(経営方針)
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献することを企業理念に掲げて事業を行っています。
<日本製鉄グループ企業理念>
基本理念
日本製鉄グループは、常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献します。
経営理念
1.信用・信頼を大切にするグループであり続けます。
2.社会に役立つ製品・サービスを提供し、お客様とともに発展します。
3.常に世界最高の技術とものづくりの力を追求します。
4.変化を先取りし、自らの変革に努め、さらなる進歩を目指して挑戦します。
5.人を育て活かし、活力溢れるグループを築きます。
(経営環境)
中長期的な環境変化については、次のとおり想定しています。
世界の鉄鋼需要については、インドも含めたアジア地域を中心に確実な成長が見込まれます。また、カーボンニュートラルに向けた新規ニーズを含め高級鋼の需要は拡大が見込まれます。一方で、国内の鉄鋼需要については、人口減少・高齢化や需要家の海外現地生産拡大等に伴い引き続き減少していくことが想定されます。また、製造業における地産地消・自国産化の傾向が、グローバルに繋がっていた市場の分断を進展させると考えられます。さらに、世界の鉄鋼生産量の5割強を占める中国における需要の頭打ち等により、海外市場における競争が一層激化することが想定されます。
世界的に気候変動に関する問題意識が高まるなか、カーボンニュートラルの実現は官民を挙げた総力戦となり、他国に先駆けたカーボンニュートラルスチールの製造技術の確立が、今後の鉄鋼業界における競争力、収益力、ブランド力を決める鍵となると考えています。
2024年度においては、世界の鉄鋼需要については、未曾有の厳しい状況が当面継続すると見ざるを得ません。実需回復は現時点で見通しづらく、市況回復にも時間を要する見通しであり、原料と製品のデカップリング(非連動)構造が当面継続するリスクもあります。
(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)
当社グループは、製鉄事業を中核として、鉄づくりを通じて培った技術をもとに、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しています。製鉄セグメントは、当社グループの連結売上収益の約9割を占めています。
当社は、2020年度に断行した抜本的コスト改善による損益分岐点の大幅な引下げに加え、紐付き価格の是正、一貫能力絞込みによる注文選択の効果、海外グループ会社の収益力の向上等により、外部環境に関わらず高水準の事業利益を確保し得る収益構造の構築に取り組んできました。2024年度においては、経営環境が厳しさを増し、当面継続すると想定される状況にあっても、従来の収益構造対策の継続等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けさらに厚みを持った新たな事業構造へと進化し、外部環境に関わらずさらなる高収益を計上できる基盤を構築すべく施策を着実に進めていくとともに、将来を見据えた人材確保・活躍推進に資する投入も行っていきます。
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」の概要と進捗は次のとおりです。
<日本製鉄グループ中長期経営計画(2021年3月5日公表)の概要と進捗>
当社は、「総合力世界No.1 の鉄鋼メーカー」を目指し、日本製鉄グループ中長期経営計画を定め、その4つの柱である「国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化」、「海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進」、「カーボンニュートラルへの挑戦」及び「デジタルトランスフォーメーション戦略の推進」の実現に向け、諸施策に着実に取り組んでいます。
1.国内製鉄事業の再構築とグループ経営の強化
「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として、国内製鉄事業の最適生産体制を構築するとともに、競合他社を凌駕するコスト競争力の再構築と適正マージンの確保による収益基盤の強化を推進しています。
当期においては、名古屋製鉄所への次世代熱延ライン、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)及び九州製鉄所八幡地区への電磁鋼板設備等、戦略商品の能力・品質向上対策への投資を含め競争力優位な設備への選択投資を行っており、競争力劣位な設備を休止することと合わせて、生産設備を新鋭化・スリム化・効率化し、品種高度化を推進するとともに、生産能力規模と固定費規模の適正化を進めてきました。また、原料事業については、カーボンニュートラル推進に資する高品質な製鉄用原料炭の安定確保に加え、より外部環境に左右されにくい連結収益構造の構築を目指し、カナダの原料炭事業会社Elk Valley Mining Limited Partnershipへ20%の出資を行いました。加えて、日鉄物産㈱の子会社化・非公開会社化を実施するなど、商社機能のグループでの効率化・強化、営業ノウハウ・インフラを一体活用した直接営業力強化、サプライチェーンのさらなる高度化の取組みも進めています。今後もこうした厚みを持った事業構造へ進化させていきます。
2.海外事業の深化・拡充に向けた、グローバル戦略の推進
世界の鋼材消費は、2025年さらに2030年に向けて引き続き緩やかな成長が見込まれています。当社は、規模及び成長率が世界的に見ても大きいアジアを中心に事業を展開しており、マーケットの規模や成長を当社の利益成長につなげ得るポジションにあります。
このような環境のもと、需要の伸びが確実に期待できる地域において、当社の技術力・商品力を活かせる分野で、需要地での一貫生産体制を拡大し、現地需要を確実に捕捉することで、日本製鉄グループとして、「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指しています。
将来の市場拡大と自国産化のさらなる進展が見込まれるインド市場においては、ArcelorMittal Nippon Steel India Limitedによる拠点買収や新たな一貫製鉄所建設の検討を開始するなど、能力の拡張を進めています。さらに、最大の高級鋼需要国であり、かつ当社が培ってきた技術力・商品力を活かせる地域である米国において、United States Steel Corporationの買収を決定しました。これにより、インドとホームマーケットであるASEANに米国を加えた3つの重要拠点を確保することとなり、グローバル拠点の多様化につながることとなります。グローバル粗鋼1億トン体制の実現に向けて、今後も主要な海外市場における一貫生産体制拡大による収益力の向上を目指していきます。
3.カーボンニュートラルへの挑戦
脱炭素社会に向けた取組みにおいて欧米・中国・韓国との開発競争に打ち勝ち、引き続き世界の鉄鋼業をリードするべく、「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を掲げ、経営の最重要課題として諸対策を検討・実行しています。
東日本製鉄所君津地区の小型試験炉でのSuper COURSE50開発試験で世界最高水準を更新するCO2排出量33%の削減効果を確認するなど技術開発の進捗に加え、九州製鉄所八幡地区及び瀬戸内製鉄所広畑地区を候補地とした高炉プロセスから電炉プロセスへの転換に向けた本格検討を開始するなど、「高炉水素還元」、「水素による還元鉄製造」及び「大型電炉での高級鋼製造」の3つの超革新技術によるカーボンニュートラルの実現に向けて取組みを継続しています。また、カーボンニュートラル化を通じて当社が提供する2つの価値である「鉄鋼製造プロセスにおけるCO2排出量を削減したと認定される鉄鋼製品~『NSCarbolex® Neutral』」と「社会におけるCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術~『NSCarbolex® Solution』」によりお客様の国際競争力を支えています。これらの取組みに対し、脱炭素化における鉄鋼業の役割の重要性が再認識され、グリーンイノベーション基金の鉄鋼業への配分が大幅に拡大されたことを受け、当社としても開発・実機化の加速化・前倒しを行うこととしています。
4.デジタルトランスフォーメーション戦略の推進
デジタルトランスフォーメーション戦略に5年間で1,000億円以上を投入し、鉄鋼業におけるデジタル先進企業を目指しています。
当期の具体的な取組みの一例として、原料を海上輸送する際の配船管理において、リアルタイムな運行情報取得を可能にするシステムを構築し、運用を開始しました。これにより意思決定の迅速化が促進され、原料調達から輸送、生産までのサプライチェーンの効率化に貢献し、さらには運航・輸送効率の向上等によりカーボンニュートラル社会の実現にもつながると考えています。また、日鉄ソリューションズ㈱と共同で、数理最適化技術を応用し、製鋼工程における生産計画を高速立案する出鋼スケジューリングシステムを開発し、東日本製鉄所君津地区で本格運用を開始しました。これによって、熟練技能者と同等以上の計画を短時間で導き出すことが可能となり、従来と比較し約70%の計画立案時間の削減を達成しました。今後は各製鉄所へ順次展開し、全社での生産計画の一元化を進めていく予定です。そのほか、IoT、AI による操業・設備保全の遠隔管理・予兆監視、自動化や、実績管理・一貫生産計画の一元化・迅速化等の各DX 施策にも引き続き取り組んでいます。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
「日本製鉄グループ中長期経営計画」の収益・財務体質目標等については、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。
(注) 上記(経営環境)と(経営戦略、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)の記載には、2024年5月9日決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれている。これらはその発表又は公表の時点において当社が適切と考える情報や分析、一定の前提等に基づき策定したものであり、かかる見積りに固有の限界があることに加え、実際の業績は、今後様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性がある。かかる要因については、後記「3 事業等のリスク」を参照されたい。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
当社は、日本製鉄グループ企業理念において「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて、社会の発展に貢献」する旨を定めており、サステナビリティ課題への対応が当社グループの存立・成長を支える基盤であると認識しています。
当社は、このような認識のもと、取締役会において、安全衛生、環境(気候変動対策を含む)、防災、品質、人材育成やダイバーシティ&インクルージョン等、サステナビリティ課題におけるマテリアリティ(重要課題)を定め、それぞれの主管部門が中心となって取組みを推進しています。リスク及び機会を含めたこれらの取組み状況については、目的・分野別に副社長を委員長とする全社委員会等で審議した後、経営会議・取締役会に報告されています。また、各分野のリスク管理に関する事項等を含む内部統制全般については、内部統制担当の副社長を委員長とし、四半期毎に開催する「リスクマネジメント委員会」において、取組み状況を審議・確認し、重要事項については経営会議・取締役会に報告されています。当社の取締役会は、これらの仕組みを通じて、経営上の重要なリスク管理の監督を行っています。なお、当社のガバナンスの仕組みについては、「
当社は、気候変動対策を経営の最重要課題と位置付け、当社独自の取組みとして「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表し、2050年カーボンニュートラルの実現に向けてチャレンジしています。当社グループのCO2排出量は当社が約9割を占めることに加え、グループ各社の事業特性により気候変動対策は異なることから、以降は当社の取組みについて記載します。
