当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「先端の創薬を通じて人々の健康と明日の社会に貢献する」という経営理念の下、「医療用医薬品事業」を中核に「アニマルヘルス事業」、「検査事業」など医療関連ビジネスを通し、社会から信頼される会社として成長・発展していきたいと考えております。
また健康や生活に対する価値観の多様化やビジネス環境の変化が急速に進む中、当社グループは機動的な意思決定とガバナンス強化を目的として、2021年度からホールディングス体制をスタートしております。当社グループの中核となる国内医療用医薬品事業において産婦人科等のスペシャリティ領域でリーディングカンパニーとして飛躍するとともに、これまでの事業を軸に「予防、検査・診断、治療、予後」のヘルスケア市場全体において、国内外にわたって事業を展開する「トータルヘルスケアカンパニー」を目指していきます。さらに今後も「いのち」に関わる企業として持続的な成長と社会課題の解決を図るとともに、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた活動を推進し、豊かな社会の実現にむけて貢献してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは2021年4月から2026年3月末までの中期経営計画を策定しております。その最終年度である2025年度には、売上高700億円、営業利益率8%、自己資本当期純利益率(ROE)8%の達成を目標としております。
(3)中長期的な会社の経営戦略および会社の対処すべき課題
当社グループでは2021年度からスタートした中期経営計画において、これまで築いてきた基盤をより発展させつつ、当社グループが目指す「スペシャリティファーマを基盤とするトータルヘルスケアカンパニー」の実現にむけ、以下の7つの戦略に取り組んでまいります。
1.スペシャリティ領域の取り組み強化による企業価値向上にむけて、産婦人科製品の継続的な開発・販売を通じ、女性のクオリティオブライフ向上に貢献します。さらに発売から100年を超える甲状腺ホルモン剤を中心に、甲状腺領域疾患の啓発活動を推進してまいります。
2.新薬の継続的創出のため、オープンイノベーションの活用やロンドンオフィスとの連携によるグローバルベースなアライアンス活動に取り組みます。
3.海外事業の展開の一環として、アジアを中心に提携先との協力関係を進めていきます。
4.トータルヘルスケア実現に向けた新たな価値提供にむけ、検査事業における低侵襲な検査法のビジネス確立を進めます。また畜水産領域の繁殖・免疫と栄養の強みを伸ばし、コンパニオンアニマルの健康を支える製品の開発・販売を行います。
5.財務基盤の強化のため、IT活用等による業務効率化、コスト削減を推進します。
6.社会からの信頼を得る会社であり続けるために、信頼性を重視する組織風土の醸成とコンプライアンスの徹底により、生命関連企業としての責任を果たしてまいります。
7.成長戦略を実現するための人材活用にむけ、新人事制度による多様なキャリア志向に対応できる組織体制づくりとともに、計画的な教育研修により能力拡大をはかります。
具体的な取り組みとして、中核となる医薬品事業を行うあすか製薬株式会社においては、臨床試験を進めているAKP-009、TRM-270、AKP-022の開発ステージアップを進めてまいります。またPhase3試験を進めていたLF111については2025年3月期第1四半期中に製造販売承認を申請予定です。さらに自社技術に加えオープンイノベーションを活用し獲得した創薬シーズのステージアップを目指すとともに、内科・産婦人科・泌尿器科領域を中心とした導出入活動により、パイプライン拡充に努めてまいります。また同社の営業活動においては、産婦人科領域と難吸収性リファマイシン系抗菌薬「リフキシマ」を中心とした情報提供活動を行うために導入したスペシャリティエリア制の確立により、質の高い情報提供とともにウェビナー等を活用した効率的な営業活動を継続していきます。主に子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「レルミナ」や月経困難症治療剤「ドロエチ」など業績に貢献する製品に加え、コ・プロモーション活動を実施している月経困難症治療剤「ジェミーナ」、鉄欠乏性貧血治療薬「リオナ」等の情報提供を通じて産婦人科領域でのプレゼンスをさらに向上させていきます。また学会からの開発要望を受けて、小児に対する肝性脳症における高アンモニア血症の改善の効能追加を取得した「リフキシマ」についても、引き続き普及・浸透を進めていきます。さらに国内シェアが9割を超える甲状腺ホルモン剤「チラーヂン」は医療現場において欠かすことのできない薬剤であり、安定供給体制を堅持するとともに、甲状腺疾患治療のリーディングカンパニーとして引き続き甲状腺疾患の啓発活動等に取り組んでまいります。
トータルヘルスケアカンパニーの実現に向け、他社との協業を発展させていくための活動を強化しております。具体的な取り組みとして、企業や団体等で働く人を対象に、「働く人が知っておきたい性のこと」をコンセプトとしたヘルスリテラシー向上に貢献する動画の販売をスタートしました。またフューチャーベンチャーキャピタル株式会社と共同設立したコーポレートベンチャーキャピタルファンド「あすかイノベーションファンド」を通じて女性の健康課題解決に向けたスタートアップとの協業により新たな価値創造を目指してまいります。さらに動物用医薬品・飼料等を販売するあすかアニマルヘルスにおいては、アニマルウェルフェアに貢献できる製品の開発・発売を継続して進めており、成長が期待されるコンパニオンアニマル向けの製品の一層の浸透を進めてまいります。これらに加え、検査事業を行う株式会社あすか製薬メディカルでは、毛髪からステロイドホルモンを測定する技術を応用した毛髪ホルモン量測定キットを開発し、新たなビジネスを展開しております。これまでの男性型脱毛症(AGA)のリスク評価を可能とする毛髪ホルモン量測定キットに加え、あらたに女性ホルモンの1つであるプロゲステロンを測定するキットを開発し、2024年4月から販売を開始しました。今後も新たなホルモン測定キットや毛髪以外の検体を対象とした測定などの事業展開を進めてまいります。
当社は「先端の創薬を通じて人々の健康と明日の社会に貢献する」という経営理念のもと、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。2021年4月以降、ESG委員会の設置、サステナビリティ担当取締役の選任、グループ経営企画部内に専門部署を設置し「ESG推進会議」、「推進責任者会議」の運営など、取り組み体制を強化してまいりました。このような運用の確立により、サステナビリティを意識した経営の啓発・推進のほか、気候変動への対応、脱炭素社会の実現や人的資本に関する取組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献し、社会価値の創出による持続的成長と中長期的な企業価値向上をめざしてまいります。
