文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「はたらく意欲を持ったすべての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供され、公正に処遇される社会の実現」を企業目的として、グループミッションである「はたらく力で、イキイキをつくる。」を実現するため、「はたらく人」と「企業」双方を顧客として捉える「ツインカスタマー戦略」を推進し、事業展開しております。
2030年に向けた長期経営ビジョンとして「これからのはたらき方のプラットフォームになる」を掲げ、2026年3月期を最終年度とする第4次中期経営計画ローリングプランでは、「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」を中期経営目標として、持続的な企業価値の向上を目指しております。
当社グループは、成長と安定のバランスをとりながら持続的に企業価値を向上させることを経営の目標としております。経営指標としては、成長性を評価する観点から、「EBITDA(営業利益に減価償却費、のれん償却額を加算した額の金額)」及び「1株当たり当期純利益(EPS)」の成長、加えて、投資と財務安定性を確保するため「ネットDEレシオ」を重視しております。
第4次中期経営計画ローリングプランにおいては、EBITDAは2026年3月期に250億円、1株当たり当期純利益(EPS)は306円、また、ネットDEレシオは0.5倍以下を数値目標としており、成長と財務の安定性の両立を目指してまいります。
また、当社グループは、株主利益還元を経営の重要課題と認識しており、第4次中期経営計画ローリングプランにおいて、株主還元方針を変更しました。2024年3月期以降の株主還元を「配当性向60%」の配当金による還元を実施してまいります。従前は、配当金もしくは自己株式取得による「総還元性向30%」としていたものを、M&A等の投資計画や財務健全性を考慮し、十分なキャッシュポジションを確保できる見込みであることから変更したものであります。
(第4次中期経営計画の進捗)
新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、先行き不透明な状況下でスタートした第4次中期経営計画の当初計画(2021年3月期~2025年3月期)は、1年目から2年目(2021年3月期から2022年3月期)にかけて、コロナ禍の顧客工場の稼働停止等の影響を最小限に食い止めるとともに、その後の人材需要の急回復期において積極的な採用活動を展開したことにより、当初計画スタートからの2ケ年で技術職社員数は150%の純増を果たし、売上高は約550億円拡大する発進となりました。3年目となる2023年3月期では、2ケ年で積み上げた技術職社員数を起点としながら、当社グループが中長期的に成長加速を実現していくための筋肉質な事業基盤を整えるよう努めました。共通の特性を持つ事業会社の統合や事業会社間のアドミニストレーション業務等の標準化及び共通化、人員配置の最適化を進めるとともに、採用活動において事業会社毎に保有する求人情報等のデータベースをグループで統合し、採用オペレーションを最適化することで採用効率改善への取り組みを進めてまいりました。
以上のように事業基盤の着実な強化に努めた順調な当初計画の進捗でございましたが、4年目の当事業年度における半導体関連での生産活動の停滞が想定よりも長く継続したこと、加えて昨今の事業環境の変化や製造派遣業界の動き等を踏まえ、当初計画のコンセプトや戦略を見直し、且つ第4次中期経営計画の最終年度を1年後ろ倒しの2026年3月期に変更とするローリングプランを策定いたしました。
(第4次中期経営計画ローリングプランのコンセプトと戦略の骨子)
日本の労働市場は、少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少を背景として、人手不足の深刻化が進んでいます。製造業の顧客企業に求められるのは、いかに十分な労働力を確保し、生産性の向上を果たせるかということであり、製造業での派遣活用の方法は従来の一時的な労働力の確保から正社員に代わる労働力としての派遣活用に変化しています。求人に対して、労働者を集めて派遣する従来の採用を代行する機能だけでは不十分で、多様な人が働くことができ、キャリア形成を通じて生産性を高められる環境をつくることがますます重要になっています。そして、このような対応が可能な派遣事業者への期待がさらに高まることが予想されます。
このような世の中の様々な変化は当社グループの大きな転換点です。2024年2月に公表しました第4次中期経営計画ローリングプランでは“製造派遣ではたらく人に選ばれるために私たちは何をするのか”これを全ての考え方の軸として、「派遣」という働き方をはたらく人へのサービスとして捉え、その利便性を高めることではたらく人に選ばれる状況をつくることに一層こだわり、製造派遣市場で最も選ばれる派遣会社を目指してまいります。現在3万3千人の国内技術職社員数は、最終年度には5万人規模まで拡大を図ってまいります。新しい製造派遣の在り方を全社一体となって創り上げたい、これが製造派遣のリーディングカンパニーとしてUTグループの役割であります。
第4次中期経営計画ローリングプランでは、「派遣」というはたらき方の利便性を高めていくこと、月間2,000名採用を常態化させることを実現します。中核であるマニュファクチャリング事業及びエリア事業を成長のドライバーとして、製造派遣市場でのシェアの拡大を図ります。マニュファクチャリング事業では、工場ではたらく人の価値を高めて顧客内シェアの最大化を、エリア事業では地元ではたらく人のニーズに応えることで各地の地域一番店を目指してまいります。その他事業では、日系外国人の活用等、より多様なはたらく人に活躍の機会を提供できるよう第3の柱となる事業を育ててまいります。また、M&Aによる規模拡大は引き続き注力しますが、“日本の製造派遣ではたらく人”にとって意義のあるものであることを軸とします。
(第4次中期経営計画ローリングプランの数値目標)
派遣事業の規模拡大に伴う管理業務等の集約化進めることで収益性を改善し、持続的なEPS成長を目指してまいります。数値目標は以下のとおりです。
※ EPS予想及び計画は、新株予約権が全て行使されたと仮定して算出しております。
加えて、当社における利益配分の考え方を再定義してお示しするとともに、株主還元方針の変更をいたしました。資本効率の向上及び財務健全性の維持、株主還元の充実のバランスを重視して、キャッシュアロケーションを適切に管理し、資本コストを踏まえてM&A等の事業投資計画を勘案した内部留保の適正化を目指してまいります。第4次中期経営計画ローリングプランにおける数値目標・目指す水準は以下のとおりです。
・のれん自己資本比率 50%以下
・ネットDEレシオ 0.5倍以下
・配当性向 60%
