第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 以下の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等には将来に関する記述が含まれています。こうした記述は現時点で当社が入手している情報を踏まえた仮定に基づくものであり、3「事業等のリスク」などに記載された事項等によって、当社グループの実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況がこうした将来の記述と異なる可能性があります。

 

(1) 会社の経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等

当社グループは2021年度に、2030年度に向けた「中期経営方針」を策定いたしましたが、発表直後しばらくの間はコロナ禍に加えて半導体不足の影響等もあり生産が回復せず、現業の立て直しに注力せざるを得なかったことから新事業の創出に充分なリソースを割くことが出来ませんでした。3年間の現業立て直しの結果、2023年度にようやく過去最高益を計上することが出来、新事業の創出に向けた前向きな投資を実施できる環境が整ったことから、2024年5月に中期経営方針を新たに改訂し公表することにいたしました。

当社グループを取り巻く世界の自動車生産台数とパワートレインの構成予測については、バッテリーEV車の比率は各国の政策やグローバルサプライチェーンの制約による影響も大きく、この先数年間の予測販売台数にも一定程度の不確実性が織り込まれていると考えます。当社グループは、今後しばらくの間はバッテリーEV車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車がバランスよく販売され、特定のパワートレインの車が市場を占有することはないと考えております。

世界各国の政策や消費者の嗜好が異なる以上、今後起こり得るあらゆる事態に備えておくために、当社グループにおきましては従来のブレーキや燃料の配管はもちろん、バッテリーEV車やプラグインハイブリッド車、ハイブリッド車向けのサーマル・ソリューション製品にも積極的に投資をし、市場シェアを拡大していく計画です。

自動車市場においてますます市場シェアを高め、現業のキャッシュカウ化を進めていくのと並行して、自動車以外の市場におけるサーマル・ソリューション事業やその他新事業の拡大も、新たに改訂した中期経営方針の重要な軸の一つです。具体的にはデータセンター用水冷配管や、インド等グローバルサウス市場における冷蔵庫等の家電用水冷配管、また設備の外販事業等、当社グループが自動車配管事業で培った技術を新たな市場へ転用する形で新事業を創出して参ります。

 

内外環境分析(3C分析)と戦略の大要

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(2) 経営戦略等

 上述した中期経営方針のもと、不確実な事業環境下にあっても利益を生み続け、サステナブルに成長し続けられるレジリエントなマルチポートフォリオの構築を実現させるべく、以下の2つの事業毎に経営戦略をまとめ、実行スピードを上げて取り組んで参ります
 

①自動車部品事業

 当社グループは、競合企業が内燃機関車向けの製品からは撤退していく中、ユーザーやお客様である自動車メーカーが従来の自動車配管製品を必要とされている限り最後まで撤退はしないという「サンオー・ラストマン・スタンディング戦略」を2020年から掲げております。既に南米のブラジルや、イギリス等、局地的には当社グループが独占的に供給できる体制が整っており、競合企業が既存市場から撤退またはバッテリーEV製品へ注力する中、当社グループは顧客から求め続けられる限り、既存市場に踏み止まり続ける考えです。残存者利益を獲得するという戦略によって2つの大きな成果が生まれてきております。

一つは市場占有率の上昇です。当社グループが属する自動車配管市場は寡占市場であり、新規参入も限定的です。取り扱う製品のサイズは大きく、輸送するには非効率なことから、顧客である自動車メーカーの工場の近くに拠点を構えたり、場合によっては自動車メーカーの工場の中で加工作業を行い、製品を納入するケースもあります。現在お客様である自動車メーカーから見ると、自社工場に近接して配管製品を納入できるのが当社グループしかいないという地域が世界に多く存在します。従って、近年、かつては取引量の少なかった欧米系の自動車メーカーやメガサプライヤー等から、新しいお取引をいただく機会が急増しております。グローバルシェアNo.1に向けて、当社グループのグローバル市場占有率は着実に上昇しております。

もう一つは価格決定権の向上です。世界各地域でオンリーワンの存在になっているために、その地域特有のインフレや為替等の金融リスク或いは事業リスクに関して、お客様に一部リスクを引き受けていただき、製品価格に転嫁していただける機会が増えています。当社グループでは中期経営方針において現業の売上高営業利益率10%以上を目標にしておりますが、事業の高収益化についても順調に進んでおります。

