文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、持株会社である当社と国内外の連結子会社により構成されるグループ経営を展開しており、証券ビジネス及びアセットマネジメントビジネスをコアとする資産運用サービスの提供を通じて持続的な企業価値の向上に努めてまいります。
(2)経営戦略等
当社では、2023年4月の創業100周年を越えてお客さまから信頼され成長を続けられる体制を確立するための改革を加速しており、2020年4月にスタートした中期経営計画においては、お客さまニーズの多様化やビジネスチャンスの拡大に着実に対応するため、「お客さま本位のサービス提供」「シェアードバリューの創出」「デジタライゼーションへの取り組み」を基本方針に据え、企業価値の向上に努めております。
計画2年目にあたる当年度は、引き続きグループ証券各社においてお客さま体験価値(CX)向上に努めました。中核の岡三証券では多様化するお客さまニーズに応えるためのマーケティング起点の営業組織改革の実施、商品開発体制の強化等を目的としたプロダクト・ソリューション部門の新設に加え、お客さまとの接点拡充に向けた店舗戦略を推進いたしました。グループ力の強化については、岡三証券と岡三オンライン証券の経営統合を完了し、「対面とネットの融合」による新たな付加価値提供に向けての取組みを進めたほか、クラウドファンディング事業会社との資本業務提携など、事業基盤の拡大に努めました。また、デジタルシフト時代にふさわしい商品・サービスの開発と提供に向けた体制構築のため、デジタル証券ビジネスへの参入を決定しました。
当社グループでは引き続き、中期経営計画に基づき、社会とともに発展し続ける企業を目指して努力を続けてまいります。
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岡三証券グループ 中期経営計画 |
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(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く経営環境は大きな転換期を迎えています。グローバリゼーションからの揺り戻しやデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展、サステナビリティの潮流など、従来の秩序が壊れつつあり、新たな時代が到来しています。わが国の証券ビジネスにおいては、手数料の構造変化や様々な制度改革、急速なデジタルシフトなどにより、ビジネスモデルの在り方自体が大きく変容しつつあります。他方、わが国の個人金融資産に占めるリスク資産の比率は欧米と比較して依然小さく、「人生100年時代」のもと資産寿命を伸ばす必要性が高まるなか、今後、新たな投資家と新たな資金の流入により証券ビジネスの成長ポテンシャルは高いと考えております。既に若年層を中心に変化の兆しもあり、変化への対応力次第で拡大成長の機会が拡がってくると捉えています。
そのような中、当社グループは、中期経営計画(2020~2022年度)のもと、様々な領域において改革を進めております。中核事業であるリテールビジネスでは、多様化するお客さまニーズに対応するため、お客さま一人ひとりのニーズに合ったサービスを提供する「One to Oneマーケティング」の実現を目指しております。資産全体のコンサルティングを行うポートフォリオ提案やソリューションビジネスなど新たな「付加価値」の提供力を高めることで、金融商品の売買手数料に過度に依存しないビジネスモデルの構築を進めています。また、大きな環境変化に対応するには、柔軟性と迅速性が不可欠です。従来の自前主義からの脱却を進めることにより、経営資源の効率化やサービスの質的向上を図る方針です。更に、競争力、企業価値を高めるため人材に積極的に投資をし、育成してまいります。
証券ビジネスは「変化」を「エネルギー」とする業態であり、変化が激しい時代だからこそ、果たすべき役割は大きいと感じています。社会のサステナビリティに貢献をし、変革を進める企業に高い価値評価を与え、資金供給を行い、マネーの流れを創り出すことで私達の社会的使命を果たしたいと考えます。当社グループは2023年4月に創業100周年を迎えます。すべてのお客さま、社員、株主の皆さま、更には社会にも感謝をし、引き続き貢献できる企業であるよう努めてまいります。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、いかなる環境下においても安定的な収益性を確保することが重要との考え方から、連結ROE 10%の安定的な達成を長期的な経営目標として掲げております。
証券業界を取り巻く環境は目まぐるしく変化していくなか、証券ビジネスを中核事業とする当社グループは環境の変化に対応するための戦略を実行する必要があります。そのため、リスク管理の果たす役割はますます重要となってきております。
このような環境下、当社グループではリスクアペタイトフレームワークの枠組みを構築し、当社グループが直面している経営環境及び経営方針に従った事業計画を実行する上で生じるリスクを識別、管理することが重要であると考えています。
そのため、グループの事業特性を考慮し、管理すべきリスクとしてリスクカテゴリを定めています。その上で、リスクカテゴリ内の各リスクを識別し、リスクを定量化した上で、事業計画達成のために進んで受け入れるべきリスクの種類と総量をリスクアペタイトとして表現し、定量化されたリスクがリスクアペタイトの範囲に収まるように管理を実施しております。なお、管理すべきリスクの種類及び管理方針は毎年見直しを行い、経営環境、事業戦略等の変化に応じて見直しを実施しています。
