第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

   当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

   なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営方針

  当社は、経営の基本方針として

 

 

わが社は信用と技術を基本として
お客さまに喜んでいただける安全で良質な

社会基盤を創造することを通じて

社会の繁栄に貢献するとともに

持続的に成長し家族に誇れる
働きがいのある企業をめざします。

 

 

を経営理念に掲げています。

  これは“株主・お客さま・取引先・従業員など関係あるすべてのステークホルダー”から「価値ある企業」として支持され、将来にわたりその存在を主張する基本理念です。

 

(2)経営戦略等

  当社は、令和6年4月に「中期経営計画2028「誇れる企業へ」~サステナブルな未来社会への挑戦~」を策定いたしました。

 

 [グループ中期経営計画の概要]

1.計画期間  2024年度~2028年度(5か年)

 2.取組方針  ~サステナブルな未来社会への挑戦~

                1.生産性と利益創出力の回復/強化

                2.成長領域における積極的な投資

                3.人的資本の更なる充実とESGの推進

                4.資本効率を意識した経営への転換

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

  当社は、中期経営計画2028をTEKKEN10年ビジョンの実現に向けた今後の5年間の行動計画と位置づけており、持続的に成長する鉄建グループを目指し、利益創出力の回復/強化を実現するとともに、資本コストと株価を意識した経営を実践してまいります。最終年度となる2028年度及び中間の2026年度の定量目標は以下のとおりです。

 

財務KPI

・2028年度  ROE 8%以上、連結営業利益 80億円以上、配当性向 50%程度

・2026年度  ROE 7%以上、連結営業利益 50億円以上、配当性向 50%程度

非財務KPI(2028年度)

・2022年度比CO2排出量 Scope1+2 △32%、Scope3 △20%

・工事に起因する死亡・重大災害、第三者災害、重大な鉄道工事事故 5か年累計0件

・従業員エンゲージメントスコア 5か年継続向上

 

 

(4)経営環境

 わが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により社会経済活動の正常化が進み、足踏みは見られるものの景気は緩やかな回復傾向が続きました。一方で物価上昇、人件費や物流コストの増加や世界的な金融引締めに伴う影響などに注意が必要な状況が続きました。

 建設業界におきましては、公共投資は底堅く推移、民間投資については、住宅建設は弱含んでいますが、設備投資は堅調な企業収益などを背景に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、建設資材価格の高止まりや技能労働者不足、人件費の上昇などに伴う建設コストの増加に直面するとともに、激化する受注競争の中で価格転嫁が思うようにできない厳しい経営環境にありました。

 

(5)事業上及び財務上の対処すべき課題

 今後のわが国経済の見通しにつきましては、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、政府の各種政策の効果と、雇用・所得環境が改善する下で、緩やかな回復が続くことが予想されます。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクになっており、物価上昇や金融資本市場の変動などの影響に十分注意する必要があります。

 建設業界におきましては、公共投資は底堅く推移、住宅建設は弱めの動きとなっており、設備投資については堅調な企業収益などを背景に持ち直し傾向が続くと予想されます。また、技能労働者不足や高齢化など担い手確保の問題については厳しさを増していくものと考えられます。

 2020年度に策定した「中期経営計画2021~2023」の期間中は、物価高騰への対応や受注競争が激化する中での対応などが不十分であったことから、利益を十分に上げることができませんでした。この反省を踏まえ、利益創出力の回復、強化を実現するとともに、資本コストと株価を意識した経営を実践すべく2024年4月に「中期経営計画2028「誇れる企業へ」~サステナブルな未来社会への挑戦~」を策定しました。

 「中期経営計画2028」では、

 1.生産性と利益創出力の回復/強化

 2.成長領域における積極的な投資

 3.人的資本の更なる充実とESGの推進

 4.資本効率を意識した経営への転換

を方針とし、利益創出力回復・強化に取り組みます。主となる土木、建築事業では、これまでの強みである鉄道工事を伸ばし、これに続く新たな強みにすべく注力分野を定めるとともに、組織の体質改善や本社による集中管理体制を強化し、原価低減に向けた取り組みを進めます。併せて、当社を支える「人的資本」についても、社員のキャリアアップ、待遇改善施策、ワークライフバランス、DE&Iに取り組み、エンゲージメント向上につなげるなど、非財務面での取り組みも進めます。

 このように直面する課題に積極的に取り組むことで利益創出力の底上げと資本効率への意識強化を図り、業績回復にむけて着実に進め、持続的に成長する企業グループの実現を目指してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。なお、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティの更なる推進、中長期的な企業価値の向上及び当社グループの持続的な成長を目的にサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、当社グループのサステナビリティを巡る課題について、全社的かつ事業横断的に取り組み、基本方針及び戦略の策定、目標の進捗管理、施策の審議等を通じて、当社の社会的価値と企業価値の向上を図っております。

 

(2)戦略

①気候変動

 当社グループは、土木事業・建築事業・新規事業を対象に、気候変動に関連する中長期的なリスクと機会を特定しました。特定したリスクと機会に対しては、複数のシナリオ分析(右記参照)により、2030年と2050年において当社の事業に与える財務影響(大・中・小の3段階で評価)について検討しました。なお、財務影響の重要なものについては、対応策を策定し、年度毎に進捗状況を把握するとともに、社会の動向を踏まえ見直しを図っていきます。

 

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②人材育成方針

 当社グループが持続的に成長をしていくためには人材の育成が不可欠です。物事に前向きに取り組み、自ら考え行動し問題を解決できる社員や、困難な状況にあっても最後までやり遂げ目標を達成できる社員を育成するために、年代や職責に応じた階層別研修のほか、職種別の専門研修やマネジメント研修を充実させています。ほかにも、職種ごとの人材育成ロードマップを定め、注力する分野や高い専門性が必要となる業務について、必須となる資格を明確に定め、将来を見据えた人材配置や計画的な人事ローテーションにより、若い年代からさまざまな経験を積ませることで、個人の能力向上や発掘を進めながら人材の育成を行っています。

