当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
今後のわが国経済は、世界的な金融引締めに伴う影響、地政学リスクの継続、中国における経済成長鈍化の長期化が懸念されるものの、雇用・所得環境の改善を背景として、緩やかに景気の回復が続くことが期待されます。
このような事業環境のもと、当社グループは、澁澤倉庫グループミッション「物流を越えた、新たな価値創造により、持続可能で豊かな社会の実現を支えること」のもと、「Shibusawa 2030 ビジョン」にて「お客さまの事業活動に新たな価値を生み出す Value Partner」の実現を目指してまいります。
事業の競争力強化とサービス領域の拡大とともに、持続的な価値向上のためのESG経営の確立に取り組み、当社グループが共有する価値観である、創業者の精神「正しい道理で追求した利益だけが永続し、社会を豊かにできる」を体現する企業であり続けてまいります。
「Shibusawa 2030 ビジョン」の実現に向けては、以下の諸施策に取り組んでまいります。
(1) 強みを深化させたカテゴリーNO.1の物流サービスを確立します。
(2) 物流の枠を超えたアウトソーシングサービスを事業の柱に育てます。
(3) スマートで強靭な不動産ポートフォリオを確立します。
(4) ステークホルダーとの共存共栄の関係を進化させます。
(5) 多様な人材が働き甲斐を感じる労働環境、企業風土を確立します。
(6) 実効性のあるコーポレートガバナンスの確立に取り組みます。
併せて、2024年度を初年度とする3ヵ年の新たな中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2026」で掲げた事業戦略に基づき、以下の課題に取り組んでまいります。
(1) 物流事業の収益力強化
(2) 国内/海外における物流ネットワークの拡充
(3) 物流の枠を超えた業域の拡大
(4) 不動産ポートフォリオの拡充
(5) ESGへの取組み強化
当社グループでは、事業の成長は堅固な経営基盤の上に成り立つとの認識から、財務体質の改善、事業インフラの整備に取り組むとともに、コンプライアンスの徹底、コーポレート・ガバナンスの強化により経営品質を向上させてまいります。加えて、サステナビリティ推進基本方針を策定し、以下の6項目をマテリアリティ(重要課題)と定めております。
(1) 地球温暖化の防止
(2) 循環経済への転換
(3) 安全・安心の実現
(4) イノベーションの活用
(5) 人権の尊重
(6) 共存共栄の追求
当社グループのみならず社会にとっても持続可能な成長につながる課題の解決に事業活動を通じて取り組むことにより、企業価値を向上させてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方およびサステナビリティ関連のリスク・機会に対処するための取組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ課題全般
① ガバナンスおよびリスク管理体制
当社グループでは、「物流を越えた、新たな価値創造により、持続的で豊かな社会の実現を支えること」をグループミッション、果たすべき社会的使命と規定しております。また、サステナビリティ推進基本方針において「地球温暖化の防止」「循環経済への転換」「安全・安心の実現」「イノベーションの活用」「人権の尊重」「共存共栄の追求」の六つをマテリアリティ(重要課題)として特定し、事業活動を通じてその解決に貢献することとしております。
当社は、サステナビリティを巡る課題の解決に取り組むため、次のとおりのガバナンス体制・リスク管理体制を構築しております。
取締役会は、年1回または必要に応じて、サステナビリティを巡る課題に対する取組みについて議論し、サステナビリティ推進基本方針や、マテリアリティ(重要課題)に関する数値目標などの重要事項を決議し、その執行を監督します。
サステナビリティ推進委員会は、取締役社長を委員長として、サステナビリティ推進基本方針や、マテリアリティ(重要課題)に関する目標の設定と重要事項の立案を行うとともに、サステナビリティに関する全社的な取組みを指導・監督しつつ、サステナビリティに係るリスクを識別・評価し、これらを取締役会に報告します。
また、サステナビリティ推進室は、サステナビリティ推進委員会の監督・指導のもと、当社グループのサステナビリティ推進に関わる事項について、適切な対策を遂行し、関係会社を含む各事業部門に指示・指導を行うとともに、目標の達成状況のモニタリングと、必要な改善策の策定と実行を行い、重要事項や行動計画をサステナビリティ推進委員会に報告します。
当社のグループのサステナビリティ推進に関するガバナンス体制・リスク管理体制は以下に示すとおりです。
② 戦略および指標・目標
マテリアリティ(重要課題)に対処するための取組みと指標は次のとおりです。
なお、2023年度の評価指標に対する実績値につきましては、当社コーポレートサイトおよび統合報告書にて2024年度に掲載を予定しております。
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マテリアリティ |
地球温暖化の防止 |
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優先する取組み |
物流事業における温室効果ガスの削減 環境配慮型施設へのバリューアップ |
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目指す姿(KGI) |
環境負荷低減に貢献する企業 2030年度の売上あたりCO2排出量 2019年度比50%削減 |
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評価項目 |
倉庫業務におけるCO2排出量削減 陸運業務におけるCO2排出量削減 不動産事業における再生可能エネルギー導入 |
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2023年度の評価指標 |
