第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 会社の経営の基本方針及び中長期的な経営戦略

当社グループを取り巻く事業環境は、人口減少・少子高齢化や電力・ガス小売全面自由化の進展はもとより、カーボンニュートラルの実現に向けた潮流やサステナビリティ意識の高まり、新型コロナウイルス感染症による社会変容など、急速に変化している。これらの環境変化に迅速かつ適切に対応するため、当社グループは、創業100周年を迎える2030年に向けた「西部ガスグループビジョン2030」を2021年11月に公表し、これを具現化する新たな中期経営計画として「Next2024」を2022年4月よりスタートした。

 

 ■グループ中期経営計画「Next2024」の概要

「Next2024」では、中核であるガスエネルギー事業の競争力強化を図るとともに、電力・その他エネルギー事業や不動産事業を成長させていく。引き続き事業構造の変革に取り組み、ガスエネルギーとそれ以外の事業構成比を2030年度において同程度とすることを目指す。また、このために必要な経営資源をグループとして最適に配分し、利益の最大化を図っていく。

 

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(2) 目標とする経営指標

「Next2024」の目標とする経営指標は次のとおりである。

項 目

経営指標(2024年度)

売上高

   2,300億円

経常利益

       250億円(※)

ROA

     1.5%

ROE

     7.5%

自己資本比率

     21.5%

   (※)2022年度~2024年度 計画合計

 

(3) 優先的に対処すべき課題

  「Next2024」最終年度として、引き続き以下の取り組みを着実に進めていく。

①  天然ガスシフトの推進

カーボンニュートラルの実現に向けて、徹底した天然ガスシフトを進めていく。

ⅰエネルギーの低炭素化と最適利用

 

ⅱ新たな取り組みへのチャレンジ

・石油、石炭を熱源とするお客さまに対して、低炭素化に貢献する天然ガスやLPガスへの燃料転換を推進。

・エネルギーサービスの充実を図り、お客さまに最適なエネルギーをワンストップで提供。

 

・お客さまの低炭素化に貢献するため、カーボンニュートラルLNGなどの環境に優しいエネルギーを提供。

・船舶向けLNG燃料供給など、天然ガスの新たな用途への活用を推進。

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熱源の燃料転換

 

カーボンニュートラルLNG

 

②  ひびきLNG基地の戦略的活用

ひびきLNG基地を最大限活用し、天然ガス取扱量の拡大を図ることで、ガスエネルギー事業と電力小売事業の競争力を強化していく。

ⅰ国際エネルギー事業の強化

 

ⅱ天然ガス発電所の建設

・これまで進めてきたひびきLNG基地を活用した連携ビジネスを加速させ、アジア向けのLNG取扱量を増大。

 

・ひびき発電所の事業化を九州電力株式会社と共同で推進。

・同発電所の稼働を見据え、電力小売事業を強化。

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LNG出荷の様子

 

ひびき発電所 竣工イメージ

 

③  お客さまの安全・安心と安定供給体制の強化

エネルギー事業者として最大の責務であるお客さまの安全・安心を確保するため、引き続き安定供給体制と災害時の対応力の強化に取り組んでいく。

ⅰレジリエンスの強化

 

ⅱ保安の高度化の推進

・迅速かつ的確な緊急保安対応により、安全・安心を提供。

・実践的な防災訓練やグループ会社間の連携強化により災害対応力を向上。

 

・技術,技能の確実な継承を行うとともに、保安人財の早期育成を推進。

・デジタル技術の積極的な導入やデジタル人財の活用などによるスマート保安を推進。

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防災訓練

 

スマート保安の推進

 

④  再生可能エネルギー事業の強化

エネルギー源の多様化や電源の低炭素化に向け、再生可能エネルギー事業の強化に取り組んでいく。

ⅰ発電容量の拡大

 

ⅱ再エネを活用した新たなサービスの提供

・太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの電源開発を進め、発電容量を拡大。

 

・PPAやVPPなどの新たなサービスの創出やビジネスモデルの構築を推進。

・自治体や地元企業と連携しながら地域のエネルギー課題の解決を推進。

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再生可能エネルギー発電容量

 

PPAサービス

※PPAはPower Purchase Agreement(電力販売契約)の略

※VPPはVirtual Power Plant(仮想発電所)の略

 

⑤  不動産事業の拡大

暮らしの重要な基盤となる不動産事業の拡大に取り組んでいく。引き続き住宅分譲事業を推進するとともに、賃貸住宅やオフィス・商業施設の開発など賃貸事業を強化していく。

ⅰ住宅分譲(マンション・戸建)

 

ⅱ賃貸住宅

 

ⅲオフィス・商業施設などの開発

北部九州、山口を中心にお客さまのニーズに沿った住まいを提案。

 

福岡都市圏を中心に、街並みと調和した都市型賃貸住宅を開発。

 

オフィス、倉庫、商業施設などを企画・開発し地域の発展に貢献。

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ⅳリフォーム・リノベーション

 

ⅴ不動産サービス

 

ⅵ海外不動産

時代やライフスタイルに合わせ「快適」で「安心」なリフォーム・リノベーションを提供。

 

土地及び建物の売買、仲介、マンション管理など、不動産に関する総合的なサービスを提供。

 

タイ、フィリピンにおいて分譲事業などを展開。

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⑥  地域社会を支える価値の共創

エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、社会や暮らしの多様なニーズに寄り添ったサービスの拡充、創出に向けて、既存事業の進化やスタートアップなどとの共創に取り組んでいく。

ⅰエネルギーと暮らしのサービスの提供

 

ⅱ地域活性化への貢献

・環境にやさしいエネルギーを中心に、食・レジャー・介護など、お客さまの日々の生活やビジネスを支える多様なサービスを提供。

・コーポレートベンチャーキャピタルの出資先との連携などを通じ、新たなサービスを共創。

 

・コミュニティの活性化など、地域が抱える課題解決に向けた取り組みを推進。

・行政、地元企業などとの連携を通じて地域独自の事業やサービスを共創。

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エネルギーと周辺サービス

 