 主な取り組みは以下のとおりです。

a.人材育成への取り組み

 工場や設備を持たない建設会社では社員そのものが資産であり、会社が持続的に成長していくためには人材の育成が不可欠です。そのため近年は特に人材育成に力を入れ、2022年8月には、社員が目指すべき方向性を示した「人材育成ロードマップ」の見直しを行い、2023年3月にはロードマップに基づいたステップアップ状況を上司と部下で確認できるツールとして「人材育成シート」を新たに制定しました。半期ごとに実施している目標管理面談の際にお互いがシートを確認することでコミュニケーションを図り、職場の活性化にも繋がる制度として運用中です。中期経営計画の初年度である2024年度は、これらのツールを活用することで若手の早期育成により一層取り組むとともに「人材育成ロードマップ」及び「人材育成シート」の更なる見直しを行っていきます。

b.タレントマネジメントシステムの導入

 当社はTEKKEN10年ビジョンを定め、「次代のニーズに応え、持続的に成長する鉄建グループ」を目指しています。ビジョンの実現には、経営戦略と連動した中長期人材戦略が重要であると考え、これまで「次世代の経営を担う人材の育成」、「社員のキャリアデザインの仕組みづくり」、「社員が持続的に活躍できる仕組み」、「社員能力の把握と戦略的配置」に取り組んできました。現在は「タレントマネジメントシステム」の導入に向けシステム構築を進めています。タレントマネジメントシステムの導入により、社員のスキルや育成状況、面談記録などの様々な人事情報を一元化し、組織の現状把握(年齢・性別・等級の構成等)からデータドリブンな人材育成、異動配置の実現、社員自身のスキル・レベル把握により、明確なキャリアデザインにつなげ、さらにパフォーマンスを引き上げることを目指しています。

c.研修制度

 将来を担う人材を育成するため、入社年次に応じた階層別研修を実施しています。新入社員研修、新入社員フォロー研修、2年目、3年目、4年目、5年目(土木・機電・建築・建築設備職のみ)、6年目(建築)、7年目研修といった、社員の早期育成を目的とした研修を行うとともに、DX研修やサステナビリティ研修など時世に応じた研修も取り入れています。また、これらの研修は当社保有の研修施設「建設技術総合センター」にて実施し、屋内研修に加え屋外研修で実践に近い教育を行うことで、経験に基づいた安全や技術に関する知識を学ぶことができます。中堅層以降も、新任主席研修、新任主席1級研修、新任管理職研修、管理職5年目研修、評価者研修を実施し、若年層から中堅、管理職の全ての階層に学びの機会を設けた研修体系となっています。

 また、2024年度より以下の研修、人材育成について新たな取り組みを行っています。

・自律型人材の育成

 入社7年目までに受講する階層別研修に事前学習や確認テストの実施を加え、さらに研修コンテンツのWEB化やライブラリ整理を行い、反復学習が可能な「自律学習プログラム」を導入することで実効性を高める研修内容へと刷新しました。8年目以降は専門領域に特化した研修を充実させることで、各部門のスペシャリストを早期に育成します。また、新たにビジネススキル向上を目的とした外部研修や社員個々のタイミングで受講ができる自己啓発e-ラーニングを導入し、社員自らが主体的に学び成長する「自律型人材」を育成しています。

・OJT教育の見直し

 研修後に上司との面談を実施したうえで、職場OJT方針(目標)を設定することとし、研修3か月後に行動変容についてアンケートやレポート等を用いて確認を行った後、研修実施部署に状況をフィードバックし研修の効果を測定する仕組みとしています。

・現場所長の早期育成研修

 土木・建築部門では、今後若年層社員を早期に所長へ登用することを目的とし、概ね30歳以降の選抜社員を対象に、原価管理やマネジメントを一定期間かけて習得する「所長候補者研修」を導入しています。

・マネジメント研修

 中堅から管理職層においては、技術力・専門力の向上と合わせリーダーシップやマネジメント能力を高める必要があり、7年目研修、新任主席層研修、新任主席1級研修、新任管理職層研修、管理職5年目研修においてマネジメント研修を行っています。

・人材開発委員会の定期的な開催

 当社は2023年4月、中長期的な経営戦略を達成するために必要な人材の育成、開発を行うことを目的に、社長直轄の組織として人材開発室を新設しました。また、経営戦略と連動した人事戦略を推進するために、経営幹部と職種毎の人材育成部門および人材開発室で組織する人材開発委員会を定期的に開催しています。同委員会では、人材育成・開発に関する現状とめざす姿のギャップを把握した上で、課題解決に向けた具体的な対応策や方針についてスピード感を持って検討し対応を行っています。

・DX推進人材育成

 DXを推進するには全社員のDXに対する理解とITリテラシーの向上が必要不可欠です。また、その中でもDXを推進する立場にある人材については、より専門性の高い知識や考え方を身に着けておくことが重要です。全社員がDXに対する理解を深めるための研修に加え、選抜された社員を対象に、業務アプリの開発や、データ分析を行うための基本操作、論理的思考を学ぶ研修を実施しています。

 