もうひとつの戦略はグローバルに展開する生産体制の現地生産機能や生産性の向上です。当社グループは既に存在するグローバルな現地生産ネットワークへの投資を行うことで、参入障壁のひとつにもなっている製品供給の現地化、近接化、そして生産性を向上して参ります。主に成長ポテンシャルが見込まれるインドを含むアジアの能力増強、および米国市場への供給を見据えた中米地域を起点とする生産性の向上、ならびにマザー工場としての日本を中心に投資を行って参ります。

成長著しいアジアではタイやインドを中心に、当社グループの主力製品である車輌配管製品の能力増強や、インドでは新事業の有力な柱の一つである冷蔵庫用の水冷ワイヤーコンデンサー事業の強化を行って参ります。また、北南米セグメントでは、メキシコ拠点も含めた米国ビジネスの生産性の向上や、アメリカのBig3※1やメガTier1サプライヤー※2との取引拡大に注力して参ります。さらに日本では、原価や生産管理、調達データベース等のシステム基盤の高度化や生成AI導入による自働化、チューブの生産性向上、新事業の創出に力を注いで参る考えです。

サーマル自動車部品はバッテリーEV車をはじめとする電動車市場に対して、航続距離延長をサポートする観点から発熱効率の最適化に貢献する部品群です。サーマル自動車部品は従来の取引慣行である自動車メーカー様への直接納入のみならず、実質的に製品の仕様決定権を有する、所謂CASE※3機能を担ってメガサプライヤー化するシステム・モジュールサプライヤーへの供給も狙った“Tier1.5戦略”を遂行して参ります。

 

※1: General Motors、Ford、Stellantisの米系自動車メーカー3社

※2: グローバルに拠点を展開して部品を生産・供給し、多様な領域で技術開発を行っているサプライヤーの

総称

※3: CASE = Connected (つながる), Autonomous (自律走行), Shared (共有), Electric (電動) の略語

 

②新事業

一つ目はデータセンター向け冷却装置事業です。当社グループは数年前に、スーパーコンピューター「富岳」に製品が採用されました。そこで獲得した高い評価と実績を基に、足元はデータセンター用の冷却商材の開発やマーケティング活動に注力しております。

現に2024年1月にはその専業部隊として新事業開発本部を新設し、予算や人財を独立させました。データセンターの世界市場が今後拡大する中、サーバーの主要な冷却手法である空冷および水冷の別を問わず、自社開発製品に加えて他社との協業やM&A等のインオーガニックな取り組みも積極的に駆使しながら事業領域を拡大して参ります。

また2024年2月14日にはデータセンター向けの水冷冷却装置を開発いたしました。樹脂チューブと配管全体は当社グループが携わっており、当社グループの自動車部品事業の主力製品であるフューエルインジェクションレールと同じ構造な上に、曲がりくねった配管も冷蔵庫用のワイヤーコンデンサーの技術をそのまま転用しています。当社グループは既存事業の技術を基に、データセンター市場への拡販を目指して参ります。

二つ目は生産ソリューション事業です。当社グループは自動車配管製品だけでなく、その配管製品を曲げるための加工設備の開発や設計、製作も、これまで自社で行ってまいりました。その設備や装置の内製ノウハウを基に、自働化ニーズの高まりを受けて市場の拡大が見込まれる設備の外販にも取り組み、当社グループと外部顧客双方の生産性向上に貢献しながら、幾つかのステップを経て、生産ソリューションの事業化を目指して参ります。

最終的なゴールとしましては世界の製造業を活性化させるために中小企業の在庫削減や、生産リードタイムの向上に貢献していきたいと考えています。そのファーストステップとして、まずは自社の加工設備や搬送設備の販売を始めております。

三つ目は冷蔵庫向けワイヤーコンデンサー事業です。これまでも当社グループのインド拠点で手掛けてきた事業ではありますが、足元のポテンシャルの高さを踏まえてこれまで以上に注力していきます。冷蔵庫向けのワイヤーコンデンサー事業はかつての当社グループの海外事業でもあり、現地の冷却手法のメインストリームは当社グループが得意とする水冷方式であることからも、配管製品の需要はもちろんのこと、その製造設備ニーズも見込まれる有望な事業のひとつと考えております。

今後バリューチェーンの強化や能力増強投資等を通じて現地競争力をさらに高め、ひとつのまとまった事業として育てていきます。

 

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(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、安定的な収益力の確保とグループ全体の業績向上のため、連結ベースの売上高及び自己資本利益率等の経営指標の拡充を目標としております。

 

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 以下は当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みを記載したものであります。文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方及び取組

a サステナビリティに関するガバナンス及びリスク管理

(ガバナンス)

