第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は、企業理念である「市民に愛され市民に貢献する」を基盤とし、2030年を見据えて、サステナブル社会、デジタル社会に対応し成長できるシチズングループのありたい姿を描き、そこからバックキャストすることで5つのマテリアリティ「気候変動への対応と循環型社会への貢献」、「質の高い生活への貢献」、「産業分野におけるソリューションの提供」、「働きがいの向上と人財の育成」、「社会的責任の遂行」を設定しました。

長期ビジョンの実現に向けて、グループ中期経営ビジョン「豊かな未来(とき)をつなぐ」、“Crafting a new tomorrow”を揚げ、2022 年度(2023年3月期)から 2024年度(2025年3月期)までの3か年の「中期経営計画2024」を策定し、新たな価値創造に挑戦し、世の中に安心と信頼、そして感動を届け、豊かなときをつなぐ存在になることを目指してまいります。

 

(2) 経営戦略等

グループ中期経営ビジョン実現に向けて、本中期経営計画における以下の重点戦略に取り組んでまいります。

① 事業ポートフォリオの戦略

 時計事業と工作機械事業を、グループ成長を牽引するコア事業と位置付け、経営資源を戦略的に投資していくことで更なる成長を目指してまいります。デバイス事業及び電子機器他事業は、安定成長を目指しながら、事業や製品の選択と集中を進めてまいります。また、成長の可能性がある新事業領域の探索も進めてまいります。

 

本中期経営計画における事業別の戦略は、以下のとおりです。

 

時計事業

時計事業は、グループビジョンと同じく「豊かな未来(とき)をつなぐ」、"Crafting a new tomorrow"をビジョンとして掲げ、グローバル市場におけるブランドイメージの明確化、カスタマーエクスペリエンスの向上を通じて、「グローバルブランド戦略」、「プレミアムブランド及び機械式時計戦略」、「継続的なユーザー接点の強化とデータ活用」の3つの重点戦略に取り組んでまいります

グループを牽引するコア事業として、経営資源を戦略的に投資するとともに、収益性の改善と持続的な成長に取り組んでまいります。

 

工作機械事業

工作機械事業は、世界最先端の生産革新ソリューションを創造し、「新・モノづくり企業」のポジションを確立するために、売上1,000億円に向けた事業基盤の構築、加工技術による差別化、自動化・省力化領域の拡大に取り組んでまいります。成長が見込まれるアジア地域での営業、サービス体制の強化を図ることで、更なる成長を目指してまいります。

 

デバイス事業

デバイス事業は、市場変化に合わせた製品の選択と集中、収益力改善及び当社の強みを最大限に活かせる領域における事業拡大により、確固たる競争優位を確立してまいります。当社グループの強みである小型金属加工技術を活かした自動車部品事業では、高付加価値製品やEV関連部品の拡大及び自動車部品以外の領域の開拓を進め、オプトデバイス事業では、高効率、長寿命、環境配慮型の照明用LEDなどの拡充を図ってまいります。

 

電子機器他事業

電子機器他事業では、当社グループの強みをしっかりと見極め、事業と製品の選択と集中を行うとともに、生産効率の向上や合理化による安定的な利益確保を目指してまいります。

 

② DX戦略の推進及び人財の育成

「ユーザー視点での価値の創出・向上を継続的に行える企業グループへ」をDXビジョンとして掲げ、「業務プロセスの変革による高収益体質への転換」、「製品・サービスの変革による新たなユーザー価値の創出」、「企業風土の変革」の3つの方針に取り組んでまいります。

「業務プロセスの変革による高収益体質への転換」では業務の効率化・高度化、データ活用による意思決定の高度化、デジタル活用によるモノづくりの進化を、「製品・サービスの変革による新たなユーザー価値の創出」では、新たなユーザー体験の提供、新たなビジネスモデルの構築に取り組んでまいります。

人財ビジョンとして「社員一人一人が中期ビジョン実現への貢献を実感し、シチズンで働くことを誇りに感じる」を掲げ、デジタル施策を着実に進めると同時に、「企業風土の変革」をグループで連携して進めてまいります。

 

(3) 経営環境

当社を取り巻く経営環境として、主に以下の環境変化を認識しております。

 

① 地政学的リスクによる世界経済への影響

② インフレ長期化による景気への影響

③ Eコマース需要の更なる拡大と実店舗流通の構造変化

④ スマートウオッチ市場の拡大に伴う、ファッションウオッチを中心とした時計市場の縮小

⑤ アナログクオーツムーブメント市場の縮小

 

当社は、以上のような経営環境変化の影響を受け業績下振れのリスクが高まっていることを認識し、中核事業である時計事業及び工作機械事業における以下の5つの課題について優先的に取り組んでまいります。

 

① 機械式完成品の拡充及び機械式ムーブメント外販の拡大

② 環境意識の高まりを捉えた、「Eco-Drive」の特性や環境に配慮した素材の更なる訴求

③ 製品価値を含む、体験価値を提供する双方向のコミュニケーションの構築

④ スマートウオッチと競合しない領域へのシフト

⑤ 工作機械事業の事業基盤強化

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社の時計事業、工作機械事業における経営環境変化を認識し、以下の5つの課題について優先的に取り組んでまいります。

 