当社は、気候変動対策について、全社委員会として設置したグリーン・トランスフォーメーション推進委員会及び環境政策企画委員会で報告・審議を行っています。グリーン・トランスフォーメーション推進委員会では主にカーボンニュートラル推進に係る重要な諸案件を、環境政策企画委員会では環境政策全般に係る事項を主な議題としており、リスクの認識、諸施策の進捗確認、方針決定等を行っています。各委員会は、各委員会が主管する事項を担当する副社長が委員長を務め、少なくともそれぞれ年2回以上開催されています。それぞれの委員会における審議内容のうち、重要な事項については、経営会議・取締役会に報告されています。取締役会は、定期的に報告を受けることにより経営上の重要なリスク管理の監督を行っています。
当社は、2050年カーボンニュートラル社会実現に向け、2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を公表しました。当社は、2050年カーボンニュートラルの実現にチャレンジし、「社会全体のCO2排出量削減に寄与する高機能鋼材とソリューションの提供」及び「鉄鋼製造プロセスの脱炭素化によるカーボンニュートラルスチールの提供」という2つの価値を提供することで、サプライチェーンでのCO2削減の実現を目指します。

当社は、2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、2030年にCO2排出量を2013年比30%削減する目標を掲げています。これについては、大型電炉での高級鋼製造、高炉水素還元(COURSE50)、既存プロセスの低CO2化、効率生産体制構築等により実現を目指しています。
2050年に向けては、大型電炉による高級鋼の量産製造、Super COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じたCO2排出の抜本的削減、水素による還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策等も含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指します。



なお、CO2排出量の前期の確定値及び当期の暫定値については、2024年9月頃発行予定の
これらの取組みを通じて、当社が提供する「社会全体のCO2排出量削減に貢献する製品・ソリューション技術」を総称するブランドとしてNSCarbolex®を立ち上げました。NSCarbolex®は、当社が提供する2つの価値を表すNSCarbolex® Neutral と NSCarbolex® Solutionの2つのブランドにより構成されます。
「NSCarbolex® Neutral」は、当社が実際に削減したCO2排出量をプロジェクト毎に把握し、マスバランス方式を活用して任意の製品に割り当てた鉄鋼製品で、この排出削減量、任意の製品への割当量は、ともに第三者機関の保証を受けたものです。社会における脱炭素ニーズが急速に高まるなか、いち早く脱炭素化に取り組むことは、お客様の競争力を高めることに繋がるものと考えています。当社は、NSCarbolex® Neutralの安定的な供給体制を早期に構築することで、お客様の脱炭素化に貢献していきます。
また、「NSCarbolex® Solution」は、社会におけるCO2排出量削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術です。自動車の製造時・走行時のCO2排出量削減に寄与する「NSafe®-AutoConcept」、モーターの高効率化や送配電網におけるエネルギーロス削減に寄与する「高効率電磁鋼板」、建設現場の生産性向上等に寄与する建材ソリューションブランド「ProStruct®」、水素社会の実現に寄与する高圧水素用ステンレス鋼「HRX19®」などの高機能製品・ソリューション技術を通して、社会の様々な場面においてCO2排出量の削減に貢献していきます。

(3)人的資本に関する戦略、指標及び目標
当社グループは「常に世界最高の技術とものづくりの力を追求し、優れた製品・サービスの提供を通じて社会の発展に貢献する」ことを基本理念に掲げています。また、経営理念において「人を育て活かし、活力あるグループを築きます。」と掲げ、従来から重要なテーマとして人材育成に取り組んでいます。
当社グループでは、事業戦略を共有しグループ一体となった経営を行いつつも、人材育成及び社内環境整備については、グループ各社の事業特性を踏まえた取組みを各々で実施しているため、以降は当社の取組みについて記載します。
当社は「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」を目指して成長し続けることを念頭に、中長期経営計画の4つの柱の諸施策に加え、外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への転換にも取り組んでいます。これらを着実に実行するため、人への投資を行い、社員が持つ力を最大限に引き出し、生産性・実力をさらに向上させるべく各種施策を推進しています。

1) 経営人材育成
当社の将来を担う経営人材の育成として、「経営・組織マネジメント」、「財務・経営戦略等の事業管理スキル」、「グローバルマネジメント」等を習得するための以下4つの研修を役職の段階に応じて設けています。

2) スタッフ系人材育成
スタッフ系社員の人材育成についても、企業理念や経営方針に基づく組織戦略をもとに、人材育成を効果的に実行し、定着していくために「人材育成PDCA」を定めています。個人別の育成計画を策定し、1年間の具体的な計画に基づき上司・部下間のアサイン・コミットメント(アサコミ)シートによる対話を基軸としたOJTを行っています。年度末に上司・部下間で育成状況を振り返り、次年度の育成計画につなげる仕組みとしており、成果を確かめながら、各組織の戦略を遂行できる人材を計画的に育成しています。
<スタッフ系人材育成PDCA>

OFF-JTについては、各役割・役職に求められる知識やスキルを各人が習得し、社員全体の能力向上を図る階層別教育、各人の育成ニーズに応じた選択型研修に加え、経営戦略の実現を支える育成施策を織り込み、人材育成を進めています。
<経営戦略の実現を支える人材育成>


3) 操業整備系人材育成
操業整備系社員の人材育成については、長期雇用を前提とした技術・技能の蓄積をたゆみなく実践するために、習得すべき技能の一覧を「技能マップ」として明確にしたうえで、OJTによる育成PDCAを回しています。
また、OJTを補完するOFF-JTについては、基礎技能習得を行うとともに、現場発の知恵(=現場技術)の創出力を引き上げるための職場リーダー教育や技能伝承を狙ったベテラン層教育も行っています。
<操業整備系人材育成・研修体系>

近年の人口減少による採用競争の激化や個人のキャリア観の多様化・労働市場の流動化等の大きな環境変化のなかにおいて、当社経営戦略の実現に向けては、人材の確保と従業員のさらなる活躍推進が極めて重要です。
当社では経営の最重要課題の一つとして、基盤となるダイバーシティ&インクルージョンの推進に加え、様々な人事・広報施策を実施しています。
・人材の確保
これまで実施している安定的な新卒採用や、高い専門性を有する博士人材を活用するポスドク研究員の採用等に加えて、アルムナイ採用を含む積極的な経験者採用の実施や、学生等の求職者のみならず、幅広い世代での当社認知度向上に向けた広報施策も展開しています。また、初任給を含む、従業員の処遇条件の引上げも実施しました。
・配置・育成施策
社内対話・コミュニケーションの促進や、中堅・若手社員の海外派遣等の挑戦・成長の機会付与を通して、従業員のエンゲージメント向上施策を強化しています。直近では配置・育成施策の一環として、社内公募・社内起業制度を開始しています。
・ダイバーシティ&インクルージョン
1) 女性活躍の推進
従来から法定水準を上回る制度の導入や24時間対応可能な保育所等、女性従業員が働きやすい労働環境を整備するとともに、採用の拡大に取り組んできました。より一層の活躍推進に向けて、女性管理職数の中長期目標を設定し、キャリア研修の新設等、ライフイベントを見越した育成施策の充実、社内の風土醸成のためのダイバーシティマネジメント及びアンコンシャスバイアスに関わる教育等を進めています。
2) 多様な事情を抱える人材が活躍できる働き方・休み方の実現
多様な属性・事情を抱えるすべての人材が、有限である時間を最大限有効に活用し、個々人の能力を最大限発揮するという観点から、より柔軟で多様な働き方を追求すべく、テレワークの活用はもとより、勤務制度の拡充を進めています。足元では、単身赴任者に関わる制度の拡充や、育児・介護等のため短時間勤務を利用する社員について、フレックス勤務の適用を可能とする制度改定等を行っており、社員がさらに活き活きと生産性高く持てる力を最大限発揮する働き方を追求することで、生産性の向上及びワークライフバランスの実現を目指しています。
また、個々の事情に合わせた柔軟な休み方の実現に向けた環境整備も進めています。年次有給休暇の取得促進に加え、育児期の子を持つ男性社員の積極的な育児参画を促す観点から、配偶者が出産した男性社員全員に、育児休業・関連休暇の取得を推奨する取組みを進めています。さらに、高齢化が進展するなかでの仕事と介護の両立支援制度や様々な用途で利用できる失効年休積立て制度等を設けるとともに、社員が制度を利用し易い風土の醸成にも努めています。
3) 65歳までの能力最大発揮を目指した健康マネジメントの展開
「安全と健康はすべてに優先する最も大切な価値であり、事業発展を支える基盤である」という当社グループの安全衛生基本方針のもと、当社では、65歳に引き上げた定年退職まで、社員一人ひとりが心身ともに健康で最大限のパフォーマンスを発揮しながら働き、活力溢れる会社になることを目指し、疾病の未然予防及び早期発見・早期治療を確実に実行する健康推進施策に取り組んでいます。具体的には、「こころとからだの健康づくり」推進として、健康診断メニューの充実、検診受診の促進・受診後のフォロー強化及び脳心疾患対策としての生活習慣改善保健指導等の取組みを行っています。
また、グローバル事業展開を支えるため海外で勤務する社員が安心して働けるよう、帯同家族も含めた定期的なフォロー、当社産業医の海外事務所巡回、現地の医療機関や生活環境の調査及び海外勤務者との面談等により必要なアドバイス等を実施し、施策の充実を図っています。
上記戦略を着実に推進するため、女性活躍、働き方・休み方、人材育成等に関するKPIを設定し、取組みを加速していきます。当社グループではグループ各社の事業特性を踏まえた各々の取組みを実施しており、連結グループとしての目標設定は実施していないため、当社の指標及び目標を記載します。
*1 各年度の昇格実施日現在の数値である。
*2 鉄鋼需要の大幅減に伴う減産への対応として実施した臨時休業の影響があった。
*3 定量目標を設定していない。
*4 2021年度は減産下で実施した教育訓練を含む。
本報告書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、下記各項のものがあります。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。また、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、本報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況」の他の項目、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」の各注記、その他においても個々に記載していますので、あわせて御参照ください。
なお、当社グループは、これらのリスクの低減を図るため、本報告書「第一部 企業情報 第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりの企業統治体制を整え、内部統制システムを整備・運用し、各社・各部門が自らの事業上のリスクの把握・評価を行ったうえで、組織規程・業務規程において定められた権限・責任に基づき業務を遂行しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。
<経営環境(鉄鋼市場)に関するリスク>
(1)日本及び海外の経済状況の変動等
製鉄事業を中核とする当社グループにおいては、連結売上収益の約9割を製鉄事業が占めています。自動車、建設、エネルギー、産業機械等、鋼材の主要な需要家が属する業界と同様に、製鉄事業は国内及び海外のマクロ経済情勢と相関性が高く、日本や世界経済の景気に大きく影響されます。
