文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社は1968年の創立の際に、会社はどのような思想を持ち、実践していくかという、経営に対する姿勢、理念を「創立の根本精神及経営理念」に掲げました。
その中で創立の目的は、「同一の思想を持ち、信頼し合う事のできる人間が集まって、何かの仕事を通して、(極論すれば、それがどのような仕事、業種であってもよい) 経済的無から、一つの理想体(理想企業体)を造り上げる事への挑戦」と謳っております。
また、「社会に対し社会性を十分発揮してその存在価値を高め、社員個々の幸福を勝ち取り、企業の維持、発展をならしめること」を基本理念とし、そして、その結果得られた利益を株主、社員、社会に公平に分配し、また、一部を社内留保して、会社の事業内容を充実させ、発展させることが、最大の社会性を意味すると考えております。
この基本理念を実現していくために、当社では創立以来毎期、経営計画等を株主、金融機関、社員に公表するなど、情報の開示に努めてまいりました。このようにオープンな経営姿勢に対する社員個々の意識の高まりが、互いの信頼感を強くし、個々の能力を十分に発揮させ、計画達成という一つの目的に邁進することができたと確信しております。
このように、「道は一つ、共に進もう」というスローガンに沿った経営こそが当社の躍進の原動力であり、今後も成長の糧として継続してまいります。
当社グループは、経営ビジョンを実現するため中期経営計画を策定しております。前中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の経営目標と実績は、次のとおりであります。
当社は、2024年10月1日付でテクノクオーツ株式会社と共同持株会社設立による経営統合を行う予定であります。新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)の経営目標は2024年9月を目途に開示する予定であります。
前中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の経営目標と実績 (連結)
なお、2021年5月27日に発表した中期経営計画の経営目標について修正しております。詳細は、当社ウェブサイトで開示しております、2022年5月10日に発表した「中期経営計画の見直しに関するお知らせ」をご確認ください。
今後の経済見通しについては、日本国内での新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、インバウンドの消費回復等による経済活動の正常化が進むことが期待されております。しかし、ウクライナ情勢の長期化、中東地域の地政学リスク等を受けた世界経済の見通しの悪化、エネルギー価格の高騰や円安進行による物価高などにより、引き続き先行き不透明な状況が続くものと思われます。
このような中で、当社と子会社のテクノクオーツ株式会社は、2024年5月10日付けで共同持株会社設立(共同株式移転)に関する経営統合契約書を締結しております。
本経営統合により、創業来、「社会に対し社会性を充分発揮してその存在価値を高め、社員個々の幸福を勝ち取り、企業の維持、発展をならしめること」を共通の基本理念として活動してきた両社が、グループ全体として持続的な成長を図り、企業価値の向上及び各利害関係者へのより一層の貢献を果たすことができると考えております。
(分析機器事業)
分析機器事業におきましては、引き続き「クロマトグラフィー事業の持続的拡大」を推進します。技術開発の推進や製造コストの削減、新規事業の調査といった活動も継続いたします。今後はこれに加えて、国内市場では、他社製品も取り扱える商社機能も生かした「トータルソリューション」を推進することで、さらなるプレゼンス向上を目指します。海外においても、販売可能な自社製品の種類を増やすことで売上拡大を狙います。
当事業が今後とも取り組むべき中長期的な成長戦略と課題は以下のとおりであります。
主力製品の強化方針を継続いたします。製造技術開発の推進により、品質の安定化を図るとともに効率化とコスト削減を実現します。
持続的成長のために、M&A、業務提携等を視野に入れ事業拡大を目指します。また、外部との共同研究や、
新規事業の創設を検討してまいります。
当社のフィールドエンジニアはこれまでも他社装置を取り扱ってきましたが、その対応可能な範囲を広げることで、顧客により信頼してもらえる企業を目指します。
販売機会を増やすため、ECサイトを活用します。その基盤となるデータベースを充実させます。
これまで国内中心で販売していた自社製品の中で実績豊富かつ海外市場でのポテンシャルの高い装置を選定し、さらに販売可能なエリアを広げるべく、ドキュメントの整備や各地域における規制対応等を進めます。
(半導体事業)
半導体業界におきましては、世界的なリモートワークの広がりやAI半導体需要の拡大、5G通信や自動運転の本格化等でデータ量の更なる増加が見込まれることから、今後も半導体不足が想定され、中長期的に半導体需要拡大のトレンドは継続していくものと予想されます。
市況回復を見据えた各メーカーの先行的な設備投資が前向きな結果となって表れてきており、今年度後半には回復基調に繋がることが期待されております。また、世界各地域で半導体に対する政府補助を伴う計画が進められるなど、今後とも半導体市場は底堅い潜在需要を背景に着実な拡大が見込まれており、当社は今後の中長期的な受注拡大の見通しは変えておりません。
