第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、2022年7月の経営統合において、Purpose(存在意義)とMission(社会的使命)を再定義いたしました。従来の事業やサービスをしっかり育てながら、今後の成長分野を「みらいドメイン」と定め、街づくり・里づくり/企業DX・GX、グリーンエネルギー事業、ソフトウェア事業、グローバル事業の拡大などにグループのリソースを結集し一層の事業成長の加速を図りつつ、お客様や社会の課題解決、地域活性化の支援に取り組むことで、企業価値の向上と持続的な成長を図ってまいります。

  Purpose(存在意義)

技術と挑戦で「ワクワクするみらい」を共創する

Mission(社会的使命)

・ お客様の期待にお応えし、豊かな社会の実現に貢献する

・ 常に技術とビジネスモデルを磨き、高い付加価値を創造する

・ パートナー会社と協力し合い 「みらいのインフラ」を創り守り続ける

・ 多様な社員がいきいきと働く「魅力的な企業グループ」であり続ける

・ サステナビリティとコンプライアンスを重視し、社会の信頼に応える

 

(2) 会社の経営環境と中長期的な経営戦略

当社グループを取り巻く事業環境は、通信キャリアのインフラに関わる設備投資は中長期には減少トレンドにあり、今後も投資の中身がソリューション系にシフトしている流れは進むと予想されます。

一方、全国的なデジタルインフラ整備や、地域デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた、自治体行政や地域社会でのDXの取り組みが進められております。さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた地方創生に資する地域脱炭素の推進、地域特性や気候風土に応じた再生可能エネルギーの利用や水素の活用、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現が期待されております。また、気候変動に伴い、近年激甚化する自然災害等に対するレジリエンスの向上が求められております。

このような環境のなか、当社グループは、新たに再定義したPurpose(存在意義)Mission(社会的使命)のもと、幅広い社会インフラ領域における様々な社会課題の解決にこれまで以上にしっかりと貢献できる企業グループへと進化していくことを目指し、2030年に向けた新たな事業ビジョンとして、『MIRAIT ONE Group Vision 2030』を策定いたしました。合わせて、2022年度を初年度とする5ヶ年の中期経営計画を策定しており、これを達成することを目標といたします。

 

〔『MIRAIT ONE Group Vision 2030』および新中期経営計画〕

『MIRAIT ONE Group Vision 2030』における経営戦略(概要)

『MIRAIT ONE Group Vision 2030』においては、我々が「変わり」、未来が「変わる」をキーワードに、成長戦略として5つの事業変革(5Changes)を柱としております。

◇ Change1「人間中心経営」

 ・みらいカレッジ (「学び」と「つながり」を提供する“事業構造改革の原動力”)

 ・社員にとって働きやすい職場づくりと心身の健康を守る「健康経営」

 ・ワーク・ライフバランスに対応した“ミライト・ワン流”働き方改革

◇ Change2「事業成長の加速」

 ・人財成長による事業成長に戦略的に取り組み、成長分野である「みらいドメイン」にグループ内のリソースを有機的に組み合わせて結集(フルバリュー型モデルへの事業構造改革の推進)

  ◆街づくり・里づくり事業や、企業のDX とグリーン化推進事業(GX)の加速

  ◆脱炭素化に貢献するグリーンエネルギー事業の拡大

  ◆顧客のDX に貢献するSI 事業の強化

  ◆海外のデータセンタ関連事業やインフラシェア事業を推進するグローバル事業の強化

 ・既存事業の顧客基盤を強化 (顧客の拡大、顧客の成長への対応)

◇ Change3「利益性トップクラス」

 ・3社統合による徹底した集約・効率化による経営基盤の強化

 ・データインサイト及び生成AI等の活用による業務運営の抜本的な見直しと効率化

 ・グループ連携の推進による既存オペレーションとコストの見直し

◇ Change4「データインサイトマネジメント」

 ・ナレッジベースのデータ環境整備、営業アプローチの最適化(攻めのDX)

 ・バリューチェーン改革、スマート施工、BPO/RPA・ロボティクス活用(守りのDX)

 ・エキスパートおよびコア人財の育成、全社リテラシーの向上(DX 人財の育成)

◇ Change5「ESG 経営基盤強化」

 ・温室効果ガス削減目標(SBT)の達成に向けた取り組み

 ・ミライト・ワン パートナー会による社会価値の共創

 ・監査体制充実と三線ディフェンスによる監査機能強化

 ・新たなグループマネジメント体制によるコーポレートガバナンス強化

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(以下、「KPI」という。)として、第5次中期経営計画において、売上高、みらいドメイン比率(※)、営業利益(率)、ROE(自己資本利益率)、EPS(1株当たり当期純利益)を採用し、2026年度における目標を売上高7,200億円以上、みらいドメイン比率40%以上、営業利益(率)7.5%以上、ROE10%以上、EPS年成長率10%以上に設定しております。

なお、非財務目標については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載の通りであります。

(※)売上高に占めるみらいドメイン(事業成長を目指す分野)の比率

当該KPIを採用しているのは、株主をはじめとする全てのステークホルダーが、当社グループの経営方針・経営戦略等を理解する上で重要な指標であるとともに、その進捗状況や、実現可能性の評価等を行うことが可能であるとの認識によるものであります。

なお、営業利益及びROE、並びに非財務目標の「温室効果ガス排出量」については、グループ会社の業績並びに企業価値向上への貢献意識を高めるため、導入している業績連動型株式報酬制度「株式給付信託」における付与ポイント算定のための指標にも採用しております。

 

(注)当該KPIの各数値については、本報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、事業環境の変化に対応した事業運営を推進していく必要があり、「(2) 会社の経営環境と中長期的な経営戦略」に記載のとおり、2030年に向けた新たな事業ビジョン『MIRAIT ONE Group Vision 2030』を策定し、幅広い社会インフラ領域における様々な社会課題の解決に貢献し続ける企業グループへ進化していくことを目指して、5つの事業変革(5Changes)に取り組むこととしております。

2023年度は、

①企業内大学『みらいカレッジ』の利用者拡大やリスキリング促進によるマルチ資格取得者の育成、人事制度改

 革、健康経営の推進など、事業成長のための人的資本投資

②街づくり・里づくり、グリーンエネルギー事業の拡大や、西武建設㈱、国際航業㈱とのシナジー創出など、フ

 ルバリュー型モデルによる事業成長の加速

③業務フローの標準化・シンプル化やDX・生成AIの活用など、効率的な事業運営とバリューチェーン改革による

 利益性の改善

④カーボンニュートラルの実現に向けたGHG削減など、ESG経営基盤の強化

⑤上記を支え、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するキャッシュアロケーション計画の実行など、B/S

 (バランスシート)面から見た成長戦略の推進

等に取り組みました。また、2024年1月に発生した令和6年能登半島地震におきましては、グループ一体となって

被災地域の通信設備の早期復旧に全力で取り組んだほか、2023年12月に子会社化した国際航業㈱により、各地の被

災状況を早期に把握するための航空写真等データを関係機関へ提供いたしました。

引き続き、未来の社会インフラを「創り・守る」、信頼ある企業グループであり続けるよう取り組んでまいります。

なお、2023年度は成長分野拡大のチャレンジに伴い、複数の不採算案件が発生いたしました。今後は、全社的なリスクマネジメントの強化による再発防止にも注力してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

当社グループでは、代表取締役社長を委員長とするESG経営推進委員会が、ESG経営全般にまつわる基本方針や戦略の策定、重要課題の特定や各種環境イニシアティブへの対応等を実施しています。

