第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

<社是>

・私たちは時流に先んじ、合理主義に基づき優れた製品をもって顧客の信頼に応える - 信頼の大豊 –

<使命>

・大豊グループはトライボロジーを基盤とした製品とエンジニアリングをもって社会に貢献する

<VISION2025>

・地球環境とミライの社会に貢献

-トライボロジーをコアに、保有技術の深化とイノベーションをもってOnly one製品でグローバルNo.1を目指す

<2030年に向けて>

- 目指す姿 -

・常に会社のニーズを把握して、技術(材料・工法)を極めて、新たな商品を生み出す集団

- 持続的成長に向けて -

・既存事業の強化 ~ お客様の信頼を得ることを前提として、稼ぐ力を最大化する ~

- 企業価値最大化 -

・新領域・新事業創出 ~ シーズと原理原則に基づき、大豊でしかできない新たな商品を生み出す ~

- 基盤:大事にする価値観 -

・「人」を大事にする会社であり続ける事

 

(2)優先的に対処すべき事業上の課題

- 持続的成長に向けて -

・既存事業のパワートレイン部品は、将来の成長投資の源泉として収益性を高めるべく、高付加価値製品の拡販活動継続と共に、工場単位の生産品目の集約、多量品/少量品の造り方を変える等、稼ぐ力を最大化する活動を推進してまいります。

- 企業価値最大化 -

・これまで培ったグループシーズを結集し、社会課題解決への貢献と電動化への貢献に向けた新領域/新事業の創出を推進してまいります。また事業化に向けた取り組みを確かなものにするため、お客様のニーズを先取りし、大豊グループならではのモノづくりを提案できるよう体制の構築及びリソーセスの最適配分に向けた取り組みを推進してまいります。

- 基盤:大事にする価値観 -

・事業戦略を推進させるのは「人」であり、会社の最も大切な資本という考え方の下、積極的な人への投資、若手主体のプロジェクト推進、働きやすい環境づくりやエンゲージメント向上を図ってまいります。ガバナンス強化については、コンプライアンスの徹底、リスクマネジメントの強化を通じ、全てのステークホルダーから信頼される企業を目指し、取り組みを推進してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、事業の成長性と収益性を重視する観点から、売上高および営業利益を経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として位置付けております。当連結会計年度における連結売上高は112,044百万円となり、2024年2月1日に開示しております連結売上高目標112,000百万円に比べ、44百万円(0.0%増)の増収となりました。連結営業利益は2,489百万円となり、連結営業利益目標2,200百万円に比べ、289百万円(13.1%増)の増益となりました。引き続き当該指標の改善に邁進していく所存です。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 サステナビリティの基本的な考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティの基本的な考え方

 当社におけるサステナビリティの基本的な考えは「トライボロジーを基盤とした製品とエンジニアリングをもって社会に貢献する」ことです。これは、従来から定めていた「使命」そのものです。社会動向の変化に応じて経営戦略は時代とともに変化していきますが、企業としての成長や存続そのものが社会に貢献してきたことを今後も続けていくことが、サステナビリティであると考えています。

 

(2)ガバナンス

 2022年2月から、気候関連問題を含む持続可能な社会への貢献に向けた活動を目的として「サステナビリティ委員会」を設置しました。当委員会では社会・環境問題をはじめとする解決すべき重要な課題(マテリアリティ)を特定し、事業を通じた当該課題への取り組みを取締役会に報告しています。原則1回/年以上開催し、構成メンバーは取締役5名(うち社外取締役2名)となっています。

 

(図)ガバナンス体制図

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(図)マテリアリティと主な取り組み

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(3)戦略

 解決すべき重要な課題(マテリアリティ)のうち、将来的な気候変動問題による影響を移行リスク(2℃以下)、物理的リスク(4℃)に分けて分類し、リスクと機会の抽出を行いました。