グループ全体の活動を統括する「サステナビリティ推進担当役員」(経営企画本部長)がサステナビリティ連絡会(事務局)を通じ関係部門と連携しながら、サステナビリティに関わる活動方針の立案と重点活動テーマ案の設定、全社への浸透を図り、マテリアリティの特定及び具体的取り組みを推進しています。

また、社内外のステークホルダーへの情報発信や対話などを通じて、当社に対する社会の期待や要請を把握し、取り組みに反映しています。

サステナビリティ推進担当役員は経営会議、取締役会へ適宜報告を行うとともに、監査役はこのような事項について、取締役会における意思決定と業務執行部門による実行を独立した視点で監査しております。取締役会からの指摘内容を関連部門、委員会にフィードバックし、マテリアリティの取り組み内容の改善・向上に生かしています。

 

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(リスク管理)

当社は、予測不可能なこの時代においてあらゆるリスクの顕在化に対応できるよう、リスクマネジメント推進体制を強化しています。

2021年1月にリスクマネジメント専門の組織「BCP推進Team」を設立し、主に災害時の減災や被害拡大防止を目的とした初動プロセスの確立および防災設備の充実に注力してきました。2022年度より同Teamを「BCP推進室」へと格上げし、2023年度からは「リスク管理部」として、災害を含めた全てのリスクについて、当社グループ全社を対象としたリスク低減または移転の取り組みを進めています。

サステナビリティに関わるリスクの把握、評価、対策もリスク管理部他の関係部署、全社環境委員会の推進するISO14001等を通じ取り組んでおります。

当社では、社内に環境マネジメントシステムの維持・管理を行う全社環境委員会を設置しております。全社環境委員会において、全社における環境活動を統括する統括管理責任者(環境担当役員)、環境マネジメントシステム維持の責任と権限を持つ管理責任者を選任し、活動実績を四半期ごとに管理責任者から統括管理責任者へ報告する管理体制を確立し、その一連のプロセスの中でリスクの把握を行っております。把握したリスクの対応状況は内部環境監査を通じて対応状況のモニタリングを行っております。

また、顕在・潜在リスクの特定および対策に関わる資源投入のため2024年度内の完成を目標とし、当社グループ全社を適用範囲とする事業継続計画規程の整備を進めています。

 

b. サステナビリティに関する戦略並びに指標及び目標

当社グループは、「革新的テクノロジーによる生産性向上」、「環境負荷低減に貢献」、「地域社会との共創と成長」、「働きがいと生きがいの両立」の4つをマテリアリティとして特定しております。指標及び目標の進捗情報を統合報告書に掲載しておりますので、詳細はそちらをご参照ください。(https://www.sanoh.com/ja/wp-content/uploads/sites/2/2023/12/2023report_jp.pdf)


(2) 気候変動への対応

当社ではサステナビリティ経営におけるマテリアリティの一つとして特定した「環境負荷低減に貢献」において気候変動への対応は重要な経営課題の一つとして認識しております。それに基づきTCFDに賛同し、当該情報を統合報告書に掲載しておりますので、詳細はそちらをご参照ください。(https://www.sanoh.com/ja/wp-content/uploads/sites/2/2023/12/2023report_jp.pdf)

 

(3) 人的資本

a 人財方針及び人財戦略

当社では「個人と企業の持続的な共成長を目指し、働きがいと生きがいの両立を実現する」ことを人財方針として掲げ、「自己変革への教育・育成の場づくり」※1「多様な人財の能力や個性を最大限発揮できる職場づくり」※2を推進しています。

当社では、こうした場を通して、当社の三桜DNAを受け継ぐ「ものづくり人財」を継続的に輩出し、個人、企業、地域社会の持続的成長と新たな価値創造を促進してまいります。

※1人材育成方針、 ※2社内環境整備方針

 

ローカル独自のアイディアとグローバルでの共有を通して、常により良い(職)場づくりができることが、当社の特長および強みです。VUCAの時代を生き抜くために、このグローカル※1ネットワーク(19ヶ国82拠点※2)を最大限に活かせるよう、目下「人財戦略」を策定中であり、特にグローバル社員※3全員に求める共通のValueについては、グローバル社員自身が中心となって策定中です。策定完了次第、あらためてプレスリリースいたします。

