本項における経営目標、予測、並びにその他の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであり、これらの目標や予測の達成及び将来の業績等を保証し又は約束するものではありません。また今後、予告なしに変更されることがあります。
2022年度は、個人消費の回復や企業業績の改善が見られましたが、世界的な物価上昇を受けたコストプッシュ型のインフレーションが進行するとともに、各国中央銀行の利上げ等に伴う金利上昇を受け、急激な円安が進行するなど、先行き不透明な環境となりました。また、米国の一部の金融機関の経営不安に端を発する預金者の取り付けが当該金融機関の経営破綻を引き起こす事象が発生する等、金融システム全体の不安定性に対する懸念が高まる局面もありました。
当社グループでは、収益構造や事業ポートフォリオの多様化を目的としたハイブリッド戦略を推し進め、このような不確実性の高い市場環境下においても、安定的な業績を確保できるよう目指しております。また、このように世界情勢における不透明さが増す中でも、当社グループとしては金融・資本市場を通じ、その課題解決に向けて尽力してまいります。
当社グループでは、2021年度より3ヵ年の中期経営計画~“Passion for the Best”2023~を掲げ、「未来を共に創るベストパートナー~Be with you~」をスローガンに、基本方針として「クライアントファーストとクオリティNo.1の実現」、「ハイブリッド戦略による新たな資金循環の確立」、「デジタルとリアルのベストミックスの追求」を掲げており、これまで中期経営計画の柱のひとつとなる資産管理型ビジネスモデルへの転換が着実に進捗してきたことに加え、ハイブリッド戦略の推進による付加価値の高い商品・サービスの創出や収益構造の多様化も進展し、「未来を共に創るベストパートナー~Be with you~」に向けて着実に前進してきています。
なお、中期経営計画における主な数値目標として、連結自己資本利益率(ROE)(2023年度において10%以上)、連結経常利益(2023年度において2,000億円以上)、リテール部門における残高ベース収益比率(2023年度第4四半期において50%以上)、ハイブリッド関連経常利益(2023年度において500億円以上)及び大和証券における預り資産(2023年度において90兆円以上)等を定めております。
また、2022年度の状況及び今般の情勢に鑑み、2023年度の大和証券グループ経営方針を下記のとおり定めております。
2023年度 大和証券グループ経営方針
2022年度は、ロシアのウクライナ侵攻と世界の分断、インフレ圧力の高まりと金融引き締めなど、グローバル経済が大きな転換点を迎える中、証券・金融市場は激しい変動に見舞われました。そのような厳しい環境の中、当社グループにおいては、中期経営計画~“Passion for the Best”2023~に掲げた各種施策を推し進め、一定の成果を残すことが出来た1年となりました。具体的には、資産管理型ビジネスモデルへの移行とハイブリッドビジネスの拡大による新たな商品・サービスの創出を通じて、収益構造の多様化・安定化が着実に進展しており、当社グループが目指す方向性が正しいことを改めて示す結果となりました。
中期経営計画の最終年度となる2023年度は、未だ先行きの不透明感は払拭されていないものの、我が国においてもコロナ禍が節目を迎えるとともに約30年にわたり続いてきたデフレからの脱却への転換点を迎えます。また、NISAの抜本的拡充やiDeCoの利便性の向上など、資産所得倍増プランに掲げる政府の取り組みは「貯蓄から投資へ」の流れを後押しするものとなります。当社グループとしては、環境変化にぶれることなく、「お客様の最善の利益」を追求した資産管理型ビジネスモデルへの移行を愚直に推し進めます。加えて、ハイブリッドビジネスの強化を通じて、幅広いお客様のニーズに適したオルタナティブ投資機会の拡充を図ります。更に、揺るぎ無いサステナビリティの潮流を踏まえ、トランジション・ファイナンスをはじめとした社会課題の解決に向けた取り組みをサポートします。
これらの取り組みを同時並行で推進することで、マーケット環境に左右されにくい収益構造を構築すると共にサステナブルで豊かな社会の実現に貢献していきます。
2023年度の各事業部門アクションプランは以下のとおりであります。
(1) リテール部門
① 資産管理型ビジネスモデルの確立
② 多様なお客様ニーズに応える商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
③ 外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネス展開と収益化
④ マスマーケティング及びお客様対応のデジタルシフト、サステナビリティへの取り組み
(2) ホールセール部門
① お客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
② リテール部門との更なる連携強化によるビジネス基盤の拡大
③ 収支構造の改善に向けたグローバルビジネスの再構築
④ サステナブルファイナンスの促進による企業支援
⑤ デジタル人材拡充とデータ駆動型ビジネスの推進
(3) アセット・マネジメント部門
① 運用力・発掘力・商品アレンジ力強化による既存事業の拡大
② オルタナティブ資産を投資対象とした商品の開発等、新ビジネスの研究開発・事業化
③ 不動産アセット・マネジメント事業における資産運用力強化及び事業基盤の確立
④ グループ内連携による、不動産等オルタナティブ関連ビジネスの推進
(4) 投資部門
① 優良な投資機会の発掘、投資先のバリューアップ及びモニタリング体制の強化
② 再生可能エネルギー分野でのキャピタル・リサイクリングモデルの推進
③ 継続的なVCファンド運用ビジネスの確立
④ サステナビリティを意識した社会的意義のある投資対象の開拓
(5) その他(大和総研グループ)
① ITサービスのプラットフォーム化やAI・データサイエンスによる新たな価値の創出
② 高品質で安定的なサービスを低コストで提供することで、大和証券グループのコストダウンへ貢献
③ お客様企業の特性に応じた営業体制の更なる強化、お客様ニーズに沿ったコンサルティングからシステムまでトータルソリューションの提供、データサイエンスやサイバーセキュリティ等の高度な知見を要するソリューションによるビジネス基盤の拡大
④ 情報発信と情報収集・意見交換との好循環を起こしてリサーチクオリティの向上
(6) その他(大和ネクスト銀行)
① 預金量の拡大と収益性の両立
② グループ内連携の強化
③ 国内外の金利環境に応じた運用残高の拡大や、運用対象の多様化
④ 応援定期預金やESG投融資への継続的取り組み
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
1-1.監督体制
気候変動を含むサステナビリティ課題への対応については、取締役会が監督しています。取締役会は、下記「1-2.執行体制」に記載のサステナビリティ推進委員会で議論又は執行役会等で審議した気候関連の課題と対応について、取締役会規則に則り必要に応じて報告を受けるとともに、同規則において決議事項として定められた、経営の中核となる事項や取締役会が重要と認めた事項について決議しています。これまでに、例えば経営ビジョンである「2030Vision」、「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」や「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」について決議した他、リスクアペタイト・ステートメントのトップリスクに、気候変動を追加する決定を行うとともに、「人権方針」についても決議しました。そのほか、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った情報開示(気候変動シナリオを含む)、外部機関のESG評価向上に向けた非財務情報開示等や人的資本開示に関する取組みについての報告を受けた議論、また、決算や「中期経営計画のレビュー」の決議に際したサステナビリティKPIの進捗状況等の確認等を行っています。取締役会には、サステナビリティに深い知見を有する社内外取締役が在籍しており、サステナビリティ課題への取組みに対し実効性の高い監督を行うことができる体制となっています。
1-2.執行体制
気候変動を含むサステナビリティに関連した業務やグループ方針について、代表執行役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会にて定期的に議論を行っています。同委員会には、サステナビリティ推進を統括するサステナビリティ担当執行役、複数の社内取締役(うち非業務執行取締役1名)を含む役員、さらにサステナビリティの主要テーマに専門的知見を有する社外委員3名が参加しています。同委員会ではこれまでに、例えば「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」の策定・改定や「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」の策定等について検討・助言を行っています。
気候変動を含むリスク管理に係る方針や施策については、執行役会の分科会であり、リスク管理の責任者である最高リスク管理責任者(CRO:Chief Risk Officer)の執行役が出席するグループリスクマネジメント会議において議論しています。同会議では、TCFDの気候関連シナリオに基づく定量分析結果などについて毎年報告しています。
また、2021年に策定した「2030Vision」において、ダイバーシティ&インクルージョンをマテリアリティの一つとして位置づけ、多様な個性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現を目指し取組んでいます。2022年度よりダイバーシティ&インクルージョン推進委員会を設置し、代表執行役社長が委員長となり、四半期に一度、全国の部室店から社員をアドバイザーとして選任し、議論を行っています。
サステナビリティ推進委員会での議論内容については、適宜、執行役会に報告され審議・決定を行います。また、グループリスクマネジメント会議で議論された気候関連シナリオに基づく定量分析結果は、TCFDの提言に沿った情報開示案の一部として、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、執行役会に報告されています。
1-3.当社グループ横断的な体制
当社グループ横断的にサステナビリティを推進する体制として、大和証券各本部及び主要なグループ会社においてサステナビリティ責任者を設置の上、横断的なワーキンググループを通じてサステナビリティに資するビジネスの推進やサステナビリティKPIの進捗管理を行っています。当該ワーキンググループで議論された内容については、適宜、サステナビリティ推進委員会に報告する体制となっています。
1-4.役員報酬制度
当社グループは、気候変動を含むサステナビリティ関連の課題への役員の取組に関するインセンティブを強化するため、サステナビリティKPIを業績連動報酬の評価体系に組込んでいます。特に気候関連のKPIとしては、SDGs関連ビジネスへの投資残高やSDGs債リーグテーブルが含まれています。
1-5.リスクアペタイト・フレームワーク
当社グループでは、経営レベルでのリスクガバナンスの強化を目的に、リスクアペタイト・フレームワークを活用しています。ビジネス戦略達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量をリスクアペタイトとして定め、流動性、自己資本等の観点からリスクアペタイト指標を選定し、受け入れるリスクの水準を設定し、管理・モニタリングしています。当社グループでは、このような枠組みをリスクアペタイト・ステートメントとして文書化し、グループ内へのリスクアペタイトの浸透と経営管理態勢・リスク管理態勢の水準向上を図り、リスク文化の醸成に努めています。
1-6.3つの防衛線
当社グループは、実効的なリスクガバナンス態勢を構築するため、「3つの防衛線」に係るガイドラインを定め、リスク管理の枠組みを整備しています。「第1の防衛線」であるフロント部門では、業務上の各種リスクを認識し、自律的リスク管理を推進します。全社的なリスク管理は、「第2の防衛線」としてリスク管理部門・コンプライアンス部門などが行い、内部監査部門は「第3の防衛線」として「第1・2の防衛線」が有効に機能しているか検証・評価等を行います。
(2)戦略
(気候変動)
2-1-1.気候関連のリスクと機会についての認識
当社グループでは、気候変動シナリオに基づく定性分析を行い、事業、財政状態及び経営成績に負の影響(悪影響)を与える可能性があるリスクの例、及び正の影響を与える可能性がある機会の例につき整理し、サステナビリティ推進委員会での議論を経て、執行役会及び取締役会での報告及び審議を行っています。
なお、かかる分析に用いた想定シナリオ等については「
<気候関連のリスク>
気候関連のリスクは、脱炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な被害に起因するリスク(物理的リスク)に大別されます。前者にはカーボンプライシングやエネルギー政策などの法律や規制の導入・変更(政策・法規制)、急速な技術革新による社会・産業の変化(技術)、企業の事業環境の変化や製品及び資産等の価格変動(市場)、気候変動対策に関する企業・組織に対する評判の低下(評判)などがあります。また、後者には異常高温等による健康被害(慢性)や豪雨・巨大台風などの災害(急性)などがあります。
当社グループの主な移行リスクの例として、気候変動対策としてのカーボンプライシングの強化等に伴う経済・企業業績の悪化による多様な収益機会の減少(政策・法規制)、移行期に有意な影響を受ける業種における引受業務の減少や産業構造の変化への対応の遅れによる自社保有資産の価値低下(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う当社グループの評判悪化と広範なビジネス機会の減少(評判)などが挙げられます。
当社グループの主な物理的リスクの例として、異常高温等による健康被害を受けた従業員に係る就労・事業遂行の制約(慢性)、豪雨・巨大台風の増加による太陽光/風力発電設備の発電効率悪化、及び各事業拠点等の被災(急性)などが挙げられます。
<気候関連の機会>
政府の「GX実現に向けた基本方針」では、脱炭素社会の実現に向けて、今後10年間で官民のブレンデッド・ファイナンス※1を含む150兆円超のグリーントランスフォーメーション(GX※2)投資の実現が掲げられています。当社グループにとっては、金融機関としてGX投資に関するプロダクト設計、ストラクチャリング及び運営支援を行うところに事業機会があると考えています。当社グループでは、かかる観点から、気候変動シナリオに基づく定性分析を行い、当社グループの事業、経営に正の影響を与える可能性がある機会の例を、以下のとおり事業部門ごとに挙げています。
※1 公的資金と民間資金を組み合わせた金融手法
※2 温室効果ガス(GHG)排出削減と産業競争力の向上の実現に向けた、経済社会システム全体の変革
① お客様のサステナビリティへの関心の高まりによる、SDGs/ESG関連の新たな金融商品の提供機会増加
(リテール部門)
② グリーンプロジェクト及び脱炭素社会への移行に要する資金調達などの引受増加(ホールセール部門)
③ 再生可能エネルギーなど脱炭素分野のM&Aの増加(ホールセール部門)
④ 気候変動へのインパクトを考慮した投資信託や気候変動対応に積極的な企業を組入れた投資信託への資金流入(アセット・マネジメント部門)
⑤ 環境性能の高い不動産・実物資産を裏付け資産とする投資法人・私募ファンドの組成・運用
(アセット・マネジメント部門)
⑥ 脱炭素社会への移行に貢献する新産業・企業への投資機会の拡大(投資部門)
⑦ 太陽光発電所など再生可能エネルギーへの投資と外部資本の導入を通じた投資機会の拡大(投資部門)
⑧ 脱炭素社会への移行を支援するソリューションビジネス機会の拡大(シンクタンク)
⑨ ネットゼロに向けた取組みを通じたレピュテーション向上による事業機会の拡大(グループ全体)
2-1-2.気候変動に関連して推進する戦略的な取組み
各事業部門で特定した気候関連のリスク(特に移行リスク)と機会への対応策として、下記の取組みを推進していきます。なお、物理的リスクへの対応策としては、事業継続計画(BCP)を策定し、異常気象、風水害などによる社会インフラの停止により本社機能等が停止することがあっても、重要業務を継続できる体制を構築しています。
① 脱炭素社会実現に資する商品・サービスの開発・提供(リテール部門、アセット・マネジメント部門)
当社グループは、脱炭素社会の実現に資する商品・サービスの開発・提供をさらに強化していきます。また、かかる戦略の一環として、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを提供する企業に投資するファンドを含め、社会課題解決に関連したファンド及びETFの拡充に注力していきます。
② サステナブルファイナンスの推進・強化(ホールセール部門)
当社グループは今後もサステナブルファイナンスの推進・強化に取り組んでいきます。
大和証券では2020年10月にサステナブルファイナンスの専門チーム(現 サステナビリティ・ソリューション推進部)を設置し、デット・エクイティ等のプロダクトの区分を超え、投資家や発行体のニーズに沿ったサステナビリティ関連のソリューションを提供しています。
この他、大和証券のエクイティ調査部ESGリサーチ課においては、機関投資家向けにESGに関する調査・分析を行っており、今後も幅広い情報発信に注力していきます。
③ サステナビリティ分野のM&Aアドバイザリー強化(ホールセール部門)
当社グループではサステナビリティ分野のM&Aアドバイザリーを一層強化していきます。2019年10月にオランダの再エネ事業アドバイザリーであるGreen Giraffe Advisory B.V.に50%出資しており、2021年2月にはタイの 9Basil Co., Ltd.等との合弁会社DC Advisory (Thailand) Co., Ltd.を設立するなど、グローバルM&Aのネットワークを強化しています。
④ サステナビリティを意識したソーシング・投資推進(投資部門)
当社グループでは、再エネ分野等を中心としたサステナビリティ分野への投資を一層推進していきます。2018年7月に大和エナジー・インフラ株式会社を設立し、日本のみならずグローバルに再エネ分野等での投資を拡大しています。2019年12月には、再エネ事業を開発・運用するドイツのAquila Capital Holding GmbHとの戦略的提携を行い(2020年に持分法適用関連会社へ移行)、欧州においても太陽光発電所等への投資を加速しています。