2022年7月からは、コンプライアンス担当役員を委員長とする「リスク管理委員会」「コンプライアンス委員会」および「人権・D&I委員会」をESG経営推進委員会のもとで運営する体制としています。

リスク管理委員会ではリスク管理を効果的・効率的に実施するための方針・体制等を審議・決定し、コンプライアンス委員会では当社グループのコンプライアンス上の問題となる事例の報告・是正やコンプライアンス意識向上施策等の検討を行います。「人権・D&I委員会」では人権に関するリスク状況の報告や対処する課題、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等にまつわる議論・検討を実施します。


 

(2)マテリアリティの特定

中長期かつ持続的な成長と企業価値向上の実現にあたっては、世界的な脱炭素社会への取り組みの加速など豊富な事業機会を取り込むと同時に、人的資本や気候変動にまつわる各種リスクを見据え、対応策を講じることが必要です。こうした機会とリスク認識のもと、2021年に策定した9つのマテリアリティにおいては、ミライト・ワン グループが取り組むべき社会的課題等を明らかにし、中期経営計画の重点施策として推進しています。

マテリアリティの特定にあたっては、ESG経営推進委員会において、お客様や社員アンケート、ステークホルダーからのご意見、社会的責任に関する国際的ガイドラインから抽出した社会の重要課題、および当社グループへの期待を踏まえて議論を重ね、経営会議、取締役会の審議を経て決定しています。

 


 

<マテリアリティの特定プロセス>

■STEP1 社会課題の抽出、カテゴライズ

GRIスタンダード、ISO26000等組織の社会的責任に関する代表的な国際的ガイドラインや、SDGs、ESG評価機関の評価項目等を参照し、検討すべき課題を包括的に抽出。

 

■STEP2 優先順位付け

抽出した課題を、ステークホルダーからの期待やミライト・ワン グループの存在意義、使命を通して、課題解決に貢献すべき、価値創造につながる等の観点で評価・優先順位付け。

ESG経営推進委員会において議論し、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題項目を選定。

 

■STEP3 妥当性確認・特定

選定した重要課題項目の妥当性について、当社グループの経営課題との整合を確認。現状事業へのリスクと将来の機会についてESG経営推進委員会にて協議し、経営会議、取締役会の審議を経て重要課題(マテリアリティ)として特定。特定したマテリアリティについて、関連各部門と協議し、施策、目標を決定。

 

■STEP4 レビュー

目標と実績に基づき、マテリアリティに対する活動の評価を行い、統合報告書に開示。

当社グループ内外へのアンケートや外部有識者からいただいたご意見、SDGs等の国際的目標・ガイドラインやESG評価機関の評価等を踏まえ、レビューを実施。これらをマテリアリティや目標の見直し、事業への反映、開示内容の改善に活用。


 

(3)重要なサステナビリティ項目

上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は①気候変動に対する取組み、②人的資本に関する取組みの2項目を重要項目と認識しております。 

 

①気候変動に対する取組み

■ガバナンス

2021年度はESG経営推進委員会(ESG経営推進体制参照)を9月に設置後、マテリアリティ「環境にやさしい社会をつくる、まもる」を経営会議と取締役会の審議を経て決議したほか、脱炭素社会の実現への貢献を本格化するべく、中期経営計画KPIのひとつである「温室効果ガス排出量削減目標(2030年度)」を設定し、進捗をモニタリングする体制を整備しました。

2030年温室効果ガス排出量削減目標については、SBT(Science Based Targets:科学的根拠に基づく目標)として2023年2月に認定されました。

2023年度は、同委員会を計4回開催し、グループ全体の具体的なGHG排出量の削減状況と削減施策を議論、各種ESG格付機関からの評価対応と結果の分析を行い戦略の策定、各種施策推進を実施しております。

 

■リスク管理

企業集団としてのリスク管理の基本方針と推進体制を「リスク管理規程」により定めるとともに、リスク管理計画に基づき、様々なリスクに対し的確に対応しています。

気候変動関連のリスクと機会についても、ESG経営推進委員会が主管となり、気候変動に伴う外部・内部環境の変化をモニタリングし、事業に影響を与える気候変動のリスクと機会を洗い出しています。洗い出されたリスクと機会については当社グループへの影響度等も評価・分析し、影響度の高いリスクと機会を特定しています。その後、取締役会および経営会議にて審議した上で全社のリスクと機会として組み込んでいます。

 

■戦略

当社グループは、リスクと機会の管理プロセスのもと、2℃未満(1.5℃等)と4℃シナリオを参照し、将来的に発生しうる気候変動関連のリスクと機会を分析しました。その結果、脱炭素社会への移行(政策・法規制/市場・評判)により、今後想定される事象による影響および気候変動による物理的(急性/慢性)影響が顕在化すると評価しました。

これらのリスクに対して中期経営戦略を見直し、「事業を通した脱炭素社会の実現」が重要課題であることを再認識しました。また、当社事業の関わりとして、スマートインフラ/エネルギーソリューションの需要拡大を今後見込まれる機会として特定しました。

 

 

2℃未満の目標(1.5℃等)が達成される未来: 急速に脱炭素社会が実現するシナリオ

想定シナリオ

特定したリスク

機会の考察

取組み

 

種別

内容

 

種別

内容

内容

炭素排出規制の強化

中長期

政策

法規制

•炭素課税による資材・燃料調達コスト増加

•カーボンプライシングの導入などの規制未対応による事業負担増

•削減未達となった場合の排出量に対するクレジット買取によるコスト増加リスク

中長期

製品・サービス/エネルギー

•再エネ・省エネ事業(太陽光発電、EV充電、LED照明等)の需要拡大

•DX、働き方改革による節電の推進

•車両の燃料添加剤の利用等による燃費向上、EV化促進

電力のRE化

短中長期

政策

法規制

•再生可能エネルギー由来電力への転換による電力コスト増

短中長期

製品・サービス/エネルギー

•省エネ設備への転換ニーズ増加

•IoT活用による電力使用の効率化推進

脱炭素化に向けた意識の高まり

短期

市場

評判

•環境への取り組みが不十分となった場合

•新規建設工事の受注減少

•既存保守契約の解除

•レピテーションリスク増加による顧客離れ

短中長期

市場

•リニューアル工事需要の増加

•ZEB、スマートシティ関連の需要の増加

•低炭素製品の特定と調達推進

•ステークホルダーへの適切な情報開示

 

 

平均気温4℃上昇する未来:物理的影響が顕在化するシナリオ

想定シナリオ

特定したリスク

機会の考察

取組み

 

種別

内容

 

種別

内容

内容

自然災害の頻発・激甚化

短中長期

急性

•豪雨や台風等による通信設備・基地局の損傷と復旧コストの増加

短中長期

市場/レジリエンス

•異常気象により無電柱化ニーズの増加

•蓄電池設備や非常用電源確保などの設備強化、需要増加

•マルチスキル人材の育成

•ミライト・ワンパートナー会の連携強化

短中長期

急性

•バリューチェーン寸断による製品・サービスの中止

中長期

市場

•自然災害の頻発・激甚化による通信設備・基地局の防災・減災工事の需要増加

•水道ソリューション

平均気温上昇

長期

慢性

•データセンタなどの空調コストの増大

長期

市場

•空調設備の高効率機器への更改

•空調装置の運用改善

•空調事業の強化

中長期

慢性

•通信設備など建設技能者の熱中症等の健康被害の増加

中長期

レジリエンス

•DX推進、リモート型働き方の一層の推進

•DXによる施工省力化、作業者の健康管理強化

 

 

