第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「エネルギーと住まいと暮らしのサービスで、地域すべてのお客様の快適生活に貢献する」ことを経営理念として、環境に優しいエネルギーを安全に、かつ安定的にお届けするとともに、お客様の快適な住まいと暮らしを実現することを目指しています。

また、経営理念実現のため、社是である「信義・進取・楽業」を行動憲章として定めています。

 

「信義」…社会的責任の実践

約束を守り人の信頼に応え、責任を重んじて自らの務めを果たすということが「信義」の考えであり、当社グループの経営の根幹です。

 

「進取」…新たな価値の創造

あらゆる困難を退けて前進し、グループの存在価値を高めていくということが「進取」の考えであり、当社グループの事業に対する基本的な精神です。

 

「楽業」…こころ豊かな行動

働く喜びを感じ、仕事の中に楽しさを見出し、様々な方々と幅広い交流を図りながら、自らの人格を高めていくということが「楽業」の考えであり、当社グループの社員像を表しています。

 

(2) 対処すべき課題

当社グループの主力事業である石油・ガス事業を取り巻く環境は、国内人口の減少、省エネ機器の普及、ライフスタイルの変化などによりエネルギー需要の減少傾向が続き、引き続き厳しい状況にあります。また、世界的な脱炭素・SDGsへの意識の高まりに加えて、国内でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速する中、総合エネルギーサービス企業グループとして責任ある対応が強く求められています。

当社グループでは、こうした経営環境の変化や時代の潮流に対応すべく、当連結会計年度より、「脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループへの進化」を目指すビジョンとする第三次中期経営計画を新たにスタートさせました。

第三次中期経営計画で掲げるビジョンの実現に向けて、経営基盤の強化を加速させるとともに、成長戦略を確実に実行することが、当社グループの対処すべき課題と考えています。

 

なお、第三次中期経営計画の全体戦略は、以下の通りです。

 


 

【成長戦略】

・事業ポートフォリオの変革

季節や気候など外部環境による影響が大きい石油・ガス事業に依存した事業ポートフォリオから、外部環境による影響が少ない持続可能な事業ポートフォリオに移行すべく、電力事業や再生可能エネルギー事業、生活関連事業を中心に成長領域を特定し、経営資源の集中投下を行うとともに、新規事業の創出を推進していきます。また、ポートフォリオの変革を明確化すべく、第三次中期経営計画期間中に、事業セグメントの変更を行っていきます。

 


 

・資本効率の改善

建物維持管理事業の統合を皮切りに、既存事業の選択と集中を踏まえたグループ内再編を推進します。また、主力事業におけるエリア効率性の向上を促進し、収益の最大化を図ります。

 

特に、2024年度においては、「国内事業基盤の再整備」と「リテールサービス戦略の強化」を実行することで、事業構造改革を推進していきます。

 

【経営基盤強化】

・風土改革・働き方改革のさらなる推進

第二次中期経営計画から引き続き風土改革と働き方改革を推し進め、個を高め活かしあう自由闊達な組織風土の醸成と、社員の成長に資する制度や仕組みの整備を進めていきます。

 

・人財育成の推進、人財の適正配置の実現

企業価値は社員の市場価値の総和であるという考えのもと、社員の自律的成長に資する育成体系の整備を行うとともに、事業ポートフォリオに基づく人員シフトを進め、利益最大化をもたらす組織の構築を目指します。

 

・業務効率化、標準化等による生産性向上

事業戦略に沿った最適な業務プロセスの構築や新たな基幹システムの構築によるスムーズな経営管理体制の確立により、生産性の向上を進めていきます。

 

・グループ経営体制の強化

グループガバナンスの強化、とりわけ、リスク管理体制の強化と実効的・機動的なグループ経営体制の構築に取り組んでいきます。特に、2024年度においては、ポートフォリオマネジメントの強化、とりわけ投資リスクの管理を強化するとともに、本社費用などコスト管理を徹底し効率的で無駄のない経営を実現することを優先的に対処すべき課題として、捉えています。また、事業部門・事業会社間の横断的な連携やデジタル技術による新たな価値の創出に取り組み、グループ経営体制を強化していきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。

なお、文中の詳細に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「エネルギーと住まいと暮らしのサービスで地域すべてのお客様の快適な生活に貢献する」を企業理念に掲げ、創業以来90年以上にわたって、お客様にエネルギーをお届けしています。

昨今、国連サミットでのSDGsの採択やCOP21におけるパリ協定の発効などを契機に、サステナビリティ・脱炭素に関する企業への対応要請が高まっており、事業やビジネスモデルの変革が必要不可欠となっています。

そういった状況の中、当社グループは、持続可能な社会の実現に貢献し、ステークホルダーの皆様の信頼に一層応えるべく、サステナビリティ基本方針を2022年5月、下記のとおり策定し、2022年6月には、金融安定理事会が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同を表明しています。

 

 

シナネンホールディングスグループは、「エネルギーと住まいと暮らしのサービスで地域すべてのお客様の快適な生活に貢献する」という企業理念に基づき、お客様、お取引先、株主・投資家、従業員、地域社会などあらゆるステークホルダーを尊重し、企業活動を通じて「持続可能な社会の実現」に貢献するとともに、当社グループの「持続的な成長」と「企業価値の向上」を目指してまいります。

 

1.脱炭素社会の達成に向けて、社会・環境問題の解決へ真摯に取り組みます。

2.お客様・お取引先との相互の信頼と透明で公正な関係を築きます。

3.個人の人権、多様な価値観を尊重するとともに、働きがいのある職場環境を実現します。

4.安全安心な製品・サービスの提供により、社会生活基盤を支え、持続可能な社会の実現に貢献します。

5.経営情報を適時・適切に開示し、経営の透明性を高めます。

6.法令や社会規範を遵守し、公正、誠実な企業活動を実現します。

 

 

 

また、2023年4月からスタートした第三次中期経営計画の非財務目標を設定するにあたっては、国際的なガイドラインを参照しつつ、当社グループとステークホルダーの皆様にとって重要と考える社会課題を、網羅的にリストアップしました。そのリストアップした課題について、当社グループのミッションとバリューを踏まえ、課題の重要度と緊急度の両面から検証を行った後、経営陣での議論、取締役会の決議を経て、気候変動への対応として「脱炭素社会に対応した事業構造への転換」を、人的資本経営の一環として「社員の市場価値の向上」の2つを、第三次中期経営計画の非財務目標に設定いたしました。なお、サステナビリティへの取組みとして、当社グループのマテリアリティ(重要課題)についても、同じ内容を掲げています。

 

①ガバナンス

当社グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題と捉え、当社代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ推進委員会」を2022年度より設置し、サステナビリティ全般に関する課題をグループ全体で把握し、具体的な対応策や目標設定について協議を行っています。

サステナビリティ推進委員会は、リスク・コンプライアンス委員会の委員長であるチーフ・コンプライアンス・オフィサーを副委員長とすることでグループ全体のリスク管理の網羅性を高め、グループ全体の取り組みを管掌する関連部門責任者を委員とすることで、事業との連動性を強化する体制としています。

委員会での議論・決定内容は取締役会に適宜報告し、取締役会においては対応策の承認と必要な助言を行う体制としております。

また、委員会の取り組み進捗状況については年1回以上委員会より取締役会に報告する体制としています。

 

<サステナビリティ推進体制図>

 

 

②戦略

当社グループでは、気候変動への対応を重要な経営課題として認識しており、気候変動におけるリスク及び機会のシナリオ分析を実施しています。分析の対象は想定される財務インパクトの大きさから、当社グループ売上高の80%以上(2021年3月期実績)を占める石油事業、ガス事業としています。

