクリプション(職務記述書)によって会社が期待する役割と成果、その評価を明確に示し、社員と会社の認識の齟齬をなくし、在宅勤務などのリモートワークによって仕事のプロセスが見えなくても公平な評価を実現しております。
② 採用方針
当社は全社員の約2/3が技術系社員で構成されております。また、営業職であっても当社製品を正しく理解し、お客様企業のエンジニアに訴求することが必要となるため、ITに関する知識が欠かせません。そのため、新卒採用では情報系学部を中心に採用活動を行い、キャリア採用においてもプログラミングをはじめネットワーク構築などの経験を有するエンジニアを募集しております。営業職も、IT企業での営業経験がある人材をターゲットにしております。ただし、昨今のIT系人材の不足は深刻な状況にあるため、新卒採用、キャリア採用とも間口を広げ、特に新卒及び若年層のポテンシャル採用においては、入社後の技術教育や配属後の技術研修などに注力し、早期育成に取り組んでおります。
また、2024年3月期からは2週間のインターンシップや数か月にわたる就業体験で情報系学生を受け入れ、実践を通じて当社事業や職場環境を知る機会を設けており、就職後のミスマッチが発生する可能性を下げる施策も実施しております。
報酬面につきましては、新しい人事制度導入時に賃金テーブルを引き上げる見直しを行ったことに加え、2024年3月期に若手・中堅層を中心に平均で9.2%、新卒採用の初任給は11.1%の引上げを行いました。さらに2025年3月期においても平均6%の賃上げを行い、IT人材の確保に注力しております。
③ ダイバーシティとインクルージョン
当社事業におけるそれぞれの業務は、性別、年齢、国籍等で制約されるものではなく、現行の人事制度においては個人の能力によってのみ評価される仕組みとしております。性別等に関わらず、等級が高い上位職者は実績を重視し、新入社員など経験が浅い社員はプロセスやコンピテンシーに重点を置いて評価を行っております。
新人事制度導入の際に、現行等級のまま上位等級の業務を行う「チャレンジ制度」も設け、マネジメント職としてのスキルやスペシャリストとしての働き方など自らハイレベルの業務に挑戦し、1年を通じて成果が認められた場合には通常のステップを経ずに昇格する制度も開始しております。これまでに7名がチャレンジに成功しております。前事業年度に続き2025年3月期も、VISION2030を見据えて次世代のリーダー層の育成を推進しており、若手層の社員から新たなグループ長やリーダーを抜擢し、組織運営、マネジメント経験の習得に励んでおります。当該新規グループ長、リーダー6名のうち4名は女性が就任しております。
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採用実績 |
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期(提出日現在) |
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新卒採用 |
男性 |
2名 |
2名 |
1名 |
0名 |
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女性 |
1名 |
1名 |
2名 |
2名 |
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|
キャリア採用 |
男性 |
5名 |
6名 |
1名 |
1名 |
|
|
|
女性 |
6名 |
2名 |
5名 |
2名 |
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期末在籍者数 |
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
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男性 |
76名 |
81名 |
72/88名 |
80名 |
|
|
女性 |
45名 |
45名 |
50/49名 |
55名 |
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計 |
121名 |
126名 |
122/137名 |
135名 |
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うち 外国人 |
2名 |
2名 |
1/2名 |
1名 |
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障碍者 |
2名 |
2名 |
1/2名 |
2名 |
|
管理職(注) |
男性 |
18名 |
18名 |
15/15名 |
13名 |
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女性 |
1名 |
2名 |
2/2名 |
3名 |
(注)当社では職制(等級)上、管理職にリーダーを含んでおりません。リーダーをマネジメント職とした場合、2025年3月期は男性18名、女性9名となります。
(3)リスク管理
さらに、IT環境は常に新しい技術や製品が生み出されており、新しい技術の情報収集や技術の習得を行うため、OJTの他に研修および有志のエンジニアによる自主的な勉強会を開催しております。
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研修等の参加状況 |
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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入社後導入研修(技術研修含む) |
3名×12研修 |
3名×14研修 |
3名×12研修 |
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外部個別・専門研修 |
226名/35研修 |
179名/31研修 |
182名/33研修 |
人材の確保にあたっては、優秀な人材の離職防止も重要となります。現行の人事制度は、働く時間と働く場所を柔軟に設定できるため、従来の勤務形態では育児や介護との両立が難しく、退職や時短勤務を選択する代償として報酬を犠牲にしていた社員も、こうした犠牲を払うことなくバランスを取った日常生活を送ることが可能となっております。
