文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社は、1954年(昭和29年)の設立以来「技術革新」をコンセプトとし、事業活動を通して社会に貢献したいとする経営理念のもと、つねに患者様のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や医療現場の課題などのユーザーニーズに応える製品開発を推進しております。
製品競争力・市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもと、グローバルに事業展開を行っております。
当社グループは、医療現場におけるニーズ、シーズを積極的に捉えながら、現場の要望に応える商品開発を行いつつ、製造工程の改善によって製品の生産能力を高め、品質の安定とコスト競争力のある製品を提供することによってグローバル市場でシェアを獲得し、販売を拡大することを基本戦略としてまいりました。また、医療、医薬、医薬用包装材料(ファーマパッケージング)の3事業にまたがる当社内の独自技術やその他の経営資源を有効に活用して、ユーザー目線に立ったより安全性の高い、価値ある製品の開発に取り組んでおります。ますます先行きが不透明な今の状況においても、製品競争力、市場シェアともに世界トップを目指し、「地産地消」のコンセプトのもとにグローバルで存在感のある企業グループへ発展し、全世界的に総合医療メーカーとしての供給責任を果たしてまいります。
医療関連事業の国内販売におきましては、主力のダイアライザ(人工腎臓)を中心とする透析関連製品に加え、注射・輸液関連製品、糖尿病関連製品、検査関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品などの領域において新規販路開拓を推し進め、シェア拡大を図るとともに、安定生産、安定供給のための危機管理体制の強化に取り組んでまいります。また、医療従事者の働き方改革や、オンライン診療、オンライン服薬指導に役立てるシステムの提案を通じて地域医療に貢献してまいります。
後発医薬品につきましては、医療用医薬品の製造・販売を行う企業としての安定供給への使命を常に意識し、患者様目線を基本理念として、引き続き品質確保ならびに安定供給へ真摯に取り組んでまいります。また、総合医療メーカーとしての存在感を更に向上させるため、重点卸との関係を一層強化し、医療機関、調剤薬局での活動を通じ患者様へ貢献できるよう引き続き取り組んでまいります。
再生医療等製品については、事業の収益化と社会貢献のためにステミラック注の適用拡大と海外展開をすすめてまいります。
海外販売におきましては、学術活動や技術営業を通じ、基幹商品の商品価値およびサービスを向上させることで、患者様、医療従事者への付加価値を創造し、利益を高めてまいります。
加えて、コンプライアンス強化やデジタル化、環境への取り組みを行うとともに、当年度に改変した国際事業統括組織の経営統合を進めさらなる収益体質への変革に挑戦します。
医薬関連事業におきましては、注射剤については、滋賀県に約4,000万本/年の生産が可能なバイアル製造棟(液充填ラインと凍結乾燥ラインを具備)を、2026年度中に設立いたします。これは、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」に採択いただいた製造棟であり、パンデミック発生時にワクチンや治験薬等を国の要請により速やかに日本国内に供給することのできる工場となります。経口剤については、福島県の鏡石工場でのBCP対策の完了と、全星薬品工業における増産体制の構築に取り組みます。また、いずれの工場においてもMES、LIMS、QMS等のシステムの運用をより強固なものとし、FDAを始めとするグローバル基準に対応できる体制を確立します。
ニプログループは数年前から国内で抗菌薬の原薬から製剤までの一貫生産を確立するために取り組んでおり、2028年度中に国内一貫製造での抗菌薬の出荷を達成することを目指しております。
ファーマパッケージング事業は、「トータル医薬包装容器メーカーとして、医薬品企業の要求に応えることで人々の健康に貢献する」ことを使命としております。医療先進国における高機能ニーズの高まり、発展途上国の急速な需要拡大に対応するため、開発・生産・販売・サプライチェーンの各バリューチェーンに立脚する4つの基本戦略を設定しております。
以上のように事業ごと地域ごとの基本戦略に基づき、それぞれが有機的にシナジーを生み出すことによって事業全体の継続的な成長を進めてまいります。
当社は2030年度に連結売上高1兆円の企業グループとなるべく、製品開発や成長投資を積極的に継続してまいりました。しかしながら継続する円安傾向、世界的なインフレーション、金利上昇局面の到来など、外部環境が大きく変化した状況においては、財務基盤を固め、利益体質へと転換することにより継続的な成長投資が可能となります。まずはフリーキャッシュ・フローの改善によって債務償還年数の圧縮を実現します。そのためにキャッシュの源泉となる本業からの収益率である営業利益率の向上、さらに投資からの回収を念頭に置いた資本効率を重視してまいります。売上高成長率は年平均7%以上、営業利益率は9%以上、純有利子負債/EBITDA倍率は4倍台、ROE14%を当面の目標といたします。
また、2030年度連結売上高1兆円を達成するために、当社グループが実施すべきと考えることは、次のとおりであります。
当社グループは引き続きユーザー目線にたっての新商品、新技術の開発を進め、技術革新により社会貢献を志向する事業展開を継続し、医療関連、医薬関連およびファーマパッケージングの各事業において着実に成長を図り、目標達成を目指してまいります。
