第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

Ⅰ.中長期的な経営戦略と目標とする経営指標

1.中期経営戦略2021-2025 NEW HOPE

当社グループは、大きく変化する事業環境において、様々な課題に対処するため、2021年5月、中期経営戦略2021-2025 NEW HOPEを発表しました。「人材」「グループ連携の強化」「DX」「社会課題の解決」を重点目標に定め、多様化の促進、グループ連携の強化、データ・デジタル技術活用に向けた基盤整備、ABCグリーン宣言やABC@Colorful宣言を通じた社会課題解決への取り組みなどを行ってきました。

 


 

さらに、マネジメントの重要な課題として、資本効率を改善して企業価値を高めるため、「事業ポートフォリオの最適化」「中長期目線とスピード感の両輪を見据えての投資」「政策保有株式売却等による資産の有効活用」を推進。「2025年度までにROE5%」の達成を目指しています。

 

2.重点目標に対する2023年度の主な取組

(1)人的資本投資の強化

当社は、事業環境の変化に対応し、海外市場も視野にいれたマルチウインドウでのコンテンツ展開、ライフスタイル事業の多角化を進めております。その実現には多様性に富む人材の育成・確保がKSF(Key Success Factor)です。グループ内外の個の力と全体の力を最大限に発揮できる組織を目指して、様々な取り組みを行っています。

 

・「人材交差点構想」(ABCカレッジ&サロン)

新たなビジネス・アイデア創造につなげるため、社内外から人が集い、つながり合うことで発想豊かな人材を育てたり、人脈を作る場を提供しています。

取り組み

ABCカレッジ

ABCサロン

目的

アカデミア

世界で活躍する様々な分野の講師を招いて開催

(2023年度5回)

グループゼミ

グループの知見共有

(2023年度7回)

ぐるcafé

グループ各社の交流
(2023年度3回) 

企業・団体のトップ、

社員の方々とグループ社員との交流を促進

(2023年度2回)

 

 

・「ABC@Colorful宣言」(ダイバーシティ&インクルージョン推進)

事業のウイングスパン拡大に伴い、グループ内人材のダイバーシティ&インクルージョンを推進。中長期的な成長に向けて、組織の多様性を形づくり、社内の意識を高めています。

 


 

(2)DXによるビジネス創造

・AI活用の取り組み

当社グループは、業務効率化やアイデア創出に向け、AI活用に積極的に取り組んでいます。グループ全体のデジタルリテラシー向上と活用促進のため、生成AIガイドを策定し、ABC版ChatGPTサービス「ABChat」などのサービスを次々にリリースし、グループ社員約1,700名にまで利用範囲を拡大。2023年12月の利用件数は4,000件を超えました。

 

・業績アップに向けたデータドリブン戦略

朝日放送テレビ(以下 ABCテレビ)とABCファンライフが連携した通販特番で、CDP(Customer Data Platform)に蓄積されたユーザーデータを分析してユーザーのニーズに合った施策・顧客体験をデザインし、会員登録率を上昇させることに成功しました。引き続きグループ各社でデータドリブンに基づいたサービスデザインの実践と、事業展開の可能性を切り開いていきます。

 

・デジタルセールス事業

2022年度にスタートしたデジタルセールス事業(デジタル市場での企業プロモーションに関する課題をグループの企画力・クリエイティビティで解決する事業)の2023年度の売上高は、前年の3倍を超え、順調に売上を伸ばしています。引き続き、成長を続けるデジタル市場で新しい顧客・商流を開拓し、グループの大きな成長に繋げることを目指します。

 

3.数値計画

中期経営戦略3年目となる2023年度の業績は、連結売上高は904億5千2百万円で計画どおりとなりましたが、営業利益は8億3千2百万円と計画を下回りました。今後、収益性の回復と企業価値の向上を図り、2025年度までに連結売上高1,000億円の達成を目指します。

 


 

Ⅱ.事業別戦略

当社の事業領域は、放送、コンテンツ、ライフスタイルの3つの領域に分かれています。各事業の役割を明確化することで、大きく変化する事業環境の中で、グループのコンテンツ、サービスの価値を最大化し、「総合コンテンツ事業グループ」として成長を続けることを目指します。

 

1.放送事業

ABCテレビ・ABCラジオ・スカイA(CS放送)からなる放送事業は、2024年度も、引き続き放送の信頼性をさらに向上させ、安全・安心な社会に貢献することで当社グループの存在意義を示し、同時に当社グループの強みである企画・提案力を強化していくことで収益力の維持、向上を目指します。また、「すべてはコンテンツのために」をスローガンに一人でも多くのユーザー・視聴者・リスナー・生活者に届けられるよう、TVerやradikoへの配信等、新しい時代に沿った事業展開の強化を進めております。

 

2.コンテンツ事業

成長のキードライバーであるコンテンツ事業では、まず、実写コンテンツ分野において、ドラマ・バラエティ・ドキュメンタリーの3つを軸に成長を図っております。2023年度は、インターネットライブ配信の「バーチャル高校野球」において地方大会全試合の配信をはじめて実現し、より多くの視聴者に感動を届けました。また、当社として28年振りのプライム帯全国ネットのレギュラードラマ枠にチャレンジしました。順調に成長を続けているアニメについては、アニメ周辺事業や海外展開を拡充・強化してまいります。さらに、グループ会社が連携し、ドラマやアニメ等に連動したイベント、舞台、音楽分野にも注力してまいります。

 

3.ライフスタイル事業

今後も、安全・安心・快適で心が満たされる暮らしを実現するため、放送やコンテンツの力も活用しながら、リアルなコミュニケーションや体験の場をより一層、幅広く提供していきます。住宅展示場およびHDC(ハウジング・デザイン・センター)は、住まいや暮らしに関する様々な情報を発信する「複合ライフスタイル情報発信拠点」として発展・進化させていきます。通販事業では、今後も市場成長が予想されるEC事業を強化し、進化させていきます。

 

事業ポートフォリオの最適化にむけた体制整備

①成長を続けるアニメ事業への重点的な投資 

 M&Aと組織再編でさらに強化し、2025年度までに売上高80億を目指す

 2023年10月、組織再編により、ABCアニメーションの傘下に、2Dアニメーション制作のSILVER LINK.、アニメ商品化企画・制作のゼロジーアクトが入り、さらに12月にはM&Aでグループ入りしたCG制作会社のCGCGスタジオが加わりました。この事業再編で、アニメIPの開発や商品化に向けた各社の役割が明確になり、バリューチェーンが強化されました。事業を本格化した2016年度7億円弱だった売上高は、2023年度には60億円に達しました。今後、より魅力的なIPの創出、 イベントや商品化、ゲームなどによるメディアミックス、海外を含めたマルチウインドウ展開による収益最大化を目指すとともに、並行してM&Aによる事業ラインナップの更なる拡充を進め、2025年度までに売上高80億円を目指します。

 


 

②グローバルなニーズが高まるドラマ・バラエティ分野への注力

 2023年度に、ABC単独で28年ぶりに、全国ネットのプライム帯連続ドラマをスタート。

 2024年春の組織再編で、企画・制作・販売力をさらに強化へ

 2023年4月、ABCテレビが全国ネット連続ドラマ枠(日曜よる10時~放送)を新設。第一弾の「日曜の夜ぐらいは…」は「日本民間放送連盟賞/番組部門 テレビドラマ優秀賞」「ギャラクシー賞/月間賞 テレビ部門 奨励賞」を受賞、第二弾も「ギャラクシー賞/月間賞 テレビ部門 奨励賞」を受賞するなど、高い評価を得ています。

