文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、経営の基本方針として2024年5月30日に新たな長期ビジョンおよび新たな中期経営計画「Make a New Enshu」を策定し、開示しました。
◆新長期ビジョン
Make a New Enshu for the World's manufacturing
私たちは3つの挑戦により、世界のモノづくりに貢献します
1. 社員一人一人が新しいモノづくりに挑戦します
2. 常により高いレベルの品質とコストに挑戦します
3. 3事業のシナジー発揮に挑戦します
(部品加工事業、工作機械事業、システムインテグレーター事業)
◆新中期経営計画 経営方針
Make a New Enshu:新しいエンシュウを作り上げていく
・売上高重視から利益額重視へ(2年間で盤石な利益体質へ)
※両部門(工作機械部門/部品加工部門)の売上高に合わせ、人的資源を機動的に配分
・部品加工事業の拡大強化
※経営資源(人、モノ)を投入、工作機械のノウハウを活かし、最新の部品加工ラインを構築
・工作機械事業はEVおよび自動車以外の新市場へ拡販
※部品加工で培った最先端の加工ノウハウも販売
(2) 新中期経営計画について
◆策定の背景(経営環境)
当社は、以下の理由により、この度新中期経営計画を策定することといたしました。
1.外部環境変化
・社会課題:労働力不足の加速、気候変動への対応(カーボンニュートラル)、
AIの出現を含めたITテクノロジーの進化
・工作機械事業:国内EV化投資本格化の遅れ、エンジン投資停滞
・部品加工事業:四輪・二輪業界の部品加工外転化
2.市場再選択
・2023年10月に東証プライム市場からスタンダード市場移行
・売上高重視から利益額重視へ
◆新中期経営計画 財務目標
◆新中期経営計画 戦略概要
1.シナジー戦略
・部品加工関連事業:工作機械のノウハウを活かし、最新の部品加工ラインを構築
・工作機械関連事業:部品加工事業で培った最先端の加工ノウハウの提案、
客先ニーズに合った自動化・省人化のモノづくりを提案
・Sier事業:市場ニーズに合わせた自動化、省人化技術を自社部品加工事業へ展開、および客先へ販売
2.自動化・省人化戦略(Sier戦略)
・自社工場の自動化・省力化→工場のショールーム化
・自社工場での実績を経た最適生産ラインの外販
3.部品加工戦略
・EV部品、内燃機関部品、新領域の3本柱での売上拡大
・生産対応能力、品質、コストの技術力向上
4.工作機械戦略
・ターゲットユーザー毎の部門編成として、ユーザーに合った自動化システムを提案・販売
・成長市場への積極投資
・テクニカルセンターを活用した新工法開発と新市場に向けた機械開発
5.カーボンニュートラル
・自社工場、自社製品において実践し社会貢献
6.人的資本投資
・管理職強化、教育改革、従業員エンゲージメント向上
7.デジタルトランスフォーメーション
・新ERPシステム導入と掛け合わせ、業務変革を推進
・営業分野での受注拡大、製造分野での競争力向上を実現
工作機械関連事業部門におきましては、自動車業界のEV化などの外部環境変化に対応し、受注拡大をしていくことが課題と捉えております。対応として、新市場拡大に向け、今後需要が見込まれる国内外地域への営業体制拡充、EV量産化時代に向けた情報収集や施策実行、エンジン市場においては既存設備の保守事業拡大や改造需要の取り込みに向けた営業活動を行っております。また、EV量産化に伴う新しいモノ作りへの対応として、昨年10月にドイツの工作機械メーカーSW社との協業を開始し、今年4月にはアメリカ溶接業界の最大手であるリンカーン・エレクトリック社との協業を決定し、国内EV部品加工用設備のシェア拡大を進めてまいります。また、社会課題である労働力人口減少への対応として、自動化、省人化の提案にも注力してまいります。
部品加工関連事業部門におきましては、長期的には既存主力製品である大型二輪車用部品及び自動車関連部品の仕事量が不透明な中、工作機械事業のノウハウを活かした新たなモノづくりの提案による受注の拡大と製造や技術部門を主体としたロス改善による原価低減、原価高騰に対する価格転嫁も進め、利益率改善に繋げてまいります。また、自社工場での積極的な自動化、省人化を進めることで労働力人口の減少という社会課題の解決に繋がる施策を実践し、工作機械部門でのモノ作りの提案にもつなげてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営理念にもある“共生共栄”の考えに基づき、“ものづくり”で培った技術力をもって、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、企業価値の向上を目指します。
