当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)が合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。
(1)会社の企業理念
当社グループは、「創造的行動力による社会への貢献」を企業理念とし、コア事業である発泡樹脂製品及び新しい素材を用い、省資源・省エネルギーで社会生活の利便性向上に寄与する価値を、社会に提供していくことを使命としております。
(2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標
a.長期ビジョン
第61期(2019年3月期)スタートにあたり、10年スパンの長期的な方向性を示す『VISION2027』を策定しました。長期ビジョンでは、「顧客と消費者に感動を届ける」、「株主と地域社会に満足を届ける」、「社員一人ひとりがワクワク感を持って仕事をする」など、すべてのステークホルダーに感動と満足を届けることの意を込め、新しい経営方針「Deliver with WOW!」を定め、将来のありたい姿を「真のグローバルサプライヤーとして社会から必要とされる企業」とし、海外市場に目を向けた地理的拡大、独自技術の強みを活かした新規需要の掘り起こしや周辺領域への事業拡大などを積極的に推進してまいります。
(経営方針) 「Deliver with WOW!」
・VISION2027の基本方針
①既存事業の強化・拡大
②事業領域の拡大
③経営基盤の強化
・2027年度の定量的ビジョン
売上高 180,000百万円、営業利益 18,000百万円、営業利益率 10%
・進むべき事業領域
(ⅰ)ARPRO事業、(ⅱ)建築住宅断熱材、(ⅲ)フラットパネルディスプレイ表面保護材、(ⅳ)新たな事業領域(新規事業創出及びM&Aとして売上高30,000百万円規模を目指します)の4つの成長エンジンを、今後の進むべき事業領域として位置付けました。
b.中期経営計画「Change for Growth 2026」(第67期~第69期)について
第67期から第69期を実行期間とする中期経営計画「Change for Growth 2026」では、「グループ全体の収益力強化」を基本コンセプトの第一に掲げ、市場環境の変化のみに頼らない主体的な持続的成長を目指すと同時に、資本効率を意識した経営を実施してまいります。また、前中期経営計画において推進してきたサステナビリティ経営を更に突き詰める必要があります。カーボンニュートラルに向けた世界的気運の更なる高まり、人的資本への対応など、非財務分野への更なる対応に関する社会的要求が高まっていることは周知のとおりです。また、環境対応力の高さを今後の成長の源泉として位置付けており、循環型経済への転換を積極的に推進していきます。また、「経営基盤の強化」として、前中期経営計画において人事制度の見直しを検討してきました。2024年度より、当社は新人事制度として、年齢や勤続年数を重視した制度から、職責や期待する役割・能力を重視した制度へ移行し、運用が始まりました。多様化するキャリアパスへの対応や専門性が活かされる仕組み作りを含め、「働きがいのある企業風土の醸成」に取り組みます。
・基本コンセプト
「グループ全体の収益力強化」
「発泡樹脂製品による社会への貢献」*
「経営基盤の強化」
① 人材育成の強化
② 労働安全と環境保全
③ コーポレート・ガバナンスの強化
④ 情報システム基盤の強化
⑤ 働きがいのある企業風土の醸成
⑥ 人材の多様性
*「発泡樹脂製品による社会への貢献」とは、前中期経営計画における基本コンセプトの一つ「経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと提供価値を拡大」と同じ考え方です。
・最終年度/第69期(2027年3月期)の定量目標と前提条件
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<定量目標> |
売上高 160,000百万円、営業利益 10,000百万円、営業利益率 6.3% |
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|
<前提条件> |
為替 |
:140円/米ドル、150円/ユーロ、20.0円/人民元 |
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原油価格(ドバイ) |
:90米ドル/バーレル |
(要約セグメント情報)
(単位:百万円)
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事業の種類 |
第66期 実績 |
第69期 中期計画 |
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売上高 |
営業利益 |
売上高 |
営業利益 |
|
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押出事業 |
41,956 |
2,078 |
54,000 |
2,600 |
|
ビーズ事業 |
87,294 |
6,542 |
106,000 |
8,600 |
|
その他 |
5,800 |
82 |
- |
- |
|
計 |
135,051 |
8,703 |
160,000 |
11,200 |
|
調整額 |
- |
△1,139 |
- |
△1,200 |
|
合計 |
135,051 |
7,563 |
160,000 |
10,000 |
(注)第67期(2025年3月期)より、セグメント情報の「その他」は、人材と資産活用の観点から親和性の高い「押出事業」と統合します。
・設備投資計画
持続的成長及び収益性強化を目的とした戦略的投資として、メキシコのラモス・アリスペ工場の新設、インドのプネ工場の新設、チェコのヘブ工場の生産能力増強などARPRO生産能力増強のほか、自動化、省力化、省エネ化など合理化効果の高い設備投資を積極的に行います。3年間で30,000百万円の設備投資を計画しております。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 成長戦略の推進における課題
・長期ビジョン『VISION2027』では、当社グループの進むべき事業領域を(ⅰ)ARPRO事業、(ⅱ)建築住宅断熱材、(ⅲ)フラットパネルディスプレイ表面保護材、(ⅳ)新たな事業領域(新規事業創出及びM&A)の4つとし、中期経営計画「Change for Growth 2026」(第67期~第69期)においても定量目標を設定し取り組んでおります。
(ⅰ)ARPRO事業(*1)
自動車生産台数の成長が鈍化していることから、引き続きHVAC(*2)関連部品や輸送用通い函など非自動車部品分野への用途拡大を目指します。また、リサイクル材への需要の高まりとARPROのグローバル対応力、開発・提案力における優位性により市場シェア拡大を目指します。
*1 従来は、「自動車部品分野」としておりましたが、発泡ポリプロピレン事業は、製品名をARPROに統一したため、ARPRO事業としました。
*2 空調システムを指します。Heating(暖房)、Ventilation(換気)、Air Conditioning(空調)。
(ⅱ)建築住宅断熱材(*3)
住宅着工件数が伸び悩む中で、伸び筋分野であるミラフォームラムダやプレカット品などの高付加価値製品の拡販により収益性向上を目指します。
*3 中期経営計画より高付加価値製品の増加率で目標設定しています。
(ⅲ)フラットパネルディスプレイ表面保護材
前中期経営計画では1年目(2021年度)で販売目標を達成しましたが、2年目以降はテレワーク等による特需終了に伴う生産調整により販売は低調に推移し、その後需要は持ち直し堅調に推移しました。需要動向に対応するとともに、顧客要求に対する技術提案力と新規顧客獲得によりさらなる増販を目指します。
(ⅳ)新たな事業領域
出資する射出成形事業会社の売上規模拡大と国内開発案件(ブロー品等)の事業化に向けた取り組みを推進します。
② 収益性改善における課題
・2025年3月期は、国内においては、ベンゼン価格の上昇や円安の影響に伴う主原料であるスチレンモノマーやポリスチレンの価格上昇に加え、原料メーカーの労務費、生産設備維持費用、環境対応費用、物流コストの上昇による価格転嫁の圧力が高まっており、製品価格の改定を適正に行い、収益性を維持・改善することが課題です。また、グループ全体の課題として、労務費や修繕消耗費の上昇が懸念されており、コスト削減や収益性の高い製品比率を高める必要があり、同様に製品価格の改定を適正に行うことが課題です。
