当社グループの理念、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 理念等
当社グループは、2024年4月からステークホルダーに果たすべきパーパスや全従業員が共有すべきバリューから成る「理念」をすべての企業活動の基盤として位置付けました。
また、理念の制定を受け、当該理念とサステナビリティ経営との整合性を担保すべく、めざすサステナビリティ経営像を明確にするため、「サステナビリティ基本方針」を「オリコがめざすサステナビリティ」に改正いたしました。
〔パーパス〕
その夢の、一歩先へ
Open the Future with You
〔バリュー〕
正しさを求める 信頼を育む
未来を想う 挑戦を楽しむ
〔オリコがめざすサステナビリティ〕
わたしたちは、「その夢の、一歩先へ」というパーパスを掲げています。これには、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまのパートナーとして、一人ひとりのいまと未来に親身に寄り添い、真摯に向き合い、時には熱意をもってリードするというわたしたちの想いが込められています。
わたしたちがめざすのは、誰もが豊かな人生を実現できる持続可能な社会。イノベーションの力で様々な社会課題を解決し、未来の世代へと継承していきたいと考えています。
そのために、わたしたちは信頼されるパートナーとして、すべての企業活動を通じて社会に貢献し、社会価値と企業価値の両立を追求してまいります。
(2) 経営戦略
当社は、長期目線で社会価値と企業価値の両立をめざす「サステナビリティ」を経営の軸として、10年後のめざす社会・めざす姿を定め、そこからバックキャスティングし、2023年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画をスタートさせております。中期経営計画のスローガンとして「Transformation Now!“お客さま起点で価値を創造する新時代の金融サービスグループへ”」を掲げ、従来型の信販モデルから発展的に脱却し、①デジタル②グリーン③オープンイノベーションを切り口に、新時代の金融サービスグループへの変革(=トランスフォーメーション)を通じて、社会への貢献と企業価値の向上を実現してまいります。
上記をめざし、以下の重点戦略を実践してまいります。
〔事業戦略〕
リスクリターン、コストリターンをベースとした事業ポートフォリオ運営の遂行
・重点市場(決済・保証事業、海外事業)深耕と新規事業の探索
・顧客ニーズを起点としたマーケットイン型営業の確立
・異業種・先端企業との協働による新商品・サービスの創出
・プロセスイノベーションの深掘
〔経営基盤・資本政策〕
・多様性に富んだ人材集団づくり、新時代のための人事の基盤づくり
・プライム市場に適合した体制構築等ガバナンス強化
・財務健全性・資本効率・株主還元の最適なバランス実現、安定的・継続的な配当実施
(3) 経営環境及び対処すべき課題等
当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し行動制限の緩和やインバウンド需要の回復などにより、経済活動及び社会活動の正常化が進みました。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東での紛争の深刻化など地政学リスクは世界経済にも大きな影響を与えております。とりわけ、物価高騰への対応として米国をはじめ各国は政策金利を引き上げ、わが国においても17年振りの政策金利の引き上げを行うなど、「金利のある世界」への復帰に向けた大きな節目を迎えております。
こうしたなか、中期経営計画2年目である2024年3月期の当社業績は大変厳しいものとなりました。とりわけ、海外事業、特にタイ子会社においては、中国経済減速の影響を受けたタイ経済の低迷もあり、延滞債権の急増とともに貸倒関係費が大幅に増加しました。国内においても重点取組事項と位置付けた個品割賦事業の構造改革の成果刈り取りが次年度以降に持ち越されるなど、海外事業でのマイナス要素を打ち返すことができず、業績の下方修正を余儀なくされる結果となりました。
このような状況に加え、今後、市場金利の上昇による金融費用の増加等の影響も勘案し、中期経営計画の経営目標として掲げた最終年度(2025年3月期)の経常利益計画400億円等の達成は極めて困難な状況となったことを踏まえ、経営目標を以下のとおり修正いたしました。
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2025年3月期 経営目標 |
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修正前 |
修正後 |
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経常利益 |
400億円以上 |
200億円 |
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ROE |
10%以上 |
8.5% |
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営業収益一般経費率 |
60%未満 |
60.7% |
一方、中期経営計画で掲げたグリーン・デジタル・オープンイノベーションを切り口とした成長戦略として、ビジネスカードと請求書カード払いサービスを起点とした中小企業DX支援や、eオリコサービスの刷新とデジタルカードを契機とした新たな顧客体験の提供などに加え、イオンフィナンシャルサービス株式会社との業務提携、株式会社オリコオートリース、株式会社オリコビジネスリースの連結子会社化や株式会社オリコプロダクトファイナンスの完全子会社化など、次の成長ステージに向けて着実に布石を打っております。
今後は、リスクリターン、コストリターンに基づく事業ポートフォリオ運営の更なる高度化を図りつつ、海外事業の早期立て直しを進めるとともに、金利上昇など環境が変化するなかでも持続的な成長軌道を確立するための強固な収益基盤の構築が重要だと認識しております。これらの取組みを迅速かつ着実に実践することにより、企業価値の更なる向上を実現してまいります。
《重点戦略への取組》
◆事業戦略
重点戦略分野の一つであるタイ・フィリピン・インドネシアのオートローン事業は、中国経済の減速による影響で経済活動が低迷し、特にタイ子会社においては、経済環境の悪化に加え債権管理の不十分さもあり想定以上に延滞債権が急増しました。なお、延滞債権への対応として回収体制の強化や与信の厳格化による債権良質化に努めたことにより、足元の債権パフォーマンスには良化傾向が見られております。今後も不安定な市場環境を考慮しながら営業戦略の再構築を図るとともに、ガバナンス体制・リスク管理をより一層強化し、早期立て直しを進めてまいります。
国内事業においては、増収増益に転じた銀行保証等の一部事業を除き各事業ポートフォリオの動きが想定どおりに進まず、とりわけ今年度の重点取組事項とした個品割賦事業の構造改革については分析・可視化が進むも具体的な成果にまでは至らず、次年度での確実な刈り取りに向けて取組を加速しております。
このような環境下ではありますが、当社の強みを活かしながらグリーン・デジタル・オープンイノベーションを切り口に新たな商品を開発し、社会価値と企業価値向上の両立に向けた取組は着実に進めております。
具体的には、ビジネスカードを利用した事業者間取引の請求書カード払いサービス「OBS(Orico Business payment for SME)」において、会計ソフト連携機能も搭載するなど、中小企業のキャッシュレス化やDX推進支援に取り組んでおります。
さらに、社会課題となりつつある空き家問題の解決に向けた取組として、「アキカツローン」を通じて自治体や地方金融機関のネットワークを活用し、持続可能な地域づくりの実現をめざしております。なお、この取組は日本経済新聞社が毎年1回、特に優れた新製品・新サービスを表彰する「2023年日経優秀製品・サービス賞 日経ヴェリタス賞」を受賞しました。
また、インオーガニックの取組として、2023年9月に株式会社オリコオートリース・株式会社オリコビジネスリースを連結子会社化した他、2024年3月にイオンフィナンシャルサービス株式会社との業務提携の一環として、イオンプロダクトファイナンス株式会社(現、株式会社オリコプロダクトファイナンス)を完全子会社化いたしました。いずれも当社の事業基盤を強化し競争優位性を高めることに繋がるものではありますが、とりわけ株式会社オリコプロダクトファイナンスについては、同社の基盤を活用し現在取組中の個品割賦事業構造改革をさらにスケールアップしていきたいと考えております。
なお、イオンフィナンシャルサービス株式会社との業務提携においては、双方の関係会社を含めた協働を通じステークホルダーに新たな価値を提供することを目的に、会員向け・カード事業、企業間決済保証事業、ローン・ファイナンス事業、個品割賦事業、海外事業、不動産関連事業、サステナビリティに資する取組等、幅広い事業領域に関して業務提携の検討の具体化を進め、他事業とのシナジー追求等を通じ当社グループ全体の収益基盤の更なる強化を図ってまいります。
◆経営基盤
当社は、プライム市場上場企業としてステークホルダーにとって更に信頼性の高いガバナンス体制の整備を目的として監査等委員会設置会社を採用しております。取締役会は戦略策定と監督機能を重視する一方、業務執行権限を最大限取締役社長に委任し経営の機動性とガバナンスの堅確性の両立を図っております。
当社は今中期経営計画において、サステナビリティを経営の上位概念に位置付けて取組を強化しております。その一環として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づき気候変動に関するリスク・機会を把握するとともに、GHGプロトコルに則ったScope1/2/3の排出量を把握し2030年削減目標ならびに2050年ネットゼロを掲げました。この脱炭素に向けた取組とその開示が評価され、企業の環境や気候変動対策への取組を評価する国際的なNGOであるCDPから、業界でもトップクラスとなる「B」スコアを獲得しました。
また、マテリアリティの一つに「持続可能な地域づくりへの貢献」を掲げ、2024年3月に船橋市と包括連携協定を締結いたしました。今後も地方自治体との連携を通じて様々な社会課題に対して適切なソリューションを提供してまいります。
今中期経営計画の重点事項である人財戦略においては、2024年3月期の2年目も着実に進展させており、人事制度改定等を含む施策により、持続的な成長を支えるための人財戦略は進捗しております。
