第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)事業環境の変化

リアルとオンラインが共存した働き方・ライフスタイルが定着し、AI・ロボティクスの進化・活用の拡大、デジタルトランスフォーメーション(DX)が引き続き進展する一方で、消費電力の増大や監視社会等のデジタル化の負の側面が課題となっています。また、経済安全保障の重要性の増大や世界規模での自然災害の激甚化等、環境が大きく変化しています。

 

(2)NTTグループ中期経営戦略に基づく事業展開

NTTグループは、新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」に基づき、お客さまと社会のために新たな価値を提供し、事業そのものをサステナブルな社会の実現へとシフトすることで、地球のサステナビリティを支える存在になるべく取組みを推進していきます。

 

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新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ

AIの活用拡大等に伴う消費電力増大への解決策として、低消費電力を実現する光電融合デバイスの早期事業化を進めるとともに6G等を含むIOWN研究開発・実用化の加速に向けて、今後も継続的に資金を投下し、サーバー(DCI※1)やデジタルツインコンピューティング等の実用化を推進していきます。

また、個人のお客さまを中心としたパーソナルビジネスの強化に向けては、スマートライフ事業の強化を図り、今後5年間で約1兆円以上の投資を実施します。例えば、金融やヘルスケア・メディカルといった様々な分野のサービスの拡充・高度化に取り組むとともに、サービスを通じて得た様々なデータを分析することで、よりパーソナライズされた最適なサービスの提供につなげていきます。

企業等のお客さまに対しては、AI・ロボット、IOWN・デジタルツインやセキュリティ等の技術を活用してソリューション・サービス、プラットフォーム・サービスをグローバルで展開し、生活や社会を支える産業を変革していきます。この分野には、今後5年間で約3兆円以上の投資を実施します。

データセンターについても、NTTグループのデータセンター基盤をさらに拡張するとともに、IOWN技術の導入により高度化を推進するために、今後5年間で約1.5兆円以上の投資を実施し、データセンターの容量も倍増していきます。

さらに、グリーンエネルギーとICTの組み合わせにより実現するグリーンソリューションを推進し、再生可能エネルギー発電事業を拡大するとともに、蓄電池やEMS※2等を活用した地産地消型で最適化・効率化された電力の安定供給実現をめざします。また、循環型社会の実現に向けて、再生可能エネルギーに加え、様々な産業間で廃棄物の再利用等を進め、資源を循環させることで持続可能な社会を実現していきます。加えて、IOWN、5G/IoT、AI・ロボットの活用により、一次産業の効率化・付加価値化を進め、産業振興、地域創生に貢献します。

事業基盤の更なる強靭化については、これまでの通信故障等の反省や教訓を活かし、大規模故障やサイバー攻撃等の発生を踏まえた強靭なネットワーク/システムを実現し、社会インフラを強化するとともに、激甚化する自然災害等への対策を強化します。

加えて、災害対策の更なる強化と世界標準のサイバーセキュリティ対策を進め、安心・安全なサービス提供に取り組みます。

※1 Data Centric Infrastructure

※2 Energy Management System(エネルギーマネジメントシステム)

 

お客さま体験(CX)の高度化

研究開発推進機能とマーケティング機能、アライアンス機能を融合した研究開発マーケティング本部を2023年6月に新設しました。プロダクトアウト型の研究開発の強化に加え、グローバルでお客さまやパートナーとコラボレートしながら、研究開発からプロダクト提供まで行っていきます。また、様々なパートナーとのアライアンスを推進し、あらゆるステークホルダーをお客さま・パートナーとして捉え、お客さま体験ファーストを推進していきます。

カスタマージャーニーに寄り添いながら、アジャイルでサービスを常に改善・アップデートしていくことで、お客さまの期待を超える新たな体験や感動を提供し、選ばれ続けるNTTグループをめざします。

 

従業員体験(EX)の高度化

世の中に価値あるものを生み出しサステナブルな社会を作る原動力として、NTTグループはEXを重視し、人が価値を生む好循環を実現していきます。そのために社員の自律的なキャリア形成を支援し、新たな価値創造を通じて事業の成長を支える人的投資を拡大します。専門性を軸とした人事制度に基づき、18分野の専門性を高めるための社外資格取得支援や研修メニューの充実、社員のキャリアデザインのアドバイスを行うキャリアコンサルティング機能の充実等を図るとともに、出産、育児、介護等のライフイベントのサポートも含めたトータルなキャリア形成を支援していきます。また、「オープンで革新的な企業文化へ」のトライ&エラー、失敗をおそれず挑戦する文化の浸透を図っていきます。

 

(3)中期財務目標

 新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」中期財務目標

目標指標

目標水準(2027年度)

全社目標

EBITDA

+20%

増加(対2022年度)

 

 

 

 

 

 

成長分野

EBITDA

+40%

増加(対2022年度)

海外営業利益率

10%

(2025年度)

既存分野

EBITDA

+10%

増加(対2022年度)

ROIC(投下資本利益率)

9%

(2022年度実績:8.2%)

 

上記に加え、サステナビリティ関連指標を設定

 ・女性の新任管理者登用率  : 毎年30%以上

 ・温室効果ガス排出量    : 2040年度カーボンニュートラル、ネットゼロをめざす

 ・従業員エンゲージメント率 : 改善

 

(注)1. 海外営業利益率の集計範囲は、NTTデータグループ連結です。また、買収に伴う無形資産の償却費等、一時的なコストを除いて算定します。

2. 成長分野は、IOWN、デジタル・データセンター、電力・エネルギー、スマートライフ、不動産、AI・ロボット等です。

3. 既存分野は、NTTドコモのコンシューマ通信事業、NTT東日本、NTT西日本です。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

〇 NTTグループサステナビリティ憲章

NTTグループは、サステナビリティ憲章を制定しています。高い倫理観と最先端の技術・イノベーションに基づくIOWN構想の推進により、①「自然(地球)」との共生(環境とエネルギー課題への対応)、②「文化(集団・社会~国)」の共栄(社会課題への対応)、③「Well-being(幸せ)」の最大化(人権及びダイバーシティ&インクルージョンへの対応)に取り組んでいます。これらの取組みを通じて、企業としての成長と社会課題の解決を同時実現し、持続可能な社会の実現に貢献しています。

 

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また、2023年5月には新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」を発表しました。新たな価値創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTをめざす等、様々な取組みを進めています。

 

 

 

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(1)サステナビリティに関するガバナンス

NTTグループでは、サステナビリティの推進を重要な経営課題と捉え、特に重要な事項については取締役との議論を踏まえて決定しています。

取締役による監督体制としては、取締役会直下にサステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置し、グループ全体の活動方針やその進捗状況を管理しています。サステナビリティに関する方針(憲章及び付随する方針等の制定・改廃、特に重要な指標の決定)は、サステナビリティ委員会を経て取締役会で決定しています。

サステナビリティに関する課題のうち、重要な解決すべき課題・アクティビティとして選定したプロセスについては、2021年度に、第三者機関・ISO26000・GRI Standards等評価機関、SDGs、世界トレンド、社内ワークショップ、他企業のマテリアリティ等を参考に、サステナビリティを取り巻く新たな課題を網羅的に考慮し、NTTグループとして取り組むべき課題をグローバル規模で議論、選択し特定しました。また、取り組むべき優先度については、「企業としての成長」と「社会への課題解決」へのインパクトの両面で評価を行い、社会課題の解決と事業の成長を同時実現するマネジメントをめざし、外部有識者の意見も取り入れ、優先度を評価しました。

サステナビリティを巡る課題及びその優先度の設定に関する妥当性は、サステナビリティ委員会で審議した後、取締役会にて定期的(年1回)にレビューし、随時見直しを行っています。

また、①気候変動、②人的資本、③新たな価値創造、④レジリエンスの4項目をサステナビリティに関する重要項目としています。

 

 

(2)サステナビリティに関するリスク管理

サステナビリティに関する重要項目のリスクや機会については、サステナビリティ委員会に付議し、取締役会に報告しています。なお、NTTグループのリスク管理プロセスとして、身近に潜在するリスクの発生を予想・予防し、万一リスクが顕在化した場合でも損失を最小限に抑えること等を目的として、リスクマネジメントの基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を制定し、代表取締役副社長が委員長を務めるビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、リスクマネジメントのPDCAサイクルを構築し運用しており、サステナビリティ関連のリスクの識別、評価、管理に関するプロセスはNTTグループの総合的なリスク管理プロセスに統合されています。

 

 

 

(3)戦略、指標及び目標

① 気候変動

〇 気候変動に関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み)

 

気候変動問題が世界的に重要なリスクとして広く認識されている中、NTTグループの気候変動や資源循環・生物多様性等への対応や開示が不十分と評価された場合には、顧客・パートナー・株主・社員・地域社会等のステークホルダーからの理解が十分に得られず事業運営に支障をきたす可能性があります。また、新たな法令・規制の導入や強化等がなされた場合にはコスト負担が増加する等、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、環境エネルギービジョン NTT Green Innovation toward 2040を策定し、2040年度のカーボンニュートラル(Scope1&2)実現に向けて環境負荷低減の取組みを推進しています。また、この取組みをScope3に拡大し2040年度のネットゼロ(Scope1&2&3)もめざしています。そのため、自らのグリーン電力化の推進として再生可能エネルギーの活用を進めるほか、圧倒的な低消費電力をめざしたIOWNの研究開発の推進、インターナルカーボンプライシング制度の活用、グリーンボンドの活用、サプライヤとの更なる連携強化、お客さまの脱炭素への貢献等を進め、環境エネルギーへの取組み及び情報開示の充実を図っています。また、資源循環に関するリスクへの対応として、通信設備・携帯端末等(金属、プラスチック等)のリユース・リサイクルや、有害廃棄物の適正な処理、保管・管理徹底等に努めているほか、生物多様性に関するリスクへの対応として、自然保護区等における事業状況等に関する調査及び情報開示の充実等を進めていきます。

機会への対応としては、データセンターにおける再生可能エネルギーメニューの提供拡大や、温室効果ガス排出量可視化プロセスの構築支援、法人や個人のお客様に対するグリーン電力販売の拡大等に取り組んでいます。また、グリーンエネルギー×ICTで実現するグリーンソリューションの推進、再生可能エネルギー発電事業の拡大及び地産地消型の最適化・効率化された電力の安定供給の実現や、様々な産業間での資源の循環、地域創生の更なる加速による循環型ビジネスの創造を進めていきます。

 

〇 気候変動に関する指標及び目標

 

指標

目標

実績

温室効果ガス排出量

[Scope1&2]

2030年度:80%削減(2013年度比)

2040年度:カーボンニュートラル

[Scope1&2&3]

2040年度:ネットゼロ

[Scope1&2]

2023年度(速報値):

242万t、48%削減(2013年度比)

[Scope1&2&3]

2023年度(速報値):

2,131万t、25%削減(2018年度比)

(注)1. 温室効果ガス排出量の集計範囲は、当社及び連結子会社です。

2. 温室効果ガス排出量(Scope1,Scope2,Scope3)の確報値は、2024年10月頃、当社コーポレートサイトに掲載予定です。
・NTTグループの環境活動 環境データ 詳細データ集(GHG):

   https://group.ntt/jp/environment/data/data/ghg.html

3. Scope1&2は、日本政府が掲げる地球温暖化対策計画に合わせ2013年度を基準年に、Scope3を含むScope1&2&3は、海外グループ会社を含む現在と同等の集計範囲での算定を開始した2018年度を基準年に設定しています。

 

 

② 人的資本

〇 人的資本に関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)

 

<従業員体験(EX)の高度化>

情報通信及び関連する市場では、クラウドサービスや5Gサービスの拡大に加え、AI、デジタルツイン、量子コンピューティング等の技術が急速に進展しています。国内外の様々なプレイヤーが市場に参入し、サービスや機器の多様化・高度化が急速に進んでおり、今後、クラウドサービスやAIを中心とした変化が一層加速していくと見込まれます。また、2023年5月に発表した新中期経営戦略の取組みの柱にも成長分野への積極投資を掲げ、IOWN関連、スマートワールド、グリーンソリューション等新たな価値創造に注力しています。このような状況の中で、EXの強化は、生産性や創造性の向上、及び優秀な人材のリテンションのために重要です。EXの低下は、新技術の開発、新サービスの企画、既存サービスの改善、成長戦略の実行等に影響を及ぼす場合があり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、従業員エンゲージメント調査を実施し、把握した課題の改善に向けた取組みを強化しています。調査結果の分析及び改善に向けた各種取組み方針について、サステナビリティ委員会や執行役員会議等に付議し、社員へのフィードバックも実施していきます。エンゲージメントに影響を与える内容に関しては、各種人事施策とのクロス分析も実施し、各種人事施策をモニタリングし、PDCAを回すことでエンゲージメント向上を推進していきます。また、戦略の理解や浸透に向け、経営幹部と社員の双方向のコミュニケーションの場の整備も行います。あわせて、多様な人材が活躍できるための環境整備も、従業員エンゲージメント向上を支える基盤となることから、ワークインライフの実現に向けた取組みを継続します。

機会への対応としては、社員のチャレンジ意欲の向上や専門性の獲得によりキャリア上の目標達成や働きがいが向上し、それにより従業員エンゲージメントが高まることで、NTTグループとしての労働生産性や創造性が向上すると考えています。

 

<人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針>

NTTグループでは、多様な人材が入社からキャリアを自律的に考え、業務経験を積み、研修等でスキルを補完し、振り返りや棚卸を経て新たなチャレンジをすることが、EX向上の鍵となると考えています。社員一人ひとりが自律的なキャリア形成を実現するために、下図のような環境を提供し、成長支援と多様な働き方・働く環境整備の両面から各種人事施策を展開していきます。

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社員の成長支援として、2021年10月から全管理職に導入しているジョブ型の人事給与制度は、年次・年功から脱却し、従来の適材適所から適所適材へと転換を図り、会社業績や個人の業績と報酬がより連動する仕組みとしました。これにより、戦略実現に必要な役割・仕事(ポスト)に見合う人材の配置を可能とし、社員のチャレンジ機会の創出・拡大を図っています。また、一般社員については、高い専門性やスキルを発揮し、自らのキャリアを切り拓き、真に実力あるプロフェッショナル人材へと成長していくことを目的として、2023年4月に新たな人事給与制度を導入しました。採用・育成・配置全てのフェーズにおいて、専門性を意識した運用へ転換を図り、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。このような人事制度改革を推進していくことで、当事業年度の管理職の抜擢率(2023年7月の人事異動で、これまでの昇格ペースを上回る抜擢となった管理職の割合)は18.8%、一般社員の抜擢率(2023年10月の一般社員昇格タイミングにて、これまでの昇格ペースを上回る抜擢となった社員の割合)は10.0%という結果となり、自律的なキャリア形成、チャレンジを後押ししています。