また、経営陣のESGへの取り組み意識の向上を目的に役員報酬制度を改定し、従来からの業績連動報酬の指標である「連結営業利益」「連結ROE」に加え、非財務目標の「温室効果ガス排出量」を2022年度より新たな指標として導入しました。

 

 

■目標

2021年度に当社グループ(国際航業を除く)として2030年度に向けた温室効果ガス排出量削減目標を設定しています。2023年2月には科学的根拠に基づいた目標として、SBTi(Science based Targets initiative)よりSBT認定を受けました。また、中期経営計画においても非財務目標として設定することで、脱炭素における当社事業の成長機会を着実に取り込んでおります。

なお、国際航業は2023年12月のグループ参画以前の2021年9月に削減目標を設定し、SBT認定を取得しております。

 

 

 


目標

SBT

Scope

1+2

2030年度までに当社グループの温室効果ガス排出量を2020年度(基準年)比で42%削減する

2023年2月

認定取得

Scope
3

2030年度までに当社グループの温室効果ガス排出量を2020年度(基準年)比で25%削減する

2023年2月

認定取得

 

 

 

 

 

国際航業

 

 


目  標

SBT

Scope

1+2+3

2030 年度までに2019年度(基準年)比50%削減する。

2021年9月

認定取得

Scope3には、カテゴリ6,7,11での温室効果ガス排出量が含まれます。

 

 

 

■実績

2020年度、および2023年度当社グループ全体のScope1+2温室効果ガス排出量実績は以下の通りです。本排出量実績については、株式会社サステナビリティ会計事務所による独立第三者の保証報告書を取得しております。

なお、2023年度のScope3温室効果ガス排出量実績については、現在算定中であり、弊社Webサイト「TCFD提言を踏まえた情報開示」(https://www.mirait-one.com/esg/environment/)にて、2024年9月を目途に開示する予定です。

 

 

 

 

 


 

当社グループ全体

(Scope1+2排出量)t-CO2

 

 

2020年度

89,731

 

 

2023年度

77,268

 

 

※当社グループ全体の2023年度温室効果ガス排出量実績については、国際航業の2023年度実績が含まれております。

 

 

[内 訳]

 

当社グループ(国際航業除く)

 

 


カテゴリ

排出量(t-CO2)

 

2020年度

(基準年)

2023年度

 

Scope1

直接排出

66,890

61,811

 

Scope2

間接排出

22,841

12,969

 

 

 

 

 

国際航業

 

 


カテゴリ

排出量(t-CO2)

 

2019年度

(基準年)

2023年度

 

Scope1

直接排出

1,523

1,202

 

Scope2

間接排出

3,961

1,285

 

 

 

 

 

②人的資本に関する取組み

<人財育成方針>

新事業戦略として5つの事業変革(5Changes)を掲げている中から、Change1「人間中心経営」へ注力している当社は、価値創造の源泉である人的資本への投資を拡充しています。

特にChange2「事業成長加速」のため、事業成長戦略として『成長分野への事業シフトの加速』『既存事業のDX改革を促進』を図るため、みらいカレッジをプラットフォームとしてリスキリング等により『戦略的な人財育成』を展開し、成長分野への人財流動の促進を図ります。また、マクロCDP(事業戦略)とミクロCDP(社員CDP)を対話によりマッチさせるプロセスにより、社員が安心感とワクワク感を持って新しい事業分野へ挑戦できるように育成する方針に基づき推進しています。

また、人財育成を支えるためにミライト・ワン流スマートワークライフスタイル改革を進め、社員のリスキリングのための時間を生み出すとともに、ダイバーシティ&インクルージョン施策を進め、多様な社員が参画できる働き方を進めています。

 

<社内環境整備方針>

Change1「人間中心経営」をベースとした社内環境の整備として、ミライト・ワン流スマートワークライフスタイル改革を進めるとともに、リスキリングの手段として2022年7月に開学した「みらいカレッジ」の拡大充実(裾野の拡大:パートナー企業への展開加速、事業戦略に沿った講座拡充、戦略的な学びの充実:成長分野(みらいドメイン)創出を支える育成、リアルキャンパスの設備充実等)やJOB型・社内副業等の人事制度の創設、戦略的な他企業への出向や海外トレーニー制度の整備など、「自発的な学び」から「戦略的な学び」を行える環境を整えていく方針を立て、実行しています。

 

<人財育成に関する取組み>

■未来を変える人財の育成に注力

人的資本に関する取組みについては、経営戦略と人財成長戦略を繋げる価値創造ストーリーとして「ミライト・ワン流の価値創造モデル」を策定し実行してまいります。具体的には「①成長分野を担う人財の創出、②競争力ある人財の採用・育成、③多様な人財の活躍と多様で柔軟に働ける環境整備、④健康経営の推進」の4つに施策を大別した上で、2024年度から代表指標(KPI)として、「成長分野への人財創出1,000名+(2026年度まで) 」・「エンゲージメントの向上」を設定し、MIRAIT ONE Group Vision 2030並びに中期経営計画の実現を目指しております。

 

 

■ミライト・ワン流の価値創造モデル


(※1)  開示範囲:※2、※3の印があるものを除き、㈱ミライト・ワン(単体)

(※2)  開示範囲:ミライト・ワン グループ

(※3)  開示範囲:㈱ミライト・ワン(単体)& 国際航業㈱(単体)

(※4)  KPI概要:ミクロ(社員)CDPのための育成面談実施人数

(※5)  KPI概要:社外で成長分野を出向等の契約形態で実施・経験した人数

(※6)  KPI概要:2分野以上に跨る資格取得者数

(※7)  KPI概要:若手の早期離職対策のためのフォロー面談

(※8)  KPI概要:2023年度は内28名が基礎講座を修了

(※9)  KPI概要:技術士、一級建築士、第一種電気主任技術者等

(※10) KPI概要:全女性社員における技術者の割合

 

特に、Change2「事業成長の加速」において今後の成長分野として位置づけるみらいドメイン(街づくり・里づくり/企業DX・GX事業/グリーン発電事業/ソフトウェア事業/グローバル事業)およびフルバリュー型モデルの強化・拡大にあたっては事業構造改革が必須であり、これを担う人財集団の形成に向けて、「内部人財の戦略的強化」と「外部人財の積極的登用」を行っています。

内部人財の戦略的強化では「モバイル」「クラウド」「再生可能エネルギー」「企画提案」「プロジェクトマネジメント」といった複数のスキルを個々の人財が身につける「マルチスキル化」のほか、「データインサイト活用スキル」「DXスキル」等の強化を図っています。

また、外部人財の積極的登用においては、みらいドメインやフルバリュー型モデルなど成長分野を強化するための中途採用を拡大するため、JOB型等の新しい人事制度を設ける他、M&A等を通じた人財獲得を行っています。

 

■抜粋表示① ミライト・ワン流の価値創造モデル(INPUT~OUTPUT)


 

■抜粋表示② ミライト・ワン流の価値創造モデル(INPUT~OUTPUT)


 

■企業内大学「みらいカレッジ」を活用した人財育成

2022年7月に企業内大学「みらいカレッジ」を開学しました。リアルキャンパス(千葉/埼玉/兵庫)とデジタルキャンパスからなるみらいカレッジは、「テクニカル学部(技術力)」「マネジメント学部(管理能力)」「ソーシャル学部(社会力)」の3分野で2024年3月末現在、333講座を提供し、当社グループおよびパートナー会社を含む延べ1.9万人規模の利用登録者数となっています。個々人が確実にスキルを修得するためにLMS(Learning Management System)による学習管理とサポートを行うほか、ビジネスチャット機能や動画投稿による情報交換といったコミュニティ機能も拡充し、会社の枠にとらわれない交流を促進し、「自発的な学び」から「戦略的な学び」を行える環境を整備しています。