⑤ サステナビリティ関連のソリューション提供(シンクタンク)
大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務において、サステナビリティ関連のソリューション提供をさらに強化していきます。具体的には、気候変動による経済・社会への影響に関する情報発信や政策提言、TCFD対応をはじめ気候関連リスクに対する経営戦略の立案やプロジェクト支援などのコンサルティングを強化し、お客様の企業価値の向上に繋げていきます。
⑥ カーボンニュートラルの実現(グループ全体)
当社グループにおけるレピュテーショナルリスクを踏まえ、GHG排出量ネットゼロの実現を推進します。詳細は、「
⑦ ステークホルダーとのエンゲージメント強化(グループ全体)
当社グループでは、お客様の脱炭素への移行を金融面で支援するため、発行体や投資家をはじめとするステークホルダーの皆様とのエンゲージメント(建設的な対話)を強化しています。例えば、「環境・社会関連ポリシーフレームワーク」を基に、環境や社会に対して多大な負の影響を与える可能性がある事業に関するリスクを認識した上で、投融資先等とのエンゲージメント等を通じた適切な対応に取り組んでまいります。
2-1-3.カーボンニュートラル実現に向けた移行計画
当社グループは「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」と同時に、その実現に向けたロードマップを公表し、カーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。
<2030年までの自社のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロ>
Scope1(事業者自らによる直接排出)・2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)のGHG排出量のネットゼロについては、重点方針「自社の環境負荷低減」に沿って推進します。具体的な取組みとしては、省エネ活動の継続及び再エネ電力の導入等を進めていきます。前者については、各施設における省エネ技術/システムの導入やエネルギー利用の効率化などを行っていきます。また、後者については、当社グループ拠点(国内・海外)における再エネ化に注力するとともに、カーボンオフセットの活用等についても検討を進めていきます。
<2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量等(Scope3)ネットゼロ>
脱炭素社会の実現に向け、当社グループの排出量だけでなくサプライチェーン全体での排出量の管理・削減が求められており、特に金融機関にとっては、投融資ポートフォリオのGHG排出量の管理が重要です。当社グループは、重点方針「パリ協定と整合的な目標設定と透明性のある情報開示」に沿って、目標設定や情報開示を推進していきます。
<金融ビジネスを通じた脱炭素社会へのスムーズな移行の支援>
総合証券グループとして、金融ビジネスを通じた、お客さまの脱炭素化に向けた取組みへの支援にも引き続き取り組んでいます。(参考「
2-1-4.気候関連のリスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価
当社グループは、気候関連のリスクを踏まえた戦略のレジリエンス評価(シナリオ分析)を実施しました。シナリオ分析の流れとして、複数の気候変動シナリオ(多様な気候変動事象とその他の広範な変化について想定したもの)に基づいて、気候変動が事業活動に及ぼす影響を定性的に評価しました。そして、これらの評価に基づき、当社の戦略や対応方針を検討しています。
<想定シナリオ>
二酸化炭素(CO2)の累積排出量と世界の平均気温上昇との間に正の相関があるとの科学的関係から、CO2排出削減の経路が将来の気候変動の大きな鍵を握ると考えられます。この削減の進捗速度と手法の優劣に加えて、災害等の自然現象、気候事象に固有の社会的変化、その他の広範な経済事象など、考慮すべき要素は多岐に及び、将来の姿は一概に決まるものではありません。今回のシナリオ分析では、多様な経路が想定されているNGFSのシナリオ※を参考にして検討を行いました。
※ 各国の中央銀行や金融監督当局等が参加するNGFS(気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク)が策定した金融システムの影響評価シナリオ
<分析結果(事業活動に及ぼす影響の定性的分析)>
経済及び産業の停滞・収縮、金融市場の変化(株価下落、クレジットリスク増大等)、豪雨・水害等の被害、並びに異常高温による健康被害などが、相対的に懸念される要素として挙げられました。シナリオに当てはめると、経済停滞・金融市場の変化などはCO2排出削減に伴い経済・社会が混乱するケース、豪雨・水害被害及び異常高温などはCO2排出削減が遅れるケースにおいて、相対的に顕在化すると見込まれます。
一方で、エネルギー転換等が事業に及ぼす影響については、化石資源の削減に伴う既存事業への負の影響と、再エネ等の新エネルギーの増加に伴う新たな事業機会という正の影響が混在しており、全体では中立に近い要因と位置付けられます。なお、CO2排出削減などの気候対策への取り組みは企業の評判(レピュテーション)を左右する可能性があり、当社グループのビジネス全般に間接的に影響を及ぼすと見込まれます。
<今後の対応>
今回のシナリオ分析は、現時点で得られる情報やデータを基に仮定を設定し、分析対象を限定して検討したものです。気候関連リスクの考慮対象は幅広く、リスクの発生時期と規模は多様なパターンが想定されます。当社グループは、今回のシナリオ分析により得られた解釈と結果を保守的に解釈しつつ、今後はより多くの情報と関連データを入手して分析手法の改良を図ります。また、シナリオ分析を通じたリスクの抽出をより精緻化し、当社グループの適切な開示に反映させることに努めていきます。
(人的資本)
2-2-1.人的資本経営に対する考え方
当社グループは、金融・資本市場を通じて社会及び経済の発展に資することをミッションとして、企業理念の一つに「人材の重視」を掲げています。この企業理念に基づき、2030年の「ありたい姿」として策定した「2030Vision」、その実現に向けた足元の計画である中期経営計画において、人材戦略を経営戦略の一環と位置づけ、多様な個性を認め合い、誰もが活躍できる社会の実現を目指しています。
中期経営計画における人材戦略では、「社員の成長とキャリア実現の支援」「未来を創るプロフェッショナルの育成」「エンゲージメントと生産性の向上」「健康経営のさらなる進化」を基本方針とし、エンゲージメントの高い社員が、当社グループに共感し貢献したいと自ら考え行動することで、企業の持続的な成長を生み出すことによる価値創造を目指しています。
2-2-2.人的資本経営の入り口としての採用
より優秀な人材を採用すべく、グループ各社の特性に応じた採用活動を実施しています。大和証券では、新卒採用において応募者が作成した2,000文字の「自分史」を読み込み、本人の価値観・行動に影響を与えた経験などを共有・把握した上で、現場の部室店長など複数の目で採用対象者を選出しています。また、多様な知識・経験をもつ人材の採用を企業の持続的な成長につなげるべく、2022年度からキャリア採用※1を本格化させ、グループ全体で2022年度に200名採用という目標を掲げて取り組んだ結果、同年度において154名を採用しています(2021年度比1.9倍、新卒を含む年間採用人数658名のうち27.7%)。また、採用後に当社グループに定着し活躍できる環境を整備するため、オンボーディング施策として1週間にわたる入社後プログラム、定期的なパルスサーベイ※2と上席者面談、メンター制度、経営トップを含む懇親会などを実施しています。
※1 正社員としての就業経験があり、当社グループが事業を行っている業界への知見や特定の職種での勤務経験のある方を募集する採用形態
※2 入社後に職場の働きやすさや悩みなどをヒアリングするアンケート
2-2-3.人材育成方針
「社員の成長とキャリア実現の支援」
「人材」に投資をすることにより、その価値を高め、「人財」へと磨き上げること、そして、企業の成長につなげていくこと、これが当社グループの目指している姿です。当社グループは、ハイブリッド型総合証券グループとして「貯蓄からSDGsへ」を実現する証券ビジネスを軸に、さまざまな新規ビジネスを手掛けています。そのため、必要とされる「人財」の定義も大きく拡がっており、人材育成においては、全社員がキャリアオーナーシップを持ち、求められるものが何なのかを考え必要なスキルを習得できるよう、カスタマイズされた教育研修プログラムや、キャリア実現を後押しする制度を整備しています。また、自律的なキャリア選択の機会として、年に2回、自身の希望するキャリアや職場環境に対する想いを記す「自己申告書制度」や当社グループ内の様々な業務に自ら手を挙げて異動を実現する「公募制度」を設けています。加えて、常に自身のキャリアビジョン実現のため積極的に業務やスキル向上に取り組めるよう、グループ各社や本部部署の業務内容や求める人物像等を知ることのできるサイトの設置や、説明会などを開催しており、2022年度はグループ内公募に237名の応募がありました(2021年度比2.1倍)。
「未来を創るプロフェッショナルの育成」
中期経営計画の達成に向けては、高度な専門人材の獲得・育成や、社員の専門知識の習得、デジタルスキルの向上が重要と考え、KPIとしてデジタルIT人材やCFP・証券アナリスト資格取得者数を掲げています。中でもデジタルスキルは誰しもが身に着けるべきものと捉え、2022年度には全社員を対象とした「Daiwa Digital College」を新設し、社員のデジタルスキルの向上に努めています。また、金融・数理・デジタル等の高い専門性を活かしたキャリア形成をサポートするため、2021年度より総合職の中にジョブ型の要素を取り入れた「エキスパート・コース」を新設し、さらなる活躍を支援しています。
2-2-4.社内環境整備方針
「エンゲージメントと生産性の向上」
当社グループでは、社員の働きがいを追求するため各種人事制度の整備や働き方改革を継続しており、結果として、当社グループの全従業員を対象とする年2回の「自己申告書制度」にて調査している従業員満足度は、2023年1月の調査において94.8%となっています。また、2021年度には、従業員の満足度向上をより生産性や業績の上昇につなげるべく、企業業績と相関関係にあるエンゲージメントを包括的に計測することをコンセプトに、匿名の「エンゲージメントサーベイ」を導入しています。当該サーベイにより、グループ各社がそれぞれの強みや課題を把握し、改善を行うとともに、社員一人ひとりの成長と生産性の向上に向けた活動を継続しています。
「生産性の向上」においては、人への直接的な投資のみならず、人が使うシステムの整備も含め「人的資本投資」と考えています。基本的なシステムインフラの整備を行うことで従業員の可処分時間を創出し、「デジタルIT人材」の積極的な育成や、デジタルツールを駆使した、蓄積したデータの分析・研究・活用を行うことで、効率的なビジネスの仕組みづくりに取り組むと同時に、社員一人ひとりがより一層イノベーティブな業務に取り組めるよう環境を整備しています。今後も、エンゲージメントサーベイにおける「持続可能なエンゲージメント」、「デジタル化への取組み」や「業務運営体制」の評価をKPIに、さらなる改善を図ります。
「健康経営のさらなる進化」
当社グループでは、労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001や、厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を参考に、適正な労働条件や職場環境の整備をはじめ、社員が心身ともに健康で働き続けられるよう、労働安全衛生の確立に積極的に取り組んでいます。また、社員のウェルビーイング向上により生産性を高め、組織として高いパフォーマンスを発揮し続けることを目指し、CHO(最高健康責任者)に人事担当役員を選任している他、毎年、グループ全役職員の健康状態を分析した「健康白書」を作成し、CHO主催の「健康経営推進会議」を四半期ごとにグループ横断で開催し、健康経営のための取組みの評価・改善を行っています。さらに、人事部・総合健康開発センター(医務室)・健康保険組合の3者が協働して健康施策に関する企画・発信を行う他、日常的に意見交換を実施することで実効性を高めており、健康経営によって解決を目指す経営課題への取り組みとして、2022年度はメンタル不全の未然防止のためのマインドフルネス研修の他、睡眠に関する施策、歯科の健康施策を導入し、社員のパフォーマンス向上に向けた取り組みを強化しました。近年では、全国に勤務する社員がオンラインで医務室を利用できるオンライン診療を導入し、婦人科を含む様々な科目の診察や薬の処方に加え、こころの健康に関する相談も行っています。これらの結果をモニタリングするため、プレゼンティーイズム損失割合※1やアブセンティーイズム平均値※2に関する目標値を設定し、定期的に進捗状況の評価を行っております。
※1 プレゼンティーイズムは、何らかの疾患や症状を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態。プレゼンティーイズム損失割合は、病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い
※2 アブセンティーイズムは、病欠、病気休業の状態。アブセンティーイズム平均値は、過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い
健康経営推進体制
2-2-5.人権
グローバル化により世界経済が拡大する中、世界では、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大、紛争の勃発等の難題が数多く発生しています。人権侵害をめぐる問題はこれらと密接に関連しており、当社グループでは、企業活動が人権に及ぼす負の影響の拡大を防ぎ、企業活動による人権侵害に関する企業の責任を果たすため、2022年に「人権方針」を制定しました。「人権方針」は、2011年に国連にて承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」や、2017年に日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国家アクションプラン」に準拠しており、具体的な取り組みについては、人事担当役員を委員長とする「人権啓発推進委員会」にて検討を行い推進しています。
2-2-6.ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループでは、特に注力すべき重点分野の一つとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を掲げており、社員一人ひとりが強み・個性を活かして最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、ジェンダー・年齢・障がい・採用ルートなど、様々な観点からダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。
浸透度等をモニタリングし状況に応じて改善を目指すべく、マネージャーに対する多面評価に「多様な人材が活躍できる環境整備をしているか」等のダイバーシティ推進に関する項目を導入した他、エンゲージメントサーベイの結果における「ダイバーシティと個の尊重」というカテゴリーの数値をKPIとして確認しています。また、大和証券では、全国の部室店にダイバーシティ&インクルージョン企画担当者を任命し、意見集約や提言活動を実施することにより、トップダウンとボトムアップの双方向による企業風土の変革に取り組んでいます。
2-2-7.女性活躍推進、ジェンダーギャップ解消に向けた取組み
当社グループの社員に占める女性の割合が40.7%(2022年度末/提出会社及びすべての国内連結子会社)となっており、ダイバーシティ推進における最重要課題は女性活躍推進であると考えています。各社の事業特性や人員構成は異なりますが、グループ一体での推進を図るため、2014年度より四半期ごとに各社の人事担当役員が集う「女性活躍ミーティング」を実施し、各社の状況に応じた目標に関し、進捗状況や好事例などを共有することで連携を深めています。
2-2-8.ファイナンシャル ・ウェルネス
社員の金銭状態(家計)が悪化すると、ストレスや心理的な負担が増加し、生産性やモチベーションの低下につながるだけでなく、社員による不祥事等も発生しやすくなり、当社グループの信頼性にも悪影響を与える可能性があります。当社グループでは、社員に対し適切な金銭管理を促すことで個人の経済的な健康度の維持・向上にも努めており、奨学金支払いの負担軽減に向けた「奨学金返済サポート貸付」や、「持株会」「つみたてNISA」に奨励金を付与する等、社員の経済的自立を支援しています。また、財形貯蓄制度、ストックオプション制度、住宅取得のための融資制度を設けている他、退職後の資産形成に向けた確定拠出型年金(401K)制度等を導入することで、社員の幸福度・満足度の向上を図り、生産性を引き上げることを目指しています。
(3)リスク管理
3-1.サステナビリティに関するリスク管理
当社グループの経営ビジョン「2030Vision」のコアコンセプトである「貯蓄からSDGsへ」を実現するためには、事業特性やリスク・プロファイルを踏まえてサステナビリティ関連のリスクを認識し、かつ適切な評価のもとに管理していくことが重要であると考えております。
サステナビリティ関連の課題の一つである気候変動関連のリスクについては、当社グループのリスク管理枠組みを文書化したリスクアペタイト・ステートメントにおいて認識すべきリスクとして取りあげています。気候変動リスクは、当社グループが認識すべき他の各リスク(市場リスク、信用リスク、流動性リスク等)を発生又は増幅させる要因であるため、既存のリスク管理の枠組みの中で気候変動リスクの影響を考慮できるように体制を継続的に整備していきます。
人的資本関連のリスクについては、サステナビリティ推進委員会やダイバーシティ&インクルージョン推進委員会、健康経営推進会議等の会議体において、広く協議を行っているほか、人権に関するリスクについては、人権啓発推進委員会での議論や内部通報制度の運用等を通じて、管理を行っております。
3-2.トップリスク
リスク事象のうち、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべきものをトップリスクとして選定し管理しています。トップリスクの選定にあたって、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるように、社内外より収集したリスク事象をもとに、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補として「見える化」します。その上で当社グループの取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価し、当該候補からトップリスクを抽出し選定します。