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d.安全を担う人づくり

 当社では、入社5年次の全ての社員を対象に、現場実務に即した「安全に対する基礎知識の習得」を目的とした、安全基礎研修を実施しています。6か月間の研修では、通信教育や現場パトロールへの参加、安全会議への出席、外部講習の受講、レポートの提出などを行い、若手社員の安全レベルの向上に取り組んでいます。2023年度の研修には74名(通期)が受講しました。

e.建設技術総合センターでの教育訓練

 千葉県成田市にある建設技術総合センターには、約150mの複線軌道(実習線)や、対面式の駅のホーム、踏切、さらに工事状況再現エリア、軌道変状再現エリアなど、実物と同じ鉄道設備を設置しています。この施設では、実際の鉄道施設と同じ設備で研修・訓練を行うことができ、机上の知識だけでは得られない安全のノウハウを体感習得し、万が一の際に対応できる能力を磨くことができます。また、屋内研修設備として、当社がこれまでに起こした事故から得た教訓を風化させることなく、次代へ引き継ぐために「事故の情報展示館」と「川崎駅構内列車脱線事故の展示館」を設置しています。ここでは当社グループの社員教育だけでなく、鉄道工事携わる他の建設会社や鉄道事業者、設計コンサルタント会社の方々などを対象にさまざまな研修を行っています。

f.作業所安全教育

 2022年5月より、社員の安全知識の向上、安全教育の習慣化、作業所のコミュニケーションの活性化を図ることを目的に、作業所長を実施者とした作業所全社員を対象とした「安全教育の日」を設け、作業所における安全風土の醸成を目指し、自主的な議論の場を月1回実施しています。また、若手社員を対象とした、安全教育も月3回実施し、安全知識、意識の向上を図り、目の前の業務をこなすことだけを覚えさせるのではなく、「安全」について、継続的な教育を実施し、安全教育の浸透、教える側の成長を促し、鉄建建設の安全文化として根付くことにより、「究極の安全」をめざしていきます。なお、2023年度においては「死亡・重大災害:1件」、「重大な鉄道工事事故:0件」でした。2024年度においては「死亡・重大災害:0件」、「重大な鉄道工事事故:0件」を目標値としています。

 

③社内環境整備方針

 当社グループは、適材適所の人材配置により、一人ひとりの従業員が適性を生かし、主体性を発揮できる「自己実現企業」をめざし、豊かで幸福な家庭生活が築けるよう努めます。私たちは、一人ひとりのプライバシーを尊重し、個人情報の適正管理や公正で明るい職場づくりに努め、従業員それぞれの能力を十分に発揮できる環境を実現します。

 主な取り組みは以下のとおりです。

a.DE&Iの推進

・女性活躍推進

 当社では、若い世代を中心に女性技術者が活躍の場を広げています。女性のさらなる活躍を推進するため、2022年3月に女性活躍推進ワーキンググループ(以下、ワーキング)を立ち上げ、部署の垣根を超え様々な課題の解決に取り組んでいます。2023年度には、妊娠・出産・育児などのライフイベントによって影響を受けやすい女性社員のキャリアを支援する仕組みを導入しました。この仕組みの目的は、女性社員が自らのキャリアプランを立案のうえ、主体的にキャリアに関わる意識を醸成し、将来の目標を明確にすることです。また、個々のキャリアプランを把握することで、会社としてより効果的な人材育成の方向性が明確になります。こうした取り組みにより、当社は女性の活躍推進状況が優良な企業として、厚生労働大臣より2021年に「えるぼし認定2段階」を、2022年には最高位である「えるぼし認定3段階」を取得しています。

・両立支援

 社員が育児や介護などをしながらでも、安心して働き続けられるような各種両立支援制度の拡充に取り組んでいます。

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・育児休業取得率の向上

 育児休業取得促進に向けた取り組みを積極的に行っており、育児休業を1か月まで有給としているほか、対象の子が2歳になるまで特別な事由がなくとも育児休業を取得できるなど、法定を上回る制度を導入しています。また、「育児休業意向確認面談制度」を導入し、育児期社員への制度周知、上司による育児休業取得意向の確認、フォロー体制整備のための情報共有など、一連の流れを制度化しました。男性社員の育児休業取得率は年々上昇しています。

・次世代認定マーク「くるみん」の取得

 2023年7月に次世代育成支援対策推進法に基づく「子育てサポート企業」として、次世代認定マーク「くるみん」を取得しました。今後は、上位認定である「プラチナくるみん」の取得を目指します。

・育児期女性社員座談会

 多くの女性社員が抱えている「仕事と育児の両立」についての不安や悩みを軽減させるために、若手女性社員や現在育児休業中の女性社員を対象に、未就学児を育てながら仕事と育児を両立している女性社員の実体験を聞く育児期女性社員座談会を行いました。

・仕事と介護の両立

 介護に必要な知識や仕事と介護の両立方法、事前の準備といった内容を学ぶためのシステムを導入しました。本システムは、社員ごとの介護リスクを診断し、その結果に応じたe-ラーニングやメールマガジンにより学習できる仕組みです。また、介護の初動時のフローチャートや介護要因のトップである認知症の早期発見・早期対応のためのガイドを作成し、社員へ公開しています。

・外国籍社員の活躍

 お互いに違いを尊重し理解するため、外国籍社員が配属している部署に対して、個人や職場でできることをまとめたハンドブックを配付し、働きやすい環境づくりに取り組んでいます。また、外国籍社員を対象にした研修や外国籍社員の悩みや文化・風土の違いなど課題を共有し、今後のキャリアを考える意見交換会を開催していきます。

b.エンゲージメント向上に向けた取組

・フレックスタイム制度

 社員の仕事と生活との調和を図り、業務の効率的な遂行を目的とし、2018年より「フレックスタイム制度」を導入しています。フレックスタイム制度を活用し、フレキシブルな働き方を推進することにより社員の働きやすい環境づくりに努めています。

・若年層社員の定着支援

 全社員を対象とした年2回の目標管理面談の他に階層別研修時には若年層社員に対し、面談を実施しています。面談では面談実施者が社員の業務状況や希望勤務地、課題等を把握し、アドバイスやサポートを行うことで、若年層社員の自己実現やキャリア形成の支援、エンゲージメントの向上につなげています。