 

 

■人財育成体系

前述を含む当社グループ全体の人財育成体系は、事業展開に必要な専門能力を高めていくための「分野別モデル体系」と、階層ごとに共通的に求められる知識等の修得を図る「階層別育成体系」で構成することで、社員一人ひとりの成長を支援し、今後の事業成長を支える人的資本の強化を計画的に推進しています。

具体的には、入社直後の導入研修から幹部社員研修に至るまで、各階層で期待される役割やキャリアステージに応じて身につけるべきスキルやナレッジを修得できるよう設計しています。なかでも新入社員向けについては、理系・文系を問わず活躍できるよう特に充実した教育研修体系を準備しています。また、面談制度を整備し、マクロCDP(事業戦略)とミクロCDP(社員CDP)を対話によりマッチさせるプロセスにより、各種資格取得への積極的なチャレンジを促すとともに、難易度に応じた報奨金制度を設け、個々の社員の成長意欲に応えるとともに、成長分野への人財シフトを図っています。

 

■メンタリングプログラム

新入社員を対象にメンタリングプログラムを導入しています。配属部署における上司とは別に指導・相談役となる先輩社員(メンター)を任命し、対話による気づきと助言によって新入社員(メンティ)の自発的・自律的な成長を促す仕組みとしています。定期的な報告を受けてのフィードバックや月例面談を通じ、新入社員だけでなく、メンターを務める先輩社員も成長できるプログラムとしています。

 

■次期の経営マインドを育成する「未来塾」

次世代経営幹部の計画的育成を目的として、2020年7月に「未来塾」を創設しました。ワークショップやディスカッション主体の研修プログラムを通じて会社経営に関する視野を広げ、自社の経営課題について具体的な解決策を検討することにより経営者に相応しい対応能力を高めるほか、研修チーム内・チーム間の議論や検討を通じて自らが未来のミライト・ワンの経営を担うというマインドを醸成します。なお、2023年度からは主要グループ会社も参画しています。

 

■海外事業拠点における研修プログラム

海外拠点においても、現地社員向けに様々な研修を行っています。例えばLantrovisionグループでは、人財育成・研修の専任担当者を任命し、構内ケーブルの設計・施工・テスト等の基本的な研修から、入札・見積・契約といった実践的な研修まで幅広いプログラムを用意し、社員のスキルとモチベーションの向上を図っています。

また、各ケーブルベンダーの認証資格を積極的に取得することで品質管理を強化し、顧客満足度の向上や事業競争力の強化に努めています。

 

 

<働き方改革、健康経営の推進>

■トップの主導による健康経営を推進

マテリアリティのひとつである健康経営の推進に注力し、中期経営計画のChange1「人間中心経営」の根本に健康経営を据えている当社グループは、これら取り組みの実効性をさらに高めるべく、2022年7月に「ミライト・ワン グループ健康経営宣言」を制定しました。代表取締役社長の主導による健康経営を推進していきます。


■健康管理の支援

全社員を対象とする定期健康診断のほか、特定年齢での人間ドックや特定保健指導等を実施し、社員の健康管理に役立てています。また、国内各地の保養施設の提供によるリフレッシュの機会づくりや、健康保険組合によるウォーキングイベント等の健康増進施策も継続的に実施しています。

 

■人間ドックへの補助

健康保険組合からの補助の他に、会社からの補助も実施することにより、自身の健康管理充実に役立てています。

 

■『健康News』『みまもりメール』の定期配信

健康関連の周知等、基本毎月発行。その時に合わせた健康情報を当社グループで共有し、活用しています。『みまもりメール』は、現場の方へのスマホ健康情報で、パッと見て内容が分かるように工夫しています。

 

■メンタルヘルス

厚生労働省が義務付けている「ストレスチェック制度」は社員自身のストレスへの気づきや職場改善を通じて、メンタル不調となることを未然に防止する一次予防を目的としています。当社グループは同制度の義務化に先立ってメンタルフォロ-体制(相談窓口等)を整備し、ストレスチェック実施後の集団分析を踏まえ、部門ごとのメンタルヘルス研修を実施して職場改善につなげることで、メンタル不調の未然防止に努めています。

 

■メンタル不調による病気休職者の復職支援

メンタル不調による傷病休暇・傷病休職にある社員に対しては、メンタルヘルス推進担当者によるサポートをはじめ、休業開始から復職後のフォローアップまで全面的に支援しています。休業中はリワーク施設を活用した「リワークプログラム」を実施し、復職の意思表示があった場合には主治医による診断をもとに、産業医・会社と連携しながら復職審査委員会にて復職の判断を行います。復職後は、短時間勤務の励行や時間外勤務の制限等、就業上の配慮を行っています。

 

 

■働きやすい労働環境の整備

当社グループは、労働基準法をはじめとする労働関係法令の遵守はもとより、社員の働き甲斐に資するよう、労働関係法令を上回る処遇制度を設けています。また、同一労働・同一賃金の考えを尊重し、非正規社員も正社員と同等の待遇となるよう、特別勤務手当や時間外勤務手当等を正社員と同じ割増率で支給するほか、特別休暇の付与や社員への登用等を実施しています。

 

■ミライト・ワン流スマートワークライフスタイル改革の推進

当社グループは、昨今の労働市場の変化や事業環境の変化に対応しつつ持続的成長を図るため、「ミライト・ワン流スマートワーク・ライフ宣言」を制定しています。当宣言に基づき、①多様なライフスタイルに対応した時間と場所に拘らない働き方の推進、②リスキリングのための仕組みの整備、③外部人財の獲得、多様な人材の確保、④健康経営推進などからなるワークライフスタイル改革を、整合的・統合的に進めています。

 

■「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定

当社は2024年3月、「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。

「健康経営優良法人」認定とは、経済産業省による環境整備施策の一環であり、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」が社会的に評価を受けることが出来、特に優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度となります。

 

<人権尊重とダイバーシティ&インクルージョンの推進>

■人権尊重

人や社会と共存するより良い環境づくりを最大のミッションとし、お客様から最高の満足と信頼を得られるようグループ全体で取り組んできたミライト・ワン グループは、企業活動に関わる全てのステークホルダーの人権を理解し、グループ全体で人権尊重の責任を果たすことが、今後の持続的な成長と企業価値向上に不可欠であると考えています。

 

■ミライト・ワン グループで人権基本方針を制定

前述の基本認識のもと、マテリアリティのひとつである「人権尊重とダイバーシティ&インクルージョンの推進」に注力している当社グループは、人権尊重へのコミットメントを強く発信し、グループ内での認識をより明確にするとともに、様々なステークホルダーと協働してあらゆる企業活動における人権尊重の行動を進めていくため、2022年7月に「ミライト・ワン グループ人権基本方針」を制定しました。当社グループの全社員が本方針に基づき、あらゆる事業活動の根底に人権尊重の意識をもって行動し、広く社会の皆様から信頼される企業を目指すとともに、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

■推進体制

あらゆる企業活動に関係する人権課題について全ての役員・従業員の理解・浸透を図るため、代表取締役社長を委員長とする「ESG経営推進委員会」のもとに「人権・D&I委員会」を設置しています。同委員会では人権やダイバーシティに関するリスク状況の報告と対処する課題、施策等を議論し、人権マネジメントの強化やダイバーシティ&インクルージョン施策の推進に取り組みます。

 

