第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「調和・創造・革新」の経営理念のもと、“顧客、株主、従業員、社会への喜びを創造する企業になる”ことを経営の基本方針としております。

特に、“食”に携わる企業として、“常に安全性を追求し、高品質な食品で安心と健康を顧客ならびに消費者の方へお届けする”ことが、企業活動において果たすべき最重要な使命と認識しております。

 この使命を果たしていく中で得られる顧客との信頼関係を、より広くより強固なものとしていくことが、企業価値を高めることに繋がり、ひいては株主のみなさまの期待にお応えできることになると考えております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、「製造直販」の販売スタイルを堅持し、技術力を核とした研究開発力の強化、ならびにチルド製品の安全性確保を根底においた独自の「コールドチェーン・システム(低温流通体制)」の整備に努めてまいりました。これらは、顧客ニーズへの迅速で確実な対応ならびに商品の“品質と安全”という面で、当社の強みとなっております。また、これまで安定した成長を維持している中食市場を中心とした業務用食品事業の基盤をより強固なものにするとともに、日本国内の少子高齢化が進行する中で、ヘルスフード事業や海外事業など、新たな成長事業の展開にも積極的に取り組んでまいりました。

 2025年3月期からは、“「需要創造」「収益構造改革」「経営品質向上」により「選ばれる企業」になる”および“「地球環境」「ステークホルダー」「人的資本」を重視した『サステナビリティ経営』を推進する”という方針を経営の軸に据え、事業活動を進めてまいります。長期ビジョン“あじかんV30 ver.2.0”の中では、その方針のもと「食を通じて味わう喜び、ふれあう幸せ、健やかな毎日を世界へ届ける“お役立ち企業”をめざします」というミッションに沿って、収益構造改革の完遂と価値創造ビジネスの展開に取り組んでまいります。

 その経営戦略は、国内事業基盤の強化、海外事業やヘルスフード事業の成長、市販事業への本格参入などであり、需要創造するとともにブランド価値の向上を基本としております。また、収益構造改革および経営品質の向上にも取り組み、より安定した収益基盤を構築することに加え、改革を推進する組織と人材の開発により、生産性の向上と環境変化に強い経営基盤を構築してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、主な経営指標として売上高、営業利益率の他に、「資本コストや株価を意識した経営」にも取り組んでおり、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を判断軸に資本コストを上回る収益基盤の構築に努めてまいります。また、PBR(株価純資産倍率)の向上も図っていくとともに、DOE(自己資本配当率)を基準として、適時適切な株主還元を行ってまいります。

 2030年3月期を着地点とします長期ビジョン“あじかんV30 ver.2.0”においては、売上高 590億円、営業利益率 4%以上、ROE 8%以上、ROIC 6%以上、DOE 2%以上、PBR 1倍以上を目標としております。

 

(4)経営環境

 為替や株価の変動は、当社の仕入原価やデリバティブなどの時価評価に大きな影響を与えます。特に近年の金融資本市場は不安定な動きとなっており、安定的な経営成績を確保することが困難になることも予想されます。また、当社主要原材料である鶏卵価格が鳥インフルエンザの影響などから高値で推移していることに加え、人件費、エネルギーコストの上昇など厳しい経営環境が継続しております。

 他方、販売面におきましても、食品の安全・安心への関心が高まる中で、同業他社との販売競争は以前にも増して激しくなってきており、引き続き厳しい経営環境となることを予想しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

 世界情勢の不安定さに加え、物価上昇、労働需給の逼迫による人件費、物流費上昇など、先行きの見えない厳しい状況が続くものと予想され、外部環境の変化に迅速に対応しつつ、収益構造をいかに早期に確立していくかが最重点の課題であると認識しております。

 このような状況の中、当社グループは、「“おやくだち”の精神でお客さまや取引先、株主、社会へ貢献し、社員がいきいきと働く風土づくりと安定した収益構造および価値創造ビジネスの推進により、“選ばれる企業”として持続的に成長していく」ことを基本方針とする第13次中期経営計画を達成するため、各施策を展開しております。

 次期におきましては、第13次中期経営計画のもと、長期ビジョン「あじかんV30 ver.2.0」の実現に向けた設備・人的投資を進めるための収益構造改革の完遂と新たな価値創造へ向けて市販事業への参入を検討するとともに、安全品質を最優先にした仕組みやルールの有効性を検証し、改善に向けた取り組みを強化してまいります。