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離職率 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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17.0% |
5.2% |
(注1)9.4% |
(注1)2024年3月期の退職者の増加理由として、2023年5月から新型コロナが感染症法上の5類に分類されたことで社会経済活動が活性化し、人材の流動性が高まったことと、独立・起業を目指す人材が増えたことに特徴をみております。
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柔軟な働き方 |
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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産休取得者数 |
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0名 |
0名 |
(対象無し) |
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育休取得者数 |
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4名 |
1名 |
(対象無し) |
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うち男性の取得 |
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1名 |
(対象無し) |
(対象無し) |
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介護休職取得者数(注2) |
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0名 |
0名 |
0名 |
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時短勤務(注2) |
育児 |
2名 |
3名 |
4名 |
(注2)介護を目的とした休職および時短勤務の実績はありませんが、在宅勤務や勤務時間のシフトなどの柔軟な働き方を常時5名前後が選択しております。
(4)指標及び目標
当社のマテリアリティ(重要課題)である「人材」の安定確保と継続的な能力の発揮や成長を実現するため、以下の目標を設定しております。
① 採用者数、離職者数(2024年3月期)
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2024年3月期 実績/計画 |
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(注3) |
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(注3)2024年3月期の退職者の増加理由として、5月から新型コロナが感染症法上の5類に分類されたことで社会経済活動が活性化し、人材の流動性が高まったことと、独立・起業を目指す人材が増えたことに特徴をみております。
② 残業時間
当社は柔軟な働き方を推進しておりますが、新製品の開発に多大な工数を投入する場合もあり、2023年3月期は複数のプロジェクトによる新製品開発を行ったため、従来よりも多くの時間外労働(残業時間)が発生いたしました。残業時間は月次でコントロールするだけでなく、週次で発生状況を把握し、増加が懸念される部署に対しては人事部門から注意喚起を行っております。各部門長も現在使用している勤怠管理ツールを利用することで、個人別の就業状況を把握することができ、業務の適切な配分と残業の指示命令を適切に行うことが可能となっております。業務が過度に集中したり、長期間残業が継続することにより、身体面、メンタル面の不調が生じる可能性があるため、適切な水準となるように目標時間を定めて取り組んでおります。
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 実績/目標 |
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29時間07分 |
32時間33分 |
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③ 一般事業主行動計画
当社は2027年3月31日までの期間における一般事業主行動計画として、以下の目標を定めております。
目標1:残業時間削減のための措置の実施
目標2:子どもの看護や家族等の介護のための柔軟な働き方への強化
それぞれの目標内容につきましては、下記URLからご覧ください。
④ 女性の職業生活における活躍の推進に関する行動計画
当社は2025年3月31日までの期間における女性活躍推進の目標として、課長以上の管理職の女性労働者を1人以上増やすことを定めております。
対策につきましては、下記URLからご覧ください。
https://www.et-x.jp/company/actionplan/
当社は、事業活動に影響を与える様々なリスクを正しく把握し、評価・分析して(Plan)、発生の未然防止、発生した時には影響を最小限にする対策を施し(Do)、その効果を検証(Check)、再発の防止(Action)を行っております。こうしたPDCAサイクルを実施・確認するため、取締役会において「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、四半期に1回以上、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。リスク・コンプライアンス委員会においては、継続的なリスクの把握と改善活動となるリスクマネジメントに取組み、議論、検討された事項については、定期的、または重要なリスクが発生した場合には随時に取締役会に報告を行っております。
2024年3月期におきましては、サプライチェーン等における人権尊重の機運の高まりを受けて、当社の人権方針を定めました。(https://www.et-x.jp/company/human_rights/)継続的・自律的なデュー・ディリジェンスを実践するため、リスク・コンプライアンス委員会において進捗および結果のモニタリングを担う体制も整備しております。
当社が認識するリスク事象につきましては、
1.経済環境 2.自然災害 3.法律・規制(人権を含む)
