文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、放送の公共的使命と社会的責任を常に認識し、メディア・コンテンツおよび都市開発・観光を中心に幅広い事業活動を通じて、国民の皆様の豊かな生活に貢献することを経営の基本方針としております。
当社がグループの成長戦略として2023年5月に公表した「“拡がる”フジ・メディア・ホールディングス 中期グループビジョン2023」では、番組やエンタテインメントのコンテンツはもちろん、暮らしの中で触れる商品・サービス・情報や生活空間、あるいは非日常的な体験など“人々が心を潤し生活を豊かにするすべてのもの”を当社グループが提供していく「コンテンツ」と捉えています。生活スタイルの多様化が加速する中、視聴者やユーザーの皆様ひとりひとりの細分化したニーズに応えていくため、「コンテンツ」のラインナップを充実させるとともに、様々なメディアや販路を通じて当社グループが提供するコンテンツやサービスの領域を拡げ、ビジネス圏の拡張を図ることにより、グループ事業の一層の成長を目指してまいります。当社グループでは、中期グループビジョンのもと、2025年度に連結営業利益400億円を目指します。
メディア・コンテンツ事業では、視聴率の向上に加え、新たな広告商品やセールス手法の開発等により地上波放送やBS放送の広告媒体としての価値向上を図ります。そして視聴者・ユーザーから広く支持されるヒットコンテンツを創るため、人材育成や企画制作力を発揮できる環境の整備に努めるとともに、ドラマやアニメ、楽曲、コミックなど様々なジャンルで知的財産権(IP)の開発や取得を進め、コンテンツビジネス強化のための投資を拡大していく方針です。
市場の拡大が期待できる配信ビジネスでは、㈱フジテレビジョンが、TVer等の広告付き無料配信(AVOD)で2023年度に2年連続で再生数・UB(ユニークブラウザ)数・視聴時間の3冠を達成し、2023年度は配信広告収入も大幅増収となりました。会員数が順調に拡大基調にある有料配信のFOD、さらに外部プラットフォームへの配信権販売等と合わせ、コンテンツへのニーズの拡大を的確に捉えることで一層の成長を図ります。また㈱ニッポン放送や㈱ポニーキャニオンなどグループ各社においても、豊富なコンテンツを活用し、配信やインターネット、またイベントやライツ等のコンテンツ関連ビジネスの拡大を推進していきます。
新領域ではウェブメディアに注力しており、「grape(グレイプ)」、「FNNプライムオンライン」に続き、本年2月に「めざましmedia」がスタートしました。今後も各ウェブメディア等を通じて視聴者・ユーザーの皆様との新たな接点の開拓を目指すほか、コンテンツ領域での海外マーケットへの進出をグループ各社で加速するなど、さらなるビジネスチャンスを創出してまいります。
都市開発・観光事業は、㈱サンケイビルが2023年度に過去最高益を記録しました。㈱サンケイビルでは、オフィスビル、レジデンス、ホテル、物流施設、データセンターなど多様なアセットへの投資でビジネス領域の拡大を図ってまいります。引き続き、2023年3月に実施した200億円の増資をもとに、一定の財務規律を保ちながら投資を拡充し、大規模な開発案件の発掘や新たなタイプのアセットの開拓も含めて事業規模を拡大していく考えです。
観光分野では、㈱グランビスタホテル&リゾートが拡大する国内の観光需要およびインバウンド需要を取り込み、主力のホテル事業が好調に推移しています。本年6月には再整備事業を進めてきた「神戸須磨シーワールド・神戸須磨シーワールドホテル」がグランドオープンしました。観光事業は今後も我が国の成長産業として拡大が見込まれており、一層の成長を目指してまいります。
当社グループは、利益の獲得や外部借入、保有資産の見直し等によるキャッシュの創出をもとに成長投資を進めます。同時に、株主還元を重視し、安定的な配当の継続とともに資本効率の改善を目指します。2023年度は創出したキャッシュをもとに、成長投資とともに総額約100億円の自己株式を取得し、本年3月にはさらに150億円を上限とする自己株式の取得を決議しました。また1株当たりの配当金は、2024年3月期は普通配当で前期の40円から48円への増配、さらに2025年3月期は50円への増配を予想しています。
本年5月には、昨年公表した中期グループビジョンに基づく資本政策の考え方を公表しました。2030年度までに政策保有株式を純資産の20%未満とすることを目標とし、保有資産の見直しによるキャッシュの創出と成長投資によって利益を拡大してまいります。さらに、継続的な自己株式取得等の取り組みを通じて、業績水準を高めながら最適な資産配分を行うことで資本収益性を高め、ROE5%以上を目標とし、また、PBRの向上を目指します。
当社グループの各事業は、多くのステークホルダーの皆様との良好な関係に基づいて成り立っており、サステナビリティの取り組みは永続的な事業運営のために大変重要と考えています。持続可能な社会の実現に向けて、グループの様々な事業活動が地球環境に与える影響を認識し、負荷の軽減に努めており、㈱フジテレビジョンでは本社ビルと湾岸スタジオにおいて目標としていた2023年度の実質再エネ電力使用率100%を達成しました。
また、各事業のお客さまに質の高い番組コンテンツ、サービス、製品をお届けしていくために、お取引先や協力会社、番組にご出演くださる皆様との信頼関係を堅持し、従業員・スタッフが安心して活躍できる環境を整えてまいります。2023年11月には、人権を尊重して事業活動に取り組む当社グループの姿勢を一層明確にするため「グループ人権方針」を策定しました。その方針のもと、ステークホルダーの皆様との対話を通じて人権デューデリジェンスに取り組むとともに、人権意識のさらなる向上を目指します。
