当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「2023年度中期経営計画(以下、「2023中計」)」において、持続可能社会への急速な移行、環境変化や当社自体の変革をふまえ、グループの企業理念・ビジョン・経営姿勢を再定義しております。
■企業理念
エンジニアリングとサービスを通じて、人に信頼され、社会に貢献する。
■ビジョン
2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決を目指す。
■経営姿勢
新しい価値の創造を顧客と共に実現
健全な財務体質と堅実な利益を追求
サステナビリティの課題解決を推進
また、当社は2023年4月に事業持株会社体制への移行に伴い、社名を見直し「E&S」に込める意味を、今後の当社の目指していく姿勢や事業ドメインに沿って再定義しました。
「E&S」には、「Engineering & Services for Evolution & Sustainability」の意味合いがあり、当社が社会の進化と持続を目指しエンジニアリングとサービスに注力することで、当社グループの企業価値の持続的向上を図る企業姿勢を込めております。
(2)経営戦略等
2023中計のビジョンは「2030年までに、マリンの領域を軸に、脱炭素社会の実現と、人口縮小社会の課題解決」を目指す姿として、当社グループの中核事業である舶用推進事業(舶用推進システムセグメント)、港湾物流事業(物流システムセグメント)の強みをさらに強化し、サービスやソリューション提供へと収益モデルの変革を進めます。
舶用推進事業では、株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン事業を譲り受け、2023年4月に「株式会社三井E&S DU」として営業を開始しました。当社グループはMAN-Energy Solutions 及びWinterthur Gas & Dieselのダブルライセンス体制の構築により製品ラインアップを拡充し、グループ内リソースの効率的な活用や生産性の向上、アフターサービスの強化を通じて競争力の向上に繋げてまいります。
港湾物流事業では、米国において港湾クレーンの最終組立を行うための検討を進めており、今後米国の港湾インフラの安全確保への貢献と当社グループ製品の競争力の強化に繋げてまいります。
(3)経営環境等
当社グループを取り巻く事業環境は、世界経済の先行きに不透明感が増す中、新造船市場は回復基調にあるものの、競合企業との価格競争や持続可能社会への急速な移行等、既存のビジネスモデルからの変革が求められる環境になっております。一方、これまで新型コロナウイルスの影響により抑制されていた経済活動が徐々に回復し、新興国を中心としたエネルギー需要の増加や環境・省エネ志向の高まり、さらには国内外のインフラ更新需要の増大等、事業拡大の機会も再び大きくなるものと想定されます。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2023中計では、2025年度に、連結売上高:2,800億円、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26%、及びNET有利子負債EBITDA倍率:5倍、を経営数値目標として掲げております。
また、当社グループは、サステナビリティ課題に対し、以下のマテリアリティ及び2030年度目標を設定しております。各社会課題の解決及び人材育成・多様性の確保に注力してまいります。
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マテリアリティ |
2030年度目標※2 |
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脱炭素社会の実現 |
・環境対応製品市場投入によるCO2削減量 従来比66%削減(2019年度比) ・グループ会社の生産活動によるCO2削減量 従来比17%削減(2019年度比) |
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人口縮小社会の課題解決 |
・港湾関連製品における自動化・システム化率: 40%(年間売上高比) |
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多様化確保への取り組み※1 |
・管理職 女性比率: 5%、外国人比率: 3% ・従業員全体 〃 :10%、 〃 : 5% ・技術職新卒 〃 :10%、 〃 :20% |
※1:提出会社単体として目標を設定しております。
※2:数値目標に関しては、より事業の実態に即した指標・目標を精査、検討中。
2023年度の達成・進捗状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④経営計画の達成・進捗状況」に記載のとおりです。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、エンジニアリング事業の海外大型EPC(設計・調達・建設)プロジェクトの損失によって毀損した財務基盤を回復するため、「三井E&Sグループ 事業再生計画」を推進し、計画を完遂することができました。そして、事業と経営との距離を縮め、一体となることで戦略の立案・実行スピードを上げることを目的に、2023年4月1日に純粋持株会社体制を解消し、商号を「株式会社三井E&S」に変更しました。さらに、今後の成長戦略推進及び経営効率化による三井E&Sグループの企業価値の持続的向上を図るために、以下を目的として監査等委員会設置会社へ移行しております。
①組織集約・再編に沿ったコンパクトな経営体制への移行を図る。
②事業戦略及びリスクのある案件に関し、より深い議論を行う環境を整える。
一方で、当社グループを取り巻く事業環境が大きく変化していることから、2023中計を1年前倒しで2022年度よりスタートさせ、企業価値の向上に向けて取り組んでおります。具体的には以下のとおりです。
(財務体質及び収益体質の強化)
事業再生計画に基づく、事業や資産売却の実行に加え、財務体質の健全化及び成長資金確保のため、昨年度、資本対策を実施いたしました。2023中計では、「事業再生計画の仕上げ」、「成長戦略」、「機能戦略」を基本方針とした戦略を掲げ、成長戦略による売上規模拡大と収益安定化を図り、財務体質のさらなる改善に努めます。なお、資本対策として実施した第1回行使価額修正条項付新株予約権は、当初計画より大幅な前倒しで2023年11月をもって全ての新株予約権の行使が完了し、約85億円の資金を調達し、財務健全性を向上することができました。
(成長戦略の推進)
2023中計では、「マリン領域を軸に、当社グループの中核事業である舶用推進事業、港湾物流事業を『グリーン』と『デジタル』の切り口で発展させる」ことを成長戦略の柱としております。具体的な施策は次のとおりです。
①中核事業の強化
中核事業を「舶用推進」「港湾物流」と明確にし、中核事業を軸に収益力強化を進めてまいります。
「舶用推進」の分野では、株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン事業を譲り受け、2023年4月に「株式会社三井E&S DU」として営業を開始しました。当社グループはMAN-Energy Solutions 及びWinterthur Gas & Diesel のダブルライセンス体制の構築により製品ラインアップを拡充し、グループ内リソースの効率的な活用や生産性の向上、アフターサービスの強化を通じて競争力の向上に繋げてまいります。
「港湾物流」の分野では、米国において港湾クレーンの最終組立を行うための検討を進めており、今後米国の港湾インフラの安全確保への貢献と当社グループ製品の競争力の強化に繋げてまいります。