 次期の重点取組項目は、以下のとおりです。

 

① 収益構造改革の完遂

 

② 業務用事業の質的成長と拡大

 

③ ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大

 

④ ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造

 

⑤ 経営品質の向上

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、2003年より環境保全に対して本格的に検討を開始いたしました。その活動の一環として、2003年12月に環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の認証を取得するなど、社内体制を整備してまいりました。2021年4月以降は、それまでに培ったノウハウを継承しつつ、環境だけに止まらない取り組みへと範囲を拡大するため、「ISO14001」の認証を返還し、SDGsに基づく活動へ移行しております。

 サステナビリティマネジメントを推進するにあたり、当社グループでは「環境基本方針」を制定しております。また、代表取締役 社長執行役員をトップとするSDGs推進体制を構築し、SDGs推進連絡会にて検討された方針案や活動内容は、経営層および関係部署が参加するSDGs推進会議にて議論され、意思決定を行ったうえで全社へ展開をしております。さらには、その後の活動状況につきましても、半期ごとに同会議に報告されており、その場での議論を踏まえ、必要に応じて適宜、軌道修正を行っております。

 当社グループの人的資本に対する考え方や取り組み内容につきましては、取締役会の中で議論され、課題を抽出したうえで人事部門を中心に具体的な実施内容を検討し実行しております。また、取り組みを行う上での一連のプロセスについては、社外取締役を主要な構成員とする指名報酬委員会が評価し、その結果を踏まえて取締役会が年に一回実施している取締役会全体の実効性評価を行う中で新たな課題を抽出し、次のアクションプランへと繋げる仕組みを構築しております。

 

(2)リスク管理

 当社グループでは、長期ビジョンや中期経営計画、年度計画の策定時に内外環境における機会と脅威を認識したうえで事業戦略を策定するとともに、サステナビリティ関連の機会と脅威を識別し、その対応策や方針案策定に向けた検討は、SDGs推進連絡会が中心となって行っております。

 なお、主要原材料やエネルギーの価格変動リスクなど、短期的な変動要素が高いリスクにつきましては、毎月実施される経営会議にて状況を把握したうえで対策を講じており、迅速な対応を図っております。

 当社グループの人的資本については、ダイバーシティ(多様性)マネジメントが継続企業の前提にとって不可欠であるとの考えのもと、取締役会全体の実効性評価を行う中で、特に経営陣幹部の多様性の確保や女性活躍推進、多様な人材が活躍できる職場環境の整備が喫緊の課題であると認識し、人事部門を中心に具体的な対応策を検討し、徐々に実行に移しております。

 

(3)戦略

 気候変動は、世界各地で異常気象や大規模な災害をもたらすだけでなく、農作物の作況や漁獲量へ大きく関与するため、当社グループが取り組むべき重要な課題として捉えております。特に当社グループの主要原材料は鶏卵や、干瓢・椎茸・ごぼうなどの農作物、魚肉すり身であり、気候変動がこれらの調達価格や調達量へ大きな影響を与えます。また、家畜の飼料となる穀物の作況は、鶏卵生産事業者のコストアップに繋がるリスクがあり、間接的に当社グループの調達価格や調達量に影響します。

 気候変動リスク抑制を図るため、当社グループでは環境保全に向けた以下の取り組みを行っております。

 

①食品ロスの削減

 ・工場工程内ロスの削減

 ・原料の未利用部分の活用方法研究

 ・フードバンクの活用など

②CO排出量の低減

 ・太陽光パネルの導入

 ・社有車の燃料使用量の削減など

③プラスチック包材の削減

 ・製品包装形態の見直しによる包装の簡素化

 ・環境にやさしい包装素材への切り替えなど

 

 なお、これらの取り組みは、気候変動リスクの抑制だけでなく、コスト削減や生産性の向上による利益構造改善の機会としても捉えております。

 

 当社グループでは、上記のほか、生産工程で排出される生ゴミの再生利用の研究やSDGsの目標14“海の豊かさを守ろう”に貢献すべく、MSC CoC認証を取得したほか、子供向けの巻寿司教室の開催やSNSを活用した巻寿司文化に関する情報発信などを通じ、食育と日本伝統の食文化の継承にも努めており、人々の健康、おいしいものを食べる喜び、食文化の向上に貢献したいと考えております。