 2024年4月には、企画・制作・プロモーション力を強みとするABCテレビと、国内外のコンテンツセールスを強みとするABCフロンティアが連携することで、マーケティングからコンテンツ制作・販売戦略まで、一気通貫できる体制を構築しました。配信、海外販売、舞台化など、多面展開をより拡大させ、収益アップを目指します。

 


 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 朝日放送グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日時点において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 


 

 当社グループは、2021年10月4日の取締役会で決議した「朝日放送グループ サステナビリティ方針」に基づいて、グループのサステナビリティを進めています。この方針は、持続可能な社会実現のための私たちの姿勢と決意を表明したものです。「朝日放送グループは、変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として社会の発展に寄与する。」との経営理念に沿って、今後もより一層、サステナビリティ(持続可能性)をめぐる諸課題へ対応するとともに、社会および当社グループの事業活動の持続的成長と中長期的な企業価値向上に向けて、グループ全体で戦略的に推進していく基本的考えを定めました。その前提として、私たちのサステナビリティは、「メディアとしての使命と責務」を果たすことを約束しています。当社グループは現在、メディアを中心としたグループとして、多岐にわたる事業を行っています。まず、深刻化、複雑化する「地球環境」や「わたしたち、人」、そして「地域社会」などに関するあらゆる社会課題について正しく理解し、当社グループの多様なコンテンツを通じて情報発信すること、さらに「事業として」だけでなく“社会の一員として”向き合い解決していく、という視座をもって行動することが重要だと考えています。

 

①ガバナンスとリスク管理

 朝日放送グループホールディングスは、中長期的な持続可能性(サステナビリティ)への対応をグループ全体で戦略的に推進していくため、「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。サステナビリティ推進委員会の傘下には、「環境分科会」「社会分科会」とグループ全社による「グループ分科会」の3つの分科会を設置し、サステナビリティに関する諸課題について、リスク・機会の分析や具体的施策の立案・実施を行い、サステナビリティ推進委員会へ提言をしています。サステナビリティ推進委員会は四半期に1度の頻度で開かれ(2023年度:3回開催)、各分科会等からの提言をもとにサステナビリティ諸課題に関する現状の把握と対応を検討し、それらは執行役員会を通じて取締役会に報告・付議されています。取締役会の審議を経て、執行役員会がサステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示を出しています。

 当社グループは気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然環境災害などへの危機管理など、サステナビリティをめぐる様々な課題へ対応し、社会および当社グループの事業活動の持続的成長と中長期的な企業価値向上の推進を行うとともに、グループのサステナビリティへの取り組みに関する、適切かつ効果的な情報開示を進めていきます。

 なお、サステナビリティ課題対応への関連方針として、「朝日放送グループ環境方針」「COLORFUL化推進取組方針」を定めており、2024年4月に新たに「朝日放送グループ人権方針」を定め、開示しました。

 

 

1)ガバナンス体制図


 

2)サステナビリティ推進委員会メンバー

・委員長:サステナビリティ推進担当役員

 

・委員:総務、人事、経営戦略の各担当役員、総務局長、人事局長、グループ戦略局長、およびグループの主要な事業会社の各代表者など

 

 

 

3)「人権方針」「環境方針」「COLORFUL化推進取組方針」

朝日放送グループは、「朝日放送グループサステナビリティ方針」の他、人権尊重、環境、多様性推進のため、以下の方針を定めております。
 

 ■「朝日放送グループ人権方針」

当社グループの人権尊重の取り組みを通じて、役員・従業員のワーク・エンゲージメントを向上させるとともに、すべてのステークホルダーの「幸福」を目指すことを示しています。

 

※「朝日放送グループ人権方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/company/rule/human-rights.html

 

 ■「朝日放送グループ環境方針」

当社グループの事業活動によって生じる環境負荷の低減や、様々な環境課題への対応で目指すものを示しています。

 

 ※「朝日放送グループ環境方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/csr/environment.html

 

 ■「COLORFUL化推進取組方針」

一人ひとりが尊重され認めあえる職場環境を創造し、十人十色に多様な能力を発揮できる企業を目指すことを示しています。

 

 ※「COLORFUL化推進取組方針」の詳細は以下を参照下さい。

 https://corp.asahi.co.jp/ja/company/rule/colorful.html

 

 

②戦略

 当社グループは経営理念に基づき、持続可能な社会の実現と持続的な企業価値向上のために優先して取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を2023年12月に特定しました。特定したマテリアリティは8項目で、それぞれのマテリアリティに対しての取り組みも設定しています。今後は、特定されたマテリアリティについて具体的な行動目標やKPI等を設定し、当社グループの各事業戦略と連携しながら課題解決への取り組みを推進していきます。また、このマテリアリティは社会環境の変化に応じて適宜見直しを実施し、情報開示を行ってまいります。

 

 1)朝日放送グループのマテリアリティ

マテリアリティ

 

領域


未来を創る人財を育てる

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進による組織活性化

適応力とチャレンジ精神を生む企業風土の醸成

人も組織も成長できる職場環境や制度の充実

人的資本


コンテンツの力で豊かな明日を創造する

世界に感動を届けるコンテンツや体験の提供

希望あふれるインクルーシブな社会への貢献

子どもたちの健やかな成長の支援

社会&事業


地球の健康を取り戻し次世代へつなぐ

地球環境や生物多様性を守る情報発信

命と暮らしを守る防災・減災報道の強化

カーボンニュートラルの実現など環境に配慮した事業活動の促進

環境&事業


信頼されるメディアグループであり続ける

メディアとしての公正、公平性の堅持

テクノロジーやライフスタイルの変化に対応した情報伝達

健全な情報社会の育成と、情報格差の解消

社会


人権を尊重しすべての人々が幸福に生きる社会をめざす

人権への理解向上と人権侵害の防止

サプライチェーンに関わる人々の健康と安全への配慮

厳正な情報管理によるプライバシーの保護

人権


ガバナンスを強化し持続的な成長を実現する

コーポレートガバナンスの高度化

コンプライアンス、情報セキュリティの強化

ステークホルダーとの対話や情報開示の充実

ガバナンス


テクノロジーの活用で未来を照らす

デジタル技術活用によるビジネス機会の創出

事業におけるDXの推進

デジタルリテラシーの向上

テクノロジー


輝く地域づくりに貢献する

地域の魅力や課題の発信

地域の文化、経済の活性化への寄与

地域創生

 

 

 2)マテリアリティ特定プロセス

マテリアリティの特定にあたっては、まず、グループ横断的なプロジェクトチームを組成し、国際的な情報開示ガイドラインであるGRIなどを参考に「バリューチェーン分析」「ステークホルダー分析」「メガトレンド分析」「経営・事業分析」の4つの分析を実施し、環境、社会、経済にわたるサステナビリティ課題を抽出しました。抽出された課題を集約した後、「ダブルマテリアリティ」の考え方に基づき、リスク・機会の分析などでそれらの重要度を評価。執行役員会や担当役員審議による課題の優先付けや最終化を行い、取締役会での最終承認を経て特定しました。

 

(2)人的資本に関する取り組み

 ①戦略

 1)人材育成方針

 