これを実現するために私たちは、気候変動などの地球環境問題、人権の尊重、従業員の健康・労働環境や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、地域社会への貢献、自然災害等への危機管理などサステナビリティを巡る課題に対して、積極的に取り組んでおります。
当社グループは、気候変動への対応を含むサステナビリティ課題への対応として社内に「SDGs委員会」を設置しております。
委員長は技術・製造本部長である常務執行役員が務め、委員は、管理系本部、営業本部、開発部、技術・製造本部の各本部からの選出と会社が選出するもので構成されております。
委員会の主要テーマとしては、気候変動、人的資本を重要課題とし、隔月で開催し、当社グループのサステナビリティに対する取組の推進を行い、経営会議に報告し、必要に応じて提言を行う体制となっております。また、同委員会の活動内容については、取締役会にも報告され、監査等委員会の構成員である取締役は、代表取締役社長を中心としたサステナビリティに関する取り組み状況を継続的に監査しております。
業務執行体制におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会の評価に関しましては、(3)リスク管理に記載しております。
上記を含むコーポレート・ガバナンス体制の概要については、「
なお、当社のグループのサステナビリティ基本方針及び 取組を弊社ホームページに掲載しております。
URL:https://www.enshu.co.jp/ja/profile/sdgs/

(2)戦略(リスクと機会)
① 気候変動への対応
移行リスク
脱炭素化に伴う原材料等の高騰によるコスト増加が見込まれます。また、炭素税などの導入や環境に関する法令などの対応に伴い、事業コスト、開発コストの増加が見込まれます。
EV化への段階的な移行に伴い部品点数が減少すると言われており、工作機械業界全体として影響が見込まれます。その一方でモーターケースなどのEVに関係する部品加工や、省エネ型機械のニーズの高まりが見込まれ、省エネ型内燃機関に対する設備投資も当面の間見込まれます。また、風力発電などの環境設備投資については増加が見込まれます。
物理リスク
当社高塚工場においては、浜松市の天竜川ハザードマップにおいて、約2mの浸水が1000年に一度程度発生するリスクがあるとされております。当社としては、浜北工場を含め地震や浸水被害などを想定したBCPを推進しリスクの低減に努めてまいります。
機会
当社工作機械関連事業が得意とする自動化やインテグレート技術をお客様に提供することにより、労働力不足への対応、工場の効率化や環境負荷の低減に貢献することが出来ると考えております。また、軽量化・省エネ機器導入等の省エネ技術を搭載した製品やサービスを提供することでもお客様の環境負荷低減に貢献することが出来ると考えております。
② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
企業の持続的な成長と企業価値向上のために、女性、外国人、様々なキャリアを持つ中途採用者などの多様な人材が、チャレンジングに仕事を行える職場環境の整備や人事施策を継続的に行うよう努めております。
・女性社員の登用
女性応募者を増やすため、女子学生比率の高い大学へ積極的アプローチを行い、女性採用の強化を図っております。
また、女性社員に対しては、女性キャリアアップ制度を設けております。キャリアアップを望む女性社員に対し、面談を通して育成計画を作成したうえでプログラムを実施し、キャリアアップを促進しております。
加えて、キャリアップセミナーの社内開催や外部のリーダー育成セミナーへ従業員を派遣し、リーダー職になるためのスキル習得や自身のキャリア展望について考える機会を設けております。
更に、女性社員のさまざまな相談に対応できるよう、女性社員相談窓口を設置し、ライフイベントと就業の両立がしやすい環境整備に努めております。
・中途採用者の登用
中途採用者につきましては、積極的に採用活動を行っております。入社後は新卒・中途の区別なく公平・公正に扱っており、管理職登用状況は34.1%となっております。
また、新卒・中途の区別なく教育を受ける機会を提供し、階層に応じた教育を行っております。入社時には特別研修を実施し、社内規定や制度について学び、不安なくスタートできるようにしております。
中途採用者のフォロー窓口も設置し、安心して働ける環境づくりを行い、入社後の定着を図っております。
・外国人の登用
国籍に関わらず、各人が持つ能力を重視して採用を行っております。
国籍の区別なく公平に教育を受ける機会を提供し、希望者には日本の習慣や文化などを説明し、言葉の言い回しや立ち居振る舞いなどを解説しております。
また、外国人相談窓口を設置し、相談先を明確にすることで安心して働ける環境整備を行っております。