 近年、欧米諸国を中心に取り組みが進んでいるアニマルウェルフェア(家畜の飼育管理を快適な環境下で行うことで動物の生きる状態を改善すること)への対応につきましては、重要な課題として捉え、まずは国内外を含めた情報収集を行うとともに、従業員の知識の醸成に努めております。今後につきましては、我が国の農林水産省の指針に基づき、当社としての対応を検討してまいります。

 また、当社グループでは、働きがいの向上に向けた仕組みづくりと職場環境の整備を行うため、行動計画を策定し、自社のコーポレートサイトで開示しております。具体的には、女性活躍と管理職登用の推進、高年齢者の活躍推進、外国人人材活用の高度化、障がい者雇用の推進に向けた実施計画を策定し、計画に沿った取り組みを行っております。さらには、社内環境の整備に向け、総労働時間の短縮や多様で柔軟な勤務形態・体制の整備についても実施計画を策定し開示するとともに、計画に沿った取り組みを行っております。これらの取り組みは、ダイバーシティマネジメントの推進による競争力強化へ繋がる機会としても捉えております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、“共に咲く喜び”を実現するという創業の精神のもと、人々の健康、おいしいものを食べる喜び、食文化の向上に貢献するとともに、環境にやさしいバリューチェーンプロセスを構築し、環境保全に配慮した企業活動を行うことで、「人と環境にやさしい企業」を目指しております。

 環境保全への取り組みでは、以下の指標および目標値を設定し、取り組んでおります。

 

区分

指標

2030年3月期目標値(注)

食品ロスの削減

工場工程内ロス

50%削減

CO₂排出量の低減

再生可能エネルギー比率

5%以上

エネルギー使用量

工場20%低減

営業所10%低減

車輌燃料使用量(ガソリン+軽油)

30%低減

プラスチック包材の削減

プラスチック包材削減率

10%削減

新素材へ切り替え

30%以上

(注)各指標における目標値の基準は、2020年3月期の実績値を用いております。

 

なお、当社グループの環境保全への取り組みについての詳細は、当社コーポレートサイト(https://www.ahjikan.co.jp/about/eco.html)をご参照ください。

 

 また、当社では、上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取り組みを行っております。また、女性活躍の推進に向け、将来を見据えて定期採用における女性の採用比率を4割程度に高めるなどの取り組みも行っておりますが、現段階では連結グループに属する全ての会社で一律の取り組みが行われていないため、次の指標に関する目標および実績は、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2025年3月31日まで5以上(7名以上)

3.3

 

 なお、次世代育成支援法に基づく行動計画の詳細は、当社コーポレートサイト(https://www.ahjikan.co.jp/about/society_action_plan.html)をご参照ください。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のあると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)主要原材料の調達について

当社グループが生産する製品は、鶏卵、干瓢、椎茸、ごぼう、魚肉すり身を主原料としており、契約購買や分散調達により安定した数量の確保と特定の調達先への集中の回避を図っております。しかし、これらの原料は、作況、自然災害や大規模事故等の産地や生産者への影響、相場の変動、漁獲量制限、調達先の経済状況などによって、調達価格や調達量に影響を受ける可能性があります。特に鶏卵においては、近年、鳥インフルエンザの発生が日本各地で拡大する傾向にあり、採卵鶏の減少から需給バランスが崩れ大幅な価格変動や安定的な調達が困難となる可能性があります。

また、調味料、食用油といった副原料や包装資材などの原材料全般にわたって、需給動向や原油価格、穀物価格、為替などにより調達価格が変動し、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2)業界動向および競合などについて

当社の主要取引業態であります中食業態(スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)は、消費者の嗜好の変化および多様化の影響を強く受ける分野であります。そのため当社におきましては、商品開発力ならびに調達力を強化し、当社取扱品の差別化を推し進めるとともに、品揃えの充実を図っております。しかしながら、競合による新製品の投入や販売促進活動により、当社取扱品の競争力低下や販売機会の減少などの影響を受ける可能性があります。

また、中食業界や取引先の経営状態、販売政策などの変化によって、販売機会や販売価格に影響を受ける可能性があります。

 

(3)為替相場の変動による影響について

当社の取扱品には海外からの輸入品が含まれており、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、為替予約による対策を講じております。しかしながら、リスクヘッジにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響をすべて排除することは不可能であり、当社の財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4)年金債務について