① 機械式完成品の拡充及び機械式ムーブメント外販の拡大

引き続き安定的な需要が見込まれる機械式時計市場において、シチズン機械式時計の成長に向け、機械式ムーブメントを搭載した最上位ブランド「The CITIZEN」と、モダンでスポーティなデザインが特徴のブランド「Series 8」の取り組みを強化してまいります。ムーブメント事業については、更なる製造の自動化、合理化の推進と付加価値化を進めながら収益性の強化を図ってまいります。

 

② 環境意識の高まりを捉えた、「Eco-Drive」の特性や環境に配慮した素材の更なる訴求

環境に優しい「Eco-Drive」を搭載したモデルを基軸に、更なるユーザーとのコミュニケーションの強化を図ってまいります。

また、リサイクル素材など、地球環境に配慮したサステナブルな素材の採用を今後も増やすと共に、環境や人に配慮したサステナブルウオッチブランド「CITIZEN L」をグローバルレディースブランドの中核として育成を進めてまいります。

 

③ 製品価値を含む、体験価値を提供する双方向のコミュニケーションの構築

店舗、ECサイト、広告、アフターサービスなどそれぞれのタッチポイントを強化することでユーザーとつながり続ける仕組みづくりを行ってまいります。

また、これらのデータを分析することで、製品・サービス価値を向上させ、継続的にユーザーに購入頂ける循環サイクルの構築に取り組んでまいります。

 

④ スマートウオッチと競合しない領域へのシフト

これまでの機能的価値に加え、製品の持つ背景やストーリーへの共感、心地良い着け心地などの着用体験、そしてアフターサービスの充実など「時刻を確認する」だけの価値から、ワクワクする高揚感や、長く使えるという安心感等、ユーザーにとっての価値を高めてまいります。グローバルブランドであるPROMASTER、CITIZEN Lを中心に情緒的価値を付加していくことで、ブランドイメージを向上させ、ブランドプレゼンスを高めてまいります。

 

⑤ 工作機械事業の事業基盤強化

景気変動の影響を受けやすい工作機械事業は、売上拡大を下支えしている中国、タイ、本社工場の生産能力を増強し、営業、サービス体制の強化を図ってまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループにおける、サステナビリティに関する考え方及び取組は以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

詳細については、

当社ウェブサイト(URL https://www.citizen.co.jp/sustainability)

をご覧ください。

当該サイトは2024年7月1日に更新予定です。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、シチズン時計の社名の由来である「市民に愛され市民に貢献する」を企業理念とし、地域社会はもとより地球環境と調和した永続的な企業活動を通して、社会への貢献や企業価値の向上に努めています。また、企業価値を継続的に高めていくためには、経営の透明性確保と多面的な経営への監督機能が重要と認識し、ガバナンスの充実に向けた取り組みを実践しています。

当社グループでは、グループ全体の事業目標の達成を通した持続的な成長を確実なものとするため、ガバナンスの一層の強化に努めています。世界の経済や社会がこれまでにないスピードで変化している中、直面するさまざまな社会課題に対応するために、シチズン時計が中心となり、グループ全体を管理・監督しています。

ガバナンスの詳細については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご覧ください。

 

(2) 戦略

当社グループではサステナブル経営を推進することで、持続的に価値を生み出せる企業を目指しており、当社グループの環境施策の根幹となる「シチズングループ環境方針」に基づき、今後想定される様々な将来の環境変化を踏まえた上で、「グループ長期ビジョン2050」を策定しています。

また、SDGs達成に向けた5つの目標「シチズングループ環境目標2030」も策定しており、2050年までの長期的視点と2030年の中期的な視点から、当社グループのありたい姿を描き、そこからバックキャストすることでマテリアリティを設定し、想定される将来の環境変化を見据えて、ありたい姿の実現に向け取り組んでいます。

具体的には、ESG(環境・社会・ガバナンス)をサステナブル経営のトップアジェンダと捉えています。サステナブル経営においてESGは経営の優先事項と位置付けており、気候変動やサーキュラーエコノミーへの対応や、グローバルでの人権の尊重に加え、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、ガバナンス面については、リスクマネジメントの強化も含め企業としての社会的責任を遂行することにも注力しています。

こうした取り組みを更に推進するための当社グループのマテリアリティは、「気候変動への対応と循環型社会への貢献」、「質の高い生活への貢献」、「産業分野におけるソリューションの提供」、「働きがいの向上と人財の育成」、「社会的責任の遂行」の5つを、事業ごとに関連性を整理したうえで事業と事業基盤の視点から特定されています。中でも、気候変動への対応は企業にとって最重要課題の1つと捉えています。当社グループでは2020年度にTCFD提言への賛同を表明しています。また、2022年度にはSBT認定を取得しており、サプライチェーン全体で温室効果ガスの排出量削減をコミットしました。

 

 

気候変動に関するシナリオ分析

当社グループでは、気候変動に伴うリスクと機会は、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、以下のプロセスを通じて気候変動に伴うリスクと機会を特定し、サステナビリティ委員会事務局が中心となり、1.5℃シナリオおよび4℃シナリオを用いて分析し、重要性を評価しました。

 

①気候変動に伴うリスクと機会の特定プロセス

プロセス1

気候変動に伴うリスクと機会を網羅的に抽出しました。

プロセス2

抽出したリスクと機会について、「時計事業」「工作機械事業」「デバイス事業」「電子機器他事業」の4つの事業との関連性および短・中・長期の3つの時間軸で整理しました。

プロセス3

整理したリスクと機会について、「自社にとっての影響度」および「発生可能性」について、5段階評価を行いました。総合評価として、「自社にとっての影響度」と「発生可能性」が共に高い項目を抽出し、重要なリスクと機会を特定しました。