営業面積あたりCO2排出量 前年度比3%削減(注1) 環境規制対応車両導入率 前年度比3%増加 再生可能エネルギー導入率 60%(注2) |
(注)1.当社所有営業倉庫における電力消費によって排出されるCO2排出量を対象としています。
2.当社賃貸オフィスビル(茅場町・永代・蛎殻町地区)を対象としています。
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マテリアリティ |
循環経済への転換 |
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優先する取組み |
循環経済(サーキュラーエコノミー)転換への貢献 |
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目指す姿(KGI) |
循環経済転換に貢献する企業 |
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評価項目 |
循環経済転換に対する貢献 |
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2023年度の評価指標 |
セキュリティボックス設置台数(注3) 前年度比増加 循環経済に貢献する新規事業件数 2件 |
(注)3.セキュリティボックスとは、廃棄文書を投入し、安全に回収・溶解・リサイクルをするサービス用容器です。
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マテリアリティ |
安全・安心の実現 |
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優先する取組み |
安全安心な物流事業の運営 レジリエントな事業運営体制の構築 |
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目指す姿(KGI) |
安全な事業運営による安心な社会の実現 |
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評価項目 |
社会に対する安全安心向上 事業内における安全安心向上 |
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2023年度の評価指標 |
営業収益あたりの物流事業における事故件数 前年度比10%削減 労働災害度数率 前年度比3%削減 |
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マテリアリティ |
イノベーションの活用 |
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優先する取組み |
物流事業の生産性向上と業域の拡大 |
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目指す姿(KGI) |
事業の競争力強化と持続可能な社会の実現 |
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評価項目 |
技術導入による業務効率化 |
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2023年度の評価指標 |
技術導入による業務効率化推進の新規案件数 10件 |
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マテリアリティ |
人権の尊重 |
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優先する取組み |
ダイバーシティの推進 労働環境の改善 |
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目指す姿(KGI) |
多様な人材が集い活躍する環境の創出 |
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評価項目 |
ダイバーシティの推進 人財への積極投資 |
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2023年度の評価指標 |
管理職員に占める女性の割合 前年度比増加 有給休暇取得率 前年度比増加 階層別研修ののべ受講者数 前年度比増加 業務研修ののべ受講者数 前年度比増加 |
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マテリアリティ |
共存共栄の追求 |
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優先する取組み |
パートナーシップ強化によるサプライチェーンの進化 地域コミュニティ発展への貢献 災害支援 |
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目指す姿(KGI) |
パートナー企業や地域社会との共存共栄 |
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評価項目 |
事業パートナー・地域コミュニティとの連携強化 |
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2023年度の評価指標 |
パートナーミーティングの開催 3回 社会活動への協働 5件 |
(2) 気候変動
当社グループは、金融安定理事会(FSB)の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表した提言に沿った形で適切な情報開示を行います。
また、当社グループはガバナンス体制を強化するとともにグループ事業における気候変動が及ぼすリスクと機会による影響について毎年分析を行い、当社グループのみならず社会にとっても持続可能な成長につながる課題の解決に事業活動を通じて取り組み、企業価値を向上させてまいります。
