本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
当社グループは、以下の経営理念のもと、中長期的に目指す姿である「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」というビジョンの実現を目指してまいります。
○お客さまに、より一層価値あるサービスを提供し、お客さまと共に発展する。
○事業の発展を通じて、株主価値の永続的な増大を図る。
○勤勉で意欲的な社員が、思う存分にその能力を発揮できる職場を作る。
○社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する。
足許、世界経済は、根強いインフレを受けた家計の購買力の低下や金融引締めによる高金利等を背景に、前年度から継続していた回復のペースが鈍化しております。もっとも、米国では、良好な雇用・所得環境が個人消費の下支えとなり、順調に景気回復が続いております。わが国におきましても、堅調な企業収益のもと、省力化やデジタル化への対応に向けたソフトウエア投資を中心に設備投資が増加しました。一方、個人消費は、新型コロナウイルス感染症関連の行動規制の撤廃に伴う経済活動の正常化により回復が見られたものの、物価高の長期化を受けて伸び悩みが続きました。
今後は、国内では好調な企業業績を背景とした設備投資の拡大や賃上げによる消費回復が期待され、海外でもインフレ鈍化や底堅い雇用環境により景気の軟着陸が想定されます。加えて、足許の国内におけるマイナス金利解除に伴う金利の上昇、円安、株高といった、当社グループにとって、良好な市場環境が持続すると見込んでおります。一方で、欧米金融政策のハードランディングの可能性、中国経済の停滞、米大統領選・国内政権支持率低迷等による政治不安定化、地政学リスク等のリスク要因も想定されます。
また、あらゆる分野においてデジタル化がますます加速し、デジタル完結型のサービスの拡大やIT・デジタル技術を活用したビジネス変革ニーズの高まり等、企業活動や個人の消費行動が大きく変容しております。
金融業界においても、プラットフォーマーやFintech、異業種との協業や、互いの業界への参入が活発に実施され、競争が複雑化・激化しております。同時に、様々な規制の見直しも行われており、新たなビジネスへの挑戦余地も生じております。
更に、世界が直面する社会課題についても、気候変動に加えて、人権や貧困、少子高齢化等、課題が多様化・深刻化しており、企業として幅広い社会課題に主体的に取り組むことがより一層求められております。
当社グループは、2023年度からの3年間を計画期間とする中期経営計画において、「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」というビジョンの実現に向け、次の3つの基本方針に則った取組みを推進してまいります。

本中期経営計画では、次の3項目を最終年度の2025年度の財務目標として掲げております。
<連結財務目標(2025年度)>
※1 バーゼルⅢ最終化時ベース、その他有価証券評価差額金を除く
※2 営業経費から「収益連動経費」「先行投資に係る経費」等を除いたもの
足許、国内でのマイナス金利政策の解除や、地政学リスクの顕在化、生成AIをはじめとするデジタル技術の普及による生活の変容等、さまざまな変化が生じています。当社グループは、こうした大きな変化に対応し、中期経営計画で掲げた前述の3つの基本方針に基づき、従来以上にお客さまや社会の動きを捉えつつ、グループの総合力を発揮してこれまでの取組みを加速させ、「質の伴った成長」を目指します。
社会課題の解決を主導することにより、経済の成長とともに社会課題が解決に向かい、そこに生きる人々が幸福を感じられる「幸せな成長」に貢献してまいります。社会的価値の創造に向けた実行力を高めるために新設した「社会的価値創造本部」を中心に、従業員一人ひとりが当事者意識を持って、主体的にお客さまや地域社会・産業等の課題解決に貢献していくための枠組み等を整備してまいります。また、当社グループとして主体的に取り組むべき重点課題として定めた、次の5つの課題に対して、課題解決に向けたビジネスの強化や新たな事業の創出、環境・社会関連リスクの管理体制の高度化を通じたリスク低減等の取組みを、グループを挙げて本格化させてまいります。

※3 Diversity(ダイバーシティ、多様性)、Equity(エクイティ、公正性)、Inclusion(インクルージョン、包括性)の3つを合わせた概念。個々の異なる状況や特性に応じて、企業が適切なサポートを行い、多様な人材がその能力を最大限発揮できる環境を整備すること。
資本効率を更に意識し、経営資源を大胆に配分するとともに、スピード感をもって各種施策を進めることにより、飛躍的な収益の強化を図ります。これまでの成長投資や施策の成果を着実に実現させるとともに、大きな環境変化を踏まえた「不断のビジネスモデル改革」と「重点領域におけるフランチャイズの確立」に向けた取組みを進めてまいります。これらにより、事業ポートフォリオを変革し、資本効率の向上を伴った収益力の確実な強化を目指してまいります。
その上で、グループ間の更なる連携を通じた相乗効果の追求や時機を捉えた適切なリスクテイク、新たなチャレンジやイノベーション等を重視して取組みを進めてまいります。
具体的には、国内ビジネスにおいて、円金利上昇を見据えたビジネス改革に取り組んでまいります。個人のお客さま向けのビジネスにおいては、個人のお客さま向けの総合金融サービス「Olive」の推進と、「Olive」や資産運用等に関するご相談に特化した個人専用店舗「ストア」の展開を並行して進めることで、商品や店舗体制の優位性を維持しながら顧客基盤・預金の効果的な獲得を目指してまいります。また、法人のお客さま向けのビジネスにおいてもデジタル化による営業体制の見直しや決済ビジネスの強化により、効率的なビジネスモデルを再構築し、採算性の向上を実現してまいります。更に、お客さまに対して資金面のご支援、すなわち、当社グループの総資産を拡大させるビジネスのみによらず、手数料ビジネスの強化を進めることで、資本効率の向上を図ってまいります。海外ビジネスにおいては、事業ポートフォリオの見直し及び大胆な経営資源のシフトにより資本効率を向上させつつ、Jefferies Group LLCとの連携に基づき米国事業を更に拡大させるとともに、「マルチフランチャイズ戦略」のもとアジアにおいて出資を行った各社との協業を着実に進展させることにより、グループを牽引する力強い成長を目指してまいります。
当社グループのあらゆる活動の礎である、お客さまをはじめとするステークホルダーからの信頼を得るべく、経営基盤の格段の強化を進めてまいります。
まず、当社グループが受けた行政処分等を踏まえ、健全な組織文化の更なる醸成・浸透と、コーポレートガバナンス・コンプライアンスの質の向上にグループを挙げて継続して取り組むとともに、IT投資や人材投入を通じた内部管理体制の強化を引き続き、グループ・グローバルベースで進めてまいります。
また、先行きが不透明な環境下であってもビジネスモデルの拡大や高度化を実現するため、多様で優秀な人材の確保・育成に向けた人事制度の整備、人的資本投資と人材マネジメントの強化を推進してまいります。更に、グループの競争力向上やガバナンス強化に必要なデジタル化を進めるため、従来にない大規模かつ積極的なIT投資等を通じたシステムインフラの増強に取り組み、経営基盤の強化を図ってまいります。
なお、当社グループは、足許、良好な業務環境のもと、収益水準が引き上がってきていることから、もう一段高いレベルを目指すべく、次期中計を見据えたROE目線を策定しました。具体的には、2023年度実績では7.0%である東証基準ROE※4を中計最終年度である2025年度に8%程度、次期中計最終年度である2028年度に9%程度とするものです。東証基準ROE9%程度という目線は、財務目標としているROCET1ベースでは12%程度を目指すものになります。
現状に満足することなく、質の高い成長を実現させるため、主要施策を進め、これらの取組みにおいて着実な成果をお示ししたいと考えております。
※4 親会社株主に帰属する当期純利益を、新株予約権及び非支配株主持分控除後の期中平均連結純資産額で除して算出。(「第1 企業の概況」に記載の連結自己資本利益率と同義。)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1)サステナビリティに対する考え方及び当社グループのマテリアリティ
当社グループは、「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」ことを経営理念に掲げるとともに、サステナビリティ宣言において、サステナビリティを「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を作り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」と定め、その実現に向けて、時代の変化に対応しつつ、社会課題の解決に幅広く貢献してまいりました。
近年、地球温暖化、人権侵害、貧困・格差の拡大等、世界が直面する社会課題は拡大・深刻化の一途を辿っており、わが国においても、長期にわたり経済の低成長が続いてきた他、少子高齢化・人口減少も一段と加速しております。
社会とは、企業が事業を営む上での礎であり、社会の発展なくして企業の持続的成長はあり得ません。こうした認識の下、当社グループは2023年度に開始した中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」において、「社会的価値の創造」を基本方針の一つと定めました。「社会的価値の創造」とは、社会課題を起点に本業に取り組み、お客さまや社会の中長期的な成長に資する付加価値を提供することであり、本業を通じて社会的価値を創造し社会へ還元していくことは、お客さま・社会への価値提供に加え、事業基盤の拡大等を通じて経済的価値向上にも寄与し、それがさらなる社会的価値創造の好循環を生み出します。当社グループは、例え短期的には経済的価値に直結しない領域であっても、企業市民として社会課題の解決へ積極的に取り組み、社会的価値の創造を目指していきます。
社会的価値の創造に向け、特に解決を目指すべき喫緊の社会課題として、「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」の5つを「重点課題(マテリアリティ)」に定め、その解決に向けたゴールを設定し、事業戦略に落とし込んでいます。当社グループは、サステナビリティの推進やマテリアリティへの取組みを通じて社会的価値を創造し、経済の成長とともに社会課題が解決に向かい、そこで生きる人々が幸福を感じられること、すなわち「幸せな成長」に貢献することを目指してまいります。
<重点課題の考え方と「10のゴール」>