・健康経営

 当社は2024年3月、健康経営の取り組みが優良と認められ、「健康経営優良法人 2024(大規模法人部門)」に5年連続で認定されています。

・社員と役員との意見交換会

 当社は2014年度から、経営幹部が建設現場を訪れる特別安全パトロールに合わせて意見交換会を実施し、社員の意見や要望に真摯に向き合い、組織内のコミュニケーションと参加者の声を重視しています。意見交換会は、経営幹部と社員の間で直接コミュニケーションを図る機会を提供し、現場の声や意見を受け入れることで、課題や問題点を共有し、改善策を議論することができます。社員からの意見や要望は、労働時間や福利厚生、人材育成などに関する改善の方向性を示す重要な情報です。経営幹部がこれらの意見に耳を傾け、具体的な対策を検討することで、社員の働きやすさや満足度の向上につながります。出された意見は集約され、経営幹部が議論した結果を全社員に公開することで、透明性と信頼性を確保します。社員が自身の意見が反映されたことを知ることで、組織内の意見交換と改善プロセスに対する参加意欲が高まります。意見交換会とその結果の公開により、社員の参加意欲と意識向上を促し、組織全体の改善と発展に寄与していきます。

 詳細は、「Corporate Report 2023 統合報告書 持続的な成長を支える取り組み」をご参照ください。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、環境戦略委員会事務局が中心となり、各部門と連携して「環境戦略委員会」で気候変動に関連するリスクと機会について議論し、評価しています。その対応策については、「環境戦略委員会」で実施状況を検証し、改善します。「環境戦略委員会」で検証した気候変動に関連する主要なリスクについては、「リスク管理委員会」において、他のリスクと共に審議し、重要な事項については取締役会に報告または付議し審議します。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、地球環境をよりよき状態で次世代に引き継ぐために、地球的視野に立った活動を継続的に行うという企業活動指針のもと、地球環境の維持向上という重要な経営課題に向き合い、社会的価値と経済的価値の創造を両立させる取り組みを進めています。これを踏まえ、GHG(温室効果ガス。主にCO2)の排出量及び削減目標を重要な指標及び目標としています。2022年度のScope1+2排出量は43,942t-CO2、Scope3排出量は901,538t-CO2でした。2030年のCO2排出量削減(総量)目標(Scope1+2排出量を2022年度比△42%、Scope3排出量を2022年度比△25%)に加えて、2050年の目標(カーボン・オフセットを含んだカーボンニュートラルの達成)を設定し、事業活動におけるCO2排出削減の取り組みを推進しています。今後も、より多くのGHG排出量削減のため、目標の見直しを適時行っていきます。

 人的資本については、令和11年3月末までの達成目標として、管理職に占める女性社員の割合を6.6%以上(令和6年3月末は4.2%)、男性社員の育児休業取得率を100%とする行動計画を策定しています。

 なお、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載のとおりです。

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3【事業等のリスク】

     有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

    なお、文中における将来予測は、当連結会計年度末(令和6年3月31日)現在において判断したものです。

 

  (1)公共事業投資額の予想を上回る減少

当社グループの売上高のうち重要な部分を占める建設事業は、公共事業の投資額に大きな影響を受けます。公共投資は変動があるため、それをカバーするべく技術を中心とした体制の構築、建築部門の営業力・収益力の強化等の施策を講じています。しかし、予想を上回る減少となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (2)製品の欠陥による重大な瑕疵の発生

品質管理には万全を期していますが、重大な瑕疵による損害賠償が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (3)災害、事故の発生

施工中の防災及び事故防止には万全を期していますが、予期しない原因などにより工事事故や労働災害が発生する可能性があります。この場合、損害賠償や指名停止などによる受注機会の減少により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

   (4)自然災害によるリスク

   地震・洪水・台風等の自然災害により事業活動の停止や施工中物件の復旧に多額の費用と時間を要する等の直接的な影響を受ける可能性があります。さらに、電力・水道・燃料の使用制限をはじめとしたインフラ機能の低下、仕入先の被災による材料調達の停滞等の間接的な影響も受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (5)取引先の信用不安

当社グループの主たる事業である建設事業においては、工事一件あたりの取引金額が大きいため、お客さまや協力会社の業績が悪化し信用不安に陥った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (6)資材・労務費等の高騰による工事原価の増加

請負契約後、原材料価格・労務費等が高騰した際、それを請負金額に反映できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (7)当社保有資産の価値下落

当社グループでは建設事業・不動産事業と関連して販売用不動産や有価証券等を保有しており、これらの資産価値が景気変動等により著しく下落した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (8)金利の上昇

当社グループは金利上昇を見込んだ経営を行っていますが、請負業という建設事業の特性により、立替金が少なからず発生し、一定水準の有利子負債が必要となります。よって、金利が著しく上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (9)海外事業に伴うリスク

海外での工事においては、戦争・テロ・紛争の発生、その国の経済状況・政治状況の変動、予期しない法律・規制の変更及び為替相場の大幅な変動等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、特に過去の施工実績の乏しい国の案件では、現地の協力会社と取引実績が乏しく、かつ、当該工事内容についての協力会社の施工経験が多くない場合、工事の進捗効率を見積ることに関して不確実性が高まる特徴があります。このような特徴を持つ案件では、実行予算の工事原価総額の見積りに不確実性を伴うため、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (10)法的規制

当社グループの事業は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、独占禁止法等により法的規制を受けています。これら法律の改廃、法的規制の新設、適用基準の変更や万一これらの法令に抵触する事象が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

  (11)繰延税金資産

当社グループでは、今後の課税所得等に関する予測に基づき繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更等により一部回収が困難であると判断した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (12)サイバー攻撃

マルウェア等のサイバー攻撃によるデータの破壊や改ざん、情報漏洩等の被害があった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 (13)感染症の世界的な流行

  新型コロナウイルス感染症については令和5年5月から感染症法上の取扱いが5類に変更されましたが、今後、何らかの感染症の流行が世界的な規模で拡大した場合、個人消費の低下、企業収益の悪化などが想定されます。感染症の流行が内外経済を下振れさせるリスクや金融市場の変動への影響が懸念され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注)土木工事・建築工事を一括し、「建設事業」として記載しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

  ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により社会経済活動の正常化が進み、足踏みは見られるものの景気は緩やかな回復傾向が続きました。一方で物価上昇、人件費や物流コストの増加や世界的な金融引締めに伴う影響などに注意が必要な状況が続きました。

 建設業界におきましては、公共投資は底堅く推移、民間投資については、住宅建設は弱含んでいますが、設備投資は堅調な企業収益などを背景に持ち直しの動きが見られました。しかしながら、建設資材価格の高止まりや技能労働者不足、人件費の上昇などに伴う建設コストの増加に直面するとともに、激化する受注競争の中で価格転嫁が思うようにできない厳しい経営環境にありました。

 このような状況のなか、当社におきましては、「中期経営計画2021~2023」の最終年度として、「DXを原動力とした変革への挑戦」を掲げ、新基幹システムの構築、デジタル技術を活用した業務変革を推進するとともに、技術開発、人材育成体系の強化や社内環境整備に取り組みました。また、持続可能な社会を実現するために、社会インフラ建設の担い手として、事業活動の環境負荷低減に取り組み、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)により気候変動部門において「Aリスト」の評価を得ることができました。

 当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は次のとおりです。

 

a.財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ27,874百万円増加(15.2%増)し211,271百万円となりました。主な要因は、受取手形・完成工事未収入金等の増加8,737百万円、投資有価証券の増加5,005百万円、土地の増加4,243百万円です。負債合計は、前連結会計年度末に比べ21,287百万円増加(18.1%増)し139,140百万円となりました。主な要因は、未払金の増加6,967百万円、支払手形・工事未払金等の増加4,010百万円、繰延税金負債の増加3,538百万円です。純資産合計は、前連結会計年度末に比べ6,587百万円増加(10.1%増)し72,131百万円となりました。主な要因は、その他有価証券評価差額金の増加4,838百万円、利益剰余金の増加3,539百万円、自己株式の増加1,625百万円です。

 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の35.5%に対して1.5ポイント減少の34.0%となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の経営成績は、前連結会計年度と比較すると、売上高は22,842百万円増加(14.2%増)し183,586百万円となりました。売上高の増加は、主に完成工事高の増加によるものです。土木工事は6,439百万円(7.5%増)、建築工事が15,763百万円(21.8%増)、工事施工高の増加等に伴い増加しています。

 売上総利益は、前連結会計年度比42百万円減少(0.4%減)し11,930百万円となりました。これは、主に建築工事において資機材価格の高騰及び労務費の上昇に対する価格転嫁が進まなかったことや、円安の進行による海外工事の収支悪化等による完成工事総利益の減少が主な要因です。DX関連費用及び通信交通費の増加等により、販売費及び一般管理費が前連結会計年度比232百万円増加(2.2%増)し、営業利益は前連結会計年度比275百万円減少(22.3%減)の958百万円となりました。営業外収支は為替差益の計上、受取配当金の増加等により、経常利益は前連結会計年度比1,313百万円増加(136.0%増)の2,278百万円となりました。

 投資有価証券売却益40百万円、固定資産売却益3,991百万円の特別利益が計上された一方で、減損損失232百万円など合計300百万円の特別損失が計上され、税金等調整前当期純利益は前連結会計年度比2,577百万円増加(70.0%増)の6,257百万円となりました。

 税金等調整前当期純利益の増加に伴い、税金費用が前連結会計年度比675百万円増加(51.4%増)の1,988百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比1,899百万円増加(80.5%増)の4,260百万円となりました。

 

 セグメントの業績は次のとおりです。(セグメントごとの業績については、セグメント間の内部売上高等を含めて記載しています。)

 

    (土木工事)

 土木工事については、売上高91,991百万円(前連結会計年度比7.5%増)、セグメント利益3,699百万円(前連結会計年度比105.7%増)となりました。

    (建築工事)

 建築工事については、売上高87,965百万円(前連結会計年度比21.5%増)、セグメント損失3,224百万円(前連結会計年度はセグメント損失1,086百万円)となりました。

    (不動産事業)

 不動産事業については、売上高3,568百万円(前連結会計年度比24.2%増)、セグメント利益246百万円(前連結会計年度比12.8%減)となりました。

    (付帯事業)

 付帯事業については、売上高3,086百万円(前連結会計年度比3.0%減)、セグメント利益56百万円(前連結会計年度比11.3%減)となりました。

    (その他)

 その他については、売上高192百万円(前連結会計年度比20.3%減)、セグメント利益180百万円(前連結会計年度比11.2%増)となりました。

 

  ②キャッシュ・フローの状況

   営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加8,726百万円、有形固定資産売却益3,984百万円などの減少要因があったものの、その他の負債の増加9,381百万円、税金等調整前当期純利益6,257百万円などの増加要因があり、3,973百万円の資金増加(前連結会計年度は219百万円の資金減少)となりました。

   投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入5,237百万円などの増加要因があったものの、有形固定資産の取得による支出8,264百万円、無形固定資産の取得による支出970百万円などの減少要因があり、4,288百万円の資金減少(前連結会計年度は2,489百万円の資金減少)となりました。

   財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の増加1,625百万円、配当金の支払額1,246百万円などの減少要因があったものの、借入金(短期及び長期)の増加4,220百万円などの増加要因により、1,145百万円の資金増加(前連結会計年度は580百万円の資金増加)となりました。

   以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,417百万円増加(8.2%増)の18,606百万円となりました。

 

  ③生産、受注及び販売の実績

 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産実績」は記載していません。

 なお、参考に提出会社個別の事業の状況を「提出会社の受注工事高及び完成工事高の状況」に記載しています。

 a.受注実績

セグメントの名称

 

前連結会計年度(百万円)

(自令和4年4月1日

至令和5年3月31日)

