第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は、IoT、AI、DXといったコアサービスを通じて情報化社会の基盤構築を行い、経済の発展と活力ある豊かな社会の実現に貢献することを経営の基本方針とし、高コスト効率・高品質・高付加価値のトータルソリューションを提案しております。当社は今後も、継続的な成長を達成するため、先端技術と高度人材への先行投資を継続するとともに、更なる高収益体質化へ向けた効率的な経営を目指します。

(2)経営戦略等

 当社は2024年5月13日に、2024年4月から2027年3月の3か年を対象とした中期経営計画を策定、「“人”で稼ぐから“アセット”で稼ぐ企業への構造変換」を基本方針に据え、日本の製造業DXを次のステージへ進めるデータハンドラー・アセンブラーへと成長遷移していくプランとして発表致しました。当社がSI領域で半世紀以上培ってきた豊富なソフトウェアエンジニア育成ノウハウを活かし、独自のマルチプラットフォームデータハンドリングエンジンにより市場を創造するべく、2030年以降に向けたマルチフェーズでの第二創業とも言える大きな改革の第一フェーズとして、当社が創業以来常に志してきた未知への挑戦を社会に還元することと同時に取り組んでまいります。

 その重点戦略として、当社の強みである「人材育成力」「SW/HWを繋ぐコア技術」「ERP/CPM/IoTでの幅広い経験」をプロダクトアセット主導収益体制に改革していくことを第一フェーズと位置づけ、既存SI・IoT事業それぞれにおいて売上利益ともに痛みを伴う構造転換の土台構築、戦略領域の明確化と人的投資、プロダクトアセットの拡充を行ってまいります。具体的には3つの柱として、

 

 1.選択と集中による収益力強化 ~高付加価値領域への人員配置~

エンタープライズソリューション領域において、特に大口案件での優先的な人員確保による人材の固着化・長期化が個別のキャリアパスに与える影響や、スキルマッチのバラツキによる低収益性低成長案件からの脱却を目指し、売上成長を一部抑制してでも人材ローテーションと付加価値創出の「溜め」を作っていく必要があります。

 2.ノウハウのアセットへの昇華 ~人数で稼ぐから、プロダクトで稼ぐへの構造転換~

IoT/DX領域において、事業立ち上げ当初より緻密で細部にまで行き届いた提案を行う事によってノウハウの獲得・業界内でのポジションを確立してまいりましたが、社内リソースを重点的にプロダクト開発に投入しマルチクラウドでのデータハンドリングエンジンとして「広く営業展開が可能になる」属人性のノウハウ化を3年間で行います。

 3.将来成長に向けた戦略的投資 ~事業創出に向けた技術獲得~

現在、複数あった連結不採算事業ユニットを整理し単体にてのセグメント統合が完了し戦略的展開を行っていくフェーズとして、改めて連結化でのグループ拡大を図り、両セグメントに於いて必要な「人材」と「技術」双方をM&A手法にて獲得してまいります。

を設定、これらを基にセグメントごとの具体的な現状及び戦略については以下となります。

(エンタープライズソリューション事業)

 当社の全ソフトウェア開発リソースの始発点かつ原動力であり、確固たるエンジニア育成ノウハウを所有する当社技術力のコア基盤ではあるものの、SI案件が大型化・長期化することに伴い優秀なエンジニアが一定のプロジェクトに固定化する傾向があります。また、お客様ごとに様々な開発環境・顧客関係があるため、社員のスキルと受託案件、事業収益とのアンマッチが生まれることがあり、これらを解消するため社内エンジニアの人材ローテーションを行い社内リソースの拡充を進め、エンジニア人材の技術力を全社的に引き上げます。また、より機動的な案件運用を目指し顧客ポートフォリオを見直し、高スキル人材と高収益事業のマッチングを社内横断的に行いつつ、既存のお客様を中心としとした旺盛なソフトウェア開発需要に応じられる、多様な開発環境に対応可能なエンジニアの育成、スキルアップ・キャリア形成できる体制を整えてまいります。一方でリソース調達の難易度は引き続き高いと見込んでおり、自社での新卒採用・育成を底堅く継続しつつ、引きつづき活況な転職市場からの調達・キャリアパス観点での全社人材の横断活用をより積極的に推進してまいります。