(2)ガバナンス
① サステナビリティ経営の全体像
当社グループにおけるサステナビリティ経営は、グループCEO(Chief Executive Officer)を含むグループCxOの責任で推進され、取締役会の監督を受け、強固なガバナンス体制の下で運営されております。サステナビリティの推進・社会的価値の創造のために必要な諸施策に関しては、取締役会のほかサステナビリティ委員会を含む内部委員会の監督の下、各委員会で審議が行われております。また、サステナビリティ・社会的価値創造に関する具体的な業務戦略は、経営会議や、グループCEOを委員長とするサステナビリティ推進委員会等での審議・決定を踏まえて実行されております。
当社グループの取締役会の役割をはじめとするコーポレート・ガバナンス全般に関する事項は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご覧ください。
<当社グループのサステナビリティ経営体制>


(参考)Diversity, Equity&Inclusion(DE&I)推進体制
当社グループは、DE&Iを「グループの成長戦略そのもの」と位置付け、社内外に発信しております。具体的には、グループ一体での推進に向け、DE&I推進室を設置し、グループCEOを委員長とする「DE&I推進委員会」や経営会議において、KPI設定、施策立案等を議論するほか、経営層向けに勉強会を開催し、最新の外部知見を導入しています。また、管理職に対してマネジメントの重要性や役割期待、アンコンシャス・バイアスやDE&Iの推進意義等を伝える研修を実施しております。
<DE&I推進体制>

② 役員報酬制度
当社グループは、2020年度より中期業績連動報酬における定性項目の一つとして「ESGへの取組」を組み入れ、サステナビリティ関連の長期目標の達成度等を役員報酬に反映させたほか、2022年度には単年度業績連動報酬にもESG評価を拡大いたしました。具体的には、単年度のESGへの取組について、社内目標の単年度の達成度及び主要な外部評価機関の評価結果に応じて、社外取締役が過半数を占める報酬委員会で評価を決定し、最大±10%の範囲で単年度業績連動報酬に反映される形に変更いたしました。
また、2023年4月より、役員報酬制度の中期業績連動型報酬にポートフォリオGHG(温室効果ガス)排出量や従業員エンゲージメントスコアなどのESG定量指標や、環境、従業員、人権などに関する取組みへの定性評価を組み入れております。
<役員報酬制度の概要>

(3)戦略
① 気候変動への対応
当社グループは、自社で排出するGHGの2030年ネットゼロ、ならびに投融資ポートフォリオGHG排出量の2050年ネットゼロ実現をコミットしています。秩序ある公正な移行に向けては、トランジションファイナンスを提供していくこと、また、次世代技術の確立に向けたイノベーションを支援していくことが重要と認識しています。
イ.気候変動に伴うリスクに対する認識
気候変動に伴うリスク(物理的リスク及び移行リスク)は広範な波及経路が想定され、かつ様々な時間軸で顕在化する可能性があります。当社グループでは、気候変動問題の顕在化に伴う外部環境や業務環境の変化をあらかじめ想定し、様々な波及経路に基づいてリスク事象を洗い出すことで、当社グループへの財務的影響を特定しております。当社グループが想定するリスク事象の概要、及び各リスクカテゴリーへの波及事例は以下のとおりであります。
<当社グループが想定するリスク事象の概要>
(物理的リスク)
〇 急性的な気象現象と慢性的な気候変化
地球温暖化の進行は、台風・洪水等の急性的な自然災害の増加や、平均気温上昇に伴う降水量増加等の慢性的な気候変化をもたらす可能性があります。これらの事象に起因し、本支店被災により事業が継続できないリスク、対策・復旧によるコスト増加、自然災害によるお客さまの業績悪化や担保毀損に伴う当社グループの与信関係費用の増加・預金の減少等のリスクが想定されます。
(移行リスク)
〇 政策及び法規制の強化や技術・市場の変化
脱炭素社会への移行は、炭素排出目標の厳格化や炭素税の引き上げを始めとする各国の規制強化を伴う可能性があるほか、新たな技術・エネルギー源の導入や消費者嗜好の変化により産業構造の変化を促進する可能性があります。炭素排出量抑制コストの増加や製品・サービスの需給環境の変化に伴い、一部のお客さまについては収益減少や既存資産等の減損により業績が悪化し、当社グループの与信関係費用が増加する等のリスクがあります。また、セクター別方針等、業務戦略の見直しが必要となる可能性があります。
〇 企業の取組に対するレピュテーション
企業は脱炭素社会に適合したビジネスモデル変革や炭素排出量抑制等の取組みを求められております。ステークホルダーからの開示要請も高まっており、気候変動問題への取組みが企業評価基準の一つになりつつあります。これらの取組不足や情報開示要請への対応の遅れは、お客さまや株主をはじめとするステークホルダーからの高い期待に応えられず、当社グループの企業価値の毀損や信頼低下に繋がる可能性があり、資金調達環境が悪化する等のリスクを引き起こすことが想定されます。
<気候変動に関するカテゴリー別リスク事象例>

ロ.気候変動に伴う機会に対する認識
ネットゼロの実現に向けては、大幅なGHG排出量削減のためのビジネスモデルの転換、そのための技術革新や大規模な設備投資が必須となります。IEA(International Energy Agency)はNZE(Net Zero Emissions)シナリオにおいて、クリーンエネルギー分野に対し2030年には年4兆ドルの追加投資が必要と試算しています。また、経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において「グリーンとデジタルは、車の両輪である」と示されたように、ネットゼロ実現に向けてはデジタルトランスフォーメーションが欠かせないほか、社会からの脱炭素に向けた要請が強まり、カーボンクレジット市場の拡大も見込まれます。
こうした中、事業会社においては、資金需要の拡大や事業再編、新たな金融商品・サービス、脱炭素関連設備リース、経営課題に対するコンサルティング(気候関連情報開示の高度化対応や、気候変動戦略・ビジョンの策定、事業開発、リスクマネジメントの高度化への対応)、脱炭素技術保有企業やそれらを必要とするお客さまのマッチング、デジタルソリューション、カーボンクレジット調達等のニーズが生じると認識しています。当社グループにおいても様々な金融サービスの提供機会が増大し、グループ内の事業領域におけるノウハウを有機的に結び付けた多面的なソリューションが重要になると考えています。
当社グループは、お客さまが抱えるこのような複合的なニーズに対し、グループ内にとどまらず外部パートナーとの連携も活用することで、金融・非金融両面から支援に努めていきます。
<当社グループの事業領域とネットゼロへの移行に伴う成長機会>