具体的には、2023年3月期からイノベーション企業やスタートアップ企業等への社外トレーニーや社外副業、社内公募制度などの施策を拡充させるとともに、研修や面談などを通じて社員が自身のキャリアに向き合う機会を提供し始めました。その結果、社員が自立的なキャリア形成を実践し、そのために挑戦する風土が醸成されつつあります。2024年3月期末までに226名が挑戦する機会を活用し、3年間で累計200名に新たな経験を付与するという目標を1年前倒しで達成しております。
◆資本政策
「財務健全性、株主還元、資本効率の最適なバランスを実現」することを資本政策の基本方針とし、株主還元につきましては、「安定的かつ継続的な株主還元を基本とし、連結配当性向30%を目処に配当を実施」することといたします。
◆DX戦略(AIの活用)
当社は、中期経営計画を達成するための重要な戦略の一つとして、2022年4月に「デジタル技術を用いて、常にお客さまに寄り添い、向き合い、ニーズに即した金融サービスを通じて、様々な社会課題解決に貢献し続けるイノベーティブな先進テック企業を目指す」というDX Visionと、これに基づいた「DX戦略」を策定しております。
このDX VisionとDX戦略の策定、推進体制の構築、及びその後のDX推進への取組み等が評価され、当社は2023年3月に経済産業省が定める「DX認定制度」に基づく「DX認定事業者」の認定を取得しました。
当社のDX戦略は、「デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル創出」「既存ビジネスモデルにおけるDXの実践」「DX人材の育成・DXカルチャーの醸成」の3つの戦略軸で構成しており、各戦略軸に従い、様々な取組みを展開しております。
戦略① デジタル技術を活用した新たなビジネスモデル創出
当社では、デジタル技術とデータを有効に活用し、マーケットインの発想でお客さまの課題解決に繋がる商品・サービスを生み出すことで、新たな顧客体験の提供をし続ける企業をめざしております。具体的には当社の持つ金融サービスのノウハウ・知見と、スタートアップ・ベンチャーをはじめとする他の企業が有するデジタル技術を掛け合わせ、新しい商品・サービスの創出に取組んでおります。このような協業案件を数多く実現していくために、出資機能として「オリコデジタルファンド(ODF)」を設定し、スタートアップ・ベンチャー企業との協業がスムーズに進む環境を整備しております。
また当社は、決済・与信をはじめとする豊富なデータを基盤とし、データエコノミーを創造することにチャレンジしております。匿名加工した当社固有データとオープンデータを掛け合わせAIを活用した分析を通じ、パートナー企業の営業戦略やプロモーションをサポートするアドバイザリーサービスを提供しており、2024年3月現在で累計提供社数は147社となりました。社内においてもデータ利活用を推進するとともに、データに基づいてビジネスを企画・推進できる人材を増やすべく、社内トレーニーや研修制度の拡充に取り組んでおります。
戦略② 既存ビジネスモデルにおけるDXの実践
当社はビジネスプロセスの構造改革を実現するため、デジタルを活用した業務の効率化・スピードアップに取組んでおります。特に、お客さまの当社へのお申込み手続きから、取引契約、業務オペレーションが完結するまでの「エンドトゥエンド」のプロセスを俯瞰して、全体最適の観点からBPRを進める取組みを推進しております。また、2,000を超える本社定型業務のうち、自動化が可能な業務を選定し、優先順位をつけて自動化に取組み、着実に進めております。また、従来からRPAを開発できる人材の育成を進めてきましたが、2024年3月期はRPA開発人材の育成を内製化するべく、社内RPAインストラクターの育成にも着手しております。
業務のデジタル化を推進することを通じて、ペーパーレス化も進み、2024年3月期はCO2削減効果が537tと計画を大きく上回る実績となりました。
業務のデジタル化により、当社の生産性向上のみならず、お客さまの更なる利便性向上にも繋げていくとともに、社会や環境への貢献を意識しながら取組みを進めてまいります。
戦略③ DX人材の育成・DXカルチャーの醸成
DXを推進するうえでは、高度化していくデジタル技術を活用しながら新たなビジネスモデルを探求し、お客さまに価値を提供し続けることにチャレンジする熱意とスキルを持った人材を育成していくことが最も重要である、と当社は考えております。当社は中期経営計画期間中に、基礎的なデジタル技術の知識・スキルを有する「DX推進人材」を当社従業員全員に相当する3,000人育成することをKPI指標として設定しておりましたが、2024年3月期までの2年間で3,200人以上が認定を取得いたしました。今後も従業員のデジタルに関する知識やスキルの向上・定着による業務での活用推進とともに、デジタル技術やデータに関する専門的なスキルを有する人材の育成・確保を進めてまいります。
加えて、グループ従業員全員が自らの問題意識を基に、新たなビジネスアイデアや業務の変革アイデアを発信する「DXプレイス」は徐々に定着してきており、当社グループ全体に従業員自らが能動的に新たな価値提供を考え、発案し、実現つづけるDXカルチャーの浸透を進めてまいります。
推進体制について、当社では取締役社長(飯盛 徹夫)を本部長とした「DX推進本部」を組成し、全部門・全グループを俯瞰し、横断的にDX戦略を推進する体制を構築しています。DX推進本部では、主に全社及び当社グループ横断的なDX推進に向けた取組施策の検討・実施を進めており、定期的に本部長(取締役社長)を議長とし、各部門・グループ長が参画するDX推進会議を開催しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティに対する考え方及びマテリアリティ
当社は、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向け「オリコがめざすサステナビリティ」を定めております。また、サステナビリティを推進する上で当社が優先的に解決すべき重要課題としてマテリアリティを特定のうえ、具体的な取組項目やKPIを設定しPDCAサイクルを回すことにより、様々な課題の解決による社会価値の創出と企業価値の向上をめざしてまいります。
[オリコがめざすサステナビリティ]
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わたしたちは、「その夢の、一歩先へ」というパーパスを掲げています。これには、お客さまをはじめとするステークホルダーの皆さまのパートナーとして、一人ひとりのいまと未来に親身に寄り添い、真摯に向き合い、時には熱意をもってリードするというわたしたちの想いが込められています。 わたしたちがめざすのは、誰もが豊かな人生を実現できる持続可能な社会。イノベーションの力で様々な社会課題を解決し、未来の世代へと継承していきたいと考えています。 そのために、わたしたちは信頼されるパートナーとして、すべての企業活動を通じて社会に貢献し、社会価値と企業価値の両立を追求してまいります。 |
(2) サステナビリティへの取組
①ガバナンス
当社ではサステナビリティを経営の上位概念に位置づけ、10年後のめざす社会・めざす姿の実現に向けてマテリアリティを特定しKPIを設定するとともに、より実践的なサステナビリティ経営を推進するための体制を構築しております。
a.サステナビリティに関するガバナンス
環境、人権、顧客保護等のサステナビリティに関連する事項に関しては、当社としての姿勢を示す基本的な方針を取締役会で審議し、承認の上、「経営の基本方針」として定めています。これら「経営の基本方針」に基づき、実行計画を立案の上、具体的な取組を組織横断的かつ中長期的に推進しています。計画の進捗等の具体的な内容は、サステナビリティ委員会や経営会議等を通じ、取締役会に対して適宜・適切に報告されております。また、取締役会は適切な指示を行う等、当社のサステナビリティの体制は取締役会が監督しております。
b.サステナビリティ委員会
取締役社長を委員長とし、各部門・グループ長が委員を務めているサステナビリティ委員会を中心に全社的なサステナビリティの推進体制を構築しております。また、その取組状況を取締役会へ定期的に報告し取締役会の関与・監督の実効性を高めております。
<主な議論・報告内容>
・サステナビリティ委員会及び環境・地域部会、顧客部会、人財部会の2024年3月期活動計画
・サステナビリティ取組項目、KPIの見直しに関する審議
・サステナビリティ取組項目、KPIの実績及び進捗状況報告
・環境・地域部会、顧客部会、人財部会の活動報告
・統合報告書、ESG、TCFD対応、社内浸透における進捗報告
c.部会
サステナビリティ委員会の直下に3つの部会「環境・地域部会」「顧客部会」「人財部会」を設置しております。それぞれの部会は、部門長・グループ長を部会長とし、各部門・グループを代表する部長以上のメンバーで構成されております。部会においては、多面的な議論を行い、具体的なサステナビリティの取組・施策の推進を担うクロスファンクショナルな場となっております。
<3つの部会の目的>
・環境・地域部会
事業活動を通じた脱炭素社会・持続可能な地域社会への貢献
・顧客部会
あらゆる場面のお客さま体験価値向上に努め、商品・サービスの充実を図ることによるお客さま満足度向上
・人財部会
会社と社員が互いに成長できるWin-Winな関係構築
全社員が自らの価値を最大限発揮し、生き生きと働ける環境づくり
②リスクマネジメント
当社はサステナビリティ課題を含む事業へのリスクを、一元的に把握・管理しその規模・態様に応じた総合リスク管理を行っております。リスク管理の詳細は、[
気候変動に関するリスクに対しては、取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会にて審議・報告する体制を整備しております。加えて、気候変動関連のリスクや機会を含む事業戦略などの検討状況は定期的に取締役会に報告しており、当社の気候変動関連を含むリスク管理体制は取締役会が監督しております。
③戦略
a.サステナビリティの戦略上の位置づけ
サステナビリティ経営においては、当社の強固な財務基盤や経営資本を活用し、「誰もが豊かな人生を実現できる持続可能な社会」の実現に向けて当社が貢献するためには、「さまざまな社会課題解決に貢献し続ける、イノベーティブな先進企業」「ステークホルダーからこれまで以上に存在意義を認められる企業」になることが重要であると考えております。こうした認識のもと、当社は新たな中期経営計画の策定を機に、社会価値と企業価値の両立をめざす「サステナビリティ」を経営の軸に据え、中期経営計画の上位に位置づけました。同時に、10年後のめざす社会・姿を実現するために6つのマテリアリティを定めました。
