第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、創業以来の社是である「みんなで良くなろう」「誠実に事に当たろう」「積極的にやろう」の下、存在意義や目指していく方向性を示す経営理念、及び経営理念を実現していくための行動指針を策定しております。

社是・経営理念・行動指針に沿って、人々の暮らしや持続可能な社会の実現に役立つ、安心・安全な製品づくりにこだわり、顧客、株主、地域の人々、従業員等、当社グループに関わる全ての人々に幸せを感じていただくことを目指して事業活動を行うことを経営の基本とし、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指してまいります。

〔経営理念〕

「私たちは事業活動を通じて人の心を豊かにするとともに、持続可能な社会の実現に貢献します。」

〔行動指針〕

「私たちは一人ひとりの個性と人権を尊重し、公正で明るく働きがいのある職場づくりを追求します。」

「私たちはコンプライアンスを徹底し、合理的判断に基づき行動します。」

「私たちは自ら考え、何事にも前向きに挑戦します。」

「私たちは未来の地球に役立つ安全・安心な製品づくりを極めていきます。」

 

(2)経営戦略等

当社グループは、経済のボーダレス化・企業活動のグローバル化が進行する中、持てる経営資源(人・物・金・情報)を積極活用し、スピードある技術・営業・生産・管理・サービス・物流のイノベーションを断行してまいります。また、連結経営強化の観点から子会社を含めた事業の効率向上と一層の連携強化に努めてまいります。さらに、完全無漏洩構造の「キャンドモータポンプ技術」をコアとし、技術集約型企業グループとして、「未来の地球に役立つ安全・安心な製品づくり」をベースに事業領域を拡大しながら、激変する事業環境に対処するため、景気変動に強い企業体質づくりを目指し、成長を図る施策を展開してまいります。

なお、当社グループは、2024年度を初年度とする3ヶ年の中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を策定し、基本テーマとして「環境貢献に軸を置いた成長戦略とサステナブル経営の両立」を掲げ、最終年度である2027年3月期の業績目標を売上高320億円、営業利益57億円、ROE14.0%としております。中期経営計画の詳細については、2024年5月29日公開の決算説明資料をご参照ください。

電子部品事業につきましては、近年収益性が低下しており、主力事業であるポンプ事業とのシナジー効果も少ないことから、2024年12月末をもって事業を停止することを決定いたしました。今後は、コアビジネスである主力のキャンドモータポンプ製造・販売に経営資源を集中配分し、資本効率性(ROE等)の向上に取り組んでまいります。

 

(3)経営環境

当社は、1960年に独自技術でキャンドモータポンプを開発し、その後、長年に亘り顧客ニーズに応えながら実績を積み上げ、設計・生産技術等を蓄積してまいりました。

キャンドモータポンプは、完全無漏洩という特性から、石油化学プラント等の安全性が最優先される現場で使用されることが多く、そのような現場で採用されるためには、過去の実績に裏付けられた信頼が重要であります。キャンドモータポンプ市場においては、世界に複数の競合が存在し、近年では新興企業も出現しておりますが、当社には長年に亘るリーディングカンパニーとしての信頼・実績と豊富な経験から培われた技術・ノウハウがあることに加え、きめ細かい迅速な対応やサービス体制を構築していること等により、顧客が安心して当社ポンプを使用していただけるところに当社の競争優位性があります。

また、石油化学業界においては、世界的な脱炭素の流れを受け、化石燃料からのエネルギー転換等、CO₂排出ゼロに向けた取り組みが加速しております。そのような中で、当社のキャンドモータポンプは脱炭素に関連する設備にも対応することが可能であり、市場の裾野を広げる新たなチャンスと捉えております。

今後も「キャンドモータポンプ技術」をコアとしつつ、収益基盤の拡大も図りながら事業を展開してまいります。

 

(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、成長を続けるために、世界各地においてキャンドモータポンプの市場開拓・拡大を図り、積極的な海外戦略を展開しております。また一方、景気動向により売上高が変動する中でも、適正利益を生み出せる強靭な経営体質を実現したいと考えております。

重要な経営指標(連結)として、収益体質の強化、資本効率向上を目指し、2027年3月期に売上高320億円、営業利益57億円、ROE14.0%を目標としております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは更なる企業価値向上のために次の点に注力いたします。

