第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的と判断したものです。

 

(1)経営方針

当社グループは、グループ企業理念の再整理を行い、2024年4月より新たに「行動指針」「尊重すべき価値観」を策定しました。

 

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(2)経営戦略等

2024年度の国内経済は、各種政策の効果や設備投資などによる内需のけん引もあって、景気が持ち直していくことが期待されます。一方、中国経済の先行き懸念や人件費、物流コストの増加に伴う物価高の長期化等による景気下振れリスクに加え、国際情勢の緊張の高まりや金融資本市場の変動にも十分注意する必要があり、引き続き、予断を許さない状況です。

 

・中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)「Go Beyond 2026 革新」の策定

この状況下当社グループとしましては、新中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)「Go Beyond 2026 革新」を策定し、「①安定的に連結純利益60億円以上を稼ぐ」「②将来100億円を稼ぐための構造改革の実行」の2つを基本方針として中期経営計画の初年度をスタートしました。この2つの基本方針のもとで、具体的な主要施策として「1.グループ経営の最適化」「2.新製品・新事業の創出」「3.現場力の徹底的な強化」「4.海外ビジネスの拡大」「5.M&Aの加速」の5つに注力し、計画達成に向け邁進してまいります。

 

基本方針

① 安定的に連結純利益60億円以上を稼ぐ

② 将来100億円を稼ぐための構造改革の実行

 

主要施策

1.グループ経営の最適化

● 赤字グループ会社の撲滅

● 全体最適を見据えた生産体制の再編

● 関係会社の個社別成長戦略の実行

2.新製品・新事業の創出

● 新総合研究所設立による技術力の集約と重点注力事業の強化・育成

● 高付加価値分野への研究ポートフォリオの展開と経営資源投入

● 顧客ニーズを超える商品開発に向けた新技術の創出・導入

● 戦略的な知財獲得による競争優位性の確立

3.現場力の徹底的な強化

● 製造コスト低減のあくなき追求

● 他社に打ち勝つ営業の実践

● 効率化・省力化の推進(DX含む)

● 戦略的な原材料購買体制の構築

4.海外ビジネスの拡大

● 北米・欧州エリアへの販売強化と収益回復

● 中国エリアでの現地販売強化とアジアエリアの拡販・シェア奪回

● 本社支援による海外駐在促進による活動強化

5.M&Aの加速

● 石化メーカー事業再編対応および残存者利益の獲得を追求したM&A

● 技術の獲得、海外事業拡大および販売拡大を追求したM&A

 

セグメントごとの主要施策等は以下のとおりです。なお、4月1日付で実施した組織改編に基づくセグメントにて記載しております。

建築資材・シビル

● 三和サインワークスの新ビジネスモデルの横展開

● BONLEX EUROPE黒字化、建装事業の北米販売拡大

● 床材の高付加価値化

● タキロンシーアイシビルと一体化した販売・開発体制

高機能材

● 半導体市場回復需要を取り込むための増産体制構築

● タキロン・ローランドの事業拡大

フィルム

● 農POの海外販売加速

● タキロンシーアイサプライの統合シナジー取込

● Bonset Americaの北米市場拡販

新事業推進部

● モータシェア拡大のための生産体制構築

● ナノ材料の事業拡大

その他

● M&A推進による既存事業極大

● 徹底的な製造コストダウン

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画「Go Beyond 革新 2026」における初年度(2024年度)の目標は下記のとおりであります。

連結売上高

1,450億円

連結営業利益

76億円

連結営業利益率

5.2%

連結経常利益

76億円

連結純利益

56億円

平均ROIC

5.0%以上

 

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的と判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般に関する考え方、ガバナンスおよびリスク管理

 

・考え方

当社グループは、事業を通じて社会課題解決に貢献することで、企業としての持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。そのため、サステナビリティと経営を一本化し、全ての企業活動にESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を反映する「サステナビリティ経営」を導入しています。

2024年度からスタートする新中期経営計画では、以下の6項目で構成するサステナビリティ基本方針を策定し取り組んでまいります。

1.環境保全への取り組み

2.ダイバーシティ&インクルージョンの推進

3.人権尊重

4.公正・適正な取引と持続可能な調達

5.ガバナンスの高度化

6.持続的な企業価値の向上

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本サステナビリティ基本方針は、当社グループ企業理念に基づき具体的な取り組み内容に展開しています。

なお、当社グループは、SDGsをはじめとする社会課題やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する社会的要請の変化を踏まえ、優先的に取り組むべきマテリアリティ(サステナビリティ上の重要課題)10項目を2019年度に特定しました。昨年度、社会的要請との整合および事業戦略との連動が必要と判断し、環境/社会/ガバナンス(ESG)の観点から見直しを実施し、サステナビリティ基本方針と連動する形で新たに6項目を優先的に取り組むべきマテリアリティに特定しました。本マテリアリティを各セグメントのアクションプランに反映して実行し、持続可能な社会への貢献を目指します。

 

・ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ経営の戦略立案と推進を担う機関として、「サステナビリティ委員会」を2022年4月に設置しました。当委員会は、経営企画本部長が委員長を務め、経営会議の諮問機関として原則年4回以上開催することとしています。委員会で審議した議題は、経営会議での決議を経て、取締役会に報告することにより「経営」との連携を図っています。委員は各本部より人選されたメンバーにて構成されています。2023年度は、従前より実務に近い部門からの人選に加え多様