また、高い専門性やスキルの獲得の実効性を高める観点で研修メニューを拡充しています。約650講座の研修メニューを準備し、社員は自身のキャリアプラン、スキルアップ計画に応じてこれらの研修メニューを選択し、学習を実施することができます。さらに、社員が主体的・自律的にキャリアデザインをすることをサポートするために、2023年7月よりグループ専用のキャリアコンサルタントを配置しました。国家資格を有し、経験豊富なコンサルタントが、個々の社員に寄り添ったキャリア相談に応じています。

加えて、多様なキャリアパス実現にむけ、公募やダブルワークを推進しています。人事異動における自発的なチャレンジを支援する仕組みとして、常時募集を行いタイムリーに応募が可能な"NTT Group Job Board"を開設し、2023年7月1日に開始して以降、9ヶ月間で約750件の応募がありました。これは1年間に換算すると、前年度まで実施していた旧公募施策と比べて約6倍の応募数となります。また、社員自身のスキルの研鑽や自律的なキャリア形成を支援するため、現在の所属組織での業務を継続しながら、勤務時間の一部を他組織での業務に充てることができる社内副業の仕組み(ダブルワーク)を整備しました。NTTグループで働く社員の積極的なチャレンジや自己成長につながる環境整備を継続推進していきます。

多様な働き方・働く環境整備として、リモートスタンダード、ハイブリッドワークを推進しています。リモートスタンダードやコアタイムを設定しないフレックスタイム、分断勤務の導入等により、働く時間・働く場所・住む場所の自由度が高まり、社員のライフスタイルに応じたワークスタイルの選択肢は、さらに拡大しました。対面と非対面の双方のよさを組み合わせた最適な働き方(ハイブリッドワーク)を実践し、社員の働き方の柔軟性と組織・チームの生産性向上の両立をめざしていきます。自律的な働き方(働き方を選択できる)とエンゲージメントについては、ポジティブな相関性があることが分かってきており、引き続き多様な働き方・働く環境整備を推進していきます。

また、NTTグループの持続的成長と、サステナブルな社会の実現のために、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。外部環境の変化に柔軟に適応し、新たな価値を創出し続ける企業であるためには、同質的な組織から、多様な人材が活躍する組織へと自ら変革する必要があると考えています。具体的な取組みとして、経営中核人材への継続的な女性の輩出をめざし、“NTT University”において対象者の女性比率を30%以上確保しているほか、女性の新任管理者登用率30%以上を目標に掲げ、各階層の女性社員に対する研修、育児休職復帰者及び上司向けの研修等を実施しています。さらには、女性・障がい者・LGBTQ等、属性のマイノリティや子育て・介護等の制約を持つ社員が働きやすい職場環境を構築するため、人的ネットワークの構築や周囲(特に上司)の知識習得・マインド改革・風土醸成のための研修等を実施しています。

さらに、社員のワークインライフの充実に向け、積極的な育児参画、介護・治療の両立ができる職場環境づくりを進めています。男性の育児事由休職・休暇取得率については、2023年度の目標100%に対し、実績は128.5%となりました。そのうち、育児休職の取得者は39.5%(対前年+11.1%)と、短期の休暇ではなく育児休職を取得する社員の比率が上昇しました。引き続き、長期の育児休職が取りやすい環境構築を推進していきます。

 

<健康・安全>

社員の健康・安全が十分に確保できない場合、労働生産性の低下等に繋がり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、労働基準法等の関係法令の遵守はもとより、安全管理及び健康管理を目的に安全管理規程、健康管理規程等を定めています。NTTグループの事業を支える電気通信設備工事における事故の防止や安全な作業環境の整備に向け、委託先会社等の協力会社も含めたNTTグループ全体で各種対策や安全意識の向上に継続的に取り組んでいます。

機会への対応としては、従業員の健康維持・増進への取組みがモチベーションや生産性を向上させ、企業の収益拡大にもつながるとの方針のもと、経営戦略の一環として健康経営に取り組んでいます。具体的には、スマートフォンアプリ(dヘルスケア)を活用した社員の健康活動促進のための取組みや、社員の健康状態・変調を把握するための定期アンケート(パルスサーベイ)、外部相談窓口による健康相談・メンタルヘルスカウンセリングの実施といった取組みを進めています。

 

<人権>

当社グループ及びサプライチェーンにおいて強制労働や児童労働等の人権侵害行為が発生した場合には、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、外部評価機関も活用した人権デューデリジェンスの実施や、人権課題に関する研修、人権に関する相談窓口の設置・運営等、グループ一体となった人権意識の向上、人権マネジメントの強化に取り組んでいます。あらゆる人権問題が生まれている昨今の状況を鑑み、サプライヤのみならず、社内における人権デューデリジェンスについても対象範囲を拡大し実施を図ります。

機会への対応としては、人権デューデリジェンスにおける改善要請が必要なサプライヤや改善要請が必要な全てのNTTグループ事業会社への直接対話の実行及びそれらのプロセスや結果を情報開示することにより、ステークホルダーの皆さまから信頼される企業として、ブランドイメージの向上につながると考えています。

 

〇 人的資本に関する指標及び目標

 

指標

目標

実績

従業員エンゲージメント率

改善(2022年度(57%)比)

2023年度:54

女性の新任管理者登用率

毎年:30

2023年度:27.9

男性育児休業取得率

毎年:100

2023年度:128.5

重要サプライヤとの直接対話率

2024年度

2023年度:100

改善要請が必要なサプライヤとの直接対話率

2024年度100

(注)1. 従業員エンゲージメント率の集計範囲は、国内グループ約100社(今後、海外グループ会社含め拡大予定)です。

2. 女性の新任管理者登用率及び男性育児休業取得率の集計範囲は、国内主要5社(当社、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本、NTTデータグループ)です。
※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズの数値が含まれます。また、NTTデータグループにはNTTデータ及びNTT DATA,Inc.の数値が含まれます。

3. 重要サプライヤとの直接対話率の集計範囲は、NTTグループ全調達額の90%以上を占める重要サプライヤ(約140社)のうち、年間40社程度です。

4. 人権デューデリジェンスの実効性を高めるため、2024年度より人権に関する指標を、重要サプライヤとの直接対話率から改善要請が必要なサプライヤとの直接対話率に変更します。

 

(参考)多様性に関するその他の指標及び目標

 

指標

目標

実績

女性

採用率

毎年:30%

2023年度:33.4%

管理者比率

2025年度:15%

2023年度:11.8%

役員比率

2025年度:25~30%

2024年6月:23.7%

外部人材

中途採用比率

2024年度:-

2023年度:42.4%

(注)1. 上記指標の集計範囲は、いずれも国内主要5社(当社、NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本、NTTデータグループ)です。

※NTTドコモにはNTTコミュニケーションズの数値が含まれます。また、NTTデータグループにはNTTデータ及びNTT DATA,Inc.の数値が含まれますが、女性役員比率についてはNTTデータ及びNTT DATA,Inc.の数値は含まれません。

2. 当社における有価証券報告書提出日現在の女性の役員比率は、取締役40.0%、監査役40.0%、執行役員33.3%です。

3. 中途採用比率については、2021年度に設定した目標(2023年度:30%)を3事業年度連続で達成していることから、2024年度は実績のモニタリングのみ継続します。

 

 

③ 新たな価値創造

〇 新たな価値創造に関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み)

 

<お客さま体験(CX)の高度化>

NTTグループは、お客さまの新たな体験や感動創造の高度化に向け、様々なパートナーと連携し、新たな価値の創造及び社会的課題の解決をめざす取組みを推進しています。お客さまに新たな価値を提供するビジネス創造が想定どおりに進展しなかった場合、市場競争力が低下し、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、社長を委員長とするマーケティング戦略委員会を設置・運営しているほか、各社にCXを検討するCX推進ラインを組成し、各社にて実施している、お客さまの声を収集し、サービス改善へ取り込むプロセスの可視化等の取組みを進めています。また主要会社にCCXOを設置するとともに、2024年度から主要会社の注力領域事業を対象に、非財務指標の重要指標として顧客エンゲージメント指標を設定し、グループのCX向上の取組みを加速・強力に推進していきます。

機会への対応としては、グループ横断の社内カンファレンスの開催等を通じて、各社の優良事例の水平展開によるビジネスの拡大に取り組んでいるほか、CXを重視したサービスの強化として、主要事業会社の注力領域におけるサービスやソリューションを対象にお客さま体験ファーストでのアジャイルな改善、アップデートを実施しています。カスタマージャーニーに寄り添いながらアジャイルでサービスを常に改善・アップデートしていくことで、お客さまの期待を超える新たな体験や感動を提供し、選ばれ続けるNTTグループをめざします。

 

<知的財産>

NTTグループや事業上のパートナーがその事業を遂行するために必要な知的財産権等について、その一部であっても当該権利を他者が保有する場合には、当該他者から実施許諾等を得ることを基本としています。もし、当該他者から実施許諾等が得られない、あるいは、許諾が失効した場合には、NTTグループや事業上のパートナーの特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなるリスクがあります。

また、NTTグループが他者の知的財産権等を侵害したとの主張を受けた場合には、その解決に多くの時間と費用を要する可能性があり、さらに当該他者の主張が判決等により認められた場合は、当該他者への損害賠償責任等の発生、権利を侵害した事業の差止め等の可能性があります。

さらに、NTTグループが保有する知的財産権等について、第三者による不正な使用等により、本来得られる知財収入が減少したり、競争上の優位性が損なわれることで、NTTグループの経営成績や財務に影響を与える可能性があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、権利調査による状況把握や戦略的な権利化を実施する等、他者が保有する知的財産権等への対策を講じています。

機会への対応としては、事業活動の源泉となる研究開発成果を、特許に代表される知的財産権として積極的に保護、他者の権利を尊重しながら適切な活用と社会実装を進め、事業優位性の確保とともに、社会課題の解決に努めています。

 

〇 新たな価値創造に関する指標及び目標

 

指標

目標

実績

B2B2X収益額

2024年度:-

2023年度:10,581億円

顧客エンゲージメント

[NPI]

改善(前年度比)

[NPS]

改善(前年度比)

[NPI]

[NPS]

(注)1. B2B2X収益額の集計範囲は、総合ICT事業セグメント、地域通信事業セグメント、グローバル・ソリューション事業セグメントです。

2. CXをより強化する観点から、2024年度より新たな価値創造に関する指標を、B2B2X収益額から顧客エンゲージメントに変更します。顧客エンゲージメント NPI(Next Purchase Intention)は継続利用意向、NPS®(Net Promoter Score®※1は他者への推奨度を測る指標です。顧客エンゲージメントの対象は、NTT東日本、NTT西日本並びにNTTドコモ※2の注力領域である中堅中小法人向けサービス、コンシューマ向けサービスです。(将来的には大規模法人向けサービスについての拡大を予定しています)

※1. 本文中に記載されているNet Promoter Score及びNPSは、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc.)の登録商標です。

※2. NTTドコモにはNTTコミュニケーションズの数値が含まれます。

 

 

④ レジリエンス

〇 レジリエンスに関する戦略(リスク及び機会に対処するための取組み)

 

<自然災害、大規模故障等>

NTTグループは国内外において事業を展開しており、通信ネットワーク・情報システムをはじめ、社会と経済活動を支え、国民生活の安全を守るライフラインとして欠かせないサービスや金融・決済等生活基盤を支えるサービスを数多く提供しています。

これらのサービス提供に関して、地震・津波・台風・洪水等の自然災害、武力攻撃やテロ等の物理的な攻撃、重要システムにおける開発遅延や不具合、大規模なネットワーク故障の発生等によりお客さまへのサービス提供に影響を与える場合があり、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下するおそれがあります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、通信ビルの耐震機能・水防機能の強化、伝送路の異経路化、長期停電に対する通信ビル・基地局の非常用電源の強化等サービス提供に必要なシステムやネットワークを安全かつ安定して運用できるよう様々な対策を講じていくとともに、能登半島地震等での対応を踏まえ、お客様の通信利用ニーズの変化や技術の進展に適応した災害復旧方針にアップデートしていきます。特に大規模故障への具体的な対策として、迅速かつ的確なサービス復旧を行うとともに、故障原因を早期に究明し、①顕在化したリスクのグループ横断的な総点検・再発防止、②想定外のことは必ず起こることを前提に、グループ横断的なリスクの棚卸に基づく、より強靭なネットワークの実現に向けた施策をグループ全体で実施していきます。

機会への対応としては、ネットワークの強靭化や復旧対応の迅速化等を通じて、通信ネットワーク・情報システムの信頼性が高まれば、顧客満足度やブランドイメージの向上につながると考えています。また、更なる信頼性を求めるお客さまに対しては、BCPを強化するソリューションのラインアップを充実することで新たな価値を提供します。

 

 

<セキュリティ・重要情報の漏洩・改ざん・破壊等>

サイバー攻撃やセキュリティ上の管理不備等によるセキュリティインシデントにより、サービス停止・サービス品質の低下や情報の漏洩・改ざん・破壊等が発生した場合、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、お客さま情報をはじめとする個人情報保護への要求が社会的に高まるとともに、法制面からも個人情報保護に対する要請は大きくなっています。しかしながら、個人情報等を狙った犯罪行為が高度化、巧妙化する等、個人情報等の機密情報の流出や不適切な取り扱いが発生するリスクを排除できない場合があります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、「サイバーインシデントは必ず起きる、被害の最小化が大切」という考えに基づいて、持株会社並びにグループ各社のトップリーダーシップのもと、「三線防御」の原則の導入、グループ全体で守るべき規程の整備及び順守の徹底、セキュアなリモートワーク環境を提供するゼロトラスト型ITシステムへの移行・刷新、地政学リスクや安全保障の動向も踏まえたグローバルな脅威情報の収集/活用、早期検知・迅速対応のための最新技術の導入、セキュリティ対策の攻撃者目線での検証、国内外政府関連機関・重要インフラ事業者等との連携及び万一のインシデント時の対応演習、社員全員に向けた基本動作研修等の取組みを通じて、米国国立標準技術研究所(NIST)のサイバーセキュリティフレームワークも活用したリスクベースでの情報セキュリティ対策に取り組んでいます。