(IoTインテグレーション事業)

 創業以来強みにしてきたハードウェアのコア技術を基に、IoTインテグレーション事業を通してさらに積み上げてきたコンサル・SIノウハウをプロダクトアセットに昇華させ、ソリューションスイート化することで提案者・販売リソースの高度スキルに依存しない基盤構築を目指してまいります。そのために、現場から経営までが利活用できるデータハンドリングノウハウをプロダクト化し、世界トップクラスの産業・工場向けハードウェア製造しているAdvantech Co.,Ltd.と共にマルチクラウド/マルチプラットフォーム対応開発を行うなど顧客視点で実現できるデータハンドラー・データアセンブラーとしてのライブラリ的サービス開発を行い、プロダクトアセット開発のコアエンジンとしての事業中核化を行ってまいります。

(3)目標とする経営指標

 当社の目標とする経営指標については、2024年5月13日で定めた中期経営計画では、2024年4月から2027年3月までに目指す経営指標は以下のとおりであります。

 

2025年3月期

2026年3月期

2027年3月期

売上高

3,863百万円

3,950百万円

4,210百万円

営業利益

 150百万円

 200百万円

 295百万円

経常利益

 200百万円

 250百万円

 345百万円

当期純利益

 317百万円

 232百万円

 315百万円

(4)経営環境

 当社の属する情報サービス産業界においては、ICTを活用して様々なモノ、サービスを繋げることにより、新たなイノベーションを創出する政府の成長戦略を背景に、IoT(モノのインターネット化)、AI(ディープラーニング・人工知能)、あらゆる分野でのDX化、クラウドプラットフォーム活用、ビッグデータ解析等のテクノロジーが必須の要素となってきており、これらを積極的に取り込みつつ、地域の活性化、企業活動の高度化、生産性の向上に資するシステムやサービスの提供が企業のミッションとして求められております。これらの提供を推進していくことで、コロナ禍前を大きく超過する勢いの人流・流通・企業活動に対応する必要のある顧客ニーズの高まりをしっかりと捉えることによりソフトウェア・ハードウェア開発ニーズは引き続き増加していくものと考えております。

(エンタープライズソリューション事業)

 既存の請負開発においては、コロナ禍で従来の客先常駐開発体制を大きく見直し、ハイブリッド型を中心とした開発・勤務体制を一緒に構築出来る顧客獲得へと、新しい形態でのポートフォリオシフトを図ってまいりました。当期においてはそうした体制構築が軌道に乗り始め、特に大口顧客からの一時的な需要増を受け止める全社リソース最適化が動き始める中、更なる生産性・顧客環境の発展と収益性の向上の為の全体的な育成・営業展開の再検討を行ってまいりした。また、「AWS」「Azure」といったクラウド上でのプラットフォーム開発、フルスクラッチ開発に加えBI&CPM(Business Intelligence&Company Performance Management)ツールの「Board」及びSAP周辺ニーズを取り込める「Tagetik」のベース開発体制を重点的に強化し、パートナー経由の受注増と案件規模の拡大に対応出来るよう、社内におけるカスタマイズソフトの開発及び社員の配属増、開発教育を進め、イノベーション推進チーム・AIDプロジェクトチーム体制も大きく拡充しつつ、現場でのAIソリューション活用の本格的な高付加価値・次世代型プロダクトの開発にも注力しております。

(IoTインテグレーション事業)

 アドバンテック社との協業以降本格化したインダストリアルIoT分野における工場向け提案は、業界内においてユニークであるとの自負の元、様々なコンサルテーションを含んだソリューション提案の量・質・案件単価ともに引き続き好調な伸長を見せており、特に当社独自開発のプラットフォームであるkonektiと付随するクイックパッケージ提案のキーとなるkonektiBOX提案において営業期間の効率化と営業確度が向上、提案の精度と顧客満足度において引き続き高い評価を顧客より頂いております。