(1)サステナビリティ全般に関する取組み
2021年4月、ホールディングス体制に移行し新たな一歩を踏み出した当社は「先端の創薬を通じて人々の健康と明日の社会に貢献する」という経営理念のもと、事業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。
2023年4月には、これまでの取り組みをさらに加速させるため、サステナビリティ担当取締役の選任と、グループ経営企画部内に専門部署を設置し、体制を強化しました。
①ガバナンス
当社はESG経営の推進を重要施策に掲げており、ESG委員会を取締役会から独立した任意の諮問委員会として設置しております。
ESG委員会は代表取締役専務取締役が委員長を務め、子会社役員、ESG推進会議議長、グループ経営企画部長、委員長の指名を受けた者等で構成されております。
取締役会に答申/報告のうえ、リスク管理を行っています。
なお、ESG推進体制の詳細は以下の通りです。
〔ESG推進体制〕
「ESG委員会」「ESG推進会議」「推進責任者会議」の3つの会議体で構成されております。
「ESG委員会」は「ESG推進会議」の提案事項を審議し、決定次第速やかに「ESG推進会議」より取締役会に答申/報告しております。
3つの会議体のESG活動推進フローは以下の通りです。
1.各本部・部門代表者で構成する推進責任者会議が「課題」を抽出・ESG推進会議に提案。
2.ESG推進会議が本部・部門ごとの課題を全社視点で集約、「マテリアリティ案」としてESG委員会に提案。
3 ESG委員会が全社マテリアリティを特定するとともに、ESG戦略を決定。
4.ESG推進会議のもと、推進責任者会議が部門目標・計画を策定し、ESG活動を推進。
5.部門推進のESG活動を四半期毎にESG推進会議がとりまとめ、ESG委員会に報告。
6.ESG委員会が活動内容を評価。
②リスク管理
リスクを識別・評価し、管理するプロセスは以下のとおりです。
1.推進責任者会議が、四半期ごとにリスク及び機会管理にあたって発生が予測される時期・確率、影響範囲等をESG推進会議に報告します。
2.ESG推進会議が、報告内容について全社レベルのリスク及び機会として集約のうえ、ESG委員会に報告します。
3.ESG委員会は全社レベルのリスク・機会の影響を評価するとともに都度見直しし、ESG推進会議より取締役会に答申/報告します。
4.答申/報告された内容はKPIに反映し、それをもとに関係部門が対応してリスクを管理します。取締役会ではESG推進会議より答申/報告された内容を基に、企業としての意思決定の際に気候変動が当社や社会に及ぼす影響を考慮することで、気候変動関連リスクを当社の総合的リスク管理プロセスに統合しています。
(2)気候変動に関する取組み(TCFD提言に沿った開示)
①ガバナンス
気候変動に関するガバナンスについては、(1)サステナビリティ全般に関する取組みの「
②戦略
気候変動に関する当社の事業リスクと機会は以下の通りです。
〔リスク〕
・移行リスク
政策:気候変動による予期せぬパンデミックに加え、少子高齢社会による医療財政圧迫による想定を上回る薬価引き下げ等がおこるリスク
市場:気候変動により原材料高騰が物価上昇を引き起こし、患者の生活費が逼迫することで受診抑制がおこるリスク
評判:気候変動対策の遅れによるステークホルダーからの懸念の増加
・物理的リスク
慢性:気候変動による製造原価上昇等、営業費用が増加するリスク
急性:異常気象に起因する災害によるサプライチェーンが寸断されるリスク
〔機会〕
・気候変動に伴う疾病増加や消費者選好の変化に対する競争力の強化が製品需要拡大につながる
・気候変動リスクへの積極的取り組みにより、経営上の持続可能性が高まるとともにステークホルダー評価が高まり、株価上昇の機会につながる
リスクについては、現時点では長期的に大規模な投資を必要とする重大な気候関連リスク等は確認しておりませんが、業界内で連携を綿密にとりながら丁寧に対応策を検討してまいります。
機会については、気温上昇などによる特定の疾病の流行といった事業機会は考えられるものの、現時点での弊社パイプライン上、事業機会に大きく影響する項目は、確認しておりません。しかしながら、あらゆる気候変動が人体に及ぼす影響について、弊社パイプラインが新たに貢献できる機会を常に模索したいと考えています。
当社はTCFD提言に基づくシナリオ分析の実施とリスク・機会の把握を通して、気候変動に伴うリスク・機会への対応策を策定し、気候変動における当社ビジネスのレジリエンス向上に努めてまいります。
③リスク管理
気候変動に関するリスク管理については、(1)サステナビリティ全般に関する取組みの「
④シナリオ分析
1.5℃シナリオとして、IEA(NZE) IPCC(AR6 SSP1-1.9)、4℃シナリオとしてIPCC(AR6 SSP5-8.5)を用い、当社の事業への影響及び、影響発現までの時間を検討し、以下のように評価致しました。
|
分類 |
想定される リスク・機会 |
想定される影響 |
当社の影響 |
影響発現までの期間 |
対応 |
|||
|
1.5℃ シナ リオ |
4℃ シナ リオ |
1.5℃ シナ リオ |
4℃ シナ リオ |
|||||
|
移行 リスク |
政策 |
気候変動による予期せぬパンデミックに加え、少子高齢社会による医療財政圧迫による想定を上回る薬価引き下げ等がおこるリスク |
薬価引き下げに伴う売り上げ減少により、研究開発や設備投資削減を余儀なくされ、事業成長が停滞する可能性がある。 |
小 |
小 |
長 |
長 |
あすか製薬株式会社ではスペシャリティー領域での新薬の継続的創出に事業転換しており、仮に想定を上回る薬価引き下げがおこった場合にも対応しうる基盤構築に努めているため、影響は僅少であると考えております。 |
|
市場 |
気候変動により原材料高騰が物価上昇を引き起こし、患者の生活費が逼迫することで受診抑制がおこるリスク |
受診抑制が当社医薬品処方減による売り上げ減少により、研究開発や設備投資削減を余儀なくされ、事業成長が停滞する可能性がある。 |
小 |
中 |
長 |
中 |
中核子会社であるあすか製薬株式会社では受診抑制がおこったとしても、強みである産婦人科領域での女性活躍推進の流れなどにより、それを凌駕する製品需要に支えられることで、影響は僅少であると考えております。 |
|
|
評判 |
気候変動対策の遅れによるステークホルダーからの懸念の増加 |
気候変動対策を計画的に実施するものの、都度の実態に追い付くことができず、ステークホルダーからの信用失墜による収益低下を招く恐れがある。 |
小 |
中 |
長 |
中 |
当社は社会の一員として、気候変動対策は喫緊の課題と認識し、環境面での課題を中心に事業を通じた社会課題解決にむけ、ESG経営を積極的に推進しております。しかしながら4℃を超えるような気温上昇の環境を抑えるに値する取り組みは費用と時間を要するため、現在の2030年までの目標を前倒しでの対応を検討してまいります。 |