③ 中期経営計画の基本コンセプトに関わる課題
・「グループ全体の収益力強化」として、資本コストと株価を意識した取り組みを重要視しています。資本収益性と財務健全性を両立した資本構成に向け、バランスシートのコントロールを意識した運営を課題と認識しています。
・海洋プラスチック問題やパリ協定、ESG課題への注目を背景として、プラスチックリサイクル、他素材への転換、脱プラスチックなどの動きが活発化しており、今後さらに資源循環を追求する動きが加速すると想定しております。これらの動きに対し、当社グループは、「発泡樹脂製品による社会への貢献」を基本コンセプトの一つとして、環境対応型製品による貢献やプラスチック資源循環への貢献により、顧客や社会の課題解決に向けて取り組んでまいります。
・2024年度より、当社は新人事制度の運用が始まりました。年齢や勤続年数を重視した制度から、職責や期待する役割・能力を重視した制度へ移行しました。多様化するキャリアパスへの対応や専門性が活かされる仕組み作りを含め、「働きがいのある企業風土の醸成」を重要課題と捉えております。
・「経営基盤の強化」の中で、重要課題と認識している事項は「情報システム基盤の強化」です。生産工程における自動化や省力化においてもデジタル化が必要であり、セキュリティ強化も同時に行います。
④ その他の課題
・物流の2024年問題への対応を機会と捉え、効率的な配送体制への移行や物流費低減に取り組みます。
・少子高齢化に伴う労働人口の不足、デジタル革命が進む中で専門性の高い特定分野の人材不足など、適時に人材を確保することが年々厳しくなっております。組織の活性化・効率化を推進するとともに、人的資本経営を意識した人材育成システムの充実化を図り、グローバル企業として更なる組織強化に努めてまいります。また、生産工程の短縮、製造ラインの自動化などの対策を実施することで、人手不足解消に努めてまいります。
・IR情報の発信力強化と投資家とのさらなる対話を推進します。
・研究開発と新事業開発の連携を強化し、基礎技術や社外技術の事業化を推進します。
(1) サステナビリティに関する考え方及び取組
当社グループは、サステナビリティ経営により、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと提供価値を拡大することで、社会に必要な企業として、ステークホルダーからの理解及び信頼並びに共感を獲得するということを基本コンセプトとしています。当社グループは、「創造的行動力による社会への貢献」の企業理念に基づき、環境・社会・企業統治の各要素を当社グループの経営諸活動に織り込むことで、リスクの減少と収益機会の獲得を図り、当社グループのビジネスモデルの持続可能性を高めることで、更なる企業価値の向上に取り組んでいます。
① ガバナンス及びリスク管理
当社グループでは、全社サステナビリティ推進体制によりサステナビリティ対応に取り組んでいます。社長を議長とする取締役会が、経営諸活動におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会について監督を行い、ガバナンスの役割を担っています。また執行役員会が経営諸活動におけるサステナビリティ関連のリスク及び機会を管理する役割を担い、対応の検討と決定を実施しています。
執行役員会の諮問機関であるサステナビリティ推進専門委員会は、リスク・コンプライアンス委員会及び事業部並びにコーポレート組織と連携を取りながら、経営諸活動に対し重要な影響を与えるサステナビリティ上のリスクと機会について識別・評価し、当社グループのとるべき方針、施策について検討を行い、その結果を執行役員会及び取締役会に報告しています。
② 戦略
当社グループのサステナビリティ基本方針は、「創造的行動力による社会への貢献」を企業理念として、環境・社会・企業統治の各要素における企業責任を強く意識し、持続的な企業価値の向上を目指すことです。当社グループはサステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)を定めることにより、経営戦略にサステナビリティ課題への対応を織り込み、戦略を実行しています。
*当社グループのマテリアリティ一覧表*
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要素 |
マテリアリティ |
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CSV(共通価値の創造) |
1.環境対応型製品による貢献 2.プラスチック資源循環への貢献 3.気候変動緩和への貢献 4.食と健康への貢献 5.安全への貢献 |
|
E(環境) |
1.地球環境保全への対応 |
|
S(社会) |
1.人材育成の強化 2.働きがいのある企業風土の醸成 3.労働安全 4.情報システム基盤の強化 5.人材の多様性 |
|
G(企業統治) |
1.コーポレート・ガバナンスの強化 |
③ 指標及び目標
マテリアリティのうち「環境対応型製品による貢献」は、2026年度の目標として、ARPRO事業の販売数量を対2023年度比23%増、建築住宅断熱材の販売数量を対2023年度比15%増など各事業部で開発・拡販をより積極的に推進していきます。またマテリアリティのうち「気候変動緩和への貢献」の指標及び目標については「
(2) 気候変動に関する考え方及び取組
グローバル化による経済発展の一方、気候変動等の環境問題は、我々の生活を含め、地球、動植物に様々な影響を及ぼしております。当社グループは「創造的行動力による社会への貢献」の企業理念に基づき、グローバル企業として環境に関する大きな責任を率先して引き受け、2050年までのカーボンニュートラルの達成を目指し、当社グループの技術力により、リサイクル・環境負荷低減・バイオ由来の製品開発を促進し、環境と社会に配慮した製品を提供することで、サステナビリティ社会の実現に向けて貢献します。
① ガバナンス及びリスク管理
当社グループの気候変動に関するガバナンス及びリスク管理は、「
② 戦略
当社グループの気候変動に関する戦略は、シナリオ分析の実施により策定しています。当社グループはシナリオとして、世界の平均気温上昇が産業革命以前に比べて1.5℃に抑制するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、世界の平均気温が産業革命以前に比べて4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)を用いています。またシナリオに基づき分析されたリスクと機会から理論上導出されるビジネスモデルにおける影響の評価及び対応策について検討しています。
*当社グループの気候変動における戦略*
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戦略1 |
環境対応型製品のよりいっそうの普及により、気候変動緩和に貢献する |
|
戦略2 |
リサイクル活動の推進により、プラスチック資源の循環に貢献する |
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戦略3 |
温室効果ガス(以下、GHG)排出削減とエネルギーの効率的利用により、気候変動緩和に貢献する |
*1.5℃シナリオにおける移行リスクと機会の一覧表*
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移行リスク |
影響評価 |
対応策 |
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政策 |
炭素価格の上昇 |
操業コストの増大 |
省エネ推進によるGHG排出量削減 |
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再生エネルギー導入の促進 |
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物流最適によるGHG排出量削減 |
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再生資源の使用割合基準の導入 |