■具体的取り組み例

当社グループは、児童労働や強制労働を行わせることはなく、労働者の権利保護に留意し、法で定められた最低賃金以上の賃金としているほか、経営状況が極めて悪化した場合においても最大限社員の雇用維持に努め、これまで指名解雇や整理解雇を実施したことはありません。

また、人権意識の啓発・向上のための階層別研修やコンプライアンス推進活動によってハラスメント行為の禁止等に取り組むとともに、「コンプラ目安箱」「なんでも相談室」「社外通報窓口」の3種のヘルプラインを設置し、通報者保護に配慮した上で問題解決に向けて対応しています。

さらに、人権デューディリジェンスプロセスの構築に取り組み、当社グループにおける人権課題の特定、リスクの評価及びリスク低減措置の整備を推進しております

 

 

■労使関係

当社グループは、労使の相互信頼を基盤とし、企業の発展と従業員の労働条件の維持・向上を図るため、定期的な労使協議の機会を設け、安定した労使関係の構築に努めています。積極的な事業運営を行い、企業の健全な発展を図るため、事業計画やその他の重要課題について労使で意見交換を行う情報連絡会や労働時間適正化委員会を定期的に開催しています。

 

■多様な社員がいきいきと働く「魅力的な企業グループ」であり続けるために

当社グループは、年齢、性別、学歴、国籍、障がいの有無、性的指向、性自認等に関わらず、個性を尊重し、もてる能力を最大限に発揮できる職場環境づくりを推進しています。

多様な視点や価値観を企業経営に活かすため、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する専門組織「ダイバーシティ&インクルージョン推進室」を総務人事本部に設置し、個々の人財の特性や能力を最大限に活かせる職場環境の整備や、マネジメント層の育成等に注力しています。

マテリアリティのひとつであるダイバーシティ&インクルージョンを重要な取り組みとして位置づけているほか、各ステークホルダーに向けて当社の姿勢を明文化したMissionにおいても、『多様な社員がいきいきと働く「魅力的な企業グループ」であり続ける』を掲げています。

加えて中期経営計画Change1「人間中心経営」の一環として、外国人技術者含む多彩な人財集団の形成に注力しています。

これら一連のダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みをさらに発展させるべく、2022年12月「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を制定しました。個々を尊重し、組織の力とする企業風土の実現に向け、ダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。

 

■女性社員の活躍推進

女性が幅広い分野における能力の発揮やキャリア形成ができるよう、その目的に沿った行動計画を策定するとともに、新卒採用における女性比率や女性管理職数等において具体的な数値目標を設定し、達成に向け取り組んでいます。なお、連結グループに属する全ての会社で数値目標を設定しているわけではないため、連結グループにおける記載が困難であります。

このため、下記の目標及び実績は当社単体のものを記載しております。

 

■目標・実績 (女性活躍推進)

指標

目標

実績

女性管理職数

2026年3月まで20%

(2022年7月比)

63人(+12.5%)(2024年3月末)

新卒採用の女性比率

2026年3月まで25%

27.1%(2024年4月入社)

年休取得率

2026年3月まで70%

73.5%(2024年3月末)

 

※管理職に占める女性労働者の割合の実績は、「第1企業の概況 5従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

■キャリアと育児・介護の両立支援

ワーク・ライフ・バランスや、キャリアと育児・介護の両立支援による就労環境の整備も積極的に進めており、社員が長く安心して働き続けられるよう、子どもが3歳に達するまで取得できる育児休業のほか、小学校3年生修了まで利用できる短時間勤務制度を設けるなど、出産や育児、介護をはじめとするライフイベントに合わせて活用できる制度を、法で定める基準を上回る内容で整備しています。

2023年度末現在で、当社の女性社員の育児休業取得率は100%、男性の育児目的休暇を含めた育児休業取得率は87%となっています。取得率の維持とさらなる向上に向けた取り組みを進めるとともに、育児休職者がスムーズに復職し活躍できるよう、休職中における会社動向等の情報提供、復職前の面談等のサポート施策を実施しています。

 

 

■シニア人財の活躍支援

日本の少子高齢化の進展に対応し、通信建設業に必要な高度技術の有資格者であるシニア人財の活躍を支援すべく、定年後再雇用制度を定め、希望者が引き続き活躍できる環境を整備しています。

また、一定年齢以上の社員を対象にライフプランセミナー等を開催し、社員の雇用延長後の働き方や資金計画等についても支援しています。

 

定年後の再雇用状況(2023年度末現在)

定年退職対象者数

166名

再雇用者数

132名

再雇用率

80%

 

※㈱ミライト・ワン、㈱TTK、㈱ソルコム、四国通建㈱、西武建設㈱、㈱ミライト・ワン・システムズ、国際航業㈱の7社平均

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には次のようなものがあります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①特定取引先への依存に関するリスク

当社グループの主たる取引先は、NTTグループをはじめとする通信事業各社であり売上高に占める割合が高く、通信事業各社の設備投資動向や技術革新等によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、通信キャリア事業からソリューション事業への事業構造の転換と新たな成長分野として位置付ける「みらいドメイン」へのシフトを加速し、従来の事業分野や技術の枠組みを超えた新たな事業機会の創出に向けた取り組みを進めております。

 

②新たな分野への取り組みに関するリスク

新たな分野へのチャレンジにより想定外の重大なリスクが発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは個別案件に関するリスクチェックの徹底とリスクマネジメントの円滑な推進、及びリスクをマネジメントするための事例とノウハウの共有を図ることを目的として、「ビジネスリスク管理室」を設置して最適なリスクマネジメントに努めております。

 

③安全・品質に関するリスク

重大な事故等による不測の事態や品質に重大な問題を発生させた場合、取引先からの信用を失うとともに営業活動に制約を受けるなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは安全や品質に関する統合マネジメントシステム等を活用し、お客様に信頼、評価される高品質なエンジニアリングとサービスをお届けできるよう安全・品質管理にグループ一体となって取り組んでおります。

 

④重要な情報の管理に関するリスク

事業活動を通して、取引先からの技術データ・個人情報等の重要な情報を入手することがあります。予期せぬ事態により情報が流出や悪用された場合には、取引先からの信用を失うとともに損害賠償責任の発生等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループではISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を活用し、グループ一体となって情報漏洩防止を徹底しております。

 

⑤取引先の信用不安に関するリスク

取引先の信用不安が発生した場合は、工事代金の回収不能や工事の施工遅延等が生じ当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループは外部調査機関等を利用した取引先の与信管理と、法務担当による契約書審査を行う等により信用不安リスクの回避に取り組んでおります。

 

⑥資材の調達・価格上昇に関するリスク

自然災害、戦争やテロ、新型の感染症の流行などにより、資材の供給が困難または納入遅延の発生のほか、原材料や資機材、エネルギーの価格高騰により建設コストが上昇した場合は、工事が中断または遅延するなどの影響のほか、発注者による投資抑制や判断の先送りなどにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

そのため、当社グループでは物品不足が生じていない工程を優先的に進めるなど、工期延伸を最小化するための工程管理を綿密に行っています。また、建設コストの上昇については、原材料価格上昇時の条件の契約条項への盛り込み、工事価格への転嫁等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。

 

⑦保有資産に関するリスク

事業運営上の必要性から有価証券等の資産を保有しておりますが、著しい時価の変動等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、定量的・定性的検証を通じ保有意義が希薄と考えられる有価証券等は段階的に縮減し、時価変動リスクの回避に取り組んでおります。

 

⑧自然災害等に関するリスク

大規模災害や感染症の大流行等により当社グループの従業員、協働者、設備等への直接被害のほか、ライフラインの停止、燃料の不足等、不測の事態が発生した場合は、工事が中断または遅延するなど当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは地震等の自然災害や感染症が発生した場合に備え、BCP(事業継続計画)の策定、社員安否確認システムの構築、防災訓練や新しいワークスタイルへの移行等各種対策を講じております。

