第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。なお文中の将来に関する事

項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、「技術力を培う 豊かさを求める 社会に貢献するという企業理念のもと株主をはじめとするすべてのステークホルダーから信頼される誠実で透明性の高い経営の実現を目指しております

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 このような基本方針のもと企業行動規範を制定しコンプライアンス・プログラムを実施するとともに内部監査制度の充実IR活動の強化や適切な社内組織の見直し等により業務の有効性・効率性を確保してまいります

 また情報通信ネットワークの構築をはじめとした多彩なエンジニアリング及びソリューションを提供することにより豊かな生活環境を創り出す企業集団として社会に貢献してまいりたいと考えております。

 

(2)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 今後の当社を取り巻く経営環境につきましては、半導体関連産業の活況やインバウンド需要の回復などにより、景

気の回復が期待される一方で、地政学的なリスクや急速な円安の進展など、景気を下押しする要因に注意が必要な状

況が続いています。生成系AIの出現や国のデジタル田園都市国家構想実現のため、高速・大容量な通信インフラの重

要性は益々高まるものと考えられ、トラヒックの増加に対応するための各通信キャリアによる無線基地局の設置や通

信品質向上に向けた投資は今後も継続すると想定されます。情報通信分野における設備投資は今後も堅調に推移し、

生活スタイルの多様化に関連するソリューションも益々拡大していくものと思われます。 また、建設分野におきま

しても、情報社会の基盤であるデータセンターの建設や社会インフラ整備等の公共投資は堅調に推移するものと想定

され、再生可能エネルギーに関する投資も加速していくとみられます。

 このような経営環境のなか、当社グループは中長期的な企業価値向上を目指し、通信キャリア事業におきましては

収益性・生産性向上に努め、成長事業に位置付ける都市インフラ事業におきましては、引き続き、データセンターや

社会インフラ構築など大型工事の展開を行うとともに、再生可能エネルギーを始めとする領域の拡大に向けた人財の

育成にも努めてまいります。システムソリューション事業におきましては、高付加価値事業への挑戦を行い、上流の

コンサルティングから開発、保守運用までのトータルソリューションの提供を行ってまいります。また、グローバル

分野におきましては、引き続き、新たな領域での事業展開を模索する一方で、資本効率を考えた構造改革を推し進

め、利益創出を目指してまいります。

 このような取り組みを通じ、「2030ビジョン」及び「中期経営計画(2021~2025年度)」の達成のため、経営基盤

の強化に努めるとともに、資本効率の向上を意識しながら持続的成長と企業価値向上に挑戦してまいります。

 

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(3)目標とする経営指標

①2030ビジョン

 Engineering for Fusion~社会を繋ぐエンジニアリングをすべての未来へ~

これからの社会ではモノ情報インフラすべてがセンサーやネットワークを介して繋がりそれを実現するためのエンジニアリングは多様な技術の融合が求められています

当社グループでは新技術への対応やオープンイノベーションにより深化させたエンジニアリング力の融合を通じて情報通信基盤に留まらずあらゆる社会インフラにソリューションを展開し日本はもとよりグローバルレベルで未来の社会課題の解決に貢献することを目指します

 

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②中期経営計画(2021~2025年度)

2030ビジョンの実現に向けた当面5年間の戦略および業績目標を掲げた中期経営計画は2025年度業績目標として連結売上高 6,300億円営業利益 470億円(営業利益率 7.5%)ROE 9.0%以上EPS 140円以上(株式分割考慮後)の達成を目指してまいります

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2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 エクシオグループは、2021年5月に公表した「2030ビジョン」において、2030年に目指す4つの社会(「カーボンニュートラルな社会」「健康で生き生きと暮らせるスマート社会」「グローバルで多様性を享受する社会」「貧困・格差が解消される社会」)を定義し、社会課題の解決を普遍的な使命として、日本はもとよりグローバル社会から必要とされる企業グループであり続けることを宣言しています。「ESG経営の実践」を3つの挑戦の一つとして掲げ、企業価値の向上とともに、サステナブルな社会の実現に向けた貢献を目指していきます。

 

 ①ガバナンス

ア.サステナビリティ推進体制

 エクシオグループは、2030ビジョンで掲げた挑戦のうち、「ESG経営の実践」に係る取り組みとして、2022年度にCSR委員会をサステナビリティ委員会に改編いたしました。

 これまでは社会貢献活動などを主に議論しておりましたが、気候変動対策を含めたサステナビリティに重点を置いた議論をしております。サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、経営会議の諮問機関という位置づけで、運営要領において、「当社グループの経営戦略の一環として、サステナビリティに関する方向性、重要課題、目標設定、情報開示等について審議および取り組み状況のモニタリングを行う」と目的を定めております。当委員会は、原則年2回開催し、経営会議および取締役会に対して方針および取組結果について審議・報告を実施しております。

 また、同じく2022年度に、気候変動対策を主としたサステナビリティに関する専任組織としての総務部にサステナビリティ推進室を設置しております。総務部サステナビリティ推進室は、サステナビリティ委員会の事務局を担うとともに、気候変動・人権・自然資本を主とした各種サステナビリティ施策について、グループ各社と連携しエクシオグループ全体の目標設定と進捗管理をする役割を担っています。

 

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イ.マテリアリティの特定

 当社グループでは、「2030ビジョン」の達成に向けて、 当社が重点的に取り組むべき課題(マテリアリティ)の特定を行いました。

 特定にあたって、まずは、GRIスタンダードなどの国際的な枠組みを参照し、社会課題を抽出。次に、グループ社員が参加してスコアリングやワークショップを実施し、「ステークホルダーにとっての重要度」「自社にとっての重要度」の2軸で重要度を評価しました。

 これをベースに作成した候補案をもとに、外部有識者や社外取締役・監査役にヒアリングを行い、そこで頂いた意見を反映し、最終案を作成。経営会議および取締役会の検討を経て、2023年5月19日に正式決定いたしました。

 

