当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは『グループの総合力を最大限に高め、社会のニーズにタイムリーに応える事業活動を展開する。以て盤石な経営基盤を構築し社会的貢献を希求する』ことを経営理念としております。
当社の創業は、鉛含有の白粉(おしろい)による健康被害が問題視されていた中、無鉛白粉の原料である酸化亜鉛の製造法の開発に成功したことから始まります。以来、思いやりの心と技術革新で社会の快適と安心を支える素材(マテリアル)づくりにこだわってきました。
培った化学技術により生まれる素材(マテリアル)をベースとし、各ステークホルダーとともに持続可能なやさしい未来社会を実現する、この目的に向かって創造を続ける会社であることが私たちのミッションです。
このミッションを実現するために、社員が日々ワクワクして働いてこそ、価値ある創造が継続できるとの考えより、働く社員が能動的で躍動感に溢れる「わくわくカンパニー」を目指しています。
(2)経営環境
当社グループは、国内連結子会社8社、国内非連結子会社1社、海外連結子会社8社、海外非連結子会社1社からなります。うち医療セグメントに分類される子会社は1社、その他は全て化学セグメントに属します。また、堺商事および堺商事傘下の海外子会社6社以外は製造子会社です。堺化学および各製造子会社は、特徴のある製品・技術ノウハウを保有し、そのビジネスモデル・ビジネス領域も多種多様です。各社の特徴を伸ばしていくとともにグループガバナンスの強化を行い、グループ間シナジーの発現、業務の効率化など最大のパフォーマンスが発揮できるよう努めています。
化学事業は、原燃料価格の高止まり、中国の景気減退等の影響を受けました。成長事業である電子材料は、PC、スマートフォンといった民生品の需要回復が低調に推移し、在庫調整はある程度進んだものの、誘電体、誘電体材料の販売は緩やかな回復にとどまりました。また、他のセグメントにおいても、景気低迷の影響で販売数量が伸びず、製造コストの上昇をもたらしました。
一方の、UVケアおよびメイク関連向けの化粧品材料は、国内向けは回復基調にあるものの、欧米での在庫調整や中国の景気減退の影響を受けました。
また、医薬品原薬・中間体、プラスチックレンズ向け製品などの有機化学品は、景気後退の影響を受けにくく、引き続き堅調に推移しました。
医療事業については、昨年度に続き、新型コロナ感染拡大による行動制限の影響が長引いたことに加え薬価改定の影響も受け、昨年同様の厳しい業績となりました。
当社グループ全体では、下半期からの景気回復による販売数量の増加を見込んでおりましたが、事業環境が低調に推移したことにより、前期比、当初見込み比ともに利益を大きく引き下げました。
(3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標
当社グループは上記経営環境を認識し、2019年にスタートさせた中期経営計『SAKAINNOVATION 2023』の数値目標達成と持続的成長を目指して取り組んでまいりましたが、最終年度の数値目標は達成することができませんでした。当社グループは2024年にスタートさせたグループ中期経営計画『変革・BEYOND2030』において変革を通じて弊社のミッションである「化学でやさしい未来づくり」 をこれまで以上に体現すべく、強い決意を以て取り組んでまいります。
『変革・BEYOND2030』で重点的に取り組む項目は以下のとおりとし、中長期的には「Smart Material®で社会に貢献できるエクセレントカンパニー」を目指します。
①高付加価値品シフトを企図した事業ポートフォリオ入替え
顔料級酸化チタンの事業終了を皮切りに、他製品の安定・成長事業化も進め、「変革・BEYOND2030」において効率化を検討する事業はなくします。
1.顔料級酸化チタン事業終了と構造改革
・顔料級酸化チタンは設備投資効率が低く、生産工程における環境負荷も高い事業のため、2026年3月期に事業を終了します
・顔料級酸化チタンの事業終了に向けて、構造改革(固定費削減、価格是正など)を進めます
2.成長事業へのリソース集中、M&Aによる事業拡大
・電子材料、化粧品材料に加えて、有機化学品を新たな成長ドライバーと位置づけ、既存事業の成長投資とM&A活用で、更なる利益成長を目指します
電子材料は、収益性の高いハイエンド品の更なる拡販と収益拡大が見込めるミドルエンド品のシェア取り込みで市場成長を超えた成長を実現していきます。
化粧品材料は、サンスクリーン剤の増産投資は一巡したことから、超微粒子酸化亜鉛で海外(特に欧州化粧品メーカー)の需要を取り込み、利益成長を目指します。さらに将来における収益貢献に向けたメイク用途材料の先行投資を実施します。
有機化学品は、市場内でも特に高い成長率が見込まれる高屈折タイプのメガネレンズ材料に対し、トップシェアポジションの強化に向けたリソース投入を行います。また、医薬品原薬・中間体は、増設による既存受託品の更なる拡販で、利益成長を目指します。
3.ベストオーナーの見極め、将来への種蒔き
グループ会社を含め、各事業のベストオーナーが当社であるかを見極めます。また、将来に向けた種蒔きのため、R&D活動を積極的に進めます。
医療事業は、品質問題を受け、GQP・GMP体制の立て直し、組織文化の変革を目指します。また、薬価改定の影響を受けない新規事業の育成、推進を進めます。
4.研究開発活動
当社グループではSmart Material®認定製品・サービスを2030年度までに5件上市することを目標としています。「自然を守る」、「高度情報化社会の発展を支える」、「人々の健康を支える」ために、環境・エネルギー、エレクトロニクス、ライフサイエンス・ヘルスケア分野において、Smart Material®認定製品・サービスで社会に貢献することを目指します。そのために、継続的な研究開発への投資を行っていきます。
②資本コストを上回るROEの達成・PBR改善
2027年3月期のROE目標8%の達成に向けて、事業ポートフォリオ変革による高付加価値品へのシフト、資産の圧縮、資本効率の向上を進め、PBRの改善へつなげます。
1.事業ポートフォリオ変革により高付加価値品へのシフト
成長事業への展開を加速し、顔料級酸化チタンの事業を2026年3月期に終了します。
2.資産の圧縮(キャッシュ・フロー改善)
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の改善をすることで、中期経営計画期間(3年間)で運転資金70億円の圧縮を実現します。また、有効活用されていない固定資産の売却を実施します。
3.資本効率の向上
成長事業へのM&Aを含む積極投資を行います。また、DOE3%を目安として、安定的、継続的な配当を行うとともに、機動的な自己株買いを実施します。
③マテリアリティ推進・非財務面の取り組み加速
1.品質・安全問題の再発防止策の徹底
子会社のカイゲンファーマにおける薬機法違反、湯本工場の爆発火災事故、小名浜事業所の火災等、重大な品質・安全問題が発生した事を重く受け止め、現在グループ全体で再発防止に向けた取り組みを進めております。
2. 人的資本経営の取り組みの推進
2024年4月にサスティナビリティ委員会の傘下に人的資本部会を設置しました。当社は、社員が個人・組織課題の解決に向けて主体的に動くことで、社員一人ひとりが自分・仲間を信頼し、持続的に成長できる強い企業になることを目指します。
④キャピタル・アロケーション
⑤主要なKPI一覧
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは2027年3月期を最終年度とする新中期経営計画「変革・BEYOND2030」をスタートさせました。当計画は、2030年から更にその先の将来に向けた「変革」のステージの3年間と位置づけております。今後は、収益性、投資効率が高い事業へ設備投資や人的資源を集中的に投下し、事業ポートフォリオを組み換え、高収益な企業へ変革するための構造改革を実施します。
また、成長事業として位置づけております化粧品材料事業につきましては、海外、特に欧州を中心に化粧品トップメーカーに対し販売を強化するとともに、UVケア商材だけではなくメイクアップ商材への先行投資を行ってまいります。また電子材料事業につきましては誘電体のハイエンド品やミドルエンド品のシェアアップによって、電子材料市場の市場成長を超える成長を目指します。
なお、2024年3月期末時点においても十分な自己資本を維持しております。加えて、長期借入やコミットメントライン等、金融機関から十分な支援を受けられていることから、当連結会計年度以降の営業キャッシュ・フローを含め、当面の資金繰りについても盤石な体制を維持できると考えております。経営環境の激変に備え全社的なコスト削減、棚卸資産の圧縮、キャッシュ・マネジメント・システムによるグループ資金の運用効率化等の対策を打ち、財務の健全性確保に努めると同時に、今後のビジネス環境の変化を注意深く見極め、適切に対応してまいります。
有機化学品や衛生材料は堅調を維持するものと見ておりますが、中国における景気減退、ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱とそれに伴う景気の停滞が継続しております。現状は、幅広い用途に使用されている酸化チタンやバリウム製品等がこれらの影響を大きく受けております。加えて、原燃料高騰と円安がもたらす製造コストの上昇は、主要な原料鉱石を輸入している当社にとって免れ得ないものと認識しており、適正な販売価格の設定、収率の改善、製造設備の集約等、更なる製造コスト削減により業績の維持向上に努めてまいります。
(化学事業)
電子材料(成長事業)
中国経済の景気低迷の長期化、それに伴うサプライチェーンの各所での積層セラミックコンデンサ(MLCC)の在庫調整の影響により、誘電体材料(高純度炭酸バリウム)と誘電体(チタン酸バリウム)の販売が当初計画より大幅に減少しました。2023年度下期以降、市場は徐々に回復していますが、完全回復には時間を要するものと見込まれます。市況を正しく判断し、機会を逃すことなく事業拡大してまいります。
また、誘電体材料は価格改定を進め採算是正に取り組み、誘電体は新製品によるハイエンド・ミドルエンド市場のシェア拡大を図ってまいります。