分析の時間軸は、移行リスク、物理的リスクが大きく顕在化する2050年を分析時間軸と設定し、4℃・2℃それぞれのシナリオについて分析を行っています。

リスク分析の手法としては、SDGs目標やTCFD推奨開示項目から当社グループの事業と関連が深い項目を特定し、移行リスク、物理的リスクのそれぞれの算定を行っています。

分析作業は事業への影響度が高い移行リスクを中心とし、物理的リスクでは主に自社で所有する不動産に対する自然災害の影響度合いを算定しました。

各項目に対してリスクと機会を整理し、発生時期を短期・中期・長期、影響度を小・中・大に分類しています。

区分

項目

リスク

機会

発生時期

影響度

移行

リスク

政策規制

炭素税・炭素価格の導入

・炭素価格導入による化石燃料の需要減

・炭素価格導入による燃料調達コスト増

中~長期

脱炭素目標の設定

・未達時のクレジット購入コスト増加

・達成時のクレジット販売による収益増加

中~長期

市場

エネルギーミックスの変化/エネルギー価格の増減

・運送費のエネルギー調達コスト増

・エネルギー価格高騰による需要減

・再生可能エネルギー事業の収益拡大

・石油代替燃料の販売拡大

短~中期

脱炭素製品の市場シェア向上

・電気自動車、水素自動車の普及によるガソリン需要減

・LPガスの低炭素燃料推進

短~中期

技術

脱炭素・低炭素新技術登場

・バイオプラ等、脱炭素素材の普及による石油等の売上減

・環境対応の車両等の機器導入コストの増加

・環境配慮車両の燃費向上、物流効率化に伴うコスト減

・スマートメータ導入・配送効率化による運送費の削減

短~中期

中~大

新技術開発への投資リスク

・再生可能エネルギー等の投資対象における、投資コスト増加および投資対象の陳腐化

・再生可能エネルギー等への投資における収益拡大

中~長期

レピュテーション

消費者の脱炭素選好による需要変化

・石油・ガス事業へのダイベストメントが加速する事による資金調達コスト増加

中~長期

ステークホルダーからの懸念の増加

・気候変動対応の要請増による対応コスト増

中~長期

小~中

物理的

リスク

急性リスク

台風/豪雨による水害の発生

・保有資産の毀損復旧費・対策費・保険料の増加

・営業可能日利用制限による収益減少

・配送遅延・事故の増加に伴うコスト増加

・サプライチェーン分断による事業継続への影響

・浸水リスクの高地域の物件の資産価値減少

・ライフライン分断にともなうLPガスの備蓄増加

短~中期

慢性リスク

海面水位の上昇

・湾岸エリア等に所在する工場、施設への浸水

・物件の移転コスト

中~長期

平均気温の上昇

・平均気温・水温上昇に伴う、ガス需要の低下

中~長期

 

リスク・機会の評価の中で選定した項目のうち、影響度が高い以下の項目について、関連するシナリオとパラメータの選定を行い、4℃・2℃それぞれのシナリオに関する財務インパクト評価を行っています。

シナリオ分析により特定した項目については、リスクの最小化、機会の最大化を実現すべく、中期ビジョン(2023~2027年度)に反映させており、今後戦略のレジリエンスを高めてまいります。

 

<影響度が高い項目>

気候変動による売上の変化

気候変動による費用の変化

需要減に伴う販売量減少

・炭素税・炭素価格の導入によるエネルギー価格の高騰とそれによるエネルギー需要減

・水素・電気自動車等の普及に伴う需要減

・脱炭素素材普及に伴う石油等の需要減

・気温上昇・水温上昇に伴うガス需要減

炭素税・炭素価格の導入に伴う費用の増加

・炭素税・炭素価格の導入による費用の増加

・炭素排出量未達に伴う炭素クレジットコストの費用増加

再エネ事業の販売拡大

運送費の増加

・エネルギー価格(ガソリン代、軽油代等)の高騰に伴う運送費の増加

・EV車両等の設備投資と運送コストへの価格転嫁による運送費の増加

化石代替燃料の販売拡大

設備投資の増加

・台風・洪水等の水害に伴う設備費の増加

 

 

③リスク管理

当社グループは、気候変動関連の規制や事業への影響等のリスク要因を幅広く情報収集・分析しています。

留意すべき重要な機会とリスクについては「サステナビリティ推進委員会」で評価・特定を行い、事務局である成長戦略部が監督・モニタリングを実行します。

また、チーフ・コンプライアンス・オフィサーがサステナビリティ推進委員会の副委員長とリスク・コンプライアンス委員会の委員長を兼任し、両委員会で問題を共有することで、組織のリスク管理を統合しています。

 

④指標及び目標

当社グループは、気候変動のリスク及び機会を評価・管理するための指標としてGHG排出量と炭素生産性の2つを設定し、事業成長とGHG排出量の削減を同時に実現してまいります。

 

<GHG排出量>

Scope1~3全体の排出量を算定した上で、削減目標としては自社努力による削減余地が大きいScope1、Scope2に対象を絞り目標を設定しています。

対象年度

削減目標

2030年度

Scope1+Scope2 50%削減(2016年度対比)

2050年度

Scope1+Scope2 カーボンニュートラル(排出量実質ゼロ)

 

 

<炭素生産性>

事業成長と共に環境負荷が低い企業グループへと変革を遂げるべく、より少ない炭素排出量で効率的な企業活動を行う指標として設定しています。

対象年度

削減目標

2027年度

6%向上(2016年度対比)

 

※炭素生産性=売上総利益÷GHG排出量(Scope1~3)

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

なお、当社グループの気候変動に関する考え方及び取組の詳細は以下をご参照ください。

https://sinanengroup.co.jp/sustainability/environmentalinitiatives/responsetotcfd/

 

(2) 人的資本

当社グループの人的資本に関する考え方及び取組は次のとおりであります。

なお、文中の詳細に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①ガバナンス及びリスク管理

グループ全体の人事戦略の推進にあたっては、グループ企業合同によるグループ人事責任者会議を年に4回開催し、その内容について経営層へ報告しています。2023年度は人財育成、ダイバーシティ&インクルージョン、働き方改革をテーマとし、グループ横断での人事施策活性化を図りました。

経営戦略に則った人事戦略の推進において、人財・組織の課題が企業活動に重要な影響を及ぼす経営リスクの一つであると認識しています。外部環境の変化を見据えた人財・組織の課題について経営との議論を重ね、グループ全体のリスクマネジメントを担う部署との連携により以下のリスクを特定・管理しています。

 

<人財の採用・能力開発に関わるリスク>

■人財不足・スキル不足

■人財・後継者の育成遅れ

 

<労働環境の悪化に伴うリスク>

■職場環境の悪化(安全衛生管理)

■労働意欲低下

■離職率の上昇

 

<人権に関わるリスク>

■性別、年齢、国籍などの違いによる雇用差別

 

これらのリスクについては、課題を検証すると共に対応策を検討し、リスク低減に努めています。

 

 

②戦略

当社グループは2027年に創業100周年を迎えます。ビジョンとして掲げている “脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループへの進化”を実現するためには、組織全体の力を結集する必要があり、その中でも経営基盤である人財への投資が不可欠であると考えています。また、2020年に有志社員の自発的な行動から、「選ばれ続ける人と組織になること」を目的に風土改革が始動し、100周年に向けた組織ビジョン「Spiral Up Company ~情熱とワクワクのエネルギー好循環組織~ 」を掲げました。これらの実現のために、社員個人の自律的成長に向けて、意識・行動・コミュニケーションの面から変革を推進する活動である“風土改革”と多様な人財から選ばれ続けるための“働き方改革”の両輪を成すことで、社員の成長を支援し、持続的に成長し続ける組織を目指します。

 


 