当社は、資産の多くを日本に保有しており、日本の政治的、経済的又は法的環境が大きく変わると、その資産価値が大きく変動するリスクがあります。また、日本は、当社グループの最も重要な地理的市場の一つであり、国内売上収益が当期末の連結売上収益の約6割を占めます。先行きを見通すことは困難ですが、日本の経済情勢が悪化すれば、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループは、グローバル戦略の深化・拡充を事業戦略の一つに掲げており、当社グループの海外売上収益は、連結売上収益の約4割を占めます。海外では政情不安(戦争・内乱・紛争・暴動・テロを含む。)、日本との外交関係の悪化、経済情勢の悪化、商習慣、労使関係や文化の相違から不測のリスクが生じる可能性があります。これらに加えて、鋼材需要の減退、価格競争の激化、大幅な為替レート変動、自然災害の発生、感染症の拡大、保護主義の台頭、投資規制、輸出入規制、為替規制、現地産業の国有化、税制や税率の大幅な変更等、海外各国における事業環境が大きく変化する場合は、当社グループの事業活動、業績、財政状態や将来の成長に悪影響が生じる可能性があります。2024年度については、世界の鉄鋼需要は未曾有の厳しい状況が当面継続すると見ざるを得ません。実需回復は現時点で見通しづらく、市況回復に時間を要する見通しであり、原料と製品とのデカップリング構造が当面継続するリスクもあります。このように経営環境が厳しさを増し、当面継続すると想定される状況にあっても、当社は従来の収益構造対策の継続等に加え、将来ビジョンである1兆円の利益水準に向けさらに厚みを持った新たな事業構造へと進化し、外部環境に関わらずさらなる高収益を計上できる基盤を構築すべく施策を着実に進めていくとともに、将来を見据えた人材確保・活躍推進に資する投入も行っていきますが、今後の様々な要因によって大きく異なる結果となる可能性があります。
(2)鋼材需給の変動等
鋼材の国際的な需給の変動が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。特に、中国における鉄鋼の過剰生産能力問題は、十分な解決には至っておらず、過剰供給に起因する世界市場での厳しい競争は、世界の鋼材価格の引下げ要因となり、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原油・天然ガス等の価格変動も、販売先のひとつであるエネルギー分野の鋼材需要の変化につながることから、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
また、当社グループの製鉄事業における需要家の多くは、鋼材を大量にかつ長期にわたり購入しており、主要な需要家が事業戦略や購買方針を大幅に変更した場合や、鋼材等の販売先である商社・需要家等において与信リスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(3)原燃料価格の変動等
当社グループは、鋼材の生産に必要な鉄鉱石、石炭等の主原料の大半をオーストラリア、ブラジル、カナダ、米国等の海外から輸入しています。また、当社グループは、主原料をはじめ、合金、スクラップ、天然ガス等の原燃料の調達に際し、調達ソースの分散等を通じて安定調達に努めていますが、その価格や海上輸送にかかる運賃は国際的な需給状況により大きく変動しており、市況が高騰した際に、当社グループがこれを鋼材の販売価格に転嫁できなければ、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、原燃料生産国における大きな自然災害、ストライキやトラブルの発生、政治情勢の悪化や戦争・テロ、感染症の拡大等により、原燃料の生産・出荷・貿易量が減少すると、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)為替相場の変動
当社グループは、製品等の輸出及び原燃料等の輸入において外貨建取引を行っており、また外貨建ての債権債務を保有しています。製品等の輸出による受取外貨を原燃料等の輸入の際の支払外貨に充当することにより為替変動影響の大部分を排除したうえで、実需原則に基づいて先物為替予約を実施していますが、為替相場の変動が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。円高が進んだ場合、鋼材を中心とする当社グループの国内製品の輸出競争力が損なわれることや、自動車、家電、エネルギー、産業機械等、製鉄事業の主要な需要産業の輸出競争力も損なわれて国内鋼材需要が減退することにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。一方、円安が進んだ場合、輸出市場においては相対的に価格競争力が増しますが、原燃料等の価格が高騰している状況においては、急速な円安によるコスト影響が従来以上に大きくなる可能性があります。
(5)他素材との競合
鉄鋼製品は、アルミニウム、炭素繊維、ガラス、樹脂・プラスチック、複合材、コンクリート及び木材のような他の素材と常に競合しています。近年、特に電気自動車(EV)の普及等により素材へのニーズが多様化している自動車向け用途においては、当社グループも独自に鋼材のさらなる軽量化や高機能鋼材の研究・開発・製造等を進めていますが、需要家がアルミニウム、樹脂、炭素繊維複合材等の他素材への転換を選択し鋼材の需要が減少すると、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業戦略・計画の遂行に関するリスク>
(1)中長期経営計画の遂行
当社グループは、2021年3月に「日本製鉄グループ中長期経営計画」(本項において、以下「中長期経営計画」という。)を策定し、その計画に掲げた具体的諸施策を推進しています。中長期経営計画は、策定当時において適切と考えられる情報や分析等に基づき策定されていますが、こうした情報や分析等には不確定要素が含まれています。今後、事業環境の悪化や本「事業等のリスク」として記載したすべての事項を含めたその他の要因により、期待される成果の実現に至らず、中長期経営計画で掲げた投入計画、財務目標も達成できない可能性があります。
(2)カーボンニュートラル実現に向けた取組み
当社は、2021年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」を策定し、2050年に向けて電炉による高級鋼の量産製造、Super-COURSE50等の高炉水素還元法の開発を通じたCO2抜本的削減、水素による直接還元鉄製造等の超革新的技術にチャレンジし、CCUS等によるカーボンオフセット対策等も含めた複線的なアプローチでカーボンニュートラルを目指すこととしました。こうした極めてハードルの高いイノベーションに対し、当社は約5,000億円の研究開発費、設備実装、増加する操業コストに約4~5兆円の投資が必要であることに加え、2050年段階での外部条件を含むベストケース想定でも大幅なコストアップになると想定しています。これに対し、非連続的イノベーション等のための研究開発や設備実装、増加する操業コストに対する長期かつ継続的な政策措置、莫大なコストを社会全体で負担する仕組みの構築等を、政府をはじめとする関係部門に対して要望していますが、十分な政策措置等が講じられない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、鉄鋼業界にとって不利となる制度変更、研究開発の成果が得られない等の要因により、期待される成果の実現に至らない可能性があります。
(3)コスト改善の取組み
当社グループは、中長期経営計画に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針として最適生産体制の構築を進めることとしています。そのうち生産体制のスリム化・効率化については、2020年2月に決定した生産設備構造対策による効果とあわせ、2025年までに2019年度対比で1,500億円/年の構造対策効果を見込んでいます。しかしながら、様々な外部要因や内部要因等により、国内製鉄事業において計画している鉄源工程や製品製造工程のスリム化・効率化の進捗が遅れるなど、コストを計画通り改善することができない場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)設備投資
製鉄事業は資本集約型産業であり、継続的に多額の設備投資及び設備修繕支出を必要とします。当社グループは、高炉・コークス炉改修を含む設備の新鋭化・健全性維持並びに成長分野の需要捕捉に向けた瀬戸内製鉄所及び九州製鉄所におけるハイグレード無方向性電磁鋼板能力対策や名古屋製鉄所における次世代熱延ライン新設を含む生産対応等を推進するために必要な設備投資を計画的に実施していますが、減価償却費が増加するほか、当初想定した効果が十分に得られないこと等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは中長期経営計画に掲げたとおり、「戦略商品への積極投資による注文構成の高度化」、「技術力を確実に収益に結びつけるための設備新鋭化」、「商品と設備の取捨選択による生産体制のスリム化・効率化」を基本方針に、2021年度から2025年度までの5年間で約2兆4,000億円の設備投資を実施し、その投資効果の最大化に取り組んでいます。
(5)組織再編、海外投資等
当社グループは、2017年3月の日新製鋼㈱の子会社化(2020年4月に吸収合併)、2018年6月のスウェーデン Ovako AB社の買収、2019年3月の山陽特殊製鋼㈱の子会社化、2019年12月のインド エッサールスチール社のアルセロールミッタル社との共同買収、2020年12月のAM/NS Calvert LLCにおける電気炉の新設の決定、2022年2月のタイ G Steel Public Company Limited及びG J Steel Public Company Limitedの買収、2023年4月の日鉄物産㈱の子会社化、2023年11月のカナダの原料炭事業会社Elk Valley Mining Limited Partnershipへの出資、2023年12月のUnited States Steel Corporationの買収の決定等の組織再編・投資によって成長をしており、今後も国内及び海外において、合併や買収、合弁会社の設立等の組織再編や投資を継続する可能性があります。当社グループは、慎重な事業評価、契約交渉、社内審議等のプロセスを経たうえで投資等の実行を判断し遂行していますが、当初計画通りにシナジー効果が創出されなかったり、連結財政状態計算書に計上したのれんに減損が生じたりする場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。特に、海外での投資案件は、様々な要因(適切な投資対象を見つけられない可能性や合弁事業におけるパートナーとの関係等も含む)から不確実性が高まります。
(6)事業構造・生産体制の見直し
国内鉄鋼需要の縮小や海外鉄鋼市場における競争激化及び主要生産設備の老朽化に対応すべく、国内製鉄事業においては、商品と設備の取捨選択による集中生産等を基軸とした、体質強化の徹底的な推進を目的に、設備の休止や不採算品種からの撤退等の生産設備構造対策を実施していますが、今後の経営環境の変化や収益動向等を踏まえ、さらなる対策を実施する可能性があります。海外においても、既存の事業についてこれまでに選択と集中を積極的に推進し、当社が継続する合理性のない事業からの撤退を概ね完了しつつありますが、経営環境の悪化等により、将来的に収益回復の見込みがない不採算事業や投資目的が希薄化した事業を中心に、引き続き再編・撤退を行う可能性があります。これらのさらなる再編・撤退等を実施する場合、減産や一時的な損失の発生等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期においては、事業再編損として909億円の損失を計上しています。
(7)人材確保・育成、ダイバーシティ&インクルージョンへの取組み、省力化対策
