第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社は経営理念として、①地域社会に対する貢献、②企業の持続的成長を目指す、③人的資源の尊重を掲げております。

 

(2)経営環境及び経営方針・戦略等

◆当社グループを取り巻く経営環境

 エネルギー業界を取り巻く環境は急速に変化しています。2023年は記録的に高温となった1年であり、「地球沸騰の時代」として温暖化の進行を体感する年となりました。COP28では、パリ協定の目標達成に向けた「化石燃料からの脱却」という文言がCOP史上初めて成果文書に記載されるなど、カーボンニュートラル社会への転換を早急に進める必要性が再認識されました。また近年は、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの軍事衝突等に端を発した中東情勢の緊迫化など、サプライチェーンに大きな影響を与える地政学リスクが高まり、混乱の度合いが深まっています。自然災害の激甚化・頻発化も進み、深刻な影響をもたらしています。このような事業環境の変化において、エネルギー業界では、上流から下流までエネルギーを安定的に供給するという従来の在り方が終焉を迎えています。

 

◆エネルギー業界に対する当社の認識

 このように大きく変化する経営環境のもと、お客さまや地域社会がエネルギー会社に求める価値はエネルギーの最適利用に移り、必要とされるのは、①再生可能エネルギーや蓄電池(EV等)の利用を前提としながら災害時でもエネルギーを強靭に自律的に供給できるレジリエントな分散型のエネルギーシステムの構築)、そして②エネルギー業界のインフラや機能(営業・保安・システム・人材)などを共通化し、業界のオペレーション最適化に向けた、エネルギーインフラ・システムの共同利用(=プラットフォーム化)と考えております。

 

◆事業モデルの進化 "NICIGAS3.0" と新たな価値提供

  この課題に対し当社グループは、従来のガスや電気を仕入れて販売するという総合エネルギー事業を進化させ、①お客さまと②エネルギー業界のそれぞれに、新たな価値を提供し、成長させてまいります("NICIGAS3.0")。

①小売事業では、従来の事業モデルを進化させ、ハイブリッド給湯器や、太陽光、蓄電池、EV充電器などの分散型エネルギー源(DER)を利用し、お客さまがご自身でエネルギーをつくり、貯め、賢く使うという、ご家庭のエネルギー最適利用の仕組みをご提案し、エネルギーの安定調達や需給バランス、脱炭素という社会課題に対する新たな価値を提供します。また将来はAIを活用し、ご家庭のみならず地域コミュニティ単位で需給を最適化し、PtoP(地域社会のお客さまが主体となる個人対個人のサービス)の電気取引も可能となる『ニチガス版・スマートシティ』の構築を目指します。地域社会全体でのCO₂排出量の削減、災害に対応するレジリエンスを向上させ、お客さまにとって、より安心で快適な暮らしを実現します。(エネルギーソリューション)

②エネルギー業界に向けた取組みでは、DXを取り入れた高効率なオペレーションを他社と共同利用する環境を構築し、エナジー宇宙が主体となって、東京電力グループや東京エナジーアライアンス社とも連携しながら、事業インフラのシェアリングサービスを提供していきます(プラットフォーム事業)。インフラのシェアリングによる業界全体のオペレーション最適化を通じ、CO2削減や労働力不足といった社会課題に対する価値を提供します。


 

◆グループ再編

この事業モデルの進化を踏まえ、当社グループは、近未来の地域社会の姿を想定し、お客さま(=需要家)側の視点で新たなエネルギーの在り方を実現することを目的として、当社および完全子会社である都市ガス3社の計4社を統合したうえで、総合エネルギー小売会社『日本瓦斯株式会社(ニチガス)』、エネルギープラットフォーム会社『株式会社エナジー宇宙(読み:エナジーソラ)』およびソフトウェア開発・運用会社『株式会社雲の宇宙船』の3社に再編成し、『日本瓦斯工事株式会社』『日本瓦斯運輸整備株式会社』と合わせて5社体制としました。

 


 

◆3か年計画(連続の成長)

 また、グループ再編を通じ、これからの事業体制が定まったことを踏まえ、24年3月期から26年3月期を対象とする3ヶ年計画を発表しております。グループ全体の小売り営業を統合して強化し、顧客基盤拡大を前提にLPガスと電気事業を中心に粗利益を成長させてまいります。エネルギーソリューション事業、プラットフォーム事業の拡大にも注力する一方、DXで全体の販管費の伸びを抑制し、営業利益を伸ばしてまいります。2年後の26年3月期に営業利益220億円、純利益150億円およびROE22%を達成する計画です。EPSは24年3月期95.6円から、26年3月期には138.9円へ約1.5倍に引き上げます。


 

◆中長期シナリオ(非連続の成長)
 中長期の成長シナリオとして、非連続の成長すなわち、LPガス業界の集約化・効率化を加速させてまいります。LPガス事業者の皆さまが、小売事業・プラットフォーム事業といずれの形でも当社と合流することで、事業を一緒に変革させながら、近未来の地域社会へエネルギーを通じた貢献を実現し、持続的に成長する流れを作ります。 

 当社と合流することで、同業他社の株主・経営者は効率的なオペレーションによる経済価値を実現して頂けるとともに、社員の皆さまも、従来型の小売一辺倒から、DXを進化させた総合エネルギー、これからは、分散型エネルギー、と自分達の知識やスキルも上げながら、活躍できるフィールドが拡がります。お客さまには、より価格競争力あるガス+電気のセット、消費者の視点からの省エネ・最適利用の提案、今後はAIによるエネルギーマネジメント提案等も可能となり、地域社会で最も必要とされる変化・成長を起こすことができます。

 当社グループの前線に立つ社員たちは、①約30年前 LPガスからスタートしたエネルギー自由化、② 2017年から総合エネルギー事業化、そして③2022年からエネルギー最適利用、を最前線で変化を主導してまいりました。現在も、我々がエネルギー最適利用のトップランナーとして、ガス+電気のエネルギー業界構造そのものを、地域社会の中で変革しております。当社の目的に賛同する事業者と共に一緒に大きな流れを作る、大きな再編に向けた勢いは、確実に高まっていると感じております。
   当社には変革していく意思があり、同じ目的を持つ事業者と合流する覚悟があり、お客さまから信頼される前線の社員がいて、さらに大規模な再編・大型M&Aに備えたシステムやインフラもあります。与えられたチャンスの大きさを十分認識しながら、競争と共創というハードルを大きく乗り越え、さらなる飛躍をしてまいります。