※1ローカル+グローバルの造語、※2 2024年5月現在 ※3海外子会社含めた三桜グループ社員

 

b. 人財の多様性

人財の多様性をはかる指標として、女性管理職比率、男性育児休業取得率、男女間賃金格差の3つの指標のうち男性育児休業取得率について、目標値(一般事業主行動計画 至:2025年3月31日)を定め人事施策を推進しております。

 

■女性管理職比率:5.4%(2024年3月末時点)

■男性育児休業取得率:60.9%(2023年度)

 目標値:40%以上

■男女間賃金格差:以下の通り(2023年度。それぞれ男性を100とした場合の女性の給与水準)

 正規雇用労働者  77.2%

 パート・有期社員 80.3%

 全ての労働者      56.1%

 

なお上記指標については、当社グループに属するすべての会社で指標及び目標の設定が行われているものではないため、当社グループにおける記載が困難であることから、提出会社における実績を開示しております。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済的状況

当社グループは 日本、北南米、欧州、中国、アジアと事業をグローバルに展開しております。そのため、当社グループが製品を販売している国または地域の経済状況の変動により業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)受注変動のリスク

当社グループの主要事業である自動車部品製造事業における主要得意先は国内外の自動車メーカーであるため、半導体の供給不足などに伴う各自動車メーカーの生産調整及び停止は当社の受注状況に影響を与えます。

また、今後EV化の加速等により、必要とされる部品が急激に変化した場合にも、当社グループの売上高及び利益が大きく変動する可能性があります。このような状況下において当社は得意先の生産調整にも耐えうる高収益・高品質基盤を確立する既存事業の進化、EV市場の拡大に対応するためサーマル・ソリューション事業の拡大、次世代コア事業の創出を骨子とする中期経営方針を策定し、新しい世界においてさらなる成長を実現させていきます。

 

(3) 為替レートの変動

当社グループの連結売上高に対する海外売上高の割合は、2023年3月期で80.6%、2024年3月期で80.9%を占めており、売上高、営業利益、資産等の中には、現地通貨建ての項目が含まれており、連結財務諸表作成時に円換算しております。従って通期の見通しにおいて想定した為替レートに対し、実際の決算換算時の為替レートに乖離が生じた場合、主に円高局面ではマイナスに、円安局面ではプラスに当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

こうした為替リスクを最小限に軽減すべく、当社では状況に応じ為替予約等のヘッジオペレーションを行っております。ただし、期末日の極端な為替変動によりデリバティブ評価損等に影響を及ぼし、営業外損益が変動する可能性があります。

 

(4) 退職給付債務

当社グループの退職給付債務は、数理計算上で設定される割引率や年金資産の期待収益率等に基づいて算出されており、実際の結果に基づいて変更される可能性および年金資産の運用環境悪化等により数理計算上の差異が発生する可能性があります。これらの割引率、長期期待運用収益率等の低下および運用環境などの悪化は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 製品の欠陥

当社グループは、国内および海外各地域の工場で、世界的に認められた品質管理基準に従って製造を行っておりますが、将来に渡り全ての製品において欠陥やリコールが発生しないという保証はありません。製造物責任賠償については保険を付保しておりますが、大規模なリコール等につながる製品の欠陥によっては多額の追加コストが発生する可能性があり、製造物責任賠償保険が最終的に負担する賠償額を充分カバーできるという保証はなく、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社の製品は重要保安部品に位置付けられ、リスクが顕在化した場合には重要な影響が発生しうることを強く認識し、APQPの仕組みの大幅な見直し・改善等を通じて上記を含む重要な品質問題の再発防止を図るための仕組みの整備及び運用を図っております。

 

(6) 原材料の市況

当社グループは、グループ外から原材料を調達しておりますが、原材料価格の変動等により当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは原材料価格の変動については、得意先及び調達先と極力同期化を図ることで、その変動リスクを最小化するよう努めております。

 

(7) 地震等の自然災害及び事故災害

地震や気候変動の進行による大規模な台風、集中豪雨の発生等の自然災害及び想定外の事故のリスクが顕在化した場合、従業員、生産設備等の資産、サプライチェーンにおいて被害が発生する恐れがあり、当社グループの調達、生産、製品販売に支障が生じ、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループでは、定期的にBCP等の対策の有効性を検討し、適宜見直すといったBCM活動を推進し、大規模自然災害及び想定外の事故に係るリスクの低減を図っております。また当社グループはこれらのリスクが顕在化した際には、人命の保護を最優先に、BCP等を実施し、資産を守りサプライチェーンを維持し、操業の早期復旧と継続を図ります。

 