化粧品材料(成長事業)
中国のトラベルリテールの減速及び景気軟化の影響を受け、化粧品市場は低迷し、当社の主力であるUVケア化粧品材料で使用される超微粒子酸化亜鉛・酸化チタンもその影響を受けました。UVケア化粧品材料については、当社の表面処理技術ならびに処方提案力を訴求し、海外化粧品メーカーへの拡販に努めてまいります。また、UVケア化粧品材料のみならず、メイクアップ、スキンケア化粧品材料全般に、機能性、意匠性等に優れた無機材料を提供すべく、引き続き材料、処方開発に取り組むとともに、戦略的な設備投資も行ってまいります。
酸化チタン・亜鉛製品(効率化検討事業)
酸化チタンは、原燃料の高騰に一服感が出たものの、国内への海外安価品の流入があり、販売量が減少しました。それに伴い生産量を減少させたため製造原価の固定費が上昇し、採算性が悪化しました。設備投資効率が低く、生産工程における環境負荷の高い顔料級酸化チタン製品は、2026年3月期に事業を終了する予定です。これに伴い発生する余剰人員については事業所内で再配置を行い、成長事業に設備投資や人的資源を一層集中いたします。
樹脂添加剤(効率化検討事業)
塩ビ安定剤は、環境に優しい非鉛系安定剤の積極的な展開を図ると同時に、国内の鉛系安定剤からの撤退、併せて原材料高騰に合わせた適正価格への値上げを推進し、収益性の改善を継続的に行ってまいります。
また、塩ビ需要の拡大が期待できる海外(特に東南アジア地域)へは、当社の非鉛系安定剤の配合技術を駆使し、ベトナム、タイの現地法人と協力して、グローバルに新規採用、シェア拡大に努め、事業の海外シフト化を進めることで安定事業への移行を図ります。
衛生材料(安定事業)
紙おむつ、生理用ナプキン、ペットシート等の材料について、世界中の信頼できる供給元との関係を一層強化し、グローバルに販売活動を展開しております。
また、子会社であり、通気性フィルムを生産するPT.S&S HYGIENE SOLUTION(インドネシア)は、品質、コスト競争力の更なる向上に取り組んでおり、生産活動も行う商社として、お客様の信頼を高めてまいります。
有機化学品(安定事業)
有機イオウ製品およびリン製品は、高品質と安定供給に努めるとともに、伸長が予想されるメガネレンズ市場の中でも高屈折タイプ製品への積極的な展開を図ってまいります。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、受託品目、受託数量増加を視野に入れ、生産要員確保、品質管理等の体制整備を進めました。また、将来の新規案件獲得に向け、CDMO化に向けた研究設備の拡充、製造ラインの増強ならびに製品倉庫の拡充を進めており、2025年3月期中に稼働する予定です。
これら技術・品質を強みとしたニッチトップ戦略の推進により、無機化学と共に両翼を担う事業への成長を目指します。
触 媒(効率化検討事業)
衛生材料向け部材等の分野で水添石油樹脂の需要拡大が期待されています。ニッケル触媒はその製造工程で使用されており、顧客の品質要求に応えるべく、性能の改良や生産効率の向上により、他社との差別化を図ってまいります。
脱硝触媒は、環境対策としてごみ焼却炉施設の普及が進む東南アジア地域や中国等への営業活動を進めてまいります。
その他、低炭素化社会実現のためのカーボンニュートラルに関連した企業との協業で、新規触媒の開発と拡販にも注力してまいります。併せて、生産拠点整理・価格是正により安定事業への移行を図ります。
受託加工(安定事業)
受託加工事業に対する顧客からのニーズは、近年多種多様でより高度なものになり、それらニーズに対して迅速かつ確実に対応できるよう、保有設備の拡充、生産管理の高度化、人材育成等を図り、より信頼される受託体制を構築しています。また、昨今の原燃料や物流費の高騰等による採算悪化に対しては、製販一体となり在庫圧縮、原材料見直し、生産効率化等の取り組みを継続し改善に努めてまいります。
(医療事業)
当社子会社のカイゲンファーマ株式会社における品質不正に対する再発防止に向けた取り組みについて、全社組織の改編と仕組みの整備、リソース管理とジョブローテーションの推進、役職員に対する教育の強化、法令遵守管理体制の整備を進めております。当社からは医薬品のGMP管理の知見がある取締役を派遣し、改善の実施状況をモニタリングしております。
上記に取り組むとともに、医療用医薬品、医療機器、一般用医薬品、機能性食品ならびに美容医療向け製品等、これまで培った販路・商流を活用できる商品ラインアップの拡充に注力します。また、産学連携の枠組みを活用した大学との共同研究を積極的に推進するほか、新素材、新技術、新プラットフォームを有するスタートアップ企業を探索し、業務・資本提携を含めたビジネス協業関係の構築を図ります。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、需要が漸減する国内市場においては顧客ニーズへの対応力を強化する一方、輸出については韓国、台湾等への拡販に努め、国内外の販売合計で事業規模の維持を図っております。新型コロナウイルスの影響を受け集団検診の延期または受診控えにより販売量が減少しました。検診自体は、がんの早期発見の観点からもその必要性は変わりありませんが、コロナ禍前の状態には完全に戻らず、1割程度の減少が見られるほか、品質問題の影響で他社品への移行が見られました。業務改善により信頼回復に努めてシェアの回復を図ると共に、薬価加算を受けての価格転嫁により収益性の改善を目指します。
医療機器
内視鏡洗浄消毒器は、耳鼻咽喉科領域でのエビデンスを取得し、新たな領域として展開を進めております。消耗品の原材料高騰による影響は製品価格に転嫁することができ、収益性が改善しました。
2019年6月に上市した内視鏡用の粘膜下注入材「リフタルK」は、大学病院、官公立病院からクリニックまで営業強化を図った結果、目標とした30%のシェアに近づいてきており、更に拡販に注力してまいります。
また、胸部X線診断支援AIシステムと胸部CT診断支援AIシステム、下部消化管内視鏡診断支援AIシステムに加え、新たに開業医市場に適した胸部X線診断支援AIシステムの取扱いも予定しております。
緑内障検査装置「アイモscan」は健診施設向けに販売を行っております。学会等でも高評価で、緑内障等による視野異常の早期発見に貢献します。
一般用医薬品・その他
一般用医薬品の収益力強化と事業改革のため、販売ルートおよび商品ラインアップの整理、新商品と新商流の開拓などの活動を積極的に展開します。またかぜ薬「改源」が2024年に発売100周年を迎えることを記念して、生薬を配合した揉み出しタイプの入浴剤「改源の湯」(医薬部外品)を発売し、好評を博しています。
新事業領域として取り組んできた美容医療向け事業は、新型コロナウイルスの影響下にあっても紫外線対策サプリ「ソルプロ」シリーズを中心に順調に売上を伸ばしており、今後も新製品を投入し拡大を図ります。
また、エルゴチオネイン配合の認知症予防サプリメント「メモエル」は、自社ECサイトでの販売に加えて開始したB to Bビジネスの展開を進め、拡販に注力してまいります。
なお、以下に記す指標および目標ならびに実績値は提出会社単体のものです。グループの目標設定と運営ならびに集計については、今後取り組んでまいります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ
① ガバナンス
当社はサステナビリティならびにESG(環境・社会・ガバナンス)に関わる経営方針・戦略に関する重要事項について、取締役会による監視体制の下、リスクと機会の大きさを認識し適切な対応を検討し、実行する意思決定を行っています。社会課題に対するステークホルダーからの期待や要請に応えるべく、代表取締役が委員長となりサステナビリティ委員会(年2回以上開催)において事業戦略を鑑みた上で目標や戦略について議論し、進捗管理を実施しています。また、その内容は取締役会に報告しています。
② 戦略
当社は「化学でやさしい未来づくり」をミッションに掲げ、ESG経営の推進によって社会課題を解決し経済的価値も創出することを目指しています。それらは幅広いステークホルダーへ積極的に情報開示を行っています。
③ リスク管理
当社は、環境・社会・ガバナンスに関する重要課題(マテリアリティ)を特定し、全社横断的なマテリアリティマネジメントを通じて、リスク管理を実施しています。進捗についてはサステナビリティ委員会において審議しており、企業の存続と活動に必須の要件として主体的に取り組みます。
④ 指標と目標
当社はマテリアリティごとに指標と目標をKPIに設定し、上記ガバナンスにおいて各指標の進捗状況がモニタリングされ、結果に基づき取り組みに反映しています。
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テーマ |
マテリアリティ (重要課題) |
堺化学の主な取組み |
KPI |
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指標 |
目標 |
実績 |
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人々を幸せにする |
人材を育成し、成長を実感できる風土を醸成する |
挑戦する仕組み•能動的に行動する仕組みを整備する
ダイバーシティの推進 |
ストレスチェック実施結果 キャリアへの配慮項目 の偏差値 |
ストレスチェック実施会社の集計 による化学工業の偏差値を上回り、上位を目指す 化学工業偏差値 2022年度50.5 (当社実績2022年度47.5) |
化学工業偏差値2023年度50.7 (当社実績2023年度47.3) |
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働きやすい環境をつくる |
新人事制度の導入 働く環境(場所、時間)を整備する
活力のある職場環境づくり |
度数率(100万延実労働時間当たりの労働災害による死傷者数) 強度率(1,000延べ実労働時間当たりの延べ労働損失日数) DX推進 |