当社は、2020年に監査等委員会設置会社に移行し、独立社外取締役を取締役の1/3以上としたほか、2023年6月には独立社外取締役が過半数を占める経営諮問委員会を設置し、取締役の選任・報酬等についての助言・提言を行うなど、ガバナンス体制の強化に努めております。また、当社の持続的な企業価値向上と株主の皆様との一層の価値共有を図るため、本年6月には取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度を導入しました。引き続きコーポレート・ガバナンスの一層の充実を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、放送の公共的使命と社会的責任を常に認識し、メディア・コンテンツ、都市開発・観光など幅広い事業活動を通じて、国民の皆様の豊かな生活に貢献することを経営の基本方針としています。
この基本方針に基づき、2022年5月に持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ全体で推進していく上での指針となる「サステナビリティ宣言」を策定、また、グループ横断的にサステナビリティの課題に対応するため、2022年6月より代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しました。サステナビリティ委員会は「グループのコンプライアンス及びリスクの管理に関する委員会」(以下「グループコンプライアンス等委員会」という)とも連携しながら、SDGsやCSRに関する活動内容を審議、承認するとともに、ESG活動の開示、TCFD提言への対応など、持続可能な社会の実現と、企業活動の永続的な成長を図るための重要課題について検討しています。
サステナビリティ委員会は、その活動状況等について、主に常勤の取締役及び常勤の監査等委員である取締役によって構成される経営会議、並びに取締役会へ随時報告し、取締役会ではその活動内容を監督しています。

当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題の一つであると認識し、2023年5月に行ったTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示の中で、複数のシナリオを想定し、気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会について、放送事業、通販事業および都市開発・観光事業を軸に特定し、その対応策をまとめております。
事業範囲:㈱フジ・メディア・ホールディングス、㈱フジテレビジョン、㈱DINOS CORPORATION、㈱サンケイビル
基準年:2030年
(シナリオ分析の結果)
(a) ネットゼロシナリオ(脱炭素政策のもと気温の上昇は1.5℃程度)
(b) 現行政策シナリオ(最大3.5℃気温上昇。気象災害が激甚化し猛暑日が増加)
各シナリオにおいて特定されたリスク・機会は、サステナビリティ委員会やグループコンプライアンス等委員会に報告、適切な対応を行い、当社グループにおける気候変動リスクに対するレジリエンスを確保するとともに事業機会の拡大を目指してまいります。引き続き、シナリオ分析や財務への影響の精緻化、リスク・機会及び対応策の経営計画への具体的な反映を通じて、気候変動対応を積極的に進めてまいります。
TCFD提言に基づく情報開示につきましては当社ホームページに掲載しております。
[掲載ページ]
当社グループにおいて多様な「価値」を生み出す要となるのは「人」です。ジェンダーや国籍、年齢に関係なく、全ての従業員・スタッフが個性を発揮し活き活きと働くことができること、安心して働き続けられる環境があることは、事業活動を円滑に循環させ、永続させていくために不可欠と考えています。
当社グループでは、子育てや介護等のために休業・休職をせざるを得ない従業員等の多様な働き方に対応した環境の整備を進めるとともに、多様性確保に向けた人材育成方針として、各階層で必要な研修を実施することとし、ハラスメント・コンプライアンス・LGBTQ等の研修を行っています。㈱フジテレビジョンでは、2023年4月から、パートナーシップ宣誓や事実婚など多様性を認める取り組みを制度化し、慶弔や休暇などが分け隔てなく取得・活用できる環境を整えました
また、㈱フジテレビジョンでは、更なるワークライフバランスの充実を図るべく2023年3月に民間団体が主催する「男性育休100%宣言」に賛同、2023年10月には社員の心身の健康保持・増進が企業の成長につながるという健康経営の考えに基づき「健康経営宣言」を発表し、病休者の復職支援や不妊治療サポートなどの体制を整備したほか、育児と就労の両立支援のため病児保育補助の制度も新設しました。また、厚生労働省の「がん対策推進優良企業表彰制度」において、「令和5年度 がん対策推進優良企業」として2回目の表彰を受けました。グループ会社においても、健康施策の一層の充実を進めており、経済産業省及び日本健康会議が共同で実施する健康経営優良法人認定制度で、㈱DINOS CORPORATION、㈱ポニーキャニオン、㈱フジテレビジョンの3社が「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」に認定されました。㈱DINOS CORPORATIONは5年連続、㈱ポニーキャニオンは2年連続、㈱フジテレビジョンは初めての認定です。
当社グループの事業を取り巻く環境が劇的に変化している中で、持続的な成長を図り企業価値を向上させていくためには、多様な視点や価値観を尊重し、事業運営に取り込んでいくことが必要であると考えています。そのため、グローバルな視点や価値観を有する外国人の採用や、高い専門性を有する人材のキャリア採用を進めています。また、経営の中核を担う管理職においても、多様性の確保が重要であると考えています。当社グループでは2023年5月に公表した中期グループビジョンの中で、従業員301名以上のグループ会社の女性管理職比率を、2022年度の19%から2030年度までに30%以上とすることを目標としております。