ハ.実体経済の脱炭素化に向けた取組
「ロ.気候変動に伴う機会に対する認識」に記載のとおり、脱炭素社会の実現に向けては、当社グループにとってさまざまなビジネス機会が想定されます。
こうした中、当社グループは、従来強みとしてきたプロジェクトファイナンスを通じた新エネルギー・新技術への支援、事業の脱炭素化に向けたトランジション支援、GHG排出量の可視化をはじめとするデジタルソリューションの提供等、金融・非金融を含めた高度なサービス開発・提供に注力しています。これらのソリューションをグループ各社が連携しながら提供することで、お客さまの環境に対する取組みを総合的に支援し、経済的価値・社会的価値の両面を伴った環境ビジネスを展開してまいります。

a)新エネルギー・新技術へのリスクテイク
当社グループは、大規模なインフラ事業等のプロジェクトに対するファイナンスの提供を通じて、長年にわたり、社会経済の発展の礎を築くことに貢献してまいりました。実体経済の脱炭素化に向けては、既存技術の規模拡大やコスト削減が重要となることに加え、水素等に代表される新たなエネルギー資源・技術の開発も必要不可欠です。当社グループは、これまで蓄積してきたプロジェクトファイナンスのノウハウを生かし、新エネルギー・新技術への支援に取り組み、脱炭素技術のスケールアップを通じた社会的価値の創造並びに経済的価値との両立・極大化を目指してまいります。

b)日本・アジアをはじめとするトランジション支援
世界全体で早期にカーボンニュートラルを実現するためには、脱炭素化に向けて技術的・経済的に代替手段が限られ、一足飛びに移行することが困難なセクターの移行、すなわちトランジションを支援することが重要です。特に、アジア地域は化石燃料への依存度が依然として高く、経済成長と脱炭素化の両立が重視されています。
当社グループは、トランジションファイナンスを「顧客が自社の事業や運営を、パリ協定の目標に沿った道筋に合わせることを支援するために提供される金融サービス」と定義し、トランジションファイナンスを実行する上での当社グループのお客さまへの期待事項、判断方法の詳細を示したTransition Finance Playbook(以下、「Playbook」という)を策定しました。「Playbook」は様々な国際的なガイドラインを参照し、また世界各地・各国のタクソノミー及び電源構成・エネルギー需給の状況を考慮しながら、現実的かつ着実にトランジションを遂行することを目的として策定しています。「Playbook」を用い、脱炭素社会への移行に向けたお客さまの取組みを支援するとともに、トランジションファイナンスの提供における様々な社会課題の解決に向けた対話のツールとしても活用することで、社会全体の脱炭素化に貢献してまいります。

c)サプライチェーン全体のESG課題の「見える化」
当社グループは、デジタル技術を活用した非金融ソリューションをお客さまに提供することで、金融面以外の切り口からも脱炭素社会への移行を支援しております。
例えば、株式会社三井住友銀行は、サプライチェーン全体のCO2排出量の算定から削減施策の立案・実行まで一連の業務をクラウド上で管理できるサービスである“Sustana”を提供しております。お客さまの活動に関するデータから排出量を推計し、削減施策の実行に向けた支援を行っております。

d)脱炭素に向けたお客さまとの「事業共創」
当社グループが持つグローバルベースの広範な顧客基盤や、脱炭素分野への深い知見を活用し、脱炭素技術を持つ企業と脱炭素化ニーズのある企業をつなぐ「事業共創」にも取り組んでいます。マッチングの結果、金融面での様々な機会補足につながっており、お客さまのニーズに応えるイベントの創出とソリューションの提供に注力してまいります。

e)グループベースの多用なソリューション提供
当社グループは、お客さまの脱炭素に向けた様々な取組みを一気通貫でサポートすべく、グループ一体となり各社のエッジを活かした様々なソリューションを提供しています。例えば、リース分野における系統用蓄電池事業への参画や、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー発電事業の拡大、また、カーボンクレジット事業等、旧来の金融機関の範疇に留まらない独自性のある取組みを展開しています。

(参考)当社グループにおけるネットゼロ実現に向けた移行計画・取組


② 自然資本の保全・回復
自然資本とは、植物や動物、大気や水や土壌などの天然資源を意味しております。当社グループのお客さまの事業活動の多くは自然資本によって下支えされており、自然資本の喪失は、金融グループとしての幅広い事業活動に潜在的なリスクとなる可能性があります。一方で、ネイチャーポジティブの実現に向けては、企業のビジネスモデル変革、新たな技術の導入、環境負荷の低い設備投資等が見込まれ、お客さまの様々なニーズに対する金融サービスの提供機会が生じると認識しています。
このような認識のもと、当社グループではお客さまの企業活動と自然資本との関係を依存・影響の観点から分析し、それを踏まえて自社の事業におけるリスクと機会を認識しております。
また、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)における優先セクターの自然資本への依存度・影響度のヒートマップを作成し、とくに重視すべき自然資本・生態系サービスの特定に努めております。
<企業における自然資本の保全・回復に向けた対応の概念図>

イ.自然関連のリスクに対する認識
当社グループは、企業活動と自然資本の接点を依存・影響の両面で整理したうえで、一般的にお客さまに想定されるリスクと機会を整理しております。
a) 依存の観点からのリスク
気候変動や、企業活動・社会活動における自然資本の利用方法の変化・過度な利用を通して、特定の自然資本が毀損する可能性があります。
(物理的リスク)
水や植物といった自然資本が枯渇し価値が劣化すると、それらが生み出す生態系サービスに依存して事業展開を行っているお客さまは、原材料調達コストの増加や自然災害の激甚化・頻発化などを通して、業績が悪化する可能性があります。
(移行リスク)
自然資本の劣化は、お客さまの生産プロセスの変化を促します。こうした環境変化は、お客さまに対し、新たな技術導入に伴う追加的なコストのほか、事業の中断をもたらす可能性があります。
b) 影響の観点からのリスク
自然資本に負の影響を与える企業にとって、法規制や政策面が不利になるような形で変更される可能性があります。また、サステナビリティ開示に係る国際的なガイドラインの策定が進む中、ステークホルダーからの自然関連情報の開示要請が今後より高まる可能性があります。
(物理的リスク)
お客さまの事業が自然資本に負の影響を与える結果として自然資本が毀損する場合、当社グループの企業価値の毀損や信頼低下に繋がる可能性があり資金調達環境が悪化する等のリスクを引き起こすことが想定されます。
(移行リスク)
自然資本保全を目的とする各国の規制強化や政策変更などに伴い、環境負荷軽減のための費用負担が企業に求められる場合、一部のお客さまにおいては対応コストが増加する可能性があります。また、自然資本保全に向けた取組みや配慮が不十分である場合や対応が不十分とステークホルダーから見做される場合、資金調達環境が悪化する等のリスクを引き起こすことが想定されます。
<自然資本に関する主なカテゴリー別リスク事象例>