一方で、リスクのコントロールが困難であり、当社の業務遂行への影響度が大きいと思われる事案に対しては、別途、業務継続計画を定めて対応することとしております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであることから、実際の結果と異なる可能性があります。また、当該記載事項については、必ずしもリスク要因に該当しない場合もありますが、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性等を考慮し記載しております。
(1) 経営環境リスク
政治、経済環境、業界構造、競合企業、法規制、資本調達、株主構成、自然災害、テクノロジーの革新等の外部経営環境の変化によって当社グループが損失を被る可能性があります。
① 金融商品取引業の収益変動
当社グループの主要事業であります金融商品取引業は、日本国内のみならず世界各地の市況動向や経済動向により投資需要が変化し、顧客からの受入手数料、トレーディング損益等が大幅に変動しやすいという特性があり、これら国内外の金融商品市況の動向や金融商品取引所における取引の繁閑が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合企業
当社グループは対面営業を主力とする専業証券として、長年に亘り地域密着した営業活動により競争優位を築いてまいりましたが、近年の証券業界においては、同業他社に加えて銀行等の競合、異業種やフィンテック系スタートアップからの参入、及び業界再編などにより、今後も激しい競争環境が続くことが予想されます。このような状況下、当社グループの競争力の優位性が維持できない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法規制
当社グループは、その業務の種類に応じて、法令・諸規則の規制を受けております。岡三証券株式会社を始め国内で金融商品取引業を営む証券子会社等は、金融商品取引法の規制を受けるほか、各金融商品取引所、日本証券業協会等の自主規制機関による諸規則等の規制を受けます。また、海外の子会社については、現地法上の規制を受けます。
当社グループが受ける法令・諸規則の規制から引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」に基づく体制整備を行っております。
しかし、将来において、法的規制が強化されたり、現在予期し得ない法的規制等が設けられる可能性があり、関連法令を遵守できなかった場合、規制、命令により業務改善や業務停止の処分を受けるなど、事業活動が制限され当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 経営戦略リスク
当社グループは、2020年3月に新中期経営計画を発表し、「お客さま大事の経営」の経営哲学の下、お客さまニーズに合わせた営業体制の再構築、 グループリソースを共用化できるプラットフォームの構築、テクノロジーの活用によるサービス革新・新たな価値の提供を企図して、各種の施策を推進しています。
将来これらの施策が計画通りに進行しない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 事務リスク
事務処理のプロセスが正常に機能しないこと、役職員の行動が不適切であること、又は災害・犯罪等の外部的事象の発生により、当社グループに対する損害賠償請求や信用力の低下等のリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」に基づく体制整備を行っています。
しかし全ての事象に対応することは不可能であるため当社の想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 資金流動性リスク
当社グループの主要な事業であります金融商品取引業においては、事業の特性上、業務執行に必要となる大量の資金を機動的かつ安定的に調達する必要があります。財政状態の悪化、資産の流動性悪化、信用格付低下等の要因により短期金融市場・資本市場等からの資金調達が困難となる、あるいは資金調達コストが上昇するなど流動性リスクの顕在化に迅速に対応するため、ストレステストを実施することで、相場急変時の影響をモニタリングしております。
しかし、予想を超えた量の資金流出や急激な信用格付低下といった当社の想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) システムリスク
当社グループの業務執行に際しては、コンピュータ・システムの利用は不可欠なものとなっております。そのため、インターネット取引や当社グループが業務上使用しているコンピュータ・システムや回線が品質不良、外部からの不正アクセス、災害や停電等の諸要因によって引き起こされるリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」に基づく体制整備を行っております。
当社グループの証券基幹システムについて、当該基幹システムのリプレース計画に支障をきたす事象や状況が生じた場合、証券事業の停止やサービス品質の低下等を招き、当社グループの信頼を大きく損なう可能性もあります。
(6) 情報セキュリティリスク
コンピュータ・システムの不正利用等による顧客及び役職員の個人情報、経営情報等の機密情報の漏洩等、引き起こすリスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」に基づく体制整備を行っております。
顧客情報の流出や個人情報の漏洩等が生じた場合、損害賠償の請求や、監督官庁から行政処分を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され顧客の流出につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 風評リスク