4.レピュテーション 5.不正 6.製品/サービスおよびオペレーション
7.システム 8.人材・労務 9.ガバナンス
のカテゴリごとに想定する事象を潜在リスクとして抽出しております。次に、抽出した事象を発生可能性(3段階)と財政状態及び経営成績に与える影響(4段階)の区分で分類した象限に評価・プロットし、リスクマップを作成しております。このリスクマップにプロットされたリスクは、発生可能性と影響度の高いものから低くする取組みとともに、社会や市場の環境、経営状況や人材の状況を勘案して、定期的に見直しを行っております。
こうした手続きを踏まえた上で、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社はこれらの事業等のリスクを認識した上で、その回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社株式への投資判断は本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)製品及びサービスについて
①製品競争力について
「ESS REC(REC)」は、克明な操作記録と検索性によって、システム証跡監査ツール市場を創出してきた主力製品でありますが、近年、システム証跡監査ツール市場の認知度が高まるとともに、海外製品も含めた新たな類似製品の参入が続いております。
また、2021年3月に販売を開始した、企業のDX推進を支援する次世代型特権ID管理ソフトウエア「ESS AdminONE」は、より市場規模の大きい特権ID管理ツール市場において後発製品ではあるものの「REC」と組み合わせて総合的な特権ID管理を実現するソリューションとして提案し、国内外の競合製品からの差別化を図っております。さらには、「ESS REC Cloud」では広く普及しているクラウド環境にも対応しております。2023年4月に販売を開始した「ESS REC 6」は、働き方改革をサポートするために、テレワーク時のモニタリングとともに操作者の常時本人確認を行うことで高いセキュリティを確保しております。2024年5月には、在宅・リモートにおけるシステム操作の安全性の担保やブラウザ操作の証跡機能を強化するなど複数の機能を追加して、差別化を進めております。
当社成長の源泉はこれらの製品によるライセンス売上であるため、当社製品と比較して高機能であったり、同等の機能でありながら「低価格」を設定するような強力なライバル製品の出現によって「REC」の優位性が失われた場合や、「ESS AdminONE」「ESS REC Cloud」等他製品でも競争力が保てない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②製品開発について
当社の製品開発の基本スタンスは、システム運用の安全と安定を実現するためのパッケージソフトウエアを提供することにあります。当社では、システム運用のあるべき姿を汎用的に捉えて製品を企画し開発を行うため、開発した製品やサービスが各顧客ごとのシステム運用現場の環境や実運用に適さないことにより、市場に受け入れられない場合があります。また、使い易さ、技術革新への対応の遅れなどの機能面や価格面において他社製品に劣るなどの理由によって、売上貢献できない場合もあります。さらに、企画した時点の計画よりも大幅に製品開発に時間を費やした場合や、開発した製品に不具合があり、当該不具合の改修に多大な工数を要する場合もあり、いずれの場合においても開発費用の回収を実現することが出来ず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ライセンスに付随する保守サポートサービス及び品質について
当社製品の使用許諾(ライセンス)契約をされた顧客に対しては、原則として保守サポートサービス契約を締結していただき、当社製品の最新バージョンの提供と顧客のシステム環境下で、安定的に使用いただけるようサポートを行っております。顧客のシステム更改で新システムに当社製品が採用されない場合や、システムの縮小・廃止などによる保守契約の解除や変更、また重大な製品の欠陥やインシデントの解決が長期化するなどによって顧客の信頼を損ね保守契約の更新に繋がらない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④コンサルティングサービスについて
当社はコンサルティングサービス業務として、当社製品の導入にあたっての導入支援やシステム構築支援をメニュー化して提供しております。「ESS SmartIT Operation」の展開に伴って、従来の単体製品のインストールや各種支援からIT全般統制に向けたシステム構築の支援へと、システム要件の拡大や役務提供範囲が拡大しております。
したがって、要件実現に向けて当社の役務提供範囲や検収条件及び納期設定、提出書類の品質に至るまでのマネジメントが要求されます。何らかのトラブルによって検収の遅れや見積以上の工数が発生しても顧客に請求できない場合、あるいは顧客の要求仕様との齟齬が生じ、損害賠償や補償作業を要求された場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)特定取引先に対する取引依存について
当社においては、全売上高に占める株式会社NTTデータへの売上高の割合が高く、2023年3月期は19.7%、2024年3月期は19.3%となっております。株式会社NTTデータとは代理店契約を締結し、取引開始以来永年にわたり安定した取引を継続しておりますが、今後当該契約が何らかの理由で変更あるいは解消された場合には、当社の財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)人材の確保及び組織的経営について
①人材確保について
当社は、AI技術やクラウドサービス、最新のセキュリティ対策などを盛り込んだ次世代型新製品の開発、既存製品の拡張・改良及び製品の統合化などの研究開発テーマに取り組んでおり、これらの業務にあたる開発技術者の増強を図っております。またコンサルティング業務やサポートサービス業務に従事するシステム技術者の増員に加え、営業職人材の獲得も喫緊の課題となっております。IT技術者不足による賃金の高騰とこれに伴う人材市場の流動化、少子化による新卒採用の売り手市場化により、今後も採用は困難な状況が続くものと考えております。
