第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

(1)経営方針

当社グループは、「計測、認識、制御といった人間の感覚の働きをエレクトロニクスをはじめとする先端技術で商品化していく事業を核として、社会に貢献すること」を経営理念としています。

また、当社グループは自らの発展に止まらず、全社員がその一員であることを誇りに思えるような、社会に広く貢献する質の高い会社を目指しています。このために、当社グループはコーポレート・ガバナンスを充実させ、内部統制体制を適正に整備・運用し、正しい決算を行って財務報告の信頼性を確保していきます。

 


 

(2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標

<長期ビジョン>

当社グループは2021年6月10日に、10年先となる2030年を見据えた長期ビジョン「東京計器ビジョン2030」を策定し、開示しました。「東京計器ビジョン2030」では、当社が創業から125周年という節目にあたりこれからの150周年、200周年に向かって持続的な成長を続けるため、当社グループが2030年にありたい姿を纏めました。

 


 


 

これまで当社は国内のお客様の困りごとに寄り添い、ご期待に沿えるよう励んでまいりました。

その結果、国内市場でいくつものニッチトップ事業を産み出すことができましたが、更なる成長のためには、もっと大きな視点での事業展開が必要であるとの認識に至りました。

今後は、これまで積み重ねた独創技術の有効活用によるイノベーションによって、SDGs(持続可能な開発目標)を切り口とした「グローバルニッチトップ事業」を創出して、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るステージへと転換してまいります。

 

今後注力するグローバル市場を対象とする開発では、仕様の違い、適用規格の違い、スピードアップを図るための自前主義に拘らない生産・販売・技術の補完を目的としたM&A等で多額の投資が必要となることを予想しております。これまで強化してきた財務基盤による資金を有効活用しながら、先行して育ちつつある幾つかの成長ドライバーを早期に立ち上げていきます。
そして、収益源として育った成長ドライバーと既存事業の拡大から得られた利益を再投資に回す成長サイクルを構築しながら、新たな成長ドライバーの発掘・育成によって事業規模を拡大していきます。

このようなことから2030年度の目指す経営指標として、連結売上高 1,000億円以上、連結営業利益100億円以上、連結営業利益率10%以上、自己資本利益率(ROE)10%以上の目標を設定しました。

 

2030年までの経営目標

 

成長力

連結売上高

1,000億円以上

収益力

連結営業利益

100億円以上

 

 

連結営業利益率

10%以上

 

 

自己資本利益率

10%以上

 

 

 

 

 

 

 

・2030年の予測される社会から5つの事業強化領域を定義

当社グループが予測する2030年の社会は、安全・安心な生活を基盤として、SDGsを共通認識とした低炭素社会をはじめとする環境対応を継続していきます。そこに、新しい技術等により発展していく、AI、IoT、宇宙ビジネスの市場が拡大していくと考えております。これらの社会環境から、当社グループが成長していくために注力すべき事業領域を5つ設定しました。

 


 

・現有事業、保有技術を事業強化領域に照らし合わせ、成長ドライバー候補を設定

事業強化領域に、現有事業及び保有技術の関係性を確認し、当社グループが新しく挑戦していく事業の候補を成長ドライバー候補として設定しました。また、既存事業の成長に向けた、各々の深化ポイントを設定しました。

 


 


 

<2024‐2026年度中期経営計画>

「東京計器ビジョン2030」を実現するために、2021年度から当期までの3ヶ年は「基盤強化」のフェーズと位置付けておりました。2024年度から2026年度の3ヶ年は、成長に向けた飛躍のフェーズとして、2030年の目標達成に向けて、既存事業の確実な成長及び収益の向上と、成長ドライバーを収益に結び付けるフェーズと位置付けております。

 


 

2021年度(2022年3月期)からの3ヶ年中期事業計画では、コロナ禍における想定以上の原材料費の上昇や原油高等によるエネルギー価格の上昇により、利益については計画を大幅に下回る結果となりました。そこで、当社グループ全体に対して、売上を拡大するだけでなく、収益力の向上に重点を置いた指針にすることとします。よって、2024年度(2025年3月期)からの3ヶ年中期経営計画の基本方針は、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現し、ステークホルダーの要請と期待に応えていくため、以下3つの基本方針に変更することとしました。

 


 

 

① 収益力の向上

2030年度(2031年3月期)に連結営業利益率10%以上、自己資本利益率(ROE)10%以上を目標にしていますが、企業活動の継続のためはもちろん、利益率を2030年度(2031年3月期)の目標達成に近づけるため、収益力の向上に重点を置いた事業戦略を推進してまいります。

 

② 事業領域の拡大

当社グループは、これまで培ってきた有形・無形の様々な経験と強みを生かしながら、社会課題の解決に貢献する特定市場向けの新製品、新事業を創出しトップに育てる“ニッチトップ戦略”を以って、事業領域の持続的な拡大に挑戦してまいります。また、新製品・新事業については、技術・製品サイクルが早まっている中、競争環境の激化、研究開発費の高騰等に対応するため、グローバルな視点を持ちながら、適宜、M&Aやオープン&クローズ戦略も活用してまいります。

 

③ 経営基盤の強化

「収益力の向上」と「事業領域の拡大」を目指し、「東京計器ビジョン2030」の経営指標を達成するためにも、当社グループ全体で人的資本の強化、ガバナンスの強化、資本効率の改善、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、開発投資の実行を推進して、経営基盤の強化を図ってまいります。

 

(3)経営環境と対処すべき課題

次期(2025年3月期)につきましては、原油・原材料価格の高騰等に端を発した物価上昇、各国の金融引き締め継続による景気回復の遅れと円安の継続への懸念が残る中で、ウクライナ情勢や米中対立、中東情勢等の地政学リスクの一層の高まりや米国大統領選挙結果の影響等、不確実な状況が継続すると見込まれます。

このような経営環境の中、次期の見通しにつきましては、防衛・通信機器事業で売上増が見込まれていることに加えて、他事業も堅調に推移することから、全体として増収増益を予想しております。

今後、開示すべき事項が生じた場合には速やかに開示いたします。

 

東京証券取引所のプライム市場上場に相応しい企業として、更なる企業価値向上を目指し、SDGsやESGを起点としたサステナビリティ・環境経営や事業ポートフォリオの全体最適化と持続的成長の実現のためのROIC経営の導入、更に経営判断の迅速化等を目指しDXの導入等を強力に推進してまいります。

 

<既存事業における課題>

防衛・通信機器事業の防衛事業においては、防衛予算拡大により大幅に受注が増加し、生産体制と人員体制の見直しが必要となっております。これに対応するため、社内のリソースを活用する等、機動的に取り組んでまいります。

 

また、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力に対しては、一切の関係遮断を目的として毅然とした態度で対応してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ共通