②収益モデルの変革
中核事業である「舶用推進」「港湾物流」の各事業を、「グリーン戦略」と「デジタル戦略」により、さらなる強化を進めてまいります。
グリーン戦略では、環境対応製品のエンジニアリングに注力し、新燃料エンジン、ゼロエミッション型港湾クレーンなど脱炭素関連製品の開発・提供を進めてまいります。また、デジタル戦略では、当社グループのサービス網とデジタル技術の掛け合わせにより、海上輸送と港湾荷役の連携など強みを持つ分野で、デジタル技術・ドローン技術を活用した高度予防保全・遠隔保守サービスなどを開発・提供してまいります。
(サステナビリティ課題の取り組み)
気候変動や人口縮小社会の到来は、当社グループの事業運営における重要な経営課題であると同時に事業機会と捉え、その対応として、戦略マテリアリティを、「脱炭素社会の実現」と「人口縮小社会の課題解決」と設定いたしました。当社グループは舶用エンジン、港湾クレーンの国内シェアトップのリーディングカンパニーの責務として、この戦略マテリアリティに向け、環境対応、遠隔・自動化の開発等、中長期の目標を掲げ、取り組みを推進してまいります。
(1)戦略
2023中計策定の際、気候変動に関するリスク・機会のシナリオ分析を行い、当社グループの事業・経営基盤に直結するものをマテリアリティに設定し、事業戦略に落とし込んでおります。
①シナリオ分析結果
②事業インパクト・当社グループの取るべき対応

③マテリアリティの設定
(2)指標及び目標
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで企業価値の向上を目指します。サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)と中長期の目標(2030年度)を設定することで、社会課題の解決に向けた活動を加速させます。
サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)
脱炭素社会の実現
2030年度目標
環境対応製品市場投入によるCO2削減量
550万t-CO2/年 2019年度比66%削減
製品ライフサイクル通期(20年間)
1.1億t-CO2
グループ会社の生産活動によるCO2削減量
0.9万t-CO2/年 従来比17%削減(2019年度比)
指標と目標に関しては、より事業の実態に即した指標・目標を精査、検討中。
人口縮小社会の課題解決
2030年度目標
港湾関連製品における自動化・システム化製品率
40%(年間売上高比)
港湾関連自動化・システム化製品
・遠隔操作トランステーナ
・遠隔操作ポーテーナ
・CTMS(※)他各種システム
※コンテナターミナルマネジメントシステム
指標と目標に関しては、デジタル戦略のビジネスモデルとの整合性を見ながら、より適切な指標・目標を精査、検討中。
(3)ガバナンス
気候変動を含むSDGsリスクを事業リスクの一つと位置付け、リスクの顕在化の防止に努めております。経営企画部担当役員を委員長とするESG統制委員会を設置し、同委員会にて気候変動関連の課題を含む経営に関するリスクをモニタリングし、重要事項があれば取締役会に報告を行います。
(4)リスク管理
ESG統制委員会にて、上記マテリアリティに対する当社グループの取り組みのフォローアップを行っています。
「短期・中期」の視点では、低炭素化製品の開発進捗、当社グループ製品のCO2削減量、グループ会社の生産活動におけるCO2削減量を対象として、現状把握・評価・管理を進めています。また、「長期」の視点では、必要によりシナリオ分析の再実施とこれによるマテリアリティ見直しの要否確認を行う予定です。
(5)人的資本に関する戦略
①人材への取り組み
当社グループが提供する「エンジニアリングとサービス」の提供主体は人であり、企業理念の発現や成長戦略の実現において、人材が最も重要な経営資源と位置付けております。当社グループの持続的発展と企業価値向上を実現するうえで、目指す人材像として、(1)既存の枠組みを超え、隠れた顧客のニーズを捉えて対応、(2)会社の成長につなげる新しい知識と経験を自ら学び続ける、(3)社会動向に幅広く関心を持ち、環境変化を適切に認識する、この3点の人材像の実現と多様性の確保を戦略とし、そのための人事制度の改革、教育研修制度の見直し、経営幹部育成の強化等を進めております。
また、博士課程学生の採用強化や従業員の博士号取得支援について強化して取り組みを進めます。
多様性の確保の取り組みについては、目標を設定しており、「
なお、多様性に関する指標については、提出会社単体のデータを記載しております。
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2030年度目標 |
2024年4月1日現在 |
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女性比率 |
外国人比率 |
女性比率 |
外国人比率 |
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管理職 |
5% |
3% |
3.2% |
0.3% |
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従業員全体 |
10% |
5% |
7.4% |
1.9% |
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技術職新卒採用 |
10% |
20% |
13.3% |
3.3% |
②人材育成の取り組み
従業員は会社にとって大切な財産です。従業員の能力開発はもちろん、快適な職場環境を通じて、生き生きとした職場づくりを目指しております。当社グループでは、グループ各社の従業員の協働の促進、中長期的な視点での成長の促進を目指し、各種研修を実施しております。特に全社的な変革をリードできる人材を育成するため、経営人材育成のための選抜研修の早期化を進めております。また仕事をする上での基本的な知識の習得を行うとともにビジネスの型を階層別研修で学び、プロフェッショナルとしてビジネスを実践できる人材育成を行います。あわせて若手の早期育成「5年で一人前」を目的とした入社1年目・3年目の研修と、入社2年目・4年目のフォローアップインタビューを通じた成長の促進とともに成長度合いの確認を行っております。
また、技能向上・安全作業のための取り組みとして、基本的な技能講習等の受講や安全業務の専従経験を実施し、作業にあたっての知識習得、経験獲得を進めております。
ワークライフバランスの観点では、従来から運用しているコアタイムなしのフレックスタイム制度や時間年休制度に加えて、在宅勤務制度を導入し、育児や介護といった利用目的を限定せず、在宅勤務が可能な従業員は誰でも利用できるようになっております。働く場所や時間にとらわれない柔軟で多様な働き方を通じて、個人の能力を最大限に発揮することを目指しております。
③安全衛生への取り組み
当社グループでは、職場に「安全文化」を定着させ、人材を育成することにより、(1)「安全第一」、「安全を最優先する」意識の定着、(2)従業員の健康維持・増進の取り組みを積極的に推進し、健康で快適な職場を実現することを基本方針としております。また、「三井E&Sグループ 健康経営宣言」を制定し、従業員一人ひとりの力が企業活力の源泉となり、最大限発揮されるよう、従業員の健康維持・増進の取り組みを積極的に推進しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<重要なリスク>
(1)当社グループの事業の特性によるリスク