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な意見を取り入れることを目的に若手社員や女性社員を新たに委員として選任し年5回の委員会を開催しました。サステナビリティ経営の基盤構築に関わるテーマを中心に取り上げ、「サステナビリティ委員会規程の作成」「サステナビリティ基本方針の立案」「マテリアリティの見直し」「重要なサステナビリティ項目の特定」等を審議し、経営会議と取締役会に上程しています。2024年度は、本年度討議した内容を踏まえサステナビリティ基本方針や新たに設定したマテリアリティを軸にサステナビリティ経営の推進をしてまいります。

 

・戦略

マテリアリティの特定と見直し

タキロンシーアイグループは、SDGsをはじめとする社会課題やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する社会的要請の変化を踏まえ、優先的に取り組むべきマテリアリティ(サステナビリティ上の重要課題)10項目を2019年度に定め取り組んできました。当社グループ企業理念およびGRIスタンダード、改定CGC、SASB等を念頭に、マテリアリティ候補項目について社内各部門へのヒアリングを実施し、その後、当社グループおよびステークホルダーを取り巻く社会環境・事業環境、社会トレンドを参考に、リスクと機会、メリットとデメリットの観点で今後の当社の企業価値創造への取り組みを検証のうえ、マテリアリティ候補24項目をリストアップしました。24候補に対して、定量・定性面の社内評価、社外有識者のアドバイスを基にステークホルダーと当社にとっての重要度を測るマトリックスを作成し、優先的に取り組むべきマテリアリティ6項目を新たに特定しました。

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・リスク管理

企業の抱えるリスクを評価した上で「重要リスク」として可視化し、年度単位で組織的にマネジメントを実施、さらに、損失等の回避又は低減を図る「リスク管理体制」を整備のうえ運用しています。当該リスクが顕在化した場合においても、影響を最小限に留める対処を検討、実施しています。「重要リスク」として選定されたリスクに対しては、対処策を実施し1年間のモニタリングを経た結果を経営会議に報告しています。対処すべきリスク候補は定期的に見直しを行なっており、リスクに関する情報を収集・分析したうえで、新たな「重要リスク」を選定し2024年度の活動計画に反映しています。

 

・指標と目標

当社グループは、SDGsをはじめとする社会課題やESG(環境・社会・ガバナンス)に関する社会的要請の変化を踏まえ、優先的に取り組むべきマテリアリティ(サステナビリティ上の重要課題)10項目を2019年度に特定し翌年度にはKPIを29項目と年度目標を設定、各々の取組を加速させて成果を追求しています。2023年度は、設定したKPI項目の目標を概ね達成し、2024年度からスタートする新中期経営計画では、6項目で構成するマテリアリティ項目を策定し新たに取り組んでまいります。引続き目標の達成に向け注力するとともに、カーボンニュートラルへの取り組みをさらに強化する等、サステナビリティ経営の更なる深化に努めます。

 

マテリアリティ(重要課題)10項目

マテリアリティ

名称

目指す姿

評価の基準(KPI)

2023年度

目標

実績

価値創造を支える

企業風土の醸成

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チャレンジ文化

失敗を恐れず自発的かつ積極果敢に新しいことにチャレンジする精神が、DNAとしてグループ全社員に根付き、継承されている。そして、チャレンジ行動がグループ内だけでなくステークホルダーも巻き込みながら同時多発的に起こることで、企業の社会的価値が継続的に向上されている。

 

● チャレンジ推進施策

年間実施件数

4件

● アンケートによる

チャレンジ文化浸透度評価

70%以上

63%

 

 

マテリアリティ

名称

目指す姿

評価の基準(KPI)

2023年度

目標

実績

ポリマー加工技術の深化

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信頼・期待される技術

ポリマーの様々な特長を最大限に引き出す材料配合、成形加工、複合化技術、施工技術により、持続可能な社会に貢献している。

 

● 新製品売上高比率

20%以上

11.4%

● 新技術創出件数

(特許出願件数)

50件/年

以上

62件/年

ダイバーシティの推進

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ダイバーシティ&インクルージョン

個々人の様々な価値観や違いを尊重し、全ての人々が持てる力を十分に発揮できる環境をつくる。

ダイバーシティ&インクルージョンに関する社内教育の受講率

100

教育実施後のアンケートによる理解度

60

管理職に占める女性比率

※(2024年4月1日時点)

※管理職相当の職位も含む

3以上

3.2

リーダー相当職に占める女性比率

※(2024年4月1日時点)

※リーダー相当職にいる社員とは、社内人事制度(等級制度)において『担う/任された業務・テーマ・課題について、組織メンバーをリードしながら業務遂行する』と定義づけられた等級以上にある総合職(管理職含む。)をいう。

5以上

6.1

総合職に占める女性比率(2024年4月1日時点)

20以上

22.5

女性総合職の採用割合率

40以上

43.5

再雇用制度利用率

80

90.5

充実人生 経営宣言

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充実した人生に良質な職場を

社員一人ひとりが心身ともに健康で活き活きと働き、充実した人生を送ることができる、良質な職場環境の実現。

社員ワークエンゲージメントスコア

3.0以上

2.5

社員ロイヤルティスコア

3.0以上

2.7

● 健康経営優良法人の継続

継続

継続

 

