第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社は、マテリアリティで定めた第98期(2031年3月期)のありたい姿の達成を目指し、第92期(2025年3月期)から第94期(2027年3月期)までの3か年を実行期間とする中期経営計画「Vision2026」を策定いたしました。

 

<「Vision2026」の概要>

 当社グループでは、2023年にパーパスの制定、マテリアリティの特定を行いました。マテリアリティでは、ありたい姿を見据え達成目標を定めました。

 第89期(2022年3月期)から第91期(2024年3月期)までの3か年を実行期間とした中期事業計画「Vision2023」では、事業の成長と構造転換を進めてまいりました。しかしながら、ありたい姿を達成するには、さらなる企業価値向上が必要となります。

 そこで、中期経営計画「Vision2026」では、企業価値向上のために事業ポートフォリオマネジメントの強化をさらに推し進めてまいります。

 

<「Vision2023」の振り返り>

 「Vision2023」の最終年度である第91期に200周年を迎えるにあたり、パーパス「微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。」を制定いたしました。また、パーパス、経営理念に基づきESGを含む事業活動と各指標を明示したマテリアリティを策定いたしました。

 事業活動では、「電子素材」セグメントを成長事業、「機能性顔料」セグメントを収益基盤事業と位置付け、企業価値向上に取り組みました。初年度である第89期は、世界経済の回復を背景に需要が回復し、計画を大幅に上回りました。特に、高品質な電子素材の販売が好調に推移いたしました。また、磁石成形品の製造会社「江門協立磁業高科技有限公司」(中国)を子会社化し、川下展開による事業拡大を具体化させました。しかし、第90期(2023年3月期)以降、需要低迷、原材料・エネルギー価格や輸送費高騰等の影響を受け、計画は未達に終わりました。特に、酸化鉄顔料を製造する連結子会社「戸田聯合実業(浙江)有限公司」(中国)の譲渡は、当社グループの将来的な企業価値の向上に資するとの判断から実行しておりますが、第91期においては「機能性顔料」の収益力を押し下げる主な要因となりました。

 以上のことから、当期間における「電子素材」は黒字ながらも弱い成長に留まり、「機能性顔料」は赤字となり安定した収益の確保には至りませんでした。

 

「電子素材」セグメントの材料

 

「機能性顔料」セグメントの材料

 ・磁石材料

 

 ・顔料

 ・誘電体材料

 

 ・環境関連材料

 ・軟磁性材料

 

 

 ・リチウムイオン電池用材料

 

 

 

<「Vision2026」の考え方>

 「Vision2026」の期間においては、事業ポートフォリオマネジメントを強化してまいります。選択と集中を加速するための3つの戦略を推し進め、計画の達成を目指してまいります。

①事業戦略

「電子素材」は、以下の戦略により事業の拡大を推し進めます。

・高い信頼性を有する素材の開発と川下展開

・M&Aにより強化した事業のさらなる成長

「機能性顔料」は、以下の戦略により事業構造の転換を図ってまいります。

・事業の合理化と収益を伴う事業継続

・産学官連携による次世代事業の早期事業化

② 財務戦略

 営業利益率、ROE、自己資本比率、運転資本回転期間を経営目標数値として定め、財務基盤の安定と資本効率を意識した事業運営に努めてまいります。

 

 

③ 人財戦略

 技術立社を支える人材開発として、主要部門のサクセションプランを強化する他、女性及びマイノリティのキャリア開発、DXの推進を加速する人材育成に取り組んでまいります。これらの人材開発により多様性と独創性のある職場を実現し、人的資本の最大化を図ります。

 

 最後に、当社グループは、「事業活動を通じて、社会的な課題解決を支援する」ことを使命とし、社会の課題、時代の最先端ニーズに応えることで成長してまいりました。当社グループは、これからも酸化鉄の可能性を追い求め、新素材、ソリューションを提供し、多様に進化する社会を支える存在であり続けるよう取り組んでまいります。

 そして、メーカーとしてお客様のニーズに応える製品を安定継続的に供給することが重要な責務であると認識し、事業活動に取り組んでまいります。

 今後も会社を生々発展させることを通じて、株主様、お客様、従業員及び地域社会の皆様に対して負っている社会的責任を果たしてまいります。

 

パーパス

微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。

 

経営理念

私たちグループは、酸化鉄で培った微粒子合成技術を深化させながら、永遠に生々発展します。

誠実・信頼を基盤とし創造力と製造力を結集させ、魅力ある独創性に富んだ新素材及びソリューションを通じて、広く社会に貢献します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 戸田工業グループは、サステナビリティを「企業と社会・地球の生々発展」と定義いたします。このサステナビリティを実現するため、事業活動を通じて社会的な課題解決を支援いたします。

 当社グループは、経営理念に「絶えず活動しながら発展しつづける」という意味をもつ「生々発展」という言葉を用いております。企業として生々発展するのはもちろんのこと、当社の技術と活動が人間社会と地球環境の持続可能な発展に寄与することが重要であると捉えております。

 この経営理念を追求すべく、戸田工業グループは3つの価値を大事にしてまいります。

 

革新的な微粒子合成技術による未来社会への貢献

 技術立社の精神に則り、未来を「想像」し、未来を「創造」いたします。社会の課題に真摯に向き合い、技術者倫理に基づく説明責任、公益確保、安全管理に努めます。また、創意工夫を奨励し、知的財産に基づいた競争と協力を実践いたします。

 

持続可能なサプライチェーンの構築

 調達活動、開発活動、生産活動、販売活動のすべてにおいて、安全、環境、人権、品質を優先いたします。同じく社会課題解決を志すパートナーと連帯し、公正な取引、供給責任、社会貢献に努めます。