当事業が今後とも取り組むべき中長期的な成長戦略と課題は以下のとおりであります。
① 生産能力増強
・国内における増産体制構築のための設備投資を順次進めてまいります。
・品質管理の高度化を進めるとともに、社外パートナー、外注先等との連携強化を通じて、生産能力の向上を目指します。
② 営業力強化
・お取引先との関係強化を図るとともに、高付加価値製品の開発と拡張を行い、石英・シリコン製品の量産品のマーケット拡大を目指します。
・シリコン製品の開発品、量産品の更なる売り込みを強化するとともに、火加工製品等、高難易度製品の拡大を図ります。
③ 業務効率化
・業務フロー、作業手順等の見直しを進め、業務自動化・効率化等のDXを推進します。
・テレワーク、会議システム等、効率化に資するシステムツールの更なる活用を図ります。
④ 経営基盤強化
・サステナビリティ強化に資する各種対応を進めるとともに、コーポレート・ガバナンス強化への対応を行います。
・財務指標や株価を意識した経営を行い、IR機能強化、リスクマネジメント強化を図ります。
・経営統合を通して、各分野でのノウハウを共有し経営強化を図ります。
⑤ 人材育成
・各種研修の充実、業務マニュアルの作成推進、人事ローテーションの活発化等により、優秀な人材の育成に努めます。
・経営統合を通して、グループ内の人材交流を活発化させ、従業員の意識や能力向上に努めます。
(自動認識事業)
自動認識事業におきましては、マイコンなど部材調達の長納期化も一段落した状況といえそうです。
このような市況の中で積極的な活動を行っていくためにも、営業部門・技術部門・品質保証部門が効率的に連携するように取り組んでまいります。
当事業が今後とも取り組むべき中長期的な成長戦略と課題は以下のとおりであります。
① 成長期待分野の推進
セキュアマイコン搭載製品の市場への拡販、ソリューション分野の更なる開拓・拡販を強化してまいります。
② 品質向上の推進
ISO9001の実行と遵守に積極的に取り組み、お客様の信用を高め、社会的地位の向上を図ってまいります。
③ 積極的な営業体制の推進
市場変化を先取りできる営業体制の強化、見直しを図ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営の基本方針である当社創立時の「創立の根本精神及経営理念」に掲げる、「社会に対し社会性を十分発揮してその存在価値を高め、社員個々の幸福を勝ち取り、企業の維持、発展をならしめること」という基本理念をもとに、環境保全への貢献や人的資本の充実を図っております。
当社においては、当該理念のもと、中長期的な持続可能性に関する事項について、経営方針並びに経営戦略を基軸に気候変動及び人的資本に関連するリスク及び機会を検討し、環境問題への対応及び人材育成方針等に係る課題に取り組んでおります。
また、当社においては、取締役会がサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、経営会議または経営リスク検討会等で協議・決定された内容の報告を受け、その対応方針および実行計画等に関する経営上の重要事項を審議・決定しております。
なお、内部統制担当役員が主管する経営リスク検討会では、気候変動問題や人的資本に関連する事項等、事業継続におけるリスクとなる事象の抽出とコントロール状況を評価し、確認を行っております。
当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、以下のとおりであります。
(全体方針)
当社では、基本理念に掲げるとおり、「社会に対し社会性を十分発揮してその存在価値を高め、社員個々の幸福を勝ち取り、企業の維持、発展をならしめること」を実現するため、事業の源泉である人的資本を強化することを目的として、前中期経営計画には「人材基盤の強化」を掲げ、サステナビリティ基本方針に「人材の育成と活躍」を掲げております。
なお、当社は、2024年10月1日付でテクノクオーツ株式会社と共同持株会社設立による経営統合を行う予定であり、新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)は2024年9月を目途に作成する予定であるため、基本方針の改定についても同時期に行う予定であります。
(人材育成方針)
当社では、人材基盤の強化並びに人材の育成と活躍を実現するために、以下の対策を行っております。
①管理職のマネジメント力強化、次世代幹部社員育成強化
当社では、組織を牽引する経営人材の育成が重要であると認識しており、現在時点における管理職以上の人材の能力向上だけでなく、次世代幹部社員への教育に関する将来投資についても積極的に実施しております。
具体的には、「サクセッションプランの推進(次世代の幹部候補者発掘のための人事ヒアリング実施)」、「管理職のマネジメントスキル向上のための研修」、「女性採用及び女性幹部(候補)比率の向上に向け、女性採用率を30%にする」等、一般的な研修から当社独自のヒアリングなど「女性活躍推進法」も絡めて、管理職のマネジメント力強化、次世代幹部社員育成強化を図っております。
②グローバル人材の育成