・男性育児休業推進
社内報による育児休業制度の周知を行っております。また、妊娠出産の申し出をした社員に対し、制度説明や給与シミュレーション等を行うことや、その上司の理解を促進するために制度の説明やハラスメント教育を実施し、取得の推進に努めております。
(3)リスク管理
当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、リスクコンプライアンス委員会にて行っております。サステナビリティに係るリスクの識別、優先的に対応すべきリスクの絞り込みについては、SDGs委員会の中でより詳細な検討を行い、共有しております。優先的に対応すべきリスクの絞り込みに関しては、当社グループに与える財務的影響、当社グループの活動が環境・社会に与える影響、発生可能性など総合的に考慮して行っております。
気候変動に関するリスクについて、当社グループは事業所別の環境データを毎期測定し、エネルギー使用量及び原単位の推移をモニタリングしております。Scope1及びScope2のCO2排出量の実績推移も毎期算出しモニタリングしており、合わせて社長が議長を務める経営会議に報告しております。
SDGs委員会においては、お客様の環境負荷低減に向けた製品開発やサービスの提供、社内設備の環境負荷低減についてなど環境に関する取り組み状況を確認し、推進しております。また、サステナビリティ関連の機会の識別、評価や優先順位付けは、SDGs委員会において行われ、重要と認識された機会については経営会議に対して活動内容の報告、提言を行い、経営会議は必要な対応策を決議し、取締役会へ報告しております。
(4)指標及び目標
① 気候変動への対応
当社グループは、気候変動における指標をCO2排出量と定め、当社から排出されるScope1及びScope2のCO2排出量について算出し毎期モニタリングしております。また、2030年度に2014年度比△38%(売上高原単位)の削減目標を定め取り組んでまいります。目標に向けての取り組みとして、既存生産設備の省エネ(モーター、間欠運転、エアー)、省エネ設備導入(高効率空調、LED)などを計画、推進しております。また2022年度より、Scope3のCO2排出量も算出しております。昨年度も全社でCO2排出量の削減活動を行ってまいりましたが、Scope1及びScope2に関しては前年排出量の実績を上回っております。理由としては、排出量の大きい部品加工事業の仕事量が増加したこと、各種係数が変動したことによる影響が考えられます。今後の対応として、2030年度までの目標を再設定し、引き続きCO2排出量削減の活動を行ってまいります。
CO2排出量
(注) Scope3カテゴリ8、9、10、14、15は算定対象外であります。
② 人材の多様性の確保を含む人材の育成
上記「(2) 戦略」において記載した「② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針」に係る指標について、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する実績は連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
・女性社員の登用に関する状況
<指標> 女性社員採用比率
<目標> 対象期間(2021/4/1~2026/3/31)における女性社員の採用比率を5年の平均で20%以上とし、
女性社員の採用、育成、環境整備に注力してまいります。
<実績> 女性採用比率:2019年度~2023年度平均21.7%
・中途採用者の登用に関する状況
<指標> 管理職における中途採用者比率
<目標> 当社において、2023年度の中途採用者比率は30.7%、管理職比率は34.1%となっております。
中途採用に積極的に取り組んできたことにより、当社における中途採用者の各比率は高い水準にあると考えられます。今後も、中途採用者比率30%以上を目標として維持できるよう、積極的な採用活動や新卒・中途の区別無く公平・公正な人事評価と人材育成に取り組んでまいります。
<実績> 2023年度 中途採用者の管理職登用状況:34.1%(28名/82名)
2023年度 全社員における中途採用者の割合:30.7%(218名/709名)
・外国人の登用に関する状況
<指標> 外国人社員比率
<目標> グローバル化を促進するため、外国人の多様な考え方を取り入れることが重要ですが、現時点では、
目標年度・人数に基づく外国人社員比率を具体的に示すことは困難な状況です。当面は、特定技能外国人も含め、採用増を検討してまいります。
<実績> 2023年度 外国人社員比率:0.4%(3名/709名)
・男性育児休業推進
<指標> 男性労働者の育児休業取得率
<目標> 2023年度は、育児休業制度の周知、上司の理解の促進、ハラスメント教育の実施に取組んできた結果、