特に当社グループでは、気候変動をトップリスクの一つとして位置付けており、ストレステストを活用したシナリオ分析を行なった上で、その結果を経営陣に報告し、開示しています。
(4)指標及び目標
(気候変動)
<自社のGHG排出量(Scope1・2)>
脱炭素社会の実現に向け、GHG排出量の削減が求められています。当社グループは「大和証券グループ カーボンニュートラル宣言」において2030年までの自社(連結ベース)のGHG排出量(Scope1・2)ネットゼロを目指しています。これらの目標達成に向け、GHG排出量を毎年モニタリングしています。
今後のカーボンニュートラルに向けた移行計画については、「
|
指標 |
目標 |
実績 |
|
|
2021年度 |
|||
|
自社のGHG排出量 |
Scope1 |
ネットゼロ (2030年まで) |
954 |
|
Scope2 |
18,790 |
||
(単位:t-CO2)
実績値の集計対象及び算定方法
[国内]法令上、エネルギー使用量・CO2排出量の報告義務のある大和証券・大和総研の2社。なお、当社グループが事務所として賃借するグラントウキョウノースタワー及び当社グループが保有する大和八重洲ビルからのGHG排出量のデータについては、上記2社以外のグループ会社の分も含む。
[海外]ロンドン・ニューヨーク・香港・台北・シンガポール・ソウル・ワシントンD.C.・ムンバイ・マニラの各拠点。
[算定方法]エネルギーの使用の合理化等に関する法律及び地球温暖化対策の推進に関する法律に定める算定方法に従い、電力・都市ガス・重油・軽油・灯油・蒸気・冷水の使用により生じるCO2を対象として算定。小数点以下は四捨五入。
(人的資本)
<人的資本経営>
|
ダイバーシティに関する指標 |
||||
|
|
2021年度末 |
2022年度末 |
目標 |
|
|
女性取締役比率 ※1 |
グループ本社 |
28.6% |
28.6% |
2030年までに30%以上 |
|
女性管理職比率 |
大和証券 |
18.3% |
19.9% |
2020年代に30%以上 |
|
連結 ※2 |
15.1% |
16.9% |
- |
|
|
キャリア採用比率 ※3 |
連結 ※2 |
20.0% |
27.8% |
- |
※1 有価証券報告書提出日現在において、女性取締役比率は35.7%
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※3 キャリア採用比率は年度内の総採用者数に対するキャリア採用者の比率
<人材育成方針>
|
資格関連KPI |
|||||
|
|
2021年度末 |
2022年度末 |
目標 (2030年度末) |
||
|
CFP・証券アナリスト 資格取得者 |
CFP |
連結 ※1 |
1,321名 |
1,469名 |
- |
|
証券アナリスト |
1,509名 |
1,550名 |
- |
||
|
合計 |
2,830名 |
3,019名 |
3,000名以上 |
||
|
デジタルIT人材人数 ※2 |
連結 ※1 |
34名 |
92名 |
200名以上 |
|
※1 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※2 デジタルIT人材:当社グループ内における社内資格「デジタルITエキスパート」認定者
|
教育投資にかかわる費用 ※1 |
||
|
|
2021年度 |
2022年度 |
|
教育投資にかかわる費用(連結 ※2) |
18.7億円 |
21.8億円 |
|
従業員一人当たり※3の教育投資にかかわる費用 |
0.15百万円 |
0.17百万円 |
※1 教育投資にかかわる費用とは、従業員の研修の運営に必要な講師等の研修費や施設運営費を指す
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
※3 事業年度末時点での国内連結従業員数をもとに算出
<社内環境整備方針>
|
従業員満足度 ※1 |
||||
|
|
2021年度下期 |
2022年度上期 |
2022年度下期 |
目標 |
|
大和証券 |
98.0% |
98.0% |
98.0% |
80%以上 |
|
連結 ※2 |
95.4% |
96.6% |
94.8% |
80%以上 |
※1 年2回、当社グループの全社員が提出する「自己申告書」において、勤務先としての大和証券グループに対する満足度を4段階評価で回答させ、上位2項目を満足として捉えて集計
※2 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
|
「エンゲージメントサーベイ」スコア ※1 |
||||
|
|
|
2021年度下期 |
2022年度上期 |
2022年度下期 |
|
持続可能なエンゲージメント ※2 |
大和証券 |
81% |
82% |
81% |
|
連結 ※3 |
- |
79% |
79% |
|
|
デジタル化への取組み |
大和証券 |
65% |
65% |
68% |
|
連結 ※3 |
- |
64% |
67% |
|
|
業務運営体制 |
大和証券 |
46% |
49% |
50% |
|
連結 ※3 |
- |
46% |
47% |
|
※1 数値及び分析資料はサーベイパートナーであるタワーズワトソン社より提供。数値は、全従業員のうち各カテゴリーの設問に対して肯定的な回答をした従業員の割合を設問ごとに集計の上、当該カテゴリーの全設問における当該割合の平均値を算出したもの
※2 持続可能なエンゲージメントとは、生産的な職場環境、心身の健康などによって維持される、目標達成に向けた高い貢献意欲や組織に対する強い帰属意識を指す。タワーズワトソン社は、同スコアが高い企業は当該企業が属する業界の平均的な成長率を上回る業績成長を見せる傾向にあるとしており、当社グループでは、「持続可能なエンゲージメント」とその構成要素を体系的に把握しながら、分析結果を全社的な施策や各組織における改善活動に活用している。
※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
<健康経営推進体制>
|
労働安全衛生・健康経営に関する指標 |
||||
|
|
|
2021年度 |
2022年度 |
目標 (2030年まで) |
|
プレゼンティーイズム損失割合 ※1 |
連結 ※3 |
15.2% |
12.6% |
10.0%未満 |
|
アブセンティーイズム平均値 ※2 |
連結 ※3 |
3.4日 |
3.1日 |
3.0日以下 |
※1 病気やケガがないときに発揮できる仕事の出来を100%として、過去4週間の自身の仕事の出来をパーセンテージで評価するアンケートを実施し、全従業員の平均値と100%との乖離を算出したもの。数値が小さいほど生産性が高い
※2 過去1年間に自分自身の病気を理由として何日欠勤したかを問うアンケートを実施し、全従業員の平均値を算出したもの。平均日数が少ないほど生産性が高い
※3 連結は提出会社及びすべての国内連結子会社を指す
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項に関し、以下のようなリスクがあげられます。これらのリスクは必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では想定していないリスクや重要性が乏しいと考えられるリスクも、今後当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、収益性や成長性を追求する一方で、事業に伴う各種のリスクを適切に認識・評価し効果的に管理することが重要であると考えております。当社グループで展開するビジネスには、多種多様なリスクが存在します。健全な財務構造や収益構造を維持するためには、事業特性やリスク・プロファイルを踏まえてこれらのリスクを認識し、かつ適切な評価のもとに管理していくことが重要であると考えております。
当社グループは、自己勘定を活用して一時的に販売目的の商品ポジションを保有し、お客様への商品提供を行うため、相場変動やヘッジが機能しないことに起因する市場リスク、取引先や発行体に対する信用リスク、外貨を含めた流動性リスクのほか、業務を執行するうえで必然的に発生するオペレーショナルリスクや意思決定にモデルを使用することによるモデルリスクなどが生じます。また、ハイブリッド戦略による成長投資を実行することに伴い、投資先の業績や信用状態の悪化、市場環境の変化などに起因する投資リスクも発生します。そのため、ストレステストやトップリスク管理を活用し、フォワードルッキングな視点でグループ内における資本や流動性に与える影響を計測するなど、統合的なリスク管理を行っています。
トップリスク
当社グループは、多様なリスクの中から、当社グループの事業の性質に鑑みて特に注意すべき事象をトップリスクとしてモニタリングしております。有価証券報告書提出日現在におけるトップリスクは下表のとおりです。
|
リスク事象 |
具体例 |
|
国際紛争・対立の深刻化 |
ロシア・ウクライナ紛争、米中対立激化(台湾有事)等 |
|
金融危機の再来 |
― |
|
日本の財政不安による国債格下げや円資産の暴落 |
― |
|
米国のスタグフレーションリスク(インフレと景気後退の同時進行) |
― |
|
中国の景気後退 |
― |
|
DX(デジタルトランスフォーメーション)への不十分な対応 |
DXの対応が不十分であることによる競争力の低下 |
|
オペレーショナル・レジリエンスへの不十分な対応 |
自然災害やサイバー攻撃、システム障害等に対するレジリエンスが不十分なことにより、顧客へ適切なサービスを提供できず、当社のレピュテーションが毀損 |
|
気候変動 |
気候変動に伴う保有資産の価値低下及び売却機会の減少 |
|
大規模地震・水害 |
災害に伴う各種コストの増加 |
|
投資先の業績悪化・資産価値毀損 |
― |
|
サイバー攻撃 |
― |
|
システム障害 |
― |
|
コンプライアンスリスク |
マネー・ローンダリング、インサイダー取引を含む役職員による不適切な行為等 |
|
情報セキュリティリスク |
重大な情報漏えい等 |
トップリスクは経営陣が選定する体制としており、選定に際しては、経営陣が広範なリスクを認識・議論できるような枠組みを整備しております。具体的には、広範なリスク事象を網羅的に「見える化」するために、社内外より収集したリスク事象を基に、関連部署が整理・抽出したリスク事象をトップリスクの候補とします。その上で当社グループの取締役・執行役が、当社グループの業績に与える影響度と当該リスク事象の発生可能性からフォワードルッキングに評価してトップリスクを当該候補から抽出して選定します。かかる評価に際しては、以下のリスクマップが活用されます。
(1)日本及び世界の景気、経済情勢、金融市場の変動に関するリスク
日本では、2022年度末にかけては徐々に新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かい、個人消費の回復や企業業績の改善が見られましたが、世界的な物価上昇を受けたコストプッシュ型のインフレーションが進行するとともに、各国中央銀行の利上げ等に伴う金利上昇を受け、急激な円安が進行しました。今後、日本銀行により大幅な金融政策の変更が行われる場合、その政策効果が期待通りに実現しない場合、資源価格高騰等により物価上昇が継続又は加速した場合等には、日本経済が低迷する可能性も否定できません。
また、ロシアによるウクライナ侵攻を起因とした地政学リスクの高まりを受けた世界的なサプライチェーンの分断が、エネルギー価格上昇や急激なインフレ率上昇をもたらし、グローバルに金融市場の不安定性を高める可能性があります。米国では、利上げ局面での想定外の金利上昇やバイデン政権での保護主義的通商政策による貿易停滞が、経済活動を停滞させる可能性があります。さらに、米国の一部の金融機関の経営不安に端を発する預金者の取り付けが当該金融機関の経営破綻を引き起こす事象が発生し、他の金融機関の連鎖破綻や金融システム全体の不安定性に対する懸念が高まっています。加えて、地政学リスクの継続、インフレーションの更なる進行、米国の金融機関破綻に伴う連鎖的な金融不安等により、経済の不確実性が高まり、雇用や所得の回復が遅れる懸念も存在します。中国、新興国においても、経済成長率の減速や地政学リスク等、予断を許さない状況が続いています。また、米中貿易摩擦問題により、世界経済の見通しの不透明感がさらに強まる可能性があります。再び、財政状況や経済状況が悪化した場合には、世界的な金融危機や経済危機に発展する可能性も否定できません。
このように、日本における財政政策、金融政策の効果が期待通り得られない場合や、世界景気や経済情勢の停滞若しくは悪化など、日本を取り巻く経済環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、企業業績の悪化、株価の下落、為替・金利の変動等により様々なリスクが顕在化することが想定されます。このような事態は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)外的要因によるリスク
当社グループの主たる事業である有価証券関連業務は、マーケットに急激な変動を生じさせる予測不可能な出来事の発生により大きな影響を受ける傾向があります。例えば、2001年9月に発生した米国同時多発テロ、2011年3月に発生した東日本大震災のほか、各国の金融政策の転換による金融・証券市場への影響は、当社グループの業績に重大な影響を及ぼしました。
このように、戦争・テロ行為、地震・津波・洪水等の自然災害、各種感染症の大流行や情報・通信システム・電力供給といったインフラストラクチャーの障害等の外的要因は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)気候変動等に関するリスク
当社グループは、気候変動への取組みが重要な経営課題であると認識しております。気候関連のリスクは、脱炭素社会への移行に伴うリスク(移行リスク)と物理的な被害に起因するリスク(物理的リスク)に大別されます。前者にはカーボンプライシングやエネルギー政策などの法律や規制の導入・変更(政策・法規制)、急速な技術革新による社会・産業の変化(技術)、企業の事業環境の変化や製品及び資産等の価格変動(市場)、気候変動対策に関する企業・組織に対する評判の低下(評判)などがあります。また、後者には異常高温等による健康被害(慢性)や豪雨・巨大台風などの災害(急性)などがあります。
当社グループの主な移行リスクの例として、気候変動対策としてのカーボンプライシングの強化等に伴う経済・企業業績の悪化による多様な収益機会の減少(政策・法規制)、移行期に有意な影響を受ける業種における引受業務の減少や産業構造の変化への対応の遅れによる自社保有資産の価値低下(市場)、気候変動対策の取組み不足や環境負荷の高い事業に係る投資・引受に伴う当社グループの評判悪化と広範なビジネス機会の減少(評判)などが挙げられます。
当社グループの主な物理的リスクの例として、異常高温等による健康被害を受けた従業員に係る就労・事業遂行の制約(慢性)、豪雨・巨大台風の増加による太陽光/風力発電設備の発電効率悪化、及び各事業拠点等の被災(急性)などが挙げられます。
これらの事態は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)競争状況に伴うリスク
株式の売買委託手数料率の自由化をはじめ、ファイアーウォール規制の見直し等、一連の大幅な規制緩和を契機として、当社グループの主たる事業である有価証券関連業務における競争は、厳しいものとなっています。参入規制がほぼ撤廃されて、銀行その他の証券会社以外の国内外の金融グループ等は、幅広い金融商品・サービスの提供を行うことにより、顧客基盤及び店舗ネットワークを構築・強化しております。
当社グループは、これら国内外の金融グループ等に対して、競合する事業における価格やサービス面等の点で十分な競争力を発揮できるという保証はなく、これが発揮できない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)グループ戦略が奏功しないリスク
当社グループは、有価証券関連業務を中核とする投資・金融サービス業やハイブリッド戦略により不動産・ヘルスケア・再生可能エネルギーなど新たな事業領域となる業務を行うグループ会社群によって構成されており、これらグループ会社が連携することで付加価値の高い投資・金融サービスを提供する等、グループ全体の企業価値を最大化することを目指しております。しかしながら、①国内外の経済・金融情勢が悪化した場合、②競争環境の変化により、当社グループの期待する収益を得られない場合、③当社グループ内外との事業提携・合弁関係、業務委託関係が変動あるいは解消した場合、④当社グループ内の組織運営効率化のための施策が想定どおりに進まない場合、及び⑤法制度の大幅な変更があった場合をはじめとする様々な要因により、上記のグループ戦略に変更が生じる場合や、グループ会社間の業務、その他の連携が十分に機能しない場合には、グループ戦略が功を奏しない可能性や想定していた成果をもたらさない可能性があり、その場合、当社グループの事業、財政状態及び経営戦略に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)業績の変動性に伴うリスク
当社グループの主たる事業である有価証券関連業務をはじめ、その他の主要業務であるアセット・マネジメント業務、投資業務は、お客様との取引から得られる手数料、トレーディング損益、営業投資有価証券関連損益等が大幅に変動するという特性を持っております。当社グループでは業績の安定性を向上させるべく、リテール部門における預り資産の拡大やホールセール部門の収益構造の多様化、アセット・マネジメント部門における契約資産残高の拡大、市場リスクや信用リスクをはじめとする各種リスクの管理強化、経費管理の徹底等の努力を行っておりますが、これらの施策は有価証券関連業務に伴う業績の変動性をカバーすることを保証するものではなく、とりわけ経済・金融情勢が著しく悪化した場合には、当社グループの業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループの過去3連結会計年度における連結業績の推移は次のとおりです。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
回次 |
第84期 |
第85期 |
第86期 |
|
決算年月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
2023年3月 |
|
営業収益 |
576,172 |
619,471 |
866,090 |
|