団地再生支援(宗像市日の里)

 

⑦  カーボンニュートラルの実現に向けた挑戦

天然ガスシフトの取り組みに加え、様々なステークホルダーと連携しながら未来を見据えた技術開発に取り組むなど、グループ大でカーボンニュートラルの実現に向けて挑戦する。

ⅰエネルギー分野での取り組み

 

ⅱエネルギー分野以外での取り組み

・メタネーション技術の開発に向けて、行政や業界団体などとの連携を強化。

・学術機関などと連携し、CO回収技術などに関する技術の導入を推進。

 

・環境性能が高い住宅やオフィスなどを提供。

・フードロス削減に寄与するサービスの提供など、循環型社会に向けた取り組みを推進。

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ひびきLNG基地でのメタネーション実証構想

 

フードロス削減ECサイト

 

⑧  経営基盤の強化

安定的な事業運営と競争力の向上に向けて、経営基盤の強化を図っていく。

DXの推進

お客さま価値の最大化と業務効率化に向けたデジタル活用

人財の育成

働きがいと生産性向上を両立する取り組みの強化

コスト改革の実行

エネルギー事業の競争力強化に向けた業務や取引の見直し

事業ポートフォリオ

経営の強化

グループ全体最適での資源配分の強化

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

 当社グループは、2021年11月に策定した「西部ガスグループビジョン2030」において、“2030年のありたい姿”として、「つながりをチカラに未来を変える価値の創造に挑み、持続可能で豊かな社会の実現をリードする」を掲げた。また、当社グループは、「西部ガスグループビジョン2030」で掲げた「サステナビリティ経営の推進」に際して、社会の持続可能性の実現と企業の長期にわたる価値創造に向けて企業が最優先で取り組む課題を以下の通り、 マテリアリティとして特定した。

    マテリアリティ(重要課題)

戦略1:地域のカーボンニュートラルの実現

気候変動への対応

エネルギーへのアクセス

品質・安全性の向上と防災

戦略2:サステナブルな暮らしや地域社会を支える価値の共創

サステナブルなくらしの推進

地域のビジネスと経済の発展

資源循環の推進

持続可能な調達の推進

地域コミュニティへの参画

戦略3:未来志向で価値創造の基盤を強化

従業員エンゲージメントと能力開発

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進

グループガバナンスとコンプライアンスの強化

リスクマネジメントの強化

当社グループは、特定したマテリアリティへの取り組みにあたって以下のサステナビリティ基本方針を策定している。

<サステナビリティに関する基本方針>

当社グループは、サステナビリティを巡る課題が、事業リスク減少のみならず機会にもつながる経営上の重要課題であるとの認識のもと、「地域貢献」・「責任」・「和」という経営理念及び「西部ガスグループ企業行動指針」に基づき、これらの課題に真摯に取り組む。

・あらゆるステークホルダーとのコミュニケーションを大切に、真に価値ある企業市民として地域社会との共生を実現する。

・企業価値の向上を目指すとともに、社会的責任と使命を果たし、持続可能な社会の発展に率先して取り組む。

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティの取り組みを強化すべく、社長執行役員を委員長とし、当社及びグループ会社の関連部門長をメンバーとする「サステナビリティ委員会」を設置し、課題解決に向けた取り組みの協議、推進を行っている。

 ここで協議した内容は、定期的(原則年2回)に経営会議へ報告を行い、経営会議においては、自社のサステナビリティの機会に関連する戦略・事業計画やサステナビリティのリスク及び機会に関するリスクマネジメント方針等の見直し・指示等を行っている。

 取締役会は経営会議から当該内容の報告を受け、社外取締役による独立的・客観的立場からの意見も踏まえつつ、サステナビリティを巡る重要事項等について適宜・適切に検討し、監督を行える体制を整えている。

 当社は、2021年5月にサステナビリティ委員会を発足し、マテリアリティ行動計画や方針策定、階層別の浸透活動に取り組んできた。2023年度は本委員会を2回開催し、マテリアリティ行動計画やGHG排出量及び環境活動の進捗確認、全従業員のサステナビリティ意識啓発のための取り組み(共感活動※)や包括連携協定などの地域とのつながりを深める取り組みの深化について検討を行った。

※「共感活動」…全従業員を対象にサステナビリティ意識啓発を図るための活動を企画・展開している。2023年度の主な活動は、経営層向けにサステナビリティ研修及びディスカッションの実施、社外取締役4名を対象に「ガバナンス」「人的資本」「環境への取り組み」をテーマとした意見交換会の実施、従業員向けにサステナビリティ関連の動画配信等を行った。

参照URL:https://hd.saibugas.co.jp/sustainability/meeting/

(2)リスク管理

①サステナビリティを巡るリスク及び機会の識別・評価・管理に係る過程

 ■リスク及び機会を識別・評価する過程

 社長執行役員を委員長とするサステナビリティ委員会では、「環境・社会(人々)へのインパクト」と「当社グループの長期にわたる価値創造へのインパクト」の視点に基づき、サステナビリティを巡る関連部門及びグループ会社に係るリスクと機会を識別し、当社グループのリスク管理規程及び時間軸(短期・中期・長期)を考慮し、重要度の優先順位付け及び評価を行っている。

■リスク及び機会を管理する過程

 関連部門及びグループ会社は、識別・評価されたサステナビリティを巡るリスクと機会に関して指標及び目標を設定し、それらを行動計画に反映している。この行動計画の進捗状況を設定した指標に基づきモニタリングし、適宜目標を見直すこと等を通して、当該リスク及び機会を管理している。

 サステナビリティ委員会は、識別・評価されたサステナビリティを巡るリスクと機会について関連部門及びグループ会社からの取り組み状況や設定した目標に関する定期的(原則年2回)など進捗報告を基に審議し、その結果を経営会議へ報告する。

 経営会議の議長である社長執行役員は、サステナビリティ委員会からの報告を基に経営戦略及び財務計画等への反映を審議し決定する。その後決定された内容を取締役会に報告することで、取締役会による監督を受けている。