 また当期より、従来エンタープライズ領域で蓄積してきた「kintone」(サイボウズ株式会社が提供するビジネスアプリプラットフォーム、基幹系・管理系のシステムを簡単に開発できるツール)・当社オリジナルのkinterpを使用したプラットフォーム上のローコード・カスタマイズ開発双方のニーズに対応出来るERP構築ノウハウを有するビジネスソリューション部門を、新たに設立した「DX事業本部」下にIoT事業と共に統合し、生産管理・MESの現場における一気通貫のデータハンドルニーズを一手に引き受けられる事業・プロダクトスイート体制を構築した結果、展示会等における顧客リードの獲得効率が飛躍的に向上しつつあります。

 引き続き工場や医療といった現場サイドにおける少子化・高度人材の老齢化による技術継承問題はますます顕在化しており、小回りと網羅性双方を実現できるDX・IoTソリューション提案会社としての評価を拡大しつつ、メディカル・映像分野での商品開発と、エンベデッドソリューション分野における全く新しいコンセプトの商品開発を進めてまいります。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は、冒頭の通り情報化社会の基盤構築を通じて、サステナブルな経済の発展と活力ある豊かな社会の実現に貢献することを経営の基本方針とし、高品質・高付加価値のトータルソリューションを提案しております。今後も当社は、サステナブルな成長を達成するため、社名の由来であるResearch&Development(研究開発のRAD)・先端技術への投資を継続するとともに、より高収益な体質を目指す効率的な経営を目指します。具体的には中期経営計画部分に記載の通りですが、この目標に沿って当社が優先的に対処すべき財務上の課題としては、数年来進めてきた事業構造・財務内容改革に於いて得られた手元資金を、現状においては比較的安定した状態であると考えております自己資本比率を適正なレベルで維持しつつ、当社の将来的発展に於いて最も重要な要素である人的要素とユニークな技術リソースの確保・高度化を図るベースとして適切に投資・活用しグループ経営の基盤を構築することが重要であると考えております。

 また対処すべき具体的な経営課題は、以下のとおりと考えております。

①営業推進体制の強化

 当社は、情報サービス産業界の変化を踏まえ、各事業の拡大を目指しておりますが、今後は企業の業務システムのプラットフォーム活用・アウトソーシング化の拡大とDX・IoT部門での提案営業活動の拡大が見込まれるところから、新しいコンセプトに対応できる営業推進体制の構築・強化を目指してまいります。企業のホームドクターたれ、の社是の通り、営業活動において顧客ニーズを迅速かつ的確につかむことを大事に活動してまいります。

②優秀な人材の確保

 上記営業推進体制の中で、顧客ニーズに適時的確に応えていくためには、適切な人材確保を重要課題のひとつと認識しております。それには、新卒採用及び中途採用を促進するとともに、社内での技術ローテーション、協力会社との連携を強化し、システムエンジニア、フィールドエンジニアとコンサルタント型営業人材の供給能力を高めます。また、戦略的に必要とされる技術について個々の社員とのキャリアの融合を図る目的で資格取得支援を通じた人材育成に努めるとともに、働きやすい職場環境を整備すること、優良な会社のM&Aを展開することで、優秀な人材の確保に努めてまいります。

③競争力の強化

 競争優位を保つためには、ソフトウェア力が競争力に直結する企業顧客の更なるシステム投資ニーズに応えらえる、差別化された強い技術力(商品力、開発能力、開発手法、コンサルティング能力)を基盤としたビジネスモデルの確立が必要と認識しております。大方針であるプロダクトアセットの構築、急速に台頭してきている生成型AIを始めとした新規技術の取り込み、当社の体制整備等の継続的対応に加え、より一層重要性を増している戦略的事業提携や事業統合を積極的に推進してまいります。

④アライアンス構築によるプロダクトラインアップの拡充

 当社は、これまでに蓄積してきた技術をもとに顧客ニーズに即したプロダクトの自社開発を行っています。しかしながら、ITソリューションが顧客のビジネスの発展に不可欠なものと位置付けられるに伴い、顧客の多様なニーズに応えることのできるプロダクト群を開発するだけでは伸びに限界があり、外部IT企業とのアライアンスを通じてプロダクトラインアップを更に積極的に拡充を図ってまいります。