6つのマテリアリティと戦略を結び付け、それぞれのマテリアリティに紐づく取り組み項目と2025年3月期にめざす水準であるKPIを設定し、ステークホルダーに対して公表しております。
こうしたサステナビリティの考え方は、中期経営計画のすべての事業戦略に反映されております。各部門やグループの重点戦略は、それぞれの戦略・施策がどのマテリアリティに繋がるものなのかを検証し作り上げたものであり、経営戦略策定のプロセスは「社会への貢献と企業価値向上の両立」を体現しているものであります。
<サステナビリティの戦略上の位置づけの概念図>
b.当社の価値創造プロセス
当社は、国内外にまたがる幅広いビジネスパートナーとのネットワークや、審査・回収ノウハウをはじめとした知的資本、多様な人的資本、強固な財務資本等を元に、幅広い金融サービスを通じ社会に価値を提供しています。当社の価値創造プロセスを通じて社会課題解決を重点的に行う領域が、6つのマテリアリティとなっております。
<当社の掲げる6つのマテリアリティ>
・安全・安心で利便性の高いキャッシュレス社会実現への貢献
・金融ノウハウの活用を通じた新たな顧客体験価値の創造
・脱炭素・循環型社会実現への貢献
・持続可能な地域づくりへの貢献
・人材の多様性と育成および働き方改革
・ガバナンスの強化
<当社の価値創造プロセス>
c.マテリアリティの実現に紐づく具体的な取組
以下、当社の当年のサステナビリティ経営の進捗の内、主なものを報告いたします。
イ.脱炭素社会の実現に向けたビジネス(マテリアリティ:脱炭素・循環型社会実現への貢献)
太陽光発電システムの普及に寄与するV2H、省エネ設備に係るローン商品の開発、Orico Sustainability
Fundを活用したEVファブレスメーカーとの資本業務提携によるEV市場拡大への貢献や、同ファンドを活用し
たモビリティサービスプラットフォーマーとの資本業務提携による持続可能な交通網・まちづくりの推進と
地域経済の活性化等に取り組んでおります。
ロ.コミュニティー投資(マテリアリティ:持続可能な地域づくりへの貢献)
(ⅰ)地域社会への貢献活動
2024年3月に千葉県船橋市との包括連携協定を締結いたしました。船橋市が直面する様々な課題に対して、オリコグループが持つ金融サービスやネットワークを活用し、地域貢献の幅を広げ様々な課題解決に貢献してまいります。
(ⅱ)次世代への支援
小学生を対象としたクレジットカードに関する金融リテラシー教育、高校生向けに商業教育コンソーシアム東京への参画や金融リテラシー教育の教材提供、大学生に対する社会連携プログラム(正課外)などを行っております。
(ⅲ)社会貢献活動
2014年より、全社員を対象にボランティア活動を紹介する社会貢献プログラム「Orico One Step Program」を実施しております。また、社員の社会貢献活動を推進する募金制度として「オリコグループ社会貢献ファンド」を設立しています。これを通じ、福祉団体や大規模災害の被災地等へ寄付を行っています。これらの取組により、社員が自発的に社会のニーズに気付くきっかけや、自己啓発の機会を提供し、社員エンゲージメントの向上にもつなげております。
(ⅳ)サステナビリティ・リンク・ファイナンス(ローン/ボンド)
東南アジア(タイ、フィリピン、インドネシア)のオートローン年間取扱高をKPIとするサステナビリティ・リンク・ローン、サステナビリティ・リンク・ボンドを発行し、社会課題の解決を推進する手段としての資金調達を行っております。
④リスクと機会
気候変動が当社に与えうる影響について、TCFDが提言する情報開示フレームワークに則り分析しリスクと機会に分け、具体的なシナリオと影響額、その対応策等を以下のとおり認識しております。
⑤指標及び目標
<2025年3月期に向けたサステナビリティ取組項目>
10年後のめざす社会・めざす姿からバックキャストし、6つのマテリアリティに紐づくサステナビリティ取組項目及び2025年3月期にめざす水準であるKPIを、「ステークホルダーからの期待や要請」と「オリコの戦略上の重要度」の二軸でマッピングし、優先順位の高いものを選定しました。これらの取組は、統合報告書やWebサイトを通じてステークホルダーの皆さまに公表しております。
<GHG排出量削減目標>
当社は、TCFD提言を踏まえGHGプロトコルに則りScope1・2・3の排出量把握に取り組んでおり、以下のとおり削減目標を掲げております。パリ協定の1.5℃目標に貢献することを目標に、2050年にネットゼロを達成すべく、引き続き排出量削減に向けた努力を継続していきます。
(3)人的資本経営への取組
①人的資本経営の考え方
当社は人的資本経営という言葉を人事が関わる領域だけでなく、それ以外の活動も含めたものとして捉えております。既存ビジネスの変革や、新たな価値を創り出す能力を身につけられるよう、教育や学習支援など社員のスキル・能力開発に向けた投資に加え、社員が能力を最大限発揮しイノベーションを起こしやすい環境整備・仕組みづくりの両面にわたる取組みを成長戦略の重要な要素と位置付けております。この考えを踏まえつつ、求める人材像や人財マネジメントポリシー等の人事基本方針を定め、中期経営計画では、成長を支える経営基盤の強化として「人財戦略」を掲げ、経営戦略と整合させながら「社員エンゲージメントの最大化」を実現するために、多様性に富んだ人材集団づくりと新時代のための人事の基盤づくりに取組んでおります。
②ガバナンス
当社の人事基本方針は、業務執行取締役及び執行役員で構成される経営会議での審議を経て、取締役会で審議・決定しております。人財戦略は、経営会議での審議を経て、取締役社長が決定し、取締役会で報告・共有を行っております。また、取締役社長の諮問機関であるサステナビリティ委員会の傘下組織である人財部会にて、人事基本方針と人財戦略の実現に向けた活動状況の共有と議論を行い、四半期ごとに開催される本委員会に報告するとともに、委員会を通じて取組状況を半期に1回、取締役会に報告しております。
全社における人財戦略上の重要な取組みの推進にあたっては、取締役社長のもと、人事・総務グループ長を責任者として、社内各組織や連結子会社とも連携を取りながら進めております。当社の人事機能は、専門性の高さや複雑性への対処の観点から、企画・運用・厚生・人権啓発推進の機能を担う「人財マネジメント統括部」と、採用・教育・インクルージョン&ダイバーシティ推進の機能を担う「キャリアデザイン推進部」の2つの組織で構成しております。各事業・各機能における組織開発・人材開発は、人事・総務グループ長及び人財マネジメント統括部長が、部門やグループの責任者と意見交換や協議の場を設け、組織の活性化や人材の適所適材に向けた配置方針や、課題について共有・議論を行っております。
③戦略
a.人財戦略の策定の狙い
当社で働く全ての社員を当社の持続的成長における重要な「財産」として捉え、さらなる経営基盤の強化を図るべく、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画の重点戦略の一つとして「新たな人財戦略」を策定しております。これは、社員と会社の関係性が、これまでの「雇う側-雇われる側」という関係から、自分が大切にしていることを実現するための場所へと、「互いに選び・選ばれるもの(Win-Winの関係)」に変えていく必要があり、2030年の当社のめざす社会・めざす姿を構想した経営戦略の実現に向けて、中長期的な視点で、社員と会社の在り方を根本的に捉えなおしたものであります。
人財戦略の策定にあたっては、取締役及び執行役員の意見を反映させるほか、組織内の幅広い関係者と議論を重ね、以下の3つの要素が必要であると考えました。
・社員を惹きつける魅力ある組織の実現に資する戦略
・事業・組織・プロセスの変革を後押しする戦略
・変革の実行を実現するために、制度や仕組みを変えるだけでなく、役員・社員に対して思考・行動様式の改革を促す戦略
b.人財戦略のめざす姿と人事基本方針
人財戦略を通じてめざす姿には、「会社と社員が互いに成長できるWin-Winな関係構築を通じた社員エンゲージメントの最大化」を掲げています。このめざす姿には、会社と社員がともに必要な存在として絆を深めながら、社員が成長・活躍し、会社が持続的に成長する関係を築き上げていきたいという想いを込めております。
人財戦略の遂行にあたっては、「人事ビジョン」を定めるとともに、その実現の両輪として、社会的規範を重
視した行動様式を踏まえつつ、社員に変革・改善を通じた価値創造を求めていく中で、残すべき・取り戻すべき
オリコらしさを発展的・未来志向的に進化させた「求める人材像」、及び会社のコミットメントとして思考・行
動の改革を後押しし支援する「人財マネジメントポリシー」を定めております。
c.重点実施事項
「社員エンゲージメントの最大化」を実現するために、中期経営計画において重点的に実施すべき事項として、以下の2つを設定しております。
※詳細については2024年9月発行予定の統合報告書及び当社Webサイトをご覧ください。
イ.多様性に富んだ人材集団づくり
-個性ある多様な人材が活躍する組織へ-
(ⅰ)社員一人ひとりの成長意欲を高め、強みを伸ばすキャリア支援の拡充
・価値観やライフステージに合わせた働き方を尊重するために、2024年4月より社員が望まない転居を伴う転勤を廃止するとともに、社員の自律的なキャリア形成支援を目的として、2025年4月より社員が希望するポストや職種を選択するジョブポスティングを導入予定
・社内公募制度、国内・海外トレーニーのほか、デジタル企業やスタートアップ企業へのレンタル移籍、社外
副業など社外での就業機会を提供
・このような当社取組が評価され、個人と組織の持続的な成長を実現するキャリアオーナーシップ経営に取組
んでいる企業を表彰する「キャリアオーナーシップ経営AWARD2024」にて優秀賞(大企業の部)を受賞
(ⅱ)女性や外国人など、様々なバックグラウンドや個性をもつ人材の幹部登用の加速
・2023年4月に従来のダイバーシティ推進の考え方(ビジョン・基本方針・宣言)を見直し、インクルージョンの実現にフォーカスした「インクルージョン&ダイバーシティ基本方針」を新たに制定
・インクルージョン&ダイバーシティ基本方針に基づき、実行計画を立案の上、具体的な取組を組織横断的かつ中長期的に推進し、計画の進捗等の具体的な内容は経営会議を通じ、取締役会に対して適宜・適切に報告
