(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、品質第一主義に基づき、コーヒーを栽培・加工し、安心・安全にお客様に届けるまでのバリューチェーンを担っております。「コーヒーを究めよう。」、「お客様を見つめよう。」、「そして、心にゆたかさをもたらすコーヒー文化を築いていこう。」との企業理念を共有し、目指すべき「キーコーヒービジョン」として次の3つの項目を掲げております。
・コーヒーに関して、信頼度№1の会社であること。
・コーヒーの可能性を追求し、その価値を提供できる会社であること。
・そして、お客様から最初に選ばれるコーヒー会社であること。
こうした企業理念、ビジョンに基づいた日々の活動により、企業価値の向上に努めてまいります。
また、コーヒーのバリューチェーンを担う企業として、コーヒーの未来と持続可能な社会の実現に貢献するため「地球温暖化への対応」「環境負荷の低減」「責任ある調達と商品の開発・提供」「従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進」「コーポレート・ガバナンスの強化」を重要項目として特定しサステナビリティの実現に取り組んでまいります。
当社グループは、収益力回復を喫緊の課題と認識し、目標とする経営指標を営業利益額としております。後述の(4)対処すべき課題に記載した施策を実施し、収益力の回復・強化を最優先に取り組んでまいります。
当社は、当面の経営戦略として、事業構造改革を成し遂げ、新たな生活様式に適応し、2世紀企業として飛躍するための基盤を確立することを中期目標に掲げております。
具体的には(4)対処すべき課題に記載した施策を実施し、変革へのチャレンジ、収益力強化、グループ総合力強化に取り組んでまいります。
(4) 対処すべき課題
今後におきましては、当社グループを取り巻くわが国の経済情勢は新型コロナウイルス感染症の分類変更等により、景気は緩やかな回復傾向にありますが、物価の上昇や海外景気の下振れリスクなどもあり厳しい環境が続くものと予想されます。
業績に大きな影響を及ぼすコーヒー生豆相場は、コーヒー先物市場の認証在庫量の低位推移などにより上昇しております。また、中東の紛争発生を受けた海上運賃の値上がりや為替相場の円安基調継続により、コーヒー生豆調達価格は高値で推移しており、引き続きコーヒー製造コストの上昇が対処すべき経営課題です。
このような状況が続くと見込まれますが、当社グループは変革へのチャレンジを一段と加速し、2世紀企業として一層飛躍するための強固な基盤を確立すべく、更なる事業の構造改革を推進し、引き続き業務の標準化、在庫の適正化など、コスト低減に取り組みます。
コーヒー関連事業の業務用市場におきましては、引き続き全国拠点網とお取引先へのサービス水準を維持しつつ、更なる業務の合理化、効率化を早急に進めます。また、市場環境の変化を新たなビジネスチャンスに繋げられるような商品・サービスの開発、提案を通じて、お客様の業績に寄与する取り組みをより一段と加速いたします。
家庭用市場におきましては、消費者のライフスタイルの変化に伴うニーズの多様化に応えられるような新商品の投入や、新たなカテゴリーの開発を継続し当社プレゼンスを高めてまいります。また売上高拡大に向けて、シェア拡大を図る地域や成長するEC市場へスピード感を持って経営資源投入を推進してまいります。
新規市場を開拓するため、顧客にダイレクトに商品を提供するD2Cビジネスや海外ビジネスに注力し、業務用、家庭用、原料用に続く新たな事業の柱に育てるべく取り組んでまいります。
危機感を持って経営課題を解決し事業戦略の遂行を支えるべく、基幹系システムや生産管理システムの刷新、DX推進により業務の効率化と高度化を早期に実現します。
当社グループは、お客様に商品やサービスを提供することにとどまらず、企業として社会的責任を最大限果たすことが存在意義であると認識して事業活動を行います。私たちは2030年を見据えたメッセージとして「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を制定しており、これまで100年間当社とともに日本のコーヒー文化を築いてきた“喫茶店”の魅力を、まだ接点の少ない若年層や国内のみならず海外へも発信強化していくことといたしました。
また環境変化への対応力を磨き持続的な企業の成長と発展を実現するため、従業員一人ひとりの持てる能力を最大限引き出し企業価値を向上させる経営に取り組みます。
変容した社会環境の下、コーヒーに関して信頼度№1の会社であること、コーヒーの可能性を追求し、その価値を提供できる会社であること、そして、お客様に最初に選ばれるコーヒー会社であることを実現すべく、全社一丸となって取り組んでまいります。