① ガバナンスおよびリスク管理体制
気候変動に関するガバナンスおよびリスク管理体制は、サステナビリティ課題全般のガバナンスに組み込まれております。詳細は「(1) サステナビリティ課題全般 ① ガバナンスおよびリスク管理体制」をご参照ください。
② 戦略
当社グループでは、シナリオ分析を活用し、当社グループの事業活動に中長期にわたって影響を与えると想定される気候変動に起因する重要なリスクと収益機会をサステナビリティ推進委員会にて特定、評価するとともに、対応策を検討しております。
シナリオ分析におきましては、主要事業地域である日本国内を中心に、連結子会社を含めて、4℃シナリオ、1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)の2つのシナリオで「Shibusawa 2030 ビジョン」でも指標としている2030年を想定し、次のとおり考察いたしました。
気候変動に起因する重要なリスク
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分類 |
種類 |
項目 |
想定されるリスク |
影響度 |
時期 |
|
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4℃ |
1.5℃ |
|||||
|
移行リスク |
政策・法規制 |
・炭素価格の上昇 ・GHG排出規制の強化 ・再エネ/省エネ政策への移行 |
・炭素税をはじめとする気候変動に関する操業コストの増加 ・施設や設備等のGHG排出削減対応コストの増加 ・エネルギー価格の上昇 |
- |
大 |
中期 |
|
技術 |
・再エネ/省エネ/次世代技術の普及 |
・GHG排出削減に関わる環境技術導入コストの増加 ・環境技術導入の遅れによる企業評価の低下 |
中 |
大 |
||
|
市場 |
・重要商品の需要変化 |
・GHG排出量が少ない保管・輸送を希望する顧客への不十分な対応による顧客流出 |
小 |
大 |
||
|
評判 |
・社会からの評価 |
・GHG排出削減への取組みや開示の不十分さに起因する企業評価の低下 |
小 |
大 |
||
|
物理リスク |
急性 |
・異常気象に起因する自然災害の激甚化 |
・保有する施設の被災による復旧コストの増加 ・業務の停止や、陸・海・空路の運輸サービス停止による不稼働の発生 |
大 |
小 |
短期 |
|
慢性 |
・平均気温の上昇 |
・ヒートストレスによる労働生産性の低下や人材確保難の発生 |
大 |
小 |
中期 |
|
(注)1.移行リスクとは、低炭素経済への移行に伴い、GHG排出量の大きい金融資産の再評価によりもたらされるリスクです。
2.物理リスクとは、洪水や高潮、暴風雨等の気象現象によってもたらされる財物損害等の直接的なインパクトリスクです。
3.評価(大・中・小)は、定性的に分析し、相対的な影響度として評価しています。
4.4℃シナリオとは、気候変動対策が現状から進展せず、地球の平均気温が産業革命以前と比較して2100年時点で約4℃上昇するとされているシナリオです。異常気象の激甚化など、物理的な損害が大きくなる一方、気候変動対策としての法規制は現行から変わらないとされています。(参考シナリオ:IEA Stated Policies Scenario)
5.1.5℃シナリオとは、カーボンニュートラル実現を目指した積極的な取組みが活発化し、地球の平均気温が産業革命以前と比較して、2100年時点で約1.5℃の上昇に抑えられるとするシナリオです。異常気象の激甚化は4℃シナリオと比べ抑制される一方、気候変動対策としての法規制は現行から大きく強められるとされています。(参考シナリオ:IEA Net Zero Emissions by 2050、一部Sustainable Development Scenarioも併用)
この気候変動への対応として、GHG排出量およびエネルギー使用量の削減・効率改善のため、また収益機会の創出のため、当社グループでは様々な取組みを行っております。
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リスク項目 |
対応の方向性 |
具体的な対応策(機会の創出) |
|
・炭素価格の上昇 ・GHG排出規制の強化 ・再エネ/省エネ政策への移行 |
・脱炭素化の推進 |
・モーダルシフトの推進 ・倉庫の大型化による拠点集約や、最適立地への配置を通じた物流効率化の推進 ・再生可能エネルギーの導入 ・創電設備の設置 |
|
・再エネ/省エネ/次世代技術の普及 |
・施設運営の省エネ化(太陽光パネル、BEMS、LED等省エネ機器の導入) ・低GHG排出への投資を促進する制度の運用による環境技術導入の推進 |
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|
・重要商品の需要変化 |
・低炭素な事業運営体制 |
・事業運営における脱炭素化の推進と適切な情報開示 |
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・社会からの評価 |
・気候変動ソリューションの創出と発信 |
・ステークホルダーへの情報発信の強化 |
|
・異常気象に起因する自然災害の激甚化 |
・施設の強靭化 ・防災/減災対策の強化 ・運送システムの多様化 ・BCPを考慮した施設の立地 |
・台風や豪雨を想定した定期的な施設の点検・補修 ・BCPの定期的なアップデートと訓練の実施 ・モーダルシフト運営体制の強化 ・被災リスクを考慮した新規施設の開発 |
|
・平均気温の上昇 |
・職場環境の改善 ・省力化の推進 |
・快適な作業環境の整備 ・DXの推進等による省力化・省人化の推進 |
③ 指標・目標
当社グループでは、気候変動が経営に及ぼすリスクと機会等の影響を測定・管理するため、温室効果ガス(GHG)排出量を指標としております。
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年間目標 |
長期目標 |