当社グループでは、グループ経営に重要な影響を与えるコンプライアンス上の問題及びリスクへの対応を図るため、グループ各社の代表取締役社長を構成メンバーとするグループコンプライアンス等委員会を組織し、「グループのコンプライアンス及びリスクの管理等に関する規程」(以下「グループコンプライアンス等規程」という)に基づき、各事業を統括しております。当社グループに重大な影響を与えるサステナビリティリスクに関しても、サステナビリティ委員会等において特定・評価したうえで、グループコンプライアンス等委員会と連携しながら対応策の検討を行います。

当社グループは、温室効果ガスの削減目標として2030年度までに㈱フジテレビジョン、㈱サンケイビル、㈱DINOS CORPORATIONの3社で排出量50%削減(2013年度比)、2050年度までにカーボンニュートラルの達成を目指すことを掲げております。非化石証書の購入により、フジテレビ本社ビル・湾岸スタジオの2023年度電気由来の温室効果ガス排出量(スコープ2)はゼロとなりました。
また、人材育成方針として、従業員301名以上のグループ会社の女性管理職比率を、2022年度の19%から2030年度までに30%以上とすることを目標としております。
グループ各社の女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要リスクは、以下の通りであります。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
当社では、「グループのコンプライアンス及びリスクの管理等に関する規程」(以下「グループコンプライアンス等規程」という)等に基づき、当社グループの代表取締役社長を構成メンバーとする「グループのコンプライアンス及びリスクの管理に関する委員会」(以下「グループコンプライアンス等委員会」という)を組織化すること等により、グループ経営に重要な影響を与えるリスクに対して適切な管理を行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループのメディア・コンテンツ事業の中核である放送事業の売上高の多くはCM枠の販売による広告収入で構成されています。今後、景気変動のほか大規模災害や感染症の拡大その他の様々な要因に基づき国内景気が悪化するなどして国内の総広告費が減少した場合、CM枠の販売価格を決定する上で重要な要素である視聴率が低下した場合、そのほか当社グループの他のメディア及びコンテンツ関連事業において景気悪化等の影響が波及した場合には、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業と、投資を拡大し中長期的に一層の成長を目指す都市開発・観光事業をグループの中心事業としつつ、今後もコンテンツのラインナップの一層の充実とともに、様々なメディアや販路を通じて、当社グループが提供するコンテンツやサービスの領域を拡げ、ビジネス圏の拡張を図る方針としております。
以上の考えに基づき、当社グループは過度に特定の事業に頼ることなく、多種多様な事業を展開して強固な事業ポートフォリオを構築することで互いのビジネスを補完しあい、安定的でバランスのよい成長を目指していく方針です。
昨今、インターネットでの動画配信や音楽配信、動画広告が飛躍的に拡大し、生活者のコンテンツへの接触方法の多様化・細分化は、コロナ禍を経て一層加速しています。こうした環境変化により、生活者による既存のメディアへの接触時間が減少し、媒体価値が低下した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、今後のさらなる成長が期待される配信・ネットビジネスの拡大を大きな経営課題と認識しており、将来のメディア戦略や配信等の新たなビジネスモデルを検討の上、進めていく方針としております。放送と配信が連動したセールス及びプロモーションの推進や、データマーケティング、広告配信技術の活用など、顧客やユーザーの目線に立ったサービスと、広告主のニーズに応えるビジネスモデルの構築によって収益の拡大を目指し、投資の拡大も含め検討を進めていきます。さらに新しいウェブメディアの開発や、海外マーケットへの進出も加速するなど、生活者とのコンタクトポイントの拡大と創出を進めてまいります。
当社グループでは、テレビ番組などのコンテンツの放送・配信等を行うにあたって、著作物、レコード、実演をはじめ、多様な権利処理に真摯に取り組む必要があります。万が一、当社グループが著作権者等に対して不適切な対応を行った場合には、放送・配信等の差し止めや損害賠償請求等により、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。当社グループは他者の著作権・著作隣接権などを侵害することのないよう権利処理に真摯に取り組むほか、著作権や権利処理に関する社員教育にも引き続き注力してまいります。また、ビジネスの核となる「コンテンツ」の価値を守るため、知的財産の適切な保護・管理に努めています。㈱フジテレビジョンでは、番組コンテンツの無許諾アップロードや海賊版DVD販売などの著作権侵害行為の監視・削除要請等を行っています。
都市開発・観光事業は、景気変動のほか大規模災害や感染症の拡大その他の様々な要因に基づく景気動向の影響を受けやすく、都市開発事業の中核事業であるビル事業・資産開発事業・住宅事業は、国内経済情勢と連動した不動産市況の動向によっては、空室の発生・賃料水準の下落及び販売価格の下落により当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