文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1) ガバナンスとリスク管理
当社グループは、お客様、株主、従業員をはじめとする様々なステークホルダーの期待にお応えするため、役員や従業員が遵守すべきキーコーヒー行動規範やサステナビリティ関連方針を守り、持続的に企業価値を高めていきます。当社の取締役会は、当社業務に精通した業務執行取締役と、社外取締役3名を含む監査等委員である取締役で構成されており、経営上重要な事項の審議・決定及び業務執行の監督をしております。
当社グループのサステナビリティに関する施策をより広範に推進していくために、2023年4月1日、サステナビリティ推進室を新設し、2023年10月1日には、サステナビリティ経営の推進強化を図るために、サステナビリティ委員会を新設しました。本委員会は、代表取締役社長を委員長とし、取締役全員、コーヒーの未来部長、マーケティング本部長、SCM本部長、管理本部長、経営企画部長で構成され、サステナビリティ推進室が事務局を担っています。また、傘下に「人権分科会」、「TCFD分科会」を設置しました。
サステナビリティ関連方針、重要項目の見直し、重要項目に対する課題(リスク・機会)の整理・識別・評価、具体的な取り組み・戦略、中長期目標や実施計画は、サステナビリティ委員会において協議された後、取締役会に上程され、取締役会が審議・決定しております。また、執行部門のサステナビリティに関する取り組み状況は、サステナビリティ委員会が進捗を管理し、年1回取締役会に報告され、取締役会が執行状況の監督を行っております。
サステナビリティ推進体制図(2024年3月末時点)

サステナビリティ関連方針について
当社グループは、サステナビリティ経営を推進するための指針として各種方針を制定しております。方針の内容は、環境変化や社会の要請等により適宜見直しを行ってまいります。
◎ サステナビリティ基本方針
◎ 環境方針
・環境に配慮した商品開発の考え方
◎ 品質・食品安全方針
◎ 人権方針
◎ 人的資本に対する考え方
・人財育成方針・社内環境整備方針
◎ 責任ある購買・調達方針
・サプライヤーガイドライン
◎ コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
・内部統制システムに関する基本方針
重要項目(マテリアリティ)について
重要項目の特定プロセスとして、経営企画部においてバリューチェーンを「商品企画」、「コーヒー生産国」、「原料調達」、「生産管理」、「販売物流」、「コミュニケーション」と捉え、それぞれに対するリスクと機会を踏まえ、重要項目の候補を抽出しました。取締役会では、当社が社会や環境に与える影響度と中長期的な企業価値に与える影響度の2軸の観点より重要項目を特定しました。重要項目は、「地球温暖化への対応」、「環境負荷の低減」、「責任ある調達と商品の開発・提供」、「従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進」、「コーポレート・ガバナンスの強化」に定めました。重要項目は適宜見直しを実施し、サステナビリティ委員会での協議を踏まえ、取締役会にて決議を行ってまいります。
(2) 戦略
① 地球温暖化への対応に関する事項
(イ) 温暖化、気候変動への対応
人為的行為による温室効果ガスの排出により地球温暖化が進行しており、パリ協定を受けて温室効果ガスの削減に向けた対応は世界で認識する共通の課題であり、早急な対応が求められています。
当社では、レギュラーコーヒーを中心とした事業を展開しており、温暖化による気候変動や自然災害により事業リスクの発生可能性が高まることから、当社も地球温暖化への対応を行ってまいります。
(シナリオ分析の前提)
2023年度においても、長期目標として産業革命前から地球の気温が1.5℃/2℃または4℃上昇するシナリオを仮定として、気候変動による影響に関するシナリオ分析を実施しています。
※ 1.5℃/2℃上昇シナリオと4℃上昇シナリオ:IEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等から公表される気候関連シナリオの俗称で、各シナリオが示す温度に気温上昇を抑えるために必要な経済施策、またその温度上昇時に想定される環境被害などを示しています。
(1.5℃/2℃上昇シナリオ)
※ GHG(Greenhouse Gas):温室効果ガス
(4℃上昇シナリオ)
(ロ) 「コーヒーの2050年問題」に関する事項
農作物であるコーヒーは、環境変化の影響を受けやすく、地球温暖化の問題は、温度の上昇だけではなく、湿度の上昇や降雨量の減少など、様々な変化を引き起こし、コーヒー栽培にも影響を及ぼします。WCR(World Coffee Research)の報告書によると、気候変動はさび病等の病害や虫害による生産量の減少やコーヒー豆の品質低下をもたらし、2050年にはアラビカ種のコーヒー栽培に適した土地は現在の50%にまで縮小する可能性が指摘されています(コーヒーの2050年問題)。当社グループでは、「コーヒーの2050年問題」の影響を軽減すべく、コーヒー栽培の開発、持続可能な収穫ができるようコーヒー生産者の支援等の取り組みを推進します。