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倉庫業務における営業面積あたりのCO2排出量を |
営業収益あたりのCO2排出量を2030年度に2019年度比で50%削減する |
(注)当社が所有する営業倉庫において電力消費によって排出されるCO2を対象としています。
(3)人的資本
① 戦略
当社グループは、長期的に人材が活躍できる経営基盤を確保するため、多様な人材の採用を継続的に行い、それぞれの能力を最大限に発揮できる職場環境の整備や人材育成への取組みが重要と考えています。
2030年に当社が目指す姿として「Shibusawa 2030 ビジョン」を制定し、多様な人材が働き甲斐を感じる労働環境や企業風土の確立により企業価値を向上させることを目指す姿と定めています。この「Shibusawa 2030 ビジョン」を具現化するため、人材育成方針、社内環境整備方針を以下のとおり定めています。
・人材の育成に関する方針
お客さまや社会の変化に伴い、わたしたちのビジネスは日々変化しています。コーポレートスローガン「永続する使命。」を果たし続けるためには、わたしたち一人ひとりと組織とがともに成長しあう好循環を継続し、挑戦を続けていく必要があります。
OJTとジョブローテーション、各種指名研修による人材教育とともに、自身のキャリアを見据えて学ぶ意欲のある人に公平で持続的な能力開発の機会を提供し続けます。また、成長に向けた努力や挑戦が正当に評価され、更なる成長を後押しする評価制度を整備します。そして、自律的な人材が互いの成長をサポートし協力し合う企業風土の醸成に取り組んでまいります。
・社内環境整備に関する方針
多様な価値観を尊重し、ワークライフバランスの推進、健康経営などに取り組むことで、性別、年齢、国籍、障がいの有無などにとらわれず、誰もが心身ともに健康で、安全かつ安心して活き活きと働ける社内環境を整備してまいります。
以上の方針を踏まえた具体的な取組みは以下のとおりです。
・人的資本経営の基盤構築
2023年度より対面型のタウンミーティングを全国で展開し、幅広く従業員の意見やアイデアを聞き取り、人事諸施策の改善につなげる活動を推進しています。また、年に一度の自己申告制度において、現在の担当職務への意欲・適性、将来のキャリア意向、職場環境に対する意見等を申告してもらい、適材適所の人材配置、キャリア開発、環境整備に活用しています。そして、これらの人的資本情報に関するデータを蓄積できるように、タレントマネジメントシステムの導入準備を進めています。一方でエンゲージメントサーベイを継続実施し、その結果の分析を行うことで、制度や企業風土改善につなげる活動を行います。
・教育育成プログラムの充実
従業員のスキルアップをサポートする教育育成プログラムとして、キャリアに応じた階層別研修や担当業務の品質向上のための業務研修を拡充するとともに、チームビルディングやコーチング等のヒューマンスキル向上を目的とした研修を導入しています。また、海外で活躍するために必要となる国際的な感覚や視点、異文化に対する理解を身につけてもらう海外実務研修を実施しています。今後は、従業員自身の自律的キャリア形成を後押しする希望性研修の新規導入やe-Learningのコンテンツを追加する等、能力開発の機会を順次拡充していきます。
・ダイバーシティの推進
事業環境が大きく変化する中で新たな価値を生み出すために、多様な価値観や経験を有する人材を確保するとともに、その多様性を尊重し、個々が活躍できる企業風土の醸成を図っています。特に女性の活躍は組織の活性化につながると考え、他社と協働で女性社員座談会を開催し、女性のキャリア形成の在り方や、ライフイベントとキャリアの両立、望ましいサポート制度などについて幅広く意見交換を行いました。また、育児との両立支援制度を整備するとともに、男性の育児休業取得促進にも積極的に取り組んでいます。
・健康経営の推進
一人ひとりが心身ともに健康であることが挑戦を続けるエネルギーの源泉であると考え、澁澤健康保険組合とのコラボヘルスにより、データヘルス計画に基づき従業員とその家族の健康増進に努めています。定期健康診断に特定健診項目を加えた特定健康診査を実施し、特定保健指導の対象者に参加を呼びかけ、生活習慣病予防と健康増進を図るプランを推進しています。また、ストレスチェック制度、外部機関による24時間健康相談サービス、メンタルヘルスのカウンセリングサービスを導入しています。
② 指標・目標
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指標 |
2022年度実績 |
2023年度実績 |
目標 |
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10.6 |
|
前年度比増加 |
|
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55.4 |
|
前年度比増加 |
|
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165 |
|
前年度比増加 |
|
|
350 |
|
前年度比増加 |
(注)管理職員は管理職に任用できる資格者を表しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重大な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業環境の変化
当社グループは、倉庫業ならびに陸・海・空にわたる運輸業を主体とした物流事業と不動産賃貸業を中心とする不動産事業を主たる事業としておりますが、物流事業においては、国内外の経済環境や社会情勢の変動および天候等による景気動向の変化が、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
また、不動産事業においても施設の改善と機能拡充を推進しておりますが、首都圏における賃貸オフィス市場の需給バランスの変化や市況動向等の影響を受ける可能性があります。
② 特有の法的規制等に係るもの