  <人材育成方針>

 グループ全体が持続的に成長するためには、既存事業における自己革新と、新しい事業の開発を推進するための「変化に対応できる人材」が必要です。必要な能力はリーダーシップとマネジメント力、そしてイノベーティブな思考です。そうした能力を育むために、リーダー養成等の研修はもちろん、グループ外の人材との研修や社外派遣を実施します。また、グループ各社内での部門をまたぐ育成異動や抜擢人事、グループ内外との人材交流を進めていきます。

 

  <人材交差点構想>

 グループの人材力強化と多様性の推進、またグループ連携の強化・深化を目的に、当社グループの多種多様な事業と人材が、グループ内だけではなく外からも様々な人材がにぎやかに行き交うスクランブル交差点をイメージした「人材交差点」構想。具体的には、下記のような取り組みを実施しています。

 


 

   ■ABCカレッジ

    2023年7月にスタートした「ABCカレッジ」は、様々な「学び」と「交流」の場です。

グループ社員が自由に参加し、時には社外の人も参加する、成長できる機会にあふれるワクワクする場所、それが「ABCカレッジ」です。

グループ内のナレッジを共有するのはもちろんのこと、事業分野に捉われず、視野を広げ、多様な視点を持てるような講演会などもラインナップしています。また、業務外で気軽にグループ社員が交流できる機会を設けて、グループのつながりをさらに活性化しています。

 

        ABCカレッジの3つの柱

        ●アカデミア ~多様性・新たな「視野」~

視野を広げ、新たな発想を生むことや、人間力アップを目的としたジャンルにとらわれない講演会やイベントです。外部からゲストをお招きしてお話しいただく内容が中心となります。全世界で活躍する「チームラボ」、サステナビリティを強く意識しているコーヒー業界のスタートアップ「TYPICA」など、全く異なるフィールドの方々の講演で参加者も大きな刺激を受けています。

 

    ●グループゼミ ~「知」の共有~

グループ社員自らが講師となって、グループ各社や部署の取り組みを紹介するなど、ナレッジを共有することで、グループ相互の理解を深め、グループ間のコラボレーションのきっかけとなることを目的とした勉強会です。各社やそのメンバーのもつ専門知識や経験をシェアしていくことで、組織としての底上げを図るとともに新たなアイデアが生まれることを目指しています。

 

    ●ぐるcafé ~交流~

グループ社員が業務以外で交流する懇親会です。テーマに沿って交流するものから、共通の趣味で気軽に参加できるものまで幅広くラインナップします。普段の仕事だけではなかなか増えないグループ内の接点をつくる機会にしています。たとえば、「仕事も遊びも充実させたい!」ということで、仕事終わりにクラフトビールでワイワイ盛り上がったり、子育てパパのランチ交流会で育児の様子や男メシレシピ、おすすめのお出かけスポットを共有したり、アカデミアやグループゼミとは違った、楽しく気軽な雰囲気で交流してもらうことが狙いです。

 

   ■ABCサロン

グループ外も含めて広く豊かな人脈を作り上げる異業種交流の機会や、各界の著名人の方々との交流を深める機会を創出します。この取り組みは、特に社外の方々との交流に主眼を置いたもので、環境の変化に対応して新しいコンテンツを創り続けるために、自らも変わり続ける必要があるというところから始まりました。この企画 ではグループの社員が主体的に外の世界・流れに飛び込んでいくことでさらなる化学変化が起こることを期待しています。

 

 

  <多面的な研修制度>

 グループ中核の朝日放送テレビ(以下 ABCテレビ)では、自身のグレードや役職に必要なマインドや能力を習得する階層別研修の他、リーダー育成、イノベーション推進、DX牽引などのテーマ別研修も実施し、未来を担う多彩な人材を育成しています。他社との異業種交流研修でも、様々な地域の様々な企業から選抜されたビジネスパーソンが参加。新たな思考や視点、人脈を得る機会を創出しました。2024年度も異業種研修には引き続き注力し、多様な考え方を習得し、新たなビジネスチャンスの創出につなげます。「グループシナジーの向上」の観点から実施しているグループ各社の選抜メンバーによる研修は、2023年度は管理職のうち、マネージャー層を対象として実施。2024年度は多角的な視点を備えるリーダーの育成を目的に、次世代リーダー候補を対象とした20代・30代の選抜人材による「みらいリーダー研修」を実施予定です。また、グループ内インターンプログラムなど、人材交流も積極的に行い、グループとしての組織力の向上を図ります。

 その他、社員一人ひとりが自分らしく活躍できるためのキャリア支援を強化し、リスキリング・スキルアップを本格スタートします。2024年4月よりe-ラーニング学び放題のシステムをシニアスタッフ(定年以降の再雇用者)も含めた全社員に対して導入し、一人ひとりが自身のニーズに合う研修を、いつでも受講できることで、業務のスキルアップや自律的なキャリア開発を強化します。また、自身の「将来のありたい姿」を実現するために、2023年度よりキャリアデザイン研修やキャリア面談などを拡充しています。2024年度はキャリアデザインの機会をさらに拡充し、社員の活躍をしっかりと後押しします。

 また、より主体的なキャリア選択の機会を設けるため、2024年4月にジョブチャレンジ制度をスタートしました。これは、グループ会社を含めた各部署が、特定の業務内容で求める人材を募集し、社員自らが応募できる、社内人材公募制度です。

 


 

 

 2)社内環境整備方針(多様化推進の取り組み)

 当社グループは、様々なコンテンツやサービスを通じて、地域社会と文化の向上に貢献するため、性別、年齢、国籍、宗教、ライフステージ、障がいの有無、性的指向などにかかわらず、1人1人が尊重され認めあえる職場環境を創造し、十人十色に多様な能力を発揮できる企業を目指すという「COLORFUL化推進取組方針」を定めております。この方針の下、2022年6月に、「働き方の多様性」「働く人の多様性」の推進を通じて、お互いに思いやりをもって協働できる職場づくりを行い、従業員一人ひとりが、多彩な色彩で自分らしく活躍できるように、という思いを込めて、「ABC@Colorful宣言」を掲げました。この宣言に基づき、D&I担当役員のもと各種取り組みを推進しております。主な取組みと進捗については以下の通りです。


 

  <働き方@Colorful>

 一人ひとりがワークライフバランスを実現できるよう、テレワーク制度の導入や時短勤務制度の拡充など、グループ全体で働きやすい環境の整備を行います。また、従業員が生き生きと働けるように、有給休暇取得率の向上を目指した休暇制度などの整備や、個人としての活躍を支援する仕組みをつくるなど、働き方の多様性を高める取り組みを推進していきます。

(参照:(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標 1)有給休暇取得率 2)直近3年採用者の離職率)

 

   ■取り組み①:時短勤務、テレワーク推進

 ABCテレビほかグループ各社で、育児や介護目的の時短勤務制度の活用、管理部門を中心にテレワークも活用しています。2023年度はグループ社のうち7割を超える社がテレワークを実施しました。今後も多様な働き方を推進していきます。勤務間インターバルについても、実現可能な部署の調査等、実施に向けて検討を進めていきます。

 

   ■取り組み②:オフィスリノベーション

 ABCテレビ大阪本社では、2022年4月から2024年3月にかけて大規模なオフィスリノベーションを実施しました。フリーアドレス化を進めるなどして、コミュニケーションの活性化、多様な働き方を支援しています。

 