③指標及び目標

第三次中期経営計画において、「企業価値は社員の市場価値の総和である」という考えの下、「社員の市場価値の向上」を非財務目標の一つとして掲げており、特に重要と考える3つの目標を設定しています。

 


一つ目は、「エンゲージメント」です。当社においてエンゲージメントとは、「社員と会社が対等で、成長に貢献し合う関係」と定義しています。働き方が多様化している昨今、当社で働き続ける選択をしてくれた社員に「成長を実感できた」「人生が豊かになった」と感じてもらえるよう、会社は社員が成長できる環境や働きがいが得られる環境を整え支援する必要があると考えています。そのため、本指標は「社員の市場価値の向上」における最重要KPIであると認識しています。多様な社員が活躍できる環境を整備することで、エンゲージメント指数(組織風土調査における当社の満足度指数)を、2028年3月期には4.0以上へと向上させていきます。

二つ目は、「教育投資」です。社員の自律的なキャリア形成を仕組みにすることで、自らのキャリアについて考え、その実現のために努力できる機会を提供したいと考えています。成長を実感できる組織とするべく、教育機会を拡充し、社員1人当たりの年間教育訓練時間を2028年3月期には25.0時間まで増加させたいと考えています。

三つ目は、「ダイバーシティ&インクルージョン」です。ダイバーシティ(多様性)を推進し、新たな価値を創出するためには、多様な価値観を取り入れることが必要です。そのため、積極的に女性社員を登用し、意思決定の場に女性を増やしていきます。具体的には、女性管理職比率を2028年3月期には20.0%以上へと向上させていきます。

 

指標

実績

目標

エンゲージメント指数

2024年3月期

3.46

2028年3月期

4.0以上

社員一人当たりの年間教育訓練時間

2024年3月期

16.5時間

2028年3月期

25.0時間

女性管理職比率

2024年3月期

5.0

2028年3月期

20.0

 

 

 

④目標達成にむけた施策

 

◇社員の自律的成長に向けて、意識・行動・コミュニケーションの面から変革を推進する風土改革

<風土改革>

当社グループにおける風土改革の本質は、「個を高め、活かし合う」ことです。一人ひとりがより豊かな人生を歩んでいくために、「個の成長」を考え行動し、会社は社員を支援する環境をつくりサポートしていくことで、「自由闊達な組織風土」の醸成に取り組んでいます。

 


 

2020年から2027年にかけて、“連携”と“挑戦”を通期のテーマとし、ビジョンに合わせた年度毎のテーマに沿って、事業会社毎の推進者(変革リーダー)とともに風土改革を推進しています。2023年度は、風土改革の本質の理解、浸透への注力を継続しながら“自発性”をテーマに、社員一人ひとりが自身のキャリアについて向き合う「一人ひとりの意志・想いを大切にする1年」としました。一般社員から経営層までを巻き込み、事業会社毎の施策や経験を互いに共有する中で、年齢、役職関係なく発言しやすい環境になってきた一方、組織風土調査の数値結果に大きな変化はなく、目指す組織ビジョンの実現にはまだ十分ではない現状があります。

組織ビジョンを実現し、選ばれ続ける人と組織となるために、2024年度は「情熱・ワクワク」をテーマに、部長職以上を対象とする経営チームへの研修を設け、各職場での実践や変化を促します。また、「強み・特性」にフォーカスした“期待”を起源とするコミュニケーションの促進を行うことで社員一人ひとりが「やりがい・働きがいを感じながら生きる1年」とできる風土を目指します。

 

<社員の育成方針>

経営基盤強化を加速させる施策の一つに「人財育成の推進・人財の適正配置の実現」を掲げています。当社グループでは「人財」を最も重要な財産の一つと位置づけており、社員一人ひとりの成長が会社の成長に繋がる、つまり社員の市場価値の向上が会社の企業価値の向上に繋がると考え、社員教育を投資と捉えて教育機会の提供を行っています。

 

■人財育成の推進

具体的な施策を展開するにあたり、「人財育成ポリシー」として以下4つを掲げています。

 

社員一人ひとりの成長実現に向けた人財育成ポリシー

1.従来の階層別教育中心から、より意欲ある社員に学ぶ機会を提供する公募型教育重視に徐々にシフトしていく

.シナネンHDグループの必須教育として、基礎力を整備する

3.キャリア支援制度(若手向けのCDP※、社内公募制度など)を構築する

4.経営人財を安定的に生み出すために、人財パイプラインによる育成を強化する

※CDP: Career Development Program

 

 

この方針に則り階層別教育に加えて、キャリア支援制度、基礎教育の強化、公募型教育のプログラムを提供しています。

キャリア支援制度については社員の自律的なキャリア形成促進のために、当社グループの風土改革と共通の考え方を持つ「プロティアンキャリア」を導入しました。全社員向けのキャリアセミナーの実施により、プロティアンキャリアの考え方を発信することで、社員自らのキャリア構築意識の醸成を図っています。

また、継続的な学びのためにeラーニング教材を全社員へ展開し、管理職については手上げ式のプロティアンキャリアワークショップを開催することで、マネジメント層のキャリア支援に関する能力向上を図っています。

 

新卒入社1~3年目を対象とする若手社員向けには、社員の自律的なキャリア形成の礎を築き広い視野を得て前向きに仕事に向き合える環境づくりの一環として、CDP(キャリア開発プログラム)を導入しています。対象社員の上司である育成責任者及び、職場メンバーによるOJT教育と併せて、チームが異なる社員と交流することで、職場全体で若手社員の育成を支援する仕組みとなっています。

 

CDP概要図


 

 

「人財育成方針」に則り、社員一人ひとりの成長と自律的なキャリア形成のための人財育成体系を整えています。

 


 

経営者育成においては、当社グループの次の100年を支える経営人財を生み出すため、グループ横断で経営人財の育成を行っています。経営人財育成のための人財パイプラインを構築し、サクセッションを含む選抜型研修を毎年実施しています。ポテンシャルの高い人財の早期発掘と育成、候補人財の「量」と「質」の確保のため、育成におけるPDCAサイクルを回し、経営人財を生み出し続ける仕組みを構築しています。

 

 

■人財の適正配置の実現

適正な配置転換を実施することで、社員は自らの能力や適性にマッチした業務に従事し、自身のアイデンティティ・強みを最大限に生かしながら成果を上げることができ、また、一方では新たなキャリアを見つけるきっかけともなるため、配置転換は単なる社内異動ではなく、社員の成長に直結することであると考えています。その考えのもと、2023年度から社員のキャリア志向をヒアリングする「キャリアビジョンシート」の運用を開始しました。

2022年度までは、「自己申告書」を用いて、上司部下間で異動希望を共有していましたが、目の前の異動希望に留まる内容となっており、キャリア志向についての記述ができない仕様となっていました。キャリアビジョンシートの作成の際には、現在のキャリア、短期的な未来のキャリア、中長期的な未来のキャリアの3段階の視点で振り返り、将来について考えていることを記載できるよう変更しました。新たに取り組みたい業務内容や働く場所について、上司との面談を実施し、グループの人員配置計画に活かしています。


 

◇多様な人財から選ばれ続ける仕掛け(働き方改革)

当社グループにおける働き方改革は、多様な社員が安心してイキイキと働き続けることができる環境を整えること、すなわちワークライフバランスの実現と、社員の自律的なキャリア形成を促進させる人事施策の実施の2つの軸として取り組みを行っています。

 

<ワークライフバランスの実現>

2023年度は、長時間労働の是正を目的に毎月労働時間のモニタリングを実施しました。社員の時間外労働や業務時間外のPC稼働状況等を一覧化して共有し、労働時間の現状を可視化・管理しています。また有給休暇についてはその取得率向上を目指し、適宜取得状況のモニタリングや促進活動を行うとともに、グループ社員が有給休暇を取得する権利を活用しやすくなるよう積極的な働きかけを行うことで、昨年度57.0%から63.2%へ取得率が向上しました。