② 環境負荷の低減に関する事項
当社のレギュラーコーヒーの製造過程における省エネ化や製造工程での廃棄物リサイクル活動は、CO2削減にも貢献でき、商品包材使用量の削減や脱プラスチックへの取り組みは、消費者や取引先からの要望や期待があります。このような環境価値(Environmental Value)を高める商品開発を通じ、地球温暖化への対応と環境負荷の低減に取り組み、生物多様性を維持した、自然ゆたかな美しい地球を次世代に引き継ぐことが重要と考え、以下の取り組みを中心に推進します。
・包装容器に関するプラスチック使用量を削減(リデュース)
・持続可能な原料を使用した包装容器への転換(リプレイス)
・リサイクル可能な包装容器への転換(リサイクル)
・フードロス削減
③ 責任ある調達と商品の開発・提供に関する事項
当社は、原材料をグローバルに調達しており、当社グループ及びサプライチェーン上での人権、労働、環境、腐敗防止等の課題を認識し、課題解決に向けた取り組みが事業活動において不可欠だと認識しています。責任ある調達は、品質、機能、価格の条件だけではなく、人権、労働、環境、腐敗防止等の社会課題に関連する項目をも購買条件に取り入れるとともに、キーコーヒー行動規範や国際規範等を遵守し、2023年3月に「責任ある購買・調達方針」、「サプライヤー・ガイドライン」を制定しました。当社のみならず、サプライチェーン全体で課題解決していく必要があると考え、サプライヤーガイドラインをサプライヤーなどのビジネスパートナーに案内し、本内容に賛同いただけるようアンケートや面談等を通じてコミュニケーションを図り、社会課題に対する改善活動を実施してまいります。この取り組みを通じてサステナブルな調達を行い、ステークホルダーからのニーズを捉えた商品開発・提供に繋げていきたいと考えております。
④ 従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進に関する事項
当社は、持続可能な成長と発展には人的資本の価値を最大化することが重要であるとの認識のもと、人的資本に対する考え方及びそれに則った<人財育成方針><社内環境整備方針>を以下のとおり定めました。
(人的資本の考え方)
私たちは、持続的な企業の成長と発展を実現するために、従業員一人ひとりが持てる能力やスキルを引き出し、企業価値を最大化する経営に取り組みます。
企業・従業員の両者が、コーヒーのリーディングカンパニーとしての理念やビジョン、ミッションを共有し、しっかりとした帰属意識と相互の信頼のもと、共通する目的を果たしていくことで、人々の心にゆたかさが溢れる社会を創り上げることができると考えます。
従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進を図り、社内の環境や仕組みを見直すことで、様々な立場の従業員が主体性を発揮し、イキイキと働きがいを持って成長・発展し続けることのできる組織集団への進化を目指します。
<人財育成方針>
1.キーコーヒービジョンを実現し続けるために、企業と従業員が継続的な対話を通じてそれぞれの存在意義・価値を認め合うことで共に成長します。
2.主体的意欲を刺激するアップスキリングの機会を提供し、情報に敏感なビジネス人財及び専門性の高いコーヒーのプロを育成します。
3.従業員一人ひとりの多様性を受け止め、活躍を促し組織の発展に繋げることのできる、求心力のあるマネジメント人財を育成します。
<社内環境整備方針>
1.予測不能な変化が続く環境において企業の適応力と可能性を広げ続けるために、多様なキャリアイメージの形成及びその実現を長期的に支援します。
2.誰もが働きやすい職場環境とするために、有給休暇の取得率向上等、従業員の生活の基盤を安定的に確保するための施策を実施し、柔軟な働き方を促進します。
2023年4月、人的資本経営の取り組みに資する人財開発課を新設しました。併せて人財開発課のパートナーとして、人的資本経営に関する全社網羅性のある制度の改革と従業員への浸透を目的に、全社横断で人選した“ウェルビーイングプロジェクトチーム”を立ち上げました。この体制で、従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進に取り組み、2023年に実施したエンゲージメント調査をもとに、イキイキと働きがいを持って成長・発展し続けるための施策を策定し推進しております。

⑤ コーポレート・ガバナンスの強化に関する事項