|
|
物理的リスク |
慢性 |
気候変動による製造原価上昇等、営業費用が増加するリスク |
慢性的な風水害リスクの機会が増し、社員の出社不可能な事態や製造設備毀損による操業の中断、さらには貯蔵設備(原材料や製品等)の毀損等により収益の低下を招く可能性がある |
中 |
中 |
中 |
中 |
当社は東日本大震災の際にいわき工場が被災した経験を活かし、リスクマネジメントを徹底し、各種対応をはかってまいりました。今後も未曽有の事態にも耐えうる環境整備に努めてまいります。 |
|
急性 |
異常気象に起因する災害によるサプライチェーンが寸断されるリスク |
未曽有の風水害により原材料等の確保が困難となることで収益の低下を招く可能性がある |
中 |
中 |
中 |
中 |
当社は東日本大震災の際にいわき工場が被災した経験を活かし、以降、あらゆる場面で複数のルートを持つようリスクマネジメントを徹底しております。今後も未曽有の事態にも耐えうる環境整備に努めてまいります。 |
|
|
機会 |
気候変動に伴う疾病増加や消費者選好の変化に対する競争力の強化が製品需要拡大につながる |
温暖化により疾病動向が変化するとホルモンバランスの変調がおこり、既存医薬品(各種ホルモン製剤など)の需要増に加え、新薬の開発販売促進により収益が拡大する |
小 |
小 |
長 |
長 |
当社はスペシャリティー領域を中心に、今後も既存医薬品の効能追加や新規化合物ライブラリーの充実をはかってまいります。 |
|
|
気候変動リスクへの積極的取り組みにより、経営上の持続可能性が高まるとともに、ステークホルダーの評価が高まり、株価上昇の機会につながる |
当社の気候変動への取り組みが顧客からの信頼獲得、従業員の定着、人材採用における評価向上、ESG投資家からの評価向上等、企業価値創出に寄与する |
小 |
小 |
長 |
長 |
ステークホルダーに適時適切な開示/対応に努め、企業価値創造をはかってまいります。 |
||
⑤指標及び目標
CO2排出量、水質汚濁負荷量、化学物質の管理、廃棄物排出量などに係る環境パフォーマンス指標を把握しています。製造部門においてはこれらの指標に関する改善課題について第三者機関の検証を毎年受けています。
スコープ1、2排出量(単位:t-CO2)
|
|
2022年度 |
2023年度 |
|
スコープ1 |
|
|
|
スコープ2 |
|
|
スコープ1排出量は、自社による直接排出量を算定しており、ガソリン、灯油、軽油、重油、LPG、都市ガス、冷水温水等の使用に伴うCO2排出量が含まれます。
スコープ1、2排出量については、日本製薬団体連合会が掲げる「2030年度のCO2排出量を2013年度比で46%削減(研究所・工場・オフィス・営業車両)する目標」を当社の削減目標のベンチマークとしています。
2023年4月には、CO2排出削減のため、使用する電力の一部にCO2フリー電力を導入しました。太陽光発電設備の導入についても、2024年6月に電力供給を開始しました。また、2023年度より、本社ビル使用電力量相当については非化石証書によるCO2削減を実施しています。
省エネルギーへの取り組みについては、エネルギー使用にかかる原単位を指標に毎年1%以上(過去5年度間平均原単位変化率で1%以上減)改善を目標として省エネルギー施策を実行します。
(3)人的資本に関する取組み
①戦略
(人材の育成方針及び社内環境整備に関する方針)
当社グループでは、中期経営計画の戦略のひとつとして「成長戦略を実現するための人材育成」を掲げており、各組織の専門性と想像力を高めるべく、「新規事業や環境変化に対応できる人材育成・獲得」と「女性やキャリア、シニアなど多様な人材が活躍できる環境づくり」を目標に従業員が持つスキルや能力の最大化に取り組んでいます。
引き続き、従業員一人ひとりの特性や多様な価値観が尊重された健全な職場環境の整備、ならびに自律的な学びの意欲に応える教育研修体系などの人事施策を実行してまいります。
※
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/social/labor_practices.html
②指標及び目標
主要な連結子会社である、あすか製薬株式会社では、目指す組織像の実現に向けて、人的資本の能力最大化に取り組んでいます。以下の4つを目指す人材モデルとして掲げ、この要素を併せ持つ人材を育成するための施策および環境整備を推進しています。一人ひとりが多様なキャリアを志向し、自ら成長を望み、知識やスキルを獲得していく、そして、年齢や属性にとらわれない多様な人材が活躍していく姿を目指し、組織の価値創造につなげていきます。
1.人事制度
当社グループでは、企業や個人を取り巻く環境が加速的に変化する中、企業が持続的な価値向上を実現するためには、経営戦略と人材戦略との連動が不可欠であることから、経営資源の中で最も重要な要素である人材を資本として捉え、個の能力の最大化を実現し「価値創造」へとつなげていきます。
その中で、主要な連結子会社である、あすか製薬株式会社では、2021年度からスタートした中期経営計画に定める成長戦略を実現するため、人的資本の最大化を目的とした人事制度を同年4月より導入しています。
当該人事制度では、中期経営計画の達成を強く推進する施策として、役割等級制度、役割移行ルール、全等級を対象としたシングルレート制、評価会議の設置等の施策を導入し、常に最適化を図りながら運用しています。
また、従業員自らが成長を望み、知識やスキルを獲得していく姿を目指し、自律的な学びの機会を創出しています。
2.人材育成
当社グループでは、個の自律的な学びの意欲に応え、成長を支援するための環境整備を推進しています。一人ひとりが多様なキャリアを志向し、自ら成長を望み、知識やスキルを獲得していく姿、そして、年齢や属性にとらわれない多様な人材が活躍できる組織を目指し、新たな価値創造に向けた教育研修体制を整えています。
その中で、主要な連結子会社である、あすか製薬株式会社では従業員の主体的なキャリアチャレンジを推進し、キャリア自己申告や社内公募制度、戦略的なジョブローテーション施策など、キャリア意識の醸成と部門横断的な人材の連携を強化することにより、組織の活性化を図っています。
a.教育研修体制
・部門や個人のニーズの変化にも柔軟に対応できるよう、全社必須研修や階層別研修に加え、選択型研修(ビジネススキル選択型研修・外部講習会・eラーニング、通信教育)を積極的に導入しています。
・年代別キャリアデザイン研修、女性社員向け選択型研修、エルダー移行前研修などを取り入れ、多様な人材の活躍を推進しています。
・2023年度より、当社グループの未来を担う次世代の経営リーダーを育成するため、年度を通して実施する選抜研修プログラム「APPLE Program*」を開始しました。
・2024年度には、グローバル化を牽引する人材の早期育成を目的とした、グローバル人材育成プログラム「GRAPE Program**」を開始しました。