株主還元方針としては、これまで配当金もしくは自己株式取得により「総還元性向30%」としていたものを、「配当性向60%」の配当金による還元を安定的に実施することといたします。当社グループの持続的な成長に必要なM&A活動等の事業投資や財務健全性のバランスを考慮しましても、十分なキャッシュポジションを確保できる見込みであることから変更したものであります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)~(3)に記載の長期経営ビジョン及び第4次中期経営計画を実行し、持続的な企業価値の向上を目指す上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は、以下のとおりであります。
① 景気変動の影響を受けにくい事業基盤の構築
当社グループの事業は、製造工場の生産現場を中心とした職種への人材派遣や製造請負の占める割合が高いため、景気変動、自然災害及び感染症等の事象に影響される派遣先企業の生産調整によって、人材需要低下等の影響を受けやすい構造にあります。従来はマニュファクチャリング事業において、半導体・電子部品関連分野の割合が高かったことから、シリコンサイクルの影響を低減するため、異なる製品分野への分散を図ってまいりました。分散化により、個別の製品分野に対する生産変動への耐性は高まったものの、経済全体の減速に伴い全ての製品分野において生産量の減少が生じた際には、依然として解約リスクをゼロにすることは難しいと認識しています。
そのため、大幅な景気後退が生じた際の解約リスクを低減するための顧客工場内シェアの拡大や製造業の中でも景気変動の影響を受けにくい製造技術領域等の職種開拓を進めております。併せて、地域密着型で多様な職場を開拓するエリア事業や大企業を中心とした構造改革需要を取り込むソリューション事業等の強化を進め、景気変動の影響を受けにくい事業基盤を構築してまいります。
② 恒常的な欠員確保
当社グループの事業は、派遣先企業で働く派遣労働者を当社グループで正社員として無期雇用することで、はたらく人の雇用の安定化と企業へのフレキシビリティの提供を両立させております。この事業モデルを機能させるためには、ある職場で人員が余剰となった際に、異なる職場への配置転換を迅速に行わなければなりません。そのため、全国各地の職場において、欠員(受注残)を恒常的に確保しておくための活動が必要となります。
当社グループでは、人材管理とともに顧客への提案活動を行う管理者を顧客毎に配置して欠員の確保を行っております。また、事業部毎に設置した営業組織により、事業会社を横断したサービス提案や新規顧客開拓等の活動を通じた欠員の確保を行っております。
③ 多様な人材の活躍促進と安定的な採用体制の構築
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドが継続するものと予測されております。当社グループの技術職社員の多くが若年層であり、中長期的にはこの影響を大きく受けることから、人材採用が困難になる可能性があります。
このような環境の中、女性・シニア・外国人など多様な属性の人材が活躍できる職場を増やしていくことが重要課題であると認識しています。このため当社グループでは、新たな顧客企業の開拓を進めるとともに、従業員から寄せられる職場改善に関する意見や求職者のニーズをもとに、顧客企業側により多様な人材を受け入れることができる職場づくりの提案を積極的に行っております。
当社グループは人材の安定的な採用のため、求人広告をはじめとする様々な採用媒体の活用や当社グループ独自の求人サイトの構築、全国の拠点における面接担当者のスキルの標準化や求職者からの問い合わせに24時間対応可能な採用自動化ツールの導入等により採用効率を高め、安定的に人材を採用できるための体制を構築してまいります。
わが国では、少子高齢化によって生産年齢人口の減少が続いており、労働市場の売手市場化が進むことで、採用難易度が高まっていくものと予想されます。
そのような採用市場の見通しの中、当社グループは顧客企業からの人材ニーズに応えていくために、より多くの求職者から選ばれ続け、かつ技術職社員の定着を図る必要があります。そのために求職者や技術職社員一人ひとりの経歴、スキル、パフォーマンス等を適正に評価し、派遣単価に反映するとともに技術職社員が適正な賃金を得られる環境の実現に取り組んでまいります。
当社グループは、持続的に高い売上高を達成し、利益成長を続けることを目指しております。それに伴い、経営管理や事業運営を行う人員を育成・確保するとともに、事業規模に応じた組織基盤を確立させることが欠かせません。
このため当社グループでは、これらの経営管理や事業運営を支える人員の確保・育成とともに、柔軟な組織運営やそれを支える業務システムの構築等を重要課題として取り組んでおります。
⑦ コーポレート・ガバナンスと内部統制体制の継続的な強化
当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を実現するためにはコーポレート・ガバナンス体制の強化が重要であると認識しております。
当社グループは、的確かつ迅速な意思決定及び業務執行体制とそれを適切に監督・監視する体制の構築を図っております。経営の健全性や透明性を確保する観点から、今後も事業規模に応じたコーポレート・ガバナンス体制の強化を継続的に図ってまいります。また、企業規模の拡大やグループ会社の増加、海外での事業展開等、内部統制の重要度が増してきていることから、グループ全体での内部統制につきましても継続的な強化を図ってまいります。
⑧ M&Aによる事業拡大
当社グループの主力事業である製造業向け人材派遣事業は、業界に先駆けた無期雇用派遣と高い人材供給力や高品質な人材育成・管理体制によって、特に大企業において大きなシェアを獲得しております。一方、地域における職場数や技術者領域や事務領域等の製造工程以外での職種等、当社グループが未だ競争力を発揮できていない領域があります。これらの今後開拓すべき事業領域では、M&Aが有効な手段であると考えております。
当社グループは、採用・育成プラットフォームや既存事業とのシナジーを考慮した上で、ターゲット企業に対して事業の評価を行い、企業価値の向上に資するM&A戦略を推進してまいります。また、買収後にはガバナンス強化を行い早期にグループシナジーが実現できる体制を構築してまいります。
⑨ 業務プロセスの効率化とITによるグループ共通業務基盤の構築
当社グループの各拠点における採用・営業・事務等の業務には、帳票類やプロセスの標準化等、システム導入による効率化の余地があると認識しております。
当社グループでは、全社横断のプロジェクトチームを設置し、課題の抽出やITによる効率化の可能性の検討を重ね、段階的にシステム導入を進めております。今後もシステム改善を行い、業務プロセスの効率化を図ってまいります。
⑩ 外国人材の活用促進
わが国では、生産年齢はもとより総人口の減少が続いており、将来的にもこのトレンドは継続するものと予測されております。2019年4月に施行された改正入国管理法では、新たな在留資格が創設される等、外国人材を受入れるための法整備が進んでおります。また、当社グループが持続的に成長していく上では、国内だけでなく海外での事業展開も視野に入れることが必要であると認識しております。
当社グループは、2017年より外国人技能実習生を対象とした労務管理代行事業を開始し、企業が外国人材を活用する際に、外国人材の権利保護等のコンプライアンスを遵守する体制を構築してまいりました。