再生原料争奪によるコスト増大 |
再生原料購入の分散化 |
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再生原料使用製品の開発強化 |
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技術 |
競合素材との競争激化 |
既存製品の収益悪化 |
マテリアル・リサイクルの更なる促進 |
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業界団体としてのケミカル・リサイクルへの取り組み |
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環境負荷(GHG排出量、水使用量等)の評価低減と情報発信 |
|||
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バイオ由来製品開発の促進 |
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市場・評判 |
原料価格の急激な変動、化石由来原料へのネガティブイメージの形成 |
既存事業の収益悪化 |
マテリアル・リサイクルの更なる促進 |
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気候変動対応製品によるGHG排出量削減情報の発信強化 |
|||
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環境貢献製品の情報発信強化 |
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|
製品LCAの算定と情報発信強化 |
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リサイクルチェーンの構築強化 |
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機会 |
機会獲得製品 |
|
住宅の省エネルギーに貢献する製品需要増加 |
ミラフォーム、ミラフォームラムダ |
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リサイクル関連製品市場の拡大 |
ARPRO RE、ARPRO RE OCEAN、ARPRO REvolution |
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EV市場拡大に伴う軽量部材の需要増大 |
ARPRO、ARPRO LC |
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バイオ由来製品需要の増加 |
ミラブロック-Bio、LACTIF、ミラマットA-Bio |
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効率的・拠点連携型都市における省エネ工事・短縮工期需要増加 |
J-ウォールブロック |
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フォームサポート工法 |
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三層緩衝構造 |
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スチロダイアブロック |
*4℃シナリオにおける物理的リスクと機会の一覧表*
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物理的リスク |
影響評価 |
対応策 |
|
気温上昇に伴う気象災害の激甚化 |
工場操業への影響拡大 |
BCP整備 |
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浸水防御壁等の災害対策整備 |
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気象被災に対する付保 |
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輸送への影響拡大 |
原料購入の分散化 |
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渇水 |
工場操業への影響拡大 |
水使用量削減・循環による製造方法の構築強化 |
|
機会 |
機会獲得製品 |
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気象災害被害の回復貢献としての土木建築需要増加 災害対策強化としての土木補強、長寿命化需要の増加 |
J-ウォールブロック |
|
三層緩衝構造 |
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|
スチロダイアブロック |
③ 指標及び目標
GHG排出量削減は、グローバル企業の責任において、当社グループを対象に指標及び目標を掲げております。
なお、2050年のカーボンニュートラルの達成のためには、日本が現在技術確立に取り組んでいるCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage.CO2を回収し大気中に放出させないための回収・有効利用・貯蓄の技術)が社会に実装され、また各電力会社が化石燃料からGHGを排出しない非化石燃料に電源を変更する等の前提があることを付記します。
*GHG排出量の実績及び計画 JSPグループの Scope1+Scope2*
(単位:t-CO2)
|
年度 |
2013年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2030年度 計画 |
|
GHG排出量 |
|
|
|
186,505 |
*GHG排出削減の実績及び目標 JSPグループの Scope1+Scope2*
|
年度 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2030年度 目標 |
2050年度 目標 |
|
GHG削減率 2013年度実績比 |
10.5%減 |
18.2%減 |
15%減以上 |
実質ゼロ |
|
原単位GHG削減率 2013年度実績比 ※ |
13.3%減 |
18.2%減 |
30%減以上 |
※ 原単位 = 年GHG排出量(t-CO2)÷ 年販売数量(t)
(3) 人的資本に関する考え方及び取組
当社グループは、人的資本を経済的価値と社会的価値の創出のための源泉と位置付けています。経営方針「Deliver with WOW!」で示すように、「社員一人ひとりがワクワク感を持って仕事をする」ことが創造的な行動力となり、「顧客と消費者に感動を届ける」こと、また「株主と地域社会に満足を届ける」ことを果たすことで、長期ビジョンである『VISION2027』「真のグローバルサプライヤーとして社会から必要とされる企業」となり、企業理念である「創造的行動力による社会への貢献」を実現します。
① ガバナンス及びリスク管理
当社グループの人的資本に関するガバナンス及びリスク管理は、「(1)サステナビリティに関する考え方及び取組 ①ガバナンス及びリスク管理」と同じです。
② 戦略
人材育成方針として、企業の発展には、社員一人ひとりの成長が欠かせないと考え、新卒及びキャリア採用者に対する入社研修をはじめ、若手中堅社員研修及び主任研修を実施しています。また、部下がワクワク感をもって仕事をし、活躍する組織にするためには、中間管理職及び上級管理職に対するマネジメントのスキルアップを目的とした、階層教育、研修機会の充実による人材育成の強化が重要と考えています。
社内環境整備として、育児と仕事の両立のため、男性育児休暇の取得率を上げていくこと、個人のキャリアパスを考慮した人材配置に努めることでエンゲージメントの向上を図り、働きがいを感じられる企業風土を醸成していきます。
職場環境として、災害の発生がなく従業員が安心して働ける職場づくり、従業員のメンタルヘルスケア等、労働安全に努めています。
男性/女性、若手/高齢者、キャリア採用、障がい者等、全ての従業員が活躍し続けられるよう、多様な人材を採用・雇用していきます。