当社の取得率は、57.1%と改善が図られてきております。引き続き、上司の取得推進への取組み強化や、職場の理解を高めていくことを徹底するとともに、取得率の更なる向上のため、取得の妨げとなっていると思われる原因分析と従業員の育児参画に寄与する制度導入等を含めて検討を進め、2026年3月末に60%以上の取得を目指してまいります。
<実績> 2023年度 男性労働者の育児休業取得率:57.1%(8名/14名)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの工作機械関連事業の受注は顧客の設備投資活動に直接結びついているため、市場の景気動向に対して極めて敏感であり、民間設備投資、特に主要顧客である自動車業界の設備投資の増減の影響を大きく受けます。その上、好況時と不況時の変動も大きく、不況時は需給関係により販売価格が低下する傾向にあります。
また、当社グループの主要顧客である自動車業界は、電動化による内燃機関の減少、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Services、Electric)やMaas(Mobility as a Service)による構造変化が想定され、顧客・社会のニーズは大きく変化しています。当社は非内燃機関向け、商社販売の拡大に注力しておりますが、引続き自動車業界の市場動向は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの部品加工関連事業においては、ヤマハ発動機株式会社への売上(受託加工)依存度が高い割合となっていますので、同社の事業方針は当社グループの業績に強い影響を与える可能性があります。
最近の同社向販売実績及び売上高全体に占める割合は、次のとおりであります。
(3) 為替レートの変動によるリスク
当社グループの全社の海外売上高比率は2024年3月期で31.8%となっております。決済は主に円建でありますが、USD建及びEUR建等の取引もあり為替レートの変動によるリスクを有しております。円建取引の増加や為替予約により影響を少なくするよう努力しておりますが、大幅な為替レートの変動は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループの借入金依存度(借入金の総資産に対する割合)は、2024年3月期で34.4%となっております。当社グループでは将来の金利変動によるリスク回避を目的として、借入金の一部を金利スワップにより固定金利としておりますが、金利変動の影響を受ける可能性があります。
当社グループは、借入金依存度が相応に高いことから、金融機関の融資姿勢の変化等によって資金調達が困難になるリスクがございます。また、シンジケートローンにつきましては、契約内容に一定の財務制限条項等が付されている場合があり、当該事由に抵触した場合には当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。
当社グループの工作機械関連事業は競合するメーカーが多く、価格競争により販売価格が低下する傾向にあります。特に汎用工作機械分野では競合メーカー製品との競合等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループの工作機械関連事業は製品の製造に使用する原材料及び部品等について、当社グループ外の多数の供給業者から調達しています。一部については特定の供給業者に依存しており、需給状況、災害等の要因によっては納期遅延、コストアップ等の影響が生じることがあります。原材料価格の高騰等は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8) 棚卸資産の評価損に関するリスク
当社グループでは、「棚卸資産の評価に関する会計基準」を適用しており、販売目的の棚卸資産の収益性を期末において評価し、収益性が低下していると判断される場合には評価損を計上することになります。このため、当社グループの棚卸資産について、需給関係による販売価格の低下やシステム工作機械における追加費用の発生により収益性が低下していると判断し評価損を計上する場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
当社グループは、製品の品質には万全を期しておりますが、工作機械関連事業のシステム工作機械においてはオーダーメイド方式のため、より高度な品質管理が求められており、追加費用が発生する可能性があります。また、部品加工関連事業においても、予期しない品質トラブルにより多額の改修費用及び補償費用が発生する可能性があります。このような場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。当社グループといたしましては、海外拠点を含めて、品質の維持・向上を最優先課題として取り組んでおります。