こうした状況を鑑み、2022年3月期より人事制度を刷新し、育児・介護に関する諸制度や在宅勤務、時短勤務など柔軟な働き方を導入するとともに、職務記述書にもとづく公平・公正な評価制度を実施しております。2024年3月期に行った若手・中堅層を中心に平均9.2%の賃金のベースアップ、新卒初任給の11.1%アップに続き、2024年4月からも全社員平均で6%の賃上げを行い、キャリア採用ならびに新卒採用時の競争力を高めるとともに、離職の防止に取り組んでおります。採用した社員に対しては専門技術教育とOJTによる育成を行い、スキルアップによる能力の発揮と、さらなるモチベーション向上による定着化を図っております。また、在宅勤務が定常化する中でも一般社員と経営者、幹部社員間のコミュニケーションを密にする一体感醸成施策を実施するなど、生産性の向上と仕事や会社生活に関する不安や不満を解消し離職防止にも努めております。
IT技術者の確保が計画通りに進まない場合、研究開発の遅れによる製品リリースの遅延が発生する可能性があり、これにより、連携する営業施策を変更する可能性があります。加えて営業職の人材確保が計画通りに進まない場合は顧客開拓の遅延や競合製品による商談の失注などにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は「人材」をマテリアリティ(重要課題)と位置付けており、「2サステナビリティに関する考え方及び取組」に具体的な内容を記載しております。
②組織的経営について
当社が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、事業計画の立案と実行、その業務進捗管理や部門間の連携などを担う多様性のあるマネジメント層の育成強化が課題となっております。事業基盤の拡大に併せて組織を成長させていくためには、業務執行レベルで部門責任者が意思決定を迅速に行い、全社横断的な課題を解決することが必要になります。
そのため、当事業年度より組織改革を行い、役割による組織化とともに次世代を嘱望する若手リーダーの抜擢により、次世代を担う人材が業務管理や部門間連携を図るなどのマネジメントスキルを体得する機会を創出しております。
現在のところ、技術部門のみならず全社において他社でのマネジメント経験を有するシニア・ミドル層の人材獲得とともに女性の幹部社員登用も進んでおりますが、次世代のリーダーや幹部社員候補育成の遅れなどによって事業計画の推進に支障をきたした場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権の侵害による訴訟リスクについて
当社は自ら開発した製品に係わる技術要件および商標について知的財産権を登録申請することによって、他社
からの権利侵害の防止を図っております。しかし、当社が認識していない知的財産権が既に成立している可能性
や、使用しているフリーソフトウエアが第三者の知的財産権を侵害している可能性は否定できず、当社製品を使
用する顧客あるいは当社の侵害について、第三者からの請求に対応する義務を当社は負っております。
このような知的財産権に関しての損害賠償請求、使用差し止め請求、ロイヤリティ支払要求が発生した場合、
その訴訟対応や費用負担により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)情報セキュリティに関するリスクについて
当社においては、オフィスでの執務だけでなく在宅勤務や協力会社のリモートワーク環境も取り入れ、常に
インターネットを利用したデータセンターのサーバー利用、メールの送受信や情報の発信、収集を行っており
ます。こうした環境では、コンピュータウイルスの侵入や標的型メールの攻撃等により、顧客や当社の機密情
報又は個人情報が当社外に流出する危険やランサムウエアによって当該情報が利用できなくなる可能性が常に
存在しております。また、社員(協力会社社員を含む 以下「社員」)だけでなく退職した社員が営業機密や技
術情報などを不正に入手し、外部へ持ち出す可能性があります。
当社では、社外からのネットワークの脆弱性を狙った攻撃やウイルス付メールなどに対し、ハードウエア、
ソフトウエアによる防御とともに社員への教育や啓蒙など、継続的に適切なセキュリティを向上させる対策を
講じております。また、社内からの不正な手段による情報の持ち出し、漏洩に対しても、「ESS REC」「ESS
AdminONE」など当社製品を導入しており、特に「ESS REC 6」では、常時本人認証の機能を活用してPC画面の覗
き見や他人のPC利用を制御しております。
また、リスク・コンプライアンス委員会の下に情報セキュリティ部会を設置し、情報セキュリティ対策およ
び活動計画の策定、実行の評価、情報セキュリティインシデントへの対応、社員に対する情報セキュリティ
に関する啓発と教育に取り組んでおります。
しかし、過去に例の無いウイルス攻撃等により当社が講じた対策が十分に機能しない場合や、当社製品の機
能を無効化するなどの悪意により、情報セキュリティに関するリスクが現実のものとなった場合には、社会的
な信用の失墜等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
(経営成績)
当事業年度における我が国経済は、2024年2月の月例経済報告で、景気は足踏みもみられるが、緩やかに回復し
ているとされているものの、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢、世界的な金融引締め、中国経済の先行き懸念など、不透明な要因は依然として存在しております。一方で当社が属する情報サービス産業は、人手不足を背景に業務の効率化や新しいIT技術の導入によるシステムの再構築、機能追加の需要が増加しております。IT活用の流れは堅調に推移しており、日銀短観2024年3月調査では、ソフトウエア投資計画が2023年12月調査から△3.2%下方修正されましたが、前年度比11.0%(全規模・全産業)の増加となっております。
このような状況の下、当社は「顧客ターゲット別の営業推進」「ソリューション強化」「新人事制度定着による生産性向上」を重点施策に掲げて事業に取り組んでまいりました。
「顧客ターゲット別の営業推進」の成果として、2023年10月にライセンス価格10%程度値上げを実施いたしまし
たが、顧客深耕営業に特化した第1営業部のライセンス売上が前年同期比で倍増したほか、営業体制強化の成果により全営業4部門で前年同期比のライセンス売上が増加しました。また、各種イベント出展やシステム管理者の内部不正による大量の個人情報漏洩事件を受けた緊急対策セミナーを開催するなどマーケティング活動において新規営業リード獲得や認知度向上に注力した結果、新規顧客数も前年同期比で増加いたしました。