  <働く人@Colorful>

 グループの力が最大限に発揮されるためには、多種多様な人材の活躍が必須です。そのために、女性活躍推進をはじめ、働く人の多様性を尊重し、活かす取り組みをさらに推進します。組織の多様性を形づくるキャリア採用も積極的に進めており、朝日放送グループホールディングス・ABCテレビの直近3年間のキャリア採用比率は5割前後で推移しています。また、男女問わず働きながら育児しやすい制度の整備や、育休が取得しやすい職場環境づくりも推進していきます。

(参照:第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 2.重点目標に対する2023年度の主な取組み「キャリア採用人数の推移」)

 

 

  ■取り組み①:育児支援

 朝日放送グループホールディングス・ABCテレビでは、育児・介護休業法の改正にあわせ、育児休業の取得を促進するための取組みを実施しました。具体的には、独自の制度として「出生時育児休業」のうち最初の14日間を有給扱いとしたほか、人事担当役員による動画メッセージや周囲の理解を深めるための研修動画の制作・配信、各部署において取得者が出た場合の対応や課題について検討する「職場シミュレーション」の実施、またグループ社従業員を含めた「ママ交流会」「パパ交流会」の開催などに取り組みました。育児休業については、性別問わず、取得率100%を目指しています。2023年度における育児休業取得率は、女性社員100%、男性社員73.7%です。また、2023年度より、育児時短の取得期限を「子が小3になるまで」から「子が小4になるまで」に延長しました。

(参照:(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標 5)育児休業取得者数)

 

   ■取り組み②:女性活躍推進

 女性従業員の割合は若い年代ほど高く、直近3年間の20代の女性従業員比率は、グループ全体で50%を超え、中核のABCテレビでも40%以上で推移しています。さらに、ABCテレビでは、2027年に女性管理職比率を17%、2030年に20%以上とすることを目指しています。2023年度には、ライフイベントを控える、主に20~40代の女性に働き方や生き方など、自身の価値観を考えてもらう機会をつくり、女性社員同士の対話機会を通じて、自身のキャリアについて考え、振り返るきっかけとしてもらうことを狙った「女性キャリアデザインワークショップ」を実施しました。今後もキャリア支援につながるようなワークショップや講演を実施してまいります。

(参照:(2)人的資本に関する取組 ②指標及び目標 3)女性管理職人数・比率 4)年代別女性従業員人数・比率)

 

   ■取り組み③:LGBTフレンドリーな企業へ

 朝日放送グループホールディングス・ABCテレビでは、2022年度より「同性パートナーシップ制度」を導入しました。同性間でパートナーシップを結んだ従業員に対しても、異性との結婚と同様に福利厚生制度を適用するというものです。本制度の導入に伴い、アウティング行為を明確に禁止するとともに、周囲の理解を深めるための動画研修も制作・配信いたしました。

 

 ②指標及び目標

 1)有給休暇取得率

 働き方@Colorful宣言に基づくワークライフバランスの改善状況を測る指標の一つとして計測しており、毎年改善することを目指しています。

 

2021年度

2022年度

2023年度

HD+ABCテレビ

38.9%

41.6%

42.9%

 

※HD=朝日放送グループホールディングス

 

 2)直近3年採用者の離職率

 働き方@Colorful宣言に基づく各取り組みが、従業員の働きやすさ、モチベーションに与える影響を測る指標の一つとして計測しております。

 

グループ全体

HD+ABCテレビ

2021~23年度に採用した人数
(新卒・中途・契約社員等を含む)

465

73名

 

うち、直近3年の退職人数

57

4名

 

うち、直近3年の離職率

12.3

5.5%

 

2024年3月31日現在 ※役員就任に伴う退職者1名含む

 

 

 3)女性管理職人数・比率

ABCテレビ目標:女性管理職比率が2027年に17%、2030年に20%以上

 

2021年度

2022年度

2023年度

グループ全体 管理職人数

289名

314名

350名

 

女性管理職人数

42名

52名

65

 

女性管理職比率

14.5%

16.6%

18.6

ABCテレビ 管理職人数

168名

168名

182名

 

女性管理職人数

14名

16名

25名

 

女性管理職比率

8.3%

9.5%

13.7%

 

※2022年度までは4月1日現在、2023年度からは3月31日現在

 

 4)年代別女性従業員人数・比率

 

20代

30代

40代

50代

60代

70代

グループ全体 従業員人数

345名

510名

491名

403名

105名

2名

1,856名

 

女性従業員人数

179名

195名

133名

111名

14名

0名

632

 

女性従業員比率

51.9%

38.2%

27.1%

27.5%

13.3%

0%

34.1

ABCテレビ 従業員人数

72名

138名

181名

236名

60名

0名

687名

 

女性従業員人数

33名

38名

33名

55名

5名

0名

164名

 

女性従業員比率

45.8%

27.5%

18.2%

23.3%

8.3%

0%

23.9%

 

2024年3月31日現在

 

 5)育児休業取得者数

朝日放送グループホールディングス・ABCテレビ目標:性別問わず、育児休業取得率100%

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

グループ全体

 

男性

育児休業対象者数

31名

27名

32名

31名

47

 

育児休業取得者数

0名

5名

3名

21名

21

 

育児休業取得割合

0%

18.5%

9.4%

67.7%

57.5

 

女性

育児休業対象者数

23名

28名

24名

20名

22

 

育児休業取得者数

23名

28名

24名

20名

22

 

育児休業取得割合

100%

100%

100%

100%

100

育児休業取得率(全体)

42.6%

60.0%

48.2%

80.4%

71.0

育児休業復帰率

100%

100%

100%

100%

98.0

HD+ABCテレビ

 

男性

育児休業対象者数

15名

16名

13名

17名

19名

 

育児休業取得者数

0名

5名

2名

15名

14名

 

育児休業取得割合

0%

31.3%

15.4%

88.2%

73.7%

 

女性

育児休業対象者数

11名

10名

10名

5名

6名

 

育児休業取得者数

11名

10名

10名

5名

6名

 

育児休業取得割合

100%

100%

100%

100%

100%

育児休業取得率(全体)

42.3%

57.7%

52.2%

90.9%

80.0%

育児休業復帰率

100%

100%

100%

100%

100%

 

※HD=朝日放送グループホールディングス

 

 

(3)気候変動への対応

 当社グループは環境方針を制定し事業活動によって生じる環境負荷の低減や、様々な環境課題への対応の指針としています。特に、気候変動問題を重要な経営課題の一つとして捉えており、2023年12月に特定したマテリアリティでも、「地球の健康を取り戻し次世代へつなぐ」の具体的な取り組みとして、「カーボンニュートラルの実現など環境に配慮した事業活動の促進」を掲げております。また、環境課題への対応をTCFDが気候変動問題についての情報開示などを進める上で有効な枠組みになると考え、2022年5月にTCFD提言に賛同しました。

 

①ガバナンス

 当社グループは、取締役会より、サステナビリティに関連した課題の検討や対応の推進について委嘱された「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。

 委員会の下に「環境分科会」が配置され、気候変動対応に関するシナリオ分析、リスク・機会の分析、対応策の策定等を行い、委員会へ提言をしています。委員会は、四半期に1度の頻度で開かれ(2023年度:3回開催)、環境分科会からの提言等をもとに気候変動に関する現状の把握と対応を検討し、それらは執行役員会を通じて取締役会に報告・付議されています。取締役会の審議を経て、執行役員会がサステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示をしています。

 