①強固な企業体質の構築による収益力強化及び安定供給基盤の確立

国内外の景気動向等経営環境の変化に左右されない強固な企業体質を構築し、収益力を強化するために、顧客ニーズに合った技術開発の促進や、更なる品質の向上に努めるとともに、グローバルな生産・販売・サービス体制をより一層強化してまいります。さらに、設計・製造段階における原価低減や販管費等のコスト削減、デジタル技術活用による業務効率の改善、安定供給を支えるサプライチェーンの強化等にも努めてまいります。

②人材育成

会社が存続し持続的に発展していくために、人材育成は最重要課題の1つであります。多様な人材の採用、育成を計画的・持続的に推進し、人材に投資していくとともに、能力に応じた活躍の場の提供や働き方改革推進、業務のD X基盤整備等、従業員が働きやすい職場環境の整備をあわせて進めてまいります。

③ESGの積極的推進

会社の持続的な成長と社会のサステナビリティへの貢献の両立を推進してまいります。当社の主力製品であるキャンドモータポンプは、完全無漏洩構造であることから、環境負荷の高い液体を漏らすことなく移送することが可能です。このポンプを世界中に拡販していくことが当社のミッションであり、事業を通じて地球環境や世界の人々の安全に貢献してまいります。また、社内においてもCO₂削減、ダイバーシティ推進に加え、コンプライアンスをはじめとしたコーポレート・ガバナンスの強化に継続して取り組む等、ESGの各分野に適切に対応してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、「私たちは事業活動を通じて人の心を豊かにするとともに、持続可能な社会の実現に貢献します。」を経営理念としており、サステナビリティ課題を重要な経営課題の1つであると認識しております。

当連結会計年度末まで取り組んできた中期経営計画においては、中期ビジョンとして「すべてのステークホルダーの満足度向上」を掲げ、ESGを積極的に推進していくことを目標としておりました。

2024年度からは新たな中期経営計画が始動し、「環境貢献に軸を置いた成長戦略とサステナブル経営の両立」を基本テーマとし、引き続きESGを積極的に推進してまいります。

これまでに、自家消費型太陽光発電設備の設置や高効率型キャンドモータポンプの開発等の環境対応、そして階層別研修の拡充や女性活躍推進等の人事施策など、当社のサステナビリティ課題に対応した様々な取組みを行ってまいりました。

今後も業績向上に努めていくことは勿論のこと、サステナビリティ課題への取組みも着実に進めながら企業価値の向上に努めてまいります。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

当社グループでは、サステナビリティに関連する事項については、リスク管理委員会にて、検討を行っております。同委員会は2024年2月1日付で組織体制を見直しており、従来の総務本部長を委員長とし、各部門から任命された委員で構成された組織から、代表取締役社長を委員長とし、執行役員を常任委員とした組織に変更しております。これにより、経営層が適切なリスクテイクを支える環境整備へとより積極的に関与できる体制へとなっております。同委員会は、原則年3回開催し、サステナビリティに関連する事項を含む各種リスク・機会の抽出、分析、評価、及びこれらの対応方針について、審議・決定することとしております。

リスク管理委員会で審議決定された事項は取締役会に年2回報告され、報告を受けた取締役会は必要に応じて指示を行う等、当社のサステナビリティに関連する事項を含む各種リスク・機会への対応方針及び実行計画等についての監督を適切に行っております。

 

<サステナビリティ関連事項を含む各種リスクに関するガバナンス体制図>

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②リスク管理

サステナビリティに係るリスクについてはリスク管理委員会が抽出、分析、評価、及びこれらの対応方針を決定し、全社的リスクと併せて対応しております。

リスク管理委員会で検討した内容及びその結果は取締役会に報告しており、報告を受けた取締役会は、必要に応じ、リスク管理委員会に対して指示を行う等の監督を行っております。

具体的には、2月にリスク管理委員会事務局が委員長を除く常任委員に対してリスクに関するアンケート調査を実施し、リスクの抽出を行います。そして、抽出されたリスクを発生可能性・頻度及び財務・レピュテーションへの影響を評価軸にマトリックスを作成し、対応優先度をリスク管理委員会で議論の上決定します。その結果、対応優先度が高いリスクについては、対応部門を委員会で決定し、対応部門の各本部長(常任委員)から、該当部門長(非常任委員)に対して、自部門の経営計画(BSC)に当該リスク対応を組み込むよう指示します。経営計画(BSC)に組み込まれたリスク対応については、四半期ごとに開催されるBSC進捗会議において、進捗状況を確認します。その結果がリスク管理委員会事務局を通じて取締役会に報告されます。報告を受けた取締役会は、必要に応じ、リスク管理委員会に対して指示を行う等の監督を行っております。