・リーダーに求められるスキル強化を目的とした女性管理職向けの研修や、管理職の候補者となる人材基盤の形成を目的とした階層別研修、女性管理職同士が同じ立場や悩みを共有するネットワークづくり「Orico Women’s Network」を開催
(ⅲ)新規ビジネス創出などの核となる専門人材の確保・育成・活躍
・中期経営計画における事業戦略においてDXを推進する人材の育成は最も重要であると考え、DXの推進・実行に必要なマインド・スキルを有する人材の確保に向けた社内異動や外部採用の強化、育成プログラムの開発などを実施
・2025年3月期までにDX素養を有する人材(DX推進人材)を3,000人に拡大する目標を掲げるなか、DX人材育成プ
ログラムをリリース、2024年3月期までの2年間で3,200人以上が初級プログラムの認定を取得し目標を前倒
しで達成。また、約1,300名が中級プログラムを修了し、より上位をめざす社員は上級プログラムに挑戦
ロ.新時代のための人事の基盤づくり
-これからのオリコに相応しい評価・処遇・育成の制度・運用へ-
(ⅰ)年功・職能に基づく人事から仕事・ミッションを軸とした新たな人事への転換
・年功・職能を中心とした従来の考え方から、個人の担う仕事の内容や果たすべきミッションを軸とした新たな人事制度へ転換
・各ポジションが社会に提供する価値、職務要件や人材要件を明確化したミッション定義書を策定
(ⅱ)「求める人材像」に即した評価軸の見直しと客観性・透明性を高める多面評価の導入
・年功的な処遇運営からの脱却に向けて仕事・ミッションを軸とした評価・報酬制度へ見直しするとともに、会社が社員に期待する行動軸を定め評価基準を示すだけでなく、評価者のスキル向上に注力することで公正かつメリハリのある評価と処遇を実現
・会社の掲げる戦略や目標達成に向けて社員も一体となって取組み、ともに達成する喜びを分かち合える賞与制度の仕組みもあわせて構築
・部長、室長及び営業店の支店長などの経営職階のみならず、課長代理や営業店課長といったマネジメント層にも2024年3月期から対象に加え、360度サーベイとフィードバック研修を実施
(ⅲ)能力開発とタフ・アサインメント付与を通じた次世代を担う中核人材の育成
・先進テック企業の核となる次世代リーダーの育成をめざし、意識改革・行動改革を促す実践的トレーニングとして「中核管理職ミッション開発プログラム」を開催。2023年4月期は本社の部室長及び営業店の支店長を対象に開始し197名が参加。役員がメンターとして参加のもと、WEB・集合セッション終了後に、参加者自身が興味のあることや極めたいテーマを決め、ベンチマークとなる企業へのフィールドワークや新たな人脈作りを通じて調査・分析を行い、新たなビジネスアイデアや社会価値創出に資する構想を経営層へプレゼンテーションを実施
・適所適材の観点から、若手社員の営業店課長への抜擢登用を行うなど、将来キャリアを展望できる積極的なアサイメント
<<職場環境に関する取組>>
社員の生産性やモチベーション向上に向けて、働き方改革や健康経営の推進等、すべての社員が生き生きと活躍できる職場づくりに力を入れて取組んでおります。
(ⅰ)働き方改革
・テレワークや週休3日制、社員が任意に就業時間を選択できるスライドワーク等、多様な働き方の拡充に加え、生活スタイルに合わせて取得できるプライム休暇(特別休暇)を導入
(ⅱ)健康経営の推進
・社員が公私ともに生き生きとした生活を送ることができるよう、社員とその家族の健康が重要と考え、2023年9月「健康経営基本方針」を新たに制定
・健康経営基本方針に基づき、実行計画を立案の上、具体的な取組を組織横断的かつ中長期的に推進し、計画の進捗等の具体的な内容は経営会議を通じ、取締役会に対して適宜・適切に報告
・社員一人ひとりを尊重しながら、生活習慣病予防及び重症化予防対策・女性の健康増進・がん対策・感染症対策・喫煙対策・メンタルヘルス対策等、健康リテラシー向上と心身の健康保持・増進を積極的に働きかけることで、「より意欲的に学び成長する社員」を増やし「高い価値を生み出す組織づくり」と「生産性の向上」によって、社員と会社のWin-Winな関係構築を後押し
(ⅲ)人権尊重に関する取組
・2023年4月、人権尊重が今後ますます重要性を増していくとの考えのもと、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に従い新たに人権基本方針を制定
・人権基本方針に基づき、実行計画を立案の上、具体的な取組を組織横断的かつ中長期的に推進し、計画の進捗等の具体的な内容は経営会議を通じ、取締役会に対して適宜・適切に報告
・差別やハラスメントのない人権尊重に根ざした職場環境の実現に向けて、人権に関する実践的な研修を実施
・内部通報制度として「オリコ・ヘルプライン」など社内外に相談窓口を設置し、グループ会社の社員や退職者も含めた救済措置体制を整備
・人権への取組をサステナビリティの基盤と捉え、差別やハラスメントの排除及び周知徹底を図るとともに、経営レベルでの社内体制の整備等を通じて人権デュー・ディリジェンスを実施
(ⅳ)妊娠・育児・介護に関する各種制度
・妊娠・育児に関する各種制度を整え、すべての社員が仕事と育児を両立できるよう、育児関連制度を整備・啓発
・女性の育児休業・短時間勤務制度の利用はもちろん、男性の育児休業についても取得を積極的に推進しながら、育児休業取得率100%をめざす
・仕事と介護を両立する社員のための様々な支援制度を拡充
・このような当社の取組が評価され、2022年11月、次世代育成支援対策推進法に基づく「子育てサポート企業」として「プラチナくるみんプラス」の認定を取得
(ⅴ)社員エンゲージメントサーベイの実施
・人財戦略の中核指標として活用するため、年1回のこれまでの社員意識調査を見直し、2022年4月より社員エンゲージメントサーベイを年2回実施
・エンゲージメント向上プログラムを導入し、職場ごとに抱える課題に対して部室長・支店長が社員とコミュニケーションを取りながら、より良い職場づくりと改善に向けたPDCAを実践
④リスクマネジメント
戦略で記載のとおり、当社の人財戦略は、社員と会社との関係性を互いに選び・選ばれる(Win-Winの関係)ものに変えていくこと、そして個人の特性をより活かしていくための様々な能力開発の機会提供に力を注いでおります。事業の強化・拡大に向けて必要な専門的スキルや能力を備えた外部人材の採用にも積極的に取組んでおります。また、2024年3月期から社員が退職後もオリコとの交流・つながりを促進するためのコミュニティーとしてオリコアルムナイネットワークを新設しております。こうした取組の結果、従来と比べて人材の流動性が高まる可能性があります。
当社の人的資本に関わる取組のリスクは、社員に対する自律的なキャリア形成支援を推進した結果、社員が当社よりも他社に挑戦や活躍の機会を見出し離職してしまうリテンションリスクの顕在化や、採用市場の競争環境が想定以上に厳しさを増した場合に当社の人材獲得力が相対的に低下し、外部の人材採用が計画的に実現できなくなること等が挙げられます。
当社はこうしたリスクを十分に認識し、リスクの顕在化に備えるために、社員に対しては、社内での成長・活躍の機会を最大限享受できるよう、2025年4月より人事異動の原則ポスティング化を予定しております。また、採用手法の多様化をより一層進めながら採用力強化に取組んでまいります。
⑤指標及び目標(注)1
<重点実施事項に関する取組>
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取組内容 |
目標(注)2
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実績 (2024年3月期) |
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社員一人ひとりの成長意欲を高め、強みを伸ばすキャリア支援の拡充 |
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社外・海外トレーニー、 レンタル移籍、副業・兼業経験者 |
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女性や外国人等、様々なバックグラウンドや個性を持つ人材の幹部登用加速 |
女性管理職比率 (課長クラス以上) |
(旧:27%以上) |
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女性管理職比率 (部室長相当職) |
(旧:9%以上) |
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新規ビジネス創出等の核となる専門人材の確保・育成・活躍 |
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<人財戦略を支えるその他取組>
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取組内容 |
目標(注)2
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実績 (2024年3月期) |
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有給休暇取得率向上等を通じた総労働時間の適正化と、ワーク・ライフ・バランスの定着化 |
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性別に関わらず仕事と家庭の両立ができる社会をめざした、男性の育児休業取得の促進 |
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サーベイを活用した社員エンゲージメントの向上 |
社員エンゲージメントスコア |
BBBへ向上 (AAA-DDの11ランク中 3ランクアップ) |
スコアB (1ランクアップ) |
(注)1.国内グループ各社において課題に応じた指標と目標を設定していることから、代表として提出会社における指標と目標を記載しております。
2.目標のうち、社内公募任用者及び社外・海外トレーニー、レンタル移籍、副業・兼業経験者の目標値は2023年3月期から2025年3月期までの累計であります。
女性管理職比率の目標値は、2025年3月期にめざす水準であります。なお、1年前倒しで目標を達成したため、課長クラス以上は+1%、部室長相当職は+3%の目標値に見直しています。
(4)お客さま本位への対応
当社は、最も重要なステークホルダーであるお客さまに対して、お客さま保護に加え、お客さまの声に真摯に耳を傾け、お客さま視点を大切にしていくため「お客さま本位の基本方針」を定めております。「お客さま本位の基本方針」を含めた当社のお客さまエンゲージメント等については、当社Webサイトを通じて社内外に開示しております。
