第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループは、「地球と社会と私たちの未来に、安全・快適・信頼の空間価値を届ける」という企業理念の下、「人材戦略を基盤とした人づくりの実現により企業価値を高める」という経営の方針を掲げ、当社グループの持続的な成長に向けて取組んでおります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 中期経営計画 Phase2《磨くステージ》」において、最終年度の2026年度(2027年3月期)に、経営成績として完成工事高260,000百万円、営業利益16,000百万円を目標としております。また、財務指標はROE10.0%以上、配当方針は配当性向40.0%以上かつDOE4.0%を下限としております。

 

(3)経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、2021年度より2029年度の9年間を対象とした長期ビジョン「Stage2030 総合設備工事から『空間価値創造』企業へ」を2021年3月に策定しました。

『空間価値創造』企業とは、社会やお客様が本質的、潜在的に求めている「価値」のある「空間」を「創造」し、満足を提供していく企業です。当社グループの目指す姿をステークホルダーの皆さまと共有することで、変化の激しい時代においても、私たちの提供する価値を明確にして、確かな目標に向かいステージアップを着実に図ることができると考えました。その中で、長期ビジョンの基本方針として、「信頼される人と組織の深化」、「快適・最適な空間の提供」、「豊かで持続可能な社会への貢献」を定めました。

 

長期ビジョンの第2フェーズにあたる2024年度より2026年度までの3年間の中期経営計画《磨くステージ》においても、長期ビジョンで示す3つの基本方針である『信頼される人と組織の深化』『快適・最適な空間の提供』『豊かで持続可能な社会への貢献』を踏襲し、《磨くステージ》の戦略として『働きがいと働きやすさの両立』『戦略的な人材育成』『国内基幹事業の強化』『海外事業の拡大』『環境・社会のサステナビリティへの貢献』『企業基盤の強化』を定めました。それぞれに対応した具体的な施策を実行することを通じて、フェーズ1《整えるステージ》にて推進してきた国内外の基盤整備を土台としてグループ総合力の強化を実現いたします。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

当社は、持続可能な社会の実現に向けて、ESG・サステナビリティに関する事業戦略の立案及び取組みについて審議するサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を取締役会傘下に設置しており、2023年度は8回開催しました。

サステナビリティ委員会は、マテリアリティ(重要課題)への対応やサステナビリティに関するリスクと機会への取組み状況について審議し、その結果を取締役会に報告・付議し、取締役会による監督を受ける体制となっています。気候変動、人的資本、人権問題、従業員の健康と安全をはじめとしたサステナビリティを巡る課題への対応を目的に、サステナビリティ委員会の下部組織として部門横断で組織される作業部会「タスクフォース」を設置し、TCFD提言に沿った情報開示の拡充や時間外労働の削減、人材育成、人権デュー・ディリジェンスなどに積極的に取組んでいます。

 

(2)リスク管理

当社は、事業に関するリスクを最小化するために、リスクマネジメント方針を策定し、代表取締役社長が主管するリスクマネジメント委員会を設置しています。気候変動の政策・規制、技術への対応の遅れ、情報開示不足等による「気候関連リスク」、情報の不正使用・外部への漏洩、情報システムの停止・誤作動等による「情報漏洩リスク・サイバーリスク」、法令等の不遵守、贈収賄を含む腐敗行為全般、契約違反、各種制度変更への不対応等による「法的リスク」などの主なリスクを発生頻度、脅威度等に基づき、総合的に判断して特定・評価しています。取締役会では、リスクマネジメント体制の整備・監督を行っており、リスクマネジメント委員会からの報告を受けるとともに、リスクマネジメントの実効性をモニタリングしています。

また、サステナビリティ委員会において、「気候関連リスク」や「人材リスク」をはじめとしたサステナビリティ全般の課題に対する討議内容について、当社のリスクを管理するリスクマネジメント委員会と相互に情報共有することにより、リスクマネジメントプロセスにサステナビリティに関するリスクが適切に反映される体制を構築しています。

 

(3)戦略及び指標と目標

①気候変動への対応

(ア)戦略

気候変動への対応は、当社にとって重要な課題であることを認識しており、気候関連のリスク及び機会を短期から長期の視点で特定し、その影響を評価しています。1.5℃シナリオ等を用いて分析を実施し、気候変動による事業インパクトの試算及び対応策を検討しました。次ページの表は、当社が認識している主な気候関連リスクと機会及びその対応策です。

今後は、これらの気候関連リスクと機会の分析結果をもとに、マテリアリティとして特定した「カーボンニュートラルへの貢献」に係る取組みに反映していきます。

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シナリオ設定について

シナリオ

シナリオ分析では、パリ協定の目的に合わせ地球の平均気温上昇を産業革命以前の水準から1.5℃までに抑制する世界(+1.5℃の世界)と、なりゆきで進む世界(+4℃の世界)の2つの世界を設定しました。

+1.5℃の世界では、IEA WEOのNet Zero Emissions by 2050(NZE)シナリオやAnnounced Pledges Scenario(APS)、IPCCのRCP2.6、+4℃の世界では、IEA WEOのStated Policies Scenario(STEPS)、IPCCのRCP8.5を参照しています。

 

対象

分析対象事業は、国内事業としています。当社の国内売上は、全体の9割を占めています。

 