当社グループでは、社会インフラを下支えする企業として、従前の経営理念や行動指針を継承しつつ、環境・社会・経済の持続可能性の観点から「サステナビリティ方針」を制定しております。この方針は、当社グループがサステナビリティ経営を行っていくうえでの基本的な考え方と行動規範を示すものであり、この方針に基づき、従業員一人ひとりが持続可能な社会の発展と中長期的な企業価値の向上に取り組んでいきます。

 


 

① ガバナンス

当社グループは、環境・社会・経済の持続可能性への配慮により、事業の持続可能性向上を図る“サステナビリティ経営”を推進するために、2021年6月にサステナビリティ推進室及びサステナビリティ委員会を設置しました。サステナビリティ推進室は、サステナビリティ経営に係る諸施策を当社グループの中心となって企画、推進します。サステナビリティ委員会は、代表取締役社長執行役員を委員長として、社内取締役、各担当執行役員から委員を選出しています。サステナビリティ経営に係る方針や施策等を審議、共有し、決定事項を遅滞なくグループ全体で実行するための会議体として機能します。また経営会議、取締役会に重要施策の起案や進捗等を報告します。

サステナビリティ委員会は今期6回開催し、「TCFD提言に沿った気候変動シナリオ分析」や「マテリアリティの取組み進捗」等について提案・報告しています。なお、当社グループのガバナンスに関わる体制の全体像は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」に示されております。


 

 

② 戦略

当社グループでは、上記「サステナビリティ方針」に従い、ステークホルダーからの期待と当社グループにとって重要な経営課題を反映した、4つのマテリアリティを特定しました。これらは、持続可能な社会の実現を目指して、当社グループが企業価値を高めていくために特に重要であると考える事項です。更に、4つのマテリアリティに対応していくうえで、ベースとなる当社グループのガバナンスの姿として「持続的成長を支える経営基盤の確立」を掲げています。

 


 

③ リスク管理

当社グループのリスク管理は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」記載のリスク管理体制に基づき行われており、「リスクマネジメント規程」に沿って、“経営上の重大リスク”とそれ以外のリスクに分けて進めています。

このうち、サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ推進室又は各委員より、委員長である社長執行役員、社内取締役、各担当執行役員らが参画するサステナビリティ委員会に起案され、リスクの大きさや対処方法等について遅滞なく審議された後に、その決議事項について、経営会議及び取締役会にて審議・最終承認されます。


 

 

 

④ 指標及び目標

各マテリアリティに対して、2022年度に執行役員の中から推進責任者を決定しました。2023年度は、マテリアリティ推進責任者を中心として2024年度からの中期経営計画に連動するかたちで具体的な施策の立案及び目標設定を行い、適宜、サステナビリティ委員会で進捗報告を行っております。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

当社グループは2022年8月にTCFD提言への賛同を表明し、気候変動関連情報の開示充実に努めるとともにレジリエンスを一層高めてまいります。

気候変動によるシナリオ分析については、IPCC第6次評価報告書における2℃及び4℃の気温上昇シナリオを参考に独自シナリオを作成し、当社の中長期戦略の達成目標年である2030年における温度上昇の影響を評価しました。

 


 

① ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは、サステナビリティ共通のガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティ共通①ガバナンス」を参照ください。

 

② 戦略

気候変動のリスク・機会については、下表のような項目を想定しています。移行リスクに関しては、GHG排出量削減に対する社会的責任とお客様からの省エネ製品要求への対応を主な取り組みと考え、物理リスクに関しては、災害に対するレジリエンスの強化を目指します。

当社グループのGHG排出量(Scope1,2)については、政府が策定した2030年度のGHG排出量削減目標(産業部門)の考え方に賛同し、2013年度比37%削減を目指しており、継続的な環境マネジメントシステムでの省エネ施策の推進とあわせ、電力使用量の多い工場を中心に省エネ生産設備への計画的更新と、再生可能エネルギー由来電力の購入を推進していきます。

また、サプライチェーン全体の排出量(Scope3)については、各工程の改善とあわせ、2025年度までに具体的な戦略を策定します。

 

 


 

③ リスク管理

気候変動に関するリスク管理は、サステナビリティ共通のリスク管理に含めて管理しています。詳細については「(1)サステナビリティ共通③リスク管理」を参照ください。

 

 

④ 指標及び目標

Scope1,2の指標及び目標については、前述「②戦略」に記載の通り設定しています。2023年度の排出量は、2013年度比45%減の7,050t-CO2となり、2030年度達成目標を下回る結果となりました。これは再生可能エネルギー由来電力の購入に加え、電力事業者の排出係数が予想以上に低減したことによるものです。2024年度以降も継続して目標達成に努めてまいります。

Scope3については、現時点では排出量の算定が完了した段階です。2025年度までに具体的な戦略を策定し、指標と目標を決定します。

 


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)人的資本

当社グループにとって、人材は最大の財産です。当社グループが持続的に成長していくために、多様な人材を獲得し、個々の能力開発を支援します。また、多様な人材が個々の力を発揮できる環境を整備し、働きがいと挑戦意欲あふれる風土の創出に努めます。

 

① ガバナンス

人的資本に関するガバナンスは、サステナビリティ全般のガバナンスに組み込まれています。詳細については「(1)サステナビリティ共通①ガバナンス」を参照ください。

また、人事戦略に関しては、各部門長及び人事総務部長を委員とする「人事委員会」にて具体的な課題や施策(全社的な教育研修、育成、採用、人事評価、部門間のローテーション、人事制度等)に関する審議と決定、進捗状況の共有を行い、必要により経営会議及び取締役会に提案又は報告します。

 


② 戦略

<人材育成方針>

多岐にわたる事業を展開している当社グループでは、それぞれの事業に属する従業員に求められる知識・スキルは多種多様です。また、激変する外部環境にも迅速に対応していかねばなりません。

このような事業内容・外部環境において当社グループが持続的に成長を続けるためには、会社・上司からの指示のみならず、自ら考え能動的に業務を遂行し、世の中の変化に対応しながら成長していくことができる人材、すなわち「自律型成長人材」が不可欠です。

そのため、当社グループでは、人材育成の基本方針を「自律型成長人材の育成」とし、当社グループの経営方針や経営戦略を普遍的な価値観として持ちながらも、激変する外部環境に対し、従業員一人ひとりが自ら考え、判断・行動し、個々の持つ力を最大限に発揮し、困難な課題に挑戦して組織としての結果を出せるよう、個々の能力開発を支援します。

また、それらを通じて人的資本を強化し、持続的な企業価値の向上を追求します。

 

a.自律的なキャリア形成支援

変化していく事業内容・外部環境において、従業員には自ら目指すキャリアと、そのために必要なアクションを考えることを求めています。当社では、新卒採用入社4年目及び昇格時にキャリア研修を行っています。また、半年毎に上司と面談し、今後のキャリアについて話し合う機会も設けています。更に、自己啓発プログラムとして、通信教育や外部のWebセミナー等の提供を行っています。

