文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、次の3要素をグループ理念体系と位置づけております。グループ理念体系により、めざす方向性を明確にし、一貫性をもった事業活動による成長を図っております。
『創業理念』
日本中の家庭が幸福であり、そこにはいつも温かい家庭の味ハウスがある。~幸せな家庭のマーク~
『グループ理念』
食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。
『ハウスの意(こころ)』
社是(「誠意・創意・熱意を持とう。」)・ハウス十論で構成
(2)経営環境
当社の経営環境は、原材料価格の高騰、経済活動の再開に伴う市場環境の変化、インフレ進行に伴う消費者の行動変容など事業環境の変動は大きく、引き続き先行きの不透明な状況が続いております。また、生産労働人口の減少など外部環境の不確実性が増しており、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーにしていくことが不可欠となってきております。さらに、2023年に気温・海水の温度が史上最高となるなど環境問題は深刻化しており、世界各国でCO2削減目標の引き上げが実施されるなど、企業は環境問題への対応強化が求められております。
このような状況下で、当社グループにおいては、一部製品・サービスで価格改定を実施し、足元の環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」というグループ理念の考え方のベースとなる、一企業市民として果たすべき「お客様に対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」という「3つの責任」を企業活動の柱としております。
第七次中期計画では、「3つの責任」全てにおいて明確な行動計画を設定しクオリティ企業への変革に向けた取組を加速してまいりました。「お客様に対して」では、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのバリューチェーン(以下「VC」。)を当社グループの価値提供領域と定め、成長領域・新規領域へ経営資源を投下するなど各々のVCの強化に取り組んでまいりました。「社員とその家族に対して」ではダイバーシティの実現をテーマに掲げ「属性」・「経験」・「適性」の切り口で施策を展開し、ダイバーシティを高めるための社内インフラ整備を推進したほか、「社会に対して」では「循環型モデルの構築」と「健康長寿社会の実現」をテーマに掲げ「人と地球の健康」の実現に向け、VC全体で社会課題の解決に向けた取組を進めてまいりました。
2024年4月からスタートする第八次中期計画では、”「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>グローバルなVC構築で成長をめざす”をスローガンに、グローバルにプレゼンスあるクオリティ企業をめざしバックキャスト視点で「3つの責任」の取組を推進してまいります。「お客様に対して」では、「食で健康」をグローバルに届けるためVC経営の実現をめざすことを、「社員とその家族に対して」では、多様性を力に変えクオリティ企業への取組を強力に支えることを、「社会に対して」では、グローバルな企業活動で生じる環境負荷は企業の責任として取り組むことを、テーマに掲げました。
①お客様に対する責任
「食で健康」をグローバルにお届けするために「1:VC経営による成長加速」「2:VC体制の構築」「3:共創による新価値創出」に取り組んでまいります。
・VC経営による成長加速およびVC体制の構築の取組
「スパイス系VC」においては、「顧客接点の拡大(ヨコ)」と「VC統合(タテ)」を意識した、VC最適の戦略遂行と体制構築に取り組んでまいります。「顧客接点の拡大(ヨコ)」のテーマは、ハウス食品株式会社が国内市場からグローバル市場に取組領域を拡大するなど、事業会社がリードして推進してまいります。一方、「VC統合(タテ)」のテーマは、同社が顧客接点の拡大に向けて製品化プロセスの変革などに取り組むほか、調達・生産に関わる戦略機能を一元化し事業戦略との融合を推進するべく「スパイスVC調達生産戦略本部」を新設するなど、当社とハウス食品株式会社が一体となり推進してまいります。
「機能性素材系VC」においては、健康戦略素材を軸としたグローバルシフトの推進に取り組みます。ビタミン事業は、東南アジアでのコンシューマー市場拡大に向けて、既存のタイでは「C-vitt」に次いでマルチビタミン領域へ展開するほか、ハウス食品グループアジアパシフィック社の機能強化によりフィリピンやベトナムへの新市場開拓を加速します。乳酸菌事業は、2023年3月期より海外展開を重点化する体制に移行しており、欧米でのB to B事業に注力し、川上型の高収益なソリューション事業モデルを確立してまいります。
「大豆系VC」においては、長期視点で伸長するPlant Based Food市場におけるプレゼンス拡大と、生産能力強化を契機とした売場奪還など対競合戦略の実行に取り組みます。また、大豆系VCを牽引するエンジンとなるべく、中間持株会社のハウスフーズホールディングUSA社がハウスフーズアメリカ社とキーストーンナチュラルホールディングス社の機能統合を進めるとともに、自社の経営機能を段階的に強化してまいります。
・共創による新価値創出
第七次中期計画では、新規事業公募プログラムの第1期採択事業案である「Kidslation」・「タスミィ」が提供価値の検証を進めたほか、新規事業の位置づけである「付加価値野菜系VC」では、ビジネスモデル構築に向けて株式会社農業総合研究所と資本業務提携を締結しました。第八次中期計画では、引き続き社外パートナーとのビジネスモデル構築に向けて取り組み、新規事業を次世代のグループの成長力へと変換してまいります。
②社員とその家族に対する責任
生産労働人口の減少など外部環境の不確実性が増しており、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーにしていくことが不可欠となってきているなか、「ダイバーシティの実現」に向け、「属性」(女性の活躍支援、障害者雇用推進など)・「経験」(グローバル人材の育成、キャリア採用の強化など)・「適性」(多様な経験と組み合わせた新たな人材育成体系の構築)の3つの領域で施策を展開するなど、多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくりを推進してまいりました。その結果、ダイバーシティを高めるためのインフラ(制度・施策)は整いつつありますが、グローバルなVC構築に向けてより一層、多様な人材が個性を発揮することに加えて、組織の壁を超えてダイナミックに協働・共創を進めることが求められます。
第八次中期計画では、多様性を高めるためのインフラ整備だけでなく、これらの多様性を組織内で受け入れ、多様性をグローバルなVC構築の推進力に変換していくために、5つの取組を実施してまいります。
・「5つの取組」
1)グループ内外の人材の流動性を高めるオープンな仕組みづくり
2)多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくり
3)主体的な自己変革を支援、育児・介護等のサポート体制の充実
4)共創を意図した関係性や場の創出
5)VC戦略と社員の活躍を同時実現する、組織構造と人材配置の探求と実践
③社会に対する責任
当社は、食に関わる企業として「人と地球の健康」の実現に向け、VC全体で社会課題の解決に取り組んでいます。第八次中期計画では、循環型モデルの構築への取組を加速するべく、「ハウス食品グループ長期環境戦略2050」を策定し、重要課題を「気候変動への対応」、「資源循環社会の実現」と定めました。グローバル展開に伴い生じる環境負荷に対して責任を持って取り組んでまいります。
・気候変動への対応
2050年カーボンニュートラルをめざしてCO2排出量削減の指標を原単位から総排出量へ変更し、CO2排出量削減に向けた取組を加速します。Scope1・2では、多拠点一括エネルギーサービスの活用や再生可能エネルギーの拡充などに取り組むほか、Scope3では、原料調達時や家庭内調理時の排出量削減に向けて重点テーマを新たに設定するなど、サプライチェーン全体で排出量削減を図ります。また、環境投資基準の刷新により、証書購入・炭素税 など将来的に発生すると予測される費用を投資判断に組み込むことで、削減効果の高い削減テーマへの投資を加速してまいります。
・資源循環社会の実現
廃棄物を「減らす」だけでなく、「活かす」、「戻す」の方向も含め限りある資源を有効活用してまいります。廃棄物・副産物においては、発生抑制(減らす)のみ注力するのではなく、発生してしまったものの有価物化(活かす)の両輪で削減を進めてまいります。また、新たに注力する領域として製品包装など食品メーカーとして影響が大きい領域としてプラスチックゴミの削減にも取り組んでまいります。また、「水枯渇リスク地域」 を中心に、生産拠点での水の効率的な使用に努め、節水に配慮した設備の導入や、各国の法律や地域の仕組みに準じ、きれいな状態にして自然環境に戻す取組にも注力してまいります。
●財務戦略
第八次中期計画では、営業キャッシュ・フローに加えて新たな資金調達方法を活用し、VC構築に向けて積極投資を継続するほか、資本コストを意識した経営を推進するべく、政策保有株式の縮減など資本効率を高めるとともにその原資を株主還元に充当いたします。事業投資については、4系列VCの成長領域へ500億円、既存領域へ150億円、デジタル変革・環境領域へ50億円の、総額700億円を計画しております。資本コストを意識した経営については、利益還元方針を総還元性向40%以上、配当金は46円以上を安定して継続配当とすることに改定いたしました。それを基に、配当と並ぶ株主還元施策として政策保有株式150億円の縮減(2024年3月期比30%縮減)に取り組み、それを原資とした自己株式の取得を150億円計画しております。