また、観光事業においても、景気の悪化等によるインバウンドを含む旅行・観光需要の減少、国際情勢の変化等により利用客が減少し、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、本事業に加えて、㈱フジテレビジョンを中心に収益力を強化するメディア・コンテンツ事業をグループの中心事業と位置づけ、さらに多様なコンテンツと様々なメディアや販路の強化によりグループの一層の事業成長を目指す方針としており、事業ポートフォリオとしてのバランスのよい成長を目指していきます。また、本事業の中核であるビル事業・資産開発事業・住宅事業では、一定の財務規律のもとで、資産の開発や売却、さらにはREITを活用した保有資産リスクの分散化など経営環境に応じた保有資産の見直し等によりリスクを適切にコントロールしております。観光事業はわが国の成長産業として拡大が見込まれており、中長期的に高い成長を期待できる分野と考えています。国内及びインバウンドの需要拡大に合わせてホテルの開発を進めるなど、引き続きリスクをコントロールしながら長期的な視点で投資を継続していく方針です。
当社グループは、持続的な成長を促進していくために、適切な設備投資及び投資を継続し、当社グループ事業の強化を図る方針ですが、投資額に見合う十分な利益を確保することができない可能性もあります。
当該リスクに関して、当社グループでは、設備投資及び投資について専門部局をメンバーとする会議体や専門部署等を配するなどして、専門的見地から検討を進めることとしております。なお、大型の出資・投資案件については、経営会議にも付議し、取締役会でも決議を行う等、複数のチェック体制を確保し、慎重かつ多角的に検討する仕組みとしております。
当社は、放送法に基づく認定放送持株会社として総務大臣の認定を受けております。認定放送持株会社の認定には放送法で定める要件に適合する必要があり、当該要件に適合しなくなった場合は、認定を取り消される可能性があります。また、当社グループの中核事業である放送事業では、放送法・電波法に基づく放送免許又は認定を受け、事業を行っております。
仮に法令に基づく認定若しくは放送免許の取消し等の処分を受けた場合又は再免許を受けることができなかった場合は、当社グループの業績等に負の影響を及ぼす可能性があります。当社では、要件や認定条件への適合状況についてモニタリングとチェック体制を強化し適切な運用を図るよう努めております。
当社グループでは、グループ経営に重要な影響を与える法的な問題及びリスクに対しては、グループコンプライアンス等規程に基づき、取締役及び使用人等の法令順守について適切な体制を構築しております。また、当社では内部監査規程に基づき、当社の内部監査部門が、当社グループのコンプライアンスの状況を定期的に監査しております。
大規模災害等により、当社グループの中核である放送事業において、番組を放送するために使用している放送機材及び放送施設に障害が発生した場合や、その他イベントや映画における興行の中止や減少、通信販売事業、映像音楽事業などにおける商品等の製造、調達や流通への被害、都市開発・観光事業における保有・開発資産の毀損等が発生した場合には、当社グループの業績等に負の影響が生じる可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、放送設備等に障害が発生した場合でも、バックアップ用放送設備または放送用リース設備の代替システムの利用等により放送を継続する仕組みを備えております。ただし、既存対応では対処しきれない自然災害が発生した場合等は、放送を長期間停止するリスクが想定されます。
なお、当社グループでは、年に数回、安否回答確認訓練やBCP訓練を定期的に開催し、平常時から防災意識の向上と連絡体制の確認に努めております。
当社グループでは、気候変動は環境・社会、事業活動にとっての脅威であり、これらへの対応は重要な経営課題の一つであると認識し、2022年5月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。また、気候変動が当社グループの事業にもたらすリスクと機会について、放送事業、通販事業及び都市開発・観光事業を軸に特定し、その対応策などについて検討を進め、2023年5月にTCFD提言に基づく情報開示を行いました。当社グループは分析結果とその対応策を経営計画へ反映するなどして、引き続き気候変動への対応を積極的に進めてまいります。
TCFD提言に基づく情報開示につきましては当社ホームページに掲載しております。
[掲載ページ] https://www.fujimediahd.co.jp/ir/pdf/tcfd230516.pdf
当社グループは、視聴者情報、番組出演情報、通信販売事業ほか各事業における顧客情報などのデータベースを管理・運営しておりますが、当該情報が外部から不正にアクセスされた場合や、個人情報の外部流出等が発生した場合には、当社グループの業績及び企業としての社会的信用に負の影響を与える可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、データベースにおける顧客等の個人情報について社内でのアクセス権限を設定するなどその取扱いには十分な注意を払い、セキュリティの強化に努めております。
当社グループにおいて、多様な「価値」を生み出す要となるのは「人」です。しかし、各事業を取り巻く環境が急速に変化し、それに対応するスキルを持つ人財の獲得競争が激しさを増す中で、必要な人財を獲得できない場合や、優秀な人財が流出した場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに関して、当社グループでは、経営戦略と連動した人的資本経営の考え方に基づき、「“拡がる”フジ・メディア・ホールディングス 中期グループビジョン2023」において「成長戦略実現や新たな価値創造に貢献できる多様な人財の獲得・育成」を掲げています。新たな事業領域にも対応するため、グローバルな視点や価値観を有する外国人の採用や、高い専門性を有する人財等、多様な人財のキャリア採用を進めています。また、子育てや介護、病気等のために休業・休職をせざるを得ない従業員の多様な働き方に対応した環境の整備を進めているほか、社員一人ひとりが自らの成長と幸せを実感しながら日常の仕事に取り組めるよう、健康経営も推進しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