⑤顧客満足度の向上

 顧客満足度の向上は、情報サービス産業における重要な経営資源であるシステムエンジニアによってなされると認識しており、また、満足度において他社との差別化をもたらす大きな要素のひとつは技術力であると確信しております。当社は、ISO9001・27001等の教育規程に沿った先進技術の資格取得支援などによって、システムエンジニアの技術力を継続的に強化し、組織レベルでの品質向上につなげてまいります。

⑥収益性の確保

 ソフトウェア開発事業の特徴として、業務の品質管理による収益性確保が重要課題のひとつと認識しております。受注案件の吟味と当社品質方針に基づくプロジェクト管理の更なる徹底に取り組んでおり、各プロジェクトにおける利益管理、コスト管理を徹底することに努めてまいります。

⑦効率的な経営と収益力改善

 企業価値を最大化するためには、事業目的の明確化、人的資源の最適化など、経営効率の向上も重要課題のひとつと認識しており、その課題の解決に向けた人材交流の活性化及び収益性改善の推進と事業拡大に邁進いたします。

(6)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、事業拡大による収益力強化及び安定的財務基盤の維持の観点から「売上高」及び「経常利益」を重要な経営指標として位置づけております。また、積極的な人材育成への投資や適切な研究開発投資を進める一方、収益力及び資本効率の向上を図るため、ROE(自己資本利益率)も重視しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)ガバナンス

 当社は、お客様との信頼を維持し、より良いサービスを提供していくという経営の基本に基づき、ステークホルダーと共に相互の価値を高めながら持続的可能な成長、事業創出につなげることを目指しております。そのために、企業運営の健全性、迅速性、透明性の向上を目指して、コーポレートガバナンス及び、内部統制システムの構築を強化してまいります。詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレートガバナンスの状況等」に記載のとおりでありますが、取締役会及び監査役会においてサステナビリティへの取組に関する報告、課題について話し合うことができる体制があり、各役員相互に連携がとれる環境を構築しております。

(2)戦略

 当社は、サステナビリティ経営を、企業価値を高める重要な成長戦略の一環と位置づけており、持続可能な経営ひいては社会の実現につながる具体的な取り組みの協議、推進を行っております。

・人材育成とリテンション

 当社の最大の資産は、高度な技術力と開発能力を持つ人材であります。そのため、継続的な教育と育成を通じて、社員のスキルを強化し、最新の技術トレンドに対応できるようにすることが重要であると考えております。また、働きやすい環境を整備し、時差勤務や在宅勤務などの働き方の選択肢を提供し、社員のリテンション(離職率の低減)にも取り組んでおります。

・ダイバーシティとインクルージョン

 当社は多様性を価値とし、全ての社員が自分自身を表現し、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を提供してまいります。性別、年齢、人種、宗教、障害の有無などに関係なく、全ての人々が当社で平等に機会を得られるようにすることで、より創造的でイノベーティブなソリューションを提供する力を強化していきます。

・環境への配慮

 当社は、ITインフラの提供を通じて環境に影響を与えることを認識しております。そのため、データセンターや外部プロダクトの活用においては、グリーンエネルギーを使用するベンダーとの取引を積極的に検討してまいります。これにより、当社の事業活動を通じたCO2排出量の削減を目指します。

・社会への貢献

 当社は、地域社会やステークホルダーとの協働と当社ITソリューションを通じて社会の課題解決に貢献してまいります。当社の製品とサービスは、教育、医療、災害対策などの領域で活用され、生活の質の向上や社会的課題の解決に貢献しております。