純営業収益 |
466,660 |
502,093 |
464,226 |
|
経常利益 |
115,175 |
135,821 |
86,930 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
108,396 |
94,891 |
63,875 |
(7)リテール部門におけるビジネス・リスク
リテール部門では、市況の低迷でお客様の証券投資需要が低調となったり、証券市場のリスクを避ける投資行動が強まったり、リスク資産を保有することそのものに対して消極的な傾向が強まったりすると、収益が大きく低下する可能性があります。また、店舗、営業員、オンライン取引システム等を必要とするため、不動産関係費、人件費、システム投資等に係る減価償却費等の固定的経費を要する傾向があります。したがって、上記のような要因により収益が大きく低下したときは、経費抑制努力では対応しきれず、採算割れとなるリスクがあります。
(8)ホールセール部門におけるビジネス・リスク
ホールセール部門は、グローバル・マーケッツとグローバル・インベストメント・バンキングの各ビジネスにより構成されております。
グローバル・マーケッツにおける現物取引やデリバティブ取引等のトレーディング業務には、市場動向や税制、会計制度の変更等の影響でお客様の取引需要が減少して収益が低下するリスクや、急激かつ大幅な市況変動でディーラーの保有ポジションの時価が不利な方向に変動して損失が発生するリスク、低流動性のポジションを保有していたため市況変動に対応して売却することができず損失が発生するリスク等があります。
これらのうち、主要なものは市場リスク(株式・金利・為替・コモディティ等の相場が変動することにより損失を被るリスク)と信用リスク(与信先の財務状況の悪化等により、資産(オフバランス資産を含む。)の価値が減少ないし消失し、あるいは債務が履行されないことにより損失を被るリスク)です。当社グループでは、各商品のトレーディングにかかるリスクを軽減するために、各商品の過去の市場価格の推移や各商品の価格変動の相関を参考に、必要に応じて様々なヘッジ取引を行っておりますが、予想を超える市場の変動や突発的に発生する個別の事象等により、ヘッジが有効に機能しない可能性もあります。さらに、トレーディング・ポジションの内容が特定の銘柄や業種等に偏ると、ポートフォリオ全体の分散効果が得られにくくなるほか、ポジションの円滑な処分も困難になるため、リスクが顕在化した場合の損失額が大きく膨らむ傾向があります。
グローバル・マーケッツにおけるブローカレッジ業務では、市況の低迷でお客様の証券投資需要が低調となったり、リスクを避ける投資行動が強まったり、リスク資産を保有することそのものに対して消極的な傾向が強まったりすると、収益が大きく低下する可能性があります。また、法人のお客様向けの大規模な取引システム等を必要とするため、システム投資等に係る減価償却費等の固定的経費を要する傾向があります。したがって、上記のような要因により収益が大きく低下したときは、経費抑制努力では対応しきれず、採算割れとなるリスクがあります。
また、グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、法人のお客様の財務面でのニーズに対応して、債券、上場株式、新規公開株式、資産流動化証券等の引受け、募集・売出しを行うほか、仕組み証券やストラクチャード・ファイナンスの組成に関する業務、M&A、事業再編や新規公開に関するアドバイザリー業務も行います。これらの業務には、概して証券市況に影響されて取引規模及び取引量が急激に変動する特性があります。また、引受業務には、引受けた証券が市況の下落等で円滑に投資家に販売できない場合、引受けた証券を保有すること等により、市場価値の下落による損失を被るリスクがあります。引受業務におけるポジション・リスクは、単一の銘柄でかつ巨額なポジションとなり、適時に効果的なリスク回避の手段をとることができないため、通常のトレーディングにおけるポジション・リスクよりも重大なリスクとなり得ます。また、引受業務には、有価証券の募集・売出しにかかる発行開示が適切になされなかった場合には、金融商品取引法に基づき引受会社として投資家から損害賠償請求を受けるリスクがあります。
(9)アセット・マネジメント部門におけるビジネス・リスク
アセット・マネジメント部門は、証券アセット・マネジメントと不動産アセット・マネジメントの各ビジネスにより構成されております。
証券アセット・マネジメントの収益は、運用資産の残高に基づく一定料率又は実績連動の報酬です。市場の変動によって運用資産の評価額が下落した場合や、お客様の資産運用の動向が変化(預金等の安定運用志向の高まりを含む。)したり、あるいは当社グループの運用実績が競合他社に比べて低迷する等して、解約等が増加し、運用資産が減少した場合には、当社グループの収益は減少します。
他方、証券アセット・マネジメントの経費構造は、システム関連経費や人件費が中心であり、固定費的な要素が強いため、収益の低下が著しい場合には採算割れとなるリスクがあります。
不動産アセット・マネジメントの収益は、運用資産の残高や不動産売買金額に基づく一定料率の報酬の他、不動産開発利益、不動産賃貸事業利益等から構成されております。不動産市場の変動等により、運用資産の評価額下落や運用資産の収益性低下、不動産売買取引の減少、不動産取引価格の低迷、不動産開発用地の取得価格上昇、建設資材の価格上昇等が生じた場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
他方、不動産アセット・マネジメントの経費構造は、人件費や不動産関係費、不動産賃貸事業費用等から構成されており、これらの費用の上昇及び収益の著しい低下等が生じた場合に、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお不動産アセット・マネジメントには、当社グループの連結子会社である大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人、持分法適用関連会社である大和証券リビング投資法人が含まれております。これらの不動産投資法人は、投資信託及び投資法人に関する法律に基づく投資法人であり、株式会社東京証券取引所不動産投資信託証券市場に上場し、投資口及び投資法人債の発行並びに金融機関等からの借入れ等により資金調達をし、大和証券オフィス投資法人は主としてオフィスビル、サムティ・レジデンシャル投資法人は主として賃貸住宅、及び大和証券リビング投資法人は主として賃貸住宅及びヘルスケア施設を中心とした不動産及び不動産を信託財産とする信託受益権等に対して投資し、不動産の賃貸や売却等により回収することを主たる事業としております。
大和証券オフィス投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券リビング投資法人の事業は、市場環境や経済情勢の変動、調達金利の変動、テナントの入退居、賃料の改定・不払い、テナント・信託の受託者その他関係者の倒産等、固定資産税その他諸費用の変動、不動産に係る欠陥・瑕疵の存在、災害等による建物の滅失・劣化・毀損、所有権その他不動産の権利関係、有害物質の存在、環境汚染、行政法規・税法(投資法人と投資主の二重課税を排除するための税法上の要件を含む。)その他法令等の制定・変更、取引所規則等の制定・変更等の様々な事情により影響を受ける可能性があります。これらにより、期待する水準又は時期による賃料や売却収入が得られなかったり、評価損が発生したりした結果、大和証券オフィス投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人及び大和証券リビング投資法人が損失を計上した場合等には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)投資部門におけるビジネス・リスク
投資部門では、将来、株式公開が見込まれると判断したベンチャー企業等の株式等を取得し、株式公開時に当該株式を売却し利益を得ることを主たる目的とするベンチャー・キャピタル業務や、自己の資金により企業の株式等を取得・保有し、経営改善等によって投資先企業の価値を高めた上で当該株式等を転売し利益を得ることを主たる目的とするプリンシパル・インベストメント業務、エネルギー及びインフラストラクチャー分野の国内外の投資資産を取得・保有し、保有期間中に得られるインカム収益や転売による利益を得ることを主たる目的とするエネルギー及びインフラストラクチャー投資業務等を行っています。
ベンチャー・キャピタル業務では、投資先であるベンチャー企業等は、一般的に、事業運営の歴史が浅く、多くの場合事業運営モデルが確立しておらず、資金調達手法や商品・サービスに対する長期的な需要の確保に不確実性が見られ、また、優秀な人材の継続的雇用も保証されていない等、経営全体の基盤が安定していない傾向が強いといえます。さらに、創業者等の特定の人物に対する依存度が著しく高い場合が多い等、多種多様なリスク要因を包含しています。したがって、投資後に投資先企業の企業価値が低下する場合や投資先企業が倒産する場合もあり、結果として損失を被る可能性があります。
また、一般的に、ベンチャー企業等が株式公開を目指してから実際の公開に至るまでには相当の期間を要することから、投資期間も長期にわたる傾向があります。さらに、投資先企業のすべてが株式公開を実現する保証はなく、投資先企業の株式公開が実現した場合においても、当該企業の株式等の取得原価を上回る価額で当該株式等を株式市場等で売却できるとは限らないため、期待された売却益が実現しない可能性や売却損又は評価損が発生する可能性もあります。
プリンシパル・インベストメント業務は、保有する有価証券やその他の資産のポジションの流動性が低いこと、投資先の分散によるリスク抑制が行い難いこと、保有期間が長いこと、投資開始時点で経営に何らかのリスク要因のある企業を投資対象とする場合があること、売却時に国内外の規制上の障害があって処分が妨げられたり処分までに長期間を要することがありうること等から、成功した場合のリターンが大きい代わりにリスクも高いビジネスです。保有株式等を転売せずに保有継続する場合には評価損が発生する可能性があり、転売する場合において、取得原価を上回る価額で転売できるとは限らないため、期待された売却益が実現しない可能性や売却損が発生する可能性があります。
エネルギー及びインフラストラクチャー投資業務は、保有する投資資産の流動性が低いこと、投資先の分散によるリスク抑制が行い難いこと、保有期間が長いこと、投資資産の対象企業その他関係者の信用状態の変化、経済環境の変化、公的施策の動向、規制の強化、政情不安、自然災害、為替・金利動向、資源価格の動向、投資資産の所在国のカントリーリスク等による影響を受ける可能性があること等、多種多様なリスク要因を包含しており、投資時点で想定した結果をもたらさないリスクがあるビジネスです。保有期間中に期待していたインカム収益が得られない可能性や、資産等を保有継続する場合には評価損が発生する可能性があり、転売する場合において、取得原価を上回る価額で転売できるとは限らないため、期待された売却益が実現しない可能性や売却損が発生する可能性があります。
(11)銀行業に伴うビジネス・リスク
当社グループでは、連結子会社である株式会社大和ネクスト銀行(以下、「大和ネクスト銀行」という。)が、同行の銀行代理店である大和証券株式会社(以下、「大和証券」という。)を通じて、お客様向けサービスを提供しております。
大和ネクスト銀行においては、大和証券やインターネット等を通じたお客様からの預金受入れ等により調達した資金を、貸出や債券その他有価証券投資等により運用しておりますが、銀行業は、信用リスク、市場リスク、流動性リスク、システムリスク、コンプライアンスリスク、事務リスク、情報セキュリティリスク、外部委託にかかるリスク、イベントリスク、レピュテーショナルリスク、自己資本比率低下リスク等、様々なリスクへの対応が必要となります。このような広範に渡るリスクの管理態勢の整備、維持及び改善等の対応を進めておりますが、これらの対応が不十分であった場合、マイナス金利政策等による運用資産の利回り低迷や調達金利の上昇等により期待された利鞘が確保できない場合、競合する他の銀行との差別化戦略が期待どおりに進まず競争力が発揮できなかった場合等においては、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12)投資有価証券に関するリスク
当社グループは、提携・友好関係の維持や構築等を目的として、対象企業等の株式等を保有することがあります。このうち、市場性のある株式等については市場価格の下落により、それ以外の株式等については当該対象企業等の財政状態及び経営成績の悪化等に起因する評価損あるいは減損損失が発生することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、上記株式等について、保有意義の希薄化等を理由に売却を実行する際、市場環境若しくは対象企業等の財政状態及び経営成績等によっては、期待する価格又は時期に売却できない可能性があります。
(13)海外事業に関するリスク
当社グループは、欧米等の先進国並びに新興国市場を含むアジアに広範な事業基盤を有しております。
海外の事業基盤は、国内の事業基盤と比較すると、お客様の取引ニーズの変動や市場環境、政治・金融・経済情勢の変動等の影響をより強く受ける場合があり、これらの変動の程度やリスク管理の状況によっては減収又は損失を被る可能性があります。また、海外事業については、投下した資本並びに収益が為替変動リスクに晒されていることや、事業を展開する国における法規制等の変更により、当社グループ又は当社グループが出資する合弁会社等の事業が制約を受ける可能性があることのほか、投下資本の価値が変動する可能性があります。
(14)自己資本規制・流動性規制に関するリスク
当社グループは、当社が金融商品取引法上の最終指定親会社に該当するため、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成22年金融庁告示第130号)の適用を受け、同告示第2条に基づいて連結自己資本規制比率を所定の比率(連結普通株式等Tier1比率4.5%、連結Tier1比率6%、連結総自己資本規制比率8%。以下、「最低所要連結自己資本規制比率」と総称する。)以上に維持する必要があります。
当社グループは、上記の最低所要連結自己資本規制比率の充足に加え、2016年3月末以降は、資本保全バッファー比率2.5%とカウンター・シクリカル・バッファー比率の合計に、当社がD-SIBs(Domestic Systemically Important Banks: 国内のシステム上重要な銀行)に指定されたことによる上乗せ分0.5%を加えた最低資本バッファー比率の維持が必要となっています。
また、連結子会社のなかにも同様に類似の規制を受けている会社があります。大和証券、リテラ・クレア証券株式会社及び大和コネクト証券株式会社は、金融商品取引法に定める自己資本規制比率を同法に基づいて120%以上に維持する必要があります。大和ネクスト銀行は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成18年金融庁告示第19号)に定める自己資本比率(国内基準)を同告示に基づいて4%以上に維持する必要があります。海外の連結子会社についても同様の会社があります。
当社グループは、「金融商品取引法第57条の17第1項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)が適用されており、同告示に基づき2015年3月末より連結流動性カバレッジ比率、さらに2021年9月末からは連結安定調達比率を所定の比率(100%)以上に維持する必要があります。
また、当社グループは、「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が自己資本の充実の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(平成22年金融庁告示第132号)が適用され、同告示に基づいて連結レバレッジ比率を開示することが求められています。2019年3月末からは「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」(平成31年金融庁告示第13号)が適用され、連結レバレッジ比率を3%以上に維持することが求められています。
当社グループの上記比率又は連結子会社の自己資本規制比率が著しく低下した場合には、レピュテーショナルリスクの波及や信用水準の低下により流動性懸念が生ずる可能性があります。さらに、上記の各規制により要請される最低基準を下回った場合に有効な対策(資本増強策等)を講じられない場合には、内外の監督当局から業務改善命令や業務の全部又は一部の停止等の措置を受ける可能性があります。
当社グループにおいて上記の自己資本規制・流動性規制を遵守するために、規制により要請される最低水準に適切なバッファーを上乗せした社内管理水準を会議体で決議して、自己資本規制比率・流動性規制比率のモニタリングを行い、遵守状況について経営に報告しております。
規制比率がこの社内管理水準を下回った場合には、CFOは、規制担当部署を通じ原因の発生したグループ会社に対し、当該状況、要因及び事後の対応方針等を報告させます。また必要に応じて、社内管理水準を回復するよう予め定めた対応策を実施します。
もっとも、これらの対応策にもかかわらず自己資本規制・流動性規制を遵守できなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(15)当社グループが発行する有価証券に関するリスク
当社株式は、東京及び名古屋の各金融商品取引所に上場しており、その売買については金融商品取引法をはじめとする関連法令及び各金融商品取引所が定める諸規則等に基づいて行われております。これらの規則等により、当社に係る重要情報の周知を目的として売買停止の措置がなされ、あるいは当社株式について大量の注文執行により売買が一時的に停止される等、当社株式の売買ができなくなる状況が生じる可能性があります。
当社は、ストック・オプションの目的で新株予約権を発行しておりますが、将来において新株予約権の行使がなされた場合は、1株当たり利益が希薄化する可能性があります。また、当社株式を大量に保有する株主が当社株式を売却することに伴って、株価が下落する可能性があります。
(16)流動性リスク
当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っております。このため、適切な流動性を確保し、財務の安定性を維持することが必要となります。しかし、市場環境の変化や当社グループ各社の財務内容の悪化などにより、資金繰りに支障をきたすこと、あるいは通常よりも著しく高いコストでの資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクがあります。