当社では、海外市場への更なる展開を行っており、当該施策を確実なものとするため、グローバル人材の増員及び育成を図っております。
具体的には、「英語教育の継続的な実施」、「外国人の登用」等、海外市場を見据えたグローバル人材の登用及び教育を進めております。
(社内環境整備方針)
当社では、社内環境整備に関して、以下の対策を行っております。
①人事制度の見直し(新人事制度の運用見極め及びマイナーチェンジ)
当社では、社員一人一人が活躍できる人事制度を目指し見直しを行っております。
具体的には、「シニア活躍」、「若手の抜擢登用」、「定年再雇用後の処遇の見直し」、「65歳以降の雇用」など、若手から70歳雇用も見据えた制度の確立を目指しております。
また、新人事制度に「社内留学制度」、「公募制」を盛り込み、必要に応じたマイナーチェンジを実施しております。
②エンゲージメントサーベイの実施結果に基づく施策の具体化
当社では、人事制度見直しに伴い社員のエンゲージメントの調査を行い、人事制度実施前と実施後を比較し、人事制度以外も含め見直しを図っております。
第57期に実施したエンゲージメントサーベイの結果に基づき、従業員のモチベーションアップにつながる施策を具体化してまいります。
当社においては、グループ会社を含む全社的なリスク管理を経営リスク検討会にて行っており、サステナビリティに関する優先的に対応すべきリスク及び機会の絞り込みについては、経営会議等にて事業環境における財務的影響、環境・社会に与える影響、発生可能性を踏まえて行われます。
また、重要なリスク及び機会は、経営会議での審議を経て取締役会へ報告され、戦略・計画へ反映されております。
なお、リスクマネジメントに係るプロセスは、以下のとおりであります。
(STEP 1 リスクの抽出及び発見)
当社においては、自然災害や法律改正、その他市場環境の変化等の事業環境全体を俯瞰し、外部環境、業務プロセス、内部環境別に、各事業部門にてリスクの抽出を行っております。
また、各事業部門の部門長からの経営リスクの発見・記録の報告を受けた場合には、内容を精査した上で全社的な経営リスクを発見・記録しております。
(STEP 2 リスクの評価及び特定)
経営リスクに関する情報を分析し、当社または当社グループ経営に重大な結果をもたらすと懸念される経営リスクを特定しております。なお、特定する基準として、以下の評価基準を用いております。
①人命・財務・業務・環境・ブランド力及び信用に関する影響度
②発生の頻度
また、特定された経営リスクは、発生確率または影響の大きさに応じて、対応すべき優先順位を決定し、具体的状況を把握した上でリスクコントロールを行っており、対策が必要とされる項目については再検討を行っております。
(STEP 3 リスクの見直し)
特定されたリスクについては、原則として年1回以上見直しを行なっており、内部統制担当役員は必要に応じて、経営リスク検討会に報告することとしております。
当社においては、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、以下の指標を用いております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものでありますが、当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
(1) 経済動向及び製品市況によるリスク
当社グループ製品の主要な市場がある経済環境の動向は、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当社グループは事業の多角化などにより、リスクヘッジをしておりますが、いずれも最先端の技術を要しますので、技術の急激な変化により製品の需要が減少した場合、又は価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 為替変動によるリスク
当社グループの海外向け取引の売上及び仕入は、米ドルを中心とする外貨建てで行っているものがあり、当社グループの業績及び財政状態は、為替変動の影響を受けます。こうした為替変動リスクの軽減を図るため、決済予想額の一部について為替予約取引を利用しております。また、当社グループは在外子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成した連結財務諸表をもって業績及び財政状態を表示しておりますので、各通貨の円に対する為替レートの変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
半導体事業については、その主な販売先は半導体製造装置メーカー、デバイスメーカー、理化学機器メーカーであります。そのうち米国Applied Materials, Inc.に対する依存度が高くなっており、同社の経営状態や、需要動向の著しい変化により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特定の販売先への依存度が過度に高まらないように、当社グループ独自の製品開発を進め、市場における競争力を高めていくとともに、これまで以上に販路拡大に注力すること等を通じて、販売先の拡大に繋げてまいります。
(4) 特定の仕入先への依存度が高いことによるリスク