 

より良い企業市民、より良い社会の公器

 すべての事業活動において、トップ自らが率先垂範することにより、グローバルルール、コンプライアンスを遵守いたします。コーポレート・ガバナンス体制の強化に努め、適切な財務管理、情報開示を行うとともに、情報セキュリティを推進いたします。人の可能性を信じ、人のつながりから生じるあらゆる価値を最大化するための組織文化を築きます。

 

 (1) 気候変動への対応(TCFD提言への取組み)

 当社グループは、将来の世代も安心して暮らせる持続可能な経済社会をつくるため、気候変動を経営上の重要課題とし、地球温暖化対策に取り組んでおります。また、取組みを着実に実行するとともに、TCFDが推奨するシナリオ分析に基づいた気候変動のリスク・機会の評価を行い、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」に関する開示を段階的に充実させてまいります。

 

① ガバナンス

 気候変動対応への全社的な推進・管理に向けて、リスク管理委員会(委員長:代表取締役社長執行役員)の直下に、CSR・環境委員会を設置し、国内グループの環境に関する統括管理を実施しております。

 取締役会は、リスク管理委員会からの報告を通じて気候変動への対応状況を確認し、必要な体制・制度の構築について決定・監督を行っております。CSR・環境委員会は、委員長を経営企画室長が担当し、全社横断的な各事業所の責任者及び担当者で構成しております。

 なお、当社の気候変動対応への推進・管理に関する体制図は以下のとおりであります。

 

0102010_001.png

② 戦略

 気候変動により世界全体の平均気温が4℃上昇することは、社会に非常に大きな影響を及ぼします。

 気温上昇を1.5℃未満までに抑えることを目指すパリ協定を踏まえ、当社グループでは、1.5℃シナリオと2℃シナリオ及び4℃シナリオにて、リスクと機会を分析しております。

 

主な事業リスクと機会

区分

種類

事業活動への影響

時間軸

評価

移行リスク
(1.5℃/2℃)

政策/法規制

カーボンプライシング(炭素税、排出量取引等)による税負担の増加

中~長期

技術

低炭素化設備・低炭素プロセスへの転換による設備投資の増加

中~長期

市場

原材料・エネルギーの調達コストの増加

中~長期

複写機・プリンター使用控えによるトナーの需要減少

中~長期

評判

気候変動対応への取組みが不十分と評価された場合、顧客、投資家からの評価低下

中~長期

物理的リスク
(4℃)

急性

自然災害による建物や設備への被害

中~長期

サプライチェーン寸断による工場操業率低下

中~長期

慢性

海面上昇による沿岸部事業所への追加投資の発生

長期

機会

製品/サービス

EV市場の拡大によるプラスチックマグネット、チタン酸バリウム及び非接触給電用部材の需要増加

中~長期

市場

CCUS市場の拡大に伴うCO2固体回収材の需要増加

中~長期

メタン直接改質法による水素・カーボンナノチューブ供給の需要増加

中~長期

 

③ リスク管理

 CSR・環境委員会を毎月開催し、「国内グループの環境に関する統括管理」、「各事業所における年度目標の設定」や「各事業所から毎月の活動報告を通じた進捗管理」を実施しております。

 また、リスク管理委員会を通じて、取締役会への気候変動対応に関する報告を年2回実施しております。

 

 

④ 指標及び目標

 当社グループの日本国内における2023年度のGHG排出量について、Scope1+2は25,059 t-CO2、Scope3は137,731 t-CO2となりました。

 

         GHG排出量                       t-CO2

 

2023年度

Scope1+2, 日本国内

25,059

Scope3, 日本国内

137,731

 

 2050年までにカーボンニュートラル(GHG排出を全体としてゼロ)を目指すため、Scope1+2のGHG排出量、売上高基準のGHG排出量及び再生可能エネルギーの利用について、2019年に策定した『環境ビジョン2033』を見直し、挑戦的な2030年の目標を設定しております。

 

   1 Scope1+2のGHG排出量      22,000 t-CO2まで削減

(2013年度比で75%削減)

   2 売上高基準のGHG排出量     70%削減

(2013年度比)

   3 再生可能エネルギーの利用  17%以上

0102010_002.png

 

 

 

 

 

0102010_003.png

 

 

 

 

GHG排出量(Scope3,日本国内,2023年度)

Category

項目

t-CO2

算定拠点

排出係数の取得方法

備考

購入した製品・

サービス

98,722

戸田工業

IDEA Ver.2.3

算出対象の費目は、調達金額の上位90%以上

東京色材工業

資本財

5,423

戸田工業

環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

調達している

燃料の上流

10,746

戸田工業

IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

東京色材工業

輸送、配送

(上流)

6,455

戸田工業

環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

算出対象は、調達数量上位から90%以上

小野田事業所

大竹事業所

岡山事業所

東京色材工業

事業から出る

廃棄物

258

小野田事業所

IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

算定対象は、生産拠点のみ
(広島本社、東京オフィスは除外)

大竹事業所

岡山事業所

東京色材工業

出張

246

戸田工業

IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

雇用者の通勤

334

戸田工業

IDEA Ver.2.3

東京色材工業

戸田ファインテック

リース資産

(上流)

対象外

輸送、配送

(下流)

1,490

小野田事業所

環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

取引数量の多い取引先向けの排出量をもとに拡大推計

大竹事業所

岡山事業所

10

販売した製品の加工

対象外

11

販売した製品の使用

対象外

12

販売した製品の廃棄

14,056

戸田工業

IDEA Ver.2.3
環境省_排出原単位   データベース Ver.3.4

東京色材工業

13

リース資産

(下流)