現在わが国では「技能実習制度」の見直しが進められていますが、当社グループは新制度においても外国人材が日本国内で継続的に働くための受入れ環境の整備や就労支援に取り組む考えです。また、母国に帰国したあとにその技術を活かして働くことを支援するために、現地の有力企業との資本・業務提携を通じた人材サービス事業の構築を進め、海外における事業基盤の拡大を図ってまいります。
加えて、日系人材を海外から招聘する・国内在住の日系人材を採用するためのネットワークの強化と安心して働くことのできる職場環境づくりを進めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「はたらく力で、イキイキをつくる。」というミッションの実現のために、常に「はたらく人と共に成長するために取り組むべき課題」(マテリアリティ)を特定いたしました。
マテリアリティの特定にあたっては、人材業界に対する社会的な要望を把握するため、SASBマテリアリティマップのサービスセクターにおける課題、及びRobeco SAM社が専門サービスセクターで注目すべきクライテリアとして設定している項目を参考にして、人材業界において要望が強いと考えられる12の項目(人材業界の12項目)を抽出しました。その後、社外のステークホルダーの方々に人材業界の12項目から相対的な優先順位を設定していただき、それをベースとして具体的なご意見を伺いました。これと同様のプロセスを経営層や管理職、一般社員を含む社内においても行い、UTグループの事業と項目との関連性について優先順位を設定し、マテリアリティとして特定しました。マテリアリティは4つの重要テーマ、10の重点課題として整理し、それぞれについて活動方針を定めて対応を進めています。
なお、事業の優先順位の観点や国内と海外における労働法制・習慣の違い等を踏まえ、マテリアリティの対象は国内のグループ会社としています。
当社グループでは「はたらく力で、イキイキをつくる。」というミッションステートメントの下、一人でも多くの人がイキイキと人生の可能性を追求できる良質な職場をお客様とともに作り上げ、人と企業の成長が好循環する場を世の中に増やし続けていくためにサステナビリティ基本方針を定めております。取締役会において定期的にサステナビリティに関する議論を行いガバナンスの強化を図っております。
当社グループでは、働く意欲を持つ一人ひとりが、働くという行為を通じて自分自身の個性を発揮する能力を身につけ、その力を発揮できる機会や環境を作り出すことを事業の根幹に据えております。
「はたらく力で、イキイキをつくる。」というミッションステートメントを頂点とした当社グループの理念体系の中心に、当社グループを通じて働く一人ひとりが尊重され成長を実感しながらイキイキと働くことを据え、一人ひとりの成長と顧客の成長が相互に影響を与え合い好循環する「ツインカスタマー戦略」を推進しています。
③ リスク管理
当社グループではリスクと機会のマネジメントプロセスの一環として、サステナビリティを含む網羅的なリスクと機会のアセスメントを定期的に行っております。これらの重要リスクと機会の管理状況については、取締役会によってモニタリングされております。
算定対象は、特に記載のない限り、国内グループ会社
(注)1.UTエイム株式会社、 UTコネクト株式会社、UTコンストラクション株式会社
2.UTエイム株式会社、 UTコネクト株式会社、UTテクノロジー株式会社、UTコンストラクション株式会社、FUJITSU UT株式会社、UT東芝株式会社、UTハートフル株式会社
3.マニュファクチャリング事業、エンジニアリング事業
4.UTエイム株式会社、UTコネクト株式会社、UTテクノロジー株式会社、UTコンストラクション株式会社
5.UTグループ株式会社、UTハートフル株式会社
6.UTグループ株式会社
7.UTグループ株式会社、UTエイム株式会社、UTコネクト株式会社、UTテクノロジー株式会社、UTコンストラクション株式会社
(目標の策定時において、UTグループ共通の人事制度の導入範囲であった当該5社を集計範囲に設定しています。なお、管理職とは課長級以上の役職(役員を除く)を指します。)
8.UT エクサス・クリエ株式会社を除く日本国内のグループ会社
当社グループは、当社グループを通じて働く人材一人ひとりが重要な資産であり人的資本として捉え、その価値向上に向けた人的資本経営に取り組んでおります。
「(1) サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。
多様性と市場価値を高めるための人材採用や育成に関しては、年齢、性別、国籍、学歴、経歴等によらず、一人ひとりの自己実現に必要となる就業、教育、カウンセリング等のキャリア形成の機会を等しく提供するとともに、その役割や成果に対して常に公正な評価と処遇がなされるよう「UTグループ人材採用方針」及び「UTグループ人材開発方針」を定めております。
当社グループの主力事業は人材派遣事業であり、人材が働く環境は主に派遣先企業の中にあります。このような環境下でも多様な人材が働き公正に処遇される職場を作るために「UTグループ職場開発方針」を定め、派遣先企業との協働により安全で働きやすい労働環境の継続的な改善に取り組んでおります。
③ リスク管理
「(1) サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。
「(1) サステナビリティ全般 ④ 指標及び目標」をご参照ください。
このうち「指標:採用活動、キャリア形成支援活動、キャリアパス、人材開発指標」が人材育成方針に、「職場開発活動」が社内環境整備方針に関連します。
当社グループの事業は、気候変動に関連する大規模な自然災害が発生した場合には、顧客企業等の製造設備の被害等により生産活動が停止する可能性があり、サプライチェーンに関わる物理的なリスクが高まります。このように気候変動をはじめとする世界規模で顕在化している環境課題に対しては、2021年4月に策定した「環境方針」のもと、重点課題の1つである「環境への適切な配慮」を踏まえた環境マネジメント体制の構築を進めております。さらに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)が提唱するフレームワークに則り、推奨される情報を継続的に開示してまいります。
UTグループでは全社でのリスクマネジメント体制において気候変動を含むリスクを管理・分析し、その分析内容を経営会議及び取締役会に年1回以上報告する体制を構築しております。
気候関連課題に対する最高責任権限を有する代表取締役社長は、経営会議及び取締役会においてサステナビリティ推進を行うサステナビリティ事務局を設置し、気候変動を含むサステナビリティ課題に関する取り組みを管理・推進しています。
UTグループでは全社でのリスクマネジメントプロセスの一環として、網羅的なリスクアセスメントを定期的に行っており、その中で気候変動に関するリスクを抽出しております。その後、関連部署へインタビューを経て発生頻度、影響度などにより重要性を決定しております。
気候関連リスクを含む重要なリスクは、リスクモニタリング事務局がその対策状況のモニタリングやリスク情報を経営会議及び取締役会へ報告する体制としております。