安全を第一に働く職場環境を整備 化学工業度数率2021年度1.07(当社実績2021年度0.69) 化学工業強度率2021年度0.02(当社実績2021年度0.00) DX推進の継続 |
化学工業度数率2022年度 1.16(当社実績2022年度 0.70) 化学工業強度率2022年度 0.06(当社実績2022年度 0.00) |
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地域社会に貢献する |
地域社会との対話
地域団体への協賛加盟 |
レスポンシブル・ケアなどに よる地域対話 協賛加盟団体での社会貢献活動への参画 |
年間1件以上
年間1件以上 |
渡辺下町区専門委員会、下川を考える会 泉ふるさと祭り、堺まつり,いわき踊り小名浜大会、いわき花火大会 いわきカーボンニュートラル社会連携共同講座 RC(レスポンシブル・ケア)堺泉北地区対話集会 etc. |
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地球環境を守る |
化学物質を適切に管理し、環境負荷の低減と製品安全性の向上を実現する |
燃料転換(重油一LNG) 高効率モーター、LED照明 への更新 太陽光発電パネルの設置 NH3、CO2、H2回収への取組み 公害防止と化学物質管理 レベ ル向上 |
CO2排出量削減率 (2013年度比) 重大な環境事故発生件数 |
2030年度30%削減
0件/年 |
2023年度32%削減
2023年度 0件/年 |
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産業廃棄物の排出量を削減する |
3R (Reduce Reuse Recycle) 推進 原燃料・生産プロセスの見直し 産業廃棄物の再資源化 |
産業廃棄物削減率 (2021年度比) |
2025年度25%削減 |
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生物多様性に配慮する |
処分場周辺におけるモニタリング活動の継続 CNLのボランタリークレジット により生物多様性に貢献する |
環境影響評価の事後評価として、動物、植物、生態系調査を実施 CNL導入 |
処分場工事に合わせた 調査の実施 CNL導入の継続 |
2023年度CNL導入の継続 |
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モノづくりで社会の課題を 解決する |
環境や社会の課題 解決につながる 製品やサービスを 創造する |
全固体電池材料、アンモニア合成触媒、マイクロプラスチックビーズ代替製品 5G関連(低膨張、放熱、低誘電損失、難燃)材料 カーボンリサイクル触媒、抗菌抗ウイルス材料 |
「Smart Materia®認定製品」開発件数 |
2030年度までに5件上市 |
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責任ある調達を推進する |
調達先への周知•協力依頼、取引先への監査など |
取引先への顧客満足度調査の依頼率 |
100% |
2023年度 100% |
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テーマ |
マテリアリティ (重要課題) |
堺化学の主な取組み |
KPI |
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指標 |
目標 |
実績 |
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透明で強固な経営体制を築 < |
取締役会の実効性を高める |
取締役実効性評価アンケートの 実施(毎年1回) アンケート結果に基づく改善の 実践 経営人材育成プランを作成 指名報酬委員会の運営 |
取締役会実効性評価アンケート結果を踏まえ ①抽出した課題の数 ②各課題について議論した回数および延べ時間数 ③導き出した対策数 ④対策の実行数 |
実効性アンケート結果からの課題抽出と改善の実施 |
2023年度 実効性アンケート結果からの課題抽出と改善を実施 |
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リスクを把握し対策を講じる |
リスクコンプライアンス教育・研修・周知活動の実施 委員会・部会の効果的な運営 |
重大なコンプライアンス違反件数 全社的リスク管理体制を維持できて いる |
0件/年 有効な状態を維持 |
2023年度 0件/年
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適時•適切に情報を 開示する |
IR•広報活動の活性化、危機管理広報の充実 |
統合報告書またはそれに準じた内容の情報作成と提供 |
2022年度分より、統合報告書またはそれに準じた内容の提供 |
2022年度分の発行は断念し、2023年度分を発行する |
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(2)気候変動
① ガバナンス
気候変動など経営上のリスクとなりうる外部環境問題に関しては、取締役会による監視体制の下、リスクと機会の大きさを認識し適切な対応を検討し、実行する意思決定を行っています。
気候変動など外部環境課題に与える影響や社会的責任などに関しては、影響を緩和し課題解決への寄与を拡大するため、代表取締役が委員長となりサステナビリティ委員会(年2回以上開催)において事業戦略を鑑みた上で気候変動に係る目標や戦略について議論し、進捗管理を実施しています。
② 戦略
1)2℃シナリオ:低炭素/脱炭素、カーボンリサイクル技術が普及しサステナブルな製品需要が増加。
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項目 |
環境変化 |
想定される状況 |
主な対応策 |
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移行 リスク |
CO2排出規制 |
燃料の脱炭素化必要性の高まり 低炭素排出原料•プロセスへの転換によるコストの増加 |
•カーボンクレジット付きLNG使用 •エネルギー使用のさらなる高効率化 •再生可能エネルギー導入拡大 •カーボンリサイクル技術導入拡大 •生産工程から排出される環境負荷低減を 見据えた事業構成、生産プロセスの見直し |
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低炭素排出製品への置換 |
化石燃料、石化由来製品 (プラスチック関連製品など)の需要減少 |
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顧客行動の変化 |
サプライチェーンの中で低炭素排出製品の要望の高まり |
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事業機会 |
気候変動を緩和する製品の需要増加 |
カーボンリサイクル、カーボンフリー燃料、 カーボン吸着、発電・蓄電関連製品の需要拡大 |
•脱炭素製品の開発 (二次電池材料、水電解材料、カーボン吸着材料、カーボンリサイクル触媒、アンモニア合成触媒) •電子•エネルギー材料の高機能化 (小型化、耐久性向上のための微粒子、 粒度分布均一材料) |
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次世代技術の進展 |
モビリティの電動化 エネルギー源としての水素、アンモニア活用 |
2)4℃シナリオ:低炭素/脱炭素、カーボンリサイクル技術が促進されず、異常気象の激甚化や平均気温の上昇の物理リスクが高まる。
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項目 |
環境変化 |
想定される状況 |
主な対応策 |
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物理 リスク |
異常気象の激甚化 |
生産拠点における風水害被害拡大 夏季の渇水や健康被害等により生産活動の停止、物流の遅延や分断による企業活動全般への被害多発 |
•シナリオに沿った生産拠点毎のBCPの策定 •最適な生産場所の検討、材料調達先の分散化 •健康被害(熱中症など)低減への対応強化 •ロボット化や自動化の推進など操業の無人化 |
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平均気温の上昇 |
熱中症対策、冷房コストの増加 適切な対応を実施しない場合の 労働生産性の低下 |
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事業機会 |
気候変動に適応する製品の需要増加 |
ヘルスケア商品の需要拡大 断熱・遮熱効果を有する製品の需要拡大 テレワークの拡大 抗菌抗ウイルス材料の需要拡大 |
•日焼け止めなど肌ケア商材の拡販 •断熱、遮熱効果材料の開発 •抗菌抗ウイルス材料の拡販 •5G、6G対応製品の拡販 •排水•浄化関連材料の開発 |
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原材料調達先の分散化 |
BCP対策による代替需要の機会増 |
③ リスク管理
当社は、環境・社会•ガバナンスに関する重要課題(マテリアリティ)を特定し、全社横断的なマテリアリティマネジメントを通じて、リスク管理を実施しています。気候変動への対応については、ステークホルダーおよび自社の観点から重要度が極めて高い課題としてサステナビリティ委員会において審議しており、企業の存続と活動に必須の要件として主体的に取り組みます。
④ 指標と目標
堺化学は、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、CO2排出削減の長期目標を設定しています。目標達成に向け、CO2排出目標をKPIに設定し、省エネ活動の推進、再生可能エネルギーの導入などの短・中・長期の時間軸での排出削減施策を進めていきます。