当社グループの物流事業は、国内外において法的許認可を事業基盤としており、施設、設備の安全性や車両等の安全運行のために、国際機関および各国政府の法令、規制等様々な公的規制を受けております。また、事業推進にあたっては通商、租税、為替管理、環境、公正取引等に関する法規制の適用を受けております。今後、これらの法的規制の改廃や新たな法的規制が設けられる場合には、当社グループの事業および業績に影響を与える可能性があります。
③ 自然災害の発生
当社グループは、物流事業と不動産事業を展開するにあたり多くの施設を有しております。そのため、地震や台風等の自然災害が発生し、当社グループの施設が被災した場合、当社グループの業績および財務状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループの保有施設につきましては、適切な補償範囲にて企業財産包括保険を付保するとともに、建物の耐震対策として、1981年建築基準法改正以前の耐震基準の設計による建物について、必要に応じ耐震診断を行い、耐震性能が不充分な建物については現行基準並みの耐震補強工事を順次実施しております。
④ 車両燃料油価格の変動
当社グループの物流事業では、車両運行のための燃料の調達が不可欠なものとなっております。燃料費については、調達コストの平準化・削減に努めておりますが、燃料油の市場価格は概ね原油価格に連動しており、世界の景気動向、産油地域の情勢、米国を中心とする在庫水準、投機資金の流入等により影響を受ける可能性があり、燃料油価格の上昇は、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 金利の変動
当社グループは、賃貸不動産や倉庫施設等の新設や更新のため、継続的な設備投資を行っております。有利子負債の削減に努めておりますが、運転資金および設備資金は主として外部借入れにて調達しております。固定金利での借入れや金利スワップ取引により金利の固定化を進めておりますが、変動金利で調達している資金については、金利変動の影響を受けます。また、金利の変動により、将来の資金調達コストが影響を受ける可能性があります。
⑥ システムトラブルによる影響
当社グループは、各種物流情報システムを構築し、インターネットを介して顧客との情報交換を行っておりますが、外部からの不正なアクセスによるシステム内部への侵入や、コンピュータウイルスの感染等の障害が発生する可能性があります。これにより、ウイルス対策ソフト等を導入し、安全対策には万全を期しております。また、大地震、大規模停電への対策として、遠隔地でのデータ・バックアップ・センターの配備をしております。万が一システムのトラブルが発生した場合には、顧客との情報交換のための代替手段を準備しておりますが、復旧までの間、作業効率の低下を来たす可能性があります。
⑦ 個人情報漏洩等の発生
当社グループは、物流事業におけるトランクルーム、引越業務等において、個人情報を取り扱っております。当社グループでは情報保護方針を定め、当方針に基づき策定した「情報保護規程」をすべての役職員が遵守することにより、個人情報漏洩等の予防に努めております。しかしながら、予期せぬ不正アクセスやコンピュータウイルス等の不法行為による個人情報漏洩が発生した場合には、損害賠償請求等により、当社グループの事業および業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
なお、このようなリスクに備えるため、賠償責任保険を付保しております。
また、当社グループは、「情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)」の認証を2005年12月16日に取得し、2014年12月16日に「ISO/IEC 27001:2013」へ移行しております。
⑧ 保有資産の時価変動
当社グループは、減損会計基準およびその適用指針に基づき、2006年3月期より固定資産の減損会計を適用しております。今後、保有資産の時価の下落あるいは当該資産の収益性悪化等により、減損処理の手順に従い減損損失を認識した場合には、当社グループの業績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当期末における当社グループの投資有価証券残高は253億8千4百万円であります。将来において投資先の業績不振や証券市場における市況の悪化等により時価あるいは実質価額が下落し、かつ回復の可能性があると認められない場合には、当社グループの業績および財務状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 海外への事業展開
当社グループは、海外においては、現地子会社等や代理店との連携により、事業活動を行っておりますが、現地の法令規制の改廃や税制等の変更、為替相場の変動あるいは事業活動に不利な政治または経済要因の発生、戦争・テロ・伝染病などの社会的混乱により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 退職給付債務
当社グループでは、従業員の退職給付費用および債務は、割引率や年金資産の期待運用収益率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの数値は将来に対する予測に基づくものであり、今後の退職給付債務の割引率低下や年金資産の運用実績の悪化等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、これらのリスクを緩和するため、2006年4月より確定拠出年金制度を一部導入しております。
⑪ 気候変動に伴うリスク
当社グループは、気候変動に伴う豪雨や台風などの異常気象により、保有する施設の被災や交通網の遮断、高温による労働生産性の低下などの影響を受ける可能性があります。
また、国内外における、企業が排出する温室効果ガスに対する規制強化や、炭素価格の導入等は、操業コストの増加原因となります。