 

⑨海外事業に関するリスク

当社グループでは、アジア、オセアニアを中心とした諸外国で事業を展開しており、進出国での政治・経済情勢、為替や法的規制等に著しい変化、感染症の大流行や資材価格の高騰及び労務単価の著しい上昇等が発生した場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、グループ内での情報収集、進出国の適度な分散等により、その予防・回避に努めております。

 

⑩気候変動に関するリスク  

地球規模での気候変動による問題が顕在化してきており、企業においても温室効果ガス排出量の削減、産業廃棄物の低減等、環境に対する配慮が求められています。このような配慮は、自社のみならず、サプライチェーンを構成する企業群に亘って要請される傾向であり、当社グループ、パートナー企業等が適切な対応を行えない場合、取引先各社との取引が制限される等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは重要課題(マテリアリティ)において「環境にやさしい社会をつくる、まもる」ことを明確にしており、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同、そのフレームワークに沿った当社グループの事業におけるリスクと機会の分析や、事業活動を通して排出する温室効果ガス(GHG)の把握とその低減に向けた取り組み、産業廃棄物の一層の低減に向けた取り組み等を進めております。

 

⑪M&Aに関するリスク

当社グループは、事業領域の拡大およびビジネスモデルの変革に向けて、シナジー効果が期待できるM&Aを実践していくことでグループの企業価値向上を目指しておりますが、M&A対象会社に期待する利益成長やシナジー効果等が実現できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループではM&Aの実施の際に当社グループの成長戦略と整合しているか、また今後の市場動向の見通しや事業計画、当社グループとのシナジー効果を慎重に検討するとともに、買収後の統合プロセスにおいては、実施すべき事項とその達成時期を定めモニタリングを強化し、シナジー効果の最大化に取り組んでまいります。

 

⑫法令遵守に関するリスク

当社グループは、建設業法、電気通信事業法、電波法等の法令に基づく許認可等を受けるとともに、事業の遂行に関連する各種の法令に則り事業活動を行っておりますが、万一これらにおいて違反が発生した場合は、当社グループの業績と信用に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、当社グループでは社内関係部署において法改正等の動向を注視し、速やかにグループ内への共有を図り必要に応じて社内規程の見直しを行うと共に、当社グループおよびパートナー企業の社員へ向けた啓発活動の実施と実効性のある内部監査や相談体制を構築することにより、法令遵守に継続的に取り組んでおります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営成績

2023年度におけるわが国経済は、経済社会活動の正常化、雇用・所得環境の改善による、緩やかな回復の継続が期待されております。しかしながら、ウクライナ情勢の長期化、物価の上昇、世界的な金融引締めの影響など、先行き不透明な状況は継続しております。

当社グループを取り巻く事業環境については、全国的なデジタルインフラ整備や、地域デジタルトランスフォーメーション(DX)推進に向けた、自治体行政や地域社会でのDXの取り組みが進められております。さらに、カーボンニュートラル社会の実現に向けた地方創生に資する地域脱炭素の推進、地域特性や気候風土に応じた再生可能エネルギーの利用や水素の活用、グリーントランスフォーメーション(GX)の実現が期待されております。また、気候変動に伴い、近年激甚化する自然災害等に対するレジリエンスの向上が求められております。

2024年1月に発生した令和6年能登半島地震におきましては、グループ一体となって被災地域の通信設備の早期復旧に全力で取り組んだほか、2023年12月に子会社化した国際航業㈱により、各地の被災状況を早期に把握するための航空写真等データを関係機関へ提供いたしました。

こうしたなか、当社グループは、2022年度新たに再定義したPurpose(存在意義)、Mission(社会的使命)のもと、幅広い社会インフラ領域における様々な社会課題の解決にこれまで以上にしっかりと貢献できる企業グループへと進化していくことを目指し、2030年に向けた事業ビジョンとして、『MIRAIT ONE Group Vision 2030』及び2022年度を初年度とする5ヶ年の第5次中期経営計画を策定し、街づくり・里づくり/企業DX・GX、グリーンエネルギー事業、ソフトウェア事業、グローバル事業を今後注力すべき成長分野「みらいドメイン」として取り組んでおります。

2023年度は、人財成長による事業成長をスタートする年度として、「みらいドメイン」への事業シフトの加速、人財成長戦略としての戦略的な人財育成と挑戦を支える柔軟な人事制度の整備、及びミライト・ワン流のスマートワークライフスタイル改革を進めてまいりました。

環境・社会イノベーション事業においては、グリーンエネルギー関連工事の増加や土木・建築工事の増加により、売上高の拡大を図りました。また第4四半期は、国際航業㈱の加入が売上高増加に寄与しました。さらに、西武建設㈱との共同営業により受注の拡大に努めました。

ICTソリューション事業においては、大きな不採算案件が発生したものの、グローバル工事やLAN等工事の完工促進やソフトウェア事業の増加により売上高の拡大に努めました。

NTT事業においては、設備運営業務の稼働効率化による利益率の改善を図るとともに、さらなる生産性の向上、新たなビジネス領域への拡大、ガバナンス強化を目的に固定系アクセス子会社の再編の検討を開始いたしました。

マルチキャリア事業においては、CATV工事や一部5G整備工事の減少があったものの、業務集約や業務分担最適化に取り組みました。

また、株主還元の充実と市場環境の変化に対応した機動的な資本政策の一環として、自己株式の機動的な取得(合計 384万株、70億円)を実施する一方、利用目的のない自己株式については一部消却(900万株)をいたしました。

以上の結果、当期の連結業績につきましては、受注高は5,490億5千7百万円(前期比10.2%増)、売上高は5,183億8千4百万円(前期比7.1%増)となりました。利益面につきましては、環境・社会イノベーション事業とICTソリューション事業で発生した大きな不採算案件の影響により、営業利益は178億3千万円(前期比18.2%減)、経常利益は186億9千万円(前期比16.5%減)となり、親会社株主に帰属する当期純利益については、125億3千5百万円(前期比15.2%減)となりました。なお、営業利益率は3.4%、ROEは5.0%となりました。

 

 

報告セグメント別の業績の概況は以下のとおりです。

 

[ミライト・ワンの業績]

ミライト・ワンは、「MIRAIT ONE Group Vision 2030」および第5次中期経営計画の実現に向けた5つの事業変革(5Changes)への取り組みを進めてまいりましたが、通信キャリア各社の投資抑制による通信事業(NTT、マルチキャリア)の減少に加え、ICTソリューション事業において前年度獲得した大型受注案件の反動減や、新たにチャレンジした大規模プロジェクトで発生した不採算案件の影響等により、受注高は2,992億5千4百万円(前期比2.2%減)、売上高は2,974億8千1百万円(前期比2.5%増)、営業利益は66億7千6百万円(前期比47.8%減)となりました。

 

[ラントロビジョンの業績]

ラントロビジョンは、シンガポールにおける新規データセンター建設制限の影響等により、コロナ後の市場回復が想定よりも遅れていること、物価上昇や労働力不足に伴う労務コストの増加により、同国での競争環境が厳しくなっているものの、インドやフィリピンなど周辺国での需要の伸長、円安の影響により、受注高は302億8千8百万円(前期比19.7%増)、売上高は275億4千2百万円(前期比8.0%増)、営業利益は15億1千7百万円(前期比5.4%減)となりました。

 

[TTKの業績]