堺化学のカーボンニュートラル化に向けた移行イメージ
脱炭素化をイノベーションの実現に応じて進め、2050年のカーボンニュートラル化にチャレンジしていきます。
(3)人権尊重
当社グループは、創業当初より人々の安全で健康な暮らしに貢献する事業を行ってきました。経営ミッション「化学でやさしい未来づくり」は、当社の人々への想いを表現するものであり、これを実現するためには活動を行うすべての国・地域において、関連するステークホルダーの人権が尊重されることが重要であると考えています。当社グループは人権を尊重する責任を果たすべく、2022年10月に「堺化学グループの人権基本方針」を策定し、人権尊重の取り組みを推進しております。
① ガバナンス
サステナビリティ委員会の下部組織として人権部会を設置し、人権尊重取り組みの実行及びモニタリングを行っております。とりわけ顕著な人権リスクに対応するため、人権デューディリジェンスに関する計画、実行、モニタリングを中心として、年3回以上開催しています。また、その内容はサステナビリティ委員会に報告しています。
② 戦略
「国連ビジネスと人権に関する指導原則」および日本政府の国別行動計画(NAP)に基づき、特に顕著な人権リスクを「優先対応人権リスク」として特定のうえ、年度ごとに計画表を作成してPDCAサイクルに則った人権デューディリジェンス体制を構築してまいります。
③ リスク管理
2023年度は全グループ会社の取締役及び執行役員を対象とした意識調査を実施し、調査回答を踏まえて重要度評価を行った結果、重要度の高い人権リスクを当社グループの「優先対応人権リスク」として特定いたしました。また、顕在化した人権リスクに適切に対応するため、救済メカニズムの構築にも注力しております。
<優先対応人権リスク>
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テーマ |
優先対応人権リスク |
主な関連する ステークホルダー |
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詳細項目 |
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サプライチェーン上の人権 |
(1)サプライチェーンを 通じた人権課題 |
サプライチェーン上の人権課題 (児童労働、強制労働等) |
・サプライチェーン上の労働者 ・顧客 ・従業員 ・地域社会 |
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BtoC 事業における個人情報保護 |
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製品の安全性と適切な情報伝達 |
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天然資源の利用と環境への配慮 (水、エネルギー、産業廃棄物等) |
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賄賂と腐敗 |
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反社会的勢力との関係 |
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(2)責任ある鉱物調達 |
責任ある鉱物調達 |
・サプライチェーン上の労働者 ・地域社会 |
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(3)責任あるパーム油調達 |
責任あるパーム油調達 (脂肪酸含む) |
・サプライチェーン上の労働者 ・地域社会 |
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労働安全衛生 |
(4)安全衛生 |
安全衛生 (事故、労働災害等) |
・従業員 ・サプライチェーン上の労働者 |
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製品開発・試作時の安全配慮 |
・従業員 ・顧客 ・地域社会 |
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(5)化学物質の 適切な保管管理 |
化学物質の適切な保管管理 |
・従業員 |
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ダイバーシティと職場の人権 |
(6)メンタルヘルス |
メンタルヘルス (ハラスメント等) |
・従業員 ・サプライチェーン上の労働者 |
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(7)ダイバーシティの推進 |
ダイバーシティの推進 (女性活躍推進等) |
・従業員 |
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<重要度評価の方法>
各人権リスクを(ⅰ)人権への影響(深刻度)、(ⅱ)人権への影響(蓋然性)、(ⅲ)企業とのつながりの3軸で評価し、とりわけ人権リスクを考えるうえで重要となる(ⅰ)人権への影響(深刻度)と(ⅲ)企業とのつながりを重要視した「深刻度×つながり」リスクマップを作成いたしました。なお「深刻度×つながり」リスクマップは、デンマーク人権研究所の「人権優先度の弧(The Arc of Human Rights Priorities)」を参考にしております。
<救済メカニズム>
当社グループでは、企業内部通報制度としてヘルプラインを設置しており、通報者の秘密・匿名性の保護、不利益取り扱いの禁止を明確化したうえで、厳正に対処する体制を構築しております。内部通報制度に関してはp60「コーポレートガバナンスの充実に向けた取り組みの実施状況」をご確認ください。
また社外からの通報を受け付ける体制として、2022年11月に一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に正会員として入会いたしました。JaCERは「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠して、非司法的な苦情処理プラットフォームを構築し、専門的な立場から参加企業の苦情処理の支援・推進を行うことを目指す機構です。当社グループはJaCER通報窓口の活用をはじめ、より実効的な救済システムの構築に努めてまいります。
(4)人的資本
当社は、思いやりの心と技術革新で社会の快適と安心を支える素材を創造する「化学でやさしい未来づくり」をミッションに掲げています。そのミッションを達成するため、社員がワクワクして働き、様々なステークホルダーが幸せになれる会社、「わくわくカンパニー」を目指しています。
そのような組織になれるよう、私たちは、働く社員の成長を支援するため、以下のような社内環境を整備しております。
① 戦略
<人材育成基本方針>
私たちが掲げたミッションを実現するには、会社と働く人が成長し続ける必要があります。
そのため、以下の人材育成方針を策定しています。
1.仕事に関係する社内外の関係者とコミュニケーションを活発にして事業化意識力を高める
2.多様な人材が健やかに働ける柔軟な環境を整備する
3.多様性を確保するための雇用・育成を計画的に実施する
4.公的資格取得を奨励し自己啓発を促す
5.サステナブルな社会を実現していくための理解と、行動する社員への支援を実施する
<社内環境の整備にかかる具体的施策>
上記方針に基づき、新人事制度の運用とともに、以下の具体的施策を実践しています。
1.職種の統合とグローバル・エリア制の導入
当社は従来、職種を総合職と一般職とに区分していましたが、「基幹職」に統一し、仕事の幅を自ら広げ、新たなことにチャレンジする社員に厚く報いる制度に改めました。また、転居を伴う異動(転勤)を画一的に決めるのではなく、ライフステージに応じて生じる生活環境や価値観の変化に対応できるよう、転勤を自らの意思で選択できるグローバル・エリア制を導入しています。
2.ジョブローテーションとキャリア形成支援
当社は、人材育成の一環としてジョブローテーションを積極的に実施しています。専門性やスキルを磨き上げる一方で、他部署や他分野に対する理解を深めることも大切と考えています。特に経営人材の育成においては、様々な業務を経験して視野を広げ、視座を上げることが重要です。
また、全社員を対象に毎年自己申告書を提出してもらい、所属長や人事担当とのキャリア面談を通じて成長の支援を行っています。
3.ダイバーシティの推進
当社では、社員の誰もが働きやすい環境づくりに努めています。たとえば、家庭と仕事との両立支援として、育児時短勤務期間の延長や、男性育休の推進などに取り組んでいます。自社の取組み度合を測定し、維持向上させるため「くるみん」認定も取得しております。また、DEI促進の一環として、プレ管理職座談会、ママキャリア座談会、パパ育休座談会などを企画・開催し、社員同士で様々な働き方を模索する機会を設けるほか、ダイバーシティ通信を発行して社員の意識向上を図っています。
4.対話型講演会「カチラボ」の実施
「カチラボ」とは、仕事や人生の「価値」と「勝ち(=勝利)」を探求する意味を込めたもので、役員と社員、社員同士の対話集会です。役員のかつての失敗談や苦労話、人生観や仕事にかける思いなどを率直に語り、社員が質問したり意見を述べたりするイベントです。現在は登壇者を社員に広げ、海外での仕事や生活ぶりを紹介して意見交換しています。このような機会を通じて、役員や社員のさらなる成長につなげています。
5.経営者人材育成計画
当社は、次代の経営を担う人材の育成にも注力しています。毎年、執行役員が候補者を選定し、経営者に相応しい社外研修を受講させるとともに、社内では当人にとって負荷の高い「一皮むける経験」をさせる計画を策定・実施しています。人選および計画内容の検討、経過および結果報告については、経営職人材育成審議会ならびに指名報酬委員会にて審議・検証を行っております。
② 指標及び目標
1.キャリア採用者数の増強