事業投資目標
|
投資領域 |
第八次中期計画 |
第七次中期計画実績 |
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成長領域 |
500億円 |
339億円 |
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既存領域 |
150億円 |
157億円 |
|
DX・環境領域 |
50億円 |
50億円 |
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合計 |
700億円 |
546億円 |
自己株式取得計画
|
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第八次中期計画 |
第七次中期計画実績 |
|
自己株式取得 |
150億円 |
120億円 |
●コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、内部統制システムをコーポレート・ガバナンス体制の充実と企業理念・経営目標の実現・達成のための仕組みととらえ、企業価値のさらなる向上と持続的な発展をめざし、グループ経営の視点でリスクマネジメント、コンプライアンスを含めたガバナンス体制の構築と運用の強化を図っております。
当社は、監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役が取締役会における議決権を有することにより、監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることを目的としております。監査等委員会は、監査等委員である取締役5名(うち、社外取締役4名)で構成され、取締役の職務の執行および取締役会の決議の適法性、妥当性の監査・監督を行っております。
取締役会は取締役12名(うち、社外取締役4名)で構成され、当社グループの重要な業務執行を決定するとともに、他の取締役およびグループ会社の業務執行を監視・監督しております。なお前期より、取締役会の運営強化と実効性向上を目的として、全取締役へのアンケート形式による取締役会実効性評価を開始しております。
取締役会の任意の諮問機関として、委員の過半数を独立した社外取締役で構成し、独立社外取締役を委員長とする指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置し、取締役の選任・解任、報酬決定の手続きにおいて、客観性と透明性を確保しております。また、ガバナンス強化の一環として2022年1月に経営会議の諮問機関である投資委員会を設置いたしました。4系列VCの構築に欠かせない資本提携を目的とした合併や買収等において、成長投資資源をより有効に活用するために、案件起案時の審議フェーズと、投資実行後のモニタリングフェーズの両面でチェック機能を強化することで企業価値向上につなげております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
ハウス食品グループでは、グループ理念として「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」を掲げています。経済的価値をつくり出しながら、社員の生きがい・やりがいを生み出し、社会との調和を図るといった、「お客様への責任」 「社員とその家族への責任」 「社会への責任」という「3つの責任」をステークホルダーとともに果たしていくという考え方がグループ理念の根本にあり、CSR方針にこの「3つの責任」を位置づけ、本業を通じて健全な社会とすこやかな暮らしへの貢献を目指しています。同時に、「3つの責任」に取り組むことが、企業における持続可能性と関連していると考えています。
<グループCSR方針>
私たちは本業を通じて、健全な社会とすこやかな暮らしに貢献するため、3つの責任を果たします。
~3つの責任の取組み~
・お客様とともに
安全・安心で価値ある商品・サービスを提供し続け、心身ともに健康で豊かな暮らしに貢献します。
・社員とその家族とともに
雇用を生み出し、社員の基本的人権、多様性を尊重します。また、人としての成長をうながし、社員とその家族の生活を豊かにします。
・社会とともに
健全な経営と事業活動により、自らの価値向上に努め、社会の発展に寄与します。
責任ある社会の一員として、法令順守はもとより、道徳観、倫理観を持って行動します。
環境に配慮した企業活動を行い、恵み豊かな地球の存続に貢献します。
■ガバナンス
ハウス食品グループが現在取り組んでいる第七次中期計画は、「食で健康 クオリティ企業への変革」の実現に向けて、グループCSR方針に基づく3つの責任を軸とした各種重点テーマを設定しており、その計画や目標設定は、グループ本社経営会議で議論した上で、グループ本社取締役会で承認、最終的な意思決定をしています。
また、設定した重点テーマおよび目標の進捗確認は、グループ経営会議及び取締役を中心に構成するグループCSR委員会において年1回以上の報告を行い、経営に対する監督・指導を行うとともに、グループ内の連携強化を図っています。
■リスク管理
ハウス食品グループの中期計画では、「社員とその家族への責任」については人事部門を中心に、また「社会への責任」においてはCSR部門を中心にリスクと機会の評価を行い、その中で優先度の高いリスク機会項目の対応策を検討しています。検討した対応策は全社戦略に織り込み、グループ本社経営会議に答申後、グループ本社取締役会にて意思決定を行っています。対応策の進捗管理については、グループ経営会議やグループCSR委員会への報告を年1回以上行っています。
■戦略
2021年度からスタートした第七次中期計画における当社の重要な経営課題として、「社員とその家族への責任」の重点テーマは、「ダイバーシティの実現」に向けた「属性の多様性・経験の多様性・適性の多様性」の切り口で取り組みを推進しております。さらに、これらの多様性が活かせるよう、「多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくり」をグループ社員、全員参加で取り組んでおります。
また、「社会への責任」の重点テーマでは、食を生業とする企業として、限りある食資源を価値につなげることのできる「循環型モデルの構築」に向け、バリューチェーン全体での環境負荷低減に向けた「気候変動への対応」を推進しております。
2023年度は第七次中期計画最終年度として、重点テーマの実行推進に努めると共に、次期中期計画策定に向けた検討を行いました。
■指標と目標
第七次中期計画の重点テーマについて、以下の目標を設定しております。
|
|
テーマ |
KPI |
七次中期計画 (2023年度) |
|
社員と その家族に 対して |
働きがい変革の実行 |
時間の創出 (総実労働時間管理) |
1,850時間 |
|
個性の発揮と融合の支援 |
女性管理職比率 キャリア採用 |
12%以上 新卒:キャリア=6:4 |
|
|
テーマ |
KPI |
七次中期計画 (2023年度) |
|
社会に 対して |
循環型モデルの構築 |
CO2削減 Scope1・2 ※1 Scope3 ※2 |
▲9% ▲17,000t |
※1 原単位2013年度比
※2 削減施策の実施による削減効果量
<気候変動への対応>
私たちの事業は、スパイスをはじめ原材料の多くを自然の恵みに頼っており、地球の健康なくしては成り立たないものです。気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、国内外で事業展開しているハウス食品グループにとって、「社会への責任」として取り組むべき重要な課題と認識しています。
[TCFD提言に基づく情報の開示]
ハウス食品グループは、2021年5月に、G20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」へ賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに加盟しました。そして、2022年度より気候変動問題の主管部門であるCSR部を中心に、TCFD提言に沿った気候変動対応に関する情報開示を行っております。
■ガバナンス
ハウス食品グループでは、バリューチェーン全体での環境負荷低減をグループの重点課題と位置づけ、CO2削減の戦略および目標を中期計画に織り込み推進しています。中期計画の取り組み項目および目標は、グループ本社経営会議で議論した上で、グループ本社取締役会で承認、最終的な意思決定をしています。
また、設定した取り組み項目および目標の進捗確認は、取締役を中心に構成するグループCSR委員会で行い、経営に対する監督・指導を行うとともに、グループ内の連携強化を図っています。
2022年5月に2050年のカーボンニュートラル(Scope1・2)を目標に設定し、開示するとともに、削減取り組みの加速につなげています。
気候変動対応の推進体制は以下の通りです。
|
会議体 |
開催頻度 |
気候変動の役割 |
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|
監視・監督 |
グループ本社取締役会 |
1回/月 |
・気候変動対応を含め、CSR方針に基づく3つの責任に関する取り組みの戦略決議 |
|
監視・指導 |
グループCSR委員会 |
1回/年 |