②西部ガスグループのリスクマネジメントへの統合

 サステナビリティを巡るリスク及び機会は、上記の通りサステナビリティ委員会において識別・評価される。その後、識別・評価されたリスクは、サステナビリティ委員会からグループガバナンス委員会へ報告され、他のリスクと同様に当社グループのリスク管理規程に基づきグループガバナンス委員会で審議(評価)され、重要なリスクと特定された場合は、当社グループのリスクマネジメントへ統合される。

※全社リスクマネジメントの詳細は、「内部統制に係る体制整備の基本方針」を参照。

 参照URL:https://hd.saibugas.co.jp/group/governance/

③サステナビリティを巡る課題に関するガバナンス・リスク管理体制図

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(3)重要なサステナビリティ項目

 上記、ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目については、(ⅰ)気候変動、(ⅱ)人的資本/多様性である。

 それぞれの項目に係る当社グループの戦略並びに指標及び目標については以下のとおりである。

(ⅰ)気候変動

《気候変動に関する戦略》

 当社グループでは、気候変動が当社にとってリスクであると同時に新たな機会につながる重要な経営課題であるという認識の下、以下の方針を策定し、気候変動への取り組みを実施している。

 気候変動への取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上に繋がるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、自社のみならず社会全体に利益をもたらすことを目指している。また、こうした取り組みを通して、SDGsやパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指している。

 当社グループは、TCFDの枠組みに沿って、移行リスク・物理的リスク及び機会という観点から検討し、下記の通りそれぞれ特定した。リスクと機会を特定した後に、政府の脱炭素政策の進展という軸とエネルギー業界の産業構造の変化という軸の2つの軸から複数のシナリオを適用し、当社グループのレジリエンスを検証した上で、対応策を策定した。

 選択したシナリオに応じた対応策は次のとおりである。

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なお、当社グループは、2022年12月に「西部ガスグループカーボンニュートラルアクションプラン」を策定し、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを具体化し、気候変動への対策、脱炭素社会への移行に向けて、気候変動に対する移行計画を取りまとめている。

参照URL:https://hd.saibugas.co.jp/sustainability/environment/tcfd/transitionplans/index.html

 

《気候変動に関する指標及び目標》

 当社グループは、気候関連のリスクを軽減・適応するため、また気候関連の機会を最大化するため以下の目標を設定した。

「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」 移行期である2030年までの数値目標及び指標

  目標1:CO排出削減貢献量 150万トン

      指標:当社グループ及びお客さま先GHG排出量

  目標2:再エネ電源取扱量 20万kW

      指標:再エネ電源取扱量

  目標3:ガスのカーボンニュートラル化率 5%以上

      指標:供給するガス全体に占めるカーボンニュートラル化したガスの割合

当社グループのTCFD提言に則した取り組み(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標及び目標)の詳細は、下記URLを参照。

 https://hd.saibugas.co.jp/sustainability/environment/tcfd/

 当社グループは、TCFD提言が気候変動問題に関する情報開示や、リスクへの適切な対応を行う重要な枠組みであると考え、2021年10月26日にTCFD提言に賛同した。TCFD提言に沿った気候変動対応に関する情報開示に努めている。

 

(ⅱ)人的資本/多様性

《人的資本/多様性に関する方針、戦略》

 当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりである。

 さらに、「西部ガスグループビジョン2030」で掲げた「変革意識と多様性を高める人財戦略の推進」を強力に加速し、従業員と企業が共に成長していくための新たな人財戦略の検討を開始している。

1.人財の育成に関する方針(人財の多様性の確保を含む)

 ①人財育成方針

 当社グループは、すべての従業員が学びたいときに学び、挑戦し、活躍できる環境をつくり出すことで、一人ひとりの能力と可能性を最大限引き出し、未来を変える価値の創造に挑む「人財」を育成する。

 この方針に基づき、資格・役割に応じて「階層別」「役割別」「キャリア」「ダイバーシティ推進」等の研修を行い、役割意識の高い人財育成に努め、グループ全体を俯瞰した適所適材の視点で計画的な人財育成を実施する。

 ②ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)方針

■西部ガスグループダイバーシティ宣言

 当社グループは、従業員一人ひとりが属性だけでなく異なる価値観・経験・想いなどをもった価値ある存在として、自分の考えを自由に発し、互いに認め合い、切磋琢磨しながら未来を切り拓く挑戦を積み重ね、新たな価値を生み出すことを可能とする社内環境を整備する。また、その環境のもと自らの力を最大限発揮できる活気あふれる組織の実現を目指す。

■グループDE&I行動指針

○個の尊重

一人ひとりを個人として尊重し、あらゆる差別を排除し、グループ全体の共通認識とするよう努める。

○差別排除

国籍、人種、民族、年齢、性別、性的指向・性自認、障がい、学歴、宗教、個人的価値観などに基づくいかなる差別も行わない。

○理解と支援

多様な従業員それぞれが抱えている問題への理解を深め、無意識な認識の偏りや無知を克服しつつ、必要な支援を行う。

○多様性確保

グループのダイバーシティを高めるとともに、意思決定において多様な意見が反映されるように努める。

○共創共栄

共に暮らす地域コミュニティの一員であるとの意識を持ち、すべての方々と尊重し合える関係づくりに努める。

 

2.社内環境整備に関する方針

 ①労働慣行方針

 当社グループは、人権尊重の取り組みをグループ全体で推進し、その責務を果たすため、すべての人々の基本的人権を規定した国連の「国際人権章典」及び「多国籍企業行動指針(OECD)」、「多国籍企業及び社会政策に関する指導原則」「子どもの権利とビジネス原則」を支持し、それらを踏まえて実践に努める。

 また、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」で定められた以下の基本的権利に関する原則を支持する。

(a)結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認

(b)あらゆる形態の強制労働の禁止

(c)児童労働の実効的な廃止

(d)雇用及び職業における差別の排除

 

○人権の尊重

人権を尊重し、児童労働・強制労働を禁止するほか、人種、民族、宗教、性別、年齢、出身、国籍、障がい、学歴、社会的地位、性的指向、性的自認による差別や嫌がらせを行わない。