当社グループの事業は、個別受注生産が中心であり、製品の特性によっては契約から引き渡しまで長期間に亘る工事もあります。その間の社会情勢等の変化により、契約を締結した時点の見積原価と実際の原価との間に差異が生じる可能性があります。当社グループでは対策として、慎重な見積り、多様な調達先の確保をすすめることや、客先の与信リスクに対しては、代金の早期回収、海外事業においては貿易保険を利用する等リスクの回避に努めております。
また、納めた製品の性能、品質、納期の遅れに起因するクレーム等が発生した場合や、生産活動の過程で、不測の事態により有害物質が外部へ漏洩する等環境汚染が発生した場合には、社会的評価の低下を招くとともに損害賠償等による費用が発生する可能性があります。そのような事態を回避すべく、当社グループでは、品質や安全、環境保全に関する法令等を遵守し、製品の品質及び信頼性の追求と環境汚染防止に努めております。
(2)法的規制及びカントリーリスク
国内外での事業の遂行にあたっては、それぞれの国の各種法令、行政による許認可や規制等を遵守しております。しかしながら、法令の改廃や新たな法的規制が設けられる等の場合や、工事を行う国や地域によっては、政情不安(戦争、テロ)、国家間対立による経済制裁、経済情勢の急変に伴う工事従事者の動員及び資機材調達の遅れ、現地の労使関係等のリスク、商習慣に関する障害、資金移動の制約、特別な税金及び関税等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これを回避するため、貿易保険の付保、現地の法律や会計コンサルタント等からの情報収集及び顧客や取引先との間で最適な責任分担を図ることにより、リスクの低減に努めております。
(3)大規模災害のリスク
地震や風水害など各種災害が発生した場合には、物的・人的被害の発生や物流機能の麻痺等により、当社グループの生産活動を中心とした事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症や新型インフルエンザなどの感染症が大流行(パンデミック)した場合、経済の混乱や、感染拡大防止のための外出自粛・渡航禁止等により商談機会の減少や、顧客の投資意思決定が遅れることが考えられます。これらが受注の遅れにつながった場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、地震、風水害など各種災害やパンデミックに対して発生時の損失を最小限に抑えるため、設備の点検・訓練の実施、緊急連絡体制、感染症対応ガイドラインの整備など、事業継続計画(BCP)を策定しております。また、損害保険の利用等を通じて負担限度額のコントロールに努めております。
(4)情報セキュリティに関するリスク
事業活動の過程では取引先の機密情報や個人情報、当社グループの技術・事務管理に関する機密情報や個人情報を取り扱う場合があります。パソコン、サーバー及びネットワーク機器の障害や紛失・盗難、外部からの攻撃やコンピュータウイルスの感染等によりこれらの情報が流出あるいは消失した場合や会社資産が喪失した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これら情報セキュリティ上のリスクについては、情報セキュリティ統括責任者の指示のもと経営企画部IT統制室を中心に、セキュリティポリシーの策定、外部機関連携による各種情報の入手、ネットワークやIT機器の監視、外部からの攻撃に対する網羅的かつ多層的な対策、及び教育や訓練等の具体的施策を推進しております。
(5)市場変動によるリスク
当社グループの国内会社の売上高には、一定程度の海外向け取引が含まれており、為替レートに大幅な変動がある場合には、受注・売上及び損益に影響を受ける可能性があります。ただし、為替レートの変動による影響を軽減する対策として、為替予約の活用や海外調達により外貨建コストの比率を高めるなど、リスク量を適正な水準に調整しております。また、海外子会社においては大部分のコストは自国通貨建てのため、為替レートが当社グループの損益に与える影響は軽微であります。
新造船市場等顧客企業の市場環境の変化によっては、当社グループと競合企業との価格競争が激化し、収益性に影響を及ぼす可能性があります。競合企業との価格競争に勝ち残るため、中核事業である「舶用推進」「港湾物流」の各事業を、「グリーン戦略」と「デジタル戦略」により、更に強化してまいります。グリーン戦略では、環境対応製品のエンジニアリングに注力し、新燃料エンジン、ゼロエミッション型港湾クレーンなど脱炭素関連製品の開発・提供を進めてまいります。また、デジタル戦略では、当社グループのサービス網とデジタル技術の掛け合わせにより、海上輸送と港湾荷役の連携など強みを持つ分野で、デジタル技術・ドローン技術を活用した高度予防保全・遠隔保守サービスなどを開発・提供してまいります。
当社グループでは一定程度の有利子負債を有しており、金利レートが大幅に上昇する場合には、金融コストが増加する可能性があります。金融コストの増加に対しては、資金管理を厳格に行い有利子負債を適正な水準に維持することで、金利上昇リスクをコントロールしてまいります。
(6)材料調達リスク
当社グループは、舶用エンジン、コンテナクレーン、産業機械等各種製品の製造及びサービス事業を展開しており、多種多様な原材料・部品等の調達を行っております。例えば鋼材については、その急激な価格上昇・需給逼迫等が生じた場合、コスト増加、工程の遅れにより当社グループの損益を悪化させる可能性があります。そのため、種々の原材料・部品等について長期安定供給の体制を確保するとともに、価格交渉等を通じて、その影響を軽減するよう努めております。
(7)会計処理に関するリスク
当社グループが保有する固定資産について、経営環境の変化等により収益性が低下した場合、また、遊休資産について時価等が下落し、回収可能価額が低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
また、保有する株式についても同様に、経営環境の変化等により収益性が低下した場合や時価等が著しく下落し、回収可能価額が低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
税効果会計及び退職給付会計においては、将来の予想・前提に基づいて、その資産・債務等の算定を行っております。そのため、予想・前提となる数値に変更がある場合もしくはこれらの算定を行うための会計基準の変更がある場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8)SDGsに関するリスク
当社グループが事業活動を続ける中で、炭素税の導入やCO2排出規制の強化など持続可能社会への急速な移行等が進んだ場合、燃料調達コストに対する課税や製造コスト等の増加により、当社事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。既存のビジネスモデルからの変革が求められる環境になっている一方、低炭素化へ向けた動きが加速し、非化石燃料を使用した製品の需要が拡大する場合、当社に強みのある環境対応製品の販売機会の増大が期待できます。
(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績等の状況
当連結会計年度の世界経済は、物価上昇に鈍化の兆しが見られるものの、長期金利の上昇に伴う消費や設備投資の低迷、中国景気の失速などにより減速しました。また、各国の金融政策の動向や地政学的リスク、中国経済の一段の減速など、先行きは不透明な状況にあります。一方、国内経済は堅調な個人消費や企業業績及び設備投資の伸びなどによりゆるやかな回復基調にあり、今後は、継続的な物価上昇によるデフレからの脱却、物価上昇を上回る賃上げの定着、金利のある世界という新たな局面に移りつつあります。