時間軸

短期を現在~3年以内、中期を2030年まで(ダイダン長期ビジョン「Stage2030」期間及びSDGs目標年)、長期を2050年(2050年カーボンニュートラル)頃までと設定しています。また、将来的な財務影響の時間軸については、2030年時点を分析対象としています。

 

気候関連リスクと機会一覧

リスク分類

主なリスク

1.5°C

4°C

対応策

移行

政策・法規則

カーボンプライシング

炭素税の導入により、事業活動・施工に係る費用が増加。また、炭素クレジット購入等、排出量取引に係る費用が増加する

・実質再生可能エネルギー由来電力への切替

・自社のZEB化を含む、自社施設の消費エネルギーの削減

・エコカー導入の推進

・BIM・WEB会議・クラウド等のICTを活用したDX推進による事業活動のコスト低減

新築ビルの建設に対する規制の強化

新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応不足により、受注機会を逸失する

・新築ビルに対する規制強化・認証制度・省エネルギー基準への対応体制の見直し

技術

再生可能エネルギー・省エネルギー技術の普及

省エネルギー技術・再生可能エネルギー技術への対応が遅れることで、競争力が低下し、受注機会が減少する

・自社ZEBの運用ノウハウを活用した省エネルギー設備提案の推進

・大学等と連携した共同研究等のオープンイノベーションの推進

市場

顧客行動の変化

脱炭素社会に向けた産業構造や設備投資需要の変化に対し、対応が遅れることで受注機会が減少する

・脱炭素社会に向けた技術動向、顧客の設備投資動向を捉えた営業企画の強化

評判

投資家・株主の行動変化(ESG投資の拡大)

脱炭素の取組みに対する情報開示の不足により、金融市場からの評価と信頼が低下する

-

-

・IR活動でのサステナビリティ情報発信と対話の強化

顧客からの評判の変化

脱炭素への取組みに関して社会的評価が獲得できず、市場からの信頼を失い、受注機会が減少する

・ウェブサイト、統合報告書による積極的な情報発信

・カーボンニュートラルに向けたイニシアティブへの積極的な参加

・「ダイダンの森」育成・整備活動の推進

 

 

 

リスク分類

主なリスク

1.5°C

4°C

対応策

物理的リスク

急性リス

気象災害の頻発・激甚化(台風、豪雨等)

豪雨や台風の頻発・激甚化による、自社社屋への損害発生、ライフラインの停止、工事見合わせ等により、事業運営に伴うコストが増加する

・事業継続マネジメントシステムの運用によるリスク軽減

・自社のZEB化によるレジリエンス強化

慢性リスク

(夏季)平均気温の上昇

平均気温上昇により、建設現場で働く人々の健康リスクが高まるほか、生産性の低下や技術者不足が発生する

・空調服を導入し、熱中症防止対策を実施

・施工現場でのDX推進、ロボット活用による生産性向上と労働時間抑制

降水パターンの変化

ゲリラ豪雨が頻発することで、建設現場における浸水被害が発生し、工事遅延や復旧に伴うコストが増加する

・サプライヤー、協力会社などサプライチェーンの連携強化

 

機会分類

主な機会

1.5°C

4°C

対応策

資源の効率性・レジリエンス

省エネルギー・再生可能エネルギー技術の普及に伴う省エネルギービルやスマートシティ関連の需要拡大

ZEB化を始めとした省エネルギー・再生可能エネルギー技術への対応により、技術面の競争優位性を獲得し、売上が増加する

・省エネルギー改修提案、ZEB化技術・IoT技術を生かした提案により、再生可能エネルギー及びZEB案件の営業を強化

・再生可能エネルギーの有効活用やZEB化に関する技術開発を推進

エネルギーマネジメント関連技術の導入強化

エネルギーマネジメント技術への対応が進むことで、競争力が向上し受注機会が増加する

・遠隔監視・制御システム開発等により、建物及び建物群のエネルギーマネジメントのためのソリューションサービスを展開

製品/サ|ビス

再生可能エネルギーの促進に係る政策強化

再生可能エネルギーに関する政策の導入により、再生可能エネルギー施設の建設投資が拡大し、受注機会が増加する

・再生可能エネルギーを有効活用するための技術開発を推進

顧客行動の変化

省エネルギーと健康性・快適性・知的生産性の両立を可能とする当社の技術力により、受注機会が増加する

・自社のZEB化で検証したZEBとウェルネスを実現する次世代オフィスの提案

(夏季)平均気温の上昇

冷房能力増強工事の需要が増大し、受注機会が増加する

・冷房能力増強工事の提案強化

※移行リスクにおけるカーボンプライシングと物理リスクは利益への影響度を、それ以外のリスク及び機会は売上への影響度を評価しました。

・利益に関する影響度評価基準・・・(小:~1億円以下中:~10億円以下大:10億円超)

・売上に関する影響度評価基準・・・(小:~20億円以下中:~200億円以下大:200億円超)

 

(イ)指標と目標

当社は、マテリアリティのひとつとして「カーボンニュートラルへの貢献」を特定しています。そのマテリアリティに基づき、気候関連リスクと機会を適切に評価するために、中長期の定量的な目標を策定したうえで、活動を推進しています。