*:Aska Pharma-HD Premium Leadership-skill Education Program
**:Global Representative of Aska Pharma-HD Education Program
※
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/social/labor_practices.html
b.教育研修実績
※
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/esg_data/
→ESGチャート・データブック(Social 社会_教育研修 ほか)
3.多様性(D&I)
持続的な成長と企業価値向上のために、多様な価値観を尊重することが重要であると考え、年齢や属性にとらわれないすべての人材が活躍できる職場環境を整備しています。
a.女性活躍推進
女性活躍推進法 一般事業主行動計画の提出会社であるあすか製薬株式会社の目標と進捗は以下のとおりです。
(目標)
・女性管理職比率を2025年3月末までに15%を達成。
・女性管理職候補比率を2025年3月末までに30%を達成。
・男性育児休業取得率は2023年度以降100.0%以上。
(2023年度進捗)
|
|
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
|
6.6 |
6.5 |
7.1 |
9.9 |
|
|
|
13.6 |
18.1 |
23.7 |
20.8 |
|
|
|
28.3 |
29.4 |
30.4 |
32.9 |
|
|
|
100.0 |
100.0 |
100.0 |
100.0 |
|
|
|
50.0 |
45.5 |
45.5 |
94.7 |
|
非正規従業員女性比率:47.0% 新卒採用女性比率:63.6%
※あすか製薬株式会社の2024年3月末時点データ。
b.ダイバーシティの取組み
4.次世代育成支援
次世代を担う子どもが健やかに生まれ育成される環境整備を企業が取り組むべき課題のひとつとして捉え、仕事と子育ての両立に向けた取り組みを進めています。
次世代育成支援対策推進法 一般事業主行動計画の提出会社であるあすか製薬株式会社の目標と進捗は以下のとおりです。
・男性育休取得率
(目標取得率)100.0%以上
(2023年度進捗)100.0%
※あすか製薬株式会社の2024年3月末時点データ。
こうした当社の次世代育成支援の取り組みが評価され、2022年度より厚生労働大臣による認定制度である「くるみん認定」に、選定されております。
5.障がい者雇用
当社グループでは、障がい者がいきいきと働ける環境を実現するために、障がい者自らの希望や力量に応じた就業かつ安定的に働くことができる環境整備を進めています。
・障がい者雇用率
障碍者雇用推進法に基づく、あすか製薬株式会社の状況について
(目標)2.3%
(2023年度の雇用率)2.5%
※あすか製薬株式会社の2024年3月末時点データ。
6.労働安全衛生
当社グループでは、全社安全衛生基本方針に基づき、事業所毎に安全衛生の活動を推進しています。従業員の安全確保と労働災害の防止、心身における健康の保持増進、快適な職場環境の整備に積極的に取り組んでいます。
・
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/social/labor_practices.html
7.健康経営
当社グループでは、従業員と組織、社会が相互に「健康」という価値のある幸せを共有できるよう様々な角度から健康経営を推進しております。従業員の健康管理に留まらず、心身の充実や自律的な成長、組織のさらなる生産性および創造性の向上を目標に取り組んでおります。
・健康経営に関する外部評価
代表取締役専務取締役を健康づくり責任者に置き、健康経営に関する数々の取組みにより、2018年より6年連続で健康経営優良法人ホワイト500認定を受けております。
※2018~2020年度はあすか製薬株式会社単独で認定されており、2021~2023年度はあすか製薬ホールディングス株式会社グループで認定。
・
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/social/health.html
8.社内表彰制度
グループ全社を対象に、文化・社会貢献など、様々なチャレンジや成果に対してホールディングス社長自らが表彰をし、グループの一体感醸成とモチベーション向上を図る制度(グループ表彰制度)を設けております。
また、グループ各社においても従業員の功績をたたえ平素のチャレンジと労苦に報いるとともに、従業員のモチベーション向上を図る、各社社長自らが表彰をする制度(各社功労表彰制度)を設けております。
9.従業員と経営陣との対話の機会
当社グループでは、役員を含めた全ての従業員が、多様な価値観を互いに尊重することで、様々な意見が交わり、最良の解決策や新たなイノベーションを生み出す組織を目指し、経営との対話の機会を積極的に設けています。
主要な連結子会社である、あすか製薬株式会社では、従業員と経営トップ(会長、副会長、社長)とのタウンホールミーティングやラウンドテーブルミーティングなど対話の機会を定期的に実施しております。これは、経営トップが直接、従業員の考えや意見を聴くと同時に、あすか製薬の存在意義や想いを伝えることで、従業員と経営トップとの距離をさらに縮め、ワークエンゲージメント(活力・熱意・没頭)を向上させることを目的としています。
(2023年度実績)
|
|
回数 |
時間 |
|
経営トップと従業員との 対話(年間) |
74 回 |
110.5 時間 |
※
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/csr/social/labor_practices.html
ワークエンゲージメント(偏差値)
|
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
|
53.7 |
53.7 |
54.3 |
※調査委託先のワークエンゲージメント調査導入企業・団体等81社で構成する偏差値で表記
10.コンプライアンス推進体制の充実
当社グループでは、グループ各社におけるコンプライアンスを推進・支援する部門を設置し、必要な社内体制や規程の整備をはじめ、関連案件の迅速な解決や違反の未然防止対策の立案などを通じて、役員および従業員が安心して企業活動に取り組めるよう体制を構築しています。
また、昨今の製薬業界における製造工程での不祥事を踏まえ、当社グループでは、信頼性保証部門及び製造部門が連携し、GMP遵守の徹底を図っています。
※
https://www.aska-pharma-hd.co.jp/invest/governance/compliance.html
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)研究開発に関するリスク