○労働者の権利の尊重

結社の自由と団体交渉に関する当社グループ従業員の基本的権利を尊重する。

○低賃金労働・長時間労働の防止

当社グループ従業員の生活や健康を増進させるため、最低賃金を上回る適切な賃金を支払うとともに、過重労働を防止する。

○公正で公平な報酬

同一労働・同一賃金を遵守した報酬体系を適用する。

 ②健康経営方針

 当社グループ従業員の心身の健康は、企業価値の向上・業績向上を実現するための基礎(土台)と捉え、「健康経営」を積極的に推進し、従業員の一層の健康増進を図る。

 ③労働安全衛生方針

 当社グループは、西部ガスグループ企業行動指針に基づき当社グループの従業員及び当社グループの事業に関わる全ての関係者の労働安全衛生を最優先し、安全かつ健康で働きやすい環境を確保する。

・労働安全衛生に関する諸法令を遵守することはもちろんのこと、「安全衛生規定」を制定し、安全・安心な労働環境を確立する。

・安全を最優先に考え、労働災害ゼロを目指し行動する。

 

《人的資本/多様性に関する指標及び目標》

 当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標及び目標を策定した。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりである。

1.人財の育成(人財の多様性の確保を含む)

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)

指標

内容

実績

(2022年度)

実績

(2023年度)

目標

(2030年度)

女性管理職率

管理職に占める女性の割合

4.5%

3.8

15

男性育休取得率

男性育休取得数/配偶者出産率数

45.8%

90.6

100

※対象会社:西部瓦斯㈱、西部ガスエネルギー㈱、西部ガス都市開発㈱、西部ガスリビング㈱、

西部ガス情報システム㈱、西部ガス・カスタマーサービス㈱、西部ガステクノソリューション㈱、ひびきエル・エヌ・ジー㈱

※出向者は出向元の従業員として集計

2.社内環境整備

①労働慣行

指標

実績(2022年度)

実績(2023年度)

目標(毎年)

従業員

意識調査

従業員エンゲージメントの維持

(主な取組み)

従業員意識調査の実施、結果報告会の実施

従業員エンゲージメントの維持

(主な取組み)

従業員意識調査の実施、結果報告会の実施

従業員エンゲージメントの維持・向上

 

 

 

※従業員意識調査とは、第三者機関が作成した従業員意識調査票を使用した当社グループ社員に対するエンゲージメントサーベイを指す

②健康経営

指標

実績

(2022年度)

実績

(2023年度)

目標

(2025年度)

適切な運動習慣を有する者の割合

38.9%

40.8%

30.0%

適切な食事習慣を有する者の割合

46.9%

45.8%

55.0%

適切な飲酒習慣を有する者の割合

89.6%

84.7%

88.0%

たばこを習慣的に吸っている者の割合

25.8%

26.1%

20.0%

適切な睡眠習慣を有する者の割合

66.6%

64.1%

75.0%

高ストレス者の割合

12.0%

11.3%

10.0%

①定期健康診断受診率

②ストレスチェック受験率

①94.1%

(休業者含む)

②97.0%

①93.9%

(休業者含む)

②95.1%

①②100%

※対象会社:西部ガスホールディングス㈱、西部瓦斯㈱、西部瓦斯熊本㈱、西部瓦斯長崎㈱、西部瓦斯佐世保㈱

③労働安全衛生

指標

実績(2022年度)

実績(2023年度)

目標(毎年)

災害度数率

(休業災害・不休災害)

3.2

2.9

ゼロ

※対象会社:西部ガスホールディングス㈱、西部瓦斯㈱、西部瓦斯熊本㈱、西部瓦斯長崎㈱、西部瓦斯佐世保㈱

 サステナビリティに関する詳細は、当社ウェブサイトを参照。

 URL:https://hd.saibugas.co.jp/sustainability/

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりである。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 当社グループの事業全体に係るリスク

① 社会情勢や景気の変動の社会環境の変化

国内外における経済、金融、社会情勢の変化や景気変動、大規模な感染症の流行等により、売上高の減少や取引先の倒産などの事象が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性がある。当社グループは、環境変化に迅速かつ適切に対応するため、来るべき社会におけるありたい姿を描き、その実現に向けた戦略を「西部ガスグループビジョン2030」として策定している。また、ビジョンの実現に向けて注力する取り組みをグループ中期経営計画「Next2024」にまとめ、ガスエネルギー事業を中核としながら、ガスエネルギー事業以外の構成比を拡大する事業構造の変革を推進し、グループの競争力を高めていく。

 

② 事業戦略達成の遅れ

当社グループは、事業構造の変革を推進し、グループの競争力を高めるためグループ中期経営計画「Next2024」を策定し、複数の事業戦略に取り組んでいる。事業戦略策定にあたっては様々なリスク事象を考慮しているが、想定外の経済環境、社会環境の変化等により、当初想定した成果をもたらさない可能性がある。また事業戦略達成にあたってはグループ会社への経営支援や経営基盤の強化が重要な役割を果たすが、その実行の遅れは事業計画の達成に大きな影響を与える可能性がある。

経営支援や経営基盤強化については、経営戦略部がグループ会社に対する管理・統制の中心となって、グループ内における人事交流やグループ事業発展のための専門的な知識・経験を有する人財の積極的な採用等、グループ事業の連携及び統制の強化を図っている。

 

③ 企業の社会的責任の変化や、法令・制度等の変更リスク

企業を取り巻く環境の変化により、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への取り組み不足や取り組み内容の開示不足は、ステークホルダーからの不信を招き当社グループの持続的成長を阻害する恐れがある。また、エネルギー関連の政策や国内外の法令等の変更に対して、当社の対応が遅れたり、不足することによって、当社グループの事業運営や業績に多大な影響が生じる可能性がある。