(8) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

当社グループは、事業遂行に当たり、多数の技術及び製造に関する情報、顧客の営業情報及び従業員等の個人情報を含む機密情報について情報システム上で管理を行っております。しかしながら従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為、あるいは悪意をもった第三者による攻撃(サイバーアタック)により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生し、当社グループの製品の製造及び販売活動といった事業活動への悪影響、社会的信用の失墜、業績及び財務状況の悪化を招く可能性があります。

当社グループでは、これらの情報の外部への流出、データの改竄や消失・損壊を防ぐため、情報リテラシー向上のための社員教育・啓蒙を実施するとともに、外部専門家の活用を通じて社内情報システムの適切な運用・管理等に努めております。また、サイバーリスク保険に加入することで、サイバーアタックにより生じる費用負担や機会損失を最小化できるよう備えております。

 

(9) 国際的活動

当社グループは北南米、欧州、中国及びアジアにおいて、グローバルな生産、販売活動を展開しており、日本国外の占める割合は、年々高まる傾向にあります。これらの海外市場への事業進出には以下に掲げるようないくつかのリスクが内在しており、これらの事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない制度、法制又は規制の変更

・不利な政治的又は経済的要因の発生

・移転価格税制等の国際税務リスク

・ストライキ等の労働争議

・社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への悪影響

・テロ、戦争、疾病、その他の要因による社会的又は経済的混乱

 

当社グループでは、海外拠点の駐在員の情報網に加え、各機能別及び地域別に定期的にWeb会議を実施し、事業及び生産継続のための要員・設備・資金の維持管理、重要な訴訟や税務問題等の有無について状況確認・情報収集を行い、問題の早期解消を図ることで不測の損害を最小化できるように努めております。

 

(10)ロシア・ウクライナ情勢の影響

当社グループは、ロシア国内に販売及び製造拠点を所有しております。対ロシア経済制裁措置に伴う材料供給停止による製品の生産及び販売停止等の状況には至っておりませんが、ロシア・ウクライナ情勢について、世界的かつ政治的な不確実性があり、現時点で同拠点に対する影響を完全に予測することは困難な状況です。

またロシア・ウクライナをめぐる国際情勢の変化が、特に当社グループの欧州のロシア以外の他拠点のエネルギー・原材料価格の高騰を引き起こすことにより当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

今回のロシアによるウクライナ侵攻に関しては、地域別に設置したR.O.C(Regional Operation Committee)を中心とする欧州地域の子会社を管理する枠組みの中で、取引先及び従業員の状況を含め最新情報の入手を行い、迅速かつ適切な対策の実施に取り組んでおります。なお当連結会計年度のロシア子会社の売上及び純資産に占める割合はそれぞれ0.6%及び1.2%です。

 

(11) 訴訟のリスク

当社グループは、コンプライアンスの徹底を経営の最重要課題の一つと位置付け、コンプライアンス遵守についてのトップメッセージの発信、社内規程の整備・運用、定期的なコンプライアンス教育の実施、内部通報体制の整備等を行っていますが、訴訟、規制当局による措置その他の法的手続に関するリスクを有しております。

訴訟、規制当局による措置その他の法的手続により、当社グループに対して損害賠償請求や規制当局による金銭的な賦課を課され、または事業の遂行に関する制約が加えられる可能性があり、かかる訴訟、規制当局による措置その他の法的手段は、当社グループの事業、経営成績及び財政状況等に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお当社並びに当社の米国及びカナダ子会社は、自動車部品に関する競争法違反行為により損害を蒙ったとして、特定顧客より本件に関連した損害について賠償負担を求められております。これらについて、合理的に見積可能な損失見込額を損害賠償損失引当金として計上しておりますが、今後の交渉の結果、和解に応じたり、また訴訟に発展し、敗訴となった場合には当社の連結業績に影響が生じる可能性があります。

 

(12) 事業投資のリスク

当社グループは、投資判断時に想定していなかった水準で、市場環境や経営環境が悪化し、事業計画との乖離等により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、有形固定資産の減損処理などにより、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社が保有する関係会社株式や当社連結子会社への貸付金の評価などに影響を及ぼす可能性があり、当社の財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、地域別に設置したR.O.C(Regional Operation Committee)が各現法の業績管理状況をモニタリングし、経営会議等で当社グループ各社の投資等の意思決定を含む、今後の方向性や業績改善のための対策を検討しています。また中長期目線の事業の方向性については、取締役会運用基準に則り、取締役会にて審議・決議を行っています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態及び経営成績の分析、検討内容は原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績及び財政状態の状況