医薬品の研究開発には、多額の費用と長い年月を要しますが、新製品または新技術の創出へと結実する確率は決して高くありません。現在の開発品についても、期待した有効性が証明できない場合や安全性の面で問題が明らかとなった場合には、開発の継続を断念しなければならない可能性があります。このような場合、開発品によっては当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2)副作用に関するリスク
医薬品は、十分な安全性試験と厳しい審査を経てから承認、販売されます。しかし、市販後に、発売時には予測されなかった新たな副作用が発見され、製品の販売中止・回収等を余儀なくされた場合は、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3)法規制、制度改革に関するリスク
当社グループの売上高の大部分を占める医療用医薬品は、薬事行政により様々な規制を受けています。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関わる行政施策の動向によっては、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(4)知的財産権に関するリスク
当社グループの事業は多くの特許によって保護されています。当社グループでは、特許等知的財産権を適切に管理し、第三者からの侵害に注意を払っておりますが、当社グループが保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合、期待される収益が失われる可能性があります。また当社グループの事業活動が第三者の知的財産権に抵触する場合には、係争に至り、また当該事業の中止に繋がるなど、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5)他社との提携に関するリスク
当社グループは、研究、開発、製造において、他社と連携し共同研究、製品導出入、委受託製造などを行っておりますが、今後、何らかの事情により契約変更もしくは契約解消が発生した場合、また、提携先の経営統合・組織変更、経営方針の変更、株主の変動などが生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(6)製造・安定供給に関するリスク
当社グループおよび提携先等の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題発生や火災その他の災害による操業停止等により、医薬品の供給が休止もしくは著しく停滞した場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(7)特定取引先との関係について
当社グループは、取引先の上位1社で約9割の売上高を占めております。今後も継続し取引を行う方針ですが、万が一取引関係等に大きな変化が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(8)大規模な災害等に関するリスク
当社グループでは、防災管理体制を整備し、事業継続計画(BCP)の策定等の各種対策を推進しておりますが、想定を超える大規模災害や事故、パンデミック等が発生し、当社グループの本社、工場、研究所、事業所等の破損もしくは事業活動の停滞、操業停止等に陥った場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(9)訴訟に関するリスク
当社グループは、事業活動を継続していく過程において、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関する訴訟を提起される可能性があります。これにより、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(10)情報セキュリティと情報管理に関するリスク
当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムの障害やコンピューターウイルス等により、業務が阻害される可能性があります。また、個人情報を含め多くの機密情報を保有しておりますが、これらが社外に漏洩した場合には、損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損等により、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループの全てのリスクではありません。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度においては、国内の経済活動の持ち直しなどを背景に景気の緩やかな回復基調が続きましたが、不安定な国際情勢、インフレ圧力と欧米各国の金融引き締めや急激な為替変動など、経営環境は引き続き先行き不透明な状況が続いております。また当社グループの中核となる医薬品事業におきましては毎年の薬価改定による影響などにより、引き続き厳しい事業環境にあります。しかしながらこのような状況下においても、当社グループの事業は新製品の伸長等により、前年度に引き続き堅調に推移しました。
当連結会計年度における当社経営成績は以下のとおりであります。
|
|
2023年3月期 (百万円) |
2024年3月期 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
|
売上高 |
60,461 |
62,843 |
2,381 |
3.9% |
|
営業利益 |
5,108 |
6,500 |
1,392 |
27.3% |
|
経常利益 |
5,232 |
6,522 |
1,289 |
24.6% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
4,238 |
7,545 |
3,307 |
78.0% |
当連結会計年度の当社グループの売上高は前年同期から2,381百万円増加し、62,843百万円となりました。これは主に、産婦人科領域の製品群が伸長した医療用医薬品事業の増収によるものであります。また売上原価率が前年同期比1.5%低下し、売上原価が32,178百万円となったことにより、売上総利益は前年同期から2,079百万円増の30,664百万円となりました。一方で販売費及び一般管理費は前年同期から687百万円増の24,164百万円となり、その結果、営業利益は前年同期から1,392百万円増の6,500百万円、売上高営業利益率は10.3%となりました。経常利益につきましては、営業外収益を414百万円、営業外費用を392百万円計上したこと等から6,522百万円となりました。また投資有価証券の売却に伴う特別利益を3,340百万円計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期から3,307百万円増の7,545百万円となりました。