お客さま本位の基本方針に基づき、実行計画を立案の上、具体的な取組を組織横断的かつ中長期的に推進し、計画の進捗等の具体的な内容は経営会議を通じ取締役会に対して適宜・適切に報告しております。
また、サステナビリティ委員会配下の顧客部会では、「あらゆる場面のお客さま体験価値向上に努め、商品・サービスの充実を図ることによるお客さま満足度向上」を活動目的に掲げ、お客さま起点による商品・サービスの探索や、期待を超えるお客さま対応の追求などについて議論を行っており、その内容は半期に1回、サステナビリティ委員会を通じて取締役会に報告しております。
(1) リスクマネジメント
当社は、経営の健全性、安定性を維持・向上しつつ企業価値を高めていくためにリスクを適切に管理することを経営上の重要課題の一つと位置づけています。
当社グループの多様化するリスクを総合的に把握・管理するため「リスク管理基本方針」を定め、個別のリスクをリスク所管部が管理し、リスク管理の状況を全体としてリスク統括部が把握・評価することにより、適切にリスクをコントロールしております。
また、内外環境を踏まえ、当社グループに重大な影響を及ぼすリスク事象を「トップリスク」として選定し、継続的にリスクの状況をモニタリングするとともに、必要に応じて早期に対策を講じることにより適切な運営・管理に努めております。
こうした取組については、四半期に一回開催する総合リスク管理委員会において審議・報告がなされ、その内容が取締役会及び経営会議に適宜・適切に報告されるなど、当社グループ全体としてリスク管理の態勢を構築しております。
(2) リスクアペタイト・フレームワーク
当社は、当社グループの成長の実現に向けて、戦略・財務・リスクを一体的に捉え、適切なバランスで経営判断を行うために、経営管理の枠組みとして「リスクアペタイト・フレームワーク」を導入しております。
計量化されたリスクリターン・コストリターンに基づき、戦略の遂行・事業計画達成のための適正なリスク水準を設定し、これと整合した事業計画策定並びにリソース配分を行っております。
また、期中のモニタリングを通じて、資本の十分性の確認を行うとともに、環境変化に応じた迅速な資源配分のリバランスを行うなど、経営の安全性の確保に資する適切な管理・運営を行っております。
(3) トップリスク運営
内外の環境などを踏まえ、当社グループに重大な影響を及ぼすリスク事象を「トップリスク」として選定しております。
トップリスクの状況については継続的にモニタリングし、必要に応じて早期に対策を講じることにより適切なリスク管理に努めております。
有価証券報告書提出日時点の「トップリスク」は次のとおりであります。
<トップリスク>
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リスク事象 |
リスクシナリオ |
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① |
経済環境の変化による業績への影響 |
物価上昇の高止まりや経済環境の大きな変動により、顧客の返済が困難となり貸倒損失が増加。事業環境の悪化により、加盟店の経営悪化・倒産が増加 |
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② |
急激な金利上昇による業績への影響 |
エネルギー・食糧価格高騰によるグローバルインフレが継続し、本邦やASEANにおける金融引締めによる市場急変からALM関連コストが増加、業績を下押し |
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③ |
不正利用増加による事業への影響 |
カードを中心とした不正利用・不正被害額が増大することによる業績影響やAML態勢の不足感によりステークホルダーからの信頼を毀損しビジネス機会を喪失 |
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④ |
サイバー攻撃・大規模システム障害による事業への影響 |
サイバー攻撃や基幹システム障害を起因とする個人情報の漏えいや業務停止等により、ステークホルダーからの信頼を毀損しビジネス機会を喪失 |
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⑤ |
気候変動等に関する新たな規制の導入・変更による事業への影響 |
脱炭素の実現等に向けた新たな政策や規制変更への対応の遅れによりリスク事象が顕在化 |
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⑥ |
技術革新等による事業への影響 |
技術革新による先端技術の取込みの遅れによりビジネス機会を喪失 |
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⑦ |
社会的規範に悖る行為等による企業価値の毀損 |
役職員が社会的目線に照らして正しい行為を行わないことにより、ステークホルダーからの信頼を毀損しビジネス機会を喪失 |
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⑧ |
人財マネジメントの不十分さによる戦略実現への影響 |
事業環境変化に合わせた経営戦略を遂行するための人財マネジメントが不十分であり、競争力が低下 |
(4) 事業等に関する主なリスク
当社グループの事業等に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。
なお、本項については、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日時点において判断したものであり、将来発生しうるすべての事業等のリスクを網羅するものではありません。
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①信用リスク |
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リスク |
・信用供与しているお客さまの支払遅延の発生や債権回収の悪化等により、損失を被る可能性があります。 ・将来の景気動向、個人破産申立の増加、その他の予期せぬ理由等により、貸倒引当金等を積み増しせざるを得なくなる可能性があります。 ・海外事業に関しては、東南アジア経済における物価や雇用環境の動向等により、お客さまの支払能力が変動し業績に影響を及ぼす可能性があります。 |
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対応策 |
・過去の実績を踏まえた統計的な手法に基づき、AIを駆使した審査システム・ロジックの最新化や性能規定与信の導入により、適切な延滞率の制御に取組んでいます。 ・貸倒損失に備えるため、過去の実績等を踏まえた統計的な手法により予想損失率を算出し貸倒引当金等を計上しております。 ・海外事業では与信基準の改定や延滞顧客に対する債権回収体制の強化に取組んでおります。 |
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②金利変動リスク |
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リスク |
・将来において想定以上の金利の上昇、格付の大幅な見直しにより、調達金利が上昇した場合、金融費用が増加する可能性があります。また、調達金利の上昇分を運用金利に転嫁できない可能性があります。 |
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対応策 |
・ALM(資産、負債の総合管理)を実施し、市場環境や当社グループのポートフォリオに応じて長短の調達バランスを調整するとともに、デリバティブ取引を活用し、金利変動リスクへの適切な対応に取組んでおります。 |
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③流動性リスク |
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リスク |
・金融情勢の著しい変化や格付の大幅な見直しが行われた場合、円滑な資金の確保が困難となる、或いは通常よりも著しく不利な金利水準での資金調達を余儀なくされる可能性があります。 |
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対応策 |
・ALM(資産、負債の総合管理)を実施し、当社グループの事業活動に必要な資金確保に向け、調達手段の多様化に努めるとともに、複数の金融機関とのコミットメントラインの設定や手元流動性の調整等によって、流動性リスクの軽減に向けた対応に取組んでおります。 |
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④外部不正リスク |
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リスク |
・クレジットカードの不正被害額は業界全体として増加傾向にあり、また不正取引の手口は複雑化・巧妙化しており、不正被害額の増加は業績を下押しする等の可能性があります。 |
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対応策 |
・不正申込の傾向調査やモニタリングを実施し、審査ロジックの精度向上による不正発生の未然防止に取組んでおります。 ・AIスコア搭載の不正検知システムによる検知及び会員向けの本人認証サービス登録促進、利用通知・停止機能提供等、不正取引防止対策の強化に取組んでおります。 |
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⑤サイバーセキュリティリスク |
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リスク |
・サイバー攻撃により、コンピュータシステムの停止、データ改ざん、重要な情報の漏えい等が発生した場合、お客さまサービスに支障を来たす可能性、お客さまの情報が悪用される可能性、ステークホルダーからの信頼が損なわれる可能性、損害賠償責任が発生する可能性、法令に基づく処分の対象となる可能性、及びこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。 |