UTグループでは気候変動を含む重要なリスクは定期的に行われるリスクアセスメントを経て、経営会議で管理され、その状況は取締役会によってモニタリングされております。
UTグループではオフィスで使用する紙の使用量について抑制することを目標とし、売上高に対する紙の消費量(2020年3月期実績を100とする指数)を指標として設定しております。また、事業活動が環境に与える負荷は軽微であると認識しておりますが、その影響度合いを把握するために、温室効果ガス排出量のモニタリングを行っております。
(注)1.2020年3月期を100とした指数
当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別途明記している場合を除き、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、半導体・電子部品関連の売上高の比重が高いことから、半導体業界特有のシリコンサイクルと呼ばれるおよそ4年周期の景気変動の影響を受ける可能性があります。業績への影響はプラス面マイナス面双方ありますが、その程度につきましては想定が困難であります。このような景気変動による業績への影響を軽減するため、半導体・電子部品関連分野で培った専門性を活かし、事業領域を自動車等の製造業全般へ広げ、各地域の職場を開拓するとともに、景気変動の影響を受けにくいエンジニア派遣領域の拡大やソリューション事業における構造改革需要の取り込みの強化を進めております。
当社グループが属する製造派遣・エンジニア派遣の領域では、競合他社において、営業の強化を行うとともに、M&Aにより規模拡大を目指す動きも見られることから、競争の激化により、事業運営が想定どおり進まない可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、当社グループにおきましても、既存顧客のシェア拡大、新規顧客の開拓、同業のM&Aにより積極的な事業拡大を目指してまいります。
当社グループは、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業及び職業安定法に基づく有料職業紹介事業の許可を厚生労働大臣から取得して事業を行っております。労働者派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業者として欠格事由(派遣法第6条)に該当する場合や当該許可の取消事由(派遣法第14条)に該当した場合には、許可の取り消しや事業の全部又は一部を停止できる旨が定められています。また、職業安定法では、有料職業紹介事業者としての欠格事由(職業安定法第32条)に該当する場合や当該許可の取消事由(職業安定法第32条の9)に該当した場合には、許可の取り消しや業務の全部又は一部の停止を命じることができる旨が定められています。
本書提出日現在において、当社グループが認識している限り、当該許可等の取り消し又は事業の停止等となる事由は発生しておりませんが、万一、当社グループ各社にて、重大な法令違反が発生し、許可の取り消し又は事業の停止を命じられた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、コンプライアンス教育の徹底、継続的な内部統制の強化を図っております。
当社グループの許可・届出状況
当社グループは、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、厚生労働省告示第518号、健康保険法、個人情報保護法等、多岐にわたる法律に基づいて事業を行っております。
当社グループは、常にコンプライアンスを徹底しておりますが、万が一法令違反等が発生した場合、許認可の取り消しや社会的信用の失墜等により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、事業活動の中で顧客企業の機密情報等に触れる可能性があり、万が一これらの情報管理に不足が生じ、外部に漏洩した場合、派遣契約の解除や損害賠償の請求及び社会的信用の失墜等により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、これらのリスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、コンプライアンス教育の徹底、継続的な内部統制の強化を図っております。また、顧客企業へ向けてコンプライアンスへの正しい理解を促す啓蒙活動を行う他、派遣業界全体の健全化にも注力しております。
2015年9月30日施行の改正労働者派遣法につきましては、キャリア形成支援や教育訓練が義務付けられるとともに、雇用安定措置が明記されました。雇用の安定と派遣事業の健全な発展へ向けての法改正であると認識しており、無期雇用の派遣社員は期間制限なしでの雇用が可能となったことから、当社グループにとって事業機会が拡大する要因となったものと考えております。しかしながら、競争の激化等により、当社グループの想定どおりに需要が拡大せず、事業が進まない可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、派遣先企業に加え、派遣ではたらく人も顧客として捉えるツインカスタマー戦略の推進により、派遣先企業とはたらく人の双方から最も選ばれる企業を目指し、事業の拡大に取り組んでまいります。
当社グループは、事業拡大に必要な資金を金融機関からの借入によって調達しております。現状、金融緩和措置等により借入金利も極めて低い水準で推移しておりますが、一部の金融機関との取引について、借入契約に財務制限条項が付されたものがあります。万が一、これらの条件に抵触した場合には、借入金利の上昇や期限の利益を喪失する可能性等があり、その場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、経営の重要指標としてネットDEレシオが0.5以下、及びのれん自己資本比率50%以下となることを目安としており、借入と自己資本のバランスをとった経営を行っております。
当社グループは、既存の事業基盤を拡大及び新たな事業への進出をするために、中長期的な友好関係の維持を目的とした資本提携や戦略的な企業買収等を行っております。当社グループが保有している投資有価証券及び関係会社株式の時価又は実質価額が著しく下落した場合、その程度によっては、売却損や評価損の計上を強いられることも想定され、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、資本提携先や買収先企業については、取締役会及び経営会議等で定期的にモニタリングし、監督機能を強化することにより、業績向上を目指した経営を行っております。
当社グループ各社が受託した業務を遂行するのは、「技術職社員」 (※) であります。当社グループにおける技術職社員は、無期雇用を基本としております。当社グループ各社では受託した業務において経験ある社員が組織化して指揮命令系統を確立し、チーム単位で業務を遂行する場合が大半を占めます。経験やスキルが不足している場合には、受入研修やOJT等により技術職社員の技能を向上させております。欠員等が発生した場合は、他の部署で雇用している技術職社員の戦略的異動又は新たな採用を行っておりますが、技術職社員の雇用に関しては、以下のようなリスクがあります。