当社グループに対する噂、悪評、信用不安情報や誤解、誤認、誇大解釈等が、マスコミ、その他社会一般等に広がることにより、当社の評価、評判が低下し、当社の業績に悪影響が生じる等の損失を被る可能性があります。
(8) 災害リスク
自然災害の発生や病原性感染症の拡大等に備えて、「業務継続計画(BCP)の策定」及び「危機対策本部の設置」によるリスク管理体制を構築しておりますが、当社の想定を超える不測の事態が発生する場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 労務リスク
従業員の「就業規則」等の諸規則違反、職場の安全衛生環境の問題及び労務慣行の問題に起因して当社が損失を被る可能性並びに役職員の不法行為により使用者責任を問われ、当社が損失を被る可能性があります。
(10) 経営法務リスク
法令等や各種取引上の契約等において、法令遵守違反や契約違反その他これらに伴う罰則の適用や損害賠償等の発生により、当社が損失を被る可能性があります。これらの経営法務リスクについてはグループ各社が個別に管理しており、リスクを網羅的に把握するとともに、管理の適正性をモニタリングすることによって、リスクを適正に管理できるよう、「統合リスク管理規程」に基づく体制整備を行っております。
当連結会計年度末現在において当社グループの事業に重要な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 市場・取引先リスク、市場流動性リスク
当社グループでは、自己の計算において株式・債券・為替等及びそれらの派生商品などの金融資産を保有しておりますが、急激な市況変動・金利変動等によりこれらの金融資産の価値が変動した場合、取引先が決済を含む債務不履行に陥り保有する有価証券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合、加えて、市場の混乱等により市場において取引が出来なかったり、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることにより当社グループが損失を被る場合等、元本の毀損や利払いの遅延等による損失に対応するため、リスク相当額の限度額を定め、日々モニタリングしています。
しかし、予想を超えた急激な市況変動・金利変動といった当社の想定を超える不測の事態が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響などにより、回復は総じて弱いものとなりました。人手不足や世界的な半導体不足等による供給制約の影響もあり、輸出や鉱工業生産は力強さに欠け、設備投資も持ち直しの動きに足踏みがみられました。海外では、米国経済は雇用の回復を伴い堅調に推移した一方、中国経済は電力不足や不動産セクターの債務問題などから回復の勢いが鈍化したほか、3月以降はロシアによるウクライナ侵攻の影響から資源価格が高騰し、世界的に景気後退懸念が広がりました。
こうした環境のなか、2021年4月に一時30,000円台を回復していた日経平均株価は、米国のインフレ高進や急速な金融引き締めへの警戒感、国内での新型コロナウイルス感染再拡大による景気減速懸念などを受けて夏場にかけて軟調に推移しました。9月上旬にかけては、自民党総裁選を受けた新政権誕生への期待に加え、新型コロナウイルスのワクチン接種進展を好感して日経平均株価は再び30,000円を突破し、およそ31年ぶりの高値となる30,795円78銭をつけたものの、秋以降は、資源価格上昇やオミクロン型変異株の感染拡大などが相場の上値を抑え、日経平均株価は伸び悩みました。2022年に入ると、地政学リスクの顕在化や商品市況の高騰を受けたインフレ懸念などを背景に一時25,000円を割る場面があったものの年度末にかけては反発し、日経平均株価は27,821円43銭で当年度の取引を終えました。
為替市場では、ドル円相場は9月末にかけて概ね1ドル=110円を挟んだ水準で推移しましたが、その後は米国の金融政策正常化への懸念からやや円安ドル高方向へレンジを切り上げました。年明け以降は世界的な資源高を受けて欧米主要国の国債利回りが上昇し、日本の10年国債利回りも一時6年2カ月ぶりとなる0.25%をつけましたが、日本銀行が金利上昇を抑える「指し値オペ」を実施したことから日米の金融政策の方向性の違いが意識され、ドル円相場は一時6年7カ月ぶりの水準となる1ドル=125円台まで円安が進みました。年度末にかけては急激な円安進行への警戒もあり、1ドル=121円台で当年度の取引を終えました。
中核子会社の岡三証券株式会社では組織改革を行い、多様化するお客さまのニーズに応じて最適な商品・ソリューションを提供する体制の強化を図りました。また、お客さまとの接点拡充のための店舗戦略として、首都圏に2つの統合拠点「日本橋室町本店」と「東京中央店」、並びに複数のサテライト拠点を開設しました。2022年1月には、岡三オンライン証券株式会社との経営統合を行い、対面コンサルティングサービスと先進のオンラインサービス双方の強みを兼ね備えたサービス体制の構築を進めたほか、暗号資産CFDの取り扱いを開始するなど、新たな商品の提供を通じた幅広いお客さまニーズへの対応にも取り組みました。岡三アセットマネジメント株式会社においては、グループ内の各販売会社との連携を掲げ、魅力あるファンドを開発し設定するとともに、お客さまへ分かりやすい内容のリーフレットや動画コンテンツ等の情報提供を行い、運用資産の拡大に努めました。商品としては、新規設定した「米国ネクストビジョンファンド(為替ヘッジなし)」や「米国バイオ&テクノロジー株オープン」などの公募投信において純資産残高が増加しました。