・グループ全体の気候変動対応を含むCSR活動に対する監督 ・グループ全体の気候変動対応に関する取組みの効果的、効率的な推進および連携強化のための指導 |
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執行 |
グループ本社経営会議 |
2回/月 |
・気候変動対応を含む戦略および目標を織り込んだ中期計画の検討、取締役会への答申 ・中期計画に基づく具体策の遂行責任 |
|
グループ環境全体会議 |
1回/年 |
・グループ各社の目標に対する進捗確認 ・グループCSR委員会への報告 |
|
|
グループ環境戦略会議 |
随時 |
・気候変動対応を含む環境戦略の取り組み強化に向けて、2021年度より新設 ・気候変動対応を含むグループ環境目標と現状のギャップを踏まえ、グループ横断の取り組みを技術的な面から探索 ・グループ本社経営会議への検討内容の答申 |
|
■リスク管理
ハウス食品グループでは気候変動を重要な経営リスクと位置付け、「社会への責任」におけるグループの重点課題として取り組んでいます。気候変動対応の主管部署であるCSR部を中心にリスクと機会の評価を行い、その中で優先度の高いリスク機会項目の対応策を検討しています。検討した対応策は全社戦略に織り込み、グループ本社経営会議に答申後、グループ本社取締役会にて意思決定を行っています。
対応策の進捗管理については、グループ環境全体会議がグループCSR委員会への報告を行っています。
2022年度より、TCFD提言に基づくシナリオ分析を行い、リスクと機会について再度精査を行い、優先的に取り組むリスク機会項目を特定、対応策を検討し、全社戦略に反映しています。
■戦略
ハウス食品グループは自社の生産活動におけるCO2削減だけでなく、バリューチェーン全体の気候変動対応を意識した環境活動を展開しています。
2021年度からスタートした第七次中期計画ではCO2排出量削減の加速と取り組み領域の拡大をめざし、グローバルの視点かつサプライチェーンの視点で、お取引先さまとの協働・社内の組織活動のあらゆる面から削減対応を進めています。2022年度は、当グループの中核事業であるスパイスバリューチェーンを担うハウス食品単体を対象に、シナリオ分析を実施し、気候関連リスクと機会の特定とその対応策の検討を行いました。2023年度は、長期環境戦略を立案し、それに基づく次期中期計画策定を行いました。
<シナリオ分析の前提>
ハウス食品グループは「スパイス系」、「機能性素材系」、「大豆系」、「付加価値野菜系」の4つのバリューチェーンを自ら価値提供する領域と定め、この領域で「食で健康」をお届けしていきます。そのなかでもグループの中核である「スパイス系バリューチェーン」を担うハウス食品を対象に、2025年時点(短期)、2030年時点(中期)、2050年時点(長期)の気候変動による影響についてシナリオ分析を実施しました。
IEA、IPCCのレポートに基づき、2つのシナリオ(1.5℃シナリオ:IEA WEO_NZE2050、4℃シナリオ:IPCC AR6_SSP5-8.5、SSP3-7.0)を設定しました。100以上のリスクと機会を網羅的に抽出した上で、事業に与える影響が大きいと評価した項目は以下の通りです。
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No. |
リスク機会項目 |
時間軸 |
影響度 |
|||
|
1.5℃ |
4℃ |
|||||
|
1 |
移行 |
リスク |
調達品に関する規制 |
短期 |
大 |
小 |
|
2 |
消費者の意識の変容 |
短期 |
大 |
小 |
||
|
3 |
排出量に関するコスト増 |
中期 |
大 |
小 |
||
|
4 |
排出量の開示・削減等の義務化 |
中期 |
中 |
小 |
||
|
5 |
機会 |
エネルギー効率の改善 |
短期 |
大 |
小 |
|
|
6 |
脱炭素社会に対応した製品開発 |
中期 |
大 |
小 |
||
|
7 |
物理 |
リスク |
気候変動に起因する災害リスク(サプライチェーン) |
中期 |
小 |
大 |
|
8 |
気候変動に起因する災害リスク(自社) |
中期 |
小 |
大 |
||
|
9 |
気象現象の激甚化等による消費動向の変化 |
長期 |
小 |
大 |
||
|
10 |
製品設計・管理条件の見直しの必要 |
長期 |
小 |
大 |
||
|
11 |
機会 |
労働環境整備等による評判の向上 |
中期 |
小 |
中 |
|
|
12 |
気候変動に対応する製品開発による売上増 |
中期 |
小 |
中 |
||
時間軸が手前かつ重要度の大きいリスク機会項目への検討を優先的に行い、以下の対策を進めています。
|
No. |
バリュー チェーン |
リスク機会 |
具体的内容 |
想定される対応策 |
|
|
1 |
上流 |
リスク |
調達品に関する規制 |
低排出なサプライヤーからの原材料調達や調達品に対する課税などにより、調達コストが上昇する。 |
◎環境負荷の少ない原材料を活用した製品開発 ◎包材の軽薄短小による省資源化 ・原材料の集約、調達元で加工して仕掛品化することで、調達・配送コストの低減 |
|
3 |
自社 |
リスク |
排出量に関するコスト増 |
政府の環境に対する政策変更への対応、省エネ設備の導入コスト、代替エネルギーの調達コストなどが発生する。 |
◎環境投資による再生可能エネルギーの導入 (太陽光パネルの導入など) ・製法改善による省エネへの取り組み ・製品仕様の変更によるエネルギー使用量の削減 |
|
5 |
機会 |
エネルギー効率の改善 |
省エネ設備の導入や製造工程の効率化により、エネルギー費用の削減を図る。 |
||
|
2 |
下流 |
リスク |
消費者の意識の変容 |
消費者の購買行動が変化し、低炭素化を促す製品(レンジ加熱対応パウチ化など)の開発が求められる。 |
◎環境配慮製品に対応したマーケティング施策の実施(レンジ加熱対応パウチ化など) ◎環境配慮製品の開発(過剰包装の見直し、容器包装の軽量化、代替肉の使用など) |
|
6 |
機会 |
脱炭素社会に対応した製品開発 |
脱炭素社会に貢献する製品の開発などにより新たな顧客を取り込む。 |
||
上記表中の想定される対応策「◎」項目については、第七次中期計画で取り組みを推進しています。
■指標と目標
シナリオ分析の結果、CO2排出量を削減することが当グループのリスク低減・機会の増大となることが改めて確認できたため、既に現中期計画で設定しているグループのCO2削減目標に継続して取り組んでまいります。2023年度は、長期環境戦略を踏まえ、次年度から始まる次期中期計画に向けて、新たな指標と目標の設定を検討しました。
[CO2削減目標]
・Scope1・2
自社から排出されるCO2について、第七次中期計画の目標を設定しています。また、2050年に向けてカーボンニュートラル達成を目標としています。
・Scope3
第七次中期計画ではサプライチェーン全体のCO2排出量の把握を行い、排出量の大きさから「重点取り組みカテゴリー」を決定しています。また、全社員の脱炭素社会に向けた意識向上のため、部門ごとに排出削減に関する目標を設定し、全員参加で取り組むだけでなく、ステークホルダーの皆様と協力しながら削減をめざしています。
CO2削減目標
|
指標 |
2023年度目標 |
2050年度目標 |
|
Scope1・2 (原単位2013年度比)※1 |
▲9% |
カーボンニュートラル |
|
Scope3 (取組前比)※2 (t-CO2) |
▲17,000 |
|
※1 原単位:売上高あたりの環境負荷量
※2 削減施策の実施による削減効果量
CO2排出量実績
2022年度 Scope1・2削減の主な取り組み:積極的な環境投資の実施(太陽光発電システムの導入、燃料転換)
|
指標 |
2022年度 |
|
Scope1・2 (t-CO2)※1 |
|
[集計対象]
国内:ハウス食品グループ本社㈱、ハウス食品㈱、ハウスウェルネスフーズ㈱、壱番屋㈱、ハウスギャバン㈱、マロニー㈱、サンハウス食品㈱、サンサプライ㈱、ハウスあいファクトリー㈱、朝岡スパイス㈱、㈱ヴォ―クス・トレーディング、デリカシェフ㈱、ハウス物流サービス㈱、、ハウス食品分析テクノサービス㈱、ハウスビジネスパートナーズ㈱、パッチワークキルト㈱
海外:ハウスフーズホールディングUSA社、ハウスフーズアメリカ社、上海ハウス食品社、大連ハウス食品社、浙江ハウス食品社、ティムフード社、ジャワアグリテック社、ギャバンスパイスマニュファクチャリング社、(海外拠点のうち、ハウスフーズベトナム社、ハウスオソサファフーズ社、ハウス&ヴォークスインドネシア社は除外)
※1 2022年度Scope1・2の実績(GHG排出量データの内、エネルギー起源CO2排出量)は、2024年3月28日付で
第三者認証を取得している。
<人的資本>
「社員とその家族への責任」として、社員の成長支援や就労環境の充実を通じ“働きがい”を感じられる企業になっていくことで社員と会社がともに成長をしていくということを、社員および組織への取り組みの基本スタンスとしています。
当社グループは、社員一人ひとりが“働きがい”を感じられる職場へと変革し、社員一人ひとりの“多彩な個性の発揮と融合”を強力に支援することで、今後とも社員とともに成長していきます。
■ガバナンス
人的資本に関わる第七次中期計画の施策を推進する機関として、人事担当取締役を責任者とし、グループ各社の人事担当者が参画する「働きがい変革委員会」を設置しております。各種施策の進行状況を定期的にモニタリングするとともに、好事例の共有等グループ内の連携を強化しております。