また、NTTグループでは、個人情報等の機密情報の厳重な管理等に努めるとともに、「NTTグループ情報セキュリティポリシー」を制定し、グループ内における管理体制の整備、役員や従業員への啓発活動等に取り組んでいます。

機会への対応としては、最新技術と高度知識を持つセキュリティ専門人材を育成するとともに、上記リスクへの対応を通じて蓄積されてきた知見や情報を活かし、グループ外の企業やコミュニティに対するリスク対策支援サービスの提供等にも取り組んでいます。

 

<広報対応>

インターネット上でのNTTグループに関するネガティブ情報の拡散や、システム不具合、ネットワーク故障、サービス不具合等が発生した際の広報対応が遅れたり、誤情報が発信された場合、NTTグループの信頼性やブランドイメージの低下につながるおそれがあります。

このようなリスクへの対応として、NTTグループでは、故障発生時の迅速な広報対応等の実現に向け、総務省の定める周知・広報に関するガイドライン順守に向けた体制を整備しているほか、緊急時の広報対応に関する各社の優良事例の水平展開等を通じて、広報対応の品質向上に取り組んでおり、こうした取組みを推進することで、顧客満足度やブランドイメージの向上につながると考えています。

 

<コンプライアンス>

NTTグループは、国内外で多くの拠点を持ち、様々な製品やサービスを取り扱う関係上、関連する法令や規則は多岐にわたり、事業活動を営むにあたり免許・届出・許認可等が必要とされるものもあります。特に海外での事業運営においては、当該国での法令の存在又は欠如、法令の予期しえない解釈、法規制の新設や改定等によって、法令遵守のための負担が増加する場合があります。また、近年では法令・規制に加えて、人権、児童労働、環境破壊、中間搾取等、サプライチェーン上に存在するグローバルレベルでのリスクへの対処も問題視されています。

これらに関して、従業員による個人的な不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスクもしくは社会的に信用が毀損されるリスクを排除できない場合があります。結果として、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下し、契約者獲得や入札資格停止等事業への影響が生じるおそれがあり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、法令遵守は極めて重要な企業の責務であるとの認識のもと、国内外を問わず、反競争的な違反行為、贈収賄等の防止をはじめ、より一層コンプライアンスを強化しています。

 

〇 レジリエンスに関する指標及び目標

 

指標

目標

実績

重大事故発生件数

2024年度:ゼロ

2023年度:4件

外部からのサイバー攻撃に伴う電気通信サービス停止件数

2024年度:ゼロ

2023年度:ゼロ

(注)1. 重大事故発生件数及び外部からのサイバー攻撃に伴う電気通信サービス停止件数の集計範囲は、指定公共機関である通信4社(NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ)です。

2. 重大事故とは、電気通信役務の提供を停止または品質を低下させた、以下の条件を満たす事故です。

・緊急通報(110、119等)を扱う音声サービス:1時間以上かつ3万人以上

・緊急通報を扱わない音声サービス:2時間以上かつ3万人以上、または1時間以上かつ10万人以上

・インターネット関連サービス(無料):12時間以上かつ100万人以上、または24時間以上かつ10万人以上

・その他の役務:2時間以上かつ3万人以上、または1時間以上かつ100万人以上

3【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を、NTTグループの事業を取り巻く環境及びそれに対応した事業戦略、業務運営に係るリスクのほか、規制をはじめとした政府との関係に係るリスク等の観点から総合的な評価を行っています。

当社におけるビジネスリスクマネジメントの概要、リスクの抽出・重要リスクの特定、リスクの内容及び対処策については以下のとおりです。

 

 

(1)ビジネスリスクマネジメントの概要

身近に潜在するリスクの発生を予想・予防し、万一リスクが顕在化した場合でも損失を最小限に抑えること等を目的として、リスクマネジメントの基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を制定しています。代表取締役副社長が委員長を務めるビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、リスクマネジメントのPDCAサイクルを構築し運用しています。なお、2023年度においてビジネスリスクマネジメント推進委員会は2回、グループビジネスリスクマネジメント推進委員会は2回開催され、全社的に影響を与えると想定されるリスクの特定及びその管理方針等について議論しました。

また、グループ一体となってリスクマネジメントに取り組むため、NTTグループビジネスリスクマネジメントマニュアルを策定しグループ各社に配布しています。本マニュアルにより、リスク発生に備えた事前対処策、リスクが顕在化した場合におけるグループ連携方法や対応方針、情報連絡フロー等を定め、迅速な対応を可能とする体制を整備し運用しています。

 

 

(2)リスクの抽出・重要リスクの特定

当社では社会環境の変化等を踏まえ、想定するリスクや、その管理方針の見直しを随時行っています。リスクの抽出にあたっては、ビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、NTTグループを取り巻くリスクの分析プロセスを策定し、このプロセスに則って定期的にリスク分析を実施することで、全社リスクを特定します。さらに、それらリスクの相関分析を行い、最も重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを「重要リスク」と特定し、その対応策を決定します。

 

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(3)リスクの内容及び対処策

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。当社が現在関知していないリスク、あるいは当社が現時点では重要ではないと考えるリスクであってもNTTグループの事業活動を損なうことになる可能性があります。さらに、本有価証券報告書は、リスクと不確実性を伴う将来見通しに基づく情報も含んでいます。NTTグループは、下記リスクのほか、本有価証券報告書中の他の箇所に記載されているリスクに直面していますが、これらのリスクの影響により、NTTグループの実際の業績が、将来見通しに基づく記述が想定しているものとは大きく異なってくる可能性があります。

 

○ 経営戦略に係るリスク

事業成長に関するリスク

 

市場構造の変化や競争の進展に適切に対応できない場合、NTTグループの営業収益が低下する可能性や設備投資の効率化が図れない可能性、販売経費・設備関連コスト・人件費等の削減効果が充分に発揮されない可能性があります。情報通信市場では、競合他社の新規参入等による競争激化や、新料金プラン等による顧客基盤の維持・更なる拡大がNTTグループの想定したとおりにならない場合、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。また、情報サービス市場では、急成長するインドや中国等の情報サービス企業が、グローバル競争をもたらしつつあり、競合会社の積極参入による競争激化が経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

特にグローバルビジネスの拡大において、企業・組織との合弁事業、事業提携、協力関係の構築、出資、買収等の活動を実施していますが、海外における事業活動は、投資や競争等に関する法的規制、税制、契約実務を含めた商習慣の相違、労使関係、国際政治等様々な要因の影響下にあります。これらのリスクが顕在化した場合には、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

その他の市場においても、各事業において想定したとおりの収益が得られない可能性があり、結果として経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、IOWNについては、そのロードマップが計画どおりに進展しないことにより、技術革新によるビジネスが拡大しないことや、IOWNを軸としたエネルギー効率化が図られないことで、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループは、2023年5月に発表した新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」に基づき、これまでの中期経営戦略の考え方や取組みをベースに、新たな価値創造と地球のサステナビリティを実現することをめざしています。

設備投資の効率化に向けては、各社でネットワークのシンプル化・スリム化を実施することに加え、AI等を活用し、自らの業務プロセスをデジタル化することで様々な業務における更なる生産性の向上をめざします。また、グループ各社が共通で購入するハードウェア、ソフトウェア及びサービスについて、グローバルベンダー等と一元的に価格交渉を行い、包括的な契約を締結する調達専門会社のNTT Global Sourcing, Inc.を米国に設立し、NTTグループのトータルの調達コスト削減等に取り組んでいます。

ITシステムについても、グローバルで標準化されたシステムへ移行していくことを通じて、共通基盤化による効率化を進めるとともに、シンプルで生産性の高い業務運営の確立に向けて取り組んでいます。

また、グローバル事業における着実な成長を実現するため、2019年よりグローバル事業の再編成に取り組んできましたが、昨今お客さまのニーズはますます多様化・高度化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)や、ITモダナイゼーションへのニーズが高まるとともに、競合各社は社会・テクノロジーの変化に合わせサービスラインを拡大する等、事業環境が大きく変化してきています。このような状況下、株式会社エヌ・ティ・ティ・データとNTT Ltd.で行ってきたビジネスユーザ向けグローバル事業を株式会社エヌ・ティ・ティ・データ傘下に集約し、2023年5月に海外事業の新オペレーティングモデルを発表して以降、北米、EMEA・中南米、APACの3つのRegional Unit、Global Technology Services、Business Solutionの2つのGlobal Unitの計5 Unitそれぞれにおいて、新モデルへの移行と各Unit内の統合を進め、両社がより一体となって事業運営体制の整備に取り組んでいます。統一した事業戦略のもと、インフラからアプリケーションまでのEnd to Endのサービス提供、当社の研究開発の成果の活用、Smart Worldや5G等の分野におけるビジネス推進に取り組むとともに、中長期的には、IOWN構想を中核とした環境価値、社会価値も提供可能な高度なサービスの実現に向けて取り組みます。

出資に関しては、定期的にモニタリングを実施する等、期待したリターンを得られるよう取り組んでいます。

また、IOWNについては、IOWNロードマップの確実な実現に向け、IOWNのビジネス展開と開発ロードマップの進捗状況の確認及び達成に向けた対策検討等、技術革新や着実な達成に向けたリソースの確保・優先付けをし、遅滞のないよう取り組みます。

 

環境に関するリスク

 

気候変動問題が世界的に重要なリスクとして広く認識されている中、NTTグループの気候変動や資源循環・生物多様性等への対応や開示が不十分と評価された場合には、顧客・パートナー・株主・社員・地域社会等のステークホルダーからの理解が十分に得られず事業運営に支障をきたす可能性があります。また、新たな法令・規制の導入や強化等がなされた場合にはコスト負担が増加する等、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

気候変動や資源循環・生物多様性等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 気候変動に関する戦略」をご参照ください。

 

 

お客さま体験(CX)の高度化に関するリスク

 

NTTグループは、お客さまの新たな体験や感動創造の高度化に向け、様々なパートナーと連携し、新たな価値の創造及び社会的課題の解決をめざす取組みを推進しています。お客さまに新たな価値を提供するビジネス創造が想定どおりに進展しなかった場合、市場競争力が低下し、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

お客さまの新たな体験や感動創造の取組みが十分に進展しないリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 新たな価値創造に関する戦略」をご参照ください。

 

従業員体験(EX)の高度化に関するリスク

 

情報通信及び関連する市場では、クラウドサービスや5Gサービスの拡大に加え、AI、デジタルツイン、量子コンピューティング等の技術が急速に進展しています。国内外の様々なプレイヤーが市場に参入し、サービスや機器の多様化・高度化が急速に進んでおり、今後、クラウドサービスやAIを中心とした変化が一層加速していくと見込まれます。また、2023年5月に発表した新中期経営戦略の取組みの柱にも成長分野への積極投資を掲げ、IOWN関連、スマートワールド、グリーンソリューション等新たな価値創造に注力しています。このような状況の中で、EXの強化は、生産性や創造性の向上、及び優秀な人材のリテンションのために重要です。EXの低下は、新技術の開発、新サービスの企画、既存サービスの改善、成長戦略の実行等に影響を及ぼす場合があり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、社員の健康・安全が十分に確保できない場合、労働生産性の低下等につながり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

EXの高度化に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 人的資本に関する戦略」をご参照ください。

 

 

○ 事業環境に係るリスク

金融市場に関するリスク

 

NTTグループは、社債・借入金等の手段により資金調達を実施していますが、金融市場において大きな変動が生じた場合には、資金調達が制約される可能性や資金調達コストが増加する可能性があります。

また、NTTグループは、投資有価証券等の金融資産を保有しています。景気後退による株式市場や金融市場の低迷により、それらの資産価値が下落した場合には評価損が発生し、NTTグループの業績に影響が生じる可能性があるほか、NTTグループの年金基金についても、年金運用等に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、現金及び現金同等物に加え、取引銀行と当座貸越契約及びコミットライン契約を締結しており、事業活動上必要な流動性を確保しています。資金調達に関しては、調達手段の多様化等を進めるとともに、低利かつ安定的な資金の確保に努めています。さらに、債権流動化等により資金の効率化にも取り組んでいます。また、リスク管理方針を制定し、この管理方針に従って先物為替予約等のデリバティブ取引を利用したリスクヘッジを行い、リスクの最小化に努めています。

 

偶発的な被害に関するリスク

 

地震・津波・台風・洪水等の自然災害、武力攻撃やテロ等の物理的な攻撃、新たな感染症の発生等の偶発的な事象が生じた場合、当社グループの社員・通信ネットワーク・情報システム等に対する被害が発生し、お客さまへのサービス提供に影響を与える場合があり、結果としてNTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

自然災害や武力攻撃・テロ等の物理的な攻撃に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

また、感染症による事業運営継続リスクへの対応として、NTTグループでは、お客さま、パートナー、従業員を含む全ての関係者の健康と安全を確保するため、新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえたBCP計画の見直しを必要に応じて実施し、人々の生活や企業の活動にとって重要な情報通信サービスの安定的な利用の確保に取り組みます。当社及び通信事業を営む主要子会社は、人命尊重の視点から感染防止に努めつつ、指定公共機関としての責務を遂行するとともに、ネットワークの安定運用に必要な設備増強等の対策を講じます。

 

 

地政学に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しているため、テロリズム、武力行為、地域紛争等の国際情勢問題により、社員等の安全が脅かされる可能性や建物や設備が破壊される可能性、また、昨今の経済安全保障に係る懸念の高まりから、現地ビジネス展開、サプライチェーン、資金調達等への影響が生じることによって、事業運営に混乱が生じ、サービスを安定的に提供できない等、事業継続が困難になる場合があります。状況によっては、これらの問題が当該国・地域のみに限定されず、グローバルな事業継続に影響が発生する場合も考えられます。