当社と関連性の高い造船業界では、期近船台がほぼ完売しており、一部造船所では2028年はじめの線表確定にめどを付けるなど、国内造船所は十分な手持ち工事量を確保するに至っております。また、港湾物流業界においては、東南アジアをはじめとした海外での需要は堅調に推移しており、国内においても新設、増設に加え、既設の老朽化更新などの需要が堅調です。引き続き為替や金融市場の変動、及び材料調達における価格変動リスクはあるものの、受注環境としては確実に好転しつつあると認識しております。
このような状況下、当社は2023年4月1日より事業持株会社へと移行するとともに、社名を「株式会社三井E&S」とし、さらに2023年6月28日に監査等委員会設置会社へと移行して新たに生まれ変わりました。不採算事業の整理・撤退や、財務体質の強化などの諸施策を定めた「三井E&Sグループ 事業再生計画」も完遂し、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況は解消いたしました。安定的な配当の実現に向けた体制が整いつつあると判断し、6期ぶりに復配をするとともに、新しい価値を創造できる人材と組織風土の実現に向けて人事制度を刷新し、2024年春季交渉においても成長戦略の実現に向けて、従業員のモチベーションを高めるべく2023年に続き賃金改善を実施することといたしました。
また、「第1回行使価額修正条項付新株予約権」については、当初計画より大幅な前倒しで2023年11月29日をもって全ての新株予約権が行使され、約85億円を調達し、財務健全性を向上することができました。
一方で、当社を取り巻く事業環境は大きく変化しており、中核事業である舶用推進事業・港湾物流事業を「グリーン」と「デジタル」の切り口で発展させることを戦略の柱とする「2023年度中期経営計画」は、1年前倒しで2022年度にスタートしております。
舶用推進事業では、株式会社IHI原動機の舶用大型エンジン及びその付随製品等に関する事業を取得し、2023年4月1日より二元燃料機関とデジタル遠隔保守システムに強みをもつ「株式会社三井E&S DU」として営業を開始しております。当社及び株式会社三井E&S DUは、2023年7月に海事産業強化法に基づく事業基盤強化計画認定制度において、舶用2ストロークエンジンの生産性向上に向けた事業基盤強化計画を策定し、国土交通大臣の認定を受けました。本計画に基づき環境対応型エンジンを開発・拡充し、新たなグリーン製品として生産の強化を進めております。
アンモニア燃料については、当社を含む日本5社連合とMAN-Energy Solutions の6社間で、アンモニア燃料船の商用化に向けた共同開発を進めることに合意し、覚書を締結しました。
世界初号機となるMAN B&Wアンモニア焚機関およびアンモニア燃料供給装置等周辺システムを供給し、舶用推進システムサプライヤーとして海上物流分野で脱炭素化社会の実現に持続的に貢献してまいります。
また、水素燃料については、2023年10月に当社玉野工場内に水素供給設備を完工し、2024年2月には同供給設備と当社テストエンジンによるカップリング運転にて、100%負荷運転(4シリンダの内、1シリンダを水素燃焼)に成功しております。
当社グループは、MAN-Energy Solutions 及びWinterthur Gas & Diesel のダブルライセンス体制の構築により製品ラインアップを拡充し、グループ内リソースの効率的な活用や生産性の向上、アフターサービスの強化を通じて競争力の向上に繋げてまいります。
港湾物流事業では、当社と当社の子会社パセコ社(本社:米国 カリフォルニア)が、ブルックフィールド社(本社:カナダ トロント)と、米国カリフォルニアにおいて港湾クレーンの最終組立を行う為の検討を進めています。米国で港湾クレーンについてこのような最終組立を行うのは、1989年以来のことであり、米国の港湾インフラの安全確保に貢献することが期待されます。
また、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構と共同で、世界初となる燃料電池(FC)を動力源としたタイヤ式門型クレーンを開発し、水素を燃料とした荷役作業を実施するための協定を東京都港湾局他3社と締結するなど、製品の脱炭素化を進めております。その他、港湾クレーンの自動化やドローンによる遠隔保守、港湾ターミナルの運営効率化などデジタル技術の活用による人口縮小社会の課題解決に取り組んでまいります。
さらに、中核事業の周辺領域において新しい製品やサービスを推進する事業を成長事業(成長事業推進セグメント)と位置づけ、国内初となる廃食用油を原料とした国産SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の大規模生産実証設備向け圧縮機を受注するなど、脱炭素を念頭に置いた新製品やサービスの開発に注力し、さらなる企業価値向上に取り組んでまいります。
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ271億81百万円増加の4,671億40百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末と比べ86億43百万円減少の3,206億30百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べ358億24百万円増加の1,465億10百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の経営成績は、受注高は3,369億87百万円(前期比+4.5%)、売上高は3,018億75百万円(前期比+15.1%)、営業利益は196億30百万円(前期比+109.4%)、経常利益は207億11百万円(前期比+65.3%)、親会社株主に帰属する当期純利益は250億51百万円(前期比+61.1%)となりました。
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〔経営成績の推移:連結ベース〕 |
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受注高 (百万円) |
売上高 (百万円) |
営業利益又は 営業損失(△) (百万円) |
経常利益又は 経常損失(△) (百万円) |
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) (百万円) |
1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失 (△) (円) |
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2024年3月期 |
336,987 |
301,875 |
19,630 |
20,711 |
25,051 |
255.73 |
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2023年3月期 |
322,351 |
262,301 |
9,376 |
12,532 |
15,554 |
177.47 |
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2022年3月期 |
511,089 |
579,363 |
△10,029 |
△25,742 |
△21,825 |
△269.94 |
セグメントごとの経営成績は次のとおりとなりました。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
(成長事業推進)
受注高は468億29百万円(+11.0%)、売上高は408億10百万円(+17.1%)、営業利益は58億83百万円(+38.2%)となりました。