温室効果ガス排出量については、Scope1+2を2030年までに2019年度比で43%削減することを目標としています。これまでに自社社屋のZEBへの建替え、実質再生可能エネルギー由来の電力への切り替え、及びハイブリッド車等エコカーの導入促進等の取組みをしてきました。今後も、太陽光発電の増設、オフィスの再生可能エネルギー化、プラグインハイブリッド車、バッテリー式電気自動車、水素自動車などへの切り替え、大阪本社のガス空調の脱炭素化を進めていきます。

 

マテリアリティ

KPI

目標

2023年度実績

カーボンニュートラルへの貢献

Scope1+2の温室効果ガス排出量の削減

長期目標:2030年

2019年度比43%削減

2019年度比24%削減

(2023年度3,038t-CO2)

(2019年度4,002t-CO2)

※国内及び海外連結グループを対象範囲としています。

 

②人的資本への対応

(ア)戦略

(ⅰ)人材マネジメント方針の策定

当社では、価値創造の源泉である人材を最も重要な経営資本として考えています。2023年度においては、社員が意欲的に働ける組織風土を実現することを目指して「企業理念」と「共有する価値観」を新たに明文化し、人材マネジメントの方針を策定しました。

ありたい企業の姿である「企業理念」を実現するために、会社と社員が大事にしたい「共有する価値観」から構成されるこの人材マネジメント方針に沿って、長期的な企業価値拡大に繋げてまいります。

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(イ)指標と目標

(ⅰ)2023年度の取組について

「健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境」をマテリアリティとして特定し、従業員満足度、度数率・強度率をKPI設定の上、取組みました。従業員満足度については、2023年度の2.7以上を目指して、働き方改革の推進、健康情報提供サービス「Pep Up」の活用推奨、社員研修や各種セミナーの充実等に取組みましたが、2.44となり、目標未達となりました。度数率・強度率については、予防型安全管理の徹底、過重労働防止策の促進、健康保持・増進策の実践等に取組みましたが、いずれも目標未達となりました。

 

マテリアリティ

KPI

2023年度目標

2023年度実績

健康・安全に配慮した働きがいのある職場環境

従業員満足度の向上

(従業員アンケートによる回答_4点満点)

2.7以上

 

2.44

 

度数率

0.25

0.43

強度率

0.010

0.012

※国内単体を対象範囲としています。

(ⅱ)中期経営計画Phase2《磨くステージ》での取組

2024年度以降の人的資本に関する取組みのために、企業理念に基づき策定された中期経営計画とマテリアリティに連動する施策とKPIを設定しています。具体的には、働きがいと働きやすさを両立する組織風土の形成と、個人の力を引き出すための人材育成の両輪で進めていく考えです。前者では働き方改革を推進し、従業員が意欲的に仕事に取組むことができる組織風土を実現します。後者では、採用数を増やし、適切な経験を積むための研修とローテーションを実施し、従業員がより活躍できる仕組みを構築します。加えて、健康経営戦略マップに基づく健康投資の実施やコンプライアンス・リスクセンスに関する教育・研修の定期的な実施など、企業基盤の強化に努めていきます。

国内単体を対象範囲としています。

区分

KPI

目標

2023年度

実績(参考)

備考

育成

従業員1人当たりの研修時間

58.97時間

モニタリング項目

エンゲージメント

従業員エンゲージメントスコア※1

65.1

61.0

2026年度到達目標

離職率

2.6

モニタリング項目

ダイバーシティ

男性従業員の育児休業取得率

50

26.8

2026年度到達目標

男性従業員1人当たりの育児休業取得日数

100.7

モニタリング項目

女性従業員1人当たりの育児休業取得日数

381.3

モニタリング項目

女性管理職比率※2

3.5

2.3

2024年度到達目標

障がい者雇用率※3

2.5

2.36

2024年度到達目標

健康・安全

健康経営優良法人 ホワイト500取得

取得

2026年度到達目標

度数率

0.25

0.43

2024年度到達目標

強度率

0.010

0.012

2024年度到達目標

コンプライアンス

企業倫理誓約書の提出率

100

100

2024年度到達目標

コンプライアンス教育の受講率

95

97.1

2024年度到達目標

※1 建設・不動産及び1,001~5,000人のスコアを目標値として設定しております。

※2 女性管理職比率における目標は、厚生労働省令第8条第1項第1号イ(4)に定める建設業の産業平均値です。(2024年6月末時点)

※3 障がい者雇用率における目標は、2024年度の法定雇用率です。実績は、障害者雇用状況報告書に記載の2023年6月1日現在の数値です。

 

3【事業等のリスク】

当社は、永続的に価値を提供し続けるために、リスクの顕在化を未然に防止し、また、顕在化したリスクを極小化するべくリスクマネジメント体制を構築しています。経済的損失及び社会的損失が発生した場合の経営への多大なる影響を想定し、報告及び対応のための管理手法、対策本部の設置に関する事項等について「リスクマネジメント規程」に定め、リスクマネジメント委員会を設置しています。

 

リスクマネジメント体制図

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しかしながら、当該体制の構築を強化し、規程の遵守を徹底した場合であっても、事業に影響を与えるリスクの顕在化を完全に払拭することはできないと考えています。これらのリスクについてはそれぞれ個別に対応策を講じているものの、著しい外部環境の変化が生じた場合には、当該リスクが顕在化する可能性があります。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 