 

(リスク管理体制図)

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(リスク評価マテリアリティ)

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上記リスク管理委員会において、当社のサステナビリティ課題として気候変動リスク・機会への対応と人材育成が挙げられており、重点課題として取り組みを進めております。

 

(2)気候変動リスク・機会に対する戦略及び指標と目標

当社の主力製品であるキャンドモータポンプは、完全無漏洩構造であることから、環境負荷の高い液体を漏らすことなく移送することが可能であります。このポンプを世界中に拡販していくことが当社グループのミッションであり、事業を通じて地球環境や世界の人々の安全に貢献できると考えております。また、社内においても温室効果ガス(GHG)排出量の削減に努めております。

この度、TCFDの提言に基づき気候変動関連リスク及び機会が当社グループの事業に及ぼす影響の分析を進めることにより、気候関連の適切な情報開示を行ってまいります。

なお、当社は2023年6月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明いたしました。

 

①戦略

<前提>

TCFD提言では、気候変動に起因する事業への影響を考察するため、複数の気候関連シナリオに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行うことが推奨されており、当社グループでも不確実な将来に対応した事業戦略の立案・検討を行うため、下記のようにシナリオ分析を実施いたしました。

今回のシナリオ分析においては、SDGsの目標である2030年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策が施されず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」と、脱炭素に向けてより野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)」を参考に、定性・定量の両側面から考察を行いました。

 

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<当社グループ事業における気候変動関連リスク・機会の概要>

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・顕在化時期の定義

「短期」:~3年  「中期」:4~10年  「長期」:11年~30年

・影響度の定義

「大」:営業利益に5億円以上の影響が見込まれる

「中」:営業利益に5千万円以上5億円未満の影響が見込まれる

「小」:営業利益に5千万円未満の影響が見込まれる

 

当社グループの主力事業であるポンプ事業は、製品の製造段階において多くの燃料や電力を使用することや、原材料として多種多様な金属を使用することから、カーボンプライシングに関する政策規制や、脱炭素への移行に伴う金属価格の上昇、再生可能エネルギーの市場普及に伴う電力価格の上昇を移行リスクとして特定しています。また、気候変動に伴う異常気象の激甚化が、当社グループのサプライチェーンに係る物流の寸断や、当社グループ各拠点の被災による影響を物理リスクとして特定しています。

一方で、脱炭素社会の進展により、再生可能エネルギーの普及や再生可能燃料の生産量の増加といった、脱炭素分野における当社グループの製品・サービスの需要増加を機会として特定しています。

 

<環境負荷低減に関する取り組み>

 当社グループは、事業を通じて地球環境や人々の安全に貢献していくため、完全無漏洩構造であり、環境負荷の高い液体を漏らすことなく移送することが可能であるキャンドモータポンプを世界中に拡販していくことが、ミッションであると考えております。

 

◆ 脱炭素ビジネスで活用されるキャンドモータポンプ

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世界的な脱炭素社会の進展により、化石燃料からのエネルギー転換等、CO₂排出ゼロに向けた取り組みが加速しております。そのような中で、当社のキャンドモータポンプは脱炭素に関連する設備にも対応することが可能であり、市場の裾野を広げる新たなチャンスと捉えております。

 

◆ 環境配慮型工場設備

 当社グループでは、事業活動におけるGHG排出量の継続的な削減に向けて、工場で使用するエネルギー効率の向上や、自然エネルギーの有効利用などに取り組んでいます。

・本社屋及び本社工場の全面LED化

2017年4月に建設した新本社工場へのLED照明の導入以降、旧工場設備、本社事務所においても、LED照明への換装を行っております。2022年9月にLED照明への換装を行った本社事務所では、照明の消費電力において約55%の削減効果があり、当期の本社事務所の総電力使用量は、前期対比約48,000kWh減少いたしました。今後とも事業所全体としてのエネルギー効率向上に務めてまいります。

 

・自然エネルギーの有効利用

2017年4月に建設した新本社工場には約300kWの太陽光パネルを設置しております(売電)。また、2021年12月に本社工場内に移転した技術開発センターにも40kWの太陽光パネル(自家消費型)を設置し、更に2023年2月に本社工場内のサービス工場棟にも531kWの太陽光パネル(自家消費型)を設置しております(合計871kW)。これにより、自然エネルギーの有効利用と環境負荷の低減に務めております。