「ソリューション強化」の成果として、特権ID管理製品は、「ESS AdminONE」の機能強化・競争力強化を図ることにより、ライセンス売上が増加いたしました。また、主力製品である「ESS REC」は、次世代型証跡管理製品
「ESS REC6」を2023年4月にリリースし、その後も機能拡張・強化による差別化を図ることなどにより、過去最高のライセンス売上となりました。さらに、2023年5月にサービス価格10%を値上げしたコンサルティングサービスについては、特権ID管理製品の新規構築サービスや移行サービスに加えて「ESS REC6」への移行サービスも寄与するなど案件の急増に対して、社内リソースを適切に配置し、改善活動を継続することにより、顧客満足度の高いサービスを提供いたしました。
「新人事制度定着による生産性向上」においては、制度導入から3年目となる当事業年度において平均9.2%の賃
上げを行い、新卒初任給も11.1%のアップを実現し、働き方や評価方法に加えて報酬の充実、モチベーションの向
上にも努めました。さらに、次世代リーダーを中心とするディスカッションにより当社のパーパス(「すべての人が安心してITを利用できる社会を創る」)を制定いたしました。将来にわたるICT社会において、当社の事業活動と社員一人ひとりの取組みが一体となって継続的に新たな価値を創造し続けるため、共通の志としてまいります。
以上の結果、当事業年度の売上高は、2,498,144千円(前年同期比17.8%増)となりました。ライセンス売上は、営業体制強化の成果により「ESS REC」「ESS AdminONE」両主力製品の販売が大きく増加したことにより38.3%の増加となりました。ライセンス売上に派生するコンサルティングサービス売上も、前年同期比で58.9%と大きく増加しております。
一方、賃上げ等による労務費・人件費が前年同期比で20.2%増加した他、前事業年度まで行ってきた「ESS
AdminONE」の機能拡張への投資に係る減価償却費の増加や、「ESS REC6」の拡販に向けた広告宣伝費の増加等もあり、売上原価並びに販売費及び一般管理費の合計額は2,179,227千円(前年同期比16.1%増)となりました。
これにより、営業利益は318,917千円(前年同期比31.0%増)、経常利益は321,331千円(同31.4%増)、当期純利益は218,857千円(同25.2%増)となりました。
(財政状態)
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べ674,399千円増加し、4,882,455千円(前事業年度末比16.0%
増)となりました。主として現金及び預金の増加364,152千円、売掛金及び契約資産の増加175,056千円、繰延税金資産の増加111,881千円によるものであります。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べ590,504千円増加し、1,456,641千円(前事業年度末比68.2%
増)となりました。主として未払法人税等の増加201,977千円、保守サポートサービス売上に係る前受金(契約負
債)の増加185,211千円、賞与引当金の増加96,276千円、その他に含まれる未払消費税等の増加57,313千円による
ものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べ83,894千円増加し、3,425,813千円(前事業年度末比2.5%
増)となりました。主として当期純利益218,857千円、剰余金の配当134,295千円によるものであります。
②生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は、パッケージソフトウエア事業を主たる事業としており、生産の概念を有しないため生産実績の記載を省略しております。
b.受注実績
当社は、受注確定から売上日までの期間は1ヶ月程度であります。よって、期末日現在の受注残高は、年間売上高に比して僅かであるため、その記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績を区分ごとに示すと、次のとおりであります。
(単位:千円)
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製品・サービスの名称 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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うちESS REC |
298,114 |
398,008 |
33.5% |
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うちESS AdminONE |
154,705 |
214,300 |
38.5% |
|
|
|
うちその他ライセンス |
49,547 |
82,464 |
66.4% |
|
|
ライセンス |
502,367 |
694,772 |
38.3% |
||
|
保守サポートサービス |
1,293,837 |
1,347,075 |
4.1% |
||
|
クラウドサービス |
87,699 |
103,404 |
17.9% |
||
|
コンサルティングサービス |
200,022 |
317,894 |
58.9% |
||
|
SIO常駐サービス |
24,673 |
26,734 |
8.4% |
||
|
その他 |
11,706 |
8,263 |
△29.4% |
||
|
パッケージソフトウエア 事業合計 |
2,120,306 |
2,498,144 |
17.8% |
||
(注)1.当社の報告セグメントは「パッケージソフトウエア事業」の単一セグメントであります。
2.ライセンス売上の区分につき、前事業年度において、その他ライセンスに含めておりましたESS AdminONEの売上は金額的重要性が増したため、当事業年度より独立掲記しております。
これにより、前事業年度の同製品の売上も独立掲記しております。
3.その他の主なものはハード・レンタル売上、SEER INNERのタームライセンス及び保守、販売奨励金等であります。
4.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)
|
当事業年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)
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||