政府の月例経済報告によると、当連結会計年度の日本経済は「先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。さらに、令和6年能登半島地震の経済に与える影響に十分留意する必要がある。」と記されており、企業の業況判断は「改善している」とされております。
当社グループにおいても、原材料価格の高騰に伴う物価上昇や巣ごもり需要からリアル消費へのシフトなどの影響もありましたが、2023年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に引き下げになり、社会経済活動の正常化に伴うイベントの再開、旅行・観光需要が大きく回復した他、ホテルやオフィスビルなどの賃貸物件の稼働が好調に推移したことなどが寄与し、業績を改善することができました。
こうした状況の中、当社グループの当連結会計年度の売上高は、メディア・コンテンツ事業、都市開発・観光事業がともに増収となり、全体では前年同期比5.8%増収の566,443百万円となりました。
営業利益は、メディア・コンテンツ事業は減益となりましたが、都市開発・観光事業の増益により、前年同期比6.7%増益の33,519百万円となりました。経常利益は、持分法による投資利益の減少もありましたが、前年同期比0.3%増益の39,173百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益に計上した投資有価証券売却益が増加した一方で、前連結会計年度に計上した退職給付信託設定益の反動減や特別損失に計上した固定資産除却損の増加などにより、前年同期比20.9%減益の37,082百万円となりました。
報告セグメントの業績の状況は以下の通りであります。
当社グループの中核子会社である㈱フジテレビジョンは、配信広告収入の拡大と、催物事業やデジタル事業などコンテンツ・ビジネスの貢献により売上高は増収となりましたが、視聴率の低下等を背景にテレビ広告収入が減収となり、全体では増収で営業減益となりました。
売上高のうち放送・メディア収入は、183,490百万円で前年同期比5.6%の減収となりました。
全国放送を対象とするネットタイムセールスは、レギュラー番組が前年を下回り、単発番組においても「FIVB ワールドカップバレー パリ五輪予選2023」や「FNS27時間テレビ」があったものの、前期の「FIFAワールドカップ カタール2022」や「東アジアE-1サッカー選手権2022」などの規模には及ばず減収となりました。その結果、ネットタイムセールスの売上高は63,551百万円で前年同期比8.2%の減収となりました。
関東地区への放送を対象とするローカルタイムセールスは、10,135百万円で前年同期比4.6%の減収となりました。
スポットセールスは、視聴率の低下や原材料価格の高騰および円安等を背景とした物価上昇の影響により、業種別で前年を上回ったものは19業種のうち「交通・レジャー・観光」「アルコール飲料」「不動産・住宅設備」の3業種に留まりました。その結果、スポットセールスの売上高は73,662百万円で前年同期比8.5%の減収となりました。
一方、民放公式テレビポータル「TVer」などを通じた配信広告セールスは、10月クール木曜劇場「いちばんすきな花」や10月改編で新設した金9「うちの弁護士は手がかかる」などの連続ドラマ再生回数が牽引して、大きな伸びとなり、配信広告収入は7,866百万円で前年同期比61.6%の増収となりました。
コンテンツ・ビジネス収入では、シルク・ドゥ・ソレイユの大型作品「アレグリア-新たなる光-」や、4年ぶりに開催され230万人以上にご来場いただいた「お台場冒険王2023」など各種イベントが貢献した催物事業収入、新旧ドラマ配信をはじめ各種キャンペーンにより会員数が大きく伸長した動画配信サービス「FODプレミアム」を中心としたデジタル事業収入などが前年を上回りました。「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編」、「ミステリと言う勿れ」、「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」など劇場公開作品のヒットが相次いだ映画事業収入は、「ONE PIECE FILM RED」が大きく貢献した前期に比べ減収でしたが、過去作品の配信権販売収入や「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」の宣伝協力収入などが寄与しました。その結果、コンテンツ・ビジネス収入は54,728百万円で前年同期比26.9%の増収となりました。
以上により、㈱フジテレビジョン全体の売上高は、前年同期比0.3%増収の238,219百万円となりましたが、営業利益は前年同期比29.2%減益の5,433百万円となりました。
㈱ビーエスフジは、放送事業収入、その他事業収入ともに堅調に推移し、増収増益となりました。
㈱ニッポン放送は、スポット収入の増加などが寄与し放送事業が増収、イベント事業や物品販売事業も好調で、増収増益となりました。
㈱ポニーキャニオンは、配信、アニメの海外番組販売、イベント収入、グッズ売上等が寄与し、増収増益となりました。
㈱フジパシフィックミュージックは、著作権使用料収入や原版使用料収入等が好調に推移し、増収増益となりました。
㈱DINOS CORPORATIONは、ファッション・食品の売上が好調に推移しましたが、リビング系やテレビ媒体を中心とした美容健康カテゴリーが振るわず、全体として減収となりました。また、利益面では減収による影響を販促費のコントロール等のコスト削減でカバーしきれず、営業損失を計上しました。