ロ.自然関連の機会に対する認識
2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)第二回会合では、「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させ、回復軌道に乗せること(ネイチャーポジティブの達成)、2050年に自然と共生する世界を実現する」という世界目標が定められました。自然資本・生物多様性の保全・回復に向けては、自然と共生する社会経済システムの構築に向けた一定の投資が必要となります。世界経済フォーラムが2020年に発表した報告書は、自然の危機に対処するためには「食料・土地・海の利用」「インフラ・建築環境」「エネルギー・採掘活動」の3つの社会経済システムを変革し、自然にポジティブなビジネスモデルへと移行する必要がある、と指摘しています。そのうえで、本報告書に基づけば、世界全体で2030年までに創出されるネイチャーポジティブ機会額は、年間10.1兆米ドル(約1,300兆円)と推計されており、この結果をもとにした環境省の試算でも、国内の機会額は年間47兆円に上ると試算されています。こうした中、土地・水の利用や森林管理を含む食料・農業分野や、自然に配慮した都市インフラ、再生可能エネルギー、サーキュラーエコノミーなど、自然資本との親和性が高い領域において投資の活性化が見込まれております。
金融機関は、このような投資需要に対する資金供給を行うことが求められます。また、資金供給のほか、アライアンスやリスク高度化対応へのサポートなど、お客さまの様々なニーズに対するサービス提供の機会が発生します。当社グループは、社内の事業領域におけるノウハウを有機的に結び付けた多面的なソリューションを通して、お客さまのネイチャーポジティブに向けた取組みを支援してまいります。
③ 人的資本経営の実践
イ.「SMBCグループ人財ポリシー」の制定と浸透
経営やビジネスの環境変化に加え、ビジネスの担い手の世代交代や女性活躍推進、キャリア採用の拡大等により従業員の価値観は多様化してきました。これに伴い企業と従業員の関係も「互いに依存する関係」から「選び、選ばれる関係」へと変化しております。
長きにわたり「人の三井」「事業は人なり」と形容され「人」を重視してきた三井と住友の事業精神と文化を受け継ぎ、多様な従業員が集い、育ち、活躍する場であり続けるため、当社グループが「従業員に求めるもの」と「従業員に提供する価値」を「SMBCグループ人財ポリシー」として2023年度より明文化しました。
従業員には、社会に大きな責任を持つグローバル金融グループの一員としての自覚と、自分と異なる価値観を積極的に受け容れるDE&Iの精神を前提に、「プロフェッショナルとして責任を果たすこと」「お互いを認め合いチームで最高の成果を追求すること」「困難に立ち向かい挑戦し続けること」を求めております。
一方、その実現に向けて取り組む従業員に対しては、「自分らしさを表現できる環境」「事業基盤を活かしたお客さま・社会へ貢献できる機会」「キャリア形成と成長のサポート」を提供し、自らの夢の実現を後押してまいります。
このポリシーを浸透させ実行に移すためにも、人事評価の基準・項目を「SMBCグループ人財ポリシー」に沿った内容にアップデートするとともに、昇進・昇格については、年次・年齢よりも実力を一層重視してまいります。
ロ.当社グループ版人的資本経営モデル
当社グループでは、約12万人の多様な人材が活躍しています。「SMBCグループ人財ポリシー」に基づき、グループ・グローバルでの人的資本経営による人材力の最大化に向けて、「戦略に応じた人材ポートフォリオの構築」と、全従業員を対象とした「従業員の成長とウェルビーイング支援」「チームのパフォーマンス最大化」に資する施策を推進し、価値創造につなげてまいります。

a) 戦略を支える人材ポートフォリオの構築
〇 注力分野への重点投入
当社グループは、中期経営計画の実現を支える人材ポートフォリオを構築するため、社内の人員シフトと積極的な採用を実施しています。2024年度は、経済的価値の追求を目的に、円金利環境の変化を受けて、企業活動が活発なホールセール領域や、「Olive」の推進を担うデジタル領域などを中心に追加配置します。
また、注力分野を中心に、専門性を評価し、処遇することで、各領域のプロフェッショナルを確保・育成しているほか、将来的なビジネスの担い手を採用し育成する「新卒採用」と即戦力を獲得する「キャリア採用」に一層注力してまいります。
〇 海外現地従業員のインクルージョン
海外ビジネスが当社グループ全体の成長を大きく牽引していることを踏まえ、当社グループでは、海外現地従業員(Locally Hired,「LH」という)への東京本店各部勤務経験や日本の従業員(Japan Hired,「JH」という)と合同での研修機会(グローバルレベルでのビジネススキルやトップマネジメントスキルの向上を目的とするもの)の提供を通じ、LH・JH双方が組織の多様性を実感し、競争力に変える風土を育んでいます。
〇 グループ経営人材の管理・育成
当社グループは、経営上重要な各事業部門・CxOの各主要ポジションにはサクセッションプランを設け、戦略的に登用・育成を行っています。
経営人材候補者には、成長や課題を改善する機会に資する経験を培うべく、グループベースで異動・人材交流を実施し、「グループ経営の視野・視座を体得」・「グループ横断の人脈形成」の機会を提供します。
b) 従業員の成長とウェルビーイング支援
〇 自律的なキャリア形成を支える取組
当社グループでは、従業員の自律的なキャリア形成を支援するため、グループ各社およびグループ横断で、職務やポストに応募できる公募制度を提供しています。
またキャリア教育にも注力しており、各社で年代に応じたキャリア研修を提供するほか、グループ横断でキャリアコンサルティングを利用できる体制を整備しています。
加えて、従業員が他部署の業務や魅力、求められるスキル・資格等について理解を深められるよう、「ジョブマップ」の整備や、自部署の業務の魅力を伝える説明会「ジョブフォーラム」を定期的に開催しています。
〇 挑戦を応援する制度
当社グループでは、グループの成長を支えるユニークなビジネスアイデアに対して、予算と人員を割り当て、その能力を思う存分発揮できる環境を提供します。
ビジネスアイデア次第では会社の枠組みを超え、新たに社内ベンチャーを立ち上げて「社長」に抜擢しています。
〇 従業員の成長を支える心身の健康確保
当社グループ各社では「健康経営宣言」を制定し、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化を目指して健康経営に取り組んでいます。最高健康責任者(Chief Health Officer)の下、企業・健康保険組合・産業保健スタッフ等の三位一体で一次予防、二次予防、三次予防それぞれの段階に合わせて各種支援制度や勤務制度、オフィスの整備等を進めています。
c) チームのパフォーマンス最大化
〇 DE&Iの推進
当社グループでは「Diversity, Equity&Inclusion(以下、DE&Iという)」を成長戦略と位置づけ、多様な人材がその能力を最大限発揮することで、組織のパフォーマンスを高め、価値創造を最大化することを目指しています。2023年度にはマテリアリティの1つに「DE&I」を追加したことにあわせて「DE&Iステートメント」を改定し、経営トップによるコミットメントを一層明確化しました。
また、従業員がライフスタイルに応じて仕事と家庭を両立し、働きがいを持てる環境づくりとして両立支援の促進・男性の育児参画支援に注力しているほか、経営幹部に求められる高い視座・素養の涵養や主体的なキャリア形成等を目的に、次世代を担う女性幹部育成を実施し、女性従業員の登用後の活躍やより高いポジションへの挑戦を後押ししています。
〇 エンゲージメント
当社グループでは、組織や従業員のエンゲージメントの状態を定点観測でき、本部やマネジメントによる改善行動をサポートするツールとして、エンゲージメントサーベイを活用しています。
その他、定期的な対話・1on1機会の設定等により、従業員のエンゲージメント、パフォーマンス向上を図っています。
〇 従業員による経営参画意識への向上
当社グループでは、セミナーやランチ会、各主要研修等で、トップマネジメントと交流し、対話する機会を設けています。2023年度はグループ各社社長のインタビュー動画の配信や、社内SNS「ミドりば」にて社長の日常の様子を伝える発信チャネルを立ち上げました。今後も様々な切り口で、アウターも含めたコミュニケーション機会を提供し、社内活性化を通じた組織風土改革を継続します。
④ 人権の尊重
イ.人権尊重の考え方
当社グループは、人権尊重責任は企業が果たすべき責務と認識しております。当社グループでは、「『ビジネスと人権』に関する行動計画」や「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」などの指導原則に沿い、当社グループが人権の権利主体に対し与えうる負の影響と、多岐にわたるステークホルダーから当社グループ自身が被る影響の双方向の人権に関するリスクを踏まえたアプローチにより、当社グループは社会に対する「正の影響(ポジティブインパクト)」を極大化し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
<人権尊重の考え方>