d.当社グループ各社は、採用環境の悪化等により地元採用が困難になった場合、他の地域で採用した技術職社員の配属を行うため、イニシャルコストとして移転費用が発生し、売上総利益率が低下する可能性があります。
なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、働く意欲を持った全ての人にスキルアップやキャリア形成の機会が等しく提供される社会の実現を目指し、女性やシニア、外国人等多様な求職者層へのアプローチとともに各地域の職場開拓にも注力することで、はたらき方の多様性を支えるプラットフォームの構築を進めてまいります。
※ 当社グループでは、顧客企業の生産工程に従事する社員を「技術職社員」と呼んでおります。技術職社員の雇用形態には、正社員の他、契約社員も含まれます。
大規模な自然災害や感染症等による公衆衛生上のリスクが発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、当社グループでは、「有事対応に関する規程」や「事業継続計画(BCP)に関する規程」を整備し、有事に備えております。
加えて、気候変動を含むリスクを管理・分析し、その分析内容を経営会議及び取締役会においてモニタリングする体制を構築しております。
当社グループは、技術職社員を含む従業員及び採用応募者の個人情報を取り扱っております。また、顧客情報につきましても事業部門にて取り扱っております。これらの情報が漏えい又は流出した場合は、当社グループの業績に多大な影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、各種個人情報、顧客情報につきましては、当社グループが定める「個人情報保護方針」や「特定個人情報等取扱規程」等に従い、一定のセキュリティ基準を持たせた上で、アクセス可能な担当者に制限を設ける等、管理体制と仕組みの構築について継続的な改善を行っております。
当社グループは、大量の個人情報及び機密情報等を含むデータを保有しておりますが、サイバー攻撃や不正アクセス、その他の不測の事態によりこれらのデータが外部へ流出した場合は、当社グループの業績に多大な影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、当社グループが定める「情報セキュリティ基本方針」のもと「情報セキュリティ管理規程」や各種細則に従い、情報資産の特性に応じた施策を整備し、高い情報セキュリティレベル及びサイバーセキュリティレベルの確保に努めております。また、技術職社員を含む役職員に対し、継続的に倫理観を高め、情報セキュリティリテラシーを向上させるため、定期的に情報セキュリティ教育を実施しております。
当社グループは、戦略的なM&Aや資本提携を進めておりますが、各種デューデリジェンスの実施による重要リスクの特定や、買収後の事業経営の統合プロセス及び事業推進が適切に進捗しない場合には、投下資本の回収が困難になる可能性があり、のれんの減損リスクが発生する等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、M&Aや資本提携専任の組織を設け、各領域で十分な経験を積んだ担当者が案件の調査や提携交渉、買収後の事業計画策定を行っており、候補案件は具体的なデューデリジェンスを行ったのち、案件会議、取締役会にて決議しております。また、買収後についても、取締役会及び経営会議等で定期的にモニタリングし、監督機能を強化することにより、業績向上を目指した経営を行っております。
⑬ 有能な人材の確保と維持について
当社グループが顧客企業の人材需要や構造改革需要を取り込み、企業規模を拡大する中で、経営管理や事業運営を行う人員及びバックオフィス業務等の事業基盤を支える人員が想定するよりも多く流出する等、有能な人材の安定的な確保ができない場合は業務遂行に支障をきたし、当社グループの競争上の優位性の確保や持続的成長を妨げる可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、事業環境の変化に即した人事制度の設計やリモートワーク等の柔軟な職場環境の整備、さらに、人材の多様性を確保し、仕事へのやりがい及び組織の成長とともに自身の成長が実感できるような良好な職場づくり等、従業員がイキイキと活躍できる土壌の整備を進めております。加えて、バックオフィス業務等の標準化やシステム化等、人に依存しない体制の構築を併せて進めております。
⑭ 経営陣について
当社グループの創業者である代表取締役会長の若山陽一氏及び代表取締役社長の外村学氏をはじめとする重要な経営陣に不測の事態が発生した場合は、当社グループの事業展開に支障が生じる可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、そのような場合に備え、サクセッションプランを定め、他の役員による職務の代行が可能な体制構築を推進しております。
⑮ 人権の尊重について
近年、企業のサプライチェーンにおける強制労働や児童労働、差別・ハラスメント等の人権に関する問題提起がなされています。当社グループでは国内の事業活動に加え、外国人技能実習生管理代行事業や海外での人材派遣事業を展開しております。事業活動を行うそれぞれの国と地域において、人権に関する法令及び規制が遵守されず権利が侵される場合、事業運営への支障や社会的信用の失墜等により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、当社グループでは、国際的な人権基準である「国際人権章典」及び「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」を支持し、2021年4月に制定した「個人の尊重と成長に関する基本方針」に基づいて、2021年12月に「UTグループ 人権方針」を策定しました。また、毎年のリスクアセスメント実施により、人権リスクを含む当社グループ全社におけるリスクを特定し、重要なリスクを優先した対応策及び損失最小化に向けた行動計画の策定を進めております。
顧客である国内メーカーの製造拠点が海外に移転し、国内における生産拠点が減少した場合には、当社グループ各社は業績に大きな影響を受ける可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点で認識しておりませんが、国内既存顧客の工場内シェア拡大に加え、新規顧客の開拓等を行うことで、持続的な売上の拡大を目指しております。
② 業績の変動要因について
顧客である国内メーカーは、人件費の変動費化をニーズの一つとしております。すなわち、専門性の高い即戦力となる人材の確保に加え、景気の影響で変動する生産量にフレキシブルに対応するための戦略として、当社グループ各社の人材派遣・請負事業者が活用されていると認識しております。したがって、顧客である国内メーカーの減産に伴って、当社グループ各社との契約数が減少することや同業他社との価格競争が激化するといった傾向があります。