当社は、サステナビリティに関する取り組みを推進していくためには、適切なガバナンス・リスク管理体制の構築が不可欠と考えており、「コーポレート・ガバナンスの強化」を重要項目として掲げております。当社のガバナンス・リスク管理の状況につきましては、(1)ガバナンスとリスク管理及び
(3) 指標及び目標
■ 地球温暖化への対応
■ 環境負荷の低減
■ 責任ある調達と商品の開発・提供
■ 従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進
当社グループでは、(2)戦略④において記載した、人財の多様性の確保を含む人財育成方針及び社内環境整備方針に係る指標について、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する当社以外の会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、提出会社のものを記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループにおいて、リスクが生じた場合の損害規模等の大きさや近年の事業環境等の変化を踏まえて企図する成果が獲得できないリスクの発生頻度を分析しております。リスクが顕在化した場合の業績等への影響度は回復までに要すると見込まれる期間も考慮し「大」「中」「小」で分類し、過去にリスクが発生した頻度も勘案した将来の一定期間における発生可能性を「高」「中」「低」で分類し、それぞれ評価しております。
① 原材料等の価格高騰及び為替相場の変動(影響度:大 発生可能性:高)
当社グループは、レギュラーコーヒーの原料生豆を全量海外からの輸入により調達しており、当社の求める品質の原料を最適な価格で調達できるよう様々な手段を講じております。しかしながら原料生豆は国際相場商品であり、コーヒー生産国の政情、コーヒー産地の気候変動や病害虫被害、作柄等による生産量の減少等の要因による価格の高騰や為替相場の変動、また資源エネルギー価格上昇に伴う資材、物流費等の様々なコストが上昇した場合、売上原価が上昇するとともに価格転嫁の遅れにより売上総利益が減少する可能性があります。
② サプライチェーンリスク(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、コーヒー原料生豆のすべて、またコーヒー製造に関わる各種資材の一部を海外からの輸入により調達しております。そのため、各国の政治・経済・社会情勢、自然災害、紛争等により、グローバルなサプライチェーンリスクにさらされています。当社グループはサプライチェーン全体を俯瞰的に捉え、現在、原材料の基準在庫の見直しやサプライヤーとの連携強化等の対策を講じておりますが、世界的な危機事情によっては、一部原材料、資材等の手配が困難となるなど、商品の販売が困難となり売上高が減少する可能性があります。
③ 消費市場の変化(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、消費者ニーズの多様化、デジタル化等の市場環境の変化に応じた新たな商品やサービスの開発・提案に取り組むとともに、新規市場を開拓するため顧客にダイレクトに商品を提供するD2Cビジネスや海外ビジネスに注力しております。また、消費者の関心が高い商品包材使用量の削減や脱プラスチックへの取り組みにより、環境負荷の低減を推進しております。しかしながら変化への対応の遅れ等により消費者の要望や期待に応えられず、商品の販売価格の低下または販売数量の減少により、売上高が減少する可能性があります。環境負荷の低減に関する詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
④ 競合他社との競争激化(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、人口減少等の影響によりマーケット全体の伸長が難しい環境の中、競合他社と価格やサービスを巡って競争が熾烈化しておりますが、付加価値を付与した商品やサービスの提供を通じ、適正な利益を確保するよう努めております。しかしながら競合他社との差別化、優位性の確保が難しい場合は、シェア拡大に向けた過当競争により、ブランド価値の毀損を招き売上高が減少する可能性があります。
⑤ 顧客情報及び情報システム(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、より良いサービスを提供するために様々な顧客情報を保有し、主に情報システムで管理しております。情報の取得や活用、保管にあたっては、適正かつ安全な方法にて最大限の注意を払っております。しかしながら自然災害や機器の故障、不稼働、コンピューターウイルスの感染、不正アクセス等により、顧客情報を含めた内部機密情報の消失、漏洩、改ざん等が発生した場合は、ブランド価値の毀損を招き企業価値を著しく損ねる可能性があります。