なお、パートナーシップ強化を目的に、当社子会社のあすか製薬株式会社が持分法適用関連会社であるベトナム製薬企業Ha Tay Pharmaceutical Joint Stock Companyの新株発行契約に関わる増資を実行しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
(医薬品事業)
内科、産婦人科、泌尿器科の3分野に注力している医薬品事業は薬価改定の影響を受けつつも全般的に堅調に推移しました。製品別にみると、産婦人科領域において子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「レルミナ」が9,906百万円(前年同期比12.1%増)と順調に伸長したほか、2022年6月から販売を開始した月経困難症治療剤「ドロエチ」が6,125百万円(同66.3%増)と前年に続き大きく増加しました。さらに内科領域の主力品である甲状腺ホルモン剤「チラーヂン」が7,862百万円(同1.7%増)、難吸収性リファマイシン系抗菌薬「リフキシマ」も5,864百万円(同8.7%増)と着実に伸長しました。泌尿器科領域ではLH-RH誘導体マイクロカプセル型徐放性製剤「リュープロレリン」が4,430百万円(同11.4%減)となりました。
以上の結果、売上高は56,016百万円(同4.5%増)、セグメント利益は7,647百万円(同32.3%増)となりました。
(アニマルヘルス事業)
動物用医薬品、飼料添加物等の製品を販売しているアニマルヘルス事業においては、飼料添加物等の売上が減収であったものの、動物用医薬品の増収により、売上高は前年と同水準の6,664百万円(前年同期比0.0%増)となりました。一方で、原材料等のコスト上昇による影響を受け、セグメント利益は195百万円(同52.3%減)となりました。
(その他事業)
臨床検査、医療機器等の各事業を展開しているその他事業については、売上高は162百万円(前年同期比26.3%減)、セグメント損失は125百万円(前年同期は6百万円の損失)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ3,607百万円増加し、90,745百万円となりました。これは主に、販売権が減少しましたが、商品及び製品および投資有価証券が増加したためであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,789百万円減少し、28,815百万円となりました。これは主に、未払法人税等および買掛金が増加しましたが、退職給付に係る負債および長期借入金(1年内返済予定を含む)が減少したためであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,396百万円増加し、61,930百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加によるものであります。
その結果、自己資本比率は前連結会計年度末から5.6ポイント上昇し68.2%となっております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ766百万円減少し、16,738百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動におけるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果増加した資金は、1,486百万円(前年同期は3,351百万円の増加)となりました。これは主に、退職給付に係る負債の減少はありましたが、税金等調整前当期純利益の計上によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は、1,706百万円(前年同期は1,126百万円の減少)となりました。これは主に、投資有価証券の売却によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果減少した資金は、3,943百万円(前年同期は1,820百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
医薬品事業(百万円) |
16,276 |
105.6 |
|
アニマルヘルス事業(百万円) |
788 |
160.5 |
|
合計(百万円) |
17,064 |
107.3 |
(注)金額は製造原価によっております。
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
医薬品事業(百万円) |
10,428 |
112.2 |
|
アニマルヘルス事業(百万円) |
5,581 |
105.9 |
|
その他(百万円) |
35 |
113.1 |
|
合計(百万円) |
16,044 |
109.9 |
(注)金額は仕入価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
c.受注実績
当社グループは販売計画、在庫状況に基づいて生産計画を立て、これによって生産しているため、受注生産は行っておりません。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
|
医薬品事業(百万円) |
56,016 |
104.5 |
|
アニマルヘルス事業(百万円) |
6,664 |
100.0 |
|
その他(百万円) |
162 |
73.7 |
|
合計(百万円) |
62,843 |
103.9 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
武田薬品工業㈱ |
52,293 |
86.5 |
54,564 |
86.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析
当連結会計年度における財政状態の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。
b.経営成績の分析
当連結会計年度の当社グループの売上高は前連結会計年度と比べて2,381百万円増加し、62,843百万円(前期比3.9%増)となりました。これは主に、内科、産婦人科、泌尿器科の3分野に注力している医薬品事業が薬価改定の影響を受けつつも全般的に堅調に推移し、産婦人科領域において子宮筋腫・子宮内膜症治療剤「レルミナ」が9,906百万円(前期比12.1%増)と順調に伸長したほか、2022年6月から販売を開始した月経困難症治療剤「ドロエチ」が6,125百万円(前期比66.3%増)と前連結会計年度に続き大きく増加するなど、医薬品事業の売上高が56,016百万円(前期比4.5%増)となったためであります。