医療関連事業におきましては、メディカル営業部門では、輸液関連製品、糖尿病関連製品、透析関連製品、バスキュラー関連製品、SD(サージカルデバイス)関連製品の各々におきまして、市場ニーズ・シーズに応えられる製品の開発及び積極的な市場展開、販売強化を行い業績の拡大取り組みを継続し、安定生産、安定供給の為の危機管理体制を強化してまいります。さらに、医療従事者の働き方改革をDXで支えるニプロ総合医療ネットワークシステムを普及してまいります。医薬営業部門では、毎年の薬価改定と原材料の高騰により後発医薬品業界はもちろん、製薬業界全体が非常に厳しい経営環境となるなか、適正価格販売により薬価維持に努め、適正利益を確保しつつ設備投資を行い、安定供給に努めてまいります。併せて総合医療メーカーとして在宅医療、地域医療連携をはじめ医療現場のニーズを捉えた提案営業を続け、さらなるニプロブランドの向上に努めてまいります。
医薬関連事業におきましては、品質最優先とし、継続する医薬品の供給に関する課題に対処すべく生産能力の増強と拡充を引き続き進めております。
品質管理体制につきましては、埼玉県の試験棟が2023年12月に稼働開始したことにより、各工場での試験業務の負荷軽減が進んでおります。また、2024年3月には大阪市内に設立した道修町分析センターが稼働し、埼玉試験棟同様に各工場の試験業務を担いますので、各工場での試験業務の負担の平準化がさらに進むと見込んでおります。
一方で、受託製造の伸長や、医薬品の安定供給に関する課題に対処するため、生産能力の増強と拡充に取り組んでおり、2024年3月に竣工したニプロファーマ近江工場では、2024年中での抗菌薬製剤の出荷を目指します。また、同工場においてはバイアル製剤の製造棟についても、2023年に着工しております。プレフィルドシリンジ製剤につきましては、伊勢工場のシリンジ棟での本格的な生産を2024年度から見込んでおります。
ファーマパッケージング事業におきましては、バイオ医薬品やワクチンを中心とした注射剤の開発が旺盛であることに加え、発展途上国における人口増や医療水準の高度化等が、医療用容器市場の中長期的な成長を牽引するものと考えております。同時に世界的なインフレーションやアフターコロナ期の在庫調整局面を巡る価格競争の進行、更には多くの国が医療費抑制策を強化するなど、利益面での下方圧力が高まっています。
このような環境の下、成長機会を確実に捉えるとともに収益面での逆境を克服することが当事業の最重要課題となります。まずシェア拡大を実現するためには、提案型技術営業による顧客満足度の更なる向上、各国における営業部門間の連携およびクロスセルの実践が不可欠となります。価格競争力の確保においては、ニーズを的確に具現化した商品の迅速な開発・上市に加え、製造原価の低減およびサプライチェーンの最適化が要諦です。
また、上記のテーマと併せて、事業内各社が有する開発や営業面での諸資源を最大限活用し、生産設備や研究開発に対する投資効果を向上させるための活動を展開中です。
以上のように、各事業で優先される課題に真摯に対応していくためにも、企業としての確固たる財務基盤の確立が大前提であり、外部環境が変化した現在の状況においては大きな課題でもあります。上述の安定供給の責任を果たす上でも、まずは財務基盤の強化に関する取り組みを今後も継続的に進めてまいります。
当社グループは、「未来に向かって、世界の人々の健康を支え、医療ニーズに応える商品、技術および事業の創造革新を行い、社会に貢献し、自己実現を図る」という経営理念に基づき、真にグローバルな総合医療メーカーとして、サステナビリティ経営の推進に取り組んでおります。
当社グループのサステナビリティ経営に関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、事業を通じたあらゆる社会的課題の解決に向け、サステナビリティ経営の推進に取り組むべく、体制強化を図っており、代表取締役社長 佐野嘉彦が当社グループにおけるサステナビリティ経営に関する総括責任者となっており、経営判断の最高責任者として、気候変動関連事項を取締役会などの機関決定において責任を有しております。
また、サステナビリティ経営に関する取り組みの最高サステナビリティ責任者(以下「CSO」という。)を任命し、推進体制の強化を図っております。現在のCSOはニプロ株式会社専務取締役管理統括経営企画本部長 余語岳仁が担当しております。CSOは、当社グループのサステナビリティ経営の課題に対応するサステナビリティ委員会の委員長を担い、各事業部門におけるサステナビリティ経営に関する活動を統括管理しております。
サステナビリティ委員会は、さらに「環境委員会」、「ソーシャル委員会」、「ガバナンス委員会」に区分され、ESG取り組みの管理・推進を行っております。
管理・推進状況については四半期に一度以上の頻度で取締役会の審議事項として上程され、戦略の審議および指導、KPI設定およびその進捗管理などを審議し、その内容は各委員会を通じて各事業部に還元される体制としております。

当社グループでは、「コンプライアンス推進管理規程」、「防災管理規程」を策定し、事業に大きな影響を与えうる経営上のリスクを的確に把握し、適切な企業経営に努めております。また、想定されるリスクが一定額を超過する場合には都度取締役会に上程され、迅速にリスク管理の経営意思決定を行っております。
当社グループは、気候変動を事業継続に大きな影響を及ぼす重要な課題であると認識しております。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同し、TCFDのフレームワークに沿った情報開示の拡充を進めております。
気候変動に関するガバナンスについては、サステナビリティ経営で掲げるガバナンスに包括されております。詳細については「(1)サステナビリティ経営 ガバナンス」をご参照ください。
当社グループにおける気候変動の影響は、今後社会がカーボンニュートラルに向け変遷する過程で生じる政治的な影響や新技術の確立、市場ニーズの変化などによる「移行」に関わるものと、地球温暖化が進行することによって生じる異常気象の多発やそれに伴う災害の発生、平均気温上昇などの「物理的変化」によるものに大別されます。