③ 指標及び目標
サステナビリティ経営において人的資本を重要事項として位置付け、マテリアリティを定めています。人的資本に関するマテリアリティは、「人材育成の強化」、「働きがいのある企業風土の醸成」、「労働安全」、「人材の多様性」であり、指標及び中期経営計画「Change for Growth 2026」(第67期~第69期)の最終目標並びに2023年度の実績は以下のとおりです。
*人的資本に関するマテリアリティの指標及び目標*
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マテリアリティ |
項目 |
指標 |
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2023年度実績 |
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人材育成の強化 |
研修と教育の充実 (JSP単体)※1 |
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2023年度 実績比 |
33百万円 |
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働きがいのある 企業風土の醸成 |
男性育児休暇取得の推進 (JSP単体)※1 |
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エンゲージメントの向上 (JSP単体)※1 |
エンゲージメント 指数 |
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労働安全 |
休業災害の未然防止 |
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人材の多様性 |
女性管理職登用の推進 (JSP単体)※1 |
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キャリア採用の維持推進 (JSP単体)※1 |
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維持推進 |
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障がい者雇用の維持推進 (JSP単体及び特例子会社のJSPモールディング(株))※1 |
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※1 当該指標及び目標は、各連結子会社の規模・制度が異なり、統一的な指標及び目標を設定することが困難であるため、2023年度については、当社単体の記載としております。
※2 障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第7項により報告した2023年6月1日時点の障害者雇用状況報告書に基づいております。
当社グループは毎年リスクアセスメントを実施し、リスクの特定、分析、評価を行い、リスク顕在化の未然防止及び低減に努めております。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性がある主要な事業等のリスクは以下のとおりであります。これらの事業等のリスクは、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、全てのリスクを網羅したものではなく、リスクアセスメントの結果を加味して投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しております。
(1) 事業(外部)環境に関するリスク
① 主要市場環境の変化
当社グループは、2024年度から2026年度の3ヶ年を実行期間とする中期経営計画「Change for Growth 2026」を本年4月よりスタートしました。本計画の対象期間は、10年スパンのありたい姿を定めた長期ビジョン『VISION2027』の最終段階であり、ありたい姿である「真のグローバルサプライヤーとして社会から必要とされる企業」の実現に向け、大きな転換期とする3ヶ年であると認識しております。
本計画では、基本コンセプトのひとつの柱として「グループ全体の収益力の強化」を掲げ、事業領域の拡大、事業地域の拡大を目指してまいります。前中期経営計画に引き続き、「ARPRO事業」「建築住宅断熱材」「フラットパネルディスプレイ表面保護材」を持続的成長の原動力として位置付け、数量拡大に加え高付加価値製品の販売に注力することで利益率向上を図り収益拡大を目指す計画としておりますが、需要や経済情勢、技術動向、法規制の改定等、様々な要因による市場環境の変化によっては計画どおりに進まない可能性があります。
当社グループは、市場環境の変化に対応するため、上記既存事業に加え新しい事業領域への展開を進めてまいります。また、環境問題への意識の高まりに対し、サステナビリティ経営に軸足を置いた変革戦略を進め、循環型経済に対応した製品とサービスの提供に努めてまいります。
② 海外事業展開に関するリスク
当社グループは、北米、南米、欧州、アジアの各地域で広く事業を展開しておりますが、各地域の政治的または経済的要因、環境規制等による投資許可、移転価格税制上の問題、社会情勢の変化や各種規制の動向、労働争議、人材確保の困難さ、為替レートの変動等が各地域の事業活動に支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、当社グローバル事業部が各拠点のPDCAサイクルを管理することでリスク低減に努めております。また、グループガバナンス強化として内部統制機能の更なる充実化を図ってまいります。
③ 価格競争の激化
当社グループの製品群はライフサイクルの長いものもあり、多くの製品は厳しい価格競争に晒されています。特にアジア地域では、現地企業の参入や台頭など様々な要因により今後も厳しい価格競争が予想されます。
当社グループは、コスト低減に注力するとともに、高付加価値製品シフトによる競合優位性を維持拡大することで適正な利益率の確保に努めてまいります。
④ 原燃料価格等の変動
当社グループの使用する原料や燃料は、原油及びナフサ価格の変動に大きく影響されるため、価格が大きく変動することがあります。当社グループの場合、原燃料価格が上昇する局面において、製品価格への反映の遅れなどにより業績の悪化を招き易い傾向にあります。
2024年度は、一昨年来の地政学的リスクの高まりを背景とした原油相場の急激な高騰は落ち着きを見せるものの、引き続き原油価格は高値圏で底堅い展開が続くと予想されます。また、いわゆる物流の2024年問題をはじめとして物価上昇コストに伴う取引先との値上げ交渉を引き続き進めておりますが、製品価格への全面的な反映が想定よりも遅れる可能性があります。
当社グループは、原燃料価格変動に影響を受けない経営基盤構築として、適時に製品価格に反映するため取引先との価格のフォーミュラ化を検討するとともに、コスト低減に努めてまいります。
(2) 事業運営に関するリスク
① 人材の確保について
少子高齢化に伴う労働人口の不足、デジタル革命が進む中で専門性の高い特定分野の人材不足など、適時に人材を確保することが年々厳しくなっております。また、人手不足は生産・物流面でコストアップの大きな要因になりつつあり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、長期ビジョン『VISION2027』の基本方針「経営基盤の強化」の中で、人材育成を経営の重要課題のひとつとして捉え、人材育成システムの充実化を図り、グローバル企業として更なる組織強化に努めてまいります。また、生産工程の短縮、製造ラインの自動化などの対策を実施することで、人手不足解消に努めてまいります。
なお、人的資本に関する具体的な取り組みについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
② 感染症拡大(パンデミック)に関するリスク
感染症や伝染病などの拡大に伴い、当社グループの従業員が感染し従業員同士の接触等により社内での感染が拡大した場合には、工場における生産及び出荷に支障をきたし、ある一定期間操業を停止する可能性があります。また、当社グループの工場が稼働可能であっても、原料の供給が停止する場合など、サプライチェーンに問題が生じると操業停止にせざるを得ない状況となるリスクがあります。