その他、各部署から求人を募り、従業員が自発的に応募し、マッチングによる異動を実現する社内公募制度を設けています。2022年度の成立は3件、2023年度は0件でした。

今後は更に、自らの意志で学び続けるための教育体系の検討、社内公募活性化のために制度を見直し、個々の能力開発を支援します。

 

 

b.業務利用及び自己啓発促進のための資格取得の奨励

当社では、自律型成長人材の育成の一環で、社員の業務遂行能力の向上、自己啓発の促進による会社組織の活性化を目的に公的資格援助制度を設けています。

2024年3月末時点において、569件の資格を認定しており、2023年度は延べ155名が新たに資格を取得しました。

今後、社員に求められる知識・スキルも多様になることが想定されるため、「東京計器ビジョン2030」に掲げている“DXの推進”に向け、2022年度から統計処理等のデータサイエンス分野の資格を拡大しています。引き続き社員の自律的な能力開発につながるように公的資格取得支援を推進します。

具体的な指標としては、新規公的資格等取得者数とし、年間延べ150名の取得を目標に推進します。

 

c.人的資本価値を向上させるための教育研修

当社では、人的資本の価値を向上させるための教育研修を、新入社員から幹部社員までを対象に行っています。具体的には、階層別教育として各階層に見合う知識やスキルの獲得についてのきめ細かなカリキュラムによる研修等を実施しています。

そのうち、当社グループで管理職に登用された社員に対して、能力開発支援のため、「リーダーシップ」、「マネジメント」、「問題解決力」、「ネゴシエーション」のスキルを向上させる研修を提供しています。当該研修体系になってから管理職に登用された社員は原則全員受講ですが、業務の関係等で対象期間に受講できなかった社員がいること等から、2024年3月末時点での受講率は対象社員の92.5%となっています。今後は未受講社員に対しての受講も促進します。

また、管理職登用の半年後には、全員が代表取締役社長執行役員に対し、東京計器ビジョン2030を実現するための自らの取り組み等についての進捗報告を行い、フィードバックを受ける機会を設けています。

2023年4月からは、管理職にはこれまでの研修に加え、東京計器ビジョン2030の実現に向けての「戦略実現力強化」、部下育成のための「コーチング」研修を実施しています。

 


 

<社内環境整備方針>

当社グループは、挑戦を通じて多様な人材が個々の力を発揮して成長できる企業風土を醸成し続けるために、適材適所の配置で人材が成長できる環境の構築に努めています。また、多様な人材、多様な働き方に応じた労働環境を整備していきます。

・東京計器ビジョン2030実現のため、挑戦志向の人事制度を推進します。

・個人の能力を把握し、適材適所に人材を配置することで、人的資本を最大限に活用することを目指します。

・性別、国籍、年齢、経歴、障がいの有無等にかかわらず働きやすい環境を整え、誰もが挑戦する機会の確保に努めます。

・多様な働き方に対応し、仕事と生活の調和を図ります。

・人材育成につながる公平・公正な評価を目指します。

・心と身体がともに健康であるように安心・安全な職場環境の維持改善に努めます。

 

d.東京計器ビジョン2030実現に向けた人事制度の改革

当社では東京計器ビジョン2030の実現のため、2022年度より評価制度及び賃金制度を改定しました。新しい人事制度では、人材育成を核とし、それを「戦略実現力の強化」、「社員の成長」、「挑戦風土の醸成」へと展開していき、これらが相互に連動し、高めあいながら当社を発展させていくことをコンセプトとしています。

従業員が挑戦し、失敗から学び、成功体験を積むことが、成長につながると考えています。そこで、高い目標に挑戦する人材を高く評価する「挑戦目標制度」を導入しました。評価結果を報酬・昇格に反映していくことで、従業員に挑戦を促す仕組みとなっています。

従業員の挑戦を達成できるように支援し、当社の発展及び東京計器ビジョン2030に掲げた経営目標の実現を目指します。

 

e.労働環境の整備による多様な働き方の実現

当社では、フレキシブルで効率的な業務ができる就業環境の選択肢として、フレックス・タイム制度とテレワーク制度を導入しており、営業職や技術職、スタッフ職を中心に有効利用されています。予てより仕事と育児や介護との両立、病気の治療等のために利用することが可能な休暇制度を設けていましたが、2024年度からは育児のための短時間勤務の適用対象者を小学校3年生の子を育てる従業員から、小学校6年生の子を育てる従業員に拡大し、労働環境の整備による多様な働き方の実現に努めています。

 

f.働きやすい職場環境への取り組み

当社グループでは、職場環境の悪化等に起因する従業員の退職、又はメンタルヘルス不調による休職者の増加が引き起こす事業停滞のリスクを抑えるために、ストレスチェック及びエンゲージメント調査を通して従業員にとって働きやすくかつ個々の力を発揮できる職場環境を整備しています。

ストレスチェックの集団分析結果は各職場の管理職に報告し、ストレスが高い職場に対しては、必要に応じて保健師を交えたヒアリングを行い一つ一つ課題を解決することで職場環境の改善に努めています。

また、作業環境が高ストレスの一因となっている職場においては、管理職を中心とした職場内での改善により安全性や快適性の確保を図ります。

2023年度のストレスチェック受検率は96.7%となっています。受検率は95%以上の維持を目標に推進します。

エンゲージメント調査については2023年度より実施をしています。その結果をもとに管理職を中心とした職場内での改善によりエンゲージメントの向上を目指します。

 

③ リスク管理

人材の獲得競争の激化や従業員の退職等により十分な多様性のある人材の確保及び育成ができず、当社グループの競争力が低下し、業績及び財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。社員に成長の機会を提供し、活躍しやすい環境を整えることで、リスク低減に努めています。

 

 

④ 指標及び目標

戦略を実現させるための取組みについては「②戦略」の欄に記載していますが、その中で指標及び目標については次のとおりに設定しています。

 

戦略実現の要素

KPI

2023年度実績

目標値

業務利用及び自己啓発促進のための資格取得の奨励

新規公的資格等取得者数※1

延べ155

年間延べ150

働きやすい職場環境への取り組み

ストレスチェック受検率

96.7

95.0%以上

 

※1 提出会社のみの施策

 

3 【事業等のリスク】

当社グループは、以下のリスク管理体制を構築し、推進しております。

(ア)法務・ガバナンス室は、リスクマネジメント規程に基づき、マネジメントサイクルの徹底に努めるとともに、重大なリスク情報については法務・ガバナンス担当役員が経営会議、取締役会に報告しております。また、当社グループのリスク管理体制、即ち様々なリスクに対する責任部署を明確化し、危機対応に関しては危機管理規程に基づく緊急時における円滑な対応が図られるようにしております。更に当社グループの財務報告の信頼性を担保し、金融商品取引法に規定する内部統制報告書の提出を有効かつ適切に行うため、財務報告に係る内部統制の体制を整備し、その運用を管理しております。