半導体事業については、その主要な原材料は石英インゴットであります。その主な仕入先は米国Momentive Performance Materials Quartz,Inc.であり、同社からの供給の逼迫や遅延、又は著しい価格上昇等が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。特定の仕入先への依存度が過度に高まらないように、既存の材料メーカーとのコンタクトをこれまで以上に緊密に行うとともに、新規の材料メーカーの発掘にも注力すること等を通じて、仕入先の拡大に繋げてまいります。
(5) 新製品の開発に関わるリスク
当社グループの事業はいずれも技術的な進歩が急速であるため、常に技術革新に対応できる研究・開発に努め、得意先に密着しスピードと柔軟性をもって活動を行っております。しかしながら、事業を展開する市場において、業界と市場の変化に的確に対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 製造物責任に関わるリスク
当社グループは品質不良によるリスクを最小限に抑えるべく、品質管理体制の強化に努めておりますが、将来において品質問題が発生しないという保証はありません。品質管理には万全を期しておりますが、予期せぬ事情により不具合が発生した場合、当社グループへの信頼が損なわれ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業活動を行う主要な市場である日本、アジア、北米、ヨーロッパの国及び地域の政治・経済の動向が、当社グループの取扱製品の需給バランスに変動をもたらす可能性があります。政治・経済の動向により、取扱製品の需給バランスに変化が生じた場合には、販売価格や仕入価格を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、生産活動にあたり、資材、部品その他サービス等を適宜に調達しておりますが、急激な環境の変化等により供給が逼迫し、原材料価格が高騰したり、一時的に確保が困難となる可能性があります。
また、自動認識事業の主力製品であるデバイス部門のリーダライタは、その核となる重要な部品としてIC(集積回路)、カスタムICを使用しておりますが、国内半導体業界の需要動向により入荷状況が大きく変動する可能性があります。このため、当社グループとしては余裕を持った在庫を保有しながら、生産活動をしておりますが、在庫確保が困難な状態となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、事業活動における顧客情報や個人情報などの多くの機密情報を保有しております。情報システム運営上の安全性確保やセキュリティ対策、社員教育やIT投資を継続的に実施しておりますが、想定を超えるサイバー攻撃や予期せぬ不正利用などにより、重要情報や個人情報等の漏洩、また、事業活動停止などの被害が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
地震等の自然災害、火災・停電等の事故災害、感染症の拡大等に起因して電力供給等の社会的インフラの整備状況に問題が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。災害や感染症等による影響を最小限に抑える対策として、設備の定期点検や防災訓練を実施し、被災時の速やかな事業の復旧が行えるように備えております。感染症への対応については、各拠点と連携し、社員の感染予防対策の実施及び感染状況に関する情報収集と対策実施を行っております。
当社グループの事業成長には有能な人材の確保と育成が不可欠であります。当社グループでは、新卒採用・中途採用を積極的に行うことにより有能な人材の確保に努めるとともに、階層別研修等により社員の能力向上に努めています。しかし、有能な人材の確保・育成ができない場合や、人材流出を防止出来ない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは国内外の各種法令、行政による許認可および規制の適用を受けており、その遵守に努めています。しかしながら、法令・規制に対する理解不足、または予期せぬ変更への対応が適切でない場合等には、コンプライアンス違反と判断され、過料、課徴金等による損失や営業停止等の行政処分、または信用の低下などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
当連結会計年度末の流動資産は電子記録債権等の売上債権及び棚卸資産の増加などにより33,350百万円(前連結会計年度末に比べ 3,311百万円の増加)となりました。固定資産は機械装置及び運搬具及び投資有価証券の増加などにより 22,216百万円(前連結会計年度末に比べ 1,244百万円の増加)となりました。その結果、資産合計では 55,567百万円(前連結会計年度末に比べ 4,555百万円の増加)となりました。
当連結会計年度末の流動負債は短期借入金の増加などにより 10,607百万円(前連結会計年度末に比べ 293百万円の増加)となりました。固定負債は長期借入金の減少などにより 4,750百万円(前連結会計年度末に比べ 368百万円の減少)となりました。その結果、負債合計では 15,358百万円(前連結会計年度末に比べ 74百万円の減少)となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は利益剰余金の増加などにより 40,209百万円(前連結会計年度末に比べ 4,630百万円の増加)となりました。自己資本比率は 60.5%となりました。