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
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株式会社NTTデータ |
416,641 |
19.7 |
483,069 |
19.3 |
※2023年7月より株式会社エヌ・ティ・ティ・データから株式会社NTTデータに社名変更しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。財務諸表の作成に当たっては決算日における財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積りおよび予測を必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
②経営成績の分析
当社は、2022年3月期より ① 顧客ターゲット別の営業推進、② ソリューション強化、③ 新人事制度定着による生産性向上 の3点を重点項目と位置付け、2025年3月期も継続して取り組んでおります。2024年3月期における当該施策の分析と結果は以下の通りです。
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重点施策 |
活動結果と分析 |
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①顧客ターゲット別の営業推進 |
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当事業年度の取組み 顧客ターゲット別バーチャル組織 |
顧客ターゲット別のバーチャルな組織を編制し、それぞれに戦略の立案、実施によるPDCAを回すマネジメントに取組みました。 ・ 既存のお客様を中心により深く直販関係を築く営業組織 ・ インバウンドセールスなど純新規のお客様開拓を行う営業組織 ・ 大手SIerなどビジネスパートナー(代理店)と協業する営業組織 ・ 戦略的パートナーである株式会社NTTデータに対応した営業組織 こうした営業部門とともに、お客様の技術的課題に対して解決提案するプリセールス部門、製品導入後の保守とともに追加商談を獲得するサポート部門のそれぞれの担当SEが営業部門とバーチャルな組織として連携することにより売上拡大を図りました。
バーチャル組織による活動の下、ESS AdminONE/ESS REC6を梃子に新規開拓を目指し、 ・ マーケティングプロモーションならびに代理店販売強化により純新規顧客を獲得(目標50件超) ・ 既存顧客への営業・技術部門一体化により新規を獲得(目標110件超) の目標を設定いたしました。 また、賃金をはじめとするコストを健全に回収して利益を確保するため、 ・ 製品とサービスを5月から10%程度値上げいたしました。 ・ 既存契約の保守料金は2024年4月以降更新時から10%値上げを計画しております。 |
|
|
当事業年度の成果 |
バーチャル組織の活動により以下の成果となりました。 ・ 既存のお客様への深耕によりライセンス売上が2023年3月期に比べて38%拡大いたしました。 ・ 主力製品「ESS REC」の売上高が2023年3月期に比べて33%拡大し、14年連続で国内市場シェア1位を獲得いたしました。 ・ 特権ID管理製品「ESS AdminONE」の売上高が2023年3月期に比べて38%超の伸長となりました。 ・ サポート部門によるポストセールスの貢献もあり「ESS AdminONE」の導入が累計で180件を達成いたしました。 ・ 純新規顧客の獲得は37件(前事業年度比119%)となりました。 ・ 製品・サービス価格の改定につきましては、計画通り実行しております。 |
|
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②ソリューション強化 |
|
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当事業年度の取組み |
研究開発分野のソリューションの強化と協業ソリューション強化により、 それぞれの活動内容と目標を明確にして売上の向上に取り組みました。 ・「ESS REC 6」によるリモート運用市場開拓 ・「ESS AdminONE」IDaaS、SaaSへの対応、大規模ユーザー対応強化 ・「ESS REC 6」UNIX/Linuxへの対応、リモート運用市場創出のための機能強化 ・ 品質向上とテスト業務の最適化、効率化 |
|
当事業年度の成果 |
研究開発/協業両面のソリューション強化によって以下の成果となりまし た。 ・ 2023年4月に販売を開始した「ESS REC 6」は、カメラデバイスを使用してシステム操作者の常時本人確認や、操作環境といったコンピューター外の周辺環境も監視・記録することが可能になり、リモートワークが普及する社会環境において、引き合い、商談が増加して21件の受注となりました。 ・「ESS AdminONE 1.3」は、お客様からの要望が強かったSAML連携(注1)によるSaaS、PaaSへの対応強化などの機能拡張を進め、2024年5月より販売を開始しております。 ・「ESS REC 6.1」は、対応プラットフォームを拡充してLinux OSへの対応や本人確認機能の強化、ブラウザ操作の監視や証跡の強化を図るなどの機能を実装、強化し、2024年5月より販売を開始しております。 ・ 品質基準、メトリクス(注2)を定着化させ、シフトレフト(注3)による品質向上とテスト最適化、効率化を上記製品開発より適用しております。 (注1)SAML(Security Assertion Markup Language):Webサービス間で認証および認可情報を安全に共有するためのXMLベースの標準規格。 (注2)メトリクス:ソフトウエアの品質を数値化、定量化した管理指標。 (注3)シフトレフト:ソフトウエア開発の早い段階で品質のテスト、確認を行うアプローチ。 |
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③新人事制度定着による生産性向上 |
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当事業年度の取組み |
当期におきましては、新人事制度の定着とともに人材の確保と組織力の向上が喫緊の課題と捉え、以下の取組みを行っております。 賃上げによる人材の安定確保と採用の強化 ・若手ならびに中堅社員 平均9.2%ベースアップ ・新卒初任給 11.1%ベースアップ 次期リーダー層の実践によるマネジメント力の育成 ・グループ編制から機能単位の小規模な多チーム編制の組織へ変更 ・次期中核人材となる新任チームリーダーのマネジメント能力開発 |