当社グループの将来の成長は、有能な人材の確保及び育成に依拠する部分も大きいことから、仕事と生活の調和の取れた働き方の実現や関連諸制度の浸透・定着等によって就労環境の整備を図りつつ、育成体系の整備等を行いながら、安定的な人材確保と人材競争力の強化に努めています。また、有能な人材の確保及び育成とともに、会社人生で発生し得るライフイベントや健康に起因する労働損失を最小化し、様々な事情を抱える多様な人材が生産性高く、誇りを持って活躍できる働き方を実現するために、ダイバーシティ&インクルージョンへの積極的な取組み等を通じ、多様な従業員が誇りとやりがいを持って活躍できる企業を実現していくべく、具体的な取組みの強化に努めています。加えて、人口減少による人手不足に対応するべく、省力化対策の設備投資を進めています。当社グループは、有能な人材の確保と育成、また省力化対策の設備投資の確実な実行に努めていますが、計画通り達成できない場合、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<事業運営に関するリスク>
(1)設備事故、労働災害等
当社グループの中核事業である製鉄事業の生産プロセスは、高炉、コークス炉、転炉、連続鋳造機、圧延機、発電設備等の特定の重要設備に依存しています。当社グループは、安定生産の確保を図るため、製鉄所等の強化・再建を基本経営課題に据えて、設備と人材の両面で製造実力の強化策を推進していますが、これらの設備において、電気的又は機械的事故、火災や爆発、労働災害等が生じた場合、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(2)品質問題等
当社グループは、鉄鋼製品をはじめ、様々な製品・サービスを顧客に提供しています。当社は、「品質は生産に優先する」という基本的なものづくりの価値観のもと、一般社団法人日本鉄鋼連盟が定めた「品質保証体制強化に向けたガイドライン」等に沿った様々な取組みを実施していますが、製品やサービスに欠陥が見つかり品質問題が生じた場合は、顧客等から代品の納入や補償を求められるほか、製造・品質管理オペレーションの中止や見直しを行う必要が生じたり、当社グループ又は当社グループの製品やサービスに関する信頼が損なわれて売上が減少すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社グループは、これらの事故等に関連し、一定の保険を付しています。
(3)知的財産権の侵害等
当社グループは、技術開発等の成果である知的財産を、特許権等の知的財産権として権利化し又は営業秘密として秘匿することにより、事業活動における競争優位性を確保しています。これらの知的財産について第三者による権利侵害や無断使用等がなされた場合又は第三者から権利の有効性が争われた場合、当社グループは速やかに法的措置等を検討・実施するものの、必要な法的保護が受けられない可能性、また、損害の回復が十分になされない可能性があります。この場合、当社グループの競争優位性の喪失を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
当社グループは、各国・地域の知的財産法を遵守し、また第三者の知的財産を尊重し、事業活動を展開しています。しかしながら、第三者から知的財産の侵害訴訟等を提起され、当社グループに不利な判断がなされた場合は、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(4)情報システムの障害、情報漏洩等
当社グループの事業活動は、情報システムの利用に大きく依存しており、また、自社及び顧客・取引先の営業機密や個人情報等の機密情報が情報システムに保管されています。当社においては、技術情報をはじめとする機密情報の漏洩対策を最重要の経営課題として認識し、システムのセキュリティ強化に加えて、業務ルール、社員教育等の対策を推進していますが、当社グループの情報システムにおいて、悪意ある第三者からのウイルス感染等のサイバー攻撃等により、システム停止、機密情報の外部漏洩や棄損・改ざん等の事故が起きた場合、生産や業務の停止、知的財産における競争優位性の喪失、訴訟、社会的信用の低下等を招き、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
<その他のリスク>
(1)自然災害、戦争・テロ・感染症等
当社グループは、製造、販売、研究開発等の活動をグローバルに展開しており、世界中に拠点を有しています。製鉄所をはじめとするこれらの各拠点においては、台風、地震、津波、洪水等の自然災害、戦争やテロ行為が生じた場合に備え、ハード面(設備対策)、ソフト面(事業継続計画の策定等)において、一定の対策を施していますが、大規模な自然災害等に見舞われた場合は、各拠点の設備、情報システム等が損害を被り、一部の操業が中断し、生産・出荷が遅延すること等により費用や補償の支払いが発生したり、原料・製品・燃料の輸送手段等のインフラが停止すること等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、当社グループの拠点の有無にかかわらず、大規模な自然災害や戦争・テロ行為が生じた場合や強力な新型インフルエンザ等の感染症が世界的に流行した場合には、当社グループの事業活動に制約が生じる可能性があります。また、これに伴い、需要家の活動水準の低下やサプライチェーンの混乱等の影響による景気の急速な悪化等を通じて、当社グループの生産活動及び販売活動等に支障をきたす可能性があります。
(2)事業活動にかかる環境規制
当社は、製鉄所毎に異なる環境リスクへのきめ細かな対応や各地域の環境保全活動を通じた環境リスクマネジメントを推進し、グループ全体での環境負荷低減に取り組んでいます。当社グループは、事業活動を行う日本及び海外各国において、大気・水・土壌の汚染、化学物質の利用、廃棄物の処理・リサイクル等に関する広範な環境関連規制の適用を受けており、今後、これらについて、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
また、当社グループは、「持続可能な開発目標(SDGs)」の一つのゴールに掲げられた気候変動対策にも貢献すべく、世界最高レベルの資源・エネルギー効率で鋼材を生産し、中長期的なCO2排出量削減の観点から革新的な技術開発と長年培った技術の海外への移転・普及にも積極的に取り組んでいますが、今後、CO2の排出や化石燃料の利用に対する新たな規制等が導入された場合には、製鉄事業を中心に当社グループの事業活動が制約を受けたり、費用が増加したりする可能性があります。
(3)非金融資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、製鉄所設備等の有形固定資産や無形資産等の多額の非金融資産を所有していますが、経営環境の変化等に伴い、その収益性が低下し投資額の回収が見込めなくなった場合には、将来的な回収可能性を踏まえて非金融資産の帳簿価額を減額し減損損失を計上するため、当社グループの業績や財政状態に悪影響が生じる可能性があります。当期末における有形固定資産の残高は3兆3,804億円、無形資産の残高は1,778億円となっています。
また、当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づき繰延税金資産を計上していますが、経営環境の変化等に伴い将来課税所得の見積りの変更が必要になった場合や税率等の税制変更があった場合、繰延税金資産の取崩しにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,169億円となっています。
(4)有価証券等の保有資産(制度資産を含む。)価値の変動
当期末において、当社グループは株式等の資本性金融商品、関連会社・共同支配企業に対する投資を合計2兆1,318億円保有しています。このうち、取引先や提携先の政策保有株式については、すべての株式を対象に、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を確認しており、時価が一定額を超える政策保有株式については、取締役会において毎年検証しています。しかしながら、投資先の業績不振、証券市場における市況の悪化等により、評価損が発生する可能性があります。また、上記のほかに、当期末において、制度資産(退職給付信託財産を含む。)が当社グループ合計で6,049億円あり、この資産を構成する国内外の株式、債券等の価格変動や金利情勢の変動が財政状態等に影響を与える可能性があります。
(5)金融市場の変動や資金調達環境の変化
当期末における当社グループの連結有利子負債残高は、2兆7,116億円であり、金利情勢、その他の金融市場の変動が業績等に影響を与える可能性があります。また、当社グループは、事業資金を金融機関からの借入及び社債の発行等により調達しています。当社グループは、「中長期経営計画」に掲げた親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(劣後ローン・劣後債資本性調整後D/Eレシオ)0.7以下を目標とし、健全な財務体質の維持に努めていますが、金融市場が不安定となり又は悪化した場合、金融機関が貸出を圧縮したり格付機関が当社の信用格付の引き下げをしたりした場合等においては、必要な資金を必要な時期に適切な条件で調達できず、資金調達コストが増加することにより、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。その結果として、「中長期経営計画」に掲げた上記目標を達成できない可能性もあります。
(6)海外の主要市場における関税引上げ、輸入規制
これまで当社グループにおける一部の鋼材の輸出取引において、米国や東南アジア諸国等から反ダンピング税等の特殊関税を賦課されています。当社グループは、輸入規制を受ける可能性を認識のうえ輸出取引を行うなど、適切に対応するよう努めていますが、将来、海外の主要市場国において関税引上げ、特殊関税の賦課、数量制限等の輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受けることにより、当社グループの業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(7)会計制度や税制の大幅な変更
当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され又は当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。なお、当社は、グローバル展開の一層の推進による企業価値の向上と資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上を目的に、連結財務諸表において国際会計基準(IFRS)を任意適用しています。
(8)人権に関する国際規範等への対応
当社グループは、人権に関する国際規範等を踏まえ、人権の尊重へのコミットメント、人権デューディリジェンスや是正・救済措置等の取組みを定め、人権尊重に対する当社グループの企業姿勢を内外に示すため、「日本製鉄グループ人権方針」を制定しています。本方針は、当社グループの役員・従業員のみならず、サプライヤーを含むすべてのステークホルダーにも本方針を理解し、支持していただくことを求めています。当社グループは、人権の尊重に最大限配慮しつつ、高い倫理観を持って事業活動に取り組む方針としていますが、当社グループ及びそのステークホルダーに人権の尊重に関する問題が発生した場合には、調達や生産・販売への影響に加えて、社会的信用の低下等により、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(9)各種法的規制、訴訟等
当社グループの事業活動はグローバルに展開しており、日本及び海外各国・地域の法令や規制に従って事業活動を行っています。法規制には、商取引法、競争法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、個人情報保護関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な許認可及び経済安全保障に関連する規制等があります。今後、より厳格な規制が導入されたり、法令の運用・解釈が厳しくなったりすることにより、当社グループの事業活動の継続が困難となったり、法令遵守のための費用が増加する可能性があります。
当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施していますが、当社グループが何らかの法規制に違反したと認定された場合には、課徴金等の行政処分、罰金等の刑事処分を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