対象外

14

フランチャイズ

対象外

15

投資

対象外

その他(任意)

対象外

合計

137,731

(注)IDEAは、農・林・水産物、工業製品等の日本の全ての製品・サービスの環境負荷物質を定量できるデータベース

   であります。

 

 (2) 人材育成

① 人事ビジョン ~当社グループ人事施策の根幹~

社員の成長を通して組織力を高め、社業を発展させ、社会に貢献いたします。

 

② 当社グループの求める将来像

 2023年に創業200周年・会社設立90周年を迎えることができ、2024年、新たな一歩を踏み出すことになりました。改めて、創業から脈々と受け継がれてきた技術立社の精神への認識を新たにし、より強固な経営体制とともに、夢や希望を持ち、明るい未来に向かって生き生きと仕事が続けられる風土作りに取り組んでまいります。

 2033年の設立100年、さらには遥か2123年の創業300年に向けて、社員が成長し、信頼と感謝の気持ちで相互に繋がり、そしてお客様からの厚く信頼される、かけがえの無い存在価値を持った会社になる将来像を思い描いております。

 第92期(2025年3月期)において、2025年3月期(2024年度)から2027年3月期(2026年度)までの3か年を実行期間とする新中期経営計画「Vision2026」を策定いたしました。事業ポートフォリオマネージメントの強化をミッションに掲げ、選択と集中を加速するための1.事業戦略、2.財務戦略、3.人財戦略を推し進め、計画の達成を目指してまいります。企業価値・収益性の向上および財務基盤の一層の安定を目指します。そのためにも、人財戦略に沿って生技販管(全機能別組織)が一丸となり、それぞれの力を高め、また連携して社業発展に努めていく所存であります。

 

(抜粋)中期事業計画「Vision2026」

経営方針:設立100年を超えても発展し続け、社会に貢献できる「もの作り企業」として経営基盤を確立する。

Mission:「事業ポートフォリオマネジメントの強化」~選択と集中の加速による事業成長~

1.事業戦略

電子素材事業

以下の戦略により事業の拡大を推し進めます。

・高付加価値:高い信頼性を有する素材の開発と川下展開

・シナジー :M&Aにより強化した事業のさらなる成長

 

機能性顔料事業

以下の戦略により事業構造の転換を図ってまいります。

・プロダクトライフサイクル:事業の合理化と収益を伴う事業継続

・オープンイノベーション :産学官連携による次世代事業の早期事業化

2.財務戦略:

営業利益率、ROE、自己資本比率、運転資本回転期間を経営目標数値として定め、財務基盤の安定と資本効率を意識した事業運営に努めてまいります。

3.人財戦略:

技術立社を支える人材開発として、主要部門のサクセションプランを強化する他、女性およびマイノリティのキャリア開発、DXの推進を加速する人材育成に取り組んでまいります。これらの人材開発により多様性と独創性のある職場を実現し、人的資本の最大化を図ります。

⇨上記取り組みによって、企業と社会・地球の生成発展を目指します。

 

③ 求める(目指す)人物像 ~率先垂範により周囲に好影響を与える~

基本姿勢 :意欲に溢れ、柔軟性と主体性を持ちあわせ、自己実現と顧客と当社グループの成長に向かってチャレンジを続ける人材

(顧客とともに組織、個人の成長に応える)

⇒全員が各々役割に応じたリーダーシップを発揮

技術志向 :高い専門性を有し、創意工夫により付加価値を創出できる人材

(顧客、社会のイノベーションに応える)

⇒技術立社の精神を支えるため、日々研鑽

組織志向 :多様な価値観を理解した上で、コミュニケーションを重視し、組織連携で業務にあたる人材

(厳しい競争環境に勝ち抜くため総力戦で応える)

⇒助け合い、ともに高め合う

品格   :企業人として高い倫理観を持って品格のある行動を取れる人材

(誇れる個人・会社になる期待に応える)

⇒人格の陶冶を怠らない

 

 

④ 人材育成方針 ~「技術立社」の精神を礎に創業以来、200年培われてきた技術をに活かす~

 当社グループは従業員一人一人の独創性と多様性を大切にし、先進性に富む開発力で社会に貢献できる企業を目指し、明るい未来に向けてチャレンジを続けていきます。

 会社としては、従業員の能力の限りない飛躍を支援すべく、就業環境を整え、専門性を高めるための学習への支援を行います。

 結果、事業会社として社会や投資家に還元する適切な収益を確保しつつ、従業員の幸せに満ちた生活を築くことを目指します。

 このことを組織として、改めて確認したのが、2023年の創業200周年・会社設立90周年を迎えるに際して制定した「微粒子の可能性を、世界の可能性に変えていく。」というパーパスです。

 「微粒子」は当社グループが創業以来、培った「微粒子合成技術」に由来するものですが、パーパスのステートメント/スローガンに掲げている通り、「(微)粒子=社員(人材)」を意味しています。

 

⑤ 人材戦略 ~発展のカギは人!~

 当社グループは、様々な社員の英知を結集し、製品・サービスを創造・製造し、お客様に提供し、満足いただくサイクルがうまく回るように日々取り組んでおります。そこでの成功のカギは、社員が成長し、いかに力を発揮できるかによります。

 当社人事部門は、社員が成長し、また思う存分力を発揮できる職場環境を整え、継続的に社業が発展し、社会に貢献するプロセス(成長・発展の好循環)を支えてまいります。

 

当連結会計年度活動状況(提出会社)