当社グループの資金調達が困難になった場合には、保有する資産を圧縮する等の対応が必要となります。しかし、市場環境の悪化により市場全体の流動性が低下すると、当社グループが売却しようとする資産のうち信用度の低い資産の流動性はより一層低下し、保有資産の処分ができなくなったり、取得原価を大幅に下回る価格であっても売却せざるを得なくなるリスクがあります。
こうした流動性リスクが顕在化した場合、当社グループの業務継続が困難になる可能性や、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(17)オペレーショナルリスク
当社グループは、多様な業務を行うことに伴うオペレーショナルリスクに晒されており、かかるリスクが顕在化した場合には、当社グループが損失を被ること等により、当社グループの業績及び社会的信用に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、オペレーショナルリスクを以下のように分類して管理しております。
・事務リスク
役職員が正確な事務を怠る、あるいは事故・不正等を起こすことにより損失を被るリスク
・システムリスク
コンピュータシステムのダウン又は誤作動、システムの不備等に伴い、損失を被るリスク、さらにコンピュータが不正に使用されることにより損失を被るリスク
・情報セキュリティリスク
情報資産に対する脅威の発現のために、情報セキュリティ(機密性、完全性、可用性の維持)が確保されないリスク
・コンプライアンスリスク
役職員が企業倫理及び法令諸規則等に従わないことにより損失を被るリスク及びお客様等との法的紛争により損失を被るリスク
・リーガルリスク
不適切な契約締結、契約違反により損失を被るリスク
・人的リスク
労務管理や職場の安全環境上の問題が発生することにより損失を被るリスク、必要な人的資源が確保されないリスク
・有形資産リスク
自然災害や外部要因又は役職員の過失などの結果、有形資産の毀損等により損失を被るリスク
当社グループでは、特に有価証券関連業務において、取引の執行や決済等を処理するコンピュータシステムのダウン又は誤作動、システムの不備、システムの新規開発・統合等に起因するシステム障害、サイバー攻撃等によるデータの改ざんやお客様の情報の流出等が発生した場合、業務が正常に行えなくなることによる機会損失や損害賠償責任の発生、社会的信用の低下等を通じて当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループが最近重要性を増していると認識しているオペレーショナルリスクとしては、以下が挙げられます。
・サイバーセキュリティリスク
外部からのサイバー攻撃によるシステムサービスの停止、情報漏えい、データ改ざん等により損失を被るリスク
・マネー・ローンダリング及びテロ資金供与にかかわるリスク
金融庁作成の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」をはじめ、各国の規制等に基づき態勢整備を実施するも有効に機能せず、当社グループがマネー・ローンダリング等に関与してしまうリスク
・外部委託先管理リスク
業務委託先の不適切な選定、契約不備、倒産・買収等による業務撤退、不正行為、過失等により損失を被るリスク
(18)規制等に関するリスク
当社グループの各社は、その業務の種類に応じた法令や自主規制団体の規程等による規制を受けております。グループの主たる証券会社である大和証券をはじめ、大和アセットマネジメント株式会社、大和企業投資株式会社等が、金融商品取引業者として金融商品取引法等の規制を受けているほか、大和ネクスト銀行が銀行法等の規制を受けております。
また、大和証券は貸金業等の兼業業務に関して関係法令上の規制にも服しております。さらに、当社グループは金融商品取引法の定めにより、親法人等・子法人等が関与する行為の弊害防止のため、当該関係を利用した一定の取引の制限や、親法人等・子法人等間での情報授受や利用の制限等を受けており、お客様の利益が不当に害されることがないよう、適切な情報管理と内部管理体制の整備が求められております。また、当社は、一部のグループ各社の主要株主として、監督当局が公益又は投資家保護のために必要かつ適当であると認めるときは報告・資料提出命令を受ける等一定の規制を受ける可能性があります。一方、海外の子会社には現地の法制上、証券会社や金融機関としての規制を受けるものもあります。
なお、当社は、特別金融商品取引業者である大和証券の最終指定親会社として監督当局の連結規制・監督の対象となっております。また、当社グループは「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」における「指定親会社グループ」に該当し、連結自己資本の適切性を含む一定の事項について連結ベースでの監督を受けております。
加えて、G20(金融・世界経済に関する首脳会合)主導の下、各種金融規制・監督の強化が包括的に進む中、これらの国際的な金融規制や各国独自の金融規制が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
上記のように、当社グループの事業の多くは行政及び自主規制団体による監督・規制やグローバルな金融規制のもとにあり、将来における法規・規程、政策、規制の変更が当社グループの事業活動や経営体制、さらには当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(19)LIBOR等の公表停止に伴うリスク
2012年に顕在化したロンドン銀行間取引金利(以下、「LIBOR」という。)不正操作問題以降の金利指標改革により、2021年12月末をもってLIBORは公表停止となりました(米ドル建ての主要テナーについては2023年6月末をもって公表停止予定)。
当社グループは、これらの公表停止に対応するためのプロジェクトチームを設置して対策を検討及び実行したことにより、2021年12月末に公表停止となった金利指標については、お客様への対応やモデル開発及びシステム移行を含む移行手続きをスムーズに完了したと考えております。また、2023年6月末に公表停止予定の米ドル建ての主要テナーに係るLIBORについても、既に新規取引は停止しており、残存する対象契約の件数及び残高も限定的となっています。
そのため、これらの公表停止に伴って当社グループに生じるリスクは限定的であると考えておりますが、金融指標の移行時に該当金利指標を参照する当社グループの金融資産及び金融負債の価格及び市場流動性に影響が生じた場合、債券とデリバティブにおいて代替指標への移行タイミングに違いが出る等の市場動向の不確実性、契約更改時に取引の相手方からの同意が得られないことにより争訟が生じた場合、システム開発やオペレーションの整備漏れなどにより追加的な費用が発生した場合等には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(20)法令遵守に関するリスク
当社グループは、グループ全体の内部統制機能を強化し、より充実した内部管理体制の構築に努めるとともに、役職員に対する教育・研修等を通じ、インサイダー取引規制を含め法令遵守の徹底に注力しております。しかしながら、事業を進めていく上で、その執行過程に関与する役職員の故意又は過失により法令違反行為が発生する可能性は排除し得ず、周到な隠蔽行為を伴った意図的な違法行為等については、長期間にわたって発覚しない可能性もあるため、当社グループの業績に悪影響を与えるような規模の損害賠償を取引先等から求められる可能性があります。
さらに、役職員の不正行為のみならず、法人としての当社又はグループ会社に法令違反その他の問題が認められた場合には、監督当局から課徴金の納付命令、業務の制限又は停止等の処分・命令を受ける可能性があります。また、当社グループは情報管理の徹底や「個人情報の保護に関する法律」への対応については万全の体制を敷いていると認識しておりますが、過失や不正行為等により当社グループの保有する顧客情報等各種の情報が外部に流出した場合、当社グループの信用が失墜し、クレームや損害賠償請求、監督当局からの処分等を受ける可能性があります。
当社グループの事業は、お客様からの信用に基づく部分が大きいため、法令遵守上の問題が発生し当社グループに対する社会的信用が低下した場合には、お客様との取引が減少し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす事態が生じる可能性があります。
(21)財務報告に係る内部統制に関するリスク
当社は、金融商品取引法の財務報告に係る内部統制に関する規定及び関連する諸規則の施行に伴い、財務報告に係る内部統制に必要な体制整備・運営に努めております。まず業務プロセスの選定に際しては、連結ベースの財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制(全社的な内部統制)の評価をもとに、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を考慮しております。業務プロセスに係る内部統制の評価範囲については、重要な事業拠点における重要な勘定科目を選定し、これに至る業務プロセスを主な評価対象としております。評価対象とした各プロセス並びに全社的な観点で評価する決算・財務報告プロセスについては、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点の整備及び運用状況を検証することによって、内部統制の有効性に関する評価を行っております。しかしながら、こうした取組みが有効に機能せず、監査法人による内部統制監査の結果、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発見された場合等においては、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(22)訴訟リスク
当社グループでは、経営方針等において、お客様本位の営業姿勢を掲げており、今後もより一層のサービスの拡充に努めていく所存ではありますが、お客様に対する説明不足やお客様との認識の不一致等によってお客様に損失が発生した場合には、当社グループが訴訟の対象となることがあります。その損失が当社グループの責任に起因する場合、当社グループは民法上、金融商品取引法上、又はその他の根拠に基づく損害賠償義務を負う可能性があります。このほか当社グループは、広範な事業を行い、様々な規制に服していることから、多数の当事者を巻き込み、多額の請求金額に上るものを含め、様々な訴訟リスクに晒されており、訴訟に伴う損害賠償そのもののみならず訴訟内容に起因する社会的信用の低下が当社グループの事業活動や経営体制、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが事業に関して使用している商標やビジネスモデル等のなかには、現在出願中のため、権利が確定していないものもあります。当社グループの確認の不備等がなかった場合においても、結果として当社グループが第三者の知的財産権を侵害し、損害賠償請求又は差止請求を受ける可能性があります。
(23)レピュテーショナルリスク
当社グループの事業は、法人、個人のお客様や市場関係者からの信用に大きく依存しております。「3 事業等のリスク」に記載した事象が発生した場合、特に「(17)オペレーショナルリスク」、「(20)法令遵守に関するリスク」、「(21)財務報告に係る内部統制に関するリスク」及び「(22)訴訟リスク」に記載したように、当社グループや役職員の責任に起因する法令違反や訴訟等が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下する可能性があります。また、憶測に基づいたり、必ずしも正確な事実に基づいていない風説・風評の流布に晒された場合、その内容が正確でないにもかかわらず、当社グループの社会的信用が低下する可能性もあります。その結果、お客様による取引停止等が生じ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(24)リスク管理及び手続の有効性に関するリスク
当社グループは、リスク管理方針を踏まえて手続の強化に努めておりますが、リスク管理の有効性は事業内容やグループ内各企業の特性により異なります。また、新しい分野への急速な業務展開に際しては、必ずしも有効に機能しない可能性があります。
なお、リスク管理方針については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ④リスクアペタイト・フレームワーク及び⑤リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。
リスク管理の前提としては、市場や投資先に関する情報の収集・分析・評価が重要となりますが、その情報自体が不正確、不完全、あるいは最新のものではないことにより、適切な評価が行えない場合があり、また、一部のリスク管理手法においては、過去の動向に基づく定量的判断を伴うものがあるため、予想を超えた変容や突発的事象に対しては、必ずしも有効でない可能性があります。リスク管理が有効に機能しない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(25)優秀な人材を確保できないリスク
当社グループでは、有価証券関連業務を中心に高度な専門性を必要とする業務を行っております。いずれの分野でも高いパフォーマンスを発揮するには、優秀な人材の確保が前提となるため、業務特性に応じた人事制度、研修制度の充実及びその継続的な改善、採用活動の強化に努めております。しかしながら、金融業界内外において、人材獲得競争は激しく、優秀な人材の採用が困難な状態や外部、特に競合他社への大量流出等が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(26)会計基準や税制等の変更に関するリスク
日本の会計基準は国際財務報告基準(IFRS)とのコンバージェンスを進めているところであり、ここ数年の間に数多くの改正が行われ、今後もさらなる改正が予定されております。また、IFRS任意適用を促進する方策も打ち出されており、将来日本においてIFRSが強制適用される、あるいは当社がIFRSの任意適用を行う可能性もあります。これらの改正、強制適用あるいは任意適用が行われた場合、当社グループの事業運営や業績等の実体に変動がない場合であっても、例えば収益の認識、資産・負債の評価、連結範囲の見直し等に係る会計処理方法が変更されることに伴い、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、税制等が変更されることとなった場合においても、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(27)その他のリスク
当社グループでは、コンピュータシステムの取得・構築に係る投資により発生する償却コスト及び維持・運営コストの増大が業績に悪影響を及ぼす可能性があるほか、店舗・オフィス等の不動産やコンピュータシステム等について、資産の陳腐化や収益性若しくは稼働率の低下が生じた場合又はこれらの処分が行われた場合には、減損処理による損失計上や除売却損失の計上が必要となる可能性もあります。
このほか、当社グループは税効果会計に係る会計基準に基づいて、税務上の便益を将来の課税所得等に関する見積りや仮定に基づき繰延税金資産として計上しております。実際の課税所得等は見積りや仮定と異なる可能性があり、将来において繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合には繰延税金資産は減額され、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼすことになります。
リスクが顕在化する時期
当社グループは、可能なものについては、リスクが顕在化する時期について短期、中長期等の想定を置き、発生の可能性、発生時の影響度等も勘案して、各種ストレステストに反映させる対応をしております。
本項における将来に関する事項は、別段の記載がない限り、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められた企業会計の基準に基づき作成されております。また、当社は、連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針に基づいていくつかの重要な見積りを行っており、これらの見積りは一定の条件や仮定を前提としております。そのため、条件や仮定が変化した場合には、実際の結果が見積りと異なることがあり、結果として連結財務諸表に重要な影響を与える場合があります。重要な会計方針のうち、特に重要と考える項目は、次の4項目です。
① トレーディング商品の評価
当社グループでは、トレーディング商品に属する有価証券及びデリバティブ取引は、時価をもって連結貸借対照表価額とし、評価損益はトレーディング損益として連結損益計算書に計上しております。また、「時価の算定に関する会計基準」(企業会計基準第30号 2019年7月4日)等を適用しており、トレーディング商品の時価は、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、3つのレベルに分類しております。これらの時価は「第5 経理の状況 (金融商品関係) 2. 金融商品の時価等及び時価のレベルごとの内訳等に関する事項」に記載しております。
時価測定に用いた評価技法及びインプットの詳細は以下のとおりであります。これらは、市場参加者が商品を評価するときに考慮するであろう当社グループによる仮定及び見積りを含んでおります。
(ⅰ)商品有価証券等
主に同一又は類似の商品に関する市場価格を用いております。また、特定の負債性金融商品及び資産担保証券については、デリバティブ取引に準じた評価技法もしくは、ディスカウント・キャッシュ・フロー・モデルにより時価を測定しております。
(ⅱ)デリバティブ
上場デリバティブについては原則として市場価格を、店頭デリバティブについては、評価技法により理論価格を算定しております。
デリバティブ取引の理論価格には、信用リスク及び流動性リスクを考慮した調整が含まれており、時価測定においては、市場で一般に用いられるリスク中立測度の仮定のもとでの期待キャッシュ・フローの現在価値を、主に数値積分法、有限差分法及びモンテカルロ法による価格算定モデルにより算定しております。
価格算定モデルには、金利、為替レート、株価、ボラティリティ、相関係数などの様々なインプットがあります。また、市場で観察可能でないインプットとしては、相関係数、長期のボラティリティ、長期のクレジット・スプレッドなどがあります。
価格算定モデルの選択及びその価格算定モデルに投入するインプットの決定、信用リスク及び流動性リスクにかかる評価調整には見積り及び前提を含んでおり、特に、市場で観察可能でないインプットを使用する場合には、その見積り及び前提は、トレーディング商品の評価額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