また、それらの結果、社員が直接被害を受ける可能性や、ネットワークやシステムの復旧に長い時間を要する可能性、燃料や機器の調達が困難になることによりサービスを安定的に提供できない可能性等が考えられ、収入の減少や多額の修繕費用の支出を余儀なくされる可能性があります。状況によっては、それらに係る損害についてNTTグループが責任を負う可能性も考えられます。さらに、これらがNTTグループの信頼性や企業イメージの低下につながるおそれもあります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、国内外の情報管理方法の強化や社員安否確認の定期的な訓練、通信ビル等重要設備のセキュリティ確保や冗長性のある伝送ルート設計、長期停電に対する通信ビル・基地局の非常用電源の強化等を行っています。また、 NTTグループは「NTTグループサプライチェーンサステナビリティ推進ガイドライン」を公表し、国際情勢問題等に伴う原材料の高騰、物流の混乱、原材料や部品等の入手困難化といった事業継続に大きな影響を与える事態に備えて、サプライチェーンへの影響を最小限に留めるよう、事業継続計画を策定することをサプライヤに要請するとともに、それらの事態が発生した場合の事業への影響を最小化するよう、関連するサプライヤと連携し、対応を実施します。これらのように、NTTグループは事業継続に必要なシステムやネットワークを安全かつ安定して運用できるよう様々な対策を講じています。

 

知的財産に関するリスク

 

NTTグループや事業上のパートナーがその事業を遂行するために必要な知的財産権等について、その一部であっても当該権利を他者が保有する場合には、当該他者から実施許諾等を得ることを基本としています。もし、当該他者から実施許諾等が得られない、あるいは、許諾が失効した場合には、NTTグループや事業上のパートナーの特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなるリスクがあります。

また、NTTグループが他者の知的財産権等を侵害したとの主張を受けた場合には、その解決に多くの時間と費用を要する可能性があり、さらに当該他者の主張が判決等により認められた場合は、当該他者への損害賠償責任等の発生、権利を侵害した事業の差止め等の可能性があります。

さらに、NTTグループが保有する知的財産権等について、第三者による不正な使用等により、本来得られる知財収入が減少したり、競争上の優位性が損なわれることで、NTTグループの経営成績や財務に影響を与える可能性があります。

知的財産に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 新たな価値創造に関する戦略」をご参照ください。

 

 

○ 事業活動に係るリスク

提供サービスの不具合に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しており、通信ネットワーク・情報システムをはじめ、社会と経済活動を支え、国民生活の安全を守るライフラインとして欠かせないサービスや金融・決済等生活基盤を支えるサービスを数多く提供しています。

これらのサービス提供に関して、重要システムにおける開発遅延や不具合、大規模なネットワーク故障の発生等によりお客さまへのサービス提供に影響を与える場合があり、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下するおそれがあります。

システム不具合、ネットワーク故障、サービス不具合等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

 

情報に関するリスク

 

サイバーテロやセキュリティ上の管理不備等によるセキュリティインシデントにより、サービス停止・サービス品質の低下や情報の漏洩・改ざん・破壊等が発生した場合、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

また、お客さま情報をはじめとする個人情報保護への要求が社会的に高まるとともに、法制面からも個人情報保護に対する要請は大きくなっています。しかしながら、個人情報等を狙った犯罪行為が高度化、巧妙化する等、個人情報等の機密情報の流出や不適切な取り扱いが発生するリスクを排除できない場合があります。

重要情報の漏洩・改ざん・破壊等に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

広報活動に関するリスク

 

インターネット上でのNTTグループに関するネガティブ情報の拡散や、システム不具合、ネットワーク故障、サービス不具合等が発生した際の広報対応が遅れたり、誤情報が発信された場合、NTTグループの信頼性やブランドイメージの低下につながるおそれがあります。

ネガティブ情報・故障等発生時の広報対応遅れに関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

人権に関するリスク

 

NTTグループは国内外において事業を展開しており、当社グループ及びサプライチェーンにおいて強制労働や児童労働等の人権侵害行為が発生した場合には、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下、ひいては経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

人権に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 人的資本に関する戦略」をご参照ください。

 

コンプライアンスに関するリスク

 

NTTグループは、国内外で多くの拠点を持ち、様々な製品やサービスを取り扱う関係上、関連する法令や規則は多岐にわたり、事業活動を営むにあたり免許・届出・許認可等が必要とされるものもあります。特に海外での事業運営においては、当該国での法令の存在又は欠如、法令の予期しえない解釈、法規制の新設や改定等によって、法令遵守のための負担が増加する場合があります。また、近年では法令・規制に加えて、人権、児童労働、環境破壊、中間搾取等、サプライチェーン上に存在するグローバルレベルでのリスクへの対処も問題視されています。

これらに関して、従業員による個人的な不正行為等を含めたコンプライアンスに関するリスクもしくは社会的に信用が毀損されるリスクを排除できない場合があります。結果として、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下し、契約者獲得や入札資格停止等事業への影響が生じるおそれがあり、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

コンプライアンス違反に関するリスクを踏まえた対応については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 レジリエンスに関する戦略」をご参照ください。

 

契約締結に関するリスク

 

NTTグループの事業運営に関し、不適切な契約の締結がなされた場合、NTTグループが損害賠償請求を受ける等、金銭的負担が発生するおそれがあるほか、NTTグループの信頼性や企業イメージが低下するおそれがあり、その結果として、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、契約審査制度の整備や契約に関する社内研修等を実施しているほか、NTTグループ各社において発生している、又はそのおそれのある訴訟等の案件についてモニタリングを実施するとともに、必要に応じて迅速に対策を講じています。

 

 

AIの不適切な利用等に関するリスク

 

多種多様な業界でAI利用が活性化する一方で、AIの不適切な利用により、金銭的負担が発生するおそれがあるほか、NTTグループ及びお客さま企業のイメージが低下するおそれがあり、その結果として、NTTグループが社会的責任を果たせなくなる可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、重大インシデントの防止及び確実なグループAIガバナンスの実行に向けて、AIガバナンスに関する規程類を制定しています。また、各事業会社においてAIリスクマネジメント責任者を定め、各AIプロジェクトに対するリスクの評価及びリスクヘッジのための対策をプロジェクトマネージャーとともに検討するAIマネジメントシステムを確立しています。持株会社においては、各事業会社における上記のAIマネジメントシステムが適切に運用されていることをモニタリングし、必要に応じて指導していきます。こうしたAIガバナンスを通してお客さまが安心してご利用いただけるAIサービスの提供に努めます。

 

各種規制対応、政府の株式保有等により事業に影響を与えるリスク

 

NTTグループは、事業の遂行に関して、規制当局による措置に服するリスクにさらされています。

 

日本の情報通信市場においては、競争促進や利用者保護等を目的とした電気通信関連の法改正等、多くの分野で規制の変更が行われてきています。

政府等による規制に関する決定、それに伴う通信業界における環境変化は、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、政府等の情報通信政策や規制等の動向について必要な情報収集等を行うとともに、パブリックコメントやヒアリングの場を通じてNTTグループの考え方を主張する等、必要な対応を行っています。規制の内容等については「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制」をご参照ください。

また、NTTグループがサービスを提供するために使用できる周波数には限りがあります。

スマートフォンやタブレット端末等の普及拡大に伴い、契約者当たりのトラフィック量が増加していく中、事業の円滑な運営のために必要な周波数が得られなかった場合や、新しい周波数帯域の運用開始が想定どおりに進まない場合に、サービス品質が低下したり、追加の費用が発生する可能性があります。さらには、サービスの提供が制約を受け、契約者が競合他社に移行し、NTTグループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、新たな周波数の獲得に努めているほか、5Gエリア拡大等、周波数利用効率の向上にも努めています。詳細については、「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制 ③電波法」をご参照ください。

さらに、NTTグループが、金融ビジネスの事業展開を一層推し進めるにあたり、政府等が行う規制等に対し必要な対応が行えず、当局による業務の停止等が発生し、社会的な批判、お客さまからの信頼の喪失等により事業成長に影響を与える可能性があります。

このようなリスクを踏まえ、NTTグループでは、規制対応等、金融ビジネス特有のリスクに適した管理体制構築や、金融ビジネスの専門人材の確保・育成に努めています。

 

政府は現在当社の自己株式を除き発行済株式の34.72%(議決権比率34.72%)を保有しています。政府は株主として当社の株主総会での議決権を有していることから、最大株主として、理論的には株主総会等における決定に対し多大な影響力を行使する権限を有しています。しかしながら、政府は1997年の国会答弁において、基本的に当社の経営に積極的に関与する形での株主権の行使はしないことを表明しており、事実、過去において政府は当社の経営に直接関与するためにそのような権限を行使したことはありません。法令に基づく政府のNTTグループに対する規制権限については、「(参考情報)当社事業にかかる法規制等 (1)規制」をご参照ください。

なお、2023年8月以降、総務省情報通信審議会において、「日本電信電話株式会社等に関する法律(以下、「NTT法」)」に関する議論が継続しており、2024年4月に成立したNTT法の改正法の附則には、NTT法の廃止を含め検討を行い、その結果に基づいて2025年の通常国会を目処に所要の法改正等の措置を講じる旨が規定されています。将来的に、仮にNTT法が廃止され、NTT法第4条に規定される政府株式保有義務(当社株式の三分の一以上の保有義務)も同時に効力を失った場合、政府が当社株式を売却する可能性も想定されますが、自由民主党 政務調査会が2023年12月5日に出した提言において「仮に株式を売却する場合には、市場に与える影響を勘案した手法を選択すべき」とされており、当社としても市場に影響を与えないような対応を求めていきます。

 

(参考情報)当社事業にかかる法規制等

 

(1)規制

情報通信産業を所管する日本の主要な監督機関は総務省であり、総務大臣は電気通信事業者を規制する権限を「電気通信事業法」により付与されています。1985年、NTTが民営化されると同時に「電気通信事業法」が施行され、日本における電気通信事業の法規制の枠組みは大幅に変更されるとともに、日本の情報通信産業に競争が導入されました。それ以降、政府は日本の電気通信市場における競争を促進する様々な措置を講じています。この結果、NTTグループはその事業分野の多くで、新規参入企業や新規に事業参入しようとしている企業との競争激化に直面しています。

当社及びその子会社の中には、その事業を行うにあたり、「電気通信事業法」のほか、「日本電信電話株式会社等に関する法律」及び「電波法」に基づく規制を受けている会社が存在します。その概要は次のとおりです。

 

① 電気通信事業法(昭和59年法律第86号)

電気通信事業法による規制は次のとおりです。

(a) 電気通信事業者に課される規制

a 基礎的電気通信役務の提供

・ 基礎的電気通信役務(ユニバーサルサービス)の提供(第7条)

基礎的電気通信役務(国民生活に不可欠であるためあまねく日本全国における提供が確保されるべき次に掲げる電気通信役務)を提供する電気通信事業者は、その適切、公平かつ安定的な提供に努めなければならない。

・第一号基礎的電気通信役務

加入電話(基本料)又は加入電話に相当する光IP電話、ワイヤレス固定電話、第一種公衆電話(総務省の基準に基づき設置される公衆電話)、災害時用公衆電話、緊急通報(110番、118番、119番)等。

・第二号基礎的電気通信役務

FTTHアクセスサービス、CATVアクセスサービス、専用型ワイヤレス固定ブロードバンドアクセスサービス

b 電気通信事業の開始等

・ 電気通信事業の開始についての総務大臣の登録制(第9条)

ただし、設置する電気通信回線設備の規模及び設置する区域の範囲が一定の基準を超えない場合や電気通信回線設備を設置しない事業の開始については総務大臣への届出制となっています(第16条)。

・ 合併や株式取得等を行う際の電気通信事業の登録の更新制(第12条の2)

・ 電気通信事業の休廃止に関する総務大臣への届出制及び利用者への周知義務(第18条、第26条の4)

c 利用者料金その他の提供条件の設定等

・ 基礎的電気通信役務の契約約款の総務大臣への届出制(第19条)

基礎的電気通信役務を提供する電気通信事業者は、基礎的電気通信役務に関する料金その他の提供条件について契約約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 消費者保護関連

電気通信事業者は、契約前の説明義務(第26条)、書面交付義務(第26条の2)、初期契約解除制度(第26条の3)、電気通信業務の休廃止の周知義務(第26条の4)、苦情等処理義務(第27条)、不実告知等や勧誘継続行為の禁止(第27条の2)及び媒介等業務受託者に対する指導等の措置義務(第27条の4)等が課されています。

d 相互接続

・ 電気通信回線設備への接続について他の電気通信事業者の請求に応ずる義務(第32条)

e ユニバーサルサービス基金制度

 ユニバーサルサービス基金制度は、ユニバーサルサービスの確保に必要な費用を、主要な通信事業者全体で支えていくための制度です。

 第一号基礎的電気通信役務については、その提供を確保するため、総務大臣の指定を受けた支援機関が、不採算地域等を含めて当該役務を提供する適格電気通信事業者(第108条)に対して、その提供に要する費用の一部に充てるための交付金を交付する(第107条)こととされており、これに伴い支援機関が必要とする費用については各電気通信事業者が応分の負担金を納付する義務を負う(第110条)こととされています。

 東西地域会社は、総務大臣から適格電気通信事業者に指定されており、2023年度と2024年度の東西地域会社への補填額はそれぞれ63億円、67億円となっています。

 第二号基礎的電気通信役務についても、第一号基礎的電気通信役務と同様に、支援機関が適格電気通信事業者(第110条の3)に対して、その提供に要する費用の一部に充てるための交付金を交付する(第107条)こととされており、必要な費用については各電気通信事業者が応分の負担金を納付する義務を負う(第110条の5)こととされています。

 なお、東西地域会社は、日本電信電話株式会社等に関する法律により、第一号基礎的電気通信役務のみ全国提供を義務付けられています(第3条)。

 

(b) 東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(東西地域会社)のみに課される規制

a 利用者料金その他の提供条件の設定

・ 指定電気通信役務に関する保障契約約款の総務大臣への届出制(第20条)

第一種指定電気通信設備を用いて提供する指定電気通信役務の料金その他の提供条件については、利用者と別段の合意がある場合を除き適用される保障契約約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 特定電気通信役務の料金の規制(第21条)

特定電気通信役務については、その料金の指数が総務大臣から通知される基準料金指数以下となる場合には総務大臣への届出制とする一方、基準料金指数を越える場合には総務大臣の認可を必要とする、いわゆる「プライスキャップ規制」が適用されています。

(注)

・第一種指定電気通信設備 各都道府県において電気通信事業者の設置する固定端末系伝送路設備のうち、同一の電気通信事業者が設置するものであって、各事業者の業務区域(NTT東日本の場合は東日本エリア全域、NTT西日本の場合は西日本エリア全域)内の総数の2分の1を超えるもの及びこれと一体として設置する電気通信設備で、他の電気通信事業者との接続が利用者の利便向上及び電気通信の総合的かつ合理的な発達に不可欠な設備として、総務大臣が指定するもの。具体的には、東西地域会社の主要な電気通信設備が指定されている。