◎ガバナンス

・経営戦略と人財戦略を連動させるため、社内取締役および人事役員によって構成される人材育成会議を設置し、各種人事施策の起点となるべく運営してまいります。ただし、全社的な人事テーマに関する議題を幅広く取り上げていく予定であります。当該会議では経営幹部後継者候補の計画策定等を中心に取り扱っていきますが、今後は全社的な人事テーマに関する議題を幅広く取り上げていく予定であります。

・適性診断(パーソナル/マネジメント)の実施、エンゲージメントサーベイの実施、人事部門による全社員への面談等を行い、人的資本経営のベースとなる人材情報(個々の社員や職場の状況等)を把握いたしました。

・健康管理システムやタレントマネジメントシステム等を導入し、情報基盤となるシステム構築に努めました。

 

◎戦略

(人材獲得戦略)

・人材確保が厳しい状況の中、2024年4月入社の新卒採用は、11名(予定10名)を採用することができました。また、専門人材の拡充としてキャリア採用も11名を採用することができました。

・2024年度は更に採用確度を高めるため、インターンシップ・仕事体験、大学訪問、会社説明会の量・質の強化、リファーラル採用推進、リターン採用等を実施し、採用チャネルを充実させてまいります。専門人材拡充のため、引き続き中途(キャリア)採用にも注力してまいります。

・また、多様性を有する人材も積極的に採用し、創発的な職場環境づくりに貢献してまいります。(2024年度入社定期採用における女性比率36%)

(参考)2023年度中の離職者は8名(2.1%)。一方、全国平均は15%(令和4年雇用動向調査)であるため、全国平均と比べるとかなり低い状況であります。

(育成戦略)

・新入社員は入社月の4~8月の5か月間、新入社員研修を行います。4月の本社集合研修(ビジネスの基礎知識・スキルの習得)のあと、5~8月まで理系文系の新入社員が一緒になって各事業所において実務に携わりながら製品、工程、工場運営や事業について様々な社員との交流を通して学ぶプログラムを受けてもらいました。

・昇格時の新任階層別研修はすべての階層に対して設けており、昇格後に求められる役割行動について学ぶ機会を提供しております。

・経営幹部候補については、人材育成会議等で候補者を選定し、育成計画を策定実施しております。

・2023年11月の創業200年を念頭に、2022年3月から2023年12月までほぼ毎月一回社史研修を実施してまいりました(一般職25歳以上の累計約150名が受講。上司はオブザーバーとして参加)。研修テーマとして社史を正面から取り上げ、先人の困難な歩みに敬意を払い、共感し、自分たちの今を振り返ってもらい、将来を思い描いてもらいました。そのことにより受講者は新たな一歩を踏み出す活力を得たと思われます。2024年度以降も参加要件に該当した社員に対しては随時実施してまいります。

 

 

 

(配置戦略)

・ローテーションは従来より部門ニーズや本人の適性・意向を踏まえながら育成的観点を意識して実施してまいりました。今般策定した新中計の事業の拡大・集中等の方針、また経営幹部後継者候補の母集団形成という動きを受けて、主要なポジションや早期育成のためのローテーションも計画的に実施していく予定であります。

(エンゲージメント戦略) ・・働き方改革、多様性、ハラスメント防止他

・在宅勤務:働き方の多様性を確保するため、在宅勤務の制度を試行開始いたしました。試行期間中の実施状況を確認し、本規程化して継続実施する予定であります。

・育児支援の短時間労働制度を現行の小学校卒業までから中学卒業までに延長いたしました。

・男子育休取得促進を行う事や、育児支援の短時間労働制度を現行の小学校卒業までから中学卒業までに延長する事により、多様な働き方を確保できるようにしております。

・「エンゲージメント21診断」を実施し、サーベイ全21項目の平均点(5点満点中、4.66点)は、他社平均(4.63点)よりも若干高く、項目別のスコアーの高低の傾向も他社の平均とほぼ一致していることが確認できました。

・サーベイ結果の理解促進と改善活動を進めております。

(ダイバーシティマネジメント)

・女性活躍推進については、当連結会計年度は獲得に集中しましたが、来期は活躍とその環境整備に取り組んでまいります。役員、管理職らにライフイベントを念頭に置いた女性特有なキャリア形成の発想の転換、また女性自身に対してのマインドセットの切り替えやキャリア支援を検討しております。

・2023年度のハラスメント防止プログラムは管理職に向けた研修を実施いたしました。

・LGBTQ+の啓発情報(漫画形式)を2024年1月から毎月1回全社員に発信しております。

(健康増進)

・健康管理システム導入、全社横断的メンタルヘルス体制を構築し、健康増進の基盤を整えております。

 

◎課題

・男女・年齢・役職の人数構成のアンバランスの矯正

・女性活躍推進に資する施策の策定実施(女性の健康問題への取組み含む)

・障がい者雇用

・当社超高齢化状況への対応

・少子化、広島若者流出加速、人材獲得競争下での採用活動、専門人材の補充、育成

・新中期計画達成を支える人材施策の掘下げ

・男子育児休業の取得日数増。取得促進に資する人事制度改定

・両立支援制度の策定(就業規則改定)

・海外赴任候補者の見極めと育成

 

⑥ 重点目標値

 当社では、上記において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績

(当連結会計年度)

働きやすい・働きがいのある職場環境

女性従業員比率(注)

2030年目標値 25.0

17.2

女性管理職比率(注)