㈱クオラスは、テレビ等の主力広告媒体の売上高が増加したほか、イベント関連収入の好調が続き、増収増益となりました。
以上の結果、メディア・コンテンツ事業全体の売上高は、前年同期比3.0%増収の433,663百万円となり、セグメント利益は同10.2%減益の15,706百万円となりました。
中核子会社である㈱フジテレビジョンの経営成績等の推移は以下の通りです。
㈱フジテレビジョン (単位:百万円、%表示は対前年同期増減率)
(都市開発・観光事業)
㈱サンケイビルは、オフィス、ホテル、住宅の賃料収入が好調に推移したことや保有物件の売却が寄与し、増収増益となりました。
㈱グランビスタホテル&リゾートは、旅行需要の本格的な回復を受け、札幌グランドホテル、札幌パークホテルをはじめとした運営ホテルの稼働が好調に推移しました。また鴨川シーワールドも堅調で、増収増益となりました。
以上の結果、都市開発・観光事業全体の売上高は、前年同期比17.9%増収の128,316百万円となり、セグメント利益は同29.6%増益の19,537百万円となりました。
(その他事業)
その他事業全体の売上高は前年同期比2.8%減収の19,818百万円、セグメント利益は同1.3%増益の944百万円となりました。
持分法適用会社では、伊藤忠・フジ・パートナーズ㈱、日本映画放送㈱、㈱WOWOWなどが持分法による投資利益に貢献しました。
当期末の総資産は1,448,833百万円となり、前期末比66,186百万円(4.8%)増加しました。
流動資産は404,938百万円で、前期末比9,859百万円(2.4%)減少しました。これは主に、有価証券が21,416百万円、棚卸資産が1,116百万円それぞれ増加した一方で、現金及び預金が33,592百万円減少したこと等によります。
固定資産は1,043,894百万円で、前期末比76,045百万円(7.9%)増加しました。これは主に、土地が49,378百万円、退職給付に係る資産が9,397百万円、建設仮勘定が8,543百万円、建物及び構築物が7,501百万円それぞれ増加したこと等によります。
負債は579,204百万円で、前期末比45,327百万円(8.5%)増加しました。
流動負債は152,437百万円で、前期末比22,460百万円(12.8%)減少しました。これは主に、短期借入金が15,024百万円、「その他」に含まれる一年内償還予定の社債が10,000百万円それぞれ減少したこと等によります。
固定負債は426,766百万円で、前期末比67,787百万円(18.9%)増加しました。これは主に、長期借入金が53,252百万円、社債が20,000百万円それぞれ増加したこと等によります。
純資産は869,628百万円で、前期末比20,858百万円(2.5%)増加しました。これは、剰余金の配当により利益剰余金が12,089百万円減少し、自己株式の取得等により自己株式が9,999百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純利益37,082百万円を計上したこと等によります。
当期における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、47,801百万円の収入となり、前期比13,977百万円(22.6%)の収入減少となりました。これは、退職給付に係る負債の増減額が11,817百万円の支出減少となった一方で、税金等調整前当期純利益が10,340百万円減少し、法人税等の支払額が7,040百万円増加、仕入債務の増減額が4,253百万円の収入減少となったこと等によります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、106,535百万円の支出となり、前期比73,765百万円(225.1%)の支出増加となりました。これは、有価証券の売却及び償還による収入が37,183百万円減少し、有形固定資産の取得による支出が48,093百万円増加したこと等によります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期の5,269百万円の支出から当期は25,240百万円の収入となり、前期比30,509百万円の収入増加となりました。これは、長期借入金の返済による支出が12,094百万円、自己株式の取得による支出が10,000百万円、社債の償還による支出が10,000百万円それぞれ増加した一方で、長期借入れによる収入が48,600百万円、社債の発行による収入が19,911百万円それぞれ増加したこと等によります。
上記の他、合併に伴う現金及び現金同等物の増加額931百万円を加味した結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、98,982百万円となり、前期末に比べ31,173百万円(24.0%)の減少となりました。
(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。当連結会計年度においてはメディア・コンテンツ事業の各社で配信やコンテンツ・ビジネスが拡大し、収益構造が多角化するとともに、都市開発・観光事業では国内、及びインバウンドの旅行・観光需要が大きく回復したことに加え、ホテルやオフィスビルなどの賃貸事業が好調で、営業利益は連結全体で、前年同期比6.7%増益の33,519百万円となりました。
計画対比では、メディア・コンテンツ事業は、配信やコンテンツ・ビジネスが好調の一方、テレビ広告収入の減少や通販事業の伸び悩みがあり、営業利益は期初の目標を下回りました。一方で、都市開発・観光事業は㈱グランビスタホテル&リゾートが旅行需要の本格的な回復を受け、運営ホテルの稼働が好調に推移したほか、㈱サンケイビルにおけるオフィス、ホテル、住宅の賃料収入も好調に推移したことで営業利益は期初の目標を大きく上回り、連結営業利益は目標の320億円を上回る結果となりました。