当社の退職給付費用および退職給付債務は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率などの基礎率を前提に算出しております。この前提が経済環境の変化、その他の要因により変動した場合や、年金資産の運用実績が低下した場合には、当社の財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(5)固定資産の減損について

当社グループは、土地、建物、機械装置等の様々な資産を所有しております。工場の新設など新たな投資を行う場合は、投資効果や、回収可能性を十分に検証したうえで、投資をおこなっておりますが、外部環境の急激な変化や、時価の下落などにより、投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上する可能性があり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(6)人材・労務関連について

当社グループは、継続的な新卒・中途採用による人材確保、労働環境の改善による人材の定着化に取り組んでおりますが、生産や販売を担う人材の不足によって、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、生産を担う従業員は、正社員に加え、パート、アルバイト、外国人技能実習生が多数従事しており、これら勤務者の就業等に関する法改正などが行われた場合は製造コストが上昇し、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(7)食品の安全性について

食品業界におきましては、鳥インフルエンザの流行、無認可添加物の使用問題、ノロウイルス、産地の偽装表示などの諸問題が過去に発生しております。

 これらに対し、当社グループでは、製造工程に導入しております「品質保証システム(ISO9001)」や「衛生管理システム(HACCP)」を構築し対処してまいりました。

 また、起源原料まで溯って追査できるトレーサビリティの仕組みに加えて、フードディフェンス面の強化をする目的で、食品安全のための規格である「FSSC22000」を認証取得しており、品質管理については万全な体制で臨んでおりますが、今後も当社グループ固有の品質問題のみならず、社会全般にわたる一般的な食品の安全性や品質に係る問題が発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(8)自然災害およびウイルス感染症による影響について

当社グループは、国内および中国、米国に複数の拠点を構え、生産および営業活動を行っております。これらの拠点やその周辺で大規模な地震や風水害などが発生した場合に備え、BCP(事業継続計画)を整備することにより早期に復旧できる体制を整えておりますが、自然災害を未然に防止することは困難であり、各拠点での事業活動に支障を来す可能性があります。また、新たなウイルス感染症の発生などにより、今後の事業活動に影響を与える可能性があります。

 

(9)気候変動による影響について

当社グループでは、気候変動などの環境問題に対し、食品ロスの削減、CO₂排出量の低減、プラスチック包材の削減などへの取り組みを進めておりますが、地球温暖化により、主要原材料である農作物などの調達価格、調達量に影響を及ぼす可能性があり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(10)事業展開に伴うカントリーリスクについて

当社グループは、中国の関係会社に加え、東南アジア諸国の生産委託先にて、日本国内のみならず米国、アジア、オセアニア向けの製品を開発・生産・供給しております。また、近年は中国国内における販売事業へ注力する一方で、米国において販売拠点となる子会社を設立するなど、海外販売事業を強化してまいりました。

当社グループでは、これらの製品の供給先・販売先のカントリーリスクを事前に調査、把握して対処するよう努力しておりますが、不測の政治・経済的環境変化や法規制・税制の改正、反日デモの発生、鳥インフルエンザの感染拡大などにより、製品の生産や調達、販売ができなくなった場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行や行動制限等の解除により、社会経済活動が正常化に向かう中、停滞していた景気の緩やかな回復が期待される状況となりました。しかしながら、円安進行による物価上昇に加え、金融資本市場の変動、世界的な金融引き締め、中国経済の先行き懸念、ウクライナや中東地域をめぐる情勢など景気回復の下振れリスクも台頭しており、先行き不透明な状況で推移いたしました。

 食品業界におきましては、資源価格の高騰や円安進行によって仕入価格や諸経費が軒並み上昇いたしました。また、前連結会計年度に発生した鳥インフルエンザの影響により、鶏卵が高値で推移したことや、供給制限が相次いだ結果、需要が大きく落ち込みました。足元では鶏卵価格が落ち着きを取り戻しつつあるものの、需要は完全には回復しておらず、厳しい経営環境で推移いたしました。

 このような状況の中、当社グループは『需要創造型食品メーカーへの挑戦』および『収益構造改革と経営品質の向上』をテーマとした第12次中期経営計画の最終年度をスタートさせ、第一に「収益構造改革への取り組み」、第二に「業務用食品事業の成長拡大」、第三に「ヘルスフード事業・海外事業の拡大および新規事業構想の立案」、第四に「経営品質の向上」を重点施策とした取り組みを展開してまいりました。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,537百万円増加し27,640百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ2,185百万円増加し14,816百万円となりました。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ352百万円増加し12,823百万円となりました。