(イ)内部監査室は、当社グループの企業倫理・活動全般はもとより財務報告に係る内部統制の適正性を監査しております。

 

リスクマネジメントは、“経営上の重大リスク”とそれ以外のリスクに分けて進めております。

・“経営上の重大リスク”は、リスクマネジメント規程に従い法務・ガバナンス室が「経営上の重大リスクと主要な対策」として毎年内容を見直して起案し、法務・ガバナンス担当役員が経営会議・取締役会に付議し承認を得ております。「経営上の重大リスクと主要な対策」に担当部署として記載された各部門・部署・子会社は、「経営上の重大リスクと主要な対策」に記載された“あるべき姿”と“主要対策”を踏まえ、具体的な各対策を「重大リスク対策プログラム」として作成し、毎年年末を目途に法務・ガバナンス室へ提出しております。法務・ガバナンス室は、各担当部署から提出された「重大リスク対策プログラム」の内容を確認し、不備等があれば当該部署に対し改善の指摘を行っております。各部門は、決定されたリスク対策について事業計画に反映するとともに、直ちに実行に移せるものは随時実施しております。

・“経営上の重大リスク”以外のリスク対応は、リスクマネジメント規程に則り、各部門等が「リスク調査票」に従い、自部門に損失をもたらす可能性のあるリスクの発見(洗い出し)作業を行っております。実施に当たっては、自部門の事業目標に対して、規程に記されているリスク分類ごとに調査し、現段階ではリスクに該当していなくても、環境変化に伴い、将来的にリスクとして見込まれるものも列挙することを十分考慮のうえ、進めております。

・各部門は、洗い出したすべてのリスクについての評価・算定を行っております。評価・算定については、リスクごとに“発生頻度”及び“影響度”について評価し、これを掛け合わせ総合評価を行っております。総合評価が一定のポイント以上のリスクについては重要リスクとして所定様式にリスク対策を記載し、法務・ガバナンス室に提出するとともに、自部門の中期事業計画に反映しております。また、直ちに実行に移せるものは随時実施しております。それ以外のリスクは、各部門等の統制(対策、実施、自己評価)のもとに業務効率改善等の一環として推進しております。

・各部門は、前年度に策定したリスク対策の実施状況について、毎期末に評価を行い、その結果を法務・ガバナンス室へ提出しております。

・内部監査室は、「重大リスク対策プログラム」について、独立的立場から評価を行い、必要に応じて内部監査(実査)と是正・改善策の指摘を行っております。

 


リスク管理体制図

以上のようなリスク管理体制の下、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、以下は当社グループの全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1)内外経済の変動について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、国内のみならず、アジア、欧米等の様々な国又は地域に商品を提供しております。従って、これらの国又は地域の市場における経済状況の影響を受けることがあります。例えば船舶港湾機器事業では、国際的な経済状況の変化による商船の需給バランスや海運市況の悪化に伴い、当初予定していた新造船の建造計画や在来船の機器の保守整備・換装予定が変更される、あるいはキャンセルされる等、期初に策定した事業計画(販売計画、生産計画等)に影響を及ぼすリスクを内在しております。また、油空圧機器事業では、自動車メーカー等の最終需要家の需要増減により、当社グループの顧客である工作機械や射出成形機等の産業機械メーカーや建設機械メーカーの生産計画が変更されること等により、期初に当該生産計画等を見込んで策定した当社グループの事業計画に影響を及ぼすリスクを内在しております。特に昨今のロシア・ウクライナ紛争のような長期間に及ぶ地政学的リスクの顕在化により景気が悪化することで、連鎖的に起こる海運市況や商船需要低迷、産業機械や建設機械の需要低迷等が当社グループの事業に影響を及ぼすリスクを内在しております。更に急激な為替の変動等、事業計画で想定している以上の著しい変化等により収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローが創出できないと判断される場合においては、各事業に関連する対象資産に対する減損処理を行うリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような当社商品に対する顧客や市場の変化、景気の後退、為替レートの変動等その他予測せざる事態の発生、それに伴う需要の増減等に起因するリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

これらのリスクに対応するために、当社グループでは、経営会議にて毎月の受注・売上状況等を通じて主要な市場動向をモニタリングする他、四半期毎に各事業計画の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

(2)自然災害・疫病について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループの本社・技術センターは東京都大田区にあり、首都直下型地震等巨大地震の直接的な影響を受けるリスクを内在しております。また、主要工場は栃木県(那須町、矢板市、佐野市)に所在しており、同地域においては巨大地震の直接的な被災リスクは低いといわれております。しかしながら、昨今の気候変動の影響と思われる所謂スーパー台風や爆弾低気圧、線状降水帯の発生等に伴う大規模な風水害に起因する広域災害の発生による電気・水道等の社会インフラの寸断、物流システムの停滞等により、当社グループの事業継続に大きな影響等が生じるリスクを内在しております。更に新型インフルエンザや新型コロナウイルス等の未知の感染症に当社グループの従業者や協力会社等の従業者が集団感染した場合、当社グループの事業継続に大きな影響等が生じるリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような気候変動に起因すると思われる自然災害の激甚化や未知の疫病の発生に起因するリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、地震、風水害等の自然災害の発生時や新型ウイルス等の未知の感染症流行の発生時にも、事業を継続し、企業としての社会的責任を遂行するための危機管理マニュアルの整備、定期的な訓練の実施、社員の安否確認システムの構築、また、有事の際の緊急対策本部の設置等による影響の最小化に努めております。また、当社グループの主要な基幹業務システムは、国内最高レベルの堅牢性・対災害性を誇る高度なデータセンターへ収納しており、発災後も主要な業務システムへのアクセスを可能とし、様々な災害に対するレジリエンシーを確保しております。これらのリスク対策の実施状況は、法務・ガバナンス室及び内部監査室によりチェックし、改善が必要な場合は法務・ガバナンス室より是正要求を出し、その対応結果を内部監査室がフォローアップし、その結果は経営会議に報告されております。このようなマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(3)新商品の開発について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、顧客や市場が満足する高付加価値商品やサービスの開発・市場投入を継続的に行っておりますが、革新的新技術の台頭、顧客や市場要求の変化、新たな法的規制の発生・解除、他社の新規参入等に対して当社グループの予測が適切でなく、技術開発や商品化の遅れ等により、競合商品への対抗や市場の需要に追従できずに、機会損失を生み出したり、市場占有率の低下を引き起こすリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような将来の成長と収益性を鈍化させるリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ収益力の向上、事業領域の拡大の実現に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

これらのリスクに対応するために、当社グループでは技術担当役員を委員長とする開発委員会において、当社の経営戦略に基づく技術戦略の立案、実装を推進するとともに、技術開発や商品開発に関してグループを横断した情報共有を行い、このようなリスク顕在化の早期把握に努めております。また、経営会議において四半期毎に各研究開発・商品開発計画の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