迅速な組織レベルと業績向上を果たすには、社内に新しい風を吹き込み、周囲に良い影響を与える、優秀な人材を確保しなければなりません。当社は、新卒者の採用と教育に注力する一方で、経験豊富で即戦力となる経験者の採用も積極的に行っています。当社はキャリア採用者を新規採用の10~30%とすることを目標としています。
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2023年度 |
目標値 |
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新規採用者に占めるキャリア採用者の割合 (中途採用比率) |
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2.女性活躍の推進
当社における女性社員数は、現在のところ決して多くはありません。特に製造部門においては、基本的に交替勤務制としていることから、伝統的に男性社員が大勢を占めています。しかし、会社を多様かつ柔軟な組織にし、発展させていくには、女性社員の割合を増やしていく必要があると考えています。
そこで、研究・技術開発部門や管理部門、コーポレート部門などを中心に、積極的に女性を採用して組織レベルを向上させてまいります。
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2023年度 |
目標値( |
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※当社は、管理職等級を5段階、基幹職等級を6段階に分けております。「中核人材」とは、基幹職の上位3等級および全管理職を指します。
3.
当社は、男性社員に対し、育児休業の取得を促していますが、取得者数は十分に増加しておりません。これは、男性社員における育休取得の認知・理解が不足していること、業務や職場に与える影響を懸念していることなどが原因だと推測しています。
今後は、管理職をはじめ全社員に対して育休理解を促進するとともに、業務への影響低減に向けた相談・協議等を進めてまいります。
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年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
(目標数値) |
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取得率 |
3.7% |
10.5% |
32.1% |
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4.
当社は毎年ストレスチェックを実施しております。しかし、社員のエンゲージメント指標である「キャリアへの配慮項目」の数値が低迷しており、その向上のために前述の諸施策に取り組んでいます。全社員が生き生きと働ける組織づくりを目指してまいります。
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年 度 |
2023年度 |
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当社の偏差値 |
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化学工業の偏差値 |
50.7 |
※当社は、株式会社アドバンテッジリスクマネジメントが提供するストレスチェックを利用しています。上記偏差値は、同社が把握・算出したものです。
当社グループの事業その他のリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載いたします。ただし、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではありません。
また、本項においては、将来に関する事項も含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断しております。
(1)資材等の調達
重油や非鉄金属などの原燃料、カントリーリスクの比較的高い地域からの輸入に頼っている酸化チタンまたはバリウム製品の原料、国内においても調達先が限られる特殊な原料・資材等の価格高騰、供給の逼迫・遅延等が生じた場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらリスクに対し、特に輸入原料については極力複数の国、調達先を確保するように努めております。また、在庫量についても、仕入れの難易度、必要期間を考慮し、余裕を持った運用を実施しております。
(2)資金の調達
金融危機により金融機関からの調達が困難になる、または、金利高騰で支払い金利が増大することにより当社グループの事業継続に影響を及ぼす可能性があります。
これらリスクに対し、取引金融機関のシンジケーションによるコミットメントラインで金融サポート体制を強固なものにする、長期借り入れについては極力固定金利を採用し将来の支払金利負担を固定化する、キャッシュ・マネジメント・システムによりグループ内の資金効率を高めるなどの対応を実施しております。
(3)公的規制・コンプライアンス
当社グループは事業の遂行にあたって、様々な法令、規制の適用を受けております。加えて、事業活動を行っている国および地域が多岐にわたることから、それぞれ投資に関する許認可や輸出入規制のほか、商取引、労働、特許、租税、為替等の各種関係法令の適用が異なる場合があります。
これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁を受ける、顧客からの信頼を失うことで、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらに対し、当社ではコンプライアンスを「当社が行うあらゆる活動の局面において、関連する法令・条例・契約・社内規程等、明確に文書化されたルールを遵守するとともに法令の目的である社会的要請、社会通念および社会倫理等を尊重して行動すること」と定義し、コンプライアンス研修やコンプライアンスハンドブックの配付を通じ従業員の法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。また、公認会計士、弁護士、弁理士等の専門家とのコミュニケーションを適切に実施することで、これらリスクへの早期かつ的確な対応を心掛けております。
(4)環境規制
当社グループでは化学セグメントが事業の主体となっていることから、資源やエネルギーの大量消費による環境負荷が大きな問題の1つであります。よって環境負荷低減のための設備や管理体制の整備を図る一方、生産効率すなわち資源やエネルギーの原単位向上など、環境負荷の低減に取り組んでおります。当社グループのすべての製造拠点における排水規制(水質汚濁防止法等)に対して各拠点において専用設備を設置して窒素酸化物、リン等の排出物濃度モニタリングを実施し適切な管理を実施していますが、今後、環境税の導入や、環境関連規制の強化により大規模な設備投資等の必要が生じた場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5)為替レートの変動
当社グループの海外における事業展開に伴い、外貨建取引から発生する資産等の日本円換算額が影響を受ける可能性があり、換算時の為替レートが予想を超えて大幅に変動した場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社では化学セグメントにおける酸化チタン、バリウム製品の原料となる鉱石購入等の大口ドル建て取引に対し、予算レートに準じた為替予約を一定比率で実施するなど、為替変動リスクの低減に努めております。
(6)株式相場の変動
政策保有株式の多くは、市場価格のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、減損が発生し、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社コーポレートガバナンス基本方針において銘柄毎にその保有の目的や保有リスク・時価、配当利回り等を精査の上保有継続の合理性の確認および株式数の見直しを行っております。見直しの結果、継続して保有する必要が無いと判断した株式は売却を進めるなど、政策保有株式の縮減に努めております。
(7)海外における事業
当社グループが事業活動を行う国・地域は広範であり、特に新興国における法令・規制等の変化、テロ・戦争やその他の要因による政治・経済・社会的混乱、文化や習慣の違いに起因するトラブル発生等が予想されますが、こうしたカントリーリスクが顕在化する場合、当社グループの事業活動が制限される、一時的な業務停止などの悪影響が発生する可能性があります。
これに対し、比較的カントリーリスクの低い国への進出を選択していること、インドネシア、タイでは現地事情に詳しいパートナーとの合弁事業とすることによりリスクの低減を図っております。
(8)製造物責任
当社グループの製品は、自動車関連部品、電子機器、建材、化粧品、医薬品等の暮らしに身近なものから、社会インフラまで多くの分野で使われています。そのため何らかの原因で製品品質に問題が生じた場合、特に医薬品等においてはGQP、GMPにおいて不正逸脱等の問題が発生した場合には、販売中止・製品の回収や社会的信頼の喪失などにより、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。
これらに対し、原料調達から生産、お客様に製品をお届けするまでサプライチェーン全体を管理することで品質を保証し、より一層の顧客満足向上に努めるとともに、万が一に備え製造物責任保険に加入しています。また当社グループでは品質担当部門による「グループ品質連絡会」を実施、品質に関する情報を共有し、製品品質の問題発生の予防に努めています。
(9)訴訟
国内および海外事業に関連して、訴訟の対象となるリスクがあり、多額の損害賠償請求訴訟等が提起された場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。当社では契約書を締結する前に必ず法務担当部門が契約審査を行い取引先との協議により当社リスクの低減を図り、社内手続きを経たうえで契約締結を進めております。