 

・冷暖房等の効率向上

新本社工場の外壁には、断熱効果の高い建材・工法を採用し、合わせてエアー搬送ファンによる空調効率の向上で空調エネルギーを抑制し、CO2の削減と作業環境の改善にも取り組んでおります。
また、超高効率変圧器の導入等により、工場全体としてのエネルギー効率向上に務めております。

 

・本社工場全体でのエネルギー管理システムの導入

本社工場内のエリアごとのエネルギー使用量を可視化するデマンドモニタの設置により、全体のエネルギー使用量を集中管理し、効果的な節電対策を実施しております。

 

・社用車のハイブリッド化

当社は、2021年度よりハイブリッド車の導入を本格的に開始いたしました。当社の社用車34台のうち、新たに更新する車両から順次ハイブリッド車への切り替えを行っており、2024年3月末現在で約35%がハイブリッド車に切り替わっております。

 

②指標と目標

気候変動に対する当社グループの環境経営の進捗を測る評価指標としては、温室効果ガス(GHG)排出量を選定しております。

当社グループは、世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃以下に、可能な限り1.5℃未満に抑える努力をするというパリ協定で示された世界共通の長期目標と、日本政府が掲げる2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを達成するという目標に準拠すべく、対応してまいります。

今後、サプライチェーン全体の排出量を把握するため、Scope3の排出量算定を検討してまいります。

 

(3)人材育成に対する戦略及び指標と目標

当社は、人材の成長こそが持続的な企業価値向上の源泉であり、多様な人材が自由闊達に意見を出し合い協同していく組織風土の醸成を目指しております。働きがいのある会社、即ち仕事にやりがいを感じ自分の仕事に誇りを持って取り組むことができること、そして働きやすい会社であることを目指してまいります。

 

①人材育成方針

人材育成方針につきましては、次のとおりであります。

・多様な人材の採用、育成を計画的に推進し、積極的に「人材に投資」していく。

・優秀な人材には、積極的に活躍の場を提供する。

・ダイバーシティを推進し組織を活性化していく。

 

<具体的取組み>

当社では、上記人材育成方針に基づき、当期においては階層別教育拡充とダイバーシティ推進に取り組んでまいりました。

階層別研修は、本来組織が持つべき能力を十分に発揮できるよう個人の能力強化を目的としたものであり、当期は、前期の次期経営層向けの外部研修に引き続いて、管理職及び管理職候補者を対象とする外部研修を実施いたしました。

2025年3月期については、業務に必要な資格取得の推進や自己啓発の推進等、個人能力の強化に引き続き取り組むとともに、管理職を対象とした外部講師による研修会の実施を予定しており、組織強化に向けた施策にも取り組んでまいります。

ダイバーシティ推進では、女性活躍推進への取り組みを具体的に進める方策として、総務部を中心として、女性活躍推進に向けた協議を行ってまいりました。2025年3月期からは、女性活躍推進プロジェクトを始動し、全ての社員がより一層活躍できる職場づくりを目指し、取り組みを強化してまいります。

また、海外売上高比率が70%を超える当社において、海外経験を有する人材は、当社の事業発展を担う重要な存在であると認識しております。そのため、以前から社内で英会話教室を実施しておりましたが、従業員が安心して海外経験を積むことができる環境を整備するため、新たに海外語学留学制度を創設し、グローバル人材育成に取り組んでまいります。

 

②社内環境整備方針

社内環境整備方針につきましては、次のとおりであります。

・性別、年齢、国籍によらず、多様な人材が活躍できるよう機動的に制度改革を行う。

・これまで培ってきた組織の知識を適切に維持管理できるよう、教育制度の見直しを推進する。

・一人ひとりの従業員と向き合い、個々の能力が発揮できる自由闊達で働きやすい職場づくりを推進していく。

・心理的安全性を阻害する各種ハラスメントを徹底排除する。

 

<具体的取組み>

社内環境整備につきましては、当期はエンゲージメント調査を実施した他、海外出向者の処遇の見直しを行い、海外現地法人に出向している社員の更なるモチベーションアップを図りました。2025年3月期については、引き続きエンゲージメント調査を行い当該内容の改善を図っていく他、グループビジョンの策定や女性活躍推進プロジェクトにおける施策を実行していく予定です。