なお、本項において、将来に関する事項が含まれております。当該事項は、2024年6月27日現在において当社グループが判断したものでありますが、当社グループが認識していない、又は重要性が乏しいと考えている追加的なリスク等が、当社グループの事業、業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性もあります。

 

(1)市況変動リスク

国内外の経済環境の悪化による設備投資の減少や技術革新等の外部環境の変化によって、建設需要が著しく減少することにより、当社の受注環境が悪化し、事業環境に悪影響を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、外部環境の変化のモニタリングや事業多角化によるリスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

(2)施工リスク

①施工現場での安全環境の不整備や従業員教育等の欠如による労働災害の発生、施工物件の品質劣化及び施工中の重大な品質事故により被るリスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者は工事の安全衛生リスク及び品質環境リスクを把握し、それらを施工管理目標として設定することで堅実な施工に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、多額の損害賠償金の発生、工程の手戻りによる損益の悪化、契約不適合による対応費用の発生、社会的信用の失墜など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

②経済環境等の悪化による資機材・労務費の高騰並びにその影響による資機材の納期の長期化や納期遅延による施工の長期化リスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者はそれらのリスクを把握した上で施工計画の策定及び原価計算を行い、堅実な施工に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、工事原価の高騰及び契約不適合による対応費用の発生により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

③建設業界の技能労働者の高齢化、日本における少子高齢化の進行を一因とした若年層の入職者数の減少による施工体制の確保が困難になるリスクがあります。

当社規程に基づき、施工担当者はこれらのリスクを把握した上で堅実な施工体制の構築を行っています。また当社グループとして協力会社への人材採用活動の協力等を通じて当該リスクの減少に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、施工体制の構築不備による工期の遅延により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 

(3)人材リスク

関連会社を含む技術者採用計画の未達、人材流出及び退職による人材喪失、それらによって生じる在籍社員への負荷の増大並びに士気の低下により事業活動への支障ひいては事業継続性に影響を及ぼすリスクがあります。

当社規程に基づき、技術者人材の採用・育成及び定年年齢の引き上げやITツールの利用促進、業務の一部アウトソーシング体制の構築による生産性向上、積極的な経験者採用、地域限定正社員制度の導入により人材の確保・リスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合、施工体制の構築が困難となるなど、当社の事業活動及び経営成績等に大きな影響を与え、事業継続に支障をきたす可能性があります。

 

(4)海外リスク

海外における政治や社会、経済状況の変化に伴う損失や資金が回収できない状況、急激なインフレや通貨の急落、国債の債務不履行、政権交代による経済・通商政策の変更、戦争や内乱に伴う政治の不安定化、そのほか法制や税制の解釈・運用の相違、商慣行やマナーによる違い、外国企業に対する国民感情などによる損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、海外赴任者に対して海外リスクについて必要な情報をタイムリーに伝達し注意喚起する体制を整えておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、債権の回収不能、市況の悪化による受注工事高、完成工事高の減少、為替変動による為替差損等が生じる可能性があります。

 

(5)法的リスク

①法令等の遵守状況が不十分であることにより損失を被るリスク(他のリスクに係るものを除く)、契約等の行為が予想された法律効果を発生するための検討や訴訟等への対応が不十分であることによる損失を被るリスク、贈収賄・癒着・横領等の腐敗行為への対応が不十分であることにより損失を被るリスク、法規類の改廃や新たな規制が制定されたことによる、新たな義務の発生や費用負担の増加、権利等の制約を受けるリスクがあります。

当社規程に基づき、建設業法、独占禁止法、労働安全衛生法等の各法令の順守を徹底し、法令違反の抵触を防止しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、法的規制による行政処分等を受け、世評の低下や営業停止による受注工事高の減少、罰金、課徴金等による費用等が生じる可能性があります。

 

②2024年4月からの時間外労働の上限規制適用開始を受け、技術社員の労働時間減少に伴い設計・施工体制が構築できない場合、完成工事高、営業利益の減少により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、長時間労働の是正のためにプロジェクトを立ち上げ、技術社員の業務削減及び業務効率化による総労働時間の減少を進めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、法的処分を受けることによる世評の著しい悪化、施工能力の縮小により、当社グループの財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー及び社員の就労意欲に影響を与える可能性があります。

 

(6)オペレーショナルリスク

技術開発の遅れ、営業活動の不振等により競争力を失い、継続的な事業活動に影響を被るリスク、金利・為替等の様々な市場のリスクファクターの変動により保有する資産・負債(オフバランス資産・負債を含む)の価格が変動し損失を被るリスク(市場リスク)、市場の混乱等により必要とされる数量を妥当な水準で取引できないことにより損失を被るリスク(市場流動性リスク)があります。

当社規程に基づき、中長期的な研究開発計画の策定、全社的な視点での営業活動による営業情報の蓄積に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、受注工事高、完成工事高の減少、保有資産の減損等が生じる可能性があります。

 