 


 

◆資本政策

グループ再編を通じて今後の事業体制が定まったことを踏まえ、2024年3月期から2026年3月期に及ぶ3ヶ年の成長プランを実行に移しました。このプランでは、事業拡大による利益成長だけでなく、バランスシートの積極的なコントロールによって企業価値を向上させる取り組みも重視しています。具体的には、収益性の高い事業に多くのキャッシュを投じ、ROICを23/3期の9%から26/3期に13%に引き上げます。合わせて、資本の調達サイドにおいて最適資本構成を見直し、自己資本比率を23/3期の48%から26/3期に40%まで引き下げ、利益成長と合わせて26年3月期にROE22%を達成します。

 今年3月の日銀による大規模金融緩和政策の修正は、投資家の期待収益率である資本コストの上昇に繋がることも、強く意識しております。当社は従来から投資家との対話をはじめとした積極的なIR活動などにより資本コストの低減に努める一方で、ROICを高めながら、最適資本構成を見直すことでさらにROEを向上させ、資本コストとROEの差であるエクイティスプレッドを拡大させて、株主価値の向上を進めてまいります。

 


 


 

 

キャッシュフローの配分では、高収益資産への成長投資を重視しながら、株主さまに対して高いレベルで還元することの二つを両立させております。これは、積極的な投資を行いながらも不要な資産を売却、資産を圧縮して資産全体の規模を抑えているため、株主資本を積み増す必要がないからです。
 24年3月期から26年3月期までの3年間につきましても、利益からの総還元100%を計画しております。また、同期間には、自己資本比率を40%に最適化する還元も計画しており、実質的な総還元は100%超を想定、還元の方法については、株主の方々のご意向を反映し、配当の割合を高める方針です
 24年3月期は営業キャッシュフロー234億、借入による調達66億に対し、システムや設備投資に114億、配当に80億、自社株買いに51億(総還元性向133%)振り向けました。25年3月期につきましても、1株当たりの配当額を75円から92.5円に引き上げ3ヶ年計画に沿った還元を実行してまいります。

 


 


 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

気候変動、人的資本・多様性等のサステナビリティへの課題取組は、中長期の企業価値向上の前提と考えております。当社はこれらの取組みについて、有価証券報告書の他、統合報告書等で情報開示を行っております。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

<サステナビリティ課題と当社経営戦略>   

 当社は、時代に合ったエネルギーを提供しながら地域社会に貢献してまいります。消費者がエネルギーを作ってコミュニティで融通し合い、エネルギーを最適利用する世の中を見据え、お客さま側(需要側)からのアプローチでエネルギーの需給バランスという社会課題を解決します。この実現に向け、太陽光、蓄電池、ハイブリッド給湯器等を普及させ、各家庭や地域コミュニティに対して最適なエネルギー利用を提案する「エネルギーソリューション」へと事業を進化させてまいります。また、当社の高効率なLPガスの充填や配送等のインフラを他社とシェアリングする「プラットフォーム」へと事業を進化させ、環境や労働力不足等の社会課題に対処しながら、持続的に企業価値を成長させてまいります("NICIGAS3.0")。

 

<サステナビリティに関するガバナンス体制>
 企業の持続的成長には、利益に加え、環境、社会といった当社を取り囲む広範なステークホルダーとの共栄、その実現に向けたガバナンス体制が欠かせないと考えております。当社は取締役会の任意の諮問委員会として指名報酬・環境等委員会を設置し、持続性を重視して議論を行う体制を整えております。サステナビリティ各課題への対応方針は、同委員会で議論した上で取締役会にて決定し、経営会議や各部署が主体となって対応を進めております。

 


 

 <リスク管理体制> 

 当社は、リスクとは事業を運営することで直面する不確実性と認識しております。グループリスク管理委員会を設置して発生頻度と事業に与える影響の大きさの観点からリスクの重要性を把握し、マイナスの影響を与えるリスクには適切な対策を講じ、プラスの機会には機動的な意思決定を行うことで新たな収益源創出を図っております。中長期で事業や業績に影響を与え得る課題については、指名報酬・環境等委員会で議論を行った上で、取締役会にてマテリアリティとして項目を特定、全社対応方針を決定しております。2023年は4つのマテリアリティとして、「脱炭素社会への対応」、「人材の育成とダイバーシティ推進」、「地域社会の基盤づくり」、「ガバナンスの強化」を設定し、それぞれの課題についての対応を進めました。

 

(2) 重要なサステナビリティ項目

 

①気候変動に関する取組み方針  
 地球温暖化等の気候変動への対応は、中長期的な企業価値向上に影響を与える重要な課題と認識し、ラストワンマイルを担う企業という立場からCO₂削減の取組みを強化しております。お客さまにエネルギーの最適利用を提案するエネルギーソリューションへ事業を進化させるとともに、他社とのパートナーシップによる共創で業界全体のCO₂排出量を削減し、中長期的企業価値の向上と2050年までのCO₂ネットゼロを目指します。当社は気候変動に関する取組みを、TCFDの枠組みにもとづいてお伝えしており、2023年3月にTCFD提言への賛同を表明しました。「2023年統合報告書」では、シナリオ分析を充実させ、定量的なインパクトを新たに開示しました。

 

 <ガバナンス> 

 気候変動関連のリスクや機会の評価、目標設定、その進捗について、指名報酬・環境等委員会において客観的な視点で議論しております。その議論内容については、同委員会から取締役会に提案し、取締役会で議論しております。

 

 

<リスク管理>

 当社は、4℃シナリオ、および1.5℃・2℃シナリオにもとづき、気候変動に関するリスクや機会を特定しました。


 

<事業戦略(リスクと機会)>

 短期:今後3年程度、中期:2030年まで、長期:2050年までとして時間軸を分けて分類し、気候変動リスクとリスク発生時の財務インパクトを算出しております。事業機会には、当社は迅速な意思決定により取り組みます。


 

・リスク発生時の財務インパクト

①炭素税の導入等によるコストの増加(移行リスク):粗利5億円

炭素税等の規制強化でLPガス等の化石燃料調達コストが上昇する可能性があります。家庭用ガスと電気の利幅がそれぞれ1円/kg、0.1円/kWh減少する場合、合わせて粗利5億円程度の減少に繋がります。

 

②自然災害増による事業への影響(物理的リスク):粗利5億円

当社が仮に3日間、全世帯にガスが提供できなくなった場合、販売量は5~6千トン程度減少し(年間販売量をもとに計算)、粗利5億円程度の減少に繋がります。 

 