分析機器事業におきましては、当連結会計年度末の流動資産は電子記録債権等の売上債権及び棚卸資産の増加などにより 15,683百万円(前連結会計年度末に比べ 1,168百万円の増加)となりました。固定資産は投資有価証券の増加などにより 12,464百万円(前連結会計年度末に比べ 989百万円の増加)となりました。その結果、資産合計では 28,147百万円(前連結会計年度末に比べ 2,158百万円の増加)となりました。
当連結会計年度末の流動負債は電子記録債務等の仕入債務の増加などにより 5,568百万円(前連結会計年度末に比べ 330百万円の増加)となりました。固定負債は長期借入金の減少などにより 2,327百万円(前連結会計年度末に比べ 134百万円の減少)となりました。その結果、負債合計では 7,896百万円(前連結会計年度末に比べ 196百万円の増加)となりました。
半導体事業におきましては、当連結会計年度末の流動資産は電子記録債権等の売上債権及び棚卸資産の増加などにより 16,078百万円(前連結会計年度末に比べ 1,732百万円の増加)となりました。固定資産は機械装置及び運搬具の増加などにより 9,675百万円(前連結会計年度末に比べ 226百万円の増加)となりました。その結果、資産合計では 25,753百万円(前連結会計年度末に比べ 1,958百万円の増加)となりました。
当連結会計年度末の流動負債は買掛金等の仕入債務の減少などにより 4,185百万円(前連結会計年度末に比べ 375百万円の減少)となりました。固定負債は長期借入金の減少などにより 2,413百万円(前連結会計年度末に比べ 229百万円の減少)となりました。その結果、負債合計では 6,599百万円(前連結会計年度末に比べ 605百万円の減少)となりました。
自動認識事業におきましては、当連結会計年度末の流動資産は原材料の増加などにより 1,602百万円(前連結会計年度末に比べ 404百万円の増加)となりました。固定資産は退職給付に係る資産の増加などにより 82百万円(前連結会計年度末に比べ 28百万円の増加)となりました。その結果、資産合計では1,684百万円(前連結会計年度末に比べ 432百万円の増加)となりました。
当連結会計年度末の流動負債は買掛金等の仕入債務の増加などにより 867百万円(前連結会計年度末に比べ 332百万円の増加)となりました。固定負債は役員退職慰労引当金の減少により 9百万円(前連結会計年度末に比べ 4百万円の減少)となりました。その結果、負債合計では 876百万円(前連結会計年度末に比べ 328百万円の増加)となりました。
当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い経済活動の正常化が進み、緩やかな回復の動きが見られました。しかし、長期化するウクライナ情勢に加え、中東情勢が緊迫化するなどの地政学的リスクの影響により、原油等をはじめとするエネルギー資源や原材料価格の高騰及び為替相場の円安基調の継続による物価高の影響が続いており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境下におきまして、当社グループは、中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の達成に向けて、分析機器事業は「挑戦」のスローガンのもとクロマトグラフィー事業の持続的拡大、経営基盤の強化等に取り組んでまいりました。また、半導体事業は石英ガラス・シリコン加工における世界有数の「半導体関連精密パーツ総合メーカー」としての地位確立を目指して生産能力増強や営業力強化等に取り組んでまいりました。
この結果、当連結会計年度の売上高につきましては、37,148百万円(前連結会計年度比 4.0%減)となりました。損益につきましては、営業利益は 5,714百万円(前連結会計年度比 5.3%減)、経常利益は 6,108百万円(前連結会計年度比 5.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は 3,430百万円(前連結会計年度比 2.0%減)となりました。
分析機器事業におきましては、これまで生産に影響を受けてきた半導体及び部材の世界的な供給不足の緩和にともない、売上高は前連結会計年度を上回ることができました。
国内売上高は、消耗品が食品、環境、受託分析、無機化学など、多くの分野で増収となりました。特に液体クロマトグラフィー用カラムや部品類、標準試薬、アフターサービスが好調でした。装置類においては納入先の設備工事遅延等もありましたが、その影響は限定的であり、売上は前連結会計年度を上回りました。水質分析、受託分析における自社及び他社の高速液体クロマトグラフ関連装置、カーボンニュートラル分野における特注装置を含むガスクロマトグラフ関連装置及び他社装置などが好調で、装置全体でも増収となりました。