 

 

マテリアリティ

名称

目指す姿

評価の基準(KPI)

2023年度

目標

実績

海洋プラスチック問題への対応

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海洋プラスチック

ゼロエミッションへの貢献

海洋プラスチックゼロエミッションへの取り組みと関連情報の開示。

● 水辺のクリーンエイド活動(地域清掃活動含む。)の参加人数

(年間延べ人数)

1,200名以上

2,017名

● イベント・セミナー

開催回数

(年間延べ開催回数)

30回

193回

CSR調達

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人権と環境に配慮したサプライチェーン

取引先(調達・購買先)との協働により、人権と環境に配慮した、公正なサプライチェーンの確立。

● 主要な国内取引先へのCSR調達方針要請率

(購入金額ベース %)

100%

100%

● 海外グループ会社における重要な取引先へのCSR調達方針要請率

(購入金額ベース %)

100%

100%

● CSR調達方針の合意度

(取引先アンケート調査)

100%

100%

環境負荷の低減

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住み続けられる地球のために

グループ全体で環境負荷の低減を図ることで地球環境保護に貢献する。

● CO2排出量削減率(Scope1/2)(2018年度比)

28%削減

32%削減

環境配慮型製品の

拡大

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エコロジー開発

タキロンシーアイグループが提供する全ての製品において環境に配慮した設計・開発を行い、脱炭素社会や循環型社会の実現に貢献する。

● 環境配慮型製品の開発

テーマ件数

15件/年

11件/年

● 環境関連アワード受賞

~2025年度までに受賞を目指す

~2025年度までに受賞を目指す

コンプライアンスの徹底

 

リスクマネジメント対応

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強固なコンプライアンスおよびリスクマネジメント

社会から信頼される企業を目指し、高いレベルでのコンプライアンスとリスクマネジメントによる企業統治の実現。

● コンプライアンスに関する啓蒙・教育の実施状況

(会社数比)

100%

100%

● 重大なコンプライアンス違反件数(件)

※社内定義の「重大なコンプライアンス違反」に該当し、社会影響を鑑み対外公表した違反件数

0件

0件

● 重要リスク項目の各対処策年度内完了率(%)

80%以上

76%

● 定期的な重要リスクの見直し(回)

1回以上

1回

コーポレート・

ガバナンスの充実

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透明性ある経営

経営の独立性、公正性が客観的に認識できる状態。

● 取締役会出席率

85%以上

98.0%

● 株主・投資家を対象とした各種説明会の実施回数

決算説明会

2回

2回

個人向け

3回以上

1回

スモール

ミーティング

1回以上

0回

 

 

(2)重要なサステナビリティ項目

上記、サステナビリティ経営を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は以下のとおりです。

・気候変動問題

・ダイバーシティ

 

①気候変動問題への対応

当社は、2021年5月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)へ賛同を表明しました。

気候変動問題に関連する事象を当社の経営リスクとして捉え、「温室効果ガス削減」や「環境配慮型製品の開発、提供」などを積極的に推し進めるとともに、新たな機会を見出し、企業価値向上を目指しております。引き続き、TCFD提言に沿って気候変動が当社の事業活動に与える影響を分析・評価し、複数のシナリオに基づく対応策を策定、事業のレジリエンス向上を図るとともに、情報開示の内容の充実を進めてまいります。

 

(ⅰ)ガバナンス

ガバナンス体制の構築として、俯瞰的かつ長期的な視点で全体統制を図るサステナビリティ委員会を設置しています。

体制、役割は以下のとおりであります。

 

体制

経営企画本部長を委員長とし、委員は各本部より人選されたメンバー、原則年4回以上の開催

役割

気候変動による特定したリスクと機会の評価、目標の設定・モニタリング、情報開示・事業計画への組み込みの検討など、短期、中期、長期の各視点で本リスクおよび機会の対策を拡充・推進しています。

気候変動に関連する課題を含む重要決議事項は、サステナビリティ委員会で審議し、経営会議への上程を経て取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制を整えています。

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(ⅱ)戦略

 短期、中期、長期の時間軸の観点を踏まえ、移行リスク、物理リスクの中で影響を及ぼす可能性が高いリスク項目を特定し、以下のとおりシナリオ分析を実施しました。

● 2030年、2050年を時間軸とし1.5℃、4℃上昇した場合のリスクと機会を特定し、影響要因、影響要素、事業影響評価の検討を完了させ確定

● 更に、確定した項目より事業活動に与える影響が大きい項目を抽出し、関連パラメータおよび算出式の特定に向けた検討を実施

● 算出式が特定された項目より順次、可能な限り定量化を実施

 引き続き、シナリオ分析を実施した内容の更新、新たなリスクと機会の特定など、開示情報を充実できるよう進めていきます。

● 当社が考えるTCFDゴールイメージを策定

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(ⅲ)リスク管理

企業の抱えるリスクを評価した上で「重要リスク」として可視化し、年度単位で組織的にマネジメントを実施、さらに、損失等の回避又は低減を図る「リスク管理体制」を整備のうえ運用しています。当該リスクが顕在化した場合においても、影響を最小限に留める対処を検討、実施しています。