その一方で、当社グループ各社が雇用している技術職社員については、無期雇用を原則としておりますので、技術職社員の配置転換等が円滑に進まなかった場合には、待機人員となり、当社グループ各社の収益を圧迫する可能性があります。また、当社グループ各社の契約数が急激に増加する場合には、売上高の増加よりも先行して発生する技術職社員の採用費の負担が大きく影響し、損益に悪影響を与える可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、これらの変動要因を回避するため、顧客企業とパートナーシップを構築して、長期的かつ安定的な人材供給を目指しております。
製造派遣事業において、国内メーカーの工場での生産工程における作業を受託する「構内作業業務請負」を一部行っており、顧客企業との業務請負契約の付属契約として設備等の賃貸借契約を締結し、その中で請負業務を遂行する際に発生する設備等の破損について責任を負っております。また、当社グループ各社は、生産性低下のリスクや不良品発生リスクも担っております。また、業務を遂行する技術職社員が労働災害に見舞われた場合において、その損害についての責任を負っております。したがって、これらの損害により当社グループの費用負担が増加した場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、請負業務を行う従業員については、製造工程を熟知した人材を配置するとともに、安全衛生教育等を含む継続的な研修や訓練を行っております。
当社グループが技術職社員の多くを派遣する製造業において、技術革新や事業環境の変化のスピードは増しており、顧客企業のニーズを的確に捉えて対応していく必要があります。技術革新の急速な進展に対し、その対応が遅れた場合、特に顧客企業における技術革新の方向性を適時適切に把握し、顧客企業に派遣する技術職社員におけるスキルセットやスキルアップ、職種転換を適切に図ることができない場合、あるいは派遣管理手法や採用手法等、当社グループの強みを発揮したサービスや技術を提供できない場合には、当社グループの競争上の優位性が確保できず、ビジネスモデルそのものが陳腐化する等、当社グループの事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクが顕在化する可能性や業績への影響については、現時点では認識しておりませんが、市場や顧客企業のニーズの変化を見極め、柔軟な対応能力を発揮するべく、顧客企業とのリレーションの維持・強化に努めております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策緩和等を背景に、雇用環境の改善などにより緩やかな回復基調で推移しました。一方で、世界的な金融引き締めが続く中、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、ウクライナや中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等による影響に注視が必要な状況が続きました。
当社グループを取り巻く環境としましては、鉱工業生産が伸び悩み、製造業における新規求人数は減少(※1)しました。自動車関連メーカーでは半導体等の部材不足の影響が緩和し、生産活動が緩やかな回復基調にある中、一部メーカーで生産調整が発生し、半導体製造装置メーカーや半導体メーカーでは2022年秋口から継続する在庫調整等の影響を受け、生産活動が停滞する状況が継続しています。生産工程の有効求人倍率は2022年12月の2.07倍をピークに低下を続けており、2024年3月では1.62倍と生産工程における人材需給は緩和傾向となっています。
このような状況の下、当社グループは第4次中期経営計画(2021年3月期~2025年3月期、以下「当初計画」)で掲げる「より多くのはたらく人に応えられるキャリアプラットフォームへ」の中期経営目標のもと、「大手製造業向けワンストップ戦略」、「地域プラットフォーム戦略」及び「ソリューション戦略」を成長戦略として推し進めてまいりました。しかしながら、2024年3月期の前半において製造業全般で生産活動が停滞したことに加え、半導体関連の顧客企業を中心として人材需要が想定を下回り推移したこと、及び本格的な回復迄には半年~1年程の遅れを見込んだことから、「当初計画」の内容及び計画期間を見直し、2026年3月期を最終年度とするローリングプランを策定しました。ローリングプランでは製造業向け人材派遣事業に特化し、「派遣」という働き方そのものを働く人へのサービスとして捉え、徹底的に磨き上げ、そのサービスとしての価値を高めていくことで、製造派遣で働く人から最も選ばれる派遣会社となることを目指してまいります。
当連結会計年度は、製造業における人材需要が停滞する中、自動車関連メーカーの人材需要は下期に入り回復基調となりましたが、半導体製造装置メーカーや半導体メーカーの人材需要が通年で低調に推移した影響を補うには至らず売上高が減少しました。費用につきましては、さらなる事業成長のための月間2,000名採用体制構築等にかかる投資費用の増加及び既存顧客における需要の回復や新規顧客の開拓に伴う受注の増加に対応するために採用関連費の増加があったものの、要員計画の見直し等による人件費の抑制に加え、前第3四半期連結会計期間に計上した株式報酬費用の剥落により、前年同期比で減少しました。一方で、2024年3月には人材需要の回復の兆しが見られ、2024年3月には国内中途採用人数が2,344名と過去最高を大きく更新しました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ3,173百万円減少し、68,456百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ7,688百万円減少し、34,013百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,514百万円増加し、34,443百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度は売上高167,030百万円(前年同期170,631百万円、2.1%の減収)、営業利益9,344百万円(前年同期8,914百万円、4.8%の増益)、EBITDA(※)10,936百万円(前年同期15,714百万円、30.4%の減少)、経常利益9,397百万円(前年同期8,834百万円、6.4%の増益)、親会社株主に帰属する当期純利益6,361百万円(前年同期3,831百万円、66.1%の増益)、技術職社員数は48,771名(前年同期45,530名、3,241名の増加)となりました。
※ EBITDA=営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+のれん償却額
セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。
(マニュファクチャリング事業)
「産業・業務用機械関連分野」「エレクトロニクス関連分野」においては、半導体の在庫調整等の影響が継続したことを受け人材需要は軟調に推移しました。一方で「輸送機器関連分野」では、当第4四半期連結会計期間において一部の自動車関連メーカーで生産調整が発生したものの、全体的に人材需要は堅調に推移したことを受け、第3四半期連結会計期間より強化した採用活動を継続しました。