(10)自然災害・事故災害の影響
地震・台風・津波・風水害・火災・有害物質の流出等の災害により事業所等の閉鎖や事業活動を停止する可能性があります。
これに対し、当社では事業継続管理システム規程を制定し事業活動の復旧・継続に関する基本方針、基本的事項を定めております。また、安否確認システムにより従業員およびその家族の安否を迅速に確認出来る体制を構築しております。さらに、過去に起こした湯本工場爆発火災事故を教訓に、5月11日を「安全への誓い」として毎年講演会や安全教育を実施し啓発活動に取り組んでいます。
生産活動の中断によって生じる悪影響を最小限に抑えるため、全設備において定期的な防災点検および設備保守を行っておりますが、想定外の大規模災害(大地震・津波、停電またはその他の混乱を含む)が発生した場合、その影響を完全に予防または軽減することはできません。また、製品によっては、代替生産できないものもあり、一時的または長期にわたる生産の中断があった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11)システム障害の影響
社内および当社グループ間のネットワークシステムについては、情報セキュリティ規程に則りシステムの更新、EDR(Endpoint Detection and Response)等ウイルスやハッカーの侵入・攻撃に対する防御システムの導入のほか、定期的な保守点検を実施しております。しかし、未知のコンピュータウィルスの侵入や情報への不正アクセス、突発的な事故等により、ハードまたはソフトウエア障害もしくはネットワーク障害等が発生し、長期間にわたり正常に機能しなくなった場合、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(12)情報漏洩
営業、技術、研究など事業に関連する機密情報については、情報管理規程に基づき適切な運用に努めるとともに、当社グループ全従業員に対し情報管理についての研修を実施しております。しかし、予期せぬ事態により情報が流失した場合、被害を受けた企業および個人に対して損害賠償責任を負うとともに、社会的信用の失墜を招き、当社グループの事業やイメージに影響を及ぼす可能性があります。
(13)新型コロナウイルス等のパンデミック
新型コロナウイルス等のパンデミックにより、当社グループにおいて工場、事務所閉鎖が生じ、事業継続に影響が出る可能性があります。これに対し検温、マスクの着用、アルコール消毒液の設置、工場や建物への出入管理の厳格化、出張や会議の制限およびWeb会議システム等の活用、時差出勤やテレワークの実施など、顧客、調達先、社員とその家族の安全確保ならびに感染予防と拡大防止に努め、事業継続が可能となる施策を制定し、的確な対応を実施してまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績
当連結会計年度における当社グループの経営成績は次のとおりであります。
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2024年3月期 |
前連結会計年度比 |
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売上高(百万円) |
82,105 |
△2.1% |
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営業利益(百万円) |
2,942 |
△33.2% |
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経常利益(百万円) |
3,066 |
△36.8% |
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親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円) |
△7,092 |
- |
当社グループは、2019年にスタートさせた中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の数値目標達成と持続的成長を目指して取り組んでまいりましたが、最終年度の数値目標は達成することができませんでした。
化学事業は、原燃料価格の高止まり、中国の景気減退等の影響を受けました。成長事業である電子材料は、PC、スマートフォンといった民生品の需要回復が低調に推移し、在庫調整はある程度進んだものの、誘電体、誘電体材料の販売は緩やかな回復にとどまりました。また、他のセグメントにおいても、景気低迷の影響で販売数量が伸びず、製造コストの上昇をもたらしました。
一方の、UVケアおよびメイク関連向けの化粧品材料は、国内向けは回復基調にあるものの、欧米での在庫調整や中国の景気減退の影響を受けました。
また、医薬品原薬・中間体、プラスチックレンズ向け製品などの有機化学品は、景気減退の影響を受けにくく、引き続き堅調に推移しました。
医療事業については、昨年度に続き、新型コロナ感染拡大による行動制限の影響が長引いたことに加え薬価改定の影響も受け、昨年同様の厳しい業績となりました。
加えて、減損の兆候が認められる一部の固定資産の減損処理を行った結果、6,661百万円を減損損失として計上いたしました。
この結果、売上高は前連結会計年度比2.1%減の82,105百万円、営業利益は前連結会計年度比33.2%減の2,942百万円、経常利益は前連結会計年度比36.8%減の3,066百万円、親会社株主に帰属する当期純損失は7,092百万円となりました。
セグメントの業績は以下のとおりです。
なお、各セグメントの営業利益は全社費用等調整前の金額であります。
(化学事業)
売上高は前連結会計年度比2.5%減の74,110百万円となり、営業利益は前連結会計年度比20.2%減の5,083百万円となりました。
電子材料(成長事業)
誘電体材料(高純度炭酸バリウム)と誘電体(チタン酸バリウム)は市況の悪化に伴うMLCCの在庫調整に伴い、売上数量は減少したものの、価格改定の実施効果もあり、売上高については前年並みの水準となりました。
化粧品材料(成長事業)
UVケア化粧品材料の超微粒子酸化亜鉛・酸化チタンは、欧米での在庫調整や中国の景気後退の影響で、売上高・利益ともに減少しました。
酸化チタン・亜鉛製品(効率化検討事業)
酸化チタンは、期初では海外安価品の流入により価格改定が進まなかったことおよび工場設備の火災トラブルなどから、採算性が悪化しました。しかしながら、期中から副産物および二次加工品も含めた値上げを推進し、採算性が改善しました。
亜鉛製品は、一部製品で採算是正を実施しましたが、販売数量の減少、国内亜鉛建値の相場下落により売上高は減少しました。
樹脂添加剤(効率化検討事業)
国内向けにおいては、塩ビ用安定剤のうち、住宅、IT向けが低調で売上高・利益ともに減少しました。原材料高騰に対応すべく価格改定を実施した結果、下期からは収益が改善してきましたが、年間を通しては売上高・利益とも減少しました。
海外においては、中国向け製品は住宅関連の景気低迷で、売上高・利益ともに減少しました。一方、東南アジア向け製品は、市場成長率は鈍化しているものの、新規拡販により出荷量は増加しました。また価格改定実施効果もあり、売上高は前年並みの水準を維持し、利益は増加しました。
衛生材料(安定事業)
日本国内では円安による輸入商材の競争力低下に苦戦し、海外でも物資高騰下のオムツ市況の停滞感によって販売数量は伸び悩んだものの、製造収率の改善や物流コスト削減等により利益は増加しました。
有機化学品(安定事業)
有機イオウ製品については、販売は安定しており、また円安効果から販売価格が上昇し、売上高は微増しました。しかし利益は、原燃料高騰の影響を受け減少しました。有機リン製品については、原燃料価格の高騰分の価格転嫁に取り組みましたが、時期が遅れ、収益を圧迫しました。
医薬品原薬・中間体の生産受託は、開発品のスポット生産・販売はあったものの、主力中間体の販売量の減少、受託製品の原価率の違いや、原燃料の高騰により、売上高・利益ともに減少しました。
触 媒(効率化検討事業)
水添石油樹脂向けなどで使用されるニッケル触媒は、主要顧客の定期修理の影響もあり出荷数量は減少しましたが、価格改定を進めたこともあり、利益は増加しました。
火力発電所やごみ焼却施設で使用される脱硝触媒は、前年にあった大型の海外のごみ焼却施設向け案件が一服し、出荷数量が減少したため、売上高・利益ともに減少しました。
受託加工(安定事業)
建材用途やOA機器関連の需要減少、浴用剤の販売不振などの影響もありましたが、自動車関連については既存製品が堅調に推移したこと等により、売上高は前年並みの水準を維持しました。
混合、濾過水洗、乾燥、焼成等の工程受託については、大口顧客の販売数量の減少により売上高が減少しましたが、多方面の事業分野の新規受託案件が増加し、収益が回復しました。
(医療事業)
売上高は前連結会計年度比1.6%増の7,995百万円となりましたが、営業利益は前連結会計年度比68.1%減の86百万円となりました。
医療用医薬品
バリウム造影剤は、2016年度厚生労働省発出の「がん検診実施のためのガイドライン」による受診間隔の延長および受診年齢の引き上げ、胃内視鏡検査への移行等厳しい環境のもと、大口検診機関のニーズ対応を強化して市場シェア拡大に努め、国内販売の減少を最小限にとどめるとともに、韓国・台湾への輸出を強化しました。新型コロナウイルスの5類感染症指定後も検診者数は完全には回復せず、また品質問題による他社移行や原材料の高騰により、売上高・利益ともに減少しました。
消化性潰瘍用剤「アルロイドG」は薬価引き下げ、販売数量の減少により売上高が減少、加えて原材料の高騰の影響を受け、利益も減少しました。
医療機器
半導体不足が解消し、機器本体の生産は計画通り推移しました。納入実績はリニューアル機の投入効果もあり、売上高が大きく増加しました。
また内視鏡手術用の粘膜下注入材「リフタルK」は、売上高が増加しました。
一般用医薬品・その他