(7)情報漏洩リスク・サイバーリスク

①サイバー攻撃(標的型攻撃メール、マルウェアなど)を受けた場合、及び内部の人間による不正があった場合、個人情報及び取引先の秘密情報の喪失・改ざん・不正使用・外部への漏洩により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、個人情報及び取引先の秘密情報の管理に関する規程・マニュアルの整備、現場ごとの秘密保持契約の締結、作業者単位での秘密保持誓約書の提出及び教育を実施し、リスクの低減に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、各対応費用、損害賠償の発生、世評の低下による受注工事高の減少等が生じる可能性があります。

 

②サイバー攻撃(標的型攻撃メール、マルウェアなど)を受けた場合、及び内部の人間による不正があった場合、情報システムの破壊・停止・誤作動・不正使用等により損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、ITに係る規程・マニュアルの整備、権限の設定、バックアップの作成、従業員のセキュリティ教育等を実施し、情報の「可用性」「完全性」「機密性」の確保に努めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、各対応費用、損害賠償の発生、世評の低下による受注工事高の減少等が生じる可能性があります。

 

(8)資産リスク

資産管理の瑕疵等の結果、資産の毀損等により損失を被るリスクがあります。資産とは、有価証券等の金融資産、所有及び賃貸借中の土地・建物、建物に付随する設備、什器・備品等の有形資産、知財等の無形資産を指します。

当社規程に基づき、金融資産のモニタリング、有事の際の資産管理(BCP等)、弁護士との連携による知財等の紛争リスクを低減しておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、紛争に伴う対応費用等が生じる可能性があります。

 

(9)自然災害リスク

台風、河川の氾濫、地震等の自然災害によって、当社の保有する有形資産の毀損や執務環境等の質の低下、役職員の安全等に損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、大規模災害による混乱防止、役職員及びその家族の安全確保、顧客支援等を迅速に行う事業継続管理(BCM)を定めておりますが、当該リスクが顕在化した場合には、保有資産の減損、事業中断に伴う受注工事高、完成工事高の減少、各支援等による費用等が生じる可能性があります。

 

(10)評判リスク

事実と異なる風説・風評の流布及び事実に係る当社の対応の不備の結果、当社に対する評判・評価が悪化し、当社の企業価値損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、企業活動等における情報を適時かつ適切な方法で開示しています。また危機発生時には対策本部を設置し、報道機関等への対応については対策本部長が行うとしていますが、当該リスクが顕在化した場合には、受注工事高や採用人数の減少といった当社の企業活動の根幹に影響を及ぼすような被害が生じる可能性があります。

 

(11)信用リスク

信用供与先の財務状況の悪化、契約不履行等により、資産の価値が減少ないし消失し、損失を被るリスクがあります。

当社規程に基づき、取引の際には信用調査を行い、格付けの低い取引先については慎重に検討した上で取引を行っていますが、当該リスクが顕在化した場合には、工事代金の回収が困難となり、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(12)気候関連リスク

低炭素経済への移行に伴う政策・法規制の強化によるコスト増、エネルギー技術の対応に遅れることによる 機会喪失、脱炭素社会に向けた需要の変化への未対応、情報開示不足による当社に対する評価と信頼低下などのリスク、及び気候変動による気象災害の頻発や平均気温の上昇など物理的変化に関するリスクがあります。

当社規程に基づき、サステナビリティ委員会が気候関連リスクについて特定・評価し、その情報をリスクマネジメント委員会と共有していますが、当該リスクが顕在化した場合には、需要変化への対応が遅れることによる受注機会の減少、気象災害の頻発による当社社屋への損害や工事見合わせ等に伴う事業運営コストの増加及び平均気温の上昇による建設現場の従業員の生産性低下等が生じる可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、コロナ禍の収束により社会経済活動の正常化が進み、内需・外需とも回復が見られ、また好調な企業収益により、産業施設案件を中心に受注が好調に推移した結果、受注工事高が増加しました。

また、前期からの繰越工事及び期中の受注工事の増加に伴い完成工事高も増加となりました。

利益につきましては、資材価格の高騰や人手不足の状況が受注先に認識され、適正な価格で受注できるようになり、完成工事総利益率及び完成工事高の増加を受け、増加となりました。

これを受けまして、受注工事高は、前連結会計年度比46,796百万円増(22.7%)の253,134百万円となりました。

完成工事高は、前連結会計年度比11,469百万円増(6.2%)の197,431百万円となりました。

完成工事総利益は、前連結会計年度比3,593百万円増(15.9%)の26,217百万円となりました。

営業利益は、完成工事総利益の増加により、前連結会計年度比2,449百万円増(29.1%)の10,877百万円となりました。

経常利益は、営業利益の増加により前連結会計年度比2,630百万円増(28.3%)の11,918百万円となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、特別利益として投資有価証券売却益1,574百万円等を計上し、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を加減した結果、前連結会計年度比2,460百万円増(37.1%)の9,087百万円となりました。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載しておりますとおり、当社グループは、2024年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「Stage2030 Phase2《磨くステージ》」において、最終年度の2026年度に、連結業績として完成工事高260,000百万円、営業利益16,000百万円を目標としております。また、財務指標はROE10.0%以上、配当方針は配当性向40.0%以上かつDOE4.0%を下限としております。

なお、2024年度の連結業績予想としては、完成工事高250,000百万円、営業利益15,000百万円、ROE10.0%以上、配当性向40.0%以上としております。