当社グループは総合医療メーカーであり、これらの影響を各事業部門の観点から分析し、リスク管理・機会についてそれぞれ特定を行い事業戦略に組み込んでおります。
・気候関連機会
気候変動に関するリスク管理については、サステナビリティ経営で掲げるリスク管理に包括されております。詳細については「(1)サステナビリティ経営 リスク管理」をご参照ください。
当社グループは、温室効果ガス排出量(単位:t-CO2)を気候変動に関するリスクを評価・管理するための指標として定めています。また、温室効果ガス排出量の削減を推進するために、2045年までにScope1・2においてネットゼロ達成を目指し、その中間目標として2030年までにScope1・2において2021年比37.8%削減を目指しております。直近の主な削減事例としては、ニプロファーマ株式会社(日本)の大館工場では、化石燃料の代わりに、間伐材チップを燃焼することでタービンを回し発電する「バイオマスボイラー」から生成する蒸気を生産工程で活用しており、GHGの削減を行っております。また、Scope1・2の排出量削減には再生可能エネルギーや非化石証書などの活用を行い、グループ全体のGHG排出量削減を図って参ります。
また、気候変動に関するその他の取組は以下のとおりであります。
当社グループは、多数の国・地域で製造・販売を行っており、グローバルなサプライチェーンを展開しております。ビジネスのグローバル化に伴い、当社だけでなく、取引先との協働および管理体制の構築が不可欠となり、取引先への働きかけを実施しています。気候変動についてはサプライチェーン全体での温室効果ガス削減に向けて、取引先由来のGHG排出量(Scope3)の算定に注力しており、今後は取引先との協働も進めていく予定です。「パートナーシップ構築宣言」と「サプライヤーさまへのお願い」を制定し、環境・人権課題等も踏まえたサプライチェーン全体での付加価値向上に邁進いたします。
当社グループの製品は、様々な資源を使い生み出されています。限りある資源を効率的に活用するとともに、持続可能な循環型社会の実現が求められています。廃棄物の環境に及ぼす影響を最小化するために、当グループでは製造過程で生じる産業廃棄物を焼却炉で燃やす際に発生する熱を発電や温水などに再利用するほか、産業廃棄物の減量化を図っており、包材のリサイクル率から向上させるべく検討を開始しております。
ニプログループでは、「意欲:willingness」を社是としており、すべての活動に「意欲」をもって取り組むことを従業員の行動の基本としております。意欲ある、すべての人材にチャンスを与える社風を守るため、あらゆる背景を持った従業員ひとりひとりが自己実現を図ることのできるよう、環境を整備していくことを目標として、実践しております。
意欲ある人材を登用していくため、2017年に刷新した人事制度においては、昇進・昇格の基準を明確化し、能力によっては年齢にかかわらず課長、部長に登用できる仕組みを構築し、従業員全体の意欲向上に効果を発揮しております。また、自らのニプログループにおけるキャリア形成を見据えたうえで人事異動に手を上げることのできる社内公募制度も、今後さらに拡充していきます。
ボーダーレス時代において、80億人の世界市場に果断に向かっていくには、日本語以外の言語能力を獲得することが必要不可欠になっています。そのため、選抜された従業員に対しては英語を中心とした言語教育プログラムを提供し、語学力を高める機会を創出しています。
また、昨年度はエンゲージメントの向上および心理的安全性の高い職場環境整備を目指すため、「マネジメント強化」を重点課題と位置づけ、管理職向け研修の増強ならびに360度フィードバックを導入しました。全ての管理職が多面的でより客観的なフィードバックに真摯に向き合い、今後のアクションプランを立案・実践するという取組みを、今後も継続的に実施していくことで、全ての従業員が活き活きと働ける組織づくりを目指してまいります。
ニプログループでは働く人の行動指針として、FISH哲学を推進しています。FISH哲学とは「態度を選ぶ」「仕事を楽しむ」「注意を向ける」「人を喜ばせる」という4つの基本マインドであり、その考え方を意識することで「意欲的に働こう」という気持ちを湧き立たせ、さらに周りの人間も巻き込んで働きやすい活気のある職場環境にしようという考え方です。このFISH哲学はニプログループで全社的に推進されており、社内イベントとして各事業所・工場などのFISH活動を紹介・表彰する「FISHフェスティバル・FISHアワード」が開催されています。こうした取り組みにより、さらなるFISH哲学の浸透と、従業員のコミュニケーションの円滑化、職場環境の向上を図っています。
2023年3月に竣工した新本社屋においては、FISH哲学を意識した『出会う 繋がる 創造する』というコンセプトを掲げ、共創スペース、リラクゼーションルームなど、従業員のコミュニケーションをさらに活性化させる仕掛けをふんだんに用意いたしました。
今後も、ニプログループでは、人生の各ステージにおいて、育児・介護をはじめとした理由により離職せざるをえないといった選択をすることがないよう、就業環境を整備していきます。医療機器・医薬品において、開発から実際に現場で利用されるまでに至るすべての過程で、それに携わった経験値というものが、大きな力を発揮します。意欲をもった従業員ひとりひとりが、長くその力を発揮し続けられるよう、必要な環境を整備してまいります。
ニプロでは、世界の人々の健康を支えるという経営理念のもと、健康寿命を延ばすことを目標としております。そのためにも、従業員自身の健康も重要と考え、健康経営を推進しています。CHO(最高健康責任者)のもと専任部署を設けるとともに、健康経営推進委員会が構成され、各事業部から選出されたメンバー含め様々な課題に対する施策を行っています。特に重点課題として挙げられている禁煙・メンタルヘルス・職場活動活性化などに関しては、新本社屋を敷地内全面禁煙にするほか、従業員の健康リテラシーを高めるための研修およびセミナーの開催や健康アプリの導入などの施策を実施しています。