ロ.重要な人権リスクの特定・評価
当社グループは、事業活動を通じて関与し得る人権への負の影響について、お客さまとの取引、サプライヤー取引、従業員の3つの観点で分析し、想定されるリスクについて深刻度・発生可能性の観点から重要度の高いものを特定しております。
2022年度に特定した重要な人権リスクについては、今後も定期的な見直しを行いながら、これらの人権への負の影響の防止・軽減に重点的に取り組んでまいります。
<重要な人権リスク事例>

(4)リスク管理
当社グループは、環境社会リスクを、気候関連、自然関連、人権等の、環境・社会要因がリスクドライバーとなり、様々な経路を通じて各リスクカテゴリーに波及することにより、最終的に当社グループが損失を被るリスクと定義しています。当社グループは様々なリスク管理の枠組みの中で環境社会リスクを認識し、評価・管理する体制の高度化に努めております。
① トップリスク/リスクアペタイト・フレームワーク
当社グループは、収益拡大のために取る、あるいは許容するリスクの種類と量(リスクアペタイト)を明確にし、グループ全体のリスクをコントロールする枠組みとして、「リスクアペタイト・フレームワーク」を導入しております。
当社グループのリスクアペタイト・フレームワークは、業務戦略とともに経営管理の両輪と位置付けられており、経営陣がグループを取り巻く環境やリスク認識を共有した上で、適切なリスクテイクを行う経営管理の枠組みです。グル-プ全体のリスクアペタイトを踏まえ、事業部門別等、業務戦略に応じて必要な単位でのリスクアペタイトを設定しています。具体的なプロセスとしては、業務戦略・業務運営方針の策定にあたり、経営上特に重大なリスクを「トップリスク(※)」として選定したうえで、リスクシナリオに基づくストレステストによるリスク分析を実施することで、リスクが顕在化した場合の影響も踏まえながら、リスクアペタイトを決定しております。気候関連リスクにおいては、物理的リスクや移行リスクに関して、ストレステストの手法を活用したシナリオ分析を実施し、与信関係費用を推計することで株式会社三井住友銀行への財務的影響をあらかじめ把握しています。
当社グループでは、気候変動や自然資本、人権に関するリスクをトップリスクとして位置付けております。特に、気候変動に係るリスクについては、業務計画を達成するためのリスクテイクやリスク管理に係る姿勢を示したリスクアペタイト・ステートメントにおいて、ネットゼロ目標の達成に向け、エンゲージメント促進やポートフォリオコントロール等を通じ気候関連リスクの増加を抑制していく旨を記載しております。
(※)「3 事業等のリスク」に記載

② セクター・事業に対する方針
当社グループは、以下に示した環境・社会に影響を与える可能性が高いセクター・事業に対する方針をそれぞれ明確化しております。この方針は、株式会社三井住友銀行、株式会社SMBC信託銀行、三井住友ファイナンス&リース株式会社、SMBC日興証券株式会社において、それぞれのビジネスに沿う形で導入し、更なるリスク管理体制の強化を図っております。

③ 与信判断の高度化/デューデリジェンス
2024年4月より、当社グループの与信業務の中核を担う株式会社三井住友銀行では、環境・社会に関するお客さまの取組みやリスク緩和策を確認し、与信判断やお客さまとの対話に活用する仕組みとして「環境社会審査」を導入しております。
また、環境・社会に多大な影響を与える可能性がある大規模プロジェクトへの融資において、その影響を十分に検討し配慮するためのデューデリジェンスプロセスである「環境社会リスク評価」を実施しております。プロジェクト事業者に対して、TCFD提言への対応や、地域住民等へのFPIC(Free, Prior and Informed Consent/自由意思による、事前の、十分な情報に基づく同意)の尊重など、気候変動や人権をはじめとする環境社会配慮への取組みも求めております。

(5)指標及び目標
① 気候変動に関する指標と目標
当社グループは、気候変動に係るリスク並びに機会を測定・管理するため、またパリ協定への整合/ネットゼロ実現に向けた道筋を示すため、GHG排出量やエクスポージャーなどに関する様々な指標を用いております。なお、本項目における指標の実績値については、2024年5月時点の速報値を掲載しております。
イ.自社グループにおけるGHG排出量
当社グループは、自社GHG排出量(Scope1,2)における2030年ネットゼロの目標を掲げており、当社及び当社連結子会社の国内外拠点を対象に、GHGプロトコルに沿った精緻な排出量把握と削減に向けた取組みを進めております。

ロ.ポートフォリオGHG排出量
当社グループでは、パリ協定への整合と移行リスクの削減に向け、高排出セクターを対象に、ポートフォリオGHG排出量の中期削減目標を策定しております。

ハ.サステナブルファイナンス取組額
当社グループは、環境配慮事業、社会関連事業、脱炭素社会への移行に関するファイナンスに積極的に取り組んでおります。2020年度から2029年度までの10年間での「グリーンファイナンス及びサステナビリティに資するファイナンス実行50兆円」という目標を設定し、お客さまとともに気候変動問題を始めとする社会課題解決に取り組んでまいります。

② 人的資本に関する指標と目標
当社グループは、「(3) 戦略 ③ 人的資本経営の実践」に記載している人的資本に関する取組みについて、目標達成に向けた進捗を管理するため、様々な指標を用いております。
イ.注力分野への人材投入に関する指標
当社グループは、経営基盤の強化を目的として、「法務・コンプライアンス」「リスク管理」「IT」「DX」「アナリティクス」「グローバル」人材の3か年投入計画をKPIとして掲げております。

ロ.エンゲージメントに関する指標
当社グループは、従業員一人ひとりが、心身ともに健康で、その能力を最大限発揮できる環境づくりを目指し、エンゲージメントサーベイスコア70以上を維持することをKPIとして掲げております。