プロセス

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マテリアリティマトリックス

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 当社グループのマテリアリティは大きく4つ、さらに17のサブマテリアリティで構成されており、事業活動を通じてそれぞれの課題を解決していくことで持続的な成長を図っていきます。また、今回特定したマテリアリティについては定期的に見直すことにより、社会の変化にも柔軟に対応してまいります。

 

エクシオグループのマテリアリティ

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 ②戦略、指標及び目標

 当社グループでは気候関連リスク・機会を管理するにあたり、以下の指標と目標を設定しています。

ESG目標

KPI

2021年度

実績

2022年度

実績

2023年度

実績

2025年度

目標

集計範囲

E:環境

環境可能エネルギーの利用拡大を通じた気候変動への貢献

再生可能エネルギー由来の電力購入

33.6%

73.2%

77.8%

100%

エクシオグループ㈱の自社管理拠点

サプライチェーンを含む温室効果ガスの削減

(脱炭素への取り組み、グリーン製品活用)

EVなど低公害車導入率

95.5%

96.1%

96.7%

100%

エクシオグループ㈱の一般車両

CO2排出量

(Scope1・2)

「(4)気候変動」参照

グリーン製品利用率

71.4%

78.0%

82.1%

前年度水準以上

エクシオ

グループ㈱

循環型社会への貢献

産業廃棄物最終処分率

2.5%

3.2%

3.3%

2020年度

(5.6%)比50%減

エクシオ

グループ㈱

S:社会

安全品質文化の形成

重大人身事故・重大設備事故

「(2)人的資本・多様性」参照

人財の多様性の尊重

(ダイバーシティ&インクルージョンの推進)

女性管理職の人数

女性社員の人数

男性社員の育児休暇取得率

従業員満足

年間有給休暇取得率

人権の尊重

研修・eラーニングの実施

「(3)人権の尊重」参照

G:ガバナンス

コンプライアンス・リスクマネジメントの徹底

重大な法令違反

0

0

0

ゼロをめざす

連結

重大な情報セキュリティ事故

0

0

0

ゼロをめざす

連結

重大な事業リスクを伴う事案のリスク評価実施率

100%

100%

100%

100%

連結

コーポレート・ガバナンスの充実

取締役会・監査役会の多様性確保(社外役員数)

取締役

11名中4名

監査役

5名中3名

取締役

11名中4名

監査役

5名中3名

取締役

13名中5名

監査役

5名中3名

社外取締役1/3以上

社外監査役1/2超

エクシオ

グループ㈱

 

 

 ③リスク管理

 当社グループは、社会課題の解決を事業の根幹に置いており、サステナビリティの推進が事業機会の拡大にも寄与すると考えております。事業価値を創造・維持・実現する過程において戦略と事業目標を達成するためのリスク管理体制を整備し、リスクを許容可能な量に管理できるとの合理的な期待を当社グループのステークホルダーに確実に提供しております。

 具体的には、リスク管理に関わる基本事項を定めた「リスク管理規程」を制定し、リスクカテゴリーとそれに対応するリスク管理部門を設定し、リスクの識別および評価を行うとともに、全社的リスクマネージャーとして事業リスク管理委員会を設置し、当社グループ全体レベルでの各種リスクの管理を行う体制を構築・運用しており、サステナビリティに関わるリスクについてもこの体制の下で管理しております。

 当社が認識する事業等のリスクについては、(第一部 企業情報 第2 事業の状況 3.事業等のリスク)をご参照ください。

 

(2)人的資本・多様性

 “人財” 第一主義を基本に、人権の尊重、公正な評価と処遇、人財育成とプロフェッショナリズムの徹底により、従業員・会社双方の豊かさを追求しております。

 また、誰もがいきいきと働き、もてる能力を最大限に発揮できる職場環境が今後の持続的成長のために不可欠であると考え、働き方改革、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン推進等の取り組みを進めております。

 

 ①ガバナンス

 経営会議及び取締役会において、具体的な課題や施策について付議しております。また、研修計画や特に重要な案件等は、経営会議での議論を経て承認された計画を各部門が遂行し、個々の案件の承認は責任規定に基づき実施しております。実績につきましては、取締役会で報告を実施しております。

 

 ②戦略

 ア.人財の育成に関する方針

 急速な技術革新や市場変化に対応し、事業環境に即応できる人財の育成を図るため、新入社員研修、階層別研修、技術研修、変革リーダー育成プログラム、風土変革プログラムなど、さまざまな研修のほか、資格取得奨励制度や通信教育制度などの自己啓発支援、1on1ミーティングを通じた対話や全社員を対象としたキャリア開発計画(CDP)作成による社員の自律的成長機会の提供等を実施しております。また、海外事業を支えるグローバル人財の育成強化を目的に、当社グループ会社の海外拠点へ約1年間の派遣を実施しております。

 

 a.技術力

 当社の技術力は企業ブランドそのものであります。そのため、中期経営計画、2030ビジョン実現に向けた戦略的な技術者、DX人財等の育成に積極的に取り組んでおります。グループ会社も含め全国規模で技術研修を実施し、IT人財等高度な技術、最新の技術を持った技術者、現場の安全を守るリーダーの育成にも力を入れ、技術士等上級国家資格の取得、エンジニアリングの高度な専門技能、仮想化クラウド、ネットワーク・サーバ、プログラミング等ICT分野の最先端技術や、安全品質管理技術の習得に努めております。

 また、事業領域の拡大や事業構造シフトに伴って、社員のマルチスキル化やリスキリングのための研修を実施することで技術力やモチベーションアップにも注力していきます。

 技術力保持を目的に、2年に一度行われる技能五輪国際大会においては「情報ネットワーク施工」職種にエントリーし、過去6度の金メダルを獲得しております。引続き技術力の強化・向上と優秀な技術者育成を図り、社会に貢献していきたいと考えております。

 

 b.変革リーダー育成プログラム

 VUCAの時代にあり、また市場環境、事業環境が大きく変化する中で、「会社を変革させるリーダー」を育成するため、「変革リーダー育成プログラム」を導入し、2025年度を目指し、各事業セグメントにおいて事業を牽引するリーダーを育成してまいります。