 これらの取り組みを通じて、当社は持続可能な経営を実現し、システムインテグレーターとしての社会的な役割を果たしてまいります。

(3)リスク管理

 当社の最大の資産は、競争力の源泉である人材であり、多彩で差別化された強い技術力(商品力、開発能力、開発手法、コンサルティング能力)を持つ人材の獲得及び育成と保持は、当社の収益力、競争力を維持していく上で重要な課題であります。しかしながら、労働市場におけるITエンジニアの人材不足は常態化しており、優秀なエンジニアの確保が困難な状況にあります。このような状況に対応するべく、より透明性の高く従業員意識の動的な把握が可能なプラットフォーム型人材マネジメントシステムを導入をしており従業員と対話しやすい環境を構築しております。また、報酬体系の見直し、人材ローテーションを行うなど従業員の満足度を高め、より働きやすく評価されやすい環境構築に努めております。加えて、従業員の健康管理、メンタルヘルスケアの予防と改善、ハラスメントの早期発見等に対応するために代表取締役社長を委員長とした「衛生委員会」を設置しており、毎月1回産業医同席の下開催しております。これらの対応により問題を早期発見し対応しております。リスクに関する詳細は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(4)指標及び目標

 当社では、サステナビリティへの取り組みを通じて以下のような指標を設定し、その進捗を定期的に評価する体制を構築してまいります。

・環境指標

 当社は、環境に配慮した経営を進めるべく、自社オフィスのエネルギー消費の削減、グリーンエネルギーを使用するデータセンターとの取引配慮、環境負荷の少ない外部製品の導入などの指標を設定し、それに向けた取り組みを進めてまいります。

・社会的影響力の指標

 当社は、当社のサービスを通じた社会的影響力を増すべく、従業員の多様性の確保や定着率の向上、従業員満足度の向上、社内外での教育やトレーニングの提供など多様な目標を設定し、それぞれの目標達成に向けた取り組みを行ってまいります。

 

・リスク管理指標

 当社は、サステナビリティ関連のリスク管理にも注力してまいります。ISMS/QMS取得企業として、人材流動性、技術的・プロジェクト遅延や品質問題など、重要なリスク要素に対する具体的な指標を設定し、それぞれのリスク要素の管理と改善に取り組んでいます。これらの活動はISMSとQMSのフレームワークに基づき行われ、情報セキュリティと品質の継続的な改善とともに、リスク管理体制の強化へと繋がるものとなります。

 これらの指標と目標は、我々が達成すべきサステナビリティの成果を明確にするためのものであり、定期的に進捗を評価し、必要に応じて見直しを行っております。このような取り組みを通じて、当社は持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 また、「えるぼし認定」3つ星基準に基づいた定期モニタリング・改善アクションを行っており、当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

 指標

目標

実績(当事業年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2024年6月末迄15以上

15

社員に占める女性社員の割合

2024年6月末迄30以上

24

在宅勤務制度の利用率

2024年6月末迄40以上

94

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)技術革新への対応に関するリスク

 近年、AI・クラウド技術をはじめとするICT技術の革新が激化しており、当社が現在保有する技術・技能・ノウハウ等が陳腐化し、その技術優位性あるいは価格優位性を失う可能性があります。当社は、その技術革新に適時・的確に対応できるよう、社員の能力開発及び新技術習得を推進し、また、新しい技術の組織的発掘並びに競合他社と差別化できるソリューションの構築等に努めております。しかしながら、市場と顧客のニーズの急速な変化を的確に把握し、それに対応したサービスを提供できない場合、また、新たな技術動向に乗り遅れた場合、競合他社に対する競争力が低下し、受注件数が減少し、当社の経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(2)人材確保及び人材育成に関するリスク

 多様化する顧客ニーズへ対応し顧客満足度を高めていくためには、適切な人材確保が重要課題のひとつと認識していることから、当社は、各部門に配属可能な人材の確保と育成、安定したパフォーマンスを出せるリモートワーク体制を確立、今後ニューノーマル時代に対応したハイブリッド体制の構築に注力しております。しかしながら、他業界に比べ比較的人材が流動的である傾向があることなどから、適切な人材が十分に確保、育成できない場合は、開発規模の縮小、受注の断念により、当社の経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(3)事業環境の変化に伴うリスク

 近年、IT業界においては、高度化する最先端技術や多様化する顧客ニーズに対応しながら価格競争も激しくなりつつあります。このような環境のもと、顧客企業のIT投資動向の大きな変動や、業界内での価格競争が予想を大幅に超える水準となった場合は、当社の提供するシステムやサービスの販売価格低下につながり、当社の経営成績および財政状況等に業績に影響を及ぼす可能性があります。また、引き続き極めて活況な転職市場において従業員にとって魅力のある適切な就労・開発環境の整備が出来ない場合、既存及び新規のプロジェクトの遂行や人材の確保に影響を及ぼす可能性があります。