 

③指標と目標

上記人材育成方針の指標としては、「教育訓練費」及び「係長級以上に占める女性社員の人数」を用いておりましたが、人材育成や社内環境整備を拡充していく観点から、「教育訓練費」については、当期より「人材育成及び社内環境整備に係る費用」を目標とすることにいたします。当期の取組み内容及び2025年3月期の取組み計画については、上記「①人材育成方針」及び「②社内環境整備方針」の具体的取組みに記載のとおりです。

 

指標

2023年3月期実績

2024年3月期実績

目標

人材育成及び社内環境整備に係る費用(単体)

32,800千円

53,051千円

2025年3月期 54,000千円

係長級以上に占める女性の人数(単体)

3名

3

2026年3月期までに6

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) リスク管理体制

当社グループは、「リスク管理委員会」を設置しており、当該委員会でリスクの抽出、分析、評価、対応が行われ、取締役会に定期的に報告されております。具体的には、リスク管理委員会がリスクを抽出し、発生頻度、業績等への影響度に基づいてリスクの重要性を測定し、対応すべき重要項目を定め、その目標の達成度・進捗状況を点検しリスク軽減に努めています。取締役会は報告事項に対して必要に応じて適宜指示を行う等の監督を行っており、リスク管理の精度を高めております。

なお、リスク管理の更なる強化を目的に、2024年2月1日付でリスク管理委員会の組織体制を見直しており、従来の総務本部長を委員長とし、各部門から任命された委員で構成された組織から、代表取締役社長を委員長とし、執行役員を常任委員とした組織に変更しております。

 

(2) 個別のリスク

リスク項目

(特に重要なリスク)

リスクの説明

リスク対策

事業環境

・当社グループの連結売上高に占めるポンプ事業の比率は、当連結会計年度は93.4%となっておりますが、当該事業の主要な取引先である石油化学・化学業界の設備投資動向が当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。特に脱炭素社会の進展に伴い、石油化学向けの設備投資が大幅に減少した場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、キャンドモータポンプの代替品や模造品の出現、価格競争の激化等があった場合も当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループは、景気の動向に左右され難い強固な企業体質の構築に努めており、顧客志向の研究開発や用途開発、品質向上、生産性向上、ブランド力強化等に取り組んでおります。また、製品の販売とともにメンテナンスにも注力し、顧客の信頼性向上に努めております。

当社グループの主要顧客である石油化学・化学業界は、脱炭素社会の進展に対応して製造工程の合理化や温室効果ガス削減に貢献する製品の開発等を進めており、これらに関連した設備投資は当社グループにとっての機会であると捉えております。当社グループは、この機会を積極的に取り込んでまいります。

法的規制等

・当社グループの事業は、通商、独占禁止、知的財産、製造物責任、貿易及び外国為替管理、環境・リサイクル関連等の法的規制を受けております。また、事業を展開する各国においても各種許認可、関税、輸出入規制等の様々な規制を受けております。これらの規制の変更や新規の規制により、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。さらに、これらの規制に違反した場合、当社グループの業績及び財務状況、社会的信用等に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループは、グローバルにビジネスを展開していることから、各国の法的規制等について現地法人や外部団体等を通じて常に最新情報を入手するように努めております。また、特別な対応が必要な場合は、社内にプロジェクトチームを立ち上げる等、迅速な対応に努めております。これらの対応により規制変更等によるリスクの最小化を図っております。

人材確保・育成

・技術集約型企業である当社グループの中長期的な成長は、各従業員の力量に大きく依存しております。従って優秀な人材を計画通りに確保できなかったり、優秀な人材が社外に流出してしまったり、人材育成が思い通りにいかなかった場合は、当社の競争力が減退し、当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

・顧客ニーズの高度化、事業のグローバル化が進んでいる中、当社グループは優秀な人材の確保・育成を重点課題と位置付けております。広報・IR活動等による知名度の向上や働き方改革の推進による働きやすい職場づくり、総務部内に配置した教育専任者による若手及び中堅社員の技能育成強化、各人のキャリアデザインを実現するためのキャリアチャレンジ制度の充実、語学習得を目的とする海外への留学制度設計等、優秀な人材を確保・育成していくための取り組みを推進しております。