 

(負債)

 負債合計は、前連結会計年度末に比べ850百万円増加し11,796百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ829百万円増加し10,566百万円となりました。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ21百万円増加し1,229百万円となりました。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,687百万円増加し15,844百万円となりました。

 

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し57.3%となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は、業務用食品等において、経済社会活動の正常化に向けた動きによって、外食業態の需要が一段と回復したことに加え、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを中心とした中食業態の売上が伸張したことなどにより、50,240百万円(前連結会計年度比5.9%増加)となり、前連結会計年度の実績を上回りました。

 利益面につきましては、売上高の拡大効果や諸経費抑制に加え、退職給付費用が減少したことなどにより、営業利益は1,710百万円(前連結会計年度比1,820.9%増加)となりました。経常利益は、為替差益や長期為替予約評価益、持分法による投資利益の計上などにより2,266百万円(前連結会計年度比386.1%増加)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失や固定資産除却損の計上などにより1,509百万円(前連結会計年度比463.5%増加)となりました。

 

 報告セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

 

(業務用食品等)

 販売面におきましては、供給制限に伴う玉子製品の販売抑制の影響もありましたが、玉子製品や海外調達品などの販売価格見直しを行ったことに加え、野菜加工品、調理済冷凍食品の需要が拡大したことや、繁忙期である盆・年末・節分の売上が大きく伸張したことなどが奏功し、国内売上高は前連結会計年度実績を上回る結果となりました。他方、海外輸出売上高につきましても、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響はありましたが、販売価格見直しに加え、北米、オセアニア、香港、シンガポールを中心に需要が拡大し、前連結会計年度実績を上回る結果となりました。

 生産面におきましては、生産効率の向上や、供給制限に合わせた加工費のコントロールなどにより、製造原価の抑制に努めましたが、供給制限による生産稼働率への影響や、主要原材料価格の高止まり、エネルギーコストの高騰などにより、製造原価は前連結会計年度に比べ上昇いたしました。

 販売費につきましては、増収に伴う変動費の増加要因はありましたが、玉子製品の販売量減少や配送の効率化に伴う物流コストの減少に加え、その他経費執行の抑制などに努めた結果、前連結会計年度並みとなりました。

 これらの結果、外部顧客への売上高は46,417百万円(前連結会計年度比7.0%増加)となり、セグメント利益(営業利益)は3,370百万円(前連結会計年度比250.6%増加)となりました。

 

(ヘルスフード)

 販売面におきましては、通信販売は、衛星放送を中心としたテレビCMなどの広告宣伝効率が低下したことや、物価上昇による嗜好品の買い控えなど外部要因による影響もありました。他方、ドラッグストアなどでの市販品につきましては、「焙煎ごぼう茶キレイブレンド」、「焙煎ごぼうサプリ エラスチン+」など新製品の投入効果はあったものの、健康茶市場の需要に一服感がみられました。2023年9月に福岡市にカスタマーセンターを増設したことや、地上波のテレビCMやECモールへ積極的な広告宣伝活動を行ったことなどにより、足元では通信販売、市販品ともに回復基調にあるものの、売上高は前連結会計年度を下回る結果となりました。

 開発面におきましては、焙煎ごぼうを主原料としたチョコレート風の食品素材「MelBurd(メルバード)」を開発しました。複数のマスメディアにも取り上げられ、MelBurdを用いたチョコレート風菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」をクラウドファンディングサイトにて先行販売した結果、目標額を大幅に達成するなど、大きな反響を得ました。

 生産面におきましては、主要原材料であるごぼうが高値で推移したことや、エネルギーコストの高騰など増加要因もありましたが、生産高が減少したことに伴い、製造原価は減少いたしました。

 販売費につきましては、積極的な広告宣伝活動を行ったことや、カスタマーセンターの増設に伴う諸経費の増加などもあり、前連結会計年度に比べ増加いたしました。

 これらの結果、外部顧客への売上高は3,346百万円(前連結会計年度比4.3%減少)、セグメント利益(営業利益)は317百万円(前連結会計年度比49.9%減少)にとどまりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ65百万円増加し2,096百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は1,376百万円(前連結会計年度比43.5%増加)となりました。これは、法人税等の支払86百万円や、売上債権・棚卸資産・仕入債務を合計した運転資金面での資金流出2,144百万円などもありましたが、減価償却費1,127百万円や、税金等調整前当期純利益の計上2,238百万円などが主な内容となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は1,100百万円(前連結会計年度比106.2%増加)となりました。これは、生産管理システムの再構築、生産設備の増強投資・メンテナンス投資などが主な内容となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は247百万円(前連結会計年度比37.9%増加)となりました。これは、リース債務の返済による支出131百万円、配当金の支払額120百万円などが主な内容となっております。