当社グループは、総合設備工事から『空間価値創造』企業のリーディンググループを目指しております。国内外の基盤を整備・強化し、ダイダングループとして拡大を図るため、連結売上高、連結営業利益を経営目標としております。本業である設計・施工の連結売上高と連結営業利益が、当社グループ拡大状況を示す特に重要な経営目標と考えております。また、資本効率と株主還元の向上を目的とし、ROE、配当性向、DOEもあわせて経営目標としております。

当連結会計年度、中期経営計画の最終年度目標、今期予想との比較は下記のとおりです。

 

指標等

2023年度

(実績)

2024年度

(今期予想)

2026年度

(中期経営計画)

連結売上高

(百万円)

197,431

250,000

260,000

連結営業利益

(百万円)

10,877

15,000

16,000

ROE

(%)

10.3

10.0以上

10.0以上

連結配当性向

(%)

35.6

40.0以上

40.0以上

 

(2)生産、受注及び販売の実績

当社グループが営んでいる事業である設備工事業では、生産実績を定義することが困難であります。

また、請負形態をとっているため、販売実績という定義は実態に即しておりません。

よって、受注及び完成工事の実績については「(1)経営成績等の状況及び分析・検討内容」において記載しております。

また、当社グループが営む事業の大半は提出会社によるものであるため、以下には提出会社の実績について記載しております。

 

受注工事高及び完成工事高の実績

① 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

工事種別

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

管工事

139,346

168,719

308,066

147,596

160,469

電気工事

23,311

27,013

50,325

32,023

18,301

162,658

195,732

358,391

179,619

178,771

(うちリニューアル工事)

35,911

75,815

111,726

79,232

32,493

(うち産業施設工事)

44,575

83,324

127,900

71,323

56,577

(うち海外工事)

12,608

12,268

24,876

13,059

11,817

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

管工事

160,469

202,647

363,117

157,700

205,416

電気工事

18,301

38,100

56,402

29,229

27,172

178,771

240,747

419,519

186,930

232,588

(うちリニューアル工事)

32,493

73,372

105,866

73,231

32,635

(うち産業施設工事)

56,577

137,389

193,967

78,377

115,590

(うち海外工事)

11,817

7,526

19,343

11,438

7,905

  (注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にも当該増減額が含まれております。

2.次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)に一致します。

3.管工事は、空調工事と水道衛生工事から構成されております。

 

② 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

工事種別

特命(%)

競争(%)

計(%)

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

管工事

33.0

67.0

100.0

電気工事

45.1

54.9

100.0

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

管工事

40.3

59.7

100.0

電気工事

36.2

63.8

100.0

 (注)1.百分比は請負金額比であります。

2.管工事は、空調工事と水道衛生工事から構成されております。

 

③ 完成工事高

期別

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

第94期

自 2022年4月1日

至 2023年3月31日

管工事

21,409

126,186

147,596

電気工事

5,895

26,127

32,023

27,305

152,314

179,619

第95期

自 2023年4月1日

至 2024年3月31日

管工事

19,099

138,601

157,700

電気工事

4,242

24,987

29,229

23,341

163,589

186,930

(注)1.管工事は、空調工事と水道衛生工事から構成されております。

2.完成工事のうち主なものは次のとおりであります。

第94期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

鹿島建設㈱

九段会館テラス 空調工事

大成・鵜沢建設JV

千葉市役所新庁舎 空調工事

大成建設㈱

イオンネクスト誉田CFC 空調・水道衛生工事

清水建設㈱

アーバンネット名古屋ネクスタビル 空調・水道衛生工事

㈱本間組

一正蒲鉾本社第二工場 空調・水道衛生工事

第95期の完成工事のうち請負金額10億円以上の主なもの

大成建設㈱

文京ガーデン ゲートタワー及び センターテラス

空調・水道衛生工事

Resorts World at Sentosa Private Limited

リゾートワールドセントーサ第2地冷設備機械室(シンガポール)

電気・空調・水道衛生工事

鹿島建設㈱

JASM FAB棟 空調工事

竹中工務店他JV

JPタワー大阪 空調・水道衛生工事

大林組・トヨタT&S建設共同企業体

プライムアースEVエナジー新居第二工場 空調・水道衛生工事

3.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりで

  あります。

第94期

 ㈱大林組   19,517百万円 10.9%

 清水建設㈱  18,270百万円 10.2%

第95期

 清水建設㈱  19,788百万円 10.6%

 ㈱大林組   19,451百万円 10.4%

 

④ 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)

工事種別

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

管工事

34,908

170,507

205,416

電気工事

4,941

22,231

27,172

39,850

192,738

232,588

(注)1.管工事は、空調工事と水道衛生工事から構成されております。

2.次期繰越工事のうち請負金額15億円以上の主なもの

Rapidus㈱

Rapidus IIM-1建設計画

空調・水道衛生工事

2025年12月完成予定

㈱大林組

関西国際空港第1ターミナルビルリノベーション

空調・水道衛生工事

2026年10月完成予定

国立大学法人大阪大学

大阪大学(吹田)医学部附属病院統合診療棟

電気・空調・水道衛生工事

2025年1月完成予定

清水建設㈱

(仮称)芝浦一丁目計画第1期(S棟)

空調工事

2025年2月完成予定

SMFLみらいパートナーズ㈱

2025年日本国際博覧会 熱供給業務

空調工事

2026年9月完成予定

 