当社グループは、サステナビリティ推進基本方針において、地球温暖化の防止と、安全・安心の実現をマテリアリティ(重要課題)として特定し、モーダルシフトの推進、物流効率化による温室効果ガスの排出削減や、保有する施設の強靭化に取り組んでおります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態および経営成績の状況
全般の概況
|
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比増減 |
|
|
金額 |
比率 |
|||
|
営業収益 |
78,504 |
73,417 |
△5,087 |
△6.5 |
|
営業利益 |
4,894 |
4,271 |
△622 |
△12.7 |
|
経常利益 |
5,847 |
5,091 |
△756 |
△12.9 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
3,759 |
3,728 |
△30 |
△0.8 |
経済環境
・当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善や個人消費の持ち直しにより、緩やかな回復基調となりましたが、物価上昇や世界的な金融引締めに伴う為替への影響が継続したほか、ウクライナ紛争および中東情勢の地政学リスクが増加するなど、依然として先行き不透明な状況で推移しました。
業績の状況
・海上・航空運賃単価下落の影響を主要因として、営業収益は前期比50億8千7百万円(6.5%)減の734億1千7百万円、営業利益は同6億2千2百万円(12.7%)減の42億7千1百万円と前期比減収減益となりました。
・ベトナムにおける内航船市況の悪化に伴い、持分法投資利益が前期比2億6千2百万円(56.7%)減の2億円となり、経常利益は前期比7億5千6百万円(12.9%)減の50億9千1百万円となりました。
・前期に発生した固定資産処分損や一部資産の減損損失が解消したものの、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比3千万円(0.8%)減の37億2千8百万円となりました。
セグメント別の概況
当社グループのセグメントの概況は、次のとおりであります。
(物流事業)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比増減 |
|
|
金額 |
比率 |
|||
|
営業収益 |
72,549 |
67,665 |
△4,884 |
△6.7 |
|
営業利益 |
3,706 |
3,275 |
△431 |
△11.6 |
事業環境
・国内貨物・輸出入貨物の荷動きはともに低調に推移し、エネルギー価格の高止まりや労働力不足等に起因したコストの増加が継続しました。
・コンテナ不足等の海運市況の混乱、航空貨物スペースの供給制約が解消したことにより、海上・航空運賃の単価は前期との比較で下落しましたが、足元では下げ止まり、海上・航空運賃の単価水準は横ばいで推移しております。
業績の状況
・海上・航空運賃単価の下落や貨物取扱量の減少により、国際輸送業務、輸出入荷捌業務の取扱いが減少しました。
・飲料や食品の取扱いが好調に推移したことに加えて、新規に取扱いを開始した工場内物流請負業務が寄与したことにより、倉庫業務の取扱いが増加しました。
・横浜市のR&D施設賃貸の稼働率向上等により、物流施設賃貸業務の取扱いが増加しました。
・3ヵ年の中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」で掲げた事業戦略に基づき、競争力のある物流サービスの提供や業域の拡大に向けて、収益力を強化したほか、機械化・省力化を推進し、業務の効率化や採算性の向上に取り組みました。
(不動産事業)
|
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比増減 |
|
|
金額 |
比率 |
|||
|
営業収益 |
6,199 |
6,002 |
△197 |
△3.2 |
|
営業利益 |
3,255 |
2,996 |
△258 |
△8.0 |
事業環境
・都市部におけるオフィスビルの平均空室率は高い水準を維持し、平均賃料は横ばいで推移しました。
業績の状況
・テナント工事請負業務や一部施設の不動産賃貸収入が減少しました。
・環境負荷低減を目的としたLED照明導入費用等が増加しました。
・既存施設の計画的な保守および改良工事を実施し、現有資産の付加価値向上をはかるとともに、適正料金の収受により、安定的な収益基盤の維持強化に努めました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローの増加がありましたが、投資活動によるキャッシュ・フローおよび財務活動によるキャッシュ・フローの減少により、全体で127億7千7百万円の減少となり、現金及び現金同等物の期末残高は95億4千7百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払いがあったものの、税金等調整前当期純利益および減価償却費の計上による資金留保により、58億2千9百万円の増加となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ9億円下回りましたのは、売上債権の増加等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、物流事業における固定資産の取得による支出および投資有価証券の取得による支出等があったため、69億4千1百万円の減少となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ41億9千8百万円下回りましたのは、物流事業における有形固定資産の取得による支出や投資有価証券の取得による支出が増加したこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入があったものの、社債の償還、長期借入金の約定返済および配当金の支払いにより、116億8千5百万円の減少となりました。