 指標及び目標は、「④指標及び目標 ア.人財の育成に関する方針」に記載のとおりであります。

 

 イ.社内環境整備に関する方針

 a.安全品質文化の形成

 「安全」については、建設工事に携わる企業として、すべてに優先する項目であると認識しており、今後も安全に業務が実施される文化形成に向けた取り組みを継続してまいります。具体的な取り組みは、「3.事業等のリスク ⑤重大な人身事故・設備事故の発生」に記載のとおりであります。

 

 b.人財の多様性の尊重

 ダイバーシティ推進活動については全社で取り組みを進めており、厚生労働大臣から「えるぼし」の認定を2016年に受けております。また、女性活躍推進法による一般事業主行動計画5年間(2021年4月1日~2026年3月31日)の取組みを実施しており、目標達成に向けた女性の積極採用や、管理職育成計画の作成などに取り組んでおります。

「work with Pride」が策定した職場におけるLGBTQなどのセクシャル・マイノリティに関する取り組み評価の指標を定めた「PRIDE 指標」において2020年度はブロンズ認定を、2021年度、2022年度と連続してシルバー認定を取得、更に、2022年度はダイバーシティ&インクルージョンに取組む企業を認定するD&I AWARDにて最上位の認定となるBest Workplace for Diversity & Inclusionを取得しております。今後も認定継続に向けた取組みを行ってまいります。

 

 c.従業員満足

 当社グループは、労使の相互信頼を基盤として、企業の発展と従業員の労働条件の維持・向上を図るため、定期的に労使協議の機会を設け、安定した労使関係の構築に努めております。積極的な事業運営を行い、企業の健全な発展を図るため、事業計画やその他の重要課題について、労使で意見交換を行う労使懇話会を行っております。また、労働時間等設定改善委員会を定期的に開催しており、年間総労働時間目標の設定や有給休暇取得の目標づくり、所定外労働時間削減方法、有給休暇取得に向けた具体策の検討などにも取り組んでおります。

 

 d.健康経営の推進

 当社グループの業務に従事するすべての従業員および家族の健康は、当社にとって大切な「財産」であると考え、すべての従業員の健康を大切にし、一人ひとりが心と身体の健康を自ら考えて行動できる環境づくりをめざします。また、従業員がそれぞれの力を十分に発揮し、「働きがい」と「働きやすさ」をバランスよく実現できる制度・風土づくりを健康の面からも推進していくことで、組織の活性化・生産性向上につなげます。その実現に向け、2024年4月「エクシオグループ健康経営宣言」および「エクシオグループ健康経営基本方針」を制定し、従業員とその家族の健康維持・増進に向けて活動を推進してまいります。

 

 ③リスク管理

 人財の流出、事業に必要なスキルのアンマッチ、社員の士気の低下をリスクと考え、誰もがいきいきと働ける職場環境の整備、社員に成長の機会を提供することで、リスク低減に努めております。研修計画では、イノベーション研修や1on1研修を取り入れ、エンゲージメントを高める機会の創出にも力を入れております。

 

 ④指標及び目標

 ア.人財の育成に関する方針

指標

KPI

2021年度

実績

2022年度

実績

2023年度

実績

2025年度

目標

集計範囲

変革リーダー育成プログラム

累積受講者数

24名

362名

589

1,040

連結

 イ.社内環境整備に関する方針

指標

KPI

2021年度

実績

2022年度

実績

2023年度

実績

2025年度

目標

集計範囲

備考

安全品質文化の形成

重大人身事故・

重大設備事故

4

4

2

ゼロを

めざす

エクシオグループ㈱及び主要子会社5社*

 

人財の多様性の尊重

(ダイバーシティ&インクルージョンの推進)

女性管理職の人数

(注)1

(注)2

22名

27名

35

2020年度比1.5倍

エクシオグループ㈱

20年度実績

20名

40名

42名

57名

エクシオグループ㈱及び主要子会社5社

 

女性社員の人数

(注)2

313名

328名

343

2020年度比25%増

エクシオグループ㈱

20年度実績

307名

538名

560名

595名

エクシオグループ㈱及び主要子会社5社

 

男性社員の育児休暇取得率

(注)3

7.5%

17.5%

32.9%

20%

エクシオグループ㈱

 

従業員満足

年間有給休暇取得率

64.5%

76.0%

78.8%

80%

エクシオグループ㈱

 

62.1%

71.5%

74.1%

エクシオグループ㈱及び主要子会社5社

 

*主要子会社5社:シーキューブ㈱、西部電気工業㈱、日本電通㈱、大和電設工業㈱、㈱エクシオテック

(注)1 2023年度女性管理職には執行役員含む

  2 女性社員・女性管理職共に、雇用会社としての集計(出出向含む)。主要5社は各社報告に基づく

  3 男性社員の育児休業取得率は、対象に契約社員を含む

 

(3)人権の尊重

 当社グループは、あらゆる事業活動の場において、人権を尊重することが企業にとって重要な社会的責任であると認識し、その責任を果たすことで、持続可能な社会の実現に貢献します。

こうした人権尊重の取り組みを推進するため、国連人権理事会により採択された「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき2024年1月「エクシオグループ人権方針」を制定しました。(https://www.exeo.co.jp/company/sustainability/csr/pdf/humanrights202401.pdf)

本方針に基づく、国際基準に沿った人権デュー・ディリジェンス・救済メカニズムによる人権侵害リスクの防止・軽減等に取り組み、人権に配慮した経営に努めます。

 

 

ガバナンス

 

(1)に記載の「サステナビリティ全般」を参照

戦略

人権尊重の社会的責任を果たすべく、以下のとおりグループ全体で人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、定期的かつ継続的に実施します。

 