 

②気候関連リスクおよび機会

脱炭素社会に向かう1.5℃シナリオと温暖化が進む4℃シナリオを用いて、分析、評価を行いました。

1.5℃シナリオにおいては、炭素税の導入を含む規制強化によるコスト増や、原材料等の価格上昇リスクが想定されます。当社グループは、「シチズングループ環境目標2030」や「シチズングループ環境ビジョン2050」の達成に向け、脱炭素化の取り組みを推進するほか、GHG排出削減投資促進のためのインターナルカーボンプライス制度の導入を検討しています。

4℃シナリオにおいては、原材料の安定的な確保のため、多角的な調達先の確保や適切な部材調達管理を推進していきます。また、気象災害を含むBCP対策や災害対策関連投資の促進などを行っています。

 

 

区分

重要リスク
 /機会

自社への影響

対策

1.5℃

4℃

移行リスク

政策・法規制

✓新たな法規制(カーボンプライス制度)の導入・強化によるコスト増加

✓脱炭素化取り組みの推進(シチズングループ環境目標2030の達成)

✓GHG排出削減投資促進のためのインターナルカーボンプライス制度の導入

技術及び市場

✓原材料等のコスト増加、供給不足・供給停止

✓多角的な調達先の確保確保
✓備蓄機能の強化

レピュテーション

✓気候変動への対応遅れなどによる評価・評判の下落、それによる株価・売上の低下

✓ESGの推進による企業価値の向上

物理的リスク

急性リスク

✓自然災害による被災の激甚化・頻度の増加

✓災害時の具体的な行動指針の策定

慢性リスク

✓異常気象の影響や対策に事業支出が増加

✓サプライチェーン全体のリスク評価
✓気象災害を含むBCP対策(生産拠点での災害対策、  

調達/物流系統のBCPプランの策定等)

✓災害対策関連投資の促進

✓サプライチェーン寸断による生産活動の停滞

✓サプライチェーン全体のリスク評価
✓気象災害を含むBCP対策(生産拠点での災害対策、

調達/物流系統のBCPプランの策定等)

✓備蓄機能の強化

機会

エネルギー・資源効率

✓省エネルギー化の推進によるコスト削減

✓省エネルギー設備への転換、AI、IoT活用による電力使用の効率化

✓省資源化、3R、廃棄物ゼロエミッション、水資源の保全によるコスト削減

✓循環型経済ビジネス拡大による事業機会獲得
✓リサイクル資源の活用

✓代替素材での製品開発による差別化・競争力の向上

✓物資代替・軽量化によるライフサイクルでの脱炭素の実現

✓代替素材による製品開発
✓原材料の軽量化・多様化

製品、サービス・市場

✓環境配慮型製品/サービスの需要増による収益増

✓気候変動に適応した製品・サービスを提供(エコドライブ、照明用LED)

レジリエンス

✓自然災害対策を進めることで顧客からの信頼向上

✓サプライチェーン全体のリスク評価
✓気象災害を含むBCP対策(生産拠点での災害対策、

調達/物流系統のBCPプランの策定等)

✓備蓄機能の強化

✓計画的な対策の実施により物理リスク被害を最小限化

✓サプライチェーン全体のリスク評価
✓気象災害を含むBCP対策(生産拠点での災害対策、

調達/物流系統のBCPプランの策定等)

✓備蓄機能の強化

 

 

 

人財育成方針

当社グループでは、従業員を人的資本と捉え、その価値を引き出していくことが、企業の永続的な成長につながり、社会への提供価値を最大化すると考えています。「社員一人一人が長期ビジョンの実現に貢献しシチズンで働くことへ誇りを感じていること」をグループ人財ビジョンとして掲げ、 グループ各社が主体となり、各社の経営戦略と事業環境に沿って、各社の成長を牽引できる人財を育成しています。

加えて、2022年度からは育成におけるグループ連携を強化し、グループ変革推進研修、経営基礎研修をスタートしました。グループの将来を担う次世代リーダーの育成にも注力し、グループ会社間で個社の枠を超えた人財ローテーションを行っています。対象となる社員は出向先の業務やワークショップ型研修を通じて、各事業環境への理解を深め、ネットワークをグループへと広げ、将来的には個社のみならずグループ全体の成長を牽引することを期待されています。

 

人財が活躍できる環境の整備

-自律的なキャリア開発と多様なキャリアパス

当社では、一人一人のキャリアの自律を基に、会社主導と両軸で育成し、社員の成長と共に会社の成長を図ることを目指しています。2021年度より若手中堅の希望者に向けたキャリアデザインセミナーを開催し合計100名に近い希望者が参加、外部のキャリア・コンサルティングサービスも導入し、自律的なキャリア開発を推奨しています。「社内副業」として、全就業時間の2割程度を社内の他部門の業務に就くことがきる制度を設け、先に導入されている社外副業と合わせて、社員が多様な経験を自発的に選択しうる機会として活用されています。さらに2023年度は「社内公募制異動」を導入し、社員の要望により即した異動が実現しています。社員から保有資格や異動希望等の定期的な自己申告を受けるほか、研修についても、各自の学びや目標に合わせた研修メニューを設けるなど、個人のキャリア形成を支援し、人財力を全社で向上・最適化する仕組みを構築しています。

 