当連結会計年度の当社グループを取り巻く経済環境について、国内では新型コロナウイルス感染症の法的な位置づけが5類になるなど防疫と経済活動の両立がさらに進み、インバウンド需要の拡大を背景に緩やかな回復基調となりましたが、日米間の金利差拡大による円安の進展やエネルギー価格の高騰等をはじめとする物価上昇に加え、中東情勢の緊迫化による物価影響など不確定要素が増加し、先行き不透明な状況が続いております。

海外につきましては、米国ではインフレの進行や金融引き締めが加速したことで景気減速懸念が高まりましたが、良好な雇用環境や堅調な個人消費に支えられ景気は底堅く推移しています。

中国ではゼロコロナ政策解除後に個人消費が経済を牽引するも、不動産市場の低迷が景気回復の重荷になり企業収益や雇用改善が遅れるなど、景気の停滞感が続いています。欧州は、ロシア・ウクライナ情勢の長期化がエネルギー及び資材価格の高騰やサプライチェーンに影響を与え、不確実な情勢が継続しております。アジアについては、新型コロナウイルス感染症に対する制限緩和に伴う経済活動再開後の持ち直し及び個人所得水準の上昇を背景に底堅く推移しております。

当社グループが属する自動車業界につきましては、半導体不足による減産影響は徐々に軽減し、自動車生産台数は前期に対し増産となり、一部で内燃機関搭載車への回帰の動きも見られています。しかしその一方で原材料価格の高騰、ロシア・ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー価格の高止まり及び急激な為替変動に加え、中東情勢の緊迫化の影響などの新しい不確定要素も生まれたことで依然として先行き不透明な状況が継続しています。

 

a.経営成績

当連結会計年度の売上高については、半導体不足、サプライチェーンの混乱が落ち着いたことによる生産回復及び円安による為替換算影響により1,568億14百万円(前期比13.9%増)と増加しました。

 利益については、原材料価格をはじめ運送費や人件費、エネルギーコスト高騰の影響は継続したものの、価格転嫁及び稼働状況の安定化に伴い採算性が向上したことにより、営業利益は80億53百万円(前期比509.7%増)、経常利益は72億96百万円(前期比389.6%増)と大幅に増加しました。親会社株主に帰属する当期純利益は、損害賠償損失引当金繰入額等の特別損失を計上するも経常利益の増加及び投資有価証券売却益の計上により、42億16百万円(前期は9億7百万円の純損失)と大幅に回復しました。

 

セグメントの業績は、以下のとおりであります。

なお連結子会社のガイガー オートモーティブ USA インコーポレーテッドについて、当連結会計年度より経営管理区分が欧州事業管理から北南米事業管理に変更されたことに伴い、同社の報告セグメントを「欧州」から「北南米」へ変更しております。以下の前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分にて組み替えた数値で比較をしております。

 

(a) 日本

売上高は299億27百万円(前期比11.9%増)と半導体不足、サプライチェーンの混乱の解消により、国内売上及び輸出売上共に前期より増加しました。利益面は増収に加え、価格転嫁の進捗、安定した稼働及び固定費の抑制効果の継続により、20億83百万円の営業利益(前期比140.7%増)と大幅増益となりました。

 

(b) 北南米

北米における半導体不足に伴う取引先の減産も解消傾向にあり、円安に伴う為替換算効果も相まって、売上高は591億37百万円(前期比23.4%増)と増加しました。利益面は、価格転嫁の効果に加え稼働状況が改善傾向にあることで17億17百万円の営業利益(前期は41億84百万円の営業損失)と昨年の営業赤字から大きく回復しました。

 

(c) 欧州

売上高は221億91百万円(前期比20.2%増)と半導体不足、ロシア・ウクライナ問題によるサプライチェーンの混乱からの生産回復及び円安に伴う為替換算効果により大幅に増加しました。利益面は、材料費の高騰、インフレ及び人材確保難を背景とする人件費上昇、光熱費等のコスト増加傾向は継続する一方、価格転嫁の効果により利益率も改善し、9億11百万円の営業利益(前期比27.2%増)となりました。

 

(d) 中国

売上高はEVシフトの加速に伴う取引先の生産台数の減少に伴い176億84百万円(前期比9.7%減)と減少しました。利益面は、生産数量の変動に対応したコストコントロール及び人件費等の固定費削減を図るも減収影響が大きく、営業利益は8億24百万円(前期比33.5%減)と減少しました。