気候変動問題につきましても、リスク管理体制の中で管理、シナリオ分析で特定されたリスクと機会の具体的対応策の検討と推進を行っております。

 

(ⅳ)指標と目標

環境ビジョンにおいて、2022年度『カーボンニュートラル戦略』を新たに掲げ、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しています。また、2050年までの中間地点の2030年をマイルストーンとし、気候関連のリスクと機会に対して対策を講じると共に、2018年度比Scope1/2 35%削減を目標値として取り組んでいきます。

 

②ダイバーシティに関する事項

当社グループは、持続的な成長のため、女性や高年齢者・外国籍など多様な人材が活躍できることが必要不可欠であると考えており、グループ従業員の採用・雇用および女性活躍推進に係る具体的な数値目標を設定しております。また、中長期的な企業価値向上における人材戦略の重要性を踏まえ、グループ従業員一人ひとりの潜在する力を最大限に引き出す育成のために当社グループ「人材育成方針(多様性の確保を含む)」を、多様な働き方と健康経営を実践するために当社グループ「社内環境整備方針」をそれぞれ策定しております。

 

(ⅰ)ガバナンス

人材育成方針については人材担当役員を責任者とし、国内外グループ会社の人事部門と連携を取りながら取り組みを進めております。社内環境整備方針については経営管理本部長を委員長とする「充実人生 経営宣言」推進委員会を定期的に開催するなどにより、取り組みを進めております。

 

(ⅱ)戦略

〈人材育成方針〉

人材育成

会社の価値向上を支える社員を育成するために、また社員が自ら成長するために、教育体系を定め、様々な成長の機会を提供しております。職種・等級により必要な能力を育成する研修、グローバル人材として活躍するための教育制度、自己啓発を支援するための通信教育や資格取得奨励金制度等、社員のキャリアプランに応じた教育プログラムを構築しております。

人材の確保

ビジネスの現場における急速なテクノロジーの進歩、不確実性・不透明性が増す事業環境を見据え、次の世代を担う人材を中長期視点で育成するべく、新卒採用を強化しております。また、中途採用では即戦力としての経験・知見を有する人材を獲得し、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応しております。新卒採用と中途採用のいずれにおいても、人員計画と「求める人材像」に沿った人材選抜を実施しております。さらに、シニア人材が豊富な経験を活かして長く働くことができるよう、再雇用制度の活用も促しております。

 

〈社内環境整備方針〉

充実人生 経営宣言

(a)多様な働き方支援

社員個々のライフステージに応じた働き方ができる職場を目指し、「時間単位年休制度」、「テレワーク勤務制度」等の制度を導入しています。また、育児への男女共同参画を促進する社会要請に応えるべく、男性育児休業の積極的な取得を推進しています。

 

(b)働き甲斐支援

社員の働き甲斐を支援する仕組みとして「キャリア面談」、「ジョブローテーション制度」を実施しています。「キャリア面談」は上司との面談を通じてキャリア開発支援を実現する仕組みで、社員自らが考えたキャリアビジョンシートを基に、毎年将来のありたい姿やキャリアに対する思いを上司と部下で共有したうえで、行動計画を作成し、成長プロセスの確認を行うものです。「ジョブローテーション制度」は入社後数年の間に異なる部門へ異動を行う制度で、様々な経験が成長に繋がることを期待しています。これらの仕組みを通じて、会社からの期待とキャリアに対する熱意が、社員の充実した仕事と働き甲斐に繋がるように支援しています。

 

(c)健康増進支援

心身ともに健康に効率よく働ける職場の実現を目指して、健康経営宣言を公表しました。その健康経営宣言のもと、2021年度に導入したオンライン禁煙プログラムの継続実施、社員が健康に効率よく働ける職場の実現、有給休暇の取得奨励、産業医・工場等との連携強化による特定保健指導実施率の向上、健康診断有所見者における再検査受診勧奨を行いました。これら以外にも社員の健康増進に向け、ヘルスリテラシー教育の実施、性別特有のがん検診の実施、ストレスチェックの実施、生産性低下の対策として健康セミナーを実施しております。

 

ダイバーシティの推進

目に見える違いと見えない違いを尊重し、多様な人材を受け入れ、様々な価値観や意見を理解することが、組織の活性化や社員の成長に繋がると考えております。全社員を対象に「ダイバーシティ&インクルージョン」の基本知識の理解を目的とした社内教育を2021年度より継続実施、2023年度には管理職全員を対象に「アンコンシャス・バイアス」をテーマにした研修を新たに実施しました。また、人材担当役員を分科会長とする「女性活躍推進分科会」を2022年10月から設立し、更なるダイバーシティの推進に取り組んでおります。個々人の様々な価値観や違いを尊重し、全ての人々が持てる力を十分に発揮できる企業風土を醸成していきます。

 

(ⅲ)リスク管理

採用競争力低下や従業員の離職等により計画に沿った人材の確保が進まないこと、会社の価値向上を支える社員の育成が進まないことが最大のリスクであると考えております。「充実人生 経営宣言」およびダイバーシティの推進等を通じて、持続的な事業成長と企業価値向上に取り組み、リスク低減に努めております。