当社及び当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項や、その他リスク要因に該当しない事項であっても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項について記載しております。また、これらのリスクは互いに独立するものではなく、ある事象の発生により他の様々なリスクが増大する可能性があることについてもご留意ください。なお、当社は、これらリスクの発生可能性を認識したうえで、発生を回避するための施策を講じるとともに、発生した場合には迅速かつ適切な対応に努める所存であります。
本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 経営環境等に関するリスク
当社グループを取り巻く経営環境が大きく変動した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。具体的には以下のとおりであります。
① 近時の国内外の経済金融環境
当社グループは、国際金融市場の変動や国内外の景気の下振れ、資源価格の急激な変動等の国内外の金融経済環境の変動に対して、リスク管理体制の整備・高度化も含めた様々な対応策を講じております。しかしながら、ロシア・ウクライナ情勢の深刻化、長期化等の地政学リスクの顕在化等により、当社グループの想定を上回る変動が生じた場合には、「(2) 当社グループの業務に内包されるリスク」に記載の信用リスク、市場リスク及び流動性リスク等が顕在化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 災害等の発生、各種感染症の流行に関するリスク
当社グループは、国内外の店舗、事務所、電算センター等の施設において業務を行っておりますが、これらの施設が、地震等の自然災害、停電、テロ等による被害を受けた場合、または各種感染症の流行により多数の従業員が罹患した場合には、業務継続が困難となる可能性があります。
当社グループは、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを策定しておりますが、これらの施設への被害や従業員の罹患状況によっては、業務が停止し、当社グループの業務運営や経営成績及び財政状態に影響を及ぼす、または戦略遂行に支障が生じる可能性があります。
加えて、大規模な災害等の発生や感染症の流行等により、金融市場の混乱や国内外の経済が悪化した場合、当社グループが保有する金融商品において減損又は評価損の発生や、お客さまの業況悪化等による与信関連費用及び不良債権残高増加等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 他の金融機関等との競争
当社グループは、国内外の銀行、証券会社、政府系金融機関、ノンバンク等との間で熾烈な競争関係にあります。また、今後も国内外の金融業界において金融機関同士の統合や再編、業務提携が行われる可能性や、フィンテック等の新技術の台頭により競争環境に変化が生じる可能性、他業種から金融業への進出が加速する可能性があることに加え、金融機関に対する規制や監督の枠組みがグローバルに変更されること等により競争環境に変化が生じる可能性があります。当社では、こうした競争環境の変化も踏まえ、2025年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画を策定の上、様々な戦略や施策を実行してまいりますが、当社グループが競争優位を確立できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 各種の規制及び法制度等の変更
当社グループが国内外において業務を行う際には、様々な法律、規則、政策、実務慣行、会計制度及び税制等の適用を受けております。当社グループではこれらの規制・法制度の動向を随時モニタリングし、適切な対応を行っておりますが、これらが変更された場合や新たな規制等が導入された場合に、当社グループの業務運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
イ.自己資本比率規制
当社グループ及び銀行子会社には、バーゼル銀行監督委員会が公表したバーゼルⅢに基づく自己資本比率規制(G-SIBsに選定された当社グループに対しての資本積増し(G-SIBsバッファー)に関する規制を含む)及びレバレッジ比率規制が適用されております。
当社グループ及び当社の連結子会社である株式会社三井住友銀行は海外営業拠点を有しておりますので、自己資本比率及びレバレッジ比率を金融庁告示に定められる国際統一基準以上に維持する必要があります。
加えて、当社の連結子会社のうち海外営業拠点を有していない株式会社SMBC信託銀行は、金融庁告示に定められる国内基準以上に自己資本比率を維持する必要があります。また、証券業を営むSMBC日興証券株式会社は、自己資本規制比率を、金融商品取引法等に定められている基準以上に維持する必要があります。
当社グループでは、2025年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画の中で、バーゼルⅢの見直しに係る最終規則文書に則った普通株式等Tier1比率(※)で10%程度を確保することを財務目標の一つとして掲げております。また当社の国内銀行子会社(株式会社三井住友銀行、株式会社SMBC信託銀行)及びSMBC日興証券株式会社においても、十分な資本水準の維持に努めております。
しかしながら、当社グループ、当社の国内銀行子会社(株式会社三井住友銀行、株式会社SMBC信託銀行)又はSMBC日興証券株式会社の自己資本比率等が上記の基準を下回った場合、金融庁から、自己資本の充実に向けた様々な実行命令を自己資本比率に応じて受けるほか、業務の縮小や新規取扱いの禁止等を含む様々な命令を受けることになります。また、海外銀行子会社については、現地において自己資本比率規制等が適用されており、現地当局から様々な規制及び命令を受けることになります。その場合、業務が制限されること等により、取引先に対して十分なサービスを提供することが困難となり、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(※) その他有価証券評価差額金を除く
ロ.TLAC規制
2015年11月、金融安定理事会(FSB)はG-SIBsに対して適用される新たな規制である総損失吸収力(TLAC)規制の枠組みを公表いたしました。2019年3月より、本邦における当該規制の適用が開始され、当社グループは、一定比率以上の総損失吸収力(TLAC)を維持することが求められております。
具体的には、当社グループを含むG-SIBsに対して一定比率以上の損失吸収力等を有すると認められる資本・負債(以下、「外部TLAC」という)を確保すること、また、確保した外部TLACはグループ内の主要な子会社に一定額以上を配賦すること(以下、「内部TLAC」という)となっております。
当社グループ内では、株式会社三井住友銀行、SMBC日興証券株式会社が主要な子会社として指定されています。
当社グループは、外部TLAC比率又は本邦における主要な子会社に係る内部TLAC額が要求される水準を下回った場合、金融庁から外部TLAC比率の向上や内部TLAC額の増加に係る改善策の報告を求められる可能性に加えて、業務改善命令を受ける可能性があります。当社グループは、要求されるTLACの確保のため、適格な調達手段の発行を進めておりますが、TLACとして適格な調達手段の発行及び借り換えができない場合には、外部TLAC比率及び内部TLAC額として要求される水準を満たせない可能性があります。
(2) 当社グループの業務に内包されるリスク
当社グループは、銀行業務を中心に、リース業務、証券業務、コンシューマーファイナンス業務等の各種金融サービスを行うグループ会社群によって構成されており、これらの会社で相互に協働して営業活動を行っておりますが、業務遂行にあたり以下のようなリスクを認識しております。
① 信用リスク
信用リスクとは、与信先の財務状況の悪化等のクレジットイベント(信用事由)に起因して、資産(オフバランス資産を含む)の価値が減少又は滅失し、損失を被るリスクであります。当社グループでは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (金融商品関係) 1 金融商品の状況に関する事項 (3) 金融商品に係るリスク管理体制 ① 信用リスクの管理」に記載のとおり、適切なリスク管理体制を構築しておりますが、取引先の業況の悪化やカントリーリスクの高まり等に伴い、幅広い業種で貸倒引当金及び貸倒償却等の与信関係費用や不良債権残高が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
イ.取引先の業況の悪化
当社グループの取引先の中には、当該企業の属する業界が抱える固有の事情等の影響を受けている企業がありますが、国内外の経済金融環境及び特定業種の抱える固有の事情の変化等により、当該業種に属する企業の財政状態が悪化する可能性があります。また、当社グループは、債権の回収を極大化するために、当社グループの貸出先に対する債権者としての法的権利を必ずしも行使せずに、状況に応じて債権放棄、デット・エクイティ・スワップ又は第三者割当増資の引受、追加貸出等の金融支援を行うことがあります。これら貸出先の信用状態が悪化する、又は企業再建が奏功しない場合には、当社グループの与信関係費用や不良債権残高が増加する可能性があります。
ロ.他の金融機関における状況の変化
世界的な市場の混乱等により、国内外の金融機関の経営状態が悪化し、資金調達及び支払能力等に問題が生じた場合には、当社グループが問題の生じた金融機関への支援を要請される可能性がありますが、当該金融機関の信用状態に改善が見られない場合には、当社グループの与信関係費用や不良債権残高が増加する可能性があります。また、他の金融機関による貸出先への融資の打ち切りや回収があった場合にも、当該貸出先の経営状態の悪化により、当社グループの与信関係費用や不良債権残高が増加する可能性があり、それらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 市場リスク