 

<社員の自律的なキャリア形成を促進させる人事施策>

人事施策として4つの新制度(ウェルネス休暇制度、ベビーシッター割引券配布制度、治療と治癒後の事情による短時間勤務制度、社内ベンチャー制度)を2024年4月に導入しました。

 

参考リンク:2024年4月より新たに4つの人事制度を導入

https://sinanengroup.co.jp/news/hd/240416773

 

ウェルネス休暇制度は、女性社員コミュニティCREADY(クレディ:2022年に開始したグループ横断の社内女性社員コミュニティ)からの提案をきっかけに生まれた制度であり、社員の声を形にして制度化に至りました。本制度は社員本人や家族の健康の維持増進のために利用できる特別休暇であり、生理や不妊治療といった女性特有のニーズに応えるだけでなく、社員の体調不良時の療養や健康診断後の精密検査、介護休暇や子の看護休暇の適用範囲外の家族の体調不良時等、幅広いシーンで利用することができます。このような社員のニーズに沿った制度を作ることで、エンゲージメントの向上が期待できるとともに、本人やその家族のウェルビーングに貢献したいと考えています。その結果、安心して業務に取り組めるようになることで生産性の向上も期待できます。今後も社員の声を大切にしながら一人ひとりの人生を豊かにできる環境を整備し、社員の自律的なキャリア形成に貢献すると共に、ここで成長したいと思える組織を目指します。

 

◇D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)

当社グループにおけるD&Iの位置づけは風土改革の本質であり「個を尊重し、認め合い、強みを生かし合うこと」としています。創業100周年からその次の100年に向けて、新たな価値を創造していくためにはこれまでの価値観にとらわれない柔軟な発想が必要であり、多様な人財が持つ様々な価値観を取り入れていくことが必要だと考えています。多様なバックグラウンドを持つ社員が共に働くことで新しい発想やユニークなアイディアを具現化するチャンスを得ることが期待できることから、グループ横断でのダイバーシティ推進体制を強化し、誰もがイキイキと自分らしく働ける環境づくりに取り組んでいきます。

 

<女性活躍推進>

創業100周年である2027年度を目標に、女性管理職の比率を20%にすることを掲げ、女性活躍の推進に取り組んでいます。2022年度には、グループ横断の女性社員で構成されるコミュニティ(CREADY(クレディ):CREADYとは造語でcreateとladyを組み合わせ、社歴や性別に捉われず好奇心を持ってチャレンジするという想いを込めて参加者が名付けました)を立ち上げ、女性社員自身がキャリアアップや働きやすい環境について意見を交わし、半年間の活動を通じて、キャリア研修の企画や社内留学制度など、成長を重視した施策をまとめ経営層へ提言しました。実際に提言の中にあったウェルネス休暇制度については、提案者の意見を盛り込み2024年4月に制度導入が実現しました。

 

2023年度はグループ全体での取り組みを加速させるために、現状把握と次年度にむけた取り組みの方向性を定めると共に、教育機会の充実を図りました。現状把握では、事業会社ごとに女性活躍の課題分析を行い、女性管理職パイプラインを構築するために必要なアクションを洗い出しました。また、教育機会として、今後マネジメント職を担う層に対し、選抜型研修への参加を促し意識醸成を図っています。結果として、2024年4月にグループ全体で9名の女性管理職が誕生しました。今後は、グループ企業合同で管理職パイプラインを構築するための施策を実施(リーダー層/管理職のプール人財育成としての「CREADY」の実施)することで、KPI達成を目指していきます。

 

参考リンク:コーポレートサイト ダイバーシティ&インクルージョン

https://sinanengroup.co.jp/sustainability/social/employee/di.html

 

<障がい者雇用>

障がいのある社員を採用することだけがゴールではなく、真にやりがいをもって就労継続していただけるよう、障がいを個性と捉え、その方の得意分野ややりたいことに着目し、障がいの有無に関わらず個の価値を高めていける新たな障がい者雇用モデルの確立を目指しています。そのために、志を一つに業種・業態を超えて大手企業20数社が集まる一般社団法人「企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)」に加盟し、他社担当者と交流する場を通じて情報交換や勉強会、ディスカッションを積極的に行っています。

 

2023年度は障がい者採用に注力するとともに、定着率向上や知識共有を目指して新たに障がい者コミュニティを立ち上げました。障がいのある社員が中心となり、当事者同士のつながりを深めた、健常者である社員も交えて今後の障がい者雇用関連施策についてディスカッションを行っています。こうした取り組みを社内に対しても広報することで、社内では障がいのある社員の存在がクローズアップされ始め、障がい特性や、働き方などについての理解促進につなげています。

今後は社内での啓蒙活動をさらに加速させるとともにコミュニティ活動をより充実させ、障がいを持つ社員の採用を進め、強みを生かして活躍できる環境づくりにより注力していきます。

 

◇健康経営

当社グループは、社員の健康を重要な経営課題と考え、活力あふれる企業風土の醸成に努めています。

2020年2月にシナネンホールディングスグループ健康宣言を行い、健康経営への取り組みを開始いたしました。当時、健康管理室は診療所としての機能を主とし、人事戦略としての健康管理という概念はなく、産業保健体制の構築を目的に2022年8月、常勤保健師2名を雇用、2023年度から開始した第三次中期経営計画の非財務目標では「社員の市場価値向上」のひとつに健康経営の推進を掲げました。また、当社グループの健康診断結果から課題分析および目標設定を行い、社員の健康管理を強化した結果、経済産業省が主催する健康経営優良法人に2023年・2024年の二期連続で認定されました。今後も社員の健康保持・増進の取り組みを通して、パフォーマンスの向上並びにグループ全体の業績・企業価値の向上を目指します。

 


 

当社グループでは65歳を定年としていますが、2023年度から70歳までの再雇用制度を導入しました。

また、平均年齢の上昇および高年齢労働者の割合の増加に従い、健康診断結果有所見者数や疾患を抱えながら働く社員数の増加が課題となっています。これを受けて、2023年4月より、がん・脳卒中・心臓病・難病などを発症した社員を支援するため、治療と仕事の両立支援制度を導入し、併せて「治療と仕事の両立支援ガイドブック」を作成・展開しています。この施策は社員の健康保持・増進のみならず、継続的な人財の確保やモチベーションの向上、さらには多様性の高まりによる組織や事業の活性化等への寄与を図っています。

 

参考リンク:健康経営

https://sinanengroup.co.jp/sustainability/social/employee/health/

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況並びに株価等(以下「業績等」という。)、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。

なお、記載中、将来に関する事項は当連結会計年度末(2024年3月31日)において判断したものであります。

また、当社グループは、これらのリスクの回避、低減及び顕在化した場合の影響最小化への対応に努める方針であります。

 

A.当社グループの主力事業であるエネルギー事業に特有のリスク

(1) エネルギー業界を取り巻く環境の変化

当連結会計年度の国内エネルギー業界においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた第6次エネルギー基本計画が2021年10月に閣議決定されるなど、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。主力の石油類・LPガスの仕入れ価格に影響を及ぼす原油価格・プロパンCPが、主要産油国による協調減産の延長などを受けて一時的に急騰したものの、世界的な温暖化や中国の景気低迷などによる需給の緩みが影響し、全体としては前連結会計年度と比べて低位で推移しました。一方、石油・ガスの国内需要は、少子化の進展等による人口減少、省エネ機器の普及やライフスタイルの変化などにより全体としては減少傾向が継続しています。