 

(ⅳ)指標と目標

当社グループでは、上記「(ⅱ)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。

 

指標

2023年度目標

実績(当連結会計年度)

リーダー相当職にいる女性比率

5.0%

6.1%

総合職に占める女性比率

20.0%

22.5%

再雇用制度利用率

80%

90.5%

男性の育児休業取得率

90%

108.0%

社員ワークエンゲージメント

3.0pt

2.5pt

社員ロイヤリティスコア

3.0pt

2.7pt

(注)1.集計単位をタキロンシーアイ㈱のみとしております。

2.リーダー相当職にいる女性比率および総合職に占める女性比率に関する数値は、2024年4月1日現在の数値です。

 

 

3【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。

当社グループは、企業の抱えるリスクを評価した上で「重要リスク」として可視化し、年度単位で組織的にマネジメントすることで、損失等の回避又は低減を図る「リスク管理体制」を整備のうえ、運用しており、当該リスクが顕在化した場合においても、「リスク管理体制」によりその影響を最小限に留める対処を実施しています。本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが合理的と判断したものであります。

なお、以下の記載事項は、当社グループの全てのリスクを必ずしも網羅したものではありません。

 

(1)原材料の市況変動に関するリスク

当社グループは、樹脂等の原材料価格の低減に注力していますが、原材料価格の高騰が当社グループの利益に与える影響は大きく、製品価格にその価格上昇分を十分に転嫁することができなかった場合や予期できない自然災害や感染症等によるサプライチェーンへの影響が生じた場合等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、国内外の複数の調達先との取引関係を強化することで、常に最適かつ安定的な原材料の調達ができる体制を構築しております。

(2)法的規制等に関するリスク

当社グループは、国内外において様々な法的規制や行政上の許認可等の適用を受けており、環境関連法やリサイクル関連法、安全保障貿易管理や独占禁止法、下請法等への対応により国内販売や工場操業が影響を受けたり、追加的な費用が発生する場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、各種業界団体への加盟等により、必要な情報を的確に収集するとともに、許認可の状況を定期的に確認することにより、法令遵守の徹底を図っております。

(3)コンプライアンスに関するリスク

法令、社内外の諸規程や社会規範等のコンプライアンス違反や人権侵害、ハラスメントによる問題、製品品質に関する問題等が生じることにより、費用や損害が発生したり、会社の信用を毀損した場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、タキロンシーアイグループ コンプライアンス・プログラムを制定し、各種法令の遵守に向けた社員教育及び体制整備に努めております。

(4)海外情勢に関するリスク

海外において戦争やテロ、暴動などの不安定な社会情勢により、工場操業や輸出入業務等に支障をきたし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、現地法人から定期的に情報収集を行いながら、現地法人との連携を密にし、対応を図っております。

(5)ITセキュリティに関するリスク

事業上の機密情報や事業活動の過程で入手した個人情報等が不測の事態により漏洩や紛失することにより第三者が不正流用したり、サイバー攻撃等によるシステム停止や重要情報の破壊等の損害を被ることにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(6)環境・気候変動に関するリスク

国際的な関心が高まる「海洋プラスチック問題」や「地球温暖化問題」等、環境に関する社会課題に適切な対応ができない場合やそれにより企業ブランド価値を毀損する事態に至った場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、ESGの観点からマテリアリティを特定し、計画的に対処することによりリスクの軽減対応を図っております。

(7)自然災害・感染症等に関するリスク

地震・火災・台風・洪水等の災害、大規模な感染症が発生した場合に事業活動の遅延や中断、製造設備等の損害、社会インフラ機能の低下等により大きな被害を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、従業員の安全を確保し、事業活動への影響を最小限に留めるために、事業継続計画(BCP)の策定や継続的な見直し及び改善を行っております。

(8)物流に関するリスク

物流業界の人手不足による運送会社の貨物取り扱い能力の低下によって、荷扱い拒否、集荷量の制限、納期遅延、物流コストの上昇が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、在庫管理や長距離輸送の見直し等に取り組むことで、対応を図っております。

(9)人材に関するリスク

労働力人口減少や求人拡大等による人材採用の困難や転職・退職の増加による人手不足により、人材を採用または育成することができない場合や流出を防止できない場合は、当社グループの成長や利益に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、「充実人生 経営宣言」を通じて、多様な働き方や職場環境の整備等、各種対策に取り組んでおります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

財政状態及び経営成績の状況については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容①当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

キャッシュ・フローの状況については「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報」に記載のとおりであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

建築資材事業     (百万円)

37,289

△1.1

環境資材事業     (百万円)

23,257

△1.4

高機能材事業     (百万円)

18,893

△10.2

機能フィルム事業   (百万円)

18,567

△21.2

   合 計      (百万円)

98,008

△7.5

 (注)金額は、販売価格によっております。

 

b)商品仕入実績

 当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

建築資材事業     (百万円)

2,151

7.1

環境資材事業     (百万円)

22,848

△12.9

高機能材事業     (百万円)

1,357

△12.1

機能フィルム事業   (百万円)

65

8.6

その他(注2)    (百万円)

543

△10.3

     合 計   (百万円)