 

(e) アジア

売上高は278億75百万円(前期比11.7%増)と円安による為替換算効果に加え安定した稼働により増加しました。利益面については、材料市況変動やインフレ影響に伴う人件費及びエネルギーコスト上昇等の影響を受けるも増収に伴う増益効果が補い、営業利益は23億84百万円(前期比13.8%増)と増加しました。

 

b.財政状態

当連結会計年度末の総資産は1,112億45百万円となり、前連結会計年度末に比べて139億65百万円増加しました。主な要因は現金及び預金の増加48億16百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加28億8百万円、電子記録債権の増加5億20百万円、仕掛品の減少5億円、原材料及び貯蔵品の減少6億6百万円、前渡金、前払費用等のその他流動資産の増加6億27百万円、機械装置及び運搬具等の有形固定資産の増加32億50百万円、投資有価証券の増加26億1百万円等であります。

負債合計は629億57百万円となり、前連結会計年度末に比べて55億88百万円増加しました。主な要因は支払手形及び買掛金の増加6億11百万円、電子記録債務の増加10億67百万円、短期借入金の増加15億62百万円、未払法人税等の減少6億85百万円、預り金、前受金等のその他流動負債の減少7億1百万円、長期借入金の増加26億94百万円、繰延税金負債の増加11億45百万円等であります。

純資産は482億88百万円となり、前連結会計年度末に比べて83億77百万円増加しました。主な要因はその他有価証券評価差額金の増加18億48百万円、為替換算調整勘定の増加31億35百万円、利益剰余金の増加33億6百万円、退職給付に係る調整累計額の増加1億53百万円等であります。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、営業活動により101億39百万円増加、投資活動により71億41百万円減少、財務活動により7億43百万円増加などの結果、当連結会計年度末には176億53百万円(前連結会計年度末比48億16百万円の増加)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られたキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益69億3百万円(前期は21億78百万円)、減価償却費61億53百万円(前期は60億10百万円)、売上債権の増加18億17百万円(前期は11億78百万円の減少)、棚卸資産の減少31億94百万円(前期は1億95百万円の減少)、仕入債務の増加5億69百万円(前期は17億93百万円の減少)、未払金の減少4億3百万円(前期は7億65百万円の増加)、法人税等の支払額24億36百万円(前期は11億26百万円の支払)により、前期と比較して44億59百万円増加して、101億39百万円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用されたキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出75億88百万円(前期は62億55百万円の支出)、投資有価証券の売却による収入2億96百万円(前期は18億71百万円の収入)などにより、71億41百万円の支出(前期は44億46百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により得られたキャッシュ・フローは、短期借入金の減少による支出10億27百万円(前期は26億23百万円の支出)、長期借入れによる収入100億円(前期は64億25百万円の収入)、長期借入金の返済による支出57億4百万円(前期は46億99百万円の支出)、配当金の支払による支出9億10百万円(前期は9億10百万円の支出)、非支配株主への配当金の支払による支出6億40百万円(前期は6億13百万円の支出)などにより、7億43百万円の収入(前期は29億7百万円の支出)となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

前年同期比(%)

日本(百万円)

30,189

112.6

北南米(百万円)

58,576

121.3

欧州(百万円)

20,108

116.4

中国(百万円)

13,502

68.1

アジア(百万円)

27,858

109.0

合計(百万円)

150,233

109.0

 (注)1.金額は販売金額によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

日本

30,139

115.3

1,067

120.7

北南米

57,708

121.2

4,710

125.0

欧州

20,101

115.1

485

147.6

中国

17,582

90.2

4,471

100.9

アジア

27,844

110.6

2,585

99.5

合計

153,375

112.9

13,318

110.9

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

前年同期比(%)

日本(百万円)

29,927

111.9

北南米(百万円)

59,137

123.4

欧州(百万円)

22,191

120.2

中国(百万円)

17,684

90.3

アジア(百万円)

27,875

111.7

合計(百万円)

156,814

113.9

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

当連結会計年度

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

本田技研工業株式会社

31,082

22.6

34,442

22.0

トヨタ自動車株式会社

18,682

13.6

20,334

13.0

日産自動車株式会社

14,737

10.7

18,543

11.8

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

当連結会計年度においては、半導体不足、サプライチェーンの混乱が落ち着いたことによる生産回復及び円安による為替換算影響等により売上高は1,568億14百万円(前期比 13.9%増)と前期水準を上回りました。一方利益面については、原材料価格をはじめ運送費や人件費、エネルギーコスト高騰の影響は継続したものの、価格転嫁及び稼働状況の安定化に伴い採算性が向上したことにより、営業利益80億53百万円(前期比 509.7%増)と前期水準を上回る結果となりました。なおセグメント別売上高及び営業利益の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績及び財政状態の状況 a.経営成績」に記載しております。