(4)商品の品質について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、顧客の信頼と満足を目的とした品質管理方針に従って、各種商品の品質や信頼性の確保に努めております。しかし、全ての商品について欠陥が発生せず、将来的にリコール等に伴う商品回収や現地交換・改修作業、またそれに伴う客先からの求償等の損害賠償が発生しないという保証はありません。また、製造物責任賠償保険が、最終的に負担しなければならない賠償額を全て償えるという保証はありません。大規模な改修や製造物責任賠償に繋がるような商品の欠陥は、当社グループの信用失墜や多額のコストの発生に繋がるリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような商品の欠陥に起因するリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、設計段階における各分野の社内有識者による設計審査を強化し、欠陥発生の未然防止に努めております。また、品質管理を担当する執行役員を選任し当社グループ全体の品質管理の統率を委嘱するとともに、対応する専門の部署として品質統括室を設置しております。当該部署の業務執行状況については、経営会議にて四半期毎に取組の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(5)人材の確保について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、研究開発・設計・製造・販売・サービス、その他専門分野に携わる優秀な人材を幅広く採用・育成することで、グローバルな事業活動と事業競争力の維持向上を推進しております。また、主要な事業拠点として研究開発・営業・サービス・本部スタッフが所属する東京都大田区の本社の他、栃木県(那須、矢板、佐野)及びベトナム社会主義共和国(ダナン)に主力生産拠点を擁しております。しかしながら、国内においては地方における人口の減少や昨今の少子高齢化の進展等を背景とした新卒学生の減少、物価の上昇に伴う給与・福利厚生等の待遇差別化競争をはじめとした人材の獲得競争が激化しております。更に人材市場の流動化進展により今後従業員の退職等が増加するおそれがあります。このような人材の確保に問題が生じた場合、当社グループの競争力の低下につながり、業績及び財務状況に影響を及ぼすリスクを内在しております。特に急速に需要が拡大している防衛事業においては、急増した受注残高に対応するための人材資源が不足するような事態になった場合は、納期遅れ等によるペナルティの発生等のリスクがあります。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

十分な多様性のある人材の確保及び育成のリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ事業領域の拡大や経営基盤の強化に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、将来を見据えた新卒採用と、事業領域の拡大の推進のために必要な即戦力となるキャリア採用をバランスよく、かつ機動的に行っております。特に新卒採用者については、早期離職率の低減を目的として人事総務部によるきめ細かなフォローアップを行っております。更に経営会議にて四半期毎に人材採用部門(人事総務部)における採用活動の取組についての進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より当該部門へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

(6)金利の変動について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、棚卸資産の圧縮、売上債権の回収促進等でキャッシュ・フローの改善による有利子負債の削減に取組んでおります。しかしながら、防衛・通信機器事業における防衛省向け商品のように受注から納品・売上計上までの期間が複数事業年度に跨るような場合は、棚卸資産回転期間が長くなる傾向にあります。特に昨今は防衛費予算の急速な増加により防衛省向け商品の受注残高が高水準となり、それに伴い棚卸資産が大幅に増加し一時的に運転資金としての借入金が増加しております。

また、当社納入商品の将来の修理要求に備えるため、当社が他社から購入している電子部品等の生産中止に伴い所謂「まとめ買い」等が発生した場合は、保守用部品在庫量が増え、中期的な在庫資金需要等により借入金が増加する等、特有の事業特性があります。そして止むを得ずまとまった数量の部品購入をしなければならない場合は借入金が通常よりも増加し、金利の著しい上昇の影響を受けやすくなるリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような長短金利の著しい上昇等に起因するリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ収益力の向上や事業領域の拡大に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このような事業特性に起因するリスクに対応するために、当社グループでは絶えず業界動向に注意し、部品等の購入時期の最適化や老朽化機器の設計変更提案等を含めて対応を図るよう努力しております。また、経営会議にて棚卸資産の増減や資金計画の進捗等の主要な財務情報をモニタリングする他、四半期毎に各事業計画の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(7)官公庁との取引(防衛事業を含む)について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、流体機器事業及び防衛・通信機器事業を中心に、直接又は間接的に国土交通省・海上保安庁、農林水産省、防衛省・自衛隊等の省庁や地方自治体等の官公庁と多くの商品納入及び修理に関する取引があります。官公庁の予算規模の増減に伴う調達方針や予算配分の変更、昨今の想定外の自然災害発生による災害復旧費用や新型コロナウイルス感染症等の疫病対策の増大等により、当初予定していた大型案件の入札の前倒し・延期又は中止、あるいは複数年度に亘り予定していた調達数量が著しく増減する場合は、当社グループの事業計画に影響を及ぼすリスクを内在しております。特に2023~2027年度の防衛費予算は5年間で43兆円と定められ、2024年度は過去最大の7.9兆円となっております。この防衛費予算増加により当社グループの受注残は高水準となっており、当社グループの事業計画に与える影響は無視できないレベルになっております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような官公庁との特有な取引に起因するリスクが顕在化した場合には、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ収益力の向上の実現に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

これらのリスクに対応するために、当社グループでは該当する事業部門において官公庁の動向に関してきめ細かな情報収集を行い、リスク顕在化の早期把握に努めております。また、経営会議にて特に当該取引に関する計画差等の主要な財務情報をモニタリングする他、四半期毎に各事業計画の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

(8)競争の激化について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループ各事業の民需市場における競争は大変厳しいものとなっており、今後もこの傾向は継続するものと予想されます。新たな競合先の台頭、競合他社の低価格商品の投入等により、更に価格競争が激化し、当社グループ商品の収益性が著しく低下するリスクを内在しております。更に当初見込んでいた販売計画で想定している以上の著しい事業環境の変化等による収益性の低下で、十分なキャッシュ・フローが創出できないと判断される場合においては、当該事業に関連する対象資産に対する減損処理を行うリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような競争力の低下に起因するリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ収益力の向上の実現に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、高付加価値商品の開発・市場投入に継続的に注力するとともに、競争力を高めるためにトータルコストダウンを最優先課題として取組んでおります。また、経営会議にて四半期毎に各事業部門におけるこれらの取組の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(9)素材・部品調達について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、重要部品をグループ内で製造するよう努める一方で、素材、電子部品、モジュール、ユニット等の多くを外部の供給元に依存しております。これらの素材や部品等の値上げ、製造の中止、需給の逼迫や生産拠点の被災による供給の不足・停止等により、原価の上昇や納期遅延等による当社グループの生産計画への影響等の問題が発生するリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような外部供給元に起因するリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針の実現、とりわけ収益力の向上の実現に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、設計部署と購買部署が協力して安定的な供給が確保できるよう供給元を選定しております。また、経営会議にて四半期毎に各事業部門における取組の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より関係部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(10)情報セキュリティ及びシステムダウンについて