26,967

△11.4

 (注)1.金額は、仕入価格によっております。

    2.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、試験機の販売事業等を含みま

      す。

 

c)受注実績

 当社グループ製品は見込生産を主体としており、総販売高に占める受注生産の割合は僅少のため受注実績の記載を省略しております。

 

d)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

建築資材事業     (百万円)

44,402

△0.9

環境資材事業     (百万円)

54,039

△1.4

高機能材事業     (百万円)

20,480

△9.9

機能フィルム事業   (百万円)

17,820

△20.6

その他(注3)    (百万円)

839

△10.8

   合 計      (百万円)

137,581

△5.6

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

    2.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。

    3.「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、試験機の販売事業等を含みま

      す。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a)財政状態

 流動資産は103,921百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,825百万円増加しました。これは主に預け金が3,410百万円、電子記録債権が2,646百万円増加したことによるものです。固定資産は52,272百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,094百万円増加しました。これは主に投資有価証券が977百万円減少したものの、退職給付に係る資産が1,737百万円増加したことによるものです。

 この結果、総資産は、156,194百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,920百万円増加しました。

 

 流動負債は48,105百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,871百万円増加しました。これは主に支払手形及び買掛金が2,135百万円減少したものの、未払法人税等が1,840百万円、短期借入金が1,039百万円増加したことによるものです。固定負債は11,042百万円となり、前連結会計年度末に比べ659百万円増加しました。

 この結果、負債合計は、59,147百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,531百万円増加しました。

 

 純資産合計は97,046百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,388百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益5,102百万円によるものです。

 

b)経営成績

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

145,725

137,581

△8,143

△5.6

営業利益(百万円)

5,791

6,228

436

7.5

経常利益(百万円)

5,923

6,501

577

9.8

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

2,460

5,102

2,642

107.4

 

 当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化が進み、足踏みもみられるものの、内需を中心に緩やかな持ち直しの動きが見られました。一方、エネルギー価格や原材料価格の上昇、世界的な金融引締め、ウクライナ情勢の長期化、中国経済や中東地域をめぐる情勢の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクとなっており、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社グループを取り巻く環境におきましては、マンション改修工事の需要が引き続き好調であり、土木関連資材の一部でも需要回復がみられたものの、金融引締め等を背景とした欧州市場の低迷の長期化に加えて、前年同期に活況であった半導体市況の減速など予断を許さない状況が続きました。

 このような環境のもと、2023年度単年度経営計画の基本方針に沿い、定量計画の必達と定性計画の確実な実行を念頭に事業活動を行ってまいりました。

 これらの結果、当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は137,581百万円(前年同期比5.6%減)、営業利益は6,228百万円(前年同期比7.5%増)、経常利益は6,501百万円(前年同期比9.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,102百万円(前年同期比107.4%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績等の詳細は、「d)セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析」に記載しております。

 

c)経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

d)セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析

建築資材事業セグメント

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

44,795

44,402

△393

△0.9

営業利益(百万円)

2,484

2,983

498

20.1

 

[事業別]

住設建材事業

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

26,506

25,731

△775

△2.9

営業利益(百万円)

1,628

1,539

△89

△5.5

 

床・建装事業

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

18,288

18,670

382

2.1

営業利益(百万円)

856

1,444

588

68.7

 

 住設建材事業は、原材料価格や物流費上昇に伴う製品値上げによる増収効果やインバウンド回復等によるサイネージ需要の拡大もありましたが、新設住宅着工戸数の減少に加え、建設資材や飼料価格の高止まりによる畜産業界の設備投資減少の影響を受け、住宅・非住宅物件への販売が回復せず、事業全体では減収となりました。

 床・建装事業は、欧州における建装資材の回復が遅れているものの、堅調な豪州市場に加え北米は徐々に回復基調となりました。国内マンション改修市場における床材も堅調に推移したことに加え製品値上げ効果もあり、事業全体では増収となりました。

 その結果、建築資材事業セグメントの売上高は44,402百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益は2,983百万円(前年同期比20.1%増)となりました。

 

 

環境資材事業セグメント

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

54,816

54,039

△777

△1.4

営業利益(百万円)

304

1,884

1,580

518.6

 

[事業別]

アグリ事業

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

35,658

33,228

△2,429

△6.8

営業利益(百万円)

597

809

212

35.5

 

インフラマテリアル事業

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

19,158

20,810

1,652

8.6

営業利益(百万円)

△292

1,075

1,368

-

 

 アグリ事業は、肥料市況の低迷や各種農業資材の高騰による生産者の買い控えが継続し、ハウス関連資材の出荷も低調に推移したため、減収となりました。

 インフラマテリアル事業は、ハウエル管の需要が回復し、回転成形製品及び土木シート・シールドは旺盛な需要により好調を維持したため、事業全体では増収となりました。

 その結果、環境資材事業セグメントの売上高は54,039百万円(前年同期比1.4%減)、営業利益は1,884百万円(前年同期比518.6%増)となりました。

 

 

高機能材事業セグメント

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

22,729

20,480

△2,249

△9.9

営業利益(百万円)

2,603

1,731

△871

△33.5

 