②戦略

 TCFDが推奨するガイダンスに則り、2040年までの事業環境をシナリオ分析の手法を活用し、気候変動が当社に与える影響を分析・評価しています。また、影響があるとするリスクや機会に対して、どのように対応をすべきか検討を行っています。

 

1)シナリオ分析の概要

対象範囲

グループ連結対象企業

時間軸

現在~2040年

シナリオ構築

(ⅰ)今世紀末の地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えるシナリオ

(1.5 ℃シナリオ)

参照情報

 

● IEA WEO2021 NZE、SDSシナリオ

● IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より SSP1-1.9,2.6

● その他

 

(ⅱ)今世紀末の地球の平均気温が産業革命以前の水準から4℃程度上昇するシナリオ

(4℃シナリオ)

参照情報

 

● IEA WEO2021 STEPSシナリオ

● IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より SSP2-4.5、SSP3-7.9、SSP5-8.5

● A-PLAT S8 気候 RCP8.5

● その他

 

 

2)気候変動に関連して想定される事業環境の変化

 (ⅰ) 1.5 ℃シナリオ(気候変動への緩和)において想定される事業環境の変化

 温室効果ガス排出量削減に向けたより厳しい規制等が企業に迫られ、それにより大気中の温室効果ガスの増加スピードは下降していきます。現時点の地球の平均気温は産業革命以前の水準から既に1.1℃上昇しており、さらに2040年ごろの近畿地方の平均気温は現在より0.5℃から1℃程度高くなり、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の2倍程度になります。

 気候変動に対する社会の関心の高まりから視聴者・リスナー等やクライアントの行動変容や社会変容が進み、気候変動対応を行わないメディアには選別も行われるようになります。クライアントの事業内容にも多様な変化が起こり、それに伴い、既存クライアントのCM出稿計画の変更や新規クライアントのCM出稿が増えていきます。

 電気料金は長期的には横ばいあるいは低下しますが、再生可能エネルギーへの転換期には短期的な需給バランスの崩れにより高騰することがあります。

 

 (ⅱ) 4 ℃シナリオ(気候変動への適応)において想定される事業環境の変化

 特に厳しい温室効果ガス排出の規制がないことから、大気中の温室効果ガスは加速度的に増え続け、2040年ごろに近畿地方の平均気温は現在より2℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の4倍程度になります。激甚化する風水害に対して政府の対策がより強化されていきます。気温上昇により、熱中症搬送者数は現在の2倍程度に増加するとともに、これまで少なかった蚊媒介の感染症なども増えていきます。

 化石資源の価格及び電気料金は上昇していきます。また、風水害の激甚化による被災頻度が高くなり、事業のイレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が増加します。特に、暴風雨と高潮により、堂島川河畔の本社の浸水の危険性が高まります。

 

3)気候変動対応に関連する主なリスクと機会

1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ下における事業環境の変化から、発生する可能性のあるリスクと機会を抽出し、推測される財務への影響度について検討を行いました。その結果、当社の経営に大きく影響を及ぼす可能性があると推測されるものが次表となります。

シナリオ分析からは、リスクに関しては当社の事業のうち特に住宅展示場事業、ゴルフ事業において長期に発現可能性のある物理的リスクがあることが分かりました。一方、機会に関しては世界的な気候変動対応の潮流の中で、視聴者・リスナー等やクライアントともに意識、事業が変わることにより、番組内容、その提供方法など多岐にわたり新たな事業機会があることが分かりました。当社では、それらのリスク・機会に対して適切に対応していくために、それぞれについて取り組み方針を策定しました。

以下、「短期」は直近1~3年程度、「中期」は4年~10年程度、「長期」は11年~約20年程度。リスク分類はTCFDに沿った分類を行っています。

 

財務に影響が大きいと考えられるリスク

発現時期

主な取り組み方針

政策・法規制リスク

 より厳しい温室効果ガス排出抑制基準が設けられ、企業は排出削減のための投資や技術改善を迫られる。

短~長期

 グループで「ABCグリーン宣言」などにより、CO2フリー電力使用への転換などの実施を持続的に行う。

物理的リスク

 予期せぬ風水害の発生や激甚化、夏場の高温の影響で、番組変更の増加や危険を伴う報道・制作・技術などにより関わる社内の人的負担や必要となる各種リソースが増大する。

長期

 人的負担や各種リソース増大に対応する人的資本など各関連資本への投資配分を強化しつつ、放送を持続しメディアとしての責務を果たす。

 激甚化する暴風雨等の災害により住宅展示建物等が損害を受け人的負担・費用負担も増加、集客にも影響を及ぼす。

長期

 災害にも高いレジリエンスを持つ会場設営を行う。災害に強い展示建築物を出展社に促す。

 住宅展示場で、夏場の高温による顧客の減少が発生する。

長期

 災害に強いWEB対応などビジネスモデルの再構築をさらに進める。

 住宅展示場で、激甚化する暴風雨等の災害により来場者数の減少傾向が強まる。

長期

 災害時にもリアル顧客以外にも対応するビジネスモデルの再構築を進める。

 ゴルフ場で、激甚化する暴風雨等の災害により建物、設備、コース等が損害を受け人的負担、費用負担が増加。

長期

 災害にも高いレジリエンスを持つ各設備等の補強や対応を行う。

 暴風雨などの水面上昇により、堂島川河畔の本社の浸水の危険性が高まる。

長期

 社屋の浸水被害など災害防止のための設備対応を実施する。現行のBCPの浸水対策等の再検討・再策定を行う。

 

 

財務に影響が大きいと考えられる機会

発現時期

主な取り組み方針

市場/製品/

サービス

 気候変動の影響によるカスタマーの行動変容や社会変容に伴い、既存クライアントのCM出稿計画の変更や新規クライアントのCM出稿が想定される。

短~長期

 気候変動による市場変化に対応したクライアントの事業内容に適合させ、新たな顧客対応モデルを早期に考え、またビジネスチャンスに結び付ける。

 視聴者・リスナーの災害多発時代に合わせた生活や意識の変容により地球環境や自然に関連した情報への訴求が高まり関連コンテンツへニーズが高まる。

長期

・情報訴求の高い関連コンテンツの見直しや開発、及び番組編成の 再考・実施。
・災害現場の最前線での取材・ロケなどに十分対応できる技術イノベーションの開発を行う。 

 報道コンテンツのニーズが高まることによって、ニュース番組の視聴率・聴取率が上昇し、即時性が高いWEBコンテンツの訴求も高まる。

長期

 放送だけでなく配信での展開も研究し、TV視聴者ニーズとWEBユーザーのニーズを融合した立体的な発信の仕方をさらに開発する。

 テレビ社等放送各社が気候変動対応を十分に行い社会から改めて高い信頼を得ることで、コンテンツビジネスなどがスムーズに発展する。

長期

 ビジネス開発には年数がかかるため、早いうちから気候変動に対応したビジネスを研究し、実現する。

 気候変動関連の番組・コンテンツ作りが行われる、視聴者・リスナーや配信ユーザーから極めて大きなニーズが生まれる。

長期

 制作も報道も日常的に「命を守る情報」の発信が必要とされるため、気候変動に関する深い知識を持った人材を育成する。

 災害に強い住宅やZEH、ZEB等が注目され新たな顧客ニーズがさらに増加する。

短~長期

 各住宅メーカーやビルダーとともに災害に強い様々な施策を進める。

 

 