当社グループでは、上記「戦略」において記載した、人的資本に関する方針及び戦略について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
なお、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組が行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
(注) 1 従業員ワークエンゲージメントは、従業員個人の仕事に対するポジティブな心理状態を表し、偏差値で示しております。なお、本調査における製造業全体の平均値は48.7、最も数値の高い企業で51.8となっております。2023年度調査対象範囲に変更が発生しています。
2 従業員10年定着率は、同一年度入社者(新卒・中途含む)のうち10年後に在籍している割合を示しております。
3 管理職全体に占める女性の割合を示しております。
4 年に一度実施している生活習慣のアンケート結果を元に算出しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは数々の供給者から事業に使用する材料、部品などを仕入れており、重要な部材の中には一社からしか入手できないものや、供給者が限定されるものがあります。当社グループは、継続して市場に製品を供給し続けるため、材料・部品の長期安定供給を受けるための努力を行っておりますが、受け続けられるかどうかは、当社グループが制御できないものを含め、需要の急増に伴う供給不足、供給先からの供給遅延および供給停止等、多くの要因による影響を受けます。また、当社グループの製品には、プラスチックなどの石油化学製品を原料とするものがあり、石油化学製品等原材料の価格高騰により調達コストが増加する場合があります。このような事態が発生し、当社グループの生産活動に影響を及ぼし、顧客への製品の納入や品質確保に支障をきたす場合には、経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは様々な品種や産地などの原材料を分散調達することによって、安定した数量を確保し、主要製品の生産場所の複数化を進めてまいります。
当社グループの販売する製品には、国内においては診療報酬、薬価および保険医療材料の償還価格の引下げの影響を受ける製品があります。また、世界的にも医療費抑制策は浸透されており、これらに起因して市場における企業間競争が激化し、販売価格が想定を超えて下落し、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは生産能力の拡充、安定供給体制を確保することによって、製造コストの抜本的な削減を実現し、利益の確保に努めてまいります。
当社グループの属する業界は、医療制度に密接に関連しており、医療保険制度や医薬品医療機器等法(旧薬事法)などの行政機関の規制を受けております。今後、医療行政において予測できない大改革が行われ、その環境変化に対応できない場合には、当社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは積極的な研究開発活動のもと、新商品、新技術の開発を進め、医療業界における環境変化にも対応してまいります。
当社グループの事業または製品が、他人の特許等の存在を知らないで使用したことによる知的財産権侵害などを理由とした訴訟の対象とされる可能性があるほか、当社グループの製品によって損害を与え、このために訴訟等を提起される可能性もあり、その訴訟等の内容によっては、多額の損害賠償を要求され、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループは自社が製造する製品に関する特許および商標を多数保有し、権利を多数取得しており、また第三者の特許や独占権の侵害、技術に関して締結したライセンス契約についても違反などを回避すべく万全を期しておりますが、意図せぬ第三者からの損害賠償を請求され、当社グループの抗弁が退けられた場合には、経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは当社製品に採用される技術を特許出願により確実に保護するとともに、他社による権利侵害が持続しないように対処しております。また、技術開発・製品設計プロセスの複数段階で調査を実施し、第三者の知的財産を侵害しないよう努めております。
当社グループは医療機器および医薬品の設計、開発、製造段階で、製品の安全性の確保について全力を上げて取り組んでおりますが、使用時の偶発的な不具合や副作用などにより、他者に損害を与え賠償責任を請求されるリスクがあります。
従いまして、これらのリスクに対応すべく、賠償責任や製造物責任についての保険契約を締結しておりますが、万一保険範囲を超える請求が認められた場合には、経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは独自の品質基準を設け製品の品質・安全性の向上に取り組むとともに、関連法規の遵守に努めております。
当社グループでは海外子会社を含め、主に米ドルおよびユーロ等の外貨建取引を行っており、当連結会計年度における海外売上高の割合48.1%となっております。従って、為替レートの変動により、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは一部の外貨建輸出債権を対象とした為替予約によるリスクヘッジを実施し影響を最小限にするよう取り組んでおります。