 なお、借入金の期末残高は、前連結会計年度末より36百万円増加し5,308百万円となっております。

 

③生産、仕入、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度のセグメントの生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

22,155,056

108.3

玉子焼類(千円)

14,064,162

107.3

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

4,210,775

114.4

蒲鉾類(千円)

2,487,025

107.2

その他(千円)

1,393,092

103.5

ヘルスフード(千円)

3,033,725

90.8

ごぼう茶関連製品(千円)

3,033,725

90.8

合計(千円)

25,188,781

105.8

 (注)金額は販売価格で表示しております。

 

b.製品仕入実績

 当連結会計年度のセグメントの仕入実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

9,193,711

99.0

玉子焼類(千円)

1,321,094

107.6

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

70,817

69.5

自社企画ブランド品(千円)

6,493,168

97.2

その他(千円)

1,308,631

102.2

ヘルスフード(千円)

86,588

102.0

ごぼう茶関連製品(千円)

86,588

102.0

合計(千円)

9,280,300

99.0

 (注)金額は仕入価格で表示しております。

 

c.商品仕入実績

 当連結会計年度のセグメントの仕入実績を商品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

10,617,252

106.9

常温食品(千円)

2,269,231

115.8

冷凍・冷蔵食品(千円)

8,334,993

104.7

その他(千円)

13,028

97.7

ヘルスフード(千円)

23,112

90.4

その他(千円)

23,112

90.4

合計(千円)

10,640,365

106.9

 (注)金額は仕入価格で表示しております。

 

d.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、主に見込み生産を行っており、受注実績の重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

e.販売実績

 当連結会計年度のセグメントの販売実績を製商品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

46,417,303

107.0

玉子焼類(千円)

15,846,253

106.9

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

3,819,625

113.8

蒲鉾類(千円)

2,405,070

104.9

自社企画ブランド品(千円)

8,044,761

101.4

その他(千円)

3,185,395

112.4

製品計(千円)

33,301,106

106.6

常温食品(千円)

3,011,149

114.9

冷凍・冷蔵食品(千円)

10,090,100

106.0

その他(千円)

14,947

95.0

商品計(千円)

13,116,197

107.9

ヘルスフード(千円)

3,346,533

95.7

ごぼう茶関連製品(千円)

3,257,880

95.9

その他(千円)

88,652

88.5

報告セグメント計(千円)

49,763,836

106.1

その他(千円)

476,543

89.1

合計(千円)

50,240,380

105.9

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10に満たないため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ2,537百万円増加し27,640百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ2,185百万円増加し14,816百万円となりました。主な増加要因は、売掛金の増加1,417百万円、商品及び製品の増加318百万円、原材料及び貯蔵品の増加235百万円、その他に含まれる為替予約の増加158百万円などであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ352百万円増加し12,823百万円となりました。これは、減価償却の進行を上回る取得による無形固定資産の増加に加え、投資その他の資産において、投資有価証券や退職給付に係る資産が増加したためであります。

 

(負債)

 負債合計は、前連結会計年度末に比べ850百万円増加し11,796百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ829百万円増加し10,566百万円となりました。主な増減要因は、未払法人税等の増加629百万円、その他に含まれる未払消費税等の増加187百万円、未払金の増加151百万円、買掛金の減少182百万円などであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ21百万円増加し1,229百万円となりました。主な増減要因は、長期借入金の増加97百万円、リース債務の減少88百万円などであります。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,687百万円増加し15,844百万円となりました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加1,509百万円、その他有価証券評価差額金の増加186百万円、為替換算調整勘定の増加98百万円、剰余金の配当による減少121百万円などであります。