医療用医薬品の供給不足を受け、一般用医薬品である「改源」を含む咳止め薬等が好調に推移し、売上高・利益ともに増加しました。
新規事業として位置付けている美容医療機関向けのサプリ事業は引き続き好調で、売上高・利益ともに増加しました。
認知症予防の機能性表示食品素材である「タモギ茸エキス(エルゴチオネイン)」の製造受託の売上高は減少しました。
② 財政状態
当連結会計年度における当社グループの財政状態は次のとおりであります。
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当連結会計年度末 2024年3月末 |
前連結会計年度末 増減 |
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総資産(百万円) |
125,445 |
△2,576 |
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負債合計(百万円) |
49,978 |
6,674 |
|
純資産合計(百万円) |
75,466 |
△9,251 |
|
自己資本比率 |
59.3% |
△3.6ポイント |
(資産)
当連結会計年度末における総資産は125,445百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,576百万円減少いたしました。
主な増減項目として、流動資産においては、現金及び預金が4,180百万円、受取手形及び売掛金が2,015百万円、それぞれ増加いたしました。また、固定資産においては機械装置及び運搬具が2,440百万円、建物及び構築物が1,575百万円それぞれ減少いたしました。
・現金及び預金の増加は、運転資金の借入を行ったことによるものです。
・売上債権の増加は、販売不振により前連結会計年度末の売上債権金額が低位であったことや、当連結会計年度末にかけて電子材料市況の回復等により出荷が増えたことによるものです。
・固定資産の減少は、当社および当社の連結子会社において、減損損失を計上したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は49,978百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,674百万円増加いたしました。
主な増減項目として、転換社債型新株予約権付社債が3,000百万円、短期借入金が1,933百万円、繰延税金負債が996百万円、長期借入金が462百万円それぞれ増加いたしました。
・転換社債型新株予約権付社債の増加は、2023年6月7日付にてSH1,L.P.との間で、第三者割当にかかる引受契約を締結し、新たに発行したことによるものです。
・短期借入金の増加は、運転資金の借入によるものです。
・繰延税金負債の増加は、その他有価証券評価差額金に係る税効果額が増加したことによるものです。
・長期借入金の増加は、新規借入を4,700百万円行ったことおよび、3,314百万円の返済および短期借入金へ924百万円振替を行ったことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は75,466百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,251百万円減少いたしました。この結果、自己資本比率は59.3%(前連結会計年度末は62.9%)となりました。
主な増減項目として、利益剰余金が8,148百万円、非支配株主持分が3,155百万円それぞれ減少し、その他有価証券評価差額金が1,086百万円増加いたしました。
・利益剰余金の主な減少は、親会社株主に帰属する当期純損失7,092百万円および剰余金の配当1,053百万円によるものです。
・非支配株主持分の減少は、連結子会社を完全子会社化したことによるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における当社グループのキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。
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2024年3月期 |
前連結会計年度 増減 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
6,866 |
6,092 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
△3,963 |
△1,342 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円) |
1,259 |
△2,023 |
|
現金及び現金同等物の増減額(百万円) |
4,286 |
2,648 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローの収入は6,866百万円となり、前連結会計年度に比べ6,092百万円増加いたしました。これは、主に税金等調整前当期純利益が8,681百万円減少したことのほか、棚卸資産の増減額が8,335百万円増加し、減損損失が6,621百万円増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローの支出は3,963百万円となり、前連結会計年度に比べ支出額は1,342百万円増加いたしました。これは、主に有形固定資産取得による支出が1,366百万円増加したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において、財務活動によるキャッシュ・フローの収入は1,259百万円となり、前連結会計年度に比べ2,023百万円減少いたしました。これは、主に短期借入金の実行による収入が4,672百万円減少したことのほか、連結範囲変更を伴わない子会社株式の追加取得による支出が3,067百万円増加し、社債の発行による収入が3,000百万円増加したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は16,475百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
(生産実績)
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
化学 |
56,184 |
3.8 |
|
医療 |
5,973 |
△1.2 |
|
合計 |
62,157 |
3.3 |
(注)1 金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 セグメント別の生産高を正確に把握することは困難なため、概算値で表示しております。
(受注実績)
当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。
(販売実績)
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
化学 |
74,110 |
△2.5 |
|
医療 |
7,995 |
1.6 |
|
合計 |
82,105 |
△2.1 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、いずれの相手先についても当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績の分析
経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態」に記載しています。
③ キャッシュ・フローの状況分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フロー」に記載しています。
グループの資金調達については堺商事及び一部の借り入れを除き、当社にて一括調達し、グループファイナンスにて関係会社へ必要な資金を供与しています。
調達方法は取引金融機関が組成するシンジケート団によるコミットメントラインからの短期運転資金と個別取引金融機関からの長期設備資金融資の2種類であります。近時は旺盛な設備投資によるキャッシュ・フロー不足分を補うための長期借り入れを増やしており、当面この傾向は続くものと考えます。現時点では、安定的な財務基盤を背景に取引金融機関の当社に対する融資姿勢に変化なく、スムーズな資金調達を実施しております。
一方、堺商事及び海外子会社を除く国内関係会社を結んだキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ各社の流動預金を当社に集中、グループとしての資金効率アップに取り組んでおります。
また、当連結会計年度末における短期借入金の残高は15,108百万円、長期借入金の残高は8,930百万円、現金及び現金同等物の残高は16,475百万円となっております。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
1.棚卸資産の評価
当社グループでは棚卸資産の評価に関して、取得原価を基礎としながら、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額は、直近の販売実績による単価が当面継続すると仮定し、販売単価から販売に要する経費を控除した金額として見積もっております。
また、営業循環過程から外れた滞留棚卸資産については、滞留品の処分・販売状況がこれまでと大きく変わらないと仮定し、過去の処分・販売実績をもとに見込まれる損失額を見積もっております。
随時販売状況を見ながら生産調整を行っておりますので、滞留棚卸資産が急激に増加することはないと考えております。販売単価の下落に関しても、当社グループは多岐にわたる製品を製造販売しており、影響は限定的であると考えております。
2.固定資産の減損会計
当社グループでは資産又は資産グループの収益性が低下し、帳簿価額が回収不能となるような兆候がある場合に、当該資産又は資産グループの回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)を見積り、回収可能価額が帳簿価額を下回っていた場合は、減損損失を計上しております。