・指定電気通信役務    第一種指定電気通信設備を設置する電気通信事業者が当該設備を用いて提供する電気通信役務であって、他の電気通信事業者によって代替役務が十分提供されないこと等の事情を勘案して、適正な料金その他の提供条件に基づく提供を保障することにより利用者の利益を保護するため特に必要があるものとして総務省令で定めるもの。具体的には、加入電話、ISDN、公衆電話、専用サービス、フレッツ光、ひかり電話等であるが、利用者の利益に及ぼす影響が少ない付加的な機能の提供に係る役務等は除かれる。

・特定電気通信役務    指定電気通信役務のうち利用者の利益に及ぼす影響が大きいものとして総務省令で定めるもの。具体的には、東西地域会社の提供する加入電話、ISDN、公衆電話。

・基準料金指数      特定電気通信役務の種別ごとに、能率的な経営の下における適正な原価及び物価その他の経済事情を考慮して、通常実現することができると認められる水準の料金を表す指数として、総務大臣が定めるもの。

・プライスキャップ規制  料金の上限を規制する制度のこと。なお、東西地域会社の実際の料金指数は、2023年10月1日から始まった1年間の基準料金指数を下回る水準にあることから、プライスキャップ規制に基づく値下げは行っていない。

b 相互接続等

・ 第一種指定電気通信設備との接続に関する接続約款の総務大臣の認可制(第33条)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備を有する電気通信事業者として、相互接続に係る接続料及び接続条件について接続約款を定め、接続料が能率的な経営の下における適正な原価を算定するものとして総務省令で定める方法により算定された原価に照らし公正妥当なものであること等を要件に総務大臣の認可を受けることになっています。

 

 

(電話接続料)

1998年5月、日米両政府の規制緩和等に関する共同報告の中で、日本政府は、接続料への長期増分費用方式の導入の意向を表明、2000年5月に長期増分費用方式の導入を定めた改正電気通信事業法が成立し、それ以降、同方式により接続料の値下げが行われました。また、その後、通信量が大幅に減少する中で、接続料の上昇による通話料の値上げを回避する観点から、NTSコスト(Non-Traffic Sensitive Cost、通信量に依存しない費用)を接続料原価から控除し基本料で回収することとされました(2004年10月の情報通信審議会答申)。

なお、NTSコストの一部については、ユニバーサルサービス基金の利用者負担の増加を抑制する観点から同基金の見直しが行われた際、基金の補填対象範囲の縮小分の負担について東西地域会社のみに負わせるのではなく、各事業者から公平に回収することが適当とされたことから、再度接続料原価に算入することとされています。

2022年度以降の接続料については、2021年の情報通信審議会における検討の結果、IP網への移行期間(2022年4月から2024年12月まで)において、引き続き長期増分費用方式を適用することとされました。

 

(光ファイバ接続料)

東西地域会社が有する光ファイバは、電気通信事業法における第一種指定電気通信設備として他事業者に認可料金(接続料)で貸し出すことを義務付けられています。

加入光ファイバ接続料については、接続料低廉化の見通しを示すことにより他事業者が参入しやすい環境を整えるため、2023年度から2025年度までの3年間を算定期間とする将来原価方式により算定しています。なお、今回の接続料においても、実績接続料収入と実績費用の差額を次期以降の接続料原価に加えて調整する乖離額調整制度を導入しており、未回収リスクはないものと考えています。

なお、加入光ファイバの分岐端末回線単位の接続料設定の問題については、情報通信行政・郵政行政審議会における検討の結果、依然として様々な解決すべき課題がある(2012年3月の情報通信行政・郵政行政審議会答申)とされ、分岐端末回線単位の接続料は設定されていません。

 

・ 第一種指定電気通信設備との接続に係る機能の休止及び廃止の周知(第33条の2)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備との接続に係る機能を休止・廃止しようとするときは、総務省令で定めるところにより、予め、当該機能を利用する他の電気通信事業者に対して、その旨を周知しなければならないとされています。

・ 第一種指定電気通信設備の機能に関する計画の総務大臣への届出制(第36条)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備の機能の変更又は追加の計画について、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第一種指定電気通信設備の共用に関する協定の総務大臣への届出制(第37条)

東西地域会社は、他の電気通信事業者との第一種指定電気通信設備の共用の協定について、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務に関する総務大臣への届出制(第38条の2)及び整理・公表制(第39条の2)

東西地域会社は、第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務の提供の業務を開始・変更・廃止したときは、その旨、卸電気通信役務の種類、一定の要件を満たす卸先事業者に対する料金その他の提供条件等を総務大臣に届け出ることとされています。また、総務大臣は、当該届出に関して作成し、又は取得した情報について、整理・公表することとされています。

・ 第一種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務のうち、電気通信事業者間の適正な競争関係に及ぼす影響が認められる役務(特定卸電気通信役務:フレッツ光、ひかり電話)の提供義務(第38条の2)
東西地域会社は、正当な理由がなければ、卸先事業者に対する特定卸電気通信役務の提供を拒んではならないとされています。

 

c 禁止行為

東西地域会社は、市場支配的な事業者として、接続情報の目的外利用や他の電気通信事業者に対し不当に優先的な取扱いを行うこと等を禁止されている(第30条)ほか、特定関係事業者として総務大臣に指定されたエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社及び株式会社NTTドコモとの役員兼任等の禁止(第31条)が定められています。

また、東西地域会社の業務委託先子会社において禁止行為が行われないよう、東西地域会社が委託先子会社に対し必要かつ適切な監督を行うことや、東西地域会社が接続の業務に関して知り得た情報の適切な管理、接続の業務の実施状況を適切に監視するための体制の整備等が義務付けられています(第31条)。

したがって、NTTグループ内の電気通信事業者間で排他的に連携してサービスを提供することには一定の制約があり、NTTグループとしては、この禁止行為規制を含め公正競争条件を確保しつつ市場ニーズに応じたサービスを提供していく考えですが、例えば、新サービスの迅速な提供に支障をきたす等の影響が生じる可能性があります。

 

(c) 株式会社NTTドコモに課される規制

a 相互接続等

・ 第二種指定電気通信設備との接続に関する接続約款の総務大臣への届出制(第34条)

株式会社NTTドコモの携帯電話に係る主要な電気通信設備については、他の電気通信事業者との適正かつ円滑な接続を確保すべきものとして総務大臣より第二種指定電気通信設備に指定されており、他の電気通信事業者の電気通信設備との接続に関し、接続料及び接続の条件について接続約款を定め、総務大臣に届け出ることとされています。

・ 第二種指定電気通信設備との接続に係る機能の休止及び廃止の周知(第34条の2)

株式会社NTTドコモは、第二種指定電気通信設備との接続に係る機能を休止・廃止しようとするときは、総務省令で定めるところにより、予め、当該機能を利用する他の電気通信事業者に対して、その旨を周知しなければならないとされています。

・ 第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務に関する総務大臣への届出制(第38条の2)及び整理・公表制(第39条の2)

株式会社NTTドコモは、第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務の提供の業務を開始・変更・廃止したときは、その旨、卸電気通信役務の種類、一定の要件を満たす卸先事業者に対する料金その他の提供条件等を総務大臣に届け出ることとされています。また、総務大臣は、当該届出に関して作成し、又は取得した情報について、整理・公表することとされています。

・ 第二種指定電気通信設備を用いる卸電気通信役務のうち、電気通信事業者間の適正な競争関係に及ぼす影響が認められる役務(特定卸電気通信役務:携帯電話、BWAアクセスサービス、セルラーLPWA)の提供義務(第38条の2)
株式会社NTTドコモは、正当な理由がなければ、卸先事業者に対する特定卸電気通信役務の提供を拒んではならないとされています。

 

なお、第二種指定電気通信設備に関する規制については、株式会社NTTドコモのほか、第二種指定電気通信設備を設置する全ての電気通信事業者に課されています。

 

b 禁止行為

株式会社NTTドコモは、電気通信事業者間の競争環境の確保の観点から、端末を販売等しない場合よりも端末を販売等する際の通信料金を有利にすることや、行き過ぎた期間拘束により利用者を囲い込むこと等を禁止されています(第27条の3)。なお、本規定については、株式会社NTTドコモのほか、総務大臣に指定された事業者に課されています。

また、株式会社NTTドコモは、市場支配的な事業者として、接続情報の目的外利用やグループ内の事業者であって総務大臣が指定するものに対し不当に優先的な取扱いを行うこと等を禁止されています(第30条)。

(注)

・第二種指定電気通信設備  電気通信事業者の設置する特定移動端末設備(携帯電話端末・BWA端末)に接続される伝送路設備のうち同一の電気通信事業者が設置するものであって、その業務区域内の全ての当該伝送路設備の総数の10分の1を超えるもの及びその事業者が当該電気通信役務を提供するために設置する電気通信設備で、他の電気通信事業者の電気通信設備との適正かつ円滑な接続を確保すべき設備として、総務大臣が指定するもの。

 

 

② 日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号)

(a) 概要

1997年6月に公布された「日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律」(以下、「平成9年改正法」)は、1999年7月に施行されました(これにより「日本電信電話株式会社法」は「日本電信電話株式会社等に関する法律」に改題され、当社を純粋持株会社とする再編成がおこなわれました。)。同法は、その後も改正されておりますが、直近では2024年4月に「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律」(以下、「令和6年改正法」)が公布・施行されました。

具体的には、電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究に係る責務の廃止や、外国人役員に係る規制の緩和、役員選解任の決議に係る認可の事後届出への緩和、剰余金処分の決議に係る認可の廃止、及び商号変更が可能になる等の改正がされました。また、今後の検討として、ユニバーサルサービスや公正競争、経済安全保障等を確保する観点から、NTT法の廃止を含め検討を行い、その結果に基づいて2025年の通常国会を目処に所要の法改正等の措置を講じる旨が附則に規定されました。

 

(b) 目的・事業・責務

一 目的

日本電信電話株式会社(以下、「会社」)、東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社(以下、「東西地域会社」)について定めることを目的とする。

 

一の二 定義

1 会社とは、東西地域会社がそれぞれ発行する株式の総数を保有し、これらの株式会社による適切かつ安定的な電気通信役務の提供の確保を図ること並びに電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うことを目的とする株式会社であって、附則第4条第1項に規定する権利及び義務を承継したものをいう。

2 「東日本電信電話株式会社」とは、二の3(1)イに掲げる都道県の同号に規定をする区域において地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社であって、平成9年改正法附則第2条第1項の規定により国が引き継がせるものとされた業務を承継したものをいう。

3 「西日本電信電話株式会社」とは、二の3(1)ロに掲げる府県の同号に規定する区域において地域電気通信事業を経営することを目的とする株式会社であって、平成9年改正法附則第2条第1項の規定により国が引き継がせるものとされた業務を承継したものをいう。

 

(注)附則第4条第1項

日本電信電話公社は、会社の成立の時において解散するものとし、その一切の権利及び義務は、その時において当社が承継する。

(注)平成9年改正法附則第2条第1項

国は、東西地域会社を設立し、それぞれ、日本電信電話株式会社が営んでいる国内電気通信業務のうちこの法律による改正後の地域電気通信業務に該当する業務を、各地域会社に引き継がせるものとする。

 

二 事業

1 会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。

(1)東西地域会社が発行する株式の引受け及び保有並びに当該株式の株主としての権利の行使をすること

(2)東西地域会社に対し、必要な助言、あっせんその他の援助を行うこと

(3)電気通信の基盤となる電気通信技術に関する研究を行うこと

(4)(1)(2)及び(3)に掲げる業務に附帯する業務

2 会社は、二の1に規定する業務を営むほか、総務大臣へ届け出ることによって、その目的を達成するために必要な業務を営むことができる。

3 東西地域会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。

(1) それぞれ次に掲げる都道府県の区域において行う地域電気通信業務

イ 東日本電信電話株式会社にあっては、北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県及び長野県

ロ 西日本電信電話株式会社にあっては、京都府及び大阪府並びにイに掲げる県以外の県

(2)二の3の(1)に掲げる業務に附帯する業務

4 東西地域会社は、総務大臣へ届け出ることによって、次に掲げる業務を営むことができる。

(1)二の3に規定するもののほか、東西地域会社の目的を達成するために必要な業務

(2)それぞれ二の3の(1)により地域電気通信業務を営むものとされた都道府県の区域(目的業務区域)以外の都道府県の区域において行う地域電気通信業務

5 地域電気通信業務は、東西地域会社が自ら設置する電気通信設備を用いて行わなければならない。ただし、電話の役務をあまねく目的業務区域において適切、公平かつ安定的に提供することを確保するために必要があると認められる場合に、総務大臣の認可により、他の電気通信事業者の設備(無線設備)を用いて電話を提供することができる。

6 東西地域会社は、二の3、二の4に規定する業務のほか、総務大臣へ届け出ることによって、地域電気通信業務の円滑な遂行及び電気通信事業の公正な競争の確保に支障のない範囲内で、二の3に規定する業務を営むために保有する設備若しくは技術又はその職員を活用して行う電気通信業務その他の業務を営むことができる。

 

三 責務

会社及び東西地域会社は、それぞれその事業を営むに当たっては、常に経営が適正かつ効率的に行われるように配意するとともに、国民生活に不可欠な電話の役務のあまねく日本全国における適切、公平かつ安定的な提供の確保に寄与し、もって公共の福祉の増進に資するよう努めなければならない。

 

(c) 総務大臣の認可を必要とする事項

・ 会社及び東西地域会社の新株及び新株予約権付社債の発行(第4条、第5条)

(注)会社は、総務省令で定める一定の株式数に達するまでは、認可を受けなくても総務大臣に届け出ることにより新株の発行が可能(附則第14条)

・ 会社及び東西地域会社の定款の変更、合併、分割及び解散の決議(第11条)

(注)定款の変更は、会社又は東西地域会社の商号の変更に係る決議を除く

・ 会社及び東西地域会社の事業計画及び事業計画の変更(第12条)

・ 東西地域会社の重要な設備の譲渡及び担保に供すること(第14条)

 

(d) その他総務大臣に対する義務

・ 会社の代表取締役、取締役又は監査役の就任又は退任の届出(第10条)