 また、抽出したリスクと機会についてそれぞれ当社グループへの財務影響の大きさを予測し掲載しています。今後は事業への影響について精度を高めるとともに、それぞれのリスクと機会に対する取り組みを進めてまいります。人的資本の戦略については、(5)指標及び目標に記載をしたとおりであります。

 

(図)シナリオ分析

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(4)リスク管理

 気候関連問題によるリスクを含め重要課題(マテリアリティ)を特定し、対応策の検討を行っています。特定方法としては抽出した事象について評価・分析を行い、経営陣による評価のもと、当社のマテリアリティとしています。

 また、特定において、取り組むべきマテリアリティを「社会にとっての重要度」と「大豊にとっての重要度」の2つの観点からプライオリティを決定しています。

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 特定したマテリアリティの例として、地球環境に貢献する製品の開発や脱炭素社会の実現、環境負荷物質の低減による循環型社会への貢献を定めています。

 主な取り組みとして、新製品開発やCO2を始めとした環境負荷物質の低減等を行っています。

 また、物理的リスクに関するものとしては災害対策本部主導のもと、サプライチェーンマネジメントの強靭化を含むBCM体制の強化を推進しています。

 

(5)指標及び目標

 気候関連リスクに対して大きくCO2、廃棄物、水資源などの目標値を定めています。CO2の削減シナリオで、2035年のカーボンニュートラル達成に向けた取り組みを推進しています。2025年に25%削減、2030年に30%削減(2013年比)の削減を目指し、日常改善の実施や工程刷新、エネルギー転換を実施しています。

 

(図)CO2削減シナリオ

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 また、当社グループにおける人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針についての内容、目標及び実績は次のとおりです。

 

人材の育成

方針

・会社の経営理念に基づき、会社の発展と従業員の自己成長のため、

 創造性と実践力を持った人財の育成を図る。

目標

・中堅・若手社員に積極的に活躍の機会を与え、前向きに取り組んだ姿勢を評価し、

 次なる挑戦に挑む意欲を生み出すことで会社の活力につなげる。

実績

・若手社員を対象に、期間を限定した海外勤務を経験できる機会を与え、海外拠点での仕事、異文化での生活を通じ、国内勤務では得られないような経験を積むことで急成長することを期待し「海外トレーニー制度」を立ち上げました。初年度は自ら制度適用に手を挙げた若手社員を厳選し派遣しています。

・「スキルアップ制度」は、経験による暗黙知(カン・コツ)に頼らず、具体的な技術、技能、原理原則を形式知化して伝承する制度であり、教え・教えられる風土を醸成し、先輩が後輩にまた次の世代へと技能が引き継がれている「人づくり」の大きな役割を担っています。今年度は「その道のプロを目指す」最終段階のA級教育の受講要件を見直し、今まで以上に技能のプロとしての人財を計画的に育てる仕組みへと変更しました。

 

社内環境整備

方針

・従業員一人ひとりが「仕事と家庭の両立」「夢や目標を持って仕事に取り組む」等、

 自分らしく輝き、仕事で成果を出せる働きやすい職場づくりを推進する。

 また各自のキャリア(ライフ)プランを主体的に描いた上で、自己研鑽しながらいきいきと

 活躍してもらうための仕組み、制度を充実させる。

目標

・従業員が笑顔でいきいきと働き続けられる会社であるため、従業員の健康維持増進に向けて健康経営に取り組む。

・従業員一人ひとりがワークライフバランスを考えて自分の働き方を選択できる制度を

 整える。

実績

・体の健康づくりでは、若年層従業員へは正しい生活習慣の知識を理解してもらうための

 心身の健康教育、ミドル層従業員へは加齢による筋肉等の機能低下の予防に関する知識を

 理解してもらうための心身の健康教育(体力づくり)を実施しております。

・こころの健康づくりでは、メンタルヘルスに関する早期の発見・介入・治療への対応のため、若年層従業員へのメンタルセルフケア教育、職制へのメンタルラインケア(傾聴)教育、公認心理師による心の相談会等を実施しております。