算定に用いたインプットを含め、価格算定モデルは社内における指針に基づいて承認され、価格算定モデルの開発部署から独立した部署が、モデル内の仮定及び技法、算定に用いたインプットについて検証を行っております。また、価格算定モデルを観察可能な市場情報や代替可能なモデルとの比較分析等により、市場動向に合わせて調整する体制を構築しております。
経営者は、時価測定に用いられた前提は合理的であると考えております。しかしながら、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来キャッシュ・フローや時価の下落を引き起こすような見積りの変化が、評価金額に不利に影響し、結果として、連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
② 有価証券の評価
当社グループでは、投資有価証券、営業投資有価証券等のトレーディング商品に属さない有価証券を保有しております。
(ⅰ)投資有価証券
市場価格のあるものについては、市場価格が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。具体的には、当連結会計年度末における市場価格の下落率が取得原価の50%以上の場合は、著しい下落かつ回復する見込みがないものと判断して、減損処理を行っております。市場価格の下落率が取得原価の30%以上50%未満の場合は、市場価格の推移及び発行会社の財政状態等を総合的に勘案して回復する見込みを検討し、回復する見込みがあると認められる場合を除き、減損処理を行っております。市場価格のないものについては、実質価額が著しく低下し、かつ、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。
(ⅱ)営業投資有価証券
営業投資有価証券は、投資部門における非上場株式、国内外の再生可能エネルギー、インフラストラクチャーへの投資等により構成されております。
営業投資有価証券の評価については、その評価額に基づき実質価額を見積り、その実質価額が帳簿価額を下回り、損失発生の可能性が高い場合には投資損失引当金を計上しております。さらに、実質価額が帳簿価額に比して50%以上下落し、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられない場合には、減損処理を行っております。実質価額の算定の前提となる当社の財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。
1) 非上場株式
株式の評価額は、投資先の事業計画等をもとにした将来キャッシュ・フロー、類似取引事例との比較などにより算定しております。
2) 国内外の再生可能エネルギー、インフラストラクチャーへの投資等
評価額は、投資先の事業計画等をもとにした将来キャッシュ・フロー、財政状態などにより算定しております。
これらの評価額の測定には経営者が妥当と判断する見積り及び仮定を使用しており、これらの見積り及び仮定は、減損損失又は投資損失引当金の計上の要否の判断及び認識される損失金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
経営者は、実質価額の見積りに用いられた仮定は合理的であると判断しております。ただし、これらの見積りには不確実性が含まれているため、将来の予測不能な前提条件の変化などにより、これらの評価に関する見積りが変化した場合には、結果として将来において当社及び連結子会社が減損処理又は投資損失引当金の計上を行う可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループでは、各資産グループにおいて、収益性が著しく低下した資産については、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。なお、資産のグルーピングは、継続使用資産のうち、証券店舗等の個別性の強い資産については個別物件単位で行い、その他の事業用資産については管理会計上の区分に従って行っております。
④ 繰延税金資産の状況
(ⅰ)繰延税金資産の算入根拠
当社グループでは、会計基準に従い、税務上の繰越欠損金や企業会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差額である一時差異について税効果会計を適用し、繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。繰延税金資産の回収可能性については、将来の合理的な見積可能期間における課税所得の見積額を限度として、当該期間における一時差異等のスケジューリングの結果に基づき判断しております。
(ⅱ)過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)
|
|
|
|
(単位:百万円) |
||
|
回次 |
第81期 |
第82期 |
第83期 |
第84期 |
第85期 |
|
決算年月 |
2018年3月 |
2019年3月 |
2020年3月 |
2021年3月 |
2022年3月 |
|
通算グループの課税所得 |
97,467 |
74,613 |
60,907 |
92,842 |
106,263 |
(注) 提出会社を通算親法人とする通算グループの所得を記載しております。また、記載した課税所得は法人税確定申告書上の繰越欠損金控除前の数値であり、その後の変動は反映されておりません。
なお、当連結会計年度末に係る連結貸借対照表上の繰延税金資産78億円のうち、提出会社を通算親法人とする通算グループの計上額合計は54億円であります。
(ⅲ)見積りの前提とした税引前当期純利益の見込額
提出会社を通算親法人とする通算グループの課税所得見積期間を3年とし、同期間の税引前当期純利益を1,654億円と見積もっております。
(ⅳ)繰延税金資産・負債の主な発生原因
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 税効果会計関係 1」に記載のとおりであります。
なお、ロシア・ウクライナ情勢に起因した資源価格の高騰、米国長期金利の上昇や米国の金融機関破綻に伴う経済情勢や相場環境の悪化は、現時点においてはこれらの見積りに重大な影響を及ぼしておりませんが、今後、入手可能となる情報等によりこれらの市場、経済または地政学リスクが顕在化した場合には、会計上の見積りに用いられた前提条件に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにおきましては、投資事業における保有資産の評価に関する見積りの変化による減損又は評価損の計上、不動産アセットマネジメント事業における資産の稼働率低下による財務内容悪化懸念などの可能性があります。
(2)当連結会計年度の財政状態の分析
<資産の部>
当連結会計年度末の総資産は前年度末比1兆1,178億円(4.1%)減少の26兆4,132億円となりました。内訳は流動資産が同1兆1,367億円(4.4%)減少の24兆8,728億円であり、このうち現金・預金が同7,255億円(15.8%)減少の3兆8,668億円、トレーディング商品が同3,792億円(4.7%)減少の7兆6,257億円、営業貸付金が同812億円(4.2%)増加の2兆150億円となっております。固定資産は同189億円(1.2%)増加の1兆5,403億円となっております。
<負債の部・純資産の部>
負債合計は前年度末比1兆1,534億円(4.5%)減少の24兆7,377億円となりました。内訳は流動負債が同1兆3,639億円(5.9%)減少の21兆5,812億円であり、このうちトレーディング商品が同4,966億円(10.0%)増加の5兆4,425億円、約定見返勘定が同6,074億円(110.8%)増加の1兆1,558億円、有価証券担保借入金が同1兆5,340億円(16.2%)減少の7兆9,296億円、銀行業における預金が同2,563億円(6.1%)減少の3兆9,327億円、短期借入金が同8,629億円(40.0%)減少の1兆2,928億円、コマーシャル・ペーパーが同1,453億円(125.3%)増加の2,613億円となっております。固定負債は同2,099億円(7.1%)増加の3兆1,521億円であり、このうち社債が同2,590億円(16.6%)減少の1兆3,045億円、長期借入金が同4,699億円(38.0%)増加の1兆7,069億円となっております。
純資産合計は同356億円(2.2%)増加の1兆6,754億円となりました。資本金及び資本剰余金の合計は4,776億円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益を638億円計上したほか、自己株式の消却を806億円、配当金399億円の支払いを行ったこと等により、同566億円(6.0%)減少の8,861億円となっております。自己株式の控除額は自己株式の消却等を行った結果、同626億円(46.7%)減少の715億円、その他有価証券評価差額金は同48億円(16.5%)減少の247億円、為替換算調整勘定は同274億円(58.1%)増加の747億円、非支配株主持分は同13億円(0.5%)増加の2,588億円となっております。
(3)当連結会計年度の経営成績の分析
① 事業全体の状況
当連結会計年度の営業収益は前年度比39.8%増の8,660億円、純営業収益は同7.5%減の4,642億円となりました。
受入手数料は2,799億円と、同10.8%の減収となりました。委託手数料は、市場環境の悪化により顧客フローが減少したことにより、同15.3%減の642億円となりました。引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料は、エクイティや債券の引受案件が減少し、同28.2%減の281億円となりました。
トレーディング損益は、エクイティ収益が減少したこと等により、同30.8%減の702億円となりました。
金融収支は、レポ取引の拡大等の影響により、同104.9%増の640億円となりました。
販売費・一般管理費は同2.9%増の3,979億円となりました。取引関係費は投信販売会社への支払手数料や旅費・運送費・交通費等の増加により同14.3%増の715億円、人件費は国内の賞与が減少した一方で海外の人件費が増加したことにより同0.5%増の1,997億円、不動産関係費は主にシステムにかかる器具備品賃借料、保守保険料の増加により同2.8%増の387億円となっております。
以上より、経常利益は同36.0%減の869億円となりました。
また、固定資産売却益等により特別利益が181億円(前年度90億円)、固定資産除売却損や投資有価証券売却損等により特別損失が83億円(前年度31億円)となり、法人税等及び非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度比32.7%減の638億円となりました。
② セグメント情報に記載された区分ごとの状況
純営業収益及び経常利益をセグメント別に分析した状況は次のとおりであります。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
|
純営業収益 |
経常利益又は経常損失(△) |
||||||
|
|
|
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
対前年同期 増減率 |
構成比率 |
2022年 3月期 |
2023年 3月期 |
対前年同期 増減率 |
構成比率 |
|
リテール部門 |
188,879 |
164,336 |
△13.0% |
35.4% |
41,807 |
25,886 |
△38.1% |
29.8% |
|
|
ホールセール部門 |
195,863 |
160,891 |
△17.9% |
34.7% |
50,951 |
2,822 |
△94.5% |
3.2% |
|
|
|
グローバル・マーケッツ |
134,353 |
102,850 |
△23.4% |
22.2% |
38,301 |
△3,130 |
- |
- |
|
グローバル・インベストメント・バンキング |
61,510 |
58,041 |
△5.6% |
12.5% |
10,693 |
4,738 |
△55.7% |
- |
|
|
アセット・マネジメント部門 |
71,052 |
70,394 |
△0.9% |
15.2% |
45,253 |
44,526 |
△1.6% |
51.3% |
|
|
|
証券アセット・マネジメント |
45,351 |
42,882 |
△5.4% |
9.3% |
21,995 |
18,076 |
△17.8% |
20.8% |
|
|
不動産アセット・マネジメント |
25,701 |
27,512 |
7.0% |
5.9% |
23,258 |
26,450 |
13.7% |
30.5% |
|
投資部門 |
11,055 |
16,446 |
48.8% |
3.5% |
7,192 |
13,068 |
81.7% |
15.0% |
|
|
その他・調整等 |
35,242 |
52,157 |
- |
11.2% |
△9,382 |
626 |
- |
0.7% |
|
|
連結 計 |
502,093 |
464,226 |
△7.5% |
100.0% |
135,821 |
86,930 |
△36.0% |
100.0% |
|
(注)経常利益又は経常損失(△)の構成比率は、当連結会計年度において経常利益であったセグメントの経常利益合計に占める、各セグメントの経常利益の割合としております。
[リテール部門]
リテール部門の主な収益源は、国内の個人投資家及び未上場会社のお客様の資産管理・運用に関する商品・サービスの手数料であり、経営成績に重要な影響を与える要因には、お客様動向を左右する国内外の金融市場及び経済環境の状況に加え、お客様のニーズに合った商品の開発状況や引受け状況及び販売戦略が挙げられます。
当連結会計年度においては、以下の事業計画に沿って活動を行いました。
1.資産管理型ビジネスモデルの実現
2.お客様ニーズを捉えた商品・サービスの提供、総資産アプローチによるソリューションビジネスの拡大
3.外部チャネルとの業務提携を活用したニュービジネス展開と収益化
4.マスマーケティング及びお客様対応のデジタルシフト、サステナビリティへの取り組み
各項目の実績は以下のとおりです。
1.ゴールベース・アプローチツールの高度化や、残高ベース収益に寄与する商品の開発など、資産管理型ビジネスモデルの実現に向けた取り組みを進めました。ファンドラップや投信フレックスプランなどのストック関連資産残高拡大による残高ベース収益の拡大に取り組みました。
2.お客様の声を起点とする商品・サービスの向上を目的に、「お客様満足度協議会」を半期毎に開催し、お客様向け書類の電子交付化等をはじめとした事務手続きの簡便化を行い、お客様の利便性向上に向け取り組みました。また、オルタナティブ資産への新たな投資機会を提供する「ダイワ・WiL3号ベンチャーキャピタル・ファンド」や、資産運用に加え相続・事業承継等富裕層のお客様の多様なニーズにお応えする「プラチナウェルスラップサービス」の取扱いを開始するなどお客様のあらゆるニーズに応える商品・サービスの提供に努めました。
3.お客様基盤の拡大や資産形成分野における商品・サービス提供を目的として、株式会社ゆうちょ銀行において「ゆうちょファンドラップ」の取扱いを開始しました。また、信金中央金庫と連携し開発した「しんきんファンドラップ」の取扱いを多摩信用金庫で開始しました。上記に加え、株式会社四国銀行との包括的業務提携において、2023年4月の業務開始に向け準備を進めました。
4.お客様の利便性の向上を目的として、オンライントレードのリニューアルの実施やお客様の多様なニーズに合わせたメールサービスコンテンツの拡充に取り組みました。
当連結会計年度においては、昨年度に引き続き資産管理型ビジネスモデルへの移行とコスト構造改革などに取り組みました。市場環境の不透明感により個人投資家のアクティビティが低調となり、エクイティ収益・投信募集手数料等が減少しました。一方で、ラップ口座サービスは契約額・純増額がともに増加したことにより契約資産残高は過去最高の3兆954億円となり、ラップ関連収益である投資顧問・取引等管理料も増加しました。
当連結会計年度のリテール部門における純営業収益は前年度比13.0%減の1,643億円、経常利益は同38.1%減の258億円となりました。リテール部門の当連結会計年度の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ35.4%及び29.8%でした。
[ホールセール部門]
ホールセール部門は、機関投資家等を対象に有価証券のセールス及びトレーディングを行うグローバル・マーケッツと、事業法人、金融法人等が発行する有価証券の引受けやM&Aのアドバイザリー業務を行うグローバル・インベストメント・バンキングによって構成されます。グローバル・マーケッツの主な収益源は、機関投資家に対する有価証券の売買に伴って得る顧客フロー収益及びトレーディング収益です。グローバル・インベストメント・バンキングの主な収益源は、引受業務やM&Aアドバイザリー業務によって得る引受け・売出し手数料とM&A手数料です。グローバル・マーケッツにおいては、地政学リスクや国際的な経済状況等で変化する市場の動向や、それに伴う顧客フローの変化が、経営成績に重要な影響を与える要因となります。グローバル・インベストメント・バンキングにおいては、顧客企業の資金調達手段の決定やM&Aの需要を左右する国内外の経済環境等に加え、当社が企業の需要を捉え、案件を獲得できるかどうかが経営成績に重要な影響を与える要因となります。
ホールセール部門として以下の事業計画を実行しました。
1.お客様ニーズを捉えた多様なプロダクト・高度なソリューションの提供
2.高く評価されたリサーチ力を活かしたブローカービジネス基盤拡大
3.SDGs関連ファイナンスの促進による企業のサステナビリティ支援
4.デジタル人材拡充とデータ駆動型ビジネスの推進
各項目の実績は、以下のとおりです。
1.M&Aビジネスへの取組みとして、業界再編やグループ内再編などの案件獲得に努め、グローバルネットワークの拡大・強化に取り組みました。IPOビジネスへの取組みとしてはDaiwa Innovation Networkなどを介してスタートアップ企業の成長支援を推進しました。その他、大型ファイナンス案件獲得に取り組みました。
2.アナリストによる高品質なリサーチを国内外の幅広い投資家に提供し、ブローカービジネスの拡大に努めました。
3.市場拡大するグリーンファイナンス/トランジション・ファイナンスの促進に関する取組みの強化に努めました。
4.デジタルIT活用力育成プログラムを通じたデジタル人材の育成とともに、データ分析の高度化に取り組みました。