当社グループは地震等の自然災害の発生により生産拠点が損害を受ける可能性があります。被害の影響を最小限に抑えるため、建物・設備などの耐震対策、防火対策等の予防策を順次進めていますが、万一、予想される南海トラフ巨大地震が発生した場合、当社グループの生産拠点が静岡県内に集中していることもあり、操業の中断、多額の復旧費用等、当社グループの業績が大きな影響を受ける可能性があります。
顧客情報や機密情報の漏洩等の防止は、会社の信用維持、円滑な事業運営にとって、必要不可欠の事項といえます。当社グループにおいては、社内規程の制定、社内教育、情報セキュリティシステムの構築等の措置を講じていますが、万一、情報漏洩等の事態が発生した場合、当社グループの信用低下、顧客等に対する損害賠償責任が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における経済は、新型コロナウィルス5類への移行に伴い経済活動も回復基調となる一方、円安・ウクライナ問題・米中関係悪化や原材料価格高騰・電力料等の高騰などにより先行き不透明な状態が続いております。
このような情勢の中、当社グループは受注確保に向け国内、北米、アセアン地域への拡販を図るとともに、生産効率化や原価低減などの推進に取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、工作機械関連事業が減少するも、部品加工関連事業の旺盛な需要に支えられ、24,091百万円(前期比2.9%減)となりました。
損益につきましても、各種施策の効果もあり、営業利益は540百万円(前期比580.7%増)、経常利益は386百万円(前期は経常損失39百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は221百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失104百万円)となりました。
また、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ966百万円減少し33,202百万円(前期末比2.8%減)となりました。このうち流動資産は1,300百万円減少し18,142百万円(前期末比6.7%減)となり、固定資産は314百万円増加し14,999百万円(前期末比2.1%増)となりました。流動資産の減少の主な要因は、仕掛品が556百万円増加したものの、受取手形及び売掛金が1,336百万円、商品及び製品が642百万円減少したことによります。固定資産の増加の主な要因は、有形固定資産が505百万円増加したことによります。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べて1,412百万円減少し21,393百万円(前期末比6.2%減)となりました。このうち流動負債は3,960百万円減少し10,951百万円(前期末比26.6%減)となり、固定負債は2,548百万円増加し10,441百万円(前期末比32.3%増)となりました。流動負債の減少の主な要因は、短期借入金が3,089百万円減少したことによります。固定負債の増加の主な要因は、長期借入金が2,350百万円増加したことによります。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べて445百万円増加し11,808百万円(前期末比3.9%増)となりました。増加の主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益221百万円を計上し、為替換算調整勘定が205百万円増加したことによるものであります。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
工作機械関連事業部門
工作機械関連事業におきましては、昨年同様、特に自動車業界におけるEV化が進む中、エンジン関連の設備投資が落ち込んでいる状況下において、昨年から取り組んでまいりました商社との関係強化や国内外の展示会への積極的な参加等による新たな市場開拓への営業活動を行ってきました。当連結会計年度の売上高は、中国市場が依然低迷する一方、国内サービス体制の拡充、北米、アセアン現法への営業強化により、11,714百万円(前期比11.1%減)となりました。損益面におきましては、サービス体制強化などの施策により改善を図った結果により営業損失は98百万円(前期は営業損失332百万円)となりました。