・2023年健康経営優良法人を取得いたしました。従業員がさらに働きやすい環境と制度を

 整備し、心身の健康維持増進に取り組んでいます。

・「出生時育児休業(産後パパ育休)」の制度を新設した。ワークライフバランスのとれた働き方ができる職場環境の実現につなげるため、育児休業取得率のさらなる向上を目指して、育休取得のメリットや職場での声かけ方法などの社内報等を活用し、周知活動を行っています。

・仕事と子育ての両立を支援し、従業員が安心して仕事に集中できる環境を整える事で、優秀人財の確保につなげる為に企業内託児所「T-Kids」を開園しており、開園以降、グループ会社含め、多くの従業員に活用されています。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

1.特定の得意先への販売依存度

 当社グループは、自動車部品および自動車製造用設備の製造・販売を主な事業としており、国内外の主要な自動車メーカーおよび自動車部品メーカーにOEM製品を中心に販売しております。これらの得意先の中で、トヨタ自動車(株)への販売依存度が最も高く、当期におきましては総販売額に占める割合は28.7%となっています。

 従いまして、顧客企業の販売動向、調達方針の変更、予期しない契約の打ち切り等により、経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、欧米や中国等の海外の自動車メーカーへの拡販活動により、特定の得意先への販売依存によるリスクを低減してまいります。

2.為替レートの変動

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売が含まれています。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されています。従いまして、換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。

 一般に、他の通貨に対する円高(特に当社グループの売上の重要部分を占める米ドルに対する円高)は、当社グループに悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。

 また、当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、製品の価格競争力を低下させ、経営成績および財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、米ドルに対して円が1円変動した場合、為替レート変動が経常利益に与える影響は年間約30百万円と試算しております。

 当社グループでは、スムーズな現地生産化の促進や、資材の現地調達拡大等を図るとともに、各国での生産コスト低減による収益安定化を推進しておりますが、当社グループの経営成績は為替相場変動により重要な影響を受ける可能性があります。

3.資材価格の変動

 当社グループは、製品の製造に使用する原材料や部品を複数の供給元から調達しております。供給元とは取引基本契約を締結し、安定的な取引を前提としておりますが、市況の変化による価格の高騰や品不足の結果、当社グループの製造原価の上昇を招き、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

4.退職給付に係る負債

 当社グループの従業員退職給付費用および債務は、割引率などの数理計算上の前提条件や年金資産の長期期待収益率に基づいて算出されております。従いまして、割引率の低下や年金資産の減少など実際の結果が前提条件と異なる場合は、将来の期間に認識される費用および計上される債務に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、年金資産の運用にあたり、より安定性の高い資産での運用を継続することにより、リスクを低減してまいります。

5.製品の欠陥に関するリスク

 当社グループは製品の品質の確保・向上に努めておりますが、大規模なリコール等につながる製品の欠陥が発生した場合には、当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1)業績

 当連結会計年度における世界経済は、経済活動の正常化が着実に進む一方、地政学リスクの増大や世界的な金融引き締めによる経済活動の減速懸念など、引き続き予断を許さない状況が続きました。

 自動車業界におきましては、半導体不足などの供給制約が緩和され、自動車生産が持ち直すなど景況感は改善してきているものの、原材料・エネルギー価格の高止まりや労務費の上昇等によるコストの押上げ、為替の急激な変動、自動車生産台数の見通しなど、依然として不透明な一面を残しております。

 