 

(3)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は、前連結会計年度末比3,970百万円増(3.7%)の112,090百万円となりました。主な要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加5,276百万円(7.6%)によるものです。固定資産は、前連結会計年度末比8,038百万円増(19.9%)の48,462百万円となりました。主な要因は、投資有価証券の増加2,369百万円(12.6%)及び退職給付に係る資産の増加4,537百万円(39.6%)によるものです。

この結果、総資産は前連結会計年度末比12,009百万円増(8.1%)の160,553百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は、前連結会計年度末比636百万円減(△1.0%)の60,895百万円となりました。主な要因は、支払手形・工事未払金の減少1,844百万円(△7.9%)によるものです。固定負債は前連結会計年度末比1,083百万円増(23.6%)の5,670百万円となりました。主な要因は、繰延税金負債の増加1,492百万円(56.1%)によるものです。

この結果、負債合計は前連結会計年度末比446百万円増(0.7%)の66,565百万円となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比11,562百万円増(14.0%)の93,987百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加6,722百万円(9.8%)等によるものです。

この結果、自己資本比率は58.4%(前連結会計年度末は55.4%)となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末比2,682百万円減(△10.6%)の22,665百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、増加した資金は596百万円(前連結会計年度は15,941百万円の資金の増加)となりました。

主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上等の資金の増加要因が、売上債権の増加等の資金の減少要因を上回ったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、減少した資金は603百万円(前連結会計年度は4,729百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、有形固定資産の取得による支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、減少した資金は2,829百万円(前連結会計年度は2,218百万円の資金の減少)となりました。

主な要因は、配当金の支払によるものです。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性について

運転資金及び通常の設備投資資金につきましては、営業循環取引から生じる受取手形及び電子記録債権の決済、並びに完成工事未収入金の回収による資金を運転資金の基礎とし、必要に応じ金融機関から資金の借入れにより調達することとしております。なお、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行3行と貸出コミットメントライン契約を締結しております。

運転資金需要のうち主なものは、工事原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。設備工事業の特性上、入金よりも支出が先行する傾向があり、大型工事については立替額が多額となるケースもあることから、借入による一定の資金余剰が必要となっております。

大規模な設備投資の計画が生じた場合につきましては、計画時点の資金の流動性などを鑑み、都度、調達方法を検討いたします。

当連結会計年度末における借入金(短期及び長期)の残高は3,158百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は22,665百万円となっております。

 

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5〔経理の状況〕の連結財務諸表の〔注記事項〕(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)、重要な会計上の見積りは(重要な会計上の見積り)に記載しております。

 

 

 

5【経営上の重要な契約等】

特記事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は、高度化・多様化するお客さまのニーズに応え、サステナブルな社会の実現に貢献するための研究開発を推進しております。また、継続的な成長を目指し、総合設備工事業の枠にとらわれない事業創出に向けた研究開発にも取組んでおります。

当連結会計年度における研究開発の主な成果は以下のとおりです。子会社においては、研究開発活動は行われておりません。なお、研究開発費は1,286百万円でした。

なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(研究開発の内容)

(1)カーボンニュートラル社会の実現に貢献する研究

当社はCSV事業戦略のひとつとして、カーボンニュートラル社会を実現するZEB※1の普及に取組んでいます。

ZEB技術を磨き、時代に合った設備提案ができるよう、これまでに自社の九州支社、四国支店、北海道支店、北陸支店をZEB化し、運用状況の検証と成果の公開を実施してきました。更に2024年3月には、新しい働き方を推進する現代版OMOYA(母屋)を目指した新潟支店が完成しました。BELS認証・CASBEE-WO認証の獲得を基盤に、カーボンニュートラルという視点だけではなく、自然災害に対する強靭性、働き易いオフィス環境、DX※2へのチャレンジを融合した建物となっています。

また、新たな取組みとして、これまでZEBは光熱費削減効果について評価されていましたが、省エネ建築物の新築・改修による効果を総合的に定量評価する指標を用い、建物価値の総合評価も実施しています。具体的には、自社4棟のZEBに対し、光熱費削減効果以外の潜在的な効果(Non-Energy Benefit※3)も適切に算定することで、ZEBに取組むメリットを定量的に評価しました。

当社は自社建物をZEB化したことにより、その設計・施工プロセスから運用フェーズに至るまでのノウハウを蓄積しています。今後は、培ったノウハウを提案・設計・施工に活かし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。

 

※1 ZEB:net Zero Energy Buildingの略。建物で消費するエネルギーを再生可能エネルギーでまかなう建物。

※2 DX:Digital Transformationの略。デジタル テクノロジーを活用しプロセスを新たに創造する取組み。

※3 Non-Energy Benefit:ZEBにおける光熱費削減以外の効果。

 

(2)材料視点による設備品質向上に向けた新たな取組

空調用冷温水を作り出す冷凍機には、熱交換用の銅コイルが使用されています。銅コイルの製造時に付着するカーボン被膜量が適切でない場合、比較的早く劣化することをこれまでの防食研究から見出すことができました。この課題に対処するため、冷凍機の受入検査時にカーボン被膜の量を検査することで、設備の寿命延長に貢献することが期待されます。