また、当社グループの広範な事業活動から、様々な第三者から訴訟を提起される可能性があり、重要な訴訟において当社グループに不利な判断がなされた場合には、事業活動の停止・制約、補償等により、業績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当期における当社グループの経営成績の状況の概要は、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載しています。
② 当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー
当連結会計年度末における資産、負債、資本については、下記のとおりです。
連結総資産は10兆7,146億円と、前連結会計年度に比べて1兆1,475億円増加しました。負債は5兆3,587億円と、前連結会計年度に比べて4,380億円増加しました。資本は5兆3,558億円と、前連結会計年度に比べて7,094億円増加しました。なお、当期末の親会社の所有者に帰属する持分は4兆7,777億円となり、有利子負債は当期末2兆7,116億円となりました。この結果、親会社の所有者に帰属する持分に対する有利子負債の比率(D/Eレシオ)は0.57倍(劣後ローン・劣後債資本性調整後0.45倍)となりました。
(総資産)
営業債権及びその他の債権は、前期末(1兆623億円)から5,255億円増加し、当期末1兆5,879億円となりました。これは、日鉄物産㈱の子会社化等によるものです。
棚卸資産は、前期末(2兆859億円)から1,906億円増加し、当期末2兆2,766億円となりました。これは、日鉄物産㈱の子会社化等によるものです。
有形固定資産は、前期末(3兆1,836億円)から1,967億円増加し、当期末3兆3,804億円となりました。これは、名古屋製鉄所への次世代熱延ライン、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)及び九州製鉄所八幡地区への電磁鋼板設備等、戦略商品の能力・品質向上対策への投資を含め競争力優位な設備への選択投資を実行したこと等によるものです。
持分法で会計処理されている投資は、前期末(1兆2,105億円)から3,273億円増加し、当期末1兆5,379億円となりました。これは、カナダの原料炭事業会社Elk Valley Mining Limited Partnershipへの出資や、持分法による投資利益(1,443億円)等によるものです。
(負債)
営業債務及びその他の債務は、前期末(1兆5,921億円)から2,985億円増加し、当期末1兆8,907億円となりました。これは、日鉄物産㈱の子会社化等によるものです。
繰延税金負債は、前期末(376億円)から1,028億円増加し、当期末1,405億円となりました。これは、カナダの原料炭事業会社Elk Valley Mining Limited Partnershipへの出資に伴う計上や、保有株式の時価の上昇によるその他の包括利益を通じて公正価値で測定される金融資産の公正価値の増加等によるものです。
(資本)
利益剰余金は、前期末(3兆791億円)から4,464億円増加し、当期末3兆5,255億円となりました。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益(5,493億円)等による増加があった一方で、配当金の支払いによる減少(1,521億円)があったことによるものです。
その他の資本の構成要素は、前期末(3,411億円)から1,504億円増加し、当期末4,915億円となりました。これは、為替相場の変動による、在外営業活動体の換算差額の増加(1,059億円)等によるものです。
非支配持分は、前期末(4,652億円)から1,128億円増加し、当期末5,781億円となりました。これは、日鉄物産㈱の子会社化等によるものです。
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローについては、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは1兆101億円の収入となりました(前期は6,612億円の収入)。
投資活動によるキャッシュ・フローは7,106億円の支出となりました(前期は3,665億円の支出)。
この結果、フリーキャッシュ・フローは2,995億円の収入となりました(前期は2,946億円の収入)。
財務活動によるキャッシュ・フローは5,439億円の支出となりました(前期は1,976億円の支出)。
以上により、当期末における現金及び現金同等物は4,488億円(前期は6,704億円)となっています。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
税引前利益7,639億円に、減価償却費及び償却費(3,630億円)、事業再編損(909 億円)の加算等の収入があった一方、持分法による投資損益(1,443 億円)の控除の調整に加え、法人所得税の支払(1,265 億円)等による支出がありました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
名古屋製鉄所への次世代熱延ライン、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)及び九州製鉄所八幡地区への電磁鋼板設備等、戦略商品の能力・品質向上対策への投資を含め競争力優位な設備への選択投資を実行したこと等による有形固定資産及び無形資産の取得による支出(4,663億円)、カナダの原料炭事業会社Elk Valley Mining Limited Partnershipへの出資を中心とした関係会社株式の取得による支出(1,842 億円)、日鉄物産㈱の子会社化を中心とした連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出(1,081 億円)等がありました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
有利子負債の返済(5,124 億円)に加え、前期末及び当第2四半期末の配当(1,521億円)等による支出がありました。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は製造原価による。
2 上記の金額には、グループ向生産分を含む。
当連結会計年度における受注状況をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注)1 上記の金額には、グループ内受注分を含まない。
2 「製鉄」、「ケミカル&マテリアル」は、多種多様な製品毎に継続的かつ反復的に注文を受けて生産・出荷する形態を主としており、その受注動向は、生産実績や販売実績に概ね連動していく傾向にあり、また、需要動向等についても、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」において記載していることから、金額又は数量についての記載を省略している。
当連結会計年度における外部顧客に対する販売実績をセグメント毎に示すと、次のとおりです。
(注) 1 前連結会計年度及び当連結会計年度における輸出販売高及び輸出割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
2 主な輸出先及び輸出販売高に対する割合は、次のとおりである。
(注) 輸出販売高には、在外子会社の現地販売高を含む。
3 前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりである。
(注) 当連結会計年度において、外部顧客からの売上収益のうち、連結損益計算書の売上収益の10%以上を占める顧客は存在しない。
なお、前連結会計年度において主要な顧客であった日鉄物産㈱は、当連結会計年度より当社
の連結子会社となったことにより、当該注記の記載対象から外れている。
当連結会計年度において、生産及び販売の実績金額が著しく増加しています。なお、生産、受注及び販売等に関する特記事項については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」等に記載しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績の分析)
当期の世界経済は、ウクライナ情勢によるインフレの進行や欧米の金融引締め等の影響により、減速感を強めました。日本経済については、緩やかに持ち直したものの、内需は力強さを欠きました。
鉄鋼需要については、中国の景気低迷や欧米の景況感悪化もあったなか、下期以降は未曾有の厳しい状況に陥り、年度末に向けさらに状況が悪化しました。加えて、インドによる石炭のスポット購入継続や、中国の景気低迷下での高水準の生産継続と国外への輸出の大幅増等を受け、原料価格が高止まりする一方で、ASEAN等では製品価格が低迷しており、海外一般市況分野のスプレッド(原料と鋼材の市況価格差)は最低水準が継続し、原料と製品とのデカップリングの構造が鮮明化してきました。
当期の連結業績については、極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、通期の売上収益は8兆8,680億円(前期は7兆9,755億円)、事業利益は8,696億円(前期は9,164億円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,493億円(前期は6,940億円)となりました。
セグメント別の業績は以下のとおりです。当社グループは、製鉄事業を中核として、エンジニアリング、ケミカル&マテリアル、システムソリューションの4つのセグメントで事業を推進しており、製鉄セグメントが連結売上収益の約9割を占めています。
(当期のセグメント別の業績の概況)
<製鉄>
製鉄セグメントの売上収益は8兆763億円(前期は7兆2,455億円)、セグメント利益は8,210億円(前期は8,614億円)となりました。
製鉄セグメント利益の前期に対する増減△403億円の主な要因は次のとおりです。
極めて厳しい事業環境が継続するなかにおいても、当社は従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組むことで、在庫評価差により2,950億円の減益となったものの、マージン改善による850億円の増益、コスト改善効果による600億円の増益等により、前期比400億円減益のセグメント利益となりました。
<エンジニアリング>
日鉄エンジニアリング㈱においては、過去最高水準の受注残工事を実行しつつ、各分野で成長のための具体的な取組みを着実に進めました。組織・運営面では、変化に強く生産性の高い強靭な経営基盤構築のための施策を実施するとともに、事業遂行面では、収益力強化に向けた取組みを進展させ、物価高騰やリスク評価を踏まえた適正価格での受注を徹底しました。当期は、環境・エネルギーセクターや都市インフラセクターの大型案件が進捗したこと等により売上収益は増加しましたが、保有海洋作業船のクレーン故障の影響や、資材や燃料の高騰により事業利益は減少しました。エンジニアリングセグメントの売上収益は4,092億円(前期は3,522億円)、セグメント利益は△13億円(前期は116億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
製鉄プラントセクターは、大型案件の完工が少なく392億円と前期(538億円)に対して減少しました。環境・エネルギーセクターは、廃棄物発電、洋上風力発電等の事業で大型案件の工事が進捗し、2,682億円と前期(2,374億円)に対して増加しました。都市インフラセクターは、建築工事、港湾分野に加え、免制震デバイスをはじめとする部材事業も堅調であったことにより、1,128億円と前期(690億円)に対して増加しました。
<ケミカル&マテリアル>
日鉄ケミカル&マテリアル㈱においては、世界的な原燃料価格の高騰や半導体等の在庫調整により需要低迷が続く厳しい事業環境下、コスト削減や販売価格の改善に最大限努めましたが、事業利益は前期比で減益となりました。ケミカル&マテリアルセグメントの売上収益は2,608億円(前期は2,745億円)、セグメント利益は153億円(前期は161億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