石油・ガス業界をとりまく環境は、供給側であるOPECプラスの産油量動向や中東情勢、需要側では大消費国である米国、中国、インド等の経済状況等が原油価格に大きな変動をもたらします。また、国内では環境意識の高まりや脱炭素社会に向けた官民をあげての取り組みにより、エネルギーの節約志向は今後一層強まるものと考えられます。これら原油価格の変動や国内市況並びにエネルギー環境の変化等が当社グループの業績等に重要な影響を与える可能性があります。

当社グループでは、原油価格等の変動や消費者の節約志向等には直接対応できないため、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、住設機器の販売や住宅向けリフォーム等の住まいと暮らしの事業(ライフクリエイト事業)の拡大等、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、太陽光発電設備のメンテナンス事業や国内外の再生可能エネルギー事業の拡大等の非石油・ガス事業への展開のほか、ライフクリエイト事業等の非エネルギー事業への積極投資により業界環境変化のリスク低減に取り組んでいます。

 

(2) 気温の変動によるリスク

当社グループの主力となる事業は、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)であり、全セグメントの売上高のうち94.1%を占めています。このエネルギー事業については、基本的には気温の変動によるリスクを有しており、なかでも石油部門の主力商品である民生用灯油については、冬が最需要期であり、夏の使用量と比較して著しい格差があります。このため、暖冬により冬場の灯油の消費量が減少した場合、販売計画に狂いが生じ、また価格にも影響を及ぼすなど、気温の変動が当社グループの販売実績及び業績等に重要な影響を与える可能性があります。

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、冬場の気温に需要が左右される石油・ガスだけでなく、夏場に需要が増加する電力販売の拡大を進めると共に、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)における既存の石油販売施設について、建設機械やトラック等の燃料として年間を通じて需要の見込める軽油の出荷能力を増強したオイルスクエアへの移行等により気温の変動によるリスク低減に取り組んでいます。

また、電力については世界的にLNGをはじめとする燃料の高騰を背景にした電力需給環境の変化が激しい状況が続いています。特に夏場と冬場の需要期において、電力卸売市場の価格変動により業績に重要な影響を与える可能性がありますが、市場連動型プランへの移行の推進(BtoB事業)を図ることで価格変動リスクを最小化する一方、他社のバランシンググループ(BtoC事業において複数の小売電気事業者が1つのグループを形成し、一般送配電事業者との間で1つの託送供給規約を結ぶ仕組み)に参加し、電源調達と需給管理を委託することで、需給バランスの最適化に取り組んでいます。

 

(3) エネルギー業界における競争の激化

当社グループの属するエネルギー業界においては、規制緩和、環境問題、少子化の進展による人口減少等の要因により、電力、石油、都市ガス、LPガス等の垣根を越えたエネルギー間競争が激化しています。「オール電化」「太陽光発電」「エネファーム」等のエコロジーと関連する商品群の開発・販売推進により、今後もこの傾向が続くものと予想されます。

また、LPガス業界においては、LPガス消費者の獲得やそれに伴うLPガス価格の引き下げ等、同業者間の競争が激しくなっています。石油業界においても、ガソリンスタンド間の厳しい生き残り競争や民生用灯油の巡回販売、ホームセンター他の販売チャネル間の争い等、同業者間の激しい競争が続いています。

こうしたエネルギー間競争及び同業者間競争の激化に加え、世界的な脱炭素・SDGsへの意識の高まりや国内でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速する中、総合エネルギーサービス企業グループとして責任ある対応が強く求められており、これらへの対応の遅れは当社グループの業績等に重要な影響を与える可能性があります。

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、LPガス事業の営業権の買収や同業者のM&Aで事業基盤の維持拡大に努めています。また、石油・ガス・電気のエネルギーを取り扱い、セット販売等でお客様に継続してお取引いただくことや顧客数拡大に向けた新たな取り組みとして、CO2排出量を実質ゼロとする「ミライフカーボンニュートラルLPガス」の販売を開始する等により競争激化に対するリスク低減に取り組んでいます。

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、実質再生可能エネルギー100%の電気料金プランの提供をはじめ、オフサイトコーポレートPPAによる再生可能エネルギー電力の供給開始やCO2排出量削減に寄与する次世代バイオディーゼル燃料の取り扱い開始など、「電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換」に向けた取り組みを進めています。

 

(4) 石油・LPガス設備の保安等と環境汚染に関するリスク

当社グループは、「保安は全てに優先する」と考え、石油及びLPガス販売に係る設備等について、関係諸法規及び内部規程に基づき定期的に厳格な保安監査を実施しています。また、石油設備については石油漏出による環境汚染事故を防止するため損害保険ジャパン株式会社と共同でリスクファイナンスを含む総合リスクマネジメントを実施しています。しかしながら、これらの対策が石油及びLPガスの漏洩等の事故及びそれによる損失の可能性を無にするものではありません。

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、ガス関連設備について、法定点検に加えて、お客様の要望に応えた自主保安点検として戸建て住宅向けに「ひまわり点検」を実施しています。また、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、石油漏出を早期発見するため、日々漏洩点検を実施すること等により設備の保安等と環境汚染に関するリスク低減に取り組んでいます。

 

B.グループ事業全般におけるリスク

(1) 取引先の信用リスク

当社グループの販売形態には、卸売販売及び小売販売があります。卸売販売については主に掛売りをしており、2024年3月末現在の「受取手形及び売掛金等の売上債権」の残高は398億円であります。

これらの売上債権については、回収サイトの短縮化や、取引先の資金状況を勘案し一部現金による前受制により回収の早期化を図っています。また、コンピュータシステムによる与信等債権管理の徹底を行っています。さらに、当社グループは貸倒損失発生時に備え十分な引当金を計上していますが、予測不能な事態が生じた場合には、売上債権の回収に支障をきたし、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、信用調査会社のデータベースに基づき、毎年、与信枠を設定することで与信管理を徹底し、与信枠を増枠する場合は、個別に決裁すること等により取引先の信用リスク低減に取り組んでいます。

 

(2) 外国為替変動リスク

当社グループは、主に、国内において円建による取引を行っていますが、シナネン株式会社の石油製品の輸出入及びシナネンサイクル株式会社の自転車の輸入、株式会社シナネンゼオミックの抗菌剤の輸出については一部外貨建で取引を行っています。このため、当社グループの業績が外国為替の変動に影響を受けることがあります。当社グループは、為替変動リスクを軽減するためヘッジ取引を行っていますが、必ずしもこれを完全に回避できるものではありません。

 

また、主力商品である石油類及びLPガスについては主に国内元売会社から仕入れていますが、原油やLPガスの輸入価格が、為替の変動により間接的に当社グループの仕入価格に影響を及ぼすというリスクを有しています。

外国為替取引においては、為替予約や想定為替レートを設定し、ヘッジ取引により外国為替変動によるリスク低減に取り組んでいます。

 

(3) 固定資産の評価に関するリスク

当社グループは、主にエネルギー事業に係る資産として、石油類卸売設備、LPガス充填設備及びガソリンスタンド設備並びにこれらの設備を使用するための土地を保有しており、有形固定資産の2024年3月末現在の帳簿残高は282億円となっています。当社グループはこれまで非効率資産の売却を進め、財務体質の強化に努めています。

設備投資については、回収可能性を十分に検討したうえで実行し、定期的に回収可能額の評価を行いますが、その結果、新たに減損損失が発生するリスクを有しています。

当社グループでは、第三次中期経営計画において、資本効率の改善を定性目標として掲げています。事業の効率化を進め、利益率を向上させること、低稼働資産を有効活用し、収益をあげること等により固定資産の評価に関するリスク低減に取り組んでいます。

 