海外売上高は、ウクライナや中東情勢の影響もありましたが、アジアや北米などを中心に幅広い地域で前連結会計年度の売上を上回りました。品目別では、製薬企業向けを中心とした液体クロマトグラフ用カラム、環境分析用の消耗品、及びOEM製品も引き続き好調を維持しており、増収となりました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 18,281百万円(前連結会計年度比 6.5%増)、営業利益は 1,962百万円(前連結会計年度比 3.9%増)となりました。
半導体業界におきましては、パソコンやスマートフォン向け需要の減退によるメモリー在庫の滞留が続いておりましたが、足元ではやや緩和している状況です。また、生成AI分野の需要拡大を受け、国内外で先端半導体の製造工場の新設や増設といった、今後を見据えた積極的な設備投資が相次いで計画・実行されており、引き続き着実な成長が見込まれております。
以上のような環境の中、当事業では、今後に向けた新規需要の掘り起こし、国内の増産体制構築のための準備、その他の業務改善活動を推進しながら、効率的な生産活動を展開してまいります。また、足元の受注高及び売上高は回復基調にあり、受注残高は引き続き高水準を持続しております。
この結果、当連結会計年度の売上高は 17,029百万円(前連結会計年度比 14.9%減)、営業利益は 3,615百万円(前連結会計年度比 11.1%減)となりました。
自動認識事業におきましては、バイタルチェックシステム装置を含む医療関連装置向け機器組込製品、入退室システム関連装置向けとしたセキュアマイコン搭載機器組込製品、住居関連施設向け自動認識用その他製品が堅調に出荷できたことから売上高が前連結会計年度を上回りました。
製品分類毎の売上高は「機器組込製品」「完成系製品」「自動認識用その他」全てのセグメントにおいて前連結会計年度を上回りました。
この結果、当連結会計年度の売上高は 1,836百万円(前連結会計年度比 21.3%増)、営業利益は 134百万円(前連結会計年度比98.5%増)となりました。
当連結会計年度末における当社グループの数値目標及び実績は次のとおりであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ819百万円増加し 6,866百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な増減要因は、以下のとおりであります。
② 営業活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは 3,526百万円(前連結会計年度は 1,986百万円)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益 6,245百万円の計上、法人税等の支払額 2,133百万円、減価償却費 1,698百万円、棚卸資産の増加額 1,154百万円などによります。
③ 投資活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは △1,685百万円(前連結会計年度は △3,596百万円)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出 1,458百万円などによります。
④ 財務活動によるキャッシュ・フロー
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは △1,188百万円(前連結会計年度は 1,891百万円)となりました。
これは主に長期借入金の返済による支出 1,074百万円、配当金の支払額 665百万円、短期借入金の純増加額 495百万円などによります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資等によるものであります。
事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金、設備投資や長期運転資金は自己資金及び金融機関からの長期借入金を資金調達の基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は 6,910百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は 6,866百万円となっております。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
自己資本比率:自己資本÷総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額÷総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷利払い
(注1) 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
(注2) 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
(注3) キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いにつきましては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
棚卸資産の評価