 このような状況の中、当連結会計年度の業績は、連結売上高は、前年度より6,882百万円の増収となる112,044百万円となり、連結営業利益は、1,795百万円増益の、2,489百万円となりました。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,682百万円増加し、119,457百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ181百万円増加し、46,870百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ5,501百万円増加し、72,587百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、連結売上高は112,044百万円となり、前連結会計年度に比べ、6,882百万円(前年度比6.5%増)の増収となりました。利益面では、連結営業利益は2,489百万円(前年度比258.7%増)、連結経常利益は3,236百万円(前年度比167.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,747百万円(前年度比337.4%増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、20,046百万円となり前連結会計年度末より3,966百万円増加(前年度比24.7%増)いたしました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、10,739百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,869百万円増加(前年度比83.0%増)いたしました。営業活動によるキャッシュ・フローの増加要因は、税金等調整前当期純利益の増加2,169百万円、棚卸資産の増減額の減少1,982百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、6,220百万円となり、前連結会計年度末に比べ377百万円増加(前年度比6.5%増)いたしました。投資活動によるキャッシュ・フローの支出増加要因は、主に有形固定資産の取得による支出の増加446百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、1,008百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,017百万円減少(前年度比74.9%減)いたしました。財務活動によるキャッシュ・フローの支出減少要因は、主に長期借入れによる収入の増加12,043百万円、長期借入金の返済による支出の増加9,163百万円によるものであります。

 

 

(3)生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

自動車部品関連事業

100,652

10.6

自動車製造用設備関連事業

11,018

△17.2

合計

111,670

7.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額算出基礎は、販売価格で計算しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 なお、自動車製造用設備関連事業を除く製品については見込生産を行っております。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

自動車製造用設備関連事業

10,320

△4.3

4,347

△14.0

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

自動車部品関連事業

軸受製品

45,466

5.7

システム製品

20,576

19.3

ダイカスト製品

12,303

21.6

ガスケット製品

17,456

5.3

その他

5,041

6.2

100,843

10.0

自動車製造用設備関連事業

11,027

△17.1

その他

172

△1.6

合計

112,044

6.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車(株)

30,605

29.1

32,194

28.7

 

(4)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

a.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積りの不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、(重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

① 固定資産の減損会計
 当社グループは、固定資産の減損会計を適用しております。減損会計は資産のグルーピング、割引前将来キャッシュ・フローの総額、回収可能価額を当社グループに固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて算出しておりますが、その仮定及び予測に変動が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

② 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産について、その回収可能性を考慮して、評価性引当額を計上しております。評価性引当額を計上する際には、将来の課税所得を合理的に見積っております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するので、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

③ 製品保証引当金

 北米の当社連結子会社において生産した製品の一部に不具合が発生する恐れがあることから得意先より市場回収処置(リコール)の届出が米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)に行われたことに伴い、対象台数等の現時点で入手可能な情報に基づき、保証費用の発生見込み額として製品保証引当金を計上しております。

 これらの計算には不確実性が含まれているため、予測不能な前提条件の変化等により、実際の保証費用が異なり、結果として製品保証引当金の追加計上又は戻入が必要となる可能性があります。

 

b.財政状態の分析

① 流動資産

 当連結会計年度末における流動資産の残高は62,536百万円であり、前連結会計年度末に比べ3,709百万円増加しております。現金及び預金の4,151百万円の増加、電子記録債権の455百万円の増加、契約資産の382百万円の減少、原材料及び貯蔵品の275百万円の減少が主な要因であります。

② 固定資産

 当連結会計年度末における固定資産の残高は56,920百万円であり、前連結会計年度末に比べ1,973百万円増加しております。投資有価証券の2,864百万円の増加、繰延税金資産の970百万円の減少が主な要因であります。

③ 流動負債

 当連結会計年度末における流動負債の残高は27,642百万円であり、前連結会計年度末に比べ8,027百万円減少しております。1年内返済予定の長期借入金の8,267百万円の減少が主な要因であります。

④ 固定負債

 当連結会計年度末における固定負債の残高は19,228百万円であり、前連結会計年度末に比べ8,208百万円増加しております。長期借入金の8,266百万円の増加が主な要因であります。

⑤ 純資産

 当連結会計年度末における純資産の残高は72,587百万円であり、前連結会計年度末に比べ5,501百万円増加しております。利益剰余金の1,163百万円の増加、その他有価証券評価差額金の1,928百万円の増加、為替換算調整勘定の1,525百万円の増加が主な要因であります。