当社グループの中核であるエネルギー事業は、地域の脱炭素に大きく影響する事業であり、当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みは最優先課題である。この課題解決に向け「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」に掲げた「天然ガスシフト」「ガスの脱炭素化」「電源の脱炭素化」を着実に実行するために、具体的な取り組み内容や数値目標を「カーボンニュートラルアクションプラン」に掲げ、目標達成を目指して取り組んでいる。

 

④ 大規模な災害、テロ、感染症等の発生

地震、台風等の大規模な自然災害やテロが発生した場合、LNG基地等のガス製造設備や導管等の供給設備に損害が生じ、当社グループの事業運営に支障をきたす恐れがある。さらに、復旧に時間がかかる場合、当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があるほか、社会活動に影響を及ぼす可能性がある。そのため、設備の一元的な管理及び計画的な改善による耐震性の向上、災害保険等の各種保険への加入、大規模災害や事故発生時の事業継続計画(BCP)の策定や見直し等の取り組みを進めている。

また、感染症の蔓延により、都市ガスを含む当社グループ事業の継続が困難になることで、重大な損害が発生するリスクがある。そのため、新型インフルエンザ等対策に関する業務計画に基づき、感染症が国内外に蔓延した場合においても、都市ガスの供給や当社グループ事業を維持するよう対策を講じている。

 

⑤ 金利上昇リスク

市場金利の上昇により、資金調達コストが上昇することによって、当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。金利上昇リスクについては、固定金利のウエイトを高くする等により、リスクを抑制している。

 

 

⑥ 投資未回収もしくは損失の計上

当社グループは、事業構造の多様化・強靭化に向けたグループ変革に継続的に取り組んでおり、国内外の不動産事業や国際エネルギー事業等へ成長投資を行っている。大規模な投資を行った後の国内外の経済情勢の変化等により、適切な回収がされず投資時に見込んだ将来の収支予測を達成できない場合、減損損失や評価損の計上等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。

当社グループは、このようなリスクを低減するため、投資を行うにあたっては、投資評価委員会において採算性及びリスク評価を行い、その結果を踏まえて経営会議・取締役会に諮る等、慎重な経営判断の下に投資を決定している。また、投資後は、定期的に検証を実施し、必要に応じて事業等の見直しや協業及び支援等の対策を実施している。

 

⑦ 基幹ITシステムの停止、誤作動、情報漏洩

当社グループは、社会経済活動を支える重要なインフラを担っており、基幹システムの機能維持や情報セキュリティの確保は、当社グループの社会的責任として真摯に取り組むべき重要なテーマと考えている。

ガス製造・供給システムやお客さま情報システム等の基幹システムの機能に重大な障害が発生した場合、ガスの製造と供給やガス料金計算及びお客さま受付をはじめとした各種業務が滞ることになり、お客さまや社会に多大なご迷惑をおかけし、当社にとって有形無形の損害が発生する可能性がある。そのため、不測の事態でも業務への影響を最小限にとどめるよう、情報関連子会社と緊密な連携を図っている。

また、当社グループは、様々な経営及び事業に関する重要情報や多数の顧客情報等の個人情報を保有している。万一これらの情報がサイバー攻撃やITシステムの不備及び情報の持ち出し等で外部に漏洩した場合は、当社の事業に重大な影響を与え、あるいは社会的信用を低下させる可能性がある。そのため、個人情報保護規程、情報セキュリティガイド等を制定し、全従業員に対して情報セキュリティ教育を実施する等、情報漏洩の対策を推進している。

さらに、サイバー攻撃に対する各種セキュリティ対策を行うとともに、関係機関等との情報共有・分析、事案発生時の対応訓練等を継続的に実施している。

 

⑧ コンプライアンスリスク

法令・定款及び企業倫理・社会規範に反する行為が発生した場合には、その対応に直接的に要する費用のみならず、社会的信用の失墜等の有形無形の損害が発生する可能性がある。そのため、グループガバナンス委員会で策定されたコンプライアンス基本方針に基づき、様々な意識啓発・教育を行い、当社グループ全体のコンプライアンスの統制を強化し、社内監査を定期的に実施している。

 

(2) 主要事業に係るリスク

(a)エネルギー事業

⑨ 気候や経済環境の変動によるエネルギー需要への影響

猛暑や暖冬等の気候変動により、給湯・暖房用を中心にガス需要量が減少し、ガスエネルギー事業の売上に影響を及ぼす可能性がある。また、中長期的には「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」のため、化石燃料の中でCO排出量が少ない天然ガスやLPGであっても、競争力低下により既存のガス需要が減少する可能性がある。

そのため、気候変動の影響が少ない産業用やコージェネレーション向けのガス販売を強化するとともに、業務用や産業用のお客さまへのカーボンニュートラル都市ガス(LPG含む)の販売強化を図っている。また、「西部ガスグループカーボンニュートラル2050」に則り、トランジション(移行期)においては、石油・石炭からの天然ガスシフトによる低炭素化の推進、メタネーション技術の導入等によるガス自体の脱炭素化及び再生可能エネルギーの普及拡大等による電源の脱炭素化を推進していく。

 

⑩ 競争激化

ガスエネルギー事業は、2017年度のガス小売全面自由化以降、他エネルギー事業者や新規参入事業者等との競争が厳しさを増している。今後もさらに競争が激化した場合、当社グループの経営成績や財務状況に影響を与える可能性がある。

そのため、当社グループは、小売電気事業に参入してガスと電気のセット販売を推進するとともに、お客さまのニーズを汲み取った魅力ある付加価値サービスの充実や、最適エネルギーシステムの導入及び運転・保守管理等のエネルギーソリューションサービスを提供することで、トータルエネルギーシェアの拡大を図っている。

 

 

⑪ 原料価格高騰リスク

LNGは海外より調達しているので為替や原油価格の変動によってはコストの増加に繋がる可能性があるため、LNGの調達元との契約更改や価格見直しにより、調達コストの低減に努めている。

 

⑫ 原燃料調達に関するトラブル

ロシアのウクライナ侵攻による調達不能、調達元のLNG基地トラブル、LNG船の運航途上の事故発生等によりLNG調達が滞る場合には、都市ガスの供給に支障をきたす恐れがあるため、国内外を含めた緊急融通調達の体制構築、迅速なスポット調達の体制構築、及びLNG調達先の多様化を進めている。