(4) 投資等に係るリスク

当社グループは経営基盤の強化を図るため、子会社または関連会社の設立、外部との資本提携等を行っていく可能性があります。投資等にあたっては投資リスク等を勘案したうえで決定し、その後定期的に投資価値のチェックにより回収可能性の判断を行っています。その際、必要に応じて回収不能額を見積り、引当金等を計上する方針ですが、投資先の経営成績及び財政状態が予想以上に悪化した場合には、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。

また、当社グループは、取引の関係や提携の強化・円滑化を図る政策的な理由等から株式を長期間保有しています。これらの株式の一部については、減損処理を行っていますが、その後の投資先の経営成績及び財政状態並びに株価の推移等から投資価値は十分にあると認識しています。しかしながら、日本経済の動向及び海外情勢等に予測し難い事態が生じた場合には、株価下落により評価損が発生し、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、事業投資や資産の取得等の投資について、適正性・収益性等を評価する「事前審査委員会」と代表取締役社長の意思決定に関する諮問機関としての「経営会議」を設置しています。それらの機関での検討内容を参考にして、最終的な意思決定をすることにより投資等に係るリスク低減を進めています。また、投資後についても、一定期間モニタリングを継続し、事前に定めた撤退審議基準に抵触した場合は、その改善を指示し、あるいは撤退・売却を指示すること等によりリスク低減を進めています。

 

(5) 新規事業に参入するリスク

当社グループは、新規収益源の発掘・育成を積極的に推進していきますが、事業環境の変化によっては、新規事業が想定通りの収益を計上できない可能性があり、将来においてこれらの新規事業の業績が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新規事業への参入についても投資等に係るリスクと同様に「事前審査委員会」「経営会議」のプロセスを経ること、新規事業のフィジビリティスタディ(実行可能性評価)を事前に実施すること等によりリスク低減に取り組んでいます。また、投資後についても、投資等に係るリスクと同様のモニタリングを実施し、事前に定めた撤退審議基準に抵触した場合は、その改善あるいは撤退を指示することによりリスク低減を図っています。

 

(6) 海外取引に伴うリスク

株式会社シナネンゼオミックの製造する抗菌剤「ゼオミック」について、EPA(米国環境保護庁)及びFDA(米国食品医薬品局)等をはじめとする国内外の取得許認可を活かして、米国、欧州、中国、韓国及び東南アジア等への販売活動を進めています。欧州においては、規制情報の収集や関係当局との情報交換を通じて、EU-BPR(欧州殺生物性製品規則)の承認取得に取り組んでいます。

このように当社グループは海外事業へ進出していますが、法令または関税等の貿易取引制度の改正、政治的・経済的変動、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しています。

当社グループでは、海外進出において、政治動向、経済動向、法制度、(優遇)税制等を事前に調査・評価することにより海外進出に関するリスク低減に取り組んでいます。

 

(7) 製品の品質及び安全に関するリスク

当社グループは、抗菌事業、環境・リサイクル事業、自転車等の輸入販売事業その他の事業において製造、販売をしています。製品の生産開始以来、品質管理には十分留意しており、製造物責任法(PL法)の施行後は、生産物責任賠償保険に加入し、事故発生による費用負担の低減を図っています。また、消費生活用製品安全法に基づき、製品の安全な使用方法に関する周知徹底を図るとともに事故発生時の対応強化に努めています。

しかしながら、今後大規模な製品回収や製造物責任が問われる不測の製品事故等が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

抗菌事業を行う株式会社シナネンゼオミックでは、2002年4月にISO9001の認証を取得した上で、社内の品質監査体制を強化しています。また、製品の製造・販売を行う各事業会社においては、品質管理を担当する部署を設置すること等により製品の品質及び安全に関するリスク低減に取り組んでいます。

 

(8) 個人情報の取り扱いについて

当社グループは、エネルギー事業における石油・ガス・電気等の消費者データ及び非エネルギー事業における製品販売・サービス提供等で取得した顧客データ等の個人情報を保有しています。これらの個人情報を保護するために、リスク・コンプライアンス委員会を設置するとともに、従業員等に向け定期的に個人情報保護に関する研修の実施、暗号化等の情報セキュリティシステムの導入、各種規程の制定等を行っています。

しかしながら、何らかの原因により個人情報が外部に漏洩した場合には、当社グループに対する信用が失われ、その結果、売上高の減少等により当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、個人情報保護方針、個人情報保護規程を制定し、個人情報の取り扱いに関するリスク低減に取り組んでいます。また、システム事業を行う株式会社ミノスは、プライバシーマーク認定事業所であるほか、同社運用部では情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格である「ISO/IEC27001:2013・JISQ27001:2014」を取得し、リスク低減に取り組んでいます。

 

(9) 自然災害等に関するリスク

当社グループは、石油卸売設備、LPガス充填設備及びガソリンスタンド設備等のエネルギー事業の設備、抗菌事業の製造設備、自転車事業の倉庫や店舗(在庫を含む)、シェアサイクル事業の自転車やステーション設備等の資産を所有しています。これらの設備が大規模な台風、地震、津波、洪水等の自然災害等により被災した場合、正常な事業活動ができなくなり、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、充填施設等、事業継続のため中核施設には非常用電源を設置し、自然災害等の被災に備えています。また、建物は免震、耐震、制震構造とすることにより自然災害に関するリスク低減に取り組んでいます。

2024年1月1日に発生した「能登半島地震」においては、能登半島にミライフ西日本株式会社の珠洲店があること から、グループ危機対策本部を立ち上げました。当連結会計年度においては珠洲店の設備被害、太陽光発電設備の損傷などの物的被害が確認され、太陽光発電設備損傷による特別損失1億円を計上しております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における国内エネルギー業界においては、主力の石油類・LPガスの仕入価格に影響を及ぼす原油価格・プロパンCPが、主要産油国による協調減産の延長などを受けて一時急騰したものの、世界的な温暖化や中国の景気低迷などによる需給の緩みが影響し、全体としては前連結会計年度と比べて低位で推移しました。また、電力市場においては、燃料価格の低下と需要の減少により電力需給が安定しており、卸電力市場価格は前連結会計年度と比べて、全体としては低位で推移しました。

このような環境の中、当社グループは、2027年度の創業100周年に向けて当連結会計年度から第三次中期経営計画をスタートさせ、「脱炭素社会の実現に貢献する総合エネルギー・ライフクリエイト企業グループへの進化」というビジョン達成に向けて、経営基盤の強化を加速させ、成長戦略を進めています。事業面では、「既存事業の収益拡大」と「脱炭素社会の実現に寄与する新規事業創出」の両輪で収益性の向上を図ってきました。

その結果、当連結会計年度の業績については、石油類と電力の販売数量が増加したことにより、売上高は3,482億82百万円(前連結会計年度比1.8%増)となりました。

損益面は、電力事業において、前連結会計年度に調達した相対電源を、低位で推移する卸電力市場価格の影響を受けた「逆ザヤ」での売却を余儀なくされたことなどにより売上総利益が悪化し、営業損失7億11百万円(前連結会計年度は営業利益8億95百万円)となりました。その一方、受取配当金や受取保険金など営業外収益を10億57百万円計上した影響などにより、経常利益93百万円(前連結会計年度比92.4%減)となりました。また、「令和6年能登半島地震」により損傷した太陽光発電設備等の災害による損失など特別損失を3億89百万円計上した影響などにより、親会社株主に帰属する当期純損失については10億39百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益4億78百万円)となりました。

なお、電力事業については、損失リスクを最小化するべく、今後の実施体制の見直しを行いました。BtoB事業においては、市場連動型プランへの移行の推進を図る一方、BtoC事業においては、他社のバランシンググループ(複数の小売電気事業者が1つのグループを形成し、一般送配電事業者との間で1つの託送供給規約を結ぶ仕組み)に参加し、電源調達と需給管理を委託することで、需給バランスの最適化を図っていきます。