 

c.キャッシュ・フローの分析

 「業績等の概要」の「(2)キャッシュ・フローの状況」で述べておりますように当社グループの資金状況は、当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、20,046百万円となり、前連結会計年度末より3,966百万円増加いたしました。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果得られた資金は、10,739百万円となり、前連結会計年度に比べ4,869百万円増加(前年度比83.0%増)いたしました。これは主に、税金等調整前当期純利益の増加2,169百万円、棚卸資産の増減額の減少1,982百万円によるものです。

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果使用した資金は、6,220百万円となり、前連結会計年度に比べ377百万円増加(前年度比6.5%増)いたしました。これは主に、有形固定資産の取得による支出の増加446百万円によるものです。

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果使用した資金は、1,008百万円となり、前連結会計年度に比べ3,017百万円減少(前年度比74.9%減)いたしました。長期借入れによる収入の増加12,043百万円、長期借入金の返済による支出の増加9,163百万円によるものです。

 

d.経営成績の分析

① 売上高

 当連結会計年度における売上高は、112,044百万円となり、前連結会計年度に比べ6,882百万円増加(前年度比6.5%増)いたしました。これは主として、自動車部品関連事業の売上が増加したことによるものです。

② 営業利益

 当連結会計年度における営業利益は、2,489百万円となり、前連結会計年度に比べ1,795百万円増加(前年度比258.7%増)いたしました。

③ 営業外損益

 当連結会計年度における営業外収益は、1,087百万円となり前連結会計年度に比べ92百万円増加(前年度比9.3%増)いたしました。これは主として、為替差益の増加によるものです。また、営業外費用は、341百万円となり136百万円減少(前年度比28.6%減)いたしました。これは主として、貸倒引当金繰入額の減少によるものです。

④ 経常利益

 当連結会計年度における経常利益は、3,236百万円となり、前述の要因により、前連結会計年度に比べ2,024百万円増加(前年度比167.2%増)いたしました。

⑤ 特別損益

 当連結会計年度における特別利益は、93百万円となり、前連結会計年度に比べ12百万円増加(前年度比15.0%増)いたしました。これは主として、新株予約権戻入益の増加によるものです。また、特別損失は、98百万円となり、132百万円減少(前年度比57.2%減)いたしました。これは主として、製品保証引当金繰入額の減少によるものです。

⑥ 税金等調整前当期純利益

 当連結会計年度における税金等調整前当期純利益は、3,230百万円となり、前述の要因により、前連結会計年度に比べ2,169百万円増加(前年度比204.3%増)いたしました。

⑦ 法人税等

 当連結会計年度における法人税等は、1,331百万円となりました。

⑧ 非支配株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度における非支配株主に帰属する当期純利益は、連結子会社における利益の減少などにより、前連結会計年度に比べ、6百万円減少(前年度比4.2%減)して、151百万円となりました。

⑨ 親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、1,747百万円となり、前連結会計年度に比べ1,348百万円増加(前年度比337.4%増)しました。1株当たり当期純利益は前連結会計年度の13.86円に対し60.56円となりました。

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

 

(自動車部品事業)

① 軸受製品では、半導体不足影響による生産減からの回復に伴い、日本、中国、北米での生産増により、連結売上高は45,466百万円(前年度比2,458百万円増、5.7%増)となりました。

② システム製品では、バキュームポンプ製品、樹脂歯車製品を中心とした製品の生産増により、連結売上高は20,576百万円(前年度比3,335百万円増、19.3%増)となりました。

③ ダイカスト製品では、電動化対応製品の新規立ち上げ・増産等により連結売上高は12,303百万円(前年度比2,184百万円増、21.6%増)となりました。

④ ガスケット製品では、市場の回復に伴い日本、アジア、北米での生産増により連結売上高は17,456百万円(前年度比878百万円増、5.3%増)となりました。

⑤ その他製品では、連結売上高5,041百万円(前年度比295百万円増、6.2%増)となりました。

 

(自動車製造用設備事業)