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.9ポイント増加し57.3%となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は、国内販売におきましては、経済社会活動の正常化に向けた動きによって、外食業態の需要が一段と回復したことに加え、スーパーマーケットやコンビニエンスストアを中心とした中食業態の売上が伸張したことなどにより好調に推移いたしました。他方、ヘルスフードでは衛星放送を中心としたテレビCMなどの広告宣伝効率が低下したことや、物価上昇による嗜好品の買い控えなど外部要因も加わり、通信販売・市販ともに前連結会計年度に比べ減少いたしました。また、海外販売におきましては、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響はありましたが、販売価格見直しに加え、北米、オセアニア、香港、シンガポールを中心に需要が拡大した結果、前連結会計年度に比べ増加いたしました。以上より、売上高全体では増収(前連結会計年度比5.9%増加)となりました。

 営業利益は、主要原材料価格の高止まり、原油高に伴うエネルギーコストの高騰などにより、製造原価は前連結会計年度に比べ上昇しましたが、売上高の拡大効果や諸経費抑制に加え、退職給付費用が減少したことなどにより、増益(前連結会計年度比1,820.9%増加)となりました。

 経常利益は、為替差益や長期為替予約評価益、持分法による投資利益の計上などにより、増益(前連結会計年度比386.1%増加)となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失や固定資産除却損などの計上もありましたが、増益(前連結会計年度比463.5%増加)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(業務用食品等)

 販売面におきましては、供給制限に伴う玉子製品の販売抑制の影響もありましたが、玉子製品や海外調達品などの販売価格見直しを行ったことに加え、野菜加工品、調理済冷凍食品の需要が拡大したことや、繁忙期である盆・年末・節分の売上が大きく伸張したことなどが奏功し、国内売上高は前連結会計年度実績を上回る結果となりました。他方、海外輸出売上高につきましても、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響はありましたが、販売価格見直しに加え、北米、オセアニア、香港、シンガポールを中心に需要が拡大しました。以上の結果、外部顧客への売上高は増収(前連結会計年度比7.0%増加)となりました。

 利益面におきましては、主要原材料価格の高止まり、原油高に伴うエネルギーコストの高騰などにより、製造原価は前連結会計年度に比べ上昇しましたが、増収による効果があったことや、玉子製品の販売量減少や配送の効率化に伴う物流コストの減少、諸経費抑制に努めた結果、セグメント利益(営業利益)は増益(前連結会計年度比250.6%増加)となりました。今後におきましては、営業と開発部門との連携をさらに強化するとともに、引き続き需要創造型の営業・開発を推進してまいります。

 

(ヘルスフード)

 販売面におきましては、通信販売は、衛星放送を中心としたテレビCMなどの広告宣伝効率が低下したことや、物価上昇による嗜好品の買い控えなど外部要因による影響もありました。他方、ドラッグストアなどでの市販品につきましては、新製品の投入効果はあったものの、健康茶市場の需要に一服感がみられました。2023年9月に福岡市にカスタマーセンターを増設したことや、地上波のテレビCMやECモールへ積極的な広告宣伝活動を行ったことなどにより、足元では通信販売、市販品ともに回復基調にあるものの、外部顧客への売上高は減収(前連結会計年度比4.3%減少)となりました。

 利益面におきましては、積極的な広告宣伝活動を行ったことや、カスタマーセンターの増設に伴う諸経費の増加などもあり、セグメント利益は減益(前連結会計年度比49.9%減少)となりました。今後におきましては、環境変化に適した新製品開発を進めるとともに、ごぼう関連製品のさらなる販路拡大に向け、新市場開拓を進めてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

 当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得したキャッシュ・フローと投資活動により支出したキャッシュ・フローの合計として定義しております。当社は、フリーキャッシュ・フローを借入金などの負債の返済に充当可能な資金であるとともに、戦略的投資など、事業拡大に充当可能な資金として有用な指標と考えております。前連結会計年度と当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、次のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

キャッシュ・フロー増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

959百万円

1,376百万円

+416百万円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△533

△1,100

△566

フリーキャッシュ・フロー

425

275

△149

 

 営業活動により獲得したキャッシュ・フローが前連結会計年度より416百万円増加し、投資活動に使用したキャッシュ・フローが前連結会計年度より566百万円増加した結果、フリーキャッシュ・フローは前連結会計年度より149百万円減少いたしました。加えて、財務活動によるキャッシュ・フローのうち、短期・長期借入金の借入額は36百万円(純額)となっており、負債は増加しましたが、経営資源となる資金を確保しております。

 また、現金及び現金同等物につきましては、厳密な目標水準は定めていませんが、事業展開に伴う資金需要への対応、および有利子負債の返済に対して必要十分な額を保有しているものと考えます。