⑥ 特定販売先への依存(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)③」に記載のとおり、連結売上高との対比で高い割合を有する販売先があります。その販売先の経営施策や取引約定の変更等により販売額が大きく減少した場合や取引継続に支障が生じた場合は、売上高が著しく減少する可能性があります。
⑦ 固定資産の保有(影響度:大 発生可能性:中)
当社グループは、工場設備や店舗及び営業所等の事業用資産を所有しております。固定資産の収益性の低下により投資額が回収できない場合には、減損損失を計上する可能性があります。また、取引先との取引の安定的かつ継続的な維持・強化を目的に有価証券を保有しており、その他有価証券に分類されるものについて時価を有するものはすべて時価評価しているため、株式市場等における時価変動の影響を受け、評価損を計上する可能性があります。
⑧ 食の安全性(影響度:大 発生可能性:低)
当社グループは、近年、消費者の食の安全性に対する関心が一層高まっていることを受け、長年にわたり培った「品質第一主義」のもと、食品偽装を防ぐための厳格な監視体制を整備しており、高品質の商品を安全かつ衛生的に製造することで、お客様にご満足いただけるよう厳しい品質保証体制をとっておりますが、健康被害に関わる事故が発生した場合には、その事故の規模によってはブランド価値の毀損を招き企業価値を著しく損ねる可能性があります。
⑨ 気候変動(影響度:大 発生可能性:低)
当社グループは、地球温暖化による気候変動が「コーヒーの2050年問題」など農作物であるコーヒーへ様々な影響を及ぼすと想定しており、コーヒー生産者の支援やコーヒー製造過程におけるCO2削減等により、地球温暖化への対応を行ってまいります。しかしながら環境変化によるコーヒー栽培に適した土地の縮小が進み持続可能な収穫が困難となる場合には、商品の販売が困難となり売上高が減少する可能性があります。詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
⑩ 自然災害(影響度:大 発生可能性:低)
当社グループは、国内の各地に営業拠点並びに生産拠点を設置しており、不測の事態に備えた事業継続計画を策定する体制であります。しかしながら地震・台風等の自然災害が発生した場合、生産設備や棚卸資産等の損壊等により、事業継続が困難となる可能性があります。
⑪ コンプライアンス(影響度:大 発生可能性:低)
当社グループは、行動規範を定め、法令遵守のための研修等による周知、徹底を図るとともに、各業務プロセスにおいては「内部統制システムに関する基本方針」に基づき運営を行っております。しかしながら法令等の違反や社会的要請に反した行動が発生した場合には、ブランド価値の毀損を招き企業価値を著しく損ねる可能性があります。
⑫ 法的規制(影響度:大 発生可能性:低)
当社グループは、事業活動を遂行するにあたり、食品衛生法、製造物責任法、下請法等の様々な法的規制や、海外進出先においては各国の法的規制の適用を受けております。今後予期しない法令等の改正や新たな規制などにより事業活動が制限された場合、事業継続が困難となる可能性があります。
⑬ 海外事業(影響度:中 発生可能性:中)
当社グループは、インドネシアにおける農園事業、台湾におけるレギュラーコーヒー販売事業などを行っております。事業を展開する各国における政治、経済、社会情勢の変化などを予見、情報収集のうえ迅速な対応と意思決定によるマネジメントを遂行するよう努めております。しかしながらカントリーリスクによって事業継続が困難となる際は、海外事業からの撤退を余儀なくされる可能性があります。
⑭ 天候(影響度:中 発生可能性:中)
当社グループは、レギュラーコーヒーを中心とした事業を展開しており、これらの事業における製商品の売上は天候の影響を受けやすく、天候の変動等によっては、商品の販売価格の低下または販売数量の減少により、売上高が減少する可能性があります。
⑮ 人材確保と育成(影響度:中 発生可能性:中)
当社グループでは、設備投資や業務効率化等によって、労働生産性向上を図るとともに高度な専門性を有した人材を含め、必要とされる人員、人材の確保・育成に努めております。しかしながら国内における労働人口の減少や人件費の高騰により、必要な人材を確保出来ない場合は、事業継続が困難となる可能性があります。詳細につきましては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
⑯ 資金調達環境(影響度:中 発生可能性:中)