グローバル・マーケッツのエクイティ収益は、市場環境の不透明感を背景に顧客フローが減少し、また、ボラティリティの高い相場展開となる中、ポジション運営にも苦戦したことから、減収となりました。フィクスト・インカム収益は国内においてクレジットスプレッドの拡大を受け、クレジットのポジション運営に苦戦したことから、減収となりました。その結果、当連結会計年度の純営業収益は前年度比23.4%減の1,028億円、経常損失は31億円となりました。
グローバル・インベストメント・バンキングでは、株式会社ゆうちょ銀行の売出し及びスカイマーク株式会社の新規上場においてグローバル・コーディネーター(注)1を務めたほか、富士フイルムホールディングス株式会社によるソーシャルボンド(注)2、国立大学法人東京工業大学によるサステナビリティボンド(注)3などの発行において事務主幹事及びStructuring Agent(注)4を務めました。当連結会計年度の引受け・売出し手数料は、前年度比28.2%減の281億円となりました。M&Aアドバイザリー業務では、株式会社ニトリホールディングスと株式会社エディオンの資本業務提携やJX金属株式会社によるタツタ電線株式会社の完全子会社化をはじめとする業界再編・グループ再編案件などの国内案件に加えて、様々な国・地域で多様な業種の案件に関与しました。これらの結果、グローバル・インベストメント・バンキングの当連結会計年度の純営業収益は前年度比5.6%減の580億円となりました。経常利益は同55.7%減の47億円となりました。
当連結会計年度のホールセール部門における純営業収益は前年度比17.9%減の1,608億円、経常利益は同94.5%減の28億円となりました。ホールセール部門の当連結会計年度の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ34.7%及び3.2%でした。
(注)1 グローバル・コーディネーター:株式の公募・売出しを国内外に対して実施するときに、全体の業務を統括する主幹事証券会社。
(注)2 ソーシャルボンド:特定の社会的課題への対処やその軽減、あるいは、ポジティブな社会的成果の達成を目指す新規又は既存のプロジェクトに必要な資金を調達するために発行する債券。
(注)3 サステナビリティボンド:企業や地方自治体などが、国内外のグリーンプロジェクト及びソーシャルプロジェクト双方に要する資金を調達するために発行する債券。
(注)4 Structuring Agent:SDGs債などの発行にあたって、フレームワークの策定やセカンドオピニオン取得に関する助言などを通じて、SDGs債などの発行支援を行う者。
[アセット・マネジメント部門]
アセット・マネジメント部門の収益は、主に当社連結子会社の大和アセットマネジメントにおける投資信託の組成と運用に関する報酬と、連結子会社の大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人及びサムティ・レジデンシャル投資法人の不動産運用収益によって構成されます。また、当社持分法適用関連会社である三井住友DSアセットマネジメントの投資信託の組成と運用及び投資顧問業務に関する報酬からの利益、並びに同じく持分法適用関連会社であるサムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の不動産運用収益からの利益は、それぞれ当社の持分割合に従って経常利益に計上されます。経営成績に重要な影響を与える要因としては、マーケット環境によって変動するお客様の投資信託及び投資顧問サービスへの需要と、マーケット環境に対するファンドの運用パフォーマンスや、お客様の関心を捉えたテーマ性のある商品開発等による商品自体の訴求性が挙げられます。大和リアル・エステート・アセット・マネジメント、大和証券オフィス投資法人、サムティ・レジデンシャル投資法人、サムティ株式会社及び大和証券リビング投資法人の経営成績は、国内の不動産市場・オフィス需要の動向の影響を受けます。
当連結会計年度において、アセット・マネジメント部門は以下の事業計画を実行しました。
1.運用力・発掘力・商品アレンジ力強化による既存事業の拡大
2.オルタナティブ資産を投資対象とした商品の開発等、新ビジネスの研究開発・事業化
3.不動産アセット・マネジメント事業における資産運用力強化及び事業基盤の確立
4.グループ内連携による不動産小口化商品事業拡大など不動産ビジネスの推進
各項目の実績は以下のとおりです。
1.大和アセットマネジメントではお客様ニーズを的確にとらえた商品開発及び投資家利益を重視したファンド運営に加え、継続的なパフォーマンス向上により運用資産残高が拡大しました。
2.リテール部門のお客様への提供に向け、米国企業に直接融資をするプライベート・クレジットへの投資をはじめとしたオルタナティブファンドの組成に取り組みました。
3.大和リアル・エステート・アセット・マネジメントでは大和証券リビング投資法人、大和証券レジデンシャル・プライベート投資法人及び大和証券ロジスティクス・プライベート投資法人の運用残高拡大によって運用資産残高が増加しました。
4.大和証券リアルティでは、信託受益権スキームを活用した不動産小口化商品を開発し、リテール部門のお客様への提供を行いました。
大和アセットマネジメントにおける公募株式投信及び公募公社債投信の運用資産残高は、資金純増を確保するも、時価の下落により、前年度末比0.1兆円減の21.5兆円となりました。大和アセットマネジメントの営業収益は前年度比6.1%減の704億円、経常利益は同18.1%減の156億円となりました。
不動産アセット・マネジメントでは、新規物件の取得や資産の入替を行い、大和リアル・エステート・アセット・マネジメント及びサムティ・レジデンシャル投資法人の2社を合わせた運用資産残高は前年度末比902億円増の1兆3,692億円となり、収益も増加しました。
その結果、当連結会計年度のアセット・マネジメント部門の純営業収益は前年度比0.9%減の703億円、経常利益は同1.6%減の445億円となりました。アセット・マネジメント部門の当連結会計年度の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び連結経常利益に占める割合は、それぞれ15.2%及び51.3%でした。
[投資部門]
投資部門は主に、連結子会社である大和企業投資、大和PIパートナーズ及び大和エナジー・インフラで構成されます。投資部門の主な収益源は、投資先の新規上場(IPO)・M&A等による売却益や、投資事業組合への出資を通じたキャピタルゲインのほか、契約に基づきファンドから受領する、管理運営に対する管理報酬や投資成果に応じた成功報酬、株式への配当、売電収入などのインカムゲインです。
投資部門では以下の事業計画を実行しました。
1.優良な投資機会の発掘、投資先のバリューアップ及びモニタリング体制の強化
2.エネルギー分野でのキャピタル・リサイクリングモデルの推進
3.継続的なVCファンド運用ビジネスの確立
4.SDGsを意識した社会的意義のある投資対象の開拓
各項目の実績は以下のとおりです。
1.大和PIパートナーズでは、アジアで活動する投資家のハブとなっているシンガポールにおいて同社の現地法人が営業を開始し、東南アジアにおける投資活動を強化しました。
2.大和エナジー・インフラでは、太陽光事業に特化した私募ファンドへの運用資産の拠出により、資本を有効活用するキャピタル・リサイクリングを推進しました。
3.大和企業投資では、国内外の成長企業へ着実に投資を実行したほか、投資先の上場などを通じた既存投資案件の回収を進めました。
4.大和PIパートナーズでは、アジア地域の経済成長や産業・技術革新の基盤づくりに貢献する企業への投資を実行しました。大和エナジー・インフラでは、国内太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業やインフラ事業に対する投資を実行しました。
大和PIパートナーズでは、プライベート・エクイティ投資による収益を確保したほか、大和エナジー・インフラは再生可能エネルギー投資からの収益が拡大し、インカムゲインに加えキャピタルゲインを計上しました。当連結会計年度における投資部門の純営業収益は前年度比48.8%増の164億円、経常利益は同81.7%増の130億円となりました。投資部門の純営業収益及び経常利益のグループ全体の連結純営業収益及び経常利益に占める割合は、それぞれ3.5%及び15.0%でした。
[その他]
その他の事業には、主に大和総研によるリサーチ・コンサルティング業務及びシステム業務のほか、大和ネクスト銀行による銀行業務などが含まれます。
当連結会計年度において大和総研グループは以下の事業計画を実行しました。
1.ITサービスのプラットフォーム化やAI・データサイエンスによる新たな価値の創出
2.高品質で安定的なサービスを低コストで提供することで、大和証券グループのコストダウンへ貢献
3.顧客特性に応じた営業体制、ビジネスアナリスト等による顧客ニーズを踏まえた高付加価値の提案活動、データサイエンスや新技術の活用を含むシステムソリューションによる顧客基盤の拡大、新たな事業展開
4.情報発信と情報収集・意見交換との好循環を起こしてリサーチクオリティを向上する
各項目の当連結会計年度における実績は以下のとおりです。
1.当社グループを含む金融機関をはじめとするお客様に対してAI・データサイエンスを活用した各種サービスの提供を着実に実行しました。また、複数のクラウドサービスの特徴を活かしたマルチクラウドによるソリューション提供を可能とするインフラ基盤の拡充、健康保険組合向けBPOサービスの受託体制の拡充を推進しました。加えて、AI・データサイエンスなど先端技術に特化した、新ソリューション創出の礎となる情報を提供するサイト「WORLD」をコーポレートサイトに開設しました。
2.設計開発部門における開発単価・開発工数の低減や、運用保守部門における当社グループ内外のシステム運用・保守業務の統合等により、当社グループのITコスト低減及び生産性向上に貢献しました。
3.顧客特性に応じた営業体制のもとで、より付加価値の高い提案を実施するとともに、他社サービスとの連携・活用を戦略的に推進し、お客様ニーズを的確に捉えた提案等を通じた関係性の深化による顧客の獲得や取引の大口化により顧客基盤を拡大しました。また、コンサルティング部門の営業体制を強化しシステム部門との連携促進を図るなど、組織体制の整備を行いました。
4.シンクタンクとして、金融庁等に対してNISAの抜本的拡充に関する政策提言活動を実施するとともに、経済・社会の時流を踏まえたテーマに関してタイムリーな情報発信を実施し、プレゼンス向上に寄与しました。
当連結会計年度において大和ネクスト銀行は以下の事業計画を実行しました。
1.競争力ある金利の提供と魅力ある新商品・新サービスの提供
2.グループ内連携の更なる強化、融資ビジネスにおける案件の積み上げ
3.証券化商品を中心とした運用残高の拡大、マーケット動向を踏まえたポートフォリオの見直し
4.応援定期預金の残高拡大やESG投融資の促進等への取り組み
各項目の当連結会計年度における実績は以下のとおりです。
1.外貨預金について、業界トップ水準の金利を維持するとともに、キャンペーンを実施して新規の預金を取り込みました。
2~3.市況環境の変化に応じたポートフォリオの見直しと、投融資残高の拡大に向け取組みました。
4.サステナビリティKPIの一つである応援定期預金の残高拡大に向けた取り組みを行いました。また、マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策の強化に向けた態勢整備を継続し、リスク管理のさらなる改善を行いました。
大和ネクスト銀行の当連結会計年度末の預金残高(譲渡性預金含む)は前年度末比6.1%減の3.9兆円、銀行口座数は前年度比5.9%増の166万口座となりました。当連結会計年度の業績は、運用収益が大幅な増収となった結果、増収増益となりました。
その結果、その他・調整等に係る純営業収益は521億円(前年度352億円)、経常利益は6億円(前年度経常損失93億円)となりました。
③ 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループでは、2021年度から2023年度にかけての中期経営計画~“Passion for the Best”2023~を公表し、業績KPIとして自己資本利益率(ROE)及び経常利益、財務基盤KPIとして連結総自己資本規制比率を数値目標として掲げました。また、お客様本位のクオリティNo.1を追求する指標として、大和証券預り資産残高とともにリテール部門残高ベース収益比率(注)1、新規ビジネス領域への拡大を進めるハイブリッド戦略進捗の指標として、ハイブリッド関連経常利益・ハイブリッド関連経常利益比率(注)2をKPIとして設定しました。
中期経営計画2年目となる当連結会計年度においては、業績KPIはROE10%以上目標に対し4.6%、連結経常利益2,000億円以上目標に対し869億円となりました。財務基盤KPIの連結総自己資本規制比率は21.27%(注)3と、目標の18%以上を上回って推移しています。クオリティNo.1のKPIである大和証券預り資産は、90兆円以上目標に対して74.7兆円、リテール部門残高ベース収益は50%以上目標に対して50.8%となりました。また、ハイブリッドKPIのハイブリッド関連経常利益は450億円、ハイブリッド経常利益率は52%となりました。
2022年度は、長引くコロナ禍における様々な制約や地政学リスク、インフレの進行や金融政策の見直しなどの不透明感が増す相場環境となりましたが、ハイブリッド戦略の進捗により付加価値の高い商品・サービスの創出や収益構造の多様化が進展し業績を支えるとともに、中期経営計画の柱である資産管理型ビジネスモデルへの転換が着実に進捗した一年となりました。また、中長期的な経営指針となる「2030Vision」の根底に取り入れたサステナビリティへの取組み推進においても、サステナブルファイナンスへの社会的ニーズの一層の高まりを受けてSDGs債の引受け実績を積み上げ、着実な進捗があったと評価しています。また、幅広い国民の金融リテラシー向上に貢献するべく、金融経済教育への取組みを強化する観点から、新たに金融経済教育担当役員を設置しました。
(注)1 残高ベース収益:投信代理事務手数料、投資顧問料・取引等管理料、銀行代理店報酬、投信フレックスプラン残高手数料など
(注)2 ハイブリッド関連経常利益:不動産アセットマネジメント、大和エナジー・インフラ、大和ネクスト銀行など、ハイブリッド事業から生じる利益
(注)3 連結総自己資本規制比率は有価証券報告書提出日における速報値を記載しており、確定値は算出完了次第、当社ホームページにて公表する予定です。
④ 経営成績の前提となる2022年度のマクロ経済環境
<海外の状況>
世界経済は、総じて2020年前半の新型コロナウイルスの感染拡大による落ち込みからの拡大基調が続いていますが、その改善ペースは鈍化しつつあります。IMF(国際通貨基金)が2023年4月に公表した世界経済見通しによれば、2020年の大幅な落ち込みからの反動もあり、2021年の世界経済成長率は+6.3%と、IMFが成長率を公表する1980年以降で最も高い成長となりました。一方、2022年の世界経済成長率は+3.4%へと低下したと見込まれています。世界的にコロナ禍で落ち込んだサービス活動の回復が継続する一方、歴史的に高いインフレ率や、それに対応するための当局による金融引き締めが、景気拡大ペースを抑制する要因となっています。また、2022年初に始まったロシアによるウクライナへの侵攻を契機とした地政学的リスクの高まりや、それに伴うエネルギー不足への懸念、更には米国を中心とした金融不安の拡大などが、世界経済における新たなリスクとなっています。
米国経済は、緩やかな回復傾向が続いています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率△0.6%と2四半期連続のマイナス成長となりました。中国・上海市でのロックダウンなどを背景とした供給制約によって生産が停滞し、在庫投資が大幅に減少したことに加え、金利上昇を背景に住宅投資が減少したことでGDPが押し下げられました。他方、労働市場が改善基調を維持する中、経済正常化によるサービス消費の回復もあり、個人消費は増加が続きました。7-9月期に入ってからも労働市場の改善は続いており、個人消費の増加を主因に7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.2%と3四半期ぶりの上昇に転じました。しかし、10-12月期にはFRB(連邦準備制度理事会)による利上げの影響によって、住宅投資が減少したほか、設備投資の増加ペースが鈍化したことにより、実質GDP成長率は前期比年率+2.6%と、前四半期から減速しました。2023年1-3月期に入ってもタイトな金融環境が継続していることを背景に、設備投資や住宅投資に弱さが見られた結果、2023年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%となり、減速が続いています。高いインフレ率が引き続き家計の重荷になっていることに加え、銀行の連鎖破綻などにより、米国経済の先行きの不透明感は増しています。
金融面では、FRBは歴史的な高インフレを鎮静化するため、金融引き締めを強化しています。インフレ率がFRBの目標である2%を大幅に上回っていることを背景に、2022年3月のFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が0.25%pt引き上げられ、2020年3月以降続いてきた実質的なゼロ金利政策が終了しました。続く5月のFOMCでは、0.50%ptの利上げに加えて、6月からFRBのバランスシートの縮小を開始することが決定されました。6月のFOMCでは利上げ幅がさらに拡大され、0.75%ptの利上げが行われました。その後、7月、9月、11月のFOMCでもそれぞれ0.75%ptの利上げが実施されましたが、12月のFOMCでは利上げ幅が0.50%ptへと縮小され、2023年2月のFOMCでは0.25%ptへと更に縮小されました。3月に入ると金融システム不安が強まったことを受け、FRBはBank Term Funding Programと呼ばれる危機対応策を打ち出した一方、FOMCでは0.25%ptの利上げを決定しました。金融不安の拡大に伴ってリスクオフの動きが強まったことや、利上げペースの鈍化が織り込まれたことで、3月初には4%超まで上昇していた米国の10年債利回りは、3月末には3.5%程度へと低下しました。