人材の発掘・成長支援を検討する機関として、業務執行取締役をメンバーとした「人材開発会議」を設置しており、次世代リーダー育成、後継者計画等を策定しております。また、取締役候補者の選任にあたっては、委員の過半数を独立した社外取締役で構成し、独立社外取締役を委員長とする「指名諮問委員会」による、審議を経たうえで、選任基準にふさわしい人材を取締役会で候補者として決議し、株主総会に付議しております。
■リスク管理
リスクマネジメント強化を目的に設置しているグループリスクオーナー会議にて、人的資本に関連するリスクについても分析・評価するとともに、対応策を策定し、その対応策の有効性をモニタリングおよびレビューするリスクマネジメントシステムを運用する事により、継続的な改善に努めております。
人的資本に関連する主要なリスクについては、「
■戦略
第七次中期計画では「クオリティ企業への変革」の実現に向けて、「ダイバーシティの実現」を掲げ、「属性」「経験」「適性」の切り口で多様性を高める取組を推進しております。さらに、これらの多様性が生かせるよう、「多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくり」をグループ社員、全員参加で取り組んでいます。
人材育成においては、基本方針を「多様性の増進による社員と組織の成長」と定め、「属性」「経験」「適性」の3つの観点で多様性を高め、ダイバーシティの実現をめざします。各種施策を体系的に実行していき、多彩な個性が融合しシナジーを生むことで、クオリティ企業として当社グループの持続的成長と社会へのさらなる貢献を進めていきます。
社内環境整備においては、基本方針を「多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくり」と定め、「職場」と「全社」の両輪で組織風土改革を進めております。全社員を対象にした組織風土に関する調査の分析結果を経営会議などでも報告し、経営層の間で組織風土に関する課題を議論しています。また、各職場においてスコアを参照しながら、これまでの常識や慣習について見直しを図り、「働きがい」が感じられる職場づくりを進めています。
■指標と目標
|
人材育成 指標と目標 |
項目 |
指標 |
24.3期実績 |
|
属性の多様性 |
|
|
|
|
経験の多様性 |
新卒:キャリア比率=6:4 |
6:4 |
|
|
適性の多様性 |
|
|
(注)女性管理職比率については、国内グループ全社の合計値となります。
|
社内環境整備 指標と目標 |
項目 |
指標 |
24.3期実績 |
|
|
職場風土改革 |
|
|
||
|
全社風土改革 |
組織風土診断結果 (2.5以上) |
多様性受容 |
2.67 |
|
|
チャレンジ促進 |
2.62 |
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(注)組織風土診断は4段階評価を実施し、「社員から見た組織風土の状態」を可視化したものになります。
当社グループはグループ理念「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」の実現に向けて、「3つの責任」(お客様に対して、社員とその家族に対して、社会に対して)の全てにおいて企業市民としての責任を果たしながら、“「食で健康」クオリティ企業への変革”を進めております。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等(以下「財政状態等」)に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できないまたは問題視されていないリスクの影響を将来受ける可能性があります。当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識し、発生の抑制・回避に努めております。また、リスクが顕在化した際には、経営および事業リスクの最小化に取り組んでまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)お客様に対する責任に関連するリスク
事業会社として持続的に成長し、世の中に独自の価値を提供し続けるための活動に関する主要なリスクは以下のとおりです。
① 国内市場動向に関するリスク
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《背景》 |
《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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中長期では景気減速や人口減少などにより、国内需要全体が低下する影響があります。 コロナ禍を経て、働き方や食事への接し方の変化など、お客様のライフスタイルは大きく変化しています。また、地政学的リスクによる原材料高騰、物価上昇に伴い、消費動向にも変化が出てきています。 |
当社グループは売上の約8割を国内販売が占めており、国内市場の縮小が当社の財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。 また、お客様変化や物価高に迅速に対応することは新たな成長機会になる一方、対応が遅れた場合には、提供価値(製品・サービス)が毀損するリスクがあります。 |
新価値創出や生産性向上を進め、リスク対応力の強化と機会獲得に取り組みます。 ・事業基盤のある「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」の3つのバリューチェーン(以下「VC」)のグローバル展開により成長を加速 ・調達/栽培・加工・生産・販売といった川上~川下の統合により競争力・リスク対応力を強化 ・ROIC(投下資本利益率)を活用した、資本コストや株価を意識した経営の実現と投資収益性の向上 ・社内外との共創による新価値創出を推進(付加価値野菜系VCによるビジネスモデルの確立など) |
② 事業拡大に関するリスク
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《背景》 |
《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループは、2013年の持株会社体制移行後、2015年に㈱壱番屋を、2016年に㈱ギャバンを、2022年にキーストーンナチュラルホールディングス社をグループに迎えるなど、VCの拡大を進めております。また2017年にはコーポレートベンチャーキャピタルを設立し、事業シナジーが見込まれる企業への投資を通じた新たな価値基盤の創出に取り組んでおります。その結果、企業買収に伴うのれんや無形資産を計上することがあります。 |
当社グループの成長戦略との親和性が高く、ユニークな強みを持つ事業会社をグループに迎えることで、当社グループのVCの強靭化が図られる一方、事業計画の未達や市場環境の変化等によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出せない場合、また当初想定したシナジーが得られない場合、企業買収に伴うのれんや無形資産について減損損失等が生じるリスクがあります。 |
・経営会議等における投資計画の検証(財務的視点での妥当性、事業戦略視点での収益性や成長性リスク等) ・投資委員会(経営会議の諮問委員会)の運営を通じた、M&A等の事業投資に関わる妥当性・効率性の確保、並びに投資前後の各フェーズにおけるチェック体制の強化 |
③ 技術革新に関するリスク
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《背景》 |
《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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成熟した食品産業においては、既存の事業競合に加え、異業種参入や新技術の台頭により競争環境も多様化しております。 |
お客様や社会が直面する課題の解決に繋がるR&D機能の強化やデジタル化、グローバル化への対応強化による成長機会の獲得に努めておりますが、こうした対応が遅れた場合、競争優位性が低下し、提供価値が陳腐化するリスクがあります。 |
・R&D重点領域およびテーマの設定と経営資源の集中投下 ・イノベーション創出力と実現力向上への意識改革、風土醸成 ・グループ企業間の技術課題の解決だけでなく、事業創造をめざしたVC間の連携強化 ・特許などでの保護による自社技術の知的財産化と知的財産活用によるオープンイノベーションを通じた共創戦略の推進 ・デジタル投資の積極化による基盤構築と新価値創出 |
④ 海外事業展開に関するリスク
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《背景》 |
《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
|
進出各国・地域においてカレー製品、豆腐製品、機能性飲料製品等の事業を展開しております。食文化は元来保守的な性質を有しており、進出各国の食文化へ浸透、定着には、緻密な事前調査や継続的な事業基盤の強化が必要不可欠です。 また、世界情勢が刻々と変化するなか、有事顕在化への備えが求められます。 |
当社グループが保持する知見・ノウハウを成長領域に積極的に配分することで、早期の事業拡大に取り組んでおります。一方、進出各国・地域の食文化への浸透、定着が想定を下回ることで事業計画の遅れや減損損失が生じる恐れがあります。 また、事業規模に見合う経営基盤の構築や整備の遅れ、各国法令の発布や改正への対応の遅れ、カントリーリスク顕在化等により、利益創出力の低下、ガバナンス不全等が生じるリスクがあります。 |