コールケミカル事業では、タイヤ向けカーボンブラックの販売は堅調に推移しましたが、主力の黒鉛電極用ニードルコークスの需要低迷が継続し、580億円(前期は620億円)となりました。化学品事業では、ベンゼン市況は概ね安定的に推移しましたが、スチレンモノマーは国内誘導品需要の回復遅れによる販売減に加え、中国での生産設備の新増設継続により市況低迷を余儀なくされ、1,100億円(前期は1,250億円)となりました。機能材料・複合材料事業では、中国経済悪化の影響もあり、半導体に加えてスマートフォンやPC等の最終製品の需要も依然低調であり生産回復の動きは弱いまま推移しました。炭素繊維複合材料は、インフラ更新需要に対応する主力の土木・建築向け補強材料の販売数量が増加し、また、スポーツ・宇宙分野向けを中心に炭素繊維の販売も好調が継続し、機能材料と複合材料をあわせて930億円(前期880億円)となりました。
<システムソリューション>
日鉄ソリューションズ㈱においては、企業のDXへの取組みの加速を受け、お客様との関係性を深化させながら、全社を挙げてDXニーズを最大限に捕捉し、事業拡大に取り組んでいます。当期の取組みの一例として、当社と共同で数理最適化技術を応用した業務改革を実現する生産計画システムを開発し、本格運用を開始したほか、電力会社の発電所構内へ、映像や音声を活用した現場の遠隔監視による保守・点検業務等の効率化及び技術継承の円滑化を可能とするローカル5Gシステムを導入しました。これらに加え、金融機関向けに統合経営管理プラットフォームサービス「ConSeek®(コンシーク)」の提供や、保険会社の基幹システムにおけるモダナイゼーション(老朽化したシステムの最新化)プロジェクトを開始しています。また、成長に向けた投資として、AIスタートアップ企業や、デジタル製造業領域における日鉄テックスエンジ㈱との業務提携を行ったほか、テックスエンジソリューションズ㈱(現 日鉄ソリューションズビズテック㈱)をグループ会社化するための契約を締結するなど、お客様のDXニーズへの対応力強化を図りました。システムソリューションセグメントの売上収益は3,115億円(前期は2,925億円)、セグメント利益は355億円(前期は321億円)となりました。
事業別の売上収益(連結調整前)は以下のとおりです。
(当期の事業別の売上収益の概況)
ビジネスソリューションは、当社向け及びメガバンク向けの増により、2,315億円と前期(2,174億円)に対して増加しました。コンサルティング&デジタルサービスは、デジタルワークプレースソリューションやクラウド及びオラクルビジネスが好調だったことから、791億円と前期(741億円)に対して増加しました。
(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)
2021年3月に策定した「日本製鉄グループ中長期経営計画」に掲げた収益・財務体質目標、株主還元とそれに対する当期の状況は以下のとおりです。
2022年度の連結業績につきましては、従来からの抜本的な収益構造対策等の継続により収益の最大化に取り組み、通期の売上収益は8兆8,680億円(うち上期4兆4,124億円、下期4兆4,556億円)、事業利益は8,696億円(うち上期4,942億円、下期3,754億円)、ROSは9.8%(うち上期11.2%、下期8.4%)となりました。
(*) 劣後ローン・劣後債資本性調整後
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析については、本報告書「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②当期末の資産、負債、資本及び当期のキャッシュ・フロー」 に記載しています。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(資本政策)
一定水準の財務健全性が維持されることを前提として、当社グループは投下資本の運用効率を重視し、投資先への資本の投入(資本的支出、R&D、M&A含む)によって企業価値を最大化する資本政策を推進しています。それは、資本コストを超過する収益の創出が期待され、持続的な成長を可能にすると同時に、株主への利益還元によって株主の要求を満たすものです。
当社グループは、上記資本政策の達成に必要な資金を、主として「稼ぐ力」の維持と向上によって生み出される営業キャッシュ・フローから獲得することに加え、必要に応じて銀行借入や社債の発行等、外部からの資金調達も実施しています。
また当社グループは、ROS、ROE及びD/Eレシオを中長期的な収益の成長と財務体質の健全性を達成するうえでの主要な経営管理指標としています。
剰余金の配当等につきましては、本報告書「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載しています。
また、自己株式の取得については、機動性を確保する観点から、定款第33条の規定に基づき取締役会の決議によることとします。取締役会においては、機動的な資本政策等の遂行の必要性、財務体質への影響等を考慮したうえで、総合的に判断することとしています。
(資金需要の動向に関する経営者の認識と資金調達の方法)
1)中長期経営計画の実行状況
2021年3月に公表した「日本製鉄グループ中長期経営計画」では、成長の実現に向けた経営資源投入として、5年間で2兆4,000億円規模の設備投資と6,000億円規模の事業投資に加え、カーボンニュートラル生産の実現に向けた研究開発や設備投資の実行、デジタルトランスフォーメーション戦略への資金投入を計画しています。この中長期経営計画に掲げた投資を実行する前提で、2025年度断面では、D/Eレシオ(※)0.7倍以下を実現することを目標としています。
(※)劣後ローン・劣後債資本性調整後
上記方針のもと、設備投資については、強靭な国内生産体制を再構築するための投資や戦略商品の対応力強化に資する投資等を積極的に進めてきました。具体的には、自動車業界において一層高まっていくと想定される車体の軽量化・高強度化ニーズに応えるべく、超ハイテン鋼板等の高級薄板の生産体制を抜本的に強化するため、戦略的な投資として約2,700億円を投入し、自動車鋼板製造の中核拠点である名古屋製鉄所に次世代熱延ラインを新設することを2022年5月に決定しました。また、電磁鋼板についても、カーボンニュートラルに向けた社会的ニーズを踏まえ、既決定投資に加え、新たに約900億円を投入し、瀬戸内製鉄所阪神地区(堺)・九州製鉄所八幡地区においてハイグレード無方向性電磁鋼板の能力対策を実施することを2023年5月に決定しました。
また、事業投資については、将来的なグローバル粗鋼1億トン体制及び外部環境に左右されない厚みを持った事業構造への進化に向けた施策を推進しています。2023年度においては、2023年4月に鉄鋼製造サプライチェーンの下流にあたる流通分野へ事業領域を拡大するため、持分法適用関連会社であった日鉄物産㈱に対する公開買付けを実施し、子会社化が完了しました。2023年11月に、製鉄プロセスの脱炭素化に必要な高品質製鉄用原料炭の将来にわたる安定調達と、優良な原料権益への投資を通じた外部環境に左右されにくい連結収益構造への転換を推進するため、高品質製鉄用原料炭サプライヤーであるカナダ Teck Resources Limitedが分離・新規設立する製鉄用原料炭事業Elk Valley Mining Limited Partnershipの持分20%を約2,000億円で取得することを決定し、2024年1月に取得完了しました。2023年12月には、最大の高級鋼需要国であり、当社の培ってきた技術力・商品力を活かせる地域である米国において、高炉・電炉一貫の鉄鋼メーカーであるUnited States Steel Corporationを総額約141億米ドルで買収すること及び同社との間で本買収に関する合併契約を締結することを決定しました。
環境面では、カーボンニュートラルの実現に向けて、2021年4月に専任プロジェクトを設置し、3つの超革新技術(高炉水素還元、100%水素直接還元プロセス、大型電炉での高級鋼製造)を他国に先駆けて開発・実機化するための取組みを推進しています。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から公募された「グリーンイノベーション基金事業/製鉄プロセスにおける水素活用プロジェクト」に、当社を含む4社による共同提案を行い、2021年12月に採択されました。2024年3月までには、脱炭素化における鉄鋼業の役割の重要性の認識のもと、同基金の鉄鋼業への配分が大幅に拡大され、支援規模の総額は4,499億円となりました。
2)資金調達
中長期経営計画に関して多額の資金所要が見込まれるなか、調達コストを抑制しながら成長投資資金を確保し財務基盤を強化することを目的として、2021年10月に転換社債型新株予約権付社債3,000億円を発行しました。2023年3月には、脱炭素社会に向けた取組みを推進していくための所要資金を調達する手段として、グリーンボンド(無担保社債)500億円を発行しました。2024年5月には、United States Steel Corporation買収資金の調達等、中長期経営計画に基づく成長投資と財務健全性の両立に資する資金調達手段として、劣後特約付シンジケートローン及び公募ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)による総額2,500億円の調達を行うことを決定しました。
また、フリーキャッシュ・フローの状況に応じて、調達環境、金利条件等を勘案して、最適なタイミングで資金調達面での対応を図ります。
2024年3月末における劣後ローン・劣後債資本性調整後のD/Eレシオは0.45倍となり、中長期経営計画の目標である0.7倍以下を維持しています。中長期的に機動的かつ確実な成長戦略の遂行を継続するため、財務規律を重視した キャッシュ・マネジメントを引き続き実行していきます。
(流動性管理及び資金調達の方針について)
当社グループの円滑な事業活動に必要な資金を確保するため、手許資金及び外部借入を有効に活用しています。手許資金については、実需に見合った最低限の現預金を保有する方針としており、過去及び将来の資金繰りを勘案し、最適な保有残高を志向しています。外部借入については、安全性・安定性・柔軟性を担保する観点から基本的な調達の枠組みを決定しています。具体的には、不測の事態発生時における、当社の支払余力を確保すべく、適正な長期固定適合比率を維持するとともに、安全性の補完のためにコミットメントライン(当社連結:6,037億円)契約を締結しています。
また、短期資金と長期資金のバランスを踏まえた有利子負債残高の設計により自由度を確保しており、当該枠組みの範囲内で、最適な資金調達の実現を志向しています。
③会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されています。重要な会計方針については、本報告書「第一部企業情報 第5 経理の状況」に記載しています。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを行う必要があり、引当金の計上、非金融資産の減損、繰延税金資産の回収可能性の判断等につきましては、過去の実績や他の合理的な方法により見積りを行っています。ただし、見積り特有の不確実性が存在するため、実際の結果はこれら見積りと異なる場合があります。
当社が特に重要と判断している会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は以下です。
a.非金融資産の減損
当社グループは、資産が減損している可能性を示す兆候のいずれかが存在する場合、資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額を回収可能価額として見積り、回収可能価額が資産又は資金生成単位の帳簿価額を下回る場合、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として認識しており、使用価値は見積将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより算出しています。当該キャッシュ・フローは中長期経営計画及び最新の事業計画を基礎としており、これらの計画には鋼材需給の予測及び製造コスト改善等を主要な仮定として織り込んでいます。鋼材需給及び製造コスト改善の予測には高い不確実性を伴い、これらの経営者による判断が将来キャッシュ・フローに重要な影響を及ぼすと予想されます。なお、当期末における有形固定資産の残高は3兆3,804億円、無形資産の残高は1,778億円となっています。
b.繰延税金資産の回収可能性