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、事業上の機密情報や事業の過程で入手した重要な営業情報等を保有しております。このような状況において、当社グループの想定を超える大規模なサイバー攻撃や未知のコンピュータウイルスによるゼロデイ攻撃等により、重要データの破壊、改竄、社外流出、重篤なシステムダウン等を引き起こすリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

これらの情報システムに起因するリスクが顕在化した場合、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、専門の情報システム管理部署に加えて、グループ横断で対応する情報セキュリティ管理委員会を設置し、これらの情報の取り扱いに関する管理を強化するとともに、情報システムのウイルス感染や外部からのサイバー攻撃によるシステムダウン、社外への情報漏洩に対する対策を講じております。また、経営会議にて四半期毎に情報システム管理部署における業務執行状況を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より当該部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(11)知的財産権について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループは、各事業の優位性を確保するため、開発する商品や技術に関し知的財産権の有効活用に努めております。しかし、当社グループが保有する知的財産権に対する異議申立がなされたり、無効請求がなされたりするリスクが内在しております。また、当社グループが知的財産権に関し訴訟を提起される、あるいは当社グループが自らの知的財産権を保全するために訴訟を提起しなければならないリスクが内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような知的財産権に起因する重大な係争問題が発生するようなリスクが顕在化した場合、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、知的財産権の有効活用や従業員への教育等の企画を担当する専門の知的財産管理部署(法務・ガバナンス室)を設置し、適切な知的財産権の活用と効果的な教育等の実施に努めております。また、経営会議にて四半期毎に知的財産管理部署における業務執行状況を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より当該部署へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

(12)退職給付債務について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

当社グループの従業員退職給付債務及び費用は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。しかし、運用実績が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、一般的には将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼすリスクを内在しております。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような割引率の低下や運用利回りの悪化等に起因するリスクの顕在化は、当社グループの経営基本方針、とりわけ収益力の向上に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループは、「確定給付企業年金に係る資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドライン」に従い、「資産運用委員会」を設置しております。資産運用委員会は、運用の基本方針、運用ガイドラインや政策的資産構成割合の策定及び見直しを行い、運用受託機関等の運用・評価結果等を取締役会に定期的に報告しております。また運用受託機関の選定にあたっては、定量評価と定性評価による総合評価を実施しております。このようなマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

(13)脱炭素社会への急速な移行について

① 当社グループを取り巻く環境とリスクの認識

現在、世界的に脱炭素社会実現目標達成のために、1.5℃目標やRE100達成の要求が強まりつつあり、我が国におきましても、中期的な省エネ・再エネ投資や、再エネ電力への切り替え等が進むものと見込まれております。そのような中、ロシア・ウクライナの紛争等、地域的な紛争の他、脱炭素社会への移行に伴う上流資源開発(石油、石炭、ガス等)の減少や再生可能エネルギーの導入コストの不確実性等の構造的要因により、現在よりも更に各種エネルギー料金の高騰、高止まりが続くリスクがあります。また、今後の地政学的リスクの高まりにより、数年間に亘り石油や天然ガス等のエネルギー需給の逼迫が継続し、化石燃料由来電力料金の高騰や、燃料不足による発電所の計画停電等を引き起こすリスクがあります。

一方、現在の当社グループの生産拠点は、油空圧機器事業では製品に使用する金属部材の加工等を行う多数の工作機械を使用している他、防衛・通信機器事業では一部の製品の組立のために24時間運転のクリーンルームを運用しており、前述のリスクの顕在化により電力料金負担が増加したり、クリーンルーム運転維持のための自家発電装置の導入による追加費用が必要になる可能性があります。

② リスクが顕在化したときの当社グループへの影響

このような脱炭素社会への急速な移行に起因する電力を主とする電気料金の高騰や計画停電の発生等のエネルギーリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営基本方針全般に影響を与え、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 当社グループの対応

このようなリスクに対応するために、当社グループでは子会社を含めて特に電力使用量の多い工場を中心に、省エネ生産設備機器への中長期的な投資計画の検討を行うとともに、太陽光発電システムの導入、再生可能エネルギー由来電力の契約を推進しております。また、各国のエネルギー需給の見通しや需給アラート等、世界のエネルギー情勢をモニタリングし、当社グループの事業拠点(日本及びベトナム)に関連する各国政府等の方針に従いつつ、事業等への影響を最小化するための対策を講じております。更に、当社グループの重要な顧客の生産拠点の事情も把握し、顧客生産拠点の操業停止等が当社製品生産へ与える影響を検討しております。これらの取り組みに関しては、経営会議にて四半期毎に関係部門の進捗報告を精査し、要すれば経営企画部署である社長室より当該部門へ必要な指示を速やかに出すこと等のマネジメント・システムにより、リスク顕在化の早期把握とそれへの有効かつ迅速な対応を執っております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、米国では堅調な景気拡大が続きましたが、その一方で欧州の景気は低迷しました。その中で、中国経済の低迷、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化、各国の金融引き締めの継続等により、景気回復への影響が懸念される状況が継続しました。

我が国経済におきましては、日米金利差を背景とした円安の継続や、エネルギー価格の高止まり等の影響により物価が上昇し、景気の回復は緩やかなものにとどまる等、先行き不透明な状況が継続しました。

このような経営環境の下、当社グループは、2021年6月に開示した「東京計器ビジョン2030」を実現させるため、中期事業計画の基本方針である「事業領域の拡大」、「グローバル化の推進」、「既存事業の継続的強化」に取り組んでまいりました。

「事業領域の拡大」につきましては、油空圧機器事業において、国立研究開発法人産業技術総合研究所とギ酸からの高圧水素製造装置の小型・実用化モデルの共同研究開発を開始しました。また、防衛・通信機器事業において、宇宙事業の拡大を図るため、小型衛星の複数機同時生産を可能にする宇宙棟を竣工しました。

「グローバル化の推進」につきましては、ベトナムの油圧機器生産子会社の更なる活用を進めるために、生産品目を拡充しました。

「既存事業の継続的強化」につきましては、船舶港湾機器事業において、公益財団法人日本財団が推進する無人運航船プロジェクトMEGURI2040における「無人運航船の社会実装に向けた技術開発助成プログラム」にコンソーシアムのメンバーとして参加し、ワーキンググループのリーダーとして主導的な立場で活動しました。また、防衛・通信機器事業において、昨今の防衛予算の増加を背景とする受注増に伴い、増産体制の強化と将来の新たな製品の開発・生産を行うために、防衛管理棟の建設を開始しました。加えて、その他の事業において、鉄道機器事業の販売拡大を図るため、鉄道保線業務の安全・効率化に貢献する新製品「軌道検査省力化システム」をリリースし、大手鉄道会社に初号機を納入しました。