当社グループは、事業資金・投融資資金を金融機関からの借入または社債・コマーシャルペーパーの発行等により調達しております。金融市場の混乱や、金融機関が貸出を圧縮した場合、また、格付会社による当社の信用格付の大幅な引下げ等の事態が生じた場合、当社グループは、必要な資金を必要な時期に、希望する条件で調達できない等、資金調達が制約されるとともに、調達コストが増加する可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、金融機関からの借入の一部には、財務制限条項が付されているものがあり、当該条項に抵触し、期限の利益を喪失した場合等には、当社グループの資金繰り等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは事業資金の効率的かつ安定的な調達を図るため、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結することで、資金調達の確保に努めております。
当社グループの資産には、株式などへの投資が含まれており、これらは各証券の発行者との良好な事業関係を築くことや、新製品の開発、新規事業機会に関する有益な情報を収集することなどを目的としておりますが、これらの投資が株式市場などの下落や発行者の状況あるいはこうした投資についての会計処理方法の変更などにより投資価値が大幅に減少した場合には、経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度末現在の投資有価証券の連結貸借対照表計上額は32,945百万円となっております。
当社グループは、M&Aや業務提携等を通じた事業基盤の強化に取り組んでおります。これらを実行するにあたっては、対象企業の入念な調査、検討を行いますが、未認識債務の判明等や事業の展開等が計画どおりに進まない場合、当社グループの経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは対象企業の経営計画に対する精緻な精査、経営状況および市場環境に対するモニタリングに努めております。
当社グループが保有する個人情報の保護については厳重な方策を講じて機密を守っておりますが、万一不測の事故および事件により個人情報が外部に漏洩することになった場合には、当社グループの信用や得意先を失い、経営成績や財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは情報管理に係る規則を定め厳格な運用を行うとともに、必要と思われるシステム対策を講じております。
当社グループは、新型コロナウイルス感染症等、大規模な感染症の流行により、経済活動が制限され、サプライチェーンの分断、工場の生産停止、急激な需要の減少等が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは感染拡大防止への対策として、マスク、消毒液等必要な感染拡大防止用品の備蓄や、時差出勤、在宅勤務等の実施、リモートワークツール等の積極的な活用により、業務を継続できる環境を確保しております。
当社グループが事業展開している地域や事業所で予期せぬ火災、地震、テロ、戦争、疫病、環境問題、法規制等の変更や政治的・経済的変動等が発生した場合、生産、販売、物流、サービスの提供などが遅延したり停止したりする可能性があり、これらの遅延や停止期間が長期化した場合には、経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による各種制限の緩和により緩やかに持ち直す動きが見られましたが、原材料価格の高騰やエネルギー価格の変動は継続しており、金融政策の動向も気になる中で完全な回復には至らず先行き不透明な状況で推移いたしました。一方で、世界経済は高インフレに対する各国の金融引き締めに加えて、欧州地域の地政学的リスクと中国経済の不安定さもあり、多くの不確実性が残る状況での推移となりました。
医療機器、医薬品業界におきましては、物資の高騰や医療従事者の慢性的な人手不足等、各医療機関の経営環境はより一層厳しさが増しつつあります。さらには医療機器、医薬品の安全性に対する規制はより強化される傾向にあり、関連当事者のコンプライアンス強化がより一層求められるようになりました。その一方で、中長期的には高齢化の進展、新興国における医療インフラの整備、先進国における医療デジタル化の推進など、多くの成長要因を含んでおり、安定的な成長が引き続き見込まれます。このような状況下において、当社グループは、すべての人が適切な医療を受けることができる持続可能な世界を実現すべく、より安全な医療環境を整備するための一翼を担い、医療機器・医薬品メーカーとしての責任と役割を果たしてまいりました。
当連結会計年度における連結売上高は、新型コロナウイルス感染症の影響が緩和されるなか、主力の透析、ホスピタル関連製品の需要機会を逃すことなく販売、プロモーション活動に注力したことで堅調に推移しました。特に海外売上高においては、為替相場が期間を通じて円安方向で推移したことが売上高増加を支えました。国内においては、2022年12月に販売を開始したエソメプラゾールが当期の売上高増加に大きく寄与しました。一方で、医薬品の供給不足問題はいまだ継続しており、安定供給在庫の確保まで一部製品の出荷制限を余儀なくされたことや、次年度の薬価改定を控えての買い控えもあるなど、期末付近にかけて多少減速しました。この結果、連結売上高は前期比7.6%増加の5,867億85百万円となりました。
利益面におきましては、原材料やエネルギー価格の高騰および円安による輸入資材のコストアップなど、厳しい環境下にありましたが、販売価格の適正化と生産数量増加によるコスト削減により利益を確保しました。また、新型コロナウイルス感染症による物流の混乱が収束し、海上運賃は大幅に改善しました。運送費の減少と治験費用の減少が販売費及び一般管理費の増加を抑制し、営業利益は前期比で大きく向上しました。一方で、下半期から終盤にかけては、大館工場で新しく完成した第7工場でのダイアライザの新生産ラインの稼働開始や医薬品の新規設備の稼働開始による減価償却費の増加、品質管理体制の強化に伴う不適合品の在庫廃棄の増加などのコストアップ要因も増加し、営業利益は前期比26.0%増加の223億35百万円となりました。