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対応策 |
・高度化・巧妙化するサイバー攻撃等の脅威を経営の重要課題と認識し、専門部署であるサイバーセキュリティ室を設置しております。外部機関等との連携による情報の集約や技術的な対策をはじめ、サイバーインシデント発生に備えた手順の整備、役職員への研修・訓練等による組織的、人的対策を講じることにより、システムの安全性を維持する態勢を整備しております。 ・また、セキュリティ品質の向上及びインシデント対応力強化を目的とした「オリコCSIRT」体制を構築し、平常時の予防安全からインシデント発生時の即応態勢までを一貫してコントロールする仕組みを整備しております。 |
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⑥情報リスク |
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リスク |
・事業の特性から、大量のお客さまの情報を取得、保有、利用しており、当社グループ及び業務委託先において、外部からの不正アクセス、媒体運送中の事故、内部関係者の関与等によって重要な情報の漏えい等が発生した場合、損害賠償責任が発生する可能性、ステークホルダーからの信頼が損なわれる可能性、法令に基づく処分の対象となる可能性、及びこれらの事象に対応するための追加費用等が発生する可能性があります。 |
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対応策 |
・お客さまの個人情報をはじめとする情報の漏えいを防ぐため、情報の取扱いに関する規程等の整備、システム上のセキュリティ対策、役職員への教育・研修、施設への入退出管理等、組織的、技術的、人的及び物理的対策を講じることにより、情報の適正な取扱いに関する態勢を整備しております。 ・情報セキュリティ認証基準改定への対応を含むセキュリティ対策の継続的な改善等を通じてセキュリティ対策の向上に取組んでおります。 |
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⑦システムリスク |
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リスク |
・大規模なコンピュータシステムを保有しており、国内の拠点や、お客さま、各種決済機構等のシステムとの間を通信ネットワークで結び情報を処理しております。システムの大規模な誤作動等の事態が発生した場合や、外部委託先の過失・不正、自然災害等が発生した場合に、お客さまサービスに支障を来たす可能性があります。 |
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対応策 |
・業務上使用している情報システムにおいては、安定的な稼働を維持するためのメンテナンス、バックアップシステムの確保等の障害発生の防止策を講じ、また不測の事態に備えたコンティンジェンシープランを策定し、万一システムダウンや誤作動等の障害が発生した場合であっても安全かつ速やかに業務を継続できるよう体制の整備に万全を期しております。また、クラウドサービス提供者等の外部委託先に対し導入前後に亘る定期的な調査を行い、セキュリティ対策内容やサービスレベルを評価し、品質強化に取組んでおります。 |
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⑧気候変動リスク |
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リスク |
・異常気象による自然災害多発や脱炭素社会への移行に伴う事業への影響を「気候変動リスク」と認識しております。 ・物理的リスクとして、台風や洪水等の極端な気候現象の深刻化により、業務運営に支障を来たす可能性、加盟店の資産や事業基盤が毀損する可能性があります。 ・移行リスクとして、脱炭素を促す技術革新やイノベーションへの対応、政策・法規制、特定の金融サービスの需給変化への対応、それらの情報開示への取組が不十分と見なされ、ステークホルダーからの信頼を損なう可能性があります。 |
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対応策 |
・サステナビリティを経営の軸とし、新たに制定した「環境基本方針」を通じ、これまで以上に環境関連の取組を充実させるとともに、脱炭素・循環型社会の実現に取組んでおります。 ・サステナビリティ委員会を通じ、気候変動関連のリスクや機会を踏まえたサステナビリティ経営の戦略やサステナビリティの取組状況の確認、社内外のコミュニケーション強化、モニタリング強化に取組んでおります。 ・物理的リスク、移行リスクについてはその発生可能性、影響度、影響額を算出し対応策に取組んでおります。 |
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⑨大規模災害・感染症による影響 |
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リスク |
・大規模な地震・台風等の災害による被害や感染症の流行により、業務運営に支障を来たす可能性があります。 ・災害による被害からの復旧までに時間が相当にかかる場合、また感染症の急拡大や重症者の著しい増加等の事態が生じた場合、信用リスクや流動性リスク等が高まる可能性があります。 |
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対応策 |
・大規模な地震・災害や事故等の突発的な事態に備えて「事業継続管理規程」を制定し、「事業継続管理年間計画」の策定等、危機管理体制を構築することに加え、役職員の安全確認や被災地の状況把握を速やかに行うための専用システムを導入しております。 ・首都圏で大規模自然災害等が発生した場合、西日本エリアに暫定緊急対策本部を設置することとし、業務継続を可能とするため定期的に訓練を実施しております。 ・決済インフラの安定稼働、適切なお客さま対応等に努められるよう、ビジネスコンティンジェンシープランを策定しており毎年最新化を図っております。 |
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⑩規制変更リスク |
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リスク |
・当社グループでは、国内における「割賦販売法」や「貸金業法」を含むそれぞれの国や地域において求められる現時点での法令諸規則、政策及び実務慣行等の規制の適用を受けながら業務を遂行しております。将来における法令諸規則、政策及び実務慣行等の規制変更により、当社グループの業績や事業展開に重要な影響を及ぼす可能性があります。 ・万一、これらの規制変更に対応できず、法令等に抵触する行為があった場合、当局から処分を受ける可能性があります。 |
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対応策 |
・規制変更リスクの所在・規模等を適時かつ正確に把握し、その内容・対応状況を総合リスク管理委員会に報告のうえリスク回避・低減等に向けた適正な管理・運営を行っております。 ・関係法令等に係る業務検証を実施し、その内容・結果をコンプライアンス委員会に報告のうえ法令遵守に向けた適正な管理・運営を行っております。 |
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⑪コンダクトリスク |
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リスク |
・法令、社内規則、社会規範に反する行為のみならず、顧客保護、市場の健全性、公共の利益及びステークホルダーに悪影響を及ぼす行為があった場合、企業価値を毀損する可能性があります。 |
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対応策 |
・コンプライアンスを単なる法令遵守にとどめず、企業倫理や社会規範も遵守することと捉え、役職員が問題に直面した際に「正しい行動」を取れるよう「The Orico Group Code」を行動規範として定め、役職員への浸透・定着に取組んでおります。 ・役職員が安心して利用できる内部通報窓口「オリコ・ヘルプライン」を社内外に設置することにより、自浄作用を高めるとともに、不正発生の未然防止に取組んでおります。 |
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⑫人的(人材、人権等)リスク |
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リスク |
・少子高齢化により労働人口が減少するなか、仕事に対する価値観や生活環境が多様化しており、社員の働きがいややりがいに対する期待に応えられない場合、経営戦略を遂行するために必要な人材を確保することが難しくなり、競争力等が低下する可能性があります。 ・経営戦略を達成するためこれまで以上にDXをはじめとした専門人材を必要としており、事業環境変化に合った十分な人材確保・育成ができない場合、競争力等が低下し業務運営に支障を来たす可能性があります。 ・人権尊重に向けた取組が不十分とみなされ、ステークホルダーからの信頼を損なう可能性があります。 |
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対応策 |
・人事制度を改定し、外部環境の変化や働く社員一人ひとりの価値観・ライフスタイルの変化を踏まえた人財戦略に基づく重点事項の実施により社員エンゲージメントの最大化に取組んでおります。 ・経営基盤構築の一環として「多様性に富んだ人材集団づくり」に取組み、新たな経験付与プログラムや学習コンテンツの充実による社員の育成や、専門人材等の経験者採用による多様な人材の確保に取組んでおります。 ・人権尊重が重要な社会的責任であることを認識し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて定めた「人権基本方針」に従い、人権尊重に関する取組を推進しております。 |
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⑬繰延税金資産の回収可能性に関するリスク |