2030年目標値 10.0

1.9

男性従業員の育休取得率

2030年目標値 95.0

100.0

従業員エンゲージメントサーベイ実施

当社において2024年3月までに第1回目を実施し、重点項目を見極め、向上を目指す。

2023年10月実施

具体的な取組みは上記記載を参照ください。

後継者候補の選抜・育成

次世代幹部候補研修

研修開催 受講者数 6以上/年

6名受講

育成環境の充実

一人当たりの教育費用

2030年目標値 30,000

21,783

(注)女性従業員比率、女性管理職比率及び男性従業員の育休取得率の算出方法については、「第1 企業の状況 5 従業員の状況 (4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

[体制]

 企業を取り巻く環境は年々複雑化し、かつ不確実性を増しております。当社グループは、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処し、経営戦略や事業目標を達成するために各リスクの責任部署を定め、各責任部署において、リスクの特定、分析、評価及び対策を行う取組みを進めております。また、当該各リスクを管理する責任者として、リスク管理責任者(リスク管理を担当する執行役員)を定めております。各リスク管理活動の進捗や課題については、代表取締役社長執行役員を委員長として、執行役員及び常勤の監査等委員等で構成するリスク管理委員会にて原則として毎月1回、各リスク管理部署からの報告を受け、報告に対する意見交換やモニタリングを行っています。

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)予期し得ない事業環境急変に関するリスク

 当社グループは、グローバルに事業展開していることから、国内外における政治・経済の情勢悪化、輸出入や外資企業への規制、テロ・戦争・パンデミックの発生等に伴うサプライチェーンの分断又は世界的な貿易摩擦の長期化により、当社グループの企業収益が悪化する恐れがあります。コスト構造のスリム化、生産拠点・資材調達の複数化等の施策による収益体制の強化を通じて、事業環境の変化に備えております。しかしながら、米中デカップリングの深刻化等、政治・経済情勢に予期し得ない環境の変化があった場合、当社グループの資金繰り環境、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(2)製品品質に関するリスク

 当社グループは、モノづくりへの取組みを進めていくための原点である「Toda Spirits」を定め、「継続的改善活動を展開し、顧客の信頼と満足を得る品質を提供する」という品質方針の下、品質保証活動を推進しております。各事業所における品質マネジメントシステム(ISO9001)の運用、車載用製品に対するIATF16949システム運用による源流管理、プロセス管理の強化、営業及び製造から独立した品質保証部による品質監査、人材育成の強化等の活動を行っております。しかしながら、各国規制の変化や車載用製品を中心に顧客の要求水準が高まる中、品質上の欠陥や事故が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(3)原燃料の調達に関するリスク

 当社グループは、原材料等を複数の外部供給者から購入し、適正な在庫の確保を前提とした生産体制をとっておりますが、一部原材料等は、代替困難な限られた供給国、供給者に依存する場合があります。そのため、各国の輸出入規制や環境規制、供給者の被災及び事故等による原材料等の供給中断、品質不良等による供給停止、さらに製品需要の増加による供給不足等が発生する可能性があります。また、海外生産拡大に伴う現地調達においては海外の諸情勢に悪影響を受ける場合があり、それらが長期にわたった場合、生産体制に影響を及ぼし、顧客への供給責任を果たせなくなる可能性があります。市場における需給バランスが崩れた場合、原材料価格の高騰や原油及び石炭をはじめとするエネルギー価格の高騰による製造コストの増大が想定されます。さらに、物流2024年問題や調達先における労働者の確保問題、人件費の高騰等による価格転嫁の要請にも直面しております。このような仕入価格の変動を販売価格への転嫁や海外を含めた当社グループでの共同購入及び共有化等の原価低減活動で吸収しきれなかった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(4)新製品の開発力、技術革新、事業拡大に関するリスク

 当社グループは、酸化鉄総合メーカーとして、製品開発力と供給力を高めてまいりました。加えて、更なる発展のため、酸化鉄以外の事業への多角化も進めております。市場環境変化が激しく、製品ライフサイクルの短命化が進む現代においては、開発した新製品をより早く確実に社会実装する必要があります。そのため、新製品の開発にあたり、ステージゲート方式を導入し、開発テーマの選択と集中によるリソースの効率的な活用を進めております。しかしながら、既存製品市場における需要減退、競合先による安価な製品又は代替製品が出現した場合、新製品の開発が計画通りに進展しない場合又は技術革新による新製品が出現した場合には、当社グループの競争力が低下する恐れがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(5)減損損失・在庫評価損等のリスク

 当社グループは、電子部品及び自動車市場の顧客に素材・部材を提供しており、顧客の業績及び経営戦略の転換等によって需要の変動が発生した場合には、在庫評価損等が発生する可能性があります。また、当社グループは、品質及び生産性の向上並びに事業拡大のため、製造設備等の投資を継続的に行っており、多額の固定資産を保有しております。固定資産については、定期的に調査を行い、減損の兆候が認められる場合は適切な会計処理を行っております。しかしながら、固定資産の時価が著しく低下した場合や事業の収益性が悪化した場合には減損損失が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(6)情報セキュリティに関するリスク

 当社グループは、事業や業務を通して、取引先や当社グループ内の機密情報等を保有しており、これらの情報に対して、ウイルス感染やサイバー攻撃等、外部からの攻撃や内部的な過失による情報流出、システム停止等が生じる可能性があります。当社グループは、これらの脅威に対して、ソフトウェア、ハードウェアの技術を活用した管理及び制御による技術的対策、入退室・施錠管理等の強化による物理的対策、情報セキュリティ関連規程の見直しや当社グループ及び協力会社の従業員に対する定期的な教育・訓練等の人的・組織的対策により、情報セキュリティの強化を図っております。しかしながら、前述の脅威が顕在化した場合は、情報システムの停止等により、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(7)訴訟等に関するリスク