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当事業年度の成果 |
人材の確保と組織力の向上の取組みにより以下の効果がありました。 ・賃上げにより約30百万円の増加(業績を反映した賞与を除く)となりましたが、残念ながら退職者は13名(前事業年度比5名増)となりました。退職者の増加理由として、2023年5月から新型コロナが感染症法上の5類に分類されたことで社会経済活動が活性化し、人材の流動性が高まったことと、独立・起業を目指す人材が増えたことに特徴を見ております。 ・次期リーダー層につきましては、小規模なチームを編制したことに伴い新規チームリーダー10名(うち女性リーダー3名)が活躍をしております。
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今後の取組みとしましては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境及び対処すべき課題(3)中期経営計画」に記載の通り、2031年3月期に向けて中長期にわたる経営計画を立案し、その初年度となる2025年3月期は以下の通り重点施策を定め、新たな活動に取り組んでおります。
2025年3月期 重点施策
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重点施策 |
新たな取組み |
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①フロー売上拡大 |
ライセンス売上拡大 ・代理店強化(主要代理店活性化、代理店契約条件最適化、主要代理店以外のアライアンス強化) ・エンタープライズユーザー獲得(インサイトセールスにより顧客深耕) ・マーケティング活動による純新規拡大(目標50社)
コンサルティングサービス売上拡大 ・AdminONE/ESS REC 6への移行提案の推進による案件増加 ・問題解決型の提案による新規導入案件増加 ・サービス部門統合によるサービス品質の強化 |
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②ストック売上強化 |
保守サービスの強化 ・2024年4月より更新契約の保守料10%値上げ ・保守更新率96%を目指す ・品質強化(品質保証部による牽制強化)
クラウドサービスの強化 ・ISO27001/27017取得による信頼性向上 ・エンタープライズユーザー向けサブスクリプション契約の創設 ・主要製品のクラウド(SaaS)によるサービス提供の検討を開始 |
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③役割による組織化ならびにタレントスキル向上による生産性向上 |
役割による組織化 ・プロダクト統括部 プロダクト(製品企画/製品開発/製品保守)に関する全責務と機能の集約 ・サービス統括部 SEサービス(Pre&PostSales(注)/Consulting&SI(企画含む))に関する全責務と機能の集約 ・セールス統括部 全品目の売上ならびに新規顧客獲得/既存顧客拡大に関する全責務と機能の集約
タレントスキル向上による生産性向上 ・新人+ポテンシャル採用 a.早期戦力化(現状より早くステップを上がる仕組み作り) b.入社後3年間の新しい教育計画の検討・決定(人事部門と現場部門による一体型教育) ・リーダー層(若手/中堅層) a.リーダー職基本研修の実施およびPDCAによる経験学習 b.2031年3月期を見据えた次世代リーダーの抜擢、育成 |
(注)Pre&PostSales;
PreSales :商談確定/受注前にお客様の利用条件等を鑑みて技術的提案を行う
PostSales :製品稼働後、お客様に対して能動的に利用状況の把握や利用環境の変化等を確認し、利用の促進、新たな課題への提案を行う
以下は、前年度実績対比及び2023年5月11日に公表の業績予想対比の分析を記載しています。
(売上高の状況)
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当事業年度の実績値 |
比較年度 |
増減金額 |
増減率 |
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2,498百万円 |
前事業年度実績対比 |
377百万円 |
17.8%の増加 |
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業績予想対比 |
48百万円 |
2.0%の増加 |
前事業年度の実績対比につきましては、ライセンス売上が38.3%増加、コンサルティングサービス売上が
58.9%増加したため377百万円(17.8%)の増加となりました。
業績予想比におきましては、ライセンス売上は業績予想並みもコンサルティングサービス売上が移行サービス
の増加により48百万円(2.0%)の増加となりました。
(営業利益の状況)
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当事業年度の実績値 |
比較年度 |
増減金額 |
増減率 |
|
318百万円 |
前事業年度実績対比 |
75百万円 |
31.0%の増加 |
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業績予想対比 |
68百万円 |
27.6%の増加 |
前事業年度の実績対比につきましては、賃上げ等による労務費・人件費が前年同期比で20.2%増加、ソフトウ
エア償却費が増加するも売上高の増加により営業利益は75百万円(31.0%)の増加となりました。
業績予想対比におきましては、売上高が計画比48百万円の増加、売上原価及び販管費が計画比20百万円減少した結果、営業利益は68百万円(27.6%)の増加となりました。
(経常利益の状況)
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当事業年度の実績値 |
比較年度 |
増減金額 |
増減率 |
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321百万円 |
前事業年度実績対比 |
76百万円 |
31.4%の増加 |