回収可能価額は、事業計画や市場環境の変化により、その見積り金額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、追加の減損処理が必要になる可能性があります。
3.退職給付引当金
当社では退職給付引当金は、退職金制度ごとに退職給付債務の期末残高から年金資産の期末残高を控除して計算しております。退職給付債務及び費用は、割引率、退職率、予想昇給率などの計算基礎を見積り、年金数理計算により計算しております。割引率は、期末における優良社債の利回りに基づき決定しております。割引率が低下した場合、退職給付債務が増加しますが、数理計算上の差異として発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。また、退職率、予想昇給率は当社の過去の実績をもとに、今後も同様の推移が継続すると仮定して決定しております。
年金資産は期待運用収益率を見積り、退職給付費用の計算に反映させております。期待運用収益率は、金融市場が比較的安定しており、過去の運用実績が今後も継続すると仮定して決定しております。実際の運用実績が期待運用収益率を下回った場合、割引率の低下と同様、数理計算上の差異が発生しますが、発生の翌連結会計年度から一定の年数(5年)による定額法で費用処理されます。
(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度における中期経営計画『SAKAINNOVATION 2023』の達成状況は次のとおりであります。
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|
2020年3月期 |
2021年3月期 |
2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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営業利益(百万円) |
4,015 |
4,304 |
7,494 |
4,407 |
2,942 |
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ROE(%) |
3.3 |
△3.6 |
8.7 |
2.9 |
△9.2 |
(業務提携)
当社は、2023年5月22日開催の取締役会において、以下の契約を締結することを決議し、同日付にて締結いたしました。
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会社名 |
契約の名称 |
契約内容 |
契約期間 |
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IAパートナーズ株式会社 |
業務提携契約 |
当社グループの企業価値向上に向けた、下記①~④を中心とした支援 ①次期中期経営計画策定支援、②ポートフォリオ戦略・M&A、③財務・IR戦略、④QCD改善・顧客戦略 |
自 2023年5月22日 至 2026年5月21日 |
(第三者割当による新株予約権付社債及び新株予約権の発行)
当社は、2023年5月22日開催の取締役会において、第三者割当によりSH1, L.P.に第4回転換社債型新株予約権付社債及び第4回新株予約権の発行(以下「本第三者割当」といいます。)を実施することについて決議いたしました。また、2023年6月7日付にてSH1, L.P.との間で、本第三者割当にかかる引受契約を締結し、払込期日である2023年6月16日までに払込が完了いたしました。
詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況(2)新株予約権等の状況 ③その他の新株予約権等の状況」に記載のとおりであります。
(連結子会社の吸収合併)
当社は、2023年12月22日開催の取締役会において、当社の完全子会社であるSC有機化学株式会社を吸収合併することを決議し、2024年4月1日付で吸収合併を行いました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループの研究開発活動については、研究開発本部、経営企画部、営業本部が連携してグループ会社との協力体制を深め、有望開発品の上市に向けてスピードアップを図っております。2021年9月に研究開発体制を変更し、有望なテーマについて柔軟かつ迅速にリソースの最適配分を行い、早期上市を目指す体制としました。さらには、2023年10月に研究開発方針SmartMaterial®を策定し、新規テーマの探索範囲をより明確化し、初期検討を加速させています。また、各グループ会社の開発部門でも取り扱い製品の品質向上あるいは新製品上市やプロセス改善のための研究開発を行っております。
中央研究所では、当社グループが得意とする粉体プロセシング技術を核として、また、大学や公的研究機関との産学連携も視野に入れて、機能性材料の開発を進めております。主には、各種発光材料、水電解触媒、5G/6G向け低誘電材料等の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費用は、
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりです。
(化学)
(1) 電子材料
電子材料事業においては、電子材料用途向けに誘電体の開発を行っております。特に高周波伝送向け誘電体の開発に注力しており、粒子合成技術と表面処理技術を核として、低誘電率から高誘電率の材料開発をおこなっています。チタン酸バリウムに関しては、積層セラミックコンデンサの小型化・高容量化、自動車部品の高信頼性要求に水熱合成法の特長である微粒子・高結晶・粒度均一な製品を積極的に提案しています。より一層、信頼性が求められる分野にはCaを所定の比率で含む微細かつ粒度均一性の高いチタン酸バリウムカルシウムの開発を進めています。また、誘電体材料についてもさらなる高純度化および微粒子化を進めています。
(2) 酸化チタン・亜鉛製品
化粧品材料事業においては、従来のUVケア分野に加え、用途拡大としてメイクアップ化粧品向けにも注力しています。肌触りの良化を目指して開発した「六角板状酸化亜鉛XZシリーズ」、「板状集積型球状酸化亜鉛のCANDYZINC」や肌を鮮やかに見せる新機能性酸化亜鉛「化粧品用無機蛍光材料Lumate G」は、当社の粉体制御技術を駆使して開発したユニークな材料であり、上市して間もないものの順調に採用が進んでおります。また、開発を進めてきた高分散性酸化亜鉛「REAROUZ」は高い透明性とUV遮蔽性を合わせ持ち、低い亜鉛溶出量により生態系への影響を抑えるなどの特徴的な品質を有しています。その効果が認められ、採用に向けて顧客での評価が加速しております。
海洋環境、生態系への悪影響が懸念されているマイクロプラスチックビーズの不使用が加速しております。その代替品として、天然鉱物由来の安全性で環境負荷の少ない球状硫酸バリウム「ばりまる」、球状炭酸カルシウム「かるまる」を提案しています。また、幅広い化粧品に配合しやすくした表面処理グレードも取り揃えました。
一方、5Gネットワークの拡大や自動車のEV化による電子基板等の熱マネジメントに対する需要増大に伴い、放熱フィラーとして「大粒子酸化亜鉛LPZINCシリーズ」の開発も進めております。
(3) 樹脂添加剤
当社が得意とする表面処理技術・粒子制御技術をハイドロタルサイトや塩化ビニル安定剤原料に応用し、特殊ハイドロタルサイト、独自性の高い塩化ビニル安定剤を展開し、性能の差別化に注力しております。同時にハイドロタルサイトを含め、各種配合剤の自社生産化や高効率化により、コストパフォーマンスに優れる製品の開発を進めております。
(4) 有機化学品
イオウを含む有機化合物合成技術をベースとして、電子材料、光学材料などの開発に取り組んでおり、耐水性や柔軟性に優れたMulthiol(マルチオール)シリーズや多官能チオール製品群の製品化を進めています。
(5) 触媒
水素社会を目指した、水電解触媒の開発に注力しています。一例である固体高分子形水電解触媒では、希少なイリジウム触媒の使用量を低減可能な触媒を開発し、サンプルワークを進めています。環境・エネルギー・化学プロセスは当社の重要な研究開発分野であり、これからの水素エネルギー社会が求める技術開発に貢献していくよう取り組んでまいります。
一方、環境負荷の低減に特化した触媒の開発にも取り組んでおります。化学プロセス分野では、脱水素反応、水素添加反応用触媒として有害成分であるクロムを含有しない銅系触媒の開発に注力しており、ポリエステル重合用触媒としてはアンチモンのような重金属を含有しないチタン系触媒の開発を進めております。
(6) 受託加工
現代社会に求められる機能性を付与した分散加工製品開発として、機能性フィラーの分散に取り組んでいます。
IT・IoT技術の発展に伴い利用される電子材料、地球温暖化に対応する遮熱性能を持った製品や脱炭素に貢献するバイオマス原料を利用したマスターバッチなどの開発案件に取り組むと共に新規分野として繊維向け抗菌製品の開発も開始しました。合わせて分散加工のスペシャリストとして、これまで培ってきた分散技術のノウハウを次世代に残す技術伝承にも取り組んでいます。
なお、化学事業に係る研究開発費用は
(医療)
健診領域において、スタートアップ企業との協業により、胸部X線・CT、下部内視鏡の診断支援AIなど、さらなるラインナップの拡充を進め、画像診断の精度向上や新たな価値の創造への貢献が期待されます。
また、薬事承認を受けたすい臓がん検査薬は、早期発見が難しいと言われるすい臓がん検査への貢献が期待され、現在上市に向け各関係先と協議中です。
ヘルスケア分野では、フレグランスサプリメント「アプローラ」シリーズの新規ラインナップとして、女性のデリケートゾーンのための「アプローラDジェル」を発売しました。
また、産学連携の枠組みを活用した複数の共同開発を行い、新規事業拡大に積極的に取り組んでおります。
なお、医療事業に係る研究開発費用は