-従業員エンゲージメントの向上にむけて

当社グループでは、シチズン時計㈱・シチズンファインデバイス㈱・シチズンマシナリー㈱の3社においてエンゲージメント調査を実施しています。当社では調査結果を経営層へ報告し、全社施策として「キャリア機会の提供」や「上司との関係性」「評価への納得感」の向上に向けて、キャリア自律の支援施策や管理職リスキリングメニューの拡充、考課者研修を実施しました。当社は目標管理制度を導入しており、期初に上司と設定した目標に対して、年に2回の業績評価を実施、上司からの業績フィードバックやキャリア面談を年に3回以上実施してキャリア開発につなげています。調査結果に基づく対応を含めてグループへ情報共有を図ることで、グループ全体の従業員エンゲージメント向上を図っていきます。

 

-ダイバーシティ&インクルージョン

当社グループは社員一人一人を尊重し、多様性を認め、活かせる環境をつくることが経営の責務と考えています。「ダイバーシティ経営」の実践にも力を入れており、ジェンダーダイバーシティを始めとして、組織競争力の源泉である多様な従業員一人一人が、能力を発揮して長く働ける組織を作り、企業価値の向上を目指しています。グループ人事委員会を運営し、事業活動上の人権の尊重やリスク対応についてグループガバナンスを推進しています。

当社では、働き方の多様化への対応やワークライフバランスの充実を目的としたテレワークを制度化、フレックスタイム制の拡大とあわせて、場所や時間に縛られない働き方をいち早く実現しています。女性の活躍推進では、当社は2025年度までに女性管理職比率10%以上を掲げ、女性管理職の計画的な育成・登用を進めています。男性の育児休暇取得についても育児参加の意義や必要性を伝える説明会を開催し、育休取得者の体験談を社内サイトで紹介するなど、育児参加を促す育休取得を積極的に推奨しています。

 

(3) リスク管理

当社グループでは、サステナブル経営を推進し、グループ全体の事業目標の達成と持続的な発展を確実にするため、グループ全体のリスクを集約し迅速に対処するグループリスク・危機管理体制を構築しています。本体制には、法務・コンプライアンスや情報セキュリティ、災害等のリスクに対応する各委員会とともに、平時の業務リスク及び関連するESGリスクに対応するサステナビリティ委員会の下部委員会も含まれています。

グループリスク・危機管理の中核を担う当社のCSR室では、当社の各部門や国内外のグループ会社と連携して、グループガバナンスの強化をはじめ、品質コンプライアンス強化施策やグループ重要リスク対策の進捗状況の確認、新たなリスクへの対応にあたっています。重要リスク(財務、コンプライアンス、BCP(事業継続計画)、知的財産、情報セキュリティ、人権問題、労働慣行、ESG等)の把握や対応も各社と連携し、第三者の有識者からの意見を交えつつ、トップマネジメントで対処しています。なお、サイバー攻撃などの情報セキュリティインシデントについては、2020年6月に当社に設置した初動対応の専門組織であるCITIZEN-SIRT(CSIRT)主導で対処しています

また、上記のリスクマネジメントとは別に、気候変動による自然災害の激甚化といった気候変動リスクも重要リスクとして捉えています。気温上昇が進行する4℃シナリオにおけるリスクの低減と国際的に約束した目標が達成される1.5℃シナリオの実現に向け、従来からの省エネ活動や、再生可能エネルギーの導入や製品における環境配慮を推進しています。2022年度は、当社グループの温室効果ガス排出量削減目標が、科学的な根拠に基づくScience Based Target(SBT)認定を取得しました。当社グループのスコープ3排出量について、外部認証機関による第三者検証を受けています。

 

(4) 指標及び目標

当社グループでは、マテリアリティのひとつである環境への取り組みについて、「シチズングループ環境ビジョン2050」、「シチズングループ環境目標2030」に基づくロードマップを設定しています。ロードマップに定めた環境への取り組みとその目標は、CO2排出量削減や有害化学物質の削減、水資源等資源の有効利用、環境事故の防止、生物多様性保全と多岐にわたります。

当社グループでは、SDGsの目標達成と持続可能な社会の実現に向けたサステナブル経営を推進し、脱炭素社会、資源循環型社会、安心・安全で心豊かな社会の実現に貢献します。

気候変動及び環境汚染管理に関して、2030年までに達成すべき主な目標は以下のとおりです

 

1.地球温暖化対策の推進(省エネ化、再エネ化、気候変動への適応)

温室効果ガス排出量 スコープ1、2

50.4%削減

(2018年度基準):1.5水準目標に該当

温室効果ガス排出量 スコープ3

カテゴリ1+カテゴリ11の30%削減

(2018年度基準)

再エネ比率

62%(国内)

 

 

2.持続可能な資源の利用の推進(省資源化、3R、水資源の保全)

再資源化率

90%

取水量

35%削減(2018年度比)

 

 

3.環境リスクマネジメントの強化

PRTR法対象化学物質

45%削減(2018年度比)

 

 

 

また、当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人財育成方針及び人財が活躍できる環境の整備について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

重点項目

KPI

2023年度実績

2024年度目標

人財の育成

グループ変革推進研修参加者数

500以上

500名以上

教育機会の提供

1人当たりの平均研修時間

13.3時間 ※1

14時間 ※1

エンゲージメントの向上

エンゲージメント調査回答率

95 ※2

95%以上 ※2

ダイバーシティ

&インクルージョン

女性管理職比率

9.0 ※2

9%以上 ※2

男性の育休取得率

100 ※2

100% ※2

 