③気温上昇によるガス需要の減少(物理的リスク):粗利22~28億円/1℃上昇

これまでの傾向にもとづく分析では、1年を通じ平均気温が1℃上昇すると家庭用ガス販売量が約5%程度減少し、年間で粗利22~28億円程度の減少に繋がります。

 

<指標と目標>

 当社は、2030年までを目途としたCO₂削減目標として、下記の3つの目標を設定しております。 

 

 ◆目標1◆ LPガス業界のCO₂排出量(LPG託送による):約▲50%

当社の高効率なLPガスオペレーションは一般的な充填・配送・検針に比べ世帯あたりのCO₂排出量が半分です。業界でシェアリングすることで、業界全体のCO₂排出量を半減します。

 

 ◆目標2◆ 世帯あたりCO₂排出量:約▲50%

調達電源の非化石化や、ソリューション機器の普及によるお客さま先のエネルギー利用の最適化で、お客さまの世帯あたりCO₂排出量を削減します。

 

 ◆目標3◆ 削減貢献量:約145万t-CO₂(2030年時点)

調達電源の非化石化、高効率なLPガスのボンベ配送、ソリューション機器の普及によるお客さま先のエネルギー利用の削減施策等の実施により、CO₂排出量を削減します。

 

 

②人的資本、多様性に関する取り組み方針

 

 中長期的な企業価値向上の原動力は、内部・外部環境の変化に対応し、新たな取組みに挑戦し続ける一人ひとりの力です。当社の経営戦略である、エネルギーソリューション、プラットフォームの取組みの加速に向け、人的資本への投資を強化し、企業価値を最大化してまいります。

 

<当社が目指す姿/社員像>  

・当社が目指す姿    

 脱炭素社会や分散型社会への移行等を踏まえ、当社はガスや電気を仕入れて販売する事業モデルから、各家庭、地域コミュニティに対して最適なエネルギー利用を提案する「エネルギーソリューション」と、当社の高効率なLPガスインフラを他社とシェアリングする「プラットフォーム」へ事業を進化させます。環境や労働力不足等の社会課題に対処しながら、持続的に企業価値を成長させてまいります("NICIGAS3.0")。

 

・目指す社員像
 目指す姿の実現に必要なのは、性別、年齢、国籍、学歴等に関わらず、内部・外部環境の変化に対応し、新たな取組みに挑戦し続ける社員と考え、社員の育成を図っております。具体的には、エネルギー業界の変化を理解し、ガス、電気、次世代エネルギーを含むエネルギーを広く理解し、エネルギー最適利用の提案を行う「エネルギー小売人材」、事業課題とテクノロジー両方を理解し、法人向けの提案スキルを必要とする「プラットフォーム人材」、最先端の技術を理解しながらソリューションやプラットフォーム分野における新ビジネスを創出する「デジタル/DX人材」です。また、多様化する社会のニーズに対応し、より必要とされるサービスを提供するためには、様々なバックグラウンドや考えを持つ社員が必要です。

 

・現状の社員
 当社はLPガスや都市ガスを安心、安全に提供することに特化し、地域の皆さまの信頼獲得に努めながら成長してまいりました。そのため、社員はLPガスや都市ガスの専門知識を有し、お客さまのお困りごとへの対応に強みを有しております。また、多様化するお客さまの要望に柔軟に対応するため、地域を統括する支店が地域ごとの特性にもとづき戦略を立て、営業活動を行っております。加えて新規獲得が得意な人材や既存のお客さまとのコミュニケーションが得意な人材等、長所を活かした配置をする等、各営業社員がより能力を発揮できる人材配置を行い、お客さまとの信頼関係を深めております。一方、中長期の企業成長に欠かせない次世代エネルギー、エネルギーの最適利用等のご提案については知識、ノウハウともに発展途上です。また、地域社会の個人をお客さまとするBtoC営業に十分な経験を有する一方、ソリューションやプラットフォームを広めるための営業、デジタル/DXもスキルアップが必要な領域です。インフラ事業者として、地震等の災害対応を含む、深夜問わずの緊急対応、約90kgものLPガスボンベ運搬等体力を使う業務を背景に、社員の約8割は男性です。

 

 当社は目指す社員像と現状の社員とのギャップを、(1)人材育成 「人材ポートフォリオの組替」「リスキリング」「他社との連携」、(2)社内環境整備 「多様な働き方」「ダイバーシティーの推進」「健康経営/福利厚生」により埋めてまいります。

 

(1)人材育成方針

 

◆人材の配置(グループ組織再編による人材の活性化)
 当社は、2024年1月を効力発生日とし、当社及びグループ都市ガス3社を統合し、その上で「総合エネルギー小売会社」と「エネルギープラットフォーム会社」の2つに分ける組織再編を実施いたしました。

 


 

 

・グループの営業を集約し、LPガス、電力、都市ガスと総合エネルギーの提案が可能な人材へと育成してまいります。競争市場で培ったLPガス営業のマインドを都市ガス含めた全営業社員に浸透させ、グループ全体の営業マインドを高めております。これまで既存のお客さま対応に注力していた旧グループ都市ガス会社出身者が高い営業マインドでLPガスの新規顧客獲得で活躍する等、グループ再編効果が徐々に表れております。

 

・プラットフォーム営業では、プラットフォーム会社である「エナジー宇宙」に6名の営業専門部隊を新たに設立し、法人向け営業を本格化してまいります。旧グループ都市ガス会社が持つ、大口法人顧客の要望に対応する高い技術力等を共有し、より丁寧な提案でソリューション営業の開拓能力も高めてまいります。 

 

◆リスキリング

 これまでの営業力強化は、先輩社員が実際の営業実務を通じて教育を行うOJTをメインとしていました。今後はさらなる企業成長に向け、一人ひとりが環境の変化に対応して新たな取組みに挑戦することを目指し、各種研修を通じてリスキリングしてまいります。営業、保安、コーポレート、工事等、部門・組織横断でジョブローテーションを行い、お客さま向け提案力の向上や経営の視点の習得を図ってまいります。

 

・ハイブリッド給湯器や太陽光、蓄電池等の機器をお客さまにご提供する営業ノウハウや知識等の研修会の実施ほか、説明動画・資料の提供を通じて多数が参加できる仕組みを構築しております。弁護士が監修する研修を営業社員や営業委託先が定期受講し、営業品質向上に資する取組みを継続的に実施しております。