 

⑬ ガスの製造及び供給に関するトラブル

当社グループは、「お客さまの安全・安心の確保と安定供給は、エネルギー事業者にとっての最大の責務」と考え、保安対策や防災機能の充実・強化に取り組んでいる。しかし、製造・供給・消費の各段階において、ガス漏えいや爆発等のガス事故やトラブルが発生した場合、直接的な損害に止まらず、社会的責任の発生等、重大な影響を及ぼし、当社グループの事業運営に支障をきたす可能性がある。そのため、重大な事故やトラブルを想定した実践的な訓練等による対応力の強化や、ガス導管網の整備、安全性の高いガス機器の普及等、保安の確保と安定供給に向けた対策を行っている。

 

⑭ 海外事業展開

当社グループでは、電力その他エネルギー分野における成長拡大の一手法として、海外事業展開は有効な手段と考えている。そこで、海外エネルギー事業への投資のほか、アジアの玄関口に位置するひびきLNG基地を活用したLNG出荷事業の拡大を推進している。

海外事業においては、当該国における政治的又は経済的要因、社会情勢の悪化等により当社グループの業績が影響を受ける可能性がある。そのため、専門コンサルタントやアドバイザーの活用等、早期に情報収集をすることで様々なリスクの低減を図っている。

 

⑮ 電力調達価格変動リスク

電力調達は発電事業者や卸電力取引市場からの調達であるが、日本卸電力取引所からの電力調達価格は、寒波到来等による電力需要の逼迫及び自然災害や発電所トラブル等による供給減少等により、需給バランスが悪化し高騰する可能性がある。このような事態が生じると当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

そのため、当社グループは、発電事業者との相対契約の追加や常時バックアップの増量により発電事業者からの調達割合を増やすことで調達コストの低減と固定化を図っている。また、電力先物取引市場利用による価格ヘッジを行うことも視野に入れている。なお、中長期的には、再生エネルギー事業の拡大や「ひびき天然ガス発電所」の事業化等により、自社電源のウエイト拡大を図る。

 

(b)不動産事業

⑯ 事業環境の変化等による採算の悪化

当社グループは、不動産事業をガスエネルギー事業に次ぐ収益の柱として成長分野と位置付け事業の拡大に取り組んでいる。

不動産事業は、戸建分譲事業、マンション分譲事業ともに順調に推移しており、2019年度からは海外不動産事業を開始し、順調に成長している。引き続き分譲事業の拡大を進めるとともに賃貸事業を強化し、不動産事業全体の収益拡大と事業の安定性向上を図っている。

しかし、不動産業界は、景気動向、金利動向、不動産市況、新規供給物件動向、不動産販売価格動向、不動産税制等の影響を受けやすい。景気見通しの悪化や、大幅な金利の上昇、供給過剰による販売価格の下落発生等、諸情勢に変化があった場合には、消費者購買心理の悪化、地価の下落、賃貸価格の下落が生じ、業績等に悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、その場合には、当社グループが保有する不動産の評価額の引き下げが必要となる可能性がある。

 

⑰ 海外事業展開

不動産事業においては、2019年に現地デベロッパーとの合弁により開始したタイ国における戸建分譲販売事業を皮切りに、海外における事業展開を進めている。海外事業は、当該国の社会や経済環境の変動、法規制及び税制の変更、人権問題や内乱または紛争等のカントリーリスク等の影響を受ける恐れがあり、その結果、プロジェクトの中止、遅延、採算の悪化が生じる可能性がある。

このようなリスクを低減するため、プロジェクト開始にあたっては、外部コンサルタントやファイナンシャルアドバイザーの活用、早期の情報収集のほか、現地の市場や法規制等に精通した現地企業を提携先として選定することを実施している。提携先の選定に当たっても、当該提携先の財務状態や提携関係等により、現地での事業展開に影響を受ける恐れがあることから、調査の徹底を図っている。

さらに、プロジェクトの進行過程においても、当社グループは、提携先からを含め随時必要な情報収集に努め、リスクの変化等を把握し、必要に応じて事業計画の見直しを行っている。

 

⑱ 住宅の品質管理及び保証

物件の品質管理には万全を期しているが、販売した物件に重大な瑕疵があるとされた場合には、直接的な原因が当社以外の責任によるものであったとしても、売主として契約不適合責任を負う可能性がある。その結果、保証工事費の増加や、当社の信用の毀損等により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されている。経営者の視点による当連結会計年度の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に関する分析等は次のとおりである。

本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

1.経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、コロナ禍からの経済活動正常化の進展を追い風に輸出や個人消費に持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復した。一方で、為替市場での円安の進行や原材料価格の高騰などを背景とした物価上昇に加え、世界的な金融引き締めや中東情勢などの影響による世界経済の後退リスクが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況のなかで推移した。

このような状況において、当社グループは、2022年度~2024年度を対象とする中期経営計画「Next2024」のもと、エネルギーとくらしの総合サービス企業グループとして、中核であるガスエネルギー事業や電力・その他エネルギー事業の競争力強化や不動産事業の拡大、低炭素化に貢献する天然ガスシフトの推進などに取り組んでいる。

 

特に西部ガスグループの中核をなす都市ガス、LPG、LNGのガスエネルギー事業においては、地域に根差した事業体制のもと、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、カーボンニュートラル都市ガスの供給先の拡大や、メタネーション実証事業を開始する等の活動を行った。

 

第2の収益の柱と位置付ける不動産事業においては、まちづくり・再開発・建物建築などの計画段階から、ディベロッパーさま・ハウスメーカーさまなどに西部ガスグループのソリューション力を活かした提案を行い、西部ガスグループを真のパートナーとして選んでいただき、ガスエネルギー事業とのシナジー効果を生み出せるように取り組んだ。また、賃貸用物流倉庫事業を開始する等、賃貸事業の強化に取り組んだ。

 