このような取り組みの下、当社グループの当連結会計年度における業績につきましては、船舶港湾機器事業において海外市場が好調に推移するとともに為替相場が円安に推移したことや、防衛・通信機器事業において、海上保安庁向けの新規案件の納入等により売上高は前期比で増収となりました。また、利益につきましては、油空圧機器事業をはじめとした販売価格の適正化や製品構成の変化により原価率が改善したこと等から、全ての利益項目で大幅な増益となりました。

 

 

当連結会計年度の業績結果は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

44,296

47,166

+2,870

+6.5%

営業利益

1,312

2,768

+1,456

+111.0%

経常利益

1,687

2,990

+1,303

+77.2%

親会社株主に帰属する当期純利益

873

2,277

+1,404

+160.9%

売上高営業利益率

3.0%

5.9%

+2.9pt

 

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

〔船舶港湾機器事業〕

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

9,700

11,016

+1,316

+13.6%

営業利益

565

1,006

+441

+78.1%

 

 

<売上高の状況>

海外市場において、東アジアでの新造船向けや欧米での在来船向け機器が増加したこと、及び保守サービスが好調だったことに加え、為替が円安に推移したことから前期比で増収となりました。

 

<営業利益の状況>

原材料価格高騰の影響があったものの、売上高の増加や円安効果により、前期比で大幅な増益となりました。

 

〔油空圧機器事業〕

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

11,658

11,675

+18

+0.2%

営業利益(△損失)

△268

273

+541

 

 

<売上高の状況>

プラスチック加工機械市場や海外市場は低調に推移したものの、建設機械市場が堅調に推移したことに加え、ダムゲート向け油圧応用装置の納入が増加した結果、前期並みとなりました。

 

<営業利益の状況>

販売価格の適正化による利益確保の取り組みが進展したこと等から、黒字に転換しました。

 

 

〔流体機器事業〕

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

4,452

4,772

+320

+7.2%

営業利益

527

733

+206

+39.1%

 

 

<売上高の状況>

民需市場、海外市場は低調に推移したものの、官需市場においては下水道及び河川ダム向け案件が、消火設備市場においては、前期に引き続き「ガス系消火設備の容器弁の安全性に係る点検」に基づく部品販売及び交換工事が好調に推移したため、前期比で増収となりました。

 

<営業利益の状況>

消火設備市場における部品販売及び交換工事の売上高の増加により原価率が改善し、前期比で増益となりました。

 

〔防衛・通信機器事業〕

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

14,765

16,185

+1,420

+9.6%

営業利益(△損失)

△94

362

+456

 

 

<売上高の状況>

通信機器事業においては放送局向け機器が順調に推移し、防衛事業においては艦艇搭載機器が好調に推移したことに加え、海上保安庁向けWEB通報システムの新規納入があったことから前期比で増収となりました。

 

<営業利益の状況>

売上高の増加、及び製品構成の変化による原価率の低減により黒字に転換しました。

 

〔その他の事業〕

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減額

増減率

売上高

3,718

3,517

△201

△5.4%

営業利益

675

502

△173

△25.6%

 

 

<売上高の状況>

当事業では、検査機器事業において販売価格適正化の効果等により増収となったものの、鉄道機器事業における主力の超音波レール探傷車の販売減により減収となりました。

 

<営業利益の状況>

検査機器事業において販売価格の適正化により原価率が改善したものの、鉄道機器事業における主力の超音波レール探傷車の販売減により、前期比で減益となりました。

 

財政状態の状況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減

資産の部合計

56,624

66,978

+10,354

負債の部合計

23,172

29,609

+6,437

純資産の部合計

33,451

37,369

+3,917

自己資本比率

58.1%

55.0%

△3.1pt

 

 

(資産の部)

増収により受取手形、売掛金及び契約資産や電子記録債権が増加したことに加え、部材の早期確保や受注増加に伴う在庫の積み増しにより原材料及び貯蔵品や仕掛品が増加したことにより、流動資産は前期末に比べ6,049百万円増加し、50,863百万円となりました。

また、宇宙棟が竣工したことに加え、投資有価証券及び退職給付に係る資産が増加したため、固定資産は前期末に比べ4,306百万円増加し、16,115百万円となりました。

以上の結果、前期末に比べ10,354百万円増加し、66,978百万円となりました。

 

(負債の部)

過去最高の受注残高に伴う資金需要に備え、長期借入金が大幅に増加したため、前期末に比べ6,437百万円増加し、29,609百万円となりました。

 

(純資産の部)

配当金の支払により減少したものの、その他有価証券評価差額金及び退職給付に係る調整累計額が増加したこと、及び親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことにより、前期末に比べ3,917百万円増加し、37,369百万円となりました。

自己資本比率は、総資本の増加の影響により前期末より3.1ポイント減少の55.0%となりましたが、引き続き健全な財務基盤を維持しております。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

2023年3月

2024年3月

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

△2,829

△2,835

△6

投資活動によるキャッシュ・フロー

4

△2,373

△2,378

 フリー・キャッシュ・フロー

△2,824

△5,209

△2,384

財務活動によるキャッシュ・フロー

△780

4,299

+5,080

現金及び現金同等物の期末残高

8,671

7,796

△875

 

 

減価償却費

1,035

868

△167

固定資産の取得による支出

△891

△2,579

△1,688

 

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は7,796百万円と前期比875百万円(10.1%)減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は2,835百万円(前期は2,829百万円の使用)となりました。その主な要因は、棚卸資産の増加4,744百万円及び売上債権の増加1,909百万円によるものであります。

 
(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は2,373百万円(前期は4百万円の獲得)となりました。その主な要因は、固定資産の取得による支出2,579百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は4,299百万円(前期は780百万円の使用)となりました。その主な要因は、長期借入金の借入による収入7,050百万円、及び長期借入金の返済による支出2,238百万円、配当金の支払による支出492百万円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

船舶港湾機器事業

9,983

11.9

油空圧機器事業

10,979

△0.1

流体機器事業

4,774

7.1

防衛・通信機器事業

15,977

9.9

 報告セグメント計

41,714

7.2

その他の事業

2,007

4.7

合計

43,720

7.1

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記生産高の他、各報告セグメントに配分していない全社生産高30百万円があります。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

船舶港湾機器事業

11,268

7.1

4,416

6.0

油空圧機器事業

11,635

△1.7

3,399

△1.2

流体機器事業

4,700

△3.9

1,521

△4.5

防衛・通信機器事業

27,566

36.1

33,651

51.1

 報告セグメント計

55,170

16.1

42,987

36.6

その他の事業

3,759

△0.3

1,733

11.8

合計

58,929

14.9

44,720

35.5

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記受注高の他、各報告セグメントに配分していない全社受注高百万円があります。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

船舶港湾機器事業

11,016

13.6

油空圧機器事業

11,675

0.2

流体機器事業

4,772

7.2

防衛・通信機器事業

16,185

9.6

 報告セグメント計

43,649

7.6

その他の事業

3,517

△5.4

合計

47,165

6.5

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記販売高の他、各報告セグメントに配分していない全社販売高百万円があります。