 

 

当連結会計年度(百万円)

(自令和5年4月1日

至令和6年3月31日)

 

  土木工事

98,996

100,949 (2.0%増)

  建築工事

90,077

89,098 (1.1%減)

合 計

189,074

190,048 (0.5%増)

 (注) 当社グループにおいては土木工事・建築工事以外は受注生産を行っていません。

 

 b.売上実績

セグメントの名称

 

前連結会計年度(百万円)

(自令和4年4月1日

至令和5年3月31日)

 

 

当連結会計年度(百万円)

(自令和5年4月1日

至令和6年3月31日)

 

  土木工事

85,551

91,991 (7.5%増)

  建築工事

72,202

87,965(21.8%増)

  不動産事業

2,633

3,331(26.5%増)

  付帯事業

115

106 (8.0%減)

報告セグメント計

160,502

183,393(14.3%増)

  その他

241

192(20.3%減)

合 計

160,743

183,586(14.2%増)

 (注)セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

(2)提出会社の受注工事高及び完成工事高の状況

 ①受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期 別

区 分

前期繰越工事高

(百万円)

当期受注工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成工事高

(百万円)

次期繰越工事高

(百万円)

第82期

(自令和4年4月1日

至令和5年3月31日)

土木工事

140,519

97,773

238,293

84,632

153,661

建築工事

94,746

90,097

184,843

72,389

112,454

235,266

187,871

423,137

157,022

266,115

第83期

(自令和5年4月1日

至令和6年3月31日)

土木工事

153,661

99,926

253,587

91,244

162,342

建築工事

112,454

89,098

201,552

87,965

113,587

266,115

189,024

455,139

179,209

275,930

(注)前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額に増減のあるものについては、当事業年度受注工事高にその増減額を含みます。したがって、当事業年度売上高にもかかる増減額が含まれます。また、前事業年度以前に外貨建で受注した工事で、当事業年度中の為替相場の変動により請負金額に増減のあるものについても同様に処理しています。

 

②受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第82期

(自 令和4年4月1日

至 令和5年3月31日)

土木工事

22.1

77.9

100.0

建築工事

51.4

48.6

100.0

第83期

(自 令和5年4月1日

至 令和6年3月31日)

土木工事

28.9

71.1

100.0

建築工事

72.6

27.4

100.0

 (注) 百分比は請負金額比です。

 

③完成工事高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

第82期

(自 令和4年4月1日

至 令和5年3月31日)

土木工事

38,737

45,894

84,632

建築工事

4,580

67,809

72,389

43,318

113,704

157,022

第83期

(自 令和5年4月1日

至 令和6年3月31日)

土木工事

46,687

44,556

91,244

建築工事

5,453

82,511

87,965

52,141

127,067

179,209

(注)1.完成工事のうち主なものは、次のとおりです。

第82期

東日本旅客鉄道(株)

南武線上丸子こ線橋架替他

東日本旅客鉄道(株)

原宿駅改良

東日本旅客鉄道(株)

羽越本線羽後本荘駅本屋・東西自由通路新設他

国土交通省

大野油坂道路和泉トンネル岡畑地区工事

最高裁判所

東京高地裁中目黒分室(仮称)庁舎新営建築工事

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北海道新幹線、昆布トンネル(桂台)他

西日本旅客鉄道(株)

奈良線黄檗・宇治間路盤新設他工事

東京地下鉄(株)

千代田線北千住駅浸水対策に伴う乗降場広間ほか改良建築工事

(株)JR東日本ビルディング

(仮称)西五反田3丁目プロジェクトA棟新築工事

(同)かがやきシニアレジデンス

(仮称)江東区東雲1丁目複合プロジェクト

 

第83期

東日本旅客鉄道(株)

新宿駅中央盛土部改良他2

東日本旅客鉄道(株)

飯田橋駅改良

東日本旅客鉄道(株)

(仮称)新潟現業事務所新築

防衛省

稚内(3)局舎新設等建築工事

東京都

三河島水再生センター第二浅草系沈砂池棟建設その2工事

福岡県田川市

田川市立田川西中学校校舎棟新築工事

東日本高速道路(株)

北陸自動車道 栄橋床版取替工事

エヌ・ティ・ティ都市開発(株)

(仮称)品川区西大井二丁目賃貸住宅新築工事

積水ハウス(株)

(仮称)グランドメゾン荒戸二丁目計画新築工事

バングラデシュ人民共和国

クロスボーダー道路網整備事業(カルナ橋)

 

   2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は次のとおりです。

第82期

 東日本旅客鉄道(株) 40,913百万円 26.1%

第83期

 東日本旅客鉄道(株) 40,034百万円 22.3%

 

④手持工事高

令和6年3月31日現在

 

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

土木工事

83,669

78,673

162,342

建築工事

14,804

98,782

113,587

98,473

177,456

275,930

(注)手持工事のうち主なものは、次のとおりです。

東日本旅客鉄道(株)

羽田空港アクセス線八潮工区建設

令和9年8月

完成予定

東日本旅客鉄道(株)

新宿変電所増築他

令和8年2月

完成予定

東日本旅客鉄道(株)

東北本線金谷川・南福島間福島西道路こ道橋新設

令和7年7月

完成予定

防衛省

郡山(5)隊庁舎新設建築その他工事

令和7年3月

完成予定

熊本県宇城市

松橋中学校校舎棟改築工事

令和7年6月

完成予定

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北海道新幹線、栄原高架橋

令和8年10月

完成予定

西日本高速道路(株)

米子自動車道 大江川橋他1橋(PC上部工)工事

令和8年6月

完成予定

名古屋鉄道(株)

三河線 若林駅付近鉄道高架化事業に伴う本線土木(その3)工事

令和8年2月

完成予定

秋田市千秋久保田町地区再開発ビル建設協議会

(仮称)秋田市千秋久保田町地区優良建築物等整備事業 施設建築物新築工事

令和8年2月

完成予定

東京メトロ都市開発(株)