 

・IT/DX関連では東大メタバース工学部に選抜派遣や、デジタル人材との共創等の取組み、全社員にITパスポート資格取得に向けてサポートを行う等、社員のIT/DX関連の知識向上に努めております。DX人材育成に向けた2023年の新たな取組みとして、事業部門と技術部門の両方から人材を選抜してプロジェクトチームを始動し、第一段階として「ニチガス版Chat GPT」をリリースいたしました(2024年3月)。「ニチガス版Chat GPT」は、通常の機能に加え、社内固有の情報検索も可能なシステムで、社員の業務生産性向上の一助となっております。また、各自が興味関心のあるITテーマの研修に自主的に受講できる体制を整え、社員のリスキリングを図っております。

 

◆他社との連携
 当社が現状有していないスキルを外部から取り入れて価値を共創し、企業価値向上に繋げる方針です。目指す姿を明確にしながら、専門知識や技術を持つ外部人材との協業を構築してまいります。
 既に当社では、電力事業部長(現当社執行役員)を含め東京電力グループからの出向受入により、電力事業のノウハウを当社に取り入れ電力事業部が立ち上がりました。また、当社と東京電力EPとの折半出資で設立したTEAにおいては、都市ガス小売事業参入を志向する異業種企業の受け皿となるプラットフォーム事業(ガス調達・保安・業務システム等の受託)を展開しております。更に、ガスメーターをオンライン化し、自動検針等を実現したスペース蛍も、当社とIoTプラットフォーム企業のソラコムで共同開発したプロダクトです。

 

・パワーエックスやITベンチャー、東京電力グループに出向させる等、人材交流を通じて専門人材を育成しております。2023年4月から1年間、パワーエックスに選抜社員を派遣し、蓄電池等のソリューション機器設置や販売、エネルギーマネジメント(アービトラージ取引)等のノウハウ蓄積を図っております。2024年4月から当社に帰任後は、電力事業部でソリューション事業の本格化に向けて取り組んでおります。出向を通じて得た、蓄電池等の機器知識、電源調達や卸等に関する知識、法人向けの提案力を活かし、ニチガス版・スマートシティ構築に向けた事業推進に貢献しております。

 

 

(2)社内環境整備方針

 中長期的な企業価値向上には、全社員がそれぞれの特性を活かし、個々の人生の目的、人生のステージに合わせて、意欲を持って個人の能力を最大限発揮できるような環境の整備が必要と考えます。

 

◆多様な働き方
・働き方改革(場所や時間の制約を受けない柔軟な働き方)     

 場所や時間の制約を受けず、能力をフルに発揮できる職場環境の整備を目的とし、時差出勤・フレックスタイム制度、時間単位有給休暇、リモートワーク、育休取得、リフレッシュ休暇、誕生日休暇等、柔軟な働き方を可能とする各種制度を導入しております。

 

・ジョブ型雇用制度(高度人材向け)

 高度な専門業務を担う役職員を、成果に応じて報酬が決定されるジョブ型雇用制度で処遇しております。個人は専門性にもとづいた職務遂行の結果で評価されるため、本人のモチベーションアップに繋がるとともに、多様な専門性を持つ個人に活躍の場を提供することで、経営戦略の実現に繋げていきます。

 

・副業の推進

 2020年4月に副業制度を導入しました。多様な雇用形態や機会を提供することで組織に縛られることなく、成果をもたらす人材の活用を目指しております。副業により、より広い視野で当社の業務を行うことも可能となり、多様な考え方を取り入れることで当社のイノベーション創出にも繋がるものと期待しております。

 

◆ダイバーシティの推進
・女性の活躍

 新都市ガスや電気事業等、当社業務の拡大に伴い、営業、ガスの保安検査員、配送員等、従前よりも多様な場で女性が活躍しております。管理部門では、人事部長、経財部長(共に執行役員)をはじめ、女性の活躍が徐々に拡大しております(本社管理職における女性比率は21.4%)。2024年3月末現在、当社グループ全体の女性社員比率(嘱託・パート含)は20.4%、女性管理職比率は3.6%です。女性キャリア研修等を通じて自己啓発・スキル向上等の人材育成と、配置等を工夫し女性の活躍を促進しながら、能力のある女性の登用を進めております。

 

・中途採用人材の活躍

 当社の中途採用社員比率は56.5%、管理職における中途採用社員の比率は52.7%です(2024年3月末時点)。今後も比率にとらわれることなく、スキル等を持ち、当社の企業価値向上に向けて挑戦する意向のある方を積極的に採用していく方針です。

 

・世代の多様性

 当社は年齢に関わらず能力のある人材を登用しております。これまでに、90ヶ所ある営業所のトップを20代が務める、200名以上を指揮する支店長に37歳が抜擢される等の実績があります。また採用についても、年齢を問わず当社の企業価値向上に向けて挑戦する人材を幅広く採用しており、2024年4月の新入社員は全62名、そのうち高卒採用者は13名、配送や保安、営業の分野で活躍しております。シニア世代も、これまでの経験を活かして営業・保安・配送等の本人が得意とする分野で活躍しております。若手社員の教育にも携わり、風通しのよい職場環境づくりにも寄与しております。2021年からは当社の定年を60歳から65歳に延長しました。

 

・外国籍人材の活躍

 国籍に関わらず能力のある人材を採用し、登用しております。当社の外国籍の社員(派遣社員含)は、2024年3月末で25名です。LPガスの充填工場や提携先との出身地の言語を活かした交渉等で活躍が増えております 

 

◆健康経営の推進 

・労働安全衛生

 毎月、各事業所(支店・本社・グループ会社等15事業所)単位で、安全衛生委員会を開催し、職場の巡視点検、残業時間、休暇取得、労災、車両事故、健康診断受診等、社員の安全衛生に係る状況を把握しております。各分科会では、産業医も参加し業務効率化や安全確保に向けた取組み等を共有し、より働きやすい環境の整備に向け、議論しております。 

 

 