新型コロナウイルスは、流行がはじまって3年以上を経過してようやくほぼ収束したものと認識しておりますが、今後も拡大する可能性はあり一定の感染対策は継続してまいります。また、新たな感染症拡大に備え、事業継続計画(BCP)の観点から本社機能の継続を想定した対策を整備しております。
③ 知的財産権について
当社グループは、国際的な特許権をはじめとして知的財産を多く保有しておりますが、これらを保護することは将来の利益確保の面でも重要です。他社から侵害を受けたり他社との間で紛争が生じたりする場合には、事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、このリスクを回避すべく知的財産管理の統括部署である当社知的財産ユニットを中心として国内外で体制強化に努めております。
④ 品質保証について
当社グループはメーカーとして、予期せぬ品質欠陥の発生や製造物責任訴訟のリスクが想定されます。当社グループの製品は、食品容器、自動車部品、建築住宅断熱材など最終製品の部材として使用されるものが多く、品質欠陥により顧客において甚大な損害につながる可能性があります。
当社グループは、各工場で品質マネジメントシステムの認証取得を積極的に進めるなど、品質保証体制強化に努めております。
⑤ 固定資産の減損について
当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2024年3月期において、ビーズ事業に属する当社EPS事業の資産グループ及び国内連結子会社の資産グループの営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっていることから減損の兆候を識別しました。当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額を帳簿価額と比較した結果、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を上回ったため、減損損失の認識は不要と判断いたしました。この詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
今後、市場環境等の変化により、実際の結果が異なった場合又は、前提条件に変化が生じた場合には、翌連結会計年度において、減損損失を認識する可能性があります。
当社グループは、重要な投資に関して、当初計画から大きく乖離していないかを確認するため経営幹部の出席する主要会議で報告を求めるなど、定期的なモニタリングを実施しております。
⑥ 情報セキュリティ・情報管理について
IT技術が高度に進化する中で、予期できない水準の情報システム基盤や通信回線の重大な障害、あるいは経営に関わる機密情報の破壊・窃取が発生する可能性は完全に排除することはできません。
当社グループは、情報システムの安全性及び情報セキュリティ強化のため、関連規程を整備し、保有する情報及び情報システムにおける機密性、完全性及び可用性の確保に努めるとともに、リスク管理水準を改善するための指針を継続的に示して情報漏えい等のリスクを管理しております。また、外部からの当社グループの情報システムに対する攻撃への対応や非常時を想定した定期的な訓練を実施しております。
⑦ コンプライアンス・内部統制について
当社グループはグローバルに事業を展開する中で、世界各地域の法規制が変更されることによりその遵守が困難となり、将来にわたって法令違反が発生する可能性は皆無ではなく、その遵守のための新たな費用発生や事業活動が制限される可能性があります。
当社グループは、コンプライアンスをはじめとする適切な内部統制の重要性を認識し、そのシステムを構築し運用しております。具体的には、国内外共通の企業行動準則を定めその周知徹底を図る他、グループ社員全員が利用できる内部通報制度を整備するなど、コンプライアンス体制強化に努めております。
(3) 環境・安全等に関するリスク
① 自然災害・事故災害について
当社グループは、国内外に多数の製造工場を有しており、工場における事故・労働災害、外部倉庫・製品輸送における事故、自然災害による生産設備への被害などが発生する可能性があります。
自然災害の中で最も影響が大きいと予想される地震災害について、発生確率が高いとされる南海トラフの巨大地震が発生した場合、当社四日市地区の工場などがその影響を受け、多大な損害を被る可能性があります。当社グループは、地震保険に加入しリスクの顕在化に備えております。
当社グループは、無事故無災害、安定供給を目標として安全確保に努めております。また地震、大雨、洪水等の自然災害に対しては、災害対策マニュアルや事業継続計画(BCP)の策定、社員安否確認システムの運用、防災訓練などの対策を実施しております。
② プラスチックの環境問題について
当社グループは、省資源・省エネルギーなど地球エネルギー資源の保護及び地球環境への配慮を基本としており、主に発泡プラスチックの機能性・利便性を通じて、社会や市場からの要求に応えております。一方で、プラスチックは不適切な処理により海洋ゴミになり、グローバルな社会問題となっています。また、パリ協定、SDGs、ESG課題への注目を背景として、プラスチックリサイクル、他素材への転換、脱プラスチックなどの動きが活発化しています。特に、欧州においてサーキュラー・エコノミーの動きが進展しており、今後さらに資源循環を追求する動きが加速すると想定しております。これらの動きに対し、対応が不十分あるいは遅れた場合には当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
プラスチックの環境問題は、当社グループが取り組むべき重要課題(マテリアリティ)のひとつであると認識しており、環境対応型製品による社会への貢献、また廃プラスチックのマテリアルリサイクル、サーマルリサイクル、再生原料の使用などの取組みを積極的に進めております。
なお、当社グループは、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会やシナリオ分析、戦略、指標、目標について、当社のサステナビリティ推進体制において審議し、これを取締役会において承認しています。シナリオ分析を通じて、気候変動によるリスクを低減するとともに、リスクを事業上の機会とできるよう当社グループの事業に則した戦略を推進してまいります。気候変動に関する具体的な取り組みについては、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化、物価上昇とインフレ抑制のための金融引締め、中国経済の成長鈍化などにより景気の減速感が強まりました。日本経済は、新型コロナウイルス感染症が感染症法上の5類への移行に伴う制限緩和などにより個人消費などが持ち直し、緩やかな回復基調となりましたが、物価上昇や海外需要の生産・輸出への影響、金融資本市場の変動などから先行き不透明な状況となりました。
国内発泡プラスチック業界におきましては、物価上昇による影響があり、水産・農業分野向けなどでは需要の回復は足踏み状態となりましたが、自動車分野向けでは半導体などの部品供給不足の緩和もあり回復傾向となりました。
このような状況のもと当社グループは、最終年度となる中期経営計画「Change for Growth」の目標達成に向け、変革戦略を推進し、資本収益性や成長性の向上、環境対応型製品やプラスチック資源循環でのサステナビリティ経営など、企業価値向上に取り組みました。
当社グループの経営成績は、海外での販売増加や製品価格改定などにより売上高は前期を上回りました。営業利益は、売上の増加やコスト削減などから前期を上回りました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高は、135,051百万円(前期比2.5%増)となりました。利益面では、営業利益は7,563百万円(同155.9%増)、経常利益は8,127百万円(同141.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,391百万円(同152.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりであります。
(押出事業)