当社グループは、事業に必要な資金の一部を銀行借入によって調達しており、将来的にも資金需要に応じて金融機関からの借入等により資金調達を行う可能性があります。金利の上昇その他金融市場を取り巻く環境が悪化した場合には、金利負担が増加し、または適時に希望する条件での資金調達ができなくなることにより、経常利益が減少する可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の分類変更等により経済活動の正常化が一層進み、景気は緩やかな回復傾向にありました。一方で、物価の上昇や海外景気の下振れリスクなどもあり依然として先行きは不透明な状況が続いております。
コーヒー業界におきましては、国内のコーヒー消費量は前年を下回ったものの、業務用市場の消費量が新型コロナウイルス感染症の行動制限解除による人流の活発化や訪日客の回復等により伸長を続けるとともに、家庭用市場の消費量においては店頭価格の引き上げがある中、前連結会計年度と同水準で推移しました。
業績に大きな影響を及ぼすコーヒー生豆相場は、コーヒー先物市場の認証在庫量の低位推移やロブスタ種最大の生産国ベトナムの天候不順による減産などにより大幅に上昇しました。また、中東の紛争発生を受けた海上運賃の値上がりや為替相場の円安基調継続により、コーヒー生豆調達価格は高値で推移しました。加えて、資材費の上昇などからコーヒー製造コストは増加しており、厳しい経営環境が続きました。
このような状況の下、当社は「コーヒーを究めよう。お客様を見つめよう。そして心にゆたかさをもたらすコーヒー文化を築いていこう。」という企業理念を果たすため、長年にわたり培った「品質第一主義」のもと、「事業構造の改革」、「収益力強化」及び「グループ総合力強化」を3つの柱とし、新たな需要の創出や生活者のニーズにお応えする商品開発、お取引先の業績に寄与する企画提案型の営業活動を推進してまいりました。
「事業構造の改革」については、営業活動及び管理業務のDX推進、環境配慮型の資材採用を拡大並びに製造ラインのロボティクス化による省人化などを実施しました。また、物流の2024年問題に関して物流を効率化するための活動、基幹系システムや生産管理システムの刷新に向けた取り組みを継続しました。
「収益力強化」については、付加価値の高い商品の販売数量増量、工場の製造効率化及び主力商品の製造拠点や物流拠点の見直しによるコスト低減を実施しました。また、家庭用商品の主要ブランドについてリブランディングを行いました。
「グループ総合力強化」については、グループ全体におけるサステナビリティ関連方針に基づいた活動を推進し、グループ会社と連携した持続可能なコーヒー生産の実現に向けた幅広い取り組みを強化しました。
当社は従前から環境配慮や人権尊重に取り組んでおり、前年度には2030年を見据えた新メッセージ「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を制定し、喫茶文化の継承と持続可能なコーヒー生産の実現を目指すために「コーヒーの未来部」を創設し、さらに本年度は「サステナビリティ推進室」の新設によりサステナビリティに関する施策をより広範に推進しております。また、人的資本経営に資する部署として「人財開発課」を新設し、併せて全社横断で人選した「ウェルビーイングプロジェクトチーム」を立ち上げ、従業員のエンゲージメント向上とダイバーシティの推進に取り組んでおります。
これらの取り組みの結果、業績につきましては主力のコーヒー関連事業他、各事業で前連結会計年度に引き続き増収となり、営業利益は原価率が上昇したものの販売促進費の抑制などにより増益となりました。
この結果、当社グループの当連結会計年度の業績は、売上高は738億円(前連結会計年度比16.6%増)、営業利益は7億64百万円(前連結会計年度比212.4%増)、経常利益は8億67百万円(前連結会計年度比148.2%増)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、1億80百万円(前連結会計年度比4.2%増)となりました。
<連結経営成績>
(単位:百万円)
セグメントの営業概況は次のとおりであります。
(単位:百万円)
(注)調整額は主に、セグメント間取引消去、棚卸資産の調整額、報告セグメントに帰属しない一般管理費であります。
(コーヒー関連事業)
業務用市場では、デジタルツール活用による顧客管理強化やWEB活用による受注自動化の他、売掛金回収業務の効率化などに取り組みました。また、トアルコ トラジャや氷温熟成珈琲など差別性の高いコーヒーの販売を推進するとともに、酒類他業務用食材の取り扱いアイテム強化による拡販を行いました。
お取引先の活性化策としては、世界中の品質の優れたコーヒーを提供する月間企画などの提案やコーヒーインストラクターによるコーヒーセミナーの実施、昨年に続き業務用食材の展示提案会を開催しました。