当社グループは、鋼材需給の予測及び製造コスト削減等の仮定に基づいて算定された将来における課税所得の見積り等の予想等、現状入手可能な全ての将来情報を用いて、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。当社グループは、税務上の便益が実現する可能性が高いと判断した範囲内でのみ繰延税金資産を認識していますが、経営環境悪化に伴う中長期経営計画及び事業計画の目標未達等による将来における課税所得の見積りの変更や、法定税率の変更を含む税制改正等により回収可能額が変動する可能性があります。なお、当期末における繰延税金資産(繰延税金負債との相殺前)の残高は3,169億円です。
(注) 上記「契約会社名」及び「相手方当事者」の欄には、開示上重要でない者については記載していない。
*1 2023年7月3日、Usinas Siderúrgicas de Minas Gerais S.A. – USIMINASの運営体制等に関し、契約内容を一部改訂した。
*2 United States Steel Corporationの合併について
当社は、2023年12月18日に、当社の米国子会社であるNIPPON STEEL NORTH AMERICA, INC.(以下「NSNA」)を通じ、米国の高炉・電炉一貫の鉄鋼メーカーであるUnited States Steel Corporation(以下「U. S. Steel」)を買収すること(以下「本買収」)、及びU. S. Steelとの間で本買収に関する合併契約を締結することを決定し、合併契約を締結した。
本買収は、NSNAが本買収のために設立した子会社である2023 Merger Subsidiary, Inc.とU. S. Steelとを合併する方法(逆三角合併)により実行する。具体的には、当該合併により、U. S. Steelの発行済株式が合併対価(1株当たり55米ドル)を受領することができる権利に転換されて消滅し、それと同時に、NSNAが保有していた2023 Merger Subsidiary, Inc.の発行済株式がU. S. Steelの株式に転換されることにより、U. S. Steelは当社の完全子会社となる。なお、本買収の実行は、関係当局の承認等が得られること、その他合併契約に定める前提条件が満たされることを条件としている。
本買収の概要は、以下のとおりである。
1.本買収の目的
当社は、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」として、「需要の伸びが確実に期待できる地域」「当社の技術力・商品力を活かせる分野」において、上工程から一貫して付加価値を創造できる鉄源一貫生産体制を拡大し、日本製鉄グループとして「グローバル粗鋼1億トン体制」を目指している。一貫生産体制の拡大に当たっては、買収・資本参加(ブラウンフィールド)等による一貫製鉄所の取得、既存拠点の能力拡張を基本戦略としており、2019年12月にインドのEssar Steel India Limited(現AM/NS India)、2022年3月にタイのG Steel及びGJ Steelを買収した。
米国鋼材市場は、輸出に依存しない国内需要中心の供給構造となっており、また、安価なエネルギー、世界経済の構造変化を背景に、エネルギー、製造業等の鋼材需要分野における米国内回帰の動きが顕著となってきている。米国鋼材市場は国内需要が今後も安定的に伸長すると見込まれていることに加えて、先進国最大の市場であり、高水準の高級鋼需要が期待できることから、当社の培ってきた技術力・商品力を活かせる地域である。
本買収は、当社の海外事業戦略に合致するだけでなく、規模及び成長率が世界的に見ても大きいインド、ASEANに加えて、先進国である米国に鉄源一貫製鉄所を持つことによるグローバル事業拠点の多様化の観点からも、大きな意義のある投資と判断した。今後、この3つのグローバル重点拠点の拡張・充実により、企業価値のさらなる向上を目指していく。
U. S. Steelは、粗鋼生産量米国有数の高炉・電炉一貫鉄鋼メーカーで、自動車・家電・建材用途等の薄板、エネルギー分野用途の鋼管等を、米国と欧州(スロバキア)で製造・販売している。粗鋼生産能力は約20百万トンで、競争力ある高炉一貫製鉄所に加え、高級鋼の生産が可能な先端的な電炉ミニミル、北米生産拠点で使用する鉄鉱石を自給できる鉄鉱石鉱山等の有用な資産を保有している。また、電炉ミニミルの能力増強、電炉の原料となる直接還元鉄用ペレット製造設備の新設等、カーボンニュートラル化にも資する成長投資を行っている。
本買収により、当社グループのグローバル粗鋼生産能力(*1)は約86百万トンまで拡大し、さらなる広がりを持つことになる。当社とU. S. Steelの有する、電磁鋼板や自動車鋼板等の高級鋼製品に関する技術力を活かした製品・サービスを提供することで、顧客と社会に広く貢献し、「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」としてともに前進していく。
また、当社とU. S. Steelは、2050年カーボンニュートラル達成という目標に向けて、これまで技術開発を推進してきており、それぞれ技術的な強みを持っている。当社は、「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉での高級鋼製造」の3つの超革新的技術によるカーボンニュートラルの実現を目指している。U. S. Steelは、先端的な電炉ミニミルの1つであるBig River Steelを運営しており、2024年にはBig River 2の建設が完工予定である。
今後、両社の先端技術を融合することによって、2050年カーボンニュートラルへの取組みをさらに推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。
(*1) World Steel Associationが粗鋼生産実績の対象基準としている出資比率30%以上の会社の粗鋼生産能力を公称フル能力で単純合算(2023年3月末時点)。
2.U. S. Steel の概要
(*2) U. S. Steel が2024年2月2日に米国証券取引委員会 (SEC)に提出したForm 10-K から引用
(*3) 株主提出書類に基づく情報(2023年12月14日時点の発行済普通株式数ベース)
3.取得株式数、取得価額及び取得前後の所有株式の状況
(*4) 2023年12月14日時点の発行済普通株式数ベース
(*5) 取得価額には、新株予約権、Restricted Stock Unit、Convertible Notes 等その他証券取得に関する支払いを行うために要する金額を含んでいる。
当社は、需要家のニーズや環境・エネルギー等に対する社会的ニーズが多様化するなかで、「技術先進性」の拡大を通じた利益成長とカーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した製鉄技術構築に資する研究開発分野に対し、重点的に経営資源を投入しています。鉄鋼研究所、先端技術研究所及びプロセス研究所の3つの中央研究組織と各製鉄所に配置した技術研究部が強固な連携体制を構築し、「リサーチ・アンド・エンジニアリング」の理念のもと、基礎基盤研究から、応用開発、エンジニアリングまでの一貫した研究開発を推進しています。
当社の強みは、①研究開発とエンジニアリングの融合による総合力及び開発スピード、②需要家立地の研究開発体制と需要家ニーズに対する的確なソリューション提案力、③高度な基盤技術に基づく新技術の開発力、④製鉄プロセス技術を基盤とした環境・エネルギー課題への対応力、⑤産学連携、海外アライアンス及び需要家との共同研究です。当社はこれらの強みを活かし、鉄を中心とした新しい機能を持つ商品開発をはじめ、カーボンニュートラルの実現を含む環境に配慮した革新的生産プロセスの創出と迅速な実用化を図り、持続可能な開発目標(SDGs)に沿った社会の発展に貢献していきます。
当連結会計年度における当社及び連結子会社全体の研究開発費は
(製鉄)
当セグメントに係る研究開発費は
当社は、3地点の研究開発センター(富津市、尼崎市、波崎市)を軸に、①鉄鋼研究所では、鉄鋼材料・商品と利用技術・ソリューション研究開発、②先端技術研究所では、共通基盤技術研究及びCO2の分離回収や再利用に関する研究、新素材事業を中心とした製鉄以外のセグメント事業支援開発、③プロセス研究所では、設備エンジニアリングと設備保全技術開発を担当する設備・保全技術センターと密接な連携を図りながらCO2削減も考慮した製鉄プロセス関連の研究開発に取り組み、開発の短期化・効率化を目指し、鉄源コストの削減・基幹ラインの生産性の抜本的向上・省CO2化等の研究開発の加速化を進めてきました。
<薄板>
・当社は、「超高強度鋼板冷間成形技術の開発」により、2023年度(第58回)日本塑性加工学会賞の最高賞である「学会大賞」を受賞しました。自動車にはCO2排出量削減と衝突安全性向上が求められており、車体の軽量化と高強度化が必要とされ、高強度な鋼板を車体に使用することが有効です。一般的なプレス加工では、鋼板が延ばされて板厚が薄くなり、これが限界を超えると鋼板が破断します。強度が高い鋼板ほどこの限界が低く、加工技術の確立が課題でした。当社は「せん断変形」に着目し、鋼板の変形を制御することで板厚の減少を抑えて成形する技術開発に取り組みました。これにより、自動車部品で特に成形が難しい部品や端部がL字形状やT字形状の部品に対して、「せん断成形工法」と「自由曲げ工法」というプレス工法を確立し、超高強度鋼板を用いても、割れやしわの発生なく製品形状に成形することが可能になります。また、プレス成形後に発生する余剰部分の削減にも成功し、鋼材使用量を従来比で約15%削減しました。開発工法により、難成形の自動車部品に1470MPa級までの超高強度鋼板の適用が可能となり、年間250万台以上の国産自動車の部品製造における車体の軽量化と高強度化に貢献、CO2排出量も42.6千トン/年削減に貢献しています。今回の日本塑性加工学会賞では、本開発に関連した学術論文「高強度鋼板のプレス成形におけるしわの生成過程(塑性と加工、vol.62-no.730)」に対する論文賞も併せて受賞しています。
・当社は、2023年6月に新製品「ZEXEED縞板」の販売を開始しました。これは、2021年10月に販売を開始した高耐食めっき鋼板「ZEXEED®」の新しい製品ラインナップで、土木・社会インフラ分野で一般的に使用されている後めっきや従来の高耐食めっきを大幅に上回る耐食性を有しています(当社が実施した試験では、平面部の耐食性能が高耐食めっき鋼板の2倍、溶融亜鉛めっき鋼板GIの約10倍向上することを確認しています)。製造可能板厚範囲は2.3㎜~6.0㎜で、後めっきが熱歪影響から対応困難な板厚(2.3mm)についても対応できます。駐車場の床や工場・プラント・社会インフラ設備の床等、耐食性を必要とする用途を想定しています。当社は、この製品を通じて、各種設備の長寿命化、社会インフラの老朽化対策、省工程・省施工等のニーズに応え、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。
・当社とNSハイパーツ㈱、日鉄テックスエンジ㈱が共同開発した「NSスーパーフレーム工法®」を用いた省エネ・高断熱事務所が和歌山県で竣工しました。この新工法で製造された建物は、業界トップ水準の断熱材を使用したハイブリッド断熱手法(外張り断熱と充填断熱)を採用しており、鉄骨造で品確法住宅の断熱等級6相当、外皮の高断熱化及び高効率な省エネルギー設備を備え、かつ再生可能エネルギーにより年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた建築物として、Nearly ZEBの認証を取得しました。「NSスーパーフレーム工法」は当社のCO2削減に寄与する高機能製品・ソリューション技術の総称「NSCarbolex® Solution」ブランドの対象商品であり、外張り断熱・通気工法を標準採用し、省エネ性を実現することで使用時に排出されるCO2を削減します。また、高耐食めっき鋼板「スーパーダイマ®」を用いることで長寿命化に対応し、建設資材の削減によるCO2削減も可能となります。
・当社は、スズキ㈱と㈱ベルソニカと共同で、新型スペーシアの軽量Aピラーの開発に取り組み、1470MPa級冷延ハイテンが初めて採用されました。1470MPa級冷延ハイテンは緻密な成分設計と組織制御により、高強度と加工性を両立しています。新型スペーシアのAピラーは、従来5部品で成形・溶接していた窓枠部分を一体成形することを可能にしました。また、遅れ破壊やスポット溶接性といった技術課題に対しても、3社で対策を講じ、軽量化とそれによるCO2排出量の削減及び大幅なコストダウンを実現しています。