部品加工関連事業におきましては、国内において二輪、船外機関連に引き続き、四輪関係のEV関連部品増産や新規部品生産立ち上げに対応してきた結果、売上高は12,306百万円(前期比6.4%増)となりました。損益面におきましては、電力料などの価格転嫁の推進、IoTを活用した生産性向上活動などによる効率向上と費用削減への取組みにより、営業利益は590百万円(前期比63.0%増)となりました。
その他事業の部門におきましては、不動産賃貸事業により、売上高は70百万円(前期と同額)となり、セグメント利益(営業利益)は49百万円(前期比1.4%減)となりました。
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前期と比べて274百万円減少し4,218百万円(前期末比6.1%減)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、399百万円の獲得(前年同期は1,312百万円の支出)となりました。これは主として減少要因である仕入債務の減少額946百万円、棚卸資産の増加額870百万円を、減価償却費1,277百万円及び売上債権の減少額1,236百万円等が上回ったことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、736百万円の支出(前期比12.9%減)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、223百万円の支出(前期比12.3%減)となりました。これは主として借入れによる収入を借入金の返済による支出が上回ったことによります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工作機械関連事業の製品製造のための材料費、外注費、人件費等であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
設備投資資金や長期運転資金の調達は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としており、短期運転資金の調達につきましては、金融機関からの短期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金、リース債務及び社債を含む有利子負債の残高は11,929百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,218百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
(注) 上記の技術援助契約においては、ロイヤリティとして売上高の一定率を受け取っております。
当社グループでは、「Make a New Enshu for the World's Manufacturing」を長期ビジョンとし、社員各々が新しいエンシュウを作り上げていくという目的のもと、研究開発を行っております。弊社の強みは「工作機械メーカー」であり、「システムインテグレーター」であり、「部品加工メーカー」でもあることです。これらの部門がシームレスに連動することで自社製品の改善や新たな製品や加工技術の開発に繋げております。中期計画においては、「部品事業」「工作機械事業」「Sier」の3つの事業のシナジーをさらに強めて、自社の強みを研鑽し、お客様に弊社の製品や技術が選ばれ続けるよう努めてまいります。
なお、当社グループにおける研究開発活動は、提出会社の開発部が行っております。2024年4月から開発部は、既存の工作機械開発を工作機械部に移し、より新しい市場、新たな技術に向けての研究開発ができる体制に強化しております。また、開発部は、マーケティングの主幹部署として情報一元化からの企画、要素開発に注力し、コア技術開発へ軸足を変えました。当連結会計年度を振り返りますと、昨年10月にはEV市場強化としてドイツのSWと協業の協議をスタートさせ、近年の海外の生産方式も取り入れ、日本の製造業の皆様には日本式と海外式、両面のご提案を準備いたしました。また、今年の4月にはアメリカの溶接最大手リンカーン・エレクトリック社との協業を発表し、溶接の関係での海外の技術と連携し、より良い工法と生産システムを提案してまいります。外部の力を入れながらより最適なソリューションのご提供に繋げてまいります。
加えて、部品加工関連事業部門の量産ラインへ新機種、新技術を投入し、工場のショールーム化、技術のスパイラルアップに努めると同時に、次世代技術の先行実証試験も量産ラインを活用して積極的に取り組んでおります。
カーボンニュートラル、SDGsの観点では、弊社製品・技術利用による実生産性向上だけでなく、お客様での運用時のみならず、自社での生産時における資源及びエネルギーも従来機種より削減した新製品の開発に取り組んでおります。
当連結会計年度における研究開発費は