4)気候変動に対する緩和・適応へのレジリエンス

気候変動を緩和する1.5℃シナリオと気候変動が激しくなる4℃シナリオの2つのシナリオに対して当社の事業を分析した結果、政策・法規制リスク、物理的リスクにおいて比較的影響度の高い課題が抽出されました。政策・法規制リスクに対しては、既に対応を進めております。また、物理的リスクに対しては、発現時期が中期、長期であることから、いずれも今後の対応により回避できるリスクであると考えられます。従って当社は気候変動に対して一定のレジリエンスを有していると判断しています。

 

5)温室効果ガス排出量の削減計画

 (ⅰ) Scope1,2

 2022年1月に脱炭素社会への貢献と対応を行う「ABCグリーン宣言」を発表しました。主な取り組み内容は、当社の使用電力について(Scope2)、2022年4月に、大阪本社屋で使用する電力を実質 100%再生可能エネルギー由来に変換するなどし、2025年には、CO₂フリー電力化の実現を目指すものです。また、2022年4月よりオフィス・スタジオ等の照明LED化を開始し、2025年に作業完了することで、電力量削減によるCO₂排出量削減に貢献します。既に2013年より進めている太陽光発電事業は今後も継続します。

 なお、Scope1・2のエネルギー使用量とガス排出量はデータ算出を進めており、より具体的かつ精緻な削減を行っていきます。

 

 (ⅱ) Scope3

 当社の事業活動に関連するサプライチェーンで排出される温室効果ガスの排出量等(Scope3)のデータ集約も段階的に対応を進めていき、その内容は、適宜適切に情報開示を行っていく方針です。

 

③リスク管理

気候変動を含む環境リスクの抽出や対応策の検討はサステナビリティ推進委員会及びその下部組織である環境分科会が中心となって行います。TCFDの対応についても環境分科会でシナリオ分析などを進め、サステナビリティ推進委員会に報告しております。シナリオ分析を含めた当社のリスク関連の情報は、グループ全体のリスク管理を行う執行役員会にも報告されます。執行役員会ではグループ全体の主要なリスクを検討し、必要に応じて事前予防策の検討や実施の管理を行っています。執行役員会で検討された内容は、取締役会に報告され審議されます。取締役会審議を経て、執行役員会が、サステナビリティ推進委員会あるいはグループ各社に指示が行われます。

 

④指標及び目標

1)温室効果ガス排出量の削減に関する指標と目標

 (ⅰ)Scope1,2のこれまでの温室効果ガス排出量の実績は以下のとおりです。

 Scope3は現在、データ算出作業を行っており、算出が完了次第開示する予定です。

 

指標データ範囲

朝日放送グループ の大阪・東京等各オフィスおよび施設等の一部 ※

データ年度

2014

2015

2016

2017

2018

2019

2020

2021

2022

CO2排出量

(t-co2)

※※

Scope1

891.2

847.7

843.6

705.4

689.7

695.7

706.8

655.4

666.0

Scope2

8,039.3

8,061.8

7,842

7,723.7

6,574

5,257.3

4,902.2

5,409.0

949.3

トータル

8,930.5

8,909.5

8,685.5

8,429.1

7,263.7

5,953

5,609

6,064.4

1,615.3

 

※朝日放送グループホールディングス・ABCテレビ本社、高石・生駒送信所、ザ・タワー大阪無線中継室、中之島フェスティバルタワー無線中継室、中継局(総合)、神戸・京都支局、abcd堂島ビル(5F,6F)、東京オフィス、名古屋支社、ABCアネックス

※※データは、経済産業省・総務省・国土交通省への報告数値。電気については、環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数で算出。

Scope1,2の削減目標数値は、現在社内調整中であり確定後に追って開示します。

 

 

 (ⅱ)当社高石市太陽光発電所(※)による温室効果ガス排出削減貢献量(太陽光発電事業による再生可能エネルギー電力の供給量の数値)の実績は以下のとおりです。

 

データ年度

2017

(5月~2018年3月)

2018

 

2019

 

2020

 

2021

 

2022

 

発電量(kWh)

2,986,664

3,216,127

3,240,767

3,273,416

3,240,581

3,245,681

CO2排出削減貢献量

(t-co2)※※

1,520

1,344

1,082

1,041

1,137

1,009

 

※高石市太陽光発電所:高石ラジオ送信所内(大阪府高石市綾園四丁目)

※※環境省公表「電気事業者別排出係数一覧」の調整後排出係数(関西電力)で算出。

リスクや事業機会の管理に必要な指標、目標値は、それぞれのリスクや機会への具体的な対応策が決定された後に設定する予定です。

 

2)ABCグリーン宣言進捗

 前述②戦略5)(ⅰ)に記載のとおり、TCFDの提言に基づく情報開示に先立ち、2022年1月、当社は「ABCグリーン宣言」を発表し、2025年にグループ全体でCO₂フリー電力化を目指しております。

 


 

なお、上記「ABCグリーン宣言」の目標に対し、2024年3月31日時点での進捗は以下の通りです。

(1)CO₂フリー電力化の進捗状況

      CO₂フリー電力化の対応が可能な対象全20社のうち、2023年度に16社で達成(対象社の80%)しており、今後、目標の2025年までに全社で達成する見込みです。

また、テレビ・ラジオの送信所は100%CO₂フリー電力化をすでに完了しております。

 (2)照明LED化の進捗状況
 本社屋については、放送スタジオで100%照明LED化を完了、オフィスを含む本社屋全体では約60%の進捗となります。東京オフィスについても対応を進めており、対応可能なグループ会社については、概ね2025年度中に目標を達成する見込みです。

(3)太陽光発電パネルの設置

  当社グループでは、2013年11月に大阪・高石ラジオ送信所にて太陽光発電事業をスタートさせ、グリーン電力の持続的創出に貢献しています。また、ライフスタイル事業2社、エー・ビー・シー開発(2023年に2設備の増加、計9会場)ABCゴルフ倶楽部(2023年)でも新たに各事業所内に太陽光パネル設備を設置・稼働させ、自然エネルギー使用の推進を促進しております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況による影響について

当社グループの主たる事業である放送事業は、広告収入に依存しております。日本の広告市場は、国内マクロ経済の動向や広告支出額の多い企業の業績に影響を受けると考えられます。

2023年の日本の総広告費は、新型コロナの5類感染症移行に伴うリアルイベントの開催数増加や国内外の観光・旅行の活性化などにより回復が見られ、前年から3.0%増加し、7兆3,167億円となりました。中でもインターネット広告費は、進展する社会のデジタル化を背景に、前年比7.8%増と過去最高を更新しました。

当社グループの連結業績は、メディア接触の変容と相まって、今後も国内広告市場等の動向に影響を受ける可能性があります。こうしたリスクに対応するために、中核である放送事業の価値を維持、向上しながらコンテンツ事業、ライフスタイル事業の成長を図ることで、各事業間、グループ各社間の連携をより深化させ、グループ全体で変化に対応できる体制を構築いたします。

 

(2) 放送事業について

①番組制作について

当社グループは、朝日放送テレビ株式会社を中心に放送事業各社が連携し、継続して斬新で魅力ある番組を開発し発信する体制を整えてまいりました。しかし、視聴者や広告主、社会のニーズに応えることができなければ、支持される番組を制作し続けることはできないと考えております。経営理念に掲げている通り「変化に対応しながら進化を続け、強力な創造集団として、社会の発展に寄与する」ことは当社事業の根幹であり、視聴者・広告主・社会のニーズに応えることができなければ、当社の経営にも悪影響を及ぼす可能性があると考えています。