(4)システム開発業務に関するリスク

 受託開発においては、契約時点での見積り精度の高低、開発作業に着手した後の仕様変更対応、開発したソフトの瑕疵等、予見不能な事態が発生することにより、開発工数増加や開発期間の長期化等で受注時の見積り工数・期間を超過することがあります。また、案件によっては受注額を上回る原価が発生し、不採算案件となる可能性があります。このため当社では、ISO9001の認証を取得し、システム開発の工程管理、品質管理の徹底に取り組んでおり、見積り精度の向上施策や、受注高に応じた責任者のチェックを含めたプロジェクト管理体制の構築や、詳細設計など工程の節目ごとに顧客と共同で試験を行うなどの対応をとり、リスクを極小化するよう努めております。しかしながら、複数または大型の不採算案件が発生した場合は、当社経営成績および財政状況等に業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)新規事業に関するリスク

 当社は、情報技術革新に伴う社会のニーズを事業化し、将来の収益基盤を築くため、子会社・関連会社などへの投融資を含めた新規事業への参入を行っております。投融資の決定には当社の技術・ノウハウ・投資経験等をもって最大限の吟味を行い各種投資リスクの回避に努めております。しかしながら、当該投融資が当社の事業に与える影響を確実に予想することは困難であり、当初想定していた成果を上げられず損失を蒙る場合には、当社経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(6)情報セキュリティに関するリスク

 当社では、情報処理サービス業務の提供にあたり、顧客データと個人情報を取り扱う場合があります。

 これらの個人情報保護につきましては、「個人情報保護方針」に基づき、適切な管理に努めております。また、ISO27001認証取得に基づく内部監査の実施等の情報セキュリティ活動により、社員のセキュリティ対策に対する意識を高め、顧客から信頼される高度なセキュリティマネジメントの実現に努めております。しかしながら、不正アクセスや人為的な重大ミス等により、万が一顧客情報の紛失、破壊、改ざん、漏洩等があった場合、社会的信用の失墜、顧客からの信用喪失、または損害賠償請求による費用の発生等により、当社の経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。

(7)自然災害及び重大な伝染病等に関するリスク

 地震、風水害などの自然災害や重大な伝染病等が発生した場合には、事務所・設備・社員とその家族などに被害が発生し、労働力の低下による売上の減少、設備の修繕による支出増加、新たなパンデミックの出現・拡大や地域紛争等にともなうサプライチェーンの混乱による部品、原材料等の高騰や安定的な調達が困難となることで、当社の経営成績および財政状況等に影響を及ぼす可能性があります。被害を最小限にするため、災害対策マニュアルの作成、防災訓練、社員安否確認システムの整備、時差出勤及び在宅勤務など対策を講じるとともに、外部環境の動向や変化を慎重に見極め適時適切な対応に努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、インバウンド需要の増加、個人消費活動の活性化など経済活動の勢いが加速する中、円安の影響による物価高、人件費の高騰、金利動向などが今後の経済活動へ与える影響を注視していく状況が続いております。

 このような状況の中、当社は代表取締役交代後の新経営体制の下、各セグメントの底上げに重点を置き、特にインダストリアルIoT分野におけるDXソリューション展開としてIoTとERPノウハウを融合したソリューションスイート化を組織とプロダクト両面から加速させ、CPM&BIツール「Board」「Tagetik」とKonekti、Wise-PaaS等のコアプラットフォームと組み合わせた形で展示会等において積極的プロモーションを図ってまいりました。また、引き続き大手企業における懸案である2025年の崖問題向けのAIソリューション「JANUS Studio®」を始め、新規に立ち上げたAIDプロジェクトにおいての様々な現場対応のエッジAIプロダクトの開発、プロモーション展開が順調に推移しております。さらに、当社の特徴である幅広い業種・業態へのリーチが可能である点を活かした複合・重層的AI展開を最重点分野の一つとし、引き続き生成型AIやエッジAIといった最先端AI技術への投資及び実案件拡大に注力しながらAI事業領域の拡大を図って参ります。