なお、第1四半期連結会計期間において、より顧客企業に最適なサービスを提供するため、顧客企業の一部の派遣元をマニュファクチャリング事業に属する事業会社からエリア事業に属する事業会社へ移管し、これに伴い約1,900名の技術職社員が転出いたしました。
以上の結果、売上高65,463百万円(前年同期82,089百万円、20.3%の減収)、セグメント利益6,900百万円(前年同期10,988百万円、37.2%の減益)、技術職社員数11,672名(前年同期14,001名、2,329名の減少)となりました。
(エリア事業)
製造業全般において生産活動が停滞する中、求職者の多様なニーズに応えるためにインサイドセールスを強化し、各地域における顧客開拓と営業基盤の強化に注力いたしました。また、既存顧客における求人案件の多様化にも注力し、これをもとにした採用活動を進めました。加えて上述のとおり、顧客企業ごとに最適なサービスを提供することを目的に、顧客企業の一部の派遣元をマニュファクチャリング事業よりエリア事業へ移管したことに伴い、約1,900名の技術職社員が転入したことで技術職社員数が増加し増収に寄与いたしました。費用については、営業体制強化による人員増加や案件の開拓に伴い採用活動を強化したこと等により増加しました。
以上の結果、売上高63,517百万円(前年同期51,222百万円、24.0%の増収)、セグメント利益1,381百万円(前年同期1,902百万円、27.4%の減益)技術職社員数16,606名(前年同期13,332名、3,274名の増加)となりました。
(ソリューション事業)
新たなソリューション案件の獲得に向けた提案活動を進めるとともに、新規顧客企業の開拓や幅広い年代の技術職社員の活躍が期待できる請負案件開拓に取り組みました。一方で、一部の請負案件が低調に推移したことや終了したこと等により、売上高が減少しました。
以上の結果、売上高17,886百万円(前年同期18,645百万円、4.1%の減収)、セグメント損失53百万円(前年同期はセグメント利益146百万円)、技術職社員数3,315名(前年同期3,134名、181名の増加)となりました。
(エンジニアリング事業)
2023年4月に迎え入れた新卒入社社員184名が早期に稼働を開始しました。建設技術者分野、IT技術者分野における旺盛な需要動向を踏まえ、例年以上に積極的に2024年4月入社の新卒採用に取り組んだことで採用関連費用が増加しました。加えて、営業や採用等の事業体制増強に伴い人件費が増加いたしました。また、建設技術者分野では、顧客企業とのリレーション強化と技術職社員のキャリア形成支援を目的として、当連結会計年度で113名の顧客企業への転籍が実現しました。
以上の結果、売上高9,303百万円(前年同期9,040百万円、2.9%の増収)、セグメント利益1,088百万円(前年同期1,131百万円、3.8%の減益)、技術職社員数1,485名(前年同期1,469名、16名の増加)となりました。
(海外事業)
世界景気減速の影響からベトナムの主要輸出産業の生産活動が停滞したことで、製造業の顧客企業を中心に人材需要が低減しましたが、サービス職種の案件獲得に取り組んだことで技術職社員数が増加しました。加えて、営業活動地域の拡大として従前より拠点を有するホーチミン市を中心とする南部地域から、ハノイ市を中心とする北部地域まで活動範囲を広げ、日系企業からの案件獲得に注力いたしました。また、2020年10月に行われたGreen Speed Joint Stock Companyの株式取得における条件付取得対価の総額が確定したことにより、当期の第1四半期連結会計期間に新たにのれん687百万円を計上するとともに、当該のれんに関して当初株式取得時から取得対価の確定日までの期間に対応するのれん償却額129百万円を、取得対価が確定した当期の第1四半期連結会計期間において同時に計上しております。
以上の結果、売上高10,910百万円(前年同期9,663百万円、12.9%の増収)、セグメント利益62百万円(前年同期326百万円、80.9%の減益)技術職社員数15,693名(前年同期13,594名、2,099名の増加)となりました。
なお、海外事業につきましては、決算日が12月末日であることから2023年1~12月期の実績を3ヶ月遅れで当連結会計年度に計上しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、29,318百万円(前連結会計年度末比2,651百万円減)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は、3,987百万円(前年同期は13,004百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益9,676百万円及び法人税等の支払額6,353百万円が計上されたことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、210百万円(前年同期は2,139百万円の使用)となりました。これは主に、関係会社株式の売却による収入1,555百万円が計上されたものの、ソフトウエア等無形固定資産の取得による支出1,487百万円及び子会社株式の条件付取得対価の支払額687百万円が計上されたことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、6,434百万円(前年同期は4,748百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出4,784百万円、自己株式の取得による支出2,817百万円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入713百万円が計上されたことによるものであります。
当社グループは生産活動を行っていないため、記載を省略しております。
当社グループが行う事業は全て受注時の業務量をその後の顧客の要望に合わせて変更することが多いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、10%未満のため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