市場リスクとは、金利・為替・株式等の相場が変動することにより、金融商品の時価が変動し、損失を被るリスクであります。当社グループでは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (金融商品関係) 1 金融商品の状況に関する事項 (3) 金融商品に係るリスク管理体制 ② 市場リスク・流動性リスクの管理」に記載のとおり、適切なリスク管理体制を構築しておりますが、急激な相場の変動等により、保有する金融資産で多額の評価損・減損等が発生し、結果として当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
イ.金利変動リスク
当社グループは、国債等の市場性のある債券やデリバティブ等の金融商品を保有しております。これらは金利変動によりその価格が変動するため、主要国の金融政策の変更や、債券等の格付の低下、世界的な市場の混乱や金融経済環境の悪化等により金利が変動した場合、多額の売却損や評価損等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.為替変動リスク
当社グループは、保有する外貨建資産及び負債について、必要に応じて、為替リスクを回避する目的からヘッジ取引を行っておりますが、為替レートが急激に大きく変動した場合等には、多額の為替差損等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ハ.株価変動リスク
当社グループは、市場性のある株式等、大量の株式を保有しております。国内外の経済情勢や株式市場の需給関係の悪化、発行体の経営状態の悪化等により株価が低下する場合には、保有株式に減損又は評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、大幅な株価下落をもたらすストレス環境下においても十分に金融仲介機能を発揮できる財務基盤を確保する観点から、政策保有株式の削減計画を策定し、本計画に取り組んでおります。この株式削減に伴い、売却損失が発生する可能性があるほか、取引先が保有する当社株式が売却されることで、当社の株価に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 流動性リスク
流動性リスクとは、運用と調達の期間のミスマッチや予期せぬ資金の流出により、決済に必要な資金調達に支障をきたす、もしくは通常より著しく高い金利での調達を余儀なくされるリスクです。当社グループでは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (金融商品関係) 1 金融商品の状況に関する事項 (3) 金融商品に係るリスク管理体制 ② 市場リスク・流動性リスクの管理」に記載のとおり、適切なリスク管理体制を構築しておりますが、当社グループ各社の格付が低下した場合には、当社グループの国内外における資本及び資金調達の条件が悪化する、もしくは取引が制約される可能性があります。また、世界的な市場の混乱や金融経済環境の悪化等の外部要因によっても、当社グループの国内外における資本及び資金調達の条件が悪化する、もしくは取引が制約される可能性があります。このような事態が生じた場合、当社グループの資本及び資金調達費用が増加したり、外貨資金調達等に困難が生じたりする等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ オペレーショナルリスク
オペレーショナルリスクとは、内部プロセス・人・システムが不適切であること、もしくは機能しないこと、又は外生的事象が生起することから生じる損失にかかるリスクであり、具体的には、以下のとおりであります。
イ.事務リスク
当社グループは、事務に関する社内規程等の整備、事務処理のシステム化、本部による事務指導及び事務処理状況の点検等により適正な事務の遂行に努めておりますが、役職員等が事務に関する社内規程等に定められたとおりの事務処理を怠る、あるいは事故・不正等を起こした場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.情報システム・サイバー攻撃に関するリスク
当社グループが業務上使用している情報システムにおいては、安定的な稼働を維持するためのメンテナンス、バックアップシステムの確保等の障害発生の防止策を講じ、また、不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを策定し、システムダウンや誤作動等の障害が万一発生した場合であっても安全かつ速やかに業務を継続できるよう体制の整備に万全を期しております。しかしながら、これらの施策にもかかわらず、品質不良、人為的ミス、サイバー攻撃等外部からの不正アクセス、コンピューターウィルス、人工知能(AI)等の新技術の悪意ある利用、災害や停電、テロ等の要因によって、情報システムに、システムダウン、誤作動、不備、不正利用を含む障害が発生する可能性があります。
特に、近年のデジタル技術の著しい発展により、インターネットやスマートフォンを利用した取引が増加している一方、サイバー攻撃手法の高度化・巧妙化も急速に進展しており、金融機関をとりまくサイバーリスクはより一層深刻化しております。加えて、取引先や業務委託先等の第三者のシステムを経由したサイバーリスクにも直面しております。
以上の認識の下、当社グループは、経営主導でサイバー攻撃に対するセキュリティ対策の強化をより一層推進することを定めた「サイバーセキュリティ経営宣言」を策定しており、経営会議・取締役会での議論・検証の下、適切なリソースを配分するほか、サイバーセキュリティ専担組織を設置し、外部機関と連携した脅威情報の収集、24時間365日監視体制の構築、サイバー攻撃に対する多層防御やウイルス侵入も想定したセキュリティ対策の導入等、継続的なレベルアップ施策を講じてきておりますが、これらの方策も最新の攻撃に対しては万全でない可能性があります。
これらの要因により、当社の情報システムに障害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ハ.お客さまに関する情報の漏洩
当社グループは、情報管理に関する規程及び体制の整備や役職員に対する教育の徹底等により、お客さまに関する情報の管理には万全を期しております。また、業務委託先である外部業者が、お客さまに関する情報を取り扱う場合には、外部業者の情報管理体制やシステムセキュリティ管理体制を検証し、情報管理が適切になされていることを確認しております。しかしながら、内部又はサイバー攻撃等外部からのコンピューターへの不正アクセスや、役職員や外部業者等の人為的ミス、事故、不正等が原因で、お客さまに関する情報が外部に漏洩した場合、お客さまからの損害賠償請求やお客さま及び市場等からの信頼失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ニ.重要な訴訟等
当社グループは、国内外において、銀行業務を中心に、リース業務、証券業務、コンシューマーファイナンス業務等の各種金融サービスを行うグループ会社群によって構成されており、付加価値の高い金融サービスを幅広く提供しております。こうした業務遂行の過程で、損害賠償請求訴訟等を提起されたり、損害に対する補償が必要となる可能性があります。当社グループでは、訴訟が提起された場合等においては、弁護士の助言等に基づき、事態の調査を行い、適切な対応方針を策定の上、代理人を選任し、適切に訴訟手続を遂行しております。また、経営に重大な影響を与えると認められる訴訟等については、監査委員会、取締役会及びグループ経営会議に報告しております。しかしながら、これらの取組にも関わらず、訴訟等の結果によっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ コンダクトリスク
コンダクトリスクとは、法令や社会規範に反する行為等により、顧客保護・市場の健全性・公正な競争・公共の利益及び当社グループのステークホルダーに悪影響を及ぼすリスクを指します。当社グループは、経営上の重大なリスクを特定・評価し、コントロール策によるリスクの低減・制御を図っております。また、役職員に対する研修等を通じ、健全なリスクカルチャーの浸透・醸成に努めております。しかしながら、これらの取組にも関わらず、役職員等の不適切な行為が原因で、市場及び公共の利益等に悪影響を与えた場合、お客さま及び市場等からの信用失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクの内、法令等に違反するリスク、経済制裁対象国との取引に係るリスクについては以下のとおりであります。
イ.法令等に違反するリスク
当社グループは業務を行うにあたり、会社法、銀行法、独占禁止法、金融商品取引法、貸金業法、外為法、犯罪収益移転防止法及び金融商品取引所が定める関係規則等の各種法規制の適用を受けております。また、海外においては、それぞれの国や地域の規制・法制度の適用、及び金融当局の監督を受けております。加えて、各国当局は、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与防止に関連し、FATF等の国際機関の要請に基づいた各種施策を強化しており、当社グループは、国内外で業務を行うにあたり、これらの各国規制当局による各種規制の適用を受けております。更に、当社は、米国証券取引所上場会社として、米国サーベンス・オクスリー法や米国証券法、米国海外腐敗行為防止法等の各種法制の適用を受けております。