 この結果、当社の当事業年度の売上高は、39億84百万円(前事業年度比12.1%増)となりました。損益につきましては、営業利益2億66百万円(同206.9%増)、経常利益3億21百万円(同128.5%増)、当期純利益3億27百万円(同133.1%増)となりました。

 セグメントの経営成績を示すと、次のとおりであります。

 なお、当事業年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1.財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」に記載のとおりであります。以下の前事業年度比較につきましては、前事業年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。

 「エンタープライズソリューション事業」

 好調な経済状況を反映する形でソフトウェア面における顧客企業の開発ニーズが非常に強く、当事業年度は各業種向けの派遣常駐型システム開発及び受託請負型システム開発案件において、外部リソースの調達を含んだ既存大型顧客からの増員要望や開発案件の増加が継続し受注増となりました。中でも、BI事業におきましては、強力な経営管理プラットフォームCCH Tagetikのパートナー取り扱いと開発案件が順調に推移し、受注は前事業年度に比べて増加しました。また、当社オリジナルIPサービスである「AttackBoard」のクラウド版サービス「集計名人アタボー5®」が第17回ASPICクラウドアワード2023においてDX貢献賞を受賞するなど、プラットフォーム活用開発も好調に推移しました。その結果、売上高は23億84百万円(同15.0%増)となりました。

 「IoTインテグレーション事業」

 インダストリアルIoT分野及び医療IoT分野におきましては、引き続き既存顧客及び新規顧客共に受注が増加いたしました。インダストリアルIoT分野につきましては、前述のとおりサイボウズ社のkintoneをベースに当社にてオリジナル展開しているkinterpサービスを擁するビジネスソリューション事業をDX事業に取り込んだ結果、IoT・ERP連携が進んだことにより、ソリューション提案リードの獲得が重層的に可能となり、IoTセグメントとしてのDX展開が加速しました。ローコード・ノーコードへの注目度がますます高まる中、提案・導入の早さや利便性で好評をいただき販売期間も短縮され、既存顧客からのリピート受注も増加しました。また、医療IoT分野におきましては、医療機関向け自動再来受付システム等の販売・開発につきましても順調な回復を見せ受注増となりました。エンベデッド事業におきましては、自動車搭載セキュリティシステムのロイヤリティ収入や船舶搭載用ソリューションが生産台数の増加を受け非常に強い成長となりました。一方で映像情報システム関連につきましては、官公庁向け大口を一巡したほか、プロダクトの選択と集中を行いつつ前事業年度並みとなりました。その結果、売上高は15億99百万円(同8.0%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純利益が1億63百万円増加した一方、減少要因として長期借入金の返済、役員退職慰労金の支払いがあり、前事業年度末に比べ2億33百万円減少し当事業年度末には22億54百万円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、3億75百万円(前年同期は1百万円の獲得)となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上3億21百万円、受取利息及び受取配当金の受取額52百万円、役員退職慰労金の支払額1億97百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用された資金は、4億36百万円(前年同期は3百万円の使用)となりました。これは主に、定期性預金の預入による支出2億円、無形固定資産の取得による支出46百万円、差入保証金の差入による支出1億30百万円、貸付による支出46百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用された資金は、1億72百万円(前年同期は1億86百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1億20百万円、配当金の支払いによる支出51百万円によるものであります。

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

エンタープライズソリューション事業(千円)

2,387,593

115.2

IoTインテグレーション事業(千円)

1,605,440

108.7

合計(千円)

3,993,033

112.5

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は販売価格によっております。

3.データセンター事業では受注生産を行っておりませんので、これに係る生産実績は含めていません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

(千円)

前年同期比(%)

受注残高

(千円)

前年同期比(%)

エンタープライズソリューション事業(千円)

2,455,631

109.1

898,192

108.6

IoTインテグレーション事業(千円)

1,521,065

92.2

606,678

88.5

合計

3,976,696

101.9

1,504,870

99.5

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.データセンター事業では受注生産を行っておりませんので、これに係る受注実績は含めていません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

エンタープライズソリューション事業(千円)