・食文化の受容性や認知度に関する緻密な市場調査に基づいた市場ポテンシャルの予測 ・経営マネジメント人材の継続的な育成・確保、外部機関とも連携した各国法令情報の収集等による事業基盤の強化 ・グループ本社と海外事業会社が連携し、事業規模に応じたリスクマネジメント体制の構築・整備 ・複数エリアへの事業展開を進めることによる事業基盤分散、カントリーリスク低減 |
⑤ 食の安全・安心に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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価値ある商品やサービスをお客様に安全・安心に提供し続けるために、グループ一丸となって品質の維持・向上に取り組んでおります。しかしながら万一、製品、サービスの品質トラブルが発生した場合には、お客様の健康危害や不安の発生、それに伴う企業ブランドの毀損、社会的信用の失墜、対応に係るコスト増加のリスクがあります。 |
・グループ品質保証会議・グループ品質保証責任者会議を通じて、品質保証に関する重要課題について討議を行い、継続的なグループの品質保証活動を推進 ・製品の品質・安全の信頼性向上をめざし、各事業会社の特性に応じたISO9001やFSSC22000等の国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの認証取得および運用 ・品質情報リスクマネジメント活動を通じて法規制順守やお客様の安全への関心事をグループ全体で検討・対応することで食品安全の活動を推進 ・食の安全、安心をテーマとして、HACCP学習会や製品の表示学習会、または品質の基本などの様々な社内外の活動を通して人材育成を推進 ・生産現場の「安全・安心」のための創意・工夫を称賛するプロフェッショナル表彰制度等を通じた品質を重視する組織風土の醸成 ・製品設計から販売に至る各工程では、お客様の声を反映した活動を通じて製品の品質向上を図るとともに、製品パッケージやWEB等では、お客様に分かりやすい情報発信を徹底 |
(2)社員とその家族に対する責任に関するリスク
当社グループの中長期的な成長には、性別や国籍などの属性の多様性とともに、一人ひとりが持つ多様な経験や適性をいかしていくことが欠かせません。社員一人ひとりが尊重され、仕事を通じて豊かな人生を過ごしていけるよう、成長や活躍を支援する活動における主要なリスクは、以下のとおりです。
① 多様性のある人材の確保、育成、活躍に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
|
グループ各社の特性や成長ステージ、また、グループ横断取組(GOT)の具現化やグローバルな事業領域拡大に応じて人材を適切に確保・育成し供給できないこと、多様性やチャレンジを尊重する組織風土が醸成できないことは、イノベーション創出力の毀損、事業における機会損失や優秀人材の流出を起こすリスクがあります。 また、社員が事業活動を進める中で、社内外の多様な価値観を尊重しない行動をとるようなことがあった場合には、信用失墜による企業価値の低下や組織風土へ悪影響を及ぼすリスクがあります。 |
・事業の成長領域に対する人材投下と育成 ・高度な専門性や新たな知見を有する社外人材の獲得 ・社内公募制や副業制度、およびグループ内外での人材交流により、社員が多様な成長経験を積むことの支援 ・アセスメントを通じた適性の把握と、適性の強化・拡大に向けた社内外での学習機会の更なる提供 ・定期的に実施する組織風土診断の実施と、その結果を受けてのディスカッション等を通じた、性別、国籍、キャリア、障がいの有無等を問わず、多様な人材が成長に向けてチャレンジをできる組織風土づくり ・グループ理念やハウスの意、およびハウス食品グループ行動指針・人権方針等の規範を理解・共有することでの差別やハラスメントのないコンプライアンスを順守する安全・安心な職場環境づくり |
(3)社会に対する責任に関連するリスク
社会に存在する企業市民として、本業を通じて社会の様々な課題解決に貢献するための活動に関する主要なリスクは以下のとおりです。
① 持続可能な原材料調達に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループはスパイスをはじめ様々な原材料を世界各国から調達しており、持続可能な原材料調達の推進は事業活動を継続する上で必要不可欠です。 原材料の調達にあたっては、国際的な需要の拡大に伴う食資源の調達競争の激化や需給動向の変化、気候変動・生物多様性や地政学的リスク、資材お取引先での感染症集団発生による原材料の供給停止・遅れ、物流業界のドライバー不足や紛争・天候の船舶運航影響等による輸送遅れ、VCの各段階における社会・環境問題への対応の遅れ等により、調達の不全やコストの増加、社会的信用の失墜等に繋がるリスクがあります。 |
・川上領域の取組強化に向けた各種施策の遂行(産地多様化による安定調達、技術開発・品質向上等における調達地との協働取組、サプライヤー監査の実施等) ・持続可能な調達の実現に向けた仕組みの構築(生産地の社会課題や環境等に配慮した原材料調達の推進(RSPO認証パーム油、FSC認証紙)、第三者機関(Sedex)等を活用した人権デューデリジェンスの強化、より効率的な輸送方法への見直し) ・重要原材料の安全在庫基準の見直し、その他原材料の安全在庫基準内での運用 ・製品・サービスの適切な価格改定によるコスト増加影響の低減 |
② 気候変動に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、国内外でVCを構築する当社グループにとって重要な課題と認識し対策を実施しております。気温の上昇や異常気象、自然災害等によって原材料の調達不全やコスト増、生産停止等の事業活動の分断、消費動向の変化等が生じるリスクがあります。また、脱炭素への対応が不足および遅延することで、排出量などによるコストの上昇や事業活動の制限、企業価値の毀損が生じるリスクがあります。 |
・2050年カーボンニュートラルに向けたグローバルかつバリューチェーン全体での気候変動取組の促進 ・環境投資判断基準の策定による環境負荷低減に向けた投資の促進 ・Scope1・2の排出削減取組の加速(再生可能エネルギーへのシフト)、Scope3への対応 ・食品ロスや工程ロスの低減(飼料肥料化・フードバンク・廃棄抑制)、環境に配慮した容器包装の開発等による資源循環、再資源化の促進 ・TCFDに即した情報開示など、積極的な情報開示によるパートナーシップの強化 |
③ 大規模自然災害、重篤な疾病の流行に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループの事業は、大規模な自然災害の発生・重篤な感染症の大流行により、財政状態等に影響を及ぼすリスクがあります。 |
・大規模災害発生、重篤な感染症の大流行に際して、食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、生産・供給体制の整備等の危機管理体制の更なる改善を推進 ・国内外グループ会社の事業特性や事業規模に応じた事業継続計画(BCP)の策定と定期的な訓練等を通じた事業継続マネジメント(BCM)の運用 |
(4)その他共通のリスク
① 法的規制とソフトローに関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループは、国内・海外を問わず、適用される法令等を遵守して事業活動を行っております。しかしながら、社会環境の変化、価値観の多様化のなかで、各国において新たな法令等が制定され、また、さまざまな形で、企業として遵守すべき規範が形成されております。 既存の法令等の改正情報はもちろん、新しい法令等に関する情報を適時入手し、その内容にそった実務対応が適切にできていない場合、また、多様化した価値観を尊重し、道徳観、倫理観をもった事業活動ができていない場合には、事業活動が制限される可能性があるほか、お客様利益の損失、処罰や事業活動の制限を受けた場合の対応コストの増加、信用失墜による企業価値の低下等につながるリスクがあります。 |
・グループ共通の価値観である「ハウスウェイ」や行動原則である「ハウス食品グループCSR方針」「ハウス食品グループ行動指針」に基づく、役員・社員一人ひとりの関係各国における法令・国際ルールの順守、現地の人権、文化、伝統、慣習の尊重による友好的な関係の維持・促進 ・ハウス食品グループの取締役等で構成される「グループCSR委員会」を通じて、グループ全体のCSR重要テーマの取組状況のモニタリング・レビューの実施 ・CSR重要テーマであるコンプライアンスについては、「コンプライアンス推進委員会」を設置し、各社の課題解決を推進 ・コンプライアンス上の問題の早期発見、解決に向けた「グループ共通コンプライアンス・ヘルプライン」の整備、周知徹底 ・各種法令に係る主管部門や法務部門による新規法律情報、法改正情報の収集とその実務対応 |
② 情報セキュリティに関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループ(海外拠点含む)は、開発・生産・物流・販売・労務等の情報や通信販売等によるお客様の個人情報について、多くをITシステムにより管理しております。災害によりソフトウエアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えたサイバー攻撃等によるシステム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合、また働き方の多様化に伴う情報の持ち出しや不適切な取扱いにより社有情報の外部漏洩が発生した場合、財政状態等や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。 |