生活スタイルの変化から視聴者・顧客のニーズが細分化する中、当社グループは、昨年5月に公表した中期グループビジョンのもと、多様なコンテンツやサービス、商品、体験等を、様々なメディアや販路を通じて提供することで持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。
また中期グループビジョンにおいて、政策保有株式を投下資本(純資産及び有利子負債の合計)の20%未満とすることを目標として掲げておりましたが、2023年度に約185億円の株式を売却し、投下資本に対する比率は18.1%まで低下しました。2030年度までに政策保有株式を純資産の20%未満とすることを目標とし、引き続き、保有資産の見直しによるキャッシュの創出と成長投資によって利益の拡大を図って参ります。
(セグメント区分別の分析)
メディア・コンテンツ事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
メディア・コンテンツ事業は、中核子会社㈱フジテレビジョンが「TVer」などの広告付き無料配信(AVOD)で再生数・UB(ユニークブラウザ)数・総視聴時間の「3冠」を2年連続で獲得し、配信広告収入が飛躍的に拡大したほか、大型イベントの開催により催物事業収入も大幅に伸長しました。さらに、会員数が引き続き増加基調となっている有料配信サービス「FOD」の事業収入や、ライツ事業収入なども売上高に貢献しました。グループ各社では、広告収入を伸ばした㈱ビーエスフジや、音楽配信の伸びにより著作権使用料収入などが好調に推移し過去最高の売上高・営業利益となった㈱フジパシフィックミュージックなどが大きく寄与し、セグメント全体で増収となりました。
引き続き、テレビの視聴率及びコンテンツ価値の向上に注力し、地上波テレビ広告やBS放送の広告媒体としての価値向上を図ってまいります。グループ各社が有する企画力や制作力を競争力のある経営資源ととらえ、ヒットコンテンツを生み出す環境づくりに努めるほか、知的財産権(IP)の開発・取得などを進め、コンテンツ・ビジネス強化のための投資を拡大する方針です。さらには配信関連ビジネスの一層の成長を目指すのに加え、新規事業領域の開拓や海外展開などを拡大し、「コンテンツの力で稼ぐ」事業構造をさらに強固なものにしてまいります。
都市開発・観光事業の経営成績等の状況に関する認識については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
㈱サンケイビルでは保有物件の売却ほか、多様なアセットの販売・売却、並びに賃貸収入の増加が寄与し増収となり、営業利益は過去最高となりました。㈱グランビスタホテル&リゾートにおいては、旅行需要の本格的な回復を受け、主力のホテル事業を中心に大きく業績を伸ばしたほか、鴨川シーワールドも引き続き堅調に推移したことで売上高は2015年4月の連結子会社化以降過去最高となりました。
都市開発・観光事業は、一定の財務規律の中で資産の規模を拡大し成長を図ってまいります。今後も需要の変化に応じて物流施設やデータセンターなど開発する資産の幅を拡充するとともに、大規模な開発案件の発掘を進めてまいります。観光事業では、2024年6月に開業した「神戸須磨シーワールド・神戸須磨シーワールドホテル」による収益拡大に加え、旺盛な国内及びインバウンド需要を取り込み、高い成長を目指します。観光事業は、引き続き高い伸びが期待できる成長産業と位置付け、リスクとのバランスを見極めながら投資を行ってまいります。
その他事業の経営成績等の状況に関する認識等については、(1)経営成績等の状況の概要に記載の通りです。
当社グループは、グループ各社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すため、健全な財務体質と資本効率の向上を両立させながら、成長分野への投資を推進し、株主還元の充実を図っていくことを財務戦略の基本方針としています。
メディア・コンテンツ事業の中核をなす㈱フジテレビジョンは、大規模災害や疾病等の事業上のリスクにより大幅な収入減が長期間生じた際にも、社会的なインフラとして放送を継続する役割を担っており、それを可能とする強固な財務体質と十分な手元流動性を確保しております。併せて都市開発・観光事業では、行動制限の解除や入国規制の緩和などにより国内旅行やインバウンド需要が回復しており、REITを含めた戦略投資や観光需要回復に向けた成長投資への資金確保が必要になると考えております。
自己資本比率、有利子負債残高、ROE等の指標を注視して、一定の財務健全性を確保しながら資本効率を高め、グループ全体の企業価値向上に努めてまいります。
当社グループの資金需要は、営業活動に関わる支出として、放映権の取得費用、番組制作のための人件費、外注費、著作権等の使用料、通信販売商品の仕入、新規不動産の取得ならびに開発費、既存ビルの設備改修ほか、販売費及び一般管理費(代理店手数料、宣伝広告費、人件費等)があります。
また投資活動に関わる支出として、コンテンツ制作力の増強を図るための放送用設備・機器等の設備投資、メディア戦略強化のための投資資金、グループの資本政策に伴う株式の取得資金等があります。
当社グループの事業活動を維持し拡大していくためには資金の安定的な確保が求められますが、そのために内部資金を中心に外部資金も有効に活用しております。機動的な投資を可能にするために従前より50,000百万円の社債発行登録枠を確保しておりましたが、2023年12月に20,000百万円の社債を発行し、長期安定資金を調達しました。残枠の30,000百万円につきましても今後の資金調達に活用して参ります。
都市開発・観光事業では建物及び土地の調達にあたり、一定の財務規律の下、金融機関からの借入を活用しています。また、環境問題への取り組みとして、借入条件がCARBON HALF(2030年度までにScope1・2のCO2総排出量50%削減(2013年度比))中間目標の達成状況と連動したサステナビリティ・リンク・ローンによる借入を実行しております。