当社グループは、過去の出庫実績やその時点で入手可能な情報等を基に合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で、一定年数が経過した棚卸資産や生産見込みあるいは出荷見込みがないと判断した棚卸資産について、当連結会計年度に評価損として原価に計上しております。また、評価損の見積りにあたっては、その時点での入手可能な情報等を基に合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
(2)経営統合に係る契約
当社とテクノクオーツ株式会社は、2024年10月1日をもって、共同株式移転(以下「本株式移転」といいます。)の方法により両社の完全親会社となるジーエルテクノホールディングス株式会社を設立し経営統合を行うことについて合意し、2024年5月10日開催の各社取締役会における決議に基づき、同日付で、経営統合契約書を締結するとともに、本株式移転に関する株式移転計画を共同で作成しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、研究開発を事業展開上の重要課題と位置づけ、積極的な研究開発活動を進めております。その分野は分析機器事業、半導体事業、自動認識事業のセグメントに分かれ、多様化、高度化、複雑化する顧客ニーズに対し、質の高い製品を提供するため、それぞれの分野ごとに独自性のある技術力を高めながら新技術の習得、導入及び品質、生産性の向上を目指して新製品の開発に努めております。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(分析機器事業)
当事業では、自社ブランドである「イナートファミリー」を中心に、食品、環境、ライフサイエンス、香粧品、エネルギー、石油化学など多岐にわたる分野において、高速化や高感度化、高不活性、選択性など、お客様のニーズに合わせた製品ラインナップの拡充を継続して開発し、リリースしております。当事業の製品は、国内のみならず世界各国で使用されており分析業界において誇れる製品を開発しております。
装置分野においては、ヘリウムガス不足に対応した水素対応のガスクロマトグラフ及び周辺装置を開発しリリースしました。水素ガス使用時における安全対策を十分に考慮した設計になっているため、安心して使用できる製品となっております。
国内製造における高品質、高生産性を目指すとともに、世界一のカラムメーカーを目標に、社会に貢献できる新製品の開発に日々邁進しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
(半導体事業)
当事業では、以下の分野にて研究開発活動を行っております。
マイクロクラックの自己修復技術については、石英ガラス材料の研削加工において必然的に形成される微小き裂(マイクロクラック)層を修復する新たな表面処理技術を開発し、特許取得後に学術ジャーナルに論文掲載されております。
溶射被覆石英ガラス部材の再生工法の実用化については、ユーザーの実使用にて寿命に達した部材を廃棄することなく新品同等に再生する新工法を確立し、早期に特許取得しております。
多孔質自立膜の用途開発については、独自に開発した多孔質体の製造技術の新たなアプリケーションとして、多孔質体の各種物性データの収集に極めて有効な手段になり得ることが明らかになったため、学会発表や学術誌への論文投稿を積極的に行ってまいります。
石英ガラス直接接合技術を応用した新規機能部品の開発については、コア技術である石英ガラス直接接合技術を応用し、異種材を封入した新たなモジュール・ユニットの開発に着手しております。
微細加工技術の応用製品開発については、従来の石英ガラスやシリコン材料に加え多孔質自立膜の表面にサブミクロンから数百ミクロンの微細パターンを形成する技術開発を継続的に行っております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、
(自動認識事業)
当事業では、NFCやLF帯を利用したRFID(無線による個人認識) 技術による自動認識事業に関わる製品の研究/開発を行っております。特に交通系・電子マネー関連に幅広く利用されているソニー製ICカードFeliCaに関する新たなセキュリティガイドラインに準拠するため、CC(IT製品や情報システムに対して、情報セキュリティを評価し認証するための評価基準)EAL5+に準拠したセキュアマイコンを搭載したリーダライタの開発を進めております。これらは、納入が開始された大手交通機器メーカ向けのみでなく、FeliCa暗号に対応した全てのリーダライタへの搭載を行い、アクセスコントロールや医療系、アミューズメント系分野への展開を図ります。さらに公共事業系/金融機関向けにPC/SC規格準拠の製品群の充実を図っております。
また、LPCD(NFCデバイスが他のデバイスを検出するための低消費電力機能)等の各部品の省電力モードの活用やフィルムアンテナによる設置性の向上の研究を行っております。さらに、Bluetooth Low Energyを利用した、スマートフォンとの連携製品の開発も進めております。今後もRFID製品、BLE応用製品を展開し、柔軟な市場対応を行う事によって市場での高い優位性を訴求してまいります。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、