経常利益は、金利上昇の影響を受け、利息費用が増加しましたが、営業利益の下支えがあって前期比27.1%増加の195億9百万円となりました。
財務改善を目的とした資本効率改善を進める過程における、政策保有株式や旧本社等の不動産売却により特別利益を計上しましたが、中国での合弁解消による関係会社出資金の売却損や関連会社株式の評価損等の特別損失も計上しました。また、課税所得増加による法人税等の増加の一方で、税効果も改善したため税金費用も多少抑制することができ、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比142.8%増加となる111億9百万円となりました。
なお、当期におけるセグメント別の概況は以下のとおりであります。
国内販売におきましては、メディカル営業部門では販売価格改定により注射・輸液関連製品が好調に推移したほか、SARSコロナウイルス抗原キット、インフルエンザウイルスキットの販売が好調に推移しました。しかしながら、バスキュラー関連製品の当社占有市場に対する他社参入の影響や、透析装置設置の減少により全体では低調な推移となりました。
医薬営業部門では、薬価改定前の買い控えが発生したものの、引き続きネキシウムAGのエソメプラゾールの販売が好調で、かつ不採算品再算定品で薬価が引き上げられた結果、売上高、利益ともに堅調に推移しました。しかし、依然として供給問題が解消しないなか、厳しい対応が続いておりますが、得意先への丁寧な説明と真摯な対応を行うことで現場MRが評価をいただき、ニプロの存在感向上につながっております。
海外販売におきましては、学術活動の深耕と技術営業の向上、各国KOLとの連携強化を拡充することで、高付加価値商品の販売に注力しました。このような状況下、主力の透析関連商品は、欧州、アジア、インド等、各地域での販売が順調に推移した結果、前年比は増収となりました。また、2024年3月に台湾での感染症学会に参加し、同地域でのニプロブランドの浸透と販売強化を図ってまいりました。
自社透析センターにおいても、引き続き世界各国で市場を拡大しており、当第4四半期においてはタイ、南アフリカで計4施設を新規開設しました。新興国を中心に質の高い治療を提供できる環境を整え、地域医療に貢献し続けてまいります。
運送費におきましては、海上運賃が正常に戻りつつある一方、国内外の陸送コストは上昇傾向となっているため、今後も地産地消の促進、ハブ倉庫の活用、安全在庫の確保などにより、安定供給および経費削減を推進してまいります。これらの活動を通し医療現場のニーズに迅速に対応することにより、顧客満足の向上に努め、売上高の拡大、利益の確保につなげてまいります。
生産拠点におきましては、2024年3月に合肥工場で4ライン目となる新たなダイアライザ生産ラインの稼働が開始されました。当期は前期に発生した大館工場第5工場火災による生産ラインの一部損傷もありましたが、従来から稼働している生産ラインに加え、インド工場、大館工場、合肥工場における新生産ラインにおいてもそれぞれ順調に稼働を開始し、安定供給に努めてまいりました。今後、大館工場において更なるダイアライザ生産ラインの稼働を予定しており、さらなる供給能力の拡大に尽力してまいります。
この結果、当事業の売上高は4,536億13百万円(前期比8.0%増)、セグメント利益(営業利益)は423億21百万円(前期比9.6%増)となりました。
医薬関連事業におきましては、複数の先発医薬品の新規受託製品の商用出荷開始や、新型コロナウイルス感染症の流行時に減少していた一部品目の回復が寄与し、売上高の増加につながりました。一方で後発医薬品の終売や既存の受託製品の販売終了による出荷減少もあり、結果として売上高は前年同期比で微増となりました。
営業利益につきましては、依然として原材料の高騰、物価高による外注費用等の増加により製造経費は高止まりしておりますが、埼玉試験棟の稼働による試験業務の分散効果に伴う出荷数増や、原価上昇に伴う仕切価格の変更により収益の改善に繋がりました。しかし、前述の受託製品の販売終了や出荷減少による利益の減少が大きかったため、前年同期比で減益となりました。
この結果、当事業の売上高は743億20百万円(前期比2.2%増)、セグメント利益(営業利益)は44億32百万円(前期比21.1%減)となりました。
ファーマパッケージング事業におきましては、医薬用包装容器およびガラス管(医薬用包装容器の材料)の増産体制を整備するとともに、人的リソースの確保を進め、あわせてインフレに伴うコスト増を緩和する施策を展開しました。収益確保策としては、工場横断的な生産性の向上および調達単価低減のほか、高付加価値品の市場開拓を鋭意推進しました。
日本市場においては、硝子関連製品に加え、高利益品である溶解液注入針や輸液システム等の販売が堅調に推移しました。海外市場はアフターコロナの在庫調整途上にあることから、硝子管、包装容器ともに出荷が軟調でしたが、販売単価の適正化や製品ミックスの効果により増収を達成しました。利益面においては、米国の工場が高い操業度を維持した一方で、ワクチン向け需要が激減した中国、市場競争が激しいインドでは苦戦を強いられました。なお当連結会計年度において、フランスの硝子管工場立ち上げに係る関連費用を一括計上しております。
この結果、当事業の売上高は580億35百万円(前期比12.1%増)、セグメント利益(営業利益)は24億52百万円(前期比10.5%減)となりました。
その他事業におきましては、不動産賃貸等による売上高が8億16百万円(前期比8.5%増)、セグメント利益(営業利益)は80百万円(前期比68.8%減)となりました。