・健康管理

 毎年、全社員とパート社員を対象とした健康診断、管理職以上を対象とした脳ドックの受診を必須としており、それぞれの受診率は100%です。健康診断結果はデジタル化し、スマホから一目で過去の推移の把握が可能、個人の健康管理に繋げております。また当社では、健康診断二次検査受診率50%を目標とし、健康診断結果で二次検査の指示が出た社員にメール通知を行い、二次検査受診を推進しております(2024年3月期の二次検査受診率は32.6%(ニチガスのみ))。2023年からは二次検査の未受診者を管理し、受診の促進を図っております。そのほか、有所見者には産業医が個別に指導し、保健師が検診後の健康状態をモニタリングしております。さらに、社員やその家族が、臨床心理士等の専門家に電話・Web・対面で悩みを相談できる「心の健康ホットライン」や「first call」を導入しております。

 

・グループヘルプライン(内部通報制度)の設置

 当社は、法令等違反行為および当社の信用や名誉棄損のおそれのある行為等の未然防止、速やかな認識と是正を目的に、グループ全社員向け内部通報制度として、グループ・ヘルプラインを設置しております。専用電話回線の設置に加え、時間外や土日祝日はヘルプラインフォームで通報を受け付けております。2024年3月期の相談件数は6件、コンプライアンス規定から逸脱する重大な事案はありませんでした。

 

◆福利厚生

・出生祝金、扶養手当 

 当社は社員が働きながら安心して子育てができるよう制度を充実させております。社員に大切な家族(子供)が増えた際、第1子に1万円、第2子に10万円、第3子に100万円、第4子以降は200万円を支給しております。2024年3月期の第1子、第2子の出生祝金の支給人数はそれぞれ、32名、25名でした。さらに、第3子出生祝金の支給人数は13名、第4子出生祝金の支給人数は1名でした。また、本一時金とは別に、扶養する子が18歳になるまで毎月扶養手当を支給しております。

 

(3)指標及び目標

当社グループでは、上記(1)人材育成方針及び(2)社内環境整備方針について、次の指標を用いております。

 

指標

目標

実績(2024年3月期)

管理職に占める女性割合

2026年3月まで10.0

3.6

女性社員比率

2026年3月まで23.0

20.4

男性の育休取得率

2026年3月まで50.0

50.8

 

 

 ダイバーシティの推進では、指名報酬・環境等委員会にて、ダイバーシティの定量目標や具体的施策を議論し、取締役会で方針を決定しております。2021年12月には女性、中途採用人材、外国籍の社員の活躍に向け定量的な目標、および行動計画を策定しました。目標や行動計画の実施状況は取締役会がモニタリングしてまいります。また、男性の育休取得率についても重要な指標として定めております。これは、当社が推進する女性活躍には、男性による育児と家事への積極的な参加が欠かせないと考えるためです。男性の育休取得率は、当社の中長期的な成長を表す重要な指標であることのみならず、我が国が持続的発展を遂げるために、社会の構成員である当社が積極的に負担する義務と考えております。2022年10月に同比率について30%を目標値に定めましたが、男性社員の育休が取得しやすい制度導入・風土醸成により2023年3月期の実績は36.1%、2024年3月期の実績は50.8%と大幅に向上しております。
 当社が目指す人的資本を整えていく上での適切な指標・目標につきましては指名報酬・環境等委員会(取締役会の諮問委員会)で議論を行った上で、取締役会にて、議論・決定してまいります。 

 

3 【事業等のリスク】

(1)リスク管理体制 

 当社は、リスクとは事業を運営することで直面する不確実性と認識しております。グループリスク管理委員会を設置して発生頻度と事業に与える影響の大きさの観点からリスクの重要性を把握し、マイナスの影響を与えるリスクには適切な対策を講じ、プラスの機会には機動的な意思決定を行うことで収益の創出を図っております。中長期的に事業や業績に影響を与え得る課題については、指名報酬・環境等委員会(取締役会の諮問委員会)でトピックを絞って議論し、その上で取締役会にてマテリアリティとして項目を特定、全社対応方針を決定しております。

 

<ガバナンス体制>

 


 

(2)主要なリスク

①原料等の安定調達

 当社はラストワンマイルでお客さまにエネルギーをお届けする事業に特化し、輸入等の上流事業は行っておらず、他社からガスや電源等のエネルギーを調達する必要があります。原料調達において、中東等での地政学リスクの高まり、円安加速による原料価格の上昇等、安定的な原料調達に対する懸念が高まっております。これに対して当社は、エネルギー毎にパートナーと調達関係を構築し、各エネルギーを安定的に調達しております。

 

■LPガス:LPガスの調達は輸入を前提としており、需給や原産国の政情、地政学リスク等に起因する原料価格や為替レートの変動の影響を受けます。これに対して、当社は複数の取引先から調達を行ってリスクを分散し、安定的に調達しております。また原料価格と為替の変動に対し、原則として販売価格の変更で対応します。これにより、原料と為替相場の変動は中長期的に業績に大きな影響を与えません。

■都市ガス(LNG):当社は広範なアライアンス関係にもとづき、東京電力グループから都市ガスの原料を安定的に調達しております(一部除く)。原料費の変動は、原料費調整制度により、最大5ヶ月後にはガス料金に反映されます(会計年度を超えて料金に反映される場合があるため年度によっては原料費の変動が利益に影響する場合があります。また、季節により販売量に変動があるため、売上や利益には一定のブレが生じます。所謂、スライドタイムラグ)。

■電源:当社は、電源についても、その全量を東京電力グループから安定調達しております。電源の仕入れ価格は、主に電源を構成する原料価格などにより変動します。この仕入れ価格の変動は、燃料費等調整制度により、毎月の小売料金に反映しております。

 

②エネルギー利用の変化

 気候変動、原料調達難等による原料価格の高騰、お客さまの省エネ・節エネ意識の高まりなどにより、お客さまのエネルギー利用が変化する可能性があります。この状況に対し当社は、今後も徐々にお客さま先のエネルギー消費量が減少することを前提に、お客さまが主体的にエネルギー利用の在り方を決定できるよう、需要側(消費者)からのアプローチで対応します。電気とガスのセットを前提に、お客さまのエネルギーの最適利用を実現するエネルギーソリューション事業を推進し、いち早く新たなエネルギー価値を提供します。太陽光発電、蓄電池、ハイブリッド給湯器等の分散型エネルギーを普及させ、お客さまご自身でエネルギーを作り、貯め、賢く使うというご家庭でのエネルギーの最適利用を提案、さらに地域コミュニティ全体のエネルギーの最適利用を提案します。

 

③大規模災害

 大規模地震や豪雨災害等の自然災害が激甚化しており、大規模災害が発生した場合、エネルギーの安定供給に支障をきたす恐れがあります。これに対して当社は、下記の各観点で対策を講じております。