 

セグメント毎の取り組み状況は次のとおりです。

 

[エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)]

売上面は、主力の「LPガス・灯油販売」において、平均気温が平年と比較して高くなったことで販売数量が低調に推移し、減収となりました。

損益面は、主力のLPガス販売において前連結会計年度に行った価格改定が寄与し、増益となりました。

なお、第三次中期経営計画で示した顧客数拡大に向けた新たな取り組みとして、CO2排出量を実質ゼロとする「ミライフカーボンニュートラルLPガス」の販売を開始しました。

以上の結果、当連結会計年度におけるエネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)の売上高は750億20百万円(前連結会計年度比7.9%減)、営業利益は8億27百万円(前連結会計年度比448.0%増)となりました。

 

[エネルギーソリューション事業(BtoB事業)]

売上面は、主力の石油事業において、軽油と重油を中心に前連結会計年度を上回る販売数量を確保しました。また、電力事業において、市場連動型プランの新たな大口顧客を獲得したことなどにより、増収となりました。

損益面は、前述した電力事業における売上総利益の悪化が大きく影響し、赤字幅が拡大しました。

なお、オフサイトコーポレートPPAによる再生可能エネルギー電力の供給開始やCO2排出量削減に寄与する次世代バイオディーゼル燃料の取り扱い開始など、第三次中期経営計画で示した「電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換」に向けた取り組みを進めています。

以上の結果、当連結会計年度におけるエネルギーソリューション事業(BtoB事業)の売上高は252,544百万円(前連結会計年度比4.7%増)、営業損失は25億69百万円(前連結会計年度は営業損失3億46百万円)となりました。

 

[非エネルギー事業]

非エネルギー事業全体としては、自転車事業が好調に推移したことなどにより、増収増益となりました。

事業別の状況は、次のとおりです。

自転車事業(シナネンサイクル株式会社)は、前連結会計年度後半より実施した価格改定の寄与に加えて、プライベートブランド製品の販売強化や新規法人開拓を推進し、増収増益となりました。

シェアサイクル事業(シナネンモビリティPLUS株式会社)は、シェアサイクルサービス「ダイチャリ」の拠点開発を推進するとともに、埼玉県蕨市など新たな地方自治体との実証実験を開始しました。2024年3月末現在、ステーション数3,500カ所超、設置自転車数12,000台を超える規模に拡大し、増収となった一方、バッテリー交換に伴う販管費の増加などが影響し、減益となりました。また、他社のメンテナンスを担う体制を構築し、HELLO CYCLING全体の運営品質の向上を推進しています。

環境・リサイクル事業(シナネンエコワーク株式会社)は、新設住宅着工戸数の伸び悩みによる建設系廃木材の発生量減少に加え、運送費など変動費の増加により、減収減益となりました。

抗菌事業(株式会社シナネンゼオミック)は、中国経済の低迷に起因する海外向け需要減少の影響があった一方、国内向けの販売が順調に推移しており、全体では増収増益となりました。なお、フィンランド発の天然系抗菌剤の独占販売代理契約を締結するなど、新たな取り組みを進めています。

システム事業(株式会社ミノス)は、主力のLPガス基幹業務システムが安定的に貢献し、前連結会計年度並みの収益となりました。なお、顧客情報システム(電力CIS)については、市場の変動に応じて価格・サービスを調整する市場連動機能を構築するなど、新たな開発を随時進めています。

建物維持管理事業を手掛けるグループ4社は、2023年10月よりシナネンアクシア株式会社として統合し、総合建物メンテナンス会社として、新たなスタートを切りました。当連結会計年度は、集合住宅の建物メンテナンス業務のエリア拡大に加え、斎場・病院など施設運営業務が好調に推移し増収となった一方、統合に伴う販管費の増加などが影響し、減益となりました。なお、第三次中期経営計画で示した「業務エリアのさらなる拡大」に向けて、埼玉エリアにおいて新たな拠点開設を準備しています。また、大型物件の管理開始など「安定収益の確保」に向けた取り組みの成果も現れています。

以上の結果、当連結会計年度における非エネルギーの売上高は204億88百万円(前連結会計年度比5.9%増)、営業利益は8億94百万円(前連結会計年度比4.5%増)となりました。

※ CISとは、Customer Information Systemの略で、顧客情報の管理から契約形態に合わせた料金計算、請求までの業務を一括で管理できるシステムのこと。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、115億83百万円(前連結会計年度比16.7%増)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、営業活動の結果使用した資金は、9億45百万円(前連結会計年度は3億89百万円の収入)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純損失70百万円、減価償却費28億75百万円、売上債権の増加34億21百万円、仕入債務の増加15億75百万円及び法人税等の支払額11億40百万円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、投資活動の結果使用した資金は、16億67百万円(前連結会計年度は6億98百万円の支出)となりました。この主な要因は、投資有価証券の売却及び償還による収入13億7百万円及び固定資産の取得による支出24億33百万円等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において、財務活動の結果得られた資金は、42億75百万円(前連結会計年度は4億35百万円の収入)となりました。この主な要因は、短期借入金の増加額58億20百万円、長期借入金の返済による支出4億45百万円及び配当金の支払額8億19百万円等によるものです。

 

なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりです。

 

 

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

自己資本比率(%)

52.9

51.2

52.9

49.1

時価ベースの自己資本比率(%)

34.2

34.3

34.6

49.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.7

3.4

13.9

△11.4

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

65.4

12.3

4.6

△9.9

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

a.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。

b.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式を除く)により算出しています。

c.営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用し、利払いは同計算書の利息の支払額を使用しています。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、社債及びコマーシャル・ペーパーの合計額を対象としています。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

(単位:百万円)

セグメントの名称

販売高

前年同期比増減率(%)

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)

75,020

△7.9

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)

252,544

4.7

非エネルギー事業

20,488

5.9

その他・調整額

229

0.2

連結合計

348,282

1.8

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しています

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 概観

当社では、2014年8月に経済産業省より公表されたいわゆる「伊藤レポート」を契機に、資本効率を意識した企業価値経営への転換を図っており、長期的な株主価値の向上に資するべきと考えています。そこで、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの動向を検討する上では、ROE(自己資本利益率)を重要な経営指標として位置付け、2023年4月からスタートした第三次中期経営計画においてもROE8.0%以上を財務目標として掲げています。

ROE向上に向けては、ROEの構成要素のうち、収益性と効率性の改善を優先的に取り組むこととしています。第三次中期経営計画においても、「資本効率の改善」を成長戦略の1つとして掲げており、建物維持管理事業の統合を皮切りに既存事業の選択と集中を踏まえたグループ内再編を推進し効率性の改善を図るとともに、主力事業におけるエリア効率性の向上を促進し、収益性の向上を図っていきます。

 

ROEの構成要素に関する目標値は下記のとおりです。なお、比較基準年は、第一次中期経営計画前年度の2016年度としています。


 

ROEを持続的に向上させるためには、現在の事業構造から脱却し、新規事業をはじめ収益率の高い事業を伸ばすことで、新たな事業構造を作り上げていく必要があると考えています。当社グループは、引き続き、財務レバレッジに過度に依存することなく、収益性・効率性の改善に取り組み、ROE8.0%以上を持続的に生み出す事業構造を確立していきます。

 

② 経営者による財政状態の分析

流動資産

当連結会計年度末における流動資産の残高は654億10百万円となり、前連結会計年度末と比較して66億49百万円増加しました。

増加した主な要因は、売上債権である売掛金が31億53百万円増加したこと等によるものです。

 

固定資産

当連結会計年度末における固定資産の残高は430億70百万円となり、前連結会計年度末と比較して4億80百万円増加しました。

増加した主な要因は、固定資産の減価償却による減少があった一方で、評価替え等による投資有価証券の増加が発生したこと等によるものです。

 