また、事業基盤拡充への戦略的取り組みとして、株式投資型クラウドファンディング事業会社との資本業務提携や、2022年内の営業開始を目標としたデジタル証券ビジネスへの参入など、デジタルシフトの進む時代にふさわしい商品及びサービスの開発・提供に向けた体制構築を推進いたしました。さらには、事業を通じたサステナブルな社会の実現に向けて、環境負荷の軽減、TCFD提言に基づく分析・開示を含む気候変動への対応、ダイバーシティ推進等に取り組みました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べ331億26百万円増加し8,165億67百万円、負債合計は前連結会計年度末に比べ335億70百万円増加し6,267億6百万円、純資産合計は前連結会計年度末に比べ4億43百万円減少し1,898億60百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は737億78百万円(前年度比109.7%)、純営業収益は725億97百万円(同109.8%)となりました。販売費・一般管理費は676億21百万円(同110.8%)となり、経常利益は68億98百万円(同92.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億73百万円(同167.4%)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
証券ビジネスの営業収益は667億57百万円(前年度比109.8%)、セグメント利益は53億38百万円(同123.4%)となりました。
アセットマネジメントビジネスの営業収益は95億64百万円(前年度比105.0%)、セグメント利益は3億62百万円(同76.7%)となりました。
サポートビジネスの営業収益は135億29百万円(前年度比105.2%)、セグメント利益は4億49百万円(同32.2%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ172億71百万円増加し、797億89百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、42億円となりました。これは主に、有価証券担保貸付金及び有価証券担保借入金の増減423億97百万円、税金等調整前当期純利益153億54百万円、信用取引資産及び信用取引負債の増減103億61百万円による資金の獲得と、トレーディング商品の増減488億74百万円、投資有価証券売却損益95億81百万円、短期差入保証金の増減77億87百万円、預り金の増減61億11百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は、70億41百万円となりました。これは主に、投資有価証券の売却による収入108億38百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、132億64百万円となりました。これは主に、短期借入金の純増減169億2百万円による資金の獲得と、配当金の支払額29億63百万円、長期借入金の返済による支出7億83百万円による資金の使用の差し引きによるものであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ331億26百万円増加し8,165億67百万円となりました。これは主に、現金・預金が179億33百万円、トレーディング商品が153億48百万円、約定見返勘定が86億65百万円、短期差入保証金が77億87百万円増加した一方、投資有価証券が123億54百万円減少したことによるものであります。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ335億70百万円増加し6,267億6百万円となりました。これは主に、トレーディング商品が678億17百万円、有価証券担保借入金が475億15百万円、短期借入金が149億54百万円増加した一方、約定見返勘定が926億76百万円減少したことによるものであります。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ4億43百万円減少し1,898億60百万円となりました。これは主に、利益剰余金が71億6百万円増加した一方、その他有価証券評価差額金が72億73百万円、非支配株主持分が4億20百万円減少したことによるものであります。
(トレーディング業務の概要)
当連結会計年度の年度末日時点のトレーディング商品の残高は以下のとおりであります。
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|
2021年3月31日現在 (百万円) |
2022年3月31日現在 (百万円) |
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資産の部のトレーディング商品 |
212,318 |
227,666 |
||
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|
商品有価証券等 |
212,312 |
227,583 |
|
|
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|
株式・ワラント |
3,343 |
5,085 |
|
|
|
債券 |
208,969 |
221,498 |
|
|
|
CP及びCD |
- |
999 |
|
|
|
その他 |
- |
- |
|
|
デリバティブ取引 |
6 |
83 |
|
|
|
|
オプション取引 |
5 |
8 |
|
|
|
先物取引 |
0 |
75 |
|
負債の部のトレーディング商品 |
157,593 |