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リスク管理

当社グループは、以下の基本的な人権課題に対する取り組みを行っており、すべての役職員に対し、その遵守を徹底します 。

カテゴリー

人権課題

ダイバーシティ&インクルージョン

パワーハラスメント・セクシャルハラスメント等の各種ハラスメント

人種・性的指向・障がい・妊娠等に対する差別的な発言や嫌がらせ

健康経営の推進・労働環境の整備

安全かつ健康的な作業条件を享受する権利

雇用条件・待遇における差別、同一労働同一賃金

適正な報酬・生活賃金の支払い

地域社会との調和

不十分な安全衛生管理により事故・災害を発生させたことによる地域住民への被害

プライバシーの保護

個人情報等の漏えい・流出

今後も、外部専門家・ステークホルダーとの対話を行うなどしながら定期的に見直しを行い、これら人権への負の影響の防止・軽減に取り組みます。

 

指標と目標

 

区分

2024年度

目標

「エクシオグループ人権方針」の理解度を深めるための研修・eラーニングの実施

研修受講率100%

 

 

(4)気候変動

 当社グループは、気候変動を含む環境問題への対応を重要な経営課題として認識しています。温室効果ガス排出量の削減をはじめとする環境に優しい経営の実践と共に、再生可能エネルギー事業などを通じて気候変動に関連する社会課題の解決に貢献できるよう積極的に取り組んでいきます。また、2021年12月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同するとともに、TCFDコンソーシアムに加盟しました。当社グループはTCFDフレームワークに沿った情報開示を進めています。

 

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

 

ガバナンス

 

(1)に記載の「サステナビリティ全般」を参照

戦略

当社グループは、気候変動が当社グループの事業に与える影響を、シナリオ分析により把握しています。シナリオについては、1.5℃シナリオ(移行リスク)及び4℃シナリオ(物理的リスク)を用いています。

その結果、抽出したリスク項目及び機会項目は、以下の通り(例示)です。

 

リスク項目

機会項目

1.5℃

(移行)

政策・法規制

炭素価格高騰

再エネ関連の需要拡大による事業の拡大、サーキュラー・エコノミーの実現によるリファービッシュビジネスの拡大等

排出規制

市場・技術

技術者不足

評判

顧客の選好変化

4℃

(物理)

急性

気象の激甚化

防災・減災関連ビジネスの拡大等

慢性

気温の上昇

 

リスク管理

 

(1)に記載の「サステナビリティ全般」を参照

【補足事項】

① 気候変動に関するリスク・機会については、定期的に識別・評価しています。

② 国際規格ISO14001に基づいた環境マネジメントシステム及び国際規格ISO45001に基づいた労働安全衛生マネジメントシステムにおいて評価・特定されているリスクとも整合させています。

 

指標と目標

 

(単位:千t-CO2)

区分

目標年度

目標内容

2020年度

実績

2021年度

実績

2022年度

実績

Scope1・2

2030年度

温室効果ガス排出量を

42%削減(2020年度比)

86.6

79.9

76.9

2050年度

カーボンニュートラル

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼)

Scope2:他社から供給された電気の使用に伴う間接排出

※当社グループが排出している温室効果ガスはCO2(二酸化炭素)

※排出量の集計範囲は連結決算対象会社

 

TCFDへの対応についての詳細は、以下を参照して下さい。

https://www.exeo.co.jp/wp-content/uploads/2024/06/tcfd202406.pdf

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

これら主要なリスクは、2023年5月に発表した「マテリアリティ」(企業グループとして優先的に取り組むべき重要課題)とも紐づけ、当社グループにおいて定期的に洗い出し・評価を行う中で、影響度及び発生頻度を踏まえて優先的に対応すべき事項として記載しております。但し、以下は当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、影響を与える可能性があります。

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グル-プが判断したものであります。

 

(1)評価のプロセス

 

当社グループのリスク評価は、事業活動や経営計画等の自社固有のリスクのみならず、社会情勢や近年関心が高まっている社会課題を認識した評価や見直しを行います。

あらゆる可能性からリスク項目を定期的に洗い出し・評価を行い「影響度」と「発生可能性」の2軸で優先的に対応すべき事項を整理し、リスクヒートマップで図示します。

それぞれのリスク管理及びモニタリングは、リスク項目毎に各々対応した支援機能部門により実施し、重大なリスクとして評価された事象については事業リスク管理委員会へ報告され、当社グループのリスク管理体制のもと、リスク低減や改善に向けた具体的な取組を行います。

 

(2)リスク管理体制

 

当社グループのリスク管理体制については、リスク管理に関わる基本事項を定めた「リスク管理規程」を制定し、リスクカテゴリーとそれに対応するリスク管理部門を設定するとともに、全社的リスクマネージャーとして事業リスク管理委員会を設置し、当社グループ全体レベルでのリスクの識別及び評価を行う体制を構築・運用しております。

 

 

 

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リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

自然災害の発生

影響度

「大」

 

発生可能性

「高」

 

前期比較

 大規模災害等の発生や新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に代表される感染症のパンデミック発生、及びそれらに伴うライフラインの停止や燃料・資材・人員の不足による工事の中断・遅延、事業所の建物・資機材への損害等の不測の事態が発生した場合、当社グループの業績や事業継続計画(BCP)に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、自然災害や新型ウイルスのパンデミック等の発生に備え、人的被害の回避を最優先としつつ事業継続を図るため、訓練の実施及び規程・マニュアルの整備、時差出勤やテレワーク制度の導入、ワクチンの職域接種の実施等により、リスク回避と被害最小化に努めております。

 また、近年の台風の大型化、集中豪雨、地震の多発などによる自然災害、新型ウイルスなどの新たな脅威の高まりに伴い、当社グループにとっても事業運営への危機管理対応力の強化が不可欠と捉え、2020年4月に危機管理室を設置し、お客様視点に立った安定的で円滑な事業運営に向け、当社グループ提供サービスへの対応をはじめとした各種設備の保守やパンデミックなどによるレピュテーションリスクへの対応をグループトータルで強化しております。

資材・原材料等の調達価格の高騰

影響度

「大」

 

発生可能性

「高」

 