 

■災害への事前対策

 LPガスではマイコンメーター(※1)の100%設置、感震遮断弁設置のほか、張力式放出防止ホース(グラピタ)(※2)を標準仕様としております。都市ガスでもマイコンメーターを100%設置しております。LPガス、自社のガス管で供給する都市ガスの全ガスメーターにスマートメーター「スペース蛍」を設置、ガス漏れ等の異常を常時監視することで、ガス漏洩等の即時対応を可能としております。また経年劣化を起こす旧式のガス管の99%について、耐震性に優れたポリエチレン製のガス管に入れ替えるなど、災害時への事前対策を進めております。 

 またハザードマップにもとづき、洪水浸水想定が1m以上の地域におけるLPガスのお客さま先を対象に、ボンベの転倒や流出防止としてボンベを固定するベルトの二重掛けを行っております。平時より災害マニュアルを作成し、災害発生時に備えた緊急対応要員、資機材整備等、迅速かつ安全な対応をなし得る体制を整えております。災害時用に数日分の食料を常に備蓄しております。防災訓練ではGoogle Meetで映像を映しながら有事を見据えた指示出し訓練を行っております。社員が現場に急行できるよう近隣の宿泊施設と事前協議を行い、有事の際の宿泊施設の確保にも努めております。

※1 地震発生等の異常発生時に自動でガスを止める機能を持つガスメーターのこと
※2 ボンベが転倒した際等に外部へのガス放出を防止する高圧ホースのこと

■災害発生時

 大規模地震発生時はガスを自動停止、ガス供給設備の安全を確認し、異常が確認された場合は速やかに対応します。震度5弱以上では社員が出動し、建物やガス設備等の被害状況、ガス漏洩状況等を自主点検をしております。災害時にはコールセンター要員や優先電話等を確保し、お客さまからの連絡に対応します。スマホや衛星電話等で被害情報を迅速に共有し、集めた情報にもとづき災害対策本部からの人員配置指示のもと災害時緊急対応を行っております。迅速な復旧対応への準備として、工事会社やメーカー等の協力会社と復旧対応の協力体制も確立。昨今の豪雨被害増加に伴い、ドローンによる上空からの設備点検の仕組みも導入しております。有事のエネルギー源の確保では主要拠点にLPガスで稼働する自家発電機を設置、太陽光発電設置営業所ではEVバイク用交換式バッテリーを緊急時の電源とし、地域の皆さまにご利用いただける体制を整備しております。

■分散型エネルギーの普及

 LPガス事業では、ご家庭ごとに供給設備を設けてガスを供給しております。そのため災害発生時は、個別に点検を行い、異常がないことが確認でき次第、早期復旧が可能です。病院や学校等、災害発生時に速やかな復旧が求められる重要施設は、あらかじめ把握し、優先的に供給再開します。通常、各お客さま宅にはボンベが2本設置されており、ガスが備蓄されている状態です。そのため、万が一の場合もガスボンベを備蓄エネルギーとして使用いただけます。中長期では太陽光や蓄電池、EV等の分散型電源を普及して広く分散型エネルギーネットワークを構築し、地域社会のエネルギーの最適利用を実現してまいります。

 

④レピュテーションリスク

 当社に関する誹謗中傷等の拡散により、ステークホルダーの皆さまからの信頼を低下させる可能性があります。問題が生じた際にはグループリスク管理委員会で対応方針を協議し、情報を開示するとともに、再発防止策を講じます。コンプライアンス遵守については、グループ役職員に教育を行い、その重要性を認識して業務にあたるよう行動規範を制定しております。コンプライアンス意識調査(年に1度実施)とその遵守状況は適宜開示し、内部監査の対象としております。
 営業領域では、全ての外部委託先に対して、弁護士が監修しながらも座学ではない実践的な研修を行っております。テストへの合格が必須であり、2023年からは、〇×の2択から複数選択肢の中から正解を選択する難易度の高い形式に変更しました。コンプライアンスを遵守しない委託先とは契約を解除し厳格に対応しております。加えて、訪問販売や電話を通じてお申込みいただいた全てのお客さまに、その意思と内容に間違いがないか確認するため契約後の再確認電話を実施しております。また、グループリスク管理委員会のもとで、本部長が直轄する営業品質会議を開催し、お客さまからのお問合せ対応の評価や再発防止に向けた営業品質改善指導等を行っております。

 

⑤人材の確保・育成

 少子高齢化を背景に労働力不足が深刻化しております。LPガス事業の根幹である物流における働き方改革(2024年問題)、物価上昇等に伴う他社の大幅な賃上げ実施等は、当社の人員確保に影響する可能性があります。これに対して当社は、ITの導入で人が行う業務の生産性を向上させ、省力化を図っております。例えば、通常は各家庭に訪問して実施する保安業務について、遠隔から実施できる仕組みを構築することで、一人あたりの保安実施数を増加させております。また待遇面では、当社が魅力的な勤務先となるよう、一人あたり給与を上げております。2024年は、平均5%の賃上げを実施いたしました。また、多様な働き方や人事制度を設け、様々なバックグラウンドを持つ個人が、意欲を持って個人の能力を最大限発揮できる環境の整備に注力しております。

 

⑥情報システムおよび情報セキュリティ

 当社は事業活動を通じてお客さまの個人情報をお預かりしており、適切な管理は重要な責務です。万が一情報漏洩が発生した場合は、信用の失墜や損害賠償責任、業績に影響が生じる可能性があります。これに対して当社は、部門横断で情報セキュリティ対策チームを設置し、個人情報保護方針、情報セキュリティ基本方針及び社内規程を制定の上、情報漏洩やサイバー攻撃などに対するセキュリティ対策を講じております。役職員、業務委託先に対して定期的な情報セキュリティ教育を実施するほか、営業現場のオペレーションにデジタルを導入してペーパーレス化を進め、文書の紛失等の情報漏洩のリスクを軽減しております。
 情報漏洩やサイバー攻撃などによるインシデント(重大事故の一歩手前の状況)の未然防止に向けた情報セキュリティへの技術的な対策としては、下記の各仕組みを導入しております。

 