225,410 |
||
|
|
商品有価証券等 |
157,560 |
225,361 |
|
|
|
|
株式・ワラント |
1,417 |
1,935 |
|
|
|
債券 |
156,143 |
223,338 |
|
|
|
CP及びCD |
- |
- |
|
|
|
その他 |
- |
88 |
|
|
デリバティブ取引 |
32 |
48 |
|
|
|
|
オプション取引 |
5 |
1 |
|
|
|
先物取引 |
27 |
47 |
2)経営成績
当連結会計年度における当社グループの営業収益は737億78百万円(前年度比109.7%)、純営業収益は725億97百万円(同109.8%)となりました。販売費・一般管理費は676億21百万円(同110.8%)となり、経常利益は68億98百万円(同92.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益は100億73百万円(同167.4%)となりました。
なお、当連結会計年度より、株式会社証券ジャパンについて損益計算書を連結しております。
受入手数料
受入手数料の合計は465億98百万円(前年度比106.3%)となりました。主な内訳は次のとおりです。
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|
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前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
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受 |
入手数料 |
43,850 |
46,598 |
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委託手数料 |
22,576 |
18,966 |
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引受け・売出し・特定投資家向け 売付け勧誘等の手数料 |
434 |
1,106 |
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募集・売出し・特定投資家向け 売付け勧誘等の取扱手数料 |
6,937 |
11,005 |
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その他の受入手数料 |
13,902 |
15,520 |
委託手数料
当連結会計年度における東証の1日平均売買高(内国普通株式)は16億94百万株(前年度比89.3%)、売買代金は3兆4,147億円(同109.1%)となりましたが、中核子会社である岡三証券株式会社において、株価上昇を背景に取引額が急増した前連結会計年度と比較して、個人のお客さまを中心に委託売買代金は減少しました。
これらの結果、株式委託手数料は183億83百万円(同84.0%)となりました。また、債券委託手数料は0百万円(同6.6%)、その他の委託手数料は5億82百万円(同86.9%)となり、委託手数料の合計は189億66百万円(同84.0%)となりました。
引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料
当連結会計年度における株式の引受けは、主幹事案件や大型案件の引受け、新規株式公開件数の増加などから前連結会計年度末比で引受金額・引受件数ともに増加しました。一方、債券の引受けは、地方債や財投機関債、事業債などの主幹事を務めるとともに、大型の個人投資家向け社債を引受けるなど実績を重ねました。
これらの結果、株式の手数料は7億2百万円(前年度比255.7%)、債券の手数料は4億3百万円(同253.0%)となり、株式・債券を合わせた引受け・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の手数料の合計は11億6百万円(同254.7%)となりました。
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料
募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料、その他の受入手数料につきましては、投資信託関連収益がその大半を占めています。
当連結会計年度における公募投資信託の販売額は、米国を中心としたインフレ懸念や地政学問題が意識されつつも、世界的な経済活動の回復を背景に前連結会計年度末比で増加しました。特に、持続的な成長が期待できる医療系の企業に投資するファンドのほか、年度後半からは新規に導入した米国のテクノロジー関連企業に投資するファンドなどを中心に販売額が増加しました。
これらの結果、募集・売出し・特定投資家向け売付け勧誘等の取扱手数料は110億5百万円(前年度比158.6%)となりました。また、その他の受入手数料については、主に投資信託の信託報酬等により155億20百万円(同111.6%)となりました。
トレーディング損益
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前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) (百万円) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) (百万円) |
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|
ト |
レーディング損益 |
20,767 |
24,021 |
|
|