カフェ開業支援の施策として取り組む様々な立地環境に出店可能なパッケージカフェ「KEY'S CAFÉ」は4店舗新規出店となりましたが、8店舗の閉店があり導入店舗数は68店舗となりました。
売上につきましては、新型コロナウイルス感染症の分類変更による人流の活性化などによりお取引先へのコーヒー及び業務用食材の販売量が増加し、前連結会計年度に比べ大幅な増収となりました。
家庭用市場では、デジタルツール活用による顧客へのプレゼン力の強化及び情報共有化、新規カテゴリー商品としてライオンコーヒー(フレーバーコーヒー)や堀田勝太郎(煎茶ティーバッグ)を販売並びに物流ロット及びリードタイムの改善などに取り組みました。
商品展開では、春夏商品として発売45周年を機に「トアルコ トラジャ」シリーズを全面リニューアルするとともにお客様の声を反映した「期間限定」商品を、ドリップ オンとインスタントコーヒーで発売しました。秋冬商品では主要ブランドレギュラーコーヒー「PREMIUM STAGE(プレミアムステージ)」を次世代に続くブランドへ成長させるため簡易抽出型コーヒー「ドリップ オン」シリーズ等も加えた新ブランド「KEY DOORS+(キードアーズプラス)」へリブランディングを実施し、新たな商品ラインアップ展開で20代から30代の若年層の開拓に取り組みました。
ギフト商品では、「ドリップ オン」シリーズをはじめ、中元期は「氷温熟成珈琲アイスコーヒー」など全27アイテム、歳暮期には「トラジャ&氷温熟成 アロマフラッシュ缶」等様々な飲用シーンに応える贈り物として全20アイテムをラインアップしました。
売上につきましては、グランドテイストシリーズの積極的な販促活動の奏功等により前連結会計年度に比べ増収となりました。
原料用市場では、コーヒー相場連動の取引であり販売単価上昇により大幅な増収となりました。
コーヒー関連事業における営業利益は、コーヒー生豆調達価格や製造コストなどの増加もある中、各市場における売上伸長により前連結会計年度に比べ増益となりました。
この結果、当連結会計年度におけるコーヒー関連事業の売上高は656億90百万円(前連結会計年度比18.1%増)、営業利益は11億57百万円(前連結会計年度比31.2%増)となりました。
(飲食関連事業)
株式会社イタリアントマトは、売上面では新型コロナウイルス感染症の分類変更もあり人流が回復する中、季節限定メニューの毎月投入、催事の開催等による来店客数の回復などにより前連結会計年度を大きく上回りました。利益面では売上状況の変化に応じた人員配置や食材の発注、管理を行うとともに、廃棄ロスの低減に取り組み、人件費、原材料費の適正化を推進しました。また、原材料調達価格や光熱費などのコスト上昇を受けた商品開発及び商品の価格改定を実施、付加価値の高いメニューの投入にも継続して取り組んだ結果、利益水準は大きく改善しました。同社店舗数は141店(直営店49店、FC店92店)となりました。
この結果、当連結会計年度における飲食関連事業の売上高は42億32百万円(前連結会計年度比9.2%増)、営業損失は14百万円(前連結会計年度は2億19百万円の営業損失)となりました。
(その他)
ニック食品株式会社は、売上面では業務用飲料製品等の受注数量が減少し前連結会計年度の実績に届かなかったものの、利益面では製造経費の圧縮や生産体制の見直し等の改善が図られたことにより大幅な増益となりました。
通販事業を営むhonu加藤珈琲店株式会社では、売上原価、物流費などが前連結会計年度に比べ大幅に上昇する中、販売価格の引き上げや販売促進費の抑制により売上高及び利益の確保に努めた結果、減収、増益となりました。
この結果、当連結会計年度におけるその他事業の売上高は38億76百万円(前連結会計年度比1.5%増)、営業利益は2億41百万円(前連結会計年度比79.3%増)となりました。

(コーヒー相場:ICO複合指標価格)
当連結会計年度の生産及び仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 生産数量には外注支給を含んでおります。
(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
(注) 数量には外注製造委託分の生豆が含まれております。
当社グループは販売計画に基づく見込生産を行っているため、受注生産はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去致しております。
2.主な相手先別の販売実績金額及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産の部は前連結会計年度末に比べ30億64百万円増加し、548億32百万円となりました。負債の部は26億22百万円増加し、238億61百万円となりました。純資産の部は4億41百万円増加し、309億71百万円となりました。