 当社グループの資本の財源および資金の流動性につきましては、持続的な成長拡大のための積極的投資と株主への安定的な利益還元に必要な資金の確保、並びに財務基盤の安定化を目的とし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出に努めております。

 当連結会計年度末時点において、株主資本の増加を必要とする資本的支出の予定はなく、運転資金および設備投資資金については、主として自己資金から充当し、必要に応じて金融機関からの借入により調達していく方針です。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や最も合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 近年、食品業界におきましては、顧客のニーズが多様化しており、安全・安心かつ高品質な製品であることに加え、健康志向も高まっております。その一方で、食品ロス削減をはじめとしたSDGsへの取り組み推進など、幅広く、きめ細やかな対応が求められております。

 このような状況の中、当社開発本部では、安全性・嗜好性を追求しつつ、当社独自技術を用いた付加価値の高い製品の開発を志向しております。近年では、プラントベースフードの開発や、ごぼうの新たな機能性・用途の研究にも注力しています。

 

 当連結会計年度におきましては、当社の重点施策であります「収益構造改革への取り組み」「業務用食品事業の成長拡大」「ヘルスフード事業・海外事業の拡大および新規事業構想の立案」「経営品質の向上」への取り組みとして、以下の6点に重点を置き、研究開発活動を実施してまいりました。

 

 ① ごぼうの基礎研究および製品開発

 ② 高品質な玉子焼の開発

 ③ 安心安全の維持に繋がる新技術開発

 ④ 業務用食品事業および海外事業の成長拡大に寄与する新製品開発

 ⑤ 新市場・新業態に適合した製品の開発

 ⑥ SDGsへの取り組み

 

 なお、研究開発費につきましては、各セグメントに配分できない基礎研究費用48百万円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は340百万円となりました。

 

(1)業務用食品等

 プロパー製品におきましては、各シリーズの品揃え拡充を図りました。ご飯にかけるだけの手軽な調理で本格的なメニューに仕上がる簡単キットシリーズでは「あんだく中華のとろたま丼キット」、「生姜香る鶏そぼろキット」を製品化しました。また、若鶏のおつまみシリーズでは「若鶏のおつまみやげん軟骨唐揚げ」、「若鶏のおつまみ軟骨と大葉のつくね」を製品化しました。加えて、「具沢山コクうまオーロラソース」、「スパイスカレーのタルタルソース」、「国産生姜の桃色タルタルソース」の調味素材も製品化しました。その結果、13アイテムを開発し、市場へ投入しております。

 他方、顧客限定製品におきましては、前連結会計年度に発生した鳥インフルエンザの影響により、一時的に玉子製品の販売抑制も実施されましたが、生産部門や営業部門と適切な連携を取りながら開発対応に注力した結果、43アイテムを開発し、市場へ投入しております。

 

 これらの活動の結果、業務用食品等に係る研究開発費は227百万円となりました。

 

(2)ヘルスフード

 ヘルスフード市場におきましては、味や香りなど食品としての基本的な品質だけでなく、健康に良いとされる機能性も備えた付加価値の高い製品が求められております。当社では、特にごぼうの機能性に着目し、基礎研究および開発を行っております。当連結会計年度は機能性表示食品として3アイテムを開発し、市場へ投入しております。

 通信販売向け製品におきましては、体重やお腹の脂肪を減らす機能を有する葛の花をブレンドし、ダイエットとごぼう茶の便通改善の2つの機能を備えた機能性表示食品「焙煎ごぼう茶ごぼうのおかげW」を発売いたしました。

 他方、ドラッグストアなどの市販向け製品におきましては、葛の花をブレンドした機能性表示食品「焙煎ごぼう茶キレイブレンド」を発売したほか、「国産焙煎ごぼう茶」を機能性表示食品としてリニューアル発売しました。

 加えて、焙煎ごぼうをベースにカカオを一切使用していないチョコレート風の食品素材「MelBurd(メルバード)」も開発しました。複数のマスメディアにも取り上げられ、「MelBurd」を用いたチョコレート風菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」をクラウドファンディングサイトにて先行販売した結果、目標額を大幅に達成するなど、大きな反響を得ました。今後、「GOVOCE」につきましては自社サイトなどでの再販を予定しているほか、「MelBurd」につきましては、引き続き用途の研究を進めてまいります。

 

 これらの活動の結果、ヘルスフードに係る研究開発費は64百万円となりました。