売上原価は前連結会計年度と比べて301百万円増加し、32,178百万円(前期比0.9%増)となりました。売上原価率は51.2%となり、前連結会計年度に比べ1.5%低下しました。これは主に、先発医薬品であるレルミナ、チラーヂン、リフキシマの伸長による製品ミックスの改善等が寄与したためであります。この結果、売上総利益は前連結会計年度と比べて2,079百万円増加し、30,664百万円(前期比7.3%増)となりました。
販売費及び一般管理費は前連結会計年度と比べて687百万円増加し、24,164百万円(前期比2.9%増)となりました。これは主に、減価償却費が減少したものの研究開発の進展に伴い研究開発費が増加したためであります。この結果、営業利益は前連結会計年度と比べて1,392百万円増加し、6,500百万円(前期比27.3%増)となりました。
営業外収益は前連結会計年度と比べて18百万円減少し、414百万円(前期比4.3%減)となりました。また、営業外費用は前連結会計年度と比べて84百万円増加し、392百万円(前期比27.3%増)となりました。この結果、経常利益は前連結会計年度と比べて1,289百万円増加し、6,522百万円(前期比24.6%増)となりました。
特別利益は前連結会計年度と比べて3,215百万円増加し、3,340百万円(前期比2,583.7%増)となりました。これは、政策保有株式の一部銘柄の売却による投資有価証券売却益の計上によるものであります。また、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額の合計は、前連結会計年度と比べて1,198百万円増加し、2,316百万円(前期比107.1%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べて3,307百万円増加し、7,545百万円(前期比78.0%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
b.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動の維持・拡大に必要な資金を安定的に確保するとともに、資金需要に応じた資金調達を行うことを基本的な方針としております。
当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造費用、商品仕入、研究開発費や販売促進費等の販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、長期資金需要の主なものは、生産および研究開発のための設備投資や開発パイプラインの拡充に向けた投資等であります。運転資金需要は自己資金および取引金融機関からの短期借入を基本としており、長期資金需要は自己資金および取引金融機関からの長期借入を基本としております。
資金の流動性につきましては、現金及び現金同等物に加え、取引金融機関とコミットメントライン契約を締結し、手元流動性を確保しております。
なお、当連結会計年度末における借入金の残高は前連結会計年度末と比べて3,138百万円減少し、9,485百万円(前期末比24.9%減)となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末と比べて766百万円減少し、16,738百万円(前期末比4.4%減)となっております。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは、過去の実績や現状等を勘案し合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積り等の不確実性があるため実際の結果は異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは2021年4月から2026年3月末までの中期経営計画を策定しております。その最終年度である2025年度には、売上高700億円、営業利益率8%、自己資本当期純利益率(ROE)8%を目標としております。
今後も「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略および会社の対処すべき課題」に記載のとおり、中期経営計画に基づき、目標達成に向けた取り組みを推進してまいります。
(1)技術導出契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
あすか製薬株式会社 |
杏林製薬株式会社 |
日本 |
AKP-009(前立腺肥大症に伴う排尿障害治療剤) |
日本における開発・販売権の許諾 |
契約締結日から本剤の後発品が初めて薬価収載された日から2年が経過する日または本剤の上市10年後のいずれか遅い日 |
|
あすか製薬株式会社 |
ヒュンダイファーム社 |
韓国 |
SLINDA(経口避妊薬) |
韓国における対象製品の輸入、研究開発、承認申請、流通および販売に関する独占的ライセンス |
製造販売承認取得日より10年間/以降、2年間の自動更新 |
(注) 上記の技術導出契約には、一時金及び一定率のロイヤルティの受け取りが含まれております。
(2)技術導入契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
あすか製薬株式会社 |
ヴィアトリス社 |
アメリカ |
高脂血症治療剤 |
開発・製造・販売権の許諾 |
1991年4月から、最後のライセンス品目の薬価収載日から10年の満了日 |
|
あすか製薬株式会社 |
アルファシグマ社 |
イタリア |
非吸収性抗生物質 |
開発・製造・販売権の許諾 |
2010年4月から、最終の許認可から10年または特許満了日のいずれか遅い方 |
|
あすか製薬株式会社 |
テソアールエックス社 |
米国 |
経口テストステロン剤 |
日本および東南アジア諸国における開発・販売権に対するオプション権の許諾 |
2016年12月からオプション権を行使しなかった時又はライセンス契約締結時のいずれか早い方 |
|
あすか製薬株式会社 |
武田薬品工業株式会社 |
日本 |
Relugolixを含有するヒト用医療用医薬品のうち、子宮筋腫及び子宮内膜症を対象疾患とするもの |
(Relugolix単剤) 子宮筋腫:独占的販売権 子宮内膜症:独占的開発権及び独占的販売権 (Relugolix配合剤) 子宮筋腫:独占的開発権及び独占的販売権 子宮内膜症:独占的開発権及び独占的販売権 |
契約日から(1)本特許の全部が満了/失効/無効が最終的に確定した日又は (2)本製品の後発品が承認された日のいずれか遅い方から2年間が経過する日まで |
|
あすか製薬株式会社 |
株式会社レナサイエンス |
日本 |
ピリドキサミン二塩酸塩を含有するヒト用医療用医薬品のうち、月経前気分不快症候群及び神経症状を有する月経前緊張症を対象疾患とするもの |
開発・販売権に対するオプション権の許諾 |
2019年12月からオプション権を行使しなかった時又はライセンス契約締結時のいずれか早い方 |
|
あすか製薬株式会社 |