調達

・当社グループが製造するモータポンプは、主にステンレス鋳物・棒材、銅線、鉄板、ベアリング等の部材で構成されており、これら部材の価格変動や供給体制が当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループでは、部品調達や外注加工等において複数社購買やグローバル調達を推進しており、リスクの低減を図っております。

品質

・当社グループが製造するモータポンプは顧客設備の中核をなす製品であり、品質の維持、向上は最も重要と考えております。製品の品質クレーム・トラブルが発生した場合、顧客からの信用が失墜し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

・当社グループは、品質基本方針に基づき、法令・規制要求事項を遵守することはもとより、顧客要求事項を達成して顧客の信頼を得るとともに、品質マネジメントシステムの有効性を改善することによって、社会に認められる製品づくりを行う責務があると認識しております。近年、若手作業者の比率が上昇していることから、総務部内に教育専任者を配置し、技能継承を推進するとともに、公的資格の取得を積極的に推進する等、技能向上・早期育成に努めております。

納期

・当社グループは、ポンプ事業において、顧客の個別ニーズに応じた受注生産をメインに行っております。顧客ニーズの高度化、短納期ニーズの増加等様々な要因により案件難易度は高まっており、個別対応が必要な案件も増加しております。このような状況下で、設計や手配のミス、それらに起因する納期遅延が発生した場合、顧客からの信用が失墜し、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

・当社グループでは、これら問題を回避するために多面的にボトルネックの解消に取り組んでおります。取り組みの一環として、2024年4月1日付で、手配業務のシステム化を推進する業務に人員を配置し、作業効率の向上を図っております。また、若手作業者が増加していることから、総務部内に教育専任者を配置し、技能の継承や向上を図るとともに、生産管理方法の改善、調達先拡充による部材調達、外注加工のスピードアップ、検査設備の増強等改善に努めております。

気候変動

・当社グループの事業活動において、気候変動に伴い温室効果ガス排出に関する規制等、脱炭素経済への「移行に関するリスク」や洪水等の気候変動による「物理的変化に関するリスク」が考えられ、それらが当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

・気候変動に関する「移行リスク」と「物理的リスク」の抽出・分析・評価を適切に行い、対応方針を決定しております。

 一方、脱炭素経済への移行は、当社にとってリスクだけではなく、機会と認識していることから、この機会を確実に捉えるべく事業活動を推進してまいります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、物価上昇率が一時より低下したものの、根強いインフレ圧力による各国の金融引き締め策の継続や、不動産市場の不況による中国経済の低迷等により、不安定な状況が続きました。また、ウクライナ情勢の長期化や米中対立の深化、中東情勢の悪化等、地政学リスクの高まりにより、先行き不透明な状況が続いています。

このような状況下で、当社グループは、「すべてのステークホルダーの満足度向上」を中期ビジョンとして掲げる3ヶ年の中期経営計画(2022年3月期~2024年3月期)の最終年度として、脱炭素市場への対応強化に加え、資本効率の改善や人材育成、ESGの積極的推進等に取り組んでまいりました。当社グループの主力となるポンプ事業については、主要顧客である化学業界において、中長期的な脱炭素化に向けた設備投資需要は継続しているものの、欧米での金融引き締めによる設備投資抑制やプロジェクト延期、中国経済の減速による大型プロジェクト減少等の動きが見られました。電子部品事業においては、半導体等の部品不足の影響や、産業機器向けで中国経済減速の影響を受け、厳しい状況となりました。

なお、電子部品事業は近年収益性が低下しており、主力事業であるポンプ事業とのシナジー効果も少ないことから、2024年12月末をもって事業を停止することを決定いたしました。

これらの結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は31,279百万円となり、前連結会計年度末に比べ338百万円増加いたしました。これは主に現金及び預金が1,835百万円減少したものの、受取手形、売掛金及び契約資産が778百万円、電子記録債権が656百万円、棚卸資産が513百万円増加したことによるものであります。固定資産は10,761百万円となり、前連結会計年度末に比べ105百万円増加いたしました。

この結果、総資産は、42,040百万円となり、前連結会計年度末に比べ443百万円増加いたしました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は7,662百万円となり、前連結会計年度末に比べ559百万円減少いたしました。これは主に短期借入金が320百万円減少したことによるものであります。固定負債は1,911百万円となり、前連結会計年度末に比べ42百万円増加いたしました。