2,384,687

115.0

IoTインテグレーション事業(千円)

1,599,993

108.0

合計(千円)

3,984,680

112.1

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自  2022年4月1日

至  2023年3月31日)

当事業年度

(自  2023年4月1日

至  2024年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

第一環境株式会社

496,728

14.0

738,619

18.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(資産)

 当事業年度末の流動資産は31億87百万円となり、前事業年度末に比べ2億92百万円減少いたしました。これは主に、現金及び預金が2億33百万円、前渡金が60百万円減少した一方、原材料及び貯蔵品が15百万円増加したことによるものであります。固定資産は11億8百万円となり、前事業年度末に比べ4億75百万円増加いたしました。これは主に投資有価証券51百万円、長期貸付金が35百万円、繰延税金資産が51百万円、長期預金が2億円増加した一方、会員権が27百万円減少したことによるものであります。

 この結果、総資産は42億95百万円となり、前事業年度末に比べ1億83百万円増加いたしました。

(負債)

 当事業年度末の流動負債は7億67百万円となり、前事業年度末に比べ33百万円増加いたしました。これは主に、買掛金が40百万円、1年内返済予定の長期借入金が1億20百万円減少した一方、未払費用が54百万円、未払法人税等が26百万円、未払消費税等が39百万円、賞与引当金が69百万円増加したことによるものであります。固定負債は6億2百万円となり、前事業年度末に比べ1億56百万円減少いたしました。これは主に、退職給付引当金が41百万円増加しましたが、長期未払金が1億97百万円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は13億69百万円となり、前事業年度末に比べ1億22百万円減少いたしました。

(純資産)

 当事業年度末の純資産合計は29億26百万円となり、前事業年度末に比べ3億5百万円増加いたしました。これは主に当期純利益の計上及び剰余金の配当により利益剰余金が2億75百万円、その他有価証券評価差額金が29百万円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は68.1%(前事業年度末は63.7%)となりました。

 

(売上高)

 当事業年度における売上高は、前年同期比で4億29百万円増加し、39億84百万円となりました。セグメントごとの業績につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の「(1)経営成績等の状況の概要」「①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(営業損益)

 受注増による売上高増加、それに伴い外注加工費及びプロジェクトへのアサイン増及び賃上げにより人件費が増加しました。一方で材料費が前年同期より減少したことにより、売上総利益は前年同期比で2億36百万円増加し、9億38百万円の利益となりました。

 販売費及び一般管理費については、人件費の増加により前年同期比で57百万円増加し、6億72百万円となりました。

 その結果、営業損益は、2億66百万円の利益(前年同期比206.9%増)となりました。

(経常損益)

 営業損益に加えて、受取配当金51百万円、雑収入4百万円の計上により、経常損益は3億21百万円の利益(前年同期比128.5%増)となりました。

(税引前当期純損益)

 税引前当期純損益は3億21百万円の利益(前年同期比102.6%増)となりました。

 

(当社の経営成績に重要な影響を与える要因)

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当社は、持続的な利益成長を目指した事業拡大の観点から、各事業における成長性や効率性の向上に取り組んでおり、「売上高」及び「経常利益」を重要な経営指標として位置づけております。また、積極的な人材育成への投資や適切な研究開発投資を進める一方、収益力及び資本効率の向上を図るため、ROEも重視しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1)経営成績等の状況の概要 「②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社の資本の財源及び資金の流動性ですが、資金需要については、営業活動で使用される運転資金他、設備投資や事業規模拡大に向けた戦略的投資であります。運転資金の調達については、自己資金および銀行借入れを主としており、戦略的投資に向けた資金調達については、資本業務提携や第三者割当増資等により調達しております。また、主要取引銀行4行との間で合計800百万円の当座貸越契約を締結しております(当事業年度末借入未実行残高800百万円)。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。この財務諸表の作成にあたり、会計上の見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき見積りを行っております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社は、AI技術をソフトウェア開発に活用するための研究開発活動を進めております。各事業とは別に技術開発を行っていることから、特定のセグメントに区分することが困難なため、セグメント別に記載しておりません。当事業年度の研究開発費の総額は1百万円であります。