TTKは、通信事業における誘導対策工事、モバイル回線の品質改良工程等により受注高が増加、光開通工事の減少や一部工事受注の下期集中による繰越工事の大幅増加により、売上高が減少となったものの、通信事業の業務プロセス見直しやモバイル事業のグループ内製化の推進等各種効率化施策により、受注高は419億5千1百万円(前期比7.1%増)、売上高は376億5千万円(前期比2.0%減)、営業利益は27億4千5百万円(前期比2.5%減)となりました。

 

[ソルコムの業績]

ソルコムは、通信キャリア各社の投資抑制による通信事業の減少があったものの、太陽光発電工事や道路情報化案件の受注拡大に加え、既存事業の効率化施策実施や全社による経費削減への取り組みにより、受注高は351億7千9百万円(前期比3.1%増)、売上高は335億4千7百万円(前期比1.1%減)、営業利益は13億9千9百万円(前期比27.0%増)となりました。

 

[四国通建の業績]

四国通建は、前期繰越高の減少や通信キャリア各社の投資抑制による通信事業の減少があったものの、リレーション構築による受注機会の拡大、新領域案件へのチャレンジ、追加工程の積極的な獲得および原価管理の徹底等利益改善の取り組みにより、受注高は251億6千8百万円(前期比13.3%増)、売上高は231億7百万円(前期比4.6%減)、営業利益は24億7千1百万円(前期比5.7%増)となりました。

 

[西武建設の業績]

西武建設は、前期に比べ好調な受注環境の中で、特に西武グループをはじめとする民間工事の受注に注力したこと等に加え、民間工事の順調な進捗等により、受注高は647億1千8百万円(前期比19.7%増)、売上高は669億6千2百万円(前期比29.7%増)、営業利益は14億9千3百万円(前期比164.8%増)となりました。

 

[ミライト・ワン・システムズの業績]

ミライト・ワン・システムズは、ソフトウェア事業の強化、ソフトウェア開発およびシステムインフラの構築・維持によるビジネスの拡大に注力し、特に新規の大型案件、大型の更新案件の受注、生産性向上によるコスト削減の取り組みにより、受注高は285億4千7百万円(前期比16.7%増)、売上高は269億7千万円(前期比6.3%増)、営業利益は18億9千4百万円(前期比60.4%増)となりました。

 

[国際航業の業績]

国際航業は、測量、調査、計画、設計等を行っており、当社グループで掲げるフルバリュー型を加速する「縦の統合」の実現に向け、上流工程を担っていきます。空間情報技術をベースにしたDX・GX、街づくり・里づくり関連分野に注力し、国土強靭化施策や3次元都市モデルの需要の裾野が広がる中、生産性向上と先進的な技術に積極的に取り組むことにより、受注高は繰越工事高を含めて331億1千万円、売上高は130億3千7百万円、営業利益は6億4百万円となりました。

 

(注)国際航業の業績に関する各数値については、子会社化に伴う企業結合会計により3ヶ月間の連結経営成績の数値を記載し

   ております。

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

なお、当社グループが営んでいる事業の大部分を占める情報通信エンジニアリング事業においては生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。

また、「受注実績」及び「売上実績」については、当社の連結での受注及び売上の状況をセグメント別に記載しております。

 

a. 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

ミライト・ワン

295,089

△3.2

ラントロビジョン

30,288

20.9

TTK

41,605

6.3

ソルコム

35,179

3.2

四国通建

25,077

13.6

西武建設

62,687

22.3

ミライト・ワン・システムズ

26,019

19.7

国際航業

33,110

-

合計

549,057

10.2

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  国際航業の受注高は2023年12月分から計上しております。なお、受注高には子会社化時点での繰越工事額を含めております。

b. 売上実績

当連結会計年度における売上実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高(百万円)

前年同期比(%)

ミライト・ワン

295,861

2.1

ラントロビジョン

27,512

9.0

TTK

37,306

△2.6

ソルコム

33,327

△1.6

四国通建

23,044

△4.4

西武建設

65,283

27.7

ミライト・ワン・システムズ

23,011

5.9

国際航業

13,037

-

合計

518,384

7.1

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しております。

2  売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

売上高
(百万円)

割合(%)

売上高
(百万円)

割合(%)

東日本電信電話株式会社

89,497

18.5

86,791

16.7

西日本電信電話株式会社

59,668

12.3

58,685

11.3

 

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度末の総資産は、5,199億6千万円で前連結会計年度末比832億8百万円の増加となりました。内訳は、流動資産で前連結会計年度末比321億4千4百万円増加し、固定資産で前連結会計年度末比510億6千3百万円増加しております。主な要因は、国際航業株式会社の株式を取得し連結の範囲に含めたことにより、流動資産は現金預金及び受取手形・完成工事未収入金等が増加し、固定資産は顧客関連資産及びのれんが増加したことによるものであります。

負債は、2,598億7千2百万円で前連結会計年度末比774億2千6百万円の増加となりました。内訳は、流動負債で前連結会計年度末比676億6百万円増加し、固定負債で前連結会計年度末比98億1千9百万円増加しております。主な要因は、流動負債は国際航業株式会社の株式取得に伴い短期借入金が増加し、固定負債は退職給付に係る負債が増加したことによるものであります。

純資産は、2,600億8千8百万円で前連結会計年度末比57億8千2百万円の増加となりました。これは配当金の支払いや、自己株式の取得があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益125億3千5百万円の計上等により利益剰余金が68億7百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は48.5%(前連結会計年度末は56.5%)となり、1株当たり純資産は2,735.90円となりました。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度と比較して176億1千7百万円増加し、480億1千7百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益204億8千8百万円を計上したこと等により、336億2千5百万円の増加(前連結会計年度は53億1千5百万円の増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出498億6千3百万円があったことにより、555億4千5百万円の減少(前連結会計年度は123億1千4百万円の減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出75億3千7百万円及び配当金の支払額57億2千5百万円等があったものの、短期借入金が534億9千6百万円増加したことにより、388億1千6百万円の増加(前連結会計年度は125億7千1百万円の減少)となりました。

 

(4) 資本の財源、資金の流動性に係る情報

①財務政策

当社グループは、安定した財務基盤と資本効率の両立を基本方針とし、新たな事業機会を創出するとともに事業構造の転換を加速させ、企業価値向上に努めます。そのため、健全な財務体質を維持しつつ資本コストを意識し、戦略的に経営資源を配分してまいります。また、株主還元については、総還元性向50%~70%をターゲットレンジとして、資本政策および業績・資金状況等を勘案し総合的に判断してまいります。

 

②資金需要

当社グループの資金需要は、経常運転資金として工事に係る材料費・外注費及び労務費等があり、投資活動に関する支出として、事業用資産取得にかかる設備投資資金、今後の成長に向けたM&A等の投融資資金があります。

また、総還元性向50%~70%をターゲットレンジとし、安定的・継続的な配当の成長と機動的な資本政策として自己株式取得を行う等、株主還元にも当社グループのキャッシュフローを充当してまいります。

 

③資金調達の方法・状況

資金調達については、内部資金を基本としており、キャッシュマネジメントシステム(CMS)導入によってグループ資金の有効活用を図っておりますが、一時的に必要となる資金については、金融機関からの短期資金調達にて対応しております。また、大型のM&Aや設備投資等の資金については、財務規律の維持と市場環境を勘案し、社債発行やシンジケートローンなどさまざまな調達手段から最適な方法により調達することとしております。

このため、緊急時やM&A等の成長投資に向けた資金需要に備え、適正な手元現預金の確保に努めるとともに、金融機関とのリレーションを維持強化し短期資金借入枠を設定しているほか、外部格付の取得を行う等、資金調達体制の構築に努めております。