株券等トレーディング損益 |
13,125 |
14,658 |
|
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債券等トレーディング損益 |
7,882 |
9,561 |
|
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その他のトレーディング損益 |
△240 |
△198 |
株券等トレーディング損益は主に米国株式を中心とした外国株式の国内店頭取引、債券等トレーディング損益は外国債券の顧客向け取扱いに伴う収益がその大半を占めています。
当連結会計年度においては、外国株式は個人の国内店頭取引の売買が前年度比で増加し、また外国債券も前年度比で個人向け・法人向けともに販売額が増加しました。
これらの結果、株券等トレーディング損益は146億58百万円(前年度比111.7%)、債券等トレーディング損益は95億61百万円(同121.3%)となり、その他のトレーディング損益1億98百万円の損失(前年度は2億40百万円の損失)を含めたトレーディング損益の合計は240億21百万円(前年度比115.7%)となりました。
金融収支
金融収益は21億80百万円(前年度比126.5%)、金融費用は11億80百万円(同102.6%)となり、差引の金融収支は9億99百万円(同174.5%)となりました。
その他の営業収益
金融商品取引業及び同付随業務に係るもの以外の営業収益は、9億78百万円(前年度比106.6%)となりました。
販売費・一般管理費
販売費・一般管理費は、人件費や事務費の増加等により、676億21百万円(前年度比110.8%)となりました。
営業外損益及び特別損益
営業外収益は受取配当金の計上等により21億18百万円、営業外費用は1億95百万円となりました。また、特別利益は投資有価証券売却益の計上等により96億79百万円、特別損失は12億23百万円となりました。
3)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの営業収益は、株式、債券、金利、為替等の市況環境変動の影響を受けるため、当社グループの経営成績は連結会計年度毎に大きく変動する傾向にあります。
このため、当社といたしましては、グループ企業それぞれの事業の強みを全体で共有・活用し、多様化する資産運用ニーズに迅速かつ的確に対応できる体制の確立を目指すことにより、安定した成長を実現できる経営体質の構築に努めております。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的な活用が全てのステークホルダーの利益につながるものと考え、ROE(株主資本利益率)を、重要な指標と位置づけております。当連結会計年度におけるROEは、営業収益が増加したことに加え、特別利益の計上等により親会社株主に帰属する当期純利益が前年度比で増加したことから、6.0%(前年度比2.3ポイント上昇)となりました。
当社グループでは、会社成長とともに、長期安定的な目標としてROE10%を目指し、取り組みを続けてまいります。
5)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
証券ビジネス
証券ビジネスにおいては、株式委託手数料が減少した一方、投資信託に係る収益やトレーディング損益が増加し、当連結会計年度における証券ビジネスの営業収益は667億57百万円(前年度比109.8%)、セグメント利益は53億38百万円(同123.4%)となりました。
アセットマネジメントビジネス
アセットマネジメントビジネスにおいては、公募株式投資信託の運用資産平均残高の増加により、当連結会計年度におけるアセットマネジメントビジネスの営業収益は95億64百万円(前年度比105.0%)となった一方、運用に係る費用の増加により、セグメント利益は3億62百万円(同76.7%)となりました。
サポートビジネス
当連結会計年度におけるサポートビジネスの営業収益は135億29百万円(前年度比105.2%)、セグメント利益は4億49百万円(同32.2%)となりました。
上記のセグメント別営業収益には、セグメント間の内部営業収益又は振替高が含まれており、セグメント利益は連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資本の流動性につきましては、次の通りです。
当社グループのコア事業であります証券ビジネスの資金需要の主なものは、信用取引買付代金の顧客への貸付及びトレーディングのロングポジションであり、逆に資金調達の主なものは金融機関借入、コールマネー、信用取引売却代金の顧客からの借入及びトレーディングのショートポジションであります。これらは、市況環境の変動の影響を受け、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与えることとなります。なお、岡三証券株式会社では、安定的かつ機動的な財務運営のため、株式会社みずほ銀行をアレンジャーとしたコミットメントラインを総額210億円として更新いたしました。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、2022年5月26日開催の取締役会において、当社子会社6社につきまして、2023年3月期中をめどに当社による完全子会社化を進める方針を決定いたしました。
また、当社は2022年5月27日、SBIホールディングス株式会社との間で、当社連結子会社である岡三アセットマネジメント株式会社の合弁会社化に向けた基本合意書を締結いたしました。
詳細は、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)に記載のとおりであります。
該当事項はありません。