 当社グループは、法令遵守を重視した事業活動を行っておりますが、 知的財産権に関する争いを含め、事業活動の中で第三者との訴訟、クレーム又は種々の紛争に関わる可能性があります。契約条件の明確化、知的財産権の適正な管理、弁護士等専門家との連携等により、紛争等の未然防止に努めております。しかしながら、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(8)コンプライアンスに関するリスク

 当社グループは、法令遵守を重視した事業活動を行うべく、適切な社内規程整備を行うとともに、コンプライアンス行動規範を定めて、従業員に対するコンプライアンス教育の実施、内部通報制度等を整え、グループ全体のコンプライアンスの維持及び向上に取り組んでおります。しかしながら、当社グループにおいて、故意又は過失による法令違反、不正、ハラスメント等のコンプライアンス違反が発生する可能性があります。また、当社グループは、グローバルに事業活動を行っていることから、各国の法規制等の改廃により、当社グループの事業活動に不利な影響が生じる可能性があります。これらの内容及び結果によっては、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(9)災害等に関するリスク

 地震・集中豪雨等の自然災害、火災等の事故、重大な感染症によるパンデミック、電力や物流等の社会インフラの長期的な停止等によって、当社グループの各拠点において事業活動に支障が生じる可能性があります。BCPの策定、設備の定期点検や改修及び定期的な防災訓練、備蓄食料や非常電源の準備等の対策を行っておりますが、この様な災害等が発生した場合、当社グループの操業が中断し、生産及び出荷が遅延することにより、売上が低下し、加えて製造拠点等の修復又は代替のために、巨額な費用を要することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(10)戦略的提携に関するリスク

 当社グループは、既存事業の拡大あるいは、新たな事業への進出等のために、事業戦略の一環として企業買収・M&A等の戦略的提携を行う可能性があります。これら戦略的提携に際しては、市場動向や相手企業について十分な調査検討を行っております。しかしながら、買収・提携後に市場環境の著しい変化があった場合等、当初想定した計画通りに進捗しない場合には、投下資金の回収ができない場合や追加費用が発生すること等により当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(11)人材確保と人材育成に関するリスク

 当社グループは、経営戦略やグローバル経営といったマネジメント能力及び専門性を有した人材の確保が重要と考えております。新卒採用及び経験者の通年採用を通じて人材の獲得を行うとともに、階層毎の教育プログラムを充実させ、人材の育成も推進しております。しかしながら、少子高齢化、労働人口減少等により人材獲得競争が激化し、事業運営に必要となる優秀な人材の確保が困難となり育成が計画的に推進できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

 

(12)為替レートの変動に関するリスク

 当社グループは、海外の関係会社が15社あり、各地域における現地通貨建ての財務諸表の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されております。加えて、日本からの輸出の大部分は外貨建てであり、海外関係会社への外貨建て貸付等も行っております。常に為替変動のモニタリングを行い、円建て又は安定的な通貨での取引、外貨建て取引については外貨預金口座での決済を行う等の対策をとっておりますが、円に対して外貨の為替変動が想定以上となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(13)金利変動によるリスク

 当社グループは、運転資金及び設備投資資金の一部を銀行借入によって調達しております。有利子負債の圧縮を進めるとともに将来の金利変動によるリスクを回避する目的で固定金利での借入を行っておりますが、今後の市場動向により金利に急激な変動が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(14)カントリーリスク

 当社グループは、中国をはじめとしたアジア、北米、ヨーロッパに海外拠点を有しております。各拠点とは定期的に海外安全情報等を共有して適時適切な対応がとれるよう努めております。しかしながら、これら拠点のある国において、紛争やテロ、政治情勢の悪化、大規模災害、パンデミック、労働争議、外資規制等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(15)環境に関するリスク

 当社グループは、製品の製造過程において、原材料及び廃棄物等の化学物質並びに燃料、電気及び蒸気等のエネルギーを使用しております。また、多くの水資源を使用しており、使用した水は排水処理工程を経て無害化し、全量を河川・海に排水しております。このため当社グループは、化学物質管理、エネルギー管理、水資源管理を徹底し、法規制に沿ったリスクアセスメントを実施しております。しかしながら、環境に関わる法規制が変更された場合や、自然災害及び火災等の事故による化学物質の流失が発生した場合、当社グループの信用、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(16)気候変動に関するリスク

 当社グループは、将来の世代も安心して暮らせる持続可能な経済社会をつくるため、気候変動を経営上の重要課題とし、地球温暖化対策に取り組んでおります。しかしながら、気候変動について、移行リスク(カーボンプライシングによる税負担の増加、低炭素化設備・低炭素プロセスへの転換による設備投資の増加等)と物理的リスク(自然災害による建物や設備への被害、海面上昇による沿岸部事業所への追加投資の発生等)があります。

 詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)気候変動への対応(TCFD提言への取組) ②戦略」に記載しております。

(17)知的財産に関するリスク

 当社グループは、重要な財産である知的財産に関わる創作活動を奨励し、その適切な保護と活用を推進しております。事業展開に必要な製品及び技術について知的財産権の確保に努め、第三者の知的財産権を侵害しないように十分な調査を行っております。しかしながら、想定するような権利範囲が確保できない場合又は第三者の知的財産権を侵害しているとして権利侵害の訴えを起こされた場合、財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度(以下、「当期」という)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

 

売上高

(百万円)

営業利益

(百万円)

経常利益

(百万円)

親会社株主に帰属する当期純利益又は

親会社株主に帰属する当期純損失(△)(百万円)

1株当たり

当期純利益又は

1株当たり

当期純損失(△)(円)

当期

26,234

117

1,168

△3,581

△620.00

前期

34,934

1,367

3,349

3,268

566.50

増減率(%)