なお、当連結会計年度のキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ96億4千9百万円下回りましたのは、長期借入金の返済による支出が減少したものの、社債の償還による支出が増加したことや、長期借入れによる収入が減少したことによるものであります。
③ 生産、受注および販売の実績
(1) セグメントごとの主要業務の営業収益内訳
当連結会計年度の営業収益をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
営業収益(百万円) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
金額 (百万円) |
比率 (%) |
|
|
物流事業 |
72,549 |
67,665 |
△4,884 |
△6.7 |
|
(倉庫業務) |
17,779 |
18,087 |
308 |
1.7 |
|
(港湾運送業務) |
6,879 |
6,425 |
△453 |
△6.6 |
|
(陸上運送業務) |
32,251 |
31,961 |
△289 |
△0.9 |
|
(国際輸送業務) |
12,725 |
7,995 |
△4,730 |
△37.2 |
|
(その他の物流業務) |
2,914 |
3,194 |
280 |
9.6 |
|
不動産事業 |
6,199 |
6,002 |
△197 |
△3.2 |
|
報告セグメント計 |
78,749 |
73,667 |
△5,081 |
△6.5 |
|
セグメント間の内部営業収益又は |
△244 |
△250 |
△5 |
- |
|
合計 |
78,504 |
73,417 |
△5,087 |
△6.5 |
(注)1.当連結会計年度より表示方法を変更しております。前連結会計年度営業収益および前連結会計年度比増減については、この変更を反映した組替え後の数値を記載しております。表示方法の変更内容については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(表示方法の変更)」に記載のとおりであります。
2.主な相手先の営業収益および当該営業収益の連結営業収益合計に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2) セグメントごとの主要業務の取扱高
1.物流事業
(イ) 倉庫業務
1) 所管倉庫明細
|
項目 |
面積(㎡) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (2023年3月31日現在) |
当連結会計年度 (2024年3月31日現在) |
面積 (㎡) |
比率 (%) |
|
|
所有庫 |
272,940 |
273,671 |
731 |
0.3 |
|
借庫 |
222,101 |
212,585 |
△9,516 |
△4.3 |
|
計 |
495,041 |
486,256 |
△8,785 |
△1.8 |
|
貸庫 |
- |
- |
- |
- |
|
合計 |
495,041 |
486,256 |
△8,785 |
△1.8 |
(注)1.保管面積は倉庫業法に基づく保管用面積(野積面積を除く)であります。
2.上表のほか、保管施設として上屋(港湾運送事業)16,743㎡があります。
2) 入出庫高および保管残高
|
項目 |
数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
|||
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
数量 (トン) |
比率 (%) |
||
|
入庫高 |
2,499,263 |
2,579,382 |
80,119 |
3.2 |
|
|
出庫高 |
2,503,853 |
2,582,254 |
78,401 |
3.1 |
|
|
合計 |
5,003,116 |
5,161,636 |
158,520 |
3.2 |
|
|
月末保管残高 |
年間合計 |
2,712,541 |
2,656,169 |
△56,372 |
△2.1 |
|
年間平均 |
226,045 |
221,347 |
△4,698 |
△2.1 |
|
3) 貨物回転率
|
項目 |
貨物回転率(%) |
前連結会計年度比増減 (ポイント) |
|
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
||
|
数量 |
92.2 |
97.2 |
5.0 |
|
(注)算定方式 |
貨物回転率 = |
(年間入庫高+年間出庫高)×1/2 |
× 100 |
|
月末保管残高年間合計 |
(ロ) 港湾運送業務
|
項目 |
取扱数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
取扱数量 (トン) |
比率 (%) |
|
|
船内荷役 |
911,152 |
1,042,830 |
131,678 |
14.5 |
|
はしけ運送 |
- |
- |
- |
- |
|
沿岸荷役 |
400,999 |
454,222 |
53,223 |
13.3 |
|
合計 |
1,312,151 |
1,497,052 |
184,901 |
14.1 |
(ハ) 陸上運送業務
|
項目 |
数量(トン) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
数量 (トン) |
比率 (%) |
|
|
数量 |
7,675,004 |
7,470,958 |
△204,046 |
△2.7 |
2.不動産事業
|
項目 |
面積(㎡) |
前連結会計年度比増減 |
||
|
前連結会計年度 (2023年3月31日現在) |
当連結会計年度 (2024年3月31日現在) |
面積 (㎡) |
比率 (%) |
|
|
賃貸ビル面積(契約面積) |
94,720 |
94,892 |
172 |
0.2 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 当連結会計年度の財政状態の分析