インスッド ファーマグループ |
スペイン |
経口ドロスピレノン製剤 |
日本および韓国における独占的開発・販売権 |
最初に製造承認が付与された日から数えて15年間 |
|
あすか製薬株式会社 |
サスメド株式会社 |
日本 |
産婦人科領域における治療用アプリ |
日本における共同研究開発及び独占的販売権 |
アプリ上市年から10事業年度が経過する日まで |
(注) 上記の技術導入契約には、一定額の契約金およびロイヤルティの支払いが含まれております。
(3)販売契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約品目 |
契約内容 |
契約期間 |
|
あすか製薬株式会社 |
科研製薬株式会社 |
日本 |
フェノフィブラート改良製剤 |
販売権の許諾 |
2011年11月から販売されている期間 |
|
あすか製薬株式会社 |
武田薬品工業株式会社 |
日本 |
医療用医薬品 |
販売権の許諾 |
2032年3月末日まで 以後1年ごとの自動更新 |
|
あすか製薬株式会社 |
武田薬品工業株式会社 |
日本 |
カンデサルタンシレキセチル (持続性アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤) |
オーソライズド・ジェネリックの日本における事業化の被許諾 |
2014年5月から対象製品の販売終了まで |
|
あすかアニマルヘルス株式会社 |
株式会社エコアニマルヘルスジャパン |
イギリス 日本 |
動物用医薬品 |
販売権の被許諾 |
2008年11月から規定により解約・解除されるまで |
|
あすかアニマルヘルス株式会社 |
セバサンテアニマル社 |
フランス |
動物用医薬品 |
独占販売契約 |
2019年5月から7年間 以後2年ごとの自動更新 |
|
あすかアニマルヘルス株式会社 |
ヒューベ・ファルマ社 |
ブルガリア |
飼料添加物 |
販売権の被許諾 |
2012年12月から飼料添加物指定(上市)後3年間 以後1年ごとの自動更新 |
|
あすかアニマルヘルス株式会社 |
物産アニマルヘルス株式会社 |
日本 |
動物用医薬品 チロブロック錠 |
販売権の許諾 |
2019年11月から5年間 以後1年ごとの自動更新 |
|
あすか製薬株式会社 |
メディス イーエイチエフ社 |
アイスランド |
プロゲステロン腟用坐剤 |
開発・販売権の被許諾 |
2014年12月から10年間 以後2年ごとの自動更新 |
|
あすか製薬株式会社 |
武田薬品工業株式会社 |
日本 |
ユニシア配合錠 (カンデサルタン シレキセチルとアムロジピンベシル酸塩との合剤) |
オーソライズド・ジェネリックの日本における事業化の被許諾 |
2015年8月から対象製品の販売終了まで |
|
あすか製薬株式会社 |
武田薬品工業株式会社 |
日本 |
カデチア配合錠 (カンデサルタン シレキセチルとヒドロクロロチアジドとの合剤) |
オーソライズド・ジェネリックの日本における事業化の被許諾 |
2016年2月から対象製品の販売終了まで |
|
あすか製薬株式会社 |
ノーベルファーマ株式会社 |
日本 |
産婦人科領域医薬品(NPC-16等) |
共同販売促進権の被許諾及び製造の受託 |
対象医薬品の契約期間に従う |
|
あすか製薬株式会社 |
住友ベークライト株式会社 |
日本 |
体外診断用医薬品 クラミジア抗原キット「ラピッドエスピー《クラミジア》」、淋菌抗原キット「ラピッドエスピー《淋菌》」 |
共同販促(コ・プロモーション)権の被許諾 |
2023年12月25日から2026年3月31日 |
|
あすか製薬株式会社 |
ラボラトワール エイチアールエー ファーマ |
フランス |
経口緊急避妊薬 |
販売権の被許諾 |
ラボラトワール エイチアールエー ファーマからの3ヶ月前通知により終了する場合、又は2024年12月31日のいずれか早い方 |
|
あすか製薬株式会社 |
鳥居薬品株式会社 |
日本 |
鉄欠乏性貧血治療剤 |
共同販促(コ・プロモーション)権の被許諾 |
本件医薬品に鉄欠乏性貧血の効能が追加された後4年間 |
|
あすか製薬株式会社 |
東レ株式会社 |
日本 |
癒着防止材(TRM-270C) |
共同事業化契約 |
2021年9月27日から本特許がすべて満了する日まで |
(注)上記の販売契約には、一定額の契約金及びロイヤルティの支払いが含まれております。
(4)製造委託契約等による合弁事業
|
契約会社名 |
内容 |
合弁会社名 |
設立年月 |
|
オムニケア ドラッグスインディアおよびニューメディカ ライフサイエンシズ |
インドにおける医薬品製造施設建設および医薬品製造 |
NeoASKA Pharma Private Limited |
2018年10月3日 |
(5)株式譲渡契約
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約日 |
|
あすか製薬株式会社 |
Ha Tay Pharmaceutical Joint Stock Company |
ベトナム |
東南アジアの医薬品事業における戦略的パートナーシップを目的としたHa Tay Pharmaceutical Joint Stock Companyへの出資 |
2020年8月18日 |
研究開発につきましては、あすか製薬株式会社が重点領域と位置付ける内科・産婦人科・泌尿器科領域を中心とした創薬研究および臨床開発を推進すると共に、導出入活動、事業提携戦略も積極的に展開しております。
臨床開発につきましては、適応追加を進めていたL-105(リファキシミン)が、2024年3月に肝性脳症における高アンモニア血症の改善における小児に対する用法及び用量の追加に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得しました。さらに避妊を適応症として開発中のLF111(ドロスピレノン)について、2025年3月期第1四半期中の製造販売承認申請に向け準備を進めております。また現在3つの臨床試験を進行中であります。杏林製薬株式会社と共同開発中のAKP-009(ルダテロン)についてはPhaseⅡ試験の段階にあり、追加のPhaseⅠ試験を実施中です。東レ株式会社と共同で開発を進めておりますTRM-270(癒着防止材)については、消化器科・産婦人科領域を対象にPhaseⅢ試験を実施しております。AKP-022(レルゴリクス配合剤)は2023年7月からPhaseⅠ/Ⅱ試験を開始しました。
導入・提携活動においては2023年9月にサスメド株式会社と産婦人科領域における治療用アプリの共同研究開発及び製品上市後の販売に関する契約を締結しました。また2024年3月にRed Arrow Therapeutics 株式会社との妊娠高血圧症候群の新たな治療薬開発を目的とした共同研究契約を締結いたしました。
以上の取り組みから、2024年3月期の研究開発費は前年同期から500百万円増加し、