△24.9

△91.4

△65.1

 

 当期の業績は、売上高は26,234百万円(前期比24.9%減)、営業利益は117百万円(前期比91.4%減)、経常利益は1,168百万円(前期比65.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,581百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益3,268百万円)となりました。

 

セグメント別の状況は、次のとおりであります。

 

売上高

セグメント利益

前期

(百万円)

当期

(百万円)

増減率(%)

前期

(百万円)

当期

(百万円)

増減率(%)

機能性顔料

14,730

8,124

△44.8

2,001

838

△58.1

電子素材

20,653

18,569

△10.1

2,389

2,560

7.2

消去又は全社

△448

△459

△3,023

△3,281

合計

34,934

26,234

△24.9

1,367

117

△91.4

 

(機能性顔料)
 複写機・プリンター向け材料、触媒向け材料の売上は市場における需要回復が遅れた影響を受けました。また、前期において戸田聯合実業(浙江)有限公司の出資持分を譲渡したこと等から、売上高は前期比44.8%減の8,124百万円、セグメント利益は前期比58.1%減の838百万円となりました。

 

(電子素材)
 磁石材料、誘電体材料ともに上期は市場回復の遅れ等に伴う在庫調整の影響を受けたものの、下期より徐々に需要回復の傾向にあります。特に、世界最高レベルの磁気特性を持つ希土類ボンド磁石材料の売上は、主に自動車用途として前期より伸長いたしました。しかしながら、LIB用材料の製造を営んでいる当社の連結子会社において、需要変動の影響を受けたこと等から、売上高は前期比10.1%減の18,569百万円となりました。一方、セグメント利益は製品価格是正活動の効果等により前期比7.2%増の2,560百万円となりました。

 

②財政状態の状況

 

前期

(百万円)

当期

(百万円)

増減

(百万円)

資産合計

52,016

53,714

1,698

負債合計

35,456

39,189

3,733

純資産合計

16,559

14,525

△2,034

 

 当社グループの当期末における資産は、有形固定資産が2,655百万円減少したものの、受取手形及び売掛金が1,105百万円、原材料及び貯蔵品が1,064百万円、関係会社出資金が1,716百万円増加したこと等から、前期末に比べ1,698百万円増加いたしました。

 負債は、借入金が1,586百万円、その他流動負債が2,216百万円増加したこと等から、前期末に比べ3,733百万円増加いたしました。

 純資産は、その他有価証券評価差額金が701百万円、為替換算調整勘定が648百万円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失3,581百万円等から、前期末に比べ2,034百万円減少いたしました。

 以上の結果、1株当たりの純資産は前期比345.17円減少して2,399.20円となり、自己資本比率は前期比4.7ポイント減少して25.8%となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 

前期

(百万円)

当期

(百万円)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

833

△645

△1,478

投資活動によるキャッシュ・フロー

△375

△1,429

△1,054

財務活動によるキャッシュ・フロー

187

1,184

997

現金及び現金同等物期末残高

8,476

7,943

△533

 

 当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は7,943百万円となり、前期末より533百万円減少いたしました。

 当期における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。


(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動によるキャッシュ・フローは△645百万円(前期は833百万円)となりました。これは主に、仕入債務の減少額819百万円、法人税等の支払額423百万円等によります。


(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動によるキャッシュ・フローは△1,429百万円(前期は△375百万円)となりました。これは主に、関係会社株式の払込による支出1,015百万円、有形固定資産の取得による支出1,381百万円等による資金の減少が、貸付金の回収による収入1,020百万円等による資金の増加を上回ったこと等によります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動によるキャッシュ・フローは1,184百万円(前期は187百万円)となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,560百万円、その他金融負債に係る収入1,852百万円等による資金の増加が、長期借入金等の返済による支出4,402百万円、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出777百万円等による資金の減少を上回ったこと等によります。

 

 

④生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

機能性顔料

7,906

△31.4

電子素材

16,605

△12.2

合計

24,512

△19.5

 (注)1 金額は、平均販売価格によっております。

2 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。これは、主に機能性顔料セグメントにおいて戸田聯合実業(浙江)有限公司が当連結会計年度より連結の範囲から除外されたことおよび電子素材セグメントにおいてLIB用材料の製造を営んでいる当社の連結子会社が需要変動の影響を受けたこと等によるものであります。

 

(2)受注実績

 当社グループの主要製品については主に見込み生産を行っております。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

機能性顔料

8,119

△44.9

電子素材

18,115

△10.4

合計

26,234

△24.9

 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、主に機能性顔料セグメントにおいて戸田聯合実業(浙江)有限公司が当連結会計年度より連結の範囲から除外されたことおよび電子素材セグメントにおいてLIB用材料の製造を営んでいる当社の連結子会社が需要変動の影響を受けたこと等によるものであります。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

BASF Toda America LLC

5,645

16.16

3,227

12.30

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)経営成績の分析

 当期における当社グループを取り巻く事業環境は、コロナ禍からの脱却による社会経済活動の正常化を背景に個人消費の持ち直しと雇用情勢の改善により、景気は緩やかな回復基調で推移いたしました。一方で、長期化するウクライナ情勢や中東地域を巡る地政学的リスクの高まり、各国での物価高騰に対する金融引き締め、中国経済の減速等、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

 こうした状況のもと、当社グループにおきましては、中期事業計画「Vision2023」の目標達成に向けて、各事業の成長及び拡大を図ってまいりました。また、収益改善の取組みとして製品価格の是正活動、継続的な原価低減活動及び諸経費の削減等も注力いたしました。