欧州経済(ユーロ圏経済)は、緩やかな回復基調が続いたものの、2022年後半以降は停滞感が強まっています。2022年4-6月期の実質GDP成長率は、行動制限の緩和などによる個人消費の持ち直しなどから、前期比年率+3.4%と堅調な結果となりました。しかし、2月下旬に開始したロシアによるウクライナ侵攻の長期化やインフレ率の高進などから、個人や企業の景況感は大幅な悪化が続いています。また、インフレ率の高進を背景に、ECB(欧州中央銀行)が金融引き締めに転じたことによる借り入れコストの上昇も、投資や消費を下押しする要因となり、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.5%と減速しました。さらに、10-12月期には実質GDP成長率は前期比年率△0.5%と、マイナス成長に転じました。2023年1-3月期の実質GDP成長率は個人消費の減少などにより、前期比年率△0.4%と2四半期連続のマイナス成長となり、力強さに欠く内容となっています。
金融面では、ECBはコロナ禍以降の金融緩和を終了し、引き締めへと転じています。インフレが加速する中、2022年3月のECB理事会では、コロナ禍以前から実施されてきた資産買入プログラムの終了を前倒しする方針が示され、6月の理事会では、7月1日付で同プログラムを終了することが決定されました。続く7月の理事会では、0.50%ptの利上げに踏み切り、2014年に導入されたマイナス金利が8年ぶりに解除されました。さらに、9月と10月の理事会では0.75%ptと過去最大の利上げ幅での利上げを実施しましたが、12月の理事会では利上げ幅を0.50%ptに縮小しました。2023年に入ると、欧州の金融システムに対する不安が広まったものの、2月と3月の理事会において、それぞれ0.50%ptの利上げを決定しました。
新興国経済は、2020年後半以降、総じて持ち直しの動きが続いています。IMFによれば、2021年の新興国の実質GDP成長率は、前年の落ち込みの反動から+6.9%と高い成長となりました。また、2022年の実質GDP成長率は+4.0%となりました。
新興国のうち、世界第2位の経済規模を持つ中国では、政府が掲げていたゼロコロナ政策の下、上海市などの多くの都市でロックダウンが実施されたため、2022年4-6月期の実質GDP成長率は前年比+0.4%の低成長にとどまりました。しかし、ロックダウンが順次解除されたことに加えて、財政・金融政策による下支えもあり、7-9月期の中国の実質GDP成長率は前年比+3.9%となり、前期から伸びが加速しました。10-12月期には、感染者数が急増した結果、経済活動が停滞した影響で実質GDP成長率は前年比+2.9%にとどまりました。2023年1-3月期には感染者数が急速に減少した結果、個人消費が顕著に回復したこともあり、実質GDP成長率は前年比+4.5%へと加速しました。
中国以外の新興国は、総じて見れば持ち直しの動きが続きました。欧米を中心とした主要国経済の回復による外需の拡大が新興国経済を下支えしたことに加え、一部の資源国では、とりわけ2022年前半には資源価格の上昇が経済を押し上げる要因となりました。一方、高インフレや、欧米での金融引き締め・金利上昇に伴う資金流出抑制のため、多くの国が利上げを余儀なくされており、新興国でも景気の減速感は強まりつつあります。
<日本の状況>
日本経済は、2022年度に入り緩やかな回復が続いています。2022年3月21日にまん延防止等重点措置が解除され、経済活動の正常化が進んだことで、2022年4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+5.6%と成長ペースが大きく加速しました。しかし、7-9月期には輸入の急増を主因に実質GDP成長率は前期比年率△1.5%のマイナス成長となりました。10-12月期には前期比年率+0.4%と2四半期ぶりのプラス成長となりましたが、回復ペースは鈍く、2022年後半において停滞感が強まりました。しかし、2023年1-3月期に入ると、個人消費や設備投資の増加を主因に実質GDP成長率は前期比年率+2.7%と増加に転じました。
需要項目ごとに見ると、個人消費は持ち直しの動きが続いています。まん延防止等重点措置が2022年3月21日を期限に全面解除されたことで、2022年4-6月期はサービス消費を中心に個人消費は持ち直しましたが、7-9月期には再び新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、個人消費は小幅の増加にとどまりました。10-12月期以降は堅調な自動車販売などにけん引される形で個人消費は緩やかながらも増加基調を維持しています。家計による需要のうち住宅投資については、資材価格上昇を背景とした価格上昇などにより、2021年後半以降停滞感が強まっています。
企業部門の需要である設備投資は均して見ると増加基調を維持しています。2022年4-6月期に入って新型コロナウイルスの感染者数が減少し、国内の経済活動が再開される中、設備投資にも再び増加の兆しが見られました。また、7-9月期には、それまで設備投資を抑制する要因となっていた、中国でのロックダウンなどによるサプライチェーンの混乱が解消に向かったこともあり、設備投資の回復が続きました。10-12月期には年度前半の回復の反動もあり、小幅の減少に転じていますが、2022年度を通してみれば設備投資は増加基調を維持しています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響などから2021年度に見送られた設備投資の一部は2022年度に先送りされているとみられ、日銀短観(2023年3月調査)によれば、2022年度の設備投資計画(含む土地投資額)は、前年比+11.4%と非常に高い伸びが見込まれています。
金融面では、短期金利に加えて長期金利も操作対象とする日本銀行の金融緩和措置が継続しています。ただし、日本経済がコロナ禍による落ち込みから持ち直す中、日本銀行は、2021年12月の金融政策決定会合で、コロナ禍への対応として導入された社債などの買い入れ増額の一部について2022年3月で終了することを決定しました。日本銀行による緩和的な金融政策が続くものの、2022年に入って米国長期金利が上昇する中、日本の10年債利回りでも上昇圧力が強まっており、2022年度に入ってからは、日本銀行が政策目標とする範囲の上限である0.25%近傍で推移していました。こうした状況の中、12月の金融政策決定会合において、日本銀行は10年債利回りの変動幅を±0.5%へと拡大することを決定し、これを受けて10年債利回りは一時0.5%を上回る水準へと上昇しました。しかし、3月に入ると、米国での金融システム不安の影響で米国長期金利が低下したことに連動して、日本の10年債利回りは3月末時点で0.389%へと低下しています。
為替市場をみると、2022年度に入り円安が急速に進みましたが、11月以降は円高への揺り戻しがみられました。米国では高インフレを抑制するためにFRBが利上げを続ける姿勢を示し、金利の上昇が続いた一方、日本では日本銀行による低金利政策が維持されたことで、日米金利差が拡大し、対ドルレートは非常に速いペースで円安が進みました。年初時点で115円台だった対ドルレートは、10月には一時150円台とおよそ32年ぶりの円安水準となりました。しかし、その後、FRBによる利上げのペースが鈍化する公算が高まるなか、日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大もあり、12月には一時131円台まで急速に円高が進み、2023年3月末時点では1ドル133.13円となっています。
株式市場では、海外市場の動向に大きく左右される形で、株価が一進一退の推移を続けています。4-6月期は、米国での金融引き締めや、景気減速懸念によって米国の株価が一進一退となる中、日経平均株価も上昇・下落を繰り返す不安定な相場展開となりました。7-9月期に入ると、米国での景気減速懸念が強まったことに加えてインフレ率に鈍化の兆候が見られたことで、米国長期金利の低下が進み、8月中旬まで米国株価は上昇しました。日経平均株価もそうした米国株価の動きに追随して上昇し、8月半ばには一時29,000円台を回復しました。しかし、8月後半に入ると米国のインフレ懸念が再び高まり、これに対してFRBがタカ派的な姿勢を強めたため、9月末にかけて日米ともに株価は下落基調となりました。10月以降には、FRBによる利上げペースが鈍化するとの見方が広まったことなどもあり株価は上昇したものの、12月に入ると日本銀行による10年債利回りの変動幅拡大を受けて再度下落に転じました。2023年に入って金融システム不安が顕在化したものの、政策当局の迅速な対応によって市場が落ち着きを取り戻したことで株価は上昇しました。
2023年3月末の日経平均株価は28,041円48銭(2022年3月末比220円5銭高)、10年債利回りは0.389%(同0.171%ptの上昇)、為替は1ドル133円13銭(同11円49銭の円安)となりました。
(4)当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析
① 営業活動、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フロー並びに現金及び現金同等物
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2022年3月期 |
2023年3月期 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
△353,467 |
△183,745 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△218,534 |
7,457 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
377,090 |
△565,878 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
25,760 |
23,349 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
△169,150 |
△718,816 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
4,723,526 |
4,554,375 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
4,554,375 |
3,835,559 |
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは、トレーディング商品の増減、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減、銀行業における預金の増減などにより、△1,837億円(前年度は△3,534億円)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の売却及び償還による収入などにより、74億円(同△2,185億円)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減などにより、△5,658億円(同3,770億円)となりました。これらに為替変動の影響等を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比7,188億円減少の3兆8,355億円となりました。
② 資本の財源及び流動性に係る情報
(ⅰ)流動性の管理
<財務の効率性と安定性の両立>
当社グループは、多くの資産及び負債を用いる有価証券関連業務や、投融資業務を行っており、これらのビジネスを継続する上で十分な流動性を効率的かつ安定的に確保することを資金調達の基本方針としております。
当社グループの資金調達手段には、社債、ミディアム・ターム・ノート、金融機関借入、コマーシャル・ペーパー、コールマネー、預金受入等の無担保調達、現先取引、レポ取引等の有担保調達があり、これらの多様な調達手段を適切に組み合わせることにより、効率的かつ安定的な資金調達の実現を図っております。
財務の安定性という観点では、環境が大きく変動した場合においても、業務の継続に支障をきたすことのないよう、平時から安定的に資金を確保するよう努めると同時に、危機発生等により、新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、調達資金の償還期限及び調達先の分散を図っております。
当社は、「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性のうち流動性に係る健全性の状況を表示する基準」(平成26年金融庁告示第61号)により連結流動性カバレッジ比率(以下、「LCR」という。)及び連結安定調達比率(以下、「NSFR」という。)を所定の比率(それぞれ100%)以上に維持することが求められており、当第4四半期日次平均のLCRは135.9%です。また、当第4四半期末のNSFRは有価証券報告書提出日における速報値で137.5%となっており、確定値は算出完了次第、当社ホームページにて公表する予定です。また、当社は、上記金融庁告示による規制上のLCR及びNSFRのほかに、独自の流動性管理指標を用いた流動性管理態勢を構築しております。即ち、一定期間内に期日が到来する無担保調達資金及び同期間にストレスが発生した場合の資金流出見込額に対し、様々なストレスシナリオを想定したうえで、それらをカバーする流動性ポートフォリオが保持されていることを日次で確認しており、1年間無担保資金調達が行えない場合でも業務の継続が可能となるように取り組んでおります。
当第4四半期日次平均のLCRの状況は次のとおりです。
|
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
|
|
日次平均 (自 2023年1月 至 2023年3月) |
|
適格流動資産 |
(A) |
29,025 |
|
|
資金流出額 |
(B) |
39,185 |
|
|
資金流入額 |
(C) |
17,832 |
|
|
連結流動性カバレッジ比率(LCR) |
|
|
|
|
|
算入可能適格流動資産の合計額 |
(D) |
29,025 |
|
|
純資金流出額 |
(E) |
21,353 |
|
|
連結流動性カバレッジ比率 |
(D)/(E) |
135.9% |
<グループ全体の資金管理>
当社グループでは、グループ全体での適正な流動性確保という基本方針の下、当社が一元的に資金の流動性の管理・モニタリングを行っております。当社は、当社グループ固有のストレス又は市場全体のストレスの発生により新規の資金調達及び既存資金の再調達が困難となる場合も想定し、短期の無担保調達資金について、当社グループの流動性ポートフォリオが十分に確保されているかをモニタリングしております。また、当社は、必要に応じて当社からグループ各社に対し、機動的な資金の配分・供給を行うと共に、グループ内で資金融通を可能とする態勢を整えることで、効率性に基づく一体的な資金調達及び資金管理を行っております。
<コンティンジェンシー・ファンディング・プラン>
当社グループは、流動性リスクへの対応の一環として、コンティンジェンシー・ファンディング・プランを策定しております。同プランは、信用力の低下等の内生的要因や金融市場の混乱等の外生的要因によるストレスの逼迫度に応じた報告体制や資金調達手段の確保などの方針を定めており、これにより当社グループは機動的な対応により流動性を確保する態勢を整備しております。
当社グループのコンティンジェンシー・ファンディング・プランは、グループ全体のストレスを踏まえて策定しており、変動する金融環境に機動的に対応するため、定期的な見直しを行っております。
また、金融市場の変動の影響が大きく、その流動性確保の重要性の高い大和証券株式会社、株式会社大和ネクスト銀行及び一部の海外証券子会社においては、更に個別のコンティンジェンシー・ファンディング・プランも策定し、同様に定期的な見直しを行っております。
なお、当社は、子会社のコンティンジェンシー・ファンディング・プランの整備状況について定期的にモニタリングしており、必要に応じて想定すべき危機シナリオを考慮して子会社の資金調達プランやコンティンジェンシー・ファンディング・プランそのものの見直しを行い、更には流動性の積み増しを実行すると同時に資産圧縮を図るといった事前の対策を講じることとしております。
(ⅱ)株主資本
当社グループが株式や債券、デリバティブ等のトレーディング取引、貸借取引、引受業務、ストラクチャード・ファイナンス、M&A、プリンシパル・インベストメント、証券担保ローン等の有価証券関連業を中心とした幅広い金融サービスを展開し、ハイブリッド型総合証券グループとしての新たな価値の提供に資する投融資を行うためには、十分な資本を確保する必要があります。また、当社グループは、日本のみならず、海外においても有価証券関連業務を行っており、それぞれの地域において法規制上必要な資本を維持しなければなりません。
当連結会計年度末の株主資本は、前連結会計年度末比58億円増加し、1兆2,923億円となりました。また、資本金及び資本剰余金の合計は4,776億円となっております。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益638億円を計上したほか、自己株式の消却を806億円、配当金399億円の支払いを行った結果、同566億円減少し8,861億円となりました。自己株式の控除額は同626億円減少し、715億円となっております。
③ 財務戦略
当社グループの財務戦略の基本は、成長投資、資本効率性、財務健全性及び株主還元の最適なバランスを図り、健全な利益の確保を通じた持続的成長を実現することです。
持続的な成長の実現に際しては、規制並びに制度対応と適正な自己資本水準を維持することを重視しております。強固な財務基盤を堅持するため、財務基盤KPIとして連結総自己資本規制比率を採用しております。同比率については、今後のバーゼル規制の最終化による影響と過去の金融危機時のストレス・シナリオにも耐えうる資本のバッファーを加味し、18%を最低水準と設定しております。2019年度には規制上その他Tier1資本に係る基礎項目として取り扱われる、当社として初めての無担保永久社債(債務免除特約および劣後特約付)を2本立てで計1,500億円発行し、財務基盤の拡充を図りました。
成長投資に関しましては、当連結会計年度も既存事業の競争力強化のための投資や事業ポートフォリオ多様化のための出資などを数多く実行いたしました。その結果、財務基盤KPIとして設定している連結総自己資本規制比率は速報ベースで18%を上回っており、今後も継続的な成長投資を行うための十分な資本余力を有しております。このため、証券ビジネスの顧客基盤拡大に向けた投資やハイブリッド型総合証券グループとしてコアビジネスと親和性のある周辺領域への投資は今後も常に検討してまいります。
株主還元策については「第4提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりです。
当社の資金調達の方法については、「② 資本の財源及び流動性に係る情報」に記載しております。
当連結会計年度において、該当事項はありません。
該当事項はありません。