・海外拠点含む情報セキュリティを包括的に管理するための組織体制強化と、各国独自法令含むルールの徹底 ・ソフトウエアや機器によるシステムセキュリティ対策、社員教育や訓練の実施 ・在宅勤務やWEB会議等の働き方の多様化に対する定期的な社内調査による現状確認と対策の実施 ・守るべき社有情報の特定と影響評価の実施、適切な情報漏洩防止策の設定と実施の徹底 |
③ 為替・金利変動に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループが海外から調達する原材料において、為替変動の影響により調達コストが増加する可能性があります。 当社グループの外貨建て債権債務については、為替変動の影響により為替差損益が発生する可能性があります。 当社グループの海外売上高比率は2割超の水準でありますが、海外事業展開の加速に取り組んでおり、今後重要性が高まることを見込んでおります。連結財務諸表作成のため、展開各エリアの現地通貨で作成された財務諸表を円換算しており、為替変動の影響があります。 当社グループの有利子負債については、金利上昇による直接的な影響は当面軽微であると見込んでおりますが、将来的な金利上昇局面においては資金調達による金利負担が増大する可能性があります。 |
(海外から調達する原材料) ・合理的な範囲で輸入原料の国内在庫を積み増すことで将来的な為替変動によるリスクを低減 (外貨建て債権債務) ・為替予約や通貨スワップ等により将来的な為替変動によるリスクのヘッジ (金利変動) ・金利動向に応じた調達方法や金利スワップ等の検討によるリスクのヘッジ |
④ 投資有価証券に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループが保有する投資有価証券については、大幅な株式相場の下落や投資先における企業価値の毀損が生じた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
・投資有価証券の保有状況を毎年取締役会に報告し、保有の是非や保有規模を継続的に検証 ・中期計画に基づく政策保有株式の縮減実施
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⑤ 固定資産の減損に関するリスク
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《リスク概要・影響》 |
《主要な対策》 |
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当社グループが保有する固定資産について、将来の収益性低下等により減損処理が必要となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 |
・一定額以上の投資案件については、社内基準に基づき回収可能性に基づく投資判断を実施 ・投資実行後に投資効果検証を行い、継続的なモニタリングを実施 |
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度は、当社グループの第七次中期計画最終年度にあたります。第七次中期計画では、“「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>4系列バリューチェーンへのチャレンジ” というテーマに則り、当社グループのめざす姿の実現に向けて、「お客様に対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」という「3つの責任」全てにおいてクオリティ企業への変革を加速するとともに、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4系列バリューチェーン毎に戦略を立案および遂行してまいりました。
こうしたなか当連結会計年度の経営環境は、原材料価格の高騰、経済活動の再開に伴う市場環境の変化、インフレ進行に伴う消費者の行動変容など変動は大きく、依然として先行きの不透明な状況が続きました。
当社グループの業績を5つの事業セグメントベースで総括いたしますと、原材料費などコストアップ圧力に対して国内外グループ各社が価格改定や効果的なコスト運用を進めるなか、海外食品事業は各展開エリアの市場環境変化を受け大幅な減益となりましたが、他の4つの事業セグメントは増益となり、グループトータルでは増収増益という結果となりました。
なお、当社グループは2022年9月30日付でキーストーンナチュラルホールディングス社を企業結合しておりますが、当連結会計年度に同社取得原価の配分(PPA)が完了しており、前期との比較・分析にあたっては、PPAの内容を反映させた金額を用いております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
これらの結果、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。
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|
2024年3月期 |
|
|
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
|
売上高 |
299,600 |
108.9 |
|
営業利益 |
19,470 |
116.7 |
|
経常利益 |
21,085 |
115.2 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
17,580 |
128.6 |
当社が重視する経営指標は次のとおりとなりました。
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
|
ATO(総資産回転率) |
0.71回 |
0.72回 |
|
ROS(売上高営業利益率) |
6.1% |
6.5% |
|
ROA(総資産営業利益率) |
4.3% |
4.7% |
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ROE(自己資本当期純利益率) |
5.1% |
6.2% |
セグメント別の経営成績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。
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事業の種類別 セグメント |
売上高 |
営業利益 (セグメント利益又は損失(△)) |
||
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金額 (百万円) |
前期比 (%) |
金額 (百万円) |
前期比 (%) |
|
|
香辛・調味加工食品事業 |
126,287 |
105.4 |
10,832 |
136.9 |
|
健康食品事業 |
16,865 |
102.1 |
2,464 |
129.2 |
|
海外食品事業 |
56,375 |
115.3 |
3,067 |
56.5 |
|
外食事業 |
55,132 |
114.0 |
3,395 |
149.7 |
|
その他食品関連事業 |
55,045 |
108.6 |
1,930 |
156.4 |
|
小計 |
309,703 |
108.9 |
21,688 |
115.7 |
|
調整(消去) |
△10,103 |
- |
△2,218 |
- |
|
合計 |
299,600 |
108.9 |
19,470 |
116.7 |
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
<香辛・調味加工食品事業>
当事業セグメントは、価格改定を実施するとともに販売数量の早期回復に向けて需要喚起策を展開することで、収益力の回復を図りました。
家庭用事業は、価格改定前後における販売バックアップ施策の拡充や付加価値と値ごろ感を両立させた新製品の投入などが奏功し、ルウカレー製品を中心に概ね想定通りに販売回復が進みました。業務用事業は、2023年4月よりハウス食品㈱の業務用事業と㈱ギャバンを統合した新生ハウスギャバンとして活動をスタートしました。同事業は、経済活動の再開に伴う需要回復に加え同年9月実施の価格改定もあり概ね想定通りに推移しました。
以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,262億87百万円、前期比5.4%の増収、営業利益は108億32百万円、前期比36.9%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は8.6%となり、前期より2.0pt向上いたしました。
<健康食品事業>
当事業セグメントは、国内事業の収益構造改革とグローバルでの機能性素材系バリューチェーンの構築に取り組みました。
当連結会計年度は、「ウコンの力」の需要増に加え、主力製品である「C1000瓶製品」や「1日分のビタミンゼリー」の販売に注力し増収となりました。利益面は増収効果に加え効果的なコスト運用もあり増益となりました。
以上の結果、健康食品事業の売上高は168億65百万円、前期比2.1%の増収、営業利益は24億64百万円、前期比29.2%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は14.6%となり、前期より3.1pt向上いたしました。