1)セキュリティ対策ソフト:コンピューターウイルスの検知・除去等、端末ごとのウイルス対策

2)統合型エンドポイント・マネジメント:ブラウザへのアクセスログを把握し、不正なインシデントを検出

3)モバイルデバイス管理サービス・システム:スマホにダウンロードできるアプリの制限、アプリ単位のVPN設定による不要なトラフィックの閉域網アクセス制限

4)ユーザー認証とアクセス制御:システム毎にIDとパスワードを設定、業務システムへのアクセスを制限

5)サイバー対策・リスク管理システム:未許可の端末からネットワークに接続があった際のアラート機能やネットワークの脆弱性の洗い出し

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の分析

24年3月期の業績は以下の通りです。                        (単位:百万円)

 

23年3月期

24年3月期

前期差

前期比

売上高

207,942

194,364

△13,577

△6.5%

売上総利益

69,733

73,617

3,884

5.6%

営業利益

15,127

17,442

2,314

15.3%

経常利益

15,314

17,604

2,289

15.0%

親会社株主に帰属する

当期純利益

10,568

10,825

257

2.4%

ROE

14.4%

14.7%

0.3

ROIC

9.0%

11.2%

2.2

 

 
 24年3月期は、記録的な高気温の年となり、ガスや電気の販売量は低調となりましたが、原料価格の高騰が一服し、同価格が低水準で推移したことにより利幅が拡大、売上総利益を前期比+38億円の736億円と大きく伸長させました。人件費やIT費用等を積み増す一方、DXによる配送効率化等により経費の伸びを抑制、営業利益は前期比+23億円の174億円、経常利益は前期比+22億円の176億円と大幅な増益となりました。1月に実施したグループ内組織再編に関連し、特別損失を24億円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は+2億円の108億円と伸び幅は営業利益と比較して小幅なものとなりましたが、前期に引き続き過去最高益を更新する決算となりました。
 24年3月期の計画に対しては、営業利益が計画188億に対し実績174億、純利益が計画110億に対し実績108億と届きませんでした。これは想定していた気温以上に気温が高い水準で推移し、販売量が伸びなかったこと、再編準備に関する経費等が膨らんだことによるものです。

 ROIC向上に努めながら、「不要な株主資本はお預かりしない」資本政策を徹底することで、ROICは11%と前年より2%伸長させ、ROEは15%と24年3月期の計画を達成しております。

 

<セグメント別の状況>

◇ LPガス事業 (附帯事業としてLP機器・工事の他、プラットフォーム事業等を含む)  

LPガス事業による売上総利益が456億45百万円(前年同期比29億77百万円増)、附帯事業による同利益が38億8百万円(同18百万円増)となりました。

 LPガス事業は、ガス販売量が高気温の影響により家庭用・業務用とも前期を下回ったものの、LPG原料価格が23年3月以降大きく低下、24年4月以降は通期で原料価格が想定内の価格で推移したことにより利幅が拡大し、売上総利益を伸長させることができました。また、お客さまと地域社会にエネルギーの最適利用サービス(エネルギー・ソリューション)を提供すべく、ガス・電気のセット販売を推進するとともに、ハイブリッド給湯器およびDER機器(太陽光発電、蓄電池、V2H)の提案に注力いたしました。結果、ハイブリッド給湯器は前年の1.75倍、その他DER機器は5倍以上の台数を販売しております。

 営業面では、行政処分による3か月間の訪問営業停止期間中は、既存のお客さまとの信頼回復と関係強化に注力し、解約減に努めました。グループ再編後は、グループ全体の営業を統合することにより、日本瓦斯及び旧・グループ都市ガスの営業の強みを融合させ、お客さま数を伸長させております。長期契約が見込まれるファミリー層を中心にお客さま数を前期末から2万4千件積み重ね、99万7千件となりました。

 

 

23年3月期

24年3月期

前期差

前期比

売上総利益

(百万円)

LPガス

42,668

45,645

2,977

7.0%

機器,工事,

プラットフォーム等

3,790

3,808

18

0.5%

ガス販売量

(千トン)※

家庭用

186

179

△6

△3.5%

業務用

121

114

△7

△5.9%

お客さま件数(千件)

973

997

24

2.5%

 

 ※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。

 

 

◇ 電気事業 

電気事業セグメントの売上総利益は、36億87百万円(前年同期比7億28百万円増)となりました。

この利益の増加は、電気契約数の増加に加え、7月以降の料金改定による利幅拡大によるものです。

 営業面では、訪問営業停止や、グループ再編に伴い営業活動を控えた影響もありましたが、競合である新電力会社の料金やサービス内容に係る社内研修を実施するなど、営業強化の取組みを進め、お客さま数は前期末より2万5千件増加の34万5千件、電気のセット率は前期末20%から当期末に22%に上昇しました。

 今後、再エネ賦課金の値上げや激変緩和措置の終了に伴う全国的な電気料金の上昇が予定されており、お客さまの電気料金への意識が強まると見込まれます。当社はこの流れを追い風に、高使用量世帯に加え、二人暮らし世帯などの中使用量世帯に向けて、お客さまにメリットのあるメニューの提案や電力単体での販売等を実施し、新規獲得数を増やしてゆく計画です。

 

 

23年3月期

24年3月期

前期差

前期比

売上総利益

(百万円)

電気

2,959

3,687

728

24.6%

電気販売量

(GWh)※

家庭用

1,297

1,427

130

10.0%

お客さま件数(千件)

320

345

25

7.9%

 

 ※ 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。

 

◇ 都市ガス事業 (附帯事業として都市ガス機器・工事等を含む) 

 都市ガス事業セグメントの売上総利益は、都市ガス事業による売上総利益が194億64百万円(前年同期比2億13百万円増)、附帯事業による同利益が10億11百万円(同51百万円減)となりました。

 都市ガス事業は、LPガス事業同様、高気温を背景に家庭用のガス販売量が減少いたしましたが、都市ガス原料の下降基調を要因としたスライドタイムラグ*のプラス影響が上回り、売上総利益を伸長させることができました。グループ内組織再編により、お客さまの契約は旧・グループ都市ガスから日本瓦斯へ承継されました。既存のお客さまへ、電気セットや機器販売等の提案を通じ、より一層の関係強化に努めてまいります。
  *スライドタイムラグとは、都市ガスの原料費調整制度によるもので、原料価格の変動が先に売上原価、後に遅れて売価(料金)に反映されることから発生するタイムラグのことで、当期間は原料価格 が下降基調であったことから、プラスの影響を受けております。
 

 

23年3月期

24年3月期

前期差

前期比

売上総利益

  (百万円)

ガス

19,251

19,464

213

1.1%

機器,工事等

1,062

1,011

△51

△4.8%

ガス販売量

(千トン)