 

(5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、損益又は資産の状況に影響を与える見積り及び判断は、過去の実績やその時点での入手可能な情報に基づいた合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で行っております。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社は、2023年11月10日開催の取締役会において、国際航業株式会社の全株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で国際航業株式会社の主要株主であるジオ ホールディングス エルピー(Geo Holdings, L.P.)と株式譲渡契約を締結いたしました。なお、2023年12月20日付で国際航業株式会社の全株式を取得しております。
また、当社は、2024年3月26日開催の取締役会において、光陽ホールディングス株式会社の株式を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

詳細につきましては、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度において、当社グループの研究開発活動につきましては、事業会社を中心に行っております。当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は304百万円であります。セグメントごとの主な研究開発活動は次のとおりであります。

 

[ミライト・ワン]

研究開発活動を支える組織としてみらいビジネス推進本部及びNTT事業本部DX推進部があります。みらいビジネス推進本部は事業本部・支店と連携し、(1)工事施工の効率化や安全・品質の向上に資する技術開発、(2)新規事業開拓に資する技術開発、(3)新技術導入関連、(4)全社の知的財産の管理を行っております。NTT事業本部DX推進部はNTT事業本部内の各技術センタと連携して主に(5)ネットワークエンジニアリング事業における工事施工の効率化や安全・品質の向上に資するインフラ技術を中心に開発を行っております。

研究開発費は152百万円であります。

 

(1)施工技術開発関連

・土木工事の効率化を目指した「地中探査レーダー」の取り組みについて研究成果を取りまとめ、学会、論文で発表しました。

 

(2)新規事業開発関連

・施工後一定年数を経過した太陽光発電所において、ドローン画像をソフトで解析することで太陽光パネルの発電異常を検出する技術を確立し、中古発電所の再生(リパワリング)事業への適用を開始しました。

・弊社の持つ通信光ケーブル工事のノウハウを生かし、他企業と共同で社会インフラの構造物の歪をモニタリングする技術の実用化を行っております。弊社では、光ファイバセンサケーブル敷設の標準工法を確立した上で、複数の工事案件を受注しました。今後の新規事業として更なる拡大を図っていきたいと考えております。

 

(3)新技術導入関連

・生成AI技術を早期に適用し、業務効率化を図る事を目的に、社内で検討プロジェクト体制を立ち上げました。プロジェクトでは、生成AIの実力値評価と、社員が安心して使えるようガイドラインを策定し、全社員やグループ会社が利用する環境を整えました。今後、活用を促進し、業務効率化を行います。

・生成AIを画像分析の領域に適用し、エンジニアリング業務へ活用していく取り組みについて、継続的に検討を行っております。

 

(4)知的財産関連(2023年4月1日~2024年3月31日)

・特許(出願2件、登録1件)、商標(出願1件、登録4件)を行いました。

 

(5)ネットワークエンジニアリング事業関連

(通信線路関連)

・通信事業会社による提案内容に対し、お客様に「採用」と判断されたVE提案は「2件」あり、本内容に基づいた技術資料発出により全国の通信建設会社に向けて運用指示が図られました。

1. 自己支持型ケーブル区間におけるストランドアース固定方法の改善

2. 電磁誘導絶縁対策区間における接続端子函用ロッドの施工方法改善

 

・通信事業会社による提案内容に対し、お客様に「自由裁量」と判断されたVE提案は 「5件」あり、本内容に基づき、全国の通信建設会社において各社の裁量によって運用を図っても良いと周知されました。

1. バケット車逸走防止音声メッセージ機能の搭載

2. 自立型設備点検棒(たおれん棒DX8)

3. 電柱折損時における復旧方法の効率化

4. 地下ケーブルにおける鋼シース等の剥ぎ取り工法の標準化

5. 水準器付き角度計

 

<参考>

 『VE提案』とは、バリューエンジニアリングの略称で作業の効率化、コスト削減等への積極的な取組みにより、電気通信設備請負工事におけるサービス生産性の向上を図ることを目的としたお客様の制度です。

 

[ラントロビジョン]

該当事項はありません。

 

[TTK]

研究開発活動を支える組織としてエキスパートセンタがあり、事業本部・支店と連携し、電気通信工事事業の生産性、品質の向上及び安全確保のため、作業に必要な機械・工具・測定器等各種装置の開発や施工方法の改善に取り組んでおります。

研究開発費は3百万円であります

 

(通信線路関連)

・通信事業会社による提案に対し、お客様に「採用」または「自由裁量」と判断されたVE提案は「2件」ありました。

1. 2条引留金物への引留柱用絶縁金物適用拡大(採用)

2. メタル系故障修理・開通支援ツールの開発の提案(自由裁量)

 

[ソルコム]

研究開発活動を実行する組織としてE&S事業改革PTがあります。今年度は「みえる化」による直接業務のプロセス改善と「設計/施工管理/設備保守のDX化」による間接業務の効率化を目的に自社開発等によるアプリケーション開発に取組んでまいりました。

研究開発費は12百万円であります。

 

[四国通建]

該当事項はありません。

 

[西武建設]

該当事項はありません。

 

[ミライト・ワン・システムズ]

該当事項はありません。

 

[国際航業]

空間情報コンサルティング事業において、事業技術開発本部先端技術開発部中心に事業部門と連携して、新技術・新商品に関する研究開発活動を行っております。

その活動は、先端技術開発部が中心となって先端・基礎研究を行い、応用技術の開発、新製品の開発及び既存商品の機能強化などについては、個別の研究開発案件ごとにプロジェクトチームを編成し取り組んでおります。当連結会計年度に支出した研究開発費は、基礎研究費、応用技術の開発、新製品の開発及び既存商品の機能強化など252百万円(2024年1月~3月は135百万円)となっております。

 

(1) 基礎研究に関するもの

従来から社内で総務・法務、人事などの規約や規程を検索する仕組みはありましたが、必要な情報を得るには時間を要していました。生成AIや対話型AIを使い、必要な情報を短時間で取得できるシステムの開発に着手しています。このシステムは、社内の情報検索だけでなく、災害時の被災状況、避難場所などの情報検索用システムとしての活用も検討しています。

また、近年では道路や河川の維持管理、土砂災害を防ぐためなどに航空レーザ測量により3次元点群データが多く取得されています。ドローンにより撮影された画像から3次元点群データを作ることもできます。しかし、3次元点群データはデータ量が多く、今までは3次元点群データを容易に扱えるビューアシステムがありませんでした。Web上で3次元点群データ、CADデータ、元の画像データなどを高速に表示し、断面図作成、面積や体積の計算などが行える3次元ビューア(Fusion Space)の開発を行い、インフラ維持管理や河川管理の分野で活用を始めています。

 

(2) 応用技術の開発、新製品の開発などに関するもの

応用技術の開発、新製品の開発などに関する開発は、4事業部と先端技術開発部とが協力して進めております。2023年度は、各事業に関わる27件の技術開発を実施しております。開発内容としては、インフラ施設の劣化状況の調査や診断に関する技術開発、斜面のモニタリングに関する技術開発など国土強靭化やDX推進にかかわる技術開発が多いですが、Jクレジットや生物多様性の評価などGX推進に関する技術開発も実施しています。

 

(3) その他

空間情報コンサルティング事業全般に関わる技術の向上や交流を主な目的として、①技術シンポジウムの開催、②国の関連研究機関などへの研修派遣、③学識経験者などを講師とする専門分野の研究会活動などを、国際航業株式会社の先端技術開発部と4事業部が中心となって継続的に実施しております。