弥生町五丁目用地建物(仮称)新築工事

令和6年11月

完成予定

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況による分析・検討内容

   経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

   なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

  a.経営成績等

   1)財政状態

    (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。

 

   2)経営成績

    (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。

 

  b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 新型コロナウイルス感染症の5類移行により社会経済活動の正常化が進み、政府建設投資は底堅く推移し民間建設投資は持ち直し傾向が続くと見込まれています。しかしながら、建設資材価格の高止まりや技能労働者不足、人件費の上昇などに伴う建設コストの増加は続き、激しい受注競争は継続しています。このような環境の中、当社は、企画提案力・設計力、コスト競争力を強化し、引き続き当社の得意分野である鉄道分野の事業展開を図るとともに、道路分野や官公庁建築に注力し、シェア拡大を目指します。

 また、ICT技術等の活用による建設DXの推進、業務の効率化と労働時間削減など、施工環境にも大きな変化が起きていると認識しています。

 

   〔今後の市場環境〕

    ・社会基盤(トンネル、橋梁、河川施設等)の更新・修繕工事拡大や激甚災害への対応

    ・ECI、設計施工等、提案型案件の拡大

    (鉄道分野)

    ・ポストコロナにおける利用者減少を前提にした事業構造の変化

    ・大規模ターミナル開発(品川、渋谷等)、羽田空港アクセス新線の推進

    ・老朽設備の大規模修繕、大規模地震を想定した耐震補強等の推進

 

   〔今後の施工環境〕

    ・労働基準法改正に伴う労働時間上限規制への対応

    ・BIM、IoT、AI等の利用拡大

    ・2050年カーボンニュートラル実現に向けた環境配慮の高まり

    (鉄道分野)

    ・鉄道改良、老朽施設取替など営業線近接工事の効率化

 

 このような状況のなか、当社におきましては、「中期経営計画2021〜2023」の最終年度として、デジタル技術を活用した業務変革の推進と、技術開発、人材育成体系の強化や社内環境整備に取り組みました。また、持続可能な社会を実現するために、サプライチェーン全体での事業活動から発生する温室効果ガスの削減を進め、事業活動の環境負荷低減を推進し、当社はCDPにより高評価を得ることができました。

 

  c.経営方針、経営戦略、経営上の達成状況を判断するための客観的な指標等

   第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標に記載のとおりです。

 

  d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析検討内容

   (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。

 

 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

  a.キャッシュ・フローの状況

   (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況に記載のとおりです。

 

  b.資金需要

 当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、土木事業と建築事業により構成される建設事業に関わる資機材及び外注業者に支払われる工事代金、各事業の一般管理費等があります。また、設備資金需要としては、不動産投資に加え、情報処理の為の無形固定資産があります。

 

  c.財政施策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入により資金調達を行っています。

 当社グループの主要な事業である建設事業の資金の調達にあたっては、担当部署が各部署からの報告に基づき適時資金計画を作成・更新し、適正に管理しています。

 また、顧客からの工事代金については、社内規程に従って、取引先ごとの期日管理及び残高管理を行うとともに、主な取引先の信用状況を適宜把握する体制としています。

 

 ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や現在の状況に応じ合理的と考えられる見積りによっている部分があり、見積り特有の不確実性のために、実際の結果が見積りと異なることがあります。

 重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりです。

 完成工事高の計上は、履行義務の充足に係る進捗率の合理的な見積りができる工事については履行義務を充足するにつれて、一定の期間にわたり収益を認識しています。当該収益の認識にあたり適切に見積りをおこなっていますが、見積り特有の不確実性のために、実際の結果が見積りと異なることがあります。

 また、貸倒引当金の計上に当たっては、工事収支の見積金額や、現地事情等に基づき合理的に算定しておりますが、見積り特有の不確実性のために、実際の結果が見積りと異なることがあります。

 なお、詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載されているとおりです。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 経営上の重要な契約等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 当社の研究開発においては、工事の生産性向上、安全性、品質の向上を図り、長期的な安定受注を図るという技術戦略に基づき、年々テーマ数を増やすとともに、持続可能な社会の実現に向けたサステナブル推進に関するテーマなど多くの研究開発に挑戦し取り組んでいます。

 本年度はICT技術の活用・建設DX推進により生産性向上に資するシステムの開発、CO2排出量削減、施工の効率化・省力化や鉄道・大規模更新工事を見据えた新たな施工技術の開発を進め、当社の技術力のさらなる向上に努めます。また、保有工法のブラッシュアップにより他社との差別化を図っていきます。

 当連結会計年度の研究開発費は1,018百万円(土木工事891百万円・建築工事127百万円)で、主な研究開発活動及びその成果は次のとおりです。なお、研究開発活動には、子会社である株式会社ジェイテックとの共同研究開発活動が含まれています。

 

 (1)土木分野

①建設DX推進への取り組み

~PC・RC構造物の建設に変革をもたらす統合システムの構築~

当社ではPC・RC構造物の建設プロセスにおいて最新のICT、IoT、AIを活用して、生産性向上と品質向上を実現するツールやシステムとして「コンクリート打設管理システム」や「配筋検査システム」などを開発してきました。現在、これらの技術を統合した建設システム「TK Construction Flow 360」の構築に取組んでいます。

 本システムは、画像や点群等により得られる多種・多様・大容量の情報をクラウド上で一元管理し、それらの情報を建設プロセスの各段階でのツールやシステムで効果的に使用します。数値や図などを活用して情報を視覚的に示すことで、誰もが、いつでもどこからでも状況を把握し、指示・確認することを容易にし、PC・RC構造物の建設を多角的にサポートします。本システムを使用することで、発注者、元請、専門工事会社間での情報共有の強化、コミュニケーションの円滑化により、遠隔臨場や集中管理の効果を最大限に高め、さらなる業務の効率化、省人化に貢献し、建設現場全体の働き方改革を促進します。