流動負債

当連結会計年度末における流動負債の残高は467億23百万円となり、前連結会計年度末と比較して76億51百万円増加しました。

増加した主な要因は、短期借入金が57億88百万円増加したこと等によるものです。

 

固定負債

当連結会計年度末における固定負債の残高は84億40百万円となり、前連結会計年度末と比較して2億5百万円減少しました。

減少した主な要因は、長期借入金が4億28百万円減少したこと等によるものです。

 

純資産

当連結会計年度末における純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失10億39百万円及び利益剰余金の配当による減少8億20百万円等により533億15百万円となり、前連結会計年度末と比較して3億15百万円の減少となりました。

以上により、自己資本比率は前連結会計年度末と比較して3.8ポイント減少し、49.1%となりました。

 

③ 経営者による経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度における経営成績は、売上高3,482億82百万円(前連結会計年度比1.8%増)、営業損失7億11百万円(前連結会計年度は営業利益8億95百万円)、経常利益93百万円(前連結会計年度比92.4%減)、親会社株主に帰属する当期純損失10億39百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益4億78百万円)となりました。

 

売上高

当連結会計年度及び前連結会計年度におけるセグメント別の売上高及びその増減は以下のとおりです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)

81,419

75,020

△6,399

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)

241,251

252,544

11,292

非エネルギー事業

19,354

20,488

1,134

その他・調整額

228

229

0

連結合計

342,254

348,282

6,027

 

 

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)の売上高は、750億20百万円(前連結会計年度比7.9%減)となりました。これは主に主力の「LPガス・灯油販売」で、平均気温が平年と比較して高くなったことで販売数量が低調に推移したことによります。

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)の売上高は、2,525億44百万円(前連結会計年度比4.7%増)となりました。これは主に、電力事業において、市場連動型プランにおける新たな大口顧客を獲得したことによります。

非エネルギー事業の売上高は、204億88百万円(前連結会計年度比5.9%増)となりました。これは主に、自転車事業が好調に推移したことによります。

その他・調整額の売上高は、当社が管理している不動産賃貸収入に係る売上であり、2億29百万円(前連結会計年度比0.2%増)となりました。

 

売上総利益

当連結会計年度の売上総利益は323億83百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。これは主に、主力の石油類・ガス又は電気の仕入値の高騰が影響したことによります。

 

販売費及び一般管理費

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は330億95百万円(前連結会計年度比2.0%増)となりました。これは主に、従業員数増加等により人件費が増加したことに加え、IT関連投資等に係る支払手数料が増加したことによります。

 

営業利益

当連結会計年度及び前連結会計年度におけるセグメント別の営業利益又は営業損失(△)及びその増減は以下のとおりです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)

150

827

676

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)

△346

△2,569

△2,222

非エネルギー事業

856

894

38

その他・調整額

235

135

△99

連結合計

895

△711

△1,607

 

 

エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)の営業利益は、8億27百万円(前連結会計年度比448.0%増)となりました。これは主に、主力のLPガス販売において前連結会計年度に行った価格改定が寄与したことによります。

エネルギーソリューション事業(BtoB事業)の営業損益は、25億69百万円の営業損失(前連結会計年度は3億46百万円の営業損失)となりました。赤字幅が拡大した主な要因は、4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況に記載の通り、電力事業において売上総利益が悪化したことによります。

非エネルギー事業の営業利益は、8億94百万円(前連結会計年度比4.5%増)となりました。これは主に、自転車事業において前連結会計年度後半より実施した価格改定に加えて、プライベートブランド製品の販売強化や新規法人開拓の推進が収益に貢献したことによります。

その他・調整額の営業利益は、当社が管理している不動産賃貸収入に係る売上に加えて、セグメント間消去取引、各報告セグメントに配分されていない全社費用が含まれており、1億35百万円(前連結会計年度比42.3%減)となりました。これは主に、IT関連投資に係る支払手数料や人件費の増加によります。

 

営業外収益及び営業外費用

当連結会計年度の営業外収益は10億57百万円(前連結会計年度比37.6%増)となりました。これは主に、為替差益と受取保険金の増加によります。

また、当連結会計年度の営業外費用は2億52百万円(前連結会計年度比42.2%減)となりました。これは主に、持分法による投資損失の減少によります。

 

経常利益

上記の結果、当連結会計年度の経常利益は93百万円(前連結会計年度比92.4%減)となりました。

 

特別利益及び特別損失

当連結会計年度の特別利益は、2億25百万円(前連結会計年度比93.2%減)となりました。これは主に、固定資産売却益の減少によります。

また、当連結会計年度の特別損失は3億89百万円(前連結会計年度比85.9%減)となりました。

 

税金等調整前当期純利益

上記の結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純損失は70百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益17億89百万円)となりました。

 

法人税等

当連結会計年度の法人税等は9億61百万円で、前連結会計年度は20億46百万円から10億84百万円減少となりました。その要因は、赤字幅を増やしたグループ企業があったこと等によります。

 

親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損失は10億39百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益4億78百万円)となりました。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
ⅰ キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況・分析・検討内容は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

ⅱ 資金需要

当社グループでは、今後、第三次中期経営計画に掲げる「脱炭素社会に対応した事業構造への転換」のため、再生可能エネルギーや廃棄物再資源化等の新規事業開発、M&Aや営業権の買収のための投資など、継続的な資金需要が見込まれています。それらを実行するための資金調達にあたりましては、社債の発行、新たな借入金、自己株式の活用等の状況に応じて多様な資金調達ができるよう体制を整えています。

ⅲ 財務政策

当社グループは現在、運転資金については、当社及び一部を除く連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入し、各社における余剰資金を当社へ集中し一元管理を行うことで、資金効率の向上を図っています。借入による資金調達に関しては、一時的な不足資金は、金融機関からの短期借入を行っています。また長期的な資金の需要に対しては必要に応じて金融機関からの長期借入等を行っています。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

なお、新型コロナウイルス感染症による当連結会計年度における影響は、軽微にとどまりました。会計上の見積りを行うに際し、同感染症拡大が今後の見通しに与える影響について検討した結果、当社グループの主力事業は、生活に必要なエネルギーの供給事業のため消費量が大きく変動することが少なく、グループ全体としての影響は引き続き限定的であり、見積りに重要な影響を与える変動は見込んでいません。

 

繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収懸念額の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純損益が変動する可能性があります。

 

固定資産の減損

当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たっては慎重に検討していますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。

 

貸倒引当金

当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収の可能性を勘案し回収不能見込額を計上しています。

取引先の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの当連結会計年度における研究開発費は182百万円であり、非エネルギー事業において研究・開発を行っています。

非エネルギー事業の株式会社シナネンゼオミックは、抗菌、抗ウイルス、消臭及び吸着の各技術に関する研究開発を行っています。

抗菌事業においては、課題であった変色問題を改善し、製品化した低変色性銀ゼオライトの新規顧客獲得、既存顧客維持のため技術フォローを継続しています。また、将来的な抗ウイルスニーズに備え、銀ゼオライトの抗ウイルス性能強化を目指した処方開発も継続しています。

鉛吸着剤事業においては、順調に販売を増やしました。さらなる吸着分野の拡販を目指し、市場ニーズの高い水銀吸着剤の製品化を進めます。

フォーミュレーター事業においては、日本、韓国での独占販売代理店契約を締結した北欧企業Nordic BioTech Group Ltd.の天然抗菌剤「NordShield®」について、市場ニーズにマッチした製品開発のため技術フォローに注力しています。

また、化学物質規制が年々厳しさを増す中で、引き続き世界各国の化学規制に対応した非銀系抗菌剤の開発を進め、製品ポートフォリオの拡充を推進します。