<厚板>
・当社が提供するマスバランス方式を適用したグリーンスチール「NSCarbolex® Neutral」が山中造船㈱(以下、「山中造船」)の内航船向け鋼材に採用されました。山中造船では内航船向け鋼材に安全性向上と環境保護を目的とした高延性厚鋼板「NSafe®-Hull」をすでに採用いただいています。「NSafe®-Hull」は衝突安全性に優れた高延性厚鋼板であり、船舶が衝突した場合でもその衝撃を軽減し、亀裂も起きにくいため被害の拡大を最小限にとどめられます。これにより、山中造船で建造される船は環境に配慮したものとなり、付加価値の向上が期待されます。・
<鋼管>
・当社は、カーボンニュートラルを推進するお客様のニーズに応えるため、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)の「SuMPO環境ラベルプログラム」に基づく「エコリーフ宣言」の認証を鋼管分野で相次いで取得しました。2023年度に認証を新たに取得した鋼管製品は、国内向けの汎用鋼管(配管・構造管)、高合金油井管・ラインパイプ、そして電縫メカニカル鋼管及び継目無メカニカル鋼管です。これにより、鋼管製品のライフサイクルでの環境負荷を客観的に評価することが可能となり、サプライチェーン全体での環境負荷低減に貢献します。「エコリーフ宣言」は、資源採取から製造、物流、使用、廃棄・リサイクルまでの製品のライフサイクル全体を考えた環境情報を定量的に開示するもので、今後、公共調達におけるCO2排出量表示等への対応も容易となります。
<棒線>
・当社が提供する低CO2鋼材「NSCarbolex® Neutral」が、日鉄ボルテン㈱(以下、「日鉄ボルテン」)の高機能製品(トルシア形超高力ボルトSHTB®)の素材に採用されました。日鉄ボルテンの超高力ボルトは、従来のボルトに比べて約1.5倍の強度を持ち、建築時に使用するボルトの本数の低減や添接板の縮小化により鉄骨重量を軽減化が可能です。また、施工工数の削減と合わせて、鉄骨製作から現場施工までのCO2排出量を削減できる商品と評価いただいています。
<建材>
・当社は、鋼矢板製品(NS-PAC®鋼矢板製品を含む)において「エコリーフ宣言」の認証を取得しました。当社の鋼矢板製品を使用することで、鋼矢板製品のライフサイクルでの環境負荷を客観的に評価することが可能となります。また、施工省力化、軽量化、長寿命化といった効果を含めてサプライチェーン全体でのCO2排出量を削減し、カーボンニュートラルへの取組みを一層強化するとともに、今後注目される公共調達物品におけるCO2排出量表示にも対応することが可能です。
<チタン>
・当社は、チタン薄板において「エコリーフ宣言」の認証を取得しました。今回対象となったのは標準のチタン薄板とTranTixxii®-Ecoのチタン薄板の2種類です。特に、TranTixxii®-Ecoは、50%以上のチタンスクラップを使用してCO2排出量を大幅に削減しています。当社のチタン薄板は、「軽い」「強い」「錆びない」等の優れた特性から、航空宇宙や船舶、化学、電力等の業界から、自動車、建築、土木、医療、民生品へと使用範囲が広がっています。また、建築分野では優美で耐久性の高い意匠性チタン「TranTixxii®」を提供しています。今回の認証により、お客様はチタン薄板製品の環境負荷を客観的に評価することが可能となります。
<交通産機品>
・当社と東海旅客鉄道㈱(以下、「JR東海」)が共同で開発した「新幹線用新型ブレーキパッド」が令和5年度文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)を受賞しました。旧型のブレーキパッドが抱えていた、「高速運転時の急ブレーキによるディスクへの不均一な接触によるブレーキ力失墜」問題を解消するために開発されました。新型パッドは、ディスクの熱変形に追従して均一に接触するため、ブレーキ性能が向上し、ブレーキ距離の短縮を実現しました。当社は基本構造設計と有限要素法による解析、そしてJR東海と共同で性能評価と実車両テストを行いました。
<製鉄プロセス>
・当社は、海上輸送中の原料に関する運航情報をリアルタイムで取得可能なシステムを構築し、運用を開始しました。今回の新システムを活用すれば、最新の航海スケジュールや原料在庫見通しに基づく迅速な意思決定が可能となり、生産の安定化や在庫管理の最適化、サプライチェーンの効率化に寄与し、さらには運航・輸送効率の向上によりカーボンニュートラル社会の実現にもつながると考えています。データソースとして、㈱商船三井(以下、「商船三井」)の情報提供プラットフォーム「Lighthouse」とシステム間連携を行い、商船三井のみならず当社向けの輸入原料船の運航を行う海運会社のデータも管理できるシステム構成としています。
・当社は、公益社団法人発明協会が主催する全国発明表彰で「LEDドットパターン投影による圧延中鋼板の高精度形状測定技術」により、発明賞を受賞しました。この技術は、燃費向上や環境対策を求める自動車産業における高強度鋼板の利用拡大に対応するためのもので、高温・高速で移動する熱間圧延中の鋼板形状を高精度に計測することが可能です。技術的には、千鳥状に配列された1200個の高輝度LED素子を用いて光のドットパターンを鋼板表面に投影し、撮像画像を処理して鋼板の瞬間的な形状を測定します。この技術により、24時間体制で、すべての圧延材に対する自動制御が実現し、品質と生産性が大幅に向上しました。また、既存の圧延設備への低投資での導入が可能となり、熟練作業者の減少による影響を軽減するため、日本鉄鋼業の国際競争力を向上させる効果も期待されます。
・当社と日鉄ソリューションズ㈱は、製鋼工程の生産計画を高速立案する出鋼スケジューリングシステムを共同開発し、東日本製鉄所君津地区で運用を開始しました。DX戦略の一環として生産計画業務の一元化・迅速化を目指し、従来、熟練技能者が週次で作成していた計画を数秒から数分で立案することが可能になりました。システムは数理最適化技術を応用し、従来の計画時間を70%削減し、洗練されたアルゴリズムで計画担当者が計画評価・修正・最終計画の確定といった意思決定を行う時間を確保し、業務の質を向上させました。システム基盤としてパブリッククラウドを活用し、高速なCPUを並列処理に使いながら複数の計画案を短時間で作成しています。このシステムは全社の生産計画の一元化を目指し、各製鉄所に順次展開予定です。
・当社は、水素を用いてCO2を削減するSuper COURSE50技術による高炉本体からのCO2排出量の削減率を更新し、2023年8月に報告した22%から33%へと大幅に向上させることに成功しました。これは高炉内の熱バランスを維持するために加熱した水素を用いて鉄鉱石の炭素還元を増やすことにより検証しています。同技術は当社が導入を目指す「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」の一環で、さらにCO2排出量50%以上削減を目指す大型高炉内でのSuper COURSE50技術の確立に向けた試験が継続されています。本開発はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金の一環としてJFEスチール㈱、㈱神戸製鋼所、一般財団法人金属系材料研究開発センターとのコンソーシアムで進めています。
・当社は、「高炉の低炭素化とコスト削減に貢献するコークス強度向上技術」で第70回大河内記念生産賞を受賞しました。高炉での製鉄時に用いられるコークスは、鉄鉱石の還元、熱源、そして通気性や通液性の確保といった重要な役割を果たします。そのため、より効率的な還元を行い、CO2排出量を抑制するためには、強度が高いコークスが必要になります。一方、質の良いコークスを作るためには、高価な粘結炭の配合が必要であり、劣質炭の使用には限界がありました。そこで当社は、コークスの強度を低下させる欠陥の生成機構を解析し、劣質炭を3種類に分類、各種劣質炭の配合と粒度を最適化し、それに応じて粘結補填材を添加することで高強度のコークスを製造する技術を開発しました。この技術は、当社の九州製鉄所八幡地区のコークス炉に導入され、世界最高水準の劣質炭配合率74%を達成しながらも、強度の高いコークスを製造し、高炉の低炭素化とコークス製造コストの削減に大きく貢献しています。この技術は現在開発中の高炉を用いた水素還元技術と組み合わせることも可能で、将来の高炉の低炭素化に貢献する汎用性の高い技術です。
<スラグ・セメント>
・当社の高炉スラグを使用して製造した微粉末製品が、国土交通省の発注による低炭素型コンクリートブロックのモデル工事で相次いで採用されました。高炉スラグ微粉末製品は、鉄を溶かす高炉の副産物であり、セメントと同様に硬化します。国土交通省は、低炭素コンクリートの普及を推進するために、微粉末製品の使用比率を55%以上に高めた低炭素型コンクリートブロックを全国で推進しています。従来のセメント製造では1トンあたり700kgのCO2が発生しますが、高炉スラグ微粉末製品は製鉄副産物を使うため、CO2排出量を大幅に削減できます。今回のモデル工事では、低炭素型コンクリートブロック使用時に約53%、通常の高炉セメントよりも約12%のCO2削減が見込まれます。当社及びグループ各社は、高炉スラグ微粉末製品の確実な供給を通じて、建設業の脱炭素化に継続的に貢献します。
・当社が開発した「ビバリー®ユニット」が、北海道函館市近郊の森町で、藻場造成のための施肥として使用されました。ビバリー®ユニットは、高炉スラグと廃木材を発酵させた腐植土を原料とする鉄分施肥材で、これまで全国44カ所の海岸に提供されてきました。今回の取組みでは、町内の2つの漁業協同組合と協力してホタテ貝殻を混合利用した人工石が藻場造成の基質として使用されました。これにより、ホタテ貝殻の再利用先に新たな可能性が生まれ、循環型社会への一歩となりました。今後も当社は、ビバリー®ユニットを通じた藻場再生によるCO2吸収・固定(ブルーカーボン)の推進に努めます。
・当社が開発した「ビバリー®ユニット」を活用した取組みにおいて、海藻藻場によるCO2吸収量が算定され、2023年度のJブルークレジット®として認証され、認証式が開催されました。具体的には、北海道増毛町、北海道古宇郡泊村及び千葉県君津市沖での藻場造成事業で、合計33.3t-CO2の認証されたクレジット発行が行われました。ビバリー®ユニットの活用により、これまで藻場が再生・回復し、漁獲高向上の効果が報告されています。また、海草や藻類が大量のCO2の吸収を行うことから、ブルーカーボンという新たな地球温暖化防止策が注目されています。当社はさらに、全国21カ所の海域で新たにビバリー®ユニットによる藻場造成の実証試験を開始し、海藻の成長や海水中の鉄分濃度の変化等を研究しています。このような研究を通じて、藻場造成技術の高度化を目指しています。
(エンジニアリング)
当セグメントに係る研究開発費は
日鉄エンジニアリング㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・製鉄プラント分野 当社との共研を中心とした先進的製鉄プロセス関連の開発
・環境・エネルギー分野 廃棄物・バイオマス発電プラント競争力強化、コージェネレーションの高効率化、
カーボンリサイクルに向けた研究開発
・海洋分野 洋上風力発電施設の開発、海底パイプライン敷設の開発
・都市インフラ分野 免制震デバイス商品の開発、次世代商品の探索、土壌浄化技術の開発
・陸上パイプライン分野 陸上パイプライン溶接技術の開発
(ケミカル&マテリアル)
当セグメントに係る研究開発費は
日鉄ケミカル&マテリアル㈱における研究開発への取組みは以下のとおりです。
・コールケミカル製品、化学品、機能材料、複合材料等に関する研究開発
(システムソリューション)
当セグメントに係る研究開発費は
技術進化・ビジネストレンド・社会環境・人々の価値観の変化等の不確実な状況を踏まえ、新技術の探索、評価・検証、顧客企業への新技術導入支援等において長年にわたって蓄積してきた経験とノウハウを基に、社会全体の「サステナビリティ」の実現に向けた将来像を3つの「未来目標」として設定し、取り組みました。
・未来目標1「究極のデジタルツイン(注)」 - すべてをデジタルな世界に転写して再現しよう
・未来目標2「業務を理解・実行できる人工知能」 - 機械の知的能力をとことん人間に近づけよう
・未来目標3「サステナブルな企業情報システム」 - 変化への対応力があり長持ちするシステムにしよう
(注) デジタルツイン:工場の設備・製品等の実世界のオブジェクトをデータとしてデジタルな空間に転写・再現することで、リモートからの監視・制御や、過去の状況の再現・未来の予測シミュレーション等を可能にすること。