(注)日本の国籍を有しない人は、会社及び東西地域会社の代表取締役となることができない

(注)会社及び東西地域会社は、日本の国籍を有しない人がそれぞれの取締役又は監査役の三分の一以上を占めることとなってはならない

・ 会社及び東西地域会社の貸借対照表、損益計算書、事業報告書の提出(第13条)

・ 会社及び東西地域会社への命令を受ける義務(第16条)

・ 会社及び東西地域会社の業務に関する報告の要求に応じる義務(第17条)

 

 

③ 電波法(昭和25年法律第131号)

(a)総務大臣の免許を必要とする事項

・ 無線局の開設(第4条)

 

(b)総務大臣の許可を必要とする事項

・ 無線局の目的、通信の相手方、通信事項等の変更等(第17条)

 

(携帯電話の周波数帯割当て)

移動通信事業において、事業者が無線周波数帯域を使用するためには日本政府(総務省)の免許が必要となります。周波数帯の割当ては電波法及び関連する法令等により規定されています。

(2)会社株式に係る事項

 

① 外国人等議決権割合の制限(日本電信電話株式会社等に関する法律 第6条)

会社は、外国人等議決権割合が三分の一以上になるときは、その氏名及び住所を株主名簿に記載し、又は記録してはならない。

  (注)外国人等 一 日本の国籍を有しない人

二 外国政府又はその代表者

三 外国の法人又は団体

四 前三号に掲げる者により直接に占められる議決権の割合が総務省令で定める割合以上である法人又は団体

なお、当社定款において、株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者、及びその有する株式の全部若しくは一部について日本電信電話株式会社等に関する法律第6条に基づき、株主名簿に記載されなかった若しくは記録されなかった株主又は当該株主の有する株式の質権者に対して、剰余金の配当をすることができる旨を規定しています。

 

 

② 政府による当社の株式保有義務(日本電信電話株式会社等に関する法律 第4条)

政府は、常時、会社の発行済株式の総数の三分の一以上に当たる株式を保有していなければならない。

  (注)発行済株式の総数の算定方法の特例(日本電信電話株式会社等に関する法律 附則第13条)

・ 第4条第1項の規定の適用については、当分の間、新株募集若しくは新株予約権の行使による株式の発行又は取得請求権付株式若しくは取得条項付株式の取得と引換えの株式の交付があった場合には、これらによる株式の各増加数(「不算入株式数」)は、それぞれ第4条第1項の発行済株式の総数に算入しないものとする。

・ 前項に規定する株式の増加後において株式の分割又は併合があった場合は、不算入株式数に分割又は併合の比率(二以上の段階にわたる分割又は併合があった場合は、全段階の比率の積に相当する比率)を乗じて得た数をもって、同項の発行済株式の総数に算入しない株式の数とする。

2024年3月31日時点の当社の発行済株式総数は90,550,316,400株であり、同日現在の政府保有株式数は29,199,372,200株、即ち、自己株式除き発行済株式総数の34.72%となっています。

(注)当社は2000年12月に公募増資により30万株(2009年1月4日付の株式分割、2015年7月1日付の株式分割、2020年1月1日付の株式分割及び2023年7月1日付の株式分割後に換算すると30億株)の新株発行を実施しました。これらの株式は、前述のとおり、政府が保有する株式の比率を計算する際には発行済株式総数には算入されません。また、政府保有株式数には名義書換失念株等の政府が実質的に保有していない株式が含まれているため、これらの株式は、政府が保有する株式の比率を計算する際には政府保有株式数に算入していません。これらの条件を考慮すると、政府が保有する株式の比率は33.33%となります。

NTTグループと政府の各種部門・機関との取引は、個別の顧客として、かつ独立当事者間の取引として行われています。政府は、株主としての資格において当社の株主総会で議決権を行使し、筆頭株主としての立場から、理論上は株主総会での大多数の決議に重大な影響力を及ぼす権限を有します。しかしながら、過去に政府がこの権限を行使して当社の経営に直接関与したことはありません。

 

 

 

③ 政府保有株式の売却について

  政府の保有する会社株式の処分は、その年度の予算をもって国会の議決を経た限度数の範囲内でなければならない(日本電信電話株式会社等に関する法律 第7条)

 

・ 売却の経緯及び売却方針について(第一次売出から第六次売出について)

当社は発行済株式総数1,560万株で設立され、政府が売却可能である当社株式1,040万株(政府による保有が義務付けられた全体の三分の一に当たる520万株を除いた株式)のうち540万株については、1986~1988年度において売却されました。

また、1990年12月17日に、未売却となっていた500万株のうち、イ)250万株について毎年度50万株程度を計画的に売却することを基本とすること、ロ)後年度において市場環境から許容される場合、計画の前倒しによる売却があり得ること、ハ)残余の250万株については、当分の間、売却を凍結するという売却方針が大蔵省(当時)より示されました。(ただし、1997年度まで、市場環境等により実際の売却は見送られました。)

1998年度においては、1998年12月に100万株について売却が実施されました。

1999年度においては、100万株が売却限度数として計上されていましたが、このうち48,000株については1999年7月13日の当社の自己株式買入において売却が実施され、残りの952,000株については1999年11月に売却が実施されました。また、上記の1990年12月に示された売却方針については終了しました。

2000年度においては、2000年11月に100万株の売却が実施されました。

 

・ 政府保有株式の売却実績について

提出日現在までの政府保有株式の売却実績については、下表のとおりです。

年度

政府の売却実績

売却時期

売却株数

売却方法

1986年度

1987年 2月(第一次売出)

200,000株

一般競争入札

1,750,000株

証券会社による「売り出しの取り扱い」

1987年度

1987年11月(第二次売出)

1,950,000株

証券会社による「引受」「売り出しの取り扱い」

1988年度

1988年10月(第三次売出)

1,500,000株

証券会社による「引受」「売り出しの取り扱い」

1998年度

1998年12月(第四次売出)

1,000,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

1999年度

1999年 7月13日

48,000株

自己株式買入

1999年11月(第五次売出)

952,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

2000年度

2000年11月(第六次売出)

1,000,000株

ブックビルディング方式による株式売り出し

2002年度

2002年10月 8日

91,800株

自己株式買入

2003年度

2003年10月15日

85,157株

自己株式買入

2004年度

2004年11月26日

800,000株

自己株式買入

2005年度

2005年 9月 6日

1,123,043株

自己株式買入

2011年度

2011年 7月 5日

57,513,600株

自己株式買入

2012年 2月 8日

41,820,600株

自己株式買入

2013年度

2014年 3月 7日

26,010,000株

自己株式買入

2014年度

2014年11月14日

35,088,600株

自己株式買入

2014年11月28日

1,068,100株

自己株式買入

2016年度

2016年 6月14日

59,000,000株

自己株式買入

2019年度

2019年 9月11日

48,666,700株

自己株式買入

2022年度

2022年 9月15日

92,925,400株

自己株式買入

(注)1.1995年11月24日を効力発生日として、普通株式1株につき1.02株の割合をもって株式分割いたしました。

2.2009年1月4日を効力発生日として、普通株式1株につき100株の割合をもって株式分割いたしました。

3.2015年7月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割いたしました。

4. 2020年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき2株の割合をもって株式分割いたしました。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において判断したものです。

 

(1)中期財務目標の進捗

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

EBITDA

32,902

34,181

1,279

3.9%

海外営業利益率

7.3%

8.6%

1.3ポイント

-

既存分野ROIC

8.2%

8.1%

△0.1ポイント

-

(注)1.EBITDA及びその内訳の減価償却費について、使用権資産に係る減価償却費を全て除いています。

2.海外営業利益率の算定にあたっては、買収に伴う無形資産の償却費等、一時的なコストを除外しています。なお、集計範囲はNTTデータグループ海外事業です。(2022年度はNTT Ltd.グループの上期実績を含みます)

3.既存分野を「NTTドコモグループ・コンシューマ通信事業、NTT東日本グループ、NTT西日本グループ」と定義しています。

 

NTTグループは2023年5月に新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027 powered by IOWN」を発表しました。お客さまと社会のために新たな価値を提供し、事業そのものをサステナブルな社会の実現へとシフトすることで、地球のサステナビリティを支える存在になっていきたいと考えています。そのために、成長分野への投資を拡大し、5年間で成長分野に約8兆円の投資を行うほか、さらに未来のためにキャッシュ創出力を拡大し、2027年度に向けて成長のためのキャッシュを増大することで、EBITDA約4兆円をめざしていきます。

新中期経営戦略の発表にあわせ、新たに財務目標を設定しました。持続的なさらなる成長に向けて、キャッシュ創出力を軸とした取組みを強化することとし、主要指標としてEBITDAを設定のうえ、2027年度に向けて20%増加となる4兆円をめざします。ドライバーとなる成長分野ではEBITDAは40%増加を目標とし、海外営業利益率も2025年度で10%をめざします。既存分野ではEBITDA10%増加に加え、ROIC(投下資本利益率)9%の目標を掲げて取り組んでいきます。

当連結会計年度のEBITDAは、前期比3.9%増加し、3兆4,181億円となりました。これは営業利益の増加等によるものです。海外営業利益率は、前期比1.3ポイント向上し、8.6%となりました。これはNTTデータグループ海外事業の営業利益の増加等によるものです。既存分野ROICは、前期比0.1ポイント低下し、8.1%となりました。

 

 

(2)経営成績の状況の分析(連結)

 

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営業収益

NTTグループの営業収益は、固定音声関連、移動音声関連、IP系・パケット通信、通信端末機器販売、システムインテグレーション及びその他の6つのサービス分野に区分しています。

当連結会計年度の営業収益は、前期比1.8%増加し、13兆3,746億円となりました。これは、固定音声関連収入や移動音声関連収入の減少はあるものの、通信端末機器販売収入やシステムインテグレーション収入の増加等によるものです。

当連結会計年度の各サービス分野における営業収益の概要は、次のとおりです。

 

・固定音声関連収入

固定音声関連サービスには、加入電話、INSネット、一般専用、高速ディジタル伝送等、地域通信事業セグメントと総合ICT事業セグメントの一部が含まれています。

当連結会計年度における固定音声関連収入は、前期比7.6%減少し、8,050億円となりました。これは、携帯電話やIP電話の普及、OTT事業者が提供する無料又は低価格の通信サービスの増加等により、加入電話やINSネットの契約数が引き続き減少したこと等によるものです。

※ Over The Top の略。自社でサービスの配信に必要な通信インフラを持たずに、他社の通信インフラを利用

してコンテンツ配信を行うサービス。

 

・移動音声関連収入

移動音声関連サービスには、5GやLTE(Xi)等における音声通話サービス等の総合ICT事業セグメントの一部が含まれています。

当連結会計年度における移動音声関連収入は、前期比5.6%減少し、9,876億円となりました。これは、主にirumo等の料金プラン導入によるお客さま還元の拡大により、収入の減少があったこと等によるものです。

 

・IP系・パケット通信収入

IP系・パケット通信サービスには、「フレッツ光」等の地域通信事業セグメントの一部や、5GやLTE(Xi)等におけるパケット通信サービスやArcstar Universal One、IP-VPN、OCN等の総合ICT事業セグメントの一部が含まれています。

当連結会計年度におけるIP系・パケット通信収入は、前期比0.3%減少し、3兆4,343億円となりました。

 

・通信端末機器販売収入

通信端末機器販売には、総合ICT事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部が含まれています。

当連結会計年度における通信端末機器販売収入は、前期比12.7%増加し、8,520億円となりました。これは、総合ICT事業セグメントにおいて、端末機器販売単価の上昇に伴い収益が拡大したこと等によるものです。

 

・システムインテグレーション収入

システムインテグレーションには、グローバル・ソリューション事業セグメント、総合ICT事業セグメント、地域通信事業セグメントの一部が含まれています。

当連結会計年度のシステムインテグレーション収入は、前期比7.2%増加し、4兆8,737億円となりました。これは、グローバル・ソリューション事業セグメントにおいて、国内外ともに、デジタル化需要を取り込んだことや、為替影響による増加等によるものです。

 

・その他の営業収入

その他のサービスには、主に建築物の保守、不動産賃貸、電力販売、総合ICT事業セグメントにおけるスマートライフ事業等が含まれています。

当連結会計年度のその他の営業収入は、前期比2.0%減少し、2兆4,219億円となりました。これは、エネルギー事業における電気料収入の減少等によるものです。

 

営業費用

当連結会計年度の営業費用は前期比1.3%増加し、11兆4,517億円となりました。主な要因は以下のとおりです。

 

・人件費

当連結会計年度の人件費は、前期比6.0%増加し、2兆9,355億円となりました。これは、グローバル・ソリューション事業セグメントにおいて、事業拡大等により人件費が増加したこと等によるものです。

 

・経費

当連結会計年度の経費は、前期比1.1%減少し、6兆4,894億円となりました。これは、エネルギー事業において電気料収入の減少等に伴い、収益連動費用が減少したこと等によるものです。

 

・減価償却費

当連結会計年度の減価償却費は、前期比2.9%増加し、1兆6,286億円となりました。

 

営業利益

以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前期比5.1%増加し、1兆9,229億円となりました。

 

金融損益

当連結会計年度の金融損益は、前期の△253億円に対し333億円となりました。これは、株式会社インターネットイニシアティブ普通株式の一部売却に伴い株式売却益を計上したこと等によるものです。

 

持分法による投資損益

当連結会計年度の持分法による投資損益は、前期比72.8%増加し、242億円となりました。

 

税引前利益

以上の結果、当連結会計年度の税引前利益は前期比9.0%増加し、1兆9,805億円となりました。

 

法人税等

当連結会計年度の法人税等は、前期比21.0%増加し、6,353億円となりました。前連結会計年度、当連結会計年度の税負担率は、それぞれ28.88%、32.08%となっています。

 

当社に帰属する当期利益

以上の結果、当連結会計年度の当期利益は前期比4.1%増加し、1兆3,451億円となりました。また、非支配持分に帰属する当期利益を控除した当社に帰属する当期利益は、前期比5.5%増加し、1兆2,795億円となりました。

 