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リスク |
・繰延税金資産の回収可能性は将来課税所得に基づき判断しており、その見積りは将来の景気動向、想定以上の金利変動、個人破産申立の増加、その他の予期せぬ理由により影響を受ける可能性があります。 |
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対応策 |
・繰延税金資産は、将来減算一時差異等に対して計上しており、その回収可能性は将来3年間の事業計画等に一定の不確実性を織り込み見積もった将来課税所得に基づき判断しております。 |
上記以外に、次のような事項が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
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その他のリスク |
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・反社会的勢力排除、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策が不十分であった場合 ・割賦売掛金の流動化に伴い売却した優先受益権や保有する有形固定資産(土地・建物等)の時価が著しく下落した場合 ・加盟店、提携先や業務委託先の法令違反等による消費者トラブルが、当社グループの社会的責任に発展した場合 ・当社グループ及び当業界に関するネガティブな報道等によりステークホルダーからの信頼が損なわれた場合 |
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より「信用保証割賦売掛金及び信用保証買掛金に関する会計処理の変更」を行っており、これらを遡及適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載しております。
(1) 経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、ウィズコロナの下で新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類へ移行し、行動制限の緩和やインバウンド需要の回復などにより、経済活動及び社会活動の正常化が進みました。しかしながら、景気の先行きは、世界的な物価高や不安定な国際情勢、実質賃金の低迷により個人消費が下振れるリスク等、依然として不透明な状況が続いております。
このような状況のなか、中期経営計画2年目となる2024年3月期につきましても、「Transformation Now!“お客さま起点で価値を創造する新時代の金融サービスグループへ”」をスローガンに掲げ、4つの事業戦略(①重点市場の深耕と新規事業の探索②顧客ニーズを起点としたマーケットイン型営業の確立③異業種・先端企業との協働による新たなサービスの創出④プロセスイノベーションの深掘)に基づくアプローチを徹底してまいりました。
また、厳しい経営環境を踏まえ、リスクリターン、コストリターンに基づく事業ポートフォリオ運営を一段と徹底し、個品割賦事業における事業構造の抜本的な見直しを開始いたしました。
一方、当社が事業展開するタイ・フィリピン・インドネシアでは、中国経済の減速を背景に内需が低迷するなど、経済活動に大きな影響を受け、当社のオートローン事業における延滞債権が増加しました。これに伴う貸倒関係費の増加を主因として、2024年3月期の業績は下方修正を余儀なくされる結果となりました。
なお、事業基盤の拡充のため、2023年9月に、株式会社オリコオートリース、株式会社オリコビジネスリースを連結子会社化したことに加え、2024年3月にイオンフィナンシャルサービス株式会社との包括業務提携の一環として、イオンプロダクトファイナンス株式会社(現、株式会社オリコプロダクトファイナンス)を完全子会社化しました。個品割賦事業における競争優位性を高め、採算性の高い事業をめざしてまいります。
当連結会計年度の業績につきましては、以下のとおりであります。
営業収益につきましては、前連結会計年度の不動産売却収入が剥落しましたが、重点領域である決済・保証事業、海外事業等の増収により、2,290億円(前年差13億円増加)となりました。
営業費用につきましては、2,129億円(前年差83億円増加)となりました。
販売費及び一般管理費は、基幹システムの一部償却完了に伴い電算費が減少したものの、海外事業における延滞債権増加に伴う貸倒関係費の増加を主因に前年差58億円増加し、1,963億円となりました。
以上の結果、経常利益は161億円(前年差69億円減少)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては125億円(前年差64億円減少)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(参考)事業収益の事業別内訳
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(単位 億円:未満切捨て) |
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事業 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前年比(%) |
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決済・保証 |
198 |
220 |
11.1 |
|
海外 |
109 |
143 |
31.6 |
|
カード・融資 |
704 |
713 |
1.2 |
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(うち、カードショッピング) |
(523) |
(535) |
(2.3) |
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個品割賦 |
696 |
685 |
△1.5 |
|
銀行保証 |
321 |
335 |
4.3 |
|
その他 |
83 |
78 |
△6.7 |
|
計 |
2,113 |
2,175 |
3.0 |
■決済・保証事業
決済・保証事業につきまして、家賃決済保証は、単身世帯数の増加等により市場は拡大傾向にあるなか、電子申込による利便性向上等により、取扱高が前年差で増加しました。また、売掛金決済保証につきましても、既存主力加盟店の取扱高伸長に加え、新規提携社数も順調に拡大したことにより、取扱高は前年差で増加しました。なお、所有から利用の潮流が進むなか、高まるリース需要への対応を更に強化するため、当連結会計年度より株式会社オリコビジネスリースを連結子会社化しております。
この結果、決済・保証事業の事業収益は、220億円(前年比11.1%増加)となりました。
■海外事業
海外事業につきまして、海外子会社3社合計の取扱高は、タイ子会社の取扱高減少を主因に、前年差で減少しましたが、営業資産残高の増加等により、事業収益は増加しました。一方、急速な業容拡大に管理体制の強化が追い付かず、想定以上に延滞債権が増加し貸倒関係費が増加しました。回収体制の強化、与信基準の厳格化による債権良質化に取り組んでおり、ガバナンス体制、リスク管理をより一層強化し、早期立て直しを進めてまいります。
この結果、海外事業の事業収益は、143億円(前年比31.6%増加)となりました。
■カード・融資事業
カード・融資事業につきまして、カードショッピングの取扱高は、飲食や旅行等のサービス消費の需要回復や生活関連消費の取り込み等により、前年差で増加しました。融資残高は、新規取扱いが減少したこと等により、前年差で減少となりました。
この結果、カードショッピングの事業収益は535億円(前年比2.3%増加)、融資の事業収益は178億円(前年比1.8%減少)となり、カード・融資事業全体の事業収益といたしましては、713億円(前年比1.2%増加)となりました。
■個品割賦事業
個品割賦事業につきましては、オートローン及びショッピングクレジットの取扱高はいずれも減少しました。一方、事業基盤の拡充のため、株式会社オリコオートリース及び株式会社オリコプロダクトファイナンスを連結子会社化いたしました。個品割賦事業における競争優位性を高め、採算性の高い事業をめざしてまいります。
この結果、個品割賦事業の事業収益は、685億円(前年比1.5%減少)となりました。
■銀行保証事業
銀行保証事業につきましては、地域の課題に応じた金融商品・サービスの提供に取り組んでおり、取扱高の拡大を背景に保証残高は一昨年度末に反転増加しました。当連結会計年度においても取扱高の拡大は継続しており、保証残高は前期末から増加しました。
この結果、銀行保証事業の事業収益は、335億円(前年比4.3%増加)となりました。
(2) 財政状態
① 資産の部
資産の状況につきまして、資産合計は前連結会計年度末の2兆4,139億円から7,336億円増加し、3兆1,476億円となりました。これは主に、連結子会社化による、リース投資資産及び現金及び預金の増加によるものであります。
② 負債の部
負債の状況につきまして、負債合計は前連結会計年度末の2兆1,841億円から7,177億円増加し、2兆9,019億円となりました。これは主に、連結子会社化による、短期借入金等の有利子負債の増加によるものであります。
③ 純資産の部
純資産につきまして、前連結会計年度末の2,297億円から159億円増加し、2,456億円となりました。これは主に、退職給付に係る調整累計額及び利益剰余金が増加したことによるものであります。
(3) キャッシュ・フロー
(資本の財源及び資金の流動性に係る情報)
当社グループの主な事業内容は、決済・保証事業、海外事業、カード・融資事業、個品割賦事業、銀行保証事業であります。当連結会計年度においては、海外事業、個品割賦事業の取扱高が減少した一方で決済・保証事業、カード・融資事業、銀行保証事業は取扱高が増加しました。また、新たに連結化した子会社の影響もあり事業全体ではオフバランスの流動化、信用保証を含む営業資産残高が増加し資金需要も拡大しました。
主な運転資金需要としましては、加盟店への立替金や顧客への融資金、また一般管理費等の営業費用並びにソフトウエア等の固定資産への投資等及び一部子会社向けの事業運転資金等があります。