この結果、負債合計は、9,574百万円となり、前連結会計年度末に比べ516百万円減少いたしました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は32,466百万円となり、前連結会計年度末に比べ959百万円増加いたしました。これは主に為替換算調整勘定が660百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は75.8%(前連結会計年度末は74.7%)となりました。

 

b.経営成績

当社グループの当連結会計年度の売上高は、29,217百万円(前期比2.7%増)となりました。利益面につきましては、主にポンプ事業の売上高が増加したものの、電子部品事業の売上高減少や販売費及び一般管理費の増加等により、営業利益は4,882百万円(同2.8%減)、為替差益280百万円発生等により、経常利益は5,442百万円(同0.5%減)、当社連結子会社である株式会社平福電機製作所の事業停止決定に伴う特別損失570百万円発生等により、親会社株主に帰属する当期純利益は3,125百万円(同21.8%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

ポンプ事業

ポンプ事業の売上は、米国においてケミカル機器キャンドモータポンプの売上が減少したものの、高水準の受注残を背景に、日本及び中国においてケミカル機器キャンドモータポンプの販売が堅調であったことや、グループ全体でメンテナンスサービスが堅調に推移したこと等から、全体として増加いたしました。

その結果、売上高は27,300百万円(前期比3.2%増)、連結売上高に占める割合は93.4%となりました。一方、営業利益は、売上高が増加したものの、販売費及び一般管理費の増加等により、4,907百万円(同0.5%増)となりました。

 

電子部品事業

電子部品事業は、売上高は1,621百万円(前期比7.7%減)、連結売上高に占める割合は5.6%となりました。

また、営業利益は、売上高の減少、販売費及び一般管理費の増加等により、61百万円の営業損失(前期は115百万円の営業利益)となりました。

 

その他

その他は、売上高は296百万円(前期比22.1%増)、連結売上高に占める割合は1.0%となりました。

また、営業利益は、売上高の増加等により36百万円(同61.4%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動によるキャッシュ・フロー2,395百万円の資金獲得があったものの、投資活動によるキャッシュ・フロー2,973百万円及び財務活動によるキャッシュ・フロー4,076百万円の資金支出により、前連結会計年度末に比べ4,068百万円減少し、10,834百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により獲得した資金は、2,395百万円(前連結会計年度は4,853百万円の獲得)となりました。これは、主として税金等調整前当期純利益4,871百万円の計上によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、2,973百万円(前連結会計年度は281百万円の獲得)となりました。これは、主として定期預金の預入による支出2,468百万円及び有形固定資産の取得による支出785百万円の計上によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、4,076百万円(前連結会計年度は3,713百万円の使用)となりました。これは、主として配当金の支払による支出1,885百万円及び自己株式の取得による支出1,599百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

ポンプ事業

27,789,202

0.4

電子部品事業

1,621,117

△7.7

報告セグメント計

29,410,319

△0.1

その他

198,042

19.1

合計

29,608,362

0.0

 (注)金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前期比(%)

受注残高(千円)

前期比(%)

ポンプ事業

28,008,895

△1.0

13,329,096

5.6

電子部品事業

1,628,214

△5.5

151,157

4.9

報告セグメント計

29,637,109

△1.3

13,480,254

5.6

その他

258,817

11.0

69,417

△34.9

合計

29,895,927

△1.2

13,549,672

5.3

 (注)金額は、販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

ポンプ事業

27,300,658

3.2

電子部品事業

1,621,105

△7.7

報告セグメント計

28,921,763

2.5

その他

296,110

22.1

合計

29,217,874

2.7

 (注)主な販売先への販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三菱電機株式会社

1,887,826

6.6

1,717,741

5.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における経営成績等の分析につきましては、「第2 事業の状況 3〔経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析〕 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金及び金融機関からの借入を基本としております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,132百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は10,834百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

当社グループは、技術開発本部が中心となり研究開発活動に積極的に取り組んでおります。

ポンプ事業分野では、長年培ってきた独自の技術を生かし、新市場向け製品、国際規格をはじめ各国の様々な規格に対応した高付加価値製品、グローバルニーズに合致した製品の開発に加え、環境対応型ポンプの改良開発にも継続して取り組んでおります。

また、外部研究機関と連携し既存製品の機能及び効率の向上に関する基礎研究にも取り組んでおります。

なお、電子部品事業及びその他の事業においては、特に研究開発に相当する活動は行っておりません。

当連結会計年度における研究開発費の総額は572百万円であります。