また、財政状態の状況は次のとおりであります。
当連結会計年度末の資産合計は、1兆1,098億21百万円(前期比8.0%増)で、前連結会計年度末に比べて824億22百万円の増加となりました。このうち流動資産は348億76百万円の増加、固定資産は475億45百万円の増加となりました。流動資産の増加の主な要因は、商品及び製品が126億17百万円増加したことによるものであり、固定資産の増加の主な要因は、建物及び構築物(純額)が405億83百万円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の負債合計は、8,400億32百万円(前期比7.0%増)で、前連結会計年度末に比べて548億7百万円の増加となりました。このうち流動負債は635億65百万円の増加、固定負債は87億57百万円の減少となりました。
流動負債の増加の主な要因は、短期借入金が297億97百万円増加したことによるものであり、固定負債の減少の主な要因は、長期借入金が137億36百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度末の純資産合計は、2,697億88百万円(前期比11.4%増)で、前連結会計年度末に比べて276億14百万円の増加となりました。このうち株主資本は88億円の増加、その他の包括利益累計額は175億48百万円の増加となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は965億82百万円と前連結会計年度末に比べ118億86百万円(前期比14.0%増)の増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、729億36百万円(前期比601.6%増)となりました。収入の主な項目は、減価償却費560億30百万円、税金等調整前当期純利益192億19百万円であり、支出の主な項目は、棚卸資産の増加額138億47百万円であります。
投資活動の結果使用した資金は、870億75百万円(前期比21.4%増)となりました。支出の主な項目は、固定資産の取得による支出942億3百万円であります。
財務活動の結果得られた資金は、221億42百万円(前期比48.6%減)となりました。収入の主な項目は、長期借入れによる収入725億86百万円であり、支出の主な項目は長期借入金の返済による支出654億91百万円であります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、製造原価によって算出しております。
2 上記金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
当社グループは、見込生産形態を採っておりますので、該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記金額は、セグメント間取引の相殺消去後の数値であります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
売上高は前連結会計年度に比べ415億86百万円増加し、5,867億85百万円(前期比7.6%増)となりました。これは主に、国内販売が前期比5.0%、海外販売が10.7%とそれぞれ増加したことによるものです。この結果、各セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、医療関連事業が77.3%、医薬関連事業が12.7%、ファーマパッケージング事業が9.9%、その他が0.1%となりました。
営業利益は前連結会計年度に比べ46億5百万円増加し、223億35百万円(前期比26.0%増)となりました。これは主に、運送費の減少と治験費用の減少が販売費及び一般管理費の増加を抑制し、営業利益は前期比で大きく向上しました。
営業外収益は前連結会計年度に比べ16億38百万円増加し、89億40百万円(前期比22.4%増)、営業外費用は前連結会計年度に比べ20億80百万円増加し、117億65百万円(前期比21.5%増)となりました。この結果、経常利益は前連結会計年度に比べ41億62百万円増加し、195億9百万円(前期比27.1%増)となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税および法人税等調整額を計上したことにより、111億9百万円(前期比142.8%増)となりました。
なお、財政状態の分析内容及びセグメントごとの経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得等によるものであります。なお、当社グループの設備投資額は,2024年3月期の実績は953億円、2025年3月期は624億円を予定しております。
次期以降の配当に関しましても業績連動の利益配当方針は維持しつつも、長期的な視点に立った安定的な配当を継続する方針で現在検討をおこなっております。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金および金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。また、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結することで、資金の流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、滋賀県草津市のニプロ・ライフサイエンスサイト内にて、医療機器および医薬品の研究開発業務を当社が中核となり推進しております。
医療関連事業におきましては、長引く国際紛争による円安や、原料価格、エネルギー価格の高騰による物価高などの起因により、大幅なコスト低減を強いられた年となりました。