 高機能材事業は、スマートフォンをはじめとしたメモリ需要が回復したことにより、電子回路基板向けのナノ材料は前年を上回りましたが、半導体メーカーの設備投資抑制が継続し、製造装置向け工業用プレート、エンプラ材は低調に推移しました。また、民生用機器などの在庫調整による影響が通年にわたり継続したマイクロモータも前年を下回り、事業全体では減収となりました。

 その結果、高機能材事業セグメントの売上高は20,480百万円(前年同期比9.9%減)、営業利益は1,731百万円(前年同期比33.5%減)となりました。

 

機能フィルム事業セグメント

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

22,442

17,820

△4,622

△20.6

営業利益(百万円)

126

△304

△431

-

 

[事業別]

包材事業(ボンセット)

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

18,987

14,471

△4,516

△23.8

営業利益(百万円)

20

△369

△390

-

 

包材事業(サンジップ)

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

 至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

前年同期

増減額

前年同期

増減率(%)

売上高(百万円)

3,455

3,349

△106

△3.1

営業利益(百万円)

105

65

△40

△38.3

 

 包材事業は、第4四半期に入り回復の兆しがみられるものの、主力の北米市場で流通在庫調整の長期化により北米・南米における生産販売が低水準となり、シュリンクフィルムは大幅な減収となりました。ジッパーテープも国内・海外ともに低調に推移し、減収となりました。

 その結果、機能フィルム事業セグメントの売上高は17,820百万円(前年同期比20.6%減)、営業損失は304百万円(前年同期は126百万円の営業利益)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は、6,661百万円となりました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フロー
 営業活動によるキャッシュ・フローは、9,309百万円の収入となりました。これは、主に仕入債務の減少2,807百万円の支出要因があったものの、税金等調整前当期純利益6,787百万円、減価償却費5,524百万円の収入要因によるものです。

投資活動によるキャッシュ・フロー
 投資活動によるキャッシュ・フローは、6,277百万円の支出となりました。これは、主に預け金の増加額3,410百万円、有形固定資産の取得による支出3,779百万円の支出要因によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フロー
 財務活動によるキャッシュ・フローは、2,346百万円の支出となりました。これは、主に配当金の支払額1,463百万円の支出要因によるものです。

 

資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの事業活動における資金需要は、製品の製造販売に係る原材料費や営業費用などの運転資金、M&A等による新規事業への投資、設備投資資金及び研究開発資金等であります。
 当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っており、自己資本比率やD/Eレシオ等の財務健全性指標やROEを注視しながら、最適な選択を実施しています。また、日本国内の各拠点においては、グループ内余剰資金を活用するためキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めております。

 

 また、金融機関には十分な借入枠を有しており、高水準で維持している現預金と併せ、今般策定しました中期経営計画で掲げた戦略投資を機動的に実施することが可能となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

5【経営上の重要な契約等】

当社は、住友化学株式会社(以下「住友化学」)と同社の子会社であるサンテーラ株式会社(以下「サンテーラ」)の農業用ポリオレフィンフィルムに関する事業を新設子会社のタキロンシーアイサプライ株式会社(以下「タキロンシーアイサプライ」)に承継させることで合意し、住友化学、サンテーラ、当社の3社にて2023年12月1日付で分割基本契約を締結いたしました。また、この分割基本契約に基づき、サンテーラ、タキロンシーアイサプライとの間で2024年3月1日を効力発生日とする吸収分割契約締結いたしました。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度における当社グループの研究開発活動は、研究開発部門、商品開発部門それぞれの独自活動に加え、部門間での連携により、新事業の芽を次の成長エンジンに育て上げ、新たな収益の柱となる事業の構築を目指しております。

 また、エンドユーザーとの共同開発、原材料メーカーとの協業、生産部門、販売部門と連携したプロジェクト活動やグループ会社との協業により、お客様のニーズに応える魅力ある製品づくりを推進しています。また、海洋プラスチック問題やカーボンニュートラルといった社会問題およびSDGsに対応するため、環境対応の基本原則である3R+Renewableのうち、リデュース、リサイクル、バイオマス由来プラスチックを重点に開発を進め、持続可能な社会に対して貢献できる技術・製品の開発にも取り組んでおります。

 更に、新規事業領域の開拓を目指し、グループ全体のコア・コンピタンスや保有リソースが活用できる新規研究開発テーマの創出活動や、事業戦略構築に貢献する知財活動も積極的に推進しております。

なお、当連結会計年度に支出した研究開発費は基礎研究に係るもので、総額1,296百万円であります。

 

建築資材事業セグメント

住設建材事業分野では、昨今の洗練された住宅外観に調和するデザインの屋外用流し・水栓柱“Siple(シプレ)”を開発しました。屋外使用に適した材料を採用し、落ち着いた外側のマット質感と内側の美しいハーフグロス質感を組み合わせ、飽きのこないホワイト/ブラックの2色のカラー展開で発売しました。

床・建装事業分野では、マンション用防滑性床材“ノンガタンシステム”を開発発売しました。防滑性床材タキストロン“プラスケアXG”とエアコン排水レール“ドレンレールプラスG”の組み合わせにより、廊下の段差を軽減し、通行時の発生音を抑制できます。さらに、床材シートの衝撃吸収性により、転倒時も怪我をしにくい安全設計です。また、粘着剤付き化粧フィルム“ベルビアン”では、玄関ドアのリフォーム向け専用シートを開発し、新たに14柄を発売しました。快適で安心できる住空間づくりに役立つ商品開発を進めてまいります。