3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

防衛省

5,968

13.5

6,909

14.6

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は船舶港湾機器事業において海外市場が好調に推移するとともに為替相場が円安に推移したことや、防衛・通信機器事業において海上保安庁向けの新規案件の納入があったこと等により増収となり、前期に比べ6.5%増収の47,166百万円となりました。

売上原価は、製品構成の変化等により売上原価率が前期に比べ2.8ポイント改善し34,150百万円となりました。営業利益は前期に比べ売上高の増加により712百万円増加し、原価率の改善により1,316百万円増加したこと等により、111.0%増益の2,768百万円、経常利益は前期に比べ77.2%増益の2,990百万円、また、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べ160.9%増益の2,277百万円となりました。

当社グループが経営指標として掲げております当連結会計年度の連結営業利益率につきましては、前期と比べ2.9ポイント好転の5.9%となりました。また、自己資本利益率(ROE)につきましては、前期と比べ3.9ポイント好転の6.5%となりました。ROEは過去3年間では、4.6%、2.7%、6.5%と推移した結果、3年間平均では4.6%となりましたが、5年平均では4.4%となりました。今後につきましては、リスク管理を強化しながら更なる事業収益の改善と財務基盤の強化に注力するとともに、2031年3月期までに連結営業利益率10%、ROEにつきましても株主資本コストを上回る10%以上を安定的に創出することを目指してまいります。

 

当社グループは、運転資金及び設備資金を内部資金及び金融機関からの借入金によって調達しており、2024年3月末日現在の連結借入金残高は14,762百万円となっております。財務政策は営業キャッシュ・フローの改善による資本の財源の獲得を最優先事項と考えており、不足分は借入金により資金調達することとしております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

技術受入契約

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約品目

契約期間

東京計器㈱

ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド

米国

F-15機用及びT-4機用航空機器並びにAN/ASN-43ジャイロ磁気コンパス・セット

自 1995年7月1日

至 2020年10月7日

(以後1年毎の自動更新)

イートン・エアロスペース・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー

米国

航空油圧機器

自 1997年3月14日

至 2026年11月30日

 

(注)上記契約に基づくロイヤルティは売上高の1~10%程度でありますが、一部の契約では一時金として一定額を支払っております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、独創技術による独創的な商品の開発を基本姿勢としており、基礎研究及び比較的長期的視野に立った応用研究、商品開発を当社の研究開発センタが主として担当し、短期的な商品開発は各カンパニー及び関係会社が行っております。コア技術は、マイクロ波技術、ジャイロ技術、超音波技術、計測技術、制御技術、油圧技術、信号処理・画像処理技術等であります。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は2,637百万円であり、事業の種類別セグメント毎の研究開発目的、主要課題、成果及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1)船舶港湾機器事業

当事業における研究開発活動は、情報技術の革新に対応する次世代航海計器の研究開発及び国際海事機関(IMO)による国際規格改定への対応等を主な目的としております。具体的には、ジャイロコンパス、オートパイロット、電子海図情報表示装置等について研究開発を行っております。また、特に顧客の課題である「安全と省エネ」や「省力化」に貢献できる製品開発にも注力しております。更に将来の自動運行船実用化に向けての研究開発にも取り組むとともに、外部との共同研究にも参画しております。

この結果、当連結会計年度は、一般商船市場向けにブリッジモニタBM-9000及びGPSコンパスTC-300(パイロットスタンド組込型)を市場投入しました。

当事業に係わる研究開発費は588百万円であります。

 

(2)油空圧機器事業

当事業における研究開発活動は、建設機械、産業機械のニーズに対応した油空圧機器・システム及びそれらの電子制御に関する研究開発を主な目的としております。具体的には、各種ポンプ、各種制御弁、油圧ユニット、油圧制御システム、電子制御装置であります。中でも、省エネに優れた回転数制御ポンプシステム等の油圧と制御技術を応用した油圧システム製品と、建設車両の高度な電子制御を可能とする電子機器製品、及び画像処理応用製品の開発に注力しております。また水素社会の実現に向けた取り組みとして、小型水素圧縮機の研究開発にも着手しました。

この結果、当連結会計年度は、大型ダイキャストマシン向けに回転数制御システム、建機市場向けに汎用コントローラを市場投入しました。

当事業に係わる研究開発費は408百万円であります。

 

(3)流体機器事業

当事業における研究開発活動は、上下水道、農業用水、プラント等で求められる超音波流量計及び電波レベル計等の流体管理用計測器やシステム商品の研究開発を主な目的としております。具体的には、超音波流量計では市場拡大に向けた新商品の開発に、電波レベル計ではマイクロ波からミリ波レベル計までの製品拡充に取り組んでおります。システム商品では防災向けの流量や水位計測システムを開発しております。

この結果、当連結会計年度は、超音波流向・流速計UD-10S/UD-10L、フリューム式流量計、災害時停電対応流量監視システムを市場投入いたしました。

当事業に係わる研究開発費は358百万円であります。

 

(4)防衛・通信機器事業

当事業における研究開発活動は、官需市場では、マイクロ波関連機器、測位・航法関連機器等の防衛向け装備品や海上保安庁向けVTS(船舶通航業務)装置関連機器の、将来製品に向けた技術開発やQCDの改善を主な目的としております。具体的には、航空機向けを中心とする電子戦装置、潜水艦及び護衛艦の航海機器、海上交通センター用関連機器、半導体高分解能レーダー装置について研究開発を行っております。

民需のセンサー機器市場では、慣性センサー及び光計測を応用した地震計関連機器、道路関連機器、農業関連機器向けのセンサー及びシステムの研究開発を主な目的としております。具体的には、トラクタや田植機等の自動操舵装置の研究開発を行っております。

民需のRF・通信制御機器市場では、マイクロ波応用機器及び放送関連機器の研究開発を主な目的としております。具体的には、半導体製造装置用マイクロ電源、高出力マイクロ波発振器、アンテナ指向装置、車載型カメラ防振装置の研究開発を行っております。

この結果、当連結会計年度は航路入港前の通報における迅速化、利便性向上が図れるWEB通報システム、競馬場向けのレース用リモコンカメラシステム、超低速自動操舵が可能となる自動操舵補助装置を開発し、市場投入しました。

当事業に係わる研究開発費は1,087百万円であります。

 

(5)その他の事業

検査機器事業は当社が中心となって、印刷関連産業向けの印刷図柄及び無地シートの検査装置の開発及び機能拡充を行っております。

鉄道機器事業は主に東京計器レールテクノ㈱が中心となって、鉄道保線用計測機器/装置の研究開発を行っております。

この結果、当連結会計年度は、軌道検査省力化システムを市場投入しました。

当事業に係わる研究開発費は195百万円であります。