国際エネルギー事業においては、ひびきLNG基地の立地条件の優位性や拡張性を活かし、LNG船による再出荷やLNG船のガスアップ/クールダウンなど、従来の枠に捉われない新たな事業を引き続き展開した。

 

その他の分野では、ベンチャー企業をはじめとする成長企業への出資等を行うファンドを運営するなど、当社グループの強みと経営資源を最大限活用しながら、ガスエネルギー以外の事業拡大による事業構造の多様化・強靭化に向けたグループ変革を推進した。

 

このような事業活動の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は前期に比べ9,991百万円減の256,328百万円、営業利益は前期に比べ1,139百万円減の9,672百万円、経常利益は前期に比べ1,382百万円減の10,377百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ7,059百万円減の6,155百万円となった。

 

 

セグメント別の状況は次のとおりである。

(1) ガス

当連結会計年度末の都市ガス事業におけるお客さま戸数は113万4千戸であり、都市ガス販売量は前期に比べ3.0%増の919,171千㎥となった。このうち家庭用ガス販売量については、需要期の気温が高かったこと等により使用量が減少したことから、前期に比べ2.5%減の208,051千㎥となった。一方、業務用ガス販売量については、主に大口顧客の獲得及び既存顧客の稼働増により前期に比べ3.3%増の583,490千㎥となった。他の事業者への卸供給ガス販売量については、卸供給先の需要増により前期に比べ11.8%増の127,630千㎥となった。

以上のような都市ガス販売量の増加があったものの、原料費調整によるガス料金単価の下方調整の影響等により、売上高は前期に比べ4.0%減の159,366百万円となり、セグメント利益は前期に比べ15.1%減の5,236百万円となった。

 

(2) LPG

LPG販売単価が下落したこと等により、売上高は前期に比べ4.9%減の25,421百万円となり、セグメント損益は売上高減少に加え、販売促進費の増加等により253百万円の損失(前期はセグメント利益268百万円)となった。

 

(3) 電力・その他エネルギー

小売電気事業及びエネルギーサービス事業の売上高の増加等により、売上高は前期に比べ3.5%増の22,082百万円となり、セグメント利益は前期に比べ55.5%増の838百万円となった。

 

(4) 不動産

賃貸用不動産の売却等により、売上高は前期に比べ2.2%増の42,715百万円となったものの、セグメント利益は分譲マンションの販売戸数が減少したこと等により、前期に比べ8.7%減の3,729百万円となった。

 

(5) その他

その他の事業には、食関連事業(食品販売事業、飲食店事業)、情報処理事業等が含まれている。売上高は食品販売事業売上が減少したこと等により、前期に比べ7.9%減の25,568百万円となり、セグメント利益は飲食店事業の収支改善等により、前期に比べ538.4%増の1,130百万円となった。

 

(注)1.セグメント別売上高及びセグメント利益には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。

2.本報告書では、ガス販売量は、毎月の検針による使用量の計量に基づいたものを45MJ(メガジュール)/㎥で表記している。

3.お客さま戸数は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。

 

セグメント別の売上高及びその構成比は次のとおりである。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

 

金額(百万円)

構成比(%)

金額(百万円)

構成比(%)

 

ガス

165,975

58.6

159,366

58.0

 

LPG

26,718

9.4

25,421

9.2

 

電力・その他エネルギー

21,334

7.5

22,082

8.0

 

不動産

41,777

14.7

42,715

15.5

 

その他

27,748

9.8

25,568

9.3

 

283,554

100.0

275,153

100.0

 

2.財政状態の状況

(1) 資産

当連結会計年度末における資産の残高は431,703百万円となり、前連結会計年度末に比べ17,435百万円増加した。

固定資産の残高は308,374百万円であり、前連結会計年度末に比べ16,466百万円増加した。これは、株価上昇に伴い投資有価証券が増加したこと等によるものである。

流動資産の残高は123,329百万円であり、前連結会計年度末に比べ968百万円増加した。これは、期末の天然ガス在庫量が増加したこと等によるものである。

 

セグメント別の状況は次のとおりである。

①  ガス

期末の天然ガス在庫量が増加したこと等により、資産合計は147,152百万円(前期比3,126百万円 2.2%増)となった。

 

②  LPG

固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は20,338百万円(前期比1百万円 0.0%減)となった。

 

③  電力・その他エネルギー

固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は23,939百万円(前期比835百万円 3.4%減)となった。

 

④  不動産

賃貸用不動産の取得等により、資産合計は133,484百万円(前期比11,175百万円 9.1%増)となった。

 

⑤  その他

固定資産の減価償却が進んだこと等により、資産合計は27,091百万円(前期比2,577百万円 8.7%減)となった。

 

(注)セグメント別資産には、セグメント間の内部取引に係る金額を含んでいる。

 

(2) 負債

当連結会計年度末における負債の残高は326,210百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,566百万円増加した。

固定負債の残高は217,397百万円であり、前連結会計年度末に比べ3,958百万円増加した。これは、社債が増加したこと等によるものである。

流動負債の残高は108,812百万円であり、前連結会計年度末に比べ1,607百万円増加した。これは、短期借入金が増加したこと等によるものである。

なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は282,610百万円となり、前連結会計年度末に比べ707百万円増加した。

 

(3) 純資産

当連結会計年度末における純資産の残高は105,493百万円であり、前連結会計年度末に比べ11,868百万円増加した。これは株価の上昇に伴いその他有価証券評価差額金が増加したこと等によるものである。なお、当連結会計年度末における自己資本比率は、22.8%(前連結会計年度末は20.9%)となった。

 

3.キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ9,274百万円減の26,446百万円となった。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりである。

 

(1) 営業活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度に営業活動により増加した資金は、22,124百万円となり、前連結会計年度に比べ374百万円の収入の増加となった。これは、法人税等の支払額が減少したこと等によるものである。

 

(2) 投資活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度に投資活動により減少した資金は、28,151百万円となり、前連結会計年度に比べ12,181百万円の支出の増加となった。これは、投資有価証券の売却による収入が減少したこと等によるものである。

 