<海外食品事業> 連結対象期間:主として2023年1月~12月
米国豆腐事業は、キーストーンナチュラルホールディングス社の新規連結により増収となりましたが、同社買収に伴うのれん等の償却負担や2023年6月に稼働したハウスフーズアメリカ社新ラインの減価償却負担などを吸収するには至らず減益となりました。
中国カレー事業は、増収減益となりました。家庭用事業は、前期のコロナ禍における特需から当期に入り景況感が悪化して消費環境が大きく変化したことで減収減益となりました。業務用事業は、新規顧客開拓が進んだ一方、前期ゼロコロナ政策下で停滞した事業活動再開によるコスト増が影響し、増収減益となりました。
タイ機能性飲料事業は、当上期はコロナ禍収束後、免疫ニーズに起因したビタミン摂取需要の減少により市場規模が大きく落ち込み、下期には一旦底を打ったものの、上期の業績低迷の影響が大きく減収減益となりました。
以上の結果、海外食品事業の売上高は563億75百万円、前期比15.3%の増収、営業利益は30億67百万円、前期比43.5%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は5.4%となり、前期より5.7pt減少いたしました。
<外食事業> 連結対象期間:㈱壱番屋は2023年3月~2024年2月、海外子会社は2023年1月~12月
当事業セグメントは、既存事業の収益力強化および新業態の育成を推進しております。
国内事業を推進する㈱壱番屋は、経済活動再開に伴う人流回復に加え、メニュー施策や新たなプロモーション活動の効果もあり既存店売上高、客数、客単価すべてが前期を上回って推移しました。海外事業は、新型コロナウイルス感染症の各種規制がなくなり経済回復が進んだことなどから多くのエリアで好調に推移しました。
以上の結果、外食事業の売上高は551億32百万円、前期比14.0%の増収、営業利益は33億95百万円、前期比49.7%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は6.2%となり、前期より1.5pt向上いたしました。
<その他食品関連事業>
㈱デリカシェフは、前期並みの売上高を確保する一方で、生産性向上の取組が奏功し増益となりました。
㈱ヴォークス・トレーディングは、価格転嫁が奏功したことや高利益率商材の販売注力により増収増益となりました。
以上の結果、その他食品関連事業の売上高は550億45百万円、前期比8.6%の増収、営業利益は19億30百万円、前期比56.4%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は3.5%となり、前期より1.1pt向上いたしました。
生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
|
香辛・調味加工食品事業 |
107,822 |
101.6 |
|
健康食品事業 |
15,962 |
100.1 |
|
海外食品事業 |
39,520 |
142.7 |
|
外食事業 |
14,042 |
110.2 |
|
その他食品関連事業 |
21,607 |
101.2 |
|
合計 |
198,954 |
108.2 |
(注)1.金額は販売価格により算出しております。
② 受注状況
主要製品の受注生産は行っておりません。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
|
香辛・調味加工食品事業 |
126,287 |
105.4 |
|
健康食品事業 |
16,865 |
102.1 |
|
海外食品事業 |
56,375 |
115.3 |
|
外食事業 |
55,132 |
114.0 |
|
その他食品関連事業 |
55,045 |
108.6 |
|
小計 |
309,703 |
108.9 |
|
調整(消去) |
△10,103 |
- |
|
合計 |
299,600 |
108.9 |
(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。
2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
加藤産業㈱ |
32,639 |
11.9 |
34,788 |
11.6 |
|
三菱食品㈱ |
17,345 |
6.3 |
17,123 |
5.7 |
(2)財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて346億91百万円増加し4,316億1百万円となりました。
流動資産は、前連結会計年度末に比べて162億84百万円増加し1,712億8百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて184億7百万円増加し2,603億93百万円となりました。
流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が160億11百万円増加したことによるものです。
固定資産の増加の主な要因は、退職給付に係る資産が78億68百万円増加したことや、投資有価証券が65億83百万円、建物及び構築物が44億2百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて144億17百万円増加し1,099億92百万円となりました。
流動負債は、前連結会計年度末に比べて91億23百万円増加し657億77百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて52億94百万円増加し442億14百万円となりました。
流動負債の増加の主な要因は、未払金が22億20百万円増加したことや、短期借入金が20億71百万円、未払法人税等が18億63百万円、支払手形及び買掛金が15億26百万円増加したことなどによるものです。
固定負債の増加の主な要因は、繰延税金負債が34億81百万円増加したことや、退職給付に係る負債が15億46百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことや、その他有価証券評価差額金が増加したこと、為替換算調整勘定が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて202億74百万円増加の3,216億9百万円となりました。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の68.6%から67.7%となり、1株当たり純資産が2,791円56銭から3,016円19銭となりました。
なお、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定に伴い、前連結会計年度については、取得原価の当初配分額の見直しが反映された後の金額を使用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー255億71百万円に対し、「有形固定資産の取得」「有価証券の取得」などの投資活動によるキャッシュ・フロー△22億99百万円、「配当金の支払額」「自己株式の取得」などの財務活動によるキャッシュ・フロー△73億82百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は801億65百万円となり、期首残高より174億83百万円増加いたしました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は255億71百万円(前期比+60億88百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益272億76百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、税金等調整前当期純利益の増加(前期比+59億61百万円)、棚卸資産の増減額の減少(前期比+15億33百万円)などが要因であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は22億99百万円(前期比+191億68百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出104億17百万円、有価証券の売却による収入87億98百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出の減少(前期比+133億95百万円)、定期預金の払戻による収入の増加(前期比+40億46百万円)、有形固定資産の取得による支出の減少(前期比+36億68百万円)、有形固定資産の売却による収入の減少(前期比△27億65百万円)などが要因であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は73億82百万円(前期比+53億57百万円)となりました。これは主に配当金の支払額44億88百万円、自己株式の取得による支出20億3百万円、非支配株主への配当金の支払額17億40百万円などによるものであります。
また、前連結会計年度に比べての増加は、自己株式の取得による支出の減少(前期比+40億円)、非支配株主への配当金の支払額の減少(前期比+10億5百万円)などが要因であります。
(4)資本の財源及び資金の流動性について
(財務戦略の基本的な考え方)
当社グループは、財務体質の健全性の維持と資金効率の向上を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。
財務体質の健全性の維持に関しては、「シングルA(安定的)」以上の信用格付の取得・維持を目指し、信用力および透明性の向上を図ります。