<2024年3月期 連結営業利益分析>

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営業外収益においては、前連結会計年度と比べ、1億57百万円減少し、9億41百万円となりました。

営業外費用においては、前連結会計年度と比べ、7億70百万円増加し、16億98百万円となりました。

この結果、経常利益は前連結会計年度と比べて58億6百万円増加し、72億96百万円となりました。

特別損益において、損害賠償損失引当金繰入額3億51百万円等を特別損失に計上しましたが、経常利益の増加に加え、投資有価証券売却益2億円を特別利益に計上したことにより親会社株主に帰属する当期純利益は42億16百万円となりました。

 

b.財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績及び財政状態の状況 b.財政状態」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資金需要及び財務政策

当社グループの資金需要の主なものは、運転資金、設備投資、法人税等の支払い、借入金の返済、配当金の支払い等であります。また当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、その資金の原資といたしましては、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入等により必要とする資金を調達しております。

当連結会計年度末現在、借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は330億11百万円となっております。また当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は176億53百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

④経営目標の達成・進捗状況について

当社グループは2024年5月に中期事業方針を改訂し、2030年度の売上高2,000億円以上、ROE(自己資本利益率)15%以上を長期的な経営指標の定量目標とし、現在の主力事業であるブレーキ配管事業及び燃料配管事業に加え、従来のコア技術を活かしたデータセンター事業、生産ソリューション事業、冷蔵庫向けワイヤーコンデンサー事業など非自動車関連の次世代コア事業を拡大していくことを目指しております。これらの指標の進捗状況は、次のとおりです。

 

 

指標

2023年3月

(前連結会計年度)

2024年3月

(当連結会計年度)

売上高(百万円)

137,692

156,814

自己資本利益率(ROE)

▲2.4%

10.4%

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

当社ではステークホルダーの「安心と安全」、「環境保全」のために尽くすという企業理念、ミッション(使

命)に基づき研究開発活動を行うことを主要方針とし、これに加えて2024年5月に発表した「新・中期経営方針」を実現する新技術開発を推進しております。自動車の電動化という大きな流れにも追従出来る様に、弊社製品のカテゴリーを増やして行きます。

「サーマル・ソリューション」においては、2021年2月に発表したスーパーコンピューター「富岳」に搭載された冷却配管技術以外にも、電気自動車や再生可能エネルギー用蓄電池、データセンターのサーバー向けなど様々な用途向けに熱交換器、バルブ、新構造新機能の継手、断熱配管等を開発しております。昨年はサーバー用ラックの背面に配置した熱交換器を用いて実証実験も行いました。また冷却回路の配管システムを1ストップで提供出来る開発を行っております。

「環境負荷低減」に貢献する為に、軽量化による車輌の燃費、電費の向上を狙いとしたプラスチック製品の採用拡大や、車輌の熱エネルギー効率を高める断熱配管、カーボンニュートラルとなる植物由来の樹脂材料や繊維を補強材として活用する技術、CO2回収に貢献する藻類培養装置用製品等の開発も行っております。

2023年9月には、高耐熱・大容量の固体電池、廃熱を有効活用する熱電発電について、展示会「N-Plus 2023」に出展を行い、多くの来場者の皆様からの貴重なご意見も踏まえ研究開発を進めております。

また、低炭素社会実現のキー技術の一つとして注目される「窒化ガリウム(GaN)半導体」の基板加工サービスに関する研究開発及び事業開発を進めています。GaN半導体デバイスの実用化への貢献を目指して、産学連携による技術開発を推進しています。これらの連携を活用して高品質・高効率の基板加工技術を開発し、次世代のコアとなる事業へと発展させるべく取り組んでいます。

生産性向上を図るために、「AIと自動化」をテーマに欠陥検出のアルゴリズム、製品の検査技術、設計業務の自動化などの開発をパートナーとの共同作業も含めて行い、見える化、自動化、効率化をDXにより実現して行きます。

当連結会計年度の研究開発費の総額は20億12百万円であり、セグメント別の研究開発費は以下のとおりであります。

セグメントの名称

研究開発費(百万円)

日本

2,012

2,012