そのため、新規製品の原価構成の見直しや、部品点数削減を目的とした設計変更などが発生し、研究開発を行う環境には、マイナス要因となりましたが、限られた時間の中で「開発スピードを落とさずにできる手段」を考え、医療従事者の方々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上のため、使命であります医療製品の安定供給に努め、新規医療製品が生まれ育つよう取り組んでまいります。
一方、医薬関連事業におきましては、薬剤費の削減や医療の質の向上に対するニーズに応えるべく、様々な疾患領域や剤形における先発医薬品を対象に、高品質なジェネリック医薬品の開発に努めております。さらに、患者様にとって飲みやすさに配慮した口腔内崩壊錠や医療現場での取り扱いの容易さに配慮したキット製剤など、付加価値のある製品の開発にも注力しております。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
主に当社の総合研究所および酵素センターが中心となって、以下の研究開発を行っております。
上腕など体の中枢(心臓)から遠い部位(末梢)から挿入するCVカテーテルにおいて、造影剤の高圧注入が可能で挿入しやすさと安全性を両立させるために、ガイドスタイレットを採用した「ニプロPICCカテーテルキットf(フォルテット)」を開発いたしました。さらに、計量ボトルの形状を低床型尿バッグに対応させ、容量を200mLから350mLへ増量変更した閉鎖式の計量ボトル付き尿バッグも開発いたしました。
循環器用バルーンカテーテル技術を応用し、消化管狭窄の治療時に、バルーン単体で内視鏡のチャンネルをデリバリーするE-diveを販売しておりましたが、下部消化管で高度狭窄した場合、ガイドワイヤーを併用して、狭窄部を通過させるワイヤーガイドタイプのバルーンカテーテルを開発いたしました。さらに、下肢、シャントなどの末梢血管の治療時に、ガイドワイヤーの断裂などで異物が発生した場合、先端のバスケットにより異物を簡単に回収できる異物除去カテーテルも開発いたしました。
また、末梢やシャント血管の石灰化病変や組織肥厚により硬くなった病変を30気圧以上の高い圧力をかけて拡張させる際に使用される超高耐圧バルーンVASOPENを開発いたしました。
操作性が向上し、血小板付着を抑制するコーティングが施された動脈フィルタ内蔵型の人工肺を開発いたしました。さらに、従来のアルミ包材に比べ視認性と開封性が向上したダイアライザ用透明包材も開発いたしました。
COVID-19の抗原とインフルエンザA、Bを同時に検査ができる検査キットおよび特殊健康診断で必須項目とされる有機溶剤健康診断を手軽に実施できる測定試薬を開発いたしました。さらに、馬尿酸測定試薬と総馬尿酸測定試薬に使用される3種類の新しい酵素も開発いたしました。
腹腔鏡下手術時にスプレー先端部の角度調整ができるようにシャフトの剛性、フレキシ部の曲げ加工性能が向上したKMバイオ様向けのノンガスエンドスプレーを開発いたしました。
神経再生誘導管「リナーブ」の改良品である「リナーブスリット」を開発いたしました。
整形外科領域で内視鏡を用いた低侵襲治療であるTSCP(仙骨的脊柱管形成術)に使用される屈曲シース、細径内視鏡、ブラシ、鉗子などを開発いたしました。
精子数が少ない患者様からでも精子を遠心濃縮して回収することが可能な極少精子回収用試験管「SFNT-P」を開発いたしました。また、ニコンセルイノベーション様向けに、細胞製造過程で発生する廃液を回収するための「廃液バッグ」も開発いたしました。
その他、医療研修施設(iMEP)は、次年度開設10周年を迎えるにあたり、新たな研修プログラムの準備を進めております。さらに、6年目を迎えるベルギーiMEPは、X線研修室を新設、PTA・PCI術の研修計画を拡充し、新たにアフリカ地域もオンライン中継し、AVF&AVGの研修を実施し、質の高い医療研修を通じて、ニプロブランドの認知度向上に貢献しております。
また、東京大学・ニプロ研究開発センターは、契約を5年延長し、全診療科と共同研究を継続実施し、地の利を生かした製品化に取り組んでまいります。
この結果、当事業に係る研究開発費は
主に当社の医薬品研究所が中心となって、以下の研究開発を行っております。
通常のバイアル製剤、バッグ製剤などに加え、医療現場での利便性向上を企図したキット製剤の開発も積極的に進めております。前立腺癌や閉経前乳癌などの治療に用いるリュープロレリン酢酸塩のダブルチャンバー型のプレフィルドシリンジ(1箇月製剤)(先発:「リュープリン」武田薬品工業)を既に販売しておりますが、このような開発難易度が高い徐放性注射剤などの分野に注力して、開発を進めております。
なお、今期は、1成分1品目の凍結乾燥バイアル製剤のジェネリック医薬品を上市し、1成分2品目の液バイアル製剤と、1成分1品目のプレフィルドシリンジ製剤の製造販売承認を取得いたしました。
一般的な経口剤(錠剤、顆粒剤など)に加えて、高難度な徐放性製剤の開発にも取り組んでおります。一方、医療現場での利便性を向上させるため、錠剤に成分名を印刷するなど、個包装、アルミピロー包装といった包装仕様にも工夫を凝らした製品も提供しております。
なお、今期は、1成分3品目のジェネリック医薬品を上市し、2成分3品目の製造販売承認を取得いたしました。
粘着剤や軟膏剤の自社技術を活用し、高品質なジェネリック医薬品の開発を進めております。また、「皮膚に貼る注射剤」という今までにない新しい概念の経皮吸収製剤であるマイクロニードル製剤の開発に取り組んでおります。
わが国において、急速に市場拡大しているバイオ医薬品ですが、一般的に高薬価で、医療費削減の観点から、より低薬価であるバイオ後続品の必要性が高まっております。このような状況を踏まえて、弊社でも共同開発や自社単独開発を含め様々な形態で製品開発を推進しております。
なお、今期は、ペグフィルグラスチムBS皮下注3.6mg「ニプロ」を上市いたしました。
この結果、当事業に係る研究開発費は