前期比較

 資材や原材料等の調達について、調達先における自然災害による被害、社会不安(戦争、テロ、感染症、地政学的リスク等)、業績悪化等により調達が困難になった場合に、施工がストップして契約工期に影響が出る可能性があります。

 また、調達価格が著しく高騰し、更には燃料費や物流コストの上昇も相まって、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 さらに、米政府による対中制裁やロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東紛争の激化など、様々な要因から生じている半導体不足は、一時期より落ち着きを見せているものの、その解消が長引いており、通信基地局の資材調達リードタイム長期化に伴う工期延伸等により、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。

 資材や原材料等の調達価格の上昇については、資材等の早期発注、多様な調達先の確保、工事価格への転嫁、価格が高騰した場合の条件を契約に盛り込む等の対策を実施し、リスクの低減に努めております。

 また、半導体不足につきましては、需給状況を注視するとともに、お客様への納期を守る観点から、物品が不足していない範囲の工事を先に行い、物品が揃った時点で完結させるという工事の段取りを丁寧に進めて影響の極小化に努めております。

 

 

 

リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

情報セキュリティ事故の発生

影響度

「大」

 

発生可能性

「高」

 

前期比較

 当社グループは事業運営上、顧客等が保有する技術データ・顧客データ等の重要な情報を取り扱っておりますが、パソコンやスマートフォン等の紛失・盗難や誤操作、不正アクセスによる情報流出、更にはコンピューターウイルスの感染や社外からのサイバー攻撃等、不測の事態をきっかけに重要な情報が流出したり、システム運用が継続できなくなった場合は、顧客からの信頼を低下させるほか、損害賠償義務の発生等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 情報セキュリティマネジメントシステムを構築・運用しており、情報セキュリティ最高責任者の配置や情報セキュリティ委員会の設置をする等、情報管理に対する重要性を十分認識した体制作りに取り組むとともに、情報セキュリティマネジメントシステムの認証及びプライバシーマークを取得して継続的な改善を図っております。

 また、近年より多様化・巧妙化するサーバーセキュリティ脅威に対して適切かつ迅速な対応を実現すべく、EXEO-SIRT(EXEO Security Incident Response Team)を2019年7月に設立するとともに、日本シーサート協議会に2019年12月に加盟し、サイバーセキュリティ脅威へのさらなる対応体制強化に努めております。

 EXEO-SIRTは、セキュリティ・インシデントを前提とする対応チームであり、情報や端末等の守るべき資産におけるサイバー攻撃の検知・防御、ウイルス感染や情報漏洩時の対応支援を実施しております。

 EXEO-SIRTの活動の中で、インシデント発生時の被害極小化を図るとともに、サイバー攻撃の動向や、当社グループ並びに他企業において観測された実事例を展開し、平生から随時注意喚起を行い被害発生の防止にも努めております。

 引き続き、グループトータルでのリスクマネジメント強化が重要との再認識の下、社内システム・提供システムのセキュリティ維持・向上を図ります。

 さらに、全従業員を対象にeラーニングによる啓蒙や、標的型攻撃メール訓練などを実施し、情報リテラシーの向上にも努めております。

法令違反・コンプライアンス違反

影響度

「大」

 

発生可能性

「中」

 

前期比較

 当社グループの事業は、建設業法・下請法・独占禁止法・労働安全衛生法・環境関連の法令等、さまざまな法的規制を受けており、法的規制の改廃や新設適用基準の変更等があった場合、当社グループの業績や信用に影響を及ぼす可能性があります。

 また、従業員による不正行為やハラスメントをはじめとする人権を侵害する行為、更に個人情報や営業秘密情報の漏洩等のコンプライアンス違反があった場合には、社会的な信用の失墜等により、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

 近年では特に環境及び働き方改革関連で新たな法規制の制定や法令の改正が増加しており、社内関係部署による法改正等の動向を注視するとともに、事前に法改正に向けた適切な対応方法等を当社グループへ展開することにより、統一的かつ速やかに法令を遵守する体制を構築しております。

 また、自主点検活動である「法令等遵守状況点検」を毎年実施するとともに、内部監査において遵守状況の確認や是正措置を実施しております。

 さらに、全ての従業員を対象としたeラーニング研修や、役員やリーダー層、若年層を対象とした階層別研修を実施するとともに、有効な内部通報制度の運用促進、ポスター等の啓発活動等を実施し、コンプライアンス強化を図っております。

 

 

 

リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

重大な人身事故・設備事故の発生

影響度

「大」

 

発生可能性

「中」

 

前期比較

 当社グループにおいて不測の事態により重大な人身・設備事故を発生させた場合、顧客からの信頼を低下させるほか、損害賠償義務の発生や受注機会の減少等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、「安全・品質の確保」に対する取り組みに万全を期し、管理を強化することで、建設工事現場における人身・設備事故の発生防止に日々努めております。

 2016年から「安全品質文化の原点回帰」をスローガンに、「安全・品質」の重要性を一人ひとりが理解し基本動作を実践できる体制づくりに取り組んできましたが、2021年度からは「安全・品質文化の進化(深化・進展)」を5カ年のスローガンとして掲げ、事故撲滅はもちろんのこと、品質向上と付加価値創出の取り組みを強化し、「安全安心で頼られる会社・グループ」を目指してまいります。

 安全におけるリスク低減措置に関しては、危険作業をなくしたり、見直したりして仕事の計画段階からの除去・低減(本質的対策)を第一に、重機等の設備的対策(工学的対策)を優先して進めております。

 さらに、ネットワークカメラ等のICT活用による現場とデスクの意思疎通の効率化・支援の充実、現場の責任者・職長等の人財育成などの管理的対策なども積極的に進めております。

 その他、対話型パトロールの充実により、賞賛事例を積極的に発掘し広めていくことで安全行動を習慣化する施策などにも注力しています。

 また、労働安全衛生マネジメントシステム、品質マネジメントシステムの認証を取得して「安全・品質」の継続的な改善を図っております。

 

 

 

リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

海外事業の展開

影響度

「大」

 

発生可能性

「中」

 