(舶用推進システム)
受注高は1,476億71百万円(+5.8%)、売上高は1,340億33百万円(+37.2%)、営業利益は64億31百万円(+143.7%)となりました。
(物流システム)
受注高は705億72百万円(+42.7%)、売上高は476億37百万円(+14.4%)、営業利益は30億55百万円(+125.5%)となりました。
(周辺サービス)
受注高は716億18百万円(△3.6%)、売上高は741億41百万円(+29.3%)、営業利益は23億54百万円(+226.3%)となりました。
(海洋開発)
持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、ブラジルで操業するFPSO及びFSOに対するアセット・インテグリティ改善費用による利益の押し下げ要因があったものの、FPSO等の建造工事の進捗による収益認識などにより、前期と比べて40億54百万円増加(+175.4%)の63億66百万円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて99億51百万円減少して335億16百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の支出は、344億35百万円(前連結会計年度は150億43百万円の支出)となりました。これは主として、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上などによる収入があった一方、受注工事損失引当金の減少、持分法による投資利益の計上、売上債権及び契約資産の増加及び仕入債務の減少などによる支出があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の支出は、3億54百万円(前連結会計年度は29億99百万円の支出)となりました。これは主として、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入、関係会社株式の売却による収入及び関係会社出資金の売却による収入などがあった一方、有形及び無形固定資産の取得による支出などがあったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の収入は、241億10百万円(前連結会計年度は95億15百万円の収入)となりました。これは主として、長期借入金の返済及び社債の償還による支出などがあった一方、短期借入金の純増加及び新株予約権の行使による株式の発行による収入などがあったことによるものであります。
〔財政状態の推移:連結ベース〕
|
|
総資産 (百万円) |
純資産 (百万円) |
自己資本比率 (%) |
営業活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
投資活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
財務活動によるキャッシュ・ フロー (百万円) |
有利子 (百万円) |
|
2024年3月期 |
467,140 |
146,510 |
30.4 |
△34,435 |
△354 |
24,110 |
162,012 |
|
2023年3月期 |
439,959 |
110,686 |
24.2 |
△15,043 |
△2,999 |
9,515 |
141,547 |
|
2022年3月期 |
409,150 |
62,949 |
14.0 |
△20,265 |
△70,923 |
806 |
142,374 |
③ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
|
成長事業推進 |
40,704 |
24.6 |
|
舶用推進システム |
143,847 |
29.0 |
|
物流システム |
44,914 |
1.8 |
|
周辺サービス |
78,203 |
37.4 |
|
海洋開発 |
- |
- |
|
その他 |
5,030 |
△83.0 |
|
合計 |
312,700 |
13.8 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
4.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されているため、生産実績は記載しておりません。
b. 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比(%) |
受注残高 (百万円) |
前期比(%) |
|
成長事業推進 |
46,829 |
11.0 |
34,971 |
21.1 |
|
舶用推進システム |
147,671 |
5.8 |
84,392 |
37.0 |
|
物流システム |
70,572 |
42.7 |
81,381 |
38.6 |
|
周辺サービス |
71,618 |
△3.6 |
180,121 |
15.3 |
|
海洋開発 |
- |
- |
- |
- |
|
その他 |
295 |
△98.2 |
1,569 |
△75.5 |
|
合計 |
336,987 |
4.5 |
382,435 |
22.6 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
3.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されているため、受注実績は記載しておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
|
成長事業推進 |
40,810 |
17.1 |
|
舶用推進システム |
134,033 |
37.2 |
|
物流システム |
47,637 |
14.4 |
|
周辺サービス |
74,141 |
29.3 |
|
海洋開発 |
- |
- |
|
その他 |
5,251 |
△82.9 |
|
合計 |
301,875 |
15.1 |
(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。
3.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前期比較については、前期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
4.海洋開発セグメントは、持分法適用関連会社で構成されているため、販売実績は記載しておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しており、主な内容は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」に記載しております。また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比べ271億81百万円増加の4,671億40百万円となりました。これは、現金及び預金が102億33百万円減少した一方、受取手形、売掛金及び契約資産が144億32百万円、商品及び製品が35億86百万円、投資有価証券が73億34百万円、退職給付に係る資産が71億52百万円それぞれ増加したことなどによります。
負債は、前連結会計年度末と比べ86億43百万円減少の3,206億30百万円となりました。これは、支払手形及び買掛金が97億94百万円、短期借入金が345億40百万円それぞれ増加した一方、1年内返済予定の長期借入金が79億64百万円、受注工事損失引当金が96億99百万円、流動負債その他が378億85百万円それぞれ減少したことなどによります。