食品容器用の発泡ポリスチレンシート「スチレンペーパー」を中心とした生活資材製品は、食品トレー向け分野に加え、広告宣伝用ディスプレイ材「ミラボード」の販売も減少したことから売上は減少しました。
産業用包装材やフラットパネルディスプレイ向けの発泡ポリエチレンシート「ミラマット」を中心とした産業資材製品は、付加価値の高い製品の販売は回復傾向となったものの減少し、汎用製品も減少したことから売上は減少しました。
発泡ポリスチレン押出ボード「ミラフォーム」を中心とした建築土木資材製品は、建築・住宅分野向けの販売は前期並みとなり、土木分野向けは減少しましたが、製品価格改定や付加価値の高い製品の販売が増加したことから売上は増加しました。
押出事業全体としては、製品価格改定は進めたものの販売が減少したことから売上は減少しました。利益面では、ユーティリティコスト高騰の影響はありましたが、付加価値の高い製品の販売増加やコスト削減により増益となりました。
これらの結果、押出事業の売上高は41,956百万円(前期比1.1%減)、営業利益は2,078百万円(同17.6%増)となりました。
(ビーズ事業)
世界各国で製造販売している発泡ポリプロピレン「ARPRO」を中心とした高機能材製品は、自動車分野・非自動車分野とも販売が底堅く推移したことなどにより売上は増加しました。
地域ごとの販売数量概況は、国内では、自動車分野は増加しましたがハイブリッド成形品「FOAMCORE」などは減少し前期並みでした。北米では、通い函や競技用グラウンド基礎緩衝材などが好調に推移し増加しました。南米では、自動車分野が増加しました。欧州では、HVAC向けなどが好調に推移し増加しました。中国では、自動車分野は回復傾向となりましたが包装材分野が好調であった前期からは減少しました。東南アジア及び台湾では、包装材分野が減少しました。
発泡性ポリスチレン「スチロダイア」を中心とした発泡性ビーズ製品は、水産・農業分野などでの需要の影響により販売が減少したことから売上は減少しました。
ビーズ事業全体としては、販売は減少しましたが高機能材製品の販売増加や製品価格改定により売上は増加しました。利益面では、ユーティリティコストや人件費高騰の影響はありましたが、売上の増加やコスト削減により増益となりました。
これらの結果、ビーズ事業の売上高は87,294百万円(前期比5.5%増)、営業利益は6,542百万円(同220.9%増)となりました。
(その他)
一般包材は、国内では、自動車部品輸送関連等の需要の影響により売上は減少しました。中国では、各種部品関連の需要が低調に推移したことにより売上は減少しました。
これらの結果、その他の売上高は5,800百万円(前期比10.9%減)、営業利益は82百万円(同50.6%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ7,077百万円増加し151,605百万円となりました。
流動資産は、4,333百万円増加し78,155百万円となりました。増加の主な要因は、現金及び預金が1,295百万円、電子記録債権が1,637百万円増加したことなどによるものです。
固定資産は、2,743百万円増加し73,449百万円となりました。増加の主な要因は、機械装置及び運搬具(純額)が1,054百万円増加したことなどによるものです。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ3,131百万円増加し51,536百万円となりました。
流動負債は、678百万円減少し35,765百万円となりました。減少の主な要因は、支払手形及び買掛金が1,035百万円、1年内返済予定の長期借入金が1,191百万円増加したものの、短期借入金が4,378百万円減少したことなどによるものです。
固定負債は、3,809百万円増加し15,770百万円となりました。増加の主な要因は、長期借入金が3,044百万円増加したことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末の純資産合計は100,069百万円、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ0.7ポイント減少し62.8%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、増加要因である税金等調整前当期純利益8,796百万円、減価償却費7,632百万円などに対し、減少要因である売上債権の増加額1,397百万円、法人税等の支払額1,380百万円などにより、差引き15,665百万円の収入(前期比6,940百万円増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出6,749百万円などにより、8,056百万円の支出(同1,577百万円増加)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に自己株式の取得資金調達に伴う長期借入れによる収入9,000百万円に対し、短期借入金の純減少額4,477百万円、主に営業活動によるキャッシュ・フローによる収入を充当した長期借入金の返済による支出4,842百万円、自己株式の取得による支出6,061百万円、配当金の支払額1,490百万円などにより、差引き8,449百万円の支出(前期は1,016百万円の収入)となりました。
これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ43百万円減少し、14,653百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比(%) |
|
押出事業 |
38,916 |
△4.1 |
|
ビーズ事業 |
73,767 |
7.8 |
|
報告セグメント計 |
112,684 |
3.4 |
|
その他 |
873 |
△30.4 |
|
合計 |
113,557 |
3.0 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 金額は平均販売価格により算出しております。
b.受注実績
当社グループは原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比(%) |
|
押出事業 |
41,956 |
△1.1 |
|
ビーズ事業 |
87,294 |
5.5 |
|
報告セグメント計 |
129,251 |
3.2 |
|
その他 |
5,800 |
△10.9 |
|
合計 |
135,051 |
2.5 |
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.当社グループの当連結会計年度の経営成績等の分析・検討
当社グループの当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載したとおりであります。それを踏まえ、次のとおり事業全体及びセグメントごとの経営成績等に重要な影響を与えた要因や当該要因への対応について分析・検討を行っております。
(単位:百万円)
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
前期比(%) |
|
売上高 |
131,714 |
135,051 |
102.5 |
|
営業利益 |
2,956 |
7,563 |
255.9 |
|
経常利益 |
3,363 |
8,127 |
241.7 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
2,531 |
6,391 |
252.5 |
前期と比較した、当連結会計年度の売上高及び利益の主な定性的増減要因は、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載したとおりであります。なお、営業利益における定量的な増減要因として、主な前期比増加要因は、前期からの原材料価格の上昇に対応した販売単価の見直し(7,370百万円)及び当期における原材料価格の下落や合理化効果による変動費単価の良化(2,510百万円)であります。一方減少要因は、国内において生活資材製品、産業資材製品、発泡性ビーズ製品の需要低調による販売数量の減少(△1,510百万円)、製造労務費や修繕消耗費の増加などによる悪化(△3,760百万円)などであり、4,607百万円の増益となりました。