前期比較

 当社グループが東南アジアを中心とした諸外国で展開している中古IT機器を利活用したリファービッシュビジネスや、様々なソリューション事業には、政治・経済情勢の急激な変化、為替レートの大きな変動、法的規制の予期せぬ変更、地震・台風など自然災害、感染病・疫病の流行をはじめとした様々なリスクが存在します。

 また、米政府による対中制裁やロシア・ウクライナ情勢の長期化、更には中東紛争によって生じるリスクの懸念等もあり、原材料価格の上昇やサプライチェーン毀損による影響などに十分注意を要する状況が続いております。

 事前に想定できなかった問題の発生やこれらのリスクに対処できないことなどにより、事業展開が困難になった場合には、中期的なグローバル分野での事業領域の拡大に支障が出るなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 現在、アジア地域ではフィリピン、タイ王国、シンガポール、インドネシアに拠点を有していますが、これら海外子会社のオペレーションマネジメントならびに戦略的マネジメントを円滑に遂行する目的で、2018年11月、アジア地域における事業運営統括会社「EXEO GLOBAL」をシンガポールに設立、2023年7月には新グローバル本社ビル「The Pulse」を建設し、EXEO GLOBALとその子会社8社を集結してオープンしました。それによってICTインフラおよびテクノロジー分野のビジネスシナジーを高め、現地法人駐在の日本人取締役や、当社取締役が子会社の役員を兼務するなど、タイムリーに現地の情報収集を行うことで、ガバナンス強化、リスクマネジメントの強化等、当社と海外子会社の強いリレーションを図っております。

 また、海外事業の成長に対応した内部通報制度の充実を図り、海外で従事する当社グループ従業員向けのグローバル通報窓口を設置しております。

 なお、個々の事業投資等にあたっては、想定されるリスクの洗い出し、対応策の検討を行うとともに、知見・経験が十分でない事項については、外部専門家によるレビュ-を行っております。

 また、外貨建て資産・負債に対する為替レートの変動影響については、完全にヘッジすることはできませんが、為替予約や同一通貨建ての資産・負債を有することによる為替差損益の相殺等により、リスクの軽減を図っております。

M&A・事業提携

影響度

「大」

 

発生可能性

「中」

 

前期比較

 当社グループは、今後の業容拡大等においてM&A及び事業提携戦略は重要かつ有効であると認識しております。

 しかしながら、有効な投資機会を見出せない場合や、当初期待した投資効果を得られない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、M&A等により新規事業領域・新規市場へ参入する場合には、その事業・市場固有のリスクが新たに加わる可能性があります。

 なお、のれんが発生する場合はその償却額を超過する収益力が安定的に確保できることを前提としておりますが、買収後の事業環境や競合状況の変化等により買収当初の事業計画遂行に支障が生じ、計画どおりに進まない場合は当該のれんに係る減損損失等が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、2030ビジョン及び中期経営計画(2021年度~2025年度)において、M&Aなどの戦略投資にも積極的に取り組む方針としていることから、当該リスクが顕在化する可能性を常に認識しておく必要があります。

 M&A及び事業提携を行う場合においては、今後の市場同行や当社グループとのシナジー、対象企業が有する潜在的リスクの洗い出し等を、外部の弁護士や財務アドバイザー等による調査結果も活用し、これまでの知見・経験を活かした様々な視点から検証し決定しております。

 さらに、M&A等実施後においては、M&A等の検討段階での事業計画の進捗状況やシナジー効果の獲得度合い等、モニタリングを行っております。

 

 

 

リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

気候変動

影響度

「中」

 

発生可能性

「高」

 

前期比較

 気候変動は、社会の持続可能性に多大な影響を及ぼす喫緊の社会課題の一つです。

 当社グループは、社会課題の解決を普遍的使命と位置付けており、経営課題として「温室効果ガス排出低減に寄与する環境関連ビジネスの展開および自社の事業活動における環境負荷低減」をマテリアリティの一つに特定しております。

 なお、その対応次第では、以下の主なリスクについて中長期的に当社グループの業績や信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

(1)移行リスク

 当社グループが脱炭素社会への移行やお客様からの気候変動への対応ニーズに対応できないことにより、お客様や投資家等からのネガティブな評価に伴う企業価値の低下及び受注機会の喪失、カーボンプライシング制度等の導入に伴うコストの増加。

 

(2)物理的リスク

 気象の激甚化に伴って発生が想定される水害による建物・施工現場・施設等への被災リスク及び気温上昇による屋外施工現場の健康リスク(熱中症等)の増大、作業効率低下、受注分の引渡し遅延、対策コストの増加。

 移行リスクについては、事業活動における使用電力の再生エネルギー化を積極的に推進して温室効果ガス排出量を削減していくとともに、木質バイオマス発電所の建設や洋上風力発電等の再生可能エネルギー関連の需要増加に伴う事業の拡大等にも積極的に取り組んでまいります。

 物理的リスクについては、災害時のBCP対応力の強化やICTを活用した施工現場の安全管理及び作業効率の向上にも取り組んでまいります。

 今後も、気候変動の影響や温室効果ガス排出削減に向けた国の政策や社会の動向を注視しながら、事業を通じた「社会課題の解決」による持続可能な社会と当社グループの「持続的成長」の両立を目指してまいります。

 また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)で推奨される枠組みに沿って情報開示の充実に努めてまいります。

 

※詳細につきましては、2「サステナビリティに関する考え方及び取組」(4)気候変動を参照

 

 

 

リスク項目

リスク評価

リスク内容

対応策

特定取引先への依存度の高まり

影響度

「大」

 

発生可能性

「低」

 

前期比較

 当社グループは情報通信ネットワークの構築・施工を主な事業としていることから、通信キャリア各社との取引比率が高く、この傾向は今後も継続することが見込まれます。

 したがって、情報通信業界の市況動向や技術革新等により通信キャリア各社の設備投資行動及び設備投資構造が変化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 現在進行中の中期経営計画(2021年度~2025年度)において、3つの事業セグメントでそれぞれの成長戦略を進めており、それぞれの成長機会の拡大とリスクの分散、競争力の向上を図っています。