a.財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は54,213百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,570百万円減少いたしました。これは主に売掛金が668百万円増加したものの、現金及び預金が2,651百万円減少したことによるものであります。固定資産は14,242百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,603百万円減少いたしました。これは主にGreen Speed Joint Stock Companyの株式取得における条件付取得対価の総額が確定し、のれんが687百万円増加したものの、J-CEP株式会社の売却により、投資有価証券が1,026百万円及び有形固定資産が土地・建物の売却等により488百万円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は68,456百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,173百万円減少いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は24,967百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,936百万円減少いたしました。これは主に当連結会計年度末が休日であった影響で未払費用及び預り金が2,254百万円増加したものの、未払法人税等が3,588百万円及び未払消費税等が1,837百万円減少したことによるものであります。固定負債は9,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,752百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が4,500百万円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は34,013百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,688百万円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は34,443百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,514百万円増加いたしました。これは主に株主還元としての自己株式取得2,817百万円を行ったものの、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金が合わせて1,008百万円増加、及び親会社株主に帰属する当期純利益を6,361百万円計上したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は40.0%(前連結会計年度末は31.8%)となりました。
b.経営成績の分析
当連結会計年度は、製造業における人材需要が停滞する中、自動車関連メーカーの人材需要は下期に入り回復基調となりましたが、半導体製造装置メーカーや半導体メーカーの人材需要が通年で低調に推移した影響を補うには至らず売上高が減少しました。費用につきましては、さらなる事業成長のための月間2,000名採用体制構築等にかかる投資費用の増加及び既存顧客における需要の回復や新規顧客の開拓に伴う受注の増加に対応するために採用関連費の増加があったものの、要員計画の見直し等による人件費の抑制に加え、前第3四半期連結会計期間に計上した株式報酬費用の剥落により、前年同期比で減少しました。一方で、2024年3月には人材需要の回復の兆しが見られ、2024年3月には国内中途採用人数が2,344名と過去最高を大きく更新しました。
以上の結果、当連結会計年度における経営成績は、売上高167,030百万円(前年同期比2.1%減)、営業利益9,344百万円(前年同期比4.8%増)、EBITDA(※)10,936百万円(前年同期30.4%減)、経常利益9,397百万円(前年同期比6.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益6,361百万円(前年同期比66.1%増)となりました。
※ EBITDA=営業利益+減価償却費(有形・無形固定資産)+のれん償却額
c.経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主幹事業が属する製造業界におきましては、為替変動や国内外の景気変動の影響等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
そのほか、経営成績に重要な影響を与える可能性のある要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のものがあります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、売上債権の回収サイクルと仕入債務の支払いサイクルのギャップ及び営業活動上において必要な人件費や手数料等の販売費及び一般管理費であります。設備投資資金としては、主に自社利用のソフトウエア等への投資であります。
所要資金は、運転資金需要が中心であるため、自己資金をベースとしつつも、M&Aを含む成長局面の需要に対しては金融機関からの借入を適時組み合わせ、必要資金を賄っております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告金額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(のれんの回収可能性)
当社グループは、のれんについて、20年以内の合理的な年数で定額法により償却を行っております。
のれんに係る減損要否の検討は、のれんの発生原因である超過収益力やシナジー効果が将来にわたって発現するかに着目して行っており、のれんが帰属する事業の事業計画に沿って営業利益等が計上されているかを毎期モニタリングしております。
事業計画の達成が危ぶまれる状況など減損の兆候が認められる場合には、事業計画の合理性について見直しを行い、これに基づく割引前将来キャッシュ・フローによって、減損損失の認識の要否を判定いたします。減損損失を認識する場合においては割引後将来キャッシュ・フローで算定する回収可能性に基づき減損損失を測定することとしております。
検討に用いる将来の事業計画には、在籍人数及び派遣単価等の項目が重要な仮定として用いられております。これらについては、その性質上、一定の仮定を設定した上での判断を伴うものであり、当該仮定に変化が生じた場合は、減損の兆候の有無の判断、認識するか否かの判定、又は測定する減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2023年10月30日開催の取締役会において、株式会社日立茨城テクニカルサービスの株式の51%を取得することを決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結、2024年5月1日付で株式を取得いたしました。
2023年11月27日開催の取締役会において、株式会社ビーネックスパートナーズの全株式を取得することを決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結、2024年4月1日付で株式を取得いたしました。また、連結子会社であるUTテクノロジー株式会社及びUTコンストラクション株式会社の当社が所有する全株式の売却を決議し、同日付けで株式譲渡契約を締結、2024年4月1日付けで株式を譲渡いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の(重要な後発事象)をご参照ください。
該当事項はありません。