今期は、国内においては、ベンゼン価格の上昇や円安の影響に伴う主原料であるスチレンモノマーやポリスチレンの価格上昇に加え、原料メーカーの労務費、生産設備維持費用、環境対応費用、物流コストの上昇による価格転嫁の圧力が高まっており、製品価格の改定を適正に行い、収益性を維持・改善を図ります。また、グループ全体としても、労務費や修繕消耗費の上昇が懸念されており、コスト削減や収益性の高い製品比率の向上に努めます。
中期的な課題への対応としては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、「グループ全体の収益力強化」を基本コンセプトの第一に掲げ、市場環境の変化のみに頼らない主体的な持続的成長を目指すと同時に、資本効率を意識した経営を実施してまいります。
セグメントごとの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(押出事業)
(単位:百万円)
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
前期比(%) |
|
売上高 |
42,443 |
41,956 |
98.9 |
|
営業利益 |
1,767 |
2,078 |
117.6 |
食品容器用の発泡ポリスチレンシート「スチレンペーパー」を中心とした生活資材製品は、環境対応型製品の上市により需要拡大を図ります。
発泡ポリエチレンシート「ミラマット」を中心とした産業資材製品は、液晶パネルの生産調整などにより需要が低調となり、その後の回復は緩やかですが、技術提案力を活かし、市場ニーズに対応した高付加価値製品の開発により拡販を目指します。
発泡ポリスチレン押出ボード「ミラフォーム」を中心とした建築土木資材製品については、建築・住宅分野向けの販売は前期並みとなり、土木分野向けは減少しました。土木資材製品は需要増加が期待されており、またミラフォームラムダやプレカット品などの高付加価値製品の拡販を図ります。
(ビーズ事業)
(単位:百万円)
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
前期比(%) |
|
売上高 |
82,761 |
87,294 |
105.5 |
|
営業利益 |
2,038 |
6,542 |
320.9 |
「ARPRO」を中心とした高機能材製品は、グローバル対応力や開発・提案力といったブランド戦略を推進し、サステナビリティ経営に則し、省エネ・軽量化やリサイクルなど各地域の市場の要求に対応した次世代製品を投入し、マーケットシェアの維持拡大と顧客満足度の最大化を図ります。また、全世界の自動車生産台数の成長が不透明であるため、非自動車部品分野への拡販にも注力します。
「スチロダイア」を代表とする発泡性ビーズ製品については、水産・農業分野などでの需要の影響により販売が減少したことから売上は減少しました。利益については、製品価格改定を実施したこと、またコスト削減により前期並みとなりました。更なるコスト削減により収益性の改善を図ります。
(その他)
(単位:百万円)
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
前期比(%) |
|
売上高 |
6,508 |
5,800 |
89.1 |
|
営業利益 |
166 |
82 |
49.4 |
一般包材は、国内では、自動車部品輸送関連等の需要の影響により売上は減少しました。中国では、各種部品関連の需要が低調に推移したことにより売上は減少しました。その他のセグメント区分は2025年3月期より人材と資産活用の観点から親和性の高い押出事業と統合しております。強みである設計企画力を活かし、包装設計段階からリサイクル・リデュース・リユース及びカーボンニュートラルを意識した製品販売を目指します。自動車・IT部品等の物流資材需要の取り込みによる売上増加により、国内及び中国にて利益向上に努めます。
b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び流動性に係る情報
当連結会計年度の財政状態及びキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②財政状態の状況及び③キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
当社グループの運転資金及び設備資金等の充当につきましては、自己資金及び金融機関からの短期及び長期の借入金を基本とし、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保しております。
また、当社グループ内において、資金の有効活用を目的とした、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)及びタームローンを実施しております。
当連結会計年度末現在、借入金残高は、長期借入金10,964百万円、1年内返済予定の長期借入金5,751百万円、短期借入金6,300百万円となっております。
なお、2025年3月期の設備投資総額は10,000百万円を計画しており、ARPROの生産能力増強として、メキシコのラモス・アリスペ工場の新設、インドのプネ工場の新設、チェコのヘブ工場の生産能力増強などのほか、自動化、省力化、省エネ化など合理化効果の高い設備投資を積極的に行います。セグメントごとの設備投資計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりであります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状態を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
(提出会社)
(1) 資本業務提携に関する契約
当社は三菱瓦斯化学株式会社との間の2015年2月4日付「資本業務提携に関する基本合意書」(以下「本基本合意書」といいます。)を、2023年12月22日付で終了しました。
三菱瓦斯化学株式会社は当社普通株式16,020,882株(所有割合:53.74%、発行済株式総数に対する割合:51.00%)を所有し、当社の筆頭株主かつ親会社に該当しておりましたが、当社は、2023年10月31日開催の取締役会において決議した、会社法第165条第3項の規定により読み替えて適用される同法第156条の規定に基づく自己株式の公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)により、三菱瓦斯化学株式会社の保有する全株式のうち3,600,000株を取得しました。この結果、三菱瓦斯化学株式会社の議決権比率は47.44%(発行済株式総数に対する割合:39.53%)となるため、本公開買付けの決済日である2023年12月22日をもって当社の親会社に該当しないこととなり、本基本合意書の定めに基づき、本基本合意書を終了しました。
なお、本基本合意書の終了により、三菱瓦斯化学株式会社との資本業務提携は解消しましたが、当社は三菱瓦斯化学株式会社との良好な取引関係を継続するとともにグループ企業価値の向上を図ってまいります。
(2) 技術供与契約
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契約締結先 |
契約年月日 |
契約内容 |
対価 |
契約期間 |
|
JSP International Group LTD. (米国) |
1985年11月18日 2009年1月1日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2013年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
JSP International S.A.R.L. (フランス) |
1985年11月18日 2017年11月28日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2017年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
JSP International de Mexico S.A.de C.V. (メキシコ) |
1985年11月18日 2009年1月1日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2013年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