※1 シチズン時計㈱、シチズンマシナリー㈱、シチズンファインデバイス㈱、シチズン電子㈱

   シチズン・システムズ㈱、シチズン時計マニュファクチャリング㈱ 合計

※2 シチズン時計㈱のみ

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 当社グループの各事業のリスクについて

当社グループは、時計、工作機械、デバイス、電子機器等の製造販売を主な事業とし、全世界で事業展開を行っております。そして、ユーザーは一般個人のほか、多種多様な製造業にまで広範囲に渡っております。従って、当社グループの業績は、多岐に渡る変動要因の影響を受けます。その要因の主なものは以下のとおりです。

 

時計事業

 時計事業においては、ウオッチでは国内競合メーカーのほか、スイス高級腕時計メーカー、中国製普及価格帯時計メーカー、スマートウオッチメーカー等との競争も激しく、また、スマートフォン等の時計機能代替製品との競争も内在しております。ムーブメント事業においては、スマートウオッチ市場拡大の影響により低価格帯を中心としたアナログクオーツ市場が減少傾向にあることや中国メーカーの台頭等に基因する競争環境の激化による単価下落の環境にあるため、数量減少及びシェア低下の危険性があります。

 

工作機械事業

 工作機械事業は、景気変動に伴う設備投資需要の落ち込み、天然資源や原材料価格の大幅な高騰、事業を展開する国及び地域における規制又は法令の重要な変更が、今後の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

デバイス事業

 デバイス事業は、技術革新のスピードが早く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入頻度が高いことから、既存製品・サービスの陳腐化による販売価格の下落等が業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。精密加工部品においては、販売先の自動車メーカーやスマートフォンメーカーの技術革新の動向による影響を受けます。オプトデバイスにおいては、一部製品で特許実施許諾の契約を結んでおりますが、何らかの事情により提携関係が解消され、特許の実施許諾が受けられない状態になった場合、当事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

電子機器他事業

電子機器他事業は、景気変動による設備投資、顧客の事業活動、個人消費の低迷に伴う需要減の影響や、製品安全関連の法規制・規格等の厳格化は、今後の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、国内競合メーカーはもとより、中国等の電子機器メーカーとの競争が激しく、技術革新が早いことから、販売価格の下落や開発等の遅れが、業績に影響を与える可能性があります。

 

 

② 海外売上依存度について

当社グループの製品の売上高における海外比率は高く、また、全世界に販売されております。このため、各地域における景気・消費動向は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該地域の政治的・経済的な社会情勢が、同様に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

(単位:百万円)

 

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

売上高

構成比(%)

売上高

構成比(%)

 

日本

76,502

25.4

82,745

26.5

 

アジア

78,859

26.2

71,535

22.9

 

アメリカ

80,426

26.7

85,720

27.4

 

欧州

62,287

20.7

69,914

22.4

 

その他

3,291

1.1

2,914

0.9

 

海外合計

224,864

74.6

230,084

73.6

 

合計

301,366

100.0

312,830

100.0

 

 

③ 為替変動のリスクについて

上記②のとおり、当社グループの製品の売上高における海外比率は高いため、為替予約及び通貨オプション等によるリスクヘッジを行うとともに、海外生産の拡充・強化を推し進めておりますが、当社グループの業績は為替変動の影響を受けます。

 

④ 中国生産依存度について

中国は当社グループの製品における主な生産拠点の一つであり、中国において何らかのトラブルによる生産支障及び、生産に支障をきたすような規制等が実施された場合、または人民元が大幅に切り上げられた場合等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 減損損失について

当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により固定資産について減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状況に影響を与える可能性があります。

 

⑥ 特許及びその他の知的財産について

 当社グループが研究開発及び生産活動を行う中でさまざまな知的財産権にかかわる技術を使用しており、それらの知的財産権は当社グループが所有しているもの、あるいは適法に使用許諾を受けたものであると認識しておりますが、当社グループの認識の範囲外で第三者から知的財産権を侵害したと主張され、係争等が発生した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 特に一部製品において、特許実施許諾の契約を結んで製造を行っておりますが、何らかの事情により提携関係が解消され、特許の実施許諾が受けられない状態になった場合、当事業に影響を与える可能性があります。

 

⑦ 地震等の自然災害によるリスクについて

 当社グループの本社・工場等の設備安全について火災・地震などの自然災害の発生時に、人的被害・工場などの設備破損が生じないよう、防災シミュレーション活動などを通じて管理体制の確立を行っております。しかしながら、想定以上の地震等が発生した場合、生産活動や商品供給に支障をきたしたり、復旧などにかかる費用などで業績及び財務状況に大きな影響が出る可能性があります。

 

 

⑧ M&A及び業務提携等に関するリスクについて

 当社グループは、M&Aや業務提携等を通じた事業基盤の強化に取り組んでおります。これらを実行するにあたっては、対象企業の入念な調査、検討を行いますが、未認識債務の判明等や事業の展開等が計画どおりに進まない場合、当社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 借入金のリスクについて

 当社グループの借入金の一部は、取引先金融機関とシンジケート・ローン契約及びコミットメント・ライン契約を締結していますが、これらの契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上返済請求を受けることがあり、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑩ 情報セキュリティに関するリスク

 不正なアクセスや外部からのサイバー攻撃が世界中で増え続けている中、当社グループは情報セキュリティ強化に取り組んでおりますが、外部からのサイバー攻撃やその他の原因によって情報システム機能に支障が生じた場合、またはサービスプロバイダーによるサービス停止等が発生した場合は、当社グループの事業活動、業績及び財務状況に大きな影響が出る可能性があります。