 自動車製造用設備事業では、試作及び設備事業が減少し、連結売上高は11,027百万円(前年度比2,266百万円減、17.1%減)となりました。

 

e.資本の財源及び資金の流動性

① 資金需要

 当社グループの資金需要の主なものは、製品製造のための材料、部品の購入及び設備投資によるものであります。また、長期借入金返済のための資金需要も大きくなっております。

② 財務政策

 当社グループは、設備投資は継続して実施するものの、財務の健全性を保つために、投資金額の抑制を図り資金負担を軽減するとともに、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出すことによって、将来必要な運転資金及び設備資金を調達することを考えております。

 

f.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、市場動向等があります。

 自動車産業は、100年に1度ともいわれる大変革期を迎えており、今後更なるグローバル競争が熾烈になると予想されます。このような厳しい環境ではありますが、すべり軸受を中心とした既存ビジネスを強化・拡大しながら一層の収益向上を推進し、新たなる分野におけるビジネス展開へつなげ、「地球環境とお客様への貢献」をテーマに、「グローバル供給を支える製造・生産技術」、「製品技術・生産技術の革新」、「人財力の強化」など競争力強化に向けた取り組みを継続・加速して新たなる飛躍を実現したいと考えております。

 

g.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高および営業利益を重要な経営指標として位置付けております。

 当社グループは、連結業績予想を2023年4月26日に開示いたしましたが、中国の景気減速等に伴うアジア地域での販売低迷による影響等により2024年2月1日に修正しております。

 当連結会計年度における連結売上高は112,044百万円となり、2024年2月1日に開示しております連結売上高目標112,000百万円に比べ、44百万円(0.0%増)の増収となりました。連結営業利益は2,489百万円となり、連結営業利益目標2,200百万円に比べ、289百万円(13.1%増)の増益となりました。引き続き当該指標の改善に邁進していく所存です。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、トライボロジー(摩擦/摩耗/潤滑技術)をコア技術として、自動車メーカーのニーズはもとより、環境、社会の動向を捉え、解決すべき課題を明確にしながら、自動車用各種すべり軸受や各種機能部品の研究開発を行っており、“動きを支える”機能部品の創造に努めております。

 当連結会計年度の研究開発活動は、守りと攻めの両軸で既存製品拡大と新領域へのチャレンジを進め、次世代軸受に向けた新技術・新材料の研究とその応用製品開発、ならびに高付加価値のシステム製品の開発を重点に実施いたしました。

 また、HV、PHV、BEV、FCV等電動車両の今後の増加に向け、当社グループの保有技術を活かし、電池、電力変換、モータ、燃料電池分野の新製品開発に着手しております。一部製品につきましては、ホームページ掲載、展示会出展、客先提案等を既に開始しております。

 HV、BEVについては、当社のクラッド生産技術の活用をキーワードとして、電池用端子の開発を行っており、既に多くの問い合わせを頂いております。現在はさらなる高性能と低コストを目指した開発に加え、電力変換部品として当社のダイカスト生産技術が活用できるパワーモジュール用の精密フィンを有するヒートシンクの開発にも着手しております。

 FCVに関しては、発電部のセパレータ・バイポーラプレートの開発~生産まで行うべく取り組んで参りましたが、開発力をさらに強化するために発電評価装置を導入し、設計提案・受託評価を実施できる体制も整え、受託評価につきましては既にお引き合いを頂いております。

 それに加え、今までの当社の軸受を支えてきた基盤技術(材料技術、CAE)に関しても、新製品開発に向け体制を整えました。新材料開発については多くの大学と共同開発を推進しており、最先端の技術を取り入れております。

 

 セグメントの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

自動車部品関連事業

1)軸受製品

 高性能エンジンや中国の環境規制に対応したエンジン用軸受、ブシュ、コンプレッサー用特殊軸受、各種軸受などを継続し開発してきました。特に、低燃費化のための摩擦低減を実現すべく様々な取組みを実施しております。2022年には海外メーカーでの採用が拡大しています。