 

(1)通信キャリア事業

当社グループの売上比率41%を占める主格事業グループです。

 創業以来培ってきた実績と技術力で、通信設備に関する設計、施工から保守運用までワンストップでサービス提供できる強みを持ちます。通信5Gエリア拡大をはじめ、今後も益々通信インフラの高度化・技術革新が進展していくものと想定されます。

 

(2)都市インフラ事業

当社グループの売上比率29%を占めるのが都市インフラ事業です。

 通信・電気・都市土木など様々な工事をワンストップで構築することができ、カーボンニュートラルやGX(グリーントランスフォーメーション)に貢献する脱炭素社会実現に向けた再生可能エネルギー市場の拡大に今後期待される事業分野です。

 

(3)システムソリューション事業

当社グループの売上比率30%を占めるのがシステムソリューション事業です。

 企業や官公庁等におけるDX戦略意欲の高まりと、教育系商材やIoT機器の導入市場の拡大が期待される事業セグメントです。

 またシンガポールに事業拠点を置き、経済成長が続く東南アジアの市場深耕に取り組んでいます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ① 経営成績の状況

ア. 売上高

 都市インフラにおける事業拡大が続く一方、モバイル分野におけるキャリア事業者の投資抑制やグローバル分野における市場環境の悪化などにより、売上高は、前連結会計年度と比べ 135億1千2百万円減少し、6,140億9千5百万円(前期比 2.2%減)となりました。

イ. 営業利益

 グローバル分野における減益が大きく影響したものの、通信キャリアの利益率低下に歯止めがかかるとともに国内システムソリューションの採算性が向上し、営業利益は、前連結会計年度と比べ 15億6千8百万円増加し、341億2千1百万円(前期比 4.8%増)となりました。

ウ. 経常利益

 営業利益の増加に加え円安に伴う為替差益の拡大により、経常利益は、前連結会計年度と比べ 31億5千1百万円増加し、369億2千2百万円(前期比 9.3%増)となりました。

エ. 親会社株主に帰属する当期純利益

 海外子会社における棚卸資産評価損を特別損失に計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べ 21億7千4百万円減少し、200億5千8百万円(前期比 9.8%減)となりました。また、自己資本利益率(ROE)は 0.8ポイント減少し、6.5%となり、1株当たり当期純利益(EPS)は 7.73円減少し、94.76円となりました。なお、当社は2024年4月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、1株当たり当期純利益を算定しております。

 

 また、当連結会計年度におけるセグメント別の概況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

報告セグメント

通信キャリア

都市インフラ

システム

ソリューション

金額

増減率

金額

増減率

金額

増減率

受注高

(注)2

242,440

△5.3%

230,679

29.7%

183,413

△4.4%

売上高

(注)2

253,494

△6.5%

177,239

7.2%

183,361

△4.0%

セグメント利益

16,829

△3.1%

11,035

7.1%

6,256

28.0%

(注)1.記載金額は、百万円未満の端数を切り捨てて表示しております。

2.受注高」「売上高については外部顧客への取引高を記載しております

 

 ② 財政状態の状況

資産は、前連結会計年度末と比較して136億9千6百万円増加し、5,916億3千7百万円(前期比 2.4%増)

となりました。これは主に有形固定資産及び退職給付に係る資産の増加によるものであります。

負債は、前連結会計年度末と比較して25億7千8百万円増加し、2,725億7千7百万円(前期比 1.0%増)

となりました。これは主に未払法人税等の増加及び長期借入金の減少によるものであります。

純資産は、前連結会計年度末と比較して111億1千7百万円増加し、3,190億5千9百万円(前期比 3.6%増)

となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものであります。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ 27億7千3百万円減少し、474億3千万円となりました。

 各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

ア. 営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果獲得した資金は 419億2百万円(前期は 54億8千3百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益及び減価償却費によるものであります。

イ. 投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果使用した資金は 135億9千1百万円(前期は 133億3千2百万円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出によるものであります。

ウ. 財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果使用した資金は 305億5千5百万円(前期は 32億9千8百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の減少及び配当金の支払いによるものであります。

 

 ④ 生産、受注及び販売の実績

 ア. 受注実績

  当連結会計年度のセグメントごとの受注実績については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 イ. 売上実績

  当連結会計年度のセグメントごとの売上実績については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

 なお、当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載しておりません。

 また、主な相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

売上高

(百万円)

割合(%)

売上高

(百万円)

割合(%)

西日本電信電話株式会社

82,183

13.1

78,265

12.7

東日本電信電話株式会社

78,024

12.4

73,971

12.0

株式会社NTTドコモ

39,278

6.3

31,828

5.2

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 当連結会計年度の財政状況及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する各種規制が緩和され、半導体関連をはじめ設備投資に持ち直しの傾向がみられるなど景気は緩やかに回復いたしました。そのような経済情勢を背景に、2024年3月に日本銀行によるマイナス金利政策の解除が行われる一方、不安定な世界情勢の継続や電気料金をはじめとするエネルギー価格の高騰、急激な円安進行による国内物価上昇など、依然としてリスクに対し注視が必要な状況が続いています。

当社の事業領域である情報通信分野については、社会全体のデジタル化進展に伴い、あらゆる社会経済活動を支える最も基幹的なインフラとして、大規模自然災害やサイバーセキュリティの脅威・データ通信量の増大に対応可能な高度かつ強靭な通信ネットワークの構築が求められており大量のデータを蓄積・処理するデータセンターの重要性も更に増している状況です。

建設分野については、エネルギー価格の高騰による影響が続いているものの、民間設備投資は半導体関連産業や更なる生産性向上に向けたソフトウェアへの投資拡大などに持ち直しの傾向が見られ、防災・減災、国土強靭化に資する道路等の設備の更新・維持に向けた公共投資も底堅く推移する見通しです。さらに、エネルギー関連事業においては、脱炭素社会の実現に向けた再生可能エネルギーの主力電源化に向けて、蓄電池や送配電インフラ等の関連投資が今後さらに加速すると想定されます。