今後も、これまで以上に、視聴者のニーズや社会の変化を積極的に感じ取り寄り添うことで、これまでの手法にとらわれない新たな番組作りのあり方を常に模索し、広く支持される番組作りを進めてまいります。

②番組内容について

当社グループは、放送番組の内容については、番組審議会や放送番組検討会議等の社内チェック機関ならびに日常の社員教育により問題が生じないように努めておりますが、完璧であることを保証するものではありません。大きな訴訟や賠償につながるような誤った報道または番組内容があった場合は、当社グループの評価に重要な影響を与え、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

そうした事態を避けるため、今後も放送人としての意識とモラルを保つための制度や研修体制を強化し、放送倫理に基づいた番組制作体制の確立をはかってまいります。

③競合メディアについて

技術革新とIT化の普及により、映像コンテンツに触れることができるデバイスは多様化し、インターネット動画配信サービスが利用者を大きく伸ばし続けるなど、放送事業においては大きな脅威となっており、今後もこの状況は進んでいくものと思われます。

一方で、コンテンツの供給先としてとらえれば、こうした状況はビジネスチャンスの拡大につながると考えられますが、それらの進展状況や当社グループとしての対応が遅延する又は支障が生じた場合には経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

今後は、地上波放送の価値を維持しながら、グループ全体でコンテンツビジネスの拡大を図り、新たなメディア環境に柔軟に対応しうる体制を構築してまいります。

 

 

(3) 法的規制について

当社は放送法の規定に基づき認定放送持株会社としての認定を受けております。また当社グループの売上の大半を占める放送事業は、電波法や放送法等の法令による規制および政府、監督官庁の放送行政に大きな影響を受けております。

朝日放送株式会社は1951年10月に放送法に基づく放送免許を取得、60年以上にわたり更新し、2018年4月にテレビおよびラジオの放送免許を当社の子会社である朝日放送テレビ株式会社および朝日放送ラジオ株式会社にそれぞれ承継しております。最近では2023年11月に更新を受けており、有効期限が5年であります。

しかしながら、将来において、これら法令に違反する重大な事実が発生した場合、免許・登録等の取り消しや行政処分が発せられ、当社グループの事業活動や経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、法令改正や監督官庁の放送行政の施策により、新たな設備投資が必要となりコストの増加が生じる可能性も考えられ、その場合、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を及ぼすことになります。

こうしたことから、当社グループでは内部管理体制の強化やコンプライアンス体制の整備に努めており、免許・登録等の取り消しや更新拒否の事由となる事実は現時点では発生しておりません。

 

(4) 個人情報の取り扱いについて

当社グループでは、番組の出演者、観覧者、会員サービス、ショッピング事業やハウジング事業の顧客情報等の個人情報を保有しております。これら個人情報の取り扱いに関しましては、十分な注意を払っておりますが、不正アクセスや想定していない事態によって外部流出等が発生した場合、当社グループの社会的信用に悪影響を与え、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは今後、最新のデジタル技術も活用し、グループ内の各種データの厳密な管理を徹底してまいります。

 

(5) 災害や事故による影響について

当社グループは、放送事業においては、放送事故や放送中断による悪影響を最小化するため、全ての設備における定期的な更新と点検整備を行っております。しかし、放送設備、中継設備で発生する災害、停電またはその他の中断事故につながる全ての事象を完全に防止または軽減できる保証はありません。従って、大規模地震や火災、停電等により放送設備等が被害を受ける等した場合、経営成績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。また、ハウジング事業やゴルフ事業等における事業用地に何らかの被害が発生した場合も事業収益に悪影響を及ぼす可能性があります。

こうした事態に対応しうるよう、従業員の安全を確保しながらの放送継続のためのBCP事業継続計画を整備し、体制を維持・強化してまいります。

 

(6) 外国人等が取得した株式の取扱等について

放送法では認定放送持株会社の認定要件の一つとして、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者が特定役員である場合と、日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者、外国の法人、団体が議決権の5分の1以上を占める場合には、認定しない旨が規定されています。一方で、放送法では一定の条件のもとで、上記の外国人等からの名義書換を拒むことができるとの規定もあります。

当社では現在、外国人等の議決権比率が5分の1以上を占める状態にはありませんが、今後も外国人等の議決権比率に対する注視を続け、認定を維持するべく必要に応じた適切な対処を行ってまいります。

 

 

(7) 成長投資に伴う業務提携や企業買収等について

当社グループでは、認定持株会社体制下でグループ成長の原動力とするための成長投資を積極的に行ってきました。今後も事業拡大やバリューチェーン構築のための選択肢の一つとして、業務提携や企業買収等を実行する可能性があります。これらについて、必ずしも予期したとおりの成果が得られるという保証はなく、事業環境の急変等により事業収益性が低下した場合には、株式の評価損やのれんの減損等にかかる損失が発生するリスクがあります。また、投資先等においてコンプライアンスや内部統制の不備等が内在するリスクも否定できず、これらに起因して、当社グループの経営成績、財務状況、およびグループガバナンスに悪影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクを低減するため、投資プロセスにおいて、チャンスとリスクについて検討し協議する体制、制度を整備し、管理バックアップ体制を強化してまいります。その上で、放送事業、コンテンツ事業、ライフスタイル事業、それぞれの領域における戦略に沿った機能や資源を獲得する手段としてM&Aなどの投資を行い成長のエンジンとしてまいります。

 

(8) 固定資産の減損会計による影響について

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っています。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

<経営成績>

当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」移行となり、経済活動の正常化が進み、景気に緩やかな回復がみられました。しかしながら、物価上昇や急激な為替相場の変動のほか、中東地域等をめぐる不安定な国際情勢や海外景気の下振れリスク等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような経済状況の中、当社グループが主力事業を展開する放送・コンテンツ事業の売上高は、主力のテレビスポット収入等は減少しましたが、ネットタイム収入やコンテンツ関連の収入が増加したこと等により増収となりました。ライフスタイル事業は減収となりました。以上の結果、当連結会計年度における当社グループの売上高は904億5千2百万円となり、前年同期に比べて34億2千3百万円3.9%)の増収となりました。

費用面では売上原価が629億6百万円で、前年同期に比べて48億3千8百万円8.3%)増加しました。販売費及び一般管理費は267億1千4百万円となり、3億4千7百万円1.3%)増加しました。この結果、営業利益は8億3千2百万円となり、17億6千1百万円△67.9%)の減益経常利益は7億2千3百万円19億3千8百万円△72.8%)の減益となりました。また、固定資産売却益および投資有価証券売却益により特別利益1億2千8百万円を計上した一方、減損損失、投資事業損失および投資有価証券評価損により特別損失12億5千1百万円を計上しました。

以上の結果、税金等調整前当期純損失は4億円23億3千8百万円の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は8億8千4百万円となり、22億3千8百万円の減益となりました。

セグメントごとの経営成績は、以下のとおりです。

 

 [放送・コンテンツ事業]

放送・コンテンツ事業の売上高は767億1百万円となり、前年同期に比べ37億3千4百万円5.1%)の増収となりました。主力のテレビスポット収入等が減少しましたが、全国ネットのドラマ枠の新設等によりネットタイム収入が増加したほか、配信関連の収入やコロナ禍からの回復により催物収入等のコンテンツ関連の収入が増加しました。営業費用はテレビ制作やコンテンツ制作にかかる費用が増えて7.8%増加しました。この結果、営業利益は9億1千7百万円となり、前年同期に比べて16億8千4百万円△64.7%)の減益となりました。