家庭用 ※1

167

150

△17

△10.2%

業務用 ※1

210

215

5

2.4%

お客さま件数(千件)※2

640

601

△39

△6.1%

 

※1 収益認識基準適用により、検針基準の販売量に期末日までの販売量を調整して算出しております。

※2 お客さま件数は、小売件数(供給している件数)を記載しております。

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(基本方針)

当社は、株主資本の収益率「ROE」を財務上の最重要KPIと設定し、株主価値の増大に向け、ROEを2026年3月期には22%に向上させていく方針です。ROEを向上させる方策として、資産の収益性を高めるべく、投下資本利益率(ROIC)をKPIとして設定し、その向上に努めております。収益性の高い資産(LPガスとIT)に集中して資本を投下しながら、一方で低収益資産の売却等をしてバランスシートの中身を入れ替えることにより、必要以上に総資産規模を膨らますことなく資産の収益力を高めています。また、資本の調達サイドでは、有利子負債の調達能力を検証し、最適な自己資本比率を45~50%から見直しを実施し、2026年3月期には40%まで引き下げることを計画しております。最適な自己資本比率に向けて不要な株主資本は持たず、適切に借入を活用することで、ROICの向上をダイレクトにROEにつなげてまいります。

 

(当連結会計年度の財政状態の分析)

・当連結会計年度末の資産の部は、1,592億19百万円と前期末より43億35百万円増(2.8%増)となりました。

資産が増加いたしましたのは、新組織体制の準備として手許現金に余裕をもたせ、現預金を59億41百万円増加させたことによるものです。

・同期末の負債の部は、864億95百万円と前期末から59億10百万円増加(7.3%増)、純資産の部は、727億23百万円と前期末から15億75百万円(2.1%減)減少しております。負債の部が増加いたしましたのは、借入を66億10百万円増やしたことによるものです。また、純資産の部が減少いたしましたのは、当期純利益108億25百万円に対し、配当80億36百万円、自己株式の取得51億6百万円の株主還元を実行したことによるものです。

 デットエクイティレシオは0.65倍、株主資本比率は45.7%と最適な資本構成に向け、借入比率を高め、調達コスト(WACC)を意識した資本調達を行なっております。

                                        (単位:百万円)

 

 

23年3月期末

24年3月期末

増減

流動資産

52,797

56,646

3,848

 

内 現預金

13,049

18,990

5,941

 営業債権

28,200

28,990

790

  在庫

5,554

4,594

△959

固定資産

102,085

102,572

487

有利子負債

40,582

47,192

6,610

自己資本
(自己資本比率)

74,299

(48.0%)

72,723

(45.7%)

△1,575

総資産

154,883

159,219

4,335

 

 

(当連結会計年度のキャッシュフローの分析)

 当期末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ58億50百万円増加し、187億13百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュフロー)

営業活動によるキャッシュフローは、234億40百万円の収入(前年同期比38億45百万円増加)となりました。

増加した主な要因は、低い原料価格が売上債権に反映され、営業債権が減少したことにより、所要運転資本が減少したためです。

(投資活動によるキャッシュフロー)

投資活動によるキャッシュフローは、91億90百万円の支出(前年同期比16億09百万円増加)となりました。

増加の要因は、LPガスの物流を改善させるために甲府工場の跡地に甲府デポステーションを建設したことや、導管の入替や延長投資が増加したことによるものです。

(財務活動によるキャッシュフロー)

財務活動によるキャッシュフローは、87億11百万円の支出(前年同期比73億58百万円減少)となりました。

営業キャッシュフローから投資キャッシュフローを差し引いたフリーキャッシュフローは142億49百万円の収入(同22億36百万円増加)、配当と自己株式の取得により株主還元131億29百万円の支出をする一方、必要手許資金のために借入を増加させております。

 

                                       (単位:百万円)

 

 

23年3月期

24年3月期

前期差

営業キャッシュフロー

19,594

23,440

3,845

投資キャッシュフロー

△7,581

△9,190

△1,609

フリーキャッシュフロー

12,013

14,249

2,236

財務キャッシュフロー

△16,070

△8,711

7,358

現金及び現金同等物の増減

△4,049

5,545

9,594

現金及び現金同等物の期末残高

12,863

18,713

5,850

 

 

(3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

社は、2023年10月31日開催の取締役会において、2024年1月1日を効力発生日として、システム開発・保守・運用等のシステム事業を完全子会社である株式会社雲の宇宙船へ承継する吸収分割契約を締結しております

 

1. 会社分割の目的

 最先端技術を持つIT企業との共創を促進し、ITに関する高度なノウハウを集約し蓄積するため。

 

2.  会社分割の要旨

① 会社分割の日程

吸収分割契約の承認 取締役会決議日(分割会社) 2023年10月31日

吸収分割契約の承認 臨時株主総会(承継会社) 2023年10月31日

吸収分割契約締結日 2023年10月31日

吸収分割効力発生日 2024年1月1日

※本会社分割は当社(分割会社)において、会社法784条第2項に規定する簡易分割に該当するため、

 株主総会の承認決議は行いません。

② 会社分割の方式

当社を分割会社とし、雲の宇宙船を承継会社とする吸収分割です。

 ③ 会社分割にかかる割当ての内容

本会社分割に際し、承継会社である雲の宇宙船は普通株式20千株を発行し、それらをすべて当社に対して割当て交付します。

 ④ 分割に伴う新株予約権及び新株予約権付社債に関する取扱い

該当事項はありません。

 ⑤ 分割に伴う資本金の増減

本会社分割に伴う当社の資本金の増減はありません。

 ⑥ 承継会社が承継する権利義務

承継する事業に関する資産、負債及び契約上の地位等の権利義務のうち、吸収分割契約において定めるものを承継します。

⑦ 債務履行の見込み

本会社分割後において承継会社が負担すべき債務の履行に問題はないと判断しています。

 

3.分割する事業部門の概要

① 分割する部門の事業内容

システム事業

② 分割する部門の経営成績(2023年3月期実績)

売上高 732百万円

 (注)外部売上高を記載しております。

③ 分割する資産、負債の項目及び金額

流動資産     ― 百万円、 流動負債   250 百万円

固定資産       6,479百万円、 固定負債    ― 百万円

 

4.本会社分割後の状況

本会社分割による当社及び吸収分割承継会社の商号、所在地、代表者、事業内容(本会社分割の対象となっている事業を除く)、資本金及び決算期に変更はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。