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業績予想対比 |
71百万円 |
28.5%の増加 |
前事業年度の実績対比につきましては、営業利益の増加により76百万円(31.4%)の増加となりました。また、業績予想対比につきましても、営業利益の増加により71百万円(28.5%)の増加となりました。
(当期純利益の状況)
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当事業年度の実績値 |
比較年度 |
増減金額 |
増減率 |
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218百万円 |
前事業年度実績対比 |
44百万円 |
25.2%の増加 |
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業績予想対比 |
43百万円 |
25.1%の増加 |
前事業年度の実績対比につきましては、法人税等の税金費用37百万円の増加はありましたが、経常利益の増加
および特別損失の減少により、当期純利益は44百万円(25.2%)の増加となりました。
業績予想対比におきましては、税金費用の増加がありましたが、経常利益の増加により当期純利益は43百万円
(25.1%)の増加となりました。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社を取り巻く事業環境は、主として企業のIT投資の動向によって影響を受け、とりわけ、金融業界への依存度が比較的高いため、規制当局の監査や指針による影響は無視できないものがあります。また、クラウド化の進展に伴ってデータセンター事業者の顧客情報保護のためのセキュリティ投資などが当社の経営成績に影響を及ぼす一因となります。その他当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
・資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社は、投資活動および財務活動に必要な資金を、営業活動によるキャッシュ・フローにて賄っており、銀行など外部からの資金調達は行っておりません。その結果、自己資本比率は70%となっております。
事業展開に伴う資金については、機動的な対応を可能とする十分な現金及び現金同等物として保有しております。当該資金を用いてIT人材の確保に投資を行うとともに日々変化し続ける情報技術の進歩に対するIT投資及び研究開発投資、ならびにM&Aなどに充当し、事業基盤の安定と企業価値の向上に努めてまいります。
株主還元に関しましては、株主配当においては配当性向33.3%以上を目安とし、自己資金で対応する予定です。
なお、配当政策につきましては「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりです。また、自己株式の取得については、キャッシュ・フローの状況を総合的に勘案し、機動的な資本政策の遂行を目的に、適切な時期に実施いたします。
・当事業年度における各キャッシュ・フローの分析・検討内容
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,556,938千円(前事業年度末比
364,152千円増)となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、862,636千円(前事業年度は3,876千円の資金増)となりました。主な収入要因は、税引前当期純利益321,331千円、減価償却費373,608千円、保守サポートサービス売上に係る前受金(契約負債)の増加185,211千円、賞与引当金の増加96,276千円によるものであります。主な支出要因は、売掛金及び契約資産の増加175,056千円、法人税等の支払19,409千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果支出した資金は、364,188千円(前事業年度は226,661千円の資金減)となりました。主な支出要因は、製品の拡張・改良の推進に伴う市場販売目的ソフトウエア等の無形固定資産の取得による支出340,797千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果支出した資金は、134,295千円(前事業年度は120,865千円の資金減)となりました。配当金の支払額によるものであります。
なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリーキャッシュ・フローは498,447千円の資金増となりました(前事業年度は222,785千円の資金減)。投資活動によるキャッシュ・フローが前事業年度比137,527千円増加の364,188千円の支出となったものの、税引前・減価償却費前当期純利益が前事業年度比348,977千円増加の694,939千円と伸長したことや、保守サポートサービス売上に係る前受金(契約負債)の増加185,211千円等により、営業活動によるキャッシュ・フローが862,636千円と、大幅に増加したことによるものであります。
2024年3月31日現在、以下の経営上の重要な契約を締結しております。
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相手先の名称 |
契約の名称 |
有効期間 |
契約の概要 |
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株式会社NTTデータ |
代理店契約書 |
2007年12月5日から2008年12月4日まで。以降は1年毎の自動更新 |
当社パッケージソフトウエア製品の販売及び保守サポートサービスの提供 |
※2023年7月より株式会社エヌ・ティ・ティ・データから株式会社NTTデータに社名変更しております。
当社は、システム運用を安全かつ安定的に稼動させるために、システムリスクとヒューマンリスクの両面からのアプローチによって、最適なソリューションをパッケージソフトウエアで提供しております。研究開発活動においては、主力製品である「ESS REC」の大幅な機能強化(次世代型システム証跡管理製品)とAIを搭載した本人確認によるなりすまし防止製品の2つの新製品開発プロジェクトを行ってきました。
当事業年度においては、2023年4月に「ESS REC 6」をリリースし、上記新製品開発プロジェクトが終了したため、当事業年度の研究開発費は、前事業年度に比し344,749千円減少し、