②鉄道工事の安定的受注に向けた技術開発

~深礎工法の施工環境改善に向けて機械式深礎工法(Shinso-MaN工法)を開発~

 駅改良工事のような狭隘かつ近接構造物の多い箇所に用いられていた深礎工法について、人力主体で実施していた作業を、遠隔操作による機械化・システム化することにより、施工性・安全性を向上した工法を東日本旅客鉄道株式会社他3社と共同で開発しました。従来の深礎工法は、杭孔底面に作業員が降り、掘削・排土をしながらライナープレートを設置し掘り進めていきます。作業は危険で過酷なものであることから、少子高齢化に伴う作業員の担い手不足や作業の長期化による建設費用の増大といった課題がありました。開発した工法では、人力での掘削を機械式の掘削・排土システムにより代替することで、作業環境を大幅に改善しました。この機械は、杭孔外から遠隔操作されるため、掘削作業員が危険な杭孔内へ降りる必要はありません。掘削スピードも、人力と比較して大幅に向上しています。今後は、更なる施工効率向上、コストダウンなど工法のブラッシュアップを図っていきます。

③サステナブル推進に関する技術開発

~山岳トンネルにおけるCO2排出量削減技術の開発~

 当社では、持続可能な社会の実現に向けて、環境保全に役立つさまざまな技術開発に取組んでいます。このうち、山岳トンネルにおけるCO2排出量削減を目的として、地山掘削後の一次支保に用いる吹付けコンクリートを対象に研究開発を進めてきました。一般的に吹付けコンクリートでは、急結性や初期強度発現性の確保のために普通ポルトランドセメントを用いますが、本研究ではCO2排出量原単位の少ない高炉セメントB種を用いた場合の吹付けコンクリートの配合を検討し、従来配合に匹敵する品質を有することを確認するとともに実施工への適用を図りました。実施工においても、フレッシュ性状、初期強度、圧縮強度や発生粉じん量などについて、要求性能を満足する結果が得られ、吹付けコンクリート1m3あたり119kgに相当するCO2排出量の削減が可能となりました。今後も本技術を山岳トンネルのCO2排出量削減のひとつとして普及展開を図るとともに、吹付けコンクリートのさらなる低炭素化に向けての研究開発を進めていきます。

※一般財団法人セメント協会HP「セメントのLCIデータの概要」のセメント品種別イベントリデータより算出

 

 (2)建築分野

①建設DXの推進に向けた取り組み

~建物外周壁開口部の遮音検討BIMアドインツールの開発~

 集合住宅やホテルの設計では、居室内の静謐性を確保するために、仕様書などの中で、外部から建物の外周壁を透過して、室内で生じる騒音の目標値が一般に定められています。そのため、当社では、計画時に敷地周辺の外部騒音を調査し、騒音の目標値を満足し得る建物外周壁並びに外周壁に含まれる窓や換気口(以後、外周壁開口部と記す。)の遮音仕様の検討を行っています。今回、BIMで構築するモデルが、パーツごとに様々な情報を併せ持つ特徴を活かし、業務の効率化を目的として、建物外周壁開口部の遮音検討BIMアドインツールを開発しました。本ツールは、これまで机上で行っていた予測計算を、BIMソフトウェア上で連携して行うもので、ダイアログの各種条件設定時に、計算に必要な情報をBIMモデルから自動的に取得して計算します。また、設定した室内騒音の目標値に対する判定までをシステム化しており、目標値を満足する外周壁開口部の遮音仕様が定まるまで繰り返し計算を実施します。本ツールの利用により、予測検討に要する作業時間は、従来に比べて1/10以上短縮され、業務の効率化が図れていることを確認しました。

②鉄骨造柱梁接合部の柱絞り工法の開発

~シンプルダイア®の適用拡大~

 鉄骨造の建物において、角形鋼管を用いた柱で上下階の柱幅が異なる場合、上方に向かい柱径を絞るテーパー管形式を接合部パネルに用いる方法があります。しかし、テーパー管形式は、製作難易度が高く製作に時間を要するため、コストアップや納期に与える影響が大きい形式です。そこで、鉄骨造のホテル・オフィスビルの中間階や倉庫の最上階などを対象に、製作が容易であり製作時間も短縮できる異幅接合部工法(シンプルダイア®)を開発しました。本工法は、上階柱に接続する通しダイアフラムを厚くすることで、テーパー加工を施さない接合部パネルとすることができます。本工法により接合部製作を省力化したところ、従来のテーパー管形式と比較してコストダウンが図れました。現在、設計施工案件を中心に採用されており、今後も鉄骨造の商業ビルや大型物流施設へ適用していきます。

③上家直接基礎の開発

~基礎のプレキャスト化により工期短縮を図る~

 ホームの延伸・拡幅や駅改良工事等により、新たに旅客上家を構築する場合、上家を支える基礎工事が発生します。直接基礎の構築には多くの作業ステップ・工種があり、工期が長期化する場合があります。そこで、ホーム上での作業の省力化を目的とし、複数のプレキャストコンクリート部材を結合させることで上家基礎を構築する工法を東日本旅客鉄道株式会社と共同で開発しました。通常は、ホーム下の掘削・整地から、型枠、鉄筋工事、コンクリート打設と多くの作用ステップがありますが、今回、開発した工法は、事前に製作したプレキャストコンクリート部材を敷き並べたあと、その隙間をコンクリートの他、プレミックスグラウトを用いて充填することも可能とするものです。ホーム上での型枠設置や配筋作業の省力化だけでなく、現場打ちのコンクリート作業も削減可能となり、工期短縮が図れます。今後は実プロジェクトへの適用を目指しています。

 

 (3)不動産事業、付帯事業及びその他

 研究開発活動は特段行われていません。