純資産は、第1回行使価額修正条項付新株予約権の行使、親会社株主に帰属する当期純利益の計上、退職給付に係る調整累計額の増加などにより、前連結会計年度末と比べ358億24百万円増加の1,465億10百万円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度と比べて146億35百万円増加(+4.5%)の3,369億87百万円となりました。
売上高は、舶用推進システム事業において舶用エンジンの引渡しが好調に推移したことや株式会社三井E&S DUを連結の範囲に含めたことにより、前連結会計年度と比べて395億73百万円増加(+15.1%)の3,018億75百万円となりました。
営業利益は、舶用推進システム事業の損益が改善したことなどにより、前連結会計年度と比べて102億53百万円増加(+109.4%)の196億30百万円となりました。
経常利益は、持分法による投資利益の計上及び支払利息や支払手数料の計上などにより前連結会計年度と比べて81億79百万円増加(+65.3%)の207億11百万円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、負ののれん発生益や関係会社株式売却益の計上及び繰延税金資産の計上に伴う法人税等調整額の計上などにより、前連結会計年度と比べて94億97百万円増加(+61.1%)の250億51百万円となりました。
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期との比較は変更後の報告セグメントの区分に基づき記載しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。
(成長事業推進)
「脱炭素」を念頭に中核事業の周辺領域で新しい製品やサービスを推進しており、SAF製造用プラントに使用される往復動圧縮機を海外で受注しました。また、国内製鉄所向けに、高炉水素還元の実証設備用の軸流圧縮機を受注、海外製鉄所向けでは、高炉から排出される排ガスを利用して発電する高効率炉頂圧回収タービンを2件受注し、製鉄所内の脱炭素化、省エネに貢献しています。
水素製造プラント用往復動圧縮機の引き合いも増加しており、世界的な脱炭素化の流れに当社の技術を活用し、水素関連市場への取り組みを強化していきます。
受注高は、脱炭素化対応の案件が増加傾向にあることや、高炉送風機や建設機械用エンジン、化学プラントなどの設備更新に伴う産業機械の需要も堅調に推移したことにより、前期と比べて46億36百万円増加(+11.0%)の468億29百万円となりました。売上高は、建設機械用エンジンの受注増加などにより59億45百万円増加(+17.1%)の408億10百万円となり、営業利益は、売上高の増加などに伴い、前期と比べて16億24百万円増加(+38.2%)の58億83百万円となりました。
(舶用推進システム)
受注量が過去10年で最高となった2023年の世界の新造船マーケットに呼応して国内でも前年比+25%となり、当社への舶用エンジンの引き合いが増加しております。特に、メタノール焚きを始めとする二元燃料エンジンの受注が増加し、これらに対応するための設備増強を行っております。また、エンジン周辺機器についても注力しており、自社開発の高圧LNGポンプは着実に受注を積み重ねております。さらに、他社に先駆けたアンモニア焚きエンジンのライセンサーとの共同開発や、アンモニア燃料供給装置の自社開発も進めており、エンジン及び周辺機器の製品ラインアップを拡充し、これらをセットで提供できるサプライヤーとして他社との差別化を図ってまいります。
また、2023年4月に株式会社三井E&S DUが当社グループに加わり、玉野・相生両工場の特性を活かした生産性の最大化を図っております。今後、MAN-Energy Solutions 及びWinterthur Gas & Dieselのダブルライセンス体制を活かしたさらなるシナジーを生み出してまいります。
アフターサービスは、就航船に対する環境規制対応の需要などにより受注・売上ともに好調です。2024年度以降も、電子制御エンジンのドック工事の増加により、高水準が続くものと見込んでいます。
受注高は、二元燃料エンジンの引き合いが増加したことなどにより、前期と比べて80億95百万円増加(+5.8%)の1,476億71百万円となりました。売上高は、舶用エンジンの引渡し及びアフターサービス事業が好調に推移したことや株式会社三井E&S DUを連結の範囲に含めたことなどにより、前期と比べて363億40百万円増加(+37.2%)の1,340億33百万円となり、営業利益は、売上高の増加などに伴い、前期と比べて37億92百万円増加(+143.7%)の64億31百万円となりました。
(物流システム)
東南アジアにおける大型案件の連続受注など、海外での受注はトランステーナを中心に好調を維持しております。国内においても新設、増設に加え、既設の老朽化更新などの需要が堅調であり、国内外合わせ過去最大の受注となりました。
新エネルギー・産業技術総合開発機構と共同で実証を行っている世界初のゼロ・エミッショントランステーナ(水素燃料電池パワーパック駆動のトランステーナ)については、米国ロサンゼルス港に実機を納入し、まもなく実証事業が開始されます。さらに、米国の港湾インフラの安全確保に貢献すべく、米国においてポーテーナ、トランステーナの最終組立を行う為の検討を進めております。国内においては、東京港及び横浜港にて既設トランステーナを水素燃料電池パワーパックに換装、神戸港では水素エンジン発電機に換装し、それぞれ稼働実証を行う予定となっております。引き続き、脱炭素化社会へ向け製品の商業化を進めてまいります。
アフターサービス関連では、国内において、老朽化更新に伴う既設機の撤去及び改修工事が好調なことに加え、国内外のパーツサプライが受注・売上ともに過去最高を記録しました。クレーンリモートモニタリングシステムは、国内の神戸港、志布志港、横浜港など順調に受注しており、さらなる拡販を進めてまいります。また、新サービスのドローン点検は、自動飛行ルート作成アプリケーションの実証試験を含む試用の受注を開始しております。
受注高は、東南アジアでの大型案件の受注が続いたことなどにより、前期と比べて211億31百万円増加(+42.7%)の705億72百万円となりました。売上高は、工事の引渡しが順調に進んでいることから、前期と比べて59億84百万円増加(+14.4%)の476億37百万円となり、営業利益は、売上高の増加などに伴い、前期と比べて17億円増加(+125.5%)の30億55百万円となりました。
(周辺サービス)
周辺サービス事業においては各子会社ともに順調に推移しました。特に、堅調な舶用エンジン制御機器事業に加えて、製造業向けのデータ活用システム案件を獲得したシステム開発事業が業績を牽引しました。鋼構造物・船舶ブロック製造事業においては、鉄鋼業向けなどの案件を獲得し、また前期に受注したケーソン・船舶ブロック等の大型案件も売上に寄与しました。ガス関連エンジニアリング事業においては、東アジア向けFGS(燃料供給システム)の大型案件を獲得したことなどにより、前期に比べて大きく受注を伸ばしました。
受注高は、前期と比べて26億85百万円減少(△3.6%)の716億18百万円となりました。売上高は、国内外子会社が売上を順調に伸ばし、前期と比べて167億85百万円増加(+29.3%)の741億41百万円となり、営業利益は、売上高の増加などに伴い、前期と比べて16億32百万円増加(+226.3%)の23億54百万円となりました。
(海洋開発)
原油価格は、サウジアラビアによる自主的な追加減産が延長されたことなどを受け、一時1バレル90米ドル超の高値をつけたものの、中国経済の減速などにより石油需要が減少するとの見方が強まったことから、2023年末の終値は1バレル70米ドル台となりました。こうしたことから、脱炭素の流れと併存しながらも、安定したエネルギー供給の維持は依然重要な課題であり、石油会社による深海油田開発プロジェクトは継続すると考えられ、当社グループが強みを持つ超大水深大型プロジェクトは、今後も安定した成長が期待されます。