当社グループは、法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンス体制及び内部管理体制の強化を経営上の最重要課題のひとつとして位置付け、グループ各社の役職員等に対して適切な指示、指導及びモニタリングを行う体制を整備するとともに、不正行為の防止・発見のために予防策を講じております。しかしながら、当社グループにおいて、法令その他諸規則等を遵守できなかった場合、法的な検討が不十分であった場合又は予防策が効果を発揮せず役職員等による不正行為が行われた場合には、不測の損失が発生したり、行政処分や罰則を受けたり、業務に制限を付されたりするおそれがあり、また、お客さまからの損害賠償請求やお客さま及び市場等からの信頼失墜等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ロ.経済制裁対象国との取引に係るリスク
本邦を含む各国当局は、経済制裁対象国や特定の団体・個人等との取引を制限しております。例えば、米国関連法規制の下では、米国政府が経済制裁対象国と指定している国等と米国人(米国内の企業を含む)が事業を行うことを、一般的に禁止又は制限しております。また、米国政府は、イラン制裁関連法制等により、米国以外の法人、個人に対しても、イランの指定団体や指定金融機関との取引等を規制しております。当社グループは、本邦・米国を含む各国の法規制を遵守する体制を整備しておりますが、既に米国財務省外国資産管理室(OFAC)に自主開示している取引を含めて、当社グループが行った事業が法規制に抵触した場合には、関連当局より過料等の処分を受ける可能性や厳しい行政処分等を受ける可能性があります。なお、取引規模は限定的でありますが、当社の銀行子会社の米国以外の拠点において、米国法令等を含む各国関連法規の遵守を前提として、経済制裁対象国と銀行間取引を行う場合があり、経済制裁対象国との取引が存在すること等により当社グループの風評が悪化し、お客さまや投資者の獲得あるいは維持に支障を来す可能性があります。それらにより、当社グループの株価、業務、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 決済リスク
当社グループは、国内外の多くの金融機関と多様な取引を行っております。大規模なシステム障害や災害が発生した場合、政治的な混乱等により取引相手である金融機関の決済が行われないような事態等が発生した場合、又は金融システム不安が発生した場合に、金融市場における流動性が低下する等、決済が困難になるリスクがあります。また、非金融機関の取引先との一定の決済業務においても取引先の財政状態の悪化等により決済が困難になるリスクがあります。
当社グループでは、勘定系システム等の重要なシステムについては、バックアップサーバーを東日本・西日本に分散して設置するとともに、定期的な訓練を実施する等、システム障害や災害発生時に迅速に対応できる体制の構築に努めているほか、日中の流動性について、定期的なモニタリングやストレステストの実施等、当社グループの決済が滞らないよう管理する体制を構築しております。
しかしながら、想定を上回る事態が発生した場合には、決済が困難になることで、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ レピュテーショナルリスク
当社グループでは、レピュテーショナルリスクが顕在化するおそれがある事態に関する情報を適切に収集すると共に、このような事態に対して適切な措置を講ずることにより、リスクの制御及び削減に努めております。しかしながら、これらの取組にも関わらず、当社グループの事業や従業員その他関係者の行為により、お客さまや株主をはじめとするステークホルダーからの高い期待に応えられず、当社グループの企業価値の毀損や信頼低下に繋がる可能性があります。
⑧ モデルリスク
モデルリスクとは、モデル(※)の開発若しくは実装での作業ミス、または、モデルの前提や限界を超えた利用等により、経営判断・業務判断等を誤り、損失・不利益を被るリスクを指します。当社グループでは、リスク管理や時価評価等にモデルを活用しており、モデルの開発・使用等の各プロセスに応じた適切な管理を実施することで、モデルリスクの低減を図っておりますが、モデル開発時の想定を超えた金融経済環境、事業環境の変化に直面したり、役職員による不適切なモデル利用がなされた場合等は、モデルのアウトプットの不確実性が高まり、経営判断・業務判断を誤る可能性があります。
(※) 理論・仮定を用いて、入力データを処理し、推定値・予測値・スコア・分類等を出力する定量的手法
⑨ 環境社会リスク
環境社会リスクとは、気候関連、自然関連、人権等の、環境・社会要因がリスクドライバーとなり、様々な経路を通じて各リスクカテゴリーに波及することにより、最終的に当社グループが損失を被るリスクを指します。具体的なリスク認識については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 戦略」、リスク管理体制については「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) リスク管理」に記載しております。
⑩ 戦略リスク
イ.当社グループのビジネス戦略に関するリスク
当社グループは、銀行業務を中心に、リース業務、証券業務、コンシューマーファイナンス業務等の各種金融サービスを行うグループ会社群によって構成されており、中長期ビジョン、「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」のもと、2023年5月に公表した、2023年度から2025年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画においても、引き続きこのビジョンの実現に向けた様々なビジネス戦略を実施してまいります。これらのビジネス戦略は、「(3) トップリスク」に記載の、経営上特に重要なリスク事象も踏まえ策定しておりますが、想定外の金融経済環境、事業環境の変化等により、必ずしも奏功するとは限らず、当初想定した成果をもたらさない可能性があります。
ロ.当社の出資、戦略的提携等に係るリスク
当社グループはこれまで、銀行業務、リース業務、証券業務、コンシューマーファイナンス業務等における様々な戦略的提携、提携を視野に入れた出資、買収等を国内外で行ってきており、今後も同様の戦略的提携等を行っていく可能性があります。当社グループでは、これらの戦略的提携等を行うにあたっては、そのリスクや妥当性を十分に検討しておりますが、①法制度の変更、②金融経済環境の変化や競争の激化、③提携先や出資・買収先の業務遂行に支障をきたす事態が生じた場合等には、期待されるサービス提供や十分な収益を確保できない可能性があります。また、当社グループの提携先又は当社グループのいずれかが、戦略を変更し、相手方との提携により想定した成果が得られないと判断し、あるいは財務上・業務上の困難に直面すること等によって、提携関係が解消される場合には、当社グループの収益力が低下したり、提携に際して取得した株式や提携により生じたのれん等の無形固定資産、提携先に対する貸出金の価値が毀損したりする可能性があります。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
ハ.戦略遂行に必要な有能な人材の確保
当社グループは幅広い分野で高い専門性を必要とする業務を行っておりますので、各分野において有能で熟練した人材が必要とされます。当社グループでは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 戦略 ③人的資本経営の実践」に記載のとおり、役職員の積極的な採用及び役職員の継続的な研修等により、多様な人材の確保・育成を行っておりますが、有能な人材を継続的に採用し定着を図ることができなかった場合には、戦略・主要分野での人材確保が困難となり、策定したビジネス戦略が想定通りに実施できない可能性があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 財務報告に係る内部統制に関するリスク
当社は、金融商品取引法に基づいて、財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、その結果を記載した内部統制報告書の提出を義務付けられております。また、当社は、米国証券取引所上場会社として、米国サーベンス・オクスリー法に基づいて、財務報告に係る内部統制等の評価も義務付けられております。
当社は、会計処理の適正性及び財務報告の信頼性を確保するため、財務報告に係る内部統制評価規程等を制定し、財務報告に係る内部統制について必要な体制を整備しております。しかしながら、財務報告に係る内部統制が有効でない場合には、当社の財務報告に対するお客さま及び投資者等からの信頼を損ない、その結果、当社の株価が悪影響を受ける可能性があります。
⑫ リスク管理方針及び手続の有効性に関するリスク
当社グループは、リスク管理方針及び手続を整備し運用しておりますが、新しい分野への急速な業務の進出や拡大に伴い、リスク管理方針及び手続が有効に機能しない可能性があります。また、当社グループのリスク管理方針及び手続の一部は、過去の経験に基づいた部分があることから、将来発生する多様なリスクを必ずしも正確に予測することができず、有効に機能しない可能性があります。その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) トップリスク
当社グループでは、「(1) 経営環境に関するリスク」及び「(2) 当社グループの業務に内包されるリスク」で記載されている各リスクに関して、当社グループにとって、経営上特に重要なリスク事象を「トップリスク」として選定しております。「トップリスク」は、リスク委員会やグループ経営会議等での活発な議論を踏まえて選定しており、リスクアペタイト・フレームワークの設定や業務戦略の策定などの際に活用しております。
有価証券報告書提出日時点で、当社グループが、特に重要なリスク事象として認識している「トップリスク」は次のとおりであります。
(注) 上記は認識しているリスクの一部であり、上記以外のリスクによっても経営上、特に重大な悪影響が生ずる可能性があることにご留意ください。