これらの主な要因は次のとおりです。
当連結会計年度末における流動資産の残高は364億73百万円となり、前連結会計年度末より19億69百万円増加となりました。これは主に、売掛金の増加(15億11百万円増)、原材料及び貯蔵品の増加(6億68百万円増)などによるものであります。
当連結会計年度末における固定資産の残高は183億59百万円となり、前連結会計年度末より10億94百万円増加となりました。有形固定資産は主に減価償却が進んだことによる建物及び構築物の減少(1億30百万円減)、設備投資による機械装置及び運搬具の増加(3億44百万円増)、土地の減少(1億42百万円減)などにより88百万円増加しました。無形固定資産はその他の減少(2億23百万円減)などにより2億41百万円減少しました。投資その他の資産は投資有価証券の増加(10億81百万円増)などにより12億47百万円増加しました。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は219億68百万円となり、前連結会計年度末より25億83百万円増加となりました。これは主に、短期借入金の増加(21億56百万円増)などによるものであります。
当連結会計年度末における固定負債の残高は18億92百万円となり、前連結会計年度末より39百万円増加となりました。これは主に、繰延税金負債の増加(2億59百万円増)、退職給付に係る負債の減少(1億91百万円減)などによるものであります。
当連結会計年度末における純資産の残高は309億71百万円となり、前連結会計年度末より4億41百万円増加となりました。これは主に、配当金の支払いによる減少(2億60百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利益の増加(1億80百万円増)、その他有価証券評価差額金の増加(3億28百万円増)、退職給付に係る調整累計額の増加(1億76百万円増)などによるものであります。
(3) キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益4億88百万円、減価償却費9億75百万円、売上債権の増加15億88百万円、未収消費税等の減少5億40百万円などにより、4億81百万円の収入となりました。(前連結会計年度は30億95百万円の支出)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出6億26百万円、有形固定資産の取得による支出9億70百万円などにより、16億89百万円の支出となりました。(前連結会計年度は9億73百万円の支出)
財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の借入れ21億47百万円、配当金の支払い2億60百万円、リース債務の返済による支出1億24百万円などにより、17億41百万円の収入となりました。(前連結会計年度は27億57百万円の収入)
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は46億67百万円となり、前連結会計年度末より5億47百万円の増加となりました。
当社グループの主要な運転資金需要は、原材料費、労務費、商品仕入、販売費及び一般管理費等であり、設備投資資金需要は、機械設備新設及び改修、店舗出店等に係る投資資金であります。
また今後、当社グループの新たな収益の源泉となり、企業価値向上に貢献する新規事業や業務提携等への投資の検討を行ってまいります。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達にて対応していきます。
資金の流動性については、当連結会計年度末現在において当社グループの現金及び預金残高は、46億67百万円であり、今後の営業活動によって確保されるキャッシュ・フローに加え、金融機関の当座貸越契約による融資枠を設けており、十分な流動性を確保しているものと考えております。
(5) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2024年1月10日付けで連結子会社である株式会社イタリアントマトの株式・債権譲渡契約を株式会社日本共創プラットフォームと締結しております。
なお、詳細につきましては、連結財務諸表「注記事項(追加情報)2.株式会社イタリアントマトの株式・債権譲渡契約」に記載の通りであります。
当社グループでは、千葉県船橋市に開発研究所を設置し、市場のニーズを取り入れた魅力ある商品づくりを行うとの考え方にもとづき、生活者の視点から商品アイテムの見直し、改廃を行いながら研究開発に取り組んでおります。
研究開発を行っている項目は次のとおりです。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は