資金効率の向上に関しては、当社および国内子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、国内子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っております。
企業価値向上に関しては、第八次中期計画では、営業キャッシュ・フローに加えて新たな資金調達方法を活用し、VC構築に向けて積極投資を継続するほか、資本コストを意識した経営を推進するべく、政策保有株式の縮減など資本効率を高めるとともにその原資を株主還元に充当いたします。事業投資については、4系列VCの成長領域へ500億円、既存領域へ150億円、デジタル変革・環境領域へ50億円の、総額700億円を計画しております。資本コストを意識した経営については、利益還元方針を総還元性向40%以上、配当金は46円以上を安定して継続配当とすることに改定いたしました。それを基に、配当と並ぶ株主還元施策として政策保有株式150億円の縮減(2024年3月期比30%縮減)に取り組み、それを原資とした自己株式の取得を150億円計画しております。
なお、原材料価格の高騰、経済活動の再開に伴う市場環境の変化、インフレ進行に伴う消費者の行動変容など事業環境の変動は大きく、引き続き先行きの不透明な状況が続いております。また、生産労働人口の減少など外部環境の不確実性が増しており、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーにしていくことが不可欠となってきております。さらに、2023年に気温・海水の温度が史上最高となるなど環境問題は深刻化しており、世界各国でCO2削減目標の引き上げが実施されるなど、企業は環境問題への対応強化が求められております。
このような状況下で、当社グループにおいては、一部製品・サービスで価格改定を実施し、足元の環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。
食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、今後も当社グループの企業価値向上に努めてまいります。
(経営資源の配分に関する考え方)
当社グループは、適正な手元資金の水準について、事業上の資金を回収するまでの運転資金調達期間の観点と不測の事態に対応できる安全資産の額の観点から検証し、適正な水準として売上高の2.0か月分を設定しております。適正な水準を超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上のために既存領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでまいります。
(資金需要の主な内容)
当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用などがあります。投資活動に係る資金支出では、香辛・調味加工食品事業において、家庭用・業務用スパイスの生産機能を集約し、国内収益基盤の強化をめざすため、ハウスギャバン株式会社関東工場の増築工事などがあります。また、海外食品事業において、中国での伸長が見込まれる業務用フレークの生産能力増強に向けた業務用生産ライン拡張などがあります。持続的な成長の実現のため、既存領域だけでなく4系列バリューチェーンによる成長実現を目指し、成長領域や新規領域についても投資を行ってまいります。
(資金調達)
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローを内部的な資金の源泉と考えており、設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金や社債の発行等により充当することとしております。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
1.香辛・調味加工食品事業、健康食品事業、海外食品事業
当社グループ(当社および当社の関係会社)は、“「食で健康」クオリティ企業への変革”というテーマを掲げております。国内市場で長年にわたりご愛顧をいただいている各製品ブランド力の維持・強化に努めると共に、成熟した市場の中で「食で健康」という領域にフォーカスし、お客さまの立場に立った新しい価値をご提供し続けることができるよう、研究開発活動を行っております。
当社グループにおきましては、研究開発本部、ハウス食品㈱の開発研究所(千葉県四街道市)、ハウスウェルネスフーズ㈱の開発研究所(千葉県四街道市、兵庫県伊丹市)、ハウスギャバン㈱開発部(東京都中央区、千葉県四街道市)の4部門が、研究開発活動を担っており、「新たな需要の創造」と「確かな設計」の両立を目指し、変化する社会にあって安心してご使用いただけ、ご満足をいただける食品を創出するために、広範な研究開発を実施しております。
(1)研究開発取組概要
① 製品開発・技術開発分野
製品開発・技術開発分野では、日本の成熟市場では潜在化しやすいお客さまニーズを掘り起こし、「新しい価値」を有した製品づくりに努めるとともに、お客さまの食生活と健康に貢献するべく、「よりおいしく、より簡便に、より健康に」にこだわりを持ち、品質の一層の向上に努め、独自性のある技術に裏打ちされた製品の開発に取り組んでおります。
香辛・調味加工食品事業におきましては、ハウス食品として約10年ぶりとなる、大箱ルウカレーの新ブランド「X-BLEND CURRY(クロスブレンドカレー)を開発いたしました。スパイスの「華やぐ香りと心地よい余韻」をお楽しみいただけるように、スパイスが持つ「香り」と「旨み」に着目して調合しています。今回は、香りも味も全てスパイスを中心に構築。産地や加工度の違いも含めると、当社ルウ製品の中でも最多級のスパイス数を使用して、スパイス感がありながらも子どもも食べたくなる、「スパイスの魅力に溢れたおうちカレー」を実現いたしました。
健康食品事業におきましては、「PERFECT VITAMIN 1日分のビタミンゼリー<マスカット味>」への先行採用でご好評いただいた、従来品より開けやすい新キャップをシリーズ全3品に拡大し、多くのお客様にゼリーをより手軽に楽しんでいただくことを目指しています。
② 基礎研究分野
弘前大学大学院医学研究科の共同研究講座「食と健康 科学講座」において、健康寿命延伸につながる新たな食スタイルを提案することを目指して、青森県の岩木健康増進プロジェクト健診・いきいき健診や沖縄県のやんばる版プロジェクト健診での味覚感受性試験、食生活アンケートを行ない、味覚や食事内容、食生活と様々な健康指標との関連性の解析を進めました。また、味覚に関する京都府立医科大学との共同研究においては、慢性腎臓病患者では高濃度の塩味に対する忌避性が減弱している、すなわち塩辛い食べ物を避ける機能が低下しているという現象を見出し、塩を好む習慣からではなく嫌う反応からアプローチした減塩の可能性のヒントを得ました。また、過去にドライアイ検査への活用を検討していたタマネギ催涙因子発生技術を活用して、岩木健康増進プロジェクト健診にて800名を超える方を対象に目が刺激を感じるまでの応答時間の検査と涙液の回収を行いました。今後、涙液成分と様々な健康指標との関連性の解析を進めて行きます。一方で、食の分野においては、ハウス食品グループでの食物アレルギーに対する取り組みの一つである「食物アレルゲンの検査法の開発、公定法化、市販キット化」が、公益社団法人日本農芸化学会より農芸化学技術賞を受賞しました。今後も、表示義務の検討されているカシューナッツの検査法開発や、必要最小限のアレルゲン除去に基づく診療現場での食事指導に必要となる情報の提供など、世の中の変化に対応した取り組みを進めて参ります。他にも「スパイス由来の呈味増強成分の探索」の研究成果について、日本味と匂学会 第57回大会でポスター発表を行ない、優秀発表賞を受賞しました。当社が作出した独自素材であるスマイルボール(涙の出ないタマネギ)の研究におきましては、より高品質なものを安定的にお客様へお届けするために、継続的な品種改良と並行して生産地に密着した形でより本品種に適した栽培方法の研究を進めております。
健康関連の分野では、健康維持に必要なビタミンや、さまざまな生理機能があるといわれるスパイスに加え、近年その健康維持への効果が期待されている乳酸菌につきまして、これらの効果を検証するための試験、ならびに、新しい作用を見出すための基礎研究を継続して精力的に取り組んでおります。当連結会計年度では、「ウコンエキスによる食後血糖値改善作用」に関する原著論文が学術誌に掲載されました。また、「ウコンエキスによる神経炎症抑制作用とその作用メカニズム」に関する研究成果を国内の学術大会において発表いたしました。
(2)研究体制・しくみ
当社グループの3つの研究所と開発部は、基礎研究・機能性研究、製品開発、技術開発、容器包装開発、お客様生活研究、グループ技術連携、研究企画、運営の各部門で構成しており、それぞれの部門において専門的な研究開発活動に取り組む一方、リノベーションを行った千葉研究センターを中心に、部門間の垣根を越え、お互いが有機的に連携して相乗効果を高める取組み(One Day a Weekなど)を継続して進めております。また、海外事業における製品開発サポート体制も継続的に強化しております。
組織をフラットな小グループ制とし、柔軟性ある運用により市場の変化と商品の多様化にフレキシブルに対応するとともに、保有技術を目に見えるサービスにいかに具現化していくかというこだわりを持って運営にあたっております。
(3)研究開発費
当連結会計年度における研究開発費の総額
2.外食事業、その他食品関連事業
特に記載すべき事項はありません。