 当社グループは、顧客等から入手した個人情報並びに当社グループ及び顧客の技術、研究開発、製造、販売に関する機密情報を様々な形態で保持及び管理しております。当社グループはこれらの機密情報を保護するための管理を行っておりますが、当初想定していない事態が発生した場合は有効に機能しなくなる可能性があります。そのため、これらの情報が権限なく開示された場合、当社グループが損害賠償請求、または訴訟を提起される可能性があり、当社グループの業績、財務状況、評判及び信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ その他のリスクについて

 上記以外でも、当社グループの業績は、急激な技術革新等による社会インフラや市場競争状態の変化、当社グループの財務的・経営的状況の変動、国内外の主要市場における貿易規制等各種規制、移転価格税制等の国際税務リスク、株式市場や債券市場の大幅な変動により多様な影響を受けます。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 経営成績の状況

当連結累計期間における国内経済は、経済活動の正常化に伴い個人消費は増加基調を保ち、緩やかな持ち直しの動きを維持しました。また、北米及び欧州経済は、インフレと金利上昇による景気の後退懸念が強まりながらも賃上げの広がりや雇用の増加もあり、個人消費は堅調さを保ちました。アジア経済は、中国における経済活動再開後の景気回復が鈍く、そのほかのアジア地域も輸出や設備投資需要に勢いを欠き回復は緩やかなものに留まりました。

このような状況のもと、当連結累計期間の連結経営成績は、主に時計事業が堅調に推移し、売上高は3,128億円(前年同期比3.8%増)、営業利益は250億円(前年同期比5.7%増)と増収増益となりました。また、経常利益は308億円(前年同期比5.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益については229億円(前年同期比5.1%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

(時計事業)

ウオッチ販売のうち、“CITIZEN”ブランドの国内市場は、物価上昇に伴う消費マインドの低下が見られながらも、『ATTESA』や『PROMASTER』などの男性向けウオッチの好調に支えられ、またインバウンド需要にも回復が見られたことで、増収となりました。

海外市場のうち北米市場は、消費者物価指数の高止まりを受け、消費者の節約志向が高まる中、ジュエリーチェーンや百貨店流通は弱含んだ動きが見られましたが、EC販売やトラベル流通が好調に推移したことで増収となりました。欧州市場は、物価高に見舞われながらもイギリス、イタリアなどが好調に推移し、フランスにおいても新たな取扱店の拡大が順調に進んだことなどにより増収となりました。アジア市場は、地域により濃淡はあるもののインド、シンガポール等は回復傾向がうかがえました。中国市場は、コラボ商品が好評を得ると共にSNSを活用した新たな販売を試み、増収となりました。

“BULOVA”ブランドは、主力の北米市場において、ジュエリーチェーンなどの主要流通に勢いを欠く展開となったものの、トラベル流通など新たな販路の広がりが補い、増収となりました。

ムーブメント販売は、アナログクオーツムーブメントが欧米市場における景気後退懸念を受け慎重な動きとなりましたが、機械式ムーブメントが堅調に推移し、増収となりました。

なお、腕時計の生産規模は、前連結会計年度比10.5%増加し、約1,709億円(販売価格ベース)でありました。

以上の結果、時計事業全体では、長引く世界的な物価上昇に伴う消費マインドの低下が懸念される中、グローバルブランドや、プレミアムブランドおよび機械式時計の強化に向けた取組みを進めたことで、売上高は1,662億円(前年同期比10.8%増)と、増収となりました。営業利益においては、売上高の上昇と継続的な収益性改善に向けた取組みにより、198億円(前年同期比19.4%増)と増益となりました。

 

(工作機械事業)

国内市場は、設備投資への慎重姿勢が継続する中、自動車関連の出荷が伸び悩んだほか半導体や空圧機器などの市況も低迷し、減収となりました。海外市場は、欧州および米州市場で主に医療関連の販売が堅調に推移した一方で、中国やその他のアジア市場で続く市況低迷が響き、減収となりました。

なお、工作機械の生産規模は、前連結会計年度比8.1%減少し、約824億円(販売価格ベース)でありました。

以上の結果、工作機械事業全体では売上高は売上高は816億円(前年同期比5.3%減)と減収となりました。営業利益においては原材料価格や輸送費などの上昇に伴い、90億円(前年同期比26.0%減)と減益となりました。

 

(デバイス事業)

自動車部品は、半導体不足に伴う部品の供給不足が緩和するとともに自動車メーカーの生産回復が進み、増収となりました。小型モーターは医療関連など幅広い分野での市況回復が寄与し増収となりました。水晶デバイスはPCやIoT関連市場における需要減速を受け減収となりました。オプトデバイスは需要低迷により減収となりました。

なお、オプトデバイスの生産規模は、前連結会計年度比15.6%減少し、約91億円(販売価格ベース)であります。

以上の結果、デバイス事業全体では売上高は424億円(前年同期比5.0%減)、営業利益は4億円(前年同期は8億円の営業損失)と減収増益となりました。

 

(電子機器他事業)

情報機器は、市況環境に対する見通しの悪化から需要の回復は弱いものとなりPOSプリンターやバーコードプリンターが伸び悩んだものの、フォトプリンターの需要拡大に支えられ、増収となりました。健康機器は、体温計の需要低迷が継続したほか、血圧計も回復傾向にあるものの前年を上回るには至らず、減収となりました。