 しかしながら、機能性顔料事業、電子素材事業ともに需要変動の影響を受けたこと及び前期において戸田聯合実業(浙江)有限公司の出資持分を譲渡したこと等により、当期の売上高及び営業利益は前期を下回りました。なお、前期の連結損益計算書に計上されている戸田聯合実業(浙江)有限公司の売上高は5,352百万円、営業利益は470百万円であります。

 営業外収支においては、為替が円安に振れたこと等の利益を押し上げる要因はあったものの、持分法適用関連会社の収益が減少いたしました。また、特別損益において前期は戸田聯合実業(浙江)有限公司の出資持分を譲渡したことによる関係会社出資金売却益933百万円を計上した一方、当期は当社が保有する事業用資産及び共用資産等を減損処理したことによる減損損失4,869百万円を計上いたしました。

 以上のことから、売上高は26,234百万円(前期比24.9%減)、営業利益は117百万円(前期比91.4%減)、経常利益は1,168百万円(前期比65.1%減)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,581百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純利益3,268百万円)となりました。

 なお、セグメント別の経営成績については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

 

(b)財政状態の分析

 当期の財政状態につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当期におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。また、当期における金融機関からの借入状況は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表 借入金等明細表」に記載しております。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品仕入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、関係会社への投融資等によるものであります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入れを基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入れを基本としております。

 

③経営成績に重要な影響を与える要因

 当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。また、この連結財務諸表の作成にあたり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積りには不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、当社が主として行っております。

 当社の研究開発活動は、創造本部を中心に顧客ニーズに即応する商品開発と次世代商品の開発を行っております。

また、開発競争のグローバル化に伴い、より一層の開発スピードの向上が求められる中、社外の関連研究施設や大学との連携にも積極的に取り組んでおります。

 セグメント別の研究開発活動の概況は次のとおりであります。

 

(1)機能性顔料

① 電子印刷材料

 デジタル複写機・レーザープリンター等のトナー用材料の磁性酸化鉄を開発し商品化しております。

 電子印刷用キャリアでは、当社独自の磁性粉造粒技術を用いた磁性粉分散型樹脂キャリアの改良を進め、顧客ニーズを先取りした開発及び商品化を行っております。

 

② 着色材料

 各種重金属の含有量の少ない化粧品用材料の開発に取り組んでおります。また、紫外線防御といった新たな機能が期待できる透明酸化鉄顔料や彩度の高い酸化鉄顔料の開発を行っております。

 

③ 環境関連材料

 農業用ポリオレフィン保温材、カラス対策ごみ袋用コンパウンド、有害イオン吸着剤、鉄を主成分とする回収効率の良いCO2固体回収材の開発等を行っております。また、メタンガス等からCO2を排出することなく水素とカーボンナノチューブを製造する直接メタン改質法を開発し、実用化に向け推進しております。

 

④ 添加剤、および触媒材料

 環境保全・クリーンエネルギー分野においても市場ニーズに沿った開発を推進しており、ハイドロタルサイトや酸化鉄触媒材料の開発に取り組んでおります。酸化鉄触媒材料では、酸化鉄の酸化触媒機能を活かして環境浄化触媒の開発・実用化に取り組んでおります。また、ニッケルを用いた水素製造触媒の開発・実用化を行っております。

 

⑤ 磁気記録材料

 高密度化デジタルテープへの社会的ニーズに対応して、磁気記録テープのより一層の高密度化に必要な磁気記録テープ下層用超微粒子材料の開発を行い、市場展開を進めております。

 

(2)電子素材

① 磁石材料

 モーターやセンサーで使用されるハードフェライト材料、希土類磁石材料とそれらを射出成形した成形体の開発及び実用化を行っております。

 希土類磁石材料においては、世界最高レベルの磁気特性を持つ射出成形用異方性NdFeBコンパウンドの製造販売をしております。自動車産業への展開を見据え、このNdFeBコンパウンドの更なる耐熱性、耐食性の向上を高輝度放射光施設「Nano Terasu」を活用した東北大学との共同研究開発により推進しております。

 

② 軟磁性材料

 CASEやMaaSといった技術革新が進む自動車産業や第5世代移動通信システム(5G)に向けて、高性能インダクタ用の材料や、半導体パッケージに内蔵する薄型インダクタ用部材、kHz~GHz帯に対応した電磁ノイズ抑制材料、ワイヤレス給電用部材の開発に取り組んでおります。

 

③ 誘電体材料

 高度情報化社会に対応した小型高容量の積層セラミックコンデンサー(MLCC)用誘電体材料の開発等を行っております。分散性の良い超微粒子のチタン酸バリウムは、小型高信頼性、高容量化の市場ニーズにマッチしており最先端材料向けに拡販、上市しております。さらに、湿式合成の強みを生かして、チタン酸バリウムを各種溶媒中に一次粒子径に近い状態で高濃度分散を可能にいたしました。顧客ニーズに応じた設計が可能で、高い屈折率や誘電率を活かした光学フィルムやコンデンサーなどの用途で展開を進めております。

 

④ 電池材料

 導電材として、カーボンナノチューブ(CNT)の開発及びパイロットプラントを活用した市場展開によるCNTの事業化の検討を進めております。

 世界的に市場が拡大している二次電池電極材の導電助剤や電磁波ノイズ対策用のEMC材料への適用にむけ顧客へのサンプルワークを加速しております。さらに、ナトリウムイオン電池の開発も推進しております。

 

 当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は、1,514百万円であります。

 また、当連結会計年度における当社が所有する特許の件数は、国内326件、海外492件、出願もしくは審査中の件数は海外を含めると184件となっております。