業績の内訳は次のとおりです。

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

131,362

133,746

2,384

1.8%

 固定音声関連収入

8,712

8,050

△662

△7.6%

 移動音声関連収入

10,464

9,876

△587

△5.6%

 IP系・パケット通信収入

34,440

34,343

△96

△0.3%

 通信端末機器販売収入

7,562

8,520

958

12.7%

 システムインテグレーション収入

45,465

48,737

3,273

7.2%

 その他の営業収入

24,720

24,219

△501

△2.0%

営業費用

113,072

114,517

1,445

1.3%

 人件費

27,687

29,355

1,668

6.0%

 経費

65,633

64,894

△739

△1.1%

 減価償却費

15,826

16,286

460

2.9%

 その他

3,926

3,982

56

1.4%

営業利益

18,290

19,229

939

5.1%

金融損益

△253

333

587

持分法による投資損益

140

242

102

72.8%

税引前利益

18,177

19,805

1,628

9.0%

法人税等

5,249

6,353

1,104

21.0%

当期利益

12,928

13,451

524

4.1%

控除:非支配持分に帰属する当期利益

796

656

△140

△17.6%

当社に帰属する当期利益

12,131

12,795

664

5.5%

 

 

(3)経営成績の状況の分析(セグメント)

 

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総合ICT事業セグメントには、固定音声関連サービス、移動音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、システムインテグレーションサービス、その他が含まれています。

地域通信事業セグメントには、固定音声関連サービス、IP系・パケット通信サービス、通信端末機器販売、システムインテグレーションサービス、その他が含まれています。

グローバル・ソリューション事業セグメントには、主にシステムインテグレーションサービスが含まれています。

また、その他(不動産、エネルギー等)には、主に建築物の保守、不動産賃貸、電力販売、研究開発等に係るその他のサービスが含まれています。

 

当連結会計年度における各セグメントの営業実績の概要は、次のとおりです。なお、各セグメントの営業実績の記載における営業収益・営業費用・営業利益は、セグメント間取引を含めています。また、当社グループは電気通信事業等の事業を行っており、生産、受注といった区分による表示が困難であるため、セグメントごとに生産規模、受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため、生産、受注及び販売の状況については各セグメントの営業業績に関連付けて示しています。

①総合ICT事業セグメント

 

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総合ICT事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、irumo等の料金プラン導入によるお客さま還元の拡大による減収の影響があったものの、法人事業の拡大や、金融・決済、マーケティングソリューションを始めとするスマートライフ事業の拡大等により6兆1,400億円(前期比1.3%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、コスト効率化の取組みによる費用の減少はあるものの、収益連動費用の増加等により4兆9,956億円(前期比0.6%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は1兆1,444億円(前期比4.6%増)となりました。

 

セグメント業績の概要                                  (単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

60,590

61,400

810

1.3%

固定音声関連サービス

1,727

1,439

△288

△16.7%

移動音声関連サービス

10,542

9,950

△593

△5.6%

IP系・パケット通信サービス

22,926

22,939

13

0.1%

通信端末機器販売

6,860

7,809

949

13.8%

システムインテグレーションサービス

6,095

6,422

327

5.4%

その他

12,440

12,841

401

3.2%

営業費用

49,651

49,956

305

0.6%

人件費

4,765

5,102

338

7.1%

経費

35,818

35,516

△302

△0.8%

減価償却費

7,859

8,123

265

3.4%

その他

1,209

1,214

5

0.4%

営業利益

10,939

11,444

505

4.6%

 

 

《契約数、ARPU》

 

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2024年3月31日現在、NTTドコモの携帯電話サービスの契約数は8,994万契約となり、前期末時点の8,749万契約から1年間で245万契約増加しました。また、解約率は前期比0.02ポイント増加し、0.67%となりました。

当連結会計年度におけるモバイル通信ARPUは、irumo等の料金プラン導入によるお客さま還元の拡大により3,980円となり、前期の4,050円に比べて70円(1.7%)減少しました。

 

総合ICT事業セグメントの契約数及び市場シェア                     (単位:千契約)

サービスの種類

2023年3月31日現在

2024年3月31日現在

増減

増減率

携帯電話サービス

87,495

89,940

2,445

2.8%

  5Gサービス

20,602

29,740

9,137

44.4%

  LTE(Xi)サービス

57,771

53,041

△4,730

△8.2%

  FOMAサービス

9,122

7,159

△1,963

△21.5%

携帯電話市場シェア

43.1%

42.3%

△0.8ポイント

spモードサービス

52,355

53,057

702

1.3%

iモードサービス

1,627

1,113

△515

△31.6%

ぷらら(ISP)

3,733

2,797

△936

△25.1%

OCN(ISP)

7,301

7,030

△271

△3.7%

ひかりTV

884

764

△121

△13.6%

(注)1.携帯電話サービス契約数には、MVNOとの契約及び通信モジュールサービス契約数を含めて記載しています。

2.他社契約数については、一般社団法人電気通信事業者協会及び各社が発表した数値を基に算出しています。

3.spモードサービスには、ahamo契約数及びOCNモバイル契約数を含めて記載しています。

 

 

ARPU

区分

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

モバイル通信ARPU(円)

4,050

3,980

△70

△1.7%

(注)1.ARPUの算定式については「(注)2.ARPUの算定式(b)NTTドコモ」をご参照ください。

2.モバイル通信ARPUにOCNモバイル関連収入・契約数を含めて算出しています。

 

②地域通信事業セグメント

 

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地域通信事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、固定音声関連サービス収入の減少等があったものの、ノンコア資産スリム化に伴うその他収入の増加等により3兆1,832億円(前期比0.2%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、震災の応急復旧等による費用の増加があったものの、コスト効率化の取組みによる費用の減少等により2兆7,455億円(前期比0.4%減)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は4,377億円(前期比4.1%増)となりました。

 

セグメント業績の概要                                  (単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

31,776

31,832

56

0.2%

固定音声関連サービス

8,762

8,355

△408

△4.7%

IP系・パケット通信サービス

16,011

15,814

△198

△1.2%

通信端末機器販売

712

728

16

2.2%

システムインテグレーションサービス

2,078

2,212

134

6.5%

その他

4,212

4,723

511

12.1%

営業費用

27,571

27,455

△116

△0.4%

人件費

6,405

6,363

△42

△0.6%

経費

14,885

14,918

34

0.2%

減価償却費

4,196

4,094

△102

△2.4%

その他

2,086

2,080

△6

△0.3%

営業利益

4,205

4,377

172

4.1%

 

 

加入電話及びINSネットの契約数                          (単位:千加入/回線)

サービスの種類

2023年3月31日現在

2024年3月31日現在

増減

増減率

(NTT東日本)

 

 

 

 

 加入電話

6,142

5,736

△406

△6.6%

 INSネット

718

617

△101

△14.0%

(NTT西日本)

 

 

 

 

 加入電話

5,966

5,470

△495

△8.3%

 INSネット

716

612

△104

△14.5%

(注)1.加入電話は、一般加入電話とビル電話を合算しています(加入電話・ライトプランを含む)。

2.「INSネット」には、「INSネット64」及び「INSネット1500」が含まれています。「INSネット1500」は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)のいずれについても「INSネット64」の10倍程度であることから、「INSネット1500」の1契約を「INSネット64」の10倍に換算しています(INSネット64・ライトを含む)。

 

加入電話やINSネットについて、お客さまのニーズが携帯電話、IP電話、OTT事業者が提供する無料又は低価格の通信サービス等へと移行していること等に伴い、2024年3月31日現在の固定電話契約数(固定電話+INSネット)は、前期比1,106千契約減少し、12,436千契約となりました。

 

 

フレッツ光(コラボ光含む)、フレッツ・ADSL、ひかり電話、フレッツ・テレビ伝送サービスの契約数

(単位:千契約)

サービスの種類

2023年3月31日現在

2024年3月31日現在

増減

増減率

(NTT東日本)

 

 

 

 

 フレッツ光(コラボ光含む)

13,326

13,368

41

0.3%

 (再掲)コラボ光

9,871

10,069

198

2.0%

 フレッツ・ADSL

5

3

△2

△37.5%

 ひかり電話(千チャネル)

10,058

9,786

△272

△2.7%

 フレッツ・テレビ伝送サービス

1,177

1,205

28

2.3%

(NTT西日本)

 

 

 

 

 フレッツ光(コラボ光含む)

10,249

10,286

37

0.4%

 (再掲)コラボ光

6,938

7,048

109

1.6%

 フレッツ・ADSL

53

43

△10

△19.3%

 ひかり電話(千チャネル)

8,694

8,518

△176

△2.0%

 フレッツ・テレビ伝送サービス

888

932

43

4.9%

(注)1.「フレッツ光(コラボ光含む)」はNTT東日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」、「フレッツ 光WiFiアクセス」及び「ひかり電話ネクスト(光IP電話)」、NTT西日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「ひかり電話ネクスト(IP電話サービス)」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しています。

2.「ひかり電話」、「フレッツ・テレビ伝送サービス」は、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しています。

 

2024年3月31日現在の「フレッツ光(コラボ光含む)」の契約数は、「光コラボレーションモデル」の展開等に取り組んだ結果、23,653千契約(前期比78千契約(0.3%)増)、「ひかり電話」の契約数は、18,304千チャネル(前期比448千チャネル(2.4%)減)、「フレッツ・テレビ」の契約数は、2,137千契約(前期比71千契約(3.4%)増)となりました。

 

固定通信サービスにおける固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)及びフレッツ光ARPU     (単位:円)

サービスの種類

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

(NTT東日本)

 

 

 

 

固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)

2,550

2,500

△50

△2.0%

フレッツ光ARPU

4,490

4,430

△60

△1.3%

 基本利用料ARPU

3,310

3,290

△20

△0.6%

 付加サービスARPU

1,180

1,140

△40

△3.4%

(NTT西日本)

 

 

 

 

固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)

2,540

2,520

△20

△0.8%

フレッツ光ARPU

4,550

4,480

△70

△1.5%

 基本利用料ARPU

3,190

3,170

△20

△0.6%

 付加サービスARPU

1,360

1,310

△50

△3.7%

(注)各ARPUについては、「(注)1.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit)」「(注)2.ARPUの算定式 (a)NTT東日本、NTT西日本」をご参照ください。

 

当連結会計年度における固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)は、前期に比べ、NTT東日本が50円(2.0%)減少し2,500円、NTT西日本が20円(0.8%)減少し2,520円となりました。

当連結会計年度におけるフレッツ光ARPUは、前期に比べ、NTT東日本が60円(1.3%)減少し4,430円、NTT西日本が70円(1.5%)減少し4,480円となりました。これは、「光コラボレーションモデル」の進展に伴う単金減等によるものです。

 

③グローバル・ソリューション事業セグメント

 

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グローバル・ソリューション事業セグメントにおける当連結会計年度の営業収益は、国内外ともにデジタル化需要の取り込みに加え、為替影響による増加等により4兆3,674億円(前期比6.7%増)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用は、収益連動費用の増加等により4兆578億円(前期比6.1%増)となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は3,096億円(前期比16.5%増)となりました。

 

セグメント業績の概要                                   (単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

40,917

43,674

2,757

6.7%

システムインテグレーションサービス

40,917

43,674

2,757

6.7%

営業費用

38,261

40,578

2,317

6.1%

人件費

14,776

16,008

1,233

8.3%

経費

20,092

20,879

786

3.9%

減価償却費

3,144

3,391

247

7.9%

その他

249

300

52

20.8%

営業利益

2,656

3,096

439

16.5%

 

 

 

 

④その他(不動産、エネルギー等)

 

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その他(不動産、エネルギー等)における当連結会計年度の営業収益は、エネルギー事業における電気料収入の減少等により1兆6,329億円(前期比9.6%減)となりました。一方、当連結会計年度の営業費用はエネルギー事業における電気料収入の減少等に伴い、収益連動費用が減少したこと等により1兆5,731億円(前期比9.6%減)となりました。この結果、営業利益は598億円(前期比11.0%減)となりました。

 

業績の概要                                        (単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

18,070

16,329

△1,741

△9.6%

システムインテグレーションサービス

571

624

52

9.2%

その他

17,499

15,706

△1,793

△10.2%

営業費用

17,398

15,731

△1,667

△9.6%

人件費

2,654

2,737

83

3.1%

経費

13,003

11,189

△1,815

△14.0%

減価償却費

1,269

1,333

64

5.0%

その他

472

472

1

0.2%

営業利益

672

598

△74

△11.0%

 

 

 

(参考)国内売上高及び海外売上高に関する情報

 

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国内における当連結会計年度の営業収益は、エネルギー事業における電気料収入の減収等があったものの、グローバル・ソリューション事業セグメントにおけるシステムインテグレーションサービス収入の増加や、各事業におけるノンコア資産スリム化に伴う増加等により10兆5,498億円(前期比0.3%増)となりました。海外における当連結会計年度の営業収益は、グローバル・ソリューション事業セグメントにおけるシステムインテグレーションサービス収入の増加等により2兆8,247億円(前期比8.0%増)となりました。

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

増減

増減率

営業収益

131,362

133,746

2,384

1.8%

国内

105,199

105,498

299

0.3%

海外

26,163

28,247

2,084

8.0%

(注)営業収益は、製品及びサービスの提供先別に国内・海外を分類しています。

 

 

 

(注)

1.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit):1契約者(利用者)当たり月間平均収入

契約者(利用者)当たりの月間平均収入(ARPU)は、契約者(利用者)1人当たりの平均的な月間営業収益を計るために使われます。地域通信事業の場合、ARPUは、地域通信事業セグメントの営業収益のうち、固定電話(加入電話及びINSネット)並びに「フレッツ光」の提供により毎月発生する収入を、当該サービスの稼動契約数で除して計算されます。総合ICT事業の場合、ARPUは、総合ICT事業セグメントの営業収益のうち、携帯電話(5G)、携帯電話(LTE(Xi))、携帯電話(FOMA)のサービス提供により発生する通信サービス収入(一部除く)を、当該サービスの稼動利用者数で除して計算されます。これら数字の計算からは、各月の平均的な利用状況を表さない端末機器販売、契約事務手数料、ユニバーサルサービス料等は除いています。こうして得られたARPUは、各月のお客さまの平均的な利用状況を把握する上で有用な情報を提供するものであると考えています。なお、ARPUの分子に含まれる収入は、IFRSによる連結決算値を構成する財務数値により算定しています。

 

2.ARPUの算定式

(a) NTT東日本、NTT西日本

NTT東日本及びNTT西日本のARPUは、以下の2種類に分けて計算しています。

・音声伝送収入(IP系除く)に含まれる加入電話とINSネットの基本料、通信・通話料、及びIP系収入に含まれる「フレッツ・ADSL」、「フレッツ・ISDN」からの収入に基づいて計算される固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)。