資金調達においてはマーケット環境の変化にも注視しつつ、手許自己資金のほか、借入金に加えて社債やコマーシャル・ペーパー等様々な調達手段を駆使しながら安定的かつ効率的に資金を確保しております。また、保有する営業資産を活用した債権流動化による資金調達も継続的に実施しております。なお、突発的な資金需要に備え、手許自己資金に加えてコミットメントライン契約や親密金融機関からの当座借越枠等で流動性リスクに備えております。当期末の有利子負債残高は、2兆3,582億円となりました。
当社の外部格付の状況としましては、本報告書提出時点において、株式会社格付投資情報センター(R&I)から長期債はA+、コマーシャル・ペーパーはa-1、株式会社日本格付研究所(JCR)から長期債はA+、コマーシャル・ペーパーはJ-1の格付を取得しております。
各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動による資金の減少は434億円(前年差756億円の支出増)となりました。
これは、主に割賦売掛金・リース投資資産等の売上債権残高が増加したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動による資金の減少は444億円(前年差241億円の支出増)となりました。
これは、主に株式会社オリコプロダクトファイナンスの完全子会社化により生じた子会社株式の取得支出、及び当社の成長に資する戦略的なシステム投資を行い、無形固定資産(ソフトウエア)を取得したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動による資金の増加は2,216億円(前年差3,023億円の収入増)となりました。
これは、主にコマーシャル・ペーパーの発行及び短期借入金による資金の調達が増加したこと等によるものであります。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ1,395億円増加し、4,793億円となりました。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
連結営業実績は次のとおりであります。
|
区分 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減 |
|
|
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
|
事業収益 |
決済・保証 |
19,813 |
22,003 |
2,189 |
|
海外 |
10,907 |
14,355 |
3,448 |
|
|
カード・融資 |
70,486 |
71,344 |
857 |
|
|
個品割賦 |
69,625 |
68,556 |
△1,068 |
|
|
銀行保証 |
32,141 |
33,514 |
1,373 |
|
|
その他 |
8,370 |
7,812 |
△557 |
|
|
小計 |
211,344 |
217,587 |
6,243 |
|
|
金融収益 |
2,758 |
1,679 |
△1,079 |
|
|
その他の営業収益 |
13,591 |
9,787 |
△3,803 |
|
|
合計 |
227,693 |
229,054 |
1,360 |
|
(注)1.各事業の収益には、割賦売掛金の流動化による収益が次のとおり含まれております。
|
|
(前連結会計年度) |
(当連結会計年度) |
||
|
カード・融資 |
27,582 |
百万円 |
27,342 |
百万円 |
|
個品割賦 |
44,056 |
|
44,086 |
|
|
その他 |
98 |
|
224 |
|
|
計 |
71,737 |
|
71,653 |
|
2.主要事業における取扱高
|
事業 |
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
対前年増減 |
|
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
|
|
決済・保証 |
1,593,295 |
1,713,227 |
119,932 |
|
海外 |
90,080 |
81,008 |
△9,071 |
|
カード・融資 |
3,048,857 |
3,224,955 |
176,097 |
|
個品割賦 |
1,192,238 |
1,068,646 |
△123,591 |
|
銀行保証 |
489,642 |
572,307 |
82,664 |
|
計 |
6,414,113 |
6,660,145 |
246,031 |
(連結営業資産残高)
|
事業 |
第63期 (2023年3月31日) |
第64期 (2024年3月31日) |
対前年増減 |
|||||
|
金額(百万円) |
構成比 (%) |
金額(百万円) |
構成比 (%) |
金額(百万円) |
増減率 (%) |
|||
|
決済・保証 |
131,755 |
3.6 |
128,043 |
3.4 |
△3,712 |
△2.8 |
||
|
海外 |
141,405 |
3.9 |
165,350 |
4.4 |
23,944 |
16.9 |
||
|
カード・融資 |
290,631 |
8.0 |
278,255 |
7.4 |
△12,376 |
△4.3 |
||
|
(債権を流動化した残高) |
(331,161) |
|
(348,701) |
|
(17,540) |
(5.3) |
||
|
(流動化を含む残高) |
(621,793) |
|
(626,957) |
|
(5,163) |
(0.8) |
||
|
|
クレジットカード |
178,421 |
4.9 |
174,046 |
4.6 |
△4,375 |
△2.5 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(302,004) |
|
(317,458) |
|
(15,453) |
(5.1) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(480,426) |
|
(491,504) |
|
(11,078) |
(2.3) |
|
|
|
|
ショッピング |
150,491 |
4.1 |
145,914 |
3.9 |
△4,577 |
△3.0 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(263,108) |
|
(280,856) |
|
(17,748) |
(6.7) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(413,599) |
|
(426,770) |
|
(13,170) |
(3.2) |
|
|
|
キャッシング |
27,929 |
0.8 |
28,131 |
0.7 |
202 |
0.7 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(38,896) |
|
(36,602) |
|
(△2,294) |
(△5.9) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(66,826) |
|
(64,734) |
|
(△2,092) |
(△3.1) |
|
|
一般個人ローン |
112,210 |
3.1 |
104,209 |
2.8 |
△8,001 |
△7.1 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(29,157) |
|
(31,243) |
|
(2,086) |
(7.2) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(141,367) |
|
(135,452) |
|
(△5,914) |
(△4.2) |
|
|
個品割賦 |
1,870,629 |
51.4 |
1,909,420 |
50.6 |
38,790 |
2.1 |
||
|
(債権を流動化した残高) |
(1,500,876) |
|
(2,069,873) |
|
(568,996) |
(37.9) |
||
|
(流動化を含む残高) |
(3,371,506) |
|
(3,979,294) |
|
(607,787) |
(18.0) |
||
|
|
オートローン |
1,178,395 |
32.4 |
1,164,089 |
30.9 |
△14,305 |
△1.2 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(932,723) |
|
(1,215,235) |
|
(282,512) |
(30.3) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(2,111,118) |
|
(2,379,325) |
|
(268,207) |
(12.7) |
|
|
|
ショッピング |
692,234 |
19.0 |
745,331 |
19.8 |
53,096 |
7.7 |
|
|
|
(債権を流動化した残高) |
(568,153) |
|
(854,637) |
|
(286,484) |
(50.4) |
|
|
|
(流動化を含む残高) |
(1,260,388) |
|
(1,599,968) |
|
(339,580) |
(26.9) |
|
|
銀行保証 |
1,153,637 |
31.7 |
1,252,374 |
33.2 |
98,736 |
8.6 |
||
|
その他(住宅ローン等) |
49,324 |
1.4 |
36,744 |
1.0 |
△12,579 |
△25.5 |
||
|
(債権を流動化した残高) |
(-) |
|
(2,344) |
|
(2,344) |
|
||
|
(流動化を含む残高) |
(49,324) |
|
(39,089) |
|
(△10,235) |
(△20.8) |
||
|
合計 |
3,637,385 |
100.0 |
3,770,189 |
100.0 |
132,803 |
3.7 |
||
|
(債権を流動化した残高) |
(1,832,038) |
|
(2,420,920) |
|
(588,881) |
(32.1) |
||
|
(流動化を含む残高) |
(5,469,423) |
|
(6,191,109) |
|
(721,685) |
(13.2) |
||
記載すべき事項はありません。
記載すべき事項はありません。