Taiwan JSP Chemical Co.,LTD. (台湾) |
1992年9月10日 2017年11月7日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2017年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
Taiwan JSP Chemical Co.,LTD. (台湾) |
2016年5月1日 2019年4月25日 (改訂) |
ポリエチレン・ポリスチレン複合樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2019年4月30日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
JSP Foam Products PTE.LTD. (シンガポール) |
1996年8月1日 2009年1月1日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2011年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
|
KOSPA㈱ (韓国) |
2003年1月1日 2023年1月1日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体等の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2025年12月31日まで |
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JSP Advanced Materials (Wuxi) Co.,LTD. (中国) |
2005年7月1日 2024年1月1日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2024年12月31日まで |
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JSP International SRO (チェコ) |
2006年1月1日 2017年11月28日 (改訂) |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2017年12月31日まで 以後1年毎の自動延長 |
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JSP Advanced Materials (Dongguan) Co.,LTD. (中国) |
2012年8月1日 2024年1月1日 (改訂)
|
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2024年12月31日まで
|
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JSP Advanced Materials (Wuhan) Co.,LTD. (中国) |
2017年1月1日 2024年1月1日 (改訂)
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ポリオレフィン樹脂発泡体の製造に関する特許実施権及びノウハウの供与 |
ランニングロイヤリティ |
2024年12月31日まで
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(注) 対価として一定料率のロイヤリティを受取っております。
(3) 合弁事業関係
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契約締結先 |
契約年月日 |
契約内容 |
摘要 |
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張 仁垣 他5名 (韓国) |
1991年2月6日 |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造・販売に関する合弁事業 |
合弁会社名 KOSPA㈱ 当社出資比率 50.00% |
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冠仲投資有限公司 (台湾) |
1991年10月1日 |
ポリオレフィン樹脂発泡体の製造・販売に関する合弁事業 |
合弁会社名 Taiwan JSP Chemical Co.,LTD. 当社出資比率 90.00% |
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伊藤忠(中国)集団 有限公司 他1名 |
2002年7月15日 |
エンジニアリング・プラスチックの製造・販売に関する合弁事業 |
合弁会社名 JSP Advanced Materials (Wuxi) Co.,LTD. 当社出資比率 85.10% |
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伊藤忠商事(香港) 有限公司 |
2006年10月31日 |
高機能発泡樹脂の開発、生産、販売に関する合弁事業 |
合弁会社名 JSP Advanced Materials (Dongguan) Co.,LTD. 当社出資比率 98.35% |
当社グループは、地球エネルギー資源の保護及び地球環境への配慮をビジネス戦略に組み入れ、社会的ニーズあるいは自発的シーズに基づく体験価値をユーザとともに高める研究開発活動を、栃木県鹿沼市と三重県四日市市の二拠点体制にて進めております。研究開発は、開発部門、生産技術部門、国内外関係会社との連携、更には社外関係先との協業を図りながらグローバルな視点で行われております。また、2024年度に予定している研究体制の集約型再編により、研究開発リソースの配分最適化と社内連携強化による研究開発スピードアップを推進してまいります。
研究開発は当社グループの中核技術であるプラスチックの発泡技術と重合技術を基軸として現行製品の品質、性能の改善及び新たな高機能製品の開発に取り組んでおります。主に鹿沼地区では押出発泡技術、四日市地区ではビーズ発泡技術を駆使して新技術、新製品の開発を進めており、開発された新技術、新製品は、戦略的かつ速やかな特許出願等により知的財産権の確保に努めております。
当連結会計年度における当社グループの支出した研究開発費の総額は売上高の1.7%に相当する
セグメントごとの研究開発活動の概要は次のとおりであります。
(押出事業)
長年の信頼と実績に立脚する押出発泡技術を一層洗練し、環境対応、成長分野技術投入にてその強みを発揮できる新製品開発に取り組んでおります。
生活資材分野では、食品包装において需要が拡大している電子レンジ対応容器向けに優れたリサイクル性と耐熱性を兼備した発泡プラスチックシートを開発しております。また、従来の発泡ポリスチレンシートについても更なる軽量高剛性化に対応するよう開発を進めております。更に事業領域拡大のための食品廃棄物処理機用の微生物担持体の開発も進展しております。
産業資材分野では、被包装物の保護性能を高度化した新たな発泡ポリエチレンシートを開発しております。
建築分野では、改正建築物省エネ法によりZEHやZEB仕様の建築物の増加が見込まれ、高性能発泡ポリスチレンボード断熱材の需要が着実に増大しております。また更なる市場拡大のために超高性能断熱材の開発を継続しております。
(ビーズ事業)
業界随一の懸濁重合、ビーズ発泡技術を駆使して環境対応製品、新発想の高性能製品の開発に取り組んでおります。
高度化、多様化するグローバル市場要求を迅速に捉え、ポリオレフィン、ポリスチレンの軽量性と剛性、難燃性を高めたビーズ発泡体開発、更にはリサイクルプラスチック、バイオプラスチック、エンジニアリングプラスチックにも派生して、新機軸のビーズ発泡体の研究開発を進めております。
出資した欧州射出成形会社の射出技術と当社グループの発泡技術との融合にて生まれる独創的なプラスチック発泡製品の開発も推進しております。
ブロー成形とビーズ成形を融合したブロー表皮一体型ビーズ発泡体に関しては、軽量かつ高強度の特性を形状設計技術により深化させてモビリティ分野等への進出が加速しております。