 

環境資材事業セグメント

アグリ分野では、環境に配慮した農POの新製品として長期展張タイプの“バツグン5エコ”と汎用タイプの“コーティング5+1エコ”の2製品を上市しました。新設計の5層配合と独自の製造技術を活かし、従来の強度・耐久性などの性能を維持しつつフィルムの薄肉化を実現しています。薄肉化によりプラスチック原料の削減のみならず、軽量化でフィルムの張替えや運搬作業の負担の軽減にもつながっています。その他、環境配慮への取り組みとして、生分解性マルチの開発やリサイクル技術の向上も引き続き行っています。また、事業承継したサンテーラ社の持つ優れた技術との融合により、これまで以上に市場ニーズに対応した高機能製品の開発を進めてまいります。

インフラマテリアル分野では、今後拡大が見込まれる海外シールドトンネル工事で使用される粘着剤付き水膨張性シール材“Hydrotite AD type”の開発に注力いたしました。開発品は、現行品“Hydrotite”が持つ止水性と耐久性に加え、裏面に粘着剤を施すことで工事現場にて均一な施工品質を実現するものとなっております。またタキロンシーアイシビル株式会社とともに、既存事業領域(道路、トンネル、処分場、上下水道、再生可能エネルギー、農業)では、防水・導水・更生部材の応用開発を、新規事業領域(環境分野、リニューアル、防災・減災)では、新たな商品開発に注力しております。また循環社会への取り組みとして社内発生原料を用いた環境対応型製品の開発もすすめております。

 

高機能材事業セグメント

塩ビプレート分野では、レーザ加工装置用カバーとしてご好評いただいているレーザ遮蔽プレート“タキシャロン”の拡充を図るため、従来よりも高い光線透過率を有する“HTSLA CP445”の製品設計・生産準備を完了させました。当社製品の海外での競争力向上に寄与すると見込まれており、中国を中心としたEV分野などでのレーザ加工装置向けに拡販を進めてまいります。

ポリカーボネートプレート、PETプレート分野では、プレコンシューマ材を99%以上使用した環境対応製品“PCECO PR600”の拡販、ケミカルリサイクル材料の調査・試作検討を進めました。環境対応した原材料情報の調査、環境に配慮したプレート製品の企画検討を今後も継続して推進してまいります。

切削用材料分野では、機械的強度、摺動性に優れた“ポリアセタールPOM 761”、耐熱性、耐薬品性に優れた“ポリメチルペンテンPMP M601”などを上市販売いたしました。今後も独自技術の追求により製品拡充を図ってまいります。

超微粒子マテリアル分野では、超分散および表面処理技術の深耕により、ディスプレイ、EV向け新製品、パワー半導体向けの研磨剤用途品、半導体回路基板の絶縁用途品の開発を進めてまいります。

マイクロモータ分野では、電子錠、ポンプ、防護マスク、自転車用途へと多種多様なニーズにマッチした商品を市場に提供するとともに、モータおよび周辺部材の新規開発、機能拡充を進めることにより事業領域の拡大を図ってまいります。

 

機能フィルム事業セグメント

包材分野では、プランドオーナー、コンバーターから、地球環境に優しい商品の要望が年々強まっています。このような社会的要請に応えるべく、循環型社会の実現に向けた製品を開発し販売継続しています。

 具体的な展開として、シュリンクフィルムでは、国内市場向けに業界初となる「バイオマスマーク」を取得したPS系熱収縮フィルム“BP10”を、欧米市場向けには連結子会社Bonset America Corporationからリサイクル性に優れ、米国リサイクル評議会(The Association of Plastic Recyclers)から認定を受けたPET系熱収縮フィルム“Bonpet Renew”を開発し、各マーケットにて徐々に販売数量を伸ばしております。

ジッパーテープでは、パウチそのものを単一素材で作りリサイクルする指向に基づいた「モノマテリアル」に最適なジッパーを開発し、欧米市場への販売を開始しています。高機能製品として、“幼児誤飲防止用ジッパー(チャイルドレジスタンスジッパー) ”を開発しました。幼児が開封しにくい構造になっており、薬品、化学物質等の誤飲抑制の機能がついた製品で、海外マーケットを中心に実績を積み上げています。

 

全社(共通)

研究開発部門は、未来の変化・需要を見据えて、グループ全体のコア・テクノロジーを活かした技術開発を進めています。更には、オープンイノベーションや外部専門家の活用など研究開発費を積極的に投入し、且つ外部企業や大学・研究機関との交流やDXの活用を行うことで、研究開発の確実な推進および新テーマ創出のスピードアップを図ります。

また、高度な配合設計技術、形状(意匠)設計技術、性能・分析評価技術、設備設計技術、成形加工技術を活用して、独自性・優位性のある素材の開発、高付加価値な機能性フィルム・シートの開発、施工技術・新工法の開発、新しい機能を生み出せるプロセスの構築などに注力し、次世代を担う新製品・新事業を創り出すことにチャレンジし、実現いたします。