当社グループの連結会計年度末の資産の残高は、前連結会計年度末に比べ30億5千8百万円(2.6%)減少して1,127億7千2百万円となりました。このうち流動資産は129億1千3百万円(31.2%)減少し284億5千3百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金および有価証券の残高が減少したこと等によるものであります。固定資産は98億5千8百万円(13.2%)増加し843億7百万円となりました。固定資産のうち有形固定資産は、前連結会計年度末に比べ57億7千2百万円(11.5%)増加し560億6千1百万円となりました。この主な要因は、減価償却費が計上されたものの、物流事業における新規設備投資および不動産事業における設備更新のための投資を実施したことによるものであります。また、投資その他の資産は41億2百万円(17.7%)増加し272億8千9百万円となりましたが、この主な要因は、株式相場の上昇により保有する投資有価証券の時価が増加したことおよび投資有価証券の取得等によるものであります。
連結会計年度末の負債の残高は、前連結会計年度末に比べ78億1千3百万円(13.5%)減少して501億4千5百万円となりました。このうち流動負債は64億3千6百万円(27.7%)減少し168億2千8百万円となり、固定負債は13億7千6百万円(4.0%)減少し333億1千6百万円となりました。流動負債の減少の主な要因は、設備関係の未払金の残高の増加があったものの、社債の償還があったこと等によるものであり、固定負債の減少の主な要因は、投資有価証券の時価評価増に係る繰延税金負債が増加したものの、借入金の約定返済が進んだこと等によるものであります。
連結会計年度末の純資産の残高は、前連結会計年度末に比べ47億5千4百万円(8.2%)増加して626億2千7百万円となりました。この主な要因は、配当金の支払いがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益が計上されたことやその他有価証券評価差額金が増加したこと等によるものであります。
上記の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の49.3%から54.7%となり、また、1株当たり純資産額は3,766円62銭から4,074円00銭となりました。
なお、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」に記載のとおり、物流業界では、国内貨物・輸出入貨物の荷動きはともに低調に推移し、エネルギー価格の高止まりや労働力不足等に起因したコストの増加が継続しました。また、不動産業界では、都市部におけるオフィスビルの平均空室率は高い水準を維持し、平均賃料は横ばいで推移するなど、いずれも厳しい状況が続きました。
こうした事業環境のもと、当社グループは、3ヵ年の中期経営計画「澁澤倉庫グループ中期経営計画 2023」で掲げた事業戦略に基づき、競争力のある物流サービスの提供や業域の拡大に向けて、収益力を強化したほか、機械化・省力化を推進し、業務の効率化や採算性の向上に取り組みました。また、不動産事業においては、既存施設の計画的な保守および改良工事を実施するとともに、適正料金の収受により、安定的な収益基盤の維持強化に努めました。
この結果、当連結会計年度の営業収益は、物流事業で、海上・航空運賃単価の下落や貨物取扱量の減少に伴い、国際輸送業務、輸出入荷捌業務の取扱いが減少したことに加えて、不動産事業で、テナント工事請負業務や一部施設の不動産賃貸収入が減少したことにより、前期比50億8千7百万円(6.5%)減の734億1千7百万円、営業利益は、同6億2千2百万円(12.7%)減の42億7千1百万円、経常利益は、ベトナムにおける内航船市況の悪化に伴い、持分法投資利益が減少し、同7億5千6百万円(12.9%)減の50億9千1百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に発生した固定資産処分損や一部資産の減損損失が解消したものの、前期比3千万円(0.8%)減の37億2千8百万円となりました。
なお、営業収益営業利益率は5.8%、総資産経常利益率は4.5%、自己資本当期純利益率は6.3%となっております。
また、事業セグメント別では、物流事業の営業収益は前期比48億8千4百万円(6.7%)減の676億6千5百万円、営業利益は前期比4億3千1百万円(11.6%)減の32億7千5百万円となりました。不動産事業の営業収益は前期比1億9千7百万円(3.2%)減の60億2百万円、営業利益は前期比2億5千8百万円(8.0%)減の29億9千6百万円となりました。
③ 資本の財源および資金の流動性
ⅰ) 資金需要
当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、物流事業に関わる倉庫荷役費、港湾荷捌費、陸上運送費および不動産事業に関わる不動産維持費、付帯費ならびに各事業についての販売費及び一般管理費があります。
また、設備資金需要としては、物流施設・機器および不動産施設への投資ならびにシステム開発等があります。
ⅱ) 財務政策
当社グループの事業活動に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用および金融機関からの借入ならびに社債の発行により資金を調達しており、運転資金および設備資金につきましては、国内・海外子会社のものを含め当社において一元管理しております。
資金調達に際しては、将来の金利変動リスクを避けるために、一部金利スワップを利用しており、調達コストの低減に努めております。
また、運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関と当座貸越契約およびシンジケーション方式によるコミットメントライン契約を締結しております。
④ 重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。