持分法による投資利益は、当社の持分法適用関連会社である三井海洋開発株式会社及びその関係会社において、ブラジルで操業するFPSO及びFSOに対するアセット・インテグリティ改善費用による利益の押し下げ要因があったものの、FPSO等の建造工事の進捗による収益認識などにより、前期と比べて40億54百万円増加(+175.4%)の63億66百万円となりました。
c. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
a. 資金需要
当社グループは個々の契約金額が大きな製品を受注生産しており、運転資金は工事にかかる材料費、請負工事費、及び人件費が占めておりますが、個々の工事の契約による支払い条件、工事の進捗により、一時的に多額の運転資金需要が発生しやすい傾向があります。
投資資金の主なものは、中核事業のグリーン戦略・デジタル戦略を推進するために必要な成長投資資金、及び製造工場を維持・増強するための設備資金となっており、成長投資資金については、優先株の発行により得た資金、及び新株予約権の行使により得た資金を中心に充当しております。
なお、有利子負債の増加を抑制する観点から、当社グループでは設備投資、投融資などの長期的な資金は、主力事業への成長投資資金に集中させることで、一時的な多額の支出を抑制していく方針としております。
b. 資金調達
当社グループの運転資金、投資資金は主に営業活動による収入を財源とすることを基本とし、日々の資金の動きで不足が生じた場合は、金融機関からの借入で調達しております。この借入金を適時調達できる状態を維持する為、主要取引金融機関とは長年にわたる良好な取引関係を維持しており、一部の金融機関とはコミットメントラインを設定し、緊急の資金需要にも備えています。また、上場子会社を除いた国内連結子会社との間でCMS(キャッシュ・マネージメント・システム)を導入して、グループ全体での資金効率を高め、安定的に資金の流動性を確保できる体制を構築しております。
さらに、成長機会の取り込みに必要な資金の調達と、財務健全性の向上を図るための資本対策として、2022年度に「A種優先株式」90億円を発行し、また、同年度に発行した「第1回行使価額修正条項付新株予約権」は2023年11月末までに累計約85億円の行使が完了しております。
なお、当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
(単位:百万円)
|
|
合計 |
返済・償還 1年以内 |
返済・償還 1年超 |
|
短期借入金 |
149,785 |
149,785 |
- |
|
長期借入金 |
12,227 |
1,410 |
10,817 |
|
有利子負債 計※ |
162,012 |
151,195 |
10,817 |
|
リース債務 |
8,647 |
2,076 |
6,571 |
|
総計 |
170,660 |
153,271 |
17,388 |
※当社では、リース債務を別管理しております
④ 経営計画の達成・進捗状況
当社グループは、海外大型EPCプロジェクトにおける過年度の損失により、財務基盤が毀損し、自己資本の回復と資金の確保が急務となっておりました。
この状況の解消に向け、当社グループは2019年5月に策定した「三井E&Sグループ 事業再生計画」(同年11月に一部見直し、以下「事業再生計画」)に沿って、不採算事業の整理・撤退等を進め、祖業である船舶の建造事業からも事実上撤退する等、2022年度までに、子会社・不動産等、約20件、総額1,200億円超の事業・資産売却を断行し、事業再生計画は完遂いたしました。
また、財務体質の健全化及び成長投資のための資本対策として、2022年3月31日に公表した「第三者割当によるA種優先株式の発行、第三者割当による第1回行使価額修正条項付新株予約権の発行」により、合計約175億円の資金調達も行っております。
懸案であった海外大型EPCプロジェクトの不確実性は解消し、中核事業である、舶用推進事業、港湾物流事業に注力することで、当社グループは安定的に利益を稼得できる体制となり、前連結会計年度より継続して営業利益を計上しております。
当社グループは持続可能社会への急速な移行等、取り巻く事業環境が大きく変化する中、「2023中計」を2022年5月に公表しております。2023中計では、有利子負債の削減や資産の有効活用を重視し、売上至上主義から脱却する等、健全な財務体質と堅実な利益を追求していく観点から、経営指標として連結営業利益率、自己資本比率及びNET有利子負債EBITDA倍率を選定しております。数値目標は最終年度である2025年度において、連結営業利益率:6.0%、自己資本比率:26.0%及びNET有利子負債EBITDA倍率:5.0倍として設定し、当連結会計年度において、全ての項目を前倒しで達成いたしました。
また、当社は2024年6月に、長年にわたり保有していた三井海洋開発株式の一部を売出しの方法で売却完了いたしました。売出しによって得た資金は、事業戦略、財務戦略、及びステークホルダーへの利益還元の3点から、今後、以下の用途に段階的に充てていくことを計画しております。これにより、今後も成長機会を着実に捉えると共に、当社グループの進化と持続に向けた企業価値向上に繋げてまいります。
① 港湾物流事業の米国含めた世界市場展開に必要な投資、舶用推進事業に関連する重要部品の技術開発や製造に必要な投資、およびサプライチェーンの強化に必要な投資
② 有利子負債の大幅な圧縮およびA種優先株式の24年度上期中の償還による財務の健全化、ならびにこれに伴う24年度下期以降の金融費用の大幅な低減
③ 一般株主への利益還元および人材育成や住宅支援等の制度改革を軸とした人的資本への投資
2023中計の各施策については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しております。
<2023中計の進捗>
|
指標 |
2025年度目標 |
2023年度実績 |
目標との差異 |
|
連結売上高 |
2,800億円 |
3,019億円 |
+219億円 |
|
連結営業利益率 |
6.0% |
6.5% |
+0.5% |
|
自己資本比率 |
26.0% |
30.4% |
+4.4% |
|
NET有利子負債EBITDA倍率(※) |
5.0倍 |
4.7倍 |
△0.3倍 |
※ NET有利子負債EBITDA倍率=(有利子負債残高-現金及び預金)÷(営業利益+減価償却費)
技術導入
|
会社名 |
相手方 |
提携品目 |
契約期間 |
契約内容(対価の支払方法) |
||
|
国籍 |
名称 |
|||||
|
㈱三井E&S |
ドイツ |
MAN Energy Solutions SE |
MAN B&Wディーゼル機関 |
1971.11 |
2031.12 |
(1)ロイヤリティ (2)技術資料代 (3)技術指導料 |
|
オランダ |
Howden Thomassen Compressors B.V. |
往復動コンプレッサ装置 |
2012.1 |
1年毎 自動延長 |
(1)ロイヤリティ (2)技術サービス料 |
|
|
㈱三井E&S DU |
スイス |
Winterthur Gas & Diesel Ltd. |
WinGD型汎用低速ディーゼル機関 |
2015.2 |
2025.1 |
ロイヤリティ |
|
フランス |
MAN Energy Solutions France SAS |
S.E.M.T. Pielstick型汎用中速ディーゼル機関 |
2023.3 |
2033.3 |
ロイヤリティ |
|