併せて安定的な外部資金調達を図るために、格付投資情報センターより格付を取得しており、本報告書提出時点でシングルAプラス(安定的)となっております。当社グループは強固な財務体質を有しており、さらに営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力が高いことから、当社グループの成長を維持するための運転資金、設備投資及び投融資に要する資金を調達することは可能と認識しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループにおいて、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えている会計上の見積りに係る項目は、以下の通りであります。
なお、会計上の見積りに係る項目のうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に与える影響に重要性があると判断している都市開発・観光事業における棚卸資産評価損につきましては、第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に算出方法や主要な仮定等の詳細を記載しております。
当社グループは、繰延税金資産の回収可能性の検討にあたり、課税主体ごとに将来の課税所得を合理的に見積もり、回収可能性がないと判断した部分については評価性引当額を計上しております。将来の課税所得の見積りは、当連結会計年度末時点で予測可能な合理的な将来課税所得見込額とタックスプランニングに基づいておりますが、今後の業績の変動により見積りと実績が乖離する可能性があります。この場合、繰延税金資産の取崩等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
当社及び一部の連結子会社では確定給付型の退職金制度を採用しており、退職給付債務算定において原則法を採用しています。退職給付債務算定における数理計算は、割引率、退職率、死亡率、予想昇給率などの計算基礎に基づいており、割引率は安全性の高い債券の利回りを基礎として決定しております。また、年金資産の長期期待運用収益率は、年金資産が退職給付の支払に充てられるまでの時期、保有している年金資産のポートフォリオ、過去の運用実績、運用方針及び市場の動向等を考慮して決定しております。これらの前提条件の見積りと実績の差異は、数理計算上の差異として計上され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼすことが考えられます。
本社建物の賃貸借契約について
当社は当社が所有する本社建物を、連結子会社である㈱フジテレビジョンに賃貸する賃貸借契約を締結しております。契約の概要は以下の通りです。
契約会社名:㈱フジ・メディア・ホールディングス
契約相手方:㈱フジテレビジョン(連結子会社)
賃貸借物件:フジテレビ本社ビル
契約期間 :2018年10月1日から2年間、期間満了以降は2年毎に自動更新
当社グループでは、研究開発を戦略的事業の一環として捉え、放送・配信や番組制作の各分野において、技術的優位性を確保し、魅力的なサービスに発展させるため、先進技術の導入に積極的に取り組んでおります。また、これらの活動を通じ、広くICT分野の発展に貢献しています。
(メディア・コンテンツ事業)
メディア・コンテンツ事業における研究開発活動は、主にテレビ放送事業を行う㈱フジテレビジョンに係るものであります。当連結会計年度における成果は次の通りであります。
インターネット技術等の技術革新とスマートフォンやタブレット型端末に加え、コネクティッドTV(インターネット接続テレビ)の普及により、動画視聴形態やコンテンツへのニーズが多様化しました。また、データ解析技術、クラウド、AI、5G技術の活用等は、放送業界でも重要性が高まっており、これらの技術の研究開発に、以下の2つを柱として取り組んでおります。
①放送・配信分野におけるビジネスモデルを支える技術についての研究開発
②番組制作分野における付加価値向上と制作効率化を実現する技術についての研究開発
放送・配信分野では、データ広告を活用した新しい広告の実用化や、コネクティッドTV上での放送と配信の視聴連携技術や、配信コンテンツ認証などのフェイク対策技術の研究開発に取り組んでいます。また、大規模なテレビ視聴データを安全に収集できるシステムを構築し、視聴者ニーズを捉えた番組制作や、マーケティング戦略への活用方法を研究しています。
番組制作分野においては、通信キャリアや放送機器メーカーと連携して、高速・大容量・低遅延・高信頼性を有する5Gの利活用に向けた研究を継続しています。AI画像認識技術やクラウドを用いた新たな番組制作技術の研究にも取り組んでおり、働き方改革に寄与するものと考えています。
社外からの評価としては、当連結会計年度に発表されたMCPC award 2023において、「東京マラソン2023中継での5GSAのSLA保証型ネットワークスライシング技術の番組制作活用」がユーザー部門・モバイルテクノロジー賞を受賞しました。この技術は、ネットワークを論理的に分離することで高い通信性能を安定的に維持するもので、通信キャリアと共同で、世界で初めて地上波テレビ放送の番組制作に活用したことが評価されました。
放送分野の発展を目指し、標準化活動にも積極的に取り組んでおります。総務省情報通信審議会やARIB(電波産業会)、A-PAB(放送サービス高度化推進協会)での地上デジタル放送の高度化技術の検討、IPTVフォーラムでの放送通信連携技術の標準化、ITU-R(国際電気通信連合 無線通信委員会)での国際標準化等の活動等に積極的に参加しています。
今後も研究開発を事業戦略の一環として捉え、継続的に取り組んで参ります。
なお、当連結会計年度の研究開発費は