以上の結果、電子機器他事業全体では、売上高は225億円(前年同期比10.0%増)、営業利益は15億円(前年同期比38.7%増)と増収増益となりました。

 

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ254億円増加し、4,154億円となりました。資産の内、流動資産は、現金及び預金が11億円減少した一方、受取手形及び売掛金が40億円、棚卸資産が75億円増加したこと等により、80億円の増加となりました。固定資産につきましては、有形固定資産合計が84億円、投資有価証券が75億円増加したこと等により、173億円の増加となりました。

負債は、前連結会計年度末に比べ21億円増加し、1,593億円となりました。これは、電子記録債務が38億円減少した一方で、営業外電子記録債務が16億円、リース債務が27億円増加したこと等によるものです。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ、為替換算調整勘定が158億円、その他有価証券評価差額金が64億円、それぞれ増加したこと等により233億円増加し、2,561億円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度に比べ11億円増加し、当連結会計年度末には、803億円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、前連結会計年度と比べ179億円増加345億円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益が293億円、減価償却費123億円等の増加要因がありました一方、仕入債務の減少額86億円、法人税の支払額62億円等の減少要因によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ8億円支出が減少し、126億円の支出となりました。これは主に投資有価証券の売却による収入27億円等の増加要因がありました一方、有形固定資産の取得による支出159億円、無形固定資産の取得による支出19億円等の減少要因によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度と比べ130億円支出が減少し、269億円の支出となりました。これは主に自己株式の取得による支出128億円、配当金の支払額98億円等の減少要因によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様でなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことをしておりません。

このため生産、受注及び販売の実績については、セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

なお、経営者は見積り及び判断・評価につきまして、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における経営成績等に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 経営戦略の現状と見通し

当社グループの経営戦略の現状と見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報についての記載

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び部品等の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、主に生産設備投資であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としております。自己資金につきましてはグループ会社間の資金効率を上げるためキャッシュマネージメントシステムを導入しております。設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入と債券市場からの社債等による調達を基本としております。

当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は71,343百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は80,338百万円となっております。

不測の事態に備えて、金融機関との良好な関係の維持に努めるとともに、複数の金融機関との間で合計20,000百万円のコミットメントライン契約を締結しております。

なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

 

⑥ 目標とする経営指標の達成状況

当社グループは、2030年に向けた長期ビジョンとして「豊かな未来(とき)をつなぐ Crafting a new tomorrow」を掲げています。長期的な視点から、当社グループのありたい姿を描き、そこからバックキャストすることで我々のマテリアリティを再設定し、「中期経営計画2024」を策定しています。

2022年度から2024年度までの「中期経営計画2024」においては、引き続き時計事業と工作機械事業を、当社グループの成長を牽引するコア事業と位置づけ、リソースを戦略的に投資していくことで、更なる成長を目指していきます。

2023年度連結業績は、時計事業が着実に売り上げを伸ばすことができ、増収増益となりました。ROEは9.7%となり、昨年度に続き中期経営計画の目標指標であるROE8.0%以上を達成することができました。

最終年度である2024年度の連結業績予想は、工作機械事業がまだ回復途上であることから、目標指標である売上高3,200億円には届かない見通しとなっていますが、引き続き時計事業と工作機械事業をコア事業と位置づけ、中長期的な視点で取り組みを進めてまいります。

 

中期経営計画2024

 

2025年3月期

目標指標

2024年3月期

実績

売上高

3,200億円

3,128億円

営業利益率

8.0%

8.0%

ROE

8.0%以上

9.7%

 

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、グループ事業戦略に基づき、“市民に愛され市民に貢献する”という企業理念実現のため、将来を見据え、新たな顧客価値創出を担う研究開発体制を構築しております

研究開発体制としては、研究開発センターが中央開発機能を持ち、経営方針に沿ってグループを俯瞰した研究開発を行っております。また、それぞれの事業に関わる製品開発、生産技術開発等は、時計事業の製品開発部門と技術開発部門、および各事業会社が担っております。 

なお、研究開発費につきましては、各事業に配分できない基礎研究費用1,016百万円が含まれており、当連結会計年度中に投下した研究開発費は、5,807百万円であります。

 

主な研究開発活動

① 研究開発センターにおける研究開発活動

研究開発センターにおいては、当社のもつ基盤技術をより深化させるとともに、技術マーケティング活動にも力を入れ、新たな顧客を創造し続けることができる新技術・新製品の開発を行っております。また、グループ各社における設計および製造の品質向上に関する技術支援も行っております。

 

② 時計事業

シチズン時計㈱では、要素部品の小型化、高性能化により、小型化・薄型のムーブメントを実現し、シチズンブランドの主力商品であるエコ・ドライブのラインアップの強化を推し進めると共に、高精度な機械式ムーブメントの開発にも注力しています。

プロフェッショナルスポーツウオッチとしての、「想像力」という価値を提案する『シチズン プロマスター』から、初となる本格的な「メカニカルGMT」を2024年1月に発売しました。本モデルは24時間針を使用することで、2つのタイムゾーン確認が可能です。ケースとバンドのつなぎ目は、航空機の翼断面に着想を得た空気の流れをイメージしてデザイン。ヘアライン仕上げを多く用いたケースには、要所要所にミラー仕上げを取り入れてメリハリを付けています。デジタル社会に欠かせないスマートフォンやタブレット等から発せられる磁力による時計の時刻精度への影響を防ぐため、ムーブメントの耐磁性能を強化した「第2種耐磁」を備えています。また、平均日差-10~+20秒、持続時間約50時間と高い性能を実現しています。