(注)当連結会計年度に関する開示に当たり、経営上の重要性の観点から、本欄に記載すべき契約を再検討して表示して
おります。
当社グループは、舶用推進事業及び港湾物流事業を中核事業として、製品競争力強化と事業拡大につながる研究開発を積極的に推進しております。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、
なお、海洋開発は持分法適用会社で構成され、その研究開発費は上記金額に含まれないため記載を省略しております。
(1)成長事業推進
産業機械関連では、従来、石油精製、石油化学市場向けを中心に事業展開してきましたが、近年の産業界の急速な脱炭素化への流れに対応し、当社の連結子会社である株式会社加地テックと協同で水素サプライチェーン設備向けに高圧大流量の水素圧縮機の開発を完了し、販売を開始しました。本圧縮機は大型化が進む水素ステーションや水素製造設備に最適な仕様(流量・サイズ)に設計しており、設置スペースが小さく収まり配置の自由度が増し、併せて導入費用及び維持費を含めたライフサイクルコストの低減も期待できます。
今後、水素社会の拡大に伴い市場拡大が見込まれる高圧水素ガスの製造・輸送・利用分野に対し、経済性・信頼性に優れた各種製品・サービスの拡充を継続的に進めてまいります。
新規事業関連では、港湾における業務のデジタル化による脱炭素化や省人化、効率化に貢献する技術開発を進めております。一例として、これまで書類で行っていた港湾クレーンの法令点検記録管理を電子機器での入力及びクラウド上での管理とする「CREWS(クルーズ)」(Crane Engineer Workflow Service)を開発し、博多港において試用を開始しています。
その他、水素燃料電池や水素内燃機関活用のための水素燃料供給方法の技術開発や、大型船舶の燃費低減等を目的とする船体汚損状態管理手法の開発などによって、脱炭素化と人口縮小による労働力不足などの社会課題解決に取り組んでいます。
トンネルや道路、橋梁などを対象に表層部及び深部の異常を探査する電磁波レーダー関連事業は11月1日付で子会社の株式会社三井E&Sテクニカルリサーチへ移管しましたが、移管前からの研究開発を継続しております。最近ではレーダーセンサー部とデータ処理システムを一体化して一般車両に搭載可能な小型レーダーシステムを開発しました。主なターゲットとしては自治体などの車両を想定しており、データ計測から保存までをネットワーク経由で完全自動化しています。既存車両の大きな改造や専門技術者不在でも運用が可能となっています。今後、道路のインフラコンサルタントなど外部企業との提携も視野に新型システムを活用した事業展開を計画しています。また新たな適用先として一般住宅点検用向けに当社独自のマルチパス方式を活用した点検装置の開発検討を進めていきます。
当事業に係る研究開発費は、
(2)舶用推進システム
舶用エンジン関連では、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素燃料の活用が注目されており、当社グループではアンモニア燃料船向けに世界初号機を目指してアンモニア焚きエンジン及び燃料供給装置、燃料タンクなど周辺機器の開発を進めております。
燃料供給装置など一部の製品開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金の補助事業として採択されています。水素燃料船向けの開発については国土交通省の海事産業集約連携促進技術開発支援事業を活用し、水素焚きエンジン及び水素燃料供給装置に安全対策を施した装置設計・製作を行っています。支援事業最終年度となる2023年度には、当社玉野工場内に完成した水素ガス供給設備(液化水素タンク、水素ガス圧縮機他)とのカップリング運転にて、シリンダ直径50cmの大型舶用2サイクルエンジンにおける水素燃焼運転に世界で初めて成功いたしました。
当事業に係る研究開発費は、
(3)物流システム
運搬機システム関連では、水素燃料電池を搭載したラバータイヤ式門型クレーン(RTGC)の開発を進めています。この開発はNEDOの補助事業に採択されており、2022年に大分工場での実証実験を成功させました。今後は、NEDO補助事業の一環として、2023年度に新たに1台製作したゼロエミッションRTGCを米国・ロサンゼルス港に持ち込み、2024年度より実使用環境下での運用を通して、水素充填作業が荷役に及ぼす影響や、連続稼働実験などの検証、分析の実証事業を実施します。加えて、国内においても東京港と神戸港において、水素を燃料とした荷役機械の稼働実証が開始しており、東京港ではRTGCに水素燃料電池を実装し、神戸港ではRTGCに水素エンジン発電機を搭載します。共に、既存RTGCのディーゼル発電機を換装し、2025年度までに現地実証試験を実施します。この成果を広く展開し、荷役機械の水素利用の促進により、港湾の脱炭素化を推進してまいります。また、コンテナターミナルの労働環境改善や安全性向上へのニーズに応え、遠隔操作が可能なRTGCの開発を完了し、大分工場内に整備したテスト用RTGCとヤード荷役テストエリアを活用して、システム検証やさらなる荷役効率向上を進めております。この遠隔操作RTGCの操作性をさらに向上させるために、遠隔自働化したRTGと港湾ターミナル構内シャーシとの連携自働化に関する技術開発を、国土交通省より受託し開発を開始しました。当社大分工場での実証試験を行い、2024年度末までにシステムを確立させる予定です。
これらハード面の開発と並行して、コンテナ管理及び荷役作業の指示を効率的に行うシステムCTMS(Container Terminal Management System)などのソフトウェア製品に関しても、遠隔荷役機器との連携機能の開発や、よりユーザフレンドリーなシステムとするための開発を進めています。
アフターサービス関連では、国土交通省港湾局が進めている荷役機械の予防保全的維持管理手法の高度化に合わせて、ビッグデータを活用するクラウド型遠隔監視システムCARMS(Crane Advanced Remote Monitoring System)を三井E&Sシステム技研株式会社と共同で製品化しました。国内外5港湾に導入し、クレーンの動作情報を収集し、解析を開始しました。2023年以降は新造や改造でご発注頂いたお客様に、順次CARMSを搭載していく予定です。並行してクレーンの故障予防保全AI診断機能の開発を進め、診断機能を試験的にクレーンに搭載する予定です。収集したデータからAI分析を行い、点検業務を支援するサービスや、クレーン使用頻度から自動的にメンテナンス時期を算出する維持管理サービスなど、新たなサービスの開発を進めています。
また、従来目視で行っていた点検作業をドローンに置き換えるシステムを株式会社ゼンリンデータコムと共同開発しました。3Dモデル上での設定による自動飛行と撮影に加え、遠隔地からのリアルタイム操作を実現、さらにAIによる定量評価システムを構築し、CARMSと連携させて経年変化観察も実現できるものです。2023年中に、クレーンユーザ以外にも、移動式クレーンや、橋梁、プラント設備や、遊園地施設での自動点検システムとして、実証試験を完了しました。国内外のドローンメーカ機種にてシステム稼働を確認し、多くのユーザーニーズにマッチしたシステムとして2024年から提供予定です。
当事業に係る研究開発費は、
(4)周辺サービス
三井E&Sシステム技研株式会社の主力製品である勤怠管理システム「TIME-3X」の機能強化を継続的に進めております。三次元自動計測分野では、これまでの自動車業界向け車体三次元計測システムの機能強化に加え、X線CT画像と三次元解析ソフトウェアを用いた、アルミ鋳造品などの非破壊検査を実現するシステムの開発に向けて、PoC(Proof of Concept)を実施しました。
当事業に係る研究開発費は、