 

 [ライフスタイル事業]

ライフスタイル事業の売上高は137億5千1百万円となり、前年同期に比べ3億1千万円△2.2%)の減収となりました。減収に伴い営業費用は、3.8%減少しました。この結果、営業利益は3億7千3百万円となり、前年同期に比べて6千万円△13.8%)の減益となりました。

 

 

<財政状態>

(資産)

当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べて9億1千9百万円増加し、1,232億2千5百万円となりました。退職給付に係る資産や投資有価証券が増加したこと等によるものです。

 

(負債)

負債合計は前連結会計年度末に比べて27億8千7百万円減少し、470億7千2百万円となりました。その他流動負債に含まれる設備関係の未払金が減少したほか、退職給付に係る負債が減少したこと等によるものです。

 

(純資産)

純資産合計は前連結会計年度末に比べて37億7百万円増加し、761億5千3百万円となりました。配当の支払い及び親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が減少しましたが、その他有価証券評価差額金が増加したこと等によるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動により56億5千8百万円の収入となり、投資活動により56億5千9百万円の支出となり、財務活動により11億4千5百万円の収入となりました。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度の期末残高は、前連結会計年度末より11億4千4百万円増加251億3千6百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失を計上しましたが、減価償却費や減損損失等の非資金性費用を調整した結果、56億5千8百万円の収入(前年同期は29億5千1百万円の収入)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得や長期前払費用の取得等により56億5千9百万円の支出 (前年同期は50億4千6百万円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入等により11億4千5百万円の収入(前年同期は16億1千万円の支出)となりました。

 

③販売の状況

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

放送・コンテンツ事業

76,701

5.1

ライフスタイル事業

13,751

△2.2

合計

90,452

3.9

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当社グループは、主要な顧客である広告主に対し、広告代理店を通じてテレビ広告枠の販売などを行っております。最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合を広告代理店別に示すと次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱電通

20,070

23.1

18,893

20.9

㈱博報堂DYメディアパートナーズ

13,636

15.7

15,312

16.9

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。当社経営陣は、この連結財務諸表の作成に際し、決算日における財政状態及び経営成績に影響を与える会計方針の決定及び見積りを行わなければならず、貸倒引当金、投資、財務活動、退職金、偶発事象等に関しては、継続して評価を行っております。また、その他の当社グループ固有の事象については、他の方法では判定しづらい場合には、過去の実績等を勘案して、より合理的であると当社経営陣が考えられる基準に基づき判定の根拠としています。従って、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

<経営成績等の状況>

当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

当社グループは、地上波テレビ・ラジオ、CS放送による放送事業を中核に、アニメ・動画配信・イベント事業などによるコンテンツ事業、そして住宅展示場やゴルフ場運営、通販事業などによるライフスタイル事業等を合わせた「強力な創造集団」として企業価値の向上に取り組んでいます。

2024年3月期の連結売上高は904億5千2百万円となり、前年同期に比べて34億2千3百万円の増収。営業利益は8億3千2百万円となり、17億6千1百万円の減益。親会社株主に帰属する当期純損失は8億8千4百万円で、増収減益となりました。

当連結会計年度の日本経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが「5類」移行となり、経済活動の正常化が進み、景気に緩やかな回復がみられました。しかしながら、物価上昇や急激な為替相場の変動のほか、中東地域等をめぐる不安定な国際情勢や海外景気の下振れリスク等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。このような経済状況の中、当社グループが主力事業を展開する放送・コンテンツ事業の売上高は、主力のテレビスポット収入等は減少しましたが、全国ネットドラマを開始したことによるネットタイム収入やコンテンツ関連の収入の増加に加え、アニメ関連の売り上げが増加したこと等により増収となりました。ライフスタイル事業は減収となりました。

このような事業環境の変化に対応するため、2021年4月からスタートさせました中期経営戦略「NEW HOPE」を、当社グループがさらに進化していくため、昨年度よりあらたにNEW HOPE「2nd STAGE」とし、総合コンテンツ事業グループとして力強い成長を図ってまいります。

 

<資本の財源及び資金の流動性についての分析>

当社グループの当連結会計年度の資本の財源及び資金の流動性の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

中期経営戦略 NEW HOPE「2nd STAGE」の中で財務戦略として掲げていますように、投資にかかる資本コストを意識した経営資源配分を行うことで事業ポートフォリオを最適化し、中期経営戦略実現のための継続的な成長投資を行うことで、総合コンテンツ事業グループとしての企業価値向上を目指します。そして、財務の健全性と財務レバレッジの適切なバランスを維持するために、最適な資金調達手段及び資金効率の最大化を目指します。

 

<経営成績に重要な影響を与える要因について>

詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

①  朝日放送グループホールディングスでは、継続して放送と通信を連携するサービスについて研究・検証を行っています。2023年度においてもIPTVフォーラムが運営する検討会へ参加、テレビデバイスで番組に関連した通信コンテンツへの遷移などのユースケースの提案を行い、放送とネットを繋ぐ技術を活用した技術検証に協力しました。

②   インターネットやデジタルデバイスの普及に伴い、情報接触の手段や機会が多様化する中、朝日放送テレビでは朝日放送グループホールディングスと協力し、テレビの視聴データを格納するデータ基盤を構築、データの分析を進め、自局のWEBサービスへのテレビPRの効果検証やセールス利活用への取り組みなど、継続的にテレビ視聴データの利活用について検証を進めています。

③   朝日放送グループホールディングスではプライバシーに配慮した形で、各種データを格納したCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を構築、このCDPのデータを用いて以下の実証実験を行いました。

    a.カスタマージャーニーの可視化

 グループのWEBサイトを来訪するユーザーを増やすために、実際に来訪したカスタマーの動きを分析、各WEBサイトとの相関関係を可視化しました。

      b.顧客へのメール配信

 CDPのデータからオーディエンスを生成・抽出し、LINE広告でターゲティング広告を配信する技術検証を行いました。

      c.ターゲティング広告

 機械学習で判別したロイヤリティの高い顧客へのターゲティング広告の有効性の検証を行いました。

④   朝日新聞社と共同で展開している「バーチャル高校野球」では、配信環境の変化に対応するために、必要なシステムの研究・検証を行いながら、毎年サービスや設備のアップグレードを行っています。2023年度は地方・全国大会を全試合配信するとともに配信先を拡大し、また、さらなる安定運用に向けての配信設備の冗長化などの検証に取り組みました。

⑤   朝日放送グループホールディングスでは、最新の技術調査のために継続して海外展示会の視察を行っています。2023年度は、クラウドサービスを展開するAWSが主催するre:Invent2023に技術者を派遣しメディアサービス等のセッションで新しいサービスや機能の情報収集を行いました。また、世界最大規模の最新テクノロジーの見本市のCES2024では映像体験・メディア・広告業界の最新動向、AIやテクノロジーの新技術動向の調査を行いました。

⑥   生成AIを積極的に活用し、業務効率化や新たなアイデア創造に利用するために、情報漏洩の恐れがなく、安心安全に使える朝日放送グループ独自のChatGPT利用環境「ABChat(エビチャット)」を開発し、グループ全体に提供しています。

 

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は197百万円であります。