このような事業環境のなか、当社グループは、効率化を進めながら成長分野における積極投資を継続し、メリハリのある事業運営を行ってまいりました。通信キャリア事業におきましては、モバイル分野については、各通信キャリアが足元の設備投資を抑制し発注を絞っている状況に対応するため、大胆な人員シフトを含めた柔軟な施工体制の実現により生産性向上を加速する仕組みづくりを行い、効率的な業務運営に努めてまいりました。一方、アクセス分野については、コロナ禍によるリモートワークに伴う光回線需要は一巡したものの、通信インフラ設備の維持・更新に係る工事等については堅調に推移しております。都市インフラ事業におきましては、大規模データセンター構築や新築ビル・工場等の電気工事の受注などが引き続き好調に推移しており、公共関連では、高速道路インフラ関連工事についても堅調に推移しました。旺盛な建設需要に対して、選別受注を強化するなど収益性の向上にも引き続き取り組んでおります。システムソリューション事業におきましては、当社グループが強みを持つお客様に対して引き続き積極的な営業活動を展開するとともに、昨年実施した子会社を含む事業の再編により、上流から下流までの一気通貫でのサービスが可能となり、効率的かつ積極的に事業を運営してまいりました。グローバル分野については、IT機器を利活用するリファービッシュビジネスやインフラシェアリング設備構築のほか、EV充電設備構築を手掛けるなど、新たな事業の展開を行う一方、経営資源の効率的な活用を図るための構造改革を進めております。

当社グループは、自社利用電力の再生可能エネルギー化等の取り組みに加え、地域の未利用材を活用した木質バイオマス発電事業の展開など、環境経営にも積極的に取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度におけるセグメント別の概況は、次のとおりであります。

 

(通信キャリア事業の概況)

 通信キャリア事業におきましては、アクセス分野・ネットワーク分野は概ね計画通り推移しました。NCC各社を含むモバイル分野では、都市部を中心とした繋がりにくさ解消のための投資も行われている一方で、一部キャリア事業者の投資抑制が続いており、着実に手持ち工事の消化を進めるとともに、キャリア別の施工体制を一本化し、発生した人的余力を都市インフラ事業やシステムソリューション事業といった成長事業へシフトする取り組みを進めるなど、効率的な業務運営に努めております。

 

(都市インフラ事業の概況)

 都市インフラ事業におきましては、大規模データセンターに関する引き合いが引き続き強く、その他の大型開発ビル案件も含め電気関連工事が好調に推移しました。また、鉄道関連通信工事や高速道路トンネルの通信線路工事等も堅調に推移しました。エネルギー関連では、EV充電設備や蓄電池設備工事の需要が拡大しているほか、今後の事業拡大に向けた洋上風力発電の電力自営線構築を担う人財育成を引き続き進めております。また、一昨年来進めておりました2箇所の木質バイオマス発電事業について、栃木県足利市に建設した発電所は2024年3月に本格運用開始、福島県古殿町に建設中の発電所についても、2024年上半期に本格運用を開始する予定です。

 さらに、東急不動産株式会社様と連携し、再生可能エネルギーを活用した地域共生プロジェクトの拠点施設であるTENOHA 東松山において、「営農型太陽光発電」や「EV車」を核としたエネルギーマネジメントシステム(EMS)構築の実証実験を開始しました。再生可能エネルギーの効率利用を促進し、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 

(システムソリューション事業の概況)

 システムソリューション事業におきましては、システム開発・運用保守における中核会社2社を中心に、上位コンサルから保守運用までワンストップでのサービス提供を行うことで、更なる収益向上を目指す取り組みを続けるとともに、文教系や地方自治体向けに当社グループの強みを生かしたソリューションを展開し、新たな収益基盤の構築に向けてアプローチを継続しております。

 グローバル分野におきましては、リファービッシュビジネスにおける市場環境悪化に伴う在庫の評価損や、デジタル貿易プラットフォーム事業の低迷など、全体としては計画を下回る状況で推移しました。

 

 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

ア.キャッシュ・フローの状況の分析

当社グループのキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

イ.資金需要の動向

当社グループの資金需要は、経常的な運転資金のほか、人財育成やR&D、DX等の成長基盤構築のための投資資金、事業拡大を目的としたM&A等の資金であります。

また、株主還元については、積極的かつ安定的な配当を継続していくことを基本方針としており、連結自己資本配当率(DOE)4.0%を目途に配当を実施するとともに、自社株式の取得についても機動的に実施いたします。

ウ.資金調達の方法

当社グループの資金調達の源泉は主に営業活動によって獲得したキャッシュでありますが、不足が生じた場合は、健全な財務体質の維持を考慮しつつ、負債を中心とした資金調達を実施しております。一時的な資金不足に対しては、金融機関からの短期借入により調達し、投資等の長期的な資金需要が生じた場合は、サステナブルファイナンスを主に検討し、対応しております。

また、グループ会社の資金は当社において一元管理しており、当社グループ内の資金効率化、および流動化を図っております。

 

 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項」の(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

(3)経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える可能性がある事象につきましては、「3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(4)経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、品質・安全性・生産性の向上や成長事業の拡大などに関する技術開発・支援に取り組んでおり、当連結会計年度における研究開発費の総額は、486百万円であります。

なお、各セグメントごとの研究開発費は次の通りであります。

通信キャリア事業では、主に情報通信工事における安全関連の装置や業務効率化につながる工具等の研究開発に取り組んでおり、当連結会計年度における研究開発費の金額は61百万円であります。

都市インフラ事業では、主に新規案件創出を目的として、各大学と共同研究に取り組んでおり、当連結会計年度における研究開発費の金額は15百万円であります。

システムソリューション事業では、生成AIを駆使したソリューションの検討等、近未来視点での「新たなビジネスモデル創出」と「チャレンジする企業文化や人材を育むこと」を目的としたイノベーション活動に取り組んでおり、当連結会計年度における研究開発費の金額は410百万円であります。