今後も、腕時計としての美しさと精度を追求し、グローバル展開を目指した環境に優しい「エコ・ドライブ」、「エコ・ドライブ電波腕時計」と、マニュファクチュール(自社一貫生産)としての実力を発揮した機械式時計の拡販に向け、表面処理・外装技術、精密加工技術、低消費電力技術、高感度受信技術、高密度実装技術、エネルギー源、通信技術の開発を継続し、環境に配慮した上で「技術と美の融合」を実現していきます。

当事業に係わる研究開発費は1,585百万円であります。

 

③ 工作機械事業

シチズンマシナリー㈱では、グローバル化と情報化の進展による顧客ニーズの多様化に対応する革新的なモノづくり『個の量産』を提唱し、事業を推進しています。

メインとなる製品ブランドとして、主軸台移動形自動旋盤の「Cincom」、主軸台固定形自動旋盤の「Miyano」を中心とした工作機械商品群と、ロボットをはじめとする工作機械の周辺装置「FAフレンドリー」を展開しています。IoT分野においては、当社が蓄積した多彩なソリューションを提供するalkapplysolution(アルカプリソリューション)を展開しています。

これらの製品群を支える技術として、切削加工において切りくずの絡みつきを解消するLFV(低周波振動切削)技術、残材削減機能を実現する摩擦接合技術、センシング技術やAIを活用した故障予測についても研究開発を推進しており、生産性向上、自動化、環境負荷低減などを通じ、受注から出荷までのお客様のものづくりワークフローを支えるトータルソリューションを提供しています。

今後も革新的なモノづくりの実現を通して、お客さまの安心と成長、そして世界中の製造業の発展及び持続可能な社会を目指し、シチズンマシナリーは挑戦を続けます。

当事業に係わる研究開発費は1,012百万円であります。

 

④ デバイス事業

シチズンファインデバイス㈱は、長年築き上げてきた独自の技術を活かし、各事業部門の技術の融合を図り、新技術ならびに新製品の開発を積極的に行うとともに、マーケティング活動も盛んに行い、新たなビジネステーマ創出につなげています。

金属部品加工の分野では、従来の自動車向け各種部品加工から、他の用途市場への展開を行い、その必要となる技術の獲得と開発を進めています。CAE解析による設計開発の妥当性評価、および量産時の早期課題解決の実現に向け継続的に取り組んでいます。既存製品に関しては、生産性向上を目的とした積極的な合理化推進、切削加工を中心とした技術のレベルアップ等でコスト競争力の向上を図っています。また、環境に配慮した工法開発を進め、新しい工法による製品をお客様に提案しています。

マイクロデバイスの分野においては、省エネ・小型化用途に向けた水晶製品、加工用ハイパワー半導体レーザー用サブマウントなどを開発しています。さらに、これまで培ったセラミックス・水晶製品の技術ノウハウにMEMS技術を融合して、新たな高付加価値製品の創出に取り組んでいます。    

液晶デバイスの分野では、表示用途としては無機配向膜を用いた高耐光性LCOS、光変調用途としては近赤外光用の光変調素子開発を進めています。

センサの分野では、EV化が進む自動車に代わり、環境対応、省エネ開発が求められる船舶、コージェネレーション等の中大型エンジンにおける市場創出を目指して、製品開発活動を進めています。

また、精機事業の分野では、AIを活用した画像検査装置を社内へ導入し、量産の中で課題を抽出し検査精度の向上を目指すとともに、他製品への導入も視野に入れた技術開発を進めています。

 

シチズン電子㈱ではLEDを中心としたオプトデバイス事業と、精密加工技術を活かした応用製品事業を中心に、開発提案型企業として新鮮で驚きのある製品づくりに挑戦しています。

照明用LEDは、高効率を保ちながら演色性を高くした、「CITILED COB Series Type-Y」を2023年1月に量産化し、地球規模で取組む省電力によるCO2の削減にも貢献する製品の開発を進めて参りました。現在は、スポットライト向け製品にもこの技術を適用し量産化を進めております。

照明LED以外では、小型マルチカラーLEDの製品開発を行い、パッケージ内で混色性を高めた構造により、レンズやフィルター等、光学設計の負荷を軽減可能な製品提案を行っております。応用製品事業では小型・薄型、防塵・防水といったシチズン電子が得意とする技術を応用し、急速に発展しているウェアラブル市場向け製品の開発や、市場ニーズに応える新たな付加価値の創出として信頼性が高く多機能な入力デバイスの開発にも取り組んでいます。

当事業に係わる研究開発費は1,356百万円であります。

 

⑤ 電子機器他事業

シチズン・システムズ㈱では、業務用プリンター製品及びヘルスケア製品を中心に開発を行っております

業務用プリンターの分野のうち、POSプリンターは、現状POS製品の特長を生かして、セルフ精算システムや中小の飲食店でも導入しやすい整理券システムなどソリューションビジネスに向けた対応を進めております。バーコードプリンターは、特定市場に対応した製品の開発を進めております。フォトプリンターは、多様化する市場要求に対応した新製品の開発に取り組んでおります。

ヘルスケア製品の分野においては、新しいスマートフォンアプリを開発し、アプリと連携可能なBluetooth機器の商品ラインナップを拡充しております。

当事業に係わる研究開発費は836百万円であります。