(3) 財務活動によるキャッシュ・フロー

当連結会計年度に財務活動により減少した資金は、4,018百万円となり、前連結会計年度に比べ6,977百万円の支出の増加となった。これは、社債の償還による支出が増加したこと等によるものである。

 

4.生産、受注及び販売の実績

当社グループにおいては、ガスセグメントが生産及び販売活動の中心となっており、外部顧客に対する売上高及び営業費用の大半を占めている。また、当該セグメント以外のセグメントが生産及び販売する製品・サービスは広範囲かつ多種多様であり、受注形態をとらないものも多い。

このため、以下は、ガスセグメントにおける生産、受注及び販売の実績について記載している。

 

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりである。

  品名

  数量(千m3

 

  前期比(%)

 ガス

939,675

3.9

 

(2) 受注実績

ガスについては、その性質上受注生産は行っていない。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度におけるガスの販売実績は次のとおりである。

項目

数量(千m3

 

金額(百万円)

 

前期比(%)

前期比(%)

 家庭用

208,051

△2.5

51,984

△6.5

 業務用

583,490

3.3

64,838

△1.1

 卸供給

127,630

11.8

13,070

6.8

 計

919,171

3.0

129,894

△2.6

 期末ガスお客さま戸数(千戸)

1,134.4

0.1

 

 

(注)「期末ガスお客さま戸数」は、年度末の都市ガスメーター取付個数である。

 

5.経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの主要な原材料であるLNGは、海外から輸入しているため為替や原油価格の変動により大きな影響を受ける。そのリスクをヘッジする手段として為替予約や原料価格に関するスワップ等を検討している。また、都市ガス事業においては、原料価格の変動は原料費調整により、タイムラグは生じるもののガス販売価格に反映して対応することが可能である。

また、当社グループの売上高の大半を占めているガスによる売上高は、気温・水温等の変動により、大きな影響を受ける。このため、当社グループは、金融機関等との天候デリバティブ契約の締結等、そのリスクの軽減を検討している。

さらに、都市ガス事業は、需要拡大や安定供給のためにガス導管の敷設等の多大な設備投資が必要であるため、社債や借入金等の残高が多く、金利変動の影響が大きい。このため、金利の固定化及び金利スワップ等の活用により、そのリスクをヘッジしている。

 

6.資本の財源及び資金の流動性

(1) 資金需要

当社グループの運転資金需要の主なものは、ガス事業における原料LNG購入費用のほか、製造費、供給販売費及び一般管理費等の営業費用である。また、投資を目的とした資金需要は、ガス事業における供給設備(導管等)投資及び電力・その他エネルギー事業や不動産事業など成長を見込める分野への投資等によるものである。

なお、新型コロナウイルス感染症の予防対策等の影響により、当社グループ内で運転資金が不足する子会社については、融資等による支援を行っている。

 

(2) 財務政策

当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及びグループ事業拡大に向けた投資資金については、金融機関からの長期借入と社債の発行による調達を基本としている。

また、当社は、当社グループ内でキャッシュ・マネジメント・サービスを実施しており、資金調達の一元化、余剰資金の活用等により、当社グループ全体の有利子負債の削減に努めている。

なお、金融機関には十分な借入枠を有しているため、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、設備投資資金の調達は、今後も可能であると考えている。

 

7.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されている。当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載している。この連結財務諸表の作成にあたって、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる要因等に基づき見積り及び判断を行っているが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合がある。

また、当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。

 

8.目標とする経営指標の実績

当社グループは、2025年3月期を最終年度とするグループ中期経営計画「Next2024」において、「売上高」、「経常利益」、「ROA」、「ROE」、「自己資本比率」を、目標とする経営指標と定めた。

当連結会計年度における当該指標は次のとおりである。

「売上高」は256,328百万円(前期266,319百万円)となった。

「経常利益」は10,377百万円(前期11,759百万円)となった。

「ROA」は1.5%(前期3.3%)となった。

「ROE」は6.7%(前期16.4%)となった。

「自己資本比率」は22.8%(前期20.9%)となった。

 

なお、グループ中期経営計画「Next2024」の目標とする経営指標は次のとおりである。

項 目

経営指標(2024年度)

売上高

2,300億円

経常利益(3年合計)

        250億円(※)

ROA

 1.5%

ROE

 7.5%

自己資本比率

 21.5%

  (※)2022年度~2024年度 計画合計

 

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はない。

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、2021年11月に策定した「西部ガスグループビジョン2030」において、2030年に思い描く社会の一つとして「カーボンニュートラル・循環型の社会」を掲げており、脱炭素化に資する技術の研究開発を中心に、取り組みを進めている。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は88百万円であり、カーボンニュートラル関連の技術開発がその大半を占めている。

 

 具体的な取り組み

(1) 国立大学法人九州大学との組織対応型連携の推進

2021年7月より、国立大学法人九州大学と「カーボンニュートラル化社会実現を支える技術の開発」に関する組織対応型連携契約を締結し、様々な取り組みを推進している。これまでに、カーボンニュートラル関連技術を所有する研究室との共同研究を2件、カーボンニュートラル実現に寄与する有望技術の発掘を目的とした研究助成を11件実施している。

 

(2) 都市ガス燃焼後の排ガスに含まれるCO利用に関する共同検討

国立大学法人九州大学、株式会社JCCL(旧:株式会社日本炭素循環ラボ)と共同で都市ガス燃焼後排ガス中のCO利用に関する検討を行っている。本共同検討では、西部ガスの都市ガス事業に関するノウハウや、九州大学の学術的知見、株式会社JCCLの技術力を融合させ、カーボンニュートラル社会の実現に必要な、新しいCO回収技術を創出することを目的としている。

 

(3) ひびきLNG基地におけるメタネーション実証事業

ガスの脱炭素化に対し有望な選択肢であるメタネーション技術について、ひびきLNG基地において合成したe-methaneを、当社の既存インフラを活用して供給する実証事業に取り組んでいる。本実証事業等を通じてe-methane導入に向けた準備を進めていく。なお、本実証事業は環境省の令和5年度「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業(二次公募)」に採択されている。