そこで、当社が主導して大学や企業に参加を呼びかけて研究部会を設立し、カーボン被膜の検査要領の規格化に取組んでいます。今後は規格化された検査手順を普及させ、サプライチェーンと連携した業界全体の品質向上に貢献していく方針です。

 

 

 

(3)DXによる現場の施工効率化に関する研究

改修工事の計画は、現地の状況を正確に把握することから始まります。これまで当社では、現地の状況を効率的に把握するための手法として、3次元測量技術の開発を行ってきました。全方位カメラ(360度カメラ)で現地の動画を撮影し、写真測量技術を活用することでサイバー空間に3次元モデルを作成し、配管ルートやダクトルート、機器の寸法などを現地に赴くことなく把握することができるようになっています。この技術は、営業段階での概算見積り、設計・積算検討、施工時の搬出入計画など様々な場面で活用され、業務の効率化につながっています。

また、2024年3月に完成した新潟支店では、各施工現場と支店の指令機能がクラウド空間で繋がる仮想現場「メタサイト®※4」を活用するためのメタスタジオを整備しました。メタサイト上に構築した3次元CADと現地の施工状況を照らし合わせて施工の進捗を確認したり、これまで作業所に赴いて行なっていた熟練者による技術指導をメタスタジオから行なったりするなど、従来業務のDX化を行うことで施工の効率化を推進しています。

 

※4 メタサイト:BIMを活用した3次元の仮想空間(メタバース) での作業環境。メタバースと作業場(サイト)を組み合わせた造語

 

(4)再生医療分野向け独自技術開発

再生医療は、これまで治療が困難であった病気や怪我に対する新しい医療として注目されています。しかし、再生医療等製品の製造には品質管理や環境整備など多大なコストがかかるため、治療費が高額になり再生医療の普及を阻害する要因となっています。再生医療が普及するためには、有効性と安全性を確保したうえでコストを低減する必要があります。当社は、CSV事業創出の一環としてこの課題の解決に取組んでいます。

当社が得意とする気流制御技術から開発した「エアバリアブース®」を、自社の再生医療用細胞加工施設「セラボ殿町」に採用しました。この施設は、気流が壁の代わりとなる国内外でも類を見ない構造であり、低コストで使いやすさを追求したものとなっています。細胞製造環境としての品質面についても基準をクリアしており、セラボ殿町を活用する子会社のセラボヘルスケアサービス社が再生医療等製品の製造業許可を取得しています。

当社グループでは、開発した再生医療向け技術を普及させるとともに、再生医療用細胞の受託事業を推進することで、再生医療の社会実装の早期実現に貢献してまいります。

 

(5)サステナブルな社会への貢献を目指した半導体産業用ケミカルエアフィルタの再生事業の本格化

SDGsの達成に貢献する廃棄物削減の取組みとして、超臨界二酸化炭素※5を洗浄溶媒とする半導体産業用ケミカルエアフィルタのリユース事業(フィルタ再生事業)に取組んでいます。

半導体市場は、台湾の半導体大手企業が日本に工場を建設するほか、世界的に各国政府が補助を出すなど半導体工場の建設ラッシュが続いており、今後国内外でさらに活発化する見込みです。半導体工場では、エネルギーや資源の消費量を削減するだけでなく、廃棄物の削減など環境への貢献は必須であり、当社のオンリーワン技術である本事業への関心も国内外問わず高くなっています。

2023年には、フィルタ再生事業の拡大に対応した新プラントを整備し、その再生効率の向上に向けた研究開発を推進しています。また、異業種と連携し、超臨界二酸化炭素を利用した新たな環境貢献技術の検証も進めており、サステナブルな社会の実現に向けて貢献していく予定です。

 

※5 超臨界二酸化炭素:加圧・加熱により、超臨界状態になった二酸化炭素。液体と気体の両方の性質を持つ超臨界二酸化炭素は産業用ケミカルフィルタの洗浄に効果的です。

 

(6)設備品質と設備機能の向上に関する研究

当社は建築設備に欠かせない光・空気・水に関する技術をコアとして、イノベーション力とエンジニアリング力を結集し、建物のライフサイクルを通した空間価値を提供しています。したがって、顧客に高品質で機能性の高い建築設備を提供し続けるための技術開発は、永遠の命題となっています。

データセンターをはじめとする大規模空調設備に対しては、CFD(Computational Fluid Dynamics)による気流シミュレーションを活用した最適化提案を実施しています。気流分布や温度分布を可視化して、設計要件を満たす設備条件を施工前にコンピュータ上で確認し、その結果に基づいて着実な施工を行っています。建築設備技術の高度化・多様化に伴い、CFDの研究はますます重要になっています。

また、設備の運転管理の省力化、設備運用の最適化によるエネルギー使用量低減に対する顧客ニーズは、以前に増して高まっています。そこで、設備の運転管理の効率化を可能とするクラウド型監視制御システム「リモビス®」の導入提案を積極的に行うとともに、開発しながら顧客に活用していただき改善を繰り返すアジャイル型開発によるリモビスの機能改良、設備運用におけるAI※6の活用に関する研究を推進しています。

 

※6 AI:Artificial Intelligenceの略。

これまで人間にしかできなかった知的行為を機械に代行させるためのアルゴリズム(人工知能)。