 ①ディーゼルエンジンの高筒圧化に対応するため、世界で初めてオーバーレイにBi-Sb合金を用いたエンジン用軸受は、従来課題となっていた耐疲労性と耐酸性を飛躍的に向上させました。この製品は2022年の自動車技術会にて技術開発賞を受賞しております。また、厚膜の樹脂コーティングも新たに量産化し、海外拠点(中国)で生産しております。中国市場において更に競争力を強化することが出来ました。

 ②車両用電動コンプレッサーでは、転がり軸受をすべり化することで、長寿命、低振動・低騒音に貢献出来る事から、海外メーカーへの供給を開始しました。

 開発期間短縮・コスト削減の対応として、製品開発へMBD(モデルベース開発)の適用を進めています。軸受だけでなく、その周囲についてもより良くするための提案をしており、システムの開発初期から参画させて頂くことも増えて参りました。

 また、完全子会社化した中国で最大のアルミ軸受素材メーカー「常州恒業軸瓦材料有限公司」では、アルミ鋳造ラインを導入し、素材から加工までの完全一貫生産体制を構築しています。

 これらの技術および生産の取り組みが認められ、国内外の自動車メーカーへの納入も拡大し、グローバル展開を積極的に推進しております。

 

2)ダイカスト製品

 ダイカスト製品では、デジタルエンジニアリングを基軸とした製品設計、CAE解析(流動解析、凝固解析など)を用いた最適金型方案設計、生産技術、製造の一気通貫でモノづくりを推進し、短納期で高品質、低コストな製品を提供し顧客ニーズに応えております。

 また、自動車の電動化に伴い、HV、BEV製品に取組み、2020年からPCUインバーターケース、コンバーターケースの量産を開始しました。今後も電動化製品の拡販、生産拡大を推進しております。

 

3)ガスケット製品

 エンジン用メタルヘッドガスケットについては、連結子会社の日本ガスケット(株)によるノウハウ、CAE解析を活かした開発により、顧客と綿密な連携のもと、高機能化、低コスト化、短期間開発を推進しております。国内自動車メーカー様へ納入している新型エンジン用のヘッドガスケットは、新試験法による開発期間の短縮への貢献が認められ、国内自動車メーカー様より2021年度プロジェクト活動賞を受賞しました。

 

4)システム製品他

 市場実績のある商用車向けの電子制御式EGRバルブをベースとし、多段ターボチャージャ用切換えバルブ、2020年には排気後処理装置の温度制御に用いる排気スロットルバルブを量産化しました。これらの技術を深化させ、高温の排ガス制御用バルブの市場拡大を行っています。

 バキュームポンプは、高信頼性に加え、低コスト設計と部品共通化による良品廉価なシステムとして採用され、現在は国内2拠点、海外2拠点(タイ、北米)でグローバルに対応しております。

 ホイール用のバランスウェイトは、グローバルシェア約11%(世界3位)の生産量を誇ります。2022年から、車体の振動低減にも採用されるようになりました。

 エンジン用バランスシャフトギヤについては、2012年に樹脂化し、量産実績が10年以上となりました。現在は、抄造製法の強みである長繊維でも高い分散性と安定した配向性を活かした製品開発に発展させております。2022年6月には国産物流ドローン用メーカーへの抄造CFRP製品を納入開始しました。リサイクル炭素繊維を用いた環境面での評価も高く、今後は自動車以外の分野におけるご要望にも対応して参ります。

 

自動車製造用設備関連事業

 当社連結子会社の大豊精機(株)において、自動車製造用設備についての試験研究および開発を進めております。

 画像検査を用いた人の眼からAI画像検査移行への取り組みや工程の無人化、協働ロボットの導入、従来の素材より高性能な素材の使用、鍛造工法の研究・開発に取り組んでおります。

 

 当社グループの研究開発費の総額は、3,729百万円であり、自動車部品関連事業の研究開発費の金額は3,558百万円、自動車製造用設備関連事業の研究開発費の金額は170百万円となっております。