・IP系収入に含まれる「フレッツ光」、「フレッツ光」のオプションサービスからの収入、「ひかり電話」における基本料・通信料・機器利用料、及び附帯事業営業収益に含まれる「フレッツ光」のオプションサービス収入に基づいて計算されるフレッツ光ARPU。

 

※1 「フレッツ光」は、NTT東日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」、「フレッツ 光WiFiアクセス」及び「ひかり電話ネクスト(光IP電話)」、NTT西日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「ひかり電話ネクスト(IP電話サービス)」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含めて記載しています。「フレッツ光」のオプションサービスは、NTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービスを含めて記載しています。

※2 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)及びフレッツ光ARPUには、相互接続通話料は含まれていません。

※3 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上の契約数は、固定電話(加入電話及びINSネット)の契約数です。

※4 固定電話総合ARPU(加入電話+INSネット)の算定上、INSネット1500の契約数は、チャネル数、伝送速度、回線使用料(基本料)のいずれについてもINSネット64の10倍程度であることから、INSネット1500の1契約をINSネット64の10倍に換算しています。

※5 フレッツ光ARPU算定上の契約数は、「フレッツ光」の契約数(「フレッツ光」は、NTT東日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光ライト」、「フレッツ 光ライトプラス」、「フレッツ 光WiFiアクセス」及び「ひかり電話ネクスト(光IP電話)」、NTT西日本の「フレッツ 光クロス」、「フレッツ 光ネクスト」、「フレッツ 光マイタウン ネクスト」、「フレッツ 光ライト」及び「ひかり電話ネクスト(IP電話サービス)」、並びにNTT東日本及びNTT西日本がサービス提供事業者に卸提供しているサービス(コラボ光)を含む)です。

※6 NTT東日本及びNTT西日本におけるARPU算出時の稼動契約数の計算式は、以下のとおりです。

通期実績:当該期間の各月稼動契約数{(前月末契約数+当月末契約数)/2}の合計

 

 

(b) NTTドコモ

NTTドコモのモバイル通信ARPUの計算式は、以下のとおりです。

・モバイル通信ARPU:モバイル通信ARPU関連収入(基本使用料、通話料、通信料)/稼動利用者数

※1 NTTドコモにおけるARPU算出時の稼動利用者数の計算式は、以下のとおりです。

当該期間の各月稼動利用者数{(前月末利用者数+当月末利用者数)/2}の合計

※2 利用者数は、以下のとおり、契約数を基本としつつ、一定の契約数を除外して算定しています。

利用者数 = 契約数

-通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る契約数

-5G契約、Xi契約及びFOMA契約と同一名義のデータプラン契約数

 

なお、通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」、MVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る収入並びに「dポイント」等に係る収入影響等は、ARPUの算定上、収入に含まれていません。

 

(4)キャッシュ・フロー及び財政状態の状況の分析

 

キャッシュ・フロー

前連結会計年度及び当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2022年4月1日から

2023年3月31日まで)

当連結会計年度

(2023年4月1日から

2024年3月31日まで)

営業活動によるキャッシュ・フロー

22,610

23,742

営業活動によるキャッシュ・フロー

(休日影響(注)を除く)

22,610

25,670

投資活動によるキャッシュ・フロー

△17,369

△19,892

財務活動によるキャッシュ・フロー

△5,902

△2,345

現金及び現金同等物の期末残高

7,939

9,829

現金及び現金同等物の期末残高

(休日影響(注)を除く)

7,939

11,757

(注)当期末日が休日だったことから、通信サービス料金等の支払期限が月末から翌月初に後倒しとなった影響1,928億円。

 

NTTグループにおいては、事業が創出する安定的なキャッシュ・フローが設備投資等の経常的な投資活動に必要な支出を賄っているほか、株主還元(配当・自己株式取得)や借入金等の債務返済の主な原資となっています。

 

・営業キャッシュ・フロー

当連結会計年度の休日影響を除いた場合の営業活動によって得たキャッシュ・フローは、2兆5,670億円となりました。

これは主に、非資金損益項目調整後の当期利益(当期利益に減価償却費、固定資産除却損等の非資金損益項目を加算)が3兆103億円となったことによります。

また、前連結会計年度の2兆2,610億円から3,060億円増加しています。これは、当期において、前期と比べ、非資金損益項目調整後の当期利益が845億円増加したことに加え、主に法人税等支払いの減等により現金支出が2,215億円減少したためです。

なお、当連結会計年度の営業活動によって得たキャッシュ・フローは、2兆3,742億円です。

 

・投資キャッシュ・フロー

当連結会計年度の投資活動に充てたキャッシュ・フローは、1兆9,892億円となりました。

これは主に、有形固定資産・無形資産及び投資不動産の取得による支出が2兆840億円となったことによります。

また、前連結会計年度の1兆7,369億円から支出が2,523億円増加しています。これは、当期において、前期と比べ、資産売却等による収入が2,274億円増加した一方で、有形固定資産・無形資産及び投資不動産の取得による支出が2,321億円増加したほか、出資等による支出が2,188億円増加したこと等によるものであります。

 

・財務キャッシュ・フロー

当連結会計年度の財務活動に充てたキャッシュ・フローは、2,345億円となりました。

これは主に、株主還元による支出が6,381億円、借入債務の収支が5,934億円の収入となったことによります。

株主還元による支出の内訳は、配当金4,377億円、自己株式の取得2,004億円の支出です。また、借入債務の収支の内訳は、短期借入債務の増加による収入1,345億円、長期借入債務の増加による収入1兆854億円、長期借入債務の返済による支出6,265億円です。

また、前連結会計年度の5,902億円から支出が3,557億円減少しています。これは、当期において、前期と比べ、自己株式取得による支出が3,107億円減少したこと等によるものであります。

 

 

財政状態

前連結会計年度及び当連結会計年度の資産、負債、資本の状況は以下のとおりです。

(単位:億円)

 

前連結会計年度末

当連結会計年度末

増減

資産

253,089

296,042

42,954

負債

159,582

187,112

27,529

(再掲)有利子負債

82,305

95,910

13,605

資本

93,506

108,931

15,424

(再掲)株主資本

85,614

98,442

12,828

 

当連結会計年度末の資産は、金融事業の取り込みによるその他金融資産の増や有形固定資産の増等により、前連結会計年度末に比べて4兆2,954億円増加し、29兆6,042億円となりました。

当連結会計年度末の負債は、金融事業の取り込みによるその他の金融負債の増や税金支払、出資増に伴う借入金の増等により、前連結会計年度末に比べて2兆7,529億円増加し、18兆7,112億円となりました。有利子負債残高は9兆5,910億円であり、前連結会計年度末の8兆2,305億円から1兆3,605億円増加しました。

当連結会計年度の株主資本は、当期利益の増等により、前連結会計年度末に比べて1兆2,828億円増加し、9兆8,442億円となりました。有利子負債の株主資本に対する比率は97.4%(前連結会計年度末は96.1%)となりました。また、株主資本に非支配持分を加えた資本は前連結会計年度末に比べて1兆5,424億円増加し、10兆8,931億円となりました。

 

・現金及び流動性

NTTグループは、現金及び現金同等物に加え、取引銀行と当座貸越契約及びコミットメントライン契約を締結しており、事業活動上必要な流動性を確保しています。当連結会計年度末の休日影響を除いた場合のNTTグループの現金及び現金同等物残高は1兆1,757億円であり、前連結会計年度末の7,939億円から3,818億円増加しました。現金及び現金同等物とは、負債の返済や投資等に利用される予定の一時的な余剰金のことで、運転資金として使用されます。したがって、現金及び現金同等物の残高は、その時点の資金調達や運転資金の状況に応じて毎年度変化します。

なお、当連結会計年度末のNTTグループの現金及び現金同等物残高は9,829億円です。

また、当連結会計年度末のコミットメントラインの未使用残高は、3,332億円でした。

 

・契約上の債務

下記の表は、当連結会計年度末におけるNTTグループの契約上の債務をまとめたものであります。

(単位:百万円)

 

負債・債務の内訳

支払い期限ごとの債務額

総 額

1年以内

1年超

5年以内

5年超

契約上の債務

 

 

 

 

長期借入債務※1

8,001,322

953,307

4,524,432

2,523,583

社債

3,798,016

376,595

2,025,808

1,395,613

銀行からの借入金

4,203,306

576,712

2,498,624

1,127,970

長期借入債務に係る支払利息

363,905

82,129

194,037

87,739

リース負債※2

1,472,453

242,568

493,445

736,440

購入コミットメント※3

489,718

263,928

217,734

8,056

その他の固定負債※4

 

 

 

 

 

※1.長期借入債務には1年以内に返済予定のものを含めて表示しています。長期借入債務の詳細については、連結財務諸表「注記4.5. 短期借入債務及び長期借入債務」をご参照ください。

※2.リース負債には利息相当額を含めています。

※3.購入コミットメントは主に有形固定資産その他の資産の購入に関する契約債務であります。なお、残余期間が1年内の購入コミットメントを含めていますが、解約可能な購入コミットメントを除いています。

※4.その他の固定負債は重要性がない、あるいは支払時期が不確実であるため、上表に金額を記載していません。なお、連結財務諸表「注記3.11. 従業員給付」に記載のとおり、NTTグループの年金制度に対して、翌連結会計年度に合計15,869百万円の拠出を見込んでいます。

 

当連結会計年度末のNTTグループの有形固定資産及びその他資産の購入等に係る契約債務残高は約4,897億円となっており、営業活動によって得たキャッシュ・フローによりこれらの売買契約代金の支払をする予定であります。

 

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断

重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断については、連結財務諸表「注記1.4. 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

IOWN構想の具現化や様々な産業への技術の展開・課題解決等の取組みを推進しました。

 

IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想

 社会活動や経済活動のデジタルシフトが加速する中、通信ネットワークの利用は大きく拡大しデータ量・遅延・消費電力等が限界を迎えようとしています。IOWN構想は、革新的な光技術によってこの限界を打破し、持続可能な世界の実現をめざすものです。

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○ IOWN構想の具現化に向けた研究開発

-主要なデータセンター間をIOWN APNで接続し、離れたデータセンター間もリアルタイムで連携することで、あたかもひとつのデータセンターのように利用できる環境構築を進めました。従来、データセンターは都心部等に集中していましたが、この取組みを地域のデータセンターへも拡大し、IOWN APNの特性(超高速・超低遅延)を活かした分散型データセンターを実現していきます。

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APNとは?

 現在のネットワークは、光信号と電気信号の変換を多数実施することにより電力を消費しているほか、通信トラフィックの制御処理により遅延が発生します。APNは、最終的にこれらを全て光信号での処理にすることで、現在よりも低消費電力で、大容量かつ低遅延なネットワークを実現します。

 

-国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が公募した「Beyond5G 研究開発促進事業」や「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、IOWNをはじめとした最先端技術を提案した当社及び共同提案者が、実施企業に採択されました。共同提案者並びにIOWN Global Forum参加のパートナーとともに、IOWNの研究開発を加速し、事業化に向けて取り組んでいきます。

 

IOWNのオープンイノベーション

 世界の様々な企業・団体とユースケースを議論し、必要となる技術、フレームワーク、アーキテクチャの開発を進めることで、新たなコミュニケーション基盤としてのIOWNの実現をめざしており、世界の主要なICT企業等が参加するIOWN Global Forumのメンバー数は、139組織まで拡大しました。(2024年3月末時点)

 

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○ 様々な産業への技術の展開・課題解決

-NTTグリーン&フード株式会社は、食料不足や環境問題の解決、地域産業の活性化をめざし、NTTグループ初の水産会社として、2023年7月より事業を開始しました。情報通信技術や、魚介類、藻類の品種改良技術等を活用したサステナブルな陸上養殖事業を軸に、地域の雇用創出や地場産業との連携、教育・文化振興等を進めていきます。

 

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-2023年12月、株式会社Space Compass、NTTドコモ、当社及びスカパーJSAT株式会社の4社は、成層圏を飛行する高高度プラットフォームであるHAPS(High Altitude Platform Station)を介した携帯端末向け直接通信システムの早期実用化に向けた開発の加速と実用化後の利用拡大を見据えた高速大容量化技術の研究開発を開始しました。本開発を通じてHAPSにおける成層圏からの通信サービスの品質向上、及び柔軟かつ効率的なHAPS通信サービスの運用を可能とする開発を

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推進し、Beyond 5G時代における空・海・宇宙等あらゆる場所への「超カバレッジ拡張」を実現する宇宙RANの開発に取り組んでいきます。

 

 

当連結会計年度における各セグメントの研究開発の概要は、次のとおりです。

セグメントの名称

金額

(百万円)

摘 要

総合ICT事業

132,119

通信事業の競争力強化に向けた移動・固定が融合した高品質かつ経済的な高機能ネットワーク、及びスマートライフ事業の拡大をめざしたサービスやデバイスの分野におけるイノベーション創出、さらにソリューション事業領域拡大に向け、ソフトウェア開発力強化によるデータドリブン・ESG経営を支える研究開発等

地域通信事業

85,795

IP・ブロードバンド化の進展、ユーザニーズの多様化に対応するアクセスサービスの拡充及び付加価値の高いサービスの研究開発等

グローバル・ソリューション事業

20,491

グローバル・ソリューション、システムインテグレーションの競争力強化に向けた技術開発等

その他

(不動産、エネルギー等)

136,012

ICT社会の発展を支える高度なネットワークと新サービスを実現する基盤技術や、環境負荷低減に貢献する技術、通信・情報分野に大きな技術革新をもたらす新原理・新部品・新素材技術に関する研究開発等

小計

374,417

 

セグメント間取引消去

119,542

 

合計

254,875

 

 

上表の研究開発費用は、基礎的・基盤的研究から実用化研究開発までに係る費用を示しています。

当社が開発した技術のビジネス展開にあたっては、サービス・製品化を図る必要がありますが、このサービス開発に関する設備投資・費用は2,026億円であり、研究開発費用との合計については、4,575億円となっております。

 

※ サービス開発・機能追加に必要となる固定資産(ハードウェア、ソフトウェア等)への投資額や、サービス開発に要した人件費、委託費等が含まれています。

 

なお、当事業年度において当社が要した基盤的研究開発費用の総額は1,236億円(前期比3.3%